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日時 令和2年4月2日(木)

場所 書面にて開催

内容

1. 最近の国債市場の状況と今後の見通しについて
2. 令和2年度補正予算に伴う国債発行計画の変更について

○令和2年度補正予算に伴う国債発行計画の変更について、理財局から以下のように説明を行った。

・資料1のとおり、3月28日の第24回新型コロナウイルス感染症対策本部にて総理から経済対策の策定指示・令和2年度補正予算の編成指示がなされ、今後10日程度で取りまとめられることとされており、今般の経済対策の事業規模がリーマンショック時の経済対策の事業規模56.8兆円を上回ることが見込まれている。これを前提に、資料2のとおり、皆様から国債発行の増額について意見を賜りたい。

・また、利付債の表面利率の設定方法については、令和2年1月の入札より、実勢水準の単位未満小数を切り捨てたものを基本に設定することとしていたが、今般の国債追加発行によるマーケットへの影響を抑制する観点から、令和2年4月の入札より、四捨五入したものを基本に設定することとする。加えて、利付債の表面利率の下限引下げについては、令和2年度国債発行計画において、本年10月以降実施予定としていたが、同様の観点から、実施時期を後倒し令和3年4月を目途に実施予定とする。

○提出された意見等の概要は以下のとおり。

・ 3月23日の本会合時点と比較すると、値動き自体は落ち着いてきているが、流動性の低さは改善されていない印象である。3月24日以降は日本国債先物の出来高が2万枚を超える日がなく、3月30日には日中出来高が7,000枚程度と、記録的な水準にまで減少した。また、現物債の売買高も、同じ時期から大きく落ち込んでいる状況であり、年度末や年度初でも、売買が大きく盛り上がる局面はなかった。新型コロナウイルス感染症への感染が国内でも徐々に拡大してきており、ロックダウンの可能性も視野に入れざるを得ず、投資家サイドでも在宅勤務が徐々に導入されつつあり、更なる流動性の低下は避けられそうにない状況である。3月末に日本銀行が公表した「長期国債買入れ(利回り・価格入札方式)の月間予定(2020年4月)」においては、短中期ゾーン及び長期ゾーンの買入日程が大きく増加しており、市場の安定に寄与すると考えるが、流動性の低さは改善されそうにない。投資家からオーダーが入りにくい状況は暫く継続しそうな環境であり、この先1-2か月の国債入札については、非常に不安定な結果になる可能性があると考えている。
   増額時期については、リーマンショック時も4月補正で7月からの増額となったことに加え、7月は新発債として発行されることから、7月からの発行増額を希望する。入札1回当たりの増額可能幅については、T-Bill・1年物は5,000億円(上限6,000億円)、2年債は3,000億円、5年債は1,000億円(上限2,000億円)、10年債は2,000億円、20年債は1,000億円(上限2,000億円)、30年債は1,000億円、と考えている。T-Bill・6か月物の増額可能幅は、年間で3兆~6兆円と考えるが、これは調整項目として捉えているほか、増額に際しては、FB・6か月物の一部を3か月物に振り替えることにより、一層円滑な消化が可能と考える。
   短期ゾーンについては、令和3年度は借換債が令和2年度に比べて10兆円程度減少することから、今回の補正では平準化のため、T-Billを10兆円程度まで増額可能と考える。中期・長期ゾーンについては、平成21年度は1回の入札当たり、5年債は3,000億円、10年債は2,000億円の増額だったが、現状では5年債が大幅なマイナス金利で需要が非常に低い年限であり、直近入札で大幅なテールが出たことや、対先物で恒常的にインバートしている状況を考えると、5年債に限り、1,000億円の増額に留めるべきだと考える。超長期ゾーンについては、既に40年債の増額(1回の入札当たり1,000億円の増額)が決定済みであり、20年債・30年債共に、まずは1回の入札当たり1,000億円の増額として、需要を確認しながら、必要かつ可能であれば、年度後半からもう一段の増額、というステップアップが必要だと考える。
   利付債の表面利率設定については、発行減額が前提条件となっていた当時とは状況が大きく異なっており、若干なりともカレンダーベース市中発行額の増額を抑えられることから、四捨五入を基本に設定することに賛成する。利付債の表面利率の下限引下げについては、令和3年4月からの実施予定でも問題はないと考えるが、今後の税収減や追加補正の状況が不透明であり、場合に拠っては実施しない、という選択肢も現時点では残しておいた方がよいのではないかと考える。

・最近の国債市場の状況と今後の見通しについては、新型コロナウイルス感染症の拡大懸念から生じたグローバルなリスクオフをきっかけに、各市場でリスク・リダクションが進んだことに加え、スプリット勤務等の物理的な制約等を背景に、市場参加者のリスク許容度の低下が顕著となっている。臨時の日銀買入等により市場は幾分か落ち着きを取り戻しつつあるが、引き続き、現物市場におけるオファー・ビッドは広く、債券先物がヘッジツールとして機能しないほど流動性が枯渇しているなど、市場流動性や機能度といった観点からは注意を要する環境が続いているとの認識である。今後も、新型コロナウイルス感染症の感染状況如何によっては、政府・当局から一段の厳しい措置が取られる可能性もあり、市場参加者が更に減少する展開も想定されることから、今後の国債発行計画の見直しを含め、引き続き丁寧なコミュニケーションを行ってほしい。
   令和2年度補正予算に伴う国債発行計画の変更については、まず、40年債及び流動性供給入札については、令和2年度国債発行計画(当初)において既に調整がなされており、現時点では、発行額の変更や、流動性供給入札におけるゾーン毎の調整などの要望はない。20年債及び30年債については、日本銀行が国債買入を積極的に減額してきたものの、最終投資家の需要は引き続き旺盛とみられ、1回の入札当たり1,000億円程度の増額であれば、大きなインパクトなく消化できるものと推察される。
   10年債については、他年限対比、デュレーションベースの発行量がやや多いことに加え、同ゾーンの日銀買入が順次減額されてきたことを勘案すれば、現状程度の発行量が適切だと思われるが、1回の入札当たり1,000億円程度の増額であれば、市場にインパクトを与えずに増額が可能と推察される。また、3月末に日本銀行から公表された「長期国債買入れ(利回り・価格入札方式)の月間予定(2020年4月)」に見られるように、今後も残存10年ゾーンに対し、日本銀行の手厚いサポートが継続することが期待されれば、1回の入札当たり2,000億円程度の増額も検討可能かと思う。
   5年債については、日本銀行の国債買入比率が引き続き高いゾーンであるため、1回の入札当たり1,000億円から2,000億円程度の増額であれば、市場にインパクトを与えずに増額が可能と推察される。2年債及びT-Bill・1年物については、基本的に入札の消化は順調であることに加え、担保利用目的での安定した需要が存在することから、1回の入札当たり3,000億円から4,000億円程度までの増額は可能であると推察される。T-Bill・6か月物についても、基本的に入札の消化が順調であることに加え、担保利用目的での安定した需要が存在することから、1回の入札当たり7,000億円程度までの発行は可能であると推察される。

・最近の国債市場の状況と今後の見通しについては、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、グローバルに景気後退への懸念が高まってきている一方、各国で大規模な歳出拡大並びに税収下振れに伴う国債発行の増額や、市場参加者のリスク許容度低下による金利上昇懸念もあり、グローバルに金利は大きく上下している。各国中央銀行による資産購入規模拡大等の措置により、一定程度、振れの拡大は抑制されてきてはいるものの、日本国債も同様に、従前比ではボラティリティが高く、当面、上下に振れやすい展開が継続するものと考えている。
   令和2年度補正予算に伴う国債発行計画の変更については、各年限でバランスのとれた発行増額が一義的には望ましいと考えている。先行きのマクロ経済環境は不確実性の高い状況が当面続くものとみているが、現行の日本銀行の金融政策や国債買入等の市場調節スタンスを踏まえると、短期・中期・長期ゾーンについては、更に一段の増額も可能と考えている。
   また、表面利率の設定方法及び表面利率の下限引下げの実施時期についても賛成する。

・令和3年度の借換債発行が10兆円程度減ることを考慮すると、年度間の発行の凹凸を減らすために、令和2年度補正予算に伴う国債発行の増額は、大半をT-Bill・6か月物及び1年物で行うのが適当であると考えている。また、リーマンショック時の平成21年度第1次補正予算に伴う発行計画の変更と同規模の16.9兆円程度の増額及び7月からの増額開始を仮定した場合を踏まえ、各年限の発行増額許容規模を次の通りと考えている。T-Bill・6か月物は1回の入札当たり6,000億円~7,000億円は増額可能と考えている。T-Bill・1年物は1回の入札当たり6,000億円は増額可能と考えている。2年債については、担保需要等により需給が引き締まった状態が続いており、1回の入札当たり2,000億円~3,000億円程度の増額は可能と考えている。5年債については、1回の入札当たり2,000億円程度の増額は可能であると思うが、参加者が薄いゾーンでもあるため、需給の軟化には注意が必要だと考えている。10年債については、日本銀行の大規模緩和が継続しており、イールドカーブ・コントロールのターゲットでもある10年債の消化に不安は乏しく、1回の入札当たり2,000億円程度の発行増額は許容範囲と考えるものの、10年債の需給悪化は市場全体の不安定化につながる恐れがあることから、慎重な増額対応が必要だと考えている。20年債については、引き続き金利がプラス圏の需要は高く、幅広い投資家層の参加があることから、1回の入札当たり1,000億円~2,000億円程度の増額は可能と考える。30年債については、デュレーション長期化のニーズは高く、1,000億円程度の増額は可能と考えるが、同年限については過去、1回の入札当たり8,000億円の発行が最大であったことから、一段の増額は慎重に対応すべきと考える。
   利付債の表面利率の設定方法を以前の形に戻すことや、表面利率の下限引下げの実施後倒しについては、特段異論はない。

・最近の国債市場の状況と今後の見通しについては、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う経済社会の混乱は市場にも大きく影響し、日本国債市場においても流動性の急低下を招いた。国内投資家が新年度を迎える4月以降、少しずつ流動性の回復が期待されるが、各社が新型コロナウイルス感染症の感染拡大への対応策に追われる中、そのペースはやや遅れると考えられる。また、マクロ経済面での下方圧力はより大きくなってきており、各国の財政政策の拡大を伴いながらも、金利には低下圧力がかかると思われる。
   令和2年度補正予算に伴う国債発行計画の変更については、リーマンショック時を上回る規模の対策とのことから、カレンダーベース市中発行額の増額幅を17兆円前後、令和3年度の借換債が10兆円程度の減額が見込まれることを前提とすると、残存2年超の利付債での増額幅は、7兆円前後と想定している。
   足元の市場流動性の低さなどを勘案すると、増額公表から増額開始まで少し時間を置くことが望ましいと思われるので、7月から9か月間での市中発行額の増額が望ましいと考える。具体的には、30年債は1回の入札当たり0.8~0.9兆円×9か月の発行、20年債は1回の入札当たり1.1~1.2兆円×9か月の発行、10年債は1回の入札当たり2.2~2.3兆円×9か月の発行、5年債は1回の入札当たり2.0~2.1兆円×9か月の発行、2年債は2.1~2.3兆円×9か月の発行、T-Bill・1年物は1回の入札当たり2.0~2.3兆円×9か月の発行、T-Bill・6か月物は年間9,000億円の増額、が適当と考える。
   この結果、利付債での令和2年度の市中発行の増額は5.4~10.8兆円、借換債減額に伴うT-Billでの調達10兆円を含めて、合計15.4~20.8兆円の増額が可能であると考える。なお、40年債は既に令和2年度における増額が決まっていることから、追加での増額はしないと考えている。ただし、更なる増額が必要な場合や今後の追加経済対策で追加の増額が必要な場合には、40年債及び流動性供給入札も増額の対象とすべきだと考える。流動性供給入札については、中長期ゾーン(特に残存1-5年ゾーン)に増額余地が大きいと考える。
   また、利付債の表面利率の設定方法については、足元の社会情勢及び市場環境の変化に鑑み、賛成する。

・「長期国債買入れ(利回り・価格入札方式)の月間予定(2020年4月)」において、残存10年以下のゾーンについて回数増を伴う増額が示されたことは、マーケットの安定に一定の寄与が期待される。しかし、ロックダウンが危ぶまれる環境下で、市場参加者は、コンティンジェンシープランにおける在宅勤務の比率を高めるところが増えており、日本国債市場の低い流動性と高いボラティリティが大きく改善するのは難しい状況と思われる。
   国債の発行増額に関しては、30年債については、生保の需要が安定しており、1回の入札当たり1,000億円~2,000億円の増額が可能である。20年債については、銀行勢を主体に明確なプラス金利の投資需要が最も強いため、2,000億円~3,000億円の増額でも消化可能と考える。10年債については、金利がプラスであるか、マイナスであるかによって需要が大きく増減するため、1,000億円~2000億円の増額が限度である。5年債については、マイナス金利幅が大きく、日銀買入オペへの対応以外の需要はほとんどないため、2,000億円の増額が限度であると考える。2年債については、マイナス金利幅は大きいものの、5年債よりは海外投資家や銀行の需要があり、3,000億円までの増額は吸収可能と考える。表面利率の設定方法については賛成する。
   また、低い流動性と高いボラティリティ環境の下で、大規模な発行増額を行うにあたっては、入札方式を利回りダッチ方式に変更することを提案する。利回りダッチ方式は、入札前後のボラティリティを抑制する効果があるだけでなく、諸外国の中でもより大きな資金調達をグローバルに行っている米国債市場の入札方式でもある。規模の大きい国債入札を行うにあたっては、利回りダッチ方式が投資家の参加に一定の安心感を付与することを通じて、国債の安定消化に寄与していると言える。マーケットとして成熟している年限の入札方式は価格コンベンショナル方式に移行するという概念を一度見直して、国債発行額が大規模に増額される今年度においては、安定した国債入札を目指すことは一考の価値がある。
   加えて、長期国債先物の標準物の想定表面利率6%を実勢に見合ったものに見直すことが、市場の流動性向上とカレント債の安定消化に寄与すると考える。現在の長期国債先物のチーペスト銘柄は残存7年ゾーンとなっているが、想定表面利率を引き下げることによりチーペスト銘柄を残存10年ゾーンに近づけることで、長期国債先物と中期国債先物がそれぞれ機能することが期待され、ボラティリティが高い状況でもヘッジ機能を果たすと考えられる。想定表面利率の見直しが難しいのであれば、想定表面利率が実勢に近い新しい先物商品を創設して一時的に同時並行で上場させてはどうか。

・新型コロナウイルス感染症の感染拡大への対応によるスプリット勤務やリモートによる在宅勤務の推進、東京のロックダウンの可能性から、マーケットの流動性が低下している状況は継続している。国債の動き自体は、日銀買入オペの効果もあり、一時期よりは落ち着いてきていると感じているが、ロックダウン時は大きく流動性が低下するだろうと予想しており、ロックダウン時の国債入札に懸念を持っている。入札をダッチ方式で行うなどの検討も必要ではないかと考えている。
   超長期ゾーンについては、20年債、30年債共に、増額しても投資家の潜在的なニーズは強く、1回の入札当たり2,000億円程度の増額は消化可能と考えている。10年債については、1回の入札当たり2,000億円程度の増額は可能だが、金利がプラスかマイナスかで投資家需要が大きく変化するので、入札時の水準によっては注意が必要と考えている。2年債以下については、投資家の担保需要等も見込まれ、1回の入札当たり4,000億円程度までの増額は可能と考えている。5年債は、1回の入札当たり2,000億円程度の増額は可能だが、投資家の需要は少なく、大幅に発行を増やすとイールドカーブを歪める可能性があると考えている。 ただ、全てのゾーンで日銀買入オペのスタンスが重要になってくると考えている。

・新型コロナウイルス感染症の感染拡大への懸念を背景に、3月半ばにかけて金利は上下に大きく振れる状況となっていたが、日本銀行による臨時の買入オペなどの対応もあり、市場は幾分落ち着きを取り戻してきている。一方で、国内のロックダウンのリスクが燻る中、ポジションを大きく抱えることは困難であり、今後も市場の流動性が確保されないことも懸念されるため、急激な金利変動が起こるリスクもあり、予断を許さない状況が続くと思われる。
   平成21年度第1次補正予算に伴う発行計画の変更において、カレンダーベース市中発行額の増額幅が16兆9,000億円であったことや、増額開始時期を7月とすることを念頭に、1か月当たりの増額幅を1.8兆円、このうち利付債の増額幅を0.8兆と仮定すると、まず、想定される増額幅が相応な額であることから、基本的に2年債から30年債までの全ての年限において増額とすることが望ましいと考える。その上で、確実かつ持続的に投資家需要が見込まれ、今後もプラス金利での推移が見込まれる超長期ゾーンについては、20年債と30年債共に、1回の入札当たり2,000億円の増額が適切であると考える。一方、最も需要に乏しいゾーンが5年債であるので、1回の入札当たり1,000億円の増額に留め、2年債及び10年債については1回の入札当たり1,000億円又は2000億円の増額とするイメージである。また、中短期ゾーンを増額する観点からは、オフ・ザ・ラン銘柄の一部に投資家需要のある残存1-5年ゾーンの流動性供給入札を増額することも選択肢の一つとして考慮してほしい。

・ 3月に相場がクラッシュしてから、流動性が大きく低下して、マーケット・メイクがやりにくい環境となっている。その中でも、国内投資家の買い意欲が非常に強いことが確認できており、今後もこの状況は継続すると考えている。
   令和2年度補正予算の予算規模から考えて、おおよそ、1か月当たり1兆円程度の増額と仮定して、2年債から30年債で均等に増額すれば、各年限で1回の入札当たり2,000億円程度の増額となる。当社としては投資家ニーズの強い10年債や20年債の増額幅を大きくすることが適切であると考える。2年債や5年債に関しては、マイナス金利で国内投資家からの需要は弱いものの、手厚い日銀買入オペを考えれば、10年債や20年債と同様の増額幅でも問題ない。30年債に関しては、1回の入札当たり1,000億円規模の増額が適切であると考える。T-Billに関しては、1年物の需給がミスマッチになっているので、T-Bill・1年物の増額幅を大きくするべきであると思う。
   40年債の1回の入札当たり1,000億円の増額と物価連動債の1回の入札当たり1,000億円の減額は、そのままで問題ない。

・国債市場については、新型コロナウイルス感染症への対応に起因するオペレーショナルな制約により、市場での取引が不活性化するリスクがあるものの、各国の中央銀行の政策により徐々にボラティリティが低下する方向となっており、日本国債も日銀買入オペにかかる措置により落ち着きを取り戻しているように見える。今回の国債発行増額による市場への影響についても、基本的には日本銀行の対応によりある程度相殺されると考えており、市場が大きく動くとは見ていない。新型コロナウイルス感染症による影響が長期化し、リスク回避の動きが続けば、今後ボラティリティの低下に伴い日本国債への資金還流が見られる可能性があると見ている。その際には、特にプラス金利となっている超長期ゾーンに需要が集まりやすいと見ている。
   令和3年度の借換債の発行額の減少を考慮すれば、短期ゾーンの増額幅を厚めに寄せるのが適切であると考えている。一方で、既に述べた通り、超長期ゾーンへの需要が根本的に強いと考えられるため、超長期ゾーンについても増額余地があると考えている。したがって、7月からの増額開始を想定した場合の年間の発行増額幅としては、20年債と30年債については9,000億円~2兆7,000億円、2年債と10年債については9,000億円~4兆5000億円、5年債については9,000億円~3兆5000億円、T-Bill・6か月物及び1年物は1兆8,000億円~7兆2,000億円が適切であると考えている。40年債については、既に発行増額が決定されているため、これ以上の増額は市場への影響が大きいと考えている。5年債については、マイナス金利が定着し、かつ、海外需要が伸びにくい年限であり、現在の金融政策下においては相対的に需要が弱いと考えられるため、2年債や10年債と比較して増額余地が小さいと考えている。

・今般の市場の混乱に伴い市場流動性が落ちた状況がまだ継続しそうである。BCP対応でチームをスプリットした状態での勤務体制を敷く市場参加者が多く、マーケット・メイカーは極力リスクテイクを抑える方向にあり、投資家はニーズの多くを入札や日銀買入オペで満たすような、これまでとは異なる形になりそうである。そうは言っても、換金化の流れが一巡すれば、主に国内投資家のプラス金利を求める動きは非常に強固であり、10年債を含むプラス金利ゾーンはしっかりした動きとなり、このような不安定な相場の中でも幅のある金利上昇は起きにくいと思われる。
   平成21年度の国債発行の増額の時と比較すると、当時は短中期金利がプラスにあり、当該ゾーンは預金金融機関のコアポートとして受け皿になる事で消化できたが、現在はイールドカーブ・コントロールの下、マイナス金利に沈んだ状況となっており、担保としての需要又は他通貨から円転して需要を生む残存0-2年のデュレーションの短いゾーンと比べると、5年債は魅力が劣るため、増額は難しいと考える。一方、プラス金利ゾーンはまだ真の需要があると考える。したがって、40年債については、追加の増額が必要であれば、1回の入札当たり1,000億円の増額が可能である。30年債については、1回の入札当たり最大で2,000億円までの増額、20年債については、1回の入札当たり最大で4,000億円までの増額、10年債については、1回の入札当たり最大で4,000億円までの増額、5年債については、1回の入札当たり最大で1,000億円までの増額、2年債については、1回の入札当たり最大で4,000億円までの増額が可能である。また、T-Billについては、1年物と6か月物を合わせて1回の入札当たり最大で8,000億円までの増額が可能である。

・ オフィス分散や自宅勤務等により市場参加者のリスク許容度が低下しており、入札への負担が増加している。同じ状況は今後数か月続くものと思われ、特に値動きが安定しないT-Billの入札方式に関しては、ダッチ方式への移行を希望する。
   また、リーマンショック時の増額に準拠するという対応が望ましいと考える。近い将来に予算規模が更に拡大する可能性も十分あるため、今回は前倒債を極力温存し、カレンダーベース市中発行額を増額することが望ましいと考える。年限別では、7月から、2年債を1回の入札当たり3,000億円、5年債と10年債、20年債を1回の入札当たり2,000億円ずつ、30年債を1,000億円程度であれば、増額することが可能であると考えている。

・国債市場については、イールドカーブ・コントロールが強力に作用する中、ボラティリティは高止まりしつつ、レンジでの推移が続いている。大量の国債を発行しても、市場にとっての余剰分は最終的に日本銀行が吸収することになると見込まれ、目先は大きな変動にはつながりにくい。世界規模での財政政策がインフレ圧力につながる可能性もあるが、それは現在の危機的状況が収まって初めて見られるものだろう。
   日本銀行の関与を前提とすれば、各年限を増額することは可能である。その上で、20年債の需給が最もよく、増額幅を厚めにすることが望まれる。反対に、需要不足に陥りやすいのは5年債であると思われる。金額としては、前倒債やT-Bill増額で対応する部分が大きいと考えられるが、これらはリファイナンスのリスクが増すことを示唆する。T-Billや2年債は海外勢の不安定な需要に依存している部分が大きく、低金利環境と需要の強さを背景に、調達の長期化が望ましい。

・当社としては、40年債までの全てのゾーンの増額がよいと思っている。40年債と30年債については、1回の入札当たり1,000億円の増額、20年債と10年債については、1回の入札当たり2,000億円の増額、5年債と2年債については、1回の入札当たり3,000億円の増額、T-Bill・1年物と6か月物については、1回の入札当たり3,000億円~5,000億円の増額が望ましいのではないか。日本銀行のイールドカーブ・コントロールがある限り、10年債以下のゾーンは守られ、30年債や40年債も生保の買いと世界的なフラットニング圧力で需要が強くなることが期待されるので、全てのゾーンを万遍なく増額することでよい。流動性供給入札については、強い主張はないが、落札ランキングの計算に含まれないこともあり、大きく流れる不安もあるので、変更する必要はないだろう。表面利率に関する変更に関しては、異論はない。
   今後の見通しについては、しばらく景気悪化が続くことは仕方がなく、とにかくできるだけ普段通りにビジネスができるように気をつけていく。既に代替オフィスで勤務しているが、スプリット勤務や在宅勤務など様々な方法を考えていくとともに、普段通り入札をこなせるよう日々努力していく。

・当社では、足元の日銀買入オペの増額と平仄を合わせ、また、これまでの本会合や国の債務管理の在り方に関する懇談会の議論も踏まえて、増額開始時期が7月の前提で、30年債は1回の入札当たり1,000億円増額×9か月で合計9,000億円、20年債は1回の入札当たり1,000億円増額×9か月で合計9,000億円、10年債は1回の入札当たり3,000億円増額×9か月で合計27,000億円、5年債は1回の入札当たり3,000億円増額×9か月で合計27,000億円、2年債は1回の入札当たり3,000億円増額×9か月で合計27,000億円、T-Bill・1年物は1回の入札当たり5,000億円増額×9か月で合計45,000億円、T-Bill・6か月物は年間で25,000億円の増額で、全年限合計で16.9兆円の増額、という内容を提案する。
   前回の本会合での意見と重複するが、市場が成熟してきたらダッチ方式から価格コンベンショナル方式へ移行するという固定観念を考え直してもよい時期ではないかと考える。 前回の本会合時に説明のあった、ボラティリティが高い時期の発行入札前後のヒアリングにおいては、利回りダッチ方式であることが市場参加者に一定の安心感を与えた、という意見に賛同する。更に、随一の流動性・機能性を有していると評される米国市場でもダッチ方式が採用されており、一概に価格コンベンショナル方式の方がダッチ方式より優れているという評価は妥当ではないと思われる。仮に、入札方式をダッチ方式に変更すれば、当該入札方式に慣れた特に米系の顧客からのプライマリー札の増加が見込まれ、長い目で見れば価格安定や発行者コストの軽減にも繋がると考えている。今回増額する場合は、ダッチ方式へ移行するよい機会と考えている。増額後の安定発行・安定消化のため、これまで、価格コンベンショナル方式ということでプライマリー市場を敬遠してきた投資家層を、ダッチ方式にすることで、例え少額でも誘導するきっかけにすべきではないかと考えている。入札条件を明確化するために、残存10年以下のゾーンは発行額が1.5兆円以上、残存10年超のゾーンは発行額が5,000億円以上の場合はダッチ方式、5,000億円未満になれば価格コンベンショナル方式、などとしたら海外投資家にも受け入れられやすいと思う。

・引き続き流動性の薄い状況が続いている。最悪期は過ぎた感もあるが、今後、首都封鎖やロックダウン等が起きる場合には流動性は再び大きく落ちると見込まれる。
   一方で、生保等最終投資家による根強い超長期ゾーンへの需要が見られることや、残存10年以下のゾーンを中心とした日銀買入オペの増額もあり、全ての年限に増額余地がある。2年債については、担保需要が見られる期末を中心に需要が高まるため、1回の入札当たり3,000億円程度の増額余地がある。5年債については、最終投資家の需要は少ないものの、日銀買入オペの増額もあり、1回の入札当たり2,000億円程度の増額余地はある。ただし、10年債や2年債の発行増額に見合った増額をするべきと考える。10年債については、金利がゼロ%を上回る水準にあれば、実需の買いも見られるため、1回の入札当たり2,000億円の増額余地がある。20年債については、長期金利がゼロ%付近にある中でもプラス金利に対する需要は高いため、1回の入札当たり1,000億円~2,000億円の増額余地がある。30年債については、年度末の駆け込み買いが終了したと思われた後も、平準買いの需要が大きく、現状の発行額では需要に供給が足りていないため、1回の入札当たり1,000億円~2,000億円の増額余地がある。更に、T-Bill・1年物と6か月物を通じて、年間10兆円程度の追加調達が可能であると考える。なお、40年債や残存1-5年ゾーンや残存15.5年超ゾーンの流動性供給入札にも更なる増額余地があり、今後、更なる増額が必要になった場合には、増額を検討するべきであると考える。
   発行増額に伴い、前倒債抑制のためにオーバーパー発行を抑制する必要性は薄れているので、利付債の表面利率の設定方法を切り捨てから四捨五入へと戻すことや、表面利率の下限の引下げの実施を遅らせることに賛成する。加えて、第Ⅱ非価格競争入札の上限を10%から15%に戻すこともあわせて検討してほしい。
   利付債の増額時期は第2四半期の始まる7月からが妥当であると考えるが、利付債の表面利率の設定方法を戻す時期はより早くても問題ない。実行する際には可能な限り迅速に行うことが重要であると考える。

・新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響を見極めきれず、国内外の各市場では値動きの荒い展開が続いた。日本国債市場も不安定な値動きを続け、一時的ではあるが、値が飛ぶことも多々見られ、流動性の乏しさが露見した。こうしたマーケットの不安定さに、日本銀行は即座に対応し、マーケットの鎮静化に努めた結果、足元では、徐々にではあるが、落ち着きを取り戻してきている。引き続き、ロックダウンなどマーケットにとって不安定なテーマは枚挙に暇がないが、今後は、月末にかけて入札を丁寧にこなす中で、落ち着きを取り戻すものと考えられる。
   国債発行計画の変更については、中短期ゾーンを中心に増額する計画の策定をお願いしたい。具体的には、超長期ゾーンについては、20年債は1回の入札当たり2,000億円の増額、30年債は1回の入札当たり1,000億円の増額とすることで、ひっ迫する超長期ゾーンの需給緩和のサポートをお願いしたい。また、10年債も流動性が高い年限であるだけに、1回の入札当たり2,000億円規模の増額は可能と考える。中短期ゾーンに関しては、5年債は需給への懸念があるため1回の入札当たり2,000億円以内の増額に留める一方、2年債は1回の入札当たり3,000億円の増額でも金融機関の担保ニーズに支えられるものと思われる。加えて、T-Billについても、1年物は相応に増額が可能と考えており、1回の入札当たり3,000億円から5,000億円の増額でも、マーケットは吸収可能と考える。
   なお、発行増額の開始時期に関しては、マーケットでの消化時間が必要なため、7月からを希望する。

・最近の国債市場の状況と今後の見通しについては、引き続き新型コロナウイルス感染症が最大の材料。新年度となり、市場参加者のリスク許容度は多少回復するだろうが、この最大の材料を巡る不透明要因は、世界経済への悪影響や各国の政策対応、市場参加者のオフィス分離やテレワーク、そして、国債発行の増額の行方など、多くのものがあり、基本的には、市場の流動性が乏しく、不安定な相場が続かざるを得ないと見られる。
   しかし、本会合で議論される国債発行の増額については、平成21年度の経験も踏まえ、市場の覚悟が一定程度出来ているようである。加えて、日本銀行の金融政策が信頼できるサポートになるだろう。イールドカーブ・コントロールに従い、長期金利はゼロ%を中心にマイナス0.2%~0.2%程度のレンジで推移させ、その強力な手段として日銀買入がある。日銀買入については、これまでの減額によって大幅な増額が可能であり、これは、「災い転じて福となす」と言える。グローバルにも国債発行の増額や財政悪化の懸念は各国の中央銀行の量的緩和拡大などで概ね相殺できると考えている。そして、市場が相応に落ち着きを取り戻した際、大きく悪化した経済データの発表が続くと、長期金利はマイナス圏でその水準を切り下げると予想しており、マイナス金利深掘りを含めて日本銀行の追加緩和の可能性は依然として高いと見ている。
   ただし、その後については、前回の本会合でも述べた「谷深ければ山高し」に警戒すべきとの見方も変わっていない。新型コロナウイルス感染症の感染拡大が収束するのか、ワクチンや治療薬の開発に目処が立つのか、それとも、時間の経過がそうさせるのかは分からないが、やがて、世界の人と物の動きが回復して経済悪化の懸念は和らぐだろう。その時には大きく下がった長期金利が一気に上昇する展開になりやすい。もっとも、日本の場合は、この圧力も日本銀行の金融政策が抑え込むという期待が強く、金利上昇は限定的に留まる公算が大きいだろう。
   令和2年度補正予算に伴う国債発行計画の変更については、平成21年度と同様に、7月を増額開始時期とすることが望ましい。また、2年債と5年債、10年債、20年債については、それぞれ1回の入札当たり2,000億円の増額、30年債については、1回の入札当たり1,000億円の増額により、合計8兆1,000億円の増額が可能である。T-Billについては、1年物を1回の入札当たり4,000億円の増額で小計3兆6,000億円となり、期末越え償還となる6か月物を総額4兆8,000億円発行し、合計で8兆4,000億円の増額が可能であり、総合計で16兆5,000億円の増額が可能である。
   なお、ボラティリティの高い相場が続きそうであるため、ダッチ方式の入札を40年債以外にも拡大することを検討してもよいのではないか。

・超長期ゾーンについては、今年度も国内外の投資家から強い投資ニーズが期待できる。今後、新型コロナウイルス感染症の影響が減退してくるとともに、超長期ゾーンに金利上昇圧力がかかる可能性があるが、金利上昇とともに、これらの旺盛な需要も大きくなると想定されるので、国債の消化に問題はないと考える。30年債については、1回の入札当たり1,000億円の増額を、20年債については1回の入札当たり2,000億円の増額を希望する。既に今年度から1回の入札当たり1,000億円の増額となっている40年債については、据え置きを希望する。
   10年債以下のゾーンについては、日本銀行による金融政策の枠組みの中で、需給バランスが必然的に安定することから、相当程度の増額が可能と考える。10年債と5年債、2年債、T-Bill・1年物については、それぞれ1回の入札当たり3,000億円の増額を希望する。T-Bill・6か月物についても、海外投資家からのニーズは強く、増額が可能であり、年間発行額で3兆円程度、1回の入札当たり5,000億円程度の増額を希望する。
   また、今年度より減額となっている残存5-15.5年ゾーンの流動性供給入札の1回の入札当たりの金額を6,000億円に戻すことも可能であると考える。増額の開始時期は7月を希望する。
   入札方式については、最近のボラティリィティが高く、不安定な市場を体験するにつけて、利回りダッチ方式の有用性を感じており、40年債入札は利回りダッチ方式の継続を再度お願いする。

・新型コロナウイルス感染症に伴う大型補正予算によって大規模な国債発行の増額が予想されるが、日銀買入オペの増額によって市場への影響は限定的に抑えられそうであり、幅広い年限に分散させて増額するのであれば、市場へのサプライズにはつながらないと考える。ただ、日本銀行のマイナス金利深掘りに対する思惑が後退し、T-Bill等の発行が増えることへの懸念も大きくなっており、短期金利の低下余地は以前よりも限られてきている。一方で、マクロ環境の悪化によって金利上昇方向にも動きづらくなっており、当面はボラティリティが低下しそうである。日本国債市場の流動性は引き続き薄い状態ではあるが、短期クレジット市場の混乱を伴う流動性の低下が見られる米国市場と比較すれば、大きな問題にはなっていないように感じる。
   大型補正予算に伴う国債発行の増額については、こうした理由により、幅広い年限に分散させて増額することが望ましいと考える。具体的には、T-Bill・1年物及び2年債から30年債まで全て1回の入札当たり1,000億円の増額、すなわち、合計6,000億円の増額であれば、現在の市場環境においても十分吸収することが可能である。ただし、40年債に関しては、令和2年度発行計画において既に増額が決定されているので今回の増額は見送るべきである。また、物価連動債に関しても、昨今の市況悪化に対応して発行減額を決めたばかりであるため、当然増額の対象にはなり得ない。それ以上の増額が必要となる場合には、リーマンショックへの対応時の平成21年度第1次補正予算に伴う国債発行の増額の例も参考にして、T-Bill・1年物又は2年債の更なる増額で対応することが適当ではないか。また、残存1-5年ゾーンの流動性供給入札を増額対象に含めてもよいかもしれない。

・新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により、今後も不安定な状態が継続すると考えている。
   30年債については、40年債が増額されることを踏まえ、増額余地は限定的で、年間増額イメージの中央値はゼロ兆円である。20年債については、30年債に比べ、需給が安定していると考えており、年間0.9兆円の増額余地がある。10年債については、イールドカーブ・コントロール下にあり、プラス金利需要もあることから、年間1.2兆円の増額余地がある。5年債については、プラス金利ではなく不安定なため、増額余地は年間0.9兆円で、10年債よりは限定的である。2年債については、プラス金利ではないが、担保需要などを背景に年間1.2兆円の増額余地がある。T-Billについては、付利近辺では実需があるはずで、借換債のことも考慮して、増額の中心とし、年間12兆円の増額でよいと考える。

 

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財務省 理財局 国債業務課 市場総括係
電話 代表 03-3581-4111 内線 5700