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日時 令和元年12月12日(木)16:00~16:50

場所 中央合同庁舎第4号館 1208特別会議室

内容

1. 令和2年1-3月期における物価連動債の発行額等について

○令和2年1-3月期における物価連動債の発行額等について、理財局から以下のように説明を行った。

・物価連動債については、P.3のとおり、令和元年度発行計画では、1回の入札当たり4,000億円で年4回の発行としつつ、「市場参加者との意見交換を踏まえ、市場環境や投資ニーズに応じて、柔軟に発行額を調整」することとされている。
   また、P.4のとおり、買入消却についても、「具体的な実施方法は、市場参加者との意見交換を踏まえ、市場の状況を見ながら決定」することとされている。本日は、1-3月期における発行額等について、御意見を伺うもの。

・10-12月期については、P.5のとおり、市場の状況や市場関係者の意見を踏まえ、11月に発行額4,000億円で入札を行うとともに、物価連動債市場の需給の改善を図るために、従来は偶数月に行うこととしていた買入消却入札を、11月にも200億円実施することとしたところ。なお、物価連動債の日銀買入オペについても、11月から、オファー額が、これまでの250億円から300億円に増額されている。
  P.6のとおり、11月の入札は、過去の入札と比べて遜色ない結果となった。
  買入消却入札と日銀買入オペの結果については、P.7のとおりである。買入消却入札・日銀買入オペ共に、足元では概ね市場実勢に即した結果となっている。

・流通市場の状況については、P.8のとおりである。先ほどご紹介した買入消却入札や日銀買入オペの変更後、それまで0.1%を下回って推移していたBEIが、徐々に落ち着きを取り戻し、足元では0.1%台前半で推移しているところ。

・こうした中で、皆様から事前に御意見を伺ったところ、足元の需給が改善傾向にあることや、買入消却や日銀買入オペの増額の影響を見極める必要があること等を踏まえ、1-3月期における物価連動債の発行額と買入消却額は現状維持が望ましいとの意見が多かった。

・こうした状況を踏まえて、P.9に当局案をお示ししている。1-3月期については、10-12月期と同様、発行額を4,000億円とし、毎月200億円の買入消却入札を行うこととしてはどうかと考えている。ただし、市場環境等について引き続きしっかりとフォローし、状況に応じて、適切な対応を行いたいと考えている。

・以上、物価連動債市場についての状況とそれを踏まえた1-3月期の発行額等の実施案について御説明した。
  物価連動債市場の育成は国債管理政策上の重要な課題と考えている中、1-3月期における発行額等については、本日の議論も踏まえて総合的に判断することとしており、改めて皆様の御意見を頂戴したい。

○出席者から出された意見等の概要は以下のとおり。

・当局の提案に賛成する。買入消却入札が毎月になったことや、日銀買入オペが増額されたことによって、需給の改善は顕著にみられたと思う。その割には、BEIの反発はやや物足りないが、低位安定した状況になっていると思われる。仮に12月にマーケットでの取引が薄くなった時に、BEIベースで大きく売られる可能性もあるが、一時的なものと考えるので、とりあえずは現状のまま様子を見るのが一番よい。

・当局の提案に賛成する。BEIのボラティリティが低下する中、日銀買入オペと買入消却入札が増えたことで、需給が大分バランスしているとみている。例年であれば、年末にかけてはヘッジファンドからの売り等により、BEIが低下していくが、今年はそういったこともないため、バランスしていると思う。今後については、増額したばかりであるため、しばらく様子を見て、改めて発行計画等を考えていくというスタンスでよいのではと思う。

・当局の提案に賛成する。発行減額になると、誤ったメッセージを発することになりかねないので、発行額は据え置きでよい。BEIは足元こそかなり落ち着いているように見えるが、今年に入ってからフロア価値を割り込むようなBEIが実現することもあり、需給によってはそのようなことも起こりかねないため、現状の買入消却額と日銀買入額を一旦据え置いて、様子を見るべきだと思っている。

・物価連動債については、一時期、既発債に大きく売りが出て、BEIが調整されるという状況もあったが、その後の日銀買入オペや買入消却入札等の増額の影響もあり、BEIは前回の入札以降、非常に落ち着いた形での推移となっている。BEIが大きく調整されるようであれば、海外勢を含めた投資家のニーズもある程度みえるような環境であり、今のような状況であれば、現状維持の、発行額4,000億円、買入消却額200億円を希望したい。今後については需給の改善等を踏まえて検討することも可能だと思うが、1-3月期については当局の提案通り、現状維持を希望したい。

・引き続き、物価連動債は発行される度に新規の需要を掘り起こさなくてはならない商品であるため、慎重な対応が求められると思っている。10-12月期に買入消却入札と日銀買入オペが増額されたが、流動性が一気に悪化した時には機動的に動けるように当局に対応してほしい。

2. 令和2年1-3月期における流動性供給入札について

○令和2年1-3月期における流動性供給入札について、理財局から以下のように説明を行った。

・流動性供給入札については、P.11のとおり、令和元年度発行計画では、
  ①残存15.5年超ゾーン3.0兆円、残存5-15.5年ゾーン7.2兆円、残存1-5年ゾーン2.4兆円で、年間12.6兆円を発行することを想定しつつ、
  ②最終的には「市場参加者との意見交換を踏まえ、市場環境や投資ニーズに応じて柔軟に調整」することとされている。
  これを受け、本日の会合では、1-3月期におけるゾーン毎の発行額等について、御意見を伺うもの。

・P.12のとおり、10-12月期においては、発行計画で想定されているのと同様、残存1-5年ゾーンについては、奇数月の11月に4,000億円、残存5-15.5年ゾーンについては、毎月6,000億円、残存15.5年超ゾーンについては、偶数月の10月と12月に5,000億円の発行とした。

・P.13~15に、最近の流動性供給入札の結果を示している。本日実施した残存15.5年超ゾーンの入札と来週実施予定の残存5-15.5年ゾーンの入札は資料に反映されていないが、これまでのところでは、各ゾーンにおいて、総じて安定した結果となっている。

・こうした中で、1-3月期の流動性供給入札について、皆様から事前に御意見を伺ったところ、各ゾーンの需給状況に大きな変化はみられていないことから、現状の発行額等を維持することが適当との意見が多かった。

・これを受け、P.16にあるとおり、1-3月期におけるゾーン毎の発行額の当局案を作成した。10-12月期と同様に、残存1-5年ゾーンについては、奇数月の1月と3月に4,000億円、残存5-15.5年ゾーンについては、毎月6,000億円、残存15.5年超ゾーンについては、偶数月の2月に5,000億円の発行としてはどうかと考えている。

・1-3月期における流動性供給入札のゾーン毎の発行額等については、本日の議論も踏まえて総合的に判断することとしており、改めて皆様の御意見を頂戴したい。

○出席者から出された意見等の概要は以下のとおり。

・当局の提案に賛成する。今年度は、これまでずっとこのバランスで発行されてきたほか、残存5-15.5年ゾーンに関しては、倍率がやや低下し、発行された分がそのまま残存1-5年の日銀買入オペにいきやすいという傾向は、昨年度対比でみられたものの、概ね3ゾーンともバランスが取れた発行だったと思うため、最後の四半期であえて変更する必要はないと思う。

・基本的に当局の提案に賛成する。強いて言えば、残存5-15.5年ゾーンは需給の緩みが見られる局面もあるが、先般の本会合において、来年度の国債発行計画において同ゾーンに減額余地があるのではないかという意見が多かったため、その方向になっていくのであれば、今年度内の1-3月期に敢えて減らす必要もないのではと考える。一方で、残存1-5年については、足元、特に残存2-5年の間で、銘柄によっては需給がタイトになっているものも見受けられる。現状は、4,000億円の据え置きでよいと思うが、このような需給の歪みが継続する場合は、増額も俎上にあげてほしい。

・基本的に当局の提案に賛成する。残存1-5年ゾーンについては、11月の入札において、応札倍率が若干低下しているが、引き続き応札倍率自体が高水準を維持しており、旺盛な需要が確認できていると思っているため、現状維持でよい。一方で、残存5-15.5年のゾーンについては、10月入札、11月入札と応札倍率が低下してはいるが、年度の途中で発行額を変更するほどでもないと思っているため、一旦現状維持でよい。ただ、直近、チーペストの引き締まりが見られず、日銀買入も減ってきているため、今後の減額については十分検討できると思っている。また、残存15.5年超ゾーンについては、直近実施された入札の応札倍率もじわじわと上がってきており、プラス金利のゾーンには引き続き安定的な需要があるが、来年度の国債発行計画において、例えば、もし40年債の増額があれば、場合によっては、減額も検討可能ではないかと思っている。

・各ゾーンの需給に若干変化が生じていることを指摘したい。残存5-15.5年ゾーンについては、先物のチーペスト対策ということで、発行量を厚く配分してきたが、今年に入って、日本銀行によるチーペスト周辺銘柄を買入対象から除外する等のスクイーズ対策が効果を発揮してきていると考えている。従って、当該ゾーンでの証券会社のショートカバーニーズや投資家の需要は減少していると考えられるため、少なくとも1,000億円の減額を行い、その分を残存1-5年ゾーン及び需要が強い残存15.5年超ゾーンに配分してはどうかと考えている。残存1-5年ゾーンについては、特に残存3-5年のオフ・ザ・ラン銘柄で、同じ償還日の銘柄に利回り格差が生じているほか、引値にも少し副作用が出てきているため、1-3月期においては同ゾーンに配分するという考えもあるのではないかと思っている。

・需給に鑑みて、残存5-15.5年ゾーンは1,000億円減額、残存15.5年超ゾーンを1,000億円増額、残存1-5年ゾーンは現状維持ないしは1,000億円増額とし、年間発行額は12.6兆円になるという現状から若干修正した案を希望する。まず、残存5-15.5年ゾーンは、今年4月の日本銀行による国債補完供給の要件緩和により、チーペスト周りのスクイーズ懸念が大きく後退し、また、日銀買入オペが年初から大きく減額されている中、相対的にこのゾーンの日銀買入オペの減額が一番大きく、流動性供給入札の発行額を減額するのであれば残存5-15.5年ゾーンではないかと思う。残存1-5年ゾーンは、2年債に相応に担保ニーズがあることに加え、5年債は、依然として日銀買入が発行額の約7割となっているため、カレント銘柄以外のレポレートが高止まりしているという状況が見受けられるため、ショートカバーニーズに応える形で、もし増額するのであればこのゾーンではないか。最後に、残存15.5年超ゾーンだが、プラス金利のゾーンであり、生保勢を中心に投資家からの買いニーズは引き続き強いと思われるため、このゾーンに関しては増額を希望する。

3.令和2年度国債発行計画について

○令和2年度国債発行計画の現在の検討状況について、理財局から以下のように説明を行った。

・P.18の左側に、「発行根拠法別発行額」、すなわち使途別の要調達額についての検討状況をお示ししている。新規国債及び復興債は予算編成過程において、財投債は財政投融資計画の策定過程において、それぞれ発行規模が決定されることになるが、現時点において確たることを申し上げる状況にない。

・国債発行総額の大宗を占める借換債については、前回会合において「国債発行額の将来推計」を基に説明したとおり、今年度よりも増加する見込みではあるが、令和3年度には減少する見込みであることも踏まえて、対応を検討する必要がある。

・右側には消化方式別発行額の検討状況をお示ししている。「個人向け販売分」・「日銀乗換」についてもまだ精査中である。「入札時の追加発行分等」については、第Ⅱ非価格競争入札の応札限度額引下げなど前倒債の増加を抑制する施策を行うことによる効果を考慮することとなる。以上を踏まえ、「市中発行額」を決定することとなる。

・P.19及びP.20には、先月の本会合及び国債投資家懇談会で頂戴した、カレンダーベース市中発行額の年限構成に関する意見を整理させていただいた。

・超長期債については、国債市場特別参加者・投資家とも、発行額の維持・増額を求める意見が多く、特に40年債の増発を求める意見が多かった。

・長期債については、減額可能という意見がある一方で、プラス金利になった場合に需要が見込まれることなどから減額に慎重な意見もあった。

・短中期債については、ある程度の減額が可能という意見もあったが、銀行等の担保ニーズや海外投資家の強いニーズに配慮してほしいという声も多くみられた。

・流動性供給入札については、市場の状況を踏まえ、ある程度の減額が可能という点で概ね一致が見られた。特に、残存5-15.5年ゾーンにおいて減額余地があるという意見が多かった。

・P.21は、10月25日の在り方懇の資料の抜粋である。在り方懇で説明した通り、適切な債務管理の推進の観点から、計画と実績の乖離状況に応じて、年度途中に国債発行計画の見直しを検討する予定。また、乖離の主な要因となっている仕組みの見直しも実施する予定。

・具体的には、来年1月に実施する入札から、第Ⅱ非価格競争入札の応札限度額を落札額の15%から10%に引き下げるとともに、表面利率について、実勢水準の単位未満小数を四捨五入したものを基本に設定しているところ、これを切り捨てたものを基本に設定することとする。
  また、現在、0.1%となっている表面利率の下限を引下げ、0.001%刻みとすることを検討する。この実施時期については、各社の対応準備状況も踏まえつつ、来年10月からの実施を目指す。なお、具体的な下限利率については、システムの対応状況を踏まえ、後日連絡する。

・P.22は、第Ⅱ非価格競争入札の応札限度額の引下げについて、「国債市場特別参加者制度運営基本要領」の変更案を示したものである。本年中に同基本要領を変更し、ホームページに公表する予定。変更後の基本要領は来年1月6日から適用される。

・今後、本日いただくご意見等を踏まえ、令和2年度国債発行計画の具体的な内容を決定のうえ、12月下旬に、例年どおり、令和2年度予算と併せて公表する予定。

○出席者から出された意見等の概要は以下のとおり。

・表面利率の設定について実勢水準の単位未満小数を切り捨ててアンダーパー発行とすること、第Ⅱ非価格競争入札の応札限度額を15%から10%にすること、両方に賛成する。これらの施策によって、カレンダーベースの利付債の発行減額が防げるならばよいのではないかと思う。また、40年債増発については、本日の流動性供給入札の残存15.5年超ゾーンにおいても、おそらく40年債の発行が一定量あったのではないかという雰囲気であり、マーケットのニーズは引き続き高いのではないかと考えている。減額対象としては、流動性供給入札の残存5-15.5年ゾーンは最近応札倍率も低下しているほか、テールが出ているため、マーケット環境にもよるが、減額余地がある。10年債の減額に関しては、10年債の金利が上がらないと超長期ゾーンの金利も上がってこない、逆に言えば10年債の金利が下がったままだと超長期ゾーンがフラットニングするリスクがあると言う投資家が非常に多い印象を受けるため、10年債の減額については慎重に取り組んでほしい。

・前回の本会合で議論された内容や方向性を支持したい。来年度の国債発行計画について、超長期ゾーンの発行額に関しては、依然としてプラス金利を求める投資家ニーズが非常に強いことから、最低限、現状維持をお願いしたく、40年債の増額があれば歓迎したい。一方で、減額余地があるゾーンについては、流動性供給入札の残存5-15.5年ゾーン、次に10年債、更に減額の必要があるのであれば、2年債ないしは5年債がよいと考えている。

・第Ⅱ非価格競争入札の応札限度額が、15%から10%になることは、マーケット全体としては、発行量が減るため影響があるとは思うが、一方で、それによって、カレンダーベースの発行額の減額幅が小さくなるとか、もしチャンスがあって増額を検討するのであれば、マーケットにとって好ましいと思うので、賛成する。

・第Ⅱ非価格競争入札の応札限度額を10%にすることで、利付債全体の当初発行額が確保されるのであれば、そちらの方が望ましいので、当局の提案に賛成する。

4.最近の国債市場の状況と今後の見通しについて

○出席者から出された意見等の概要は以下のとおり。

・今年は、日米の金利の連動性が非常に高く、9月までは米国の長期金利の動きで日本の長期金利の動きが説明できていたが、10月からは乖離が目立っている。足元では、米国の長期金利があまり上昇していないが、日本の長期金利はゼロ%をつけたりしている。この要因としては、10月31日の日銀金融政策決定会合に向けて、黒田日銀総裁がマイナス金利の深掘りを強調していたので、市場と対話しようとしていると考えて、マーケットはマイナス金利の深掘りを織り込んでいたが、実際には行われなかった。更に、今後の追加緩和も期待しにくい状況にあることも影響しているのではないかと思っている。イールドカーブ全体を俯瞰すると、こうしたことが背景にあるために、短中期ゾーンの金利が上昇している。特に短中期ゾーンは海外勢が主要な投資家であることから、年末が近くなると、海外勢は投資を手控える動きがある。更には、中期ゾーンに影響を及ぼす先物でも海外勢や投機的な資金の存在が大きいが、これらによる限月交代の最終売買日を目前にしてポジションを落とすテクニカルな動きが重なり、金利が予想外に上昇したというのが足元の印象である。
   今日は英国の総選挙があり、15日には米国の対中関税第4弾の引上げがある。予定通り引き上げるのか、見送るのか、見方も分かれているが、マーケット全体では見送りが優勢ではないかと思う。ただ、これまでの経緯からすれば、トランプ大統領がどうするかは予想できないため、目先の不透明要因が存在している。こうした要因がなくなれば、海外勢については年を越えれば需要が戻ってきて、金利低下の方向性が期待できるのではないか。ただ、その先になると、今年は日米の長期金利の連動性が高かったと言っても、共にトランプ大統領に振り回された側面があり、来年は結局それをどう考えるかが大きなテーマだと思う。米中の問題は長期的な問題だと思われるが、トランプ大統領が大統領選での再選も見据えた対応をとることを前提に考えるのであれば、リスクオフがどんどん進むという方向性ではなくて、ややリスクオンの方向性なのではないか。グローバルな景気減速も一定程度に留まり、更には、日本銀行の追加緩和見送り観測が強まっており、ECBも同様だとすると、来年は比較的平穏ながら金利水準が若干切り上がるというのが大きな動きなのではないか。ただ、過去にそういう平穏な1年はなかったので、予見できない材料によるショックは起こり得る。予見できるものとしては、やはり来年は米国の大統領選だろう。おそらくトランプ大統領が再選する見方になっているが、3年前のことを考えると何とも言えない。民主党の左派の候補が勝つと、株価が下がって金利が乱高下することもあり得るので、一つの波乱材料として念頭におきながら、メインシナリオとしては、来年は意外と平穏なイメージで捉えている。

・今年1年間を振り返ると、印象的なことはイールドカーブが非常にフラット化したことである。8月頃にイールドカーブのフラット化が最も進み、10年-30年のスプレッドが40bps程度までフラット化したが、そこで超長期ゾーンの金利がちょっと低すぎるといった黒田日銀総裁の発言があり、日銀買入オペの減額もあり、一時的にスティープ化が進んだ。その後、10月以降はベアフラット化するという状況で、超長期ゾーンに対する需要が極めて強いことが確認できた。その背景としては、今年の11月の本会合でも議論があったが、2025年に生命保険会社に対する国際規制が導入されていくということがあり、また、こうした国際的な動きを見据えて、金融庁も国内の生命保険会社向けに経済価値ベースのソルベンシー規制を導入していくために有識者会議で議論を進めていることから、各社がこれらに対する準備を進めているためであると考えている。まだ5年間の時間的余裕があるが、保有しているリスク量も非常に多いことから、構造的な需給要因として、超長期ゾーンに対する需要はしばらく残っていくと思っている。
  また、他に際立っていたことは、銀行勢の決算等をみている限りでも、超長期ゾーンに対する需要が強いことが確認できたことであり、プラス金利に対する需要の強さがみえてきたと思っている。10年債の金利がゼロ%にかなり近づいても、10年債が中々買われず、超長期ゾーンばかり買われる理由になっていたと思う。もちろん、10年債の金利がプラス圏に上昇するなど、10年債の金利水準次第では需給環境がやや変わっていく可能性があるだろう。
  そういった意味で、海外経済などの外部環境も入ってくるが、今後の金利の絶対水準に影響を与えるものとして、足元注目しているのは、短期金利に対する上昇圧力である。短期金利には、様々な要因が影響を与えており、日本銀行が追加利下げを示唆して結局実施しなかったこともあると思うが、本日のトムネのレポレートが2016年2月以来の高水準であるマイナス0.003%をつけており、マイナス金利で資金調達してマクロ加算残高に積むという裁定取引の動きがすごく活発になってきていると思っている。その背景としても、やや構造的なものである可能性があり、マイナス金利政策の長期化を見据えて、こうした裁定取引をしていかなければならないと投資家が考えているのではないか。この状況が変わるとすれば、日本銀行がマクロ加算残高に対してマイナス金利を課すといったことをしないと難しいと思うが、それこそ難しいことだと思うので、短中期ゾーンについても、まだ金利上昇圧力がかかりやすい。足元については、償還や年金の支払いなどによる金利上昇は今日までであり、12月積み期が対象となる明日以降はいったん落ち着くと楽観しているが、短期金利の上昇が10年債金利をプラス圏まで押し上げていくと、やがて20年債など超長期ゾーンにあったプラス金利に対する需要が剥落していき、30年債や40年債はちょっと違うだろうが、イールドカーブが少しスティープ化する可能性も出てくると思う。

・マーケットメイクしている立場から、マーケットの取引環境や流動性、取引高にポイントを置くと、今年は、価格や金利が動くようになったということが一番印象的である。超長期ゾーンの値動きはもちろんであるが、金融政策に対する期待の織り込みや剥落といった形で、短中期ゾーンも含めて、イールドカーブが全般的に動くようになったと強く感じている。
  一方で、日銀買入が長く続く中で、特に今年の前半に、海外勢も含めて債券に対する需要が非常に大きかった時に、顧客に提供していくには債券が足りないと感じる局面があった。それは、金利が上昇してきた時に生保の需要が強くなる超長期ゾーンや、中期ゾーンも含め、様々な年限で見かけよりも債券の流通量が足りないと感じている。引き続き、可能な範囲で日本銀行の買入額を減らしてもらい、発行当局にはできるだけ減額しないでほしい。
  来年以降も、マクロ環境はそれほど急に大きく変わらないと思っているので、リスクオン一辺倒になり、需要がなくなるというよりは、金利が上昇した局面では、投資家の買いも出てくるという運用サイドの需要は継続することが考えられる。超長期ゾーンの流動性を高めることに加えて、イールドカーブの形成上、マーケットの流動性を決める中期ゾーンについて、残存1-5年ゾーンの流動性供給入札に対する増額を含めて、対応してほしい。自分たちも市場の流動性を維持または高めていく努力を引き続きしていきたい。
  また、ビジネスをしていく上では、金利が全般的に上昇した方が、顧客の投資活動が活発になるので、需給がタイトになりすぎないような市場環境を作っていきたいと思っている。

・超長期ゾーンのニーズが強いことは誰もが感じていることであり、来年以降も、金利が上昇すればするほどニーズが出てくると思う。他方、中期ゾーンについては、イールドカーブから少し離れた引値がつくことが、特に残存3年ゾーンで見受けられるようになっている。0.5bpsや1bps程度であれば、誤差の範囲内であるが、一時、3bpsや4bps程度離れた引値が散見されるようになり、こうした引値を修正する動きも最近見られなくなってきている。そのため、特に残存1-5年ゾーンの流動性供給入札については、場合によっては、今後、増額の検討をしてほしい。

・この1年でみると、超長期ゾーンだけでなく、多くのゾーンで金利が変動するようになってきたので、市場機能の部分的な改善ではあるが、昨年度よりはマーケットが動くようになってきたと思う。
  ただ、足元では、自分たちもマーケットに対して流動性を提供できていない部分があるかもしれないが、やや流動性の低下がみられる。強い需要がある超長期ゾーンはさることながら、残存3年ゾーンがイールドカーブから3bpsや4bps離れることがある。そのような乖離が生じた場合、これまでであれば、レラティブバリューによる大口の買いフローが見られたが、そういう動きもなくなってしまっている。今年の日銀買入オペの度重なる減額で、フローベースでの効果は若干落ちてきたと感じるが、日本銀行も圧倒的に大きいと分析しているストック効果が特定のゾーンに効いている。例えば、残存6年ゾーンが逆イールドになるという状況が長く恒常的に続いてきたことにも、こうしたことが背景にあると考えられる。イールドカーブ上で特定のゾーンに過度な歪みが見られるとすれば、問題がある。
  また、金利は上昇した方が、自分たちがビジネスをする上で活気が出るし、顧客が行いたいことも増えてくるので、表面利率の下限の引下げなどで調整することでカレンダーベースの発行額の減額幅をなるべく小さくしてほしい。

 

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問い合わせ先

財務省 理財局 国債業務課 市場総括係
電話 代表 03-3581-4111 内線 5700