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日時 令和元年9月24日(火)16:00~16:50

場所 財務省 第3特別会議室

内容

1. 令和元年10-12月期における物価連動債の発行額等について

○令和元年10-12月期における物価連動債の発行額等について、理財局から以下のように説明を行った。

・物価連動債については、P.3のとおり、令和元年度発行計画では、1回の入札当たり4,000億円で年4回の発行としつつ、「市場参加者との意見交換を踏まえ、市場環境や投資ニーズに応じて、柔軟に発行額を調整」することとされている。また、P.4のとおり、買入消却についても、「具体的な実施方法は、市場参加者との意見交換を踏まえ、市場の状況を見ながら決定」することとされている。本日は、10-12月期における発行額等について、御意見を伺うもの。

・7-9月期については、P.5のとおり、8月に4,000億円の発行を行うとともに、8月に200億円の買入消却を実施したところ。
  P.6のとおり、8月の入札は、過去の入札と比べて遜色ない結果となった。
  買入消却と日銀買入オペについては、P.7のとおりであるが、足元では概ね市場実勢に即した結果となっている。

・流通市場の状況については、P.8及びP.9に示したとおり、BEIは、昨年秋以降、リスク回避姿勢の強まりの中で、グローバルに冴えない動きが続いている中、前回の本会合以降、特に8月において、大きく低下した。
  詳しくはP.10のとおりで、まず各国のBEIについては、特に米国のBEIが軟調に推移している。日本においても、BEIは足元で0.1%を回復しているが、8月中は名目債利回りが大きく低下する一方、物価連動債利回りは必ずしもそれに追随せず、0.1%を下回って推移した時期があった。

・こうした中で、皆様から事前に御意見を伺ったところ、物価連動債の需給の改善等を図るため、発行額は据え置きとしつつも、買入消却を増額すべきとの意見が多かった。

・当局としては、物価連動債市場を育成していくことは国債管理政策上の重要な課題と考えており、足元の市場の状況や市場関係者の意見を踏まえ、今般、物価連動債市場の需給の改善を図るため、P.11にお示ししたような案を作成した。

・具体的には、10-12月期については、発行額を4,000億円と現状維持としつつも、買入消却については、通常の偶数月の10月・12月に加えて、11月にも200億円実施してはどうかと考えている。

・以上、物価連動債市場についての市場の状況とそれを踏まえた10-12月期の発行額等の実施案について御説明した。10-12月期における発行額等については、本日の議論も踏まえて総合的に判断することとしており、改めて皆様の御意見を頂戴したい。

○出席者から出された意見等の概要は以下のとおり。

・当局の提案に賛成する。取り巻く環境があまりにも悲観的であり、グローバルにみても物価連動債の需給は不安定な状況にある。一時期、BEIがマイナスとなる銘柄がみられる等、BEIが機能しておらず、ヘッジ機能が働かないという状況が続いている。ヘッジ機能が働かないため、証券会社が物価連動債を保有しづらく、流動性が低下していくという悪循環に陥るところだが、当局が先陣を切って市場機能の改善を図るため買入消却の回数を増やし、買入額を増やすことをマーケットに知らしめることによって、安定的な成長と市場機能の回復が促されると考えている。そういった意味で今回の増額は、マーケットにとって非常にありがたい政策である。

・当局の提案に賛成する。物価連動債のカレント銘柄の需給が悪いことから同銘柄中心に売られている、という状況ではないと思うが、10年名目債が圧倒的な量を日本銀行に買い入れられている中、ヘッジ手段の機能が低下することにより、物価連動債のマーケット自体の機能性が失われてきている。オフ・ザ・ラン銘柄に関しては、ビッド、オファー、流動性のいずれも著しく悪化しており、その改善を図るという意味でも、発行量で調整するよりは、買入量で調整する方が望ましい。

・当局の提案に賛成する。カレント銘柄については、8月の入札においても応募倍率が引き続き3倍台後半となったほか、少額ではあるが、セカンダリーでの買いもみえているため、潜在的なニーズは引き続きあると思っている。一方で、セカンダリーにおいては、買いたいときに買えず、売りたいときに売れないという状況が続いており、あまり改善がみられていない。よって、現状程度の発行量を維持し、今後の投資家ニーズに応える一方で、直近のセカンダリーの需給等を踏まえ、買入消却は200億円増額とし、投資家に対し、機動的な売却の場を提供することで流動性の向上に繋がると考えている。

・当局の提案に賛成する。物価連動債はデフレに対してフロアオプションがついているが、最近では、フロアオプションの価値よりBEIが低下しており、この商品の機能性がかなり低下している。市場において、買入消却の増額や発行減額を期待して、BEIは足元の水準に均衡しているが、当局によるアクションがない場合、基本的に物価連動債は海外投資家が多く保有しているため、特に12月という海外投資家がポジションを手仕舞う傾向のある時期に、一気にBEIがマイナスまで低下することも考えられる。このため、買入消却を毎月実施することで、当局が需給の改善のために何らかのアクションをみせるということは、現時点の対応として非常によいと思う。発行額の減額については、市場の育成という観点に反するところがあるため、買入消却を毎月200億円実施する方がよい。

・当局の提案に賛成する。今までの本会合においても、買入消却の増額を希望していたため、今回の当局の提案内容はよいと思う。ただ、海外投資家の一部には、発行額1,000億円の減額を期待している向きもあったため、果たして今回の買入消却の増額だけでマーケットが落ち着くかという点には、やや不安がある。

・当局の提案に賛成する。昨年度までは、BEIは20bps前後で、国内投資家、機関投資家中心に購入意欲がみられていたのが、今年度に入ってからは、プライス・アクションを踏まえた結果かどうかは不明だが、海外投資家の買いがメインで、国内投資家の買いが非常に薄れている状況であるため、11月に買入消却の200億円増額は当然賛成だが、今後また需給が悪化するようであれば、毎月300億円、400億円に買入消却を増額することも念頭に置いてほしい。

・当局の提案に賛成する。足元の物価連動債の流動性の低下に伴い、名目債とのイールドの逆転が起こることによってBEIがマイナスになるような銘柄もみられ、証券会社としてもプライシングが難しい状況に陥っている。直近の物価連動債市場においては、新たな投資家層が参入しづらい状況の中、市場のニーズは銘柄の入れ替えニーズに限られ、結果、オフ・ザ・ラン銘柄が多く市場に残ることで、それらに対する証券会社のプライシングが甘くなり、流動性の低下からBEIがマイナスになる状況が生じた。当社としては、買入消却の回数を増やし、同時に、1回当たりの買入額を増額してほしいという希望もあったが、今回の当局の提案でも、マーケットの流動性が戻ってくることが期待される。

・物価連動債については、名目債の金利低下に追随せず、BEIが大きく低下した8月の相場を受けて、需給的には非常に厳しい場面もあったと考えている。ただ、以前のように、大きなロットを伴いながら物価連動債自体が崩れるような相場ではなく、物価連動債の金利がそこまで大きく動かない中、名目債の金利低下に追随しなかった相場だったと考えている。
  カレント銘柄については、BEI水準をみての売買もあり、需給はそこまで崩れていないが、オフ・ザ・ラン銘柄については、まだ償還を迎える銘柄がない中、今後も新しい銘柄の発行が続いていくこともあり、少し需給に不安がある。現状では2か月に1回の買入消却でも対応できるが、今後は、買入消却を増やす方向でもよいと考えている。ただ、17回債・18回債のように、既に需給の崩れている銘柄もあるため、現段階で、200億円の買入消却を1回増やす案に賛成する。

2. 令和元年10-12月期における流動性供給入札について

○令和元年10-12月期における流動性供給入札について、理財局から以下のように説明を行った。

・流動性供給入札については、P.13のとおり、令和元年度発行計画では、
  ①残存15.5年超ゾーン3.0兆円、残存5-15.5年ゾーン7.2兆円、残存1-5年ゾーン2.4兆円で、年間12.6兆円を発行することを想定しつつ、
  ②最終的には「市場参加者との意見交換を踏まえ、市場環境や投資ニーズに応じて柔軟に調整」することとされている。
  これを受け、本日の会合では、10-12月期におけるゾーン毎の発行額等について、御意見を伺うもの。

・P.14のとおり、7-9月期においては、発行計画で想定されているのと同様、残存1-5年ゾーンについては、奇数月の7月と9月に4,000億円、残存5-15.5年ゾーンについては、毎月6,000億円、残存15.5年超ゾーンについては、偶数月の8月に5,000億円の発行とした。

・P.15~17に、最近の流動性供給入札の結果を示している。各ゾーンにおいて、総じて安定した結果となっている。

・こうした中で、10-12月期の流動性供給入札について、皆様から事前に御意見を伺ったところ、各ゾーンの需給状況に大きな変化はみられていないことから、現状の発行額等を維持することが適当との意見が多かった。

・これを受け、P.18にあるとおり、10-12月期におけるゾーン毎の発行額の当局案を作成した。7-9月期と同様に、残存1-5年ゾーンについては、奇数月の11月に4,000億円、残存5-15.5年ゾーンについては、毎月6,000億円、残存15.5年超ゾーンについては、偶数月の10月と12月に5,000億円の発行としてはどうかと考えている。

・10-12月期における流動性供給入札のゾーン毎の発行額等については、本日の議論も踏まえて総合的に判断することとしており、改めて皆様の御意見を頂戴したい。

○出席者から出された意見等の概要は以下のとおり。

・当局の提案に賛成する。3セクターともに、ニーズがあると認識している。残存15.5年超ゾーンについては、応募倍率が低い状態が続いているが、根本的な需要はあると認識しているため、この金額配分のまま継続発行してほしい。

・当局の提案に賛成する。3セクターともにニーズは相応にあり、特に残存15.5年超ゾーンについては、残存15.5年以下の金利がマイナスになりつつある中で、プラスの金利を取りたいニーズが徐々に出てくると思っているため、残存15.5年超ゾーンの応募倍率は若干変わってくる可能性があるとみている。一方で、先般から、黒田日銀総裁が、超長期ゾーンの過度な金利低下について懸念を示していることで、足元、超長期ゾーンの金利の落ち着きどころを探っている状況でもあるため、短期的には入札結果が多少ボラタイルになる可能性はあるが、潜在的なニーズは変わっていないと思っているので、引き続き、現状と同額でよい。

・当局の提案に賛成する。流動性供給入札の残存年限が長いゾーンについても、入札回数を重ねるごとに、投資家へ徐々に浸透しており、投資家の中にも実際に買う先がいるように感じているので、引き続き現状維持でよいのではないかと思っている。

・10-12月期については、当局の提案に賛成する。ただし、足元の残存5-15.5年ゾーンは、ほとんどマイナス金利になっており、応募倍率をみても、明らかに3倍台から2倍台に低下している状況であるほか、残存15.5年超ゾーンについても、生保勢を中心とするデュレーションニーズはカレント銘柄に集まりやすいため、来年度の発行額に関しては、カレント債発行に対し、残存5-15.5年ゾーン及び残存15.5年超ゾーンの流動性供給入札に減額余地があるのではないか。

・残存1-5年ゾーンを少し増額した方がよいのではないかと考えている。その場合、減額するゾーンとしては、残存5-15.5年ゾーンを考えている。これまで、懸念されてきたようなチーペスト銘柄の需給が引き締まるようなことはみられず、さらに日本銀行が施策を色々打ち出したことによって、逆にチーペスト銘柄だけがかなり割安になるような状況もみられるため、過度にチーペスト銘柄がタイトになるということは実現しづらいと考えている。入札結果をみると、相場が売り方向にあれば残存5年近辺の銘柄が発行され、買い方向にあれば残存7年近辺の先物回りの銘柄から残存10年近辺の銘柄が発行されており、ショートポジションになっている銘柄が発行されるというよりも、割安な年限の銘柄が発行されるというようなことが、毎回の入札で繰り返されているため、ショートカバーの観点で言えば、残存1-5年ゾーンの方がニーズも強く、同ゾーンの増額を希望する。

・残存5-15.5年ゾーンの減額と、残存1-5年ゾーンの増額を希望する。残存5-15.5年ゾーンについては、日本銀行により、チーペスト近辺の銘柄の買入除外等の対策が行われている上に、残存15年までほとんどマイナス金利であるため、証券会社、投資家ともに需要が以前より減少していると予想され、減額が妥当と考えている。一方で、残存1-5年ゾーンについては、海外投資家の需要があるほか、日銀買入の累積効果が中期ゾーンで一段と高まっているため、増額が必要だと考えている。具体的には、残存5-15.5年ゾーンで毎月1,000億円の減額と、残存1-5年ゾーンで2,000億円の増額を行うことを提案する。

3.最近の国債市場の状況と今後の見通しについて

○出席者から出された意見等の概要は以下のとおり。

・米中貿易協議の行方に振らされる形で、9月4日に長期金利がマイナス0.295%をつけ、史上最低水準のマイナス0.3%に近づき、20年債金利が0.015%と、2016年7月以来の水準に接近したが、足元では、海外の金利上昇に引っ張られる形で大きく金利上昇している。残念ながら、米中貿易協議の行方は掴みどころがなく、よい方向に行きそうであればちゃぶ台返しが入る等、これから先もマーケットではそういった懸念が強くあり、決め打ちはできない。ただ、戦後の米国の大統領で再選できなかったのは、ジミー・カーターと父親の方のブッシュの2人で、最大の敗因は経済低迷であったため、大統領再選が最大の目標であるトランプ大統領にとっては、自分の支持基盤や地域の経済に対する懸念は再選に向けて足を引っ張ることになるので、中国との交渉に勝ったことを強調しながら、落としどころを探る展開になるだろう。
  一方、ファンダメンタルズについては、我が国は景気が悪くなっているという状況ではないが、欧州は、特に中核国であるドイツを中心に直近に公表された経済指標がよくない。ドイツは輸出主導の国であり、世界経済に懸念が出てくる中で、2四半期連続マイナス成長の可能性が高くなっており、ECBに対する緩和期待が強くなっている。米国については、米中貿易協議の影響で米長期金利は1.4%台まで低下した後に1.9%まで上昇する等、乱高下しているが、ファンダメンタルズを考えると、今年の景気はそこまで悪くない。FRBは中心的な見通しで実質GDP成長率を2.2%とみており、日本の調査機関でも2%台前半というのがコンセンサスである。昨年の成長率からは減速するが、FRB自身が1.9%と見込む潜在成長率をある程度上回る成長が見込まれる中で、FRBが50bpsの利下げを行い、今後も利下げ方向にあることは中央銀行としてどうなのか疑問である。米国のディスインフレは、グローバリゼーションやIT化等の構造的な要因によるものであるが、更なる利下げを続けていくとどこかでインフレ懸念が強まってくるだろう。その場合、下がりすぎた長期及び超長期ゾーンの金利が大きく上がってくるリスクはある。
  その他、考えられることとしては、パウエルFRB議長が中央銀行としての矜持を見せ、トランプ大統領の圧力に屈せず利下げをしないということが考えられるが、これはマーケットの期待に沿っていないため、その場合にも金利がある程度上昇するだろう。
  このように考えると、9月の市場の動きは、こうした動きの前触れとも考えられ、米国債の金利が上昇すると、日本国債の金利もつられる形で上昇し得る。需給面でも、海外勢のプレゼンスが高い状態が続いているが、短期ゾーンだけではなく、長期ゾーンでもプレゼンスが高まっており、売買動向を見ると、超長期ゾーンの最大の買い手になっている。グローバルな低金利環境下において、いわゆるイールドハンティングという動きが起こっている。ただ、海外勢は足が速いため、ボラティリティが大きく高まっていく状況が続きそうであり、警戒している。
  最後に、社債でも50年債が発行され、米国では50年債や100年債の発行が検討されている。40年債入札はイールド・ダッチ方式で発行しており育成過程にあることに加え、我が国の状況からすれば、より長い年限を出す必要性は感じなくなっていることは理解しており、債券市場の育成はメインテーマではないことも理解するが、国債は債券市場における北極星だという例えがあるとおり、債券市場全体を考えた時に、すぐには難しいだろうが、50年債の発行についてこれからの検討課題としてほしい。

・8月中旬からドイツの追加財政支出という報道があり、9月上旬には米国の社債市場での発行額が週次としては過去最高になる等、金利が大きく低下する中で、国債を多く発行して財政政策を行っていく国や、社債を発行して自社株買いや新たな事業に取り組む企業が出てきていた。結果的には、9月上旬の黒田日銀総裁の発言の時期とも重なるが、こうした低金利状況を何らかの形で活用しようという動きはグローバルに金利が上がっていく予兆であって、金利が簡単には下がらない局面に一旦入ったと考えている。
   そうした中で、日本国債市場については、9月6日に黒田日銀総裁のインタビューが報道されて以降、イールドカーブは大幅にベアスティープ化しており、20年債金利も一時ゼロ%付近まで低下したものが0.2%まで上昇するという状況になっている。日銀買入オペは、残存25年超のゾーンは足元のペースでは月間900億円しか買っておらず、売りオペでも実施しない限り、日本銀行単体で金利を引き上げることは難しいはずだが、日本銀行によるアナウンスメント効果は非常に強く、20年債だけではなく、30年債や40年債も金利が上昇し、イールドカーブは綺麗にスティープ化している。こうした状況は、超長期ゾーンの日銀買入オペが全てゼロになる等、全ての措置が実行され、頭打ち感が出ないと、反転しづらい。ただ、10月から下期になり最終投資家の需要が入れば、足元の急激な金利上昇は一旦落ち着き、緩やかな金利上昇という形になるのではないか。
  また、低金利状況下で企業が社債を多く発行しており、米国でも50年債や100年債の発行という話が出てきている中で、来年度からの日本での導入は難しいと理解しつつも、より長い年限の国債の発行を検討すると、マーケットも面白くなると考えている。

・年明けからの金利低下の要因を整理すると、一つはベースとなるべき政策金利の見通しがグローバルに大きく下方シフトしたことが挙げられる。これはFRBとECBが主導した動きで、日本銀行が追随するか否かが話題になっているところであるが、FRBが先日公表したドットチャートでは利下げがあったとしても年内はあと1回であると示されており、その意味でこうした金利低下の動きはどちらかというと終わりに近く、景気後退がない限り、金利水準は基本的に横ばいで推移すると考えている。目先のリスク要因は織り込んだ金融緩和期待の剥落であるものの、これまではトランプ大統領のツイッターの発言内容が市場における最大の話題となっていたが、今後はファンダメンタルズの動向をより精査しなければいけない状況になっている。
  他方、もう一つの金利低下の要因であるリスクプレミアムの縮小については、継続しているテーマである。ECBにしても、日本銀行にしても、マイナス金利の状況からの脱却という道筋が全くみえていないということであれば、マーケットに供給された資金は金利もしくはスプレッドがプラスで残っているところに向かうしかなく、日本国債の金利だけがどんどんスティープ化することは、グローバル化した世界では難しい。
  結局、中長期的な見通しとしては、低金利状況は大きくは覆らないだろうと考えつつも、短期的にはこれまでの金融緩和期待の剥落による金利上昇があり得るため、金利が上下双方向に変動するボラティリティの高い時間帯が当分続くという見方をしている。

・低金利環境及び低成長という根本的な部分は変わらないが、9月6日に報道された黒田日銀総裁のインタビュー以降、現行の金融政策の下で日本銀行が描くイールドカーブがどういうものであるかという点について、マーケットが探しあぐねており、これまで以上に流動性が失われている状況にあることを危惧している。投資家に流動性を提供する立場として、十分な流動性を提供しきれていない状態が続いている。また、不確実性が高い中では、ボラティリティが依然として高い状態が続くと認識している。他方、ECBがマイナス金利の深掘りと量的金融緩和政策の再開を決定し、FRBはバランスシートの縮小を前倒しで終了して今後は拡大方向への期待がある等、金融緩和状態は続くだろうが、マイナス金利に陥るゾーンが金額的に増えていく環境とは少し距離を置いた状況になっている。今後、金融政策と財政政策がグローバルにどういう形での協調を目指していくか注目している。

・足元のグローバルな金利低下の背景については、8月の米国による対中追加関税の発表を機に米中貿易協議を巡る不透明感の再燃が大きかったことに加え、既に発動されてきた追加関税の影響が製造業を中心にグローバルに顕在化してきたことで、日米欧の各中央銀行に対する追加の金融緩和観測や期待感が、9月の一連の金融政策決定会合において高まったことが挙げられる。
  他方、一連のイベントに前後して、行き過ぎた金利低下が一旦巻き戻される局面があったが、米中貿易協議の進展期待に加え、各中央銀行の緩和策がマーケットの期待ほどのアグレッシブな内容でなかったことに対する失望というよりは、むしろ金融政策に対する限界との見方が一部に反映された結果であると考えている。
  ECB及びFRBが追加緩和・追加利下げを実施した中、日本銀行はそれに追随することなく、追加緩和の実施を見送ったが、声明文等を踏まえると、次回10月の金融政策決定会合以降、マイナス金利の深掘りを含む追加緩和の実施に向けて、更に一歩踏み込んだものと解釈している。既にマイナス金利の深掘りの副作用について議論がされているとおり、追加緩和実施の際には相応の副作用対策があると期待しているが、担保繰りの必要性等のALM上の要請や更なる金利低下に備える観点から、マイナス金利の深い水準であってもある程度の日本国債は買わざるを得ない環境がしばらく続くと考えている。
  ただし、長期的には、金融政策に対する評価がグローバルに少しずつ変化していることに加え、超長期ゾーンの金利低下に対しては日本銀行が牽制する態度を明確にしていることから、更なる金利低下の動きは限定的だろう。

・足元、日銀買入オペの減額により、イールドカーブが大きく変化し、需給が緩んでいるが、流動性を維持するために必要な国債がマーケットに不足しているという根本的な問題を抱えており、引き続き流動性が不安定な状況が続いている。また、低金利環境下で、国内の投資家層が細り、海外投資家の影響が強まる中で、一方的な情報を受けて、マーケットの方向性が出るような状況が続いている。証券会社としては、足元の流動性の低さは非常に大きな問題であると認識しているため、日銀買入オペの減額等も含めた足元の様々な情報が落ち着くまでは、ボラティリティの高い相場が続くと考えている。
  50年債の発行については、非常に難しい債券であり、本当に強いニーズがあるのかをしっかり調べてから検討した方がよい。社債の場合、特定の顧客に対して発行するといった形で、一対一の対応が可能であるが、国債の場合、将来にわたって長期間発行を継続することが求められる点が異なる。財投機関債や物価連動債も同様であるが、償還が始まるまではマーケットは落ち着かないだろう。40年債も発行から10年が経過して、30年債とイールドカーブがつながることで市場が落ち着きを見せ始めている。そのため、マーケットの安定的な成長に寄与するためには、50年債の発行を10年間続けることができるかという観点から、50年債のニーズを把握することが重要である。40年債を買っている投資家が50年債に移るだけでは、マーケットの成長にはつながらない。40年債の購入量を維持した上で、50年債への投資が新しく出てくることが重要であり、そういった調査を踏まえて、発行を検討していくべきである。

○50年債の発行に関して、理財局から「出席者からも言及があったが、長期的に安定した発行が可能となるような強いニーズがマーケットにあるのか甚だ疑問に感じているところ。加えて、日本の超長期ゾーンの発行額は先進国の中で最大となっており、また、平均償還年限も英国を除けば、先進国の中でも最長となっている。こうした中で、まずは、40年債の市場育成が重要であると考えており、50年債の発行については検討の俎上にも載っていない状況にある」旨回答した。

 

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問い合わせ先

財務省 理財局 国債業務課 市場総括係
電話 代表 03-3581-4111 内線 5700