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国債市場特別参加者会合(第117回)議事要旨

 

日時 令和7年12月12日(金)16:00~16:45

場所 中央合同庁舎第4号館 1208特別会議室

内容 
1. 令和8年度国債発行計画について

〇令和8年度国債発行計画について、理財局から以下のように説明を行った。

・資料の4ページに、前回の本会合で挙げられた主な意見をまとめている。具体的には、
 ・超長期債については、いずれの年限においても減額が望ましく、特に30年債を中心に少なくとも1,000億円/月以上の減額の必要がある、
 ・10年以下の年限では、2年債を中心として、基本的に短めの年限から増額が可能である、
とする声が多かったものと認識している。

・当局としては、こうした意見も踏まえつつ、引き続き検討を進めてまいりたい。

・また、前回の本会合においては、発行計画の年央見直しについて、国債発行計画を半年に一度見直すという点については、是非行ってほしい、という前向きな意見が聞かれた。

・当局としては、こうした声があることを受け止めつつ、検討してまいりたいと考えている。

・変動利付国債については、当局や市場関係者のシステム改修の状況を踏まえると、令和9年(2027年)1月以降に発行が可能となる見込みとなっており、システム改修はオンスケジュールで進んでいる。本日の議題とはしないものの、発行年限(2年債・5年債)について、また、具体的な発行開始のタイミングや発行額については、来年以降も、市場の状況を見ながら、継続的に議論を行いつつ決定していきたいと考えており、年末に公表する令和8年度発行計画において具体的な金額等は記載しない予定。

・先月、国際資本市場協会(ICMA)より、新しいガイドライン(Climate Transition Bond Guidelines; CTBG)が発表されており、CT債がこのガイドラインと整合的である旨の確認を取るべく、現在、経産省を中心に外部評価機関から追加評価書を取得する方向で調整を進めているところ。

・次回のCT債の1月入札前までには公表することを考えており、引き続きご理解とご協力をお願いしたい。


〇出席者から出された意見等の概要は以下のとおり。

・令和8年度の発行計画については、超長期ゾーンについて、引き続き、発行額の減額が適切と判断している。今年度当初より二度にわたり超長期ゾーンは減額されてきたが、依然として金利上昇及びイールドカーブのスティープ化が継続しており、これまでの減額では最終投資家の需要の減少を十分に相殺できていない状況。絶対金利水準が大幅に上昇しているにもかかわらず、金利上昇を好機と捉えた積極的な買いは限定的であり、今後更に金利が上昇した場合でも、需要が顕著に拡大する兆しが見られない。生保勢による規制対応による買いが一巡しているほか、低金利を背景に超長期ゾーンまで投資対象年限を伸ばしていた預金系金融機関も金利上昇に伴い、投資年限を短期化する傾向が見られている。現状は年金による株等のリバランスによる買いや割安感を狙った海外投資家による買いによって、超長期ゾーンの需給は辛うじて支えられているにすぎず、根本的には超長期ゾーンに投資意欲を持つ主体が構造的には減少していると認識している。こうした需給の軟化が続く中では発行額を需給に合わせて、更に減額することが望ましいと考える。
・特に超長期ゾーンの中では、30年債の減額優先度が最も高いと見ている。確かにカレント債の需給はオフ・ザ・ランからの入れ替えニーズによって良好であるものの、ゾーン全体を見ると20年債や40年債と比べると相対的に弱く、今年度の残存20-30年、30‐40年のカーブの動向から見ても、30年債の軟化傾向が確認できる。そのため、当社としてはまず30年債を2,000億円減額することが妥当だと考えている。なお、減額によってカレント債の過度な需給の引き締まりを防ぐためにも、新発債の発行ペースは現行の3か月ごとの年4回から6か月ごとの年2回に変更することも一案ではないかと考えている。
・40年債については、今年度は前年度比3,000億円減額の効果が見られ、過度な需給懸念は後退してはいるものの、最終投資家の買いは依然として限定的であることから、こちらも30年債に加えて、1,000億円の減額が適当だと考えている。
・20年債については、30年債や40年債よりはまだ幅広い投資家がいるものの、金利上昇に伴って預金系金融機関の買いが超長期ゾーンから10年債以下へとシフトしていることを踏まえると、こちらも1,000億円の減額が望ましいと判断している。
・一方、増額が可能な年限について、利付債に関しては、2年債、5年債、10年債に余地があると考えている。特に10年債に関しては、投資家層が最も厚いゾーンであり、金利上昇に伴って着実な需要増加が見込まれているため、相応な増額も可能。また、超長期ゾーンの減額分を補う観点からも、デュレーションを踏まえると10年債が最も適切と考えている。
・また、2年債、5年債については、補正予算で増額となった1,000億円分は来年度も継続的に増額とすることが望ましい。

・前回の本会合から大きな変更はないものの、主だった年限の需給認識については、超長期ゾーンでは、30年債のオフ・ザ・ラン銘柄の入れ替えの需要が徐々にセクター全体のイールドカーブの形に影響を与える形で、徐々に流動性が低下してきており、それに伴って、入札の安定消化が困難になるという懸念が残っている状況。足元では、株高に伴うリバランス需要や海外投資家の需要で超長期ゾーンの需給はバランスしているという認識だが、中長期的な安定需要という観点では懸念が残るものと考えている。
・一方で、足元で投資家需要の最も高い年限は10年債であるという点については、特段異論はない。
・その中で、各年限の発行増減の基本的な考えとして、当社としては、前回の本会合と同様であるが、30年債の1,000億円の減額を優先すべきという考えに変更はない。また、前回の本会合を踏まえると、10年債の増額という声も非常に多い。国内投資家需要が最低限は確認されていて優先順位は低いものの、20年債の1,000億円の減額も可能であると考えている。
・また、全体のカレンダーベースの発行額からどれくらい中期ゾーンを増額させる必要があるか次第ではあるが、中期金利の上昇ペースによっては、足元で最も投資家層の厚い10年債の需要が5年債へと短期化する可能性も相応にあると考えており、前回の本会合でも申し上げたとおり、10年債の増額については、中長期的な投資家需要も踏まえて、検討してほしい。
・増額可能な年限については、来年度予算の全体像が見通せない中では、カレンダーベースでの発行額が相応に膨らむ可能性を考慮して、金利リスク量の観点から短い年限を優先に増額すべきである。その一方で、たとえば利付債の発行増額が、市場参加者が警戒しているほど膨らまないようであれば、10年債を増額対象とした上で、超長期ゾーンを減額するなど、増額年限については、発行総額や金利リスク量の全体のバランスを考えた上で、対象年限を検討するのが望ましい。
・足元でも、相対的に需給が安定している2年債の今後の需給を考えると、中長期的には国内投資家の担保需要のほか、通貨スワップ経由の海外投資家需要等の実需が減退する可能性も否定はできないため、中期ゾーンとはいえ、今後の需給動向を丁寧に確認していく必要。
・40年債は、前回の本会合でもお伝えしたとおり、市場規模縮小に伴う流動性低下を懸念し、据え置きが望ましいという考えに変更はない。ただし、仮に減額する場合、入札のやり方としては四半期に1回、発行金額を5,000億円とした上でダッチ方式を継続する形を支持する。
・40年債の発行減額は、相応に市場規模縮小や流動性低下を伴うものと考えており、それに伴って一層投資家需要が減退する可能性も考慮に入れておく必要がある。その上で、発行減額による市場規模の縮小を検討していくということであれば、今後そうした方針であることを明示しつつ、一層の減額に対する余白も多少残せるような形にしたほうがよい。現行の入札回数の中で、1,000億円減額するとなれば、先々の減額に対応しにくくなること、また当該年限の市場を成熟させる方向ではなくなるということから、ダッチ方式の継続が望ましく年度の変わるタイミングで発行回数を変更した方がよい。

・超長期セクターに減額の余地があると考えている。1月からの発行ペースを前提とした場合、まず30年債、次に40年債を減額すべきと考える。20年債についても優先度は30年債、40年債より低いものの、減額の余地はある。預金系金融機関の需要がより手前の年限に移り、来年も日銀買入オペの減額が続くと見込まれている中、ネットサプライが増加していることへの対応は検討可能である。
・1月からの2年債、5年債の増額に続いて、次は10年債の増額が妥当と考えている。ただ、10年債は20年債と同様にネットサプライが既に大きく増えているため、需要が短期化しているという証左がある場合には、2年債、5年債を増額することも可能と考える。仮に、全体的な発行規模が膨らむ場合にはT-Bill、または年度間調整に頼る部分もあると思われるため、1月以降の発行額を維持する前提においては、超長期ゾーンを減らした分を中・長期ゾーンで増額する対応が望ましい。
・40年債について、1,000億円減額して年6回の入札とすると1回の入札当たりの発行額が少なくなってしまうため、1回の入札当たり5,000億円で四半期ごとの入札とするのが良い。一方で、残存15.5-39年ゾーンの流動性供給入札と40年債入札が重なる月があるとデュレーションの供給が大きくなってしまうため、やり方を工夫してほしい。

・11月以降、財政拡大と金融政策正常化への思惑からイールドカーブ全体で金利上昇が進んでいるが、6月に決定した発行年限の調整を受けて、超長期ゾーンの需給は一時に比べて改善している。また、足元の金利上昇はファンダメンタルズや金融・財政政策を反映したもので、発散的な状況にはなっていない。ただ、超長期ゾーンについては生保の需要が減退し、海外投資家の需要に支えられているため、需給環境としては不安定な状況と考えており、需要の限られる30年債、40年債中心に発行減額が適切。減額幅については、30年債1,000億円、40年債1,000億円、更に減額が可能であれば追加で20年債1,000億円とするのが適当。40年債については、1回の入札当たり3,000億円の発行であれば、現行の発行回数と入札方式で問題ないと考える。
・超長期ゾーンの減額の代替としては、中・長期ゾーンの増額で対応可能。当該ゾーンは利上げ等により水準調整が進むにつれ、預金取扱金融機関中心に需要が喚起されていくものと見られる。ただ現状は増額による影響を抑えるため、デュレーションの短い年限を優先して増額すべきと考えている。
・発行年限短期化が国債の安定消化に資すると考えているが、日銀の金融政策正常化により円金利市場が久しぶりに金利のある世界に戻る中で、現政権下における財政運営方針など変動要因も相応にあるため、前回会合でもあったように年度途中で発行計画の見直しを行うことで、市場の変化に柔軟に対応することが必要。


2. 令和8年1-3月期における物価連動債の発行額等について

〇令和8年1-3月期における物価連動債の発行額等について、理財局から以下のように説明を行った。

・物価連動債については、P.14に掲載のとおり、令和7年度発行計画において、「市場環境や投資ニーズに応じて、柔軟に発行額を調整」することとされているほか、買入消却についても、P.15に記載のとおり、「市場の状況や市場参加者との意見を踏まえ、必要に応じて実施する」こととされている。

・これらを踏まえ、前回9月の本会合では、皆様からのご意見を伺ったうえで、11月に2,500億円の発行入札を行いつつ、10-12月に毎月200億円の買入消却を行うこととした。

・令和7年10月~12月に実施した入札等の結果と流通市場の状況を、P.17~P.18に掲載している。

・また、P.19に掲載のとおり、BEIは足もと170bps台となっている。

・令和8年1-3月期の発行額等について事前に皆様にご意見を伺ったところ、一部の参加者から、第Ⅱ非価格競争入札の再開や買入消却の取り止めを検討してはどうかとのご意見を頂いた一方で、ほぼ全ての参加者から現状を維持することが適当とのご意見を頂いた。

・これらを踏まえた当局案はP.20のとおりである。現状通り、2,500億円の発行入札を2月に行いつつ、毎月200億円の買入消却入札を行うことを想定している。

〇出席者から出された意見等の概要は以下のとおり。

・物価連動債について、当局の提案を支持。すなわち発行額及び買入消却額の維持が望ましいと考えている。足元ではインフレ期待の上昇等を背景として、不安定ながらも堅調な地合いが見られているが、入札では依然として一部の参加者に落札が偏っており、セカンダリマーケットでも流動性の乏しい状況が続いている。少額の売却でも価格が一方向に動きやすく、まとまった金額の売却には日銀買入オペや当局の買入消却を利用せざるを得ないという状況に変化は見られていない。
・このような状況下で日銀買入オペも減額方向に向かっているため、現状と同程度の発行額及び買入消却額の維持が適切。また、対象銘柄についても当局の提案が適当。

・当局の提案に賛成。BEIは現状拡大方向にあるが、少し前のタイミングでは消費減税の懸念や補助金に対する警戒感、また一時的な物価の引き下がりに対する警戒感からある程度大きく売られた局面もあった。また、実際のインフレ期待に対してはボラタイルに動いており、流動性が悪い状況の中で過度に双方向に反応しやすい状況。
・現状のBEIの高まりについても、基本的には足元の円安や積極財政に対する海外勢の警戒感が強まっており、ファンダメンタルを自然に反映している状況。ただし、実際のインフレ期待に対する流動性プレミアムに関しては、特に前回の本会合から変わりはない。基本的には現状の投資家層の広がりという側面に関しても、一部の海外勢においては引き続き強いニーズが見られているものの、当社店頭では新規の顧客が買っているというよりは既存の投資家が買い増しているといった状況であり、投資家層の広がりが見られているという認識ではない。
・以上の点を考慮すると、現状の発行額及び買入消却額を維持し、引き続き様子を見るのが適切。

・市場へのネット供給額を増やすことによって、セカンダリー市場の流動性を回復することが重要な局面ではないかと考えている。目先、インフレ率が低下傾向にある中でもBEIは過去最高水準を更新しており、他通貨BEI対比でもアウトパフォームしている状況にあると思っている。インフレヘッジニーズの高まりによって、潜在的な買い手は増えてきていると認識しているが、セカンダリーの出合いが少なく、流動性が低いことにより、買いたくても買えないという投資家も出てきていると認識している。
・流動性がないことの要因は、ネット供給額が少ないことによるものと考えている。現在、当局による買入消却が200億円、日銀買入が500億円と毎月実施されるため、四半期でのネット供給額が400億しかなく、コロナ禍という特殊要因で大幅に減らした供給額を、少し元に戻す余地が出てきている状況ではないかと考えている。また、第Ⅱ非価格競争入札の再開の議論を進めることが可能な需給状況であると考えていると同時に、買入消却に関しても、現在の実施額を減額することが適当ではないかと考えている。オフ・ザ・ランの浮動玉はかなり少なくなってきていると思うため、買入消却を休止し、第Ⅱ非価格競争入札を復活したとしても、マーケットは十分耐えうる需給環境ではないかと考えている。

3. 令和8年1-3月期における流動性供給入札の実施額等について

〇令和8年1-3月期における流動性供給入札の実施額等について、理財局から以下のように説明を行った。

・流動性供給入札については、P.22に掲載のとおり、令和7年度発行計画において、最終的には「市場参加者との意見交換を踏まえ、市場環境や投資ニーズに応じて柔軟に調整」することとされており、前回9月の本会合では、皆様からのご意見を伺ったうえで、P.23に掲載のとおり、令和7年10-12月期の実施額について、残存15.5-39年ゾーンを減額し、残存1-5年ゾーンを増額した。

・令和7年10-11月期に実施した流動性供給入札の結果等は、P.24~P.26のとおりである。

・令和8年1-3月期の実施額等について事前に皆様にご意見を伺ったところ、一部の方から、残存15.5-39年ゾーンについては、「銘柄間のゆがみがみられ、需給が引き締まっている銘柄がある」ことから、残存15.5-39年ゾーンを増額してはどうかというご意見をいただいた一方で、多くの参加者からは、超長期のオフ・ザ・ランの需要が、カレント銘柄に比べ引き続き良くないとの声が聞かれ、現状維持とするのが適切ではないかとの声をいただいた。

・これらを踏まえた当局案はP.27のとおりである。現状通り、残存1-5年ゾーンを1・3月に7,000億円/回、残存5-15.5年ゾーンを毎月6,500億円/回、残存15.5-39年ゾーンを2月に2,500億円/回実施することを想定している。

〇出席者から出された意見等の概要は以下のとおり。

・流動性供給入札の残存15.5-39年ゾーンについて、これまでの超長期ゾーンの発行減額の効果もあり、一時期に比べると需給は緩やかに改善してきているものの、引き続きゾーンとして不安定な需給構造であるため、令和8年1-3月期においては、令和7年10-12月期に調整した各ゾーンの金額を維持する案に賛成する。そのうえで、来年度においては20年債、30年債の発行減額を行う前提で、同ゾーンの増額を希望している。超長期ゾーンのオフ・ザ・ランについては、流動性が低い中で投資家需要、証券会社のショートカバーニーズがある中、残存35年近辺はイールドカーブ上、相当程度割高な状況が継続している。市場において売買の機会があるということがプレミアムを縮小させるためには重要であり、流動性供給入札はそのための重要なツールであると認識しているため、今年10月より超長期ゾーンの需給の緩みに対応するために減額した1,000億円をカレント銘柄の発行減額に合わせて元に戻すことを希望している。

・当局の提案に賛成する。残存1-5年ゾーンに関しては直近増額された後、最初の入札が行われたが、概ね実勢水準での結果となっており、引き続きタイトな銘柄を中心にカバー需要は根強いものの、一方でスクイーズ気味に買わなければいけないような規模感ではなくなっている認識。したがって、現状維持が適当。
・続いて残存5-15.5年ゾーンに関しては、日本銀行によるチーペスト銘柄の減額措置の利用が進んできたことを受けて、需給のタイトさは本年を通してかなり緩和されてきた印象を受ける。また、ゾーン区分の特性上、入札当日のイールドカーブの形状によっては残存15年ゾーンが多く発行されるケースも散見され、長い目でみると超長期セクターの需給の重しになり得る上に、当社が必要と考えている平均発行年限短期化と逆行するため、現在の発行額が十分に市中で消化可能である一方で、増額する必要もないため、現状維持が良いと考えている。
・最後に残存15.5-39年ゾーンに関しては、2,500億円に減額された最初の入札では市場実勢対比かなり強い結果が観測されたため、セカンダリー市場でも一部(残存30年、35年)の超長期ゾーンのオフ・ザ・ランの需給がタイトな状態が続いていることから、これ以上の発行減額は難しいと考えている。一方で、そのような状況を受けて増額すべきと言う声が11月の本会合でも多く聞かれたが、増額は平均発行年限の短期化とは逆行する上に、9月の本会合で十分に議論して減額を決定したことを短期間で翻すようなことになれば、本会合における議論の質自体が問われてしまうと考えている。したがって、現段階では増額の必要性はないと考えている。

・中長期ゾーンの金利上昇に伴い超長期ゾーンも水準を上げてはいるが、7月に超長期ゾーンの発行を減額して以降、時間の経過とともに春から夏にかけての極端な動きは徐々に無くなってきていると思っており、実際に10年超のカーブ形状もレンジ内での動きとなっている。
・また、金利水準が上がってきたことにより、新規の投資家需要も増えていると感じている。一方でオフ・ザ・ラン銘柄とカレント銘柄に関しては、かなり需給に偏りがあり、流動性の低下からリスク許容度の低下をもたらしているとも考えられる。
・また、ロークーポンのオフ・ザ・ラン銘柄からカレント銘柄への入れ替えの動きも継続しているが、投資家の中には単価が安い(単利が高い)ということでロークーポンの債券を嗜好する動きも見られ、セカンダリーでカバーすることが困難な銘柄も存在している。このように極端に流動性の乏しい銘柄については、流動性供給の果たす役割は大きいと考え、マーケット・メイカーのバランス・シートやセクター間のリスク削減は、リスク許容度や流動性の回復に大きく貢献すると考えている。
・2,500億円で実施された10月の残存15.5-39年ゾーンの流動性供給入札は、思ったよりも発行額が十分ではないといった印象を受け、また、40年債入札のある月とない月で超長期ゾーンの供給量に大きく差が出ることもあるため、当社としては残存15.5-39年ゾーンの流動性供給を減額前の3,500億円に戻すことを希望する。


4. 最近の国債市場の状況と今後の見通しについて

〇出席者から出された意見等の概要は以下のとおり。

・足元の国債市場の状況について、政権が代わって補正予算の規模が大きかったこと、また、これを踏まえた来年度当初予算も相応の規模になることが意識された可能性があり、発行増額懸念に加えて日本銀行の金融政策の正常化、中立金利に対する見方の変化によって、改めて日本国債のリプライシングがされているように見える。例えば、マーケット参加者がよく見ている2年先1か月の金利については、1.25%程度で推移していたものが1.5%近くまで上昇しており、ターミナルレートが上がっていくことが意識され始めてきているものと思われる。
・完全雇用の下、さらに財政政策によるプッシュがあると、インフレが跳ね上がってしまう可能性がある。一方で、日本銀行に関しては高圧経済戦略を意識してなのか、非常に緩やかに金融正常化しており、ビハインド・ザ・カーブに陥り、将来的に想定よりも大幅に政策金利を引き上げなくてはいけなくなるといったリスクが市場で意識されていると思われる。
・そのために非常に珍しいが、利上げ局面であるにも関わらず、例えば残存2-10年のカーブがスティープニングしているなど、教科書的な金利の動きにはなっていない。ただ、これらの動きについてもインフレが意識されているという観点で考えていくと、ファンダメンタルズからは整合性がある。
・今後の見通しについて、来週の日本銀行の金融政策決定会合において、植田日銀総裁が中立金利に対する見方について凄く上昇したとか、直ぐに中立金利まで引き上げないといけないといった強烈なタカ派的発言がない限り、マーケットのインフレ懸念を冷ますことは難しいと思っている。一方で、強烈にタカ派すぎる発言をした場合、市場が混乱し将来の利上げがしづらくなってしまうリスクもあると思っており、極めて難しいコミュニケーションが要求されている状況。
・来年度の当初予算が公表される際、新発債の規模だけでなく財投債(5,500億ドル投資)の対応や借換債の増額なども踏まえると、カレンダーベース市中発行額の増額をかなり意識せざるを得ず、どの程度の規模で落ち着くのかについて注目を集めていくだろう。
・足元の金利について、10年債は2%を超えないところで落ち着いているように見えるものの、いつ2%まで上昇しても全くおかしくない状況と思っている。

 

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