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国債市場特別参加者会合(第104回)議事要旨

 

日時 令和5年6月12日(月)16:00~16:40

場所 中央合同庁舎第4号館 第1特別会議室

内容 
1.令和5年7-9月期における物価連動債の発行額等について 

〇令和5年7-9月期における物価連動債の発行額等について、理財局から以下のように説明を行った。

・物価連動債の発行額等については、P.3のとおり、令和5年度発行計画では、1回の入札当たり2,500億円で年4回の発行としつつ、「市場参加者との意見交換を踏まえ、市場環境や投資ニーズに応じて、柔軟に発行額を調整」することとされている。また、P.4のとおり、買入消却についても、「市場の状況や市場参加者との意見交換も踏まえ、必要に応じて実施する」こととされている。本日は、7-9月期における発行額等について、御意見をお伺いするもの。

・4-6月期については、P.5のとおり、市場の状況や市場関係者との意見交換を踏まえ、5月に発行額2,500億円で入札を行う一方、買入消却入札を毎月200億円実施することとしたところ。発行入札及び買入消却入札の結果はそれぞれP.6、P.7のとおりである。

・流通市場の状況については、P.8、P.9のとおりである。この半年程度の推移をみると、BEIは低下する場面も見られたものの、足もとカレント債のBEIは、物価上昇率の高止まりや順調な入札結果を受けて、100bpsを超える水準まで上昇している。また、銘柄別の動きをみても、バラつきは引き続き大きいものの、全ての銘柄でBEIが大きく上昇している。

・こうした中で、皆様から事前に御意見を伺ったところ、全ての参加者から、需給はバランスしているため引き続き7-9月期における発行額と買入消却額については据え置きとすることが望ましいとの御意見が聞かれた。

・こうした経緯や皆様のご意見も踏まえ、P.10に当局の提案をお示ししている。令和5年7-9月期については、4-6月期と同様、2,500億円の発行入札を1回行うこととしつつ、毎月200億円の買入消却入札を行うこととしてはどうかと考えている。

・なお、買入消却の対象銘柄については、令和4年度と同様、カレント銘柄も含めた全銘柄とすることとしたい。ただし、8・9月については、過去の取り扱いに倣い、9月に償還を迎える17回債を除く、18回債から28回債を対象銘柄とすることとしたい。

・以上、物価連動債市場についての状況とそれを踏まえた当局案について御説明した。
 7-9月期における発行額等については、本日の会議内容も踏まえて総合的に判断することとしており、改めて皆様の御意見を頂戴したい。
 物価連動債市場の育成は、国債管理政策上の重要な課題と考えており、今後も入札等の状況・市況や皆様の御意見も踏まえつつ、慎重に検討・判断していきたいと考えている。

〇出席者から出された意見等の概要は以下のとおり。

・物価連動債については、新発債の28回債はBEIが100bps程度で発行され、現在は130bps程度という推移となっている。入札は堅調な結果に終わっており、物価動向にフォーカスが当たる中で、新発債の物価連動債も注目を集めていると考えている。
・28回債は短期的にBEIが急伸したが、オフ・ザ・ラン銘柄を見ると、BEIはおおむね横ばいで推移しており、物価連動債全体で需給が少しタイトになってきているという状況ではないと考えている。
・新発債の28回債はまだ発行が1回のみで、需給が少しタイト化していることから、BEIが大きく上昇していると考えており、物価連動債全体の需給バランスを確認していくためには、28回債がリオープンで発行される次の8月の入札と発行後の動向をよく見ていく必要があると考えている。そのためには、8月の発行額については現状維持が良いと考えており、当社としては当局の提案に賛成する。

・当社としては、2,500億円から500億円程度の増額が可能だと考えている。
・5月23日の物価連動債の発行入札は非常に強い結果で、国内外における投資家の裾野が広がっていると感じられた結果であった。
・また、新発債の入札が強い傾向は、昨年度に発行された27回債の初回の入札から継続しており、また、日銀買入オペによって買い入れられている銘柄も、既発債の比率が非常に高いことから、新発債と既発債の需給バランスを考えると、発行額を増やすことは可能だと考えている。

・4月中旬以降、日本銀行の金融政策決定会合の内容も踏まえつつ、特にカレントの二銘柄を中心にBEIが大きく上昇している形だと思っている。
・しかしながら、セカンダリー市場において、あまり出合いを伴わずに価格が形成されていることや、相応の金額を売却するには、当局の買入消却や日銀買入オペに頼らざるを得ない状況が継続していることから、引き続き流動性は十分ではないと考えている。
・また、現状のBEIの水準についても、一時期に比べれば相応に上昇してはいるが、国内物価の足もとの水準や今後の見通しを踏まえると、引き続き流動性が十分とは言えない状況が影響して、まだ割安な状況になっているのではないかと考えている。
・直近では、海外投資家による日本の物価動向や物価連動債への興味は、これまでよりも増しているという印象を受けているが、一様に流動性への懸念を示すことが多いと感じている。投資の入口・出口が限定されるということで、一定程度の投資家が物価連動債の投資に二の足を少し踏んでいるといった状況かと推察している。
・当社としては、物価連動債の安定的な消化のためには引き続きマーケットの一段の活性化が必要な段階であり、足もとの発行と買入のバランスを崩すことは得策ではないと考えているため、当局の据え置きの提案を支持する。


2.令和5年7-9月期における流動性供給入札の実施額等について

〇令和5年7-9月期における流動性供給入札の実施額等について、理財局から以下のように説明を行った。

・流動性供給入札については、P.12のとおり、令和5年度発行計画では、
(1) 令和4年度と同様残存1-5年ゾーンについては3.0兆円、残存5-15.5年ゾーンは6.0兆円、残存15.5-39年ゾーンについては3.0兆円とし、合計で年間12.0兆円を発行することを想定しつつ、
(2)最終的には「市場参加者との意見交換を踏まえ、市場環境や投資ニーズに応じて柔軟に調整」することとされている。
これを受け、本日は、7-9月期におけるゾーン毎の発行額等について、御意見をお伺いするもの。

・P.13のとおり、4-6月期においては、残存1-5年ゾーンについては、奇数月の5月に5,000億円、残存5-15.5年ゾーンについては、毎月5,000億円、残存15.5-39年ゾーンについては、偶数月の4月と6月に5,000億円の発行とした。これらの結果はP.14~P.16のとおり。

・こうした中で、7-9月期の流動性供給入札について、皆様から事前に御意見を伺ったところ、一部の参加者からは、日本銀行の国債補完供給の取扱いの変更等により、残存5-15.5年ゾーンの需給バランスは改善しているとの御意見が聞かれ、また、ごく一部の参加者からは、一部の銘柄の需要が高まっていることから、残存15.5-39年ゾーンの増額が適当との御意見が聞かれたものの、殆どの参加者からは、現時点では現行の発行額等を維持することが適当であるとの御意見を頂戴した。

・これを受け、P.17にあるとおり、令和5年7-9月期における発行額の当局案を作成した。残存1-5年ゾーンについては、奇数月の7月と9月に5,000億円、残存5-15.5年ゾーンについては、毎月5,000億円、残存15.5-39年ゾーンについては、偶数月の8月に5,000億円の発行としてはどうかと考えている。

・7-9月期における流動性供給入札のゾーン毎の発行額等については、本日の会議内容も踏まえて総合的に判断することとしており、改めて皆様の御意見を頂戴したい。

〇出席者から出された意見等の概要は以下のとおり。

・当局の提案を支持する。各ゾーンで需要の偏りは見られておらず、流動性供給入札の結果についても、資料P.14のとおり、安定的に推移している。確かに、15.5年超ゾーンの一部の銘柄で需給がタイトになっているが、ゾーン間で発行額を移すほどの需要の偏りではないことから当局の提案を支持する。

・当局の提案を支持する。前回会合で話題になった10年債の需給の引き締まりについては、日本銀行の補完供給の要件のタイト化に伴う減額措置の利用によって、市場の予想を上回る改善を見せ、イールドカーブはスムーズ化した。店頭でのアクティビティを見ても、バランスが取れてきている状況のため、早急な対応の必要性は前回会合時に比べると大きく下がったと考えている。ただし、引き続き10年以下のセクターを中心に需給の引き締まりは見受けられるため、流動性供給入札全体の増額が望ましい状況は変わらないが、現状では、早急な対応は必要ないので、当局の提案の現状維持が適切であると考えている。


3.最近の国債市場の状況と今後の見通しについて

〇出席者から出された意見等の概要は以下のとおり。

・3月中旬以降、金融不安の高まりから欧米金利が低下し、それに伴う連れ安という格好で、10年国債利回りは3月9日を最後に0.5%を見ておらず、指値オペも3月13日から応札は0となっている。日本銀行の補完供給の減額措置もあって、イールドカーブの歪みも修正された。日本銀行の債券市場サーベイの5月調査では、債券市場の機能度の現状DIは過去最低だった2月調査からは改善したが、その水準は、マイナス46と大きなマイナスであることには変わりはなく、道半ばという状況。量的緩和とイールドカーブ・コントロールという政策が続く限りは流動性の大きな改善、回復といったものは望めないというのが正直な印象である。
・今後の見通しに関しては、大きな鍵になるのは、日本銀行の金融政策及び米国の経済・金利の行方の2点に絞られる。7月の金融政策決定会合でイールドカーブ・コントロールの修正が行われるという予想は少なくなく、幾つかのアンケート調査を見ると3割から4割近くが期待感を含めてイールドカーブ・コントロールの修正を予想している。個人的には、物価見通しの上方修正が必至の展望レポートの公表と同時にイールドカーブ・コントロールの修正を行うと、マーケットはマイナス金利政策の解除を含めた正常化への第一歩という風に捉えやすく、利回り上昇が大きくなるリスクが高いのではないかと思っている。実際、昨年12月20日の10年国債利回りの変動幅の拡大という修正に関しても、表面的とはいえ、その背景として挙げられたのは債券市場の機能回復であった。従って、6月、7月の政策修正はないのではないかと思われる。
・欧米のインフレ圧力は強く、FRB・ECBは市場のコンセンサスよりも引き締めの度合いを強めるのではないかと思っている。今後、欧米の景気後退色は一段と濃くなり、それが日本銀行の政策修正の可能性を減じることにつながる。実際に日本銀行がどう動くかは別にして、このような欧米の環境が円金利全体の低下要因になる。
・このような外部環境を踏まえ、日本銀行の政策修正によって利回りが上昇する局面で日本国債を購入しようと身構えている最終投資家は多いのではないか。銀行は預貸ギャップが再び拡大しているという状況にあり、生保も昨年度は超長期債を買い控え、外債を大きく売り越したという状況にある。このため、政策修正が当面ないと投資家が判断した際には、何処かで一気に利回りが下がっても不思議ではないと思っており、そのタイミングとして、今週16日が一つの候補になる。その次は、7月28日であるが、ここまで待つと今年度になって4ヵ月経過することになるので、最初の四半期を終える前の今月の方が有力かと思っている。

・イールドカーブは全般的にスムーズな形状になっているが、それは、日本銀行の金融政策に対する見方だけではなく、オペの運営方法、10年をピンポイントで支えていたところからイールドカーブ全体、特に超長期債を含めて大量の買入を行っていることによって支えられている側面がかなり大きいのかなと考えている。国債補完供給の利用がまだ高止まりしているところから見ても、市場の需給環境、流動性はまだ日本銀行に頼っている部分が多く、その意味で脆弱な環境が続いていると考えている。
・金融政策の先行きについて、据え置きというイメージが市場では強まっていると思うが、一方で、内外金利差から来る足元の円安が加速するということが目先のリスクだと考えており、その点で、日本のファンダメンタルズを見ている時間よりも海外がどれだけ動いてしまうのかといったところが目先の焦点となってくる。先週、豪中銀及び加中銀が利上げを再開しており、それほどインフレが粘着的であるということが足元幾つかの国で観測されている。これが米国にも適用されるとすれば、今後、今の市場が織り込んでいるよりも高い金利水準に至り、それがより大きな円安圧力になる可能性もある。来年以降の日本のインフレのスティッキネスがどうなるのかという点については、日本銀行としては、今そこをしっかり精査したいというスタンスだと思うが、思った以上に加速しないかどうかといった部分も市場にとって非常に重要な要素になっていくと見ている。

・足元、日本国債は落ち着きを取り戻しており、長期金利は50bpsを下回った形になっている。流動性も幾分改善していると思われる。だが、10年債は、40bps近傍からは買い進まれづらく、上値が限定的であることや、残存7年-10年のカーブがスティープニングした状態が修正されないということを踏まえると、特に7月以降の日本銀行の政策修正に対する警戒感がまだ根強く残っていると思っている。
・一部投資家による日本国債買いや、日本銀行の大規模な買入が継続していることで、円金利は低位で安定しているが、そのような機械的な買いの結果といえる現状の実勢は、投資家の金利水準感からは、乖離していると思っており、今後の政策次第では、突発的に上下に値幅が生じやすい環境にあるのではないかと思っている。

・4月会合で日本銀行が引き続き長短金利操作付き量的・質的金融緩和を続けるというコミットメントを公表し、一時盛り上がっていたイールドカーブ・コントロール撤廃の期待が萎みつつあるなかで、4月会合以降、市場のセンチメントはかなり変化したと考えている。多くの市場参加者が、金利上昇リスクはそれほどないと考え始め、どちらかと言えば、押し目買いの目線が低下してきている印象がある。
・日本銀行の強引な政策もあってショートポジションのリスクリターンもかなり悪化し、昨年来見られた短期的にショートで入ってきた海外投資家、特に常日頃日本国債を触っているわけではない人たちはショートカバーを余儀なくされ、そのまま日本国債市場から撤退していくというような状況になっている。売り仕掛けが難しい状況のなかで、昨年末から続いている大量の日銀買入によってオフ・ザ・ラン銘柄も含めて大量に国債が吸い上げられていることもあって、日本国債の需給はかなり好転している感じがする。ただ、日本銀行の政策修正期待は今後もずっと残ると思っており、日本銀行が望む理想的なシナリオとしては、賃金上昇を伴う物価上昇を確信できる数字を見たうえで、満を持して政策変更するというものだろうが、そういった状況は、早くてもこの秋以降、遅いと来年という時間軸だろう。円安が急加速することによって金融政策批判が高まったり、賃金上昇が確認される前にインフレが思った以上に加速するなどして、日本銀行にとって望ましくない形で政策修正を迫られるということがリスクシナリオとしてあると思っており、市場の動向には引き続き注意していく必要があると考えている。

・4月末に行われた植田新総裁の下での初会合は相応に市場の注目を集めていたものの、結果として、政策の調整等は行われず、また、現行の金融緩和環境が思った以上に長く続くのではないかとの見方が台頭したことによって、金融政策決定会合当日に大きくショートカバーが入った後も、5月、6月と、足元では高値圏でのもみ合いが続いている。
 こうした見通しがマーケットに浸透してくる中、5月以降、特に超長期ゾーンにおいては、投資家の押し目買い意欲が強まっている印象であり、欧米金利が上昇する局面にあっても、円金利、特に超長期ゾーンは底堅いという日が目立つようになっている。またこの間に日本株が大幅上昇したことによって年金勢がリバランスで株を売って日本国債を買うといったオペレーションが断続的に入っている様子であり、こうしたことも日本国債マーケットの強さの一因になっていると感じている。
・今後の見通しについては、植田総裁は直近の発言でも2%物価目標の達成にはまだ時間がかかると発言していることから、すぐに政策修正を行うということは望めず、暫くは狭いレンジでの取引が続きそうであるが、一方で、物価の見通しの上振れ修正で日本銀行の物価の見方が変化していくというのは十分にあると考えており、日を追うごとに政策修正への警戒感は高まってくると考えている。
 足元では、以前と比べて日本銀行の政策修正期待というのは高まっていないため、ひとたび、日本銀行が物価見通しを変更したり、物価見通しに対するニュアンスを少し変更したりするだけでマーケットに相応のインパクトがあると警戒している。

・年明けから継続しているイールドカーブ・コントロール修正への備えにより、市場のポジションが非常に軽い状況にあったなかで、4月末の金融政策決定会合がハト派的な内容となったことに加え、大幅な株価上昇を受けての株売り債券買いのリバランスフローもあり、GW明け以降は欧米債対比で非常に堅調となり、高値圏での推移が続いている状況。
 依然として、イールドカーブが比較的綺麗な形状をしていることから、日本国債は諸外国対比で魅力的なキャリーロールを提供している。また、市場ボラティリティの低下も相まって、5月に入ってからは、4月までは見られなかったリアルマネー勢からの日本国債買いが散見されており、これも先月の日本国債マーケットの底堅さに寄与していた印象である。
 ただ、年明け以降継続していた超長期ゾーンの金利低下基調は先月で一服したような状況。10年債の金利水準も0.3%台に定着せず、直近では再度0.4%台前半での推移となっている。金利低下局面で追いかけて買う投資家も徐々に少なくなってきている印象で、上値も重たいが下値も堅いという展開が繰り返され、相場の膠着感が直近では非常に強くなってきていると感じる。
・今後の国債市場の見通しであるが、6月金融政策決定会合については既に政策修正期待がゼロに近いような状況になっている印象。7月金融政策決定会合でのイールドカーブ・コントロールの修正期待は、展望レポートが発表されるタイミングでもあることから、2~3割程度は残り続けると思われるが、昨年度後半のような盛り上がりは少々考えづらい。
 直近も豪中銀と加中銀が予想外の利上げを実施しており、可能性は非常に低いと考えるが、仮に今週後半の各国中銀会合でFRBやECBが今夏での利上げ停止を示唆するような内容となれば、夏場に向けて一気にグローバルに金利低下が加速する可能性は排除できない。
 依然として金利低下方向がペインという認識であり、7月金融政策決定会合に向けて円安、米金利高、株高が進行し、それによりイールドカーブ・コントロール修正期待が高まり、再度10年債が0.5%に向けて金利上昇していくというリスクよりも、少なくとも上半期は政策修正が見送られるという認識が市場で強まり、夏場に向けてイールドカーブ全体で金利低下していくリスクの方が高いと現時点では考えている。

 

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問い合わせ先

財務省 理財局 国債業務課 市場総括係
電話 代表 03-3581-4111 内線 5700