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国債市場特別参加者会合(第103回)議事要旨

 

日時 令和5年3月22日(水)16:00~17:10

場所 財務省 第3特別会議室

内容 
1.令和5年度における固定利付債のリオープン及び入札方式について

〇令和5年度における固定利付債のリオープン及び入札方式について、理財局から以下のように説明を行った。

・翌年度の固定利付債のリオープン及び入札方式については、毎年3月の本会合において議論し、皆様の御意見を踏まえて決定することとしている。本日は、令和5年度における固定利付債のリオープン及び入札方式について皆様の御意見をお伺いするもの。

・10年債については、平成27年度以降、償還日が同一の国債を発行する場合で、かつ、前回債の表面利率と入札日の市場実勢の乖離が概ね30bps以内の場合には、リオープン発行としている。
 この点につき、事前に皆様から御意見をお伺いしたところ、一部の参加者から、金利急上昇時にも銘柄別の流動性を確保する観点から10年債も年間4銘柄の原則リオープン方式に変更すべきとの御意見を頂戴したものの、多くの参加者から、現行方式を支持する御意見を頂戴した。
 当局としても、市場が大きく変動した場合には新発債として投資家需要を喚起する余地を残しつつ、そうでない平時にはリオープンとなることで市場の流動性を高めることができるとの考え方から、令和5年度においても、現行方式を維持してはどうかと考えている。

・20年債・30年債・40年債のリオープン方式については、令和4年度は、20年債・30年債は年間4銘柄、40年債は年間1銘柄でのリオープン発行(原則リオープン発行)としている。
 この点につき、事前に皆様から御意見をお伺いしたところ、現行方式を支持する御意見を全ての参加者から頂戴した。
 当局としても、市場の流動性を高めることができるとの考え方から、令和5年度においても、現行方式を維持してはどうかと考えている。

・その他、現在は即時リオープン方式が採用されている5年債について、一部の参加者から市中流動性を確保する観点から10年債や20・30・40年債のようなリオープンルールとすべきとの御意見を頂戴したものの、多くの参加者からは現状の発行方式を維持することが適当との声がきかれた。

・次に、40年債の入札方式について、令和4年度は、発行増額を踏まえて利回りダッチ方式で様子を見るべきとの御意見や、依然他の年限と比較して遜色ない程度の流動性は見られていないとの御意見等を踏まえ、利回りダッチ方式を継続したところ。

・令和5年度の40年債の入札方式について事前に皆様から御意見をお伺いしたところ、一部の参加者から、令和4年度まで発行増額してきたことを踏まえ、市場の成熟度合いの観点から、価格コンベンショナル方式への移行を希望する御意見を頂戴した。もっとも、殆どの参加者からは、将来における価格コンベンショナル方式へ移行の必要性は認識しつつも、茲許のボラティリティが高い市場環境下では利回りダッチ方式であることの安心感が大きいこと等から、利回りダッチ方式を維持すべきとの御意見を頂戴した。

・当局としては、これらの御意見等を踏まえ、令和5年度においても、P.3のとおり、利回りダッチ方式を維持することによって安定的な消化を図ることが望ましいのではないかと考えている。

・その他、40年債以外の入札方式について、一部の参加者からは40年債と同様にボラティリティの高い市場環境下であること等を鑑みてダッチ方式または第Ⅰ非価格競争入札の限度額引き上げを希望するとの御意見を頂戴したものの、多くの参加者からは現状の発行方式を維持することが適当との声がきかれた。

・これらの御意見等を踏まえ、令和5年度におけるリオープンおよび入札方式については、P.3に当局の案をお示ししている。令和5年度における固定利付債のリオープン及び入札方式については、本日の会議内容も踏まえて総合的に判断することとしており、改めて皆様の御意見を頂戴したい。

〇出席者から出された意見等の概要は以下のとおり。

・10年債は日本銀行の保有割合が100%を超える銘柄も散見されるなか、大規模な日銀買入が続く限りにおいては流動性確保の観点から、原則リオープン発行が望ましいと考える。
・当社としては基本的にどの年限もダッチ方式の方がよいと考えている。市場のボラティリティという観点もあるが、それ以上に海外投資家からの入札参加をどのように増やそうかと考えた場合にダッチ方式の方がよいという結論に行きついた。海外投資家の立場から見ると、日本国債の入札はニューヨーク・ロンドンのいずれのタイムゾーンにも重なっておらず、価格コンベンショナル方式での入札の場合、マーケットに張り付いていないと基本的に応札しづらいので、入札そのものに参加するための障壁が非常に高いのが現状である。ダッチ方式であれば、海外投資家はマーケットに張り付いていなくても入札の札を預けることが非常にやりやすい。特に米国の投資家は複利でのダッチ方式の入札に親和性が非常に高く、ダッチ方式の方が入札における海外投資家需要の増大をより見込めるのではないかと考えている。

・現状では現行の発行方式が望ましいと考えているが、今後、金融政策の変更に限らず、茲許起きている金融市場の混乱等で金利が大きく上下する局面がないとも限らないため、そのような局面では20年債、30年債についても40年債と同様の利回りダッチ方式を検討する余地があると考えている。

・リオープン方式に関して、金利の変動幅が大きくなっているが、現状の方針が適切だと理解しており、全年限現状維持を支持する。一定の流動性を担保することが大事であり、恒常的にシングルイシューでの発行とならないことが望ましいと考える。
・40年債の入札方式に関して、価格コンベンショナル方式を支持する。発行額が徐々に増加していくなかでも安定的に消化されており、発行され始めてから15年ほどが経過していることを考えても他年限同様の発行形式にしてよいのではないかと考えている。

・10年債に関して、原則リオープン発行が望ましいと考えている。市場に流動性を提供する立場からすると、将来の日本銀行の金融政策の修正を見据え、市場流動性を担保する観点からも、可能な限りシングルイシューを排除するために原則リオープン発行が望ましいと考えている。
・同様に5年債に関しても原則リオープン発行が望ましいと考えている。今回の5年債入札ではなぜか市場実勢とかけ離れていたにも関わらずリオープン発行になっていた。市場実勢では0.1%クーポンでの発行だったので、何かしら配慮したのだと思うが、原則リオープン発行にしておけば、今回の5年債入札のようなことはなくなる。また、流動性を考えても5年債も原則リオープン発行が好ましいと考える。
・40年債の発行方式に関して、当社は以前から価格コンベンショナル方式に移行すべきとの意見であり、今もその意見に変わりはないが、移行するタイミングを逃してしまった感もある。昨今の市場のボラティリティが上がっている状況を考えると、今回は利回りダッチ方式でも致し方ないと考える。

・発行方式に関して、大規模な日銀買入が続いているなかで、流動性を確保するために現状のリオープン方式を継続してほしいと考えている。
・5年債についても10年債と同様に流動性を維持する観点から市場実勢利回りとの乖離が0.30%を超えなければリオープン発行とする形で発行してほしいと考えている。
・40年債の入札方式に関して、将来的な価格コンベンショナル方式への移行という議論は引き続き必要だと考えている。現状では投資家の拡大は続いているが、他年限対比の流動性は劣る状況であり、今の市場のボラティリティのなかで入札の際の安心感を考えると引き続き利回りダッチ方式を来年度も継続することが適切だと考える。

・リオープン方式に関して、10年債は現状維持を支持する。市場実勢利回りとの乖離が0.30%以内であればリオープン発行、ということであるが、基本的にはこの状況下でQQE等が行われる前も含めて、ほぼリオープン発行になることが想定されていると認識している。また、投資家の意見として、原則リオープン発行よりはある程度簿価が100円に近い形での発行の方が望ましいといった意見が当時あったと認識しているので、そういった意見が変わっていなければ現状維持すべきではないかと考える。また、超長期債については、原則リオープン方式を希望する。
・入札方式に関して、40年債はダッチ方式を希望しているが、その他の年限に関しても可能であればダッチ方式を希望する。また、それが難しければ第Ⅰ非価格競争入札の発行限度額を増やした方がよいと考える。ダッチ方式に関しては、海外のボラティリティによるものだけではなく、より中長期的にみて海外からのオーダーを受ける際にアベレージのオーダーを受けやすいというメリットがある。また、1990年代に米国でダッチ方式に移行した歴史的な経緯として、いわゆるコンベンショナル方式の場合、大手の業者が高いところで買って締め上げをしてしまうという歴史的な不正行為が見られたことが挙げられる。今、そのような不正行為が起きているという話ではないが、コンプライアンス的な観点から見てもダッチ方式に移行していく方がより望ましいのではないかと考える。

・現行の発行・リオープン方式が望ましいのではないかと考える。10年債の市中流通残高が減少してきており、今後の市場環境の変化によって市場流動性に懸念が生じる場合には、流動性供給入札の拡充等で流動性を担保していくことが望ましいのではないかと考える。


2.令和5年4-6月期における物価連動債の発行額等について

〇令和5年4-6月期における物価連動債の発行額等について、理財局から以下のように説明を行った。

・物価連動債の発行額等については、P.5のとおり、令和5年度発行計画では、1回の入札当たり2,500億円で年4回の発行としつつ、「市場参加者との意見交換を踏まえ、市場環境や投資ニーズに応じて、柔軟に発行額を調整」することとされている。また、P.6のとおり、買入消却についても、「市場の状況や市場参加者との意見交換も踏まえ、必要に応じて実施する」こととされている。本日は、4-6月期における発行額等について、御意見をお伺いするもの。

・1-3月期については、P.7のとおり、市場の状況や市場関係者との意見交換を踏まえ、2月に発行額2,500億円で入札を行う一方、買入消却入札を毎月200億円実施することとしたところ。発行入札及び買入消却入札の結果はそれぞれP.8、P.9のとおりである。

・流通市場の状況については、P.10、P.11のとおりである。この半年程度の推移をみると、BEIは低下する場面も見られたものの、足元カレント債のBEIは概ね70bpsを挟んでの推移が続いている。

・こうした中で、皆様から事前に御意見を伺ったところ、一部の参加者からは、足元市場が不安定な中においては買入消却額を増額することが望ましいとの御意見を頂戴したが、殆どの参加者から、需給はバランスしているため引き続き4-6月期における発行額と買入消却額については据え置きとすることが望ましいとの御意見が聞かれた。

・こうした経緯や皆様の御意見も踏まえ、P.12に当局の提案をお示ししている。令和5年4-6月期については、1-3月期と同様、2,500億円の発行入札を1回行うこととしつつ、毎月200億円の買入消却入札を行うこととしてはどうかと考えている。

・なお、買入消却の対象銘柄については、令和4年度と同様、カレント銘柄も含めた全銘柄とすることとしたい。

・また、令和5年度における物価連動債のリオープン及び入札方式については、令和4年度と同様、年間1銘柄でのリオープン、価格ダッチ方式での入札としてはどうかと考えている。

・以上、物価連動債市場についての状況とそれを踏まえた当局案について御説明した。
 4-6月期における発行額等及び令和5年度における発行入札方式等については、本日の会議内容も踏まえて総合的に判断することとしており、改めて皆様の御意見を頂戴したい。
 物価連動債市場の育成は、国債管理政策上の重要な課題と考えており、今後も入札等の状況・市況や皆様の御意見も踏まえつつ、慎重に検討・判断していきたいと考えている。

〇出席者から出された意見等の概要は以下のとおり。

・当社としては当局の提案を支持する。投資家層の拡がりが現状期待できないばかりか、既発債のポジションを解消する動きに変化がないため、現状の発行額、買入消却額を希望する。

・当社は、買入消却を1回当たり100億円増額して、一時的に毎月300億円とすることを提案する。物価連動債については、グローバルなインフレ懸念の若干の後退や日本銀行の金融政策修正観測、足元の金融市場の混乱を受けて、当社店頭では国内外の投資家ともに売り優勢の動きが続いている。また、流動性もこのような環境下では大きく悪化している。BEIが安定しているという説明があったが、比較的低位で安定している状況で、足元のCPIが高まっている状況では、やや大きな乖離が見られ始めている。足元はリーマンショック時やコロナの時のような大きなクラッシュは顕在化していないが、流動性が低いこのような環境の下でリスクリダクション的な動きが加速すれば、その時がいつ来てもおかしくないと思う。そのような場合には機動的な対応を考えていると思うが、今の金融システムリスクや信用リスクが払拭された後も、日本銀行の政策修正観測が続き、流動性の改善が他の国債と比べて若干見られにくいと思う。そういったことから考えると、予防的に、一時的にこのタイミングで買入消却額を100億円増額して、物価連動債に対するコミットメントを明確化しておくことはひとつ検討に値すると思う。

・基本的には当局の提案に賛同する。現状の物価連動債に関して、日本相互証券の板上で気配がまともに立たず、入札を見ても基本的には投資家層の拡大が見られない。また、昨年末の日本銀行の政策修正後、日本のBEIが下がったが、結局は海外のBEIに連動して動いており、おそらく日本の物価を見て投資している人は少ない。あくまで海外の調整弁に使っている感じが拭えないため、中長期的に課題があると感じている。一方で、ここで買入消却額を増やすと供給よりも買入が多くなる状況になり、さすがに需給の面から見てもそこまでするほどではないと考える。
・日銀買入や買入消却入札が徐々に流れない結果となっており、去年の11月以降、投資家のポジションも整理されている可能性もあるため、一旦今回は現状維持としておき、新年度になってから新たな動きがないか確認し、発行額、買入消却額の規模を検討してもよいと思う。



3.令和5年4-6月期における流動性供給入札の実施額等について

〇令和5年4-6月期における流動性供給入札の実施額等について、理財局から以下のように説明を行った。

・流動性供給入札については、P.14のとおり、令和5年度発行計画では、
(1)令和4年度と同様残存1-5年ゾーンについては3.0兆円、残存5-15.5年ゾーンは6.0兆円、残存15.5-39年ゾーンについては3.0兆円とし、合計で年間12.0兆円を発行することを想定しつつ、
(2)最終的には「市場参加者との意見交換を踏まえ、市場環境や投資ニーズに応じて柔軟に調整」することとされている。
 これを受け、本日は、4-6月期におけるゾーン毎の発行額等について、御意見をお伺いするもの。

・P.15のとおり、1-3月期においては、令和4年度発行計画で想定されていたとおり、残存1-5年ゾーンについては、奇数月の1月と3月に5,000億円、残存5-15.5年ゾーンについては、毎月5,000億円、残存15.5-39年ゾーンについては、偶数月の2月に5,000億円の発行とした。これらの結果はP.16~P.18のとおり。

・こうした中で、4-6月期の流動性供給入札について、皆様から事前に御意見を伺ったところ、一部の参加者からは、需給が締まっている銘柄が複数みられることから、増額が適当との御意見が各ゾーンできかれたほか、ゾーン区分の変更や対象銘柄を絞るような方式を希望する御意見もきかれたものの、殆どの参加者からは、現時点では現行の発行額等を維持することが適当であるとの御意見を頂戴した。

・これを受け、P.19にあるとおり、令和5年4-6月期における発行額の当局案を作成した。残存1-5年ゾーンについては、奇数月の5月に5,000億円、残存5-15.5年ゾーンについては、毎月5,000億円、残存15.5-39年ゾーンについては、偶数月の4月と6月に5,000億円の発行としてはどうかと考えている。

・4-6月期における流動性供給入札のゾーン毎の発行額等については、本日の会議内容も踏まえて総合的に判断することとしており、改めて皆様の御意見を頂戴したい。

〇出席者から出された意見等の概要は以下のとおり。

・各ゾーン間で発行額を動かすのはそれぞれの需要があって難しいと思うが、一方で入札の方式を少し変更することで需給の引き締まりを改善できるのではないかと思っている。具体的には対象銘柄を絞って入札を実施することを提案したい。
・流動性供給入札の方式は、前日引値対比での入札ということもあり、特に足元のような市場のボラティリティが大きく、一日のカーブの動きが非常に激しい局面が続く中においては、カーブの形状が優先されるため、発行される銘柄及び量が市場の需給に鑑みて必ずしも最適な状況になっていない可能性があると思っている。日本銀行の積極的な対応も見られているが、カーブの歪みや価格発見機能の低下が仮に長期化した場合は、投資対象としての日本国債の信用低下に繋がる可能性もゼロではない。また、需給の引き締まりがより著しい銘柄が優先的に発行されるようになれば当局の立場からも発行コストの低減という意味で望ましいと考える。
・そのため、流動性供給入札の対象銘柄についてのアンケートを、入札の一週間前から一か月前など、短期的な市場の方向感に左右されないと思われる時期に事前に取り、対象銘柄を例えば10銘柄、20銘柄と比較的小さい数に絞ることで、落札銘柄がカーブの形状に依存する問題を多少なりとも軽減できると思っている。他方、対象銘柄を絞ると、対象にならなかった銘柄の追加発行の機会が失われることになるため、公平性という観点で議論の余地があると思うが、流動性供給入札の効率的な運用という意味では検討する意味はあると思う。

・当局の提案を支持する。発行ゾーン・発行額の分配、銘柄の選定方法について、現状のままでよいと思っている。まず各ゾーンの発行額について、残存1-5年ゾーンはこれまでの4,000億円から昨年増額されて以降、需給は均衡してきている。来期、需給逼迫要因は想定されず、現状維持でよいと考える。
・残存5-15.5年ゾーンの発行銘柄は当日のカーブの影響が非常に大きいが、日本銀行の大規模買入による需給逼迫銘柄の需要に下値では支えられ安定的に消化されている。カーブ全体で受けとめる余地が大きく、現状維持でよいと考える。
・残存15.5-39年ゾーンは、足元需給が好転し、上期対比で好調な結果が観測されている背景には、日銀買入額の増額や期末要因等があると考えている。令和5年度4月以降は期末需要が落ち着く蓋然性が高く、現状維持がよいと考える。
・対象銘柄については、公平性の観点から、銘柄を必ずしも事前に限定する必要はなく、広く需要を募っていくことが望ましいと考える。

・残存5-15.5年ゾーンを1,000億円増額して月6,000億円にし、残存15.5-39年ゾーンを1,500億円減らして月3,500億円にするのがよいと考える。昨年、超長期ゾーンを対象とした流動性供給入札の倍率が低かったように、4月からは生保の買いニーズが明らかに減るため、その分を追加発行のニーズが高い残存5-15.5年ゾーンの発行額を増やす形で需給のバランスを取った方がよいと考える。
・区分及び対象銘柄は追加発行する銘柄の候補を絞って、本当に需給がタイトで追加発行しなければいけない銘柄が追加発行されやすい状況にするべきだと考える。現状のルールだと、前日の引値が甘かった銘柄や当日のカーブ形状にかなり影響を受けてしまい、追加発行しなければいけない銘柄が発行されないことが多い。そのため入札において買いたい銘柄を事前にアンケートで募って10銘柄程度に絞って入札を行うのがよいと考える。

・現状の市場におけるニーズと発行総量は概ね見合っていると考える。その中で強いて言うと残存1-5年ゾーンは需給がタイトになる局面も散見されている。そういった意味では年間発行総額を12兆円程度としつつ、残存1-5年ゾーンの発行額を隔月5,000億円から6,000億円に1,000億円増額することも考えられる。
・発行年限区分は、可能であればもう少し増やしてもよいのではないかと考える。昨今、特に超長期ゾーンの一部年限で、銘柄ごとの需給格差がかなり広がっており、かつ、それがかなり長い期間に渡って継続するという状況がよく見られる。そういった状況を解消し、よりマーケット・メイクをしやすくすることが流動性供給入札の大きな役割の一つと考えている。残存15.5-39年ゾーンの流動性供給入札は、2か月に1度と頻度が比較的少ない一方で発行年限の幅が広いため、カーブ形状も含めたマッチングが上手くいかないと、結局のところ需給がタイトな銘柄が上手くカバーされないまま、2か月持ち越しという状況が起きうると考える。それを解消するためにも、もう少し年限区分を細分化し、よりタイトな銘柄がカバーされやすい状況を作ることは考え方の一つとしてあると思う。具体的には、例えば日銀買入オペの年限は流動性供給入札よりも細かく細分化されているので、全く同じでなくてもよいと思うが、その辺りを目線としながら考えていくのも一つの考え方かと思う。

・来期については、当局の提案に賛成する。残存5-15.5年ゾーンに関して、10年カレント銘柄の金利が0.5%に張り付いた際は、入札方式が被る日本銀行の指値オペと競合してしまい、特に、前日比金利上昇して流動性供給入札を迎えた日には、思った銘柄を思ったような結果で買えない状況が続いていた。茲許、10年金利が0.5%から離れたことによって、多少、状況が緩和されたと思うが、根本的な問題は解決されていない。そのため、思った銘柄を思ったような結果で買えない状況を回避できるように事前のアンケートにより銘柄選択することを国債市場特別参加者から当局に提案することに関して、非常に賛成である。残存15.5-39年のゾーンは足元、需給は非常に良好である。他方、ここ何回か、好調な入札結果が続いているが、10年カレント3銘柄のショートスクイーズに巻き込まれた投資家や、足元の金融市場の混乱に巻き込まれた投資家など、当該ゾーンに関しては特に海外投資家の比率が高いため、来期は応札姿勢が慎重になる懸念を個人的に持っている。流動性供給入札に関しては状況に鑑みて柔軟に対応するという文言が入っていることからも、そのような懸念すべき状況が起きてしまった際には、迅速にあるいは臨機応変に、残存15.5-39年ゾーンの発行額を残存1-5年ゾーンに移すなどの対応をしてもよいのではないかと思う。

・当局の提案に賛同する。日本銀行の大規模買入を受けて、かなり引けがタイトになっている銘柄があるが、マーケットの上下や日本銀行の対応などを受けて、ある程度ショートカバーが行われており、全ゾーンで入札はしっかりとした結果で終わっている。流動性供給入札の発行総額が決まっている中で、どこかの年限を増やして他の年限を減らすという変更をするほど、ゾーンごとの需給の逼迫感に差はないと考えており、現状維持で問題ない。


4.GX経済移行債について

〇出席者から出された意見等の概要は以下のとおり。

・発行方式に関して、入札方式を選択した場合、既存の国債入札の流れに沿うことで、非常にスムーズな発行が可能になるほか、システム投資の観点や、発行方式の持続性といった観点からも比較的ハードルは低いと考える。他方で、引受方式の場合、発行方式をどのタイミングで入札形式に移行するかといった点を含め非常に多くの論点をクリアしなければならず、時間軸での制約などを考慮すると、入札方式の方がクリアすべき課題が少ないのではないかと現状では考えている。
・他方、引受方式の場合、しっかりと需要を見極めた上での発行が可能であることから、安定的な初回発行を実現できるというメリットもあり、両者のバランスが非常に難しいと考えている。
・発行年限に関して、政策上、資金の償還期限が決められている中での選択になると承知している。その中で、グリーニアムを考慮すると、ある程度長い年限がよいと思う一方、偏り過ぎては、幅広い投資家を呼び込むことができず、需要が安定化しない恐れもある。最初は投資家層が複数跨るような10年や20年を中心に考えていくのがよいと思っている。
・準備期間に関しては、発行方式次第であると考える。既存のシステムを使えるのか否かという点の影響が大きく、発行方式の決定の早さによって、対応の時間軸が変わってくると思っている。
・また、例えば、発行までにシステム対応が間に合わない国債市場特別参加者がいた場合、入札義務の扱いなどテクニカルな論点もあり、システム的な対応可否についても前広に検討を進めていく必要があると思っている。
・最後に外部認証に関して、海外の発行状況を踏まえると、どの国を見ても概ね認証を取っているので、やはり認証についてはしっかり取得することが幅広い投資家を呼び込むという観点では必須であると考えている。

・年限に関して、20年以下での発行を念頭に置いているのであれば、生保が投資対象とする年限としてはやや短く、これから投資家層を探っていかなければいけないと思う。また、新しい債券であるため、どの程度グリーニアムがつくのか、流動性がどの程度あるのか、といったところもまだ不透明であり、そのような状況の中で、一回目の発行を入札方式にすると、場合によってはテールが出るのではないかと心配している。それならば、初回はしっかりと投資家のニーズを探ることができる主幹事方式・引受方式で実施する方がよいのではないかと考える。市場がある程度しっかり見える状況になれば、入札方式に移行していくというのがスムーズな対応ではないか。
・仮に資金使途の観点から、新たな年限での発行が必要ということであれば、対応は可能である。もし、そういった制約が特になければ、20年で一銘柄でも10年で一銘柄でも10年と20年を組み合わせるような形でも対応は可能と考える。

・仮に発行を入札方式で実施するならば、応札してくれる投資家を見つけてからでないと今のところ入札に参加できない。どれくらい流動性のある債券になるかわからないため、入札方式での発行になるとかなり時間をかけて慎重に投資家のニーズを探ってからでないと入札に参加しづらい。そのため、初回の発行方式としては、引受方式の方がより円滑に消化されるのではないかと考える。
・発行年限は、最も一般的な発行年限である10年から始めるのがよいのではないか。

・発行方式は主幹事方式がよいのではないかと考える。脱炭素の取組みが国際的なものであることを考えると、発行方式についても国際的に共通する要素を入れることで市場参加者のフォーカスを高めることができるのではないかということが一番強い理由である。
・当社の海外拠点でのグリーン国債の発行状況を調べたところ、独立した銘柄での発行が多い。また、シンジケーションを活用して、発行体がオーダーの発注先が誰なのかをブックビルディングを通して把握し、その上でより需要のあるグリーン投資家に対して戦略的に配分を行うことで安定消化やグリーンプレミアムを狙うといった事例が多く見られるため、そういったことを日本でも検討してはどうかと考えている。
・もちろん、コストや流動性の面、国債市場におけるシンジケーションの方式での発行がかなり久しぶりであるといったデメリットや実務上の困難があることは承知しているが、グリーン国債を通常の国債のミラー条件で発行し、かつ、交換プログラムを採用すれば、例えば、日銀のオペ対象にならないので買いにくいといった参加者の懸念等を軽減できると思う。
・また、年限については、20年のようなある程度幅広い投資家の参加が期待できる年限で発行する方がよいと考える。
・最も懸念すべきは、GX経済移行債の発行に注目が集まっていながらも、入札方式を採用したがゆえにリスク許容度の問題等もあって入札が不調に終わってしまうことである。そういった懸念はシンジケーション方式で避けることができるのではないかと思う。
・また、カーボンプライシングにより最終的に償還されるスキームを示すことで、財政再建の後退や債務拡大といった懸念を表明する国内外の市場参加者に対して、当局のコミットを間接的に伝えるよい機会になると考える。

・発行の方法に関して、既存の建設国債等の根拠法と混ぜて発行するのではなく、GX経済移行債単独での発行を希望する。一部投資家は、ESG債への投資目標比率を掲げており、発行根拠法を混ぜた発行では当該国債が何%GX経済移行債に当たるのか分からず、こうした投資家のニーズ減退に繋がりかねない。そういった投資家のニーズに応えるためにもGX経済移行債単独での発行が望ましいと考える。
・発行年限に関して、グリーンボンドやESG債に対するニーズは各業態の投資家で強く、中期ゾーンから超長期ゾーンまでのどの年限で発行しても需要は旺盛であると考えている。しかし、初年度の発行規模が1.6兆円と少額なことを考えると、複数年限で発行することは難しいと考えており、それならば各投資家が一番触ることができる10年債を中心にその他の年限を考える方がよいと思う。
・発行方式に関して、入札方式よりも事前に投資家の需要、目線が見えやすい引受方式の方が発行に際しての安心感があるのではないかと考える。


5.最近の国債市場の状況と今後の見通しについて

〇出席者から出された意見等の概要は以下のとおり。

・足元では10年カレント銘柄のショートスクイーズで、大変だと思っていたところに、今度は海外での金融不安という新たな大きなテーマが加わった。恐らくFRBは市場の大勢に沿うような形で25bpsの利上げを決定することになるだろう。しかし、個人的には、今後のことを考えると、FRBにしてもECBにしてもインフレ退治の利上げはこれからも続けていく可能性が高いと思っており、それは金融不安の再拡大といったリスクと背中合わせだと考えている。
・そのような環境下で今週、日本銀行は二人の新たな副総裁が、来月には、植田新総裁が就任となる。新たな体制に対して、我々、債券・国債市場関係者は、イールドカーブ・コントロール政策の修正や撤廃を期待する向きが多いと察するが、そこに一定の影響を与えるのが、海外の金融不安であることは間違いない。欧米金利が下がれば、それが日本銀行の政策修正を助けるという見方が可能である一方、金融不安が強くなり、FRBが利下げに転じると、日本銀行の選択肢もなくなることが考えられるため、来年度当初から今まで経験してきたなかでも、極めて不透明感の強い市場環境になると言わざるを得ないと思っている。

・足元の国債市場に関して、日本の動きが諸外国と比較しても、かなり突出していたという認識を持っている。それだけ、日本銀行の金融政策変更期待というものが市場に強く織り込まれており、それゆえのショートカバーも大きかったことから、このような値幅に繋がっていると理解している。
・今後に関して、グローバルに見られているリスクオフの波及がどこまであるのか、その上で、実体経済がどうなのかという点が、当然ながら一番のポイントではあるが、それを踏まえた上で、日本のインフレ率が長い目で見たときにゼロに一気に戻っていく訳ではなく、従来よりも高めに推移していくという期待感があるなかで、金利も相対的に下がりにくい市場環境なのかなと考えている。
・最近のような過度な動きは困るが、市場としては動きがあること自体は非常に好ましく、ここ数カ月は国内外問わず多くの市場参加者の興味が戻ってきたという感覚を持っている。
・しかしそうしたなかで、情報の非対称性であったり、直近の5年債入札のクーポン設定のように急にルールが変わったりといった一部理解しにくいことが多く起こっていると思う。
・将来的に、市場の関心度を高く保つためには、ルールがはっきりとしていることが非常に重要ではないかと考えている。

・日本の金融政策には、引き続き国内外から高い関心が集まっていると思っており、当社店頭でもこの数ヶ月、新しい顧客が参加してきている状況。外部環境がどうなるかということは確かに分からないが、少なくとも現状は、腰の入った買いというよりはショートカバーが主導している状況であり、本年内のイールドカーブ・コントロールのレンジの再拡大や撤廃を想定する見方は引き続き根強いと考えている。
・債券市場サーベイでも示されているが、流動性が低位に留まっている現状の環境下では、金利が上昇するときも非常に速いスピードで売られていく可能性があると想定している。カーブの歪みや個別の銘柄間の差違については、引き続き今の状況が継続する可能性が高いと考えている。そのため、既に色々とサポートをしていただいているが、マーケット・メイクがしやすい環境を当局には希望している。

・3月の日銀金融政策決定会合が現状維持だったことを受けて、政策修正を見込んでいた短期筋のショートポジションがカバーされていたところに、米国発の金融不安に端を発するリスクオフセンチメントの高まり、それに伴った欧米金利の急低下に追随する形で、円金利も更に一段と低下することとなった。
・昨年12月の金融政策決定会合でイールドカーブ・コントロールのレンジ拡大がされて以降、本年4月から始まる日銀新体制の下、レンジが再拡大、ないしは撤廃されるといった、更なる日本銀行の政策修正が早晩実施されるだろうという見方が市場で半ばコンセンサス化していたことから、欧米金利が特に低下する局面にあっても、円金利はそこまで追随して低下することなく、これまでは均衡していたが、今般の動きを受けて、そうした日本銀行に対する見方が市場でも変化していると感じている。
・今後の展開としては、4月から始まる日銀新体制の下で、再びイールドカーブ・コントロール等の修正を見込むような取引が活発化して金利上昇方向に行く見方と、一方で欧米の利上げ局面が終了ないしは早期利下げ局面入りする、また今般見られたようなリスクオフ等から来る金利低下要因とが綱引きするような形で、円金利もボラティリティが高止まりしながら上下すると考えている。



 

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問い合わせ先

財務省 理財局 国債業務課 市場総括係
電話 代表 03-3581-4111 内線 5700