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日時 令和6年11月27日(水)10:00~11:25

場所 財務省 第3特別会議室

内容 令和7年度国債発行計画の策定に向けた現状と課題について

〇令和7年度国債発行計画の策定に向けた現状と課題について、理財局から以下のように説明を行った。

 

・本日は、「令和7年度国債発行計画の策定に向けた現状と課題について」を議題としているが、まずは、令和6年度補正予算への対応について、現在の検討状況をご共有したい。

・資料1ページ目は先般閣議決定された経済対策の概要であるが、その財政規模は前年度並であり、この裏付けとなる補正予算が近いうちに閣議決定される見込み。


・その中では、新規国債の追加発行が見込まれるが、この令和6年度補正予算への国債発行計画における対応に関し、「前倒債発行予定額の活用により対応可能であるとの見込みのもと、短期国債を含めてカレンダーベース市中発行額の増発はない」とする市場の見方があることを承知している。


・他方、資料3ページ目のグラフに示したように、短期国債については、為替介入に伴い6月以降減額してきている一方で、需要面については、元々の投資家層に加えて、今年3月のマイナス金利政策解除以降、それまで投資を控えていた先が短期国債による運用を再開したこともあり、かなり需給が逼迫した状況にあると認識している。

 ・このため、補正予算における新規国債追加発行への対応においては、足もとの市場動向を踏まえて、短期国債市場の状況への手当てをすることも念頭に総合的に検討しているところ。

・令和7年度国債発行計画の策定に向けた検討の現状として、まずは、「国の債務管理に関する研究会」における中長期的な議論についてご説明する。

 

・日本銀行の金融政策の変更や国債買入れの減額計画等により、国債市場を取り巻く環境が大きく変わっていく中で、中長期的に調達コストを抑制しつつ、確実かつ円滑な国債の発行を実現するために、どのような取り組みが求められるかを検討したもの。各主体ごとにニーズや投資動向が異なることから、各主体別に検討いただいた。

 

・資料4ページ目は6月の「議論の整理」の概要。資料5ページ目は「議論の整理」を踏まえ、左側に「今後の取組の方向性」を、右側に「現在の検討状況」を示す形でまとめ、10月の研究会においてご報告したものである。

 

・まず、「1.各投資主体の国債保有の促進」について。銀行については、発行年限の短期化や変動利付国債の発行等、市中に供給する金利リスク量の縮減を図る対応も必要になっていくことが考えられるとされた。

 

・発行年限に関しては、今後の市場動向や投資家等の意見も踏まえ、年限別の発行額を検討していく。変動利付国債に関しては、市場関係者等へのヒアリングを行い、短期金利に連動したものに対しては、市場環境次第で一定のニーズがあることを確認できたため、発行する場合の商品性等に関して検討中としている。

 

・生保・年金については、生保の規制対応の進捗等を踏まえると、中長期的に生保の国債保有額が大幅に増加していくという展望は見込み難いことを踏まえ、これまで発行額を増額あるいは維持してきた超長期債について、実際の投資動向を注視しつつ、年限別の発行額を調整・検討していく。

 

・個人投資家等の更なる保有については、有効な購入促進策や国債を組み込んだ投資信託の動向について情報収集を行い、今後の取組を検討していくとしているが、発行当局のみで実現できるものではないと考えており、国債を組み込んだ投資信託が今後増えていく中で購入促進策をどうするかということになるので、証券会社など関係者とともに今後の取組について腰を据えて検討していきたい。

 

・また、非営利法人や個人経営的な未上場法人等において元本割れしない国債へのニーズがあるという声も聴いているところ。これを踏まえ、個人以外の主体も購入可能な元本割れしない国債を発行する場合の商品性等に関して検討中。

 

・海外投資家については、クライメート・トランジション国債を含めた国債のIRに御協力いただける証券会社12社を「JGBGXプロモーター」として7月末に公表している。各社と意見交換を実施の上、個別面談やセミナーといったIR活動を開始したところ。

 

・「2.市場の流動性・機能度の維持・向上」について、国債先物取引が円滑に機能するよう、受渡適格銘柄の流動性に留意すべきといった御指摘も頂いたところ、流動性供給入札について、8月から残存5年超15.5年以下のゾーンの発行額を増額する形で調整しているほか、日本銀行金融市場局からも、1016日に「チーペスト銘柄等に係る国債補完供給の要件緩和措置の継続について」という文書を発出して、対応いただいているところ。

 

・以上が国の債務管理に関する研究会の議論の説明となる。こうした中長期的な今後の取組の方向性のもとで、市場動向やPD及び皆様の御意見を踏まえ、令和7年度国債発行計画における各年限の市中発行額をどのように調整していくのか、検討していきたいと考えている。

 

・ご意見を伺うにあたり、令和7年度の国債発行総額は現時点では未定だが、参考として、資料6ページにおいて、「内閣府中長期試算に基づく国債発行額の将来推計」をお示ししている。

 

・これは令和7年度国債発行計画上の数字と必ずしも対応するものではなく、また、令和6年度補正予算への対応によって変動し得るもの。このほか、発行総額が仮に一定だとしても、日銀の買入減額により、日銀以外の主体による実質的な市中消化・保有分は増加することに留意が必要である。

 

・その上で、来年度発行計画策定に関し、昨日のPD会合においていただいた御意見を共有申し上げたい。

 

・まず、超長期ゾーンのうち、40年債については、生命保険会社の規制対応の進捗等による需要の減退を踏まえ、減額が適当との意見が多く聞かれた。減額の時期については、一部に令和6年度内からの先行減額を求める意見もあったものの、来年度からの減額が適当との意見が多く聞かれた。30年債については、40年債と比べれば需要の継続が見込めるものの、減額が適当との意見が聞かれた。

 

・長期・中期ゾーンについては、総じて、預金取扱金融機関による追加的な投資需要が見込まれるとして、増額余地があるとの意見が聞かれた。

 

・短期ゾーンについては、3か月物を中心に、旺盛な需要を踏まえ増額を求める意見が多く聞かれた。6か月物においてTBの発行を増額させ、FBの発行を3か月物に移すことで、3か月物の需給逼迫を改善してはどうかとの意見もあった。

 

・流動性供給入札のうち、残存15.5-39年ゾーンについては、仮に40年債・30年債の減額を行う場合には増額を行うことも考えられるとの意見があった。また、一部銘柄について市中残高が少ない状況を踏まえ、流動性確保のため、残存5-15.5年ゾーン及び残存1-5年ゾーンについては現状維持または増額を希望する意見が聞かれた。

 

・当局からの説明は以上となるが、令和7年度国債発行計画における各年限の発行ロットについて、皆様からいただく御意見を踏まえ検討していくこととなるので、本日は活発に議論いただけると幸いである。

 

・なお、資料p.8-34は参考資料である。適宜参照願いたい。

 

○理財局による説明の後、吉野直行座長より、出席者に対して以下のとおり質問があった。


・マイナス金利政策下で購入していた国債は、足元の金利上昇に伴い評価損が生じたとみているが、当時を振り返り、金利上昇リスクをヘッジするために有用な方法があったのか。

・これから徐々に金融政策が正常化することに伴い、預金や保険金、年金といった国債購入の原資にはどのような変化が生じ、その変化がどう影響を及ぼすと考えているか。

・今後、どのような年限の購入を検討しているか。既存の国債の他、新たなニーズが出ると思われる新商品のアイディアはあるか。

 

○出席者から出された意見等の概要は以下のとおり。

 

・基本的な考え方として、各年限の需給がバランスすることが適切なイールドカーブの形成や国債の安定消化につながると考えている。投資家として、投資環境を安定的に魅力ある市場にしていくという観点からも、需給を考慮した発行額の増減調整をお願いしたい。

・足元の市場を見ていると、超長期ゾーンで40年債から順番に減額するのがよいと考えている。逆に中期・長期ゾーンについては、金利が上昇して来れば、当社としても魅力的なゾーンになるため、5年債と10年債を増額、若しくは他のゾーンより相対的に増額する余地がある。T-Billについて、3か月物は当社でも担保としての利用ニーズがある一方、足元では3か月物の金利がかなり低いことから1年物を購入している。3か月物を増額し、需給バランスを改善していただきたい。

・当社は、日本、米国、欧州を中心にデュレーションを取りながら投資をしていくという債券運用を中心とした機関投資家である。日本国債については、マザーマーケットであり、将来的にもポジティブ・キャリーが期待できると見ているため、今後はしっかり投資していきたい。

・今後、日本の金利環境が正常化されていく過程で、ボラティリティも上がっていくと見ているため、金利リスクの取り方には慎重に取り組むつもりである。

・日本の金利はいい形で上昇していくと見ており、株式と一セットで国債にも投資していきたいと考えている。購入する国債の年限は、10年債をベースに残存5年や7年ゾーンで利回りが乗ってくれば、より投資が行いやすい。

・安定消化という観点においては、株式市場と同じだと思うが、海外投資家がしっかり参入できることが重要であり、それにより日本の債券市場が活性化されていくと考えている。

 

・イールドカーブ上、5年、10年ゾーンの金利が低く、超長期ゾーンの30年、40年が大幅に高くなっている。昔の利上げ局面と比較して、イールドカーブが立っていることを鑑みると、30年債と40年債は減額、5年債と10年債は増額が理にかなっている。投資家目線では、今後、追加利上げが行われるのであれば、残存10年以下、可能であれば5年以下のゾーンで投資を進めていきたい。20年債はアセット・スワップのスプレッドの拡大が続いていることから、需要が少ないと思われる。当社の業界においてこれまで20年債を購入していたのは事実であるが、今後は購入額が減少すると考えると、若干減額する余地がある。T-Bill・3か月物については、現在も金利が低すぎるため、投資ができておらず、購入したくてもできない状況になっているため、増額して以前の1回の入札当たり5兆円まで発行額を戻してもよい。

・マイナス金利政策下で購入した債券の評価損の発生については、利上げ局面では仕方がないと思っている。当社はポートフォリオ自体を縮小し、利上げ局面においても評価損のコントロールを行っていたこともあり、損失額は想定の範囲内であった。

・当社の運用原資は下部機関からの預金であるが、金利が上昇し、かつ株価が上昇するのであれば、下部機関は投資に向かうため当社の運用原資自体は減少する可能性が高い。一方で、マイナス金利政策下では投資自体を縮小していたため、徐々に投資額を復元していきたいと考えていることから、仮に当社の運用原資が減少したとしても、金利が上昇すれば、有価証券投資については、株価上昇とのバランスを見つつ増加させていく見込みである。

 

・国債発行計画における各年限の発行額については他参加者の意見と同様、超長期ゾーンはなるべく減額、需給がタイトな中期・短期ゾーンは増額の方向で調整してほしい。

・当社業態の立場から、運用資金の面で金利のある世界へ変わったことで預金流出への警戒感を持っている。預金流出は、運用資産の減少とともに金利リスク量を相殺するコア預金の減少に繋がるので、金利リスクテイクの余力が縮小する方向に警戒感を持つ銀行が多いように感じている。

・マイナス金利政策下では残存10年超の国債を相当量購入していたが、金利のある世界になりコア預金が減少していくような状況下で、金融機関の目線が超長期ゾーンではなく残存10年以下、投資可能な水準であれば5年以下の年限に短期化しているように感じる。

・金利上昇と同時に株価も上がり、同時期にコーポレート・ガバナンス・コードの見直しにより政策保有株式の解消が進んだ。そのタイミングで、株式の含み益を出すことができ、超長期ゾーンでの売却損をカバーすることが可能になったため、政策転換点においてはやむなしの環境だったと思う。

 

20年債は30年債及び40年債と同様、減額してもよい。中期・短期ゾーンは他参加者からの意見と同様、増額が望ましい。

・マイナス金利政策下から利上げ局面で生じた国債の含み損について、株式相場が堅調に推移していたことや政策保有株式の見直しの必要性があったという背景もあり、株式の売却益が出たタイミングで国債の損切りができたため、当社としてはちょうど良いタイミングで物事が動いたという印象。一方、株式の含み益を持たず、国債の売却損だけを計上した銀行も存在しているので、金融機関によって区々であると思う。

・預金の動きについて、今後相続がかなり進んでいくと考えられるため、地方銀行の預金が都市部の若年層へ流出するというような地方から都市への流出、通常の金融機関からネット銀行への流出が懸念される。特に東京から離れた地方銀行では、既にこのような現象が見られている。

・一般法人等向けの国債発行については、当社として興味深く一定のニーズはあると思料。

 

・利付債に関しては、マーケットの需給が比較的弱めの超長期ゾーンに減額の余地がある一方で、2年債・5年債については銀行のALM需要や担保需要から増額の余地がある。10年債についてキャリー収入とロール・ダウン効果の妙味から投資家需要が見込まれ、発行額については現状程度で良いものと考えている。

・当社では、ALM運用で残存10年前後を中心に、日本銀行の今後の利上げペースや中立金利にどのように持って行くのかを見ながら段階的に投資を進めていく。

T-Billについて、当社では担保ニーズとしてはあまり購入していない。金利水準で見ると、足元の需給がやや解消されてきているがタイトなため、現状維持ないしは増額が適当。

・マイナス金利政策下から金利のある世界に変わってきている。マイナス金利環境下で日本国債は超長期ゾーンにシフトしていたが、外国債や株式等の他の資産との比較でアロケーションする中でそれほど多く保有していた訳ではない。今後の投資動向はアセット・アロケーションの中で決まっていくものと思われる。一方で、日本経済が回復する中で他の事業が良好に推移しているところ、海外への直接投資等、それぞれどのように資本配賦するかは、IRRBB規制もあるが、他事業部門の動向による。資本配賦が増加するよりは現状維持程度と考えると、20122013年度ほどの割合まで日本国債を購入することは難しい。

・個人向け国債について、他国では商品設計で税制優遇等の購入促進策が導入されていると承知している。具体的な販売促進のアイデアはないが、一般論として、日銀買入オペを減額している中、個人投資家や海外投資家の保有比率は増加していくのが望ましいと考えており、投資家別の保有比率には注目している。最近では、米国債や独国債においても、量的引き締めが進む中でレバレッジ・アカウントの保有比率が増えている中で、年末年始にはレポ金利が上昇する等の動きが見られた。量的引き締めのペースが他国とは異なるので同じようになるとは思っていないが、マーケット動向については注視していきたい。

 

・令和7年度発行計画については、PD会合において出た意見のとおり(短期・中長期ゾーンの発行額を増額、超長期ゾーンの発行額を減少)と考える。

T-Billについては資金運用目的より外貨調達や日本銀行からの調達等の担保ニーズでの保有となっている。需給が引き締まった状況となっており、早急に対応してほしく、増額を強く希望する。

・イールドカーブ・コントロール政策の修正前から物価動向を分析し金利上昇に備えてきた。現物債の売却や金利スワップで金利上昇をヘッジしていたため、金利が上昇した場合にスワップを含めた損益がプラスになるポジションをキープしており、金利上昇によるネガティブ・インパクトはない。また、株式ポートフォリオも幾分か保有している。

・物価の今後の動向は、経済、特に賃金・物価動向は現在の労働需給を踏まえるとかなり不可逆かと思われるのでデフレには戻らないと思っている。ただ、足元、米国の次期政権の政策スタンスに不透明感が高いことはリスクである。メイン・ビューは、米国を中心に高い経済成長が続くことであり、物価はインフレ方向にリスクがあると考える。

・当社の株式ポートフォリオは国内が中心であったが、今後、米国を含めた株式投信の組み入れを検討する。日本銀行は来年度も段階的な利上げを続けると見ており、金利水準の調整が続けば、金利上昇に備えたヘッジポジションを活用しつつ、来年度後半に向けては5年債・10年債を中心に投資できるのではないかと見ている。

・日銀買入オペ減額のペースが緩やかな中、ペースが加速しない限り金融システムに与える影響は限定的と考える。金利上昇しているが、今後数年間でコア預金はさほど減少しない見込みであり、多少の投資余力はあると思われる。

・銀行サイドとしては国債に対して一定の担保ニーズがあるところ、現在当局が発行を検討している変動利付債は、現在のような利上げ局面において、IRRBB上の金利リスクを抑制できると見ている。需給の引き締まった状況において、T-Billに代替する担保ニーズを満たす商品として一定の投資ニーズがある。

・巷で減税に関する話題が出ているところ、間接金融の意見として、外貨調達の環境は現在良好であるが、日本国債の格下げが生じた場合には調達コストが大幅に上昇する。また、海外に進出している日本企業の調達コストにも直結するほか、そうした状況が続くと通貨安が生じる。既に生じているのかもしれないが、国民経済にも悪影響がある。日本国債の格下げはテール・リスクとして認識しており、格下げがないよう、既にやっていると思うが、財政規律への情報発信をお願いしたい。

 

・年限別の発行額について、超長期ゾーンを減額して短期・中期・長期ゾーンを増額する方向性に異論はない。

・当社の投資対象としては、基本的に増額を見込む10年債が中心だが、緩やかに利上げが進む中、ターミナル・レートの水準を見通しながら2年債と5年債にも投資していく予定であるため、増額を見込む年限への投資ニーズがある。足元、まださほどリスクを取っていないが、金利上昇に合わせてリスク・テイクする方向性で、ポジションを復元していくフェーズに入る。

・流動性供給入札については、チーペスト銘柄を含む残存5-15.5年ゾーンだけでなく、残存15.5-39年ゾーンも幅広いニーズを吸収できると考えられるため、投資機会の提供および市場流動性対策として、適宜調整してほしい。

・マイナス金利政策下の投資行動の振り返りとして、当社は2010年頃からかなりのスピードで国際分散投資を進めており、日本国債からかなりの量を海外に移していた。一方で、マイナス金利政策の長期化を背景に、同政策の実施期間中に償還した国債も多かった中、プラス利回りとしていた預貯金に対して見合うよう、ある程度の日本国債を買うのは仕方なかったと考えている。その後の金利上昇時の実際の対応について、国際分散投資に加え、国内株式にも投資を進めていたため、国内外での株価上昇で一定程度、金利上昇の影響を吸収できた。加えて、日本銀行の政策変更が極めて緩やかで、イールドカーブ・コントロール政策を一旦柔軟化した後6か月程度の猶予があったため、当社はより能動的な対応として、この間に大部分の売却可能な国債について売却を終えることができたため、その後の金利上昇はあまり気にせずに済んだ。今思えば何ができたかという点では、円安ドル高がかなり進んだため、結果論としては、外国株式だけでなくオープン外債の比率を上げるというような機動性があっても良かったと振り返っている。

・今後の投資原資の見通しについて、当社は高齢者層の預貯金が多いので、人口動態の影響を大きく受ける。相続によってそもそも預貯金自体が減少していくことに加え、足元はインフレの影響で、年金生活者が生活で使う決済性預金額が、この2年間でじわじわと減ってきているという状況。相続については、お金自体が動かず滞留したとしても、株式等リスク性資産にシフトする傾向もあり、全体的に預貯金の残高は減少傾向にある。預貯金の中身については、金利が無かった期間は普通預金に滞留しているものが多かったが、徐々に定期預金へのシフトが見られるのが足元の状況。

・今後購入が見込まれる国債商品について、当社で見えている流れとして、金利上昇局面で個人が変動10年の個人向け国債を有効に活用している。新規の商品というより、当面は同商品が魅力的なのではないか。

 

・金利リスク・コントロールの観点から来年度も40年債と30年債を主力ゾーンとして投資していきたいと考えている。一方で他の参加者からの指摘のとおり、同ゾーンはイールドカーブ上割安であり、また入札の不調も散見されるため、減額も理解はできる。仮に減額するにしても、行きすぎた減額によるスクイーズや、供給が足りないということにならないよう、配慮してほしい。流動性供給入札の残存15.5-39年ゾーンの増額や、発行を隔月から毎月にする、といった対応があれば投資しやすい。

・その他、中期・短期ゾーンについては他の参加者からの指摘のとおり、市場のニーズがあるという認識。

・マイナス金利政策下での投資行動の振り返りとして、当社は金利リスク・コントロールの観点でALM運用を重視しているので、同政策下でも30年債と40年債に投資していた。このスタンスは変わらないが、金利上昇を受けて含み損を抱えているところ。現在の金利上昇をポートフォリオの収益改善のチャンスと捉え、現在は株式の含み益と資本バッファーを活用して入替取引を実施している。今年度以降、株式・海外債券・オルタナティブに対し、マーケット環境を見ながら優位性のあるものに投資し、今後の含み益のバッファーを作っていく。このような入替取引を行っている中、残存15.5年超の新規国債の発行年限ではない、いわゆるオッド年限と言われているゾーンは流動性が低く、どうしても取引コストがかかってしまうため、流動性供給入札を活用しており、増額および毎月の入札を希望する。

 

・発行計画については他の参加者の意見と同意見である。短期ゾーンの発行額は需給を見ながら増額しつつ、超長期ゾーンについては一定の減額をすることについて賛成である。特に40年債には生命保険業界の中でも買う、買わない等対応がそれぞれ異なる状況ではあるが、一定の減額について問題はない認識。20年債と30年債は他とのバランスの中で決定されるものと思うが、業界として、発行額の維持を希望する。規制対応については、引き続き各社で状況が異なるものの、当社を含めニーズが見えており、ALM上の観点からも中心となる投資商品となるため、潜在的な需要が見込める。
・生命保険業界ではマイナス金利政策実施と同じ時期に規制対応として国債を買うニーズがあった。当時から日本国債の金利が低過ぎる印象を持っていたので、将来的な金利上昇局面に備えるため、国内外の株式やプライベート・エクイティ等様々な商品に分散投資を行っていた。分散投資については今も継続している。
・円金利が低かったことから、コスト割れを起こしてしまうこともあり戦略的な商品は一切出せない状況だった。今後ようやく金利が上昇していく世界が見えてきている中で、様々な新しい商品が生み出されるのではないかと業界として期待している。
・貯蓄から投資へという流れがあるため、その中で我々が競争力のある商品を出すことが出来れば一定程度のニューマネーを生み出せるのではないか。生まれたニューマネー見合いで日本国債に資金が回ると考えており、消化余力の拡大今後の商品力にかかっているのではないか。

・40年債の減額と中期・短期ゾーンの増額について他の参加者から多くの意見があったところ、当社も概ね同意。当社の投資の主戦場は20年債、30年債となるため、この年限の発行額は維持を希望。10年債と30年債とで利回り差が相当あり、他国と比べてもかなりレアケースとなっている。そこに海外からのニーズも聞かれており、投資機会があると考えている。生命保険業界としても主戦場としていることもあり30年債の発行額維持を希望。40年債はデュレーションがやや長すぎ、規制対応が終わった中では取り扱いしづらい年限となってしまっている。一方で、20年債、30年債については引き続き需要があると考えている。生命保険業界では一時払い終身保険等が売れてきており、当該商品の見合いに20年債や30年債を買っている印象。
・マイナス金利政策下の投資行動の振り返りとして、当社はALMの観点から20年債と30年債を中心にある程度の額を買っており、20年債の金利が30.4%まで下がった局面などではかなり購入を見合わせたものの多くの期間である程度平準的に買っていたところ。その後の金利上昇局面では、生命保険業界として緩やかな上昇であれば直ちに予定利率を上げることにはならず、むしろプラスだと考えている。評価損はあるが、他社と同様に株式やオルタナティブ資産、オープン外債等の売却益で相殺した上、ポートフォリオの改善のチャンスとして、利回りの低い債券から高いものに入れ替えている状況である。このため、金利上昇について当社として困っていない。
・金利上昇に向けた新商品については、一時払い終身保険が少しずつ売れてきており、今後さらに金利上昇となれば新しい商品が作りやすくなると思われるため、非常に期待している。
・一方で、当社は高齢者層の顧客が多く人口動態的な問題や、保険金自体も貯蓄性の保険から保証性の高い保険に移ってきている傾向もあることから、業界全体として、保険の販売は増やしたいと思料しつつも難しいのが現状。そのことから見合いとなる国債への投資についても現状維持が精一杯なのではないか。
・新しい国債の商品については、実際に商品化できるかは分からないが、NISAのような税制優遇が内包された形で、個人向けにGX経済移行債を販売することが良いのではないか。機関投資家の中では需要が中々難しいという声が聞かれるものの、何らかの優遇を与えることで、個人の環境意識の向上につながるのではないかと思料している。

 

・傘下に損害保険会社と生命保険会社を抱えており、前者の観点からは、災害等の有事においてはすぐ売却できるような環境、即ち流動性を重視しており、引き続きこの点が担保されている状況を望む。後者の観点では、ALMを重視。

・年限別の発行額については、需給バランスを見ていると超長期ゾーンを中心にある程度減額させても良い一方で、10年債・5年債・2年債は増額余地があると考える。

・マイナス金利政策下での投資行動の振り返りとして、その後の金利上昇による影響は勿論あったものの、海外資産やオルタナティブといった分散投資を進めていたため、分散先から得られる益によってある程度相殺している。従って、緩やかな金利上昇であれば特段大きな影響はないと考えている。

・今後の投資原資の見通しについて、基本的に保険料であるため、人口動態等を踏まえると今後大きく増加していくとは考えづらい。一方で、これまで相対的な魅力度からやむを得ず海外への投資機会を求めていた部分があった、仮に国内投資の魅力が今後上がってきた場合、それらの投資が国内に回帰していく可能性はある。

 

・来年度の国債発行計画について、特に30年債、40年債はイールドカーブ上、かなり割安な水準まで金利上昇しているところ、かつてのALMの視点からの需要が少し減退していると認識しており、同ゾーンの減額に賛成である。一方、残存10年以下については、年金のポートフォリオの中でも比較的流動性の高いゾーンであり、ニーズの強いところでもあるので、増額余地がある。

・基本的にどの年金も同様と思われるが、政策アセット・ミックスにより概ね国内債券の比率は決まっており、マイナス金利政策下においては、国内債券の期待収益率は年金の予定利率に比べてかなり低かった。その状況下において、当社は元々、日本国債の比率はかなり低めとしており、外貨建ての株式、債券のリターンが良くなった過程で日本国債への再投資等も実施していたが、マイナス金利政策解除後も特段問題は生じていない。

・今後の投資原資について、年金財政は成熟度がかなり高い状態にあるほか、どうしても給付超で積立金を取り崩していく状況であるため、日本国債への新たなニーズは中々見込みづらい。特に、確定給付企業年金は、政府の資産運用立国実現プランの策定以来、予定利率への上昇圧力も若干かかっているため、現状、日本国債投資の増額は想定していない。

・ただし、超長期ゾーンについては、潜在成長率、期待インフレ率の観点からもプレミアムのある水準まで金利上昇していると見ている。今後、リスク資産のバリュエーションの観点から、超長期ゾーンに資金をシフトとしても良いのでは、という議論は起きる可能性もある。

 

・国債発行計画については、これまでの議論に違和感はなく、超長期ゾーンは足元、やや需給が緩んでいるため減額、中期・短期ゾーンはタイトな状況なためやや増額に異論なし。

・アクティブ運用の観点では、超長期ゾーンが世界的に見ても、またヒストリカルに見ても割安な状況となってきている。理由は、日本銀行の利上げが道半ばであること、インフレが過去にない状況になっていることであり、この状況が超長期ゾーンへの投資を慎重にさせている。これらの要因が落ち着けば、ある程度の需要を見込めるとみる。

・マイナス金利政策下での投資行動について、年金は運用が対インデックスとなるため、大きな問題意識したことはない。一方、国内債券のリターンが下がっていく中で、残高増にはつながらなかった。一部、ヘッジ付き外国債券に移行する動きがみられたほか、リテール(投資信託)では、マイナス金利によって短期金融商品等を扱ったファンドクローズするきっかけとなった。今後、金利がプラスとなる中でこれらの商品が復活してくることをポジティブに捉えている。

・円金利プラスとなる一方、外国債券のヘッジコストが非常に高い状況あるため、国内債券へのニーズが広がってくるのではと期待していたが、今のところ期待通りの動きにはなっていない。一部ではヘッジ付き外国債券から持ちきりの国内債券へシフトする動きも見られているが、まだ大きなれとはなっていない。この理由も、日本銀行の利上げが道半ばであるためと考えている。国内債券へのシフトの動きがある程度見えてくれば、業界としてもビジネスチャンスと捉えている。日本銀行の利上げがある程度落ち着けば、リテール、金融法人、年金等の顧客全体を通して、日本国債へシフトする動きが見られると期待している。

・少し長い目線では、定年退職者の資金が投資信託に動いていく流れが見られている。足元は外国株式等の高リスク資産に注目が集まっているが、今後円金利が上がってくれば、特に退職金は安全資産へ向かうこともあると考えている。そのような意味でも、個人向け国債や短期金融商品等を扱ったファンドなどが、日本銀行の利上げが行われた暁には、ニーズの一つとして注目されてくると考えている。

 

・国債発行計画について、これまでの議論に異論はなく、特に30年債、40年債はイールドカーブが立っており需給があまり良好ではないため減額とする一方、今後金利が上昇すれば投資需要が増えると思われる短いゾーンの増発について賛成である。

・金利がマイナスからプラスになることについて、当社の業態では運用面の観点で大きな問題はない。それよりも、イールドカーブ・コントロール政策で既存の国債が市場からほとんど無くなってしまっている現状や、特に先物が1銘柄しか機能していない日本国債市場では、チーペスト銘柄付近の市中残高が非常に少ないことを常に懸念しており、流動性供給入札を確り行って欲しい。

 

・発行計画について、40年債の需給が緩んでいるのは、生命保険会社の規制対応が一服したことが主因であるため、一時的な要因ではないと思われることから、減額が妥当と考えている。

・他方で、増額できる年限は、10年以下に余地がある。あえて順序をつけるならば、日本銀行が引き続き利上げサイクルにあることを考えると、短い年限を優先させた方がよいのではないかと考えてはいるが、銀行の需要次第。

・金利上昇による今後の国債需要について、公的年金では、目下、財政検証が行われており、基本ポートフォリオの変更があれば、需要に変化が生じうると認識している。一方、私的年金では、いわゆる異次元緩和政策下で日本国債へのアロケーションを比較的大胆に減少させていたのではないかと考えており、金利上昇に伴って、徐々に一旦減少させた日本国債へのアロケーション復元を検討する投資家が増えているように感じている。

 

・前回の本懇談会の直後である319日に日本銀行はイールドカーブ・コントロールの解除などの金融政策の基本的な枠組みの変更を発表した。イールドカーブ・コントロールの先例は、米国の戦時下にある。真珠湾攻撃の直前である194111月から朝鮮戦争が停戦の方向に向かう19513月までの10年間、3ヶ月物TB0.375%、25年物トレジャリーを2.5%に釘付けする金融調節を行っていた。195012月にトルーマン大統領は、マッケイブFRB議長に「金利釘付けの解除は、スターリンが望んでいることに他ならない」、と強くイールドカーブ・コントロールの解除を牽制した。そこからあまり長くない先にイールドカーブ・コントロールの解除が行われたが、その解除は米財務省とFRBのアコードとして、発表された。その際、マーケットからは大きな歓迎を持って迎えられた。その後、19533月にFRBは、公開市場操作の対象をTBに限定するBills only政策を始めた。日本ではイールドカーブ・コントロール解除直後の記者会見で植田総裁が「今後の金融政策の主たる政策手段は短期金利になる。普通の金融政策を行っていくことになると思う」旨述べた。これは19533月の米国のイールドカーブ・コントロール解除後にFRBBills only政策を取るといったことに符号するものと思われる。しかし、日本でのイールドカーブ・コントロール解除は、大きな感動を持って迎えられたようには感じられない。それは、日本銀行の国債保有が極めて巨額であるため。19513月の米国のイールドカーブ・コントロール解除後のFRBの国債保有残高は229億ドルで国債残高の15%であったのに対して、日本銀行は国債残高の約半分となる600兆円近くを保有している。しかも、イールドカーブ・コントロール解除後も日本銀行は国債買い入れを続けており、今年の7月末に202613月までの国債買い入れの減額計画を示した。その先はどうなるのか。金融正常化への展望として、日本銀行の保有国債の水準を銀行券ルールとか、法定準備の水準に向けて正常化するのかは不明だが、そこに至る道筋を示すことが必要だと思う。正常化へのプロセスを歩むとすると、2026年度以降、日銀買入は行われないことになると思う。日本銀行で満期を迎える国債の借り換えは市場で行われることになる。こうした金融正常化への道筋を示すとともに新規国債の発行については、2025年度のプライマリー・バランス黒字化の財政健全化への案、黒字化後の財政健全化の道筋を示す必要がある。

・発行計画について、一番肝要かつ重要なのは、市場との対話、市場ニーズを伺うこと、regular and predictableな発行を行うことである。国債というのは、その国のすべての金融資産の中で最も信用力と流動性が高く、そうあらねばならないものだからである。

 

・米次期大統領のトランプ氏が関税について様々な発言をしているところ、これが貿易の縮小に繋がり、日本の経常収支が段々減ってくることを心配している。日本はこれまで大きく財政赤字だった一方、経常収支が黒字だったことで、信用格付けもある程度維持できてきたと思っているが、今後、経常収支が徐々に赤字になってきた時に日本国債の信用格付けをどう維持していくべきか。一番よいシナリオは、政治家が無駄な歳出をしないこと。歳出には3種あるが、一番悪いのは短期的な給付金であり、もう1種の政府消費もあまりよくない。一番よいのは生産関数を上げる、RDや技術進歩といったものに対して政府が関与し、長期的に生産関数を上げてproductivityを上げるものである。例として、自動車産業が段々と電気自動車等に負けている中、政治家は中・長期的に考え、何を日本がやるべきか国会で議論し、どんな産業がこれから勝っていけるかというビジョンを示すべき。そういった産業があれば、当初は多少の赤字であっても、その後に成長が伴い、国債の償還ができていく事になるが、どうしても政治家は次の選挙までの4年が重要で、皆、長期では考えていない。

・「リカードの中立命題」では政府支出の財源について、国債でも税でも長期で見れば同じである旨提唱していたところ、国債は結局将来の税となるのだから、現在の税を財源に、という議論になればいいのだが、ほとんどの日本の政治家は「国民に負担をかけないで財政支出します」と言っている。そんなことはあり得ない訳で、そこが残念である。なお、パラオ共和国では2023年に10%の消費税制度を導入し、同国の大統領選挙が今年の米大統領選挙と同時期に実施されていた。同国民は財政赤字が良くないとし、現職の大統領に投票して財政規律を守ろうという動きがあったところ、そういう考えが必要ではないか。

・米次期大統領による影響から、今後、関税を課すことが当たり前になってくると、今度は台湾問題を含めて地政学的なリスクが考えられる中、日本と米国が協調できる、理論的に一番よい関税はカーボンプライシング。プライシングの方法は世界中で相当異なるところ、トランプ氏がプライシングを世界的に一定にする一方、プライシングが相当低い中国に対して高率を課する、という形にすると環境問題と繋げられる。しかしながらそうではなく、メキシコやカナダに課する形になってしまっている。これが非常に心配で、米国の中にも相当危機感を持っている者が居る。あまりに関税を課していくと貿易が縮小し、途上国で政治不安が起こり、色々な場所で戦争が起こりだし、第二次世界大戦前と同様になるのでは、と心配する者が居る。

・経済モデルのIS-LM分析について、ケインズの時代にISの財市場と、LMの貨幣市場で、2つが均衡していれば一般均衡としていた。それ以外に実は国債市場があるのだが、除いての分析となっている。この分析では流動性の罠があるとし、マイナス金利にはならないことになっているが、そうするとマイナス金利の状況を説明できない。このため、一番よいのはLMの貨幣市場ではなく、国債市場入れることでマイナス金利の状況を説明できる。本当はIS-LM分析ではなく、ISの財市場と国債市場、これを合わせた分析をしないと日本経済のことを分析できない。ケインズの時代では、財・貨幣・預金市場がかなり大きく、当時も債券と株の市場もあったが分析対象とされていなかった。未だにIS-LM分析で世の多くが説明しており、そこを変えていかなくてはならないと考えている。


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財務省 理財局 国債業務課 市場総括係
電話 代表 03-3581-4111 内線 5700