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日時 令和6年3月13日(水)10:30~11:55

場所 財務省 第3特別会議室

内容 
1. 令和6年度における固定利付債のリオープン及び入札方式について

〇令和6年度における固定利付債のリオープン方式について、理財局から以下のように説明を行った。

・翌年度の固定利付債のリオープン及び入札方式については、毎年3月の本会合において議論し、皆様のご意見を踏まえて決定することとしている。本日は、令和6年度におけるリオープン及び入札方式について皆様のご意見をお伺いする。P.3に案をお示ししているが、現在の取扱いと事前に頂いたご意見を含めてご説明する。

・10年債については、平成27年度以降、償還日が同一の国債を発行する場合で、かつ、前回債の表面利率と入札日の市場実勢利回りとの乖離が概ね30bps以内の場合には、リオープン発行することとしている。
 この点につき、皆様のご意見をお伺いしたところ、ごく一部の参加者から、20年債、30年債と同様の年間4銘柄の原則リオープン発行に変更すべきとのご意見を頂戴したものの、多くの参加者から、現行方式を維持することが適当とのご意見を頂戴した。

・次に、年間4銘柄での原則リオープン発行としている20年債と30年債、年間1銘柄での原則リオープン発行としている40年債については、ごく一部の参加者から、40年債の複数銘柄化が適当とのご意見を頂戴したものの多くの参加者から、現行方式を維持することが適当とのご意見を頂戴した。また、40年債の入札方式については、全ての参加者から、現行の利回りダッチ方式を維持することが適当とのご意見を頂戴した。

・そのほか、償還日及び表面利率が同一となる場合にリオープン発行している5年債については、一部の参加者から10年債や20年債、30年債のようなリオープン方式とすべきとのご意見を頂戴したものの、多くの参加者から、現行方式を維持することが適当とのご意見を頂戴した。

・これらのご意見等を踏まえ、当局案では、いずれの年限も、令和5年度の方式を維持することを想定しているが、改めて皆様のご意見を頂戴したい。

〇出席者から出された意見等の概要は以下のとおり。

・当局の提案を支持する。

・従来は、10年債を年間で4銘柄発行することを希望していたが、イールドカーブ・コントロールの上限が曖昧になり、日銀買入額も減額の方向にあるため、「金利が上下に大きく変動する場合を除き、リオープン発行する」という当局の提案に賛成する。

・40年債について、扱いやすさの観点から、毎月発行及び同年限の複数銘柄化を希望する。この点以外については、当局の提案を支持する。

・40年債について、将来的に市場が成熟していった場合には、複数銘柄化や入札方式をコンベンショナル方式に変更することを目指していくべきと思っている。超長期債市場は他の年限と比べると流動性の点で劣後するため、流動性供給入札が果たしている役割の重要性について改めて強調したい。

2. 令和6年4-6月期における物価連動債の発行額等について

〇令和6年4-6月期における物価連動債の発行額等について、理財局から以下のように説明を行った。

・物価連動債の発行額等については、P.5のとおり、令和6年度発行計画において、1回の入札当たり2,500億円で年4回の発行としつつ、「市場参加者との意見交換を踏まえ、市場環境や投資ニーズに応じて、柔軟に発行額を調整」することとされている。また、買入消却についても、P.6のとおり、「市場の状況や市場参加者との意見交換も踏まえ、必要に応じて実施する」こととされている。

・令和6年1-3月期に実施した入札及び買入消却の結果等についてはP.7~P.9に、流通市場の状況についてはP.10に記載のとおりである。

・皆様から事前にご意見を伺ったところ、全ての参加者から、①令和6年4-6月期における発行額及び買入消却額、②令和6年度における物価連動債のリオープン及び入札方式のいずれも、現状の取り扱いを維持することが適当とのご意見を頂戴した。

・これを受け、P.11に当局案をお示ししている。令和6年4-6月期については、2,500億円の発行入札を1回行いつつ、毎月200億円の買入消却入札を行うことを想定している。また、令和6年度におけるリオープン及び入札方式についても、現状の方式を維持することを想定している。なお、買入消却の対象銘柄については、カレント銘柄も含めた全銘柄とすることとしたい。

・物価連動債市場の育成は、国債管理政策上の重要な課題と考えており、引き続き、入札等の結果や市場・投資家動向、皆様のご意見を踏まえつつ、慎重に検討・判断していきたいと考えている。今後の市場への見方を含めて、改めて皆様のご意見を頂戴したい。

〇出席者から出された意見等の概要は以下のとおり。

・当局の提案を支持する。
・物価連動債は当社の管理上扱いづらい印象で、かつ、流通量の観点からも思った価格で買えるかどうかわからない点も扱いづらさがある。

・当局の提案を支持する。
・物価連動債の先行きは日本経済におけるインフレの定着度合い次第だと考える。日本経済がゼロインフレノルムから脱し、本当の意味で期待インフレ率がプラスレンジで安定すること、その上で物価連動債の流動性が高まることによって、実質金利の安定した推移が確認できるようになることが、投資への安心感を高めることに繋がると思料している。

・当局の提案を支持する。
・業態としては、管理方法の難しさに起因するところも大きいが、他にも、名目債とのリスク分散目的で保有しようとしても、セカンダリーマーケットでの流動性が上がらないことにより、価格が世の中のインフレ期待に連動して動かないため、保有がしづらい。この点が改善されると投資しやすい。
・セカンダリーマーケットで価格がインフレ期待と連動していない現状に鑑みれば、年限を短期化することで、最終的な価格に収斂させるというのも一案。

・当局の提案を支持する。
・個人投資家の場合は問題にならないが、元本が変動するという点で物価連動債の取扱いは損益計算上、困難な部分があり、大きなボリュームを伴う形での投資は行いにくい。

・当局の提案を支持する。
・日本の場合、デフレ期間が長くインフレヘッジをしなければならないニーズが個人にもなかった。何度か物価連動預金を商品として出すことを考えたこともあったが、リテールサイドからニーズがないとの声が多く、実際の開発にはこぎつけなかった。
・ただ、現在の貯蓄から投資への流れで一定量はリスク資産へ振り向け始められている中で、今後、物価とリスク資産の連動が弱まり、リスク資産価格が下がり物価だけが上昇するといった場合も想定される。今すぐではないものの、こうした場合には、物価連動預金のニーズが高まることが、今後十分に考え得る。

・当局の提案を支持する。
・物価が上がっているにもかかわらず、物価連動債が買われない要因について、当社も含め、持続的なインフレへの警戒がそこまで強くないことが背景にあると考えている。海外のようにイールドカーブが逆イールドになるところまでインフレが浸透しているという状況であれば話は別だが、日本の場合、インフレは順イールドを維持しながらの金利上昇を想定している。当社としては通常の利付債が収益源として機能しており、無理に物価連動債をポートフォリオに組み込むほど、インフレのインパクトは感じていない。

・当局の提案を支持する。他方、現状も1回2,500億円の発行であるが、入札及び日銀買入オペの結果を見ると、正直なところかなり苦しい状況である。しかし、2,500億円の発行に対して2,400億円吸収している状況であり、これを逆転させるのは難しいとの考えから、消極的に現状維持に賛成する。
・物価連動債には積極的に投資しているが、流動性がない原因は、投資する投資家が少ないからだと考えている。インフレが今回のように一気に上昇する時はついていけないが、安定すれば少しずつ参加者が増えていくと考えており、もう少し時間を見る必要がある。その他、システムメンテナンスが必要であることから参入に時間がかかりコストに見合わないこと、商品性は2013年に変更しているものの過去リーマンショック後にやられてトラウマになっている者もいることが要因と考えられ、改善していくことが必要。
・流動性が乏しいことで価格がインフレに連動して動かずBEIそのものをヘッジできない苦しさを感じている。インフレスワップができてくれば変わるかもしれない。最初は当局が主導してマーケットを作るとよいのではないか。

・当局の提案を支持する。
・負債が物価上昇に対してラグを持って上昇するという業態の特性上、これまで物価連動債は投資の対象にしていない。一般論として、インフレの好循環が定着すれば魅力が高まるのではないか。

・当局の提案を支持する。
・今まではインフレヘッジのニーズがなかったが、これからはヘッジツールとして検討することもあり得るのではないか。特に、高齢者のヘッジニーズが出てくるようであれば、個人向けの物価連動債にニーズが出てくるかもしれないと考えている。

・当局の提案を支持する。
・個人的には2000年代後半の物価連動債を巡る状況を経験してトラウマがある。投資家にとって、売りたいときに売れないのは恐怖。その後、2013年に物価連動債の商品性が見直されているが、まだマーケットは育成段階であると考える。今後、価格が安定的に推移し、CPIのヘッジ手段として有用だと認識されるようになれば、購入したい投資家は徐々に増加していくと考える。

・当局の提案を支持する。
・基本的に当社の資産は株式を含めた政策アセットミックスによって運用されているが、物価の上昇は株式のリターンに一部内包されているため、インフレリスクヘッジのために物価連動債にアロケーションを移す必要はない。

・当局の提案を支持する。
・物価連動債について、流動性が低いこと、足元の物価上昇にマーケットが追随できていないことが問題だと考える。
・当社は、過去から物価連動債に投資しているが、コロナ禍直後では元本保証されている水準を割り込む銘柄が散見され、1年前まではBEIが60bps程度で入札を迎えていたと記憶している。
・過去、物価見通しと物価連動債の市場実勢や入札結果が大きく乖離し、金融商品として魅力的だった時期も多くあったにも関わらず、機関投資家の参入が芳しくなかった。現状、投資家層の拡がりは全く見られていないと考える。また、実質金利がマイナスの場合は、預金者にとって不利な状況であるが、預金者がインフレをヘッジしたいと思わなければ、物価連動債の需要は高まらないと考える。他方、機関投資家は期間収益を重視するため、運用期間中に大きな収益が見込まれなければ投資しにくい。

・物価連動債について、長期的な視点で市場を育成していくことがまずは肝要だと考える。その上で、個人に目を向けると、個人の資産は、人的資本から生じる賃金等の人的資産と、ストックである住宅や金融資産などの物的資産に大別できる。まず人的資産の観点からは、米国と異なり日本の所得税法は自動的にタックス・ブラケットが物価連動する設計になっていないため、安定的にインフレが発生する局面では、名目賃金が上昇することで限界税率が上昇するブラケットクリープにより、その分だけ実質的な購買力が減少する可能性もある。次に、物的資産の観点からは、教育、住宅、そして老後の費用が個人の主な資金需要だと思う。インフレのもとで預金金利等が十分に上がらない場合、現状、個人はインフレリスクのヘッジのためには株式や外貨建資産に投資せざるを得ないが、大多数の者、特に中間所得層にとっては、教育費等のための資金を全てハイリスクな外貨建資産等に振り分けることが適切なのかという問題がある。社会全体として考えた時に、株式や外貨建資産以外のインフレリスクのヘッジ手段があってもよいのではないかと思われ、例えば、米国も物価連動型の個人向け貯蓄国債であるIボンド(Series I Savings Bonds)を発行している。低所得者には給付等で対応するという前提では、インフレで苦しむと想定されるのは中間所得層であり、インフレが安定的に持続する局面においてどう対処するかを早期に検討することは社会的に重要だと考えている。

・当局の提案を支持する。
・運用目標が対ベンチマークの超過収益になっているアクティブファンドでは、超過収益獲得の手段として物価連動債を保有することはある。しかしながら、流動性が非常に低く、売りたいときに売りたい価格で売れないリスクを考慮すると、リスク管理の観点から保有を抑制しているというのが現状。日本では、ここ1、2年で物価が想定以上に上昇しており、様々な経済主体でインフレヘッジの需要は高まっていると考えるが、このような環境でも物価連動債の市場性がなかなか改善しないのは、インフレヘッジの需要が株式や外貨建資産に逃げてしまっているからだと推察する。

3. 令和6年4-6月期における流動性供給入札の実施額等について

〇令和6年4-6月期における流動性供給入札の実施額等について、理財局から以下のように説明を行った。

・流動性供給入札については、P.13のとおり、令和6年度発行計画において、
(1)残存1-5年ゾーンを年間3.0兆円、残存5-15.5年ゾーンを前年度比プラス1.2兆円の年間7.2兆円、残存15.5-39年ゾーンを年間3.0兆円の発行とすることを想定しつつ、
(2)最終的には「市場参加者との意見交換を踏まえ、市場環境や投資ニーズに応じて柔軟に調整」することとされている。

・令和6年1-3月期に実施した流動性供給入札の結果等についてはP.14~P.17のとおりである。

・令和6年4-6月期の流動性供給入札について、皆様から事前にご意見を伺ったところ、一部の参加者から、発行額をゾーン間で調整することが適当とのご意見を頂戴したものの、多くの参加者から令和6年度発行計画に沿った発行額等が適当であるとのご意見を頂戴した。

・これを受け、P.18に当局案をお示ししている。当局案では、残存1-5年ゾーンは奇数月に5,000億円、残存5-15.5年ゾーンは毎月6,000億円、残存15.5-39年ゾーンは偶数月に5,000億円の発行とすることを想定しているが、改めて皆様のご意見を頂戴したい。

〇出席者から出された意見等の概要は以下のとおり。

・当局の提案を支持する。

4. 最近の国債市場の状況と今後の運用見通しについて

〇出席者から出された意見等の概要は以下のとおり。

・従前から日本国債の投資残高は業態の中でもトップクラスを維持しており、全体として大きく変化なし。
・マイナス金利政策下では超長期ゾーンにシフトしていた。この点、ALMの中で保有していたことから超長期金利が上昇しても問題ないと認識していたが、ボラティリティ含め金利上昇が想定以上に速いスピードであったことで、ややついていけていない状況。金融政策修正が迫る中で、ALM上での金利リスクの取り方を、一部スワップを活用した形にもシフトしている。
・なお、既存の海外投資資金を引き揚げてまで国内回帰することは考えていない。
・クライメート・トランジション利付国債については、経済合理性の観点から通常の利付債と同程度の利回り、現状においてはグリーニアム1~2bpsの範囲であれば投資を行いたい。

・金融政策が本格的に動き出そうとする中で、円金利は多少のボラティリティの上昇を伴うことが予見されるが、欧米各国を始めとした他国の国債に比して相対的に低ボラティリティであり、かつスティープなカーブ形状が維持されるであろう国債は金利リスクを収益化する際には非常に有力なアセットクラスと認識している。従って、今までは円金利が低いことから、ある程度国際分散投資を進めてきたが、中長期的には、円金利がそれなりに魅力的な水準になれば、海外アセットから円債へアロケーションの一部を変えていくことも考えられる。
・今回、投資家サイドのニーズを汲み取り、投資目的に沿った比較的保有しやすい形でクライメート・トランジション利付国債を発行いただいたと認識している。当社としては貴重な投資機会であるという認識に変わりはなく、日本銀行の政策修正を控える中で、投資対象としての収益性、利回りに関して、こだわりながら投資を検討していきたい。

・当社はおそらく業態の中でもかなり日本国債を保有している方だと思っている。中長期的にも例えば10年金利が1%を超えるようであれば、外貨の調達コストを考えると、日本国債は投資対象になると考える。
・足元の金利上昇に伴う超長期債の含み損に関しては、株価が上がっている状況であれば、株と債券で調整するようなポジションを取っているため、現状からプラス1%程度の金利上昇は耐えうる。

・足元金利が上がっている中で、当社の場合、5年ゾーンがALM上の主戦場になることから、金利の居所に関わらず、一定程度は淡々と買っていけると思っているが、長く低金利環境が続いたことから、既にリスクを海外のアセットに振り分けてしまっている状況。大体の投資目線として、1.3%ぐらいの平均リターンがないと他のアセット対比で割に合わない。今後金利が上昇すれば、海外のアセットから日本国債にアロケーションを振り向けていくということは十分にあり得るが、1.0%を割る現状では、セレクティブにキャピタルゲインを狙うような形での投資をせざるを得ないと思っている。
・当社は2030年度に向けて一定のESG投資を実施することを対外的に公表しているため、クライメート・トランジション利付国債に対する需要は恒常的にあるが、融資などを含めて収益の観点上、極端に通常の国債から割高になるような状態では買いにくい。前回入札のように1~2bpsの範囲内に収まっていくのであれば安定的に投資ができると思っている。いずれにしても収益性を見ながら投資は考えていくことになる。

・日本銀行が異次元緩和を開始し、国債購入を増額し始めたあたりからスワップ対比で国債の利回りが低い状態が継続していたため、これまでスワップを活用して金利リスクのヘッジに対応してきた。
・今後、金融政策正常化の中で日本銀行が国債買入を減らしていくということであれば、足元既に金融市場では織り込み始めているが国債のイールドカーブがスワップ対比で弱くなり、いずれはスワップのイールドカーブと大差ないレベルで落ち着くとの見立てである。そうなれば、現状では当社は他社対比で国債保有が極めて少ないところ、ALM上のリスクヘッジツールとして国債購入を増やしていくことは選択肢としてある。今後の中期経営計画にも盛り込む形で社内調整している。
・クライメート・トランジション利付国債について、欧州でのグリーニアムが衰えたタイミングでの発行となったこともあり、セカンダリーマーケットでもグリーニアムがほとんど付いていないと認識している。金融機関としては、日本銀行の気候変動オペの対象であるため、投資対象として十分検討に値するところ、今後も継続購入していきたい。なお、グリーニアムとしては1~2bpsであれば妥当であり、フェアバリューと考えている。

・現状国債はほとんど保有していないので、今後保有する余裕はある。イールドカーブ・コントロール撤廃・金融政策正常化の過程においては、外債も含めた含み損も考えたとき、日本国債の保有を縮小せざるを得なかった。ようやく金融政策についての今後の道筋が見えつつある中で、2024年度以降においては、どこかのタイミングで取り組んでいかなければいけないと考えている。
・国債について、今は手前の年限に寄せている部分をどこまで長期ゾーンにシフトするかだが、金融緩和前(2010年代前半)と同程度まで日本国債の保有を増やすことは難しい。当社内の規制に加え、IRRBB等の外部の規制が厳しくなっており、金利リスクをどこまで取れるのかは日銀買入の動向等も含めた全体量の中で様子を見ながら進めていく。
・クライメート・トランジション利付国債は、商品設計が通常の利付債と同様であることから、通常の利付債の代替商品との印象が強い。2月は金利状況から取り組みにくい時期であったため、消極的な対応となってしまった。金利が落ち着いてくれば、当社も通常利付債と同様に取り組むようになると思われ、相場次第ではあるが投資するようになるのではないか。

・国債市場においては足元マイナス金利の修正という雰囲気があるが、これまでもかなり時間を掛けて修正に向けた話が出ており、その点については市場に浸透していることや、海外金利の動向を踏まえるとそんなに大きく円金利が上昇するとは見ていない。元々、ALM運用の関係上、保険の負債ヘッジで超長期ゾーンを買っていたが、その投資スタンスに変わりはない。
・クライメート・トランジション利付国債について、今回は購入したものの、当社は超長期ゾーンへの投資が中心であるため、もう少し長い年限で発行してもらえればありがたいと思うが、まずは市場を育てるという観点から、当面5年債及び10年債で発行するということは理解しており、来年度も、相場動向や金利水準を見ながら購入については検討したい。

・日本銀行が今後国債の購入を減らした場合、金利は上昇すると思われるが、金利水準自体が落ち着き、ボラティリティがそこまで激しくなくなれば、基本的に国債は市中消化できるのではないかと考えている。理由としては、手元にある現金や当座預金、短期資産を長期債に一定程度充てることができる点や、アセットアローケーションの見直しによって海外のアセットの一部を、リスクの低い日本国債に退避させることができる点が考えられる。
・これまで超長期ゾーンにシフトしていたところ、昨年度の超長期ゾーンの金利上昇が激しかった局面においては、会社全体でその他有価証券の評価益が減少したが、日本国債はALMの観点において、預金の見合いでかなり抑えめに購入してきていたことから、新規投資分の利回り向上で長期的には収益増加に結びついている。
・クライメート・トランジション利付国債について、当社としては、国債関連の一つの商品として、発行目的も考慮し2bps程度のグリーニアムで一定の購入を継続したいと考えており、その方針は変わらない。

・業態としてはALM運用により負債コストが一つの投資目線となるところ、金融政策が正常化していく中で金利水準が負債コスト、すなわち投資目線に合えば、必然的に当社が投資対象としている超長期ゾーンの需要は喚起されると考えている。また、金利が上昇し、当社において魅力的な商品が提供できるような環境になれば、更に日本国債への投資ニーズが出てくると考えている。
・当社はサステナブル・ファイナンスに積極的に取り組んでいる一方、収益性との両立も謳っているところ、クライメート・トランジション利付国債について仮に利回りや流動性といった諸条件が通常の国債と全く同一という状態になれば、必然的に選択することになるだろう。

・当社では、有事の際にすぐに国債を売却できる環境、つまり流動性を最も重視しつつ、ALMも考えて購入している。また、別の部門においては、ALMの観点で国債を購入しているが、超長期ゾーンの金利が上昇したとしても、緩やかな金利上昇であればALM上の問題はないと考えている。
・今後金融政策が正常化した時には、ALMの観点から、カーブ上でポジションを一部入れ替えるといった変化はあるかもしれない。
・これまで当社はグリーン投資に取り組んできたため、クライメート・トランジション利付国債という新しい投資先が出てきたことは喜ばしいことであり、2月発行分の10年債も購入した。今後もフラットに考えてフェアバリューであれば購入する。現状、グリーニアムやフェアバリューは市場で形成中と認識している。

・春闘での賃上げの状況もあり、来週の金融政策決定会合で日本銀行が政策正常化に向けて動くという機運が高まっているが、足元GDPはマイナス成長であることから必ずしも経済自体が強い状態ではなく、今後の金利上昇はそれほど大きなものにはならないと考えている。10年債については金融政策に沿った金利上昇を見込むが、超長期ゾーンについてはこれまで金利上昇してきたため、10年債ほどの大きな金利上昇にはならないと見ている。
・国債の投資方針について、ALMの観点から引き続き超長期ゾーンを中心に投資を継続したいと考えている。ただし、これまであまり購入してこなかった10年債も、金利が上昇してくれば、購入対象になるかもしれない。
・外債については、既にある程度整理を進めているので更に大きく減らすことはないと考える。これまでアロケーションの中で国債を多めに保有してきたため、ここから更に国債全体の保有を増やしていく余力はない。
・今後金利が上昇した場合の超長期債の含み損について、急激な金利上昇でなければ、含み損よりも新たに購入した国債利回りの上昇の方がプラスに働くと考えている。また、株式の含み益でもカバーできる状況である。
・クライメート・トランジション利付国債の入札には参加した。発行趣旨に賛同しており、引き続き購入を検討していきたいが、今後は20年債等のもう少し長い年限のものがあれば購入しやすい。また、価格については1~2bpsのグリーニアムであれば妥当と考えており、10年以上の年限のものに関しては引き続き動向を見極めながら購入対象として検討していきたい。

・新規の資金が入ってこない状況の中、資産運用立国等でリスク資産にもう少し資産を振り向けるべきとの議論もあり、国債の購入を増やしにくい状況である。また、国債投資の代替として、オルタナティブ投資を増やしており、現状新たに国債への購入に資金を振り分けられる状況ではない。
・受給権を持った人が増えてきているため給付が多くなってきているが、足元は株式やオルタナティブのリターンがよいため、積立金全体としては減っていない状況である。
・長期・超長期ゾーンへの投資から生ずる評価損等に関しては、政策アセットミックスで株式を含めたトータルのリターンを日々の時価評価で見ているため、全体としては特段問題視していない。
・クライメート・トランジション利付国債については、受給者・加入者の利益を目的として行動するというルールのもと、通常の国債よりもリターンが期待できる状況であれば投資を検討するが、現状そこまで判断できていない。

・IRRBB等の規制があり、銀行が従来のように国債を購入することができなくなったため、日本銀行がある程度介入しないと、現在の国債残高は消化できないと考える。
・クライメート・トランジション利付国債について、10年債を購入したが、初回入札の際はGCレポにおいて資金調達できるというカウンター・パーティーからの確証がなく、通常のGCレポよりもプレミアムが付加されることもあったため、積極的には購入できなかった。しかしながら、現在は通常の債券と同様に資金調達でき、日本銀行の気候変動オペの対象にもなっているため、投資しやすい環境になってきていると考える。グリーニアムも1~2bps程度であれば投資の検討は可能だと考えている。ただし、資金使途がグリーンに限定されているわけではないため、海外投資家からの評判は芳しくない可能性がある。

・金融政策が正常化する局面において国債を安定的に消化するためには、国の利払い負担が増加する中であっても財政が持続可能であるということを、当局から国内外に積極的に示していくことが最も肝要だと考える。

・年金勢を想定すると、私的年金については、昨年から、金利上昇に伴ってアロケーションを円債に戻すことに関心が高まっていると認識している。一方で、公的年金については、モデルポートフォリオにおいて国内債券の割合は25%となっているため、今後、国内債へのアロケーションを増加させるとしても、この25%の許容レンジ内での運用になると考える。
・クライメート・トランジション利付国債について、アクティブファンドでは、グリーンボンドの最低保有割合のようなガイドラインは存在していないため、超過収益の獲得が見込めるのであれば投資対象にするという考えである。グリーンボンドは、歴史がそれほど長くないため、合理的な見通しが立てにくい状態だが、欧州でグリーニアムが縮小した背景には、そもそもグリーニアムの水準が高すぎたことに加え、金利上昇局面にあったというのが理由ではないかと考えている。そうすると、日本においても今後金利が上昇しても落ち着いた局面になれば、グリーニアムの水準も拡大・安定するのではないかと考える。

・米国大統領選の影響について、今後の政策運営についての不透明感が増大しており、その影響が不確実な状況にある。マーケット関係に限定して申し上げれば、2016年の大統領選後は、米国債金利の上昇や世界的な株高が発生したが、当時と現在とでは状況が異なる。具体的には、まず物価の環境が異なり、またこの間、米国の財政赤字は大きく増大し、債務残高も累積した。今後、米国における期待インフレ率やタームプレミアムの動向を絶えず注視していく必要がある。
・米国の政策運営の不透明感が増す中で、我が国の財政規律の重要性が増していると考えている。今年の1月に内閣府が公表した「中長期の経済財政に関する試算」では、財政健全化目標である国・地方のプライマリー・バランスの黒字化について、目標年度である2025年度のプライマリー・バランスは成長実現ケースでマイナス1.1兆円、ベースラインケースでマイナス2.6兆円と試算されており、同目標の実現可能性が高いことを示しているように思う。1997年の財政構造改革法から2018年骨太方針までの間に、財政健全化の目標年度は2003年度から2025年度に22年間も先送りされてきた。この目標年度の延期が、日本国債に対する国際的な信認の低下を生んだ大きな原因だと考えている。そして、こうした先送りを繰り返さざるを得なかったのは、補正予算の影響が大きいと思う。当初予算は財政規律に則って編成されるが、補正予算は、歳出の効率化や利払費不用により生じた剰余金を財源として使用するばかりでなく、更に不足する財源を新規国債発行で賄っているような状況である。日本国債の格付けが初めて引き下げられたのも、1998年11月に緊急経済対策が発表された翌日で、トリプルAからダブルA1に格下げされた。現在、日本国債の格付けはシングルAだが、他の先進国の国債格付けはトリプルAやダブルAであり、国債格付けが低いとソブリンシーリングにより民間企業の資金調達コストも高くなってしまう。投資家としても、財政、ひいては日本国債への信認を左右する補正予算に目を向けるべきであると考える。特に、2025年度のプライマリー・バランス黒字化を左右する令和6年度の補正予算に注目している。
・GX経済移行債については、エネルギー対策特別会計で発行され、カーボンプライシングにより将来もたらされる財源によって2050年度までに償還されるという、多年度で収支を完結させる枠組みとなっていることから、復興債と同様、プライマリー・バランスの算出対象からは除かれている。重要なことは、GX経済移行債が発行され、それを購入した、ということに加え、その償還確実性が担保される必要がある、ということ。GX経済移行債の調達資金が本来の目的であるカーボンニュートラル実現に向けての民間投資の呼び水として用いられるか、その改善効果がどうなるかに注目すべきであり、投資家の役割は大きい。

・金融政策の修正を見込み、当社のベンチマーク運用に係る円債残高は徐々に減少傾向にあるが、他方で持ち切り型の満期保有目的の(事業債を含む)円債ファンド残高は増加傾向にある。これは、今後も金利上昇が見込まれるものの、足元の金利水準でも十分に魅力的だと感じている投資家が増加していることによるものだと考える。また、今後日本銀行の金融政策が安定して、これ以上金利が上昇しないという局面になれば、ベンチマーク運用に係る円債残高も増加に転じると考えている。
・クライメート・トランジション利付国債について、初回債は少額だが購入している一方で、受託者責任の観点から、理論的にバリューがあることが説明できることが好ましいため、現時点では積極的な購入はできていない。他方、(一般的に)ESG債は一般債と比べると、価格の下方硬直性があると考えており、それが見極められれば積極的に購入していきたい。

・シリコンバレーバンクに起因する市場の混乱については、米国の場合、決済性預金が日本のように全額保護されていないことに大きく起因すると考えている。
・米国も欧州も現在インフレが発生しているが、これは、資源価格の上昇により総供給曲線が上昇したことによるものである。インフレを収めるためには総供給曲線を下げられればよいが、米国では、民間部門においてAI技術の活用やデジタル化により全要素生産性を向上させることで、これが実現されているように思う。現状、欧州や日本ではこうした取組が遅れており、今後、日本においても、民間部門の効率化を進め、全要素生産性を向上させていくことが重要である。
・プライマリー・バランスは利払費を除いた歳出歳入のバランスだが、本来的には、利払費も含めて歳出歳入をバランスさせる必要がある。そのような考え方の下では、金利が上昇した場合には政策的経費を減少させることとなり、市場の状況を考慮して財政運営を行うことにもつながると思う。

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問い合わせ先

財務省 理財局 国債業務課 市場総括係
電話 代表 03-3581-4111 内線 5700