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日時 令和5年12月6日(水)13:30~14:40

場所 中央合同庁舎第4号館 1208特別会議室

内容 
1.  クライメート・トランジション利付国債の令和5年度内の入札発行について

〇クライメート・トランジション利付国債の令和5年度内の入札発行について、理財局から以下のように説明を行った。

・クライメート・トランジション利付国債の令和5年度内(令和6年3月末まで)の入札発行について、皆様から事前に伺った御意見をもとに、発行条件等の案をまとめている。

・資料P.3に記載のとおり、GX経済移行債及びその借換債のうち、個別銘柄として発行する分は「クライメート・トランジション利付国債」と名付けられているが、この「クライメート・トランジション利付国債」の入札について、令和6年2月14日(水)に10年債、2月27日(火)に5年債、それぞれ8,000億円程度を発行予定額として実施することを考えている。 

・P.4~5は令和6年2月における国債等の入札予定の変更と、2月に入札発行するクライメート・トランジション利付国債の発行条件等についての案である。先程申し上げた点を除いては、基本的には本年11月8日に財務省ホームページで公表した「クライメート・トランジション利付国債の基本的設計案」のとおりとする予定。

〇提出された意見等の概要は以下のとおり。

・当局の提案を支持する。当社もサステナブルファイナンスの中長期目標を掲げており、投資需要は相応にある。足元のスタンスとしては、ある程度市場が形成されてきたところで、流動性を確認しつつ、グリーニアムの水準感を踏まえて検討したい。

・当社も2030年に向けてESG投融資の残高目標を持っており、クライメート・トランジション利付国債も貴重な投資機会であると捉えている。ただ、収益性との兼ね合いは議論があるところで、通常の国債と利回り水準がそれほど大きく変わらず、収益的な目線に合うようであれば、投資していくことが考えられる。また、今後10年間にわたって発行されていくこととなれば、ある程度平準的に投資をすることも視野に入れつつ、更なる検討を進めていこうという状況である。

・当社でもESG投資に関して計画・目標を持っており、クライメート・トランジション利付国債への投資がESG投資に該当するということであれば、大いに期待する商品。また、もし日本銀行の適格担保になるということであれば、一層投資対象としやすい。

・当社もクライメート・トランジション利付国債に積極的に投資していこうと考えているが、グリーニアムの水準次第でもあり、経済合理性を明確に犠牲にするのは少しハードルが高いと考えている。また、日本銀行の適格担保になることや、レポのマーケットにおいて日本国債と同等の流動性が確保されることが投資するための前提になろうかと思う。安定消化とのバランスになるが、1回当たりの発行金額も一定規模確保した形で発行していただくと助かると考えている。

・当社もクライメート・トランジション利付国債の購入に向けて準備を進めている。債券としての商品性自体は通常の国債と変わらないので、金利リスクの操作の手段としては通常の国債と同様に考えられると思っている。そのため、経済合理性を一定程度は考慮に入れながら投資を進めていきたいと考えている。
・当社では、ESGにファイナンス面で取り組むことで、会社としてESGスコアを上げていきたいと強く考えている。クライメート・トランジション利付国債が成功すれば、当社としてもトランジションボンドを発行していこうかとも考えており、クライメート・トランジション利付国債の発行が成功に終わるように、投資家側としても積極的に購入を考えていきたい。

・クライメート・トランジション利付国債について、特段の意見は無いが、提示いただいた条件やスケジュールからすれば、問題なくこなせるのではないかと推察している。当社もある程度、年度内又は来年度以降の発行分も含め、積極的に参加させていただきたいと足元では考えている。プライマリーにおける応札や落札、セカンダリーにおける売買も含めて積極的に加わることで、クライメート・トランジション国債市場の行く末に微力ながら貢献させていただきたいと思っている。

・クライメート・トランジション利付国債については、実務上は通常の国債と同様の債券として、入札に参加したいと考えている。足元の金利水準であれば5年債よりも10年債の購入をやや優先することになると思われる。最終的な応札額については、各投資家の投資スタンスや考え方がグリーニアム等にどの程度織り込まれるか次第で変わってしまうので、どの程度応札できるかはその時次第かと思うが、入札には毎回参加していきたいと思っている。

・当社は、投資行動として、定期的に30年債・40年債といった超長期債を購入している。クライメート・トランジション利付国債については、今年度は5年債と10年債での発行とのことであり、新規資金が入らない年限であるため、取組手段は検討している最中である。金利水準次第ではあるが、購入を検討したいと考えている。クレジット面でも国債にESGのラベルが付くという購入しやすさはあり、金利水準が見合えば、また今後年限が広がってくれば、より投資しやすくなる。

・当社も責任投資を推進しているので、提示された案及びクライメート・トランジション利付国債発行の趣旨に強く賛同している。

・当社としても、サステナブルファイナンスに非常に力を入れているので、クライメート・トランジション利付国債の購入も積極的に検討したいとは考えているが、今年度は5年債・10年債での発行とのことなので、投資対象とするのは少し難しく、来年度以降20年債等の超長期ゾーンで発行されるのであれば、購入を積極的に検討したいと考えている。

・クライメート・トランジション利付国債については、よい商品であるし、ALM上のニーズもあるので、投資対象として検討している。基本的にはニーズがあるが、業態上、意図していないタイミングで支払いが発生する可能性があり、流動性が重要となるので、1銘柄当たりの発行額が少なくなってしまうと投資が難しくなる可能性がある。

・当社はESG債の投資目標は特に設けていないので、今のところ他の国債と同様のスタンスで臨みたいと考えている。

・クライメート・トランジション利付国債について、基本的には購入していきたいと考えているが、受託者責任があるので過度に割高になった場合には購入できない。また、海外投資家の需要がどの程度集まるのか、注目している。

・当社もESG債を投資対象にしており、クライメート・トランジション利付国債も投資対象としていきたいと思っている。

・クライメート・トランジション利付国債について、投資対象として考えてはいるものの、運用資産の目標等に応じて銘柄を選択するため、いわゆるグリーニアムが大きいような場合には同年限の通常の国債に投資するのではないかと考えている。

・ESG投資への需要が潜在的にある中、クライメート・トランジション利付国債が一つの基盤となりマーケットが流動性がある形で育てば、各発行体も債券を発行しやすくなるため、根気強く育てていくことが肝要であろう。

2.  令和6年度国債発行計画の策定に向けた現状と課題について

〇令和6年度国債発行計画の策定に向けた現状と課題について、理財局から以下のように説明を行った。

・令和6年度国債発行計画の策定に向けた現状として、まずは、令和5年度補正後国債発行計画について説明する。

・令和5年度補正予算に伴い新規国債(建設国債・特例国債)は8.9兆円増加したが、財投債や借換債等の減額により、令和5年度の国債発行総額の増加は0.4兆円。

・補正予算の規模が不明である中対応を検討する必要があったため、カレンダーベース市中発行額の増額が必要となる場合に備え皆様から御意見を伺ったものの、結果的には、令和5年度のカレンダーベース市中発行額は変更せず、翌年度の歳入となる前倒債の発行減によって調整することとなった。

・国債発行総額の推移を見ると、令和5年度補正予算に伴う国債発行総額の増加は0.4兆円にとどまったものの、コロナ対応以降毎年度の国債発行総額が非常に大きくなっていることに変わりはない。

・このような多額の国債を消化するため、カレンダーベース市中発行額についても高い水準が続いてきた。

・過去の推移をみると、令和2年度には、新型コロナへの対応のため国債発行額が急増し、その増加分を円滑に発行するため、市場への影響が相対的に小さい短期債の発行割合が高まった。

・令和3年度以降は短期債の減額を行い、令和5年度国債発行計画においては、その割合はカレンダーベース市中発行額の3割以下にまで減少している。

・国債発行残高及び平均償還年限については、P.12、13のとおり。

・次に、令和6年度国債発行計画に関連した見通しについて、令和6年度の国債発行総額は現時点では未定だが、P.14において、「内閣府中長期試算に基づく国債発行額の将来推計」をお示ししている。

・推計対象は復興債及びGX経済移行債を除く普通国債であるなど、令和6年度国債発行計画上の数字と必ずしも対応するものではないものの、本推計上は、令和6年度は令和5年度より発行額が大幅に減少する見通し。

・こうした見通しの下で各年限の市中発行額をどのように調整していくのか、皆様の御意見を伺い、検討できればと考えている。

・御意見を伺うに先立って、改めて国債管理政策の基本的目標を振り返ると、①確実かつ円滑な発行により資金を確実に調達すること、②中長期的な調達コストを抑制すること、の2つである。

・当局としては、その実現のため、市場のニーズを十分に踏まえることは当然として、中長期的な需要動向も見極めながら、より安定的で透明性の高い国債発行を行っていくことが重要と考えている。

・金利の推移に目を向けると、一時は海外金利の上昇等に伴い円債市場でも金利上昇傾向にあったものの、足元では利上げ観測の後退による米金利低下等に伴い、円債市場でも一時よりは金利が低下している。他方、本邦では金融政策の更なる修正観測による不透明感が根強く、引き続き金利動向を注視する必要があると考えている。

・国債及びT-Billの保有者を見ると、令和5年6月時点での日本銀行の保有割合は、約半分にあたる47.1%。対照的に、銀行等は保有割合を減らしてきており、令和5年6月時点の保有割合は13.0%となっている。

・投資家別に国債保有の動向を見ると、生命保険会社については、資産に占める国債の割合が近年増加傾向。ICS導入に備えた資産と負債とのデュレーション・ギャップの縮小は着実に進捗してきていると考えられるが、引き続き、一定の超長期債ニーズは存在するのではないかと思われる。

・銀行については、P.20に都市銀行、P.21に地方銀行の国債保有動向をお示ししている。近年、地方銀行を中心に残存10年超の国債保有額が増加傾向にあったが、昨今の金利上昇を受け、今後の金利上昇リスクを抑制しつつ利回りを確保できること、及び負債見合いでの年限選択の観点などから、中長期ゾーンへの投資年限短期化の動きも見られると承知しており、年限別も含めた需要の変化に留意していく必要があると考えている。

・こうした市場の状況や投資家動向を踏まえ、令和6年度国債発行計画について検討していくことになるが、現時点での当局の基本的な考え方として、先にお示しした推計のように、国債発行総額が相当規模で減少することになれば、年限別の需要動向も踏まえつつ、各年限について発行額を調整し、カレンダーベース市中発行額を減少させることを検討している。

・各年限の発行ロットについて、皆様からいただく御意見を踏まえ検討していくこととなるので、本日は活発に議論いただけると幸いである。

・なお、御意見をいただく対象について、2点補足させていただきたい。

・先ほど令和5年度内の発行予定について案をお示しした「クライメート・トランジション利付国債」については、12月に予定している令和6年度国債発行計画公表時点では同国債の初回発行が実施されていないこと等を踏まえ、具体的な年限別発行額や発行時期については令和6年3月の本懇談会及び国債市場特別参加者会合を経て決定する方針である。

・そのため、具体的な年限別発行額等については3月会合で御意見を伺えればと考えている。

・また、令和6年度国債発行計画で発行ロットを減額する場合、足元の市場環境や需給バランスの変化を踏まえ、一部の年限については令和5年度内から先行して減額することも検討している。この点について、減額対象や金額、減額開始時期など、御意見いただけると幸いである。

〇提出された意見等の概要は以下のとおり。

・減額する場合の年限としては、投資家需要の少ない20年債が望ましいと考えている。30年債、40年債といった超長期ゾーンについては、40年債は市場を育てていく側面があると思うが、需要は30年債の方があると思われるので、超長期ゾーンにおいて20年債の次に減額の候補となるのは40年債だと考えている。

・超長期ゾーンは基本的に投資対象ではないため何とも言えないが、マーケットを見ていると20年債はやや投資家層の存在が見えないという印象。金利の絶対水準があまりにも低い時には、当社も20年債を多少は購入していたが、今後の金利上昇の可能性を考えると、ALM上は最長でも10年以内、できれば5年以内というところが主な投資対象になってくると思う。まだ先かもしれないが、短期国債金利がオーバーナイトの無担保コール物と並ぶ水準に上がってくるようであれば、具体的には、現在マイナス15bps程度であるところが若干でもプラス圏に入ってくれば、当座預金残高はまだ過剰な状態が続く状況でもあるため、かなり有力な資金の逃がし場所になると考えている。

・最近は若干低下傾向にあるが、足元で金利が上昇してきている中で、当社として、金利リスクも含め20年債への投資は難しく、より短い年限が投資対象となってきており、20年債が減額対象になるのではと考えている。
・日本銀行の適格担保に必要な部分以外は日本国債への投資を控えている社もある中、当社は比較的日本国債を保有している方だとは思うが、今後は、ようやく金利も戻ってきたので、資金調達コストを上回る利回りが得られる年限の中から、なるべく短い年限を選択して購入していこうと考えている。

・これまで20年債を投資対象としてきたが、金利上昇に伴ってニーズは明確に落ちてきている。

・イールドカーブが立ってきており、今後の金融政策修正に絡む思惑も出てきている中、イールドカーブ全体でボラティリティが高まっていることを踏まえると、超長期ゾーンへのニーズが以前に比べると減少してきているという印象。日銀買入の金額も超長期ゾーンは少なく、日本銀行が今後金融政策の正常化を進めていく中で国債の買入額を減らすとすれば真っ先にこのゾーンになると考えられ、20年債と30年債は減額の第一候補になると考えている。

・来年度の借換債発行額の見込み等から推察するに、来年度はカレンダーベース市中発行額を10兆円から15兆円程度減らせるのではないかと推察しており、そのうち10兆円程度は利付債の減額に充てられるのではないかと考えている。そうしたことを踏まえると、20年債だけでなくある程度幅広い年限で減額が可能、あるいは検討すべきかと考えている。
・減額の第一候補は20年債である。足元の金利上昇によって預金取扱金融機関の需要が落ちていることから、減額する第一のゾーンになってくると考えている。その規模としては、1回の入札当たり2,000億円程度の減額が可能ではないかと考えているが、市場の話を聞くと、1回の入札当たり3,000億円減額というドラスティックな意見もあり、ある程度そういう部分を織り込んで足元フラットニングも進んでいるのだと推察している。
・20年債の次に減額候補として挙がるのが、コロナ禍で大きく発行額が増えてきた2年債であり、マーケットへのインパクトを生じずに減額可能かと考えているが、一方で担保需要も根強くあるので、減額幅は1回の入札当たり2,000億円程度が望ましいと考えている。
・5年債と10年債については、今後金利が上昇するに伴って需要が伸びてくるゾーンであり、減額は必要ないかと思う一方で、クライメート・トランジション利付国債がまずは5年債と10年債で発行されていくのではないかということを踏まえると、その見合いでそれぞれ1回の入札当たり1,000億円程度減らすことは十分に可能と思っている。また、市場の声としては、オフ・ザ・ラン銘柄の流動性を戻すのが足元の課題かと思うので、残存5-15.5年ゾーン又は残存1-5年ゾーンの流動性供給入札を増額する見合いで、10年債や5年債を減額することも十分可能かと思っている。

・金利が上昇したので、ALM運営の観点から、今まで投資していた超長期ゾーンよりも中長期ゾーンへの関心が極めて高いという状況が続いており、金利水準次第ではあるが、20年債の需要低下が見込まれると考えている。国債発行計画の全体の調整については、中長期債の需要が今後増えることも踏まえた対応をお願いしたいと考えている。

・引き続き30年債、40年債を中心に買っていく。40年債について、従来から言及しているが、隔月発行から毎月発行への変更を希望する。その上で、1回当たりの発行額と銘柄数もそれぞれ増やし流動性を確保することで、40年債に取り組みやすくして欲しいと考えている。

・減額については、コロナ対応のため発行額が増額されてきた短い年限を中心に減らす余地があると考えている。また、20年債についても、足元では投資家層が薄くなっているため、若干の減額もやむを得ないと考えている。

・主な投資対象は30年超の債券であり、30年債、40年債、残存15.5-39年ゾーンの流動性供給入札の発行額については減額を避けることを強く希望。背景として、ALM運用の高度化ないしは精緻化という観点から、金利リスク削減を目的とした安定的な超長期ゾーンへの購入ニーズが業界として今後も継続する見通し。かつてと比べると、資産と負債のデュレーションギャップが縮小してきている傾向は見られるが、依然として負債に対して資産が短い状況。30年債・40年債の年限別のニーズでは、個社の状況によって若干ばらつきはあるが、むしろ40年債を中心に購入している会社もあり、30年債・40年債両者について購入需要がある。なお、20年債を投資対象としている社から、20年債を減額するのであれば、むしろ30年債は増額してほしいといった声も聞いた。
・流動性供給入札については、入札倍率は必ずしも高くないが、負債キャッシュフローとのマッチングの観点からコンスタントに需要がある。特に金利リスク削減が進んでいる会社からは強いニーズがあると認識しており、発行額は現状維持を希望する。

・来年の金融政策の動向や海外金利の動きはなかなか読めない部分もあり、金融政策の正常化も見据え借換リスク等も念頭に置かねばならないと思うので、長期的な視点から、コロナ対応で大きく増額した短期国債を中心に減額するのがよいかと考えている。
・業態としては、超長期ゾーンが非常に重要であり、20年債、30年債、40年債といった超長期ゾーンについては、現状維持をお願いしたい。

・これまでの国債発行額増の中で、相当程度T-Bill発行額が増えてきており、減額するのであればT-Bill中心がよいかと考えている。ただし、その他、20年債に関しては、最近もやや入札が軟調であり、若干減額はあり得ると思う。

・既に意見も出ているとおり、20年債の投資家層は少ない。日本銀行が金融政策を微修正した後、金利が上昇した局面では、株式からのリバランスとして20年債と先物にニーズがあったが、現状かなり金利も低下してきており、慎重なスタンスになっている。

・業態として、割高のゾーンを売って割安なゾーンを買うというアービトラージ的な売買が中心になるため、流動性を慎重にウォッチしている。昨今の動きでいうと、20年債は流動性が大分落ちてきている。この状況については、金利上昇により、デュレーションを伸ばさなくても金利水準が確保できるようになったという面と、金利の変動リスクを気にして中期ゾーンに投資家が移動したという面と、両方あるという印象を持っており、買いやすいが売り難いという流動性の低下が見られるため、20年債は減額がよいのではないかと考えている。逆に5年債は需要が集まっている状況であり、金利が急激に上がった影響で1銘柄当たりの発行量が減ってショート銘柄が増えてきている印象。そのため、20年債とは逆に、売りやすいが買い難いという形になっており、流動性供給入札も含めて増額の余地があるのではと認識している。

・40年債について、毎月発行と年間発行額の微増を希望する。
・全体の国債発行額が減少する場合、長期金利の上昇時に需要の悪化が予想される20年債のほか、これまで各年限の発行額を増額してきた経緯があるので、満遍なく減額となることを希望する。
・残存5-15年ゾーン、特に10年債の残存5-10年のうちカレント2銘柄を除く部分はほとんど流動性がない状況。売却はできるが買い戻しが難しいため、このゾーンの流動性供給入札の増額を希望する。

・カレンダーベース市中発行額の減額に伴い利付債を減額するのであれば、まずは、今年に入って入札が特に不安定化している20年債の減額が考えられる。不安定化の直接の原因と考えられる日本銀行の金融政策変更への期待は、来年度以降も残り不安定な状態が続くのではないかと考えている。

・コロナ対応のため、巨額の財政支出と国債発行によるファイナンスがなされたが、膨らんだ歳出の水準がなし崩し的に常態化し、財政規律が緩んでいることについて大変懸念している。当時は危機だからと仕方なく短期国債を中心にファイナンスしたが、財政の持続可能性がないと各投資家は安心して国債を買えず、ボラティリティも高まってしまう。こうした点も含め、財政の持続可能性をいかに確保するかが、国債マーケット全体、投資家、国、国民、いずれにとっても重要である。
・現在日本銀行が金融政策を段階的に正常化していく可能性が高まっているとマーケットに織り込まれつつあるが、国の予算の策定においても、そうした正常化を想定しつつ、正常化された場合にも財政が持続可能であることを投資家に示すことが、重要だと考えられる。言い換えると、マイナス金利政策や、イールドカーブ・コントロールの下、現在の利払費は低水準であるため、このままでも問題ないという安直な考えは危険である。仮に金融政策が正常化しても日本の財政は持続可能であるということを、当局としても様々な形で示していただけると、投資家も安心して国債への投資ができるのではないかと考えている。
・危機時には大きく財政需要が膨らむため、緊急避難的に短期国債を中心に発行しその財政需要を賄っていたが、このようにして急激に増えた短期国債は正常化として減額しつつ、中長期ゾーンといった需要が高いゾーンについては、コロナ対応前に発行していたような従来の金額を安定的に発行していくことが、予見可能性を高める観点からも大事ではないかと考えている。

3.  最近の国債市場の状況と今後の見通しについて

〇出席者から出された意見等の概要は以下のとおり。

・足元の状況として円金利に相応の動きが出てきていると認識しているが、欧米金利に比べれば総じてボラティリティは小さいこと、またイールドカーブの形状が順イールドであることから、日本国債は金利リスクを収益化する際に有力なアセットクラスであると捉えている。一方、投資タイミングという点では、米金利の反発余地や日本銀行による金融政策の修正リスクもある中、現時点では積極的に金利リスクを取る局面ではないと考えている。日本銀行による金融政策の修正が織り込まれ、金利が上昇していくようなタイミングで、日本国債への投資を少しずつ本格化していく考えである。

・足元では金利は低下しているが、マイナス金利が解除されれば、多少なりともボラティリティが上がり、イールドカーブが上昇方向に動くだろうと見ている。こうした見通しの下、足元では、地方債や政府保証債といった少しスプレッドのあるもので、かなりリスク抑制的に投資をしているが、金利のカーブが立ってくれば、日本国債は円で収益を稼げる貴重な資産ということになるので、カーブの形状を見つつ投資を積み増していくという方向で考えている。

・業態上、長短金利差が大きな収益源であることに変わりないが、昨今ボラティリティが出てきており、金利上昇も少し早いペースで進んでいることから、債券投資という形でどの程度デルタを取っていくかという議論はある。債券投資以外の方法でデルタを取る方が優先されがちな面もあり、足元、以前より、金利上昇のスピードやボラティリティによって投資余力が左右されやすい状況になってきていると感じている。

・マイナス金利政策が導入されて以来、日本国債のイールドカーブは潰れたままで、非常に投資妙味の薄い状況が続いてきたので、日本国債のデュレーションリスクはあまり積極的に取ってこなかった。しかし、足元、金利が上昇し、かつポジティブなリターンが得られるイールドカーブになってきており、当社も円貨のバランスシートが外貨よりも大きいので、マーケットの状況を見ながらではあるが、今後日本国債への投資額を増やしていく方向性で考えている。

・市場の直近の状況と見通しについて、今年の見立ては変わっていない。足元、米国を始めとする海外金利がある程度のスピードで低下しており、これは一時的と軽視せずしっかり見ていく必要があるとは当然思っているが、中長期的には日本と海外では金融政策の方向性が少し違うところがあると思うので、足元まで継続しているような保守的な運用を続けざるを得ない。日本銀行の金融政策にある程度の方向が見えてくるまでは慎重なスタンスを維持し、見通しが立った場合には投資残高をある程度戻していくことが考えられると思っているので、まずは足元の状況の見極めを続けていきたい。

・運用見通しについては、足元は海外金利が低下しているが、日本はこれから金利正常化という段階が始まったばかりだと考えている。そのため、金利上昇が緩やかなものとなり、ボラティリティもあまり上がらないよう、配慮してほしい。当社は、金利リスク量を抑制しながら中長期債を中心に投資を行っており、今後も今行っている投資をそのまま延長していくこととなると考えている。今後、マイナス金利解除、そして利上げの局面に入ってくれば、短期金利も上昇するため、短期国債にも資金を振り分けていきたいと考えている。

 ・相場について、海外金利の低下を受けて足元金利が下がってきているが、今後、日本銀行の金融政策の動向を見る中で、テーマが揃えば、また金利が圧力を受け若干ボラタイルな展開になると見ている。ただし、超長期債を買っていくニーズは定期的にあり、他資産と相対的にみても魅力的な金利水準でもあるので、引き続き、安定的に超長期債への投資を行うことになると考えている。

・昨今米国でタームプレミアムが上昇するといった局面もあったので、投資家として、財政規律や日本国債の格付が重要な観点であるということを改めてお伝えする。

・足元では米金利低下に伴い円金利も少し低下しているが、来年はまさに日本銀行の金融政策が本格的に変更されるのではないかという考えもある。一方で、米国では場合によっては利下げも視野に入ってくる状況かと思うので、金利の動きは10年債を中心に引き続き大きなものになろうかと考えている。ただし、超長期ゾーンについては、そのような大きな波についても足元かなり織り込みつつあると考えており、今後、そこまで大きな金利の動きにはならないと見ている。こうした中で、当社の投資スタンスとしては、引き続き負債に見合った形で超長期ゾーン、特に30年債が多いが、この辺りを中心に投資を検討していきたいと考えている。なお、10年債の金利がかなり上がってきた場合には、10年債も含めて投資対象を検討する。

・米国の金融政策次第だが、昨年はベアが2.1%強と30年来の高い水準であったものの実質ではマイナスであり、今年度も去年よりは高い水準となるかもしれないが実質ではマイナスであることに変わりないと思うので、いわゆる好循環とは言いがたい面がまだある。そうした中、FRBが場合によっては利下げしてくるという状況において、マイナス金利の解除があったとしても金利の上昇には限度があるかと思うので、当社としては淡々とALM上のニーズに基づき投資したいと考えている。

・今後の運用見通しとして、株式の上昇や円安により他資産からのリバランス資金が一部入ってくる局面があり、先物と20年ゾーンへの投資をしたが、足元は金利も低下してきているので慎重なスタンスを維持する予定。

・マーケットについては、今後リスクは沈静化していくという印象を持っているが、投資家にとってリスクが高いことには変わりないので、引き続き慎重な国債発行に努めていただければと思う。

・円金利への影響が大きい米金利について、足元の金利低下はやや急すぎると個人的には思うが、来年度を見通すと、経済の減速、物価の沈静化から利下げ開始の蓋然性が高いと考えている。利下げ幅については、現在の市場の織り込みに対し、上下に不確実性が高いのではないかとも考えている。日本銀行の金融政策については、来年4月までのマイナス金利解除を予想しているが、このことはすでに市場に織り込まれていると認識しており、むしろ、市場の関心は、物価目標が達成された場合の政策金利の水準や、日本銀行がバランスシートの縮小を開始する時期とそのペースの方に移っているのではないかと考えている。その点、足元の個人消費の弱さや、今後海外経済が減速する可能性を考えると、追加的な金融政策の正常化がマイナス金利解除後早い時期に行われる可能性は低いのではないかと考えている。

・米国の議論では、シリコンバレーバンクが3月に破綻した理由として、一つに米国の金融政策が急激に変化してきたこと、もう一つに決済預金全額保護の日本とは異なり預金保険制度が存在しないこと、が挙げられている。そうした意味において、米国では、日本が徐々に金融政策を修正していることについて、非常によいという評価となっている。
・クライメート・トランジション利付国債について、当局に確認してほしいのは、通常の5年債とクライメート・トランジション利付国債5年との金利差がどのようになるか。それがESGに対するプライシングということになるかと思う。
・もう一つ、違った観点から、(排出量取引制度として日本の一部地域で採用されている)キャップ・アンド・トレードからカーボンプライシングが算出されているが、クライメート・トランジション利付国債の利回りから債券の価格を出すところ(ESGに対するプライシング)と、日本で一部取引されているカーボンプライシングとは違ってくると思われる。それができると、今のキャップ・アンド・トレードから算出されるカーボンプライシングは必ずしもうまく機能していないということが言い得るのではないか。
・海外投資家がある程度クライメート・トランジション利付国債を購入する場合、金利平価説がどのようになるか調べることにより、海外投資家が同国債をどう見ているかが分かると思う。おそらく日本人の見方とは異なる。そういった点において、5年債と10年債で発行するというのは、市場の受け止め方を判断するのにとてもよいと思う。
・クライメート・トランジション利付国債に対する投資行動としては、流動性を判断して購入するのか、持ち切りで購入するのか、両方あると思うが、ぜひ市場を活発化させてほしい。

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問い合わせ先

財務省 理財局 国債業務課 市場総括係
電話 代表 03-3581-4111 内線 5700