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日時 令和4年12月2日(金)10:30~11:25

場所 財務省 第3特別会議室

内容 令和5年度国債発行計画の策定に向けた現状と課題について

〇令和5年度国債発行計画の策定に向けた現状と課題について、理財局から以下のように説明を行った。

・まずは、国債管理政策の現状として、令和4年度第2次補正予算における国債発行計画の見直しについて説明する。新規国債の増加額は約22.9兆円となった一方で、昨年度の財政融資資金の運用実績等を踏まえた調整により財投債を8.5兆円減額するなどした結果、国債発行総額は、約9.7兆円増の約227.5兆円となった。
 カレンダーベース市中発行額については、市場の状況を踏まえ、短期ゾーンを中心に増額することとし、2年債+0.3兆円、T-Bill・6ヶ月物+4.2兆円の、計4.5兆円増とした。

・カレンダーベース市中発行額の推移を年限別にみると、短期債の発行割合について、令和元年度は2割以下であったところ、コロナでの国債発行額の増額に伴い、令和2年度3次補正後には約4割まで増加したが、足元では約3割まで減少している。令和4年度第2次補正予算に伴う変更では、短期債中心の増額を行ったが、概ねのトレンドとしては短期債の発行割合を縮小してきている状況。

・国債発行残高については、令和4年度末の普通国債残高の見込みは、1,042.4兆円となっており、令和4年度末に初めて1,000兆円を超えるという見通しである。

・平均償還年限について、フローベースでみると、2次補正後は7年7ヶ月となっており、1次補正後の7年9ヶ月と比べると若干短くなっているが、令和3年度の7年3ヶ月に比べれば長い状況がまだ続いている。ストックベースでも同じような状況で、9年台を保っている。

・国債管理政策の基本的な考え方は、(1)確実かつ円滑な発行により資金を確実に調達すること、(2)中長期的な調達コストを抑制すること、の2つであり、そのために、市場との対話を丁寧に実施していくこととしているところ。こうした基本的な考え方は、今後も維持していく予定。

・内閣府の中長期試算に基づき、令和5年度以降も令和4年度2次補正後計画の年限構成割合を維持するものとして、財投債や復興債を除き将来の国債発行額を試算すると、内閣府の中長期試算は今年7月の数字であることに留意する必要があるが、令和6年度にかけて国債発行額が徐々に低下し、その後、比較的安定して推移するような見込みとなる。

・現在の金利の動向をみると、各国の金融政策の影響等を背景に、海外金利が上昇している。

・日本国債市場もつられる形で、超長期ゾーンを中心とした金利上昇がみられ、引き続き注視が必要な状況。

・イールドカーブをみても、カーブがスティープニングしていることが見て取れる。

・日本銀行の動向について、日本銀行の金融政策、国債買入オペの考え方が国債市場や金利に与える影響にも留意する必要。日本銀行の国債買入比率を見ると、残存1年超10年以下のゾーンを中心に、場合によっては発行額に対して100%を超えるような買入れがなされている。

・日本銀行が国債保有割合を増加させてきた一方で、銀行等は近年国債保有割合を減らしてきた。なお、令和2年度以降、銀行等の国債保有割合がやや増加傾向にあったのは、担保需要の増加等が寄与していたと考えられるが、日本銀行の新型コロナウイルス感染症対応金融支援特別オペの終了に伴う変化等には留意が必要である。

・生命保険会社については、資産と負債のデュレーション・ギャップを埋める観点から超長期ゾーンの国債を購入するという状況が続いており、国債保有額は増加傾向、年限別にみると、残存10年超の国債保有額が多くなっている。引き続き、超長期ゾーンのニーズは一定程度存在すると考えられるが、各社の対応の進捗には留意が必要だと考えている。

・地方銀行については、国債保有額は減少傾向にあったものの、概ね下げ止まっており、年限別にみると、残存10年超の国債の保有額が大きくなっている状況。

・個人による国債保有の動向をみると、国債発行残高に占める家計の保有割合は近年1%前後となっている。金利が高い時はもっと高い水準となっていたが、現在はそこまで伸びていない。

・こうした市場の状況や、投資家動向を踏まえ、令和5年度の国債発行計画について検討していくことになるが、現時点での当局の基本的な考え方として、今後様々な経済状況を見ながらではあるが、仮に国債発行総額の減額が可能となった場合、カレンダーベース市中発行額において、短期債を中心に減額しつつ、利付債の発行総額は現状程度として検討を進め、短期債に依存した資金調達構造を是正することを検討している。

・なお、足元の状況から大きな変化がないことを前提として、まずは検討を行っていきたいが、仮に市場環境に大きな変化があった場合には、弾力的に見直すことも排除していない。

・皆様からいただくご意見を踏まえ、検討していくこととなるので、本日は活発に議論いただけると幸いである。


〇出席者から出された意見等の概要は以下のとおり。

・当社の投資の原資である預金の動向に関しては、1%程度の増減であり、概ね安定して推移している。その中で、当社の日本国債への需要については、足元の名目の利回りやデュレーションの観点から、現状、引き続き20年債が中心になると考えている。足元、海外金利の動向を含め、未だ不透明感が強い環境が続いており、実際の投資は少し警戒的なスタンスで臨んでいる。
・現在から来年にかけては、日本国内のインフレの動向に加えて、引き続き米国を中心とした海外金利の動向、日本銀行の金融政策の変更に対する思惑等が動因になりやすいと見ている。落ち着きどころを見出しがたい展開が今後も継続するのではないかと考えている。米国をはじめとした海外の国債に比して、日本国債のボラティリティは相対的に低く、投資はしやすいという基本認識を持っており、認識の変更はない。今後も市場環境を比較しながら、慎重に投資を検討していく。
・令和5年度の国債発行計画については、当社の投資家としての需要面より、市場環境を踏まえた上で、コロナ対応で増額した短期債の減額を対象とする方向感について賛同したい。
・GX経済移行債(仮称)については、一般論として、投資家側のESG関連投資に対する関心が昨今、非常に高まっている。サステナブルファイナンスという文脈の中で、対外公表をするか否かにかかわらず、投融資の数値目標を設定している金融機関が多いのではないかと認識している。投融資をどのような要件でESG関連と認識するかは、各金融機関で独自の基準であり、それぞれ異なっていると認識している。収益性、流動性が確保される前提であれば、GX経済移行債(仮称)として個別銘柄の特定が可能であればありがたいと思う。さらに、外部認証が付与されていると、投資家需要も高まるのではないかと認識している。

・当社の日本国債への投資スタンスについては、保有残高自体は足元増える傾向にある。積極的に日本国債で資金を運用するというよりは、昨今の海外金利の上昇等で外債の含み損が発生し、また配当金収益が取れないため、外債を売却し、その売却代金の逃避先としての日本国債という位置づけをしている場合が多い。したがって、日本国債で金利リスクを大きく取ろうという意志があまりないため、年限としては残存5-7年程度といった中期ゾーンの後半あたりに資金を振り向けているのが現状である。
・一般的に、預金の残高は増えている一方で、融資はそれほど増加しないため、資金が余ってしまう。その意味でキャッシュ潰しという言葉を仮に使うとすれば、キャッシュ潰しニーズはある。その際、デュレーションのリスクを取っているのかという問題であるが、金融機関のリスク管理上はデュレーションがリスクとなる面もあるが、日本国債に関しては、中期ゾーンであればデュレーションのリスクは取ってよいという認識がある。一方で、キャッシュ潰しニーズに関しては、日銀当座預金のマクロ加算残高の基準比率も見て判断する必要があるのが現状である。
・リスク量については、最近1年間で市場のボラティリティが上昇しているため、特に観測期間を3年や5年ではなく1年間とした場合は、拡大していると認識している。掛け目や予算の計算もあるが、資産の残高が増えない場合でも、リスクの計測量が増えるといった現状がある。したがって、資金の振り分け先として、リスクの高いもの、具体的には、長期ゾーン、超長期ゾーンへの投資は難しいという現状がある。
・GX経済移行債(仮称)に関連して、当社は、グリーンやSDGsへの投資は、これから勉強するという段階にとどまる。地域金融機関としては、まず、地域の顧客の顔の見える融資や投資から始めるべきという考え方もある。

・当社の足元の状況であるが、資金ギャップが引き続き余剰にある中で、引き続き債券への投資を行っている。足元、少し金利動向が不安定ではあるが、一定の資金利益を確保するという観点から、残存10年超の国債も一部購入を検討していきたいと考えている。預金取扱機関のALMの観点からは、主な投資の対象は中期ゾーンであるべきとは認識しつつも、足元の資金利益のために、一部長いものを買っている状況である。今後、金利環境が変わる局面では、本来のALMの観点から負債のデュレーションにマッチした期間での投資を検討していきたい。
・GX経済移行債(仮称)に関連して、サステナブルファイナンスの目標設定をしており、収益性や流動性などを総合的に勘案して、既存の国債と同程度であれば、投資していきたいと考えている。

・足元で、経済全体として円の資金余剰感が強まっており、短期金利が低下傾向である。特に、受託関連の資金余剰が強まっており、それが流入してきているという事情がある。ただ、一方で、現在の水準で、日本国債への投資を相当程度増加させていくかといえば、簡単にはいかない。インフレ動向や来年の日本銀行の総裁人事などの先行きの不透明感もある。当社としては、おおよそ5年から10年でのALMマッチングを考えているものの、基本的には現在は慎重姿勢である。したがって、今回、利付債の発行額を現状維持するのであれば、当社の投資姿勢に合致するため、賛同したいと思う。
・GX経済移行債(仮称)に関連しては、サステナブルファイナンスの目標を定めている面もあるが、投資に関しては、未だ目線が定まっていないのが現状である。例えば、個別銘柄での発行の場合、日銀買入オペの対象になりそうだというメリットはあるが、発行量が限定的であり、流動性に懸念があるというデメリットもある。さらに、グリーンプレミアムが乗りそうだといったことや外部認証がどうなるかといった論点がある。これらの論点がクリアされれば、個別銘柄での発行もあり得ると思うが、これらの論点が解消しにくい場合は、やはり他の発行根拠法と統合して発行される方がよいと考える。

・預貸の状況に関しては、特段変化がない状況が続いている。バランス・シート上の大きな変化としては、日本銀行の新型コロナウイルス感染症対応金融支援特別オペの終了に伴い、負債サイドのオペの残高が減った一方、日本銀行に差し入れる担保として保有していた短期国債を減らした。今後については、本邦の金融政策の変更観測や米国の金融政策、インフレ動向を見極めながら、債券の保有形態を保有目的と合わせるオペレーションを行っている。
・令和5年度の国債発行計画に関しては、現状の金融政策が維持される前提であったとしても、短期債を中心に減額するという方針で問題ないと考える。
・イギリスで起こった事象が本邦で起こらない様にしなければならない。発行に際し、一番懸念されるのは安定消化に疑念が持たれ、日本国債が格下げ(含むネガティブウォッチ)になることである。格付を維持できるように努めてほしい。
・GX経済移行債(仮称)に関しては、統合発行・個別銘柄発行の論点があるが、可能であれば、個別発行の方が今後の発展性が見込めると考える。統合発行すれば資金調達としては簡便であるが、個別銘柄で発行となると、今後、プレミアム(すなわち通常の国債より利回りが低い状態)が発生することも考えられる。様々なテクニカルな要因はあるが、欧州諸国で見られるように、イールドカーブ上でプレミアムが見えるようなマーケットの育成が必要と考える。また現在、日本銀行の気候変動対応を支援するための資金供給オペなどがあるが、仮に将来、このオペの担保に対応することができれば、金融機関としては保有のメリットになる。このような仕組みとして全体で考えていくべきと考える。

・足元のマーケット環境としては、金利水準を考えた場合、米国の利上げの着地点が見えてきており、どの程度の金利の上限を考えておけばよいか検討がしやすくなっている。運用方針等の立案の際に計画が立てやすくなっていると思う。その際、日本国債については、基本的にスタンスの変更はなく、負債リスクにある程度見合うところまで一定の量を購入するというスタンスである。現行の金融政策が続く限りは、必然的にイールドカーブがスティープ化している面もあり、また、金融政策の変更観測もある程度反映されている超長期ゾーンも含め、デュレーション等の調整をしている。逆に言えば、イールドカーブ・コントロールが解除された場合は、中長期ゾーンに一定の資金をシフトしていくと考えている。
・令和5年度の国債発行計画については、短期債を中心に減額することで、テクニカルな面は多少あるが、特に問題ないと思う。唯一心配なのは、今後、日本銀行の金融政策に変更があった場合、かなり大きなショックがマーケットに起こりえると思う点である。最大の利害関係者であり発行当局たる財務省は、可能な限り、日本銀行と積極的な対話をしていってほしいと思う。
・GX経済移行債(仮称)については、統合発行した場合、GX経済移行債(仮称)といいながら、ほとんどを日本銀行が購入してしまう状況になりうると思う。仮にそういった状況になった場合、極めて違和感があると思うため、なにか制度上の工夫ができないか考慮した方がいいと思う。一方、個別銘柄で発行する場合は、トランジションボンドの形での発行がよく、第三者認証を取得した形が開示でも活用できる。さらに、日本銀行の気候変動対応を支援するための資金供給オペの対象となれば、その分プレミアムも乗ってくるため、銀行セクターとして投資しても説明が可能なのではないか。懸念点としては、スケジュールがタイトになっており、個別銘柄での発行をした場合に、年限を分散するなどの検討が日程的に難しくなっている。なお、個別銘柄での発行になった場合も当社のシステムの対応は特段必要ない。

・投資のスタンスであるが、負債である保険契約のキャッシュフローが基本として存在し、継続的に超長期ゾーンの債券を購入している。対象としては、30年債と40年債が中心となっており、相場動向が多少変わっても定期的に購入していくという投資行動をメインとしている。
・令和5年度国債発行計画に関する要望としては、短期債の減額については賛成するが、40年債の流動性の増加や40年債市場の育成のため、隔月発行より毎月発行が望ましいと従来考えており、引き続き検討してほしい。
・GX経済移行債(仮称)については、投資家がESG投資の結果を管理したいという考え方があるため、可能であれば個別銘柄での発行を行ってほしい。また、ニューマネーの投資については、超長期ゾーンが中心となっているため、長めの年限も入っているとありがたいと思う。

・足元のマーケットに対する見方としては、海外金利にある程度落ち着きが見られる一方、日本の消費者物価指数が40年ぶりの伸び率を示したこともあり、やはり日本銀行の金融政策の変更観測が高まっている。また、引き続き日本の財政規律が話題になることも多い。その意味では、円金利は、最近の海外金利の低下傾向とは相反する形で基本的には横ばいで推移している状況であると見ている。このような中、日本国債の投資方針であるが、当社を含む生命保険業界では、超長期ゾーンを中心とした負債とのマッチングニーズが引き続き継続している。また、為替のヘッジコストの影響などから海外の債券と比較すると相対的に日本国債の投資ニーズが高まっていると考えている。
・このような投資状況の中、令和5年度の国債の発行額については、短期ゾーンを中心に減額ということに賛同する。また、利付債の発行総額が現状程度というなかで、年限ごとの発行額の調整があれば、超長期ゾーンの発行増額も可能なのではないかと考える。
・GX経済移行債(仮称)については、国が個別銘柄での発行でGXに対応するということであれば、これに賛同する。仮に個別銘柄で発行された場合、投資家として準備期間は特段要しないと考える。一方で、実際の投資判断にあたっては、流動性、収益性、当社の投資に見合う発行年限か否か等の点を総合的に勘案したうえで、投資するか否かを決めることになると思う。
 
・足元の相場については、米国のインフレ率がピークアウトしたという見方が強まり、米国のターミナルレートに頭打ち感が出ており、日本国債の超長期ゾーンも一旦、金利上昇が止まり、足元では若干低下している状況である。ただし、米国のインフレ率が高止まりするリスクが相応にあり、今後、もう一度金利上昇の揺り戻しがあるか、あるいは、先月が金利上昇のピークだったのかは正直まだ見極めきれない状況である。
・令和5年度の国債発行計画に関して、当社では、長い保険負債の金利リスクへの対応が今年度下期においても継続中であり、引き続き、超長期国債へのニーズが一定程度存在する。超長期ゾーンに関しては、最低でも現状程度の発行額を維持して欲しい。さらに、2025年への対応に関しては、各社の開示情報を見た限りは、巡航速度で進捗していると見て取れる。したがって、前のめり感はないと考える。そのため、日本国債の超長期ゾーンの金利が一層低下した場合は、買いニーズは減少すると思う。一方で、ヘッジ付き外債が為替ヘッジコスト上昇後、ネガティブキャリーのアセットになってしまっている。日本国債の超長期ゾーンの金利がさらに上昇していくことが仮にあれば、ヘッジ付き外債から日本国債の超長期ゾーンへの生命保険会社の投資のシフトがかなり巨額で起きるのではないかと考える。生命保険各社の予定利率は、公表ベースで1.5~2%前後であり、各社で異なるが、平均負債コストに見合った水準まで日本国債の超長期ゾーンの金利が上昇すれば、相当程度力強い買いが入ってくると思う。その意味では、発行額の増額も考えられると思う。
・GX経済移行債(仮称)に関しては、一般論として、当社を含む機関投資家はESG投資に力を入れており、個別銘柄として投資残高を積みたいという考え方はある。しかし、ESGといっても、あくまで純投資であり、価格に顕著なプレミアムがあると、投資判断は分かれると思う。特に生命保険にとっては、負債調達コストは変わらないため、銀行セクターとは考え方が異なる。償還期限が2050年までと認識しており、発行年限が超長期ゾーンの場合、20年債が発行されれば、生命保険も投資できると考える。外部評価機関の認証は、認証ありの方が当然良いが、マストではない。仮に認証がなかったとしても、個別銘柄で発行されて投資すれば、当社もESG評価機関に評価される立場であるが、投資したとアピールすることも可能であるし、言い方は難しいが、皆が認めれば、それがグリーンなりトランジションなりになるとも考えられる。

・令和5年度の国債発行計画については、短期債を減らすことが国債管理政策としても望ましいと考えており、賛同する。
・GX経済移行債(仮称)については、投資の枠があるわけではないものの、サステナブルファイナンスには力を入れている。同じ条件であれば、なるべくサステナビリティに資するものに投資している状況であり、可能であれば個別銘柄で発行してもらいたいと考える。認証は必要ないかもしれないが、資金使途に関しては当然発行体のことを信じているものの、調達した資金がグリーン投資に充当しているかの確認は、投資家としてはしなければならない。充当を確認できる仕組みを確保した上で、個別銘柄で発行していただければ、場合によっては既存の国債から入れ替えることも含めて考えられると思う。

・足元のマーケットの状況であるが、グローバルなインフレ率がピークアウトを迎えた可能性もあり、今後しばらく不安定な動きが続く可能性があるが、徐々に落ち着きを取り戻していく可能性がある。年金の給付が引き続き多く、日本国債の新規投資にはなかなか向かわない状況である。現状の超長期債のリスクプレミアムを勘案すると、10年以下のゾーンを中心に、金利低下した局面で売却していくことが考えられる。外債については、来年度以降、利上げがピークを迎えて利下げに向かう可能性もあるため、現状はウェイト維持という方針としている。
・令和5年度の国債発行計画については、短期債の減額について賛同する。
・GX経済移行債(仮称)について見解はない。

・足元の状況であるが、アセットマネジメント会社として、顧客に投資を促す仕事をしているが、顧客の目線は海外のクレジットが中心となっている印象である。為替ヘッジについては、これまでは海外のクレジット投資の際は期間を含めてフルヘッジが一番オーソドックスな投資のスタイルであった。しかし、最近1年間では、ノンヘッジの方が圧倒的に収益性が高かったため、ヘッジ比率について本当にフルヘッジでよいのかどうかを機動的に見直す顧客が増えている。
・日本国債に関して、足元で大きな需給環境の変化はないと認識しており、短期債中心に減額という方針に全く異論はない。一方で、市場の関心は、まず日本銀行の現行の金融政策の解除がいつあるのかという点にある。見通しとしては、解除が結局ないという可能性もあり、解除が行われたとしても、日銀買入オペの増額等で十分対応可能という印象もある。しかし、念のため、場合によっては年度中に発行額、発行年限の見直し、特に10年以下のゾーンが、インパクトが大きくなると考えられるため、柔軟に運営してもらえると非常によいと思う。
・GX経済移行債(仮称)については、投資家の目線で言うと、ぜひ個別銘柄での発行、すなわちグリーン国債にチャレンジしてほしいと思う。日本国債の投資家層の拡大が、我々日本の投資家を含めた大きなミッションだと考えている。グリーン国債ということであれば、発行額もかなり大きくなると認識しており、海外のパッシブ投資家含めて無視できない存在になってくるとの印象がある。これを契機に、特に欧州中心だとは思うが、投資家層の拡大につながればよいと思う。

・足元の運用方針については、デュレーションは引き続き警戒的に見るというスタンスである。また、海外のインフレの状況もピークを打ったのか、リセッションとなり従来のように利下げに向かい優しい中央銀行みたいな世界にまた戻っていくのか、インフレが高止まりして利下げできないのかは判断がつかず、警戒的に見ている。加えて、日本の物価の状況であるが、日本銀行が公表する基調インフレ指標は、従来、加重平均値がなかなか上がらず、動かない物価の象徴と評価されていたと思うが、11月22日の発表の10月の数値では0.5%から1.1%まで上昇したということで驚いた。しばらく見ないと、これが基調的なものか否かはわからないが、賃金交渉の結果、企業の価格決定力が上がり、ポジティブな状態になって、インフレ率が1~1.5%の間にアンカーされれば、日本銀行のイールドカーブ・コントロールの解除も見えてくると思う。2023年6月くらいにならないと分からないと思うが、慎重なスタンスで判断していきたいと思う。
・令和5年度の国債発行計画であるが、残存30年超のゾーンについて需要がある程度存在すると考えている。30年-40年のスプレッドの推移を見ても、なかなか拡大しておらず、14回債と15回債はクーポンの違いからスプレッドが拡大しているが、それ以前の銘柄はほとんど動いていないと認識している。したがって、40年ゾーンならば投資家のニーズが強いと推測している。よって、40年債については、毎月4,000億円の発行で、年間ではやや増額した形を要望したい。
・現状の日本銀行の政策が続く前提では、例えば、昨日の10年債入札では発行された途端に、殆どが日本銀行にそのまま入ってしまう状況がある。国債市場特別参加者が落札ランキングのために積極的に応札し、そのまま流してしまうこともあるかもしれないが、残存5-10年ゾーンの流動性維持という意味では、現在の指値オペの落札額だと吸収超となってしまうため、流動性供給入札において、残存5-15.5年をより残存5-10年に重点をシフトしていくような対策を検討してほしい。
・GX経済移行債(仮称)については、ヨーロッパでも投資が行われており、特段の準備が必要ではなく、投資できる状況である。しかし、やはり流動性が重要であり、ある程度年限を絞った形で発行することで流動性を担保してもらえると、より投資しやすい状況になると思う。

・まず日本国債の見通しと来年度の発行については、引き続き、米国の金融政策の影響が大きい状況が続いていると認識している。ただし、米国の金融政策については、引き続き不確実性は残るものの、いわゆる利上げサイクルのピークが概ね見えてきたところであり、市場の関心は利下げの開始時期とその幅に、徐々に移っていくのではないかと見ている。足元の米金利の低下が、このまま低下トレンドになるとまでは考えていないが、来年度を見通すと、おそらく金利上昇の余地を再度探るというよりも、低下余地を探るような展開ではないかと考えている。そうしたなか、日本国債への需要であるが、これまで超長期ゾーン中心にイールドカーブ全体に不安定な状況があったが、この状況はいわゆる日本固有の事情である。すなわち、日本銀行の正副総裁の人事が固まり、金融政策の方針が明らかになるまで続く可能性がある。ただし、日本銀行の金融政策の変更の有無にかかわらず、金融政策の方向性が明らかになり、かつ、海外主要中銀についても利上げサイクルの終了などの不確実性の低下が確認できれば、日本国債への需要は相応に回復する可能性が高いと考えている。したがって、令和5年度の国債発行計画については、発行総額を減額する前提に立つと、減額は短期債を中心に行い、利付債の減額は考えなくてよいと思う。
・GX経済移行債(仮称)であるが、個別銘柄での発行として例えばグリーン国債を発行することは、いわゆるカーボンニュートラルへの取り組みを内外に示すといった観点から、大変意義があると考える。ただし、投資顧問会社は、個々のマンデートの運用目標とガイドラインに応じて、それらに忠実に運用を行っている。足元で運用しているファンドの例について言えば、例えば運用目標がベンチマークを上回る収益を獲得するといった目的のファンドの場合、同一発行体で同一年限の債券が二つある場合、おそらく利回りの高い銘柄を選ぶといった投資行動になるだろう。

・投資家の方々の関心はやはりアメリカの動向と、日本銀行の金融政策が今後どうなるのかにおそらく尽きるのだろうと思う。国債発行計画との関係で重要なのは、今後国内のインフレ動向や新しい総裁の方向性が定まるまでは、日本銀行の金融政策がよくわからないなかで運営していかなければならないということである。今後、令和5年度に向け、イールドカーブ・コントロールが緩和あるいは解除され、正常化に向かう場合には、金融市場への大きなインパクトとなる可能性がある。その際には、市場との対話を必要に応じて機動的に行うため、必要な場合には本懇談会を随時開催するということが、市場との対話の密度を高める観点から重要ではないかと考える。一方で、イールドカーブ・コントロールが何らかの事情や理由により、継続しなければならないとなった場合は、個人向け国債の保有比率が低いということを考えないといけない。個人の場合、満期保有の割合にもよるが、仮にイールドカーブ・コントロールが続く場合、個人の国債保有比率を上げたいということであれば、以前検討されていたように、物価連動債を個人向けに発売するといった工夫が必要ではないかと思う。
・GX経済移行債(仮称)については、やはり大きな流れとして、政府もしくは市場全体としてGX経済移行債(仮称)の気運を高めていくという観点から、流動性や収益性の問題があるが、個別銘柄として上手く流通するように国債市場を育てるということが重要ではないかと考える。

 

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問い合わせ先

財務省 理財局 国債業務課 市場総括係
電話 代表 03-3581-4111 内線 5700