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日時 令和4年10月25日(火)10:30~11:50

場所 財務省 第3特別会議室

内容 令和4年度第2次補正予算に伴う国債発行計画について

〇令和4年度第2次補正予算に伴う国債発行計画について、理財局から以下のように説明を行った。

・資料の通り、9月30日の閣議にて総理から、10月末を目処に「総合経済対策」を取りまとめるよう指示があり、その内容を踏まえた令和4年度第2次補正予算が国会に提出される予定である。

・同補正予算への対応として、令和4年度第1次補正予算と同様に、国の内部での資金の調整により、カレンダーベース市中発行額を維持することもありうると考えている。

・他方、現時点では、補正予算の規模や国債での要調達額は不明であり、カレンダーベース市中発行額の増額が必要になることも考えられるところ、そうした場合を想定の上、国債発行の増額が可能な年限やその優先順位、理由等も含め、ご意見を賜りたい。

・なお、仮に増額を行う場合には、令和5年1月~とすることを検討しており、年度末までの期間が短いことには留意する必要があると考えている。増額の時期についても、ご意見があれば、教えていただきたい。

〇出席者から出された意見等の概要は以下のとおり。

・足元の国債購入余力については、日本全体の低い預貸比率が継続していることを見ても分かるとおり、引き続き潤沢な預金があり、国債購入の原資は確かにあるということは変わっていない。基本的にALMの観点から一定の金額を購入しているが、イールドカーブ・コントロールで過度に抑えられている中長期ゾーンはなかなか購入できないため、超長期ゾーンを中心に最低限の購入を行っているというのが実状。
・将来の中長期ゾーンの購入については、今の日本銀行のイールドカーブ・コントロール政策が変わることが前提という話になってしまうが、ALMの観点からは負債としての預金のデュレーションには限りがあるなかで、基本的に、ALM上よりマッチする中長期ゾーンを中心に購入したいというニーズは変わらない。
・したがって金融政策が正常化すれば、5年債、10年債、もちろん2年債もだが、いわゆる中長期ゾーンに購入のターゲットを移して、負債見合いでの購入を継続していくことになると考えている。マイナス金利導入前のようにそれなりの金額の5年債、10年債を購入できる状況になることが望ましい。
・金融緩和の調整を超えて、金融引き締めまで行くような状況になり、政策金利を上げ始めるとなると、そもそもイールドカーブの形状が大きく変わってしまうため、国債購入の判断はかなり難しく、ALM上一定の購入は続けるものの、足元のようなかなり慎重なスタンスに戻ってしまうと思う。イールドカーブ・コントロールの解除、マイナス金利の解除に留まっていれば、イールドカーブのスティープ化が続くため、無理に買い向かうということはできないと思うが、政策変更がある程度マーケットに織り込まれれば、負債とのバランスもあるので、一定の購入余力はあると考えている。

・グローバル分散投資で、利回りの高かった外国債、クレジット商品などに投資しており、残りを日本国債として、すごく小さなポーションで投資していた。今後、金利が上がっていくことで、日本国債の相対的な魅力が増す局面では買い余力は相応にあると考えている。
・ゾーンは、コア預金などの負債見合いで買えるもの、つまり10年以内の国債には相応に買い余力があると考えている。ただ、昨今の市場の動きで、評価損も抱えている状況なので、買い向かうというのは非常に難しい局面である。満期保有の考え方も使いながら対応して行きたいというふうに考えている。

・コロナ禍前からのマイナス金利下で預超ギャップが大幅に拡大した。日銀買入が進むにつれ、現在、日本銀行が保有している日本国債500兆円程度の反対側で、預金取扱金融機関が買入オペに応札し債券を売却して、日銀当座預金に資金が溜まっているという状況が続いている。したがって、預金取扱金融機関のバランス・シートが大きく膨らんでいるため、買い余力は相応にある。
・ただし、この間国内は低利回りの状況が継続したため、外債へ投資した投資家が多く、米国短期金利が400bps以上金利上昇した中において、投資家は少なからず含み損を抱えている状況にある。したがって、しばらくの間、この含み損失が解消するには時間が掛かり、なかなか買い余力が復調しない状況と思われる。
・将来的にマイナス金利が解除されて金利が付いた場合には、預金取扱金融機関においては、2年債、5年債のあたり、ボリュームゾーンで中期ゾーンを買うことがニーズとして非常に高い。規制により、保有できる金利リスクに上限があるため、現在、日本銀行に置いている資金が少しでも運用できる環境になると、長いゾーンよりも中短期ゾーンに資金を回すニーズが出てくる。
・国内投資家は、円は調達コストがほとんど掛からない一方で、外債はドルファンディングをつけて、投資しているので、逆鞘になりやすい状態。金利の水準というよりも、調達環境含めた環境の変化が、外債から円債の方へ回帰を促すのではないかと考えている。

・海外の投資家については、日本銀行が2、5、10年債の少し安いところで金利をコントロールしているので、ニーズが出てこない状況。国内の投資家については、基本的には20年超のゾーン、すなわち、それなりにイールドカーブが立っていて理論値に近いと理解できるところを中心に買う先が多いという印象。
・20年、30年、40年というゾーンは、だいぶ流動性が薄くなってきているというのが正直な印象。
・売買額が少しでも大きくなると、だいぶ引いたオファービッドになる。これは日本銀行の金利コントロール下にある先物ゾーンと、超長期ゾーンとで市場が分断され、先物によるヘッジ機能が低下しているためであろう。したがって、超長期ゾーンの増額は、入札の時に札が集まらず大きく流れるというリスクを内包していると思う。
・10年債、5年債、2年債あたりであれば、日本銀行のコントロール下でもあり、流動性もそこそこあるので、1回の入札当たり1,000~2,000億円の増額でも大きな問題はないか。

・足元の国債市場の状況について、引き続き米国市場の影響が強い状況と認識しており、アメリカのインフレ率が2%に下がるためには、どの程度の経済の減速、後退が必要なのか、そのためにはFFレートをどこまで引き上げればいいのか、ピークは近いと思っているが、引き続き不確実性が高い状況にあると認識している。
・日本については、日本銀行は金融緩和継続の方針だが、外部環境、さらには日本固有の事情として、日本銀行正副総裁交代に伴う政策修正を織り込む準備といった動きもある。
・もう少し先まで見通すと、コロナ禍を経て、コロナ前のディスインフレ的な経済状況に戻るのか、それとも、インフレが定着するのか、というのが非常に大きな関心事で、足元の金利上昇の起点となっているアメリカのインフレについては、フィリップスカーブが上方にシフトしたのか否か、そうした議論に集約されるのではないかと考えている。
・先般、経済見通しで、2024年に4.4%の失業率と2.3%のインフレを対応させているが、仮に今フィリップスカーブが上方にシフトしているとすると、さらに強い引き締めが必要ということになろうかと思う。フィリップスカーブが上方シフトしているように見えるのは、いわゆる超過貯蓄が原因ではないかと考えており、超過貯蓄がある程度解消されれば、コロナ前のディスインフレ的な世界に戻る可能性の方が、高いのではないかと考えている。ただ、その時期がいつになるかはなかなか見通せない。

・日本国債は、分散投資の一アセットという位置付けで、名目利回りやデュレーションなどを勘案すると、現状、20年債への投資が中心となっている。
・ただ、足元に関しては、米国中心の海外金利の動向に非常に動かされやすい展開が続いており、非常にボラティリティが高く、不用意にはなかなか手が出せる状態ではないという認識である。このため、超長期ゾーンでは発行を控えて、日本銀行のYCCによって相当程度サポートされる10年以下、特に10年ゾーンでの発行が望ましい。
・マーケットの方は、日本国内のインフレ動向もさることながら、引き続き海外金利の動向に振らされやすい展開になりやすいという風に見ており、特に米国が利上げを継続するなかで、引き続きアメリカのインフレ、あるいは雇用の動向なりで、アメリカの政策金利のターミナルレートのリプライシング等、中長期ゾーンの水準の調整といったことが今後も繰り返されるだろう。
・債券投資家にとっては、厳しい局面であることに変わりはないが、日本銀行による購入サポートが当面続きそうな日本国債は米国や欧州をはじめとした他国の国債と比べればまだボラティリティは比較的低いと認識している。
・そういう意味で、日本国債は、投資しやすいアセットという認識で、今後は、市場環境を見ながら慎重に投資を検討していきたい。ただ、足元の円安によって、円ベースのバランス・シートは拡大しており、言い換えると、外貨のアセットに投資するときに必要となる外貨資金、為替市場で換金する際の円の資金需要が高まっている状況で、投資をしていなくても、円安が進めば、その分多くの円が必要になるということもあって、ものすごく大きな余力があるかと言われるとそれほど大きな余力はないと認識している。

・引き続き、ALM運用という方に舵を切っている状況。長い負債に対しての運用という意味では、引き続き超長期ゾーンに投資ニーズがある。保険は、金利で需要が変わる部分はあるが、金利の情勢がどうなろうとも、現在の水準の保険料収入が当面は続くのではないかと考えている。足元、金利上昇している中で、一定程度の超長期ゾーンの購入を続けているが、当社は未だに負債コストの方が高く、まだ円金利だけで予定利率を確保できている状況ではない。引き続き、海外の様々な資産なども含めて運用している状況。相場の見通し、海外の他資産との相対的な魅力といったことを比較して投資している。超長期ゾーンへの投資余力はあるが、昨今の金利の変動の状況などに鑑みると、国債の増額という言葉に対して、今の市場環境というのはネガティブに働く可能性もあり、慎重に対応してほしいと一投資家として思っている。
・外債の投資については、オープンでの投資、短期のヘッジをロールさせながらの投資、長期にわたって円金利化したような形での投資とあり、様々である。相場の見通しによって使い分けをしている。特に外国社債などに対しては、円金利化した資産の方が現在円金利よりは高い利回りが得られる。これらを比較しながら日本国債の投資額を決めている。

・この1年、2年の間、証券ポートフォリオにおける国債の保有比率がかなり高まっている。ただ、積極的に日本国債を購入したというより、結果として購入したといった意味が強い。理由の一つは、足元この1年、2年、預金がかなり増加している割に、融資高はそこまで伸びず、いわゆるキャッシュ潰しのニーズが生じている。一方で、日銀当座預金を大量に置くわけにはいかないといった事情もあって、国債を増やした。結果として、利回りがプラスである中期ゾーンから長期ゾーンまでといったイメージで購入している。二つ目は、海外の金利上昇で、外債にかなりの含み損が出て、ある程度は処分せざるを得ず、外債の処分の代わる金の置き場として、やはり中期ゾーン等を選択した。さらに、三つ目として、足元、かなりボラティリティが高まっており、残高は増えないが、市場リスクはかなり増えており、超長期ゾーンはちょっと今買えないという状況にある。
・地方債は定期的に購入している部分はある。本来、地方銀行のポートフォリオであれば、安定収益を求めるバイアンドホールド型が多かったと思っている。足元、外債は逆イールドになっており、日本国債は絶対利回りが足りないということで、むしろ機動的な売買が増えている。今、地方債を買って売るといったことはなかなか想定できないので、流動性の観点からは日本国債の方が先である。日本国債の代わりに地方債を買うのであれば、これはポートフォリオのなかで保持し、場合によっては持ち切りになっても仕方ないと考えている。

・流動性が高く、いざというときに売れるという位置付けで、日本国債を保有している。昨今、自然災害が多発しているということもあり、主力商品の一つである火災保険の収益性がなかなか改善してこない状況。現在、値上げなどの収益性の改善に取り組んでおり、原資が出てくると思っている。一方で、契約の短期化を進めており、過去には30年の負債に合わせて長い残存期間の日本国債を買えたが、契約の短期化により、どちらかというと、5年から10年くらいのゾーンになると見ている。
・自動車保険は一時期に比べて収益性は安定しており、一定程度の利益を稼げている状況。その収入はどちらかと言うと、国際分散投資をしており、日本国債より海外の公社債、オルタナティブ投資をしている状況。円金利が正常化してくれば一定程度国内に回帰するということは当然十分あろうかとは見ている。

・預金超を背景として余剰資金の運用ニーズは常にある状況。担保ニーズもあり、一定量の国債の購入を続けている。ALMの観点からは、本来であれば中長期ゾーンが主な投資対象となるところであるが、足元の金利環境等を踏まえると当該ゾーンでの運用が厳しい中、一部20年ゾーンまで投資をしている。今後については、マイナス金利が解除される局面では、ALMの観点も考えると、中長期ゾーンを中心に投資していくというスタンスに戻るのではないかと考えている。

・保険の超長期の負債を抱えているということもあり、そのデュレーションリスク、キャッシュフローを埋めていくというニーズが定期的にあり、30年債と40年債を毎年購入している。契約動向は安定しており、埋めきれていない40年超の負債が毎年短くなってくるので、そこを埋めていくというニーズがある。したがって、安定して超長期ゾーンのニーズはあると思っている。調達が長期の円での負債であり、低金利状況が今まで続いていたため、海外投資を現在まで行ってきたが、ヘッジコストの増加等もあり、国内によりウェイトがかかっている状況。今後、金融引き締め等でイールドカーブの動向は、先行して超長期ゾーンが上がってきているという印象があり、イールドカーブ・コントロール解除の段階では徐々にベアフラットになっていくのではないかと思う。金利が上昇した場合、引き続き超長期ゾーンは買いがある中で、利回りが獲得できるようであればプラスアルファで中短期ゾーンにも買いが出てくる可能性はあると思う。

・まず、最近の状況として、同じ業態では、来年度以降のYCC修正の可能性を考えて、金利リスクの拡大に慎重になっている投資家が多いようにみている。また、金利のボラティリティが高くなった影響で、リスク量が増加して、金利リスクテイクを抑制しているという声も増えつつある。個別にはタイミングを捉えて投資している投資家もいるが、全体的にはこのタイミングで積極的に金利リスクを取っているようにはみえない。当面の運用見通しについては、来年度のYCC修正の可能性も考えて、割高な銘柄を避けて、足元のように金利上昇が加速したタイミングで段階的に利回りの高い超長期ゾーン等を限定的に購入していくイメージ。増額余地としては、プラスの利回りになってきた2年、5年ゾーンは、負債のデュレーションの点からも買いやすいかなと思う。

・足元の状況は、ボラティリティが高い。海外金利上昇に伴って、流動性の低下と含み損によって国内投資家の体力がなくなっており、リスクテイク能力もなくなっている。
・10年超をヘッジしようと思うと10年超を売らないとヘッジできないという状態で、カレント10年の金利が動かないためヘッジツールとならず、ヘッジの手段が乏しくなっている。10年以下のゾーンについても、先物の裁定機能が6月半ばに壊れ、それ以降、ベーシス取引を行う参加者も減っている。先週末には再びIRRがマイナス4%近くになったが、その背景には、近年にない流動性の低下とリスクテイク能力の低下がある。
・10年超のゾーンはリスク抑制的に投資を検討しようと考えている。先物のところは明らかに歪んだ状況になっているので、10年以下のゾーンでリラティブバリューを追求したいと思っている。
・先物は最終売買日には現受け、現渡しにより現物債に替わる。例えば、先物12月限は12月20日には357回債に替わり、現状の日本銀行の方針が続けば357回債は日本銀行に0.25%では買い取ってもらえることとなる。したがって、その時点に向けて収束していくことはほぼ間違いない。通常なら、これほどIRRが広がることもなく、先渡しの利回りが0.25%以上であればアウトライトで買う人が出てくるので大きく売られることはないはずだが、それができないような今の状況は、市場参加者の体力が落ちているということだと思う。
・ベーシスの変動は限月交代までの期間が短くなってくれば落ち着いてくる。11月になり、カレンダースプレッドのマーケットが立ち、限月交代が意識されるようになるに従って、先物の裁定機能は戻ると考えている。ただ、限月交代以降は、次の先物最終売買日まで3か月以上の期間があるため、特に年末に近づいて流動性が低下すると、6月よりもひどい状況になる可能性も十分あると考えている。

・中長期ゾーンの買い余力ということであるが、もう10年ほど前から、キャッシュフローはアウトフローという状況になっている。
・新規に日本国債を購入する機会は多くない。相対的バリエーションという観点で、超長期、15年、20年、30年ゾーンは、かなりプレミアムを要求されるような水準になってきている。グローバルで見ても、財政プレミアム、ボラティリティに対するプレミアムなどが要求されるので、投資スタンスとしては、超長期ゾーンを慎重に、機会があれば購入するというようなスタンスで考えている。
・今後、日本銀行の金融政策の正常化等があった場合の対応だが、政策アセットミックスが定められているので、基本的にあまり変わらない。基本的には割安のゾーンに少しずつ寄せていくというような形で投資を継続しながら、キャッシュアウトフローもあるので、どちらかというと、購入というよりは、場合によっては、金利低下局面があれば売却というようなことが考えられるのかなという状況。

・現下のマーケット状況を踏まえ、基本的には超長期ゾーンの円金利資産の投資を継続していく。その中で超長期の日本国債がコアになっていくという方向性である。当社の投資ポートフォリオの半分以上が日本国債であり、長年、長めのゾーンの日本国債を購入してきたため、そこがコアとなっている。
・保険契約は、長いデュレーションの負債であり、長期の投資ニーズが引き続きある。特に、10年超となると、日本国債を中心としたポートフォリオを長年組んできている。
・昨今、コロナ給付金など保険金の支払いが増えているので、一定の流動性も確保するという点では、長短織り交ぜた運用を引き続き行っていくという考えである。
・日本国債以外の、残りの半分は外国債、社債、株式、オルタナティブなどで資産運用の多様化を図っている。ヘッジコストが上がっているので、外債は一部売却して、新しいものに振り替えていくオペレーションを行っている。
・最近のマーケットはボラティリティが高いので、市場参加者は非常に慎重な姿勢になっており、流動性という観点で、調達の安定性を考えると、今回の補正予算に係る増額については、年限の短いもの、2年、5年、10年以下のゾーンで、流動性が一定程度確保されるところでの対応というのが、望ましいのではないかと考えている。

・この半年ほどの目まぐるしい動きをFOMCのドットチャートで振り返ると、政策金利のピークは3月のFOMCで2.75%、9月のFOMCで4.875%。これに対して、ロンガーランの中立金利は2.375%から9月は2.5%になった。さらにマーケットの最近の動きは、OIS先物で見た政策金利のピークは、先週5%を少し超えた一方、5年先5年物のBEIは半年前も今も2.4%とほぼ変わっていない。政策金利の引上げは、昔の3倍速のような感じで、足元の物価上昇に対して、長期のインフレ期待を安定化させるように、あるいは、マーケットがそのように織り込むように、引き上げられてきたと見ることができる。
・ドル円はドルの方が急速に強くなり、10年債は指値オペの水準に張り付き、取引が成立しない日も多くなった。日本国債の流動性は大変心配。OIS一か月物の各年限の金利を見ると、ピークは来年5月、5%近傍となっている。この点から見ると、年内はまだ3倍速の利上げが続きそうな感じがする。
・日本銀行の昨年3月の政策検証では、YCCの金利引下げの効果は1%程度となっており、もし日本銀行の金融政策に変化があるとすれば、円高を見込む海外投資家による日本国債買いによって円高に向かい、長期金利の大きな上昇には抑制がかかるのであろうという風にも見ることができる。
・トラス英首相の辞任は、物価高騰、そして貿易赤字の中でエネルギー巨額の価格高騰対策、そして減税による成長戦略という公約を実現しようとしたことに対して、マーケットが冷静に評価を下した結果であると思う。ここに至るまでに、7月7日に、予算責任庁(Office for Budget Responsibility)がFiscal risks and sustainabilityというレポートを発表しており、それによると、このままではイギリスの公的債務残高の対GDP比は50年後に320%になり、これをコロナ禍前の75%に戻すには10年ごとにGDPの1.5%相当の増税・歳出削減を行う必要があると指摘していた。また、アメリカにおいては、2021年のバイデンの歳出計画は半減され、Build back betterという法案になり、さらに今年の8月16日に歳出規模が圧縮され、2022年インフレ抑制法(Inflation Reduction Act of 2022)として成立した。イギリスとアメリカと、非常にコントラストある動きになった。イギリスは、政策金利を引き上げた翌日の9月23日にトラス首相が成長戦略を発表して、トリプル安を招いて注目を集めたが、アメリカがインフレ抑制法を成立させた頃から、イギリスでは政策金利を引き上げると長期金利上昇とポンド安という新興国のような状況に陥っていた。
・7月29日に日本は経済財政の中長期試算を発表した。プライマリー・バランスを2025年度までに黒字化しようという目標を現在掲げているが、その目標が作成された4年前の試算と今回の試算を比べると、今回の方が2025年のプライマリー・バランスの赤字が小さくなっている。それは、2018年10月から景気が悪化し、その後のコロナ禍の中でも、税収は4年前の想定よりも高く推移しており、歳出面では、当初予算で歳出の目安という規律をきっちりと守ってきたため。今後も歳出の目安を守り、補正予算や新たな財政需要に対して財源確保義務を守るということを行えば、2025年度にプライマリー・バランスの黒字化を見込むことができる。物価対策、成長戦略と言って、大型の経済対策と第2次補正予算を組むようでは、イギリスの轍を踏んでしまうことになってしまう。財政健全化を進めていく必要があると思う。

・増額余地について、この数か月はYCCが続くという場合は、一つは流動性があって最終的に捌けていくだろう中長期の10年までのゾーンというのは魅力的な候補であるが、賃金水準が上昇しない場合に国民にどこまでインフレの負担、すなわち現金の価値の目減りを押しつけているのかという点も考えなければならない。物価の先行指標である企業物価指数がかなり上がっており、CPIもあまり楽観ができないとなると、個人にどこまで負担を負わせているのかということをしっかりと議論をする必要がある。富裕層は色々と投資先を選べて投資顧問も雇え、低所得層は現金・現物給付などで補助がされていくと思うが、現金資産を持たざるを得ない中間層は取り残されることになる。そうなると、中間層がより一層没落してしまうことになるわけなので、YCCが仮に続いてしまったらどのような副作用が国民に生じるかということについて真剣に頭の体操をしないといけない。
・アメリカのシリーズI(Iボンド)は、金利が半年ごとにCPIに連動するもので(2022年10月現在の金利は9.62%)、教育に支出した場合に一定の税制優遇を与えるなど、中間層が保有する現金の価値を守る手段を国が提供している。子どもの教育資金、住宅購入の頭金、老後資金、それら全てをフルインベストメントというのはリスクが高いとなった時に、現金を持たざるを得ない中間層に配慮するのか、それとも配慮しないのかという点について、欧米諸国のような高インフレの状況でないうちにしっかりと議論していくことが重要と思う。
・YCCが終わったら金利の状況は変わるので、大きな混乱にならないように、住宅ローン等における固定金利と変動金利のリスクをしっかりと考えた上で、個人もストレステストをやってくださいということを今の段階で周知をするべき。
・イギリスの状況を見ても、市場の信認を得るために財政規律を守っていく必要がある。東日本大震災の復興債は、市場に対して中長期的に復興特別税という形で償還財源を確保するということを説明した。イギリスを半面教師にして、今回の補正予算のための国債の増額分、そして、これまでのコロナ対応のための国債の増額分についても、しっかりと財政規律を守り、中長期的な財政健全化、財政の持続可能性に向けた見通しをいうのを併せて出さなければならない。イギリスの状況を他山の石とすべきであって、万が一、同じような状況に陥ってしまうと、一人一人の国民が大きな影響を受けることになる。

・個人的には、ネットの炭素税というのが、ポートフォリオの歪みを抑えるので、新しい税として一番よいと考えている。物価連動債というのも凄くいいアイデアだと思ったが、高所得層も買えてしまうので、むしろトランスファー(所得移転)という形でやる方がいいのか考える必要があるのではないか。


 

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問い合わせ先

財務省 理財局 国債業務課 市場総括係
電話 代表 03-3581-4111 内線 5700