このページの本文へ移動
 

日時 令和4年3月22日(火)

場所 書面にて開催

内容 
1.  令和4年度における名目利付債のリオープン方式について

○令和4年度における名目利付債のリオープン方式について、理財局から以下のように説明を行った。

・翌年度の名目利付債のリオープン方式については、毎年3月の本懇談会において議論し、皆様の御意見を踏まえて決定することとしている。本日は、令和4年度における名目利付債のリオープン方式について皆様の御意見をお伺いするもの。

・10年債については、平成27年度以降、償還日が同一の国債を発行する場合で、かつ、前回債の表面利率と入札日の市場実勢の乖離が概ね30bps以内の場合には、リオープン発行としている。
 この点につき、事前に皆様から御意見をお伺いしたところ、殆どの参加者から、現行方式を支持する御意見を頂戴した。
 当局としても、市場が大きく変動した場合には新発債として投資家需要を喚起する余地を残しつつ、そうでない平時にはリオープンとなることで市場の流動性を高めることができるとの考え方から、令和4年度においても、現行方式を維持してはどうかと考えている。

・20年債・30年債・40年債のリオープン方式については、令和3年度は、20年債・30年債は年間4銘柄、40年債は年間1銘柄でのリオープン発行(原則リオープン発行)としている。
 この点につき、事前に皆様から御意見をお伺いしたところ、殆どの参加者から、現行方式を支持する御意見を頂戴した。
 当局としても、市場の流動性を高めることができるとの考え方から、令和4年度においても、現行方式を維持してはどうかと考えている。

・令和4年度における名目利付債のリオープン方式については、本日の会議内容も踏まえて総合的に判断することとしており、改めて皆様の御意見を頂戴したい。

○提出された意見等の概要は以下のとおり。

・現状維持を希望する。1銘柄当たりの市中残高を確保し、流動性を向上させる観点から、リオープンでの発行は望ましいと思う。10年債に関しては、国債の安定消化という観点から、金利が大きく変動する場合には新発債として発行し、投資家需要を喚起することが有効であると考える。

・10年債については、イールドカーブ・コントロール下でもあり、金利水準も安定的に推移していることから、現状維持の当局の提案を支持する。
 20年債、30年債および40年債については、世界的な金利上昇の流れを受け、10年債対比で金利上昇しやすい環境は続くものと考えられるが、保険会社等による安定消化が見込まれることから、現状維持の当局の提案を支持する。なお、40年債については投資家層が徐々に広がるなかで、年間1銘柄ではやや銘柄数の不足感や発行時の価格が100円を大きく上回るケースが見受けられることから、年間2銘柄等を検討してもよいと思料する。

・現状の10年カレント債の流動性については取引に支障がない水準であると認識している。現行の金融政策(YCC)が継続する限り、長期金利は概ね0.1%近傍の狭いレンジ内で推移すると考えられるため、リオープンの目安となる「新発債の表面利率と入札日の市場実勢の乖離幅」を縮小してもトリプル・イシューが継続されるものと考えられるが、今後日本銀行が長期金利を直接のコントロール対象外とした際には、市場実勢と同水準の新発債がタイムリーに発行されるよう、乖離幅の縮小あるいは廃止を検討することが望ましいと考える。
 超長期ゾーンについても一定の流動性を確保するため、10年債と同様に、新発債の表面利率と入札日の市場実勢の乖離が一定以内の場合に限り、リオープン発行とすることが望ましいと考える。
 現行の会計制度が継続する中では、簿価利回りも重要と考えている。平準的な運用を基本としているため、金利が大きく変動した場合でも平均化された新発債がポートフォリオに組み込まれることとなる。当方ではポートフォリオ全体の簿価利回りの機動的かつ精緻なメンテナンス(売却・入替)にも取り組んでおり、現行方式ではその機会が失われることになる。市場実勢と同水準での新発債がタイムリーに発行される場合には、このような問題は緩和されるものと考える。
 また40年債については、負債に対する精緻なキャッシュ・フロー・マッチングへの活用や、償還月の偏りによる資金繰りの課題(3月末を事業年度末とする国債投資家にとって、この時期に償還金が集中することは、再投資にかかる期間分散が非常に困難)に対応するため、年間複数銘柄の発行を希望する。最終的には他の超長期ゾーンと同様、償還月を年4回に分けることを検討してほしい。

・日本銀行の国債買入の規模を踏まえると、市場流動性維持の観点からも現状の発行方式を維持することが適当と考える。

・10年債については原則リオープンを希望しているが、現状の日本銀行のYCC政策下では現状維持でも問題ない。

・現行のリオープン方式において市場で特段の支障は生じていないと認識しており、令和4年度においても現行方式の維持が流動性向上の観点で望ましいと考える。

・現状の金利水準や発行額を鑑みて、市中の流動性に特に問題がないため、現状維持でよいと考える。

・超長期の40年債については、いくつかの具体的な意見が出されている。超長期ゾーンの市場の拡大の時期でもあり、マーケットのニーズを見ながら、銘柄の検討なども徐々に進めてほしい。

・市場流動性の向上という観点が重要である。


2.令和4年4-6月期における物価連動債の発行額等について

○令和4年4-6月期における物価連動債の発行額等について、理財局から以下のように説明を行った。

・物価連動債については、P.5のとおり、令和4年度発行計画では、補正後の令和3年度発行計画と同様、1回の入札当たり2,000億円で年4回の発行としつつ、「市場参加者との意見交換を踏まえ、市場環境や投資ニーズに応じて、柔軟に発行額を調整」することとされている。また、P.6のとおり、買入消却についても、「市場の状況や市場参加者との意見交換も踏まえ、必要に応じて実施する」こととされている。本日は、4-6月期における発行額等について、御意見をお伺いするもの。

・1-3月期については、P.7のとおり、市場の状況や市場関係者との意見交換を踏まえ、2月に発行額2,000億円で入札を行う一方、買入消却入札を従前の毎月500億円から毎月200億円へと大幅に減額して実施することとしたところ。発行入札及び買入消却入札の結果はそれぞれP.8、P.9のとおりである。
 
・流通市場の状況については、P.10、P.11のとおりである。この半年程度の推移をみると、BEIは振れを伴いつつも上昇しており、特にごく足元では、ウクライナをめぐる地政学リスクが高まるなか、原油価格高騰等も影響して一段と上昇している。また、銘柄別の動きをみても、バラつきは引き続き大きいものの、全ての銘柄でBEIが上昇している。
 
・こうした中で、皆様から事前に御意見を伺ったところ、ここ数か月間の物価連動債市場では、海外中銀による利上げの影響等を確認する必要があるものの、原油価格等の影響からインフレ期待が高まっており、現状の発行額と買入消却額はバランスしていることから、殆どの参加者から、引き続き4-6月期における発行額と買入消却額については据え置きとすることが望ましいとの御意見が聞かれた。

・他方、ごく一部の参加者からは、当局による買入消却の効果等から物価連動債市場の需給が改善したことを受け、買入消却額を据え置きつつ、発行額を増額することが望ましいとの御意見も頂戴した。
 
・当局としては、物価連動債市場の育成は国債管理政策上の重要な課題と考えており、令和4年1-3月期の発行額及び大幅減額後の買入消却額は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を契機とした市況の大幅な悪化を受けた異例・臨時の措置からの正常化の未だ途上であると認識している。こうした考えに沿って、昨年12月の国債市場特別参加者会合においては、令和4年4-6月期以降についても正常化に向けた検討を行いたいと考えているが、その際はこれまで通り入札等の状況・市況や皆様の御意見も踏まえつつ、慎重に判断していきたい旨をお伝えしていたところ。

・こうした経緯や皆様の御意見も踏まえ、P.12に当局の提案をお示ししている。令和4年4-6月期については、1-3月期と同様、2,000億円の発行入札を1回行うこととしつつ、毎月200億円の買入消却入札を行うこととしてはどうかと考えている。

・なお、買入消却の対象銘柄については、令和3年度はカレント銘柄が大量に落札されてしまうことを避ける観点から、年度前半はカレント銘柄を含めないこととしたが、実施額が従前よりは減額されていることや、現状一部のオフ・ザ・ラン銘柄に落札が集中することがあること等を踏まえ、令和4年度についてはカレント銘柄も含めた全銘柄とすることとしたい。
 
・また、令和4年度における物価連動債のリオープン方式については、令和3年度と同様、年間1銘柄でのリオープンとしてはどうかと考えている。

・以上、物価連動債市場についての状況とそれを踏まえた当局の提案について御説明した。
 4-6月期における発行額等及び令和4年度におけるリオープン方式については、本日の会議内容も踏まえて総合的に判断することとしており、改めて皆様の御意見を頂戴したい。
 なお、当局としては、今回お示しした案は未だ正常化の途上であると認識している。令和4年7-9月期以降についても正常化に向けた検討を行いたいと考えているが、その際はこれまで通り入札等の状況・市況や皆様の御意見も踏まえつつ、慎重に判断していきたい考えである。

○提出された意見等の概要は以下のとおり。

・当局の提案を支持する。足元、BEIが上昇傾向となる中、物価連動債の入札は事前予想対比強い結果となる傾向にあるものの、引き続き投資家層が限定される中では、現状の発行額・買入消却額を維持することが望ましいものと考える。

・物価連動債の発行額等については市場における投資家層の顕著な広がりがいまだに見られていないことから、1-3月期と同様の発行額・買入消却額とする当局の提案を支持する。また1銘柄あたりの流動性を向上させる観点から、現行通りのリオープン方式を支持する。

・当局の提案で問題ないと考える。1銘柄あたりの発行額を増やすといった観点からは新発債の発行増額も引き続き選択肢として検討してほしい。ただしその際には全体の需給バランスを考え買入消却額の増額等も合わせて検討してほしい。

・当局及び日本銀行の買入により需給は改善したがマーケットの流動性は低く業者のオファー・ビット・スプレッドは広い。ネット発行額がマイナスの状態を続ける必要はなく、市場を育成していくべき環境になっていると思う。4-6月期においては当局の提案で構わないが、7-9月期以降、買入額は維持しつつ、発行額の増額の検討を希望する。

・物価連動債については、世界的なインフレに対する警戒感から、安定的に需要が見込まれる。現状の需給環境は概ね良好であるという認識のもと、当局の提案を支持する。
 また、物価連動債については流動性が限られているなか、銘柄数の増加により1銘柄あたりの発行量が減少するなどした場合、一段と流動性が低下する可能性があり、銘柄数を増やすことは得策でないと思料することから、当局の提案を支持する。

・現状の市場規模や流動性等を踏まえると、発行額・買入消却額ともに現状維持が適当と考える。

・エネルギー価格や原材料費等の高騰にともない先進諸外国においてインフレが重要な社会的課題となっていることに鑑みれば、各種政策の基礎となるインフレ指標の継続的・安定的な算出のために、物価連動債を継続的に発行するとともに、物価連動債の市場を育成することが、日本においても今まで以上に重要となってくると考える。市場の需要があるのであれば、発行額の増額も柔軟に検討して良いのではないか。

・新型コロナ発生(2020年春)以降、我が国のBEIも他の主要国と同様に上昇トレンドにある。これを投資家の需要が増える機会ととらえ、流動性向上の観点から、発行額の増額もあり得よう。

・物価連動債については、インフレ懸念があるにも関わらず、投資家の需要は限られている。金融機関の負債側がインフレ連動の金融商品でないことも、その要因ではないかと考える。また、海外のように、運用の一定比率をインフレ連動型で運用という方針がないことも、物価連動債の投資家が限定されてしまっている理由かもしれない。高齢化の中で、退職者によるインフレヘッジ商品は、インフレ懸念が始まると、増大する可能性があり、インフレ連動商品の需要は高まる可能性もあると思う。


3.令和4年4-6月期における流動性供給入札の実施額等について

○令和4年4-6月期における流動性供給入札の実施額等について、理財局から以下のように説明を行った。

・流動性供給入札については、P.14のとおり、令和4年度発行計画では、
 (1)残存1-5年ゾーンについては令和3年度から0.6兆円の増額となる3.0兆円、
    残存5-15.5年ゾーン・残存15.5-39年ゾーンについては、令和3年度と同様それぞれ6.0兆円・3.0兆円とし、
    合計で年間12.0兆円を発行することを想定しつつ、
 (2)最終的には「市場参加者との意見交換を踏まえ、市場環境や投資ニーズに応じて柔軟に調整」することとされている。
 これを受け、本日は、4-6月期におけるゾーン毎の発行額等について、御意見をお伺いするもの。

・P.15のとおり、1-3月期においては、令和3年度発行計画で想定されていたとおり、残存1-5年ゾーンについては、奇数月の1月と3月に4,000億円、残存5-15.5年ゾーンについては、毎月5,000億円、残存15.5-39年ゾーンについては、偶数月の2月に5,000億円の発行とした。これらの結果はP.16~P.18のとおり。
 
・こうした中で、4-6月期の流動性供給入札について、皆様から事前に御意見を伺ったところ、複数の参加者から、ゾーン毎の投資家需要の強弱を踏まえて発行額をゾーン間で調整することが適当であるとの御意見を頂戴したものの、多くの参加者から、要望が強かった残存1-5年ゾーンの発行増額を反映しつつ、残存5-15.5年ゾーン・残存15.5-39年ゾーンの発行額を維持することが適当であるとの御意見を頂戴した。
 
・これを受け、P.19にあるとおり、4-6月期におけるゾーン毎の発行額の当局の提案を作成した。残存1-5年ゾーンについては発行計画での増額をそのまま反映し、奇数月の5月に5,000億円、残存5-15.5年ゾーンについては、毎月5,000億円、残存15.5年-39年ゾーンについては、偶数月の4月と6月に5,000億円の発行としてはどうかと考えている。
 
・4-6月期における流動性供給入札のゾーン毎の発行額等については、本日の会議内容も踏まえて総合的に判断することとしており、改めて皆様の御意見を頂戴したい。

○提出された意見等の概要は以下のとおり。

・各年限で金額がバランスよく配分されており、証券会社のショートカバーや投資家需要に支えられ安定的に消化できていることから、現状と同程度の配分が適当と考えている。

・ボラティリティが高まる局面においては、超長期ゾーンを中心に不安定な場面も見られたが、証券会社のショートカバーや投資家の買いに支えられ、概ね安定的に消化出来るものと考えており、当局の提案を支持する。

・これまでの運営によって市場で特段の支障は生じていないと認識しており、4-6月期の発行については当局の提案を支持する。

・年明け以降、超長期ゾーンの金利が短期間で急上昇し、超長期債を対象とした2月の流動性供給入札も弱めの結果となっており、超長期ゾーンの実施額減少で需給バランスを改善させるべきと考える。

・短いゾーンは投資ニーズが海外投資家等、一部に限定されると考えられることから、減額が望ましいと考える。
 超長期ゾーンはALMやERM上、金利水準・残存期間に応じた潜在的なニーズは強いと考えられる一方で、相対的に流通量が少なく取引コストが高いため、流動性の機能向上を図る観点から増額が望ましいと考える。

・当局の提案で問題ないと考える。足元金利は上昇傾向であるものの、海外金利上昇等や日本銀行の金融政策変更への思惑等が原因と考えるが、少なくとも当面は日本銀行の国債買入が市場を支えるとの見方から当局の提案で問題がないと考える。

・足元までの入札結果やセカンダリーの動きを考慮すると現状維持で問題ないと考える。

・インフレ期待により超長期債には金利上昇圧力がかかっており、流動性供給入札による市場の安定化、流動性の確保は必要ではないか。 

・10年以外の日本国債の金利には上方バイアスが働きやすい。相対的に安定する10年債は、ウクライナ情勢、アメリカでのインフレ動向などによっては、一時的に指値オペの水準を試すこともあろう。流動性供給入札・買入消却入札においては、こうした特異なイールドカーブの形をどのように考慮するのかが課題といえよう。


4. 最近の国債市場の状況と今後の運用見通しについて

○提出された意見等の概要は以下のとおり。

・グローバルな金融緩和縮小観測や金利上昇の流れを背景に、円金利も上昇方向にある。ただし、日本の物価水準は相対的に低く、金融政策の修正も限定的なものにとどまると見ており、円金利のさらなる上昇余地は限られると考えている。
 当社では、負債が比較的短期なため国債購入は長期ゾーンが中心となるが、一部超長期の負債が存在するため同ゾーンにも一定程度投資ニーズがある。ALMの観点で投資判断を行っており、負債の状況を勘案しながら投資を行っているが、金利が上昇する局面では得られるインカムが増大するので投資魅力度が高まる。尚、自然災害などによって保険金支払いが生じる場合は、国債を売却する可能性があることから、国債市場の流動性が維持されていることが重要であると考える。

・足元の市場環境は、海外でインフレ懸念が高まり、各国中央銀行の早期金融政策正常化観測が進むなか、グローバルに金利上昇している。日本国債も海外金利上昇の影響を受けるとともに、日本銀行の金融政策縮小観測も一部で広がる中での投資家のリスクリダクションの動きもあり金利上昇している。
 先行きについて、海外においては、中央銀行が金融正常化を進めると見込まれる中で、物価・労働市場等の実体経済のデータや中央銀行の正常化パスの織り込みに振らされやすい展開となっていると認識している。日本国債については、インフレ率上昇等を受けた日本銀行の金融緩和縮小の観測等から金利が上昇する局面もあるものの、日本銀行の金融政策によるサポートが当面の間継続する中では、一定程度まで金利水準が上昇すれば投資家の需要は出てくるものと見込まれる。
 当社は、日本国債については10年債・20年債への投資ニーズが中心であり、今後も同様のスタンスを継続する見込みである。

・年明け以降、海外金利の急上昇を受け、特に超長期債の下落が目立つが、海外金利の落ち着き次第で同ゾーンの投資の好機であると見ている。

・米国FRBによる金融政策引き締め加速への警戒から米金利は高水準で推移するなか、日本銀行の政策変更への思惑が燻るなど、円金利にも上昇圧力がかかる状況。
 当面は、超長期金利の変動幅は大きくなるものの、イールドカーブ・コントロールの下、長短金利は現状水準でのレンジ推移を見込んでいる。
 現時点では、足元のウクライナ情勢を受けた運用方針の変更については特段検討していないが、インフレ動向等に引き続き留意しつつ、長期・超長期中心の運用スタンスを継続する方針。

・日本銀行は金融緩和スタンス維持の意向を表明しているものの、海外投資家を中心に政策転換への思惑が燻る状況と認識している。加えて、一部で追加経済対策策定が報じられるなど、茲許一部投資家のフロー・ドリブンな動きにより、国債市場は需給面の材料にやや脆弱になっており、国債市場特別参加者会合・本懇談会等の機会を通じた市場との対話が従前以上に重要になっていると考える。

・海外金利の上昇につれて、円金利も上昇し投資環境は大きく改善している。当面は日本銀行の政策変更は予想しておらず、YCCでサポートされやすい10年債以下の年限を中心に運用していく一方、30年債・40年債といった残存の長い債券への投資は抑制する方針。

・足元の相場は、供給制約の長期化によるグローバルなインフレ圧力に、ウクライナ危機によるコモディティ価格の高騰が加わり、インフレ圧力の更なる増大、長期化が見込まれている。米国を中心とした海外中央銀行の金融引き締めスタンスの強化により海外金利は上昇してきたが、急速な金融引き締めにより景気が落ち込む懸念も根強い。足元の国債市場は、海外金利への連動と日本銀行の強力な金融緩和継続姿勢に挟まれレンジ相場の様相。
 今後の運用見通しについては、グローバルに利上げ局面に移行した運用環境において、為替ヘッジコストの上昇が見込まれるヘッジ付外債(ソブリン)の投資妙味が減退している。当社は引き続き、ALM運用の観点から超長期ゾーンの円金利資産を中心に投資していく方針。

・足元の預貸のギャップの拡大と短中期ゾーンを中心とした金利上昇を受け、国債運用ニーズは高まっている。
 しかし、一方でこのまま世界的なインフレが続いた場合、将来の金融政策変更リスクは高まると予想されることから、評価損の拡大をいかに抑制するかが課題と考えている。

・世界的に債券市場のボラティリティが高まる中、投資スタンスそのものは慎重に進めざるを得ない状況が続いている。一方、マイナス金利導入以降の低金利環境下で、イールドカーブ全体が持ち上がることは、金融機関の収益環境を考える上では望ましいと考えており、ポートフォリオ全体のバランスを意識しながら、投資を進めていきたいと考えている。

・足元の市場環境は、超長期ゾーン中心に金利水準を求める投資家需要が根強いものの、欧米でのインフレの加速や国内景気回復などから金利上昇圧力が強まるとみられることから、国内金利は緩やかに上昇するものと見込んでいる。
 また、昨今のSDGs投資活性化によりグリーンボンドの需要は国内外で高まっていることから、長期安定的な国債消化という観点からは発行の検討に十分値すると考える。是非検討してほしい。

・10年国債利回りは、2月に実施した日本銀行「指値オペ」以降、上限である0.25%を意識して推移しているが、それ以外の年限については米国の政策金利や日本銀行の政策修正に対する思惑によって今後大きく変動するリスクがあり、内外投資家の売買動向については従来以上に注目している。

・海外金利の上昇や日本銀行の将来の金融政策変更への思惑から、足元円金利は上昇傾向にあるが、入札は概ね順調に消化されていると認識している。日本は欧米とインフレの度合いが異なることから、当面日本銀行の金融緩和政策は継続すると考えている。相場動向を見つつ、日本国債の購入や保有を継続する予定である。

・10年債金利が金融政策上許容されているレンジの上限に差し掛かっているため、もともと日銀買入が少なく需給の不安定な超長期ゾーンに強い金利上昇圧力がかかる場面が見られた。海外中銀による金融政策正常化は始まったばかりで、グローバルな金利上昇圧力は続くものと考えている。当面は海外金利上昇の影響を受ける状況が継続するとみており、超長期ゾーンについては抑制的な運営方針で運用する見通し。

・ウクライナ情勢の変化により、世界経済へのマイナスの影響は拡大する可能性がある。日本国債市場の安定化、流動性の維持、内外金利の変化に対応した当局の対応を日々行ってもらいたい。

・今後、エネルギー価格や原材料費等の高騰によってインフレが高進しつつも、賃金水準が十分に上昇しない場合、低所得層及び中間所得層の負担感が増加することが懸念される。インフレが高進する場合には、低所得者層への配慮は当然必要となるが、中間所得層への配慮も必要となろう。もし仮に消費者物価指数が上昇する局面においても日本銀行がイールドカーブ・コントロール(YCC)を継続する判断をした場合に、中間所得層が子供の教育資金や自身の老後の糧のために蓄えている生活上必要な預貯金の実質価値が減少することが懸念される。そこで、YCC下におけるインフレ対策の観点から「個人向け物価連動債」を導入することも検討に値するのではないだろうか。
 なお、現在でも投資信託等を通じて物価連動債への投資は個人でも可能であるが、他の国内債券インデックスファンドと比較して、信託報酬の水準が相対的に高いため、利用しづらい商品となっている点、物価連動部分への課税によってインフレリスクが再導入される点など懸念点もある。そこで、①指標の継続的算出の観点から機関投資家向けに従来の物価連動国債市場を維持・育成しつつ、②アメリカのSeries I Savings Bondsのように(一定の条件を付して)個人向け物価連動債を発行することで中間層の現在及び将来の購買力の低下を緩和する施策等が考えられるところ、各種施策の利害得失について多角的に検討を深める時期が到来しているのではないかと考える。

・3月FOMCのドット・チャート中央値でみて、中立金利引下げの一方、政策金利が2023年末までに中立金利2.375%を上回る2.75%に引き上げられる。この中立金利の水準は、30年米国債金利の最近の動きとほぼ同じ水準であり、また5年先5年BEIが2.4%程度で安定して推移していることから、当面は5月QT開始と政策金利の中央値をもとに、日本国債市場を展望してゆくことが可能であろう。
 今後の米国利上げのペースはインフレ抑制に向けて中央値の前倒しもありえようが、米国債の逆イールド化、米国ハイイールド債のスプレッド拡大、新興国債のスプレッド拡大、欧州国債間のスプレッド拡大などによって市場の緊張が高まると、景気後退観測を生み、FRBはハト派的な姿勢に一時的に転じることもあろう。
 ドル円レートは日米の金融政策のスタンスの乖離が続く中で、円安傾向に振れやすいのではないか。我が国での大きな産業構造、対外収支構造の変化、すなわち1980年代以降からの空洞化が東日本大震災で加速し、原油高が貿易赤字に直結する構造となったためである。加えて、地政学的に急がねばならないサプライチェーンの改革には時間を要するであろうし、投資収益収支の黒字の多くが再投資に回され円転の割合が小さいからである。これらから、10年以外の日本国債の金利には上方バイアスが働きやすい。
 令和4年度の国債発行計画は、昨年末に決定された年限別のカレンダーベース市中発行額をレギュラー・アンド・プレディクタブルの原則の下に進めるべきである。
 令和3年度は、令和2年度から30兆円もの歳出繰越を受入れており、さらに補正予算で22兆円も国債を増発している。このため、新年度予算の編成では考慮されていなかったロシアのウクライナ侵攻や物価上昇に伴う法人税収などへの影響に備え、令和3年度の既発行分にうち可能な範囲で、コロナ対策で減少した前倒債を補充し、またコロナ対策で急増した短期国債の発行を減らすべきである。

 

Get Adobe Reader

PDF形式のファイルをご覧いただく場合には、Adobe Readerが必要です。
Adobe Readerをお持ちでない方、正しく表示されない方は最新版をダウンロードしてからご覧下さい。


問い合わせ先

財務省 理財局 国債業務課 市場総括係
電話 代表 03-3581-4111 内線 5700