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日時 令和3年11月29日(月)10:30~11:55

場所 財務省 国際会議室 / オンライン

内容 令和4年度国債発行計画の策定に向けた現状と課題について

○令和4年度国債発行計画の策定に向けた現状と課題について、理財局から以下のように説明を行った。

・11月26日に公表した令和3年度補正予算に伴う国債発行計画の見直しについて、新規国債の増加額は約22.1兆円となった一方で、財政融資資金の余裕金等を活用すること等により財投債を30兆円減額することとした結果、国債発行総額は11.6兆円、カレンダーベース市中発行額は9.2兆円、それぞれ減額することとした。

 ・令和3年度のカレンダーベース市中発行額は、短期債に大きく依存した形となっており、金利変動に対して脆弱な資金調達構造となっていることから、カレンダーベースの市中発行額の減額9.2兆円は短期債のうち6カ月物の減額に充てることとした。

・こうした見直しの結果、国債発行総額については、令和3年度当初の236兆円から、令和3年度補正では11.6兆円減の224.4兆円となっている。

・また、カレンダーベース市中発行額については、令和3年度当初の221.4兆円から、令和3年度補正では9.2兆円減の212.2兆円となっている。短期債の市中発行額に占める割合を見てみると、令和3年度当初の37.6%から34.9%に減少し、コロナ前との比較では依然として高い水準ではあるが、正常化への第一歩となったと考えている。

・国債発行残高の推移については、令和3年度補正予算に伴って国債発行総額は減額したものの、財投債を除く普通国債で見ると、新規国債の発行額が大きく増加した結果、普通国債の発行残高は令和3年度末の見込みで1,004.5兆円となった。

・国債の平均償還年限については、フローベースで見ると、令和2年度に新型コロナ対応で大幅に短期化したものの、その後徐々にその是正が図られてきている。ストックベースで見ると、令和2年度にやや短期化したものの、大きな変動は見られていない。

・ストックベースの平均償還年限について諸外国と比較してみると、イギリスを除けば、日本は主要先進国の中では比較的長い水準を維持している。

・現在の国債管理政策の課題について、まず、国債管理政策の基本的な考え方は、①確実かつ円滑な発行により資金を確実に調達すること、②中長期的な調達コストを抑制すること、の2つであり、そのために、市場との対話を丁寧に実施していくこととしているところ。こうした基本的な考え方は、今後も維持していく予定。

・内閣府の中長期試算に基づき、令和4年度以降も令和3年度の当初予算の発行計画の年限構成割合を維持したものとして、財投債や復興債を除き将来の国債発行額を試算すると、内閣府の中長期試算は今年7月の数字であり、今回の補正予算については含まれていない点に留意する必要があるが、来年度以降も高い水準で短期債の発行が続いていくこととなり、その結果、今後も借換債の金額、ひいては全体の発行総額が同程度の水準で続いていく、という見込みとなっている。

・したがって、今後様々な経済状況を見ながらではあるが、今回の補正予算のように発行総額を減少させていけるようなフェーズでは、増発した短期債の減額を通じて借換債の発行額の抑制に努めながら、市場のニーズを踏まえた発行年限割合を考えて行く必要があると考えている。

・現在の国債のイールドカーブの形状については、20年・30年の手前あたりで相対的にみるとやや需給の緩みが見られる形になっている。

・日銀による国債買入れの動向について、日銀の国債買入比率を見ると、イールドカーブ・コントロールの導入以降、特に10年超の国債買入比率は低下傾向にある一方で、1年超10年以下のゾーンでは依然6割程度を維持している。日銀の国債保有残高の対前年同月比を見ると、足元では日銀の国債保有残高は減少傾向にある。本年6月の国の債務の在り方に関する懇談会での議論にあるように、日銀の金融政策、国債買入れの考え方が国債市場や金利に与える影響にも留意する必要がある。

・日銀が国債保有割合を増加させてきた一方で、銀行等は近年国債保有割合を減らしてきたが、足元ではやや増加に転じている。これは担保需要の増加等が寄与していると考えられる。

・生命保険会社については、国債保有額は概ね横ばいで推移していたところ、足元では増加傾向にある。年限別にみると、負債側のデュレーションにあわせて残存10年超の国債保有額が多い状況。

・地方銀行については、国債保有額は減少傾向にあったものの、足元ではやや増加に転じている。年限別にみると、足元では残存10年超の国債の保有額が大きく増加している。

・個人投資家については、個人向け国債の2021年度の発行額は、前年からのコロナ禍の影響と、昨年10月から実施している手数料体系の見直しによる証券会社等のキャンペーン効果の減少で、発行額が減少している。一方、償還額については、前年度の発行額が減少したこと等により、中途換金額も減少しているが、満期償還額が対前年比で増加しており、償還額は増加。

・コスト・アット・リスク分析で、令和3年度当初計画の年限構成割合を基準に、ランダムに2,000パターンの利付債の年限構成を生成し、コスト・リスクの関係性について分析を行ったところ、令和3年度の当初計画を横置きした場合と比較して、①20年債、2年債については、発行割合を減少させた場合、コスト・リスクともに減少する傾向、②10年債については、発行割合を増加させた場合、コスト・リスクともに減少する傾向が見られた。

・今年度の国債発行計画について、現時点での当局の基本的な考え方は、今年6月の国の債務管理の在り方に関する懇談会での資料にある通りであるが、① 新型コロナ対応で短期債の市中発行割合は4割程度まで増加しており、安定的に発行・消化していく観点から今後短期債を減額していく予定であること、② 短期債の減額とあわせて利付債を増額するのではなく、国債発行総額を抑制することで短期債を減額していく予定であること、③ 40年債について、市場規模が相応に拡大してきている一方で、投資家層の拡大が課題、と考えており、投資家層の拡大が確認できて今後更に増額する場合には、毎月発行化やコンベンショナル方式への変更が課題、と考えていることが主なポイント。

・40年債市場と30年債市場の拡大の経緯について比較すると、40年債は2007年の発行開始から14年が経過し、市場規模が拡大するなど市場としての成熟度は高まってきたものの、未だ年6回の入札とする等、他の年限と異なる取り扱いを行っている。

・超長期ゾーンのスプレッドの推移について、40年-30年スプレッドについては、昨年度は2~3bps程度で概ね推移していたところ、今年度に入り一時的に9bps程度まで拡大したものの、足元では4~5bps程度で推移している。

・残存15.5年-39年ゾーンの流動性供給入札の状況について、2020年度以降の落札状況を見てみると、20年債、30年債、40年債のカレント銘柄に近い残存年限の落札が多い状況であり、例えば残存38年-39年については、1回平均600億円超の落札があるところ。

・流動性供給入札の応募倍率については、残存1年-5年ゾーンは、今年は4倍以上の水準で推移し足元では5倍超、残存5年-15.5年ゾーンも4倍前後の水準で推移している一方、残存15.5年-39年ゾーンは2倍に近い入札も存在しているところ。

・日銀の金融システムレポートによると、金融機関の円債投資にかかる金利リスク量は、既往のピークの水準となっており、新型コロナ感染症の拡大以降、財政支出の拡大等を背景とする預金流入の拡大もあって、いずれの業態も投資残高を増やしてきており、リスク量が増加している。金利リスク量の増加は金利急騰のリスクを伴いうることに留意する必要。


○出席者から出された意見等の概要は以下のとおり。

・保険会社である当社は、非常に長いデュレーションが必要となる。基本的には保険契約者から生命保険の保険料という形で預かっている資金を原資として長期の運用を行っている。20年債以上の発行額を維持しつつ、40年債を増額し、流動性の高い10年債以下で減額調整することで全体の発行額を維持することは、生命保険会社の運用の方向性に合致する。負債のデュレーションが長いことから、金利リスクコントロールの観点から期間のマッチングも含めて、基本的に20年債以上の超長期を中心に国債を購入している。
 一方で、保険会社は全体として保険料収入が減っており、個社の事情に応じて減少傾向はそれぞれであるが、多額の資産を安定的に運用するという観点から、40年債、30年債、20年債といった長いゾーンのものに引き続き強い関心がある。
 先週のマーケットでは、新型コロナウイルス感染症の変異株の影響もあり、金利・株式等も大きく下げたが、緩やかに金利が上がっていく見通しは変えていない。ただ、海外については金利が上がる一方、国内については日本銀行の金融政策の継続により金利はあまり上がらないと予想され、内外金利差が生じてくると考えられる。その中でも、長いゾーンの国債については引き続き購入する予定である。
 40年債を毎月発行にすることについては、違和感はない。

・当社は資産の7割程度が国の代行部分の年金運用であり、この部分についてはGPIFの運用を意識した形である。したがって、30年債、40年債に特に重点的に投資するという方向性は現在なく、相対的に割安であれば投資する。現状では10年債や20年債へのニーズが強いというところである。
 国債への投資の原資については、年金基金は成熟度が高まっており、年金の掛け金よりも給付が多いという実態が続いている。現在は株価が堅調に推移しているためリバランス等では債券に流入することは時々あるが、基本的に給付の額が多いため、なかなか新規で投資するという状況にはなっていない。
 マイナス金利が正常化されたらどうなるのかという点であるが、海外金利や国債以外のクレジットといった相対的なバリエーションを見て、どこに重点的に投資するかを考えており、正常化したら急に日本国債への投資を増やすかというと、そういった状況には現在ない。
 マーケットの状況については、多少の足元の変動はあるが、相対的には外債の金利が多少上がってきており、外債への投資が若干多いという状況である。過去の推移や流動性を見ながら、日本国債への投資を考えていくという状況である。
 外債への投資は、ヘッジ付きの外債は限られており、どちらかというとオープン外債が多い。現状のようにドルが過去に比べて少し高くなっている状況ではヘッジ比率を多少調整するが、基本的にはオープン外債が多い。

・当社としては、来年度の発行計画に関して、40年債の増額、月6回であれば7,000~8,000億円、できれば4,000億の毎月発行にしてほしい。30年超の需要に対して供給が全く追いついていない状況であり、30年債・40年債のイールドカーブのスプレッドを見てもかなり低い状況が昨年来続いている。本年5月の増額により、スプレッドが9bpsまで戻ったが、一旦様子見していた投資家の需要が戻ってくると徐々に低下して現在の5bps程度になっており、やはり強い需要があると思う。
 物価連動債は、コロナ禍の混乱でBEIが大きく縮小したが、日銀買入と当局の買入消却がネットで吸収になるまで引き上げられ、足元では需給面の改善と世界的に物価上昇の懸念が出てきている。そのため、買入消却の減額、可能であれば物価連動債のマーケット育成という意味での発行増額を希望したい。
 当社は海外の資金を多く預かっているが、やはり短期債の需要というものは非常に多くあり、T-Billで運用するあるいは5年以下のところの特定の年限について需要があるため、流動性供給入札の残存1-5年ゾーンの増額を希望したい。
 来年度以降の見通しについては、コロナの影響が残るが、今回の補正予算による新規財政マネーの規模が非常に大きく、これだけの規模を経済が消化できるかわからないものの、経済へのプラスは非常に大きいと考えている。
 Withコロナのような状況になれば、金利も上昇傾向になると考えている一方、日本銀行の政策に変更はないと見ており、金利上昇時には、当社は長期、超長期を購入することになると思う。財政出動が大型でも費用対効果が低いものが続くようであれば、マーケットはMMTのようなものを感じ取り、行き過ぎた円安進行など日本への影響が出るのではないかと懸念している。そういった意味でも物価連動債をある程度保有しておく必要があると当社は考えている。
 30年債・40年債の需要については、当社の顧客が当該ゾーンに投資指示を出すわけではなく、当社が資金を預かり、それをどこで運用するか判断する。マイナス金利のゾーンにおいては、ロールダウンを考えても、マイナスで購入すると、さらに低いマイナスで売却出来なければ儲からない。基本的にはプラスの金利のゾーンで、それを一定期間保有するという形になる。したがって、当社としても割安なところに投資していくが、より長いところの金利が上昇していれば魅力的だが、現状では40年債・30年債のゾーンが投資家の需要の方が強く、むしろ割高の方向にいってしまっている。その意味では、当該ゾーンの発行を増加していただき、他のゾーン対比で魅力的な水準になってもらうと当社としては投資妙味があると考えている。
 物価連動債は現在、マーケットが十分には育っておらず、流動性がほとんどない。また、物価見通しが上がらないということであれば、BEIは下がっていくということは当然と考える。現状の世界的な政策を見ると、物価上昇に対するヘッジはどこかで保持していかないといけないというのは間違いないと思う。特に日本は、財政の拡張がなかなか止まらない状況であり、円安を通じた物価上昇というのは十分にあり得ると考える。物価連動債は商品性としてもフロアが付いており、物価上昇のリスクとフロアを考えると圧倒的に保有のメリットがあると考える。
 短期債の需要については、ゾーンを指定してキャッシュで運用してくれという投資家もおり、ドルから円に移すだけでクロスカレンシーで見るとメリットがあるため、このような投資家の需要がなくなるまで続くということになると思う。

・資料の26ページにあるように、地方銀行全体としては、金利リスク量が多くなっている。したがって、超長期ゾーンの購入力というものは限定的となっており、当社の場合では20年債以上の取扱いはない。したがって、本音を言うと、もう少し10年か10~20年のところのイールドが出てきてくれると投資家としては非常に魅力がある。
 バランス・シートという点で言うと、ここ1、2年で預金量が増加している。当初は貸出金も増加していたが、最近、貸出金の伸びが止まりつつあるため、投資能力は潤沢にあるといった状況である。
 海外金利と国内金利という点では、米国債の比重が高まっている。将来、円金利が上昇するような過程で、ギャップが埋まっていくとしたら、当然、米国から日本へシフトすることも考えていく必要がある。

・最近の国債市場の状況については、海外の金利変化や経済指標による影響が大きく、特に資源価格の高止まりを背景とした世界的なインフレ懸念からややボラタイルに推移している。10年金利の0.10%や20年金利の0.50%といった節目では、投資家の強い押し目買い需要が見られ、金利上昇幅は限定的になっている。今後の国内市場は、海外のインフレと海外中銀による金融政策などの引き締め対応の双方に影響されていくという見通しの中で、当社としては金利上昇局面においてはキャリーとロールダウンの確保の観点から10年や20年ゾーンで積み増しつつ、金利低下局面においては適宜ポートフォリオの調整を行うなど、市場動向に応じて柔軟に対応する方針である。
 国債発行計画の策定に係る現状と課題については、政府の大型の経済対策に伴って、令和4年度においても大規模な国債発行が求められている状況と認識している。コロナ禍の中で短期国債を増額したことによって平均償還年限の短期化が進んだことから、機関投資家のニーズの高い超長期ゾーンの増額が適当だと考えており、特に直近の入札も好調であった40年債の増額及び毎月発行が望ましいと思う。また、日銀の国債保有額が増えることで特定の銘柄に需要が偏る状況が継続しているため、流動性入札、特に残存1-5年ゾーン及び残存15.5-39年ゾーンに発行増額の検討の余地があると考えている。

・当社においては、負債に見合うデュレーションを確保する必要があるため、毎年、超長期国債を一定量購入している。また、近年、統合型リスク管理の取組みを受け、金利リスクの厳格なコントロールが必要とされ、特に30年債それから40年債のニーズは高くなっている。
 特に40年債については、次年度以降も取り組みとして金利リスクコントロールの強化を目的とした取得金額の拡大を検討しており、令和4年度の発行額については40年債の増額を要望したい。また、20年債・30年債については、今年度と同額以上の発行を要望したい。
 なお、40年債については、隔月発行の弊害の改善に向け、毎月発行への変更を要望したい。
 相場については、経済活動の再開、さらに大規模な経済対策を受け、金利上昇圧力を受けているが、超長期ゾーンを中心に投資家需要が当社を含めて存在し、今後も国内金利は比較的低位で推移していくと考えている。
 当社としては、全体的なキャッシュフローの流出は大きいが、新規契約、資産の満期などで投資余力はある。また、既存の負債のキャッシュフローを埋めていくニーズがあり、引き続き、超長期ゾーンの投資意欲は大きい。

・30年超に対する生命保険会社の一般的な需要を大局的に述べると、依然、資産と負債のデュレーションギャップ、負債に対して圧倒的に資産が短い状況と考えている。必ずしも全社のディスクローズの基準が揃っているわけではないが、ディスクローズが進んでいる各社の財務内容を分析した限りでも、依然としてギャップは多い状況である。この金利リスク削減という動きは、2025年のICS対応も含めて継続すると見ており、毎月の実際の売買動向を見ても、安定して比較的高位の購入が続いている状況である。
 年限別の見方を述べると、30年、40年両方合わせたゾーンは生命保険会社の購入需要が継続すると思うが、個社によって若干ばらつきがあるが、ボリュームゾーンとしてはまだ30年が中心かと思う。一方、日銀買入とのセットで考えると、25年超のところは月500億円ということで、ほぼ日銀買入の関与度が低い部分と考えている。それに対し、10-25年は日銀買入がまだ1,500億円ということで、比較的多いと考えており、一つ懸念しているのは、生命保険会社の需要が強い中で、日銀買入の更なる減額の調整余地もない中で考えると、現状の発行金額より減額することは極力避けていただけるとありがたいと思う。これは、30年債も含めてである。
 40年債の育成についても賛成であり、中期的なスパンで考えると、おそらく金利リスク削減が進んでいってより精緻化する中では、一般的に個人保険とかの負債キャッシュフローは非常に長い年限まで存在するため、40年債のニーズは相応にあり、より顕在化していくのではないかと思う。その観点では、時間をかけて、毎月発行化もしくはコンベンショナル方式へ移行する方向性はよいと思う。ただし、スピード感については、40年債の隔月6,000億の発行を、毎月化する場合は、2,000~3,000億円では少ないため、4,000億円となると思うが、これを一気に行うか、もう少し時間をかけるかに関しては、少し時間をかけた方がよいと考えている。例えば、隔月1,000億を増額し、少し様子を見た上で、その後毎月化することが考えられる。4月から隔月で1,000億円増やし、10月以降に毎月化が可能かを入札を見極めながら判断していただいてもよいと考える。
 流動性供給入札の残存15年超の倍率等を見ると低い一方で、当該ゾーンのフローは保険勢ではALMを裏付けとしていると思っており、全体の倍率を引き上げるものではないものの、コンスタントに需要が入っているものと考えている。確かに追加発行銘柄はカレント部分に比較的集中しており、むしろカレント債の増額を行えば、少し緩和する部分があるのではないかと思う。一方でALMの金利リスク削減が進んでいる保険会社については、比較的カーブで調整を行っている社も多くある。こういった投資家からは引き続きオフ・ザ・ランに対するニーズというのも相応にあると考えており、現状維持していただけるとよいと考える。
 コロナで運用原資がどうなったかに関しては、国内での保険販売のアクティビティという観点ではコロナ禍で対面の販売が難しいところもあり、販売ボリュームはかなり落ちた。今年になり、一部デジタルツールなどを使いながら努力した結果、若干戻してきている。フローで見ると結構影響はあった一方で、ストック全体で考えるとほとんど軽微であり、運用原資への影響は限定的と考えている。
 マイナス金利からの正常化に関しては、実現してほしいと考えているが、外債と日本国債のアロケーションでみると、短中期的な視点での有利不利についての各社の投資判断がある一方、日本国債の超長期に対するニーズという観点では購入を増やしていき、金利リスクを削減していくというフェーズにあるため、このスピード感が大きく変わるとは考えていない。一般的には金利水準が上がってくれば、各社がより取組みやすいためアクセルが踏まれ、金利水準が下がってくると少し減速すると思う。正常化へ向かえば金利リスク削減のスピードはよりアップしやすいのではないかと考えている。
 現在の金利水準では年金や保険などの長期の貯蓄手段となる商品の開発が国内では難しかったところ、正常化に向かって金利水準が相応に上がってくると、新商品というものが若干出てくると思う。特に若年層も含め、長期の資産形成、貯蓄に対するニーズが非常に強いものがあり、現在の金利水準のため外貨で運用される方も多いが、やはり円である程度安定して貯蓄を行っていきたいというニーズもあるため、金利水準が上がってくるとこのニーズがもう一回復活すると考えられる。

・投資原資に関しては、損害保険の場合、中心が自動車保険や火災保険であり、コロナの影響はあまりなく、保険料の収納は変わっていない。むしろ自然災害があるかないかが一番影響が大きく、仮に自然災害があると日本国債を市場で売却・換金した上で保険金の支払いに充てることがあるが、幸いここ1、2年はその必要性がなかった。逆に言うと、損害保険会社は今ここで焦って日本国債を買わなければいけないという状況でもない。損害保険会社は負債も比較的短期が多く、30年債、40年債の購入ニーズが大きいわけではないが、一部に超長期、例えば40年超の負債も存在しており、そういう意味では40年ゾーンのニーズも一定程度はある。また、生命保険子会社については、ある程度ALMができているものの、30年~40年ゾーンの入れ替えニーズは一定程度あるため、40年債の市場の育成は非常に望ましいと考えている。毎月化や40年債の増額は、40年債の市場を育成するという意味でも非常によいと思う。
 金利が正常化した場合に、日本円への投資に戻るのかという点であるが、円は流動性確保のための資産として位置づけており、収益を稼ぎにいくのは外貨資産が中心である。金利というよりは、円の資産でもう少しクレジットスプレッドが上がってこないと、日本国債を含めた円金利資産への投資を増やす状況にはないというのが損保会社の状況である。
 外貨資産購入の際のヘッジに関しては、もちろん会社によってスタンスは違うと認識しているが、当社は海外で買収をしており、その関係で為替リスクを結構とっているため、基本フルヘッジを行っている。

・超長期ゾーンに関しては、当社は20年債中心であり、他の投資家のニーズも相応にあると考えており、発行は現状維持、または若干の増額余地もあると考える。30年債・40年債については、当社は現状あまり投資していないという状況であり、発行規模は現状維持で違和感はないと考える。
 金利がプラス圏に戻る際の投資行動に関しては、他国の国債との比較を行った上で、日本国債に妙味があれば投資増額になろうかと考えているが、実際にプラス圏に戻った際の他国の金利の状況等によるところが大きい。
 マーケットの見通しに関しては、主に米国の物価、労働市場関連の指標に影響される展開を想定している。米金利の上げ下げに影響されて他国の金利も多少影響を受けると見込んでいるが、日本国債については日本銀行のサポートが当面継続することが見込まれており、海外市場と比較してボラティリティは低位に留まると考える。
 コロナの影響による資金の当社への集まり具合については、おおむね昨年度から大きな変更はなく、先々についても、あまり大きな変更はないと考えている。

・国債発行の前提となる当面の市場見通しであるが、足元新たな変異株の感染力が強いとの懸念もあり、当面はリスク回避的な動きになる可能性が高いのではないかと思う。一方で、昨年来2年弱に及ぶコロナ禍での様々な事象に対して、各国の行政や社会がある程度対応することを学習しているのではないかと考えている。例えば、今回の変異株についても大手製薬会社は100日以内に新たなワクチンを出荷できるとの報道もあり、その影響の度合いはおそらく限られるのではないかと今のところ考えられる。経済に与える影響が限定的であれば、米国をはじめとしてインフレ率の上振れ傾向が続いている国々においては粛々と金融緩和の縮小を続けるのではないかと考えている。ただし、さらにその先、中長期的にはコロナによって経済の体質や構造をインフレ的な方向に変えるものではないと思っており、コロナ禍を経た後、1980年代から続く低インフレ環境に戻っていくことをメインシナリオとしている。
 日本国債に関しては、おそらく物価については幾分上昇が見込まれるが、日本銀行が金融緩和の縮小を行う状況には遠いと考えており、引き続き円の金利については低位安定を続けるのではないかとの見通しを持っている。その上で、来年度の国債発行額については、説明資料にもある通り、今年度比若干の減少と想定している。この前提では、発行年限の長期化ということに対して、T-Billの減額で対応し、利付国債の年限別の発行額ということで言うと、昨年度補正による増額以降も各年限比較的安定した入札結果が続いているのではないかと思っており、今年度と大きく変える必要はないとの基本的な見方を持っている。その上で増額余地のある年限について述べると、当社もカーブ全体を見渡すと特に40年が30年までのカーブに対して継続的に割高になっていると認識しており、需給バランスがおそらくやや需要超過であるというふうに考えているため、40年債に増額余地があると考えている。
 日本国債の格付けの観点からは、Aが維持されている間は大丈夫と思ってはいるが、これがBBBになってくるとやや様子は変わってくると想像している。海外の投資家が日本国債に投資する動機の一つがクロスカレンシーのベーシスだと考えられ、格付けに変化があった場合、需給が変化するというのは多分にあろうかと思う。

・地域金融機関では、貸出及び預金の伸び率はコロナ前に比べると鈍化はしているものの、預貸ギャップは拡大している状況にある。さらに、11月16日に発表された日銀当座預金の特別付利制度の見直しにより、経過措置期間が終了する来年度以降、地域金融機関の資金投資ニーズは全体的に高まっていくと思われる。その中で、国内金利は海外金利と比較すると落ち着いた状況が続いているため、当社としても中長期保有目的の20年債投資とロールダウンの取りやすい10年債の機動的売買に加え、キャッシュつぶし目的として短い年限の政府債や一般債の投資を検討している。一方、やはり金利リスクが大きいため、20年を超える国債については地域金融機関では投資は難しいと考える。金利水準が戻れば、20年債を10年債に振り替えていきたいと考えている。

・足元、預金の増加は継続している。財政出動の際にはどうしてもお金が出ていくまで時間がかかるため、それが預金として滞留するという状況である。一方、コロナ対応のための企業の資金需要も一服しており、預貸ギャップはかなり預金超という形であり、運用ニーズは非常に高い。海外金利の上昇が見込まれている中で、相対的に金利が上昇しづらい日本国債についても、運用先としてどこかでは主力になると考えているが、海外金利の上昇につれる面も見据えて、金利上昇があれば運用先として候補に挙がるという環境だと認識している。また、銀行勘定の金利リスク(IRRBB)によって金利キャップが縛られているため、現状ではディーリングの可能な外貨金利にリスク量を振り向ける目線になっている。
 超長期ゾーンはメガバンクにとっては主な投資対象ではないので事前のヒアリングでは現状維持と回答した一方、中長期ゾーンは増額余地ありと回答した。マイナス金利からの正常化に関しては、米国の金融政策の動向によってシナリオが変化すると考えている。市場は、米国のインフレに対して利上げをメインに対処すると予想しているが、バランス・シートの縮小から着手する可能性もあり、その方が長い目で見て金利上昇につながる可能性がある。世界的な利上げのサイクルは、米国金利がまず上がり、次に欧州金利、その次に日本となるが、サイクル全体は早くなっているので、アメリカのタイトニングの後で次の緩和に行く局面で、日本のタイトニングになると、円金利がグローバルに影響され、いつまでも切りあがらないというケースが投資家にとってリスクと思う。足元のグローバルなインフレ環境が日本に及ぼす影響としては、賃金が上がらない日本にとって、コスト増が大きなファクターになる可能性が高く、成長鈍化につながりかねない。足元で円安が進んでいるが、通貨安が行き過ぎてしまい、それが外貨調達や格付けに及ぼす影響も考慮しなければならないと認識している。

・コロナ禍における当社の資金の状況について、メガバンクと比較すると預金や貸出の増加は緩やかでおおよそ横ばいという形で運営している。
 日本国債に対するニーズだが、日銀の政策金利あるいは各種制度の兼ね合いで担保としてT-Billのニーズは持っている。また合わせて5年、あるいは10年くらいまでロールダウンや価格変動を狙った投資と合わせて、こちらも日銀の金利との関係でニーズを持って投資している。
 全体的には投資と担保のニーズが大きいが、投資という意味では比較投資対象として、外貨と合わせて日本国債もユニバースに入れて、その中でメリット・デメリットを考えながら投資しているが、現状は流動性あるいは金利水準ともに外貨の方にニーズは向いている。ただ、金利水準が上がってくると市場流動性や各種エコノミクスも日本国債に相対的優位がくる時があり、そのような時にはもちろんホームバイアスで日本国債のニーズが高まっていくのではないかと考えている。

・当社では機関投資家から個人まで非常に幅広い顧客の資金を預かり、運用しているが、足元ではグローバルにインフレが進んでいる影響を受け、ソブリンものへの入金はだいぶ止まったという印象がある。代わりに、足元、デュレーションの短いクレジットもの、あるいはイールドのとれるもの、また金利リスクが少ないものに資金が引き続き入っているとの印象である。
 当社はアクティブ運用であり、ベンチマークで持つ必要がないため、少しでもバリューの高いところにウエイトを持っていき顧客にリターンをお返しするというビジネスである。日本国債でいうと、日銀のコントロール下にある10年までのゾーンよりも、やはり超長期ゾーンが非常にポイントになるゾーンであり、当社としてもどのように運用していくのか非常に注目している。
 40年債の増額については、投資家の多様化がまだ心許ないとの印象がある。言い換えると、流動性にまだ波があるという印象がある。したがって、発行増は慎重にするべきと思っている。毎月発行化やコンベンショナル方式への移行の話があったが、毎月発行にするのであれば、流動性入札の残存15.5年超が40年債入札と交互となっており、実質隔月発行といった形となっているため、調整が必要と思う。また、コンベンショナル方式への移行については、テールリスクに注意が必要である。したがって、いきなり毎月発行するというよりは、隔月発行のままで1,000億円など最低限の増額にとどめ、投資家層の広がりを確認してから次のステップに進むのがいいのではないかと考える。
 40年債の参加者を増やすには時間が必要と考えており、発行量を増やすことでイールドが上がって投資妙味が広がることで投資家が増えることはあると思うが、リスクとのバランスだと思う。急激に金利が上がってしまうと逆効果という場合もあり、時間をかけながら徐々にバランスをはかっていくのが一番いいのではないかと考える。

・40年債については、銀行のALMでは負債のデュレーションが基本的に10年以内の顧客預金をベースに構成されているため40年債へのニーズはない。利付債の発行に関しては、超長期を増やして短期を減額していくということであれば問題ないが、ALMの観点からは、10~20年債が減額されてしまうと需給が締まってしまい困ると考えている。なぜなら、20年以下のプラス金利のゾーンにおいて、ALMの観点から引き続き一定の購入が必要だと考えているからである。
 コロナによる当社の預金の動きについては、従来から増加傾向にあったが、給付金がかなり滞留したこともあり、更に増加したという状況である。但し、負債が増えても資本が増えるわけではないため、勿論ALMの観点から多少の調整は必要になるが、基本的に投資リスク自体を大きく変えることはしない方針である。
 金利上昇時に外国債券から国内債券に投資先を移すかという点については、ベースとしては国際分散投資をずっと進めてきており、この方針には変更ないと考えている。但し、非常に大きな額の円の預金を負債側で抱えており、もちろん、よい金利の上がり方であることが前提であるが、ALMの観点からリスク・リターンも踏まえて国内債券の比率を増やすことになり得ると考えている。
 当社の投資方針としては、預金が増えたから外国の債券を増やしているわけではなく、長期に渡り円の金利が大変低いこともあり、国際分散投資の観点から時間をかけて海外に資産を移してきたという状況である。したがって、コロナの影響で預金が増えたことにより特別なアクションを取ったわけではない。

・昨年度の3回に渡る補正予算で歳出が急増し、それを賄うために大量の短期国債を発行することになったが、中長期ゾーンについては、regular&predictableな発行を続けてきたことは私は評価されるべきだと思う。さらにその後、短期国債について、先ほど事務局から説明があったように、僅かではあるが縮小することができた。
 令和3年度補正予算であるが、一般会計で新規国債の発行が22兆円増加した。税収は6兆4千億円の増加見込みとなった一方、36兆円の歳出が追加された。昨年度の3回の補正による追加額74兆円あまりに比べると半減している。なお、本年度はこの他に前年度からの歳出繰越、繰越予算財源が30兆8千億円ある。コロナのオミクロン株の影響も注視する必要があるが、昨年来の試行錯誤的な経験を活かし、新型コロナへの対応策を長期化固定化するのではなく、正常化に向けて改革に取り組むべきである。例えば、コロナ即応病床など医療供給体制については、財政支援を受けながら患者を受け入れないといった病院なども指摘されており、財政支援よりも病院相互の連携とか役割分担といったことが不足しているのではないかといった反省も踏まえるべきである。
 また、各社からも説明があった預貸の動向とも関係するが、家計では特別定額給付金など多様な対策により、現預金残高が急増している。企業では、信用保証付きの民間金融機関による融資と政府系金融機関の融資を合わせたコロナ関連融資の総額が60兆円の高水準を保っている。その中で企業の現預金の流動負債に対する比率は急上昇しており、45%を超える水準である。
 今後は、パンデミックの再拡大だけではなく、首都直下型地震などの災害リスクへの備えが必要である。かつて関東大震災の直後であるが、資金調達に難渋を極め、1924年にニューヨークで国辱国債、国を辱める国債と呼ばれるほど高い金利でDeep Discountの国債を発行した。30年6.5%で92.5%の発行価格であった。
 コロナで拡大した政府債務について、諸外国では増税を含めた財源確保や財政健全化の動きが見られる。我が国も財政健全化の旗はしっかりと掲げ続けることが必要である。これから先の補正予算において、コロナ禍の一時的な対応を固定化・長期化することを避ければ、今回の補正予算での税収の上方改定とあわせて、2025年度プライマリー・バランスの黒字化も決して不可能ではないように思う。そして、短期国債の発行はコロナ以前の当初予算では20兆円余りだったと思うが、そのようなレベルに戻りうると思う。そして、この間も中長期ゾーンについては、regular&predictableな発行を基本として続けていくことが重要である。
 オミクロン株について、先週金曜日のアメリカのマーケットではブルスティープ化が起こった。5年先の5年BEIも若干だが低下している。これまでのテーパリングを加速しようという動きが巻き戻されたと思われているが、ただ、基本的によく分からないことがある。コロナの影響はインフレ的ではないということはその通りだと思うが、若干懸念するのが、米国の労働市場において労働参加率がなかなか戻らないことである。これをFRBがどう判断するかということもあるが、労働参加率低下の賃金への影響は無視できない。また、脱炭素が大きなムーブメントになっているが、物価への影響をどう捉えたらよいか、さらに米中対立の問題といったことがどのように長期金利に織り込まれていくのかについては、難しい問題ではあるが、基本的には本懇談会で意見があったように、目先というか来年度を含めて我が国の長期金利は安定的に推移していくことがメインシナリオだと思う。

・令和3年度当初予算でかなりの額の国債の発行が見込まれており、さらにこの度、かなり大きな補正予算が組まれたが、国債発行の総額自体は財投債で調整をすることで市場への影響を最小限にとどめたという点は高く評価したい。
 東日本大震災の時は財源をしっかり見据えながら国債の増額をしていたが、コロナ対応においては、令和2年度はかなり緊急事態のような状態であったため仕方がない面があるが、令和3年度においても巨額の国債発行を続ける一方で、財源論がしっかりとは議論されていないということに大きな懸念を抱いている。令和4年度に引き続き大きな規模の財政支出がされるということであれば、それに見合っただけのきちんとした財源議論が行われる環境を作ることが重要である。その一つとして、国債のマーケットが財政規律は重要ですよと、格付けの引下げが起きる前にしっかりと警鐘を発せられる環境を整えるということが重要である。
 日本銀行がイールドカーブ・コントロールで10年以下のところはかなり面倒を見ている状況であり、場合によっては10年超のところで何かマーケットが早期に警鐘を発せられるように早期に警鐘を出せるような形でバランスよく国債の発行年限というのを補正していくというのが重要ではないかと考える。
 足元で米国をはじめ、物価上昇が大きなリスクとして懸念されているが、日本でも継続的にインフレの動向・指標というのをしっかりと継続して算出することが重要である。引き続きマーケットを育成するという観点に加えて、今後の財政運営の重要な指標を育てるという観点でも、物価連動債のマーケットを育成していくことが重要と考える。

 

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財務省 理財局 国債業務課 市場総括係
電話 代表 03-3581-4111 内線 5700