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日時 令和2年5月22日(金)

場所 書面にて開催

内容

1. 最近の国債市場の状況と今後の運用見通しについて
2. 令和2年度第2次補正予算に伴う国債発行計画の変更について

○令和2年度第2次補正予算に伴う国債発行計画の変更について、理財局から以下のように説明を行った。

・資料のとおり、5月14日の第34回新型コロナウイルス感染症対策本部にて総理から、先般の第1次補正予算を強化するため第2次補正予算の編成指示がなされ、5月27日を目途に概算決定が予定されている。
   第2次補正予算では、雇用調整助成金の拡充、中小・小規模事業者向けの家賃支援、中堅・大企業も対象とした資金繰り支援などが実施される予定であることから、財投債を含めた国債の追加発行額が相応の規模となった場合を想定の上、皆様から国債発行の増額について意見を賜りたい。

○提出された意見等の概要は以下のとおり。

・新型コロナウイルス感染症対策として、テレワークやスプリット勤務体制などにより市場参加者が減少する中、国債市場の流動性は低下しているが、日本銀行のイールドカーブ・コントロールにより、市場のボラティリティは落ち着きを見せ始めている。今後の運用スタンスとしては、引き続きプラス金利となる10年債や、短中期ゾーンの政府保証債や地方債を購入するスタンスを継続する見込みである。
   令和2年度第2次補正予算に伴う国債発行増額については、市場の急激な相場変動を抑制すべく適切なイールドカーブ・コントロールが前提とはなるが、前回の第1次補正予算に伴う国債発行計画の変更程度の増額は可能ではないかと考えている。基本的な方針としては、今後の影響を見極めるまでは、T-Bill・1年物以下での追加発行をベースとしつつ、市中消化が可能な範囲での2年債以上の年限の利付債の増額を検討してほしい。具体的には、第1次補正予算に伴う国債発行計画の変更後からの1回の入札当たりの発行増額として、2年債が4,000億円、5年債及び10年債が2,000億円、30年債が1,000億円の更なる増額は可能と考える。なお、20年債については、絶対水準ニーズもあり1回の入札当たり2,000億円の増額も可能と考える。T-Billの発行増額は、第2次補正予算の規模をみて必要な分の発行とすべきと考える。

・新型コロナウイルス感染症の感染拡大が警戒される中、証券会社や投資家のスプリット勤務体制が敷かれているため、4月中と比較するとやや改善したが、引き続き流動性の低い状況が続いている。
   令和2年度第1次補正予算に伴う国債発行計画の変更においては短中期ゾーン中心の増額となったが、第2次補正予算に伴う国債発行増額についても、日本銀行の金融政策との協調から、残存10年以下のゾーンまでを中心とした増額であれば、市場の安心感も高く、十分に消化可能であると考える。超長期ゾーンについては、残存10年以下のゾーンまでと比較すると、慎重な発行が必要であると考えるが、20年債や30年債については、それぞれ1回の入札当たり1,000億円程度の増額であれば、銀行や生保等のニーズにより消化は可能であると考える。一方、40年債については、既に1回の入札当たり1,000億円の増額が決まっていることや、20年債や30年債の増額を行う可能性があることから、当面は1回の入札当たり5,000億円の発行額を維持しつつ、投資家需要の状況を見定めた上で、増額の可否を探るのがよいと考える。中長期ゾーンについては、10年債は1回の入札当たり2,000億円、5年債は3,000億円、2年債は4,000億円の増額であれば、安定的に消化され得るため、増額対象として適切であると考えている。なお、T-Bill・6か月物については、第1次補正予算に伴う国債の追加発行額の多くが割り当てられて大幅に増額されているが、日銀買入額の増額により安定的に消化されることから、第2次補正予算の予算規模に応じた調整項目として年間で数兆円程度の増額であれば消化されるのではないかと考えている。

・新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、市場参加者は取引量を必要最低限に減少させているため、市場の流動性が全般的に低下している。一方で、日本銀行のイールドカーブ・コントロールが機能し、国債市場の低いボラティリティは維持され、財政支出の拡大観測が広がる中で、国債消化に対する懸念は生じていない。こうした状況下、預金取扱金融機関には、今後財政資金が預金として流入することが想定されることや、日本銀行の新型コロナウイルス感染症対応金融支援特別オペの拡充に備えた担保需要が見込まれること等から、中短期ゾーンへの潜在的な投資ニーズが存在する。国家の緊急事態とも言える状況下、国債の安定消化が最優先事項であると考え、投資家として一定の貢献を図っていきたいと考えている。
   令和2年度第2次補正予算に伴う国債発行計画の変更については、T-Billは日本銀行の新型コロナウイルス感染症対応金融支援特別オペの拡充等に伴い、預金取扱金融機関の担保需要から保有ニーズは高く、6月の発行予定額程度であれば、今後も消化可能であると考える。2年債や5年債については、預金取扱金融機関の担保需要は相応にあるため、発行増額の余地はあるが、マイナス金利下においては入札に参加する主要投資家層は限定的であり、増額にあたっては過去最大発行額が一つの目処になると考える。10年債については、日本銀行によるイールドカーブ・コントロール政策下において、金利がゼロ%近辺に維持される程度の発行額が望ましく、増額にあたってはその点に留意した上での対応が必要であると考える。超長期ゾーンについては、入札で供給される金利リスク量はすべてのゾーンの中で相対的に大きい年限であるため、増額にあたってはイールドカーブ全体への影響も考慮しながら、投資家の需給を精緻に捉えた慎重な対応が必要であると考える。

・日本銀行のイールドカーブ・コントロールにより、金利水準は引き続き低位安定しているものの、各市場参加者が新型コロナウイルス感染症対策で、テレワークやスプリット体制を余儀なくされており、国債市場の流動性は低下した状態が続いている。今年度の運用は、昨年度までと大きな変化はなく、負債に合わせて円金利資産を組み入れるALMの運営を続けていく方針。
   令和2年度第2次補正予算に伴う国債発行計画の変更について、今年度の国債増額は非常に多額になると考えられるため、市場の混乱を招かぬよう、日本銀行とも密に連携した極めて丁寧な運営が望まれる。基本的には、日本銀行のイールドカーブ・コントロールによってコントロールされている10年債以下の年限を中心に増額すべきと考える。年限別には、1回の入札当たり、30年債は1,000億円、20年債は1,000億円、10年債は1,000~2,000億円、5年債は1,000~2,000億円、2年債は2,000~4,000億円、T-Bill・1年物は4,000~6,000億円の増額が可能であり、T-Bill・6か月物は月間で5,000~10,000億円が増額可能と考える。

・政府と中央銀行による迅速で柔軟、かつ、大胆な支援により、金融市場はグローバルに正常化しつつあり、日本国債市場においても、市場流動性が徐々に回復してきていると認識している。世界各地でロックダウンの一部解除がゆっくりと進められ、日本においても5月中には緊急事態宣言の全国的な解除が見込まれるため、市場参加者の厚みも少しずつ戻ってくると期待している。しかし、新型コロナウイルス感染症の感染拡大以前の状態に完全に戻るとしても相当の時間を要することが避けられない中で大規模な国債発行増額が行われることになるため、入札が低調に終わる等のショックが市場に加わると、想定以上に金利が上昇したり、金利の動きが年限間で全く異なったり、さらには長期国債先物がヘッジ手段として機能しなかったりするといった事態も懸念される。こうした中で、今後の運用については、金利が上昇する局面で投資残高を徐々に増やしていくことを基本に、日本銀行によるマイナス金利の深掘りを見込みにくい一方で、イールドカーブ・コントロールはしっかりと機能すると予想されるため、プラス金利である長期ゾーンや超長期ゾーンでの運用が中心になると考えている。
   令和2年度第2次補正予算に伴う国債発行計画の変更については、短期ゾーンについては、安定した担保需要等もあり、消化は順調であることに加え、市場の需給環境を踏まえた日銀買入も見込まれるため、T-Bill・6か月物とT-Bill・1年物はともに1兆円程度の増額であれば問題なく消化できる。中期ゾーンについては、日銀国債買入の比率が高く、特に2年債については担保需要も見込まれることから、1回の入札当たり4,000億円程度までの大幅増額に対応可能であると考えている。長期ゾーンについては、元々デュレーションで見た発行量が多く、また、確たる投資家層が不在であることからやや慎重に見ているが、プラス金利ではしっかりとした需要も見込まれるため、1回の入札当たり1,000億円程度の増額であれば消化可能であると考えている。超長期ゾーンについては、30年債対比で幅広い投資家層が見込める20年債であれば、1回の入札当たり1,000億円程度までの増額は問題なく対応できると考えている。

・令和2年度第2次補正予算に伴う国債発行増額の影響から、超長期ゾーンを中心に金利上昇期待があるが、日本銀行による積極的な金融緩和政策が継続される環境下、金利急騰等のリスクは当面小さいと考えている。ただし、海外金利の上昇につられて、日本国債の金利水準が上方修正されることはあり得ると考えている。当社においては、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により出社する人員の抑制等の対応を継続しているが、入札参加に支障が出ることがないよう、体制整備を行っており、引き続き、ALM運営の観点から、プラス金利の長期ゾーンや超長期ゾーンを中心に運用を実施し、円金利リスクコントロールを行っていく方針である。
   令和2年度第2次補正予算に伴う国債発行計画の変更については、既に述べたとおり、当面、国債市場への影響は限定的と考えている。足元の金利水準が維持される前提で、当社が考える国債発行増額の許容規模については、20年債は1回の入札当たり1,000~2,000億円程度であり、10年債は、プラス金利であれば、1回の入札当たり1,000~2,000億円程度である。5年債以下のゾーンについては、T-Billを含め、プラス金利とならない限り、積極的な投資を実施しない方針である。ただし、T-Bill・6か月物については、日本銀行による企業金融支援拡充にかかる担保需要やT-Bill買入オペ増額等から、1か月当たり5.0兆円の発行規模であれば、市中消化は可能であると考える。

・足元の国債市場については、発行増額への懸念が意識される一方、日本銀行の金融政策への信頼もあり、落ち着いた展開となっている。イールドカーブ・コントロールの影響が小さい超長期ゾーンに関しても、影響は限定的となっており、市場において大幅な金利上昇は見込まれていない状況。需給面では、特別定額給付金の入金により預金が増加する可能性があるため、国債への需要は引き続き相当程度強いと見ている。今後の運用見通しについては、預貸ギャップの運用として一定程度の国債購入を継続していく予定。ただし、購入年限については、リスクを都度勘案しながら柔軟に対応していく必要があると考えている。
   令和2年度第2次補正予算に伴う国債発行計画の変更における発行増額については、日本銀行への期待感や預金増加への対応を勘案すれば相当程度吸収できるとみている。特に、イールドカーブ・コントロールの影響が出やすい10年債以下のゾーンの発行増額のマーケットへのインパクトは限定的とみている。

・一時期の市場流動性の著しい低下、および国債先物価格に対する現物ベーシスの低下等については、日本銀行による追加金融緩和以降、かなり落ち着きを取り戻している。今年度の運用については、①引き続き高水準の給付、②市場のボラティリティ上昇に備えた流動性の確保、③同業態大手の資産構成割合変更に伴う国内債券投資の抑制、等の要因により特に日本国債への投資は慎重になるものと考える。
   令和2年度第2次補正予算に伴う国債発行計画の変更において、1回の入札当たりの年限別増額可能額は、30年債は1,000億円、20年債は1,000億円、10年債は2,000億円、5年債は4,000億円、2年債は4,000億円であると考える。30年債及び20年債については、比較的、国内投資家のニーズが強いゾーンと考えるが、マーケットが市場流動性を選好した場合、残存10年以下のゾーンと比較し日本銀行のコントロールが効きづらいゾーンでもあるため、大幅な増額は必要以上に市場ボラティリティを高める懸念があると考える。

・新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受けた市場混乱や在宅勤務の拡大等から、春先にかけては国債市場において流動性が一時的に低下する局面が見られたものの、足元では、市場は一定の落ち着きを取り戻している。先行きについては、新型コロナウイルス感染症による金融市場への影響は各国の中央銀行の施策により一定程度抑制されているものと見られるが、企業の倒産の増加等の実体経済への影響は今後様々な形で示現して来るものと考えている。また、新型コロナウイルス感染症の収束には不透明感が伴い、世界各国の実体経済や財政の状況を取り巻く不確実性は高いままである。当面は、感染第2波の到来や新興国での感染爆発等を受け、再び調整局面に入るリスクに留意しつつ、流動性や資産の質を意識したポートフォリオ運営を継続する。日本国債については、日本銀行のイールドカーブ・コントロールの下、補正予算に伴う国債発行増額の影響等にも留意しつつ、割安化した局面では投資を行っていく。
   令和2年度第2次補正予算に伴う国債発行増額については、新型コロナウイルス感染症対応によりグローバルに供給が増加していることや、市場環境の変動に伴い投資家の投資行動に変化が生じうることに留意しつつ、発行年限を検討する必要があるものと考えている。第1次補正予算に伴う国債発行増額については、日本銀行のイールドカーブ・コントロールによるサポートもあり市場の反応は抑制されていた。今後予定されている発行増額については、各年限の需給環境には留意しつつ、日本銀行のイールドカーブ・コントロールの対象となっている短中期ゾーンから長期ゾーンを中心に発行増額することが望ましいと考える。担保需要等により一定の需要が見込まれる短中期ゾーンは前回と同程度以上の増額余地があり、長期・超長期ゾーンについても金利が上昇した局面では投資家の需要も一定程度確認されていることから、前回と同程度の増額余地はあるものとみられる。T-Billについては、短中期ゾーン同様、担保需要等から需給環境は良好なことから、相当規模の増額余地があると考えている。

・新型コロナウイルス感染症によるショック以降、不安定な相場が続いていたが、先月の日本銀行の金融政策決定会合での国債買入強化方針が支えとなり、また4月に取引を抑制していた投資家が徐々に戻りつつあることで、取引量は依然として少ないままではあるが、需給は改善し落ち着きを取り戻している。当面はレンジ内での動きとなることが予想されるため、イールドカーブの変化をみつつ、機動的に取引を行っていく。
   令和2年度第2次補正予算に伴う国債発行計画の変更に関しては、年限毎に、年間で、20年債は9,000億円、10年債は18,000億円、5年債は27,000~36,000億円、2年債は36,000~54,000億円、T-Bill・1年物は54,000億円の増額が可能であると考える。債券市場に与える影響の程度や政策の方向性を踏まえると短中期ゾーンを中心に増額するのがよいのではないか。T-Bill・6か月物については、投資家層や市場規模等を踏まえて、できる限り現状維持が望ましいのではないか。また、流動性向上の観点から流動性供給入札の発行額を増額することも検討に値する。

・4月以降、国債市場の流動性はやや回復基調にあるものの、新型コロナウイルス感染症の感染拡大前と比較すると超長期ゾーンを中心に依然として低迷していると見ている。第1次補正予算に伴う国債発行計画の変更による国債増額が意識された先月以降、超長期ゾーンの金利はやや上昇したものの、上昇幅は限定的であり、需給環境は良好であるとの認識である。現状の金利水準では、負債見合いで本格的な投資をする状況にはないものの、ALM上の観点から超長期ゾーンへのニーズがあり、流動性や相場状況を見つつ、一定の投資は実施していく計画である。
   令和2年度第2次補正予算に伴う国債発行計画の変更による増額が、仮に第1次補正予算に伴う国債発行計画の変更による増額と同程度の24兆円程度となった場合、その規模を踏まえると幅広い年限で増額が必要であると認識している。特に、超長期ゾーンについては生保を中心としたALM上の長期化ニーズやイールドハント等の観点から投資ニーズは高く、一定程度増額しても安定消化されると見ており、現在の発行額対比、超長期ゾーンに比重を置いた増額を希望する。具体的には、40年債は1回の入札当たり1,000億円、30年債や20年債は1回の入札当たり2,000億円、流動性供給入札の残存15.5-39年ゾーンで1回の入札当たり1,000億円の増額で、10年債等その他の利付債についても1回の入札当たり2,000億円の増額が適切であると考えている。

・緊急事態宣言下で在宅勤務対応によって通常とは異なるオペレーション体制をとっている投資家や証券会社がいる影響で、日本国債市場のアクティビティが一時的に減退したが、オペレーション体制が整うと共に市場は徐々に落ち着きを取り戻してきている。金利水準については、各国中央銀行の強力な金融緩和の長期化が想定される中、今後も低位安定が続くと考えている。今後の運用については、相場動向を見つつ、今後も日本国債の保有と購入を継続する予定である。
   令和2年度第2次補正予算に伴う国債発行増額については、特定の年限ではなく、T-Billから40年債まで幅広い年限での増額が望ましいと考えている。投資家需要は主にプラス金利である残存10年超のゾーンにあるが、残存10年以下のゾーンについても、日銀買入等が見込まれることなどから、市中消化に問題はないと考えられる。増額可能と考えられる金額は、7月からの増額とし、入札回数は当初から変更しないと想定すると、1回の入札当たり、30年債は1,000億円、20年債は1,000億円、10年債は1,000~3,000億円、5年債は3,000~5,000億円、2年債は5,000億円~7,000億円である。T-Billについては、日銀買入および投資家の担保需要等を考慮すると、年度で10兆円以上の増額が可能であり、T-Bill・1年物は1か月当たり3兆円強、T-Bill・6か月物は1か月当たり6兆円が発行可能であると考えられる。40年債については、30年債等を増額した場合の状況を確認する必要があるが、追加的な増額を検討する余地があると考えている。

・新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い大きく低下した市場センチメントも、足元落ち着きを取り戻しつつある。しかしながら、スプリット体制やテレワークによる市場参加者の減少は当面継続するものと考えており、引き続き市場流動性は以前に比べ乏しいことから、国債金利の振れ幅が大きくなりやすい状況が続くものと考えられる。このような状況下においても、ALMやERMの観点から国債をベースとする運用スタンスは継続する見通しだが、現状の超低金利等の環境がさらに厳しくなるような場合には、契約者の負託に応えるため、ポートフォリオの収益性維持・向上の観点から資金の振り向け方について改めて検討せざるを得ないものと考えている。
   令和2年度第2次補正予算に伴う国債発行計画の変更について、超長期ゾーンにおいては、金利水準を求める投資家が多く、4月の第1次補正予算に伴う国債発行計画の変更による増額を受けたイールドカーブの動きは限定的だったことから、年限毎に月1,000~2,000億円程度の増額であればマーケットに大きな影響を与えることなく消化可能と考える。また、10年債以下の年限については、日本銀行のイールドカーブ・コントロールの操作目標となっていることから、発行増額による市場への影響は一定程度抑えられると考える。なお、増額時期が遅くなった場合、1回の入札当たりの発行額が大きくなってしまうため、マーケットへの影響を鑑み、可能な限り早い時期からの増額が望ましいと考える。

・新型コロナウイルス感染症の感染拡大によるグローバル経済の悪化は、ワクチンや治療薬が十分に供給されるようになるまで本格的な回復は難しく、経済活動が十分に回復するまでかなりの期間を要する。市場参加者の大勢が長期間、グローバルに金利が低位で推移する見通しを持っているため、足元の低金利でも国債への需要は旺盛となっている。今後についても、各国の更なる大規模な財政出動が見込まれているが、各国中銀による積極的な金融緩和策により国債増額が大幅な金利上昇を及ぼす展開にはならないと見ている。運用見通しについては、グローバルに低金利が定着した運用環境において、クレジット・ソブリン・国際機関債等の、為替ヘッジコストが低下したヘッジ付外債の投資妙味は増しているが、ALMの観点からは国債を中心とした円金利資産への投資を引き続き積極的に行っていく。
   令和2年度第2次補正予算に伴う国債発行計画の変更において、年限別の増額可能な規模については、利付債は各年限、単月で1,000~3,000億円であり、残りはT-Billを増額。上記の市場参加者の見通しや、生命保険会社の規制対応を意識した投資行動により、残存10年超のプラス金利やデュレーション長期化目的の30年債への需要は旺盛となっている。また、残存10年以下の年限やT-Billは、日本銀行の緻密な買入オペの変更により発行増額が金利急騰を及ぼす懸念は少ない。

・日本銀行によるイールドカーブ・コントロールが更に長期に亘り継続する可能性が高く、キャリーとロールが相対的に魅力的な長期・超長期ゾーンを中心に投資していく予定。財政の急速な拡大による格下げリスクには警戒している。新型コロナウイルス感染症の世界的感染拡大による景気後退により、米国の政策金利もほぼゼロ%になり、日米間の長期金利格差も大幅に縮小した。7月以降、国債が大幅に増額されるが、日本銀行の政策目標が物価上昇率2%から、金利を上昇させないという、今まで手段だったものが事実上目標に変わっているため、増額に見合った額の買入増額が行われると予想している。10年債金利がゼロ%近傍で推移するのであれば、投資家はプラス金利を求めてより長い債券を選好する。20年債、30年債、40年債には投資家の強い需要があると思う。
   令和2年度第2次補正予算に伴う国債発行計画の変更において、T-Bill・6か月物については、月間6~7兆円の発行額に増額することが可能。また、1回の入札当たり、30年債は1,000~2,000億円、20年債は1,000~2,000億円、10年債は2,000~3,000億円、5年債は2,000~3,000億円、2年債は3,000~4,000億円、T-Bill・1年物は4,000~6,000億円、の増額が可能。今後、増額が必要な場合には流動性供給入札の増額も希望する。日本銀行の買入が増え、1銘柄当たりの発行額が比較的大きい新発債は流動性が維持されても、既に日本銀行の保有額が多い既発債の流動性は更に低下することが予想され、市場での購入が困難になると思われる。

・3月に著しく不安定な状況にあった主要国の金融市場は、米ドルLIBORの正常化に伴って、安定を取り戻してきた。新型コロナウイルス感染症の感染拡大による極めて深刻な影響により、企業が流動性や短期の資金繰りの問題に留まらず、財務の健全性に関わる問題に直面し、中央銀行も国債買入に加えて、企業金融支援策として社債やCP買入にも重点を置いてきている。本日の日本銀行の金融政策決定会合においても、中小企業等の資金繰り支援のための「新たな資金供給手段」の導入が決定されたが、特にCPや社債の大幅な追加買入はこの流れに沿ったものである。
   3月の市場の著しい混乱の中で、米国債市場では流動性が収縮し、普段はほとんど存在しない30年債のオン・ザ・ランとオフ・ザ・ランのスプレッドが大きく変動した。これは、通常、経済活動が予想を大きく上回って縮小し、急速に巨大化してきたレポ市場で生じた巻戻しの動きが大きな影響を与えたものと指摘されるが、ブルッキングス研究所は、「市場が混乱した中でアルゴリズミック・トレーダーが退出し、ヒューマン・トレーダーが役割を果たすべきであるが、在宅勤務では無理である」と指摘している。本懇談会においても、何人もの出席者からリモートワークやスプリット勤務体制下における国債市場の流動性の問題が指摘されている。新型コロナウイルス感染症の感染拡大の第2波を防ぐ対策に留まらず、新常態、ニュー・ノーマルに対応する観点からも、各社において在宅勤務のための設備拡充・体制整備も検討課題であるかもしれない。
   4月末の米FOMCの議事録の中では、数名から、マイナス金利の導入ではなく、フォワードガイダンスの強化策として、一定の期間にわたって短中期ゾーンの金利を特定の水準に抑制するために十分な量の買入を行うことが提案されていた。これは、真珠湾攻撃から朝鮮戦争が休戦に向かう頃あたりまでの期間、まさに「戦時」に導入された方式で、当時は米T-Billの金利は0.375%に固定され、米25年債の金利の上限は2.5%であったと記憶している。日本銀行による10年債金利をゼロ%程度とするイールドカーブ・コントロールは、この米国の例に倣ったものと考えることができる。
   いわゆる「新型コロナウイルス感染症との戦争」のために、極めて巨額の国債を発行せざるを得ない状況下では、金利が上昇することによって企業金融支援策など新型コロナウイルス感染症対策全般に悪影響を与えることがないように、国債管理政策を遂行せざるをえない。米国の第2四半期における3兆米ドルという発行額ほどではないが、日本国債の市中発行額は令和2年度第1次補正予算に伴う国債の追加発行額24兆円に加えて、令和2年度第2次補正予算や景気後退に伴う税収の大幅減少による追加の国債発行が必要となってくる。この巨額の国債発行の増額については、「定期的かつ予見可能な発行」という原則を守りながらも、超長期ゾーンの発行を極力抑制し、流動性の高い短期ゾーンの発行を増額し、前倒債も活用しながら、日本国債市場に留まらず、金融市場全体への影響をできる限り抑制すべきであろう。

・新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う緊急事態宣言の継続下及び解除初期段階において、機関投資家等がテレワークや交代勤務により業務を遂行する場合、感染拡大前と比較して、機動的な投資行動を行いづらい可能性があることから、国債市場の流動性の低下について留意する必要がある。今後、首都圏1都3県及び北海道の緊急事態宣言が解除されたとしても、国内における再度の感染拡大や、新興国や途上国を中心とした新型コロナウイルス感染症の更なる感染拡大も懸念されることから、国内外における経済活動の制約が再度強まる可能性も念頭に置きつつ、流動性の低下と市場への影響を引き続き注視していく必要があると考える。
   新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大及び国内の経済的損失に対応するために、令和2年度第2次補正予算の後も、追加の補正予算が編成される可能性があることに鑑み、現時点では、財投債も含めた国債発行の追加が国債市場に与える影響を極力低下させることが望まれる。そのため、今回の国債発行計画の変更については、日本銀行のイールドカーブ・コントロールが十分に効く10年債以下までに留め、20年債や30年債などの超長期ゾーンについては、慎重な判断が必要ではないかと考える。

・令和2年度第2次補正予算に伴う国債の追加発行にあたって、歳出側の期間の長さについても、本来は考えるべきであり、新型コロナウイルス感染症への対策の歳出が何年程度の効果があると考えているかによって、発行される国債の年限も、それに対応した期間とするという考え方もある。しかし、今回は、日本銀行による国債買入の制限も外されたため、日本銀行が市中から、どのような年限の国債をどの程度買入するかが定かでない状況での国債発行計画の変更となるが、緊急事態であるため、10年債以下のゾーンが日銀買入オペの対象となることが多いとすれば、中長期ゾーンの発行を厚めにすることが考えられる。
   世界各国において大量の国債が発行される中で、日本の新型コロナウイルス感染症対策の歳出を、V字型景気回復を促す分野に支出し、他国に先駆けた景気回復を目指すことが、最も重要である。ピンチをチャンスとして、各企業、政府、学校を含めたすべての分野で、働き方改革や効率化の推進、教育改革など、この際、急速な構造改革を促し、効率的な社会の実現に向けて進むことが、日本経済の再興には不可欠である。こうしたことが、将来の国債発行額の減少を促し、国債市場の安定化を生み出すと考える。

 

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問い合わせ先

財務省 理財局 国債業務課 市場総括係
電話 代表 03-3581-4111 内線 5700