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日時 令和2年4月2日(木)

場所 書面にて開催

内容

1. 最近の国債市場の状況と今後の運用見通しについて
2. 令和2年度補正予算に伴う国債発行計画の変更について

○令和2年度補正予算に伴う国債発行計画の変更について、理財局から以下のように説明を行った。

・資料1のとおり、3月28日の第24回新型コロナウイルス感染症対策本部にて総理から経済対策の策定指示・令和2年度補正予算の編成指示がなされ、今後10日程度で取りまとめられることとされており、今般の経済対策の事業規模がリーマンショック時の経済対策の事業規模56.8兆円を上回ることが見込まれている。これを前提に、資料2のとおり、皆様から国債発行の増額について意見を賜りたい。

・また、利付債の表面利率の設定方法については、令和2年1月の入札より、実勢水準の単位未満小数を切り捨てたものを基本に設定することとしていたが、今般の国債追加発行によるマーケットへの影響を抑制する観点から、令和2年4月の入札より、四捨五入したものを基本に設定することとする。加えて、利付債の表面利率の下限引下げについては、令和2年度国債発行計画において、本年10月以降実施予定としていたが、同様の観点から、実施時期を後倒し令和3年4月を目途に実施予定とする。

○提出された意見等の概要は以下のとおり。

・最近の国債市場の状況については、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、グローバルに景気後退への懸念が高まってきている一方、各国で大規模な歳出拡大並びに税収下振れに伴う国債発行の増額や、市場参加者のリスク許容度低下による金利上昇懸念もあり、グローバルに金利は大きく上下している。各国中央銀行による資産購入規模拡大等の措置により、一定程度、振れの拡大は抑制されてきてはいるものの、日本国債も同様に、従前比ではボラティリティが高く、当面、上下に振れやすい展開が継続するものと考えている。
   今後の運用見通しについては、グローバル景気の先行きが見通しづらい環境ではあるが、日本国債については、現行の日本銀行によるイールドカーブ・コントロールの長期化が見込まれる状況下で、リスク資産価格や海外金利の動向に留意しつつも、金利水準を見極めつつ運用していく計画である。
   令和2年度補正予算に伴う国債発行計画の変更については、各年限でバランスのとれた発行増額が一義的には望ましいと考えている。先行きのマクロ経済環境は不確実性の高い状況が当面続くものとみているが、現行の日本銀行の金融政策や国債買入等の市場調節スタンスを踏まえると、短期・中期・長期ゾーンについては、更に一段の増額も可能と考えている。
   また、表面利率の設定方法及び表面利率の下限引下げの実施時期についても賛成する。

・足元の国債市場については、一部の証券会社はスプリット勤務体制を組んでおり、ロックダウンとなった場合を警戒してポジションを積極的に取りづらい状況にある。そうした中で、債券市場の流動性は低下していることから、オファー・ビッドが広い状況が続いている。
   今回の緊急経済対策の事業規模がリーマンショック時を上回る大規模なものになると見込まれていることから、特定の年限に偏らずに、複数の年限での国債発行の増額が望ましいと考える。ただ、40年債については、既に1回の入札当たり1,000億円の増額が決まっており、まずは投資家の需要状況を見定める必要があることから、1回の入札当たり5,000億円を維持することがよい。一方、残存30年ゾーンには生保勢の一定のニーズが見られることから、30年債については、1回の入札当たり1,000億円程度の増額でも消化されると考えている。また、残存10年未満ゾーンについては、日本銀行の「長期国債買入れ(利回り・価格入札方式)の月間予定(2020年4月)」において買入増額が見込まれており、その買入額が継続するのであれば、中長期ゾーンの買入サポートが厚くなることから、2年債や5年債、10年債については、1回の入札当たり2,000億円~3,000億円程度の増額であれば、安定的に消化されると思われる。

・3月中旬頃と比較すると、新型コロナウイルス感染症の拡大を受けた各国の中央銀行による積極的な金融緩和策によって市場のボラティリティや国債市場の流動性は回復の兆しが見られている。しかし、超長期ゾーンに関しては、強い投資家需要がある中で、流動性は依然として非常に低迷していると考えている。今回の国債発行の増額が実施されたとしても、日本銀行による金融緩和策や強い投資家需要を背景に、当面は金利が大きく上昇する可能性は低いと考えている。現状の金利水準では負債見合いで本格的な投資をする状況にはないものの、ALM上の観点から超長期ゾーンへのニーズがあり、流動性や相場状況を見つつ、一定の投資を実施していく計画である。
   今回の国債発行の増額規模は16兆円程度と予想しており、増額規模を踏まえると、幅広い年限での増額が必要であると認識している。ALM上の長期化ニーズを背景に、生保を中心として超長期ゾーンへの需要は高いと考えている。加えて、長期金利がゼロ%付近で推移する中、その他の投資家からもイールドハント等の観点から超長期ゾーンへの投資ニーズは高いと思われ、現在の発行額対比で、超長期ゾーンに比重を置いた増額を希望する。具体的には、40年債については1回の入札当たり1,000億円の増額、30年債や20年債、10年債、5年債、2年債、T-Bill・1年物についてはそれぞれ1回の入札当たり2,000億円の増額、T-Bill・6か月物については年間4兆円程度の増額が適切である。また、流動性供給入札については、依然として超長期ゾーンを中心に流動性が低いことから、残存15.5年超ゾーンを1回の入札当たり1,000億円の増額とすることが適切であると考えている。

・新型コロナウイルス感染症の感染拡大の折の、市場流動性の著しい低下及び国債先物価格に対する現物ベーシスの低下等については、一時危機的状況であったものの、日本銀行による国債買入の強化により、足元ではやや落ち着いてきたとの認識である。ただし、今後の経済ファンダメンタルズ悪化の懸念等から、各市場とも流動性が選好される状況は暫く続くものと見ており、当面慎重なスタンスの運用になるものと考える。
   短中期ゾーンと20年債については、比較的発行増額の余地が大きいと考える。また、発行増額の開始時期は7月が妥当であると考える。年限別の1回の入札当たりの増額余地は、30年債は1,000億円、20年債は5,000億円、10年債は1,000億円、5年債は4,000億円、2年債は4,000億円と考える。なお、T-Billについては投資対象外のため、意見は差し控える。
   また、利付債の表面利率の設定方法及び利付債の表面利率の下限引下げ実施予定時期の変更については、特段の異論はない。

・最近の国債市場の状況と今後の見通しについては、前回の本懇談会にて述べた意見から、現時点において変更はない。
   市場流動性は3月中旬から下旬に比べて戻りつつあるものの、新型コロナウイルス感染症の感染拡大への対策として、スプリット勤務体制やテレワークなどを導入する金融機関は今後も増加していくと考えられ、当面は市場参加者の機動性・柔軟性が乏しい状態が継続すると見込まれる。今後、首都圏がロックダウンとなった場合、直後の入札は見送るなど、柔軟な対応を検討するようお願いしたい。
   令和2年度補正予算に伴う国債発行計画の変更については、次のとおり考える。年限別の増額規模については、超長期ゾーンについては、金利水準を求める投資家が多いことから、年限毎に月間1,000~2,000億円程度の増額であればマーケットに大きな影響を与えることなく消化可能と考える。また、残存10年以下のゾーンについては、日本銀行によるイールドカーブ・コントロールの操作目標となっていることから、発行増額による市場への影響は一定程度抑えられると考える。
   増額時期が遅くなった場合、1回の入札当たりの発行額が大きくなってしまうため、マーケットへの影響に鑑み、可能な限り早い時期からの増額が望ましいと考える。

・新型コロナウイルス感染症の感染拡大への対策として、リーマンショック並みの大規模な経済対策及び補正予算に伴う国債の発行増額はやむを得ないものと考えるが、市場参加者のリスク許容度が低下する中、様々な業態の購入ニーズを踏まえた増額対応をお願いしたい。具体的には、新型コロナウイルス感染症の影響が読みにくい状況を踏まえ、残存1年以下のT-Billでの柔軟な発行増額を主としつつ、担保資産としてのニーズがある2年債、プラス金利まで金利上昇した時には相応のニーズがあると思われる10年債などの増額が可能と考える。また、20年債についても、絶対水準によってはキャリー確保ニーズも相応にあり、ある程度の増額は可能と考える。
   令和2年度の運用スタンスは、引き続きプラス金利となった10年債や中短期ゾーンの政府保証債や地方債を購入するスタンスを継続する見込みである。
   また、利付債の表面利率の設定方法及び表面利率の下限引下げの実施時期については賛成する。

・足元、新型コロナウイルス感染症の感染拡大によるリスクオフは徐々に落ち着きを取り戻しつつあるが、これから本格的にグローバル経済への悪影響が明らかになるにつれ、金利は更に低下する場面があると見ている。今後についても、各国の大規模な財政出動が見込まれるが、各国中銀による積極的な金融緩和策により、国債発行の増額がグローバルに大幅な金利上昇を引き起こす展開にはなり難く、基本的には金利は低位安定すると見ている。今後の運用見通しについては、グローバルに低金利が定着する中で分散投資の観点からリスクアセット(株式やクレジット)を組み入れていくことを検討していくが、基本スタンスは、ALMの観点から安定的な円金利資産積み上げとなる。
   年限別の増額許容規模については、国内機関投資家によるプラス金利への投資ニーズが継続して強いため、超長期ゾーンの大幅な増額を希望する。30年債と20年債は共に1回の入札当たり3,000億円程度の増額、10年債は1回の入札当たり3,000億円程度の増額、5年債と2年債は共に1回の入札当たり3,500億円程度の増額、T-Bill・1年物は1回の入札当たり3,000億円程度の増額とし、全年限合計の単月の増額が1.9兆円程度、年度ベースの増額分は17兆円程度であれば、許容される。

・金融マーケット全体が混乱し、ボラティリティも非常に高くなっているため、日本国債市場も流動性が極端に低くなっているほか、債券先物や金利スワップといったデリバティブと国債現物との相関も壊れている。このような状況の中、証券会社のリスクテイク能力が低くなっており、国債入札時に一時的にボラティリティが高まる展開が暫く続くと予想される。ただし、日本銀行がイールドカーブ・コントロールを行っているため、極端な状況に陥るリスクは低く、徐々に市場は落ち着きを取り戻すと考える。当社の運用計画は従前と大きな変更はなく、円建ての保険負債に見合った日本国債を保有してALMを継続していく方針。
   既に令和2年度の増額が決まっている40年債を除き、全ての年限で増額余地があると考える。30年債で1回の入札当たり1,000億円、20年債で1回の入札当たり1,000億円~2,000億円、10年債と5年債で月間2,000億円~3,000億円、2年債とT-Bill・1年物で月間3,000億円~4,000億円の増額であれば、消化が可能であると考える。また、流動性供給入札に関しても、各ゾーンとも1回の入札当たり1,000億円程度の増額が可能と考える。今回、かなりの増額になることが予想されるが、日本銀行のイールドカーブ・コントロールの下においては、金利が大きく跳ね上がるおそれは小さいと考える。また、年限間のバランスが取れた増額となることが好ましいと考える。
   利付債の表面利率の設定方法については、異論はない。

・リスク資産を中心としたボラティリティの著しい上昇や各国の債券市場での相対価値の崩壊等から、国債市場の流動性が低下している。短期金融市場の流動性は十分であり、金融危機の状況にはないことから、観測される種々の異常値は、今後収束する可能性が高く、それに伴い流動性も回復すると考えている。しかし、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による影響次第では、回復に時間がかかる可能性もあると思われる。金利水準については、各国の中央銀行の強力な金融緩和の長期化が想定される中、今後も低位安定が続くと考えている。今後の運用については、相場動向を見つつ、日本国債の購入や保有を継続する予定である。
   多額の財政支出が想定されることから、国債発行の増額にあたっては、特定の年限ではなく、T-Billから40年債まで幅広い年限での増額が望ましいと考えている。投資家需要は主にプラス金利である残存10年超ゾーンにあると思われるものの、残存10年以下のゾーンについても、日銀買入等が見込まれることなどから、市中消化に問題はないと思われる。増額可能と思われる1回の入札当たりの金額については、7月からの増額開始を想定すると、30年債については1,000億円、20年債については2,000億円、10年債については2,000億円、5年債については1,000億円~2,000億円、2年債については2,000億円~3,000億円であると考えている。T-Billについては年間で数兆円の増額が可能であると思われるが、前倒債との関係で検討されると考える。40年債については、既に増額が予定されており、増額後の市場の状況を確認する必要があると思われるものの、追加の増額の検討余地があると考えている。

・新型コロナウイルス感染症のパンデミック化を受け、グローバル市場が極めて不安定な状況に陥る中で、日本銀行やFRB、ECBによる国債買入が柔軟且つ大胆に実施されていることが奏功しているほか、各国の財政拡大に対する期待感から、足元は徐々に各市場におけるボラティリティが収まり、市場機能が少しずつ回復しつつある。しかし、日本における非常事態宣言が現実味を帯びる中で、投資家や証券会社がスプリット勤務や在宅勤務に本格的に移行しているため、通常時の円滑なオペレーションの継続が困難となり、ひいては各社のリスク許容度の低下につながっていると推察される。したがって、大規模な国債発行の増額が不可避な中で、入札が低調に終わる等のショックが市場に加わると、再び市場の流動性が枯渇するとともに、市場機能が損なわれてしまう事態も懸念され、脆弱な状況が当面続くと考えている。こうした中で、今後の運用については、金利が上昇する局面で徐々に投資残高を増やしていくことを基本に考えている。日本銀行によるマイナス金利の深掘りを見込みにくい一方で、イールドカーブ・コントロールはしっかりと機能すると予想されるため、プラス金利である長期ゾーンや超長期ゾーンでの運用が中心になると考えている。
   担保需要が見込まれるT-Bill又は日銀買入比率が高い短中期ゾーン中心の国債発行の増額が市場のコンセンサスと理解している。残存10年以下のイールドカーブについては、日本銀行によるイールドカーブ・コントロールでの制御が可能であると考えられるため、コンセンサスに沿った増額であれば、特段大きな問題なく消化可能であると考えている。一方、超長期ゾーンについては、既に述べた通り、市場参加者のリスク許容度の低下が懸念されている状況下、日本銀行による積極的なサポートも見込みにくいため、不必要なボラティリティ上昇を避けるためにも、最終投資家の需要を確認しつつ、増額していくことが望ましいと考えている。

・令和2年度補正予算に伴う国債発行の増額の影響により、金利上昇期待があるものの、4月の日銀買入オペが増額となったため、大幅な国債追加発行となった場合でも、当面金利急騰などのリスクは小さいと考えている。各金融機関では、新型コロナウイルス感染症へのBCP対応から人員抑制等により、国債市場の流動性が一層低下することが懸念される。
   既に述べた通り、当面、国債市場への影響は限定的と考えるが、当社における国債発行の増額許容規模については、足元の金利水準が維持される前提であれば、20年債は1回の入札当たり1,000億円から2,000億円程度の増額であれば許容可能であり、10年債は1回の入札当たり2,000億円から3,000億円程度であれば許容可能である。5年債以下については、プラス金利とならない限り、積極的な投資を行わない方針である。

・国債市場では、期末要因や新型コロナウイルス感染症の感染拡大への対策としての運用体制の変更等により市場参加者が減少していること、日銀買入オペの増額により市場流動性が低下していることで、レポ市場はタイト化傾向にある。新型コロナウイルス感染症の感染状況が落ち着くまでは不安定な市場の動きとなりやすいと考えるが、世界経済がリセッション入りする懸念が高まり、各国が金融緩和策を強化している中では大きく金利上昇することは想定しづらい。当社としては、インカム・ゲイン確保の観点から、プラス金利の国債への投資意欲は相応にあり、また低下する金利を補うためキャピタル・ゲインを狙った国債売買も強化していく方針。
   国債の発行増額については、投資家需要に鑑み、2年債から30年債までを1回の入札当たり1,000億円~3,000億円増額し、残りはT-Billを中心に増額することで、マーケットへの影響を抑制できると考える。しかし、当社の現状等を踏まえると、保有する国債残高はマイナス金利政策導入以前と比べ大きく減少しており、現行の金融政策が継続される前提の下では、流動性確保や担保ニーズ等から残存2-5年の増額が最も有益であると考えている。

・流動性が急速に低下しており、バランス・シートを圧縮して運営している。日本国債が格下げとなった場合、本邦金融機関などのレポの取引先も格下げされ、海外投資家が日本国債への投資を抑制あるいは停止せざるを得ないリスクを懸念している。
   令和2年度補正予算に伴う国債発行計画の変更による国債発行の増額の年限については、多額の発行を前提とすれば、物価連動債以外の各ゾーンの増額が必要である。40年債と30年債、20年債は、7月以降、1回の入札当たり1,000億円の増額、10年債は、7月以降、1回の入札当たり2,000億円の増額、5年債と2年債は、7月以降、1回の入札当たり3,000億円の増額、T-Bill・1年物は、7月以降、1回の入札当たり2,000億円の増額、T-Bill・6か月物は、10月以降、1回の入札当たり8,000億円の増額、物価連動債は、5月以降、1回の入札当たり1,000億円の減額、流動性供給入札は、7月以降、月間1,500億円の増額を希望する。
   流動性供給入札については、発行増額に伴い、日銀買入が増額される年限の既発債の流動性が更に低下すると予想されることや、投資家の需要の強い残存20年超ゾーンの既発債の流動性が枯渇していることから、増額を希望する。

・新型コロナウイルス感染症の感染拡大に端を発するグローバルな市場混乱により、日本国債市場についても、一時的にボラティリティが上昇し、流動性が著しく低下する場面が見られた。足元ではやや落ち着きを取り戻す動きも見られているが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う不透明感が継続する中、市場の流動性や投資家のリスク許容度が回復するには時間を要すると考える。当面は、新型コロナウイルス感染症による実体経済への影響や市場の流動性を注視し、日本銀行のイールドカーブ・コントロールの下、ポートフォリオの状況にも留意した上で、割安化した局面では日本国債にも慎重に投資していく。
   国債発行の増額については、グローバルに国債発行額が増える中、その規模の大きさや投資家のリスク許容度、流動性等の市場環境によっては日本国債市場に与える影響が相応に大きくなることも想定される。担保需要等によりマイナス金利でも相応の需要が見込まれるT-Billや、日本銀行によるイールドカーブ・コントロールの下、相応の規模の国債買入が実施されることにより急激な金利上昇が抑制されることが期待される残存10年以下のゾーンを中心に、多めの発行増額を行い、残存20年超の超長期ゾーンについては、発行増額を抑制的に行うことが望ましいと考える。引き続き、マイナス金利となっている年限には国内投資家の長期的な需要は見込み難い状況が継続しているものの、財政拡大基調となる中では、超長期ゾーンよりは長期ゾーンまでに一定の需要が集まりやすいと考えている。

・新型コロナウイルス感染症に関して、首都圏など都市部を中心に、予断を許さない状況が続いている。今後、感染症拡大防止のために人の移動や経済活動への制約を強化せざるを得ない局面に直面した場合、機関投資家等の市場関係者が通常時と同様の体制で国債取引に臨めない可能性を念頭に置いておく必要があるかもしれない。
   新型コロナウイルス感染症の感染拡大がより深刻化・長期化し、今回の補正予算の策定時点で想定される経済的損失よりも状況が悪化した場合には、更なる財政支援等が必要になる可能性もある。追加の補正予算や大幅な税収減に備える観点から、年度後半においても状況の変化に柔軟に対応できる余地を残しておくことが市場の安定化に資するのではないか。

・3月に急騰した米ドルLIBORが安定化するなど著しい市場の緊張は解け始めたとは言え、ドル円ベーシスの高止まりや新興国のクレジット・デフォルト・スワップの拡大が見られ、そして、日本国債市場についても、市場参加者のリスク許容度の低下により流動性が低下しているとの指摘が多くの市場参加者からなされている。
   新型コロナウイルス感染症による影響はこれから本格化すると思われる。日本での都市封鎖の可能性が否定できない中で、まずはBCPの確立が急務である。世界各地に張り巡らされたサプライチェーンが寸断され、その復旧復興も長期間を要し、その間に金融危機が発生する可能性も否定できないように思う。
   国債発行計画の変更については、ほとんどの市場参加者がリーマンショック時の対応と同規模の国債発行総額の増額のイメージを置いている。平成21年度の国債発行計画は、平成21年4月の経済危機対策で16.9兆円の国債の市中発行額が追加され、その後、平成21年10月に更に2.1兆円の市中発行額が追加された。平成22年1月には、9.2兆円の税収減を埋めるために9.3兆円の公債発行の追加を内容とする平成21年度第2次補正予算が成立した。今回も将来の税収減を視野に入れておく必要がある。
   新型コロナウイルス感染症対策で、2025年度PB黒字化目標の実現可能性は遠のいてしまったようである。他の国々と比べて、はるかに巨額の国債発行残高を有する日本の国債が更に格下げされる可能性は、一部の市場参加者が述べているように、否定できないように思われる。
   こうした中で、追加の国債発行については、国際的にも依然として不安定なマーケットへの攪乱的な影響を避けることを第一に考えねばならない。そのために、超長期ゾーンの発行増額を極力抑制し、イールドカーブ・コントロールの効くT-Billから残存10年ゾーンまでの発行増額を中心とすべきである。そして、これまで「定期的かつ予見可能な発行」を維持したことも寄与して増大した前倒債の取崩しを積極的に活用すべきであると考える。

・新型コロナウイルス感染症による影響は、実体経済への大打撃となっており、個人補償も含め、様々な業種に対する財政政策の発動が不可欠である。税収の減少も相当なものとなると予想され、国債発行総額は、当初の想定以上に急拡大せざるを得ない。日銀国債買入も歴史的に例のない規模になると予想される。したがって、従来のように、各年限の需給を見ながら、ある程度の時間をかけながら調整できる事態ではなくなる可能性がある。
   こうした中で、市場の流動性を低下させることのないように、担保としての国債の役割も認識しながら、幅広い年限で、市場のニーズに対応することが必要である。今後、国債市場は、局面ごとに大きく揺れる可能性がある。市場の安定性を保つため、年限別や種類別の国債の需給をしっかり把握し、市場の安定性を損なわないように、当局による国債発行が続けられることが必要である。
   国債市場が大きく動いた際には、市場調整が行われるメカニズムが働くよう、本懇談会や国債市場特別参加者会合は、重要な役割を果たすと思われる。臨時の会合が開催できる体制をしっかり確立していただきたい。可能であれば、書面による会議の開催ではなく、コミュニケーションアプリ等を用いたビデオ会議の開催の可能性も検討してほしい。新型コロナウイルス感染症の問題は、世界や日本の歴史に刻まれる大きなショックである。国債市場の安定性を保ちながら、この難局を乗り切れるよう、市場参加者と当局が二人三脚で、緊急事態が発生する可能性も踏まえた準備をお願いしたい。

 

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問い合わせ先

財務省 理財局 国債業務課 市場総括係
電話 代表 03-3581-4111 内線 5700