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国債投資家懇談会(第91回)議事要旨

 

日時 令和5年3月22日(水)10:30~12:00

場所 財務省 第3特別会議室

内容 

1. 令和5年度における固定利付債のリオープン及び入札方式について
〇令和5年度における固定利付債のリオープン及び入札方式について、理財局から以下のように説明を行った。

・翌年度の固定利付債のリオープン及び入札方式については、毎年3月の本懇談会において議論し、皆様の御意見を踏まえて決定することとしている。本日は、令和5年度における固定利付債のリオープン及び入札方式について皆様の御意見をお伺いするもの。

・10年債については、平成27年度以降、償還日が同一の国債を発行する場合で、かつ、前回債の表面利率と入札日の市場実勢の乖離が概ね30bps以内の場合には、リオープン発行としている。
 この点につき、事前に皆様から御意見をお伺いしたところ、殆どの参加者から、現行方式を支持する御意見を頂戴した。
 当局としても、市場が大きく変動した場合には新発債として投資家需要を喚起する余地を残しつつ、そうでない平時にはリオープンとなることで市場の流動性を高めることができるとの考え方から、令和5年度においても、現行方式を維持してはどうかと考えている。

・20年債・30年債・40年債のリオープン方式については、令和4年度は、20年債・30年債は年間4銘柄、40年債は年間1銘柄でのリオープン発行(原則リオープン発行)としている。
 この点につき、事前に皆様から御意見をお伺いしたところ、殆どの参加者から、現行方式を支持する御意見を頂戴した。
 当局としても、市場の流動性を高めることができるとの考え方から、令和5年度においても、現行方式を維持してはどうかと考えている。

・次に、40年債の入札方式について、令和4年度は、利回りダッチ方式を継続したところ。令和5年度の40年債の入札方式について事前に皆様から御意見をお伺いしたところ、殆どの参加者からは、利回りダッチ方式を維持すべきとの御意見を頂戴した。

・当局としては、これらの御意見等を踏まえ、令和5年度においても、P.3のとおり、利回りダッチ方式を維持することによって安定的な消化を図ることが望ましいのではないかと考えている。

・これらの御意見等を踏まえ、令和5年度におけるリオープンおよび入札方式については、P.3に当局の案をお示ししている。令和5年度における固定利付債のリオープン及び入札方式については、本日の会議内容も踏まえて総合的に判断することとしており、改めて皆様の御意見を頂戴したい。

〇出席者から出された意見等の概要は以下のとおり。

・固定利付債のリオープンについては、足元、特に日本銀行の金融政策、オペ運営の影響により、カレント近辺の10年債を中心に市中流通残高が少なくなっているので、リオープンによって一定の流動性を確保する一方、市場実勢とクーポンが大きく乖離するような場合は、新発債の発行に切り替えるという現行の運用が、流動性確保と投資に当たっての利便性のバランスがよい形なのではないかと考えている。

・固定利付債のリオープンについて、当局の提案を支持したい。日銀買入により、特に10年債の360番台後半の需給が非常に締まっているところ、ある程度の市中流通残高が必要なので、現行の方式で問題ないと考えている。

・固定利付債のリオープンについて、基本的に、現行の方式の継続が望ましいと考えているが、部内では、年間4銘柄のリオープン発行は、ひと銘柄毎の流動性が高まるというメリットがある一方、パーから大きく離れた場合に当該銘柄への需要が低下してしまうことから、5年債についても、10年債と同様に新発債の表面利率と市場実勢との乖離の幅を少し許容してリオープン発行する形を検討してもよいのではないかとの意見があった。

・リオープンについては、将来的に、市場のボラティリティの高まりや個別銘柄の過度な需給の引締まりなどがあった場合は、方式の変更等について能動的に議論させていただければと考えている。

・リオープンに関して、原則として当局の提案に異論はない。マーケット・メイカーの立場では、流動性の観点から、リオープンでひと銘柄当たりの発行額を大きくすることで取引が活性化されるということは理解できる。一方、投資家の立場では、金利が大きく変動した際に、新クーポンの新発債での発行の方が、その他有価証券勘定で売買する場合には簿価分散を図る観点で投資しやすいという事情もある。但し、現状は、イールドカーブ・コントロールによって特定の銘柄の需給がひっ迫している状況が継続しているため、現行の方式の継続でよいのではないかと考える。
・入札方式に関して、現状の案で問題はない。
 
・20年債、30年債のリオープンについて、流動性の確保も重要であるため当局の提案でよいが、簿価分散の観点から市場金利に見合った銘柄を複数持ちたいという観点もあるので、クーポンと市場実勢が一定程度乖離した場合は、市場実勢に沿った新発債の発行も検討していただけるとありがたい。
・40年債については、償還タイミングの分散の観点から、毎月発行・複数銘柄の発行を希望している。入札方式についても、発行開始からある程度時間が経ってきているので、流動性が確保されてからということになると思うが、コンベンショナル方式の入札についても検討できるのではないかと感じる。

・流動性が重要なので、特にリオープンについては、現行方式がよいのではないか。

・10年債のリオープンについては、年間4銘柄の原則リオープン発行を支持する。また、その他の年限のリオープンについては現状維持を支持している。


2.令和5年4-6月期における物価連動債の発行額等について

〇令和5年4-6月期における物価連動債の発行額等について、理財局から以下のように説明を行った。

・物価連動債の発行額等については、P.5のとおり、令和5年度発行計画では、1回の入札当たり2,500億円で年4回の発行としつつ、「市場参加者との意見交換を踏まえ、市場環境や投資ニーズに応じて、柔軟に発行額を調整」することとされている。また、P.6のとおり、買入消却についても、「市場の状況や市場参加者との意見交換も踏まえ、必要に応じて実施する」こととされている。本日は、4-6月期における発行額等について、御意見をお伺いするもの。

・1-3月期については、P.7のとおり、市場の状況や市場関係者との意見交換を踏まえ、2月に発行額2,500億円で入札を行う一方、買入消却入札を毎月200億円実施することとしたところ。発行入札及び買入消却入札の結果はそれぞれP.8、P.9のとおりである。

・流通市場の状況については、P.10、P.11のとおりである。この半年程度の推移をみると、BEIは低下する場面も見られたものの、足元カレント債のBEIは概ね70bpsを挟んでの推移が続いている。

・こうした中で、皆様から事前に御意見を伺ったところ、全ての参加者から、需給はバランスしているため引き続き4-6月期における発行額と買入消却額については据え置きとすることが望ましいとの御意見が聞かれた。

・こうした経緯や皆様の御意見も踏まえ、P.12に当局の提案をお示ししている。令和5年4-6月期については、1-3月期と同様、2,500億円の発行入札を1回行うこととしつつ、毎月200億円の買入消却入札を行うこととしてはどうかと考えている。

・なお、買入消却の対象銘柄については、令和4年度と同様、カレント銘柄も含めた全銘柄とすることとしたい。

・また、令和5年度における物価連動債のリオープン及び入札方式については、令和4年度と同様、年間1銘柄でのリオープン、価格ダッチ方式での入札としてはどうかと考えている。

・以上、物価連動債市場についての状況とそれを踏まえた当局案について御説明した。
 4-6月期における発行額等及び令和5年度における発行入札方式等については、本日の会議内容も踏まえて総合的に判断することとしており、改めて皆様のご意見を頂戴したい。
 物価連動債市場の育成は、国債管理政策上の重要な課題と考えており、今後も入札等の状況・市況や皆様の御意見も踏まえつつ、慎重に検討・判断していきたいと考えている。

〇出席者から出された意見等の概要は以下のとおり。

・物価連動債に関して、この間、一定程度の投資家需要が見られたと認識している。インフレ率上昇のヘッジ目的と考えられるが、買入消却などにも相応に応札もあって、売り買いの両サイドの動きが見られるような状況と認識している。当社は、ポートフォリオにおいてそれ程大きな金額を持っているわけではなく、ここから当面は投資対象とすることも考えておらず、当局の買入消却などで、利食いも兼ねて流動化を考えていきたい。

・物価連動債は、以前は投資していたが、直近は残高を落としている。流動性がかなり低いということに加え、市場規模もそれ程大きくないことから、メインの投資対象資産としては考えにくい状況である。

・当社は、国債をセカンダリー市場で購入しており、物価連動債は、流動性への懸念から、現在は投資対象としておらず、特段意見を持っていないというのが正直なところである。
・物価連動債については、これから勉強して投資を検討していきたい。

・当社の物価連動債に対する投資スタンスは、少額保有で、市場の流動性や値動きを確認するための試験的保有に留まっている。長期的には、市場流動性が出てこない中では大きく保有しにくいと考えており、加えて、今後の基調的な物価の上昇も展望しにくいので、少額保有に留めていくというスタンスである。

・物価連動債に関して、当局の提案で問題ない。現状のALM構造上、資産サイドは短期性アセットが多く、ポートフォリオ全体がインフレに強い形になっているので、インフレヘッジのための物価連動債の組み入れが、必ずしも必要な状況にはなっていない実情がある。

・物価連動債は、インフレの際に、金利が上昇するまでの間の一時的なヘッジになると思っているが、長期的には、必ずしもポートフォリオ全体のヘッジになるとは考えていない。インフレによるコストは金利の上昇で補填できるという考えなので、ポートフォリオの主力の一つとは考えていない。

・負債が固定金利という業態であるので、物価連動債は積極的な投資対象にならない。

・物価が上がっていくとゆっくり名目金利も上がり、そこからかなりタイムラグをおいて負債の方のコストが上がってくるので、物価が上がったからといってすぐダイレクトにアセットサイドで物価連動債を持つということにはならない。そのようなALMの構造になっているので、固定利付債を中心に投資している。

・物価連動債については、今はメインの投資対象としておらず、今のところは増やす予定もない。

・当社の負債に物価連動の要素がないので、アロケーションで物価連動債に投資していくということは現状考えていないが、バリュエーションによっては投資することはありえる。

・物価連動債について、米国の物価が上がり始めた1、2年ほど前、社内で、そろそろ物価連動債ファンドが組成できるのではないかと議論したことがあるが、機関投資家や販売会社の腰は少し重かった印象がある。海外ほど物価連動債の投資家層が広がらない理由は、やはり経験がないということである。インフレの経験がなく、インフレが起きたときに、物価連動債を買っておいてよかったという成功体験がまだないことから、物価連動債に対する確信を持てていないというのが根源にあるという印象を持っている。したがって、今はとにかく物価連動債を育てる時間帯で、物価が上がり、物価連動債を持っていてよかったというトラックレコードが溜まれば、自然と投資家も入ってくるのではないかと考えている。

・物価連動債のリオープン及び発行方式・発行額・買入消却額については現状維持を支持している。
・物価連動債は海外投資家のニーズがないわけではない。インデックスとして組み入れたいというニーズもある。ただ、現状、組成する側にとっても流動性が低く、政府の物価対策がCPIを押し下げる方向に働いてしまうため、なかなか積極的に投資しづらい状況にある。
・物価連動債に投資していたが、現状の物価対策や流動性を考えるとこれ以上はなかなか投資できないということで、保有額を若干減らし、その水準での保有をしばらく続けるという方針である。
・春闘の結果を見ても、所定内給与の上昇を見ても、賃金やインフレダイナミズムの変化が感じられるような動きになっていると思う。物価連動債自体は商品として有望であると思っているが、なにぶんマーケット環境があまり良くないので、投資しにくいという状況である。

・物価連動債については、当社の運用ポートフォリオの一部で投資対象としている。投資判断に当たっては、もちろん経済、物価情勢が一番重要であるが、流動性の低さ、流動性のリスクプレミアムが価格に十分に織り込まれているかどうかということを、投資判断を行う際に重視している。


3.令和5年4-6月期における流動性供給入札の実施額等について

〇令和5年4-6月期における流動性供給入札の実施額等について、理財局から以下のように説明を行った。

・流動性供給入札については、P.14のとおり、令和5年度発行計画では、
(1)令和4年度と同様残存1-5年ゾーンについては3.0兆円、残存5-15.5年ゾーンは6.0兆円、残存15.5-39年ゾーンについては3.0兆円とし、合計で年間12.0兆円を発行することを想定しつつ、
(2)最終的には「市場参加者との意見交換を踏まえ、市場環境や投資ニーズに応じて柔軟に調整」することとされている。
 これを受け、本日は、4-6月期におけるゾーン毎の発行額等について、御意見をお伺いするもの。

・P.15のとおり、1-3月期においては、令和4年度発行計画で想定されていたとおり、残存1-5年ゾーンについては、奇数月の1月と3月に5,000億円、残存5-15.5年ゾーンについては、毎月5,000億円、残存15.5-39年ゾーンについては、偶数月の2月に5,000億円の発行とした。これらの結果はP.16~P.18のとおり。

・こうした中で、4-6月期の流動性供給入札について、皆様から事前に御意見を伺ったところ、一部の参加者からは、需給が締まっている銘柄が複数みられることから、増額が適当との御意見が各ゾーンできかれたほか、ゾーン区分の変更や対象銘柄を絞るような方式を希望する御意見もきかれたものの、殆どの参加者からは、現時点では現行の発行額等を維持することが適当であるとの御意見を頂戴した。

・これを受け、P.19にあるとおり、令和5年4-6月期における発行額の当局案を作成した。残存1-5年ゾーンについては、奇数月の5月に5,000億円、残存5-15.5年ゾーンについては、毎月5,000億円、残存15.5-39年ゾーンについては、偶数月の4月と6月に5,000億円の発行としてはどうかと考えている。

・4-6月期における流動性供給入札のゾーン毎の発行額等については、本日の会議内容も踏まえて総合的に判断することとしており、改めて皆様の御意見を頂戴したい。

〇出席者から出された意見等の概要は以下のとおり。

・10年債の360番台のショートがかなり深いため、流動性供給入札の残存5-15.5年ゾーンの実施額を増やしてはどうかと考えている。

・当社は、流動性供給入札に直接参加していないため、特段意見を持っていない。

・流動性供給入札は現状で問題ない。四半期ごとに発行量を調整していくことが重要で、今後、例えば、金融政策の変更に伴い、超長期ゾーンの需給バランスが崩れてしまうような場合には、実施額を手前のゾーンの方に寄せるといったフレキシブルな対応が必要になってくると思う。

・流動性供給入札については、イールドカーブの歪みが長期間にわたるようであれば、残存5-15.5年ゾーンで、金利がイールドカーブ・コントロールのレンジの上限に張り付いて、価格が歪んでいる銘柄の取扱いが課題となると認識している。

・流動性供給入札の残存15.5-39年ゾーンの増額を希望する。超長期債は、相対的に流通量が少なく取引コストが高いので、当該ゾーンを現状の5,000億円から8,000億円程度まで増やしていただければありがたい。

・流動性供給入札については、債券マーケット全体の流動性の状況や投資家動向を反映して発行額を調整いただければと思う。当社は、超長期債を投資対象にしている投資家であるので、残存15.5-39年ゾーンの発行割合を上げていただくことをご検討いただければと思う。

・流動性供給入札は、実施額が年間12兆円の前提であれば、当局の提案を一応支持しているが、残存10年未満の国債は日本銀行の保有比率がさらに高まっており、流動性が枯渇しているため、流動性供給入札を増額すべきだと思う。
・区分についても、残存1-5年ゾーン、残存5-10年ゾーン、残存10年超ゾーンに変更して、より残存5-10年ゾーンが重点的に供給されるようにすべきと考えている。

・流動性供給について、今後も一部の銘柄や年限等で需給がひっ迫するような事態が想定されるが、そのような状況に対しては、まずは日本銀行がオペ運営で対応されるものと考えている。


4.最近の国債市場の状況と今後の運用見通しについて

〇出席者から出された意見等の概要は以下のとおり。

・米国に端を発した金融不安を受ける形で足元、円金利も急低下しており、また、日本銀行の政策修正の不透明感もあいまって、極端な物言いをすれば、一寸先も見えづらい中で、にわかには投資スタンスを決めづらい状況にあるというのが正直なところである。本日のFOMCで、どういうスタンスでどのような判断をするのか、マーケットがそれをどのように解釈して、どう反応するのかに注目して今後の展開を改めて考えていきたいと思っている。
・日本国債に関しては、ある程度の収益性が伴うのであれば、来年度以降の主要な投資対象としていきたいと考えており、市場環境や日本銀行の政策修正の動向などを踏まえながら、引き続き検討していきたい。

・日銀買入によって一部の銘柄にほとんど流動性がない、国債先物と現物のベーシス、カレンダースプレッドが非常に大きくなるなど、市場の歪みが大きいと考えている。地方債のプライシングにも影響が出ていることから、なるべく早くイールドカーブ・コントロールの撤廃又は修正をしてほしい。
・マイナス金利導入以前は5年債をメインに投資をしていたので、そこに回帰する形で5-10年ゾーンの国債投資を増やしていきたいと考えている。

・12月のイールドカーブ・コントロールのレンジ拡大以降、20年債は投資してもよい金利水準に近づいていた。しかし、既存のポートフォリオの評価損拡大や金利ボラティリティの上昇、また、バックテストの観測期間が1年であることから乗数補正が結構大きくなって市場リスク量が上昇傾向にあることから、リスク量の面で超長期債への投資が難しい状況となっている。
・イールドカーブ・コントロールの修正又は撤廃が予想されるため、今は10年債には投資はできないが、撤廃されれば当然に10年債への投資意欲が高まると考えている。

・足元の国債市場の状況について、日本銀行の金融政策の動向に加え、欧米の金融機関の信用不安の高まりを受けた安全資産への逃避の動きが日本の国債市場に影響している。10年債の利回りはイールドカーブ・コントロールのレンジの上限から大きく離れて低下しているが、金利上昇を見込んでいたポジションのクローズが余儀なくされているということが、その動きに拍車をかけていると考えている。
・今後の運用の見通しについて、足元の信用不安の完全払拭には多少時間を要するかもしれないが、リーマンショック時のようなグローバルな危機には発展しないと見ており、徐々に信用不安が落ち着くとともに、金融政策正常化へのプロセスに回帰していくと考えている。当然、日本国内においても、植田新日銀総裁のもとでイールドカーブ・コントロールの修正又は撤廃へと進んでいくと見ている。
・そういった見立てのもと、今後の金利上昇に備えて、足元は金利リスク量を一旦減らしているが、金利が上昇すれば日銀当座預金に滞留している運用待機資金を残存5年程度の国債に振り向けていくことを考えている。当然ながら、運用残高は増加することになるが、預貸ギャップやバランスにもしっかり目を配っていく。ポートフォリオのバランスとしては、日銀当座預金に滞留している部分が大きく、一方で外債や投資信託も持っているという状況から、日本国債をしっかり持った形にしたいという思いがずっとある。イールドカーブ・コントロールが終わり、日本国債の金利がしっかり付く状況になれば、残高を復活させていきたいと考えている。なお、投資対象については残存5年を中心にその前後を想定している。

・これまで、低金利の国内から抜け出し、海外の国債やクレジットの投資を増やしてきたという経緯がある。足元では、インフレの持続性や日本銀行の新体制下のスタンスが分からないため、すぐに日本国債を増やすということは考えていないが、金利がそれなりに付けば貴重な順イールドのイールドカーブということもあるので、国内回帰を考えていきたい。
・国内回帰の際には、これまでリスク量を落としてきた超長期ゾーンの復元は考えず、ALMの観点から、5年債から10年債をコアにしたポートフォリオ構築を考えていきたい。

・コロナ禍以降、多額の財政出動が続いており、拡大した国債発行総額があまり減っていない状況が継続している。このような状況の中、市場参加者が減少した状態のまま、イールドカーブ・コントロールの解除やレンジの拡大を実施すると、局面によっては、市場がリスク量を吸収できない可能性があり、ボラティリティの上昇につながる可能性がある。投資家も金利上昇に対して、それなりの準備をしているが、継続的に国債を買い続けるだけの余力があるかどうか分からない。よって、今後の継続的な安定発行のためには、中央銀行、発行当局、投資家の三者で、市場全体の需給バランスに留意しながら慎重な対応が必要となると考える。
・長引くエネルギー価格高騰の影響によって、本邦経常収支の悪化が継続する中、この局面で日本国債の格下げが行われると、金融機関の外貨調達コストが上がることに加えて、調達自体に支障を来す可能性が出てくる。また、格下げにより、カントリーシーリングが下がることになるため、グローバルに起債している本邦すべての企業にとってコスト上昇となる可能性があり、国際競争力の低下につながる。このため、日本国債の格下げリスクに留意することが重要と考えている。

・イールドカーブ・コントロールに関して、少し時期が不透明というか遅れる可能性が出てきているが、いずれレンジの拡大又は撤廃がなされると考えている。その場合、足元の環境を見ると、イールドカーブの水準が当初の想定よりも少し低くなることをリスクシナリオとしている。
・イールドカーブ・コントロールが撤廃された場合、現状、超長期債への投資のほか、短期債にかなりの資金を滞留させているので、それらの配分を5年債から10年債に戻していくというのが自然な流れかと考えている。また、海外等への投資資金のデュレーションもそれほど長くないので、金利上昇を見ながら、徐々に国内の債券、特に、自己資本比率等のことも考えると、できれば日本国債に重きを置いていきたいと思う。
・格下げにつながるようなマーケットの動きになると、イールドカーブがかなり上昇してしまうので、可能性が小さいとしても、緊張感は持っていたほうがよいのではと思う。

・足元の海外市場の動揺を受けて金利の乱高下が続いているが、海外当局の迅速な対応もあって、状況の悪化は回避されると考えている。今後、日本銀行が新体制となり、金融政策修正を意識する動きが見られるが、こういった外部環境があるため、金利の急騰はないと考えている。
・キャッシュフローのヘッジ目的から超長期債を買ってきたが、スタンスに変更はなく、引き続き超長期債中心の購入を考えている。海外投資にはヘッジコストの問題があるので、国内債券中心の投資行動は変わらない。

・日銀買入オペの増額もあって市中の流通量が減少しているなか、国債補完供給オペの運用変更を受けて、投機的な投資家の動きが抑制されたことなどにより、金利低下基調となっている。そこに、米国発の金融システム不安が重なり、金利がより低下しているマーケット環境と理解している。このように非常にボラタイルな展開で、引き続き金融システム不安への警戒感や、日本銀行の金融政策に再び注目が集まる場面もあり、金利が幅をもって変動する時期が続くと考えている。
・負債のデュレーションとのマッチングを目的とした、超長期債を中心とした投資は引き続き継続する見込み。基本的に、最近のマーケット環境によらず、投資方針は変わらない。一方で、こうした投資行動を続ける上で懸念していることは、財政リスクをテーマとする金利上昇が起きることである。当社の超長期債への投資は、財政規律が守られるという見通しが前提となっていることを改めて申し上げたい。

・超長期ゾーンの金利上昇について、経済価値で見れば資産と負債の両方が動いて資産・負債差額が増加するのでよいことであるが、財務会計で見ると、その他有価証券の評価損が膨らんでいくということなのでよくないということになる。大事なことは流動性をしっかり確保することで、もし、日本銀行がイールドカーブ・コントロールを解除するようなことがあれば、今までのように長い年限ばかりを買うのではなく、10年債に投資する、短い年限を保有する等、十分に余力を残した投資をしていくことが大事であると思う。また、過度なレバレッジを効かせると後で大変なことになるので、身の丈にあったレバレッジを効かせることが大事になると思う。

・金融市場は相当混乱しているが、どこかの時点で米国のリセッションが見えてくると思っていて、これが相当マーケットにも織り込まれていると思うが、欧米の金利が下がってくると円金利にも影響してくるため、正直金利は上がりにくいのかなというのが今のビューである。仮にイールドカーブ・コントロールが解除されたとしても、超長期ゾーンを中心に既に解除を一定程度織り込んだ水準になっているので、そこが何か大きく上がるということはないのではないかという見立てである。
・海外のクレジット投資をやっていて、先行きのリセッションリスクがあるなかで、正直、欧米の今の株価、クレジットスプレッドはそれを十分に織り込んだ数字ではないと見ており、今そこを積み増す局面ではない。したがって、円債回帰はしていないが、海外の中で、クレジットから、より安全かつ金利が高くてデュレーションが取れるような運用にシフトしている。
・これまで円の貯蓄性の商品がなかなか組成できなかったので、外貨建てで組成してきたという事情があるが、円金利が上がってくると、円建ての商品が作れることになり、そうなると必然的に円の負債が増え、特に超長期の日本国債が買えるようになると考えている。そういう意味で、金利上昇は我々にとってもビジネスチャンスであると見ている。

・日本国債に積極的に投資するわけではないが、海外の政策金利の上昇や日本銀行のイールドカーブ・コントロール解除に対する思惑もあって、一時、国債先物、超長期債を中心に売られたが、その局面ではリバランスの買いを多少やっている。ただ、現状だいぶ落ち着いてきているため、おそらくこの水準から積極的に投資するというのはなかなか難しい。
・昨年後半以降の海外の政策金利の引上げという局面で、長期債、超長期債はある程度底値を打ったのかなと見ていて、積極的な売却は控えている。
・今後、金融危機まではいかないかもしれないが、金融システム不安というのが重くくすぶり続けるのではないかと見ており、金利低下を警戒している。

・日本国債の投資資金はかなり潤沢ではないかと思っており、イールドカーブ・コントロール解除となっても、金利が糸の切れた凧のようにどこかへ飛んで行ってしまうということは考えにくく、適正なところに金利水準は回帰していくというような展開になるのではないかと思っている。

・大幅な日銀買入により、残存10年以下の金利は、本来あるべきところよりもずいぶんと下がっているが、減額措置や、10年債の入札等でマーケットにデルタが供給されることで、金利が上がるが、しばらく時間がかかると思っている。市場参加者の多くがリスクヘッジしていると思うので、大幅な金利上昇もないと考えている。他方、先般、連合が公表した春闘の賃上げ率は平均3.8%で、予想よりもかなり高いものだったと思う。4月以降の所定内給与の上昇を見る必要はあるが、所定内給与とインフレ率というのは連動しており、日本のインフレダイナミズムの変化を感じさせるものだった。人口動態の変化にもかかわらず日本は非正規労働に頼って人件費を削減してきたが、主婦や高齢者といった潜在的労働力に期待できなくなってきている。企業が人件費削減から優秀な人材の確保に動き出すと、今までと異なり、生産性の低い企業やゾンビ企業からより生産性の高い企業に人材が移るようになり、生産性の低い企業やゾンビ企業が淘汰され、日本全体の生産性も上がっていくということが、なかなか難しいかもしれないが、期待できる。そうなれば、低金利に慣れ切った日本にも少し変化が出てくるのかなと思っており、それがリスクかと思っている。

・足元の国債市場について、引き続き米国の影響が大きいと考えていて、直近ではFRBのディスカウントウィンドウの貸出残高が2008年の水準を大きく上回るなど、特異な動きもあって、引き続き注意深く見ているところだが、金融当局の対応によって、短期的には収斂する方向かと考えている。ただ、今回米国で起こった流動性危機を踏まえて、今後、中小銀行が与信に慎重になる結果、米国経済に無視できないくらいの下押し圧力がかかる可能性もあるのではなかろうかと考えていて、こちらも慎重に見極めているところである。そうした中、日本銀行の金融政策については、これまで、春闘の結果等を踏まえて、遠くない将来に物価見通しの改善を理由にイールドカーブ・コントロールの修正を行うのではないかと考えていたところであるが、その可能性は低下したと思っている。仮に修正があるとすれば、市場機能の低下が理由になるのではないかと思うが、長期金利が50bpsを下回っている状況で、その必要性もいったんは低下したと認識している。

・昨年の10月に、10年債の368回債の日本銀行の保有残高が発行残高を超えた。これを見て不思議な既視感のようなものに襲われた。ずいぶん前に読み物で勉強したことなのだが、1932年11月に日本銀行は国債引受けを始めて、その翌月から日本銀行は買った国債を市場に同じ値段で売却することを始めた。ところが、1935年夏以降、この売却率が急速に低下した。この市場の警告を受けて、高橋大蔵大臣は国債発行を徐々に減らしていく方針を打ち出した。しかし、軍備拡大を求める軍部との対立が激化した。翌年の1936年に2.26事件、さらにその翌年の1937年7月7日に盧溝橋事件が起き、盧溝橋事件直後の7月15日から、日本銀行は新発国債の利回りを日歩に直した一銭相当よりも低い日歩9厘での国債担保貸出を始めた。これは今年の1月18日に貸出期間が1年以内から10年以内に拡大された共通担保オペに似ていなくはないと思う。
・2013年からの10年を振り返ると、金融政策については、2013年に導入されたQQEは、マイナス金利付き、そしてイールドカーブ・コントロール付きのQQEへと拡大された。財政については、2018年にプライマリー・バランス黒字化目標を先送りし、新型コロナ対応などで大型の補正予算を繰り返した結果、カレンダーベース市中発行額は、この10年で150兆円程度から190兆円に増加した。
・こうした中で、償還年限別の国債発行は、R&P(レギュラーアンドプレディクタブル)を原則として、この本懇談会や国債市場特別参加者会合などにおける市場との対話を通じて、粛々と行われてきたわけである。ここで言いたいことは、国債管理政策は、金融政策とは独立して運用をされていたということである。 すなわち、超長期金利の低下を受けた超長期債の発行増額やヘリコプターマネーといった機会主義的な誘惑に惑わされることなく、また、補正予算という一時的要因による国債発行額の急増に対して、借換えリスクが指摘される中で、大部分を割引短期国債の増額で対応することで、利付債のR&Pの原則を守ってきたわけである。
・今後については、イールドカーブ・コントロールの解除によって、美しいイールドカーブが再現され、定着することを期待している。同時に、日本国債のリスクフリーステータスの確保が必要である。そのためには、プライマリー・バランス黒字化目標を堅持し、減債基金への定率繰入れを維持することが必要である。これらによって、大きく低下した日本国債の流動性も回復し、資本市場の効率化が促進されるであろう。

・財政規律の重要性は繰り返し述べられているが、足元、金融システム不安がある中で、多くの方にとって、昨年のイギリスのトラス政権の出来事が頭のかなり片隅の方に追いやられているのではないかと思われる。日本は、インフレ対策ということで、色々なところに手当が必要となっており、まだ歳出に箍がかかっていると思われるが、これが際限なく対応していくのだということになってしまうと、まさにイギリスの二の舞いになりかねないので、やはり財政の信認というのが本丸なのだろうと思う。すなわち、財政の信認をいかにマーケットからいただくか、そして、いかに財政の持続可能性を維持して行くのかという点が最重要ではないかと考える。
・その上で、中長期的な課題として、例えば、南海トラフのような大規模な災害が起きた時に対応できるように、フィスカルスペースを残しておく必要がある。余地を残しておかないと、仮に、今後、米国がリセッションに入って追加で景気刺激策が必要となった時に、既にコロナ対応で国債を目一杯出しているのに、さらに追加で出すこととなり、そこにもう一撃来たら大変なことになってしまうのではないか。これが杞憂に終わればよいが、最後の余力はしっかりと確保しておくという意味でも、今の段階では財政規律をしっかりと維持するというのが大前提であると考える。
・イールドカーブ・コントロールが解除され、金融政策が正常化し、インフレが収まればよいが、何らかの理由でイールドカーブ・コントロールの解除が遅れ、インフレが進行してしまった場合には、中間所得層の生活に歪みが生じるのではないか。所得税の超過累進課税について、米国と日本で決定的に違うのは、米国はタックスブラケットがインフレインデックスされており、インフレ下で実質の税負担が変わらないようになっている点である。日本は、悪性のインフレが発生した時に、都度タックスブラケットを調整するシステムになっている。そのため、インフレで中間所得層の税負担が重くなることへの備えとして、個人向けの物価連動債が必要になることもあるかもしれないということを頭の片隅に置いていただければ、必要な時に幅広い選択肢を提供できるのではないか。


5.GX経済移行債について

〇出席者から出された意見等の概要は以下のとおり。

・当社もサステナブルファイナンスの中長期目標を掲げて取り組んでいるところであり、投資需要はある。しかし、あくまでも投資対象としての収益性や流動性が確保されることが前提であり、日本銀行の政策修正に向けた警戒感がある現状では、ややハードルはある。発行形式に関しては、GX経済移行債として個別銘柄として特定でき、外部認証が付与されていると、投資家需要も高まると思われ、一定のプレミアムを享受できる可能性がでてくるのではないかと認識している。

・ESG投融資の予算を立てており、そういった意味で前向きに検討したい。商品性については、できればグリーニアムがあまりつかないで、なるべく国債と近い水準で出てほしいということと、できれば外部認証が付いている方が望ましい。年限については、できれば5年ゾーンなどで、毎月でなくてもよいが、四半期に一回など定例的に発行してもらえるとありがたい。

・サステナブルファイナンスの目標設定はしていないものの、GX経済移行債は脱炭素社会の実現に大きな役割を担うものであると捉えているため、流動性は重視するが、投資は前向きに検討していきたいと考えている。

・サステナブルファイナンス等の数値目標を掲げているので、GX経済移行債の収益性や流動性が既存の国債と同程度で、顕著なプレミアムが付かないのであれば、十分に投資対象となる。

・外部認証の有無がポイントとなる。

・個別銘柄で外部認証が付いた形での発行が適当と考える。発行額が当初の1.6兆円だけであれば、プレミアムが付く形で発行される可能性はあるが、全体の20兆円が継続発行されていくとすると、その後のプレミアムの付き方が注目される。償還財源はしっかりしているものの、例えば、GX経済移行債にカーボンクレジットを付けるなど何らかの工夫があると、プライシングに織り込まれるのでプレミアムが付きやすいのではないかと考える。

・個別銘柄で発行していただければ投資しやすい。グリーニアムに関しては、日本銀行の気候変動対応オペの対象となるかどうかによって、投資判断、どの程度までグリーニアムを許容できるかが決まってくるかと思う。システム面については、どのような形の発行になってもすぐに対応できると思っている。将来的に通常の国債と差別化する必要がなくなる場合、流動性がなくなってきた場合への備えとして、通常の国債と統合することができるように初めから設計しておくという考えもあるかと思う。

・年限が超長期ゾーンで発行されるか注目している。既存の国債とのスプレッドは、特に短い年限での発行では、入替え対象の銘柄との比較が鮮明となり、より投資が難しくなる。個別銘柄での発行となれば、資金使途とその効果についてのレポーティング等がどうなるのか引き続き注目したい。

・外部認証を取得した個別銘柄が望ましいと考えているが、それによって、プレミアムが付いてしまうような状況になるのであれば、当社としては投資判断自体が難しくなるとの認識も持っている。

・保険業界はESG投資にかなり力を入れているので、個別銘柄の発行を強く希望する。その場合、価格に顕著なプレミアムが乗ると思うが、全く投資ができないということでもないと思うので、是々非々で投資判断していくことになると思う。

・個別銘柄で、外部認証がある方が買いやすいし、グリーニアムが付いたとしても、当社の投資目標も勘案しながら投資判断していく。

・個別銘柄での発行を是非お願いしたい。特に海外を中心に、新規の投資家層の拡大に資するのではないかと見ている。

・個別銘柄で外部認証があるとプレミアムが付くと考えている。インデックスに入るかどうかというのも重要な問題だが、投資せざるを得ないと考えている。

・当社が運用しているポートフォリオを踏まえると、年限が最長でも20年以下であろうということ、それなりのグリーニアムが想定されることから、強い需要はない。

・外部認証が取れた場合でも、流動性が低いためにグリーニアムが付かない場合に、発行する意義はどこにあるのか、国債管理政策として整合的なのかということについて頭の体操をしておくべきではないかと考えている。

 

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問い合わせ先

財務省 理財局 国債業務課 市場総括係
電話 代表 03-3581-4111 内線 5700