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地震保険制度等研究会第6回 議事録

令和4年5月30日(月)10:00~12:00
オンライン

1.開会

2.地震保険に関する最近の動きについて

(1)令和3年福島県沖を震源とする地震への対応

  • 日本損害保険協会からの説明

(2)民間準備金の現状

  • 日本地震再保険株式会社からの説明

(3)基準料率改定の届出

  • 損害保険料率算出機構からの説明

(1)~(3)について

  • 討議

3.地震保険制度等研究会における議論のとりまとめ(令和2事務年度)のフォローアップについて

(1)加入促進策の取組状況

  • 日本損害保険協会及び事務局からの説明

(2)立地に応じた保険料の割増・割引(立地割増・立地割引)

  • 事務局からの説明

  • 金融庁からの説明(「火災保険水災料率に関する有識者懇談会」報告書について)

(1)~(2)について

  • 討議

4.閉会

出席者

委員

阿部美雪

纐纈一起

佐藤主光(座長)

清水香

鈴木隆樹

中埜良昭

藤田友敬

堀田一吉

目黒公郎

(敬称略)

オブザーバー

一般社団法人日本損害保険協会

一般社団法人外国損害保険協会

日本地震再保険株式会社

損害保険料率算出機構

金融庁監督局保険課

国土交通省水管理・国土保全局海岸室

事務局

横尾信用機構課長

午前10時00分開会

○佐藤座長では、定刻になりましたので、ただいまより第6回地震保険制度等研究会を開催いたします。

本日は、初めに、地震保険に関する最近の動きについての説明とご議論をいただき、次に、地震保険制度等研究会における議論の令和2年度のとりまとめのフォローアップについての説明、それから、皆様方の質疑、そういう2つの議題を取り上げたいと思います。

それでは初めに、今回委員の交代がございましたので、今回ご参加いただく委員のご紹介について、事務局よりお願いいたします。

○横尾信用機構課長昨年7月より財務省で信用機構課長を務めております横尾でございます。どうぞよろしくお願いします。

本研究会につきましては、委員の皆様のご協力の下、これまでに5回にわたって開催しておりまして、昨年6月には、今座長からもありましたように、2度目のとりまとめということで報告書を作成させていただきました。

本日は、地震保険に関する最近の動きについてのご報告や、そのとりまとめの内容を踏まえたフォローアップについてのご説明を差し上げたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

それでは、今回よりご参加いただく新たな委員の先生をご紹介させていただきたいと思います。

第5回研究会までご参加いただいておりました公認会計士の荒川先生がご退任されましたので、そのご後任として、改めて公認会計士の先生をお招きいたしております。PwCあらた有限責任監査法人の鈴木隆樹先生でございます。

鈴木先生、恐縮ですけれども、もしよろしければ、一言ご挨拶をいただけますでしょうか。

○鈴木委員横尾様、ありがとうございます。PwCあらた監査法人の鈴木と申します。よろしくお願いいたします。

今回財務省が主催されるこの地震保険制度等研究会の委員を拝命させていただきました。簡単でございますが、20年余り主に保険会社の監査に従事しております。地震保険制度への理解については、恥ずかしながら、各委員の皆様ですとか、事務局、オブザーバーの皆様の足元にも及ばない状況ではあると思いますが、少しずつ理解を深めて、少しでもこの研究会のお役に立てればと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

○横尾信用機構課長鈴木先生、ありがとうございました。

これまでご参加いただいている委員の皆様におかれましては、時間のご都合もありますので、事前にお送りしております委員名簿にてご確認いただければと存じます。

なお、本日もオブザーバーとして、これまでの研究会と同様に、日本損害保険協会、外国損害保険協会、日本地震再保険株式会社、損害保険料率算出機構、金融庁の方々にもご参加いただいております。また、今回の議題に関連いたしまして、国土交通省からも水管理・国土保全局海岸室よりオブザーバー参加をいただいております。どうぞよろしくお願いいたします。

○佐藤座長ありがとうございました。

次に、地震保険制度等研究会の運営につきまして、引き続き事務局より説明をお願いいたします。

○横尾信用機構課長地震保険制度等研究会の運営につきまして、改めてご説明申し上げます。

本研究会の議論につきましては、その概要及び議事録について、会議後、事務局において作成いたします。委員、オブザーバーの皆様にご確認いただいた上で、財務省のウェブサイトで公表することとしております。また、本日配付する資料につきましても、原則としてウェブサイトに掲載することとしております。

次に、本日はオンライン会議でございますので、幾つか留意点をお伝えさせていただきます。

発言者以外の方におかれましては、カメラはオンにしたまま、マイクのみミュートの設定をお願いいたします。発言をされる場合はご自身でミュートを解除し、発言が終わりましたら再度ミュートの設定をお願いいたします。ミュートの設定・解除につきましては事務局のほうで行うこともできますので、適宜こちらでミュートの設定や解除を行わせていただく場合もございますので、ご容赦いただければと思います。

また、発言を希望される際には、オンライン会議システム上のチャットにて、全員宛てにお名前をご記入いただいて発言のご意思を表示していただければと思います。その後、座長から順番にご指名いただけるものと思います。

オンライン開催につきましてはご不便をおかけすることもあるかもしれませんが、あらかじめご容赦いただきとうございます。不具合等がございましたら、事前にお送りしております事務局の連絡先までご連絡いただければと思います。本日はどうぞよろしくお願いいたします。

○佐藤座長ありがとうございました。

では、まずは、「地震保険に関する最近の動きについて」と題しまして、令和3年福島県沖を震源とする地震への対応、それから、ここでも議論させていただきましたけれども、民間準備金の現状、それから、基準料率改定の届出について、それぞれ説明いただきます。討議の時間は、これら3件の説明後に一括して設けさせていただきます。

では初めに、令和3年福島県沖を震源とする地震への対応につきまして、日本損害保険協会よりご説明をお願いいたします。

○江口火災新種損害調査PTリーダー日本損害保険協会・火災新種損害調査PTリーダーを務めております江口と申します。

損保協会からは、昨年発生いたしました令和3年福島県沖を震源とする地震への対応についてご報告をさせていただきます。

それでは、資料の1ページ目をご覧ください。2021年2月13日に発生いたしました令和3年福島県沖地震は、コロナ禍において初めての大規模地震であり、初めて本格的に自己申告方式を活用した地震でもありました。マグニチュードは7.3であり、熊本地震に匹敵する強さとなります。また、最大震度は6強と強く、宮城県、福島県を中心に広範囲に被害が発生いたしました。その後、同じ地域で2回震度5強の地震も発生しております。

地震発生時は、新型コロナウイルスの影響により、首都圏、関西圏や名古屋を中心に緊急事態宣言が発令されており、外出、移動の自粛要請がなされておりました。

続きまして、2ページ目をご覧ください。このようなコロナ禍における地震の損害確認方法についてご説明いたします。

ご存じのとおり、地震保険の損害調査は、調査員が被害物件を訪問する立会が原則となります。一方、福島県沖地震の発生時は、先ほど申し上げましたとおり、新型コロナウイルスが蔓延しており、政府から外出自粛や移動制限が要請されている状況等を勘案し、感染拡大防止を目的として、損害状況申告方式、いわゆる自己申告方式の対応も可能といたしました。

この自己申告方式は、本来立会調査要員が不足するような大規模地震においても迅速な対応ができるように、オプションとして採用する調査方法です。お客様の申告に基づき損害調査を行うものですが、具体的には、お客様に申告書のご記入と損傷箇所の写真を撮影いただき、保険会社にて提出された申告書と写真に基づき書面で損害調査を実施するというものでございます。

過去、東日本大震災や熊本地震で活用されていましたが、活用割合は1割未満と限定的なものでした。今回自己申告方式は、非対面かつ被災地以外での損害調査が可能となるため、新型コロナウイルス感染防止策として有効な調査方法として多くの保険会社が採用し、主に木造建物や生活用動産を対象に活用いたしました。結果として、おおよそ50%程度の活用率となっております。

なお、立会を希望されるお客様については、従来同様立会による損害確認を実施いたしました。

また、自己申告方式はお客様にて損害確認を行い、申告書の作成や写真撮影を行っていただくなど、お客様にご負担をおかけすることになります。そのため、利便性の観点から、事前に研修を受けた代理店がお客様の代わりに損害確認を行い、自己申告書の作成、写真撮影を行うなどのご請求のサポートというものも行いました。

さらに申告内容と写真による損傷状況が不一致な事案などは、電話による追加ヒアリングや追加の写真の提出依頼、必要に応じて立会調査への切替えといったような調査の適切性も担保いたしました。

続いて3ページをご覧ください。支払保険金に関するデータについてご説明をいたします。

令和3年福島県沖地震では、件数は約28万件、金額では約2,500億円の支払保険金となっております。

過去の地震との比較ですが、支払契約件数は東日本大震災に次ぎ過去2番目の件数となります。支払保険金も熊本地震に続いて3番目の規模となっております。

続いて4ページをご覧ください。直近の大規模地震である大阪北部地震と比較した今回の地震の特徴ですが、2点ございます。

1点目は、地震保険の保有契約の平均保険金額が大きいという点です。そのため、同じ損害区分でも支払単価が大きくなっております。

2点目は、主に木造家屋であるロ構造の構成割合が高いということです。一般的に被害が大きくなる木造家屋の割合が高く、被害が拡大しているということが推察されます。

続いて5ページをご覧ください。発災後の支払状況の推移についてご説明をいたします。

下のグラフの見方ですけれども、黄色の線が事故受付件数、オレンジが支払件数、緑が調査完了件数となります。この調査完了件数というのは、支払件数に加えて、事故受付したものの支払対象外となった事案なども含まれた件数となっております。

福島県沖地震の発災後90日経過時点での調査完了率は83.4%となっております。過去、東日本大震災や熊本地震では、同時期では90%を超える完了率でした。今回完了率は低いものの、今回の地震はコロナ禍における初めての大規模地震ということもあり、自己申告方式も本格的に活用した初めてのケースということもございます。過去の地震と比較した評価というのはなかなか難しいと考えております。

最後に、自己申告方式を活用したことで見えてきた効果や課題、それを踏まえた今後の対応をご説明いたします。次のスライドをご確認いただければと思います。

まず効果についてです。今回の地震により、各社自己申告方式の業務プロセスやノウハウを得ることができました。十分な立会体制を確保できないような大規模地震においては、立会実施までに相当な時間を要することが想定されます。その場合、時間帯や場所を問わずに査定が可能となる自己申告方式を併用することで、全体として迅速な保険金支払が可能となります。

また、非対面の損害調査方法は、感染症対策としても有効だと考えております。

一方、課題も見えてきました。まずはご提出いただいた申告書への記入漏れや写真添付漏れなどが数多く見られました。例えば基礎の損傷について申告がない一方、基礎の写真は提出されているといったようなケースです。このような不備に関する確認作業に時間と労力を要するケースがございました。

次に、申告書を発送した後、申告書を返送いただけないお客様も一定数いらっしゃいました。そのため事故受付から保険金支払までに一定の時間を要するケースというものもございました。

また、地震による損傷の有無について、提出された写真だけでは判断することが難しいケースといったものもございました。そのため、追加の写真の提出や電話による損傷箇所に関するヒアリング、例えば、「この写真が見えづらいですけれどもどういった損傷が出ていますでしょうか」といったような電話でのヒアリング等、並びに必要に応じて立会調査への切替えも必要となりました。

最後に、これらの課題に対する今後の対応についてご説明をいたします。

1点目は、申告書やその記入要領の改訂です。写真の撮影方法や記入方法を記載した記入要領を申告書と一緒にお客様にはご送付しております。しかし、先ほど申し上げたように、申告書の不備や写真の添付漏れが散見されました。記入方法や記入要領が分かりづらいという声も上がっておりますので、申告書や記入要領についても、より分かりやすい体裁に改訂を行う予定です。

2点目が、デジタルやAIといった新しいIT技術、手法の活用です。デジタルやAIについては、あらゆる選択肢、可能性を排除することなく、適正かつ迅速な保険金支払に向けて有効な新しい技術や手法の活用を検討してまいります。具体的には、紙の申告書に代えてインターネットを通じて申告いただくウェブ申告方式です。申告の不備や写真提出漏れといった対策にもなりますし、郵送期間の短縮や交通インフラが遮断されたような場合にも有効であると考えます。今回の自己申告方式の課題を踏まえて、具体的に要件等を検討してまいります。

今回の振り返りについては以上ということになります。

次のスライドです。最後に、今年の3月、同エリアで発生いたしました令和4年福島県沖地震の支払件数、支払保険金等の状況をご報告いたします。

表のとおり、発災から1か月経過した4月15日現在での事故受付件数ですが、約27万件、支払保険金は約400億円となっております。今回ご報告をさせていただいております令和3年福島県沖地震と同時期の調査というものは実施していないため、単純な件数比較はできませんが、事故受付件数については、前回の地震よりも令和4年の地震のほうが多い傾向ということになっております。この地震については、現在進行形で対応を進めている段階ではございますが、中間報告をさせていただきました。

損保協会からのご説明は以上となります。ありがとうございました。

○佐藤座長ありがとうございました。

それでは続きまして、民間準備金の現状につきまして、こちらは日本地震再保険株式会社よりご説明をお願いいたします。

○池田常務取締役日本地震再保険の池田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

私からは、民間準備金の現状についてご説明させていただきます。

まず、これまでご議論いただいた内容のポイントをここに記載させていただいておりますけれども、右の上の図をご覧いただきますとお分かりのとおり、平成23年の東日本大震災やそれ以降の度重なる地震の発生によって多くの保険金が支払われまして、民間の準備金が激減いたしました。東日本大震災前の民間の残高は最大で1兆200億円あったものが、平成30年度末には2,260億円となっております。

そのため、今後の対応として、早期に民間の準備金残高の回復を図ることが重要である。また、比較的大きな地震の発生が増えていることから、早急に取り組むべきとの方向が出されました。

この方向を受けて、保険料配分の割合に関し、これまでの保険の責任割合に応じて決めていた官民約8対2でございますけれども、この割合から、過去にお支払いしてきた保険金の支出割合に基づいて官民3対7に変更するという特例措置を実施することとなりました。

特例の期間は、残高が1兆円程度に回復するまでとし、特例期間終了後は、長期的な収支相償を図る観点から、本来の配分とこの特例配分との差額について、1兆円の残高を維持することを考慮しつつ、政府に多めに配分を行いながら調整していくということになりました。

次に、特例措置開始後の民間準備金の残高の推移でございます。

令和2年度より、再保険料の70%を民間に配分するという特例措置がスタートしております。初年度の令和2年度は、特例措置によって960億円の収入再保険料増加があった一方で、令和3年2月、福島県沖地震の発生によって多くの保険金負担が発生したこともあり、前年度末から84億円増の2,555億円ということになりました。

また、2年目の令和3年度も、令和4年3月に福島県沖地震が再び発生し、多くの支払備金の計上によって、前年度末から87億円減の2,467億円の見込みになっております。

私からの説明は以上でございます。

○佐藤座長ありがとうございました。

では、最後に基準料率改定の届出につきまして、料率機構よりご説明をお願いいたします。

○松本常務理事損害保険料率算出機構、松本でございます。

私どものほうからは、昨年の6月10日付で金融庁長官に変更届を行いました地震保険の基準料率改定の概要につきまして、私どもの清水からご説明をさせていただきます。

○清水火災・地震保険部地震グループリーダー損害保険料率算出機構で地震グループリーダーを務めております清水と申します。よろしくお願いいたします。

それでは、私から、資料4、基準料率改定の届出に関してご説明いたします。

今回の資料は、2021年6月10日付で弊機構が金融庁に届出を行った際、弊機構のウェブサイトに掲出したニュースリリースと同じものとなっております。

今ご覧いただいているスライドが今般の改定届出の全体像をご説明した資料となっております。こちらに基づいてご説明申し上げます。

ページの左上、オレンジ部分ですが、今回の届出の概要を記載しております。今回の届出では、割引率等を勘案する前の基本料率は全国平均で0.7%の引下げとなっております。都道府県別、建物の構造別で改定率は区分ごとに異なっております。多くの区分が据置きまたは引下げとなっており、最大の引下げ率は47.2%となっております。一方、前回の届出時に大幅な料率引上げが必要であった一部の区分につきましては、保険契約者の負担軽減の観点から、保険料の引上げ幅を抑制する激変緩和措置を講じていたことから、この措置の解消に向け最大で29.9%の引上げとなっております。

この基本料率の改定の背景をページの左下、「主な理由・背景」に記載しております。ポイントは、保険料不足の解消と各種基礎データの更新です。

まず、保険料不足の解消についてですが、東北地方太平洋沖地震の発生を契機として、基本料率の大幅な引上げが必要となったため、地震保険制度に関するプロジェクトチーム・フォローアップ会合の議論のとりまとめを踏まえ、2017年1月以降、3段階に分けて料率引上げを実施いたしました。これにより、2017年1月から2020年12月は必要水準より低い基本料率としたことで保険料不足が生じております。議論のとりまとめでは、長期的に地震保険制度の収支相償を確保するため、当該不足について保険料率に上乗せする形で事後的に解消することが言及されており、これを踏まえ、今回の改定では、全国平均で1.6%を保険料不足分の解消のために上乗せしております。

なお、不足分の上乗せを行う期間としては、保険料不足が長期間続く場合における制度の強靱性への影響と契約者の負担感とのバランスを考慮し、今後10年程度を見込んでおります。

これと併せて各種基礎データの更新を行っております。具体的には、地震調査研究推進本部が公表した予測地図2020年度版に基づく震源モデル等の更新や、住宅・土地統計調査といった統計更新を反映したところ、全国的に地震の発生頻度は増加するものの、耐震性の高い住宅の普及により基本料率としては2.3%の引下げに寄与いたします。冒頭申し上げた今般の全国平均マイナス0.7%は、この保険料不足の解消のプラス1.6%と、各種基礎データの更新のマイナス2.3%を合わせた結果となります。

最後に、今回の改定では、長期係数の見直しも行っております。地震保険は最長5年までの契約が可能で、保険期間2年以上の契約を長期契約と呼んでおります。この長期契約の保険料を保険契約者が一括で支払う場合、契約手続に係る事務処理の省力化や、保険会社が保険料を運用可能となる点を考慮し、1年契約を更改するよりも保険料が低廉となるよう保険期間の年数に応じた係数を設定しております。今般の改定では、近年の金利低下を踏まえ算出を行った結果、保険期間5年の場合の割引効果のみが若干小さくなっております。

以降の資料では、今まで申し上げた内容のより詳細な説明や具体的な保険料例となりますので、ご説明は割愛いたします。

説明は以上となります。ありがとうございました。

○佐藤座長ありがとうございました。

それでは、ここから委員の皆様方からご意見、ご質問を受け付けたいと思います。発言を希望される方は、チャット上で皆さんに宛ててお名前を記入いただければと思います。挙手機能もあるので、手を上げていただいても分かるかなとは思いますが、よろしくお願いいたします。いかがでしょうか。

○目黒委員2点あります。1点目は、オンラインや自己申告の仕組みを用いた新しい査定制度を取り入れることはとてもいいことだと思いますし、この委員会でも、私はずっと前から具体的なシステムを紹介するとともにそれをすべきだと主張していました。しかし、当時は、「対面での丁寧な査定が信条なので、自分たちはそのような方法は採用しません」と強くおっしゃっていました。私は「それでは大規模災害の場合には全く対応できませんよ」と言っていましたが、それが変わったというのは非常によかったです。それがまず1点です。

もう1点は、今の説明の中の一番最後の部分に関してです。保険料の積立てが足りなくなってきたので積立てを増やさなきゃいけない、政府と民間での割合をどう決めるかについてはご議論とおりでいいと思いますが、問題はその次です。保険料の積立てを増やしたいのに、結果としては料率が下がっています。これでつじつまが合うのかという点に関しての疑問です。

というのは、現状で耐震性が十分高い建物に住んでいる人とか、地域的に地震動が強くならない場所とか、津波の危険性が低いところに住んでいる人たちにとっては、保険で最重要な「公平の原則」が成立していないのが現状です。このような問題の是正と併せて全体としての保険料の積立てを増やしていこうとする観点からすると、今回の全体的な最終結論としてマイナスになるのは、本来の目的が達成されることになるのですかという点です。

1点目はコメント、2点目が質問です。以上です。

○佐藤座長ありがとうございました。2点目のコメントにつきましては、いかがでしょうか。準備金の話は日本地震再保険株式会社さんですし、料率の話は料率機構さんです。とりあえず事務局のほうから、一旦下げたのはいいですが、一方で積み立てなきゃいけないという要請があるわけなので、このあたりのバランスは大丈夫ですかというご指摘だったと思いますけれども、いかがでしょう。

○横尾信用機構課長ご意見ありがとうございます。

結果的に0.7%引下げとなっておりますけれども、料率の設定自体は保険数理に基づいて、地震のリスクを料率機構のほうで客観的に評価して、それに対応してというところで決まってきますので、今の制度上、残高不足をダイレクトに料率改定で補っていくというふうには制度的にはなっていない。ただ、一旦いただいた保険料をどういうふうに官民で配分するか、民の残高が少なくなってきている中どうするかということで、リスクの評価に基づいた保険料率を前提として官民配分の見直しが行われたということでございます。ただ、先ほど地再社から報告がありましたように、それをやったとしても、ここ2年のところは残高は結果的には大きく伸びていない。これは、福島県沖の地震という2年連続で過去2、3位の件数規模の地震が来たということもあったところでございます。

ご指摘の返答にはなっていないのかもしれませんけれども、それは、長期での収支相償という制度になっているので、足下の残高不足、ただそれだけを理由にして直ちに引上げということはなかなか難しいということでございます。ただ、それでも過去、東日本大震災後に大幅な引上げが必要でしたけれども、あれも一挙にやると国民経済にいろいろな影響を及ぼす、あるいは地震保険契約者の方々への影響もあるということで、段階的に引き上げました。その際に本来必要な保険料に対する不足分はしっかり回収しましょうということで、先ほどのアンカバー部分の解消ということもやっておるところでございます。なので、ストレートな答えにはならないですけれども、リスクを最適に評価しながら、しかしながら、残高にも目を配って、例えばアンカバー部分の回収など、そういうところに努めているということが現状かと思います。

答えにはなっていないかもしれませんけれども、そんな感じかと思います。

○目黒委員長期的なリスクに応じた評価に基づいて進めてきた結果として、大幅な積立金の不足が発生してきているわけです。そこで、健全な方向に修正しようと検討した結果として、さらに料率を下げるという結論は本当に正しいのか。過渡的に不足した部分を追加することを取り上げて言っているわけではありません。正しく評価していたにもかかわらず、トータルとして積立金がどんどん減っていく状況を見ると、基本的に今のベースとなっている料率が低過ぎていることが問題でないかという指摘です。たまたま大きなイベントがあったということだけで大きく変動しているだけと言い切れますかという問題です。私は正しい災害リスクの評価に基づいた料率を設定し直していかないと、このままでは、積立金がどんどん不足していく方向に進んでしまう気がしてならないことを心配しています。

以上です。

○佐藤座長ありがとうございます。この辺りは料率機構さん、いかがでしょうか。一応科学的な根拠に基づいてやってはおりますが、感覚的に最近地震も多いじゃないですか。支払額も増えている中で、実際残高も減ったりしているので、この水準の妥当性というのはどんなふうに評価されていますか。

○松本常務理事ご質問ありがとうございます。

先ほど財務省さんのほうからもご説明が一部ありましたけれども、料率機構といたしましては、現時点での知見に基づいた中長期的な収支相償の観点からの妥当な料率を出しているということでございまして、目黒先生のほうからもございましたけれども、私どものほうとしては、実績でこれだけの被害が出たからそれをそのまま料率に反映するということではなくて、あくまでシミュレーションをベースにして、例えば東日本大震災の場合は、東日本大震災が発生したことによって、地震調査研究推進本部が作成しております震源モデルの大幅な見直しがありましたので、それを反映した結果、保険料の不足が発生したということでございます。

したがいまして、現時点であくまで私どもの料率算出の前提としては、先ほどご報告がございました福島県沖の過去2回の大きな地震といったものが今後震源モデルにどう反映されるのか。それによっては、そこでまた不足があるということが判明すれば、保険料率引上げということを行うことになりますけれども、現時点の料率水準というのは、例えば地震については、南海トラフですとか、日本海溝ですとか、様々モデルの見直しで引上げがある一方、耐震性住宅が増えているとか、あと地盤データが改良されている等で、引下げ要因がデータ上も明らかに出てきているという観点から、現時点で若干引下げという料率を算出しているところでございますので、今後また知見が出てくれば、それに従って、料率の見直しは適宜行っていきたいと思っております。

以上です。

○佐藤座長ありがとうございました。他はいかがでしょうか。

○清水委員資料2の6ページの「自己申告方式に関する今後の対応」ですが、ウェブによる自己申告を進めるのは良いことと考えます。コロナ関連給付金などの申請はウェブが基本ですし、デジタル申請は少しずつ生活になじみ始めています。給付までの時間を短縮できたり、書類不備を起きにくくしたりできる点でも有益です。最近はLINEで保険金が請求できる損保会社もありますし、車両事故の際に車の損害箇所をスマートフォンで誘導、正しく写真を撮らせてそのまま保険金請求ができる仕組みもあります。地震保険の保険金請求でも、そのようなことが可能になるとより良いと思いました。

「(2)課題」について質問ですが、書類不備は全体のどのぐらいでしょうか。書類不備を完全に回避できなくても、その傾向が分かれば工夫の余地があるかもしれません。

もう一点、提案があります。自己申告方式の課題は書類不備だけではなく、悪質住宅業者による保険金請求代行等の勧誘を受けやすくなることも考えられます。地震が起きた後に、テレビやWebでのCM、たとえば電化製品等のリコールの注意喚起で流されるような簡素なCMで十分ですが、損害を受けた方への請求勧奨、および悪質住宅業者についての注意喚起メッセージを流すことはできないでしょうか。

以上です。

○佐藤座長ありがとうございます。では、こちらは損保協会さん、よろしくお願いします。

○江口火災新種損害調査PTリーダー先生、ありがとうございます。

まず、ウェブの申告についてですが、保険会社によっては、既に書類や写真をウェブで提出できるような体制を整えている会社もございますし、また、保険会社によっては、「Forms」といったものを使ってウェブで申告を行っているということもありますので、今後業界としてもそういった体制が整えられないかということで検討してまいりたいと思っております。

次に不備ありの件数ですが、残念ながら、定量的にどの程度不備があったというデータがなくて、定量的に割合がどの程度あったかということは分かりませんが、現場での感覚としては、一定数の必要事項の記入漏れや、写真の添付漏れというものがある実態にございます。

また、最後にご提案いただきました悪徳業者への対応というところですが、こちらについても、保険会社によって、請求勧奨において、LINEであるとか、書面による郵送等で、そういった注意喚起のチラシも同封して注意を促しているという取組も行っております。また、損保協会としても、地元紙の折り込みチラシ等でこういった不正請求業者といいますか、悪徳業者の注意喚起というものは行っておりますので、こういった対策については引き続き業界としても取り組んでまいりたいと思っております。ご提案ありがとうございます。

○堀田委員今の質問にも関わるのですけれども、自己申告制方式を採用されるのはいいことだと思いますが、ぜひ事後検証をお願いしたいと思います。

今過剰申告があるのではないかという疑いがあるということでしたが、逆に過少申告もあるかもしれないので、適正に処理されているかどうかの確認をぜひやっていただきたいというのが1つです。これは要望です。

もう一つは、今回福島地震の支払金額が過去3番目だと、これは意外なぐらいびっくりしましたが、これは、福島県の地震保険の加入率が、この間非常に高まったという背景もあるのだろうと思います。もしそうだとすると、今後、加入率が上昇することで、保険料率の見直しにも影響があるのかどうかということについてのご意見を伺いたいと思います。2点です。

○佐藤座長ありがとうございました。2番目は、保険料の見直しですよね。であれば、料率機構さんにまず最初にお願いできますか。

恐らく福島のほうで加入率が上がって、そっちは損保協会に聞きますけれども、要するに、福島も含めて、高リスクの人が入ってくるわけです。先ほど耐震化によって、全体的に保険料率を下げられるとおっしゃっていましたけれども、加入者の属性というか、リスクの程度が全く違いますよね。こういうリスクの高い人たちが入ってくるということ自体が、保険料率にはこの段階でも考慮されてはいるはずですが、今後どういうふうになりそうかというのがまず1つだと思います。高リスクの人がたくさん入ってくる現状において、大丈夫かということです。

○松本常務理事既存の契約、あと契約の伸びがどうなっているかとか、実際のリスクがどれぐらい増えているかというところに関しましては、これは当然料率のほうに反映されております。ただ、これが今後、この福島県沖のような地震が増えてきていることによって、どの程度全体としての料率水準に与える影響があるのかというところは、これは恐らくまだ私どもとしても、地震が起きれば、それぞれ契約が伸びてくるところもあると思いますので、それは今後のデータの推移を見ていきたいと思っております。

○堀田委員私が申し上げたいのは、加入率がこの間増えてきたことで、それが過去の地震の保険金額と比較しても、非常に大きな金額に至ったという背景としてあるのではないか、そういうことです。そうであれば、これから加入率がさらに高まっていくと、シミュレーションもかなり違ってくるでしょうから、その都度、検証も必要となるだろうという印象を改めて持ったということです。

○佐藤座長ありがとうございました。損保協会さん、福島はやはり加入率は上がっているという理解でよろしいでしょうか。データを出してもらっていたような気がしました。

○星野地震保険特別PTリーダー今お話がありました付帯率でございますが、2011年当時の福島県は約60%であった付帯率が現在80%程度まで上昇しているという状況でございます。

○佐藤座長ありがとうございます。もともと高かったのですね。分かりました。

○阿部委員先ほどの清水委員と同じような意見になってしまうと思うのですが、この自己申告方式が導入されたことは本当によかったことだと思っております。そして、さらにサポート体制を取ったということ、代理店がそういったサポートを構築されたというのもすばらしいと思っています。

例えばこのような自己申告方式とか、新たな取組を企業の方などがされると、消費者からの相談が入るということがすごく多くなります。今回も28万件で5割程度というと14万と考えてよろしいのかと思うのですが、それだけの方がされるとなると、私ども消費者相談窓口には苦情や問合せなど、これはどうなっているのか分からないというご相談があるのです。今回、全国から相談を受けております我が相談窓口には苦情等は入っていないということでしたので、大きなトラブルにはなっていない。それは課題のところにもお書きになっていましたし、なされたということで、一定の不備についても、早急に電話対応であったり、対面に切り替えたりということで、その後の対応が非常によかったのではないかということを相談窓口の人間とも話したところでございます。

また、一方、同じように、制度を悪用した申請サポートをするというような悪質業者のご相談というのは大変増えております。私もこの点に対してより一層の注意喚起ということを申し上げようと思いましたけれども、先ほどチラシを配付等されているということなので、ぜひそういう案内をしていただければと思っております。これは、年々増えているという現状がございますので、よろしくお願いいたします。

また、ウェブ方式、デジタル化というのも、迅速に保険を支払っていただくという上では非常にメリットになると思っております。原則立会ということでございますので、高齢者など、自己申告ができない方々への対応ももちろんされるとは思いますが、デジタル化が進んでいくということになると、高齢者とか弱者の方が遅れを取らないように十分配慮して進めていただきたいと思っております。

それから、保険料率のところですけれども、今回コロナ禍ということで、対面での私どもと消費者の方々との懇親などができるチャンスが少なかったのですが、こういった料率等のことについても、ご存じないという方が多いのです。損害保険会社の方から料率が上がるということの知らせが来ているので知っていますという方が多いのですが、こういった知らせが、保険料を払う消費者が分かるというところにおいて、どのような周知をされているのかを教えていただきたいと思うのですが、よろしくお願いいたします。

○佐藤座長ありがとうございます。では、この周知につきまして、これは損保協会さんでいいのかな。よろしくお願いいたします。

○星野地震保険特別PTリーダー料率改定の周知ということでよろしいでしょうか。私どもといたしましては、会員会社とともに料率改定についてはしっかり事前にご案内するような体制を取ってございます。これでお答えになっていますでしょうか。方法論などをお話ししたほうがよろしいでしょうか。

○佐藤座長せっかくなので、ご紹介いただければと思います。

○星野地震保険特別PTリーダー改定前に契約者の皆様に対して、はがき等を用いて入念に案内をしているということと、代理店の募集人からも改定の背景等の説明をさせていただいているということでございます。

○阿部委員そうすると、代理店の方とかからの周知ということで、公にはあまりなさっていないということですか。皆さんに聞くと、会社の方からまた、はがきで知ったというのが多かったのでお伺いしました。

○星野地震保険特別PTリーダー保険会社のほうから、更新案内ということで直送させていただいているものと、募集人経由でご説明させていただいている、この両方で対応しているというのが現状でございます。

○佐藤座長会社のホームページとか、損保協会さんのホームページとかでも情報は掲載するのですよね。

○星野地震保険特別PTリーダーやっております。

○鈴木委員私は今までの経緯を存じ上げないので、もしかしたら的外れな質問かもしれないですけれども、実は気になることが、先ほどお話しされていたように、自己申告の制度というのは、こういう環境下において、保険金の迅速な査定とかでいいと思います。ちょっと気になったのは、何名かの委員の方が悪徳業者のお話もされていたと思いますが、保険契約者の方自体が、もともとモラル的に、デジタルを使うことで例えば写真の改ざんとかをすることで、損害の状況みたいなものを改ざんするようなことは可能で、不正保険金請求というのができる可能性というのが自己申告だと上がってくるのかなという懸念はあるのかと思っていまして、そこら辺の対応というのは、民間の保険会社の方の対応になると思うのですけれども、どのようなことをされているのかということを教えていただければと思います。

○佐藤座長ありがとうございます。では、この点は損保協会さん、お願いいたします。

○江口火災新種損害調査PTリーダーありがとうございます。おっしゃるように、もともと自己申告というものは、大規模地震の際に活用されるオプションの損害調査の位置づけということもあって、甚大な損害が生じている場合に活用するということも想定しているわけですが、不正な請求というものが生じる懸念というものは確かにあると思っております。そのような不正を防止する策としては、申告書にあらかじめ必要に応じて損害状況を確認するために訪問する場合がありますといった旨の注意文言を記載していたり、実際に申告された内容について、例えば当該エリアの震度と比較して被害が大きい場合であるとか、申告内容と写真の状況が整合しないとか、こういった場合については順次必要に応じて立会に切り替えて損害確認を行うといった形で、適切な損害確認というものを担保しようという形で対応しております。

以上でございます。

○佐藤座長ありがとうございます。他はいかがでしょうか。よろしいでしょうか。

オンラインでの申告であるとか、あるいは被害状況の自己申告とか、デジタルを使ったやり取りというのは、行政の分野でも常識になっていますので、ぜひ進めていただければと思います。どこの業界も今DXが求められていますので、ぜひよろしくお願いいたします。

では、大体お時間なので、もし振り返りでまたこの件についてご意見、ご質問があったら言っていただくとして、次のほうに進めさせてください。

次は、地震保険制度等研究会における議論のとりまとめ、令和2年度ですけれども、それのフォローアップということになります。フォローアップとして、具体的には、加入促進策の取組状況及び立地に応じた保険料の割増・割引、いわゆる立地割増・割引について、それぞれ説明をしていただきます。質疑のほうは、これら2件の説明の後に設けさせていただきます。

それでは、初めに加入促進策の取組状況につきまして、日本損害保険協会よりよろしくお願いいたします。

○星野地震保険特別PTリーダー私からは、業界における加入促進策の取組状況につきましてご説明をさせていただければと思います。

早速ですが、資料1ページをご参照ください。こちらのスライドには、これまでご論議を頂戴いたしました平時から加入促進を図ることの重要性を再掲してございます。

改めてではございますが、地震保険制度の強靱性を一層確保していくためにも、平時から加入促進を進めていくことの重要性、こちらがまとまってございます。また、加入促進を進めるための具体的な方針といたしましては、付帯率の低い地域での取組に力を入れることや、幅広い層での普及を進めていく観点から、関係省庁や金融機関、不動産関連の事業者との連携、こちらを掲げているところでございます。

それでは続きまして、2ページのほうをご参照ください。こちらのスライドには、過去からの付帯率の推移と都道府県別の付帯率状況、こちらを掲載させていただきました。

まず、全国の付帯率でございますが、引き続き上昇が続いておりまして、2020年度も対前年で1.6ポイント改善いたしまして、全国付帯率は68.3%まで高まりました。

都道府県別に見ますとばらつきがございますが、全体的な傾向といたしましては、近年に地震が発生した地域で高く、そうでない地域で低いといった傾向がございます。また、家財だけをご契約いただく賃貸物件、こちらの構成比が高い都道府県では付帯率が低くなるといった傾向も見て取れます。

なお、前半の論議パートで1点補足させていただければと思います。福島県の現在の付帯率は先ほど申し上げましたとおり80%弱ということになりますが、東日本大震災との関係で申し上げますと、2011年度が60%弱、2010年度が40%強ということで、先ほど震災との前後関係が明確ではなかったですが、この場で明確化させていただきます。

続きまして、3ページのほうをご参照ください。こちらは私どもの広報基本方針ということになります。

資料記載のとおり、消費者のご認識を高めていくべく重視していることが2点ございます。1点目は、日本全国どこでも地震による被害を受けるおそれがあるということになります。そして2点目は、経済的な備えとしての地震保険加入の必要性になります。また、消費者の認識向上を図っていくことに加えまして、各種施策の展開に当たりましては、先ほどのとおり、特に付帯率の低い地域などをターゲットにしていくこととしております。

具体的な実施施策は大きく3形態ございます。まず1点目は、セミナーや啓発ツールの提供など、代理店の募集活動の支援でございます。そして2点目は、ぼうさいこくたいへの参画など、各種リスク啓発活動との連動でございます。そして3点目が、マス媒体等を活用した消費者の理解促進でございます。

本日は、次のページを用いまして、3点目のマス媒体の広報活動についてご紹介をさせていただければと思います。4ページのほうをご参照ください。

2021年度の活動でございますが、前年度の効果測定におきまして、広告認知率の上昇、こちらは確認できましたものの、興味喚起率や契約意向率がほぼ横ばいにとどまったという課題認識から、資料の上段にございます(1)から(3)、こちらの3点の取組を行いました。

まずテレビ番組では、時間をより長くし、詳細な内容を扱うようにいたしました。

そして、デジタルメディアでは、ご家族で楽しみながら地震への備えについて確認できるクイズ形式のコンテンツを作成、リリースしております。こちらのイメージ画像は、人気のアニメキャラクターを用いたものになりますが、スライドの右下に添付をさせていただいております。

そして、新聞やポスターですが、「さあ、守りを固めよう。」というキャッチコピーだけではなくて、地震への備えが必要であることのメッセージ、こちらも同時に記載することといたしました。資料が小さくて恐縮ですが、元プロサッカー選手の内田選手を起用したポスターにおきまして、先ほどのキャッチコピーの下に記載されている4行の文章、これがこちらにあります。

それでは、最後に5ページをご参照ください。今後の取組方針でございますが、引き続き付帯率が低い地域などにターゲットを絞った取組、こちらを実施してまいりたいと思います。

また、大手社を中心とした会員会社との対話の中で、付帯率が総体的に低いという認識を有しておりますマンションの共有部分、こちらの加入促進を強化していくために、マンション管理業協会と連携した施策を行ってまいりたいと思っております。

加入促進の取組状況について、損保協会からは以上になります。

○佐藤座長ありがとうございました。

続きまして、事務局より説明をお願いいたします。

○横尾信用機構課長事務局からも、今の加入促進策について、政府の取組を若干補足させていただきます。資料6の3ページ目でございます。

先ほどの協会の取組と重なりますが、財務省のほうでもウェブサイトやSNSでの発信や、あとは政府全体としては、政府広報がございますので、こちらと連携して、メディア等への啓発活動というものを行っております。

あと、その他のところにありますように、自治体や財務局が各地方で行っております防災訓練とか、あるいは場所によってはリスクファイナンスという観点から資産形成セミナーでの連携など、リアルな局面での啓発活動ということも行っております。今後とも損保協会ともご協力させていただきながら、官民を挙げた加入促進について取り組んでまいりたいと思っております。

以上でございます。

○佐藤座長ありがとうございました。

続きまして、立地に応じた保険料の割増・割引、立地割増・割引につきまして、再び事務局から説明をお願いいたします。

○横尾信用機構課長事務局より、立地に応じた保険料の割増・割引、いわゆる立地割増・立地割引についての資料をご説明させていただきます。

資料5ページ目でございます。この立地割増等につきましては、本研究会や前身のプロジェクトチームなどで議論が重ねられてきたところでございますけれども、現在投影しておりますスライドは前回の研究会のとりまとめの該当部分でございます。中ほどに下線を引いておりますけれども、近い将来に全国的にデータがそろう可能性が高い津波災害に着目して、具体的な制度の研究を進め、整理すべき課題を抽出していくこととされております。このとりまとめの際に、ページの下半分に5つほどポツがございますけれども、様々な着眼点もお示しいただいているところでございます。

次の6ページでございます。今回初参加の先生もおられますので、津波リスクに着目するということになった経緯について若干振り返らせていただければと思います。

そもそもは東日本大震災など保険料率の低い地域での地震が当時頻発したということがございました。そうしたこともあって、それまで料率のほうは4区分でしたが、その4区分の料率の段階を3段階に統合したということがございました。一方で、メリハリを利かせるということも重要ということで、耐震割引の拡大を行ったり、あるいはさらなる課題として、今まさにご議論いただいております立地割増等が提起されたということでございます。

このスライドに投影しておりますように、当時どのようなデータがそもそも使えるのかという議論もしていただきました。地震被害の予測に関するデータということで、揺れ、液状化、あるいは津波、地震火災などでどんなデータが料率の計算という観点から使用可能かという検証、これは料率機構のほうにしていただきまして、その結果、どれも一長一短あって、すぐさま直ちに料率に応用可能というわけではないですが、上段にあります津波浸水想定、こちらのほうが法律に基づくデータであるということと、将来的に全国的な整備がされそうだということで、まずは津波を念頭に置いて検討するということになったものでございます。

次の7ページ目でございます。こちらは過去の研究会で委員の方々からいただきました主なご意見を掲載しております。全てご紹介することはできませんけれども、幾つかご紹介しますと、例えば立地割増・立地割引の目的ということに関しましては、リスクコントロール機能という観点に着目すべきというご意見もございましたし、それについても、とはいえ様々な理由から直ちに災害リスクを優先しての住居の移転といったことは現実的にも難しいのではないかというご意見もございました。

あるいは同じ目的の中でも、リスクコントロールだけではなくて、アラートと申しましょうか、料率によるシグナル機能を重視すべきだというご意見もございました。ただし、その際には、保険料の増減だけではなくて、地震リスクに関する様々な総合的な情報提供というものが伴わなければ、なかなか効果が上がらないのではないかというご意見もございました。

また、公平性という観点からは、そもそも現在の料率がリスクの低い人が高い人のリスクを不適切に買わされているような状況になっているのではないかといったご意見もございました。

また、国の政策との関係という観点でご意見をいただきましたのが、立地割増等を導入していくに当たっては、まず国として立地抑制あるいは移転誘導といったことを国家として進めるという方向性を示した上で、その一環として地震保険の料率で何か工夫する、そういう説明の仕方が重要ではないかというご意見もございました。

その他、対象の災害類型という点では、地震リスクのうち、先ほどありましたように3つの類型がございますけれども、そのうち津波など一部のものを取り上げて料率を改定していくことに納得が得られるかといったご意見とか、地震保険制度の中にとどまらず、広く津波リスクに対する認識を社会全体で共有することが重要などのご意見もございました。

これは、過去のいただいた意見の振り返りでございますけれども、ただいまよりご紹介させていただきます様々な事項を踏まえて、改めてこうしたご意見について議論を深めていただければと思ってございます。

次の8ページ目でございます。今申し上げました立地割増・立地割引の目的、あるいは国全体の方向性といったところと関連しますけれども、まず、今回指標の候補とされている津波浸水想定、これが防災政策上どのような位置づけにあるかといった点、それから、国全体としてどのような立地抑制や移転誘導に関連した政策を取っているかという点について、国交省をはじめ防災当局の皆様方にいろいろお話を伺いましてお聞きしたことをご報告させていただければと思います。

先ほどご紹介いたしました指標候補とされております津波浸水想定でございますけれども、一番上の丸にございますように、津波防災地域づくりに関する法律というもので規定されてございます。この法律の趣旨といたしましては、津波災害に対してはあらゆる可能性を考慮した最大クラスの津波災害が発生した場合でも、何としてでも人命を守るということで、ハード、例えば堤防とかそういったことでございますけれども、それとソフト、これは避難が中心になります。そうした政策を組み合わせて減災を実施していくという考え方でございます。

この場合の最大クラスの津波と申しますのは、中央のボックスにございますように、発生頻度は極めて低いものの、発生すれば甚大な被害をもたらす津波ということで想定されております。これは幾つか各県が発表しました資料を拝見いたしましたら、単に津波が発生するということだけではなくて、津波発生時に、例えば海面が最も上昇して満ち潮の状態にある。その時点と津波発生が重なるとか、あるいは通常堤防は津波が乗り越えていっても決壊しないような構造であったり建築になっていますが、そこが仮に決壊した場合の浸水の被害はどうなるかといったような様々な悪条件が重なった場合の津波ということが想定されているようでございます。

そういう想定でございますので、堤防などのハード対策だけで十分とせず、ハザードマップの整備とか、避難経路、場所の確保などのソフト対策も兼ね合わせて命を守るための対策を講じるということになっているわけでございます。そうした政策の基礎のデータとして、この津波浸水想定というものを全国的に整備するとなってございます。

次の9ページ目でございます。今述べたような法律の趣旨に基づきまして、津波浸水想定、この表で言いますと一番上の段の白地のところでございます。最大クラスの津波があった場合に想定される浸水の区域及び深度を設定することになってございます。現在のところ、39道府県で設定しているという状況になってございます。ただ、39道府県を見てみますと、全てのケースで、緯度経度レベルで浸水の区域や深さが公に開示されているわけでもないところもございまして、現段階では地図情報のみという県もあるようでございます。

また、この想定を踏まえまして、最大レベルの津波が発生した際に、災害防止のために警戒避難体制を特に整備すべきというところが真ん中ほどのイエローゾーン、津波災害警戒区域でございます。こちらは現在20道府県が指定しているところでございます。

さらに、その下のオレンジ、レッドゾーンでございますけれども、こちらになってきますと、一定の施設、例えば学校とか病院とか、そういったことには開発規制や建築規制を課すことが可能となってきているところでございます。住宅につきましては、このレッドの部分でございますけれども、今実例はないということでございます。

いずれにしても、津波浸水想定の設定は、先ほど述べましたように、堤防等のハードを中心とする政策と、それから、避難を中心とするソフトの政策を組み合わせて防災を図るということのための基礎情報ということで、必ずしも津波浸水想定自体は、住民のそうした区域からの転出を意図しているものではないということは言えるかと思います。

次の10ページ目は、今ご説明申し上げたことを図示したものでございます。

続きまして11ページ、こちらは津波ではなく、最近頻発しております河川の氾濫やあるいは洪水といった水災に関する国の政策をまとめたものでございます。

津波以外の大雨などによる河川の氾濫あるいは洪水といった水災につきましては、近年それが激甚化、頻発化しているということで、上段のボックスの真ん中の丸ですけれども、流域治水関連法というものに基づきまして、浸水被害防止区域というものを設定することが可能でございます。その区域に設定されますと、開発規制や建築規制をかけることが可能という制度になってございます。

スライドの下側、例えば右下にございますように、浸水被害防止区域では、住宅や要配慮者利用施設等について、洪水等に備えた安全対策上の措置や構造を求める許可制にするということが可能となってございます。こうした規制は先ほどの津波のほうにはございませんで、特に住宅というところに着目しますと、津波のほうでは、先ほどのレッドゾーンでは何らかの住宅への開発規制がございますけれども、その他のところではこうした規制はないというところでございます。こうした違いは、津波に比べると、一般の水災に関する浸水被害防止区域というのは相対的に高頻度の災害リスクにさらされているという観点から厳しい規制も課すことが可能となっているのではないかと思われます。

次、12ページ目でございます。こちらは、今述べたような大雨などによる河川の氾濫等の水災に対応しました浸水被害防止区域と、万が一の最大クラスの津波を想定した津波浸水想定が、国の住宅立地政策あるいは都市計画上の移転誘導政策の中でどのように扱われているかということをまとめたものでございます。

例えば防災集団移転促進事業あるいは立地適正化計画制度など、防災あるいは都市計画などの観点で居住誘導を行うことが国の政策となっている場合には、洪水に対応した浸水被害防止区域では当該地域からの移転が補助対象となっておったり、あるいは当該地域に居住誘導しないといった扱いになってございます。

一方、津波につきましては、最もリスクの高い、先ほどのオレンジゾーンでございますけれども、それだけでは直ちにそうした移転誘導や立地抑制などの政府の介入を行うというふうにはなってございませんで、いろいろと留保がついているという状況でございます。

以上、まとめますと、津波に比べると頻度の高い洪水や河川氾濫に備えた防災政策では、立地抑制や移転誘導の考え方もあるかと思いますけれども、津波につきましては、堤防等のハード対策と、それから避難を中心としたソフト対策を組み合わせて人命を守るということが国の政策となっておりまして、必ずしも当該地域からの移転やあるいは居住自体を抑制するということは国の政策としては意図されていないということではないかと考えております。

続きまして13ページ目でございます。こちらは内容が変わります。こちらは地震保険における津波リスクの定量的な位置づけ、すなわち現在の保険料率における津波リスクの織り込まれ方についてご説明を差し上げようと思います。こうした点は、保険料負担の公平性であるとか、あるいは立地割増等のシグナル機能といった論点にも関係するかと思います。

地震保険料は、ボックスの一番上にありますけれども、純保険料と付加保険料から構成されてございます。このうち純保険料というのが、事故発生時、つまり、地震発生時に保険会社が支払う保険金に充てられる部分でございます。付加保険料は事務費でございます。

この純保険料の計算につきまして、左側の図で示しております。簡単に申しますと、(1)地震調査研究推進本部、政府の推進本部が公表している確率論的地震動予測地図の震源モデルに基づきまして、各震源ごとにそれぞれの地点の地表の揺れあるいは津波の浸水深が計算されます。

(2)になりますと、今申し上げたデータを前提にして、地震の形態別の被害、損壊、火災、津波、それぞれにつきまして、建物の構造であるとか火災延焼などの被害に関するデータ、それから、その他の被害に関するデータと併せて地震保険の契約データ自体、これも用いて予想支払保険金というものが計算されます。

(3)のところですけれども、これを各地震の平均発生間隔を用いて、一回、年当たりの支払保険予想金額に計算され直して、それを現在の契約者の方々がお掛けになっている保険金額の総計と対比した上で、平均純保険料率、(4)が出てくるということになってございます。

こうした純保険料率の算出方法につきましては、ボックスの3つ目の丸ですけれども、過去の地震の被害実績や、あるいは地震に関する学術的な研究の進展、こうしたものに応じて、最新の知見を活用しながら、料率機構のほうで精緻化に向けた努力をしていただいております。

先ほど料率機構からのコメントにもありましたけれども、例えば津波の被害の計算に当たっては、東日本大震災の経験を生かして、当時の津波の浸水深、あるいは被害の関係といったものの実績を織り込んでモデルをつくっていただいているところでございます。

最後のページ、14ページでございますけれども、今申し上げた計算に基づいて現在の料率を災害形態別に分類するとどうなるかというのが左上の図でございます。揺れ・液状化による損壊部分、これの料金の中での割合が95.4%相当、それが火災に相当する部分は4.3%、一方で津波につきましては0.3%ということになってございます。

また、過去の被害はどうだったかという点につきましては、左下に東日本大震災時の支払保険金の被害形態別内訳(推定)というのを掲載させていただいております。実際にどれに基づいて保険金が支払われたというのはデータを集約することがなかなか難しいですけれども、料率機構のほうで推定していただきましたところ、損壊被害が当時約8割強であって、津波が2割弱という推計をしていただいておりました。

もう一つ、スライドの右側でございますけれども、これは地震保険制度創設以来、過去の支払金額が多かった順に20件の地震を並べまして、それぞれに被害形態別のデータというのはないですけれども、消防庁のデータで当時の記録として、津波による住宅被害があったかどうかという点を照らし合わせました。実際に保険金がそれに支払われたかどうかは別にして、消防庁の災害データと照らし合わせたということでございます。

その結果、津波による住宅被害が起きたというのは、黄色の東日本大震災と、これは12番目、十勝沖地震、これは件数は9件ほどだったのでございますけれども、住宅被害があったということでございました。

発生周期の長さなど、地震の特質とか、あるいはこうしたデータは地震保険制度が始まってからのデータということに限られておりますので、これで何か言えるかというのはなかなか難しいところではございますけれども、東日本大震災を含め、損壊被害というのは実際の保険金の支払の大きなところをなしているということかと思います。

事務局からの説明は以上でございます。

○佐藤座長ありがとうございました。では、これに関連しまして、金融庁のほうから、火災保険水災料率に関する有識者懇談会の報告書が出ておりますので、こちらについて金融庁よりご説明をお願いいたします。

○池田保険課長金融庁の保険課長の池田でございます。

今ご紹介いただきましたように、この民間の火災保険につきまして、水災料率は足下で全国一律ということになっているわけですけれども、それでいいのかということで、昨年の6月に火災保険水災料率に関する有識者懇談会というものを立ち上げまして、今年の3月にその報告書が取りまとまっておりますので、これについてご紹介させていただければということでございます。

大雨被害など水災がいろいろ厳しさを増しているという状況にありまして、私どもはそうした状況を踏まえて、料率機構の皆さんとか、あるいは損害保険会社の皆さんと、個別に商品審査というものがございますので、いろいろ議論させていただいているわけですけれども、そうしたプロセスだけでは、社会全体にとって最適な水災保険料率というのはどういうものなのかということが必ずしも十分議論できていないのではないかという問題意識に立ちまして、先ほど申し上げた懇談会を立ち上げさせていただいたところであります。

そうした問題意識を持って、自然災害の備えとしての水災料率の在り方について、本日ご出席いただいております堀田先生をはじめといたしまして、様々な分野の有識者の皆様から、専門的知見に基づいて幅広いご意見、そしてご議論をいただいたということでございまして、改めましてこの場でお礼を申し上げさせていただければと思うところであります。

今画面上でご覧いただいております資料1ページ目から順次ご説明させていただければと思います。若干繰り返しになるようなところもありますけれども、そもそも何で懇談会を立ち上げたかということでございます。火災保険につきましては、火災による損害だけではなくて、自然災害を幅広く補償するという形になっておりまして、先ほど申し上げたように、台風、豪雨、こういう自然災害が多発、激甚化している中で、国民の自助による経済的な備えとしての火災保険の役割というものが高まっているということであります。

そうした中で、火災保険の保険料率につきまして、保険料負担の公平性の向上の観点から、補償するリスクごとにいろいろリスクをきめ細かく反映させるよう、自然災害の中でも、風災、つまり風による被害、雪災、つまり雪による被害、これについては都道府県別に、建物の所在地のリスクの大きさを反映して、料率に格差を設ける地域別細分化が既に行われているわけであります。今回の懇談会のテーマで取り上げました水災補償につきましては、地域別の細分化に必要なデータがこれまで十分に得られなかったということを背景にして、ほとんどの保険会社において、住宅向け火災保険で全国一律の料率になってきたという経緯があるわけであります。

一方で、近年、洪水ハザードマップなどの水災リスク情報が充実して、水災リスクに対する消費者の意識が高まってきているということでありますとか、火災保険料の引上げが続いておりまして、保険料の負担感が増大しているということで、この全国一律の水災料率ですと、水災リスクの低い地域にお住まいの皆さんの納得感が得られにくくなっているということもデータとして出てきているということでございます。

そういう点で、この1ページ目の右下の図をご覧いただければと思いますが、住宅向けの火災保険におきまして、水災補償の付帯率について、これは2009年から2019年の10年間の変化を示しているわけであります。洪水ハザードマップ上の浸水深が浅い地域に居住する契約者の皆さんの間で、水災補償の付帯率が最大10%程度減少しているということでありまして、これは現実にハザードマップなどをご覧になって、水災補償をあえて外しているという形で火災保険を契約するケースが増えているのではないかと推察されるのであります。

こうしたケースでは、万が一の大規模水災のときに補償の不足が生じることも懸念されるわけであります。洪水のハザードマップについてはご案内のところかと思いますが、主に想定される最大規模の河川の氾濫である外水氾濫のリスクが示されているということでありまして、水災リスクには、これ以外にも降った雨が河川に排水できず水があふれる内水氾濫、それから土砂災害、高潮、いろいろ多岐にわたるリスクがあるわけです。洪水ハザードマップだけでは、これらのリスクを完全に把握し切れない場合があるということであります。

こうした問題意識に基づきまして、損害保険料率算出機構、それから多くの保険会社では、データの網羅性や精度の向上なども踏まえて、水災料率の地域別細分化の導入について検討を進めている状況にある。他方、この水災料率の地域別の細分化ということになりますと、料率格差の拡大によりまして、今度は高リスクの契約者の水災補償の購入可能性が損なわれまして、必要な補償が得られなくなるというおそれもあるという点にも留意する必要がある。そういう意味で、社会全体での議論が必要だということだろうと思います。

したがいまして、この水災料率を何らかの形で細分化していくということの検討に当たりましては、この水災補償の普及によって、社会全体として水災による経済的な備えを高めていくにはどのような料率体系が望ましいのかという視点に立ち、また同時に、この保険の購入可能性と保険料負担の公平性のバランスなどにつきまして、社会的影響、消費者目線などを含めた幅広い観点が必要でありまして、こうした検討を保険会社に促していくために懇談会を設置したということであります。

報告書のポイントについて、2ページ目をご覧いただいて、細かい字で恐縮ですけれども、ご説明させていただければと思います。

まず報告書では、水災料率の地域別の細分化につきまして、保険料率はリスク実態に応じて設定されるべきという料率算出の大前提に合致するということに加えまして、保険料のリスクアナウンスメント効果によりまして、高リスク契約者の水災に対するリスク認識を向上させる効果、それから、保険料負担の公平性の向上により、低リスク契約者の経済的負担を軽減する効果などを通じまして、社会全体として水災に対する経済的な備えを高めていくことが期待されるということで、社会にとって望ましい方向性であると整理させていただいております。

その上で、損害保険会社が検討を進める上で留意すべき点として、次の4点を挙げているわけであります。

1点目は、細分化に用いる基礎データということでございますけれども、地域別に細分化した水災料率を算出するために、洪水ハザードマップ、いわゆる洪水浸水想定区域図を外水氾濫の基礎データとして用いることは網羅性、客観性がありまして、消費者の理解も得られやすいという評価になっております。その上で、国土交通省において、浸水頻度ごとの浸水範囲を示す水害リスクマップの整備など、水災リスク情報のさらなる拡充に取り組んでおられることを踏まえ、今後水災料率の見直しを行う際には、こうした水災リスク情報の変化を的確に反映するということを求めているわけであります。

それから2点目が、細分化における料率格差というところでございます。水災は局所的に大きな被害が発生するという特徴がございまして、洪水ハザードマップなど水災リスク情報においても高リスクとされる地域が特定の地域に偏っているという傾向がございます。したがいまして、水災リスク情報に示される地域別のリスク格差をそのまま反映して水災料率の地域別細分化を行いますと、高リスク契約者と低リスク契約者の料率格差が極端に大きくなる。そうなると、高リスク契約者の方の保険の購入可能性を著しく損なうということが懸念されるわけでありまして、こうしたことを踏まえまして、水災料率の細分化に当たりましては、保険料負担の公平性の観点のみならず、高リスク保険契約者の方の保険の購入可能性にも配慮した料率体系とすべきと整理しているわけであります。

3点目は、細分化における地域区分ということでございますけれども、水災料率の地域別細分化において、どのような地域区分ごとに料率を設定するのかというのが論点の1つになるわけであります。報告書では、できるだけ細かい地域区分を設定して、洪水ハザードマップのリスクを評価としてよりきめ細かく反映したほうが消費者の方の納得は得られやすいだろうとする一方で、現実的には区分を細かくし過ぎると、損害保険会社のシステムコスト等の上昇によりまして、保険料全体が上昇してしまう可能性も勘案しまして、総合的に消費者の利益に資するように地域区分を設定すべきと整理しているわけであります。

より細かくリスクを反映するということになりますと、極端に言えば、住宅1軒ごとに単位を細分化するということもあり得るわけですが、実際に保険を販売するに当たって、こうした単位ごとに正確な保険料を算出しまして、保険料徴収など契約管理を誤りなく行っていくということには、保険会社ごとに代理店システムなども含めてシステム整備を行うことが必須になるわけであります。

したがいまして、具体的にどこまで地域区分を細かくするかということにつきましては、何が最適かについては、保険会社ごとの経営環境にも左右される面もございまして、報告書では、各社が共通的に利用する火災保険参考純率についてのみ、各社の利便性等の面から市区町村別からスタートすることが考えられると述べるにとどめまして、各社がおのおのの検討において留意すべき点を整理しているということでございます。

最後4点目が、保険会社に期待される取組ということでございます。水災料率の地域別の細分化、これは水災補償の普及に寄与していくということが期待されるわけですけれども、高リスク契約者に対しては、リスクアナウンスメント効果によるリスク認識の向上、それから低リスク契約者に対しては保険料負担の公平性の向上による経済的負担感の軽減が重要だということでございまして、報告書では、損害保険会社に対して、これらを補完する観点から、最新のリスク情報の収集に努め、お客様に対する水災リスク情報の提供に係る取組などについて一層の工夫を加えていくこと、それから、地域別細分化について丁寧な顧客説明を行うことなどを求めているわけでございます。

報告書のポイントとしては以上でございまして、今後損害保険会社において、水災料率の細分化導入に向けて検討が具体化していくわけですが、金融庁としても、本日ご説明申し上げた報告書の内容を踏まえまして、各社において適切な検討が行われるよう、しっかり保険監督行政に努めてまいりたいと考えております。

また、この懇談会のとりまとめ結果がこの研究会における皆様の検討の一助となれば幸いでございます。

以上でございます。

○佐藤座長ご丁寧にありがとうございました。

では、ここまでの説明を踏まえて、委員の皆様方からご意見、ご質問を受け付けたいと思います。加入促進策と立地割増・割引の話、2つあります。どちらからでも構いません。両方聞いていただいても構いませんので、質問のある方、発言を希望される方は挙手ボタンを押すか、あるいは手を上げていただいてもこちらは見えますので、いかがでしょうか。

○清水委員資料5の「加入促進策の取組状況」について、加入促進に多岐にわたりお取り組みいただきありがとうございます。

地震保険について平時から知ることはとても大事です。多くの人は地震保険についてあまり知らない現状があり、CMやイベントによる普及活動は重要です。損害保険料率算出機構「消費者の地震危険意識と住居建物属性の調査(2019年)」によれば、CMやテレビを通じて地震保険を知った人がほとんどです。

また、請求勧奨と悪質住宅業者への注意喚起の意味で、簡素なCMを地震後に流してはどうかと先ほど申し上げましたが、それにはもう一つ意味があります。先述の機構の調査の、地震保険の加入を検討した場面についての問いに対する回答で、圧倒的多数だったのは「地震災害の報道を見たとき」でした。実際の地震被害を目の当たりにして、災害リスクが自分事になるのでしょう。CMは損害を受けた人に向けたものであるとともに、損害を受けていない人にも訴えるものがあるはずです。そのような意味も込めて、先ほどのご提案をしましたので、ご検討いただければと思います。

以上です。

○佐藤座長ありがとうございました。今のはコメントということで引き取らせてください。

では、他はいかがでしょうか。立地割増・割引を含めていかがでしょう。

○堀田委員今のご説明に特に付け加えることはないのですが、水災の地域別料率の問題と、津波の立地割増の問題というのは、かなりの部分で共通項があると思います。ただし、両者で決定的に違うところは、火災保険のほうは、完全に民営だけで単独でやっているのに対して、地震保険のほうは政府再保険という形でかなり積極的に政府がコミットしているというところです。その結果、料率設定の在り方にも違いが出てくるのかなというふうには思っています。

料率設定の目的については、先ほども説明がありましたけれども、1つは負担の公平性という問題、もう一つは保険プロテクションをいかに引き上げるかというところにあります。しかし、負担の公平性を確保することで、一部の人たちが保険から脱落していって、それが保険プロテクションを下げてしまうことになってはならない。それが先ほどの購入可能性を担保しなければならないというところにもつながるわけです。

そういう意味では、地震保険も、負担の公平性という問題と併せて、いかに保険を通じたプロテクションを引き上げるかを考慮すべきであり、その点で、保険加入の促進というのは、まさにその一環ではあるわけです。この立地割増の問題も、この保険プロテクションとの関係の中で議論を進めなければならないと考えています。

以上です。

○佐藤座長ありがとうございました。いかがでしょう。今の話は、経済学で言うと典型的なアドバースセレクションでありまして、加入促進するのはいいのですが、震災リスクの低い方々にも入っていただかないといけないわけなので、そういう意味において、保険料率の設定はいろいろな工夫があってしかるべきということだと思います。

○纐纈委員今のご質問と別の観点ですけれども、よろしいですか。

事務局資料のスライド14ですけれども、ご説明があったときにもちょっと変だなと思ったのは、実際に保険料率を算出するときに津波がどのくらい効いてくるかというと0.3%になっています。一方,過去に支払った保険金では、右側の表を見ると、過去に払った全額のうち半分ぐらいは東日本大震災で払っていて、そのうち2割が津波ということですと、過去に払った保険金の全体の1割ぐらいは津波に関係してくるということになるかと思います。そうすると10%ですから、実績が10%なのに、今後の予測は0.3%しか効いてこないというのは、ちょっと変ではないか。津波のリスクの換算というのは、もうちょっと見直したほうがいいのではないかという気がしました。

以上です。

○佐藤座長ありがとうございます。これは、先ほどの保険料率の話にも関わると思うのですが、保険料率を設定するときには、まさにシミュレーションで決めるので、津波のウエートは0.3とすごく低いですけれども、実績を見ると実際はどうだろうという素朴な質問が出てくると思います。過去のもので、東日本大震災で2割と出ていますけれども、多分ほとんどこれで説明できてしまうと思います。過去の実績で見ると、今纐纈先生は1割とおっしゃっていましたけれども、1割弱か、少なくとも0.3より多いと思います。この辺は相場感がございますか。損保協会さんに聞いたほうがいいのかもしれないですけれども、実績とシミュレーションは本当に合っているのかと、そういう素朴な質問でもあると思います。

○横尾信用機構課長事務局でございます。事務局のほうでこの資料を出しましたので、まずは事務局のほうからでございます。

金額ベースで考えますと、まさに纐纈先生のご指摘されているとおりだと思います。総支払額の大体半分が東日本大震災ということでございますので、そのうちの2割となると、これまでの累計支払額の1割ぐらいは東日本のときの津波の影響ということでございます。それと、この0.3%をどう対比して考えるかというところは、これは地震の大家であられる諸先生方にむしろお聞きしたいぐらいでありまして、先ほどの料率計算の1ページ前のところで図示しましたように、地震のリスクを年間の保険料に直すときに、発生間隔を考慮して、1年当たりのリスクというものを出してくるのです。

実際、地震が発生していく中にあっては、そうした可能性がどこかの1点において集約されてリスクが発現するということだと思いますが、どうしても地震サイクルが非常に長いということと、保険実務の観点から、実際の募集等を考えて、1年契約であったり、あるいは長期契約をやったとしても5年とか、そういう短いサイクルの金融商品であるということの違いというものが非常に大きかろうと思います。

あと、そういった点で言いますと、であるからこそ、地震というものが普通の保険契約の中では、戦争と同様免責になっているということで、こういうふうに計算が難しいものなので、公的な関与もあるのだろうと思っているところでございます。

そうは言いましても、先ほどの説明の中で幾たびか申し上げましたように、いろいろな地震の被害が出て、それに関する学術的研究が評価機関や研究などで行われて、それがアップデートされていきますと、地震の震源モデルの改定ということで、保険料率の精緻化にもつながりますし、それだけでなくて、シミュレーションの被害関数のパラメータとか、そういうことの見直しにも役立っているということでございます。これがどの程度十分かというところは議論があると思いますけれども、料率機構のほうでは、できる限りの精緻化にはご努力いただいているものと承知しているところでございます。

もし料率機構さんのほうで何かございましたら、コメントをお願いします。

○佐藤座長ありがとうございます。では、料率機構さん、もし追加のコメントがあればよろしくお願いいたします。

○松本常務理事今ご説明いただいたとおり、纐纈先生のまさにご意見のとおりでございまして、実際の支払われた保険金の規模で言うと、まさに東日本が最大でございますので、そのうちの2割が津波、そうすると、全体で見ると、過去通算で見ても1割ぐらいが津波ではないかというのはそのとおりでございます。

一方で、これは料率面におきましては、これも纐纈先生はよくご存じだとは思いますが、あくまで今財務省さんからのご説明がございましたように、これは、例えば南海トラフですとか、相模トラフですとか、日本海溝ですとか、想定できるかなり大きな地震においてもそうでございますし、あと、もっと大きいのは、通常それほどの巨大地震ではなくて、津波を伴わないような大きい地震、ここの例をご覧いただいてもお分かりのように、過去に支払が大きいところでも津波が実際に起きたのは東日本と十勝沖だけということでございますので、シミュレーション上は津波を伴わない地震もかなりございます。

そういったものを全て押しなべて計算をいたしますと0.3%ということで、この0.3%の算出に当たりまして、当然先ほどもご説明いただきましたように、地震本部の震源モデルもそうでございますし、津波の計算に当たっては、地震本部のほうで出されている津波のレシピといった標準的な考え方、それに基づいて計算をしておりますので、現状の津波のリスクといったものをマクロで見ると、このような数字の評価になると私どもとしては考えているところでございます。

以上です。

○纐纈委員これまでの算定がおかしいとか、そういうことを言いたいわけではなくて、基本は課長がご説明されたとおりだと思います。しかし、今後起こる地震というのを考えると、南海トラフの巨大地震というのは発生確率が非常に高いですし、かつ津波の被害も大きいものと既に予想されているわけですから、そういうものが反映されたら、もうちょっと高い値になるのではないかというのは常識的に考えられるわけで、津波のリスクの算定の仕方が旧来過ぎるのではないか。今回議論になっているような保険加入者の立地でどれぐらい津波の被害があるかということは考慮されていないことが影響している可能性が高いのではないかという気がしますけれども、いかがでしょうか。

○松本常務理事今纐纈先生からご指摘いただきました南海トラフですとか、発生確率がかなり高いと思われている地震のモデルを基に計算をした上で、現時点では私どもの計算によると、それほど大きいものが出てこないということでございます。それが本当に手法上の問題ということであれば、今後の知見に基づいて数字を再計算するという考え方もあるとは思いますが、現時点の見せ方として、これらはシミュレーションに全て入っているということでございます。この資料にある形のように、実際の支払実績という形、こういう形で過去に想定できる大規模地震の想定とシミュレーション上の津波のリスクはどれぐらいになるかというのを今後どういった形でお示しすることがよいのかも含めた、そういう意味でのご検討はさせていただければと思っております。現時点での計算には一応入っているということでございます。

以上です。

○堀田委員今の図を見ていて、現行の料率体系において、津波リスクの要素が反映されているとすれば、都道府県別の料率というところに集約されているように理解できますが、果たしてそれだけで津波リスクを全てカバーできているのかという疑問を感じます。今回の立地割増の問題は、津波リスクを明示的に料率体系に取り込む方策を議論することです。少なくとも、従来の都道府県別の料率体系を維持するだけでは、この津波のリスクは吸収されないのではないかというふうに思います。

○佐藤座長ありがとうございます。今のはコメントということでお願いします。他はいかがでしょうか。

○鈴木委員ちょっと津波から離れて、もしかしたら、先ほどのもともとの全体の料率の話に戻ってしまうかもしれないのですけれども、この表を見ていると、上位6つの地震のうち、2010年以降が5つということで、もちろん津波もそうですけれども、非常に大きい被害をもたらした地震というのが、明らかにトレンドとしてこの10年間に集中している。これが何十年のものか分からないのですけれども、そういうことを考えると、もちろん、アクチュアリーの方とかはいろいろなモデルをつくってやっていらっしゃると思います。先ほどの目黒先生のコメントとも関係するのかもしれないですけれども、保険料として、今までの過去のトレンドとは違った被害金額が出て、地震の災害の被害が非常に大きくなっているのではないかというところで、津波に限らず、全体の保険料率としての検討が必要なのかなと、感覚として、数理的なことは分かりませんけれども、これを見ていて感じました。

○佐藤座長ありがとうございます。これは、もしかしたら、損保協会さんに聞いたほうがいいのかもしれませんけれども、金額が大きくなっているのは、もちろん大規模な地震もあるということですが、加入率も増えているということと、恐らくカバーしている保険金の金額が増えているのだと思います。この辺の要因分析というのはあるのでしょうか。加入率とか金額は、多分保険料率の算定には考慮されているはずですけれども、金額が大きくなっているのは、激甚化が進んだのか、付帯率が上がったせいなのか、保険金のカバーが上がったのか。

○星野地震保険特別PTリーダー今座長のほうからおっしゃっていただいたとおり、付帯率が近年、特に東日本大震災以降に高まっているものが一定程度保険金の増加に影響しているというふうには見ております。一方で、今先生のほうからご指摘いただきましたトレンドにつきましては、料率のつくり方の話になりますので、料率機構さんのほうからお願いできればと思いますが、いかがでしょうか。

○佐藤座長ありがとうございます。では、保険料率算定のときに全部考慮されているはずですけれども、いかがですか。トレンドとしては上がっていると思うのですけれども、最近見ていくと……。

○松本常務理事トレンドというか、大きな地震が起きると、例えば東日本大震災が起きたことによって、それまでの私どもが算出の基礎として、先ほどの表にもございましたけれども、震源モデルが大きな見直しをされましたので、それによって保険料を引き上げる余地が大きく発生したということで、当然保険料も上がっております。それ以降、先ほどもご説明しましたが、さすがに福島県沖の今年、それから去年のものにつきましては、まだデータ等が固まっておりませんので、そこら辺の発生状況とかの反映はできておりません。それ以前の地震につきましては、例えば料率改定の都度、震源モデルもそうですけれども、発生した被害形態とかを分析した上で、私どもは被害関数と呼んでおりますけれども、発生状況を料率に反映するような仕組み、それは逐次見直しをして反映をしているということでございますので、モデル、プラス被害状況なんかを勘案した係数ですとか算出の方法の見直しというのは逐次行っているということでございます。

以上です。

○横尾信用機構課長加入率と、この事務局より示しました上位20地震の関係でございますけれども、一般的に言われていますのが、地震保険の加入が非常に増えたというのが、第4位の平成7年の兵庫県南部地震が大きかったと言われておりまして、実際、95年頃の付帯率はないですが、世帯加入率で言いますと10%くらいの状況で、今は世帯加入率が30%ぐらいです。しかも、兵庫の地震が起きるまで世帯加入率は趨勢的に低下していたという状況がございました。

この兵庫県南部地震が非常に大きいということで、その後世帯加入率も伸びましたし、例えば2000年頃、これだと最も古い地震が2000年代前期だと思いますけれども、その頃の付帯率で申し上げますと30%ちょっとでございました。それが今60数%まで来ているということでございますので、そういった意味では、最近の地震のほうが保険支払額ベースで見るとどうしても多くランク入りするというのはそういった事情もあるところでございます。

○目黒委員ご説明いただいている点は理解しています。付帯率が上がれば、当然支払金が増えますが、リスクが正しく評価されていれば、積立金との関係の中では支払金が増えても大丈夫なはずです。しかし、大きな地震が頻発するという現在のトレンドの中で、本当に大丈夫ですか、という点です。これから何千年から何万年先までを平均すれば、「そんな時代もあったね」ということで済むのかもしれないですが、東日本大震災を引き起こした東北地方太平洋沖地震のマグニチュードが9.0ですから、今後しばらくの間は大きな余震も続くでしょうし、南海トラフで巨大地震や首都直下地震の発生確率も高くなっています。このような近未来の状況を考えると、現在の保険料率で被害をシミュレーションした際に積立金が本当に十分だという結果になるのかどうかがとても心配なのです。30年~50年位のタイムウインドーで考えた際に、積立金が大幅に不足するという状況が出てくるのではないかと思えてならないのです。

○佐藤座長ありがとうございます。これは、多分料率機構さんのほうだと思いますけれども、いかがですか。

○松本常務理事積立金との関係は財務省さんにコメントを……。

○佐藤座長積立金は財務省ですね。では、財務省でお願いします。

○横尾信用機構課長コメントがなかなか難しいところではありますが、議論の前提として申し上げますと、先ほどのパート1のところの地震再保険株式会社のほうから民間準備金残高の説明がございました。契約者からいただいた保険料を官と民で分割して民間準備金残高を形成しているところでございますけれども、パート1で説明がありましたのは、民間のほうの積上げでございます。それとは別途地震再保険特別会計のほうで、国が引き受けるリスクに見合った残高として現在2兆円が積み上げられております。それがまず第1点でございます。

それから、こうした地震保険制度創設以来、お支払いした保険金は、官と民を合わせていただいた保険料で賄っているということではございます。申し上げたいのは、したがって、例えば国庫から繰入れ等を行って、その部分の補塡をやったということはなくて、今までのところは保険料でお支払いできていて、2,400億円の民間準備金残高と2兆円の特別会計積立金残高があるということで、これが目黒先生がおっしゃるように、ここ50年とかを見比べて十分かどうかというところは、むしろ先生方のご意見を聞きたいところでございます。制度的には、もしそれが足りなかった場合は、先ほど申し上げたような繰入れ等まで見据えて、最大規模12兆円の保険金のお支払を行うということで、制度としてはそうやって地震保険のリスクに備えているということでございます。

○佐藤座長ただ誤解のないように、繰入れ等は別に税金で、後で補塡するのではなくて、これは保険料で償還するということにはなっている。後年保険料で償還ですね。

○横尾信用機構課長おっしゃるとおりです。

○佐藤座長他はいかがですか。よろしいでしょうか。

もしかしたら、まだコメント等はあるかもしれませんが、時間が来ておりますので、では、今回の会合はここまでとさせていただければと思います。

では、事務局から今後の予定について連絡をお願いいたします。

○横尾信用機構課長大変活発なご議論をいただきましてありがとうございました。いただいたご意見等を今後議事要旨、議事録等にまとめさせていただきまして、前回と同様に皆様にメール等でご確認いただければと思っております。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

○佐藤座長ありがとうございました。今日はご多忙の中、予定きっかり2時間にわたりご議論いただき誠にありがとうございます。

では、これにて閉会とさせていただきます。本日はありがとうございました。またどこかでお会いしましょう。いつかお会いしましょうということでよろしくお願いいたします。

午後0時00分閉会