このページの本文へ移動

地震保険制度等研究会第5回 議事録

令和3年6月1日(火)13:30~15:30
オンライン

1.開会

2.第4回研究会における議論の概要について

3.立地に応じた保険料の割増・割引(立地割増・立地割引)について
2、3について一括して

  • 事務局からの説明

  • 討議

4.建物と家財の被害に係る支払状況の研究の中間報告について

  • 事務局からの説明

  • 損害保険料率算出機構からの説明

  • 討議

5.閉会

出席者

委員

阿部美雪

荒川進

纐纈一起

佐藤主光(座長)

清水香

中埜良昭

藤田友敬

堀田一吉

目黒公郎

(敬称略)

オブザーバー

一般社団法人日本損害保険協会

一般社団法人外国損害保険協会

日本地震再保険株式会社

損害保険料率算出機構

金融庁監督局保険課

事務局

新川総括審議官

嶋田信用機構課長

午後1時30分開会

○佐藤座長定刻になりましたので、ただいまから第5回地震保険制度等研究会を開催したいと思います。本日もお忙しい中、お集まりいただきましてありがとうございます。

本日は、第4回研究会における議論の概要と、令和2年1月の第3回研究会に引き続きまして、立地に応じた保険料の割増・割引、いわゆる立地割増・立地割引についての御議論と、損害保険料率算出機構からの建物と家財の被害に係る支払状況の研究の中間報告について御議論いただきたいと思います。

それでは、研究会の運営につきまして、事務局から御説明をまずはお願いいたします。

○嶋田信用機構課長信用機構課長・嶋田でございます。よろしくお願いいたします。

地震保険制度等研究会の運営につきまして、前回御欠席の委員もいらっしゃいますので、改めて御説明申し上げます。

本研究会の議論につきまして、その概要については議事要旨を速やかに、議事録についてもできるだけ早く事務局において作成し、委員、オブザーバーの皆様に御確認いただいた上で、財務省のホームページで公表することとしております。また、各回で配付する資料につきましても、原則としてホームページに掲載しております。

次に、本日もオンライン会議でございますので、これに関し、何点か留意点をお伝えいたします。

発言者以外の方におかれましては、カメラはオンにしたままで、マイクのみミュートの設定をお願いいたします。発言をされる場合は、御自身でミュートを解除し、発言が終わられましたら、再度ミュートの設定をお願いいたします。ミュートの設定・解除は事務局にて行うことも可能でございますので、適宜こちらでミュートの設定・解除を行わせていただくことがあることを御容赦いただければと思います。

発言を御希望の場合には、参加者一覧の箇所に手のマークの挙手ボタンがございますので、そちらをクリックして意思表示をしていただければと思います。その後、座長から御指名いただきます。

御都合により途中退席される委員におかれましては、適宜ミーティングから退室のボタンを押して御退室ください。

オンライン開催につきまして御不便をおかけすることがあるかもしれませんが、あらかじめ御容赦ください。不具合等がございましたら、事前にお送りしております事務局の連絡先まで御連絡をいただけますよう、よろしくお願いいたします。

○佐藤座長ありがとうございました。

では、事務局から第4回研究会における議論の概要を紹介していただいた上で、立地に応じた保険料の割増・割引について説明をお願いいたします。討議の時間はこれら2件の説明の後に設けさせていただきたいと思います。

では、よろしくお願いします。

○嶋田信用機構課長それでは、資料1を御覧ください。「第4回研究会における議論の概要」と書かれているものをお配りしております。前回の議論、大方こういうことだったろうということで、事務方でまとめさせていただいたものでございます。

では、読み上げさせていただきます。

1.南海トラフ地震臨時情報に対する地震保険の対応について。

確度高く予測することは困難と整理されている南海トラフ地震臨時情報と警戒宣言が前提とする情報の確度、法令上の位置付け及び防災対応における相違や、地震保険制度に関するプロジェクトチーム報告書の整理を踏まえ、加入制限の適用範囲を臨時情報に拡大することは慎重に考えるべきである。

他方、慎重に考えるべきとしても、臨時情報が発表され、一時的に大幅な加入申込みが生じるような場合にも、現場実務として公平・適正・迅速な対応ができる体制を確保することが重要である。また、臨時情報の発表時には、南海トラフ沿いの想定震源域で既に地震が発生している場合がある。このような場合に、保険の対象となる建物や家財に既に損害が発生していないかなど民間保険会社において地震保険加入時に丁寧な確認を行うことが、制度の公正性に鑑みて重要となる。その際には、加入申請者の納得を得られるよう丁寧な説明を行う必要があることに留意すべきである。

また、臨時情報発表時には、厳密な地震発生リスクが不分明な中で加入申込みが大きく増加する懸念もある。他方で、地震保険の既加入者が多いほど地震発生後の駆込み加入者は減ると見込まれる。こうした点を踏まえると、地震保険制度の強靱性に資するとの観点から、平時に強靱性の一層の確保につながるような形で加入促進を図ることが重要である。このため、例えば、付帯率の低い地域の加入に力を入れるなど、地域に着目して加入促進を図ることや、関係省庁等や金融機関、不動産関連の事業者や団体等と連携し、多様なチャネルを通じて幅広い層に対して普及を進めていくことが重要である。

2ページを御覧ください。

2.地震保険におけるデジタル化の取組状況について。

政府がデジタル社会の実現に向けて取り組む中、迅速な保険金支払に資するなど顧客の利便性の向上の観点から、地震保険においてもデジタル化の取組を進めることが重要である。こうした観点から、損害調査に関するデジタル化の取組として、損害保険業界より、地震アプリを活用したモバイル端末での損害調査書の作成、新たなツールによる共同調査のペーパーレス化・効率化、自己申告方式による損害査定の利用普及といった業界全体での状況の進展や、被害予測サイトの活用、WEBサイトやSNSアプリによる事故受付及びドローンによる事故調査など個社独自の取組について説明があった。

今後も保険金支払の迅速性及び効率性を更に高めるため、保険料に与える影響も勘案しつつ、取組の普及拡大や新たな取組の検討を進めることが重要である。この点、自己申告方式のオンライン化や官民における多様な主体と連携したデータの共有とその利活用などの検討を求める意見や、個社の優良事例が積極的に横展開されていくことを期待する意見が出された。こうした点も踏まえながら、デジタル化の更なる推進を図ることが重要である。

なお、このようなデジタル化の取組を進めるにあたっては、地震保険の信頼性確保の観点から、顧客に対する分かりやすく丁寧な説明を含めたデジタルデバイド対策や不正防止が重要であることなどにも留意する必要がある。

こういう格好で、概略をまとめさせていただいております。

続きまして、資料2を御覧いただければと思います。本日の議題の一つでございます立地に応じた保険料の割増・割引について、これまでの保険料率の考え方について、まず御紹介させていただければと思います。

資料2ページを御覧ください。上の箱でございますが、地震保険の法律がまさにできる際に御議論いただいた立法時の考え方でございます。料率決定の原則からいえば、地域、地盤、構造に応じて料率に相当の差異が生ずることは当然であるが、この保険の性格上開差はあまり大きくないものとするのが適当であるということで、リスクを踏まえた保険料率にするが、その開差はなるべく小さくしましょうという思想であったということでございます。

これに関連しまして整理していただいていますのが、平成24年11月のプロジェクトチーム報告書でございます。

まず地震保険制度の役割ということで、市場原理に基づく「保険」の論理だけでは負担しきれない地震に対する備えを、国の関与の下、社会的な「連帯」の仕組みとして提供しているものと捉えることができる。地震保険は、「保険」としての側面と「連帯」としての側面を併せ持っている。「保険」の側面からは、リスクに応じた保険料率の設定により、社会全体の地震に対するリスク量を低下させるリスクコントロール機能の向上を図るという視点が重要である。他方、リスクをそのまま保険料率に反映させると、リスクの高い地域に居住せざるを得ない人々を地震保険から排除することにもなりかねず、「連帯」の観点からは、社会全体でリスクを分担することが必要となってくる。いずれかに偏ることなく、「保険」、「連帯」双方のバランスをとることが重要である。

その上で、保険料率についてでございますが、下線部分、社会的「連帯」の仕組みとしての役割も期待される地震保険において、極端な料率格差は適当ではない。料率格差については、合理的な説明のつく範囲で平準化を図る方向で見直すべきである。ただし、料率格差の平準化は、耐震割引など耐震化への誘因づけや地震保険への加入促進と一体的に考える必要があるというふうにされております。

具体的な料率の設定について、3ページでございます。上の箱、中ほどでございますが、料率の設定においては、地震危険の一定割合、災害の種類に関係なく、全体まとめてその3割程度を全国で均等に負担するといった調整の仕組みを導入して、その後、都道府県ごとの基本料率の区分と水準を設定している。都道府県ごとの基本料率は、当時は4区分、今は3区分に集約し、区分ごとに料率が一律となるよう、すなわち区分内での都道府県の格差がなるべく小さくなるようなところで区分を三つに分けてやっているということでございます。

その上で、住宅所有者についてのインセンティブ付与という観点から、耐震割引が設けられているというのが下の箱でございます。

今の全体の姿というのが4ページにあります。1等地、2等地、3等地の三つに区分いたしまして、その上で自助努力へのインセンティブ付与ということで、耐震割引を行っておるということでございます。

今回の議題でございます立地割増・立地割引についての議論を御紹介させていただきます。資料5ページでございます。まず平成24年、プロジェクトチーム報告書でございますが、地震保険制度のリスクコントロール機能の向上を図るためには、立地リスクの相違をできる限り保険料率に反映させることが適当である。立地リスクの特に高い地域を対象とした立地割増や特に低い地域を対象とした立地割引の制度を導入することが考えられる。立地については、たとえリスクが高くても、そこに住まざるを得ないような事情もある中で、例えば、津波リスクを忠実に保険料率に反映させると、沿岸部の住民を地震保険から排除することにならないか懸念される。立地割増や立地割引の導入については、立地による料率格差について保険契約者の納得感が得られるまでにリスク算出の信頼性を高めることができるか、という点も含め、今後の課題として引き続き議論していく必要がある。

その上で、次のページ、平成27年の御議論のとりまとめですが、まず、先ほどの平成24年の報告書の紹介がなされております。震源モデルの精度に限界がある中、料率格差のみ精緻にしても合理性に欠ける。社会的「連帯」の仕組みとして、極端な料率格差は適当ではない。この料率格差の平準化は、耐震割引など耐震化への誘因づけや地震保険への加入促進と一体的に考える必要があるということを引いた上で、大震災のリスクは超長期において平準化される特性を持ち、極端な料率格差は望ましくないということで、等地区分をなるべく平準化しましょうという御議論でございます。

また、立地割増・立地割引が実施できる場合には、地震保険料率の高い等地に所在する契約であっても、立地によるリスクが低い土地に所在する場合には、地震保険料が割り引かれることで、料率格差が縮小することになる。表面的な等地間格差だけでなく、耐震割引の仕組みなども踏まえて、検討していく必要があるとされた上で、立地割増・立地割引について、地震保険制度のリスクコントロール機能の向上を図るためには、沿岸部における津波リスク等の立地によるリスクを地震保険料率に反映させることが望ましい。ただし、料率格差について保険契約者の納得感が得られることが重要だと。地震保険料率のメリハリを利かせる観点からも、こうしたことの検討が必要ではないかという御議論がなされております。

本研究会、あるいは、その前身のプロジェクトチーム等々の御議論とは離れて、最近の民間保険の動き等について御紹介したものが7ページでございます。民間保険の一部に、水害リスクに応じた保険料を設定する商品が出始めております。ここに書かせていただいておりますとおり、特徴として、建物所在地における水害リスクに応じて保険料を設定する仕組みを導入した。国交省が提供するハザードマップ、これは全国ベースのものがあるということでございますが、その浸水深のデータと顧客が住んでいるところを基に保険料を4区分に細分化して、それぞれ違う保険料を取るようになっているということが、一部の保険会社で始まっておるということでございます。

参考でございますが、これは国交省の施策を御紹介させていただいております。こちらは保険ではございませんで、国会での議決を経て政策を進めるということでございますので、質的には相当異なると思いますが、最近の動きとして、例えば左下の①②に書かれておりますように、新築住宅に係る支援事業の対象地域から災害リスクが高い区域を除外するとか、災害リスクが高い区域からの移転にインセンティブを付与するということで、右にありますような施策、例えば割引等々についてディスカウントの幅を小さくするとか、そういった政策が執られておるということでございます。

第3回における主な御議論と、監督当局の御見解についてまとめたのが次の紙でございます。第3回研究会における主な意見として、データが整備されている地域で、先行して立地割増・立地割引を導入することはできるという御意見。他方で二つ目にございますように、データが十分に整備されていない現段階において、立地割増・立地割引を導入することに契約者の納得を得ることは難しいのではないかという御意見。更に四つ目にございますように、連帯と保険の関係、先ほど申し上げたような関係についての政策的な割振りを見直すのであれば、見直すに当たっての考え方の整理を慎重に行っておかなければいけないのではないかという御意見。それから、津波はアンコントローラブルなリスクなので、これについてはむしろ別の扱いをすべき対象ではないかという御意見があったということでございます。

参考のところでございますが、まず料率についての法律の規定ということで、料団法第8条で、料率は合理的かつ妥当なものでなければならず、また、不当に差別的なものであってはならないということで、合理的というところで、全国的なデータ整備がなされている必要があるというような運用がなされていると理解しております。

その上で、参考2、かつて平成24年当時の状況を前提として、金融庁から示されている御見解でございますが、審査において不当に差別的ではないという点を立地割増・立地割引でクリアするのは難しく、また合理的なデータがあるかということについても、当時としては疑問があるというようなことで、慎重であられるということでございます。

第3回の復習でございますが、9ページにいろいろな指標について第3回に御議論いただいておりますが、揺れ、液状化について、例えば地形分類ということでございますが、今、全国ベース云々というお話を申し上げましたが、これについては一部の地域でしか作成されていないということでございます。

津波については、まず津波浸水想定、これは最大クラスの津波は発生確率が非常に低いのではないかとか、浸水深の幅の刻み方は都道府県によって異なるという違いはあるのだけれども、津波浸水想定の設定済みの道府県が相当の数に増えてきている。37になっているということでございます。津波災害警戒区域、津波災害特別警戒区域についてはまだまだこれからという状況でございます。

火災については、地震時等に著しく危険な密集市街地のデータはあるのですが、これについては逃げやすさ、避難の困難性を含めて抽出しているということで、建物、家財に着目した地震保険ということに直ちには使えないのではないかというようなことだったと理解しております。

その上で、資料10ページ、津波でございますが、今の状況を御説明いたしますと、津波浸水想定は既に37道府県で整備されている。最大クラスの津波がちょっとでも来るところを津波浸水想定で把握しているということでございます。その上で、津波災害警戒区域は、警戒や避難する体制を特に整備しなければいけない地域ということで、浸水深1cm以上の地域が基本ということで、これについての整備が始まっていて、今、18道府県で行われている。津波災害特別警戒区域というのは、浸水深が2m以上の地域で、開発とか建築を制限すべき地域ということで、これについての整備はまだまだの状況にあると聞いております。

これについて、参考資料を御覧いただければと思います。これは国交省のパンフレットなのですけれども、黄色く塗られた地域の一番外側に、濃い黄色で線が描かれておりますが、これが津波浸水想定で、津波がちょっとでも来るところでございます。普通の黄色が津波災害警戒区域ということで、避難とかについての体制を取りましょうということでございます。オレンジ、赤の部分が開発行為や建築が制限される地域で、赤については特に市区町村が住宅等について制限をするといったようなことが追加的にできるという地域。こういった区分になっているのですけれども、黄色の外側の線の整備は大分進んでおります。薄い黄色のところは半分以下、赤いところ、オレンジのところはこれからという状況でございます。

今回御議論いただきたい事項ということで、資料4でございます。まず立地割増・立地割引についてということでございますが、柱書きは省略させていただきます。

最初のポツでございますが、地震保険が保険であり、かつ、社会的連帯の仕組みでもある点、従来の割引は加入者の自助努力に着目したものである点を踏まえ、立地割増・立地割引の導入の検討に当たっては、どのような考え方の整理を行い、これを進めていくことが適当か。

例えば、立地割増・立地割引には、地震保険の加入者に対するリスクアラートとしての機能や、割増・割引を通じてリスクをより反映するという意味での公平に資する面があると考えられる一方で、(制度設計如何でもあるが)相対的にリスクの高い地域に居住せざるを得ない人々の排除につながるおそれもある。こうした点やこれまでの整理を踏まえどのような整理が可能か。特に、各災害についてのデータ整備がまちまちであり、当面、全ての災害類型についてそのリスクを十分に把握できない状況で特定のリスクに着目して立地割増・立地割引を行う場合には、加入者の公平の観点からも整理が必要と考えられるが、どのような整理が可能か。

「特に」以下、何を言わんとしているかということでございますが、例えば同じ県で、津波リスクの高い地域に立地割増・立地割引を入れるとすると、自らの津波リスクは自ら引き受けつつ、内陸の住宅密集地の火災リスクについては、そこに住んでいる人と同じだけ一定の割合で引き受けるという状況がある。保険の仕組み、あるいは連帯の枠組みといった、その枠内でこれらについてどう考えるか。公平性の問題の整理も必要ではないのかなということでございます。

二つ目のポツですが、これまでの研究会等における議論では、データが既に整備されている地域からでも先行して導入すべきという御意見、それから、データが十分でない現段階での導入は契約者の納得を得られないのではないかという御意見、これがずっとお示しいただいてきたという中で、少なくとも、近い将来に全国的にデータがそろう可能性が高い災害、すなわち津波に着目して具体的な制度の検討を進め、今、私が申し上げました上記論点や実務面も含め整理すべき課題を抽出するということで、研究を進めていってはどうかということでございます。その際、立地割増・立地割引による料率をどうするのか、顧客説明の分かりやすさというのはどういうことに気をつけなければいけないのか、事務コスト、そういった点の他に検討すべき視点、切り口というのがないのだろうかというようなことも併せて御議論、御意見を賜れればと思います。

事務局からの説明は以上でございます。

○佐藤座長ありがとうございました。

それでは、ここまでの説明を踏まえて、委員の皆様方から御意見、御質問をお願いしたいと思います。挙手ボタンを押していただければ、こちらの方で確認します。お名前を申し上げますので、発言をお願いいたします。いかがでしょうか。

資料1の前回の議論の概要ですけれども、過不足があれば、まずその点、御指摘いただければと思いますが、こちらは大丈夫ですかね。目黒先生、どうぞ。

○目黒委員まず議論の前に、最初に確認しておきたいのですけれども、データが整備されていないのでとか、リスクにプロポーショナルに料率を決めると、多くの皆さんから賛同が得にくいのではないかと思われるというような表現がいっぱい出てきているのですけれども、そのときに、現状のように連帯を重要視した考えを示している内容が、私が今から言うようなことを示しているのだということをちゃんと御理解いただいた上で、賛同するかしないかということを十分聞いていないのではないかということを心配して、今からの発言をします。

それはどういう意味かというと、今のままでいくと、非常に危険性の高い場所や、危険性の高い物件にそのままお住まいになっている状況を継続させる方向に制度設計としては動いているのですね。これはすなわち、将来的にあるレベルのハザードが起こると、被災される方々の数が多くなるので、積立てもいっぱい必要ですという将来を描いているのですね。これに対して、なるべくリスクを評価して、現状のように少子高齢・人口減少で、人口が2割とか、それ以上、近未来は減っていくという状況を考えると、災害リスクの低いところで人口減少で空くスペースがいっぱい出ることを前提にすると、そちらの方に場所としてリスクの低いところに移動していただくか、物件としてもリスクの低いものに住んでいただくというようなことをすると、将来的には被害全体が減っていくので、積立金も減っていく、多く積み立てなくてもよいという世界が描けるのだという状況の説明が十分なされていない状態で、リスクをあまり敏感に評価すると、連帯という部分が弱くなるのではないかというような話を一般の方々にされているように強く感じるものですから、その辺、どうなっているのかということを最初に確認しておきたいと思います。よろしくお願いします。

○佐藤座長ありがとうございます。今の観点、実はすごく重要で、現在お住まいの方、現在の話とこれからの話に分かれまして、危ないところにこれから住み続ける人、これから住んでしまう人という可能性もあるので、現在のリスクと将来のリスクがありますので。最近、言われるのですけれども、EBPMの観点なのですが、何となく聞いてみるとという、感想ではエビデンスにならないので、どんな聞き方をしているのか、どういう体系的な評価を得ているのか。つまり何%の人がどういう条件の下でどう言っているか。そこの辺りの議論がないと、本当のニーズが見えてこないところがあるのですけれども、この種の話って、事務局に聞いて分かる話なのですかね。あるいは、現場の声という点においては、もしかしたら損保協会さんの方が妥当なのですかね。

○目黒委員つまり賛同が得られないのではないかという表現ばっかりなのだよね。どういう条件か確認しているのですかと僕はまず聞きたいのですよ。

○佐藤委員事務局の方はリプライありますか。

○嶋田信用機構課長具体的に個別の加入者について、私どもの方から確認しているということはないということでございます。他方で、これは立法趣旨としてそういうものであったし、そういう枠内で議論しなければいけないというのが第一歩だということで、これまでのご議論を今回お示ししているということでございます。リスクを重要視するということで御議論するというのはあるかと思いますけれども、今の実態として、地震保険法成り立ちのときからの運用というのは、そのようになされていないということで御紹介しておるということでございます。実態の方は、私ども再保険している立場でございますので、そこでは把握はしておりません。

○目黒委員分かりました。だとすると、賛同が得られないものと思われるみたいな表現ばかりをいっぱい入れていくのは、議論の上では正しくはないような印象を受けました。

○佐藤座長ありがとうございました。こういう言葉遣い、これからちょっと気をつけなければいけないのは、私、他の仕事をしていてもよく思うのですけれども、法律の条文でこう書いてありますというのと、実態がどうなっていますかというのはちょっと違うので。だからといって、別に入れる入れないの話ではなくて、例えば入れるに当たってもちゃんと説明責任を尽くせば分かってもらえる問題もあるし、それでも難しいという話もありますので。この辺りの表現は、入れるという方向に持っていってもバイアスがあるし、入れないという方向に持っていってもバイアスがあるので、そこはニュートラルに、ファクトだけを並べていくという考え方。この研究会は、別に結果を出すことを目的とするよりは、論点を洗い出すということの方がむしろ主だと思いますので、最終的な表現は中立的にするようにしたいとは思います。

他、いかがでしょうか。清水さん、どうぞ。

○清水委員考え方の整理をする上で幾つか大事なポイントがあります。立法趣旨にも関わることですが、被災に備えたい人が不公平を感じず加入できることは、地震保険制度の大前提です。本来保険にし得ない地震リスクを政府関与で保険として成立させ、誰もが備えられるようにしたのが地震保険であり、多くの人が加入して制度を支え、被災時に支えられる連帯の仕組みを、現在、官民挙げて加入促進しているということでよろしいですね。

立地リスクの高い住まいを可能な限り回避すべきなのはいうまでもありませんが、日本で立地リスクがないところを探すのも困難です。相対的にリスクの低い場所に住まいを移ることも、現実的に考えればハードルが高い。お金の面ではもちろん、誰もがいろいろな関係の中で生きており、災害リスクを優先して住まいを選べないのも実情でしょう。

もう一つ、所在地の立地リスクについての生活者の認識は未だ不十分です。例えば、ある損保会社が行ったハザードマップに関するアンケート調査で、自宅付近の水害リスクを認識している人は3割を下回ります。損害保険料率算出機構の調査では、住宅購入時は多くの人が土地や建物の価格や交通の便、通勤の時間を優先している一方、地震や火山のリスクについては5%程度の人しか気にしていません。

所在地のリスク認識を高めるため、国も最近、いろいろな対策を講じています。去年の改正宅建業法では、浸水リスクが重要事項説明に加わりました。今国会でも流域治水関連法が成立し、中小河川を含めたハザードマップが作成されることになり、現在ある空白区域が解消されるとしています。こうした対策が徐々に進み始めていますから、まず所在地のリスク認識を高めてもらうことが先と考えます。リスクへの共通認識が十分得られていないまま割増を導入すれば、被災リスクの高い方を事実上排除することになります。

繰り返しになりますが、個々の生活者が住まいや立地を自力で変えるのはなかなか難しい。かつリスク認識が十分ではない状態で地震保険料が急激に上がれば、こんなに高いのなら入らない、あるいはリスク認識があっても「入れない」かもしれません。地震保険は、個々の生活者が被災後の生活再建をスムーズにするため政策的に設けられたものであり、入れない人を増やし、入る人を減らすことはその趣旨に反します。

資料に、水害リスクに応じた保険料を設定する火災保険があげられています。浸水リスクの低い住宅は保険料が安くなりメリットがありますが、浸水リスクの高い住宅は保険料が割高になるため入るメリットはありません。よってこの会社の保険ではなく、保険料が安くなる他の保険を選ぶでしょう。かつ、この保険では築年数20年以上の損害リスクの高い物件を引き受けない、リスクの低い住宅にセグメントした保険ですが、これは民間の話です。一方、地震保険は可能な限り安い保険料で、より多くの人が入れることを趣旨としています。この点は守っていくべきと考えます。

○佐藤座長ありがとうございました。他、いかがでしょうか。

鶏と卵みたいなところがあって、なかなかリスク認識が高まらない中、保険料を差別化できるか。でも、保険料を差別化しないままでは、保険料自体がリスクの指標といいますか、シグナルでもあるわけで、それは耐震割引なんかで散々議論したことだと思いますけれども、ある意味、保険料はリスクのシグナルだという観点から見れば、保険料を差別化することでむしろ個人のリスク意識を高められるのかもしれない。でも、今は低いままなので、本当に反応するのという話になるのかなとは思うのですけれども。

先ほどの目黒先生の話と今の清水委員の話、別に矛盾しているわけではなくて、清水さんは現状の話をしていて、目黒先生はちょっと中長期的に、立地が今のままでよいのかという話なので、こういう議論をするときに、時間軸で考えていく必要があるのかなとは思いました。いかがですか。堀田先生、どうぞ。

○堀田委員立地割増・立地割引の議論というのは随分昔からやっているなと思います。そこで整理されているのは、立地割増・立地割引には、二つ大きな意義があって、一つは負担の公平性を改善するということ、もう一つは地震リスクに対するメッセージ効果ということだと思うのです。ただ、このときに割増という方法を採るのか、割引という方法を採るのか、それを両方合わせるのかというところで、恐らく導入する際の効果は少し違ってくると思います。導入のしやすさということを考えるのであれば、立地割引の方が導入しやすいだろうとは思います。しかし、この場合には、今度は地震リスクに対するメッセージ効果というのは少し小さくなるでしょう。逆に立地割増の方を導入するということになると、導入された地域での不満が大きくなって、それをどのように理解してもらうかというようなところに力を注がなければいけない。そういう意味では、これまで、割増と割引を一緒に取り上げていますが、割引を採るのか、割増を採るのかで効果がかなり違うのかなというような印象も持っています。

いずれの場合においても、立地割増・立地割引を導入する場合には、津波リスクについての情報をしっかり提供するということもセットでなければ、全体としてのバランスを欠くことになります。これは地震保険システムの中だけの議論ではなくて、広く津波のリスクに対する認識を社会全体で共有するということが重要です。

○佐藤座長行動経済学ではフレーム効果として知られていますけれども、確かに表現の仕方によって人の反応は全く違うので、そのとおりだと思います。

藤田先生、お願いします。

○藤田委員まず座長から、前回のまとめはよろしいですかという御質問があったのですが、私はその点は結構です。

表現について、目黒先生の言われたことも分かる気もするのですが、差し当たり、これまでの議論のところのまとめは、これでよいと思います。

その上で、今回議論いただきたい事項として、最後のところが提言というか、今後こうしましょうということになっているわけなのですけれども、近い将来、全国的にデータがそろう可能性がある津波に着目して、具体的な制度の検討を進めるという方向はよいと思います。つまり、差し当たりデータがそろうところから課題を抽出するというのは、方向としてそれでよいと思います。

その後、書かれていることなのですけれども、立地割増・立地割引による料率設定―割引か割増かという論点は置いておくとして―の話と、顧客説明の分かりやすさ、事務コストの他に検討すべき点はあるかと書かれているのですが、この三つに加えてというよりは、これらよりも決定的に重要なことは次の点ではないかと思います。今までの委員の方が言われたことも同じだと思うのですけれども、例えば顧客説明の分かりやすさと書かれているのですが、分かりやすく説明すればよいという話、あるいは分かりやすく説明すれば分かってもらえる話かどうかということの方がむしろ大切ではないかと思います。根本は、今日の資料の中で、令和3年度における国土交通省の政策というのが引用されていますが、それを見ると、災害危険区域等における立地抑制・移転誘導とはっきり書かれていまして、要するに、こういう政策を国として進めるのだという方向性、それを地震保険に限定して言うなら、将来の地震保険料の低減、財政的な負担の軽減につながるわけですが、地震保険に限らず、世の中一般の在り方としてこれが適正な方向だと思って進める、そしてその一環として立地割引・立地割増も導入していくということへの理解を求めるということが重要だと思うのですね。

こういう政策そのものが、過去、それほど強く強調されてこなかった。そういったことについて、地震リスクへの認識の弱さも相まって、直ちに賛同を得られるかどうか分からないけれども、これについてまず納得していただく、これを共有していただくということが、この方向で進む上で一番重要なポイントだと思うので、説明を分かりやすくするというよりは、特定の政策を進めて、それへの理解を求めるという方向だと思います。

こういう政策それ自体に対して異論もあるかもしれませんが、私自身は進める方向にすべきだと思っています。この政策への理解の浸透を進めることが,ここで書かれているような細かな話よりも大きなポイントで、将来的な課題というなら,これが一番重要なポイントで、一番検討すべき点だと思っております。

○佐藤座長御指摘ありがとうございます。まさに今の藤田先生から御指摘の点は、地震保険制度の枠の中にとどまる議論ではなくて、これからどうやって人々をリスクの低い地域に住んでもらうかという話、その中の一環として立地割増や割引のような議論が出てきたのだよということ。そういう位置付けにしていくことかなと思います。

実を言うと、財務省の財政制度等審議会で、ある1枚の資料が出てみんなに衝撃を与えたのは、実はここのところ、いろいろな地域で人口が下がっているのですが、にもかかわらず、総じて浸水リスクの高い地域に人口が集中しているという話があって、居住誘導地域が実は危ない地域だったとか、あまり笑えないような話が出てきているものですから、国としては本気なのですね。国交省は特に本気なのです。そういった大きな流れが一つはあるのかなと思います。

目黒先生、何か言いたそうなので、先にどうぞ。

○目黒委員今の御指摘の点はまさにそうで、私は国交省との関係が強いほうなのですけれども、人口誘導は積極的に進めていかないと、我が国の国土の運営自体が非常に厳しいという状況が、今、我々が直面しているところです。

例えば日本の海岸線は4万キロ弱くらいあって、そのうちの1.3~1.4万キロに何らかの保全が必要なのですけれども、実際にできているのは1万キロくらいなのですよ。この1万キロをいくらちゃんと丁寧にメンテナンスしても、寿命は100年くらいなので、1万キロを100年で、今後同じように維持管理、更新しようとすると、年間100キロずつ造り替えるということをしなければいけないのですけれども、それだけの財源というのは、残念ですが、我々は持ち合わせていないのですね。

今まで相対的に金持ちだった時代は、少数の人がリスクの高いところにいることを前提にして、巨大インフラを造って、守るということが可能だったのですけれども、今、それができないのですよ。だとすると、選択肢としては、危険性の高いところにいる人たちを危険性の低いところに誘導していただくというようなこととか、巨大インフラに依存しない、自律分散型のインフラでの生活とか、そういう方向性を取らざるを得ないという背景があるのですね。そういうのも前提として考えていただくのが大切で、そのときに、リスクの高いところに逆行して造成地を造って、人がそこに移動してしまうなんていうことは避けなければいけないのだけれども、皆さんご存じのように、昨今の広島や中国地方の土砂災害等々を見ると、新しく造成したところ、危険性の高いところにわざわざ住んでもらって、その人たちが被災したから、また更に次の出費が要るみたいな、そういうことを繰り返していることも十分御理解いただきたいなと思います。

○佐藤座長コメントありがとうございました。

お待たせしました。阿部委員、よろしくお願いいたします。

○阿部委員先ほどの話の中で、なるべくリスクの少ないところへ移転していく。これはまさしくそのとおりなのだと思うのですけれども、現状としたら、消費者が自分の住んでいる場所がリスクが高いと分かっていても、今すぐに居住を変えられるのかという問題はあると思います。消費生活相談の現場で相談を受けながらお話をすると、この間もお話をいたしましたが、自分の住んでいるところは水害の問題がある。だけれども、なかなか移動ができない。それにはどういうことがあるかというと、もちろん移転のお金がなかったりとか、代々続いた土地だから離れられないというようなことを仰っていたりするのですね。住み続けることで、どれだけ問題があるのかということを周知していく必要もあるかと思います。

消費者と耐震性などの話をしますと、テレビ報道などで耐震性の高い住まいに住んでいれば安全なのだというところにおいて、そこでの料率格差というのは、それはそうですよねというところで納得感がある。だけれども、例えば今回、津波のようなもので料率が変わると、建物は建っていなかったら逃げられないから、耐震性の高いものを建てることはできる。だけど、居住を変えることができないので、そこで格差を出して良いのか、というようなことを言われました。

今回も津波浸水想定ができたことで、料率格差というのは一つの目安、データなのでしょうけれども、それが納得できるデータなのか、どこで境界を引くのかとか、最大クラスの津波をそのまま当てはめてよいのかというようなことも意見があり、そこら辺はどうなのかという部分もあります。その地域の人たちの住民を排除することにどうしてもつながるおそれがあるのではないかと思っております。

今回、コロナ禍において、ちょっと話は違うかもしれないのですけれども、生命保険の積立金を担保にお金を借りる契約者貸付けの相談や、解約の相談が急増し、その中に地震保険だけ解約できるのかというような相談があって、やはり保険料が高いということでした。相談員が再度一から制度の説明をするというような現状もあります。契約されている人でも、地震保険の制度についても一からきちんと説明が必要な段階の人たちもいるということで、検討している料率等、将来に向けてのことに関しても、きちんと消費者に説明して、納得がいくものを提供していくということで、先ほどデータと一緒にというお話をされていましたけれども、そういったものをきちんと説明していくことが重要なのかなと思っております。

○佐藤座長なかなか悩ましい問題で、この国、何でもそうなのですけれども、現状とあるべき方向があまりにも違い過ぎてしまって、ハードルが高いといいますか、もちろん地震保険の趣旨から言っても、リスク選択と言いますけれども、本来、保険を必要とする人が排除されるような状況を作るべきではない。一方で、これから安全な場所に住んでもらいたいという、これからの方向もありますので、入れるとしても、何らかの移行措置みたいな形は必要なのかなという気はします。

阿部委員から納得ができるという話があったので、こちらの議論も皆さんに要御相談なのですけれども、事務局から出てきた9ページから、津波に関する指標としまして、津波浸水想定、津波災害警戒区域、津波災害特別警戒区域の三つが法律に基づいた根拠ということになりますが、先ほどの納得という点においては、もちろん地震保険の制度が作っているわけでもないので、我々から見れば客観性があって、かつ法律のベースになっていますので、そういう意味では妥当性は一応あるはずだということになれば、この辺りが一つの指標かなということだそうです。

ただし、これは金融庁さんからも散々言われていることですが、全国で統一したデータベースになっていること。一部の地域だけがある情報に基づいてやるというのは妥当ではない。ちょっと差別的という解釈になるようなので。その辺も留意してということになるとは思うのですが、こういう指標があるということではあります。この辺りも含めて、こういう指標の妥当性等々についてももしコメントがあれば、もちろんここまでの議論も踏まえて追加のコメントがあれば、どちらでも結構ですけれども、いかがでしょうか。纐纈先生。

○纐纈委員資料の中でありましたけれども、保険料率は都道府県ごとで一番低いところから高いところを比べると、3倍か4倍あるのですね。それがまさに都道府県単位の立地の反映なわけです。ですから、それに加えて更に立地割引・立地割増を付けるなら、屋上屋を重ねるという面があると私は思います。

意見としては、都道府県単位ではあるけれども、既に現行でこういうものが入っているのだから、アラートとしての意味合いというか、危険でないところに住んでいただくような方向性として、ごく少額の割引なり割増をするということはよいかもしれない。量的にも、例えば津波の危険地域に建っている家が非常に多いということはないと思いますので、そういう件数がそれほど多くないものを順次試していくということには、賛成です。

○佐藤座長ありがとうございます。今のコメントについて、等地区分は三つありますけれども、以前は四つだったのを三つにして、その代わり、あまりにも危ないところを立地割増・立地割引の話で対応しましょうという流れが、以前、プロジェクトチームのときにはあったのかなと思います。

ただ、蓋を開けてみなければ分からないのは、津波浸水想定地域、今、37道府県が作っていて、あと三つ作れば全部作ったということになりますけれども、今の等地区分との間の相関関係といいますか、どういう関係になっているのか。逆に等地区分では低いのだけれども、浸水想定ではリスクが高いとみなされる地域があるとしたら、それはそれで、立地割増・立地割引の独自の役割はあるかもしれないし、ほとんど等地区分で説明できてしまうねということであれば、あまり意味ないねという話になってくるかもしれないので、その辺りは蓋を開けてみないと分からないところもあるのかなと思いました。

ただもう一つ、重要な御指摘で、纐纈先生が仰った少額のというのは、どのくらい少額か分かりませんけれども、もしシグナルという効果だけを重視するのであれば、別に保険料を取ること自体が目的ではないということであれば、少額であっても何らかのメッセージを保険加入者には伝えられるかもしれないし、出が少ないとなかなかリスク認識は喚起されないのかもしれないという、この辺りも考えるべきことなのかなという気はします。ありがとうございました。

○纐纈委員等地区分、あるいは保険料率というのは、あらゆる地震に係るリスクが入っているので、津波だけ取り出して相関関係があるかどうかというのはなかなか見えづらいのではないかというふうには思います。

○佐藤座長それはそうだと思います。御指摘ありがとうございます。もちろん趣旨は分かっております。

他、いかがでしょう。どうぞ。

○荒川委員保険の制度の仕組みとして、保険料にどんなリスクがあるかのアナウンスメント効果を期待するのだとすると、今の等地区分とか立地割増・立地割引という情報だけで、あなたの住んでいる地域にどんなリスクがありますよということを伝えるには、かなり粗い情報なのかなと思えるのですね。例えば北海道でも、沿岸部で津波のリスクがあるところと、内陸部で断層が所在するところに住まわれている方と、あまりリスクのない方もいらっしゃると思うので、地震保険の契約者に対して、あなたの住んでいる地域は危険だから、もっと安全な地域に住んでくださいと誘導するような効果を期待するのであれば、もっと詳細な情報を提供しないと、期待した効果は得られないのではないのかなと思うのですね。

それが現実的かどうかは、保険会社の方がそんなことできませんとお話しなのかもしれませんけれども、例えば保険契約した人に、断層に関するリスクが高い地域であったり、津波のリスクの高い地域であったりとか、保険料が高くなる理由も併せて情報を提供しないと、どこに移ればよいのか、自分がどんなリスクを抱えているか分からない状態になるかなと思うので、保険料そのものが、本人が持っているリスクに応じて公平性を期待するために割引・割増をしているのか、情報を伝えるためにやっているのか、その制度の趣旨をはっきりしないと議論が収束しないのかなと思いました。

○佐藤座長御指摘ありがとうございました。その点、確かに論点整理が必要で、公平感に基づく差なのか、シグナルとしての差なのか、その辺、ちゃんと整理しないと、確かに議論が混乱すると思います。ありがとうございます。

阿部委員、どうぞ。

○阿部委員消費者の方は、地震保険の料率格差という情報のみでは、耐震化の促進を図るとか、地域を変えるということをまずは考えていないと思います。例えば耐震化だったら、耐震化をやったことで料率が安くなったのだよねということにつながっているということはあっても、安全な地域に住まわすようなアラートの機能ということを考えるのであれば、本当にきちんとした周知をしないと、地震保険からのアラート機能というのは考えられないのではないかというような御意見もありましたので、それはお伝えいたします。

○佐藤座長ありがとうございます。

清水委員、どうぞ。

○清水委員阿部委員の御意見の補足ですが、例えば、住宅購入の契約時には種々の手続が必要になります。そのなかで火災保険や地震保険について考えるのは、多くの場合、契約を決めた後の最終段階です。その時点で慌てて手続きをするのがしばしばみられるケースであり、地震保険料が他県と比較して高いから、所在地の立地リスクが高いと認識する、といったことは少ないのではと思います。その時点で提示された保険料で入る、入らないを検討するにとどまるため、加入時におけるアラート機能は限定的ではないかと考えます。

○佐藤座長ありがとうございました。現状説明として理解いたします。

目黒先生、どうぞ。

○目黒委員定量的な議論が重要だということを皆さん仰るので、少し定量的な話をさせていただくと、木造の建物が日本では一番多いわけですが、被害関数という、横軸に地震の揺れの強さ、縦軸に全壊率というようなグラフを作るのですが、これでいくと、最新の基準、例えば2000年の基準でいくと、震度6プラスくらいで全壊するのが1~2%なのですよ。そのときに古い時代のものは6~7割壊れるのですね。差は50倍くらいあります。震度6マイナスくらいだったら、片方はほとんど壊れないので、それ以上。震度7で10倍くらいの差があるのですよ。今、耐震性で割引率は50%ですからね。50倍って5,000%ですからね。もう桁違いに評価が合っていないということなのですよ。だから、地震保険は完全な保険ではないので、リスクの公平とか、公平の原則というのを前面にどこまでも出すつもりはないけれども、それくらい違うということです。

もう一つ、インフラを耐震設計するときには、ローカルな地盤条件が良いか悪いかで、1.5倍くらいの差をつけるのですよ。それはなぜかというと、同じ地震、つまり同じマグニチュードの地震で、同じ震源距離で、ローカルな地盤が良いか悪いかで揺れがそれくらい簡単に変わるからです。なので、地盤の悪いところに造るときには、揺れが5割増しくらいになるということを前提に、耐震性を高めて造っているのですよ。そうしないと壊れてしまうから。ですが、今の地震保険にはそのパラメーターは入っていないのですよ。なので、いろいろなものが等地区分というものの数字の中に適切に入っているという根拠ある説明ができれば、ある程度納得させていただくこともできるかとは思うのだけれども、今はそういうふうになっていないのですね。海岸線で津波のリスクの高い人と内陸で津波のリスクゼロの人が同じ色だということは、同じリスクを買わされている状況ですよ。

このようなことを一つずつ分析して、分けていって、その上で分かりやすい説明をするということをしていかないと、皆さんの賛同は得にくくて、リスクの低い人たちが逆に不適切にリスクを買わされている状況なので、そういう人たちが地震保険から出ていってしまうと、地震保険制度はますます大きな問題のある制度になってしまうということも、我々はちゃんと認識して議論すべきだと思います。簡単に言うと、今は皆さんの認識が低いから、逆に努力している人も知らないで入ってくれているところがあるのですよ。

○佐藤座長ありがとうございます。最後の御指摘、いわゆる逆選抜という問題で、我々は今、リスクが高い人たちの御負担がどうこうという話をしていましたけれども、実はリスクの低い人たちもいて、彼らが本来のリスクよりも高い保険料、ある意味、連帯という面もあるので、制度的にそういうふうにしているというのもありますし、リスク情報が十分反映されていないからという技術的な理由もあるのですけれども、自分のリスクより高めの保険料を払っているという現実があるわけであって、そういう人たちを制度にとどめつつ、かつ、更にリスクの低い方々にも入っていただくためにはどうしたらよいかという目線も多分必要なのだろうということは分かります。リスクが高い人を排除するのはリスク選択として問題ですけれども、リスクの低い方たちも割高感で保険を買わなくなってしまったら、それはそれで保険の持続性を欠くことになりますので。この種の話はなかなか頭の痛い問題ばかりが出てくるのですけれども。

他、いかがでしょう。別に結論付けたいわけではないので、この際ですから、こちらとしても気が付かない論点も含めまして出していただければと思います。中埜先生、どうぞ。

○中埜委員いろいろな議論が出ているので、特段、何か新しいというわけではないですけれども、津波の関係については、リスクの高いところはそれなりの割増というのでしょうか、負担をすることが必要なのだろうと思いますけれども、今すぐにドラスティックに変えるというのもなかなか難しいだろうというようなこと。先ほどどなたか仰ったように、最後の段階になって気が付くということもあるので、できるだけ前倒しの情報がちゃんと出ているようなことが非常に大事になってくるだろう。ということは、施策としてどういう地域に誘導しているかといったようなことも含めて、前もってその情報がきちんと出ていることが大事になってくるのではないかなと。

また別の話になりますけれども、国交省でも優良住宅だったか何かの指定をするのに、リスクを評価して、それに応じて優良住宅を指定しようなんていう動きがあるのですけれども、浸水の危険性なんかを加味しつつ、指定する、しないといったようなことがあります。そのときにちょっと問題になったのは、昨今、毎年いろいろなところで場所が変わって災害が起こる、雨で浸水するといったようなことが起こると、この間までは優良住宅に指定できる地域ですねと言っていたのが変わってしまうなんていうこともあるので、その辺はどうするのですかと。一回指定したものを変えるというのはなかなか難しいから悩ましい問題ですといったようなことも仰っていましたけれども、そういう意味で、中長期的に見ていくことも必要になってくるだろうなと。

そういう意味では、今すぐにドラスティックに変化させるのはなかなか難しいですけれども、将来を見越した研究を開始するのは、それはそれで意味があるだろうと思います。そのときに、浸水のリスクを考えながら、どの辺まで該当するかといったようなことを考えるときに、1,000年に一度の津波を考えるのが本当によいのかと言われると、浸水予想の地図がもうすぐ出来上がるというのがありましたけれども、どの辺りのハザードまでを考えるのが適当かというのは、また別途議論しておかないと、すごく長いスパンでのものに基づいていると、納得感を得るのが難しくなるかもしれないとか、いろいろなことが起こってくるので、これは難しいですけれども、どの辺りが適切であるかといったようなことも併せて議論していく必要があるかなと思いました。

結論のようなものは全くないのですけれども、感想として以上のようなことを感じました。

○佐藤座長ありがとうございます。

他、いかがでしょうか。堀田先生、どうぞ。

○堀田委員仮に立地割増・立地割引を入れるとしたときに、全体の料率体系の見直しと一緒にしなければならないと思います。というのは、現行制度にプラス立地割増・立地割引をするということになると、全体の料率体系を狂わせることになります。例えば立地割引なんていう形を入れることになると、全体としてまず保険料を引き上げておいた上で割引のところに適用するというのが恐らく妥当なところだと思います。

さっきもちょっと出ていましたけれども、等地の一番高い地域の人々が恐らく一番不公平感を感じているのだろうと思います。一番高い料率を適用されているのだけれども、自分たちのリスクはそんなに高くないのではないかということで、そういう意味では、料率体系の見直しをいつの段階でするか分かりませんけれども、その段階と合わせて、立地割引の方が入れやすいだろうなと思うのです。ただし、リスク情報についてのメッセージを強く発信したいのであれば、割引だけではなくて、割増も一緒に入れた体系も入れるべきかもしれません。繰り返しですけれども、いずれにしても規模的にはそんなに大きいものを入れることはできないはずだし、入れるべきではないと思っています。あくまでも、効果という意味においては限定的で、象徴的なメッセージ効果を期待するというところかなと思っています。

○佐藤座長ありがとうございました。損害は大きくても頻度が低ければ、確率×被害ですから、保険料に反映される金額としてみればあまり大きくないのかもしれない。それはそうかもしれないですね。

今、堀田先生が仰っていたので、ああ、そうだったと思ったのですが、4ページに出ていますが、現行の保険料率自体が移行過程なのですよね。1回保険料を上げるのに上限があるものですから。なので、3区分なんて言いながら、今、実を言うと7区分なのですよね。立地割増・立地割引の話で、保険料率の体系の見直しが必要だよねという話がありましたけれども、この辺りの整理も本当はしておかないといけないのかなとは思うのですね。埼玉と千葉、何で違うのと言われたときに、埼玉と千葉の人で説明が付かないですよね。御指摘ありがとうございました。

さて、他、いかがでしょうか。もうちょっと議論する時間があると思いますけれども。

あまり話を誘導する気はないのですけれども、先ほどの繰り返しになってしまいますが、津波浸水想定というのが今、37道府県なのですね。残りの北海道、岩手、宮城、東京で設定していただければ、これで全国で完成ということになるわけです。残りはみんな内陸なので。もし仮に立地割引なり割増なり、保険料率に使う指標ということであれば、この辺りが妥当なのか。あるいはそうではなくて、もうちょっとピンポイントでいきたいということであれば、もうちょっと強い根拠を持っていきたいということであれば、本来は津波災害特別警戒区域だと思うのですが、私も国交省の仕事をしていてこの経緯をよく知っているのですけれども、なかなか都道府県が指定してくれないし、市町村がちゃんと合意してくれないという問題があるものですから、ここまでいくと、まだ全国をカバーしたことにはならないということは一つあるかなとは思います。

あるいは、こういうアプローチもあるのではないかとか、何か御指摘、御提案、課題提起があれば、いかがでしょう。

よろしいですかね。別にこれで決め打ちしているわけではないのですけれども、あくまで候補の一つという形で、論点に出ているという御紹介です。荒川先生、どうぞ。

○荒川委員立地割増に津波の想定を入れた場合に、都道府県単位で割増になるのでしょうか。それとも沿岸部だけということになるのでしょうか。

○佐藤座長私が理解する限り、沿岸部だけですね。岩手県は内陸もありますので、津波リスクがないところまで上げることになってしまうので。立地割増・立地割引は、等地区分の話ではなくて、もっとピンポイントの話と御理解ください。

○荒川委員今のところ、津波だけになったときに、それ以外には、先ほどから目黒先生が御教示いただいたように、地盤が良い、悪いとか、いろいろな形で一般人としては地震のリスクというのですか、被害想定をするときに特定のものだけが取り上げられるというのも納得感という面で引っ掛かりを感じるところもあります。ただ一方で、地盤について立地割増といったときに、変な話、アナウンスメント効果としては、ある意味、あなたの地域はリスクが高いですよというふうな、割増をした人はある程度覚悟するのでしょうけれども、そうではない人は、割増になっていないから安全だと思っていたみたいな、情報に関する責任を取り切れるものではないと思っているのですけれども、その辺、リスクが低いという逆のアナウンスメント効果も出てこないのかなということで、どういう情報をどの範囲で伝えるのかによって、情報の伝わり方、制度が必ずしも網羅性を確保したものではないと十分周知した上で、もし立地割増とかを導入するのであれば、その辺の限界というのも併せて伝えないといけないのかなと思いました。

○佐藤座長ありがとうございます。今のお話、確かにすごく重要で、今回、津波なので、顕在化しているリスクと、まだ顕在化していない、よく分かっていないリスクがあるので、どうしても科学の限界なのかもしれませんが、あくまでも顕在化している、ある程度測れるリスクに基づいて、保険料率を上げ下げするということになっていると思います。

さっき、私、思い付きで言っていたのは、地震等で著しく危ない密集地域って本当にあるのですね。具体的には東京の下町とか大阪の一部なのですけれども。ただ、これはもちろん反映するのは難しいけれども、実際、リスクではあるわけですよね。正しく定量化するのは難しいといったらそのとおりなのですけれども、リスクとしては確かにあるわけなのです。あと地盤のこともそうですね。分かっていないけれども、本当は存在するリスクもあるのかもしれないということになりますので。どうしてもこういうのは分かった範囲でやっているというのは否めない。当然のことながら、さっきの優良地域ではありませんけれども、情報をアップデートする中において、どこが危ない、どこが危なくない、あるいは顕在化するリスクも変わってくるかもしれないということにはなると思います。この辺も含めて皆さんにちゃんと説明しなければいけないというか、顧客に対しても、政治に対しても、納得してもらわなければいけないというところはあるのだと思います。

他、いかがでしょうか。よろしいですかね。予定された時間より早いのですけれども、次の議題もあるので、次に行かせていただいて。目黒先生、どうぞ。

○目黒委員現状と将来というのを分けて議論しておいたほうが、皆さん、しやすいのではないかと思うのですけれども、今の状況が一番良いとは思っていらっしゃらないと思うのですが、そのときに、将来、どういう方向性を示すかというのは、いろいろな角度から議論しておくべきだということ。

それから、そちらに向かうに当たっては、スムーズに着地できるような、途中、なだらかに着地しなければいけないような仕組みを考えるべきだと思うのですけれども、方向性としては、将来、我が国全体としての災害リスクが減り、今のハザードが起こる状況を前提にしたときに、将来的に被害の量が全体として減って、被災する人たちが減って、積立金も多く必要がなくなってというのを目指すべきだと思うのですよね。

日本とアメリカの多くの州の洪水リスクなんかの考え方で一番違うのは、日本は洪水リスクの高いところに住もうと思っても、別に何もなく普通の人と同じように住めてしまうのですね。ところが、アメリカの多くの州だと、そこに住もうとすると、まず役所でハザードマップを示されて、「あなたの住もうとしているところはこれだけのリスクがありますよ、分かりましたね」と。「イエス」と言わない限りはそこに住めない。「イエス」と言ったということは、認識した、認知したという意味だし、その次には「あなた、認知して、そこに住むということは、あらかじめ配慮してもっと安全性の高いところに住んでいる人たちから集めた税金を、あなたが被災したときにあなたに傾斜的に使うということに対してはコンセンサスが得にくいので、あなたがそこに住むのだったらば、そのリスクに応じた災害保険に入りなさい」ということになるわけです。ごめんなさい、その前に、災害リスクが高いからスペックの高い建物を造らなければいけないのですよ。高床にするとか。その上で、「それでも被災したときのために災害保険に入りなさい。それは自助努力だから、そこからお金が得られるので、あらかじめ配慮している人たちから税金を集めたやつを傾斜的に使う必要がない。あなたは災害保険で支援を受けられるから」ということで、ステップを踏ませるのですね。

このステップは、ハードルを越えていけばそこに住めるという印象を皆さんお持ちかもしれないけれども、効果は全く逆で、そこに住みにくい環境を作っているのですよ。だから、被災する人は減るし、被災しないから行政は余分なお金を使わなくて済むという状況を実現しているのですね。日本はそれと全く逆行しているので、そこにも災害保険としての地震保険のリスクコントロールの機能をある程度持たすということが妥当だと強く思います。だから、今すぐに変えろというのではなくて、皆さんのライフタイムを考えて、今度引っ越すときには、そういう情報があるから良いところに引っ越せるとか、今度、家を再建するときには、そういう情報があるから同じお金をリスクの低いところで使って、新しく家を造ることができるのだとか、そういう方向に持っていくのが健全ではないかなと思う次第です。

○佐藤座長非常に要点を突いてまとめていただきました。ありがとうございます。確かに時間軸でちゃんと現在と将来、移行過程、ロードマップと呼んだりしますけれども、ロードマップを見せていくことが重要かなと思います。

日本の災害はいつも原形復旧なので、災害が起きたときにみんなまた戻ってしまうのですよね。これが本当によいことかどうかというのは、地震保険とは関係なく重要な課題だと思います。

よろしいでしょうか。次の議題に行きまして、また気が付いたことがあれば、後でコメントいただければと思います。

続きまして、事務局及び料率機構さんから、建物と家財の被害に係る支払状況の研究を今やっていただいているのですが、そちらの中間報告につきまして御説明をお願いいたします。

○嶋田信用機構課長まず事務局から、第3回研究会における御意見を御紹介させていただきたいと思います。

資料2の12ページ、最後のページでございますが、耐震性能による割引を家財にも適用する現行制度が適当かどうかということについては慎重な議論が必要だということで、耐震割引を家財に適用し続けるのかという御議論。それから、建物と家財を別料率にして事務コストを増やすことは適当ではないのではないかという御議論。それから、地震対策にインセンティブを与えるためには、一律に定額の保険金を支払うような制度としてはどうかという御議論。また、定額の支払というのは、損害査定の簡素化・迅速化の観点からもメリットがあるのではないかというような御議論がございました。

機構におきまして、建物と家財の被害について支払状況の分析等々を2年計画で進めていらっしゃいます。その中間報告ということで、今までのところについて御報告いただくようお願いしております。新たな観点等ございましたら、併せてお話しいただければと思います。よろしくお願いします。

○松本理事料率機構の松本と申します。よろしくお願いいたします。

今御紹介いただきました、私どもの方で建物と家財の被害に係る支払状況につきまして、中間報告という形で説明させていただきます。

今回の報告は、先ほど事務局の方より御紹介いただきましたとおり、第3回の研究会でいただいた御意見を踏まえまして、建物と家財の被害につき、機構に報告されている保険データでは把握できない建物の階数などを把握するために、アンケート調査を外部機関に委託し、実施をしたというところでございます。本日の資料では、アンケートを行った中で、非木造の共同住宅を対象としました調査結果の概要を御報告したいと思います。

あらかじめお断りしておきたい点でございますが、本アンケートの調査結果がまとまったのがつい最近であり、本日の御報告に向けてのとりまとめを急遽行ったという意味で、中間の報告とさせていただくということでございまして、本日いただいた御意見を踏まえて、今後、引き続き分析を継続したいと思っております。

それでは、アンケート結果の概要につきましては、私ども料率機構の渡辺から御説明させていただきます。

○渡辺火災・地震保険部次長兼地震グループリーダー料率機構の渡辺でございます。

資料3の「非木造の共同住宅における家財の支払状況に関するアンケート調査結果について」という資料を御覧いただきたいと思います。

表紙が1ページ目ですので、1枚めくっていただいて、2ページ目を御覧ください。こちらのページは振り返りになります。ページの上段に1.第3回地震保険制度等研究会における建物・家財に関する議論とありますけれども、この前に第2回の研究会で損保協会さんから、2018年の大阪府北部地震の支払状況の御説明をされまして、その際に大半損、小半損の傾向が建物と家財で異なるのではないかというようなお話がありました。それで第3回の私どもの御説明につながったというところでございます。

第3回の研究会では私どもの方から、大阪府北部地震に加えて熊本地震についてお話をし、建築年代や割引における被害の違いは建物より家財の方が小さいこと、また、家財の方が半損以上の割合が高そうなのですけれども、建物・家財同時契約者に限って見ると、常に家財の方が被害が大きいとは一概には言えないといったことを御紹介し、今後、分析や研究を進めますというふうにお話をしました。

その後、当機構では、下の囲みの部分になりますけれども、昨年度、家財の支払に影響を及ぼすと考えられるものの、先ほど松本からお話したとおり、当機構に報告されているデータでは把握できない要因の把握のためアンケートを実施しました。本日はこのアンケートの中の非木造の共同住宅にターゲットを絞りまして、分析の途中ではありますけれども、御報告ということになります。

続いて3ページ目を御覧ください。2.アンケート調査の概要および回収結果ですけれども、今回はインターネットを用いた調査を行いました。調査の中で最初に、東日本以降の地震で地震保険の支払を受けたかと聞きまして、支払を受けた方のみ本格的な調査に回答いただくというような方式で行いました。そのため、回答した方は支払を受けた方ですので、分母を支払率のような形の分析ができずに、支払を受けた方の内訳で何らかの傾向を探ろうとしたものでございます。

今回の調査自体は戸建て住宅も対象としておりますけれども、今回御説明するのは、左下の回収結果に記載のとおり、共同住宅の非木造に関する調査結果でして、約2,000人の方から回答を得ることができました。その内訳は右下のとおりです。全体としてはそれなりの数なのですが、区分して見るには数字としては十分ではないのかもしれないというところは御容赦いただきたいと思います。

続いて4ページ目を御覧ください。このページ以降が調査結果の御説明となります。本日は、このページの左側にある、何階に住んでいるかといった居住階数と、右側にある、何階建ての建物に住んでいるかという建物階数という二つの視点をベースに御説明を行います。このページはこれをシンプルに示した結果ですけれども、階数が上がるほど被害程度が深刻になるというような結果は見られませんでした。ただし、本日はお示しできていませんが、現在、震度別も絡めた分析も行っております。震度別では、5強以下に限定しますと、ほぼこのページのグラフと変わりませんが、6強以上に限って見ますと、高層になるほど全損や半損の割合がやや増えるという傾向が見られました。今回のアンケートでは、どうしても高層住宅に住まわれる方というのは、東京や神奈川といった関東地域の割合が増えてしまうため、結果として、高層階では震度別に見ると被害が深刻になるような震度6強や6弱の割合が少なくなってしまったということも結果に影響していると思われます。震度と組み合わせての確認は今後も続けてまいりますが、本日は間に合いませんでしたので、御説明の中で震度に影響が大きそうな部分は適宜補足をしながら御説明をしたいと思います。

続いて5ページ目を御覧ください。これは建物の被害との関係の確認を目的としたものでございます。上段が建物で地震保険の支払を受けたグループ、下段は建物の支払を受けていないグループとなります。上下で比べていただきますと、①で囲んでいるとおり、上段の建物有責となった方が家財の半損以上の割合が高いということで、ある程度、建物と家財の被害には関連があるのだということが改めて確認できたところでございます。

なお、右下の②としている建物階数別で建物無責というカテゴリーで、建物階数が11階以上で極端に全損が少ないとなっているところですけれども、これを震度別に確認したところ、回答者が震度が小さい地域に偏っていたということが影響しているものと考えております。

続いて6ページ目を御覧ください。こちらのページは建物の耐震性との関係の確認を目的としたものでございます。上段が旧耐震の建物のグループ、下段が新耐震のグループ、1980年前後で分けております。第3回の研究会で御説明したものと結果は同じようなものが出たのですけれども、家財の被害傾向に、建物の耐震性による大きな違いというのは確認できませんでした。

ただし、補足しますと、旧耐震の方が若干、震度6強以上の回答者が少なかったということは把握しております。その結果がどこまで影響しているか、これから分析をしたいと考えております。

続いて7ページ目を御覧ください。アンケート調査結果Ⅳとなっているところですけれども、このページはこれまで御紹介しました建物の有無責と建築年代を組み合わせた結果の御紹介になります。多少見づらくなっておりますけれども、個々の箱にあります表では、縦に建物の損害認定の区分を、横に家財の区分を配置していまして、その組合せの構成割合を示しております。例えば一番左上ですと、建物全損、家財全損の人たちの割合が4.3%いたというような表になってございます。

若干分かりにくいので、ページ右下にあります色分けした表を御覧いただきますと、黒で塗られました表の左下部分、つまり家財の認定が建物のそれよりも高いグループと、白く塗られた建物と家財の認定が一致しているグループと、それ以外の建物の方が高かったグループの三つに分けて、表の構成割合を設けまして、各表の下に横棒のグラフを配しております。

こちらを御覧いただきますとお分かりになるかと思いますけれども、建物と家財の認定が一致している、いわゆる白いグループが多くを占めているものの、建物無責で家財が一部損という組合せが全体的にも高い割合を占めておりましたので、結果、黒い部分、つまり家財の認定が建物のそれよりも高いグループが、ほとんどのところで4割程度を占めているという結果になりました。

ただし、サンプル数の問題、例えば左上にありますけれども、11階以上で1980年以前の居住階数のところがn=23件しかないというところもあり、この結果が一般的と言えるかというのは判断が難しいところですので、引き続き検討してまいりたいと考えております。

続いて8ページ目を御覧ください。結果の御紹介はこのページが最後になるのですけれども、これまで分けてお話ししておりました居住階数と建物階数を組み合わせたものです。居住階数が同じでも建物自体の階数が異なると揺れ方が異なり、結果として家財の被害に差が出るのではないかと想定し、集計いたしました。結果を見ていただきますと、6階から10階、3階から5階、いずれも建物階数によって何かしら関わりがありそうなのですが、同一の傾向が見受けられなかったので、ここも引き続き検討が必要と思っております。

最後、9ページ目を御覧ください。最後のまとめというところになりますけれども、今日お話に出ました非木造の共同住宅については、今回の結果では階数に有意と言えるような差は確認できませんでした。今後は、途中、口頭でも補足いたしましたけれども、震度と組み合わせた分析を本格的に進めていきたいと考えております。ただし、サンプル数の少なさもありますので、追加の調査の実施も含めた検討を進めてまいりたいと思っております。

建物と家財の関係全体に関して言いますと、アンケートの結果からは、7ページでお伝えしたとおり、家財の方が建物よりも若干大きいのではないかという結果もありましたけれども、サンプル数の問題もあるので、こちらについても引き続き検討を進めてまいりたいと思います。

また、戸建て住宅や割引の影響などについては、保険の支払データを用いた分析を中心に継続して行っていきたいと考えております。

中間報告で何かしらの結論が出たものではない中で、駆け足となってしまいましたが、私からの説明は以上となります。ありがとうございました。

○佐藤座長御丁寧にありがとうございました。

では、この件、こういう分析がよいのではないかという御提案も含めて、委員の皆様方から。目黒先生、どうぞ。

○目黒委員議論する前にちょっと確認なのですけれども、家財は家具だけではないとはもちろん理解していますが、家具に対して転倒防止をしていたとか、していないとかというのがすごく重要だと思うのですけれども、そういう調査はされているのですか。

○渡辺火災・地震保険部次長兼地震グループリーダー今回のアンケートの中では、転倒防止をしているかどうかということも聞いております。ただし、思ったような結果が出ていないところがありまして、それは恐らく転倒防止の方法とか手段によっても、回答者によっても、随分差があるのかなというところもありますので、もう少し中身を見ていきたいと考えております。

○目黒委員今御紹介していただいた中には、そういう説明は一切入っていなかったですね。

○渡辺火災・地震保険部次長兼地震グループリーダー転倒防止をしている人としていない人、全部含めた形で、今回お示ししたものになっています。

○目黒委員示していないのはよいとして、そちらで確認したところ、転倒防止しているケースとしていないケースの差がなかったとも聞こえる発言だったのですけれども、本当にそうですか。

○渡辺火災・地震保険部次長兼地震グループリーダー今、バッと見たところでは、有意な差がないと見ていますけれども、先ほど申し上げたとおり、まだ分析が足りないところがありますので、これから見ていくところだと考えております。

○目黒委員分かりました。

○佐藤座長ありがとうございます。

他、いかがでしょう。中埜先生、どうぞ。

○中埜委員ちょっと教えてほしいのですけれども、4枚目で、どこに住んでいるかというのと、何階建ての建物に住んでいるかというのが示されていますけれども、右側の絵は建物階数ですから、建物の持っている性質、要するに周期が長いとか、そうではないということと、被害の関係が表れている絵だと思うのですけれども、左側が僕にはピンと来ないのです。というのは、どこに住んでいるかなのだけれども、1階か2階に住んでいますという人も、1~2階建ての建物に住んでいる人もいれば、3~5階建ての建物に住んでいる人もいれば、ずっと高い建物に住んでいる人もいて、これが何を意味しているのかがよく僕には分からないのです。

むしろ、そういうふうに調べるのならば、8ページ目を見ていただくと、1階、2階に住んでいますという人を四つ横に並べているけれども、そうではなくて、むしろ縦に見るのではないかと思うのですよ。つまり、一番右の列を見ると、11階建て以上の建物を見ていますよね。11階建て以上の建物の1~2階に住んでいる人、3~5階に住んでいる人、6~10階に住んでいる人。本当は一つ足りなくて、このケースの場合は11階以上に住んでいる人。それを縦に比べると意味が出てくるのではないかなと思うのです。

比率もさることながら、建物のサンプル数を見てみると、上に行くほど、nの数が増えていますよね。19、53、120。引き算すると、11階以上に住んでいる人は150くらいあるのですかね。そういう人が何か被害がありましたと言っているということは、やっぱり上の階の方が被害が大きいと言っているのではないですか。そういうふうに僕は思ったのだけど。だから、縦に比較をすると違う結果にならないかなと思いましたけれども、これはどうでしょう。

○佐藤座長ありがとうございます。いかがですかね。むしろ居住階数ではなくて、まずは建物階数ごとに分けて、それからどこに住んでいましたかと聞いたほうが、建物の構造と住んでいる場所の間でクロスがかかるということですよね。

○中埜委員そのほうが分かりやすいと思うのですけど。

○佐藤座長私もそんな気がします。すぐできますよね。

○渡辺火災・地震保険部次長兼地震グループリーダーできますので、こういったことも引き続きやっていきたいと思います。

○佐藤座長ぜひ試してみてください。

○渡辺火災・地震保険部次長兼地震グループリーダーありがとうございます。

○中埜委員直感的には、建物の階数によっては大きな差が出なかったというのが結論だったのだけれども、結論が変わってくるのではないかと思ったのです。やっぱり上の階の方が被害が出ていますというケースが多いように思ったのですけどね。絶対値がもともと母集団と比例していないかもしれないから、うまいことにはならないかもしれないけれども、少なくとも高層の建物の1~2階に住んでいる人と、高層に住んでいる人の数は、11階建て以上であれば同じような数ですよね。ズドーンと四角い建物のような形であれば。上の方が被害が出ていますという人が多いということは、やっぱり上の階の方が被害が出ているのではないかなと。だから結論が変わるのではないかなという気がしたので、そこも含めて御検討いただければありがたいと思います。

○佐藤座長ありがとうございました。ぜひ試してみてください。

ちょっとサンプル数が少ないので、しかもネットの調査だということもありますので、答えている方々が代表性がどこまであるのかなというのがよく分からないような気はするので、追加の調査をする可能性はあるということですか。もうちょっとサンプルを集めてみようというのはあり得るのですか。

○渡辺火災・地震保険部次長兼地震グループリーダー最後のページに書いてありますけれども、追加の調査も含めて検討していきたいと思っています。ただ、1回目のところで聞いている方にもう一度聞いてもあまり増えないので。

○佐藤座長それは全然意味ないので。

○渡辺火災・地震保険部次長兼地震グループリーダー聞き方を工夫しながら、少し考えていきたいと思っているところでございます。

○佐藤座長他、いかがでしょう。どうぞ。

○目黒委員非木造の集合住宅を対象にした最大の理由は何でしたっけ。

○渡辺火災・地震保険部次長兼地震グループリーダー今回は高さの違いというところにターゲットを絞ろうと思いましたので、非木造に絞って集計させていただいたところでございます。

○目黒委員家財と建物の被害の相関というのは、普通の2階建ての木造なんかでもそれなりに重要であることは間違いないのでしょう。そうでもないのですか。集合住宅だけに特化して重要な問題なのですか。

○渡辺火災・地震保険部次長兼地震グループリーダーそういうことではございませんで、今日はこういう話だということで、先ほど、最後のまとめにもお話をさせていただいたところにかぶってしまいますけれども、戸建て住宅とか建物の耐震性とか、そういったものを含めて、建物と家財の関係というのは、アンケート以外の保険統計も含めて分析をこのまま継続していきたいと考えているところでございます。

○目黒委員今回は、建物の方が致命傷になるような事例はないですよね。

○渡辺火災・地震保険部次長兼地震グループリーダー今回見たところで、建物がそういうふうになっているのは見て取れなかったかと思っております。

○目黒委員もし本当に地震の強さが非常に強いケースでは、建物は全壊したけれども、家財は健全だったということはあり得ないでしょう。建物の影響を受けるから。建物が壊れるところまでいってしまうと、両方とも駄目という結論があって、最初は両方とも大丈夫なところから、途中がどうなるかということで、最後は建物の影響で家財も影響を受けるということが全体としての理解で間違いないですね。

○渡辺火災・地震保険部次長兼地震グループリーダー必ずしもというか、いろいろなパターンがあるかと思っています。先ほど仰った建物が全損だったら家財が必ず全損になるかといいますと、例えば液状化のようなところを考えていくとあり得ますので、そういったところも含めて見ていく必要があるかと思っています。

○目黒委員だとすると、この問題設定はちょっとおかしくて、建物の耐震性と家財の関係という議論ではなくて、液状化の影響を受けるかどうかというのは、建物の耐震性と関係ないですからね。

○渡辺火災・地震保険部次長兼地震グループリーダー今回は非木造に限ったところでしたので、そういったところも見ていきたいと思っているところです。

○目黒委員非木造でも同じことで、新潟地震のときの川岸町のアパートみたいなケースがあるわけですよ。コメントです。

○渡辺火災・地震保険部次長兼地震グループリーダーありがとうございます。

○佐藤座長これからいろいろなセグメントというか、切り口の分析があると思いますが、先ほど震度の話が出ていたと思いますが、例えば建物の被害が液状化の場合だったらどうだったのかとか、幾つか切り口はあるのかなという気はします。ただ、何せサンプルが少ないので、あまり切り口を増やし過ぎても数が小さいのかなという気がするので、ある程度のサンプルを確保できる範囲での切分けにならざるを得ないのかなという気はします。

他、いかがですかね。堀田先生、どうぞ。

○堀田委員今の質問にもしかしたらあったのかもしれないのだけれども、耐震性と家財の被害に相関がないというような印象ですが、建物の方はあるのですよね。そこは今回のアンケートにはないのかもしれないですけれども、意外な結論な感じもするのでね。耐震性に対して料率を傾斜的にかけているわけですよね。被害に影響がそんなに出ていないというふうに見えてしまうのですけれども。

○渡辺火災・地震保険部次長兼地震グループリーダー先ほどの被害の傾向がないというのは、あくまで家財に絞ったところでございまして、7ページを見ていくと、1980年前後で建物の被害に関わってきたりするものもあります。ただ、今回はどこに焦点を当てるかといったときに、家財を中心にお話をさせていただいたところでございます。

○堀田委員仮にこれが正しいというか、それを受け止めたとすると、建物と家財は別建てで、保険の仕組みも別に作ってもよいという結論にも至るような印象も持ってしまうのですけれどもいかがでしょうか。あるいは、先ほどの家財に耐震措置をすることを促すという意味をもし期待するのであれば、定額型の保険にしたほうが耐震インセンティブが高まるのではないかということにもなるかなと思います。住んでいる階層に極端に影響がないということであれば、階層とは関係なく、一律の家財の保険という形で作るということで問題ないという印象を持ちました。

○佐藤座長ありがとうございます。いろいろな切り口があるような気がしていて、先ほど中埜先生から御指摘のあったとおり、もしかしたら切り口を変えれば、高い建物の上の方に住んでいる人は、やっぱり揺れが大きいので家財が壊れやすいという話になるかもしれないし、それはある意味、直感的ですよね。ただ、堀田先生が仰ったように、実を言うと、建物の構造と家財の被害というのはあまり相関関係がないということであれば、保険料率の設定の仕方はこれでよいのという話になるし、どこに住んでいるかという建物の居住の高さが重要だということであれば、その高さに応じた保険料の書き方も逆に出てくるかもしれないし、そういう切り口もある。

ただ、つっかえ棒をしているか、していないかが意外と大きいのだということになれば、モラルハザードの問題になってしまうのですけれども、ちゃんとつっかえ棒をしている人としていない人で違うのか。ただ、つっかえ棒の仕方が問題だといえば、そのとおりかもしれないので。どれくらいちゃんと対応しているかというところはちゃんと見ないといけないのかもしれないし、そうはいっても、くどいようですが、サンプル数が少ないので、サンプルによって出てきた結果かもしれないねと、いろいろなケースが出てくるような気がするので、とりあえずどうしろというわけではありませんけれども、幾つかの切り口で分析を進めていただければと思いますし、もし可能であれば、同じ共同住宅の枠の中でもよいので、サンプル数を増やすか、データが取りやすいという理由だけであれば、戸建てで狙ってみて、戸建ての耐震構造と家財の被害状況を検証してみるとか、幾つか考えてみてもよいのかなという気はしました。

○渡辺火災・地震保険部次長兼地震グループリーダー先ほど堀田先生の仰った、耐震性とは関係ないのではないかというところがあったと思いますけれども、7ページでお示ししたとおり、建物と家財の認定が一致しているというのも一定割合ありますので、必ずしも建物と家財を直ちに分けるべきというところではないかと思います。今後、保険金に占める家財の割合も含めて、いろいろな切り口で考えていきたいと思っております。今日は貴重な御意見ありがとうございました。

○佐藤座長ありがとうございました。あと細かいですけれども、統計的に有意に差があるかどうかは検証してください。バリエーションもあるので、差があればよいというわけではないので、統計的にどうなのかということは見ておいたほうがよいのかなと思います。

他、いかがでしょうか。前の方に戻りまして、最初の方の議論も含めまして、コメント等々ありましたら、いかがでしょう。

集まって議論をするのは今日が最後ということになりますので、この後、とりまとめに向けての準備で、ファクトを並べ、論点を並べ、どっちかに誘導するようなことはするつもりはありませんけれども、表現はできるだけ中立的にという意味です。とりまとめの方に向けての作業に入りますので、もし御意見等々があれば、聞けるのが今日が最後といいますか、今後に向けてこういう論点もあるのではないかとか、ここのところを考えてほしいということもあれば、いかがでしょう。大丈夫ですかね。よろしいですか。

それでは、そろそろ予定の時間も来ておりますので、まずは本日の議論、このくらいとさせていただきたいと思います。今、申し上げましたけれども、事務局から今後の予定について説明をよろしくお願いします。

○嶋田信用機構課長ありがとうございます。既に座長から御紹介いただきましたが、地震保険制度等研究会では事務年度末に御議論の状況をとりまとめさせていただくということとしております。今回までの研究会において方向性が確認できたものや、認識が共有されたものにつきまして、第1回、第2回同様、とりまとめを行い、公表させていただきたいと考えております。とりまとめにつきましては、前回のとりまとめと同様に、メール等を用いて書面で御照会させていただきたいと思いますので、何とぞよろしくお願いいたします。

次回の開催につきましては、事務年度が変わってからになるかと思いますが、皆様の御予定をお伺いした上で、改めて御連絡をさせていただきますので、何とぞよろしくお願いいたします。

私からは以上でございます。

○佐藤座長ありがとうございます。また書面で照会させていただきますので、ぜひ御覧いただきまして、御意見等々いただければと思います。次に皆さんにお会いするのは次年度以降ということになるかもしれません。

本日は御多忙の中、本当にありがとうございました。これで閉会とさせていただきます。お疲れさまでした。ありがとうございました。

午後3時30分閉会