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地震保険制度等研究会第4回 議事録

令和3年4月23日(金)10:00~12:00
オンライン

1.開会

2.令和3年4月~6月の地震保険制度等研究会について

  • 事務局からの説明

3.南海トラフ地震臨時情報に対する地震保険の対応について

  • 事務局からの説明

  • 討議

4.地震保険におけるデジタル化の取組状況について

  • 事務局からの説明

  • 日本損害保険協会からの説明

  • 討議

5.閉会

出席者

委員

阿部美雪

纐纈一起

佐藤主光(座長)

清水香

藤田友敬

堀田一吉

目黒公郎

(敬称略)

オブザーバー

一般社団法人日本損害保険協会

一般社団法人外国損害保険協会

日本地震再保険株式会社

損害保険料率算出機構

金融庁監督局保険課

事務局

新川総括審議官

嶋田信用機構課長

午前10時00分開会

○佐藤座長皆様、おはようございます。本日、お忙しい中、お集まりいただきましてありがとうございます。ちょうど定刻、10時になりましたので、ただいまから第4回地震保険制度等研究会を開催いたします。

コロナがまだ続いておりまして、第3回研究会から随分時間がたっておりますけれども、本日は令和元年5月の第2回研究会に引き続きまして、南海トラフ地震臨時情報に対する地震保険の対応についての御議論と、地震保険に限ったことではありませんけれども、デジタル化に関して、地震保険における取組状況について議論させていただければと思います。

では、議論に先立ちまして、事務局を代表して新川総括審議官から御挨拶をいただきます。よろしくお願いいたします。

○新川大臣官房総括審議官おはようございます。財務省の大臣官房総括審議官の新川でございます。佐藤座長をはじめとしまして委員の皆様には、財務省、金融庁の様々な行政分野につきまして、日頃から格別の御理解、御指導をいただいておりまして、この場を借りまして感謝させていただきます。

今、佐藤先生からもありましたように、本研究会、第3回から久しぶりの開催ということになっておりますけれども、この度、こうしたオンラインの形で開催させていただくこととなりました。今年は2月に福島県沖を震源とする地震が発生いたしました。3月には東日本大震災から10年を迎えるという節目を迎えております。改めて日本が地震国であることを強く認識させられる出来事が続いております。国民の安心のよりどころとなります地震保険制度がますます重要になってくると感じております。この制度をより良いものにしていくために、直面する課題について、委員の先生方から御知見、お知恵などを賜ることができればと考えております。

改めて出席の委員の皆様には御礼を申し上げますとともに、ぜひとも忌憚のない御議論を頂戴いたしまして、御挨拶とさせていただきます。本日はよろしくお願い申し上げます。

○佐藤座長ありがとうございました。

続きまして、この研究会の運営につきまして、事務局から御説明をお願いいたします。

○嶋田信用機構課長信用機構課長の嶋田でございます。本日はよろしくお願いいたします。

それでは、本日の地震保険制度等研究会の運営について御説明いたします。

本研究会の議論につきましては、その概要について議事要旨を速やかに、議事録についてもできるだけ早く事務局において作成し、委員、オブザーバーの皆様に御確認いただいた上で、財務省のホームページで公表することとしております。また、各回で配付する資料につきましても、原則としてホームページに掲載しております。

なお、本研究会につきましては、今事務年度が終わる6月末までにあと1回開催を予定しておりますが、その中で方向性が確認できましたものにつきましては、第1回、第2回のときと同様、そのとりまとめを公表させていただきたいと考えております。

次に、本日はオンライン会議でございます。これに関し、何点か留意点をお伝えいたします。

まず、発言者以外の皆様におかれましては、カメラはオンにしたままで、マイクのみミュートの設定をお願いいたします。発言をされる場合は、御自身でミュートを解除し、発言が終わられましたら、再度ミュートの設定をお願いいたします。ミュートの設定解除は事務局で行うこともできますので、適宜こちらで設定解除を行わせていただくことがございますことを御容赦ください。

また、発言を御希望される際には、参加者一覧の箇所に手のマークの挙手ボタンがございますので、そちらをクリックして手を挙げてください。その後、座長から御指名いただきたいと思います。

御都合により途中退席される委員におかれましては、適宜ミーティングから退室のボタンを押して御退室ください。

なお、本研究会のオンライン開催は初めての試みでございます。御不便をおかけすることもあるかもしれませんが、御容赦をいただければと思います。不具合等がございましたら、事前にお送りいたしております事務局の連絡先まで御連絡をいただければと思います。

それでは、よろしくお願いいたします。

○佐藤座長ありがとうございました。

コロナから1年以上たつので、皆さんもオンライン会議には慣れていらっしゃるとは思いますけれども、適宜対応をよろしくお願いいたします。

それでは、まず令和3年4月から6月の地震保険制度等研究会のアジェンダにつきまして、事務局から説明をお願いいたします。

○嶋田信用機構課長今回、それから、6月1日午後1時半から予定しております次回の地震保険制度等研究会のアジェンダについて、簡単に御紹介させていただきたいと思います。

資料1の2ページを御覧ください。一番上、南海トラフ地震臨時情報に対する地震保険の対応、これは本日御議論いただくことを予定しております。二つ目、立地割増・立地割引について、これは次回御議論をしていただきたいと思っております。三つ目、地震保険におけるデジタル化の取組状況につきましては、本日の議題となっております。四つ目でございますが、建物と家財の被害に係る支払状況の研究の中間報告、これは次回、損害保険料率算出機構から報告をいただき、各委員から御示唆なりをいただければと考えております。最後、その他としておりますが、ここに掲げさせていただきましたもの以外に、お諮りするに足る熟度が高まったものがあれば、次回、御議論いただければと思っております。

アジェンダについては以上でございます。

○佐藤座長ありがとうございました。

それでは、ここまでの説明を踏まえて、委員の皆様方から質問等があればお受けしたいと思いますが、大丈夫ですかね。もし御質問等、あるいは確認したいことがあれば、挙手ボタンでお知らせください。画面で手を挙げていただいても大丈夫だと思うのですけれども。この段階では大丈夫ですね。

では、次のアジェンダの方へ移りたいと思います。南海トラフ地震臨時情報に対する地震保険の対応についてになります。では、事務局から説明をお願いいたします。

○嶋田信用機構課長それでは、御説明申し上げます。南海トラフ地震臨時情報に対する地震保険の対応についてでございますが、資料1の4ページを御覧いただければと思います。「これまでの経緯等」と書かれている資料でございます。

まず経緯でございますが、御案内のとおり、地震保険に関する法律の中で、大規模地震対策特別措置法に基づく警戒宣言が発せられましたときは、警戒解除宣言が発せられた日までの間、地震保険契約を新たに締結することができないといった法律になっております。

他方で、平成30年12月でございますけれども、中央防災会議南海トラフ沿いの異常な現象への防災対応検討ワーキンググループ報告というところで、現在の科学的知見では南海トラフ地震を確度高く予測することはできないと結論づけられております。これに伴って、新たに臨時情報の枠組みが整備されたところであり、第2回の研究会で内閣府防災より御説明をいただいたというものでございます。

第2回の研究会等における主な御意見を下の段に御紹介しております。一つ目の○にございますように、現在の警戒宣言の制度を臨時情報にも適用すべきではないかという御意見があった一方、三つ目の○にございますように、自助の手段として、いつでも引き受けることができるようにしておくことが望ましいのではないかという御意見がございました。また、四つ目の○にございますように、検討のポイントは警戒宣言と臨時情報とで、どの程度の確度でリスクが高まったかというレベル感の違いがあるか否かによるという御示唆もございました。そして、なかなかこういった問題は悩ましいなというのが、当日の座長のおとりまとめということでございます。

これに関連しまして、資料6ページを御覧ください。東海地震に関する情報、防災対応の制度的位置付け、あるいは確度といったものにつきまして整理させていただいたものでございます。

まず警戒宣言でございますが、先ほど申し上げましたように、大震法9条に根拠規定が設けられておるということでございます。その制度の概要でございますが、内閣総理大臣が気象庁長官から地震予知情報の報告を受けた場合に閣議にかけて発するという手続が定められているということでございます。確度につきましては、百発百中ということはできませんけれども、例えば2~3回空振りということがあっても、その次には恐らく成功するだろうということで、相当確度が高いものを想定しておったということでございます。

警戒宣言が出された後の防災対応でございますが、例えば大震法に基づく道路交通規制、その他にも通信設備の優先使用、鉄道の運行停止、船舶の入港制限など、私権制限的な防災対応まで予定されておったということでございます。

その下に、東海地震注意情報というものがございます。これにつきまして、根拠法令は気象業務法第11条に基づき発表する情報の一つということでございます。この第11条というのは、情報を直ちに発表することが公衆の利便を増進すると認めるときに発表するものということでございます。確度につきましては、当然ながら地震予知情報よりも危険度が低いということで、これが出された際の防災対応ということでございますが、中央防災会議決定におきます地震防災基本計画の中で、各機関の準備行動が定められている。救助部隊等の派遣準備とか、児童の帰宅等の安全確保対策等々を求めるというものでございます。

これにつきまして、資料5ページを御覧ください。過去、本研究会の前身であるプロジェクトチームにおいて、この注意情報が発せられた際、加入制限を行うかどうかということが御議論になっております。その際の結論でございますが、加入制限の適用範囲の拡大は、消費者にとって明らかな制度後退と受け止められる懸念がある。安心のよりどころを国民に提供するという制度本来の趣旨からすれば、加入制限の適用範囲は、地震予知にある程度の確度が認められる場合など、極めて限定的なものとすべきであり、適用範囲の拡大には慎重に対応すべきであるといったようなとりまとめをいただいているということでございます。

その上で、今回の臨時情報についてとりまとめさせていただきましたのが、資料7ページでございます。臨時情報につきましては、根拠法令、先ほどの注意情報と同じく気象業務法第11条に基づき発表する情報であるということでございます。確度については、先ほど申し上げましたとおり、これは確度高く予測することはできないということでございます。これが出た後の防災上の対応でございますが、中央防災会議決定の防災対策推進基本計画に定められております災害応急対策でございまして、例えば日頃からの地震の備えの再確認、行政機関、企業等における情報収集などが想定されておるということでございます。

こうしたものを前提に、本日御議論いただきたい論点ということで、資料3に「本日ご議論いただきたい事項」について掲げさせていただいております。

まず1としたところで、南海トラフ地震臨時情報に対する地震保険の対応についてでございますが、最初のポツでございます。大規模地震対策特別措置法に規定する警戒宣言が発せられた場合には、逆選択防止の観点から地震保険の加入制限を行うことが地震保険に関する法律で定められている。南海トラフ地震臨時情報と警戒宣言における情報の確度、法令上の位置付け及び防災対応における相違や、地震保険制度に関するプロジェクトチーム報告書の整理を踏まえ、加入制限の適用範囲を臨時情報に拡大することは慎重に考えるべきか。慎重に考えるべきとしても、臨時情報が発表された場合、何らかの対応があり得るか。

二つ目でございますが、臨時情報の発表時には、南海トラフ沿いの想定震源域で既に地震が発生している場合がある。このような場合に、制度の公正性確保の観点から、例えば、保険の対象となる建物や家財に既に損害が発生していないかについて、民間保険会社において地震保険加入時に丁寧な確認を行うことについてどのように考えるか。その際に留意すべき点はあるか。

三つ目でございますが、地震保険の既加入者が多いほど地震発生後の駆込み加入者が減ると考えられるため、臨時情報に関して、その公表後に着目した対応ではなく、平時の加入促進により対応を行うことについて、どのように考えるか。その場合、南海トラフ地震防災対策推進地域や特に付帯率の低い地域の加入に力を入れるなど、地域に着目して加入促進を図ることも考えられるが、加入促進に向けてどのようなことが考えられるかという論点を掲げさせていただいております。

なお、最後の論点に関係しまして、資料1の10ページ目に各都道府県別の付帯率の表を付けさせていただいておりますので、御参考までに御覧いただければと思います。

事務局からの説明は以上でございます。

○佐藤座長ありがとうございました。

ここまでの説明を踏まえて、委員の皆様方から御意見、御質問をお願いいたしたいと思います。挙手ボタンが参加者リストのところで出てくると思いますが、挙手ボタンを確認しながらこちらで指名いたします。あるいは、人数も限られているので、手を挙げてこっちだよと言っていただいても構いません。どちらからでも構いませんけれども、いかがでしょうか。御質問、あるいは、これを確認しておきたいということがあれば。前回から随分、日がたっていますので、振り返りも含めて何かあれば、いかがでしょうか。特にございませんかというのもあれですが。

○堀田委員質問をさせてください。今の御説明の中でちょっと分からなかったのは、警戒宣言と臨時情報の違いについてです。臨時情報というのは、どのくらい容易に出されるものなのでしょうか。つまり、簡単に出されて、簡単に撤回されるようなものなのか、それとも、いったん出されると、しばらく出された状態が続くのでしょうか。感覚的には、警戒宣言は、非常に緊急度の高い印象がありますが、臨時情報というのは人々に注意を促す程度のもののように感じます。

○佐藤座長ありがとうございます。今の御質問の趣旨は、警戒宣言は百発百中というわけにはいかないけれども、それなりの精度が見込まれるということと、かなり重大な意思決定であるというのに対して、臨時情報というのは、ある意味、気象庁が出している警報とか、台風が来たときに出る注意報とか、いろいろありますけれども、そのレベルなのか、あるいはどの程度の精度が期待されるのかということについての御質問だったと思いますけれども、事務局の方で答えられますか。

○嶋田信用機構課長私の方で分かる範囲で答えさせていただきます。まず資料1の9ページを御覧いただければと思います。例えば天気予報、そういったものというのは、気象業務法第2条の第6項ということで、予報とは、観測の成果に基づく現象の予想を発表したものということになっています。他方で、今回の臨時情報というのは、観測したものの結果とそれに関連する情報ということであろうと思いますが、観測は現象の観察及び測定ということで、予報といった性質が含まれていないということでございます。予報というのはなかなか難しいのだということになっておりますので、おおよその過去の発生の蓋然性とか、そういったレベルのものを御紹介しているということで、先ほどの資料7ページに南海トラフ地震臨時情報の確度というところがございますが、その参考欄に、南海トラフ地震防災対策推進基本計画というのを掲げておりまして、世界の事例では、マグニチュード8以上の地震発生後、隣接領域で1週間以内にマグニチュード8クラス以上の地震が発生する頻度は十数回に1回程度、また、マグニチュード7以上の地震発生後に同じ領域で1週間以内にマグニチュード8クラス以上の地震が発生する頻度は数百回に1回程度ということが示されております。個別具体の地震に着目して、次がどうなるという予測、予報というのは、臨時情報の世界ではなかなか困難だと整理されていると理解しております。

○佐藤座長ありがとうございます。堀田先生、何か追加の質問とかはありますか。

○堀田委員難し過ぎてよく分かりませんが、例えば、台風のときにあるようなレベル1からレベル5みたいに、いくつかの段階で示されると感覚的に理解できる気がします。臨時情報というのは注意を促すということであるとすると、それによって国民が保険を含めて備えをするのは、前向きに受け止めるべきで、何らかの加入制限をすることは極力控えるべきだと思います。

○佐藤座長他の委員の方々からも、御確認、あるいはこのことはどうなるのということを含めて、御質問等々、いかがでしょう。あるいはコメントでも全然構いませんけれども。清水さん、どうぞ。

○清水委員臨時情報は東海地震の警戒宣言とは明らかに質が違うと理解しています。臨時情報の発出後、大地震が起こるかもしれないし、起こらないかもしれないということなら、私たちが置かれている現在の状況とさほど変わりません。大きな地震が起きた後は、何日かは余震に注意してくださいといったアナウンスが流れるものです。そのようなレベル感であれば、制限する根拠にならないのではと感じます。むしろ、このレベル感で加入制限をすることは、地震保険制度の趣旨から外れ、阻害するように感じられるので、地震保険を利用する生活者を守る立場からは、制限はするべきではないと思います。

一方、保険全般に言えることですが、大地震の後など怖いことがあった後は、加入率が高まるので、臨時情報が発出されるとむしろ加入が増えることも考えられると。それに対しての対応が二つ目の質問で、そこも考えていかなければと思っています。

○佐藤座長他、いかがでしょう。ちなみに、気象業務法第11条による、台風とかは想像が付きますけれども、地震関係で何らかの情報が発表されたということはあるのですかね。大きい地震の後の余震か何かですか。どれくらい頻度としてあるのでしょうね。

○纐纈委員予測という意味で出されたことはないと思います。予知の情報を、どんなささいなことでも得られたということも今まで一度もないですから、結局、どういうふうになるかというのは実はよく分かっていないし、気象庁もどういうふうに対応するのかというのも、そんなにしっかり決まっているわけではないと思います。

○佐藤座長分かりました。ありがとうございます。さすが専門家。

○纐纈委員追加で申し上げると、情報としてのレベル感、法律として組み込むとしたらどんな感じかという意味では、事務局や清水先生が仰ったような感じではないかと思いますが、情報が出たときに社会の方がかなりパニック的な行動を起こす可能性というのはあって、そうしたことで大量の新規加入があるという危険性は、そういう情報が出たらという前提で言えば結構あり得ると思うわけで、それには備える必要があるかもしれないとは思います。

○佐藤座長ありがとうございます。過去にそういうケースはなかったとは思うのですけれども、具体的に何らかの形で臨時情報が出たときに、加入制限はかけていないとしても、駆込みが出てきたときに、実際、損保さんとしてはどういうふうに対応できるのですかね。つまり、大量に来たときにどこまでさばけるかという問題と、あと何度か出てきたような話だと思うのですが、その家が既に壊れているかどうかとか、今、割引とかもありますので、どのくらい大丈夫なのかということも含めて、建物の現状についての確認もしないといけないではないですか。その辺も含めて、どのくらい現場で対応できるのですかね。というのが多分、次の質問になってくると思うのですけれども。

○目黒委員関連して一言、申し上げてよいですか。頭を整理するためにちょっと質問なのですけれども、東日本大震災も含めて大きな地震が起こった後というのは、かなり大きめの余震が発生しまして、そうすると、最初の大きな地震で大丈夫だったところの人たち、それなりに揺れているという状況で、その人たちの地震危険度というのは格段に上がるのですけれども、そういう人たちが保険に加入したいというときに、現状の保険制度ではその人たちに対してどう対応しているのですか。先ほどの入る時点での被害があるかないかということも含めて、どのような手続で地震保険に入っていただけるのかとか、どれくらいの時間の範囲で入っていただけるのですか。その辺もはっきりしておくと、今回の議論をする上では重要な情報になるのではないかなという気がします。

○佐藤座長ありがとうございます。その辺り、損保さんに聞いた方がよいのですかね。過去にも、この間の福島も含めて大きな地震があったわけですから、その後、加入希望があったときにどんな対応を実際に現場ではされているのかということ、それが目黒先生の御趣旨だと思いますけれども、いかがでしょうか。損保協会さんにお願いした方がよいですね。

○嶋田信用機構課長事務局から、私どもが知り得ている範囲のことをまず御紹介いたしまして、その後、損保協会から実務について補足していただければと思っています。まず私どもが承知している範囲では、アフターショック云々といったようなときに加入を抑制するといったような措置を執られているところはないと承知しております。その上で、各損保会社の運用の世界になりますけれども、加入前の地震によって建物あるいは家財の状況がどうなっているかということを、地震の後については特に入念に確認されている社もあると聞いております。実際の駆込み加入云々という話は私どもでは分かりませんので、損保協会の方で分かる範囲でお答えいただければと思います。よろしくお願いします。

○内田地震保険特別PTリーダーあいおいニッセイ同和の内田と申します。今の御質問へのお答えとしまして、まず2月に福島での大きな地震がありました。そのときの加入のところで実際にどうやっていたかというところなのですけれども、まず前提としましては、そうなったときに加入を制限するということはございません。お客様から加入したいという申出があれば、お引受けをします。ただ、その際に我々として何をやっているかと申しますと、建物の損傷の状況を確認して、我々の会社で言えば、損害状況の確認書というものを取って、壊れていない、損傷がないことを確認した上でお引受けをしているということで、制度の強靱性のところもございますので、そのような対応をしております。今回の福島でも同じ応対をしました。今後ともそのような形で、正確にお客様の状態を確認して、引受けをしていくというスタンスでございます。

○佐藤座長次のデジタル化の話にも絡むのですけれども、確認というときは、代理店の方かどなたかが行って、対面で確認する、目視で確認するという理解でよいですか。それとも、御本人の自己申告という理解でよいのでしたっけ。

○内田地震保険特別PTリーダー基本、従来であれば必ず対面を前提としておりますので、目視で確認をしております。ただ、昨今、コロナ禍において、いわゆる非接触ということで、お客様と対面をしない、例えば電話での対応というのも、今、開始をしておるわけですけれども、その際にはお客様とのやりとりの中で御申告ということになってしまいますので、その部分は少し課題があるのかなと考えております。

○目黒委員せっかくお答えいただいたのですけれども、私の質問の趣旨とは随分離れていて、私が申し上げたかったのは、M8クラスの大きな地震で、かなり広域に被害が出ているようなケースの後に地震保険に加入したいという方々の数は大量に増える可能性があって、そういうものに対してうまくこなせるくらいの対応能力がないと、先ほど纐纈先生が仰ったように、臨時情報が出た後、かなり似たような状況になる可能性があるときに、制度としては問題なく入っていただけますよと言ったところで、入っていただくことができなくて、そこでいろいろな問題が出てきてしまう可能性も高いので、そういうことについて問題を整理した上でないと議論がなかなか難しいかなと思ったものですから、質問させていただいたということです。

○佐藤座長ありがとうございます。御所見のとおりだと思います。ポイントが二つあって、やっぱり数ですよね。この間の福島も、どのくらい追加の加入があったか存じ上げませんけれども、数としてどれくらい現状でこなせるのか。これまでも大量に地震の後に加入の申請が来たことがあるのかということがポイントの一つだと思います。その辺、どうなのですかね。この間の福島だと何件くらいあったと思ってよいのですか。

○内田地震保険特別PTリーダー福島での加入がどのくらい来たのかというのは、全社捉えておりませんけれども、過去の大きな地震が発生した後、駆込みがあったという事実はございません。ただ今後、今、御指摘いただいたようなところで来る可能性がありますので、それについては業界としてもさばけるかという問題については非常に課題だと認識しております。

○佐藤座長ありがとうございます。今の御回答ですと、極端なことを言うと、窓口に加入者が殺到するという事態はこれまでのところはなかった。ただ、今後どうなるかは分からないということ。

それから、対面でやるか、自己申告でやるかも含めて、それぞれ会社によって対応が違うと、かなりばらつきが出てしまいますので、それ自体も不公平だ云々という話が出てきてしまうので、デジタル化の御時世なので、標準的な対応が求められるのかなと思うのですけれども、目黒先生、いかがでしょう。

○目黒委員仰るとおりですし、今の問題は、今回の臨時情報的な話もあるのだけれども、本当に大規模な地震が起こった後にも同様に発生し得るのですよね。大きな地震が起こった後に、まだ自分の家は被災していないという人たちが、危険性が一気に上がるから、地震保険にもし入っていなければ入りたいというような状況になったときも、保険会社には大量の仕事が一気に降ってくるわけですよ。片一方ではもう既に入っている人たちに対しての査定の問題もあるし、もう一個は新しく入る人たちに対しての仕事も発生するということで、その辺の整理もきちんとしておかないで、ある判断をしてしまうと、その判断が大きな問題を生んでしまうというか、判断しなければいけないのだけれども、それをこなすために問題が出てくるというところまで踏まえた検討をしておかないといけないかなと感じました。

○佐藤座長ありがとうございます。今の御質問、今日の論点の二つ目にも関わりますけれども、一番理想的なのは事前策になります。事前というのは、つまり地震の発生前の段階で加入していただいていれば駆込みはないわけですので、できるだけ加入促進をするということが地震前の対策としては必要です。ただ、そうはいっても、目黒先生が御指摘のとおり、事後策といいますか、地震がいったん起きてしまった後、対応的に大丈夫なのかということ、これについてもある程度、手を打っておく必要はあるのかなという気はします。

阿部さん、どうぞ。

○阿部委員同じようなことなのですけれども、臨時情報が出された場合に、消費者はどのような行動をしなければならないのか。まずは地震に備えましょうということ、そういうことを踏まえた日常の生活をしていくということが、マスコミ等、こういう臨時情報が出されましたとなったときに、たくさん報道されるのではないかと思います。コロナ禍においても連日報道されていて、消費者は情報の渦で、消費生活センターの方に「どうすればよいのだろうか」とか、また、そういうことに乗じた被害、要するに悪質商法の相談が入ります。このような状況であるということを踏まえると、例えば「臨時情報が出ました、保険の加入制限等々があります」というような情報が流れてしまうと、先ほど仰ったような、大量の加入者を促していくのではないかというところもあるので、慎重にしなければいけないであろうと思いますし、その情報の確率が、まだまだデータ的にも納得がいくようなものではないということであると、これに関して、これから御議論するというところでありますけれども、消費者側とすると、その辺をどのように見極めていくのか、どう納得するのかというところで、非常に難しいのかなと思っております。

加入制限する、しないにかかわらず、丁寧に家の状況等を審査するというところに関しては、消費者側が納得できればよいなと思っています。消費者は、経年劣化の部分であったりとか、地震の前の損傷であったりというのが出ませんよというところも、なかなか理解されていないところもあるので、丁寧な説明をしていただけたらと思います。

デジタル化というところで、先ほど難しいと言われていましたけれども、消費者が理解できるような形でデジタルの方も進めていただけたらよいのかなと思っております。

○佐藤座長ありがとうございます。今のはコメントということでよろしいですかね。

もう一方、藤田委員からもお手が挙がっていますので、よろしくお願いします。

○藤田委員質問が1点あるのですが、今まで伺っていた話での印象なのですけれども、何かをトリガーに地震保険への加入の申請が非常に増えるという現象が起きた場合の対応として、どんなことを考えなければいけないかというのは、今回挙がっている臨時情報の扱いとは独立の問題としてありそうだなという気がします。臨時情報がどの程度トリガーになるかは、聞いている限りだとあまりよく分からなくて、もっと重要なトリガーもありそうな気もするのですが、とにかくそれは今回の話ともう一つ別にちゃんと検討しておいた方がよいとは思います。ただ、もし臨時情報が出たことで保険加入が非常に増えるということがあれば、現象的にはその論点と重なってくるのですけれども、一応、独立の話として考えておいた方がよいような気がします。

今回の臨時情報の扱いとの関係に限定して言いますと、大震法上の警戒宣言との質が相当違うことまではよく分かりました。地震保険の性格とか、これまで取ってきた方針だとか、保護の範囲を著しく縮小するというふうに取られかねないとか、そういう懸念とか、そういうのはよく分かりましたが、ちょっと伺いたいのは、一般論としては、臨時情報が出た状態での加入というのはあまり望ましくないという程度にはリスクは高まっている、その程度にリスク測定上、有意な情報ではあると考えてよいかということです。もしこれがリスク測定上、効いてこない程度のものなのであれば、この時期に加入が増えることを深刻に問題視して何か対処ということには直接つながっていかないとは思います。つまりそんな時期での加入を減らすということを、それ自体、目標として掲げなければいけない程度には問題があるような情報と考えてよいかということ、これが質問です。

これは3番目の論点に関わってきて、一般的に地震保険の普及を広めましょう、そのためのリソースをどう割り振りましょうという発想でよいのか、それともこの時期の加入を少しでも減らすために、少しでも早くこの地域において加入してもらうように、リソースを集中的にそちら側に回しましょうということまで考える必要があるかということに関わってくるから、今の点を確認したいと申し上げています。

2番目の話というのは、実はそういう話ともちょっと違うような気がしています。2番目の確認というのは、払ってはいけない保険に払ってしまうことがないように、事前にちゃんと確認しましょうという話であって、もし余力があるなら当然すべきことなのだけれども、加入がパッと増えたらできなくなったりするような可能性がある。それをどう考えるかという話で、これは質がちょっと違って、臨時情報のリスクの大きさという話とは直結しない話です。

結局、3番目の論点と関わってくる話なのですけれども、臨時情報というのはどういう性格のものか。警戒宣言と同視しなくてはいけないものではないことは分かったのですけれども、そうではなくて、その状態での加入をリスクの観点から深刻に考えなくてはならない程度には有用な情報なのかということ、どなたに聞いてよいかよく分からないのですけれども、確認させていただければと思います。

○佐藤座長ありがとうございます。いかがですかね。気象庁とかはどういうふうに言っているのですか。逆に、彼らもこれを使われては困るという対応なのか、あるいは、彼らもある程度の自信を持って出しているものだと思ってよいのか。そこはまさにリスクの程度を表していると思います。

○纐纈委員自信がないから今回のような規定になったわけですので、情報そのもののレベルとしては、繰り返しですけれども、大したものではないとは思いますが、問題は受け止める側ですよね。気象庁が今後起こる巨大地震について情報を出したという、その事実自体でかなり過剰反応される可能性はあるかなと思います。

○藤田委員確認したいのですが、リスクそのものが本当は上がっていないけれども、過剰反応で入ることが問題なのであれば、そういうものとして考えるべきで、その時期に加入者がある程度増えることは、リスクの観点では問題ないのだけれども、大量に来ることが問題なのだというのであれば、それはそれでまた対応が変わってくると思うのですね。ある程度リスクが高まった段階で大量に来ることが問題なのだというのだったら、またそれは別の問題なので、一時に大量に加入が殺到することの問題だと理解してよいですか。

○纐纈委員リスクが変わっていないということはないですよ。

○藤田委員どの程度の深刻さだということなのか。

○纐纈委員どの程度か分からないけど、何かあるなというふうに思うから情報を出すわけです。ある・なしレベルで、程度は分からないということです。

○佐藤座長事務局から補足説明ですか。お願いします。

○嶋田信用機構課長補足させてください。リスク云々という話は、まさにどの程度か分からないという部分があるのですけれども、まず警戒宣言が出されたときに加入制限をするという趣旨、これは私ども、古文書をあさりまして、昭和55年の話でございますが、警戒宣言というのはほぼ当たるという前提のもとで作られています。その際に加入制限をする根拠というのが、警戒宣言は地震発生について、その発生日時、区域、規模等を予知して発せられるものであるから、警戒宣言が発せられた後は保険契約の要素である偶然性がなくなり、保険が成立しない、だから加入制限ができるのだということでございますので、そこは臨時情報とは性質が相当違うと考えております。

○藤田委員警戒宣言と違いがあるかどうかを聞いているのではなくて、それが出たときの問題というのは、大量に殺到するから事務処理その他がおろそかになったりするという問題なのか、それとも、この時期に保険の加入がたくさん来ることがリスクの観点でもあまり望ましくないという問題があるということなのかということなのです。警戒宣言ほど重要なものではないから加入制限すべきではないというのはよいのです。

○佐藤座長スタートはリスクの問題で、地震のリスクが高まっているときに加入を受け入れることが制度の強靱性に関わるのではないかという議論から出発はしているのですが、実際問題として、臨時情報がどれくらいの信頼性があるか、科学的な知見、科学的な観点から見てどれくらい信頼性があるかどうかはクエスチョンだとしても、何らかの理由で大量に追加加入があったときのオペレーションの問題はどうなるのか。入り口は確かにリスクだったと思うのですが、途中から議論が、大量に加入申請が来たときのオペレーションが回るかという話なので、そちらの話になってきているかなと思います。

さっき目黒先生が仰っていたのかな。きっかけは何でもよいのですよ。きっかけはもしかしたら臨時情報かもしれないし、ただのネットでのうわさかもしれませんけれども、何らかの理由で大量に加入が殺到したときに、果たして今の地震保険制度が対応できるのか。ただ、さっきの損保さんのお話だと、これまで経験としてそういうことはなかったということなので、実際、これは「たられば」の話にはなっているということなのかなと思います。

強靱性というときに二つあって、一つはリスクに対する強靱性はどうなのかという問題と、今言ったオペレーションレベルで、何らかの理由で大量に加入が一時期に殺到したときに、さて公平な査定がちゃんとできるか。申請の公平性とか適正さの観点で、かつ迅速な対応が可能かどうか。そこの問題が二つ、正直言って混在しているかなと思います。

今日の話、多分この流れでいくと、さすがに気象業務法を使って加入制限をかけるということについては、委員の皆様方からも好評ではないと思うのですが、さはさりながら、2番目の問題は残っているわけでありまして、そこについては、一番良いのはあらかじめ皆さんに加入いただくということ。ただ、藤田先生御指摘のとおり、津々浦々みんなに加入を促すのか、南海トラフのところに重点的にやるのか。これは政策判断かもしれない。ただ、事後策としてというか、結果的に地震が起きたとき、あるいは何らかの地震のうわさ、あるいは警戒が高まったときに、大量に追加の加入が生じるような事態になったときには、さてどうするのかという話。これは事後策としては出てくるのかなと。事後的な対応として何か求められるかもしれないということなのだと思います。

無理やり整理してみましたけれども、こんな感じかなとは思うのですが、いかがでしょう。ただ問題は、だからどうしろという話は全然固まっていないのですが、課題提起しただけなのですけれども。

纐纈先生、清水さん、お願いします。

○纐纈委員南海トラフの特殊性を一つ挙げるとすれば、論点2のところに書かれているように、マグニチュード8の巨大地震が起きた直後に、またマグニチュード8の巨大地震が起こる可能性があるということですね。最初の地震よりも大きい可能性もある。熊本地震はそうだったのですが、あれはマグニチュード7ですから、今回の場合と比べ物にならないですし、東日本大震災も、日本海溝というのは南海トラフと比べると陸地から大分遠いですので、揺れの被害はそれほどでもなかったわけで、前例とはできない。結局、熊本地震も東日本大震災も前例にならないので、南海トラフに関しては論点2のようなケースが非常に特殊な例として、一番危ない例として考えられるということが特殊な問題かと思います。

○佐藤座長ありがとうございます。確かにそうですね。南海トラフの場合は、確かに大きな地震の後に更に大きいものが来る可能性はあるので、そこはどう考えるかということだとは思います。もしお答えいただければ、事務局なり損保協会さんなり、対応策があれば回答いただくとして、清水委員、お願いします。

○清水委員二つ目のところですね。これまでは大量の駆込み加入は起きていないものの、地震後は緩やかに契約が増えています。地震発生後も、建物等の損傷がなければ問題なく地震保険に加入できますが、とはいえ微妙なケースはあるでしょう。こうしたケースに対しては、業界は確認書を取るなどの対応をしているということでした。契約者間の公平性を担保する上で重要なことなので、しっかり対応して頂ければありがたいです。

この点は、臨時情報の発出後に契約引受けをする際、より重要になると思います。駆込み加入で得をできるなどと思われれば制度の信頼性に関わります。地震保険約款には、警戒宣言が発出されたら加入できない旨の記載がありますが、そのことをご存じの方はそもそも少数です。ましてや臨時情報はどうでしょうか。発出後に確実に地震が起きるとは言えないにせよ、可能性がないとは言えず、ひとたび地震が起これば、南海トラフのレベル感からして、大きな影響が及ぶ可能性もあります。よって、被害を小さくできるなどの意義があるなら、臨時情報発出に際し何らかの対応をすることが望ましいでしょう。例えばですが、臨時情報が発出されると加入に審査が必要になり、その結果によっては加入できないこともある、よって平時からの加入をお勧めします、といったような平時のアナウンスも必要かもしれません。そういう対応は業界として可能でしょうか。

○佐藤座長ありがとうございます。もちろん加入制限はかけないとしても、大きな地震の後は加入の手続が滞ることはあり得ますので、その辺りを注意事項として記載して、できるだけ早い段階での加入を求めていく、このような対応は、ある意味、加入者というか、顧客のためにもなるとは思うのですけれども。

ここまでを踏まえて、事務局から、あるいは損保協会さんから何か追加の情報でも、いや、これは違うのだよということも含めて、何かございましたらお願いします。

○堀田委員先ほども話しましたが、臨時情報というのは、ずっと出され続けるものではないのですか。臨時情報が、リスクが上がったということを意味するのであれば、一時的な措置ではなくて、むしろ新しい段階に至ったということで、それに対応して保険料改定を考えるべきではないかと思います。

○佐藤座長ありがとうございます。臨時情報を出すのはよいのですけれども、解除の基準はどうなっているのか。その辺、どんな段取りになっているのですかね。事務局、もしあれでしたら損保協会さんからお願いします。

○嶋田信用機構課長まず堀田先生の、臨時情報は解除がなされるのかという御下問だと思いますけれども、解除という仕組みはないと承知しております。警戒宣言の解除宣言のようなものはないということでございます。

纐纈先生の御下問、相当難しくて、マグニチュード8クラスの地震が2回続いたケースというのは、恐らく地震保険の運用の中ではないと思いますので、そのときにどうなるか、そのときに実務が回るのかという話になってくると思うので、そこは恐らく損保協会の方でもしっかりやる、あるいは考えていくということに尽きるということだと思います。

○佐藤座長ありがとうございます。損保協会さんから何か補足とかありますか。さっきの清水委員からの御指摘も含めてですけれども。

○内田地震保険特別PTリーダー協会からは特に補足はございません。

○佐藤座長清水委員から御指摘があったように、注意喚起というのはあり得るのですかね。別に加入制限をかけるという意味ではないのですけれども、大きな地震があると、実際、事実として加入審査に時間がかかったりすることはあり得るわけですから、だから早めに入ったほうがよいですよみたいな勧誘の仕方、加入促進策としてはあり得るのですか。そういうのは逆にやってはいけないのですか。脅かしみたいになってしまうから。どうなのですかね。あるいは、既に現場ではやっているでもよいのですけれども。

○新納地震保険特別委員会委員長損保協会の新納でございます。

今の御質問のところで、事前に加入ができなくなる可能性があるので平時からという御案内は、契約者の不安を煽ることとなるのでしておりません。

過去のデータを見ておるのですけれども、東日本大震災が発生する前、2010年度の宮城県の付帯率が68.7%でありました。その翌年度、地震直後、付帯率が81.1%、そのまた翌年度には83.5%ということで、2011年度の1年間で13ポイント弱、急激に付帯率が伸びたのですが、この当時の引受けに関する実務が業界として回らなかったかということでいえば、このときもきっちりと引受けの方はできております。

したがいまして、今回、南海トラフでアナウンスをされたときに、どういったインパクトがあるか、どういった駆込みがあるかというのは、まだ想定ができないわけですけれども、過去あった最大のケースでも実務は回っておったということからすると、そういったただし書をせずに、平時から粛々と御加入いただくよう、我々としてはアナウンスしていくことが大切なのかなと思っております。むろん、南海トラフへの対策は必要であると考えています。

○佐藤座長ありがとうございます。他、いかがでしょうか。

○目黒委員今の御意見に関してなのですけれども、東日本大震災の際の宮城県の事例と南海トラフの連続の地震ではスケールが全く違うので、宮城県で問題なくできたということを前例として、今後も大丈夫だという発言はされない方がよいのではないかなという感じがします。例えば、東海、南海と発生することを前提としたときに、東海地震で発生する被害量がまず全然違うし、その後の南海地域のエリアとして、そこの人口も全然違うので、その辺は同じレベルでの議論は危険だと思います。

○佐藤座長ありがとうございます。まさに、ちょっと難しいなと思うのは、東日本大震災は建物の被害はそんなになかったので、仙台といえば、以前、エレベーターの共用部分の被害があったケースはないかということを言ったら、意外となかったのですよね。なので、建物の被害が比較的少ない震災だったのかなという気はするので、ただ、今回の南海トラフは、さっき纐纈先生から御指摘があったとおり、性格が多分違うと思いますので、その辺り、前例をベースに考えるのは難しいかなと。かといって、本当に「たられば」の話にはなってはいるのですけれども、前例だけ踏襲して何とかなりますというのは危険かなと言えば、そのとおりかなと思います。

金融庁さんから何かありますか。

○池田保険課長金融庁の保険課長の池田でございます。損保協会さんも、皆さんの御質問からは答えにくいところがあるのだと思うのですね。地震保険制度が重要な中で、仮に加入したいという人が出てきたときに、なかなか審査の手間がかかって、人手がいなくて、我々できませんとは言いにくいというのがありますので、逆に言うと、それを事前に、そうなった場合には難しいので、早めの加入をお願いしますというのもなかなか難しいのだと思います。

先生方が仰っておられるように、そういうことが起きたときに、どういう備えをしておくべきかという点は非常に重要な論点だと思いまして、今日の御議論の中では、その前提条件がなかなか詰められていない部分もあるので、ややふわふわした話になってしまうのですけれども、そこが業界としてしっかり対応できるような規模の申請なのか、そうでないのか。そうでなかった場合にどういう備えをしておくべきなのか、どういう対応をしておくべきなのかということをしっかり整理して前に進んでいくということではないかと、議論をお聞きして思っておりました。

○佐藤座長ありがとうございます。まさにこういう御時世ですから、想定外はいくらでも想定するべきことになってきていますので、さっき頭の体操というような言葉も出てきましたけれども、こうなったらどうするかということについて、あるいは課題を洗い出しするとか、デジタル技術も含めてになりますけれども、どんな対応がどこまで可能なのかということについては、どこかでシミュレーション的なことはやっておいた方がよいのかなという気がします。

一つ目の議題の時間がなくなってきてはいるのですけれども、事前の加入促進策というのも御議論いただくことにはなっているのですが、委員の皆様方から、あるいは損保協会さんからも含めて、加入促進について御意見、あるいは、新たにこんな取組をしていますということがあればお話しいただければと思いますが、いかがでしょう。堀田先生、どうぞ。

○堀田委員東日本大震災の時の事例を検証すると、意外とキーパーソンが損保代理店の方だったのです。代理店の方から地震保険の加入を勧められて、渋々入った被災者の方が、結果的に、あの時、熱心に進めてもらったおかげで補償を受けることができて非常に感謝している、という話を聞いたことがあります。そういう意味では、保険会社の取組というより、もう少し国民生活と身近なレベルで、こういう問題も一緒に考えなければならないと思います。要するに、日常的に地震保険に対する意識をみんなで共有しましょうということなのだと思います。

○佐藤座長清水委員、どうぞ。

○清水委員堀田先生の仰ることはそのとおりと思います。そもそもこの会議に参加していることから、ここには地震保険に詳しい方しかいないわけですが、普通の方はそうではありません。中でも地震保険非加入者の方の認知度は非常に低く、地震保険について、名称を見聞きしたことがある程度という方が5割を超えている。地震保険をご存じの方でも、損害区分が4区分といったことまではご存じない場合が多いです。あるとき損害調査の担当の方にお聞きしたところ、損害調査に出向いたときは、まず地震保険の商品内容の説明から始めるとのことでした。まず地震保険を知っていただくことから始めないといけない。更になぜそれほどまでに認知度が低いかと言えば、そもそも地震による被災リスクが十分に認識されていないためです。

住宅ローンにしても、現在は低金利ということもあって、長期で多額の住宅ローンを組むことが一般的です。住宅金融支援機構のデータによると、2020年度に住宅ローンを借り入れた方の平均完済年齢が73歳だといいます。南海トラフの大地震、首都直下地震が近く高い確率で起きるかもしれないと言われている中、生活者は被災時、深刻な家計ダメージを負う可能性があり、その点をしっかり認識していただく必要があります。

こうした中、自治体の取組にも注目すべきものがあります。宮城県では、地震保険や風水災の保険に新規に加入する方に、補助金を支給する仕組みが2021年度から始まっています。現在は実施していないようですが、以前は新潟県が低所得者向けに地震保険料の補助金を支給していました。神奈川県の横須賀市、三浦市では、ろうきんで融資を受けた人に年2万5,000円かつ10年間を上限に、地震保険料を補助する仕組みもあります。このように地震保険に入りやすくなる仕組みがあって、個々の住民の方の備えが進むことは、地域を復興させるためにも重要なことです。地域も巻き込んだこのような取組ができればなおよいのではないでしょうか。このように多方面から、かつ平時から、地道に生活者の地震保険に対する認知度を上げていくしかないと感じております。

○佐藤座長ありがとうございます。

今日、せっかく資料を用意いただいているようなので、付帯率についてかなり地域差があるという話と、建更さんとかも含めてどのくらいの地域差があるのでしょうねという話をいろいろと事務局とさせていただいたのですけれども、資料を用意いただいているようなので、もしよろしければ付帯率の地域差について御紹介いただければと思いますが、いかがですか。

○嶋田信用機構課長事務局から御説明させていただきます。まず地震保険の付帯率については10ページの表のとおりということになっています。青字が付帯率上位5都道府県、赤字が付帯率下位5都道府県でございます。

加入率でございますけれども、資料として御用意させていただけなかったのですが、まず付帯率の推移でございます。先ほどどなたか委員からお話があったと思いますけれども、あるいは損保協会からお話があったと思いますけれども、地震があった後、付帯率が上がる傾向があります。東日本大震災のときは、その直後、付帯率が東北地方においておおむね10%以上、上がっております。2015年度と2019年度と比べまして、その間、熊本、大阪で地震が発生しておりますが、近畿地方、九州、長崎、熊本、大分といった辺りで付帯率が10%くらい上がる。大きな地震があったら加入される方が増えるという傾向にあります。

建物更生共済を含めてとの御下問についてでございます。建物更生共済への加入が進んでいる地域については、地震保険の加入率が低い地域であっても、これを含めればおおむね平均以上の加入率になっている地域もあるというような話は聞いております。他方で、両者を合算した場合でも、平均的な加入率より低い地域ももちろんあるということでございます。

事務局からは以上でございます。

○佐藤座長ありがとうございました。最近、こういうのが政府ではやっていまして、地域差を見せるといいますか、さっき清水委員からも御紹介があったとおり、これは自治体の取組にも関わることなので、地域差が顕著だと、どこの地域が頑張っていて、どこの地域がそうでもないのという話ですかね。そういったところを見るのも一つかなと思います。

阿部委員、よろしくお願いします。

○阿部委員清水委員が言われたように、消費者は地震保険というものの認知が大変少ない、というのは、消費者とどこでお話ししてもそう感じます。例えば相談の中でも、「地震保険だけに入りたかったのに、できなかったのはおかしいのではないか」というようなレベルの御相談が入ります。周知において日々努力をなさるというか、地震保険はリスクに備えるところで必要なのですよというものを消費者に訴えていくのは、すごく大切なことだと思っております。

先ほどもお話に出ましたけれども、代理店の方に勧めていただいたとか非常に速やかにお金を出してもらえて、その後、大変助かったというようなお話もあったりするところなので、地域差はあるのかもしれませんが、どの地域においても同じようにそういった活動をしていただければなと思っております。

高齢の方の家は、住宅も古くて耐震工事もしておらず、地震保険も入っていなくて、どうしたらよいのだろうかというような相談もあり、そういう高齢者も非常に多いということもありますので、活動というか、テレビや、SNSとか、高齢者はそれは無理かもしれないのですけれども、そういったことを使って、まずは加入率を地道に上げていくというのはやっていただきたいなというところです。

そうなってくれば、臨時情報が発出された後に、多くの方が慌てて加入することも少なくなり、申請したのだけれども、大きな地震が来てしまって入れなかった、地震の後になってしまったというようなことがないようにしていただきたいと思うのです。先ほど丁寧な調査をしなければいけないというところと裏腹のところになるかと思うのですけれども、難しいところだと思いますが、そこもぜひ損保の方々には頑張っていただきたいなと思うのです。そこで、どういう状況で加入、契約ができるのですか。きちんと調査をしてからで、申し込んだだけでは駄目ですよね。

○佐藤座長ありがとうございます。今の御質問は、加入申請してから実際に加入ができるまで、保険契約が締結されるまで、実際どれくらいかかるのですか。実は次のデジタルの話にもつながるのですけれども、どのくらいかかるものなのですかね。もちろん平時と非常時でも違うのだったら――非常時というか、地震の後ね。大きな地震の後とふだんとは違うのであれば、その辺りはどうなのかということ。

それから、さっき清水委員から指摘があったローンの話なのですけれども、随分前の、我々の前身のプロジェクトチーム、ローンを出しているのは金融機関ですから、ローンを組む人たちに加入を促してもらうようにしたらということで、ポスターくらいは貼ってもらっていたような気がするのですが、その辺り、ローンを組む人を対象にした金融機関との連携はどうなっているのかなと。その2点について、損保協会さんでも、事務局でも、状況が分かれば教えていただければと思います。いかがでしょう。

○内田地震保険特別PTリーダー協会の方からお答えします。1点目の加入のところですけれども、審査というか、中身を確認して、建物の構造とか、評価というものがあるので、火災保険と一緒にお入りいただくわけですけれども、その部分の確認はございますが、そこの確認が取れ次第、御加入いただけるという形になります。当然、保険料をお支払いいただいてからの加入という形になりますので、昨今は口座での振替といったところが主流になりますので、即時の加入が可能というふうに考えております。

2点目、住宅ローンという話がございましたが、金融機関の対応ということでございますと、当然のことながらローンを組まれるということは、建物自体が新築になります。建物といっても、戸建て、それともマンションといった違いがございますけれども、例にとると、建物であれば、新築時にかなりの高額なお買物をお客様がしますので、お客様も地震のリスクというのは感じられるだろうと思いますし、金融機関が我々の代理店ではあるわけですけれども、そこでお勧めをするケースはかなりやっておりまして、加入率は高いと認識しております。

その他、広報活動全体について、新納から御説明させていただきますので、このままお願いいたします。

○新納地震保険特別委員会委員長先ほどから、委員の皆様から平時における広報活動、地震保険についての知識を高める、認知を高めるということ、御意見がありましたけれども、そのとおりだと思っております。

協会で今やっております取組としましては、テレビのCMですとか、自治体と一緒になってセミナーを開催するですとか、そういった広報活動をやっているのと同時に、実際の売手でいらっしゃいます代理店の皆様、日本代理店協会への働きかけなどもさせていただきながら、認知向上、加入促進を実施しております。

2010年度、48.1%だった付帯率が、先ほどの資料にありましたとおり、現在は66.7%まで伸びてきているということであります。ただ、その中では、先ほどお話が出てきております地域格差もございます。この点、満遍なく高めていかなければならないという課題もありますし、また物件別では、戸建てよりもマンション、アパートの加入率が低いという傾向も出ております。したがいまして、今後はマンション、アパートでの加入率のアップに向けましては、不動産関連業界団体への働きかけなど、加入率アップを図るということとともに、広報活動につきましては、若年層の頃から知っていただくということで、例えばSNSを活用した広報の検討をやってまいろうと思っております。

広報活動については以上でございます。

○佐藤座長清水さん、お願いします。

○清水委員アパート、マンションの加入率が低いとのことですが、これは賃貸ですか。

○佐藤座長賃貸か分譲かでえらい違うので。家財の話にも関わりますし。あと、共用部分の扱いというところもあるので、加入率が低いというときに、管理組合が共用部分について入っていないという意味なのか、整理いただけますか。

○内田地震保険特別PTリーダーお答えします。今の加入率のところで、こちらで認識しているのが、賃貸なのか、分譲なのかという区分は、データからは読み取れないのですけれども、感覚的に申しますと、賃貸の方が加入率が低いのではないかなと。我々のところで実際にお引受けをする中でいきますと、なぜ賃貸が低いのかということで申し上げますと、賃貸なので当たり前なのですけれども、建物は自分のものではございません。よって、付けるとしたら家財になります。御加入に確認の話がありまして、面倒くさいというのもあろうかと思いますし、また、家財の方は特に地震保険はそんなに付ける必要性がないのかといったようなお客様のこともあるのかなと思いますし、また、不動産チャネルがお勧めについて強力にできているかといったところは、先ほどどなたか委員の方からもありましたが、告知が足りないのかなと思っておりますので、そこについては業界として課題を持ってこれから取り組んでまいりたいと考えております。

○佐藤座長清水さん、どうぞ。

○清水委員賃貸の場合、賃貸借契約時に火災保険契約を結ぶことが一般的ですが、損害保険会社の火災保険に加入することは最近減って、少額短期保険で加入するケースが増えているようです。この場合、そもそも地震保険には加入できません。賃貸住宅に住む方の加入促進を検討するのであれば、それを踏まえたうえでどのように課題を設定するかが1点。

一方で分譲マンションは、共用部分の地震保険は契約が伸びてきてはいますが、加入率が5割くらいと不十分なのが現状で、課題もあります。これが2点目ですが、そもそも共用部分が地震保険に入っているかどうか知らない、私たちが管理することではないなど、共用部分が地震保険に加入することの重要性が住民にあまり共有されていません。一方、損害保険料率算出機構の調査によれば、管理会社の提案で共用部分の地震保険に加入したケースが突出して多い。このようにマンションの管理会社からの提案は効果的なので、具体的な取組をより強化していただくことが加入促進につながるのではないでしょうか。

○佐藤座長ありがとうございます。この研究会の前身からずっと、加入促進というのが最大の課題だったものですから、今、所有形態も多様化していますので、賃貸も増えていますし、さっきの共用部分の話というのはずっと残っているのですよね。この辺り、また日を改めて議論させていただければと思います。

ちょっと盛り上げ過ぎたのか、時間が過ぎてしまいましたので、次の議題にいきたいと思います。今の件、また御質問があれば、最後の方で受け付けますので。

地震保険のデジタル化の取組につきまして、事務局と損保協会さんから御説明をお願いいたします。延ばしておいて申し訳ないのですが、10分程度でお願いいたします。

○嶋田信用機構課長まず事務局から簡単に政府全体の動きを御紹介し、損保協会の方から地震保険におけるデジタル化の取組を御紹介いただいて、最後に事務局から論点の紹介をさせていただきます。

まず資料1、12ページでございますが、多少古うございますが、去年の骨太の方針でございます。その中にデジタル化への集中投資・実装とその環境整備を政府としてしっかりやっていくよという話があり、書面・押印・対面主義からの脱却等が掲げられており、これが進められている。また足元、デジタル庁の創設、マイナンバーカードの活用、行政機関が保有する登録データをベースレジストリとして整備・活用するといったような目的のために、今まさに関連法案が国会で審議されているという状況でございます。

では、損保協会から現状の地震保険の取組について御紹介いただきます。

○佐野火災新種損害調査PTリーダー日本損害保険協会火災新種損害調査PTリーダーを務めております佐野と申します。

損保協会からは、地震保険の損害調査におけるデジタル化の取組について御説明させていただきます。

初めに、業界共通のデジタル化取組として二つの事例を御紹介させていただき、その次に、損害査定の簡素化策として導入しております損害状況申告方式について、最後に個社において実施している取組について、御参考として紹介をさせていただきたいと思います。

それでは、資料2の2ページ目を御覧ください。こちらはモバイル端末による損害調査書の作成ということで、現地で立会調査を行う調査員が、タブレット端末で被害程度の記録ですとか写真の撮影を行い、電子的に損害調査書の作成を行うという取組でございます。

2015年3月に専用のアプリを業界として開発、各保険会社において導入を進めてきた経緯でございます。このアプリは、画面に沿って調査項目を入力することで、損害割合を自動計算し、損害認定結果を表示する仕組みとなっております。また、損害調査に必要な写真の撮影ですとか、図面の作成も、アプリ上でワンストップで行うことが可能となっておりますので、損害調査書の作成業務を大幅に効率化できるようになったということでございます。

加えて、地震発生時にアプリを円滑に利用できるよう、保険会社の社員ですとか、損害保険登録鑑定人を対象とした研修を毎年実施するなどの取組を進めているところでございます。

御参考としまして、これまでの地震アプリの利用状況を記載しております。平成28年熊本地震におきましては、アプリの定着状況に課題があったこともあり、その使用割合は1割未満でございましたが、令和3年福島県沖を震源とする地震におきましては、7割程度の調査において地震アプリを使用しており、活用が進んでいるものと認識をしております。

続きまして、3ページ、共同調査の効率化・ペーパーレス化でございます。平成23年東北地方太平洋沖地震では、津波による被害が甚大だった地域について、保険会社の社員による共同調査団が、被災前後の航空写真・衛星画像を判読して全損となる地域を街区単位で認定する「共同調査」「全損一括認定」という手法を採用いたしました。この手法は個々の物件について現地での立会調査を実施することなく、全損として保険金を支払うことができるというメリットがある一方で、資料に記載のとおり、約2万3,000枚の航空写真を印刷して一枚一枚目視で確認するなどの膨大な作業ロードがかかる実態がございます。そこで、昨年3月にGISと呼ばれる地理情報システムを活用して、共同調査をペーパーレス化及び効率化するツールを開発したという経緯にございます。このツールの活用によりまして、航空写真や衛星写真をパソコンの画面上で判読・入力することができますので、全損一括認定をペーパーレスかつ効率的に実施することが可能となります。このツールは、主に甚大な津波被害が想定される南海トラフ地震等での活用を想定しております。

続きまして、4ページを御覧ください。こちらは損害状況申告方式による損害査定ですが、現在、基本的に紙ベースで実施しているという取組でございますので、デジタル化の実現というところにはまだ至っておりませんが、コロナ禍における非対面での損害調査を推進する事例として御紹介をさせていただきます。

過去開催されました「地震保険制度に関するプロジェクトチーム」フォローアップ会合で御報告させていただいたところですけれども、自己申告方式につきましては、大規模地震発生時にも迅速な対応ができるよう、お客様の申告に基づき損害調査を行う方法としてオプションで導入しているものでございます。具体的には、お客様に申告書の御記入と損傷箇所の写真を撮影いただき、保険会社においては、提出された申告書と写真に基づき書面で損害調査を実施するというものでございます。現在、紙媒体で実施しておりますが、この方式を活用することで、非対面かつ遠隔地においても損害調査が可能になるというメリットがございます。

御参考として、これまでの自己申告方式の利用状況を記載しております。初めて導入いたしました平成23年東北地方太平洋沖地震ですとか、平成28年熊本地震におきましては、全体の1割未満という使用状況でしたが、令和3年福島県沖を震源とする地震におきましては、新型コロナウイルス感染防止対策でニーズが高まったといった側面もあり、おおむね6割から7割程度が自己申告方式により損害調査を実施しているという状況でございます。

以上が業界におけるデジタル化を中心とした取組事例の御紹介になります。

最後に5ページを御覧ください。こちらは保険会社の個社において、お客様の利便性向上等を目的としてデジタル化をしているという取組の一例でございます。まず左側、被害予測ウェブサイトにつきましては、地震を初めとする大規模自然災害時に発災直後から被害状況を予測し、市区町村ごとの被災建物棟数や被災件数率等を一般公開するウェブサイトを開設しているというものでございます。こちらの取組を実施している保険会社におきましては、予測結果を活用して社内の対応体制、例えば災害の社員の動員規模を検討する際の参考情報というふうに活用しております。加えて、無償で一般公開をしておりますので、消費者に対して防災・減災を促すことに努めるなどの対応も行っているところでございます。

次に、ウェブ、SNSによる事故受付につきましては、ウェブサイトやSNSアプリを通じて、お客様に必要事項を入力いただく形で事故受付を可能としているものでございます。従来は電話による事故受付が主流でしたが、大規模地震発生直後に電話回線が混雑してつながりにくくなってしまうケースもございまして、複数の事故受付の方法を整備することで、お客様の利便性向上を図っているものでございます。

最後に、ドローンによる事故調査につきましては、屋根や危険地域のように、被害状況の調査が難しい場合に、ドローンによる空撮画像を用いて損害調査を実施しているものでございます。屋根の損害等については、目視での調査が困難なケースもございますので、そういった場合に適宜ドローンを活用するといった保険会社もございます。

以上、個社における主なデジタル化取組の一例を御紹介させていただきました。業界共通のデジタル化取組に加えまして、各保険会社でも工夫を凝らしている例として御理解いただければと存じます。業界としましても、現状の到達点でよしとするものではなく、今後のIT技術の進展、デジタルツールの拡充も想定した上で、更なるデジタル化の取組について検討してまいりたいと考えております。

損保協会からの説明は以上となります。

○佐藤座長ありがとうございました。では、委員の皆様方から御質問、コメントがあれば、いかがでしょう。目黒さん、お願いします。

○目黒委員御説明ありがとうございました。この研究会の前身の会だったかもしれませんけれども、デジタル的に活用しないと全体に回りませんよというので、私、そのシステムの説明をさせていただいたり、私の研究室に来ていただいて、説明も申し上げたりしたことがつい最近のように思うのですが、そのときは皆さん、「私たちは一軒一軒訪問して、丁寧な説明をすることが信条ですから、デジタルで先生が提案するようなことはできません」というようなことを言われたのだけれども、大きく変わって、私としては大変うれしいです。ただ、そういうふうな方向転換をされるときに、一言も相談がなかったということに対してはちょっと残念な気がしました。

当時言ったことで、まだ採択されていないのは、命の危険性のタイミングの後の話なので、消防団ですとか、そういった方々を中心として、とにかく写真を撮りまくっていただく。それは内閣法のルールにのっとって、どういうふうにして確認すればよいかというのが分かる写真の撮り方で、被災地の人たちでなくて、被災地外の専門家たちが、きちんと誰がトレースしたか、調査したかということも分かるような状態にしておいて、夜夜中も有効に時間を使って評価して、それをGIS上でデータベース化して、クラウド上で返すというようなことをすることによって、作業効率を数十分の一くらいにしないと、大規模災害のときには無理ですよという話をして、そのときに実際に私のところで博士論文をそういうテーマで書いていた事例もお見せしたのですけれども、その部分がまだ弱いようなので、今後、そこら辺も入れていただくとよいのではないかなと思いました。

○佐藤座長ありがとうございます。目黒先生が御提案していたのを私も覚えています。

この点、まずは損保協会さんからいかがでしょう。

○佐野火災新種損害調査PTリーダー目黒先生、御意見ありがとうございました。御指摘のとおり、私ども業界としましては、首都圏直下型地震ですとか、南海トラフ連動地震という、数百万件規模の保険金請求に至る大規模地震を想定しないといけないと思っていますので、今の状態がよしというふうに考えているものではございませんで、先ほど申し上げました損害状況申告方式の積極的な活用に加えて、今後、デジタルツール、IT技術の進展が更にあると思いますので、あらゆる選択肢、可能性を排除することなく、どういったデジタル化の取組をしていくことで、より早く保険金のお支払ができるかとか、より効率的にできるかということは、研究を継続してまいりたいと考えております。

○佐藤座長今のに関わりますけれども、自己申告のところ、まさに当時、目黒先生が御提案されていたものとちょっと違うような気がするのですが、方向感は合っているかなという気がするのですけれども、これはまだ紙ベースではないですか。デジタル化というのは、エンドツーエンドというのですけれども、オンラインでやるなら、全部デジタルでやらなければ意味ないのですよ。途中、紙を挟まないで全てオンラインで完結させるとか、そういったことは考えていらっしゃるのですか。

○佐野火災新種損害調査PTリーダー業界として課題と認識しておりまして、損害状況申告書をウェブで完結する仕組みを構築したいと考えております。システム開発に係るコストですとか、開発後の運用コストにつきましては、地震保険の損害処理体制整備費で支出をするということになりますので、その辺のコスト感を含めて、金融庁、財務省と御相談しながら進めていきたいというのが業界の思いでございます。

○佐藤座長阿部委員、どうぞお願いします。

○阿部委員今回、令和3年の7割程度利用があったというところで、写真とかが不備があったというのは、どのくらいあるのかで、消費者の方が、損保の方が来てしっかり見ていただいて、自分では全然気づかなかったところも写真を撮っていただいて、保険金が出るようになりましたという御報告があったりもするのですね。もちろんその逆もありますが、そういったところをきちんと撮影できる、先ほど先生が撮りまくると仰ったのですけれども、どこをどう撮りまくるのか、不備があれば、手続が滞るのかこれでスムーズにいっているものなのかという御質問と、写真を撮る場所とか、そういったものをきちんと提示されているのかというところを教えていただけますでしょうか。

○佐野火災新種損害調査PTリーダー私の方からお答えさせていただきます。まず前提として御説明させていただきたいのは、事故の被害の御連絡をいただいてから、最初に保険会社から保険契約者側に連絡するときに、調査方法をどうするかというところの御意向を伺っております。今、コロナ禍でございますので、非対面、非接触を推奨するということで、損害状況申告方式による書面でのやりとりに御同意いただけるかどうか、御意向を確認し、御同意いただけたお客様につきましては書面をお送りして、申告方式を採用しております。中には現地に来てもらって、きっちりと見ていただきたいというお申出をされる御契約者もいらっしゃいますので、そういった場合は現地で立会調査をしている。こういった切り分けになってございます。

今、委員の方から御質問がありました、お客様が写真の撮り方が分からないのではないかとか、保険会社に提出された申告書とか、写真に不備がなかったのかといったところについて、実際に不備はございます。その件数とか割合につきましてはデータの取りようがございませんので、この場でお答えすることはできませんけれども、実際に不備があった場合、写真ではよく分からないという場合は、査定をする者からお客様にもう一度御連絡を差し上げ、「ここの写真が見えづらいのですけれども、どういった損傷が出ていますでしょうか」ということでヒアリングをさせていただいたりして、補完をするということが一つ。それでもどうしても分からないケースは、場合によってはその段階で現地の立会調査に切替えをさせていただくといったケースもございます。

お客様に対する分かりやすさという観点で申し上げますと、申告書の記入例ですとか、写真はこういうふうに撮影してくださいといったところのアドバイスというか、記入方法に関する用紙を申告書と一緒に御郵送しておりますので、それを御覧になっていただきながら御対応いただいているということです。加えて、書き方が分からない場合の問い合わせ先のフリーダイヤルみたいなものも各保険会社で御用意させていただいて、問い合わせがありましたら丁寧に書き方の御説明をさせていただいているといったことに加えて、保険代理店がお客様の申告書の作成をサポートするといった制度も構えていますので、こういったやり方を組み合わせて、極力、お客様に御負担をおかけしないといったようなところに努めているということでございます。

○阿部委員ありがとうございます。

○佐藤座長他、いかがでしょうか。

最後に個社の取組というのがいろいろあって、例えばドローンを使っているとか、まさに電話ではなくてSNSによる受付とか、確かに優良事例だと思うのですけれども、こういうのは横展開と我々は呼びますが、他の保険会社においても採用する動きというのはあるのですか。それとも、これは大手でなければ難しいねとか、そういう話になっているのですか。

○佐野火災新種損害調査PTリーダーニュースリリースとかがされますと、実際に実施している会社間で情報交換したりして、参考にさせていただいて、取り入れるという事例はあるかなと思っています。ここは各保険会社の判断ということもありますので、詳細はこの場でコメントは差し控えたいと思いますけれども、参考にしているということはあると考えております。

○佐藤座長ありがとうございます。

あと、いかがでしょう。どうぞ。

○堀田委員東日本大震災以降、保険業界の取組が急速に進展したという印象を持ちましたが、一つお聞きしたいのは、デジタル化を巡って、保険業界と行政との関わりについて、どのように進められてきたのでしょうか。

○佐野火災新種損害調査PTリーダーデジタル化の取組ということについて申し上げますと、国との連携みたいなところの動きには、現在はまだ至っていないといったところが実情かなと考えておりますけれども、御意見を踏まえまして、リソースを共通で使えるものが何かないのかとか、こういったことは研究が必要ではないかと考えております。

○佐藤座長デジタルって難しいのは、壮大なる公共財の提供なのですよね。さっき、写真を撮りまくるという話がありましたけれども、これ自体が自治体の罹災証明書にも使えるかもしれないので。さっき、ドローンの話が出てきましたけれども、一つの家の上も見られるなら、隣の家も見られるわけではないですか。そこは面的に見ることが可能になってきますよね。まさに自治体とか、保険会社の間での共同調査もそうだし、自治体との協力とか、いろいろな面で活用する余地が出てくるというのはデジタルの特徴かなという気はしますけれども。

他、いかがでしょう。どうぞ。

○目黒委員今のものに関係して言うと、直後にいろいろなレベルでかなり似たような調査がされているのですよ。自治体による被災度判定というのもやるのですね。それはその後のいろいろな補償の対象になるようなものだったりするのですけれども、地震保険もそれを調査されるし、クイックインスペクションといって、直後にこの建物を余震がある中で使ってよいかどうかの調査なんかもあるのですね。従来はそれぞれが違った目的なのでということで割り切って、全部別々、バラバラでやっていたのですよ。ですけれども、項目の中にはかなり共通しているものもあるので、例えば全体として実施できるものは実施して、みんなでシェアしたらどうかというのも、随分昔に議論して提案したのですけれども、それぞれの組織が「いや、目的が違いますから」と言って、全然協力してくれなかったのです。もはやそんなことをやっていたのでは全体の数を考えたときにできないという外圧がすごく強くなっているので、大規模災害のときはそうしないと回らないので、もうそろそろその辺の考え方は変えて、みんなでなるべく合理的な対応ができるように進んでいただきたいなと思っている次第です。コメントです。

○佐藤座長ありがとうございます。まさに御指摘のとおりかなと思います。デジタル化というのは、最終的にはデータの共有なのですよね。それをやることによって、他のいろいろな政策にも使えるし、どんな家が壊れやすいかという分析にもなるわけなので、単にデータ化すればよいというわけではなくて、データを利活用して価値を生み出すものなので、ここで言ってもしようがないのですけれども、実は結構大きな話もあるかもしれないということだと思います。

他、大丈夫ですかね。よろしいでしょうか。大体お時間になりましたので、本日の議論はここまでとさせていただきたいと思います。事務局から今後の予定について、連絡をお願いします。

○嶋田信用機構課長次回の研究会につきましては、事務方よりメールにて御連絡させていただいておりますが、6月1日火曜日、13時30分から開催させていただきます。よろしくお願いいたします。

○佐藤座長ありがとうございました。では、次回は6月1日ということで、また御参集のほどよろしくお願いいたします。

では、改めまして本日は御多忙の中、誠にありがとうございました。こちらで閉会とさせていただきます。ありがとうございました。お疲れさまでした。

午前12時00分閉会