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地震保険制度等研究会第3回 議事録

令和2年1月24日(金)15:00~17:00
財務省国際会議室(本庁舎4階)

1.開会

2.保険料率における立地割増・立地割引について

  • 事務局説明(地震保険制度について)

  • 損害保険料率算出機構からの報告

  • 討議

3.近年の地震における保険金の支払状況について

  • 損害保険料率算出機構からの報告

  • 討議

4.閉会

出席者

委員

阿部美雪

荒川進

纐纈一起

佐藤主光(座長)

清水香

中埜良昭

藤田友敬

堀田一吉

目黒公郎

(敬称略)

オブザーバー

一般社団法人日本損害保険協会

一般社団法人外国損害保険協会

日本地震再保険株式会社

損害保険料率算出機構

金融庁監督局保険課

事務局

神田総括審議官

井口信用機構課長

午後3時00分開会

○佐藤座長ただいまから第3回地震保険制度等研究会を開催いたします。

今回から御参加いただく委員の方が何名かいらっしゃいますので、事務局から御紹介をよろしくお願いいたします。

○井口信用機構課長昨年10月31日から大臣官房信用機構課長を務めております。よろしくお願いいたします。

本研究会も3回目ですが、前回までで民間危険準備金残高の議論について一区切りつけることができました。今後、地震保険の保険料率等について議論を始めさせていただくに当たり、今回から3人の委員に新たに御参加いただくことになっております。恐縮ながら五十音順でお名前を読み上げさせていただきますので、一言、いただければと思います。

まず、全国消費生活相談員協会の阿部美雪常務理事でございます。

○阿部委員全国消費生活相談員協会の阿部と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

最初に協会の説明をさせていただきたいと思いますが、私どもの協会は、全国の自治体の消費生活センターで相談業務を担っている相談員を構成員として各地で頑張っている団体でございます。私どもは、週末電話相談室で消費者相談を受けておりまして、そのデータをもとに消費者啓発講座をやっております。年間、多数開催しているところでございます。

その中では、消費者団体の方とか、高齢者の方の御意見をいただくことでございますので、私は消費者目線でこの会で発言させていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

○井口信用機構課長続きまして、ファイナンシャルプランナーで株式会社生活設計塾クルーの清水香取締役でございます。

○清水委員清水と申します。よろしくお願いいたします。

ファイナンシャルプランナー、かつ社会福祉士でもございまして、特定の金融機関に属さずフリーランスで20年活動をしております。生活者の望む暮らしをいかに実現していくか、持続可能なものにしていくかを、家計の危機管理の観点からアドバイスしています。地震保険も含めた民間資源、公的資源を踏まえ、災害が増加するなか思わぬ形で望む暮らしを奪われ、不本意な生き方を強いられることがないよう事前準備をアドバイスするのが最近の活動の柱でもあります。今回、いろいろな先生方の知見を得られることを大変幸いに思っており、勉強させていただきます。よろしくお願いいたします。

○井口信用機構課長もう一方、東京大学生産技術研究所の中埜良昭教授でございます。

○中埜委員東大生研の中埜でございます。専門は建築の耐震構造でございます。

私は、地震保険の全損とか半損とか一部損という基準を作るとき、どのように判断していけば良いかといったクライテリアを作るようなことで少しお手伝いをさせていただいたことがございます。最近ですと、3つの区分を4つにするとか、そのような経験に基づいて、少しでもお役に立てればと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。

○井口信用機構課長ありがとうございました。

委員の追加がございましたが、引き続き、一橋大学の佐藤主光教授に座長をお務めいただくということを考えております。よろしいでしょうか。

(異論なし)

ありがとうございます。

なお、本日、オブザーバーといたしまして、日本損害保険協会、外国損害保険協会、日本地震再保険株式会社、損害保険料率算出機構、金融庁の方々に出席いただいております。お手元に配席図をお配りしております。

それでは、座長、よろしくお願いいたします。

○佐藤座長続きまして、事務局を代表いたしまして神田総括審議官より御挨拶をいただきます。よろしくお願いいたします。

○神田大臣官房総括審議官総括審議官の神田でございます。

地震保険につきましては、近年の地震被害に伴う保険金支払によって、民間危険準備金残高の回復が喫緊の課題でありましたが、昨年4月にこの研究会を立ち上げ、8月におとりまとめをいただきまして、その対応策は、現在、国会に提出中の令和2年度予算案に盛り込むことができました。本当にありがとうございました。

財政審議会でもお世話になった佐藤座長を初め、強力なメンバーでありますが、今回、先ほど御紹介いたしました3名のさらに立派な先生方に加わっていただきまして、本当にありがたく思っております。

立地によるリスクを保険料率に反映させられないかといった従前からの課題に加えまして、近年の保険金支払を通じて顕在化した論点について、今日御列席でいらっしゃいますけれども、損害保険料率算出機構からの御報告も踏まえまして、先生方の貴重な御意見を賜ることができればと考えております。地震保険の火災保険付帯率は30年度末に65.2%まで達しており、私ども財務省といたしましても、地震保険制度が地震国日本における安心の拠り所であるよう、引き続き検討を進めていくことが重要と考えてございます。

長期間にわたり議論のとりまとめをお願いしております佐藤座長を初め、御多忙の中、お集まりいただいている委員の先生方に改めて心より御礼を申し上げるとともに、ぜひとも忌憚のない御議論を頂戴したいとお願い申し上げる次第でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

○佐藤座長ありがとうございました。

では、引き続きまして、配付資料の確認と研究会の運営につきまして、事務局から説明をお願いいたします。

○井口信用機構課長それでは、お手元の資料の確認をさせていただきます。

まず議事次第がございまして、その下の資料1として本研究会の委員名簿、資料2として、「地震保険制度について」。以下、資料3「地震保険の料率体系の概要」、資料4「立地割増・立地割引」、資料5「耐震性や構造による建物と家財の支払状況について」、につきまして、損害保険料率算出機構作成の資料でございます。資料6として「本日ご議論いただきたい事項」、これは我々の方で作らせていただいたものですが、また改めて御説明をさせていただきます。

なお、地震保険に関する法令、過去の報告書等の参考資料につきましては、大部ですので、タブレットに入れております。もし御参照の際、お分かりにならないことがありましたら、職員にお尋ねいただければと思います。

続いて、新たに加わった委員もいらっしゃいますことから、地震保険制度等研究会の運営について、一言、御説明させていただきます。

本研究会につきましては、私どもの事情で恐縮ですが、事務年度が6月末に終わることの関係で、それまでに数回の開催を予定しております。その中で方向性が確認できたものにつきましては、中間的な形になるかと思いますが、とりまとめをさせていただければと思っております。もし、とりまとめが行えれば、公表を考えております。よろしくお願いいたします。

○佐藤座長ありがとうございました。

では、本日はまず、復習も兼ねてと言いますか、新しく委員になられた方もいらっしゃいますので、地震保険制度につきまして事務局から概要の説明をいただきます。それから、本日の議題に関連しますけれども、保険料率に関する説明を損害保険料率算出機構からお願いいたします。

それらを踏まえてですけれども、以下について検討させていただきます。まず1つ目は、保険料率における立地割増・立地割引について損害保険料率算出機構から説明をいただいて、これについて議論をいたします。次に、第2回の本研究会でも指摘されていましたけれども、最近の地震における家財を含めた保険金の支払状況などにつきましても御議論いただければと考えております。そういう意味で、2部構成になっていると御理解ください。

あと、事務局から「本日ご議論いただきたい事項」というものを配付しておりますので、これは説明の後に補足的に事務局に説明してもらうようにいたします。

まずは、立地割増・割引の議論に先立ちまして、事務局から資料2についての概要説明をお願いいたします。

○井口信用機構課長お手元の資料2を御覧下さい。本研究会の委員の多くが、以前から地震保険に関する議論に参加していただいている中、恐縮ですが、保険料率の議論を始めるに当たりまして、概要について御説明をさせていただきます。

めくりまして1ページ目につきましては地震保険制度の趣旨・目的についてまとめております。

我が国で起こります地震に対する保険につきましては、戦前から制度の研究が進められていましたが、地震リスクの特殊性から民間による保険の提供は難しいという状況が続いていました。しかしながら、昭和39年の新潟地震発生当時、折しも保険業法の一部改正法案が衆議院大蔵委員会(当時)で審議中で、そこで「我が国のような地震国において、地震に伴う火災損害について保険金支払ができないことは保険制度上の問題である」といった附帯決議が法案可決の際についたことを1つの契機として、保険審議会の諮問がなされたという経緯がございます。

当時、既に損保業界で行われていた研究報告等をもとに、国の関与の下、「民間採算ベースを超える超長期での収支相償を図る」、あるいは、「民間の負担力を超えるところを国が再保険」するといった工夫を行うことで、翌昭和40年4月に審議会の答申を得まして、昭和41年に地震保険制度が創設されたところです。ただ、その際には総合火災保険への保険金額30%での自動付帯、加入限度額について建物90万円、家財60万円といった形で発足しておりまして、当初は今とかなり違った形になっていました。その後、累次の大規模地震を経まして現在の制度となっておりますが、以来、地震保険については、その役割として、保険料を支払い、地震リスクに備える自助としての「保険」の性格、とともに、国の関与の下、運営されている社会的な「連帯」の仕組み、という2つの性格を持っているものです。

続きまして、2ページ目、こちらは地震保険制度の概要です。地震保険法1条の目的にもあるように、地震保険については、地震等による「被災者の生活の安定に寄与する」という制度趣旨の観点から、対象危険については、地震・噴火又はこれらによる津波を原因とする火災、損壊、埋没又は流失による損害とされております。対象物件は住宅及び家財。また、付保割合も30~50%の範囲内とするとともに、保険金額についても限度額を設けております。損害区分につきましては、地震保険制度に関するプロジェクトチームの議論を経まして、現在は一部損、小半損、大半損、全損の4つの区分になっておりまして、その点は変わっておりますけれども、契約方法については火災保険の原則自動付帯であること、あるいは、総支払限度額については削減を行うことができるといった制度の根幹について、大きな変更は行われておりません。また、保険料率については、収支の償う範囲内においてできるだけ低いものでなければならないとされておりまして、いわゆるノーロス・ノープロフィットの原則がうたわれております。

1ページおめくりいただきまして、現行の地震保険料率ですが、近年の地震は、必ずしも基本料率の高い、いわゆるリスクが大きいところで起こってこなかったという経緯もございまして、「連帯」の観点から、等地区分については3区分に統合しますとともに、「保険」の観点からは、建物の耐震性能に応じた割引を平成26年7月の改定により、最大50%まで拡大してきた経緯がございます。

続きまして、この研究会の前身などさまざまな場で行われてきました議論を整理したものが4ページ目で、等地区分、耐震割引のそれぞれについて説明をまとめております。時間の関係で省略させていただきます。

最後、5ページ目ですが、昨年8月にとりまとめいただきました民間危険準備金残高の回復を図る方策についてです。「地震保険制度を安定的に運用されていくためには、早期に民間危険準備金残高の回復を図ることが重要」とされまして、また、「比較的地震保険金の支払いが多額となる地震が増加していることに鑑み、喫緊の課題として早急に取り組むべき」課題とされたことを受けて、先ほど総括審議官からも御説明いたしましたが、令和2年度の地震再保険特別会計の政府予算案において、特例的ではございますが、保険金の官民の配分割合を大きく変えて、従前、官民で8:2の割合だったものを、官3:民7で行うこととし、これについては民間準備金残高が東日本大震災前の1兆円程度に回復するまでの間、続けるという内容を盛り込んでいるところです。

地震保険の安定的な運営に向けては、委員各位からこれまでもいろいろな意見をいただいておりましたが、このような形で制度変更に繋げてきたことについて、この場を借りて御礼申し上げます。

私からは以上です。

○佐藤座長ありがとうございました。

続きまして、損害保険料率算出機構さんより保険料率体系について簡単に説明をいただいて、続けて立地割増・立地割引についての説明をお願いいたします。では、よろしくお願いいたします。

○市川常務理事損害保険料率算出機構の市川でございます。私から立地割増・割引に関して、当機構が行いました専門家ヒアリング調査の概要を御説明いたしますが、座長からの御案内のとおり、その前に現在の地震保険の料率体系等について概説をさせていただきます。

資料3「地震保険の料率体系の概要」の2ページ目を御覧ください。先ほど資料2でも触れられておりましたけれども、2ページ上段のとおり、1年契約の地震保険の保険料率は、都道府県別・建物構造別の基本料率に、割引対象に該当する場合は当該割引率を乗じて求めます。なお、現在、基本料率においても、割引率においても、建物と家財とは同一の料率となっております。

続いて3ページを御覧ください。表のとおり、割引は現在、4種類ございまして、各割引の適用率は表の右端の列のとおりでございます。建築年割引が契約全体の60.8%に適用されており、続いて耐震等級の3が4.6%といった状況でございまして、合計すると、全体で7割弱の契約に割引が適用されているということでございます。

次に4ページを御覧ください。このページは、当機構が算出する地震保険の基準料率について、満たすべき要件として法定されている保険料率の3原則をお示ししています。当機構が基準料率を算出しますと、金融庁に届出を行い、3原則に適合しているかどうかということの審査を受けます。3原則は、合理的かつ妥当なもので、不当に差別的でないという3つを指しますが、このうち合理的というのは、算出に用いるデータは客観性があるか、精度の高いものであるか、十分な量があるかといったようなことが求められておりまして、妥当性というのは、保険契約者にとって契約可能な水準であるとともに、当機構の会員である保険会社の業務の健全性を維持する水準であるかという点でございます。最後の不当に差別的でないという点についてですが、危険の区分や料率の水準を、区分間の実態的な危険の格差に基づいて適切に設定すること等を指しています。

これらは原則とされていますように、定量的な基準をもって示されているわけではありませんで、保険種類や補償内容、データの状況等、さまざまな要素を勘案しながらバランスを取って考えていくことが求められていると考えております。これらの原則は、基本料率の部分にも割引率の部分にも適用されるものでありますことから、この後のテーマである立地割引・立地割増にも関わってくるということで御説明させていただきました。

5ページを御覧ください。料率の算出フローの概要をお示ししたものでございます。ここでは、将来の保険金の支払の原資となります純保険料の部分の御説明をいたします。損害保険の純保険料は、一般的には保険金の支払実績を用いて算出することが基本でございますけれども、地震保険リスクは他の保険種類に比べて発生頻度が低く、かつ、発生した場合には巨大な損害をもたらすことがあるという特性があることから、短期的な収支で料率の算出を考えるということは適切とは言えません。そのため、図でお示ししたような被害予測シミュレーションを利用した算出を行っております。

ポイントのみ御説明しますと、①②のとおり、全国を250メートル四方のメッシュという単位に分割して、その単位ごとに地震本部作成の地震動予測地図の震源モデルに基づいて、揺れの大きさ等を計算しています。また、③のとおり、被害は揺れや液状化による損壊、地震火災による焼失、津波などの被害形態ごとに計算しています。その計算において、保険データだけでは不足する部分につきましては、フローの右側の囲みのとおり、住宅・土地統計調査等の一般統計も用いています。

次ページ以降は契約状況や支払実績など一般的な統計情報を掲載しておりますので、説明は省略させていただきます。

引き続きまして、立地割増・立地割引に係る専門家ヒアリングの概要の説明に移りたいと思います。

資料4の2ページを御覧ください。まず本件の経緯でございますけれども、2012年に開催された地震保険制度に関するプロジェクトチームの報告書におきまして、地震保険のリスクコントロール機能の向上を図るために、立地リスクが特に高いまたは低い地域を対象とした立地割増・立地割引の制度を導入することが考えられるとされた上で、ページ下段に記載のような3点の課題が指摘されております。このうち3点目の「リスク算出の信頼性を高めることができるか」という自然科学面の課題について、本件のヒアリング調査を行いました。

調査は3ページのとおり、立地リスクの評価指標に関するヒアリングで、2014年度から行い、2017年3月に報告書として公表しています。

4ページを御覧ください。調査の概要とそのまとめでございます。本調査は専門家の意見をとりまとめ、自然科学面から立地条件によるリスク区分の可否と、その区分方法について一定の結論を得ることを狙いとして、4つの被害形態、すなわち、揺れ、液状化、津波、地震火災について、14名の専門家にヒアリングを行いました。

ヒアリング事項は3点でございまして、現状において考えられる指標は何か、その指標を設定するに当たって利用可能なデータは何か、想定される問題点・課題ということでございます。

被害形態ごとの御説明は後のページで行いますけれども、結論を先に申しますと、調査の結果、ページ真ん中あたりの表にお示ししたような指標候補を抽出することができましたけれども、それらの指標に関して、専門家からメリット・デメリット両面の意見が出され、リスク区分を行うことの可否判断、すなわち契約者の納得感が得られるまでの信頼性があるかという点に対しては、集約することはできませんでした。

以下、主な意見について、メリット・デメリットに整理して御説明をいたします。

5ページ目を御覧ください。5ページから7ページは揺れ・液状化についてです。揺れ・液状化はともに地形分類が指標候補として挙げられました。ページ右上の図1には、地形分類をあらわす地図の例をお示ししています。地形と地盤構造、すなわち地盤のリスクである揺れやすさや液状化のしやすさには相関関係があるという点がメリットとして挙げられています。

デメリットとしては、精度の良い地形分類の地図が一部の地域でしか作成されていないという指摘がありました。また、地震保険の料率算出で利用している250メートルメッシュの地形分類は全国で作成されているわけですが、地形の変化の細かさに対して250メートルメッシュは粗すぎるという御意見がありました。

ページ右下の図2を御覧ください。図2は、図1と同じ場所の250メートルメッシュの地図ですが、図1の細かい地形の変化を250メートルメッシュで再現することは難しいということが見てとれます。

6ページを御覧ください。6ページと7ページは調査結果そのものではありませんけれども、補足としてお示ししている情報です。6ページは地形分類の地図の作成範囲を示しています。ヒアリングによって十分な精緻さがあるとされた地図の例として、ページ左側の土地条件図は国土地理院によるものです。右側の土地履歴調査は国交省によるものです。これらの作成範囲は御覧のとおり、大都市圏や沿岸部が中心となっています。

続いて7ページを御覧いただきますと、左右の地図は、6ページで御覧いただいた2つの地図を台地と低地とに大きく分けてお示ししたものですけれども、地形分類の境界位置には違いがあるということが見てとれます。

次に8ページでございますが、8ページから10ページは津波の指標候補について御説明をしております。津波については3つの指標候補が挙げられました。ページの下段の枠内のとおり、法律に基づいて都道府県は最大クラスの津波を想定したシミュレーション計算によって、津波浸水想定を公表することとされています。ページの右上に静岡県の例をお示ししています。さらに、この津波浸水想定ですけれども、浸水深が1センチメートル以上の地域を基本とする津波災害警戒区域、浸水深が2メートル以上の地域を基本とする津波災害特別警戒区域の2つを都道府県知事が指定できることとされています。

まず津波浸水想定に関する専門家の御意見ですけれども、この指標のメリットとしては、震源の場所や堤防の効果等、リスク評価に必要な影響が考慮されているということ。それから、法律に基づいて行政が行うものであって、納得感があるということが挙げられました。デメリットとしては、想定されている最大クラスの津波は発生確率が非常に小さいので、割増では契約者の納得感は低いおそれがあるということなどが挙げられています。

次に9ページを御覧ください。津波災害警戒区域と特別警戒区域について記載をしております。津波災害警戒区域の例をページ右上にお示ししています。この指標のメリットとしては、政策と一致するもので納得感があるという点が挙げられています。デメリットとしては、まだ区域指定されていない都道府県が多く、さらに全国で指定が必ず行われるかどうか分からないという意見もありました。2点目は、区域指定するかどうかについて人の判断が入る点をデメリットとする意見がございましたが、この意見は、この指標のメリットである政策との一致とは異なる評価となっております。

10ページを御覧ください。8ページから9ページで御紹介した3つの指標候補についての指定状況をお示ししている地図でございます。赤い部分が津波浸水想定を設定済みの道府県で、そのうち斜線の網かけが津波災害警戒区域が指定されている15道府県でございます。津波災害特別警戒区域が指定されているのは、静岡県の伊豆市のみとなっています。

11ページを御覧ください。最後は地震火災でございますけれども、地震時に著しく危険な密集市街地という指標が挙げられました。これは法律に基づくものではございませんけれども、延焼危険度や避難困難性が高くて、最低限の安全性を確保することは困難として、自治体が当該密集市街地としての位置づけの要否を判断して指定された場所ということになります。津波と同様、公式にリスクが高い地域として公表されている場所であるということをメリットとする意見がございました。

ただし、注書きの最後に記載しておりますが、国は密集市街地を2020年度には概ね解消する計画としておりまして、デメリットとしては不安定な指標であるとの意見がございました。もう1つのデメリットとしては、指定及び公表の判断が自治体に委ねられているという行政判断に関して否定的に捉える意見もございました。

最後のページですが、12ページを御覧ください。指標に関する専門家意見は以上なのですが、政策的観点からの議論の参考となると思われる意見についても付記いたしました。

まず、これまで御紹介した指標は、全国でデータが揃わないことがデメリットとして挙げられていましたが、それに対しましては、減災に取り組むためにデータのある場所、重要な場所から実施していくのが良いという御意見もありました。また、危険な場所でもそれに応じた対策をきちんとしていれば、その対策を考慮した仕組みとすべきであるという御意見がありました。立地リスクに関しては、液状化の対策工事や津波に対する嵩上げ工事などの評価基準が見当たらないことから、難しい課題ではありますが、これまでの割引制度では、例えば古い建物であっても耐震補強して、耐震診断を受けて、良好な結果が得られれば割引を適用するというような仕組みを設けております。

本件の私からの御説明は以上でございます。よろしくお願いいたします。

○佐藤座長ありがとうございました。

では、議論に先立って、事務局から「本日ご議論いただきたい事項」について補足説明を資料6に沿ってお願いいたします。

○井口信用機構課長資料6と書かれております、「1.保険料率における立地割増・立地割引について」です。

「「地震保険制度に関するプロジェクトチーム(平成24年)」における課題設定を受けた損害保険料率算出機構による専門家へのヒアリング調査結果」、今、御報告いただいたものですが、これを踏まえて、以下について御意見を伺いたいということです。

最初のポツ、「・被害形態(地盤特性による揺れ、液状化、津波、火災)に応じた料率格差の検討にあたり、現時点において『保険契約者の納得感が得られるまでにリスク算出の信頼性を高めることができる』と考えられる指標候補として適切なものはあるか。」

もう1点ですが、「・現行の保険料率算定にあたっても」、先ほど機構からも御紹介いただきましたが、「形態別の被害率が加味されているなかで、例えば、特定の被害形態を先行して料率に反映させることについてどう考えるか」を念頭に置きながら御議論いただきますと、大変参考になります。

下に参考として、プロジェクトチームのフォローアップ会合の議論のとりまとめを載せております。

○佐藤座長ありがとうございました。

では、ここからはディスカッションということになりますけれども、損害保険料率算出機構さんからの説明につきまして御議論をよろしくお願いいたします。どちらからでも構いませんので、いかがでしょうか。この件はたしか目黒先生とか堀田先生から、かなりいろいろと御意見があったように覚えていますけれども、いかがですか。

○目黒委員今、御紹介いただきましたように、地震保険はリスクファイナンスにあるレベルは貢献しているわけですけれども、リスクコントロールに貢献してこそ、将来の我が国全体のリスクを減らし、被害が小さくなり、保険金も減るという方向に持っていくべきであって、その点からすると、データが一律に全国に整備されていないから新しい制度がスタートできないということではなくて、あるところから適切に評価した上で進めるということはできるし、それがないところの人たちに迷惑をかけるわけではないのですね。ですから、あるところの人たちから精査して、それがないところにもデータを整備しましょうという方向へのインセンティブになれば、さらに良いのではないかと私自身は思っています。

ですので、自助努力が報われるという意味では、自分で対処をして、地盤にしろ、建物を良くするということが評価されるのと同じように、土地利用を誘導して、よりリスクの低いところに皆さんが住んでいただけるようにして、全体としてのリスクを減らすということをぜひお考えいただきたいなと思う次第です。防災における自助・共助・公助で、少子高齢、人口減少とか財政的な制約を考えると、公助による防災を従来のように進めていくことは確実にできないことが分かっているので、その不足分は自助と共助で補うしかないわけで、自助と共助の方によりインセンティブを持っていただいて、自律的になるべく被害が減る方向の努力を日本全体で生むという背景の中に、地震保険がある部分貢献しているというように持っていくのがあるべき姿ではないかなと思います。

○佐藤座長私も12ページの最後のリスクと共存するための保険という選択肢の話がちょっと気になったのですけれども、別に保険は自助を否定しているわけではなくて、かつ、自助は保険を否定するわけではないので、この両者は整合的なので、保険に入っているから何もしなくて良いわけではないし、このあたり、リスクコントロールとリスクシェアの関係は補完的だというところは少し御理解いただいた方が良いのかなと思いました。

あと、堀田先生からもし何かあれば、いかがですか。

○堀田委員専門家の先生方の御意見をまとめられて、非常に頭の整理になりました。私の印象なのですが、「揺れ」の問題と「火災」の問題と「津波」の問題、その3つの性質は、それぞれ少しずつ違うのではないかと思います。例えば「揺れ」、それによる液状化問題ですよね、あるいは「火災」、これらはコントローラブルなリスクなのかなと思います。耐震の対応とか火災に対する備えについて自治体や国のサポートを得ながら、これから改善していくことが可能ではないでしょうか。
 これに対して、津波に関しては、想定を超えるあるいは想定しきれないものが含まれているのではないかなという気がします。津波が起こる地域というのはある程度想定できるけれども、対応が非常に難しい要素を含んでいると思います。津波だってある程度対応可能なリスクだという意見もあるかもしれませんが、「揺れ」と「火災」と「津波」の3つを分けて考えてみると、前半の2つはコントローラブルなリスクですが、津波に関してはアンコントローラブルなリスクだと思います。

そうすると、コントローラブルであれば、自助努力による対応がある程度可能であるので、それを保険料に反映させる場合には、自助努力に対する報奨、つまり保険料の割引のような形でインセンティブをもたらすということが適当のような気がします。一方、津波に関してはアンコントローラブルなので、公平性の観点から、保険料の割増のような形で最初からリスクを反映させるべきだろうと考えます。つまり、地震災害の原因によって、割引で対応する部分と、割増で対応する部分を分けるという考え方があると思います。

○藤田委員あまり考え方がまとまっていない段階で申し上げるのもどうかと思うのと、ここで書かれている質問に答える形になっていないので恐縮なのですが、保険契約者の納得感が得られるまでにリスク算出の信頼性を高めることができるかと書かれています。しかし、そもそもリスク算出の信頼性が高まれば保険契約者は納得してくれるかということは別途考えなければいけないのだと思います。いくら信頼できる数字があったとしても、それで区分することが当然には納得してもらえないというのが、ここの問題の本質の気もします。また、これは地震保険に限らずあらゆる保険について言えることですが、たとえリスクと相関性のある指標であっても、ある種の指標は別の理由から使ってはいけないとされるものはあるのですね。それは国によって違うのですけれども、例えば人種というのは使ってはいけないとか、いろいろあります。

ここで問題となっているのはそういう問題ではないのですが、連帯と保険の関係、その間の政策的な割振りということに今ここで手をつけようとしている。その問題は、信頼性がどれだけあるかということとは次元の違う問題なので、そこについての何らかの考え方の整理をしておかないと、最終的には納得してもらえない可能性があることには留意しておいた方が良いと思います。

あまり抽象的に言うと分かりにくいので、もう少し具体的に申し上げますと、従来はどこに住むかということはコントロールできない、住んでいる土地の問題は基本的にはコントロールできないものという扱いで、だから大ざっぱな区分の中で、その地域では連帯してもらっていた。それに対して、耐震性みたいなものは自分で努力してリスクを減らしているのだからカウントしましょうという区別をしていた。耐震性と立地というのは、そういう大ざっぱな切分けをしていたのですね。そこをちょっと変えて、立地によるリスクであっても何らかの形で区分に取り入れたら良いというのは、従来の基本的な考え方を変えていることにはなるので、なぜ今、それを変えようとしているのかという説明がないといけないし、その説明次第では、取り入れて良い指標といけない指標がひょっとしたら出てくるかもしれない。

何が変わったからこのような考え方の変化がもたらされたのか、私はよく分かりませんが、幾つか考えられるのは、昔はそこで生まれたということはコントロールできないのだと言っていたかもしれないけれども、モビリティが非常に高まるとそうではなくなってくるということかもしれない。あるいは、耐震技術が非常に発展すると、立地のリスクだってある程度は対処できるものとできないものが出てくるということもあるのかもしれない。さらには、全く別の観点から、そもそも国民の中でリスクに対する意識が非常に変わってきて、自分の土地がどれだけ危ないかということに非常にセンシティブになってきている。そうなればなるほど、危ない地域の人に危なくない地域の人が補助を出すことに対して共感が得られなくなってくるのかもしれない。これらの変化について全部が全部尊重されるべきかは別問題なのですが、いろいろな事情が見直しの背後にあり得ると思うのですね。

例えばモビリティのような観点を多少でも考えるというのであれば、密集地か否かということを、指標に入れることは割と抵抗は少ないはずです。また、コントロールしやすい云々ということだったら、液状化の場合は耐震構造のあるものにすれば防げるということで、もし信頼のあるデータがあるのなら入れましょうというのは繋がってくる。

ただ繰り返しになりますが、なぜ従来の基本的な考え方を変えようとしているか。最後、科学的に信頼できるかはまた別の次元の問題としてありますけれども、その前提としての考え方の整理はあまり書かれていないのですね。リスクコントロール機能を高めようと思えば、信頼できるデータがあり費用が見合う限り、リスクはできるだけ区分した方が良いのですけれども、従来はあえてそうしてこなかった。それを変えるべきか否かという判断の論拠が問題なので、リスク算出の信頼性が高まれば納得が得られるとは直ちに結びつかないことについて、もうちょっと神経質に考えた方が良いような気がします。

○佐藤座長今の御指摘は、多分、堀田先生のお話にも通じるもので、コントロールできるものとコントロールできないものがあって、津波はコントロールが難しいだろう。その他の火災とか地形に関しては、住む場所を選べば良いのだからと。そういう考え方でのコントロールも可能かもしれない。コントロールできるものとできないものの線区分をどうするかという問題。それから、もちろんエビデンスだけではなくて、倫理に関わる話もありますので。

これは地震保険に限らないのですけれども、今、政府としては、危ないところから人を離していくというとあれですが、例えばコンパクトシティとかの関係で、居住誘導地域というものがあるはずなのですが、ハザードマップに載っているエリアは居住誘導地域から外すというような立地適正化の議論もあるので、地震保険の枠を超えて、人口も減るので、危ないところから危なくないところへの人の移動を促す、立地の適正化という議論は大きな流れとしてはあるので、それに乗っかっているのかなという気はするのですけれども。

○藤田委員そういう大きな流れにどこまで乗っかって良いかどうかを伺っているのです。かつては、どこに住むかは選べないからしないというのがかなり強い前提だったと思うのだけれども、そういう前提は取らないと言ってしまい、危ないところから出て行けばよいという議論をしてしまうと、ほとんどのリスクは変えられることになってしまうので、使えない指標はほとんどなくなってしまうのですね。あとは科学的にきちんと根拠のあるものであるか否かというだけになる。だから、それを入れて良いかどうかということは、データの信頼性だけではなくて、その大前提の変更をとるべきか自体を決めなくてはならない。私は立地に関係する指標ももっと取り入れて良いという立場なのですけれども、その立場をとる場合も、どうすれば納得感を得てもらえるかということは、相当慎重に理屈も考えないといけないような気もしています。

○佐藤座長ありがとうございます。他、いかがでしょうか。

○纐纈委員私は趣旨は良い方向だなと思うのですけれども、いざ実現するとなると、今までの割引制度に関しては、資料3の3ページに書いてありますが、結局、加入時の審査をどうやるかというと、加入申請者から確認書類が出されてきて、それを確認するだけという作業になるわけですが、立地割引等に関しては、それでは決して済まない。かなり大きなコンピューターシステムを作って、それぞれ審査される方が、その上であなたのお宅はここだからこうだということをしなければいけないことになると思いますので、事務費がかなり増加する。少なくともものすごい投資が必要になると思うわけで、これを実現するためには、関係ないところに影響を及ぼさないということは決してなくて、事務費増大に関わる保険料の増加がかなり必要になってくるのではないかと思います。ですので、現段階ではなかなか難しいかなというのが私の意見です。

○佐藤座長事務コストとか事務負担というのは、損害保険料率算出機構さん的にはどのように考えていらっしゃるのですか。

○市川常務理事我々の方では自然科学面からの課題ということで、信頼性という面からの検討、ヒアリング調査をしているものですので、これ以外に纐纈先生が仰るような、保険引受け実務面からそれがフィージブルかどうかという問題はその先に別途あるとは思いますが、我々の調査ではそこまでは触れていないということです。

○佐藤座長地形の方はちょっと分からないのですけれども、津波であれば、先ほど指摘が出ていた津波災害特別警戒区域というのを指定すれば、ここはそのエリアだということは分かる。密集地域も危険なエリアというのは指定されているので、ある意味、既存の計画に乗っかってしまえば、ここに住んでいるか住んでいないかは分かるのですけれども、さらにそれを精緻化させようと、独自の基準を入れようとしてしまうと、とてつもなく大変ということになると思います。

○纐纈委員地形も同じだと思いますけれども、どの区分にあなたのお宅が入っているかという、何かコンピューターシステムを作る必要があるわけですよね。

○佐藤座長立地情報が必要になります。

○清水委員私は家計にとって地震保険制度がどうあるべきかを申し上げる立場ですが、地震保険制度のリスクコントロール機能は大事だと思います。保険料が高いということは、危ない場所であるということであり、その認識を高めていただくことは重要です。リスクを保険料率に反映させるのも保険であれば当然のことです。一方で、先ほど藤田委員からもお話がありましたように、私たち生活者はいろいろな関係の中で生きていますので、住むところを選べるようで実はそれほど選べないのが現実です。一定の制約の中で生きざるを得ないなかでも、できるだけ安全なところに住むのは基本ですが、個人の努力でそれを十分に実現するのは難しいのが現状ではないでしょうか。

地震保険制度には、割引制度はあっても割増はありません。現状で割増を提示するのは生活者にとっては大きな抵抗感がありそうです。多くの生活者は、地震保険料を「高い」と捉えています。ただ、これは表面的な捉え方で、深刻な影響を及ぼす地震リスクについての認識がなされれば、ただ「高い」との捉え方ではなく、リスクに応じたコストとして捉え直していただくことはできるでしょう。非営利ですから構造的にも安いわけで、私自身、高いと考えてはおりません。こうしたことを伝えていくことは非常に重要ですが、現状で「高い」と感じている方が多数派のなか、さらなる「割増」は受け入れがたいと捉えられるかもしれません。

リスクを料率に反映させるのは保険ですから当然ですが、「保険料率の3つの原則」を踏まえ、「立地リスク」の根拠を明確に生活者に説明ができることが必要です。

また地震保険制度の、「どんな人も排除しない」という点は重要です。民間保険はリスクが高すぎれば入れません。民間保険会社が独自で運営する地震補償は、地震後に引受制限が行われることがありますが、地震保険ではそういったことはありません。危険を感じたときに誰でも入れる、怖いと思ったときに備えられることが重要ですが、保険料があまりに高ければ、そのハードルを上げてしまうことになりかねません。元から住んでおり、建替えも引越しもできない状況で、生活必需品である地震保険の保険料がぐっと上がるのは生活者にとって厳しいものがあります。

○阿部委員同じく消費者目線でということでお話をさせていただきたいと思います。消費者団体の皆様とか、講座の中でどのように皆さんが思っているかをお伺いしたところをまずお話ししたいと思います。

その前に、消費者はたくさん勉強することがございまして、経済的な被害や危険の問題、見守りの問題という中で、私も長らくこういう消費者啓発をやっていますけれども、生命保険についての勉強会はあるのですが、地震保険について勉強会はほとんどないのが現状です。今回、地震保険についての勉強も消費者にやっていかなければと思っております。これだけ地震の報道がなされている割には、皆さんがあまり興味を持っていないというか、知らない。「こういうシステムになっていますけれども、御存知ですか」と言うと、「地震保険はもちろん知っている」、「掛けている」という方もいらっしゃいますが、先ほどお話があったように、「高いから掛けない」、「わざわざ外しました」というような方もいます。その理由は「どうせそんなたくさん保険金は出ないでしょ」というような、保険だけの意味合いで捉えているところがあって、まずそこがすごく感じたところでございます。

料率等々についても分からないという意見があります。全国に行って話を聞いていますと、「何故自分の県で、こういう差があるのでしょう」という質問があったり、「料率の高いところに地震が起きているわけではないのですね」との御意見があったりする。今回、私もいろいろな資料を見させていただき、また、勉強もさせていただいたのですけれども、被害部分と特性、それらのデータがまだきちんとされていなく、精査していく段階で、限界もまだあるのかもしれませんが、この現状において、今進めていきましょうとなってくると、消費者、国民を納得させていくのは大変難しいのかなということではあります。専門家にはすごくよく分かるのだけれども、一般の消費者にはちょっと難しいですねとなってくると、誰にでも分かりやすいということにはなっていかないのではないかなと思っております。

私は約20年間、密集地帯と言われるところで消費者相談をやっておりまして、高齢者の方々が密集して住んでいる。その中で、経済的にも困難で、細い路地で「消防車、入ってくるのかしらね」なんていうようなことを言いながらも、引っ越すことはできないというような状態において、居住地を変えていきましょうということまではいかないにしても、自分は大変危険なところに住んでいるのだというところをしっかり伝えていく。それに対する自助ができるのであれば、やった人たちに対しては割引をしていくというような、分かりやすいことをしていけば納得感があるのかなというところは思っております。

ちょっと話はずれてしまうかもしれませんが、私どもは今SNS相談というのを試験的にやっておりまして、皆さん、スマホでいろいろなものを調べるということが多いのですね。スマホで簡単に調べられると便利だという意見があります。先ほど技術的なことを仰られたので、先に信頼のおけるデータがありますよというところからやっていきましょうというのであれば、アイコンをつくって、今、損害保険料率算出機構さんが持っているようなデータをそこに全部落とし込んで、自分の地域はこのように安全なことをやっている、自分のところは他のところと比べて良いとか悪いとかということがすぐに分かるようなものがあり、そして、例えば地震の報道がなされたときに、そういったアイコンで自分の地域を調べてくださいと、何故そう思ったかというと、皆さん、災害のときに熱心にハザードマップなど確認なさっておられたのですが、探しにくいとの意見もあり、簡単に消費者が分かるようなデータを渡しておくというか、見られるようにしておく。それを今度、地震保険の方に繋げていければ、これによって作っているのですよということができるのではないかなということで、先ほどのコンピューターということと話がずれているかもしれませんけれども、とにかく分かりやすい指標を提供していただければ納得感はあるのではないかということを思っております。

○目黒委員関連して申し上げますと、消費者の方々が内容を御理解いただくのはすごく重要なことだと思うのですね。皆さんが入りやすくなるための環境というものは当然重要なのですけれども、本当に皆さんがリスクを理解されて、この保険に入るかどうかということが私はすごく心配。つまり、建物の耐震性による被害関数というのがあるのですね。震度幾つのときに、どういう建物だったらどれくらい壊れるか、明確なカーブがあるわけですよ。その比と、ここで出されているような料率が本当にプロポーショナルな関係にあるかどうかとか、地盤条件が良い悪いで増幅特性で揺れが倍半分変わるだとか、津波の危険性があるところと、内陸5キロ、10キロ入ったら、完全に津波の危険性がない場所だとか、そういうものを組み合わせていくと、リスクが100倍くらい違うことは平気であるのですよ。

そういう人たちがここで一緒にあまり変わらないお金を払って、お互い様だからというように本当に納得してやっていただけるのであれば、僕はそれはそれで良いと思うのだけれども、このままの状態で、皆さんのリスク認知がどんどん高まっていくと、努力している人や、リスクの低い人たちが、ここにいたら自分は全然得をしないから、外に出て、リスクの低い人たちだけでの新しい互助システムを作りましょうというようなことが平気で成立してしまうような状況なのですよ。そうすると、本当に弱い人たちをどうするのですかという話になってきてしまうのですね。その辺はきちんとトータルとして理解して議論していかないと、上手くいかないのではないかなと思います。

○佐藤座長耐震性の高い住宅に住んでいる方も含めてですが、リスクの低い方々をどうやって保険に取り込んでいくか、あるいは保険に残ってもらうかという視点も必要なので、単にリスクの高い人たちをどうしようかという話だけではなく、低い人たちに対する目配りがないと、いわゆる逆選択の問題が起きてきますので、そこは留意が必要かなと思いました。

○荒川委員会計士なので専門性はないのですけれども、保険料の設定の仕方ということで、リスクコントロール機能に割と重点を置いて皆さんからの御意見があったと思うのですが、保険料の一般的な話として、リスクの高い人はそれに応じた形で保険料を高く負担する。ただ、本当に緻密にやり出すと、リスクの高い人はとんでもない保険料になって、保険に入らない。低い人も入らないということになってしまうので、ある程度粗いメッシュで保険料を取るようにしていかないといけないので、地震保険の保険料の取り方として、本当に緻密にリスクを評価した上でやり過ぎると、加入者が本当に加入するのかという問題がある。

一方でリスクコントロール機能に重点を置いていくと、地震保険制度で、誰がどこに住むかということにそんなに強く保険料だけで影響力を持ち切れるのかというと、どちらかというと都市計画とか、そっちの直接的な方向性の方が、先ほど纐纈先生も仰ったように、保険料の方で緻密にやったときのコストというのですか、その負担ということも考えると、どこまでやるべきなのかということもあるかと思います。

あと、立地条件については、科学的にということで分かっているところは分かっているけれども、分からないけれどもリスクの高いところもありましたねということで、先ほどの資料の中の等地区分の1という、リスクがあまり高くない扱いのところでは、北海道だったり、熊本だったり、近年、大きな地震があった地域もあるかと思います。公平性という観点から、立地割増などのような場合には、分からないから安く済んでいる人がいるということだと、そんなに大きな幅がなければ皆さん納得するのでしょうけれども、あまりやり過ぎると、その辺の不公平性がクローズアップされてしまうのかなと思いました。

○阿部委員細かくというのは、こういうこともあるのではないかということで、私の意見としたら、大きくというか、なるべくそんなに差のないところでやった方がいいのではないか。その中で各人の状況によって少しインセンティブではないですけれども、そういったものがつけられると良いかもしれない。それに関しては、例えば見るものがあるとか、データが分かるようにしておくということも1つの手段かなというところです。

○佐藤座長これまでの議論の流れとしましては、等地区分が4だったのを3にしたように、日本に住んでいればどこでも地震が起きるでしょうという、ある意味、立地についてはかなり簡素化を目指していて、他方で、建物の構造についてはあなたの努力でしょうというところでめりはりをつける。その中においても、立地についてはピンポイントになってしまいますけれども、さすがにここは危ないよねという位置づけで立地割増は議論ができるので、日本中、あちらこちら、津々浦々、立地に応じてきめ細かく保険料を設定するという意図は元々ないと御理解ください。これまでの流れがそうだったので。

○中埜委員今まで既にいろいろ御意見が出ておりますけれども、納得感ということと、精度、プレシジョンの関係がどうであるのか。私はどちらかというと技術分野の方にいるものですから、技術的にどれくらい精度を高められるであろうかということは、今すぐにできるものと、大分時間がかかるというもののタイムラグが出てくるだろうなというものがあると思います。精度よく算出できれば、技術分野から見ると精度は上がったねと言えるのだけれども、一方、先ほどから議論が出ている納得感という観点から見たときに、精度よくやればやるほど、それに見合っただけの納得感を付与することが本当に簡単にできるだろうかということは、そんなに簡単ではないのではないかという気がいたします。それから、細かくやれば良いかと言われると、やればやるほど不整合が出てきて、逆に納得感がなくなってしまうようなことも起こってくるであろうということもある。

それから、個別の努力というのは、例えば耐震性能はわりかし大ざっぱに等級1、2、3とか見ているからできるのかもしれませんけれども、津波になったらどうなのか。津波がやってくるという地域に当たっているけれども、私の建物はそれに対して十分安全な、ある特別な仕様で作ってありますなんて言われ始めてしまうと、どこまで面倒を見てあげるかといったいろいろ難しい話が出てくると思いますので、どのあたりの精度というか、粗さ加減、あるいは細かさ加減で良しとするかということは、最初にある程度考えておかないと、細かくいきましょうというところに突き進んでいってしまうと、後で「あらら」ということが起きないかなと。手前のところで、将来どうあるべきかということはもちろん議論しておくべきだと思いますが、将来どうあるべきかということを考えつつ、現状ではどれくらいの粗さ、細かさが良いかというものを少し議論しておくことが大事かなと思いました。

○佐藤座長保険なので、分かりやすさも大事ですし、納得感も大事なので、単に精密であるだけではなくて簡素であることは、事務負担の観点からも重要だと思います。

○荒川委員私の発言については座長が御説明いただいたことで、日本中で立地割増・割引というよりは、もっと絞ってみたいな話だと、誰が見てもここに住む以上は覚悟してくださいねみたいな地域がもしあるのであれば、リスクコントロールという面で、それが適用される地域を絞って、そこにだけ割増を適用するとか。私はそういう地域があるのかどうか存じませんけれども、政策的にそこに住むのはお勧めできないみたいなことで割増制度を適用するとか、場所を絞ってそういう仕組みを取り入れるということであれば、リスクコントロール機能も意味があることでしょうし、コスト的にも耐え得るし、納得感も得られるということになるのかなと説明を伺って思いました。

○堀田委員同じことを言うかもしれませんけれども、先ほどの御説明の中にあったように、「揺れ」による液状化の問題とか「火災」の問題は、個別の対応がある程度可能なリスクではないかという判断のもとで、もし入れるのであれば割引を中心に対応する、自助努力を保険料に反映させるという考え方を取り入れるべきなのだろうと思います。これに対して津波に関しては、個別に対策を講じてもあまり効果がないので、むしろこれは国や自治体がどこまで津波対策を取るかにもよりますが、危険度に関する情報も提供されているので、それに応じた保険料の割増を取り入れることが公平なのだと考えます。ただし、割増を適用する場合でも、社会的影響を勘案すると、かなり限定的とならざるを得ない、それほど大規模なものを入れることもできないだろうと思います。立地割増・立地割引を導入する場合には、国民の理解を得るために、何を根拠に割増・割引をするのかを明確にしておく必要があります。

○佐藤座長確かに、ある意味、限定的に適用するということは1つあるかなと思います。

○目黒委員今、堀田先生が御指摘されましたけれども、液状化に関してもいろいろな工法が出ていて、そんなに難しくはないのですが、個人の努力で何とかなるような事例も出ています。ただ、火災に関しては、火元にならない努力は個人である程度できますけれども、他からの火災が自分のところに延焼しない努力は結構難しい部分であるので、そういう観点からすると、個としての評価が非常にしにくいリスクだと思います。エリアとかの単位にどうしてもなってしまうと思いますね。一蓮托生のエリアが出てきてしまいますので。

○佐藤座長今の全体的な最大公約数を取りますと、この段階におきまして、立地割増・割引を大々的に適用するのは、技術的にも、加入者の納得を得るという観点からも難しいかなという一方で、地形、液状化の問題、津波の問題、火災の問題と分けたときに、もしかしたら液状化のところは何かできることはあるかもしれないというところかなと思います。津波については議論が分かれるかもしれないですね。そのあたりがこの段階での整理かなと思います。

他、大丈夫ですかね。よろしいですか。

あと、どうでも良いのですけれども、私、行政事業レビューをやっていたので、11ページで火災の著しく危険な密集地域を2020年度までにほぼ解消というけれども、これは絶対無理で、たしか大阪と東京がほとんどなのですよね。ほとんど計画が進んでいないので、少なくともこれは無理。

あと、国交省の政策レビューもやっているのですけれども、本来、国としては津波災害警戒区域は設定してほしいはずなので、やっていない自治体がいるということは、本当はそれ自体が問題なのですけどね。それはただの愚痴です。

では、ちょうど時間の区切りも良いので、次のお話に入りたいと思います。日本損害保険協会さんから現行の割引制度について一言、皆様方にお伝えしたいことがあるということなので、よろしくお願いいたします。

○飯豊地震保険特別委員会委員長協会の方から一言。今日、立地に関しての突っ込んだ御意見をいただいたのですけれども、そもそも論の現状の制度として、資料3に、4等地から3等地になった等地と、お客様が自助努力でやる割引のうち、建築の年によって、もしくは耐震の性能評価によって、現行の制度はこの2軸で成り立っているのですね。今のところ、いつ建てたかとか、どういう性能かという立証責任をお客様である消費者の方に求めている現状なのですね。したがいまして、資料3にありますように、建築年割引というのは、昭和56年を境に、1981年6月以降、新築した建物だったら誰でも割引が受けられる制度であるにも関わらず、確認資料はお客様である消費者から求めています。それが登記簿謄本だったり建築確認書だったりするのですが、実際、お客様が資料を出したところ、例えば宅建主任者の判子が重要事項説明書にないから、これは確認資料として不適ですとか、確認資料に建築年がはっきり出ていません、新築なのか増築なのか分かりませんので、再度改めて資料を取ってくださいとか、こういうやりとりが募集の現場では結構なされていまして、それが苦情に発展するケースも多々ございます。

そもそも建築年割引自体、国交省の2013年時点での調査においては、もう昭和57年以降の建物の耐震化率は82%までいっています。今年発表される直近のデータで言えば、それ以上の割合になりますので、一定、建築年割引の役割というものは果たしてきている中において、立地の御議論の中で新たな割引制度を作るという段階においては、募集のやりとりの中で、お客様に負荷をかけることなくできるような観点で御議論していただきたいと思いますし、私どももその点に関しましては、どうあるべきかについて、今日的な事情も含めて、当局と検討していきたいと考えておる次第でございます。今日の御議論とは直接関係ないのですけれども、一言、付言させていただきます。

○佐藤座長たしか建築年割引については、前も1回議論があって、その役割を終えたのではないかと。保険料率にめりはりをつけるとしたときに、建築年数についてはもういいのではないのという議論がある一方で、もう1つ、デジタルガバメント的な思考になりますけれども、そもそも確認書類が地域によってばらつきがあったり、定義が曖昧だったり、ローカルルールがはびこっていたり、これは消費者の利便性の観点からは損なわれるので、何らかの形でデジタル化とか標準化を進める必要があるのではないか。こういう二極の議論があるのかなと思います。それはまた今後、もしかしたらこの研究会におきまして皆様方にお諮りするかもしれませんということでしょうかね。

続きまして、損害保険料率算出機構さんより、近年の地震における保険金の支払状況についての御説明を資料5に沿ってお願いいたします。

○市川常務理事資料5「耐震性や構造による建物と家財の支払状況について」の2ページ目を御覧ください。前回の第2回研究会で損保協会さんから、2018年6月に発生した大阪府北部を震源とする地震の支払件数について報告がされまして、その議論のとりまとめにおいて、今後も損害状況の分析やデータの収集を進め、今後の制度検討に繋げていくことを期待したいとされています。

当機構には、当機構の会員である保険会社から毎月、契約データ、支払データを報告いただいておりますので、これらを使用して割引等の耐震性や建物の構造といった切り口で、支払状況を御説明したいという趣旨でございます。

ページ上段は、前回の研究会における損保協会さんの資料の抜粋ということになりますが、上段の支払件数部分で、合計で15万件を超える支払の内訳を見ますと、建物で11万4,591件、家財は4万1,865件と、3倍近い差があるのに対しまして、そのうちの半損の部分を見ますと逆転している。これは2017年以降に新たな区分として設けられた、両脇の大半損、小半損を見ても同様になっているということがございました。

また、ページ下段で2017年以降の新区分である大半損、小半損の比率を見ますと、建物では5.9%が大半損なのに対して、家財では6.6%と若干大きくなっているということもございました。

次ページ以降では、当機構のデータを用いた集計結果についてお示しをしようと思います。3ページを御覧ください。このページでは、大阪府北部を震源とする地震の大阪府の支払件数に加えまして、その下に契約件数についてもお示しをしております。契約件数を用いて、どのくらいの契約からどのくらいの支払が生じたかという支払割合という指標で御説明をしていきたいと思いますので、今回の資料では、契約の範囲を分かりやすさの観点から大阪府に限定して集計をしております。

本ページは、機構に報告された大阪府北部を震源とする地震のデータを集計したもので、このため、ページ上段の支払件数は先ほど御覧いただいた損保協会さんの資料より若干少なくなっておりますが、全体の傾向に違いはないと考えております。

ページ下段は、地震発生直前であります2018年5月末時点の大阪府の契約状況ということになります。右下の合計欄を御覧いただきますと、大阪府全体で170万件以上の契約がありますが、通常、地震保険の契約では、建物や家財のみ契約する方もいらっしゃいますし、建物と家財を同時に契約される場合もあるという、さまざまな契約形態があるわけですが、ここでは建物・家財別に集計するために、それぞればらしまして、建物1件、家財1件ごとにカウントしているということですので、170万件というのが契約者数や世帯数を表しているわけではない点は御留意いただきたいと思います。

そのような集計をした結果でありますページ下段の契約件数の表からは、2点ほど御注目いただきたいと思いますが、1点目は、建物・家財の合計契約件数は、建物が99万8,924件で、家財が76万9,350件ということでございますので、決して支払件数ほど大きな差がないということ。

2点目は、割引別の集計を見てみますと、左から3列目の割引なしと、その隣の4列目の建築年割引で、全体の9割以上を占めておりまして、その他の割引はそれほど多くないという点でございます。

続いて4ページを御覧いただきたいと思うのですが、支払状況を構造・割引ごとに分けまして、さらに建物・家財別に集計した結果ということになります。グラフの見方ですけれども、ページ左が耐火建築物等のイ構造、右側がそれ以外のロ構造で、それぞれ建物・家財別、割引有無、種類別に分けて、支払割合を一部損から全損までの区分けでお示しをしたものでございます。縦軸の支払割合ですけれども、それぞれの区分ごとに契約全体を100%とした場合、どのくらいの割合で支払が発生したかということを表しています。例えば一番左側のイ構造の建物の割引なしの場合を例にとると、その区分に該当する契約全体を100%とした場合、10%強に支払が生じたということを示しております。

このグラフで示されていることの特徴というのは、ページの下の①から④に記載したとおりなのですけれども、全体として申し上げれば、左側のイ構造、右側のロ構造とも、建物の支払割合が全般に高い。しかし、その大半は一部損である。一方の家財を見ると、全体的な支払割合は建物に比べますと低いけれども、小半損以上が割引の種類に関わらず生じているといったようなことが言えると思います。

ただし、割引別に見ると、イ構造、ロ構造とも耐震等級2の支払割合が耐震等級1と比べて良いとは言えないとか、ロ構造の家財の免震建築物の支払を見ると半損が大半であるとか、違和感のある部分が何点かはあります。これは、矢印の下に記載しておりますけれども、契約件数が少ないとか、地域的な偏りの影響もあるかと思いますので、次のページでは、耐震性の切り口として、建物の建築年を利用して集計した結果をお示ししています。

5ページを御覧ください。建物、また家財の場合はそれを収容する建物の建築年を5年ごとに区切って集計したものです。ページ下段のグラフでは、特に建築年による建物・家財の支払割合と、その内訳の違いが御確認いただけると思います。こういった傾向は地震ごとに差異があると考えられることから、熊本地震についても同様の集計を行いました。

それが6ページでございます。前ページまでと同様に、熊本地震の支払状況を熊本県に限定して集計した結果をお示ししております。6ページ下段のグラフを御覧いただきますと、大阪府北部を震源とする地震は、最大震度が6弱でございましたけれども、熊本地震は最大震度が7で、しかもそれが2回観測されたという地震のために、支払割合は大阪に比べて全体にかなり高いわけですけれども、大阪府北部を震源とする地震で見た半損以上の建物・家財別の特徴は、熊本地震でも同様に確認できると思います。

7ページを御覧ください。ここまでは建物・家財の支払を単純に集計したものでございましたけれども、例えば賃貸住宅にお住まいの方のように、家財だけ契約するという方もいますし、これまで見てきた建物と家財の被害の違いについては、家財を収容する建物の違いとか、賃貸住宅の多い地域などの影響ということも出ている可能性がありますので、本ページでは、建物と家財を同時に契約している契約に限定して、建物と家財がそれぞれどのように損害の認定を受けたかということを集計いたしました。これによって、ある大きさの揺れに見舞われた際に、建物と、それに収容されている家財の被害を直接比較することができるのではないかと考えたわけでございます。対象は大阪府北部を震源とする地震の大阪府と、熊本地震の熊本県ということにしております。

グラフの見方ですが、ページの右側中段のところに図をお示ししているとおり、グラフの左側に建物の認定結果が、無被害から始まって一部損からずっと全損までの順に並んでいまして、グラフの右側の方には家財が同様に並んでいます。図の縦方向の通した線の位置に棒グラフがあれば、建物と家財が同じ損害区分であったということを示しておりまして、この線よりも左側に棒グラフがあれば、家財の被害の方が大きかった。右側にあれば、反対に建物の被害の方が大きかったということを示しています。

このページの下段の②に記載していますとおり、常に家財の被害の方が大きいなどの一定の傾向というものはありませんでした。これまでのページで御覧いただいたとおり、全体としては建物の方が支払割合は高いものの、損害の区分によっては家財の方が半損となることが多いという結果と整合しているかと思います。

最後に8ページ、まとめでございますけれども、ページ上段に記載しましたように、まだこれでは原因の分析が十分とは言えないことから、囲みにありますとおり、今後、震度別であるとか居住階数別など、さらなるデータの分析と研究を進めていきたいと考えております。

機構からの報告は以上となります。よろしくお願いします。

○佐藤座長ありがとうございました。

続きまして、事務局から議論いただきたい事項について、再び資料6に沿って補足説明をお願いします。

○井口信用機構課長資料6の「2.近年の地震における保険金の支払状況について」です。

本日、御報告いただきましたものについて、以下についての御見解を伺いたいということで、「・損害保険料率算出機構が引き続き研究を進めていくにあたり、留意すべき点としてはどのようなものがあるか」ということが1つ。それから、「・建物と家財について料率を異なるものとする」ことも検討の余地があるのではないかということは第2回の研究会でもございましたが、そういう「可能性も含め、制度の検討を進めるに当たり留意すべき点」がございましたら、合わせて御指摘いただければと思います。

○佐藤座長ありがとうございました。

では、どなたからでも結構ですので、質問、あるいはコメント、議論、いろいろあればお願いいたします。いかがでしょうか。

○堀田委員非常に詳細に分析していただき、よく理解できました。ただ少し気になったのは、建物の査定と家財の査定の内容というか、そのあたりをあまりよく知らないのですが、印象的には、建物の方はかなり精度の高い形で査定がなされる仕組みになっているような気がしますけれども、家財はどのように対応されているのか。仮にタンスが倒れているけれども、それは壊れたわけでなく、起こせば元通り使えるとか、テレビや冷蔵庫でも、本当に壊れているかどうか、どこまで精緻に査定をされていらっしゃるのかということなのですね。

耐震対策の効果というものは、家財の方がむしろ効果がある場合があるのだろうという気がします。例えば家具や電化製品などに突っ張り棒をしっかり立てれば、被害は抑えられるかもしれません。家財と建物を同じ料率体系の中でやるということになると、家の方の耐震は一生懸命やるわけですけれども、必ずしもそれが家財の方に反映されているわけではないですよね。

家財の方にもっと耐震に対するインセンティブを与えようとするのであれば、本来的にはどの程度、耐震の対策をしているかということが保険料に反映されるべきだと思うのです。しかし、家財に関して客観的に耐震の対策を把握することが困難であるならば、場合によっては、家財については、定額払い方式に切り替えることも検討するべきではないかと思います。例えば震度6以上であれば10万円とか30万円という形での定額払いとする。補償金額は幾つかの選択肢があって良いとは思いますが、そういう形での定額払い方式にして、建物とは別建ての料率体系にするということも一考に値するのではないかなと思います。

○佐藤座長今、査定の話が出てきましたけれども、前のプロジェクトチームとかでも、建物の査定で日々どこを確認するとか、エレベーターはどうだとか、そんな話は散々やってきたのですが、家財についてはどういう手続になっているのですか。

○久保田火災新種損害調査PTリーダー家財の認定につきましては、代表品目を挙げて、その中でどの品目に損害があるかということで査定しております。代表的な品目として、食器類で何に損害があるか、電気器具類で何に損害があるか、家具類で何に損害があるか、寝具・衣類で何に損害があるか、その他身の回り品で何に損害があるかという形で、現地に行きまして、どの品目があって、どの品目に損害があるかということで、損害があった割合に応じて損害率を出しているというような形になっております。

○佐藤座長ありがとうございました。いかがですか。

○荒川委員今、御説明いただいた資料なのですが、件数データだけで、金額データが入っていないので、件数は大きいけれども、建物と家財で保険金にどのくらい影響しているのか分からないので、普通に考えると家財の金額の方が小さいのかなと思うので、金額データもあわせて御提供いただけると、もうちょっと実態が分かりやすくなるのではないのかなと思うのですが。

○佐藤座長金額は出そうと思ったら出せるという理解でよろしいのですか。

○市川常務理事はい。

○纐纈委員私も同じ質問をしようと思って、もし家財の方の金額が大したことないなら、別々の料率にして、事務費を増やすみたいなことはしない方が良いのではないかなという気がします。

○清水委員契約者にとって、家財の損害調査はとても分かりにくいものです。建物は入ったひびや壊れている箇所をカウントするので、割と分かりやすい。一方で家財は、全体の損害を見て、どのカテゴリで何がどれだけ壊れているかをカウントする。仕組みを見ても説明しづらいと感じますし、分かりにくいという意見も耳にします。

定額という話がありましたが、支払の迅速性と公平性を優先できるひとつのかたちだと思います。損保会社にとっては損害調査の負荷を減らすことができ、契約者にもメリットがあるように感じています。

○佐藤座長この件はあまり議論してこなかったのですけれども、家財の方の被害状況の調査は手間のかかるものだと思って良いのですか。あと、ガイドラインがかちっとしていて一律なのか、意外と現場感覚でやってしまうものなのか。

○久保田火災新種損害調査PTリーダー時間はかかります。品目を全て確認しますので。

○佐藤座長査定の簡素化という観点から見ても、見直す余地はあるかもしれないですか。

○久保田火災新種損害調査PTリーダー検討の余地はあるかもしれません。

○佐藤座長もし定額払いにするなら、もっと査定は簡単になるかもしれないですか。

○久保田火災新種損害調査PTリーダーはい。

○阿部委員同じく、大きな品目からまた小さなパーセントがあって、それを積み上げてやっていくというところに、消費者の方が「こんなに細かくやるのですか」という意見があるというのは事実だと思います。査定に来ていただいて、1つ1つチェックをするというのは時間も労力も大変ですが、だからといって、定額になじむかというところはあるのですけれども、いろいろな苦情の中では、例えば本棚がぐっちゃぐちゃになって、すごいことになった。だけど、先ほど仰ったように、本はそのまま戻せば良いでしょうといって出ませんでしたと。それから、ほぼ同じ階に住んでいて、茶碗とかが割れていて、家電も落ちてしまったというようなところが出るとなると、そこを一律にして良いのかというのは分からないのですが、もう少し簡素にしても良いのではないか、消費者の納得感としてもあるかなというのはあります。

○佐藤座長さっき、つっかえ棒の話が出てきましたけれども、本棚とかタンスとかなら、つっかえ棒をすれば何とかなりますよね。意外とどんな品目が壊れやすいのですかね。テレビが吹っ飛んだとか、そういう話はよく聞きますけれども。

○久保田火災新種損害調査PTリーダー統計を取ったわけではないですけれども、感覚論でいくと、食器類や家電製品というのは、落下して壊れるものが多いイメージはあります。

○阿部委員あと、つっかえ棒はつけてはいたけれども、つけ方が悪くてというのをどう評価するかというのもあるのかなと。それも御相談の中であるところの1つですね。

○佐藤座長相場観ですが、金額的にはどれくらいの額だと思えば良いですか。

○市川常務理事今、手元にあるだけの資料ですけれども、大阪を例にしますと、先ほど件数的には3倍くらいと申し上げましたが、保険金ベースで言いますと、5倍くらいの差がございます。建物の方が約825億円に対して、家財の方が145億円程度です。

○堀田委員強調しておきたいところは、定額払い方式に変えると、耐震に対するインセンティブが高まる効果が期待できるのではないかということです。耐震に対する自助努力が自分に直接返ってくるわけです。実際には被害が起こっていないのに補償されるのはおかしいのではないかという意見もあるかもしれませんが、むしろ耐震を促すのであれば、定額払い方式というのは1つの効果を持つのではないかという意味で、さっき私は話しました。

○佐藤座長この前の議論で、半損を小半損と大半損に分けたではないですか。どちらかというと念頭にあったのは、建物の被害の実態に合わせようというところだったのですけれども、それをやった結果、かえって家財の査定のところが煩雑になったとか、そういうことはあるのですか。

○久保田火災新種損害調査PTリーダー特にはないです。

○藤田委員最初、今日の議論が始まったときに伺っていたのは、建物の壊れ方と家財の壊れ方はパターンが違うので、同じように料率を揃えてしまうと、リスクが上手く反映しないということが出発だったと思うのですね。考えれば分かるのですけれども、耐震性が高いと、例えば思いきり揺れるようなマンションだと、家財はめちゃめちゃ壊れるかもしれない。分かりやすい例ですよね。そんなことがあるのだったら、別建て料率にしようかというのが最初の問題提起だったと思うのですが、今日の議論を伺っていると、出てきた議論は、家財の査定の仕方が不透明だとか、煩雑だとか、納得感がないという観点からの家財は別建て。簡素にするためには例えば定額。極論すると、全く壊れていなくても、一定以上の地震が起きたら何かもらえる。議論の進む方向が私が予想したものとは随分違った方向で、それは間違っているという趣旨では全然ないのですけれども、壊れ方のパターンが家財と建物で違うということに着目した差ではない。むしろコスト、あるいは査定の納得感、そのような方向で議論していくということでよろしいのでしょうか。

○佐藤座長別にそうは限定していない。どう入り口を設定するかの問題でしかないので、実務的に査定のところがという議論もあるし、実際、壊れ方が全然違うからであって、建物と家財とを別々にわざわざ見なければいけないのは、両者が連動しているのであれば、別にそこまでの査定の複雑さはないかもしれないけれども、そうではないということであれば、結果として見れば、家の壊れ方と家財の被害の受け方が違うよねという、そこに問題の源泉があるということはいいのではないかと思うのです。ただ、出口として、保険料率を変えるかどうかという問題が起こったときに、簡素な方向に変えるのか、精緻な方向に変えるのか。そこは議論が分かれるかなという気はします。

○目黒委員私もこの議論の始まりは、今、藤田先生が仰ったような観点からあったように記憶しています。その際に、家具がどういうメカニズムで被害を受けるのかということを考えると、家具は道路の上に置いたりするわけではなくて、当然、建物の中にあるわけなので、入力がどれくらい激しくなるかというのが1つ大きな観点ですよね。それでいくと、あまり揺れない建物の方が有利だということは当たり前のことですよね。そうすると、免震の方がきっと有利でしょう。

一方、家具の方はどうかというと、縦横比でスレンダーな物ほどよく倒れるのですけれども、それに対して、形の問題もあるし、トップヘビーの方が倒れやすいということもあるし、あとは転倒防止措置をしていれば、受け手側としての倒れ方が随分違うということがあるわけですね。これは建物が健全だということの条件のもとですよ。

もう1つのメカニズムは、建物が壊れることによって、天井が落ちるだとか、いろいろなことがあって、家具がその影響を受けてやられてしまうということがあるわけで、メカニズムに応じてきちんとリスクを見て、納得できるような考え方を示した上で、それを単純化していくということをしていかないと、皆さん、納得しにくいのではないかなという気がしますね。

あとは、一律にすることのメリットというのは、もちろん手続が簡単になるということもあると思うのですが、どうせされるのであれば、分かりやすくみんなが事前に何か対策を取っていただく方向に進めていくというのが重要で、それは堀田先生が仰った部分と同じなのですけれども、そういう意味で言うと、クライテリアを低めに置いて、デリバティブでかなり多くの人たちに配るなんていうのは全然良くなくて、かなり高めに設定しておいて、それでやられた場合にはもらえるけれども、かなり高めだぞ、自分たちできちんとやっておかないともらえないぞというメッセージが、事前対策の方へのインセンティブになるのではないかなという気がします。

○佐藤座長今回見せていただいた資料によれば、少なくとも建築年数であるとか、程度は分からないのですけれども、耐震性とか、建物の構造とか建築年数とか、そちらで見ていると、家財の被害状況というのは実情を把握しにくいよねとなると、科学的な知見で、家財に被害を与えるようなファクターは何なのかを調べた上で、皆さんの納得を得るためにはある程度、簡素化もしなければいけない。他方では御指摘のとおり、リスクコントロールのインセンティブを与えるためには、何らかの基準は設定しなければいけないという話になってくるのかなと思います。ただ、少なくとも今日見た資料においては、建物の構造だけに着目して家財に保険料を設定するというやり方で良かったのかなというのは、そういう問題提起が今回の資料で出てきたのかなと思います。

○目黒委員揺れの情報が入っていない整理の仕方なので、それぞれが震度幾つの場所にあったかということは分かる情報ですから、その上で建物別にタイプ分けして被害の査定を入れると、大きな入力が入っているけれども、免震建物で床はあまり揺れなかったことによって、家具の査定は低いとか、分かりやすいものがもうちょっと出てくると思うのですよ。そういうものに基づいて議論した方が、より建設的なのではないかという気がします。

○佐藤座長了解しました。ちょっと粗かったかもしれない。もう少しセグメント分析的な形にしてもらうと、実態がもう少し見やすいかなということですね。

○荒川委員民間ベースの保険ではなくて、国が関与する地震保険という制度で、家財を対象にすることの意味というものがまずどうなのかなと。例えば建物の方は、住むところがなくなってしまうと困りますよねと、非常に公共性が強いと思うのですけれども、家財が高額になったときに、本来、生活の再建ができる程度の保険金さえ契約者さんにお渡しすれば良いということになると、高額なものまで全部負担するのかということもあるのではないかなと。デリバティブになったとき、高額のものを含めていくと、申告の上では高いことになっているけれども、定額でもらえてしまうと、本当はそんな家具がなかったり、本当はもっと安物だったり、モラルリスクも出てくるので。ただ、最低限、家財もないと生活できませんよねという水準での定額ということであれば、モラルリスクもある程度排除できる。

査定という話も、中規模以下の地震だと査定もきちんとできるのでしょうけれども、実際、東北の震災のとき、私が保険会社さんの監査をしているときの理解だと、激震地域は航空写真でこの地域はどのような査定と、そこで決めてしまっている。1個1個の査定なんて、とてもする余裕はない状態になってくるのかなと思います。そうすると、本来、公共的な性格の強い保険で家財を対象にするときに、付保金額とか、その辺、払い方もどうするのか、そういう観点でもどうあるべきかということは考えた方が良いのかなと思いました。

○纐纈委員論点を見ると、1番目の方は研究をどう進めていくか何か意見を下さいと言っているので、この点、私は何も言っていなかったですけれども、目黒さんが仰るようなことが良いのではないかなと賛成いたします。

最後、関係ないことを1つ言わせていただくと、資料の5ページを見ると、建築年代別の建物の支払割合という棒グラフが出ていますが、1985年でガタッと変わっているのも確かですが、1995年から2000年でもガタッと変わっているので、建築年割引をやめるというよりは、1995年にしたらどうかなという印象を持ちました。

○佐藤座長95年というのは、阪神・淡路の後にもっと強化されていったという理解で良いのですか。関係ないですか。

○渡辺火災・地震保険部地震グループリーダー建築基準としては、81年の後に木造住宅とかに関係するものとしては2000年という基準がございます。ただ、建築の先生方から伺いますと、阪神を受けてこういったところが危ないのではないかということがあって、現場ではだんだん変わっていって、それが建築基準として形となったのが2000年と伺っていますので、1995年で急にというよりこの間にだんだんと変化していったのかなと思っています。

○目黒委員経年劣化の方が大きいのではないですか。

○佐藤座長他、いかがでしょうか。

今日、結論を出すわけではありませんけれども、どうやって議論をしていくかというときに、まず実態をもう少し細かく見せていただくことは必要かなということ。その上で、保険料率の設定を適正化するべきなのか、するべきではないのか。今までどおりで良いのか、あるいは家財特有の保険料率の設定に持っていくべきなのかどうかという議論が出てくるのかなという気はします。その中で、どういうファクターを考慮するのか、あるいは、どこまで簡素性や納得性を重視するのか。そういった話になってくるのかなと思います。

○堀田委員仮に今までの枠組みをそのまま踏襲したとして、家財を別建てにしたときのリスクファクターというのは、今のものではないものをさらに付加する、あるいは今のものからどこかを引くみたいな、そういうことを考えなければいけない話ですよね。そうすると、家財特有のリスクですとしたときに、果たして今のものに追加できるリスクファクターは何なのでしょうという気がします。

○佐藤座長あまりないかもしれないですね。逆に、少なくとも建築年数はあまり意味ないよねとか。

○堀田委員器の揺れ具合が料率の大きな柱になっているわけでしょう。これはもちろん置いておいたとして、家財のものを別料率にしましょうといったときに、家財だからこそ加えるファクターは一体何なのですかという気がしますね。

○佐藤座長何かありそうですかね。この段階で何か思いつくものはありますか。

○市川常務理事例えばマンションのようなものであれば何階かとか、そういうものはあるかもしれません。

○中埜委員今のこととちょっと関連するかもしれませんけれども、建物の耐震等級1、2、3があって、順々に建物としては性能が良くなるのですが、一般的に性能が良くなるときには壁を入れたりするものですから、1、2、3といくに従って強くなるけれども、硬くもなるのですね。そうすると、建物自身は潰れないけれども、建物自身は割とよく揺れるということが起こって、結局、それは建物の中のものを何も造作しなければ倒してしまうということも実は起こってしまって、だからといって、3になった方が家財の料率が高いというのは「うーん」というのはあるのですけれども、必ずしも性能が良いから料率を下げても良いかどうかというと、そこはもうちょっと慎重に議論した方が良いことが出てくるかもしれません。

一方で、免震の建物は、揺れるけれども壊れない。ゆっくり揺れるので、中の造作物も倒れないというような、かなり相関した関係があるだろうと思われますので、そのあたり、場合によっては丁寧に見てあげないと変なことが起こってしまうかもしれないなと。

それから、4ページのところで出てきた、先ほどちょっと仰っていたかもしれませんけれども、何となく解せないなと思うのは、右側のロの構造物で、免震だけれども、被害が家財には出ているというのは、何故なのでしょうね。数が少ないからということもあるのかもしれませんけれども、もしかするとさっき目黒先生が仰ったような、揺れの度合いをもうちょっと丁寧に見ると原因がはっきりするのかもしれません。何となく「ん?」と思うようなところがまだありますし、耐震等級を見ても、普通、想像するのは、1、2、3になるに従って支払割合は減るだろうなと思うけれども、必ずしもそういう相関がなくて、揺れの度合いがもう1つフィルターでかかっていないと、分かりにくいのかもしれないですね。なので、そのあたりを精査していただければ、もう少し見えてくるかなと思いました。

○佐藤座長追加の作業になりますが、よろしくお願いいたします。

他、いかがですか。よろしいですかね。

それでは、本日の議論はここまでとさせてください。

では、事務局から今後の予定について連絡をお願いいたします。

○井口信用機構課長昨年度から始めましたので、今日が第3回となっておりまして、次の会合につきまして、現在のところ、4月9日木曜日10時からの開催予定としております。中には御希望に沿えなかった先生もいらっしゃいますが、そのような形で開催させていただければと思います。よろしくお願いいたします。

○佐藤座長ありがとうございました。

今日の後半の議論は引き続き論点になってくるかと思いますので、またよろしくお願いいたします。

本日は御多用の中、御参集いただきまして、誠にありがとうございました。これにて閉会です。お疲れさまでした。

午後5時00分閉会