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地震保険制度等研究会第1回 議事録

平成31年4月5日(金)14:00~16:00
財務省第1会議室(本庁舎4階)

  • 1.挨拶

  • 2.メンバー等紹介

  • 3.研究会の運営について

  • 4.事務局及び損保業界より説明

  • 5.討議

出席者

委員

荒川進

纐纈一起

佐藤主光(座長)

堀田一吉

目黒公郎

(敬称略)

オブザーバー

一般社団法人日本損害保険協会

一般社団法人外国損害保険協会

日本地震再保険株式会社

損害保険料率算出機構

金融庁

事務局

茶谷総括審議官

中澤信用機構課長

西川信用機構課機構業務室長

午後2時00分開会

○中澤信用機構課長それでは、ただいまから第1回地震保険制度等研究会を開催させていただきます。

事務局を務めさせていただきます財務省大臣官房信用機構課長の中澤と申します。よろしくお願いします。

まず、本研究会の開催に当たりまして、事務局を代表いたしまして、総括審議官の茶谷より御挨拶を申し上げます。

○茶谷大臣官房総括審議官財務省総括審議官の茶谷でございます。

本日は、御多忙のところお集まりいただきまして誠にありがとうございます。第1回地震保険制度等研究会の開催に当たりまして、一言御挨拶申します。

地震保険制度については、皆様御案内のとおり、平成23年の東北の大震災を受けて、平成24年に地震保険制度に関するプロジェクトチームが立ち上がって、これで同年の11月に報告書を頂戴しまして、それを受けて、平成25年から27年にかけてフォローアップ会合を開催しまして、ここで、その報告書で整理された諸課題のフォローアップを行っていただくとともに、有識者の皆さんから幅広いテーマについて御議論をいただいたという経緯がございます。

それから4年近くが経過しましたけれども、この間に、御案内のとおり、平成28年には熊本の地震があって、昨年には大阪府北部を震源とする地震、北海道胆振東部地震といった比較的保険金の支払が高くなる地震が相次いで発生して、結果として、民間準備金残高の減少というような喫緊に対応する課題というものが生じてきているところでございます。また、御案内のとおり、南海トラフ地震については、内閣府で防災対応をどうするかという議論をされたり、あるいは災害保険という分野を広くとっても、国際的にも非常に取り上げられたりするなど、地震保険を取り巻く環境というものもどんどん変化を遂げているという認識でおります。

こういうことから、改めて地震保険制度を巡る諸課題について、有識者の皆さんの御議論をいただくことが必要と考えて、本研究会を開催させていただくということにしたところでございます。本会合におきましては、まずは4年近く前のフォローアップ会合以降の地震保険制度に関する取組や残る課題について、事務局から御報告させていただいて、皆さんに御討議いただければと思っているところでございます。

言うまでもありませんけれども、地震保険制度というのは、地震国日本における安心の拠り所でもあって、先の熊本地震や、あるいは大阪府北部を震源とする地震でも、関係者の御尽力で保険金の速やかな支払が行われたところでございまして、国民の皆さんの地震保険に対する関心とか期待というものもこれからますます高まってくると思っておりまして、財務省としましても、そういった国民の方々の期待にしっかりと応えていけるように地震保険制度の改善に取り組んでまいりたいと考えているところでございます。

皆さんにはぜひとも忌憚のない御意見を頂戴したいと考えておりますので、御礼とお願いを申し上げて、簡単でございますが、挨拶とさせていただきます。よろしくお願いいたします。

○中澤信用機構課長それでは、本日は初めての会合ですので、まずメンバーの皆様について簡単に御紹介をさせていただきたいと思います。

右手順より、委員の方においては五十音順でお座りいただいておりますが、まず公認会計士でPwCあらた有限責任監査法人のパートナーでいらっしゃいます荒川進さんです。

その隣ですが、東京大学の纐纈教授でございます。

その隣が、一橋大学の佐藤教授でございます。

その隣でございますが、慶應大学の堀田教授でございます。

一番端ですけれども、東京大学の目黒教授でございます。

それと、本日は御欠席でございますけれども、東京大学の藤田教授にもメンバーとして御参加いただいているところでございます。

続きまして、本研究会においては、オブザーバーとして、関係省庁、関係団体の方々にも出席していただいております。個々の御紹介は時間の関係上割愛させていただきますけれども、関係省庁として金融庁、それから関係団体として、日本地震再保険株式会社、日本損害保険協会、外国損害保険協会、それと損害保険料率算出機構の方々に御出席いただいております。詳細については、お手元に配席図がありますので、そちらを御参照いただければと思います。

続きまして、本研究会の座長の選出を行いたいと思います。

事務局からの御提案という形になりますけれども、地震保険制度に関するプロジェクトチームあるいはその後のフォローアップ会合において座長をお務めいただきました佐藤教授に本研究会においても座長をお願いしてはどうかと思いますが、いかがでございましょうか。

それでは、御異論がないようですので、佐藤教授にお願いしたいと思います。佐藤先生、恐縮ですけれども、反対側の座長席へ御移動お願いします。

早速ではございますけれども、佐藤先生から座長就任に当たり一言御挨拶をいただければと思います。よろしくお願いします。

○佐藤座長佐藤です。

何人かの先生方は御無沙汰しておりますということになると思いますが、地震保険を巡る環境がまた少し変わり始めておりますので、これを契機に、また制度のあり方を含めまして、包括的に幅広に議論できればと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

○中澤信用機構課長ありがとうございました。

これ以降の議事の進行につきましては佐藤先生にお願いしたいと思いますけれども、その前に、事務局の方から配付資料の確認、この研究会の運営について御説明をさせていただこうと思います。

まず、お手元の資料ですけれども、議事次第というものが一番上にあり、その下に資料1から4、資料1が「これまでの取組」、資料2が「フォローアップ会合課題への対応状況」、資料3が「民間準備金残高の回復に向けて」、それまでがパワーポイントみたいな形ですけれども、もう1つ、「本日ご議論いただきたい事項」ということで資料4という1枚紙を御用意させていただいております。ございますでしょうか。

それでは次に、運営について御説明をさせていただきます。

開催の頻度とか運営の方法ですが、今のところ、年に2回から3回くらいの頻度で開催することを基本としたいと思っております。その研究会の議論の状況等も踏まえまして、ある程度期間を区切った形で、1つの案としては、役所の事務年度ごとに簡単なとりまとめをするということを考えていきたいと思います。それで、今回から始めまして、当面の課題を何回か御議論いただくと思いますけれども、その課題につきましては、事務年度末ですから、今年の6月中を目途に一定のとりまとめを行って、それも公表したいということを考えていますので、よろしくお願いします。

以上、研究会の運営の基本的な方向について御説明をさせていただきました。

それでは、以降の議事の進行は佐藤座長にお願いしたいと思います。佐藤先生、よろしくお願いします。

○佐藤座長よろしくお願いいたします。

それでは、早速ですけれども、議事に入りたいと思います。

まず、説明から入ります。事務局より、フォローアップ会合以降の取組について、まずは御説明をお願いいたします。

○中澤信用機構課長それでは、引き続き私の方から、資料1について御説明をさせていただきます。資料1、横組みのパワーポイントの形になってございまして、プロジェクトチーム、その後のフォローアップ会合でとりまとめられた内容につきまして、その後の動向について簡単におまとめしたものでございます。

まず1枚目でございますが、地震保険料率の引上げということでございます。

地震保険料率につきましては、フォローアップ会合の議論のとりまとめにおいて、震源モデルの更新などの影響により全国平均で19%の引上げが必要であるという旨が示されております。2回目の改定時に、この19%は14.2%に修正されておりますが、フォローアップ会合のとりまとめにおきまして、引上げに伴い保険契約者の負担感が高まることの懸念から、複数段階に分けて地震保険料率を引き上げることも考えられるとされたことを踏まえまして、平成29年1月より、3段階に分けて料率の引上げを行うこととしたところでございます。

現在までに2回の改定を実施しております。1回目は平成29年1月、平均5.1%の引上げ、2回目は31年1月ですが、平均3.8%の引上げ、そして3回目については、引上げ幅、時期は未定ですけれども、残りの部分を引き上げるということを順次実施しているところでございます。

続きまして、2ページ、損害査定区分の変更について御説明申し上げます。

損害査定区分につきましては、フォローアップ会合のとりまとめにおいて、損害の実態に照らした保険金支払割合に近づけるなどの目的で、半損を小半損と大半損に分割し、従来の3区分から4区分に細分化することが適当であるということが示されたところです。これを踏まえまして政令を改正しまして、平成29年1月以降の契約から、3区分から4区分に損害査定区分を変更しました。

改定前は、一部損が5%、半損50%、全損100%で3区分でございましたが、現行は、半損のところは、小半損が30%、大半損が60%と新しい区分が作られたということでございます。

次が3ページ目でございます。この後、日本損害保険協会から補足の説明があろうかと思いますけれども、損害査定方法の改善でございます。

フォローアップ会合のとりまとめにおいて、損害保険業界に対して、自己申告方式の拡大、モバイル端末による調査、電話ヒアリングの活用を要請したところでございます。

この要請を受けまして、木造建物及び家財の一部損及び半損までの範囲まで自己申告方式を拡大する。それから、モバイル端末による調査を可能とする地震アプリの普及、拡大に向けた対応を実施し、実際に平成28年熊本地震以降発生した地震においてこれが活用されているところであります。それから、電話ヒアリングの活用につきましては、検討の結果、自己申告方式に統合する方向で調整中と伺っております。詳しくは、また日本損害保険協会さんの方から説明があろうかと思います。

下にある図は、熊本地震における保険金支払状況ですけれども、震災後約3か月で調査完了率が約97.4%と、迅速な調査に繋がっているという評価が与えられると思います。

続きまして4ページ目でございます。フォローアップ会合以降に起きた大きな地震への保険金の支払状況でございます。

フォローアップ会合以降、比較的保険金支払が多額な地震が相次いで発生しておりまして、平成28年4月14日の熊本地震、その後、昨年ですけれども、大阪府北部を震源とする地震、これは6月、9月には北海道胆振東部地震が起こりました。熊本地震では、平成31年3月末の時点で既に支払が3,859億円、大阪府北部については1,071億円、北海道胆振東部地震については386億円の支払が行われているところでございます。

これまでの取組の最後ですけれども、5ページ目です。官民保険責任額、我々はレイヤーと呼んでいるものですけれども、それの改定の推移を示しているところでございます。

プロジェクトチーム報告書において、巨大地震発生後、民間準備金が枯渇した場合には、補正予算、政省令改正等によってレイヤーを改定し、民間保険責任を減額する必要があるという指摘をいただいております。この指摘を踏まえて、熊本地震が発生した後の平成28年度の第2次補正予算、それから大阪府北部地震あるいは北海道胆振東部地震が発生した後の平成30年度の第2次補正予算において、それぞれ民間準備金残高の減少を踏まえたレイヤー改定を実施しているところでございます。

詳しい減額の状況はその下の図のとおりでございますが、民間準備金の残高は、青いL字の部分の2倍くらいがそれに相当する額ですけれども、その面積はどんどん小さくなっていることがお分かりいただけると思います。

これまでの取組状況については以上であります。

○佐藤座長ありがとうございました。

では続きまして、日本損害保険協会より、フォローアップ会合課題への対応状況について御説明をお願いいたします。

○山元火災新種損害調査PTリーダー日本損害保険協会の山元と申します。本日はよろしくお願いいたします。

では、私の方からは、財務省地震保険PTフォローアップ会合の課題であります損害査定の簡素化の対応状況について御説明を申し上げます。

首都直下地震等に際しても迅速な損害査定が確保できるように、損保業界におきましては、自己申告方式の拡大、モバイル端末による調査、電話ヒアリングの活用につき検討、対応を進めてまいりました。また、業界横断的に立会調査を行う共同取組の検討も行っております。

まず、自己申告方式につきましては、木造、鉄筋コンクリート造、鉄骨造建物及び家財に関し、大半損までの損害認定を可能とし、ツール整備を完了しております。4区分化、改定生活用動産損害認定基準にも対応が完了しております。

続きまして、モバイル端末による調査でございますが、モバイル端末による地震保険損害調査書を作成する地震アプリを開発し、保険会社社員及び損害保険登録鑑定人に対する研修を毎年実施しております。また、4区分化、改定生活用動産損害認定基準についてのアプリの改修についても対応済みでございます。

電話ヒアリングの活用につきましては、在来軸組工法の建物に関して、実務への運用に向けた準備を進めていたところ、全損と判断するに当たり写真等の証跡の必要性を確認しております。証跡を必要とする場合、自己申告方式への統合が効率的と考えられ、現在検討中でございます。

最後に、立会調査の共同取組につきましては、実現に向けて事務オペレーション、必要なシステム要件等を検討して案をとりまとめたところ、システム、ファシリティ構築の初期費用で30から35億円の初期費用が必要だということで試算をしております。まずは効果的で低廉に実施できる方法として、区分所有建物の共用部分の共同取組、損害調査が著しく遅延した会社支援方法を継続検討中でございます。

以上になります。

○佐藤座長ありがとうございました。

では、再び事務局の方から、民間準備金残高の回復についての説明、それから、資料4になりますが、本日皆様に御議論いただきたい論点につきましての説明をお願いいたします。

○中澤信用機構課長それでは、引き続き資料3と資料4を使いまして説明をさせていただきたいと思います。

まず、資料3の方からおめくりいただきまして、1枚目でございますが。先ほども若干フォローアップ会合の後に発生した地震の状況について説明申し上げましたが、大阪と北海道を入れた段階で、過去の多額の支払が行われた地震を並べてみるとどうなるだろうかというのがこの資料でございます。

大阪が、これまでのトップテンの第3位の規模になりそうだということと、北海道胆振東部地震も宮城県沖地震を超えて5位になる見込みという状況になっています。また、1つ補足しますけれども、足元被害の大きい地震が若干増えているという感じになっているところでございます。

続きまして2ページ目ですけれども、これは官民保険責任割合の考え方についてまとめたものでございます。

官民保険責任額は、基本的には総支払限度額、現在は大正関東大地震が再現するケースにおいて、契約動向等を考慮して予想支払保険金を算出しています。これは大体11.7兆円ですけれども、これを総支払限度額と設定した上で、民間準備金残高を考慮して、民間準備金が連続する2回の大地震に耐えられるように、民間における保険の支払能力の余力、バッファーを確保して、民間の責任の青い分を決めるという形になっています。

レイヤーの中の左側の青いところのL字の部分ですが、縦に全部塗り潰されているところが第1レイヤーと我々は呼んでいるところで、その後、白と青が半々になっているのがいわゆる第2レイヤー、この第1レイヤーと第2レイヤーで、そこの部分の規模だったら2回続けて起こっても大丈夫な形のようにこの範囲を決めるという形になっているところでございます。

保険料の収入配分をどのように決めているかというと、これは資料の右側、「官民保険責任額(レイヤー)を基に算出」とありますけれども、その下のところでございます。将来予想される保険金支払発生リスク、これは地震モデルで約40万強のモデルがあるわけですけれども、これに基づいて大体の被害額を推計したものを発生頻度を用いて、年間単位に置きかえてどのくらいの額が起きるだろうかというものを算出したものでございます。

これを基に、では、官の部分はどのくらい、民間の部分はどのくらいというものを決めていくのですけれども、したがいまして、最初に説明した青く塗り潰された民間準備金の残高というのが官民の保険料収入の配分割合を決めるのに非常に大きな役割を果たしていることがお分かりになるかと思います。

それをベースにして、真ん中の下の矢印のところですけれども、平成29年度の決算では、政府への配分は81.57%、民間の方に配分が残る部分については18.43%ということになっているところであります。

参考1が31年度の政府予算案、参考2は、昔、平成21年度の決算ですけれども、そのときの数字を書かせていただいております。平成21年度のときには、政府が約48%、民間が約52%だったのですけれども、31年度の政府予算案ではその関係がひっくり返っていて、政府が約8割、民間が約2割という状況になっています。

なぜこういうことになっているかというと、1つは、民間準備金残高が減っているということが大きな要素なのですけれども、それを示しているのが4ページになります。3ページはレイヤーの過去の推移ですので、御説明は割愛させていただきます。

時系列の推移で見ていって、民間準備金残高の推移が、青の縦の棒グラフで示されているところでございますが、東日本大震災の直前に約1兆200億円民間準備金残高がございました。その後、東日本大震災、熊本、昨今の比較的支払が多かった地震もありますので、30年度末の見込みでは、民間準備金残高は2,273億円ということになっているところでございます。

それから、この民間準備金残高をベースにレイヤーに当てはめて計算される保険料収入の官民の割合ですけれども、オレンジの折れ線グラフで示されているのが民間の方に回された保険料収入でございます。これも東日本大震災までは50%を超える部分が民間の方に、残りが政府の方にということになってございましたが、最近ではこれがひっくり返って、先ほど言ったように、概ね政府の方が8で民間の方が2という比率になっているところでございます。

5ページに行って、同時にここから資料4を使って、「本日ご議論いただきたい事項」について説明をさせていただきたいと思います。

グラフを使って御説明してきたとおり、昨今の地震保険の支払状況及び民間準備金減少がかなり急ピッチで進んでいるところでございますので、近い将来、この民間準備金が枯渇する可能性が高まっていると考えられます。そこで、この準備金残高の回復に向けて積上げ目標設定方式というのを導入することについてどう考えるかというのが御議論いただきたい最初の点でございます。

この積上げ目標設定方式というものは何かと申しますと、(注)に書いてございますが、大きな字のパワーポイントの方に、当時のプロジェクトチーム報告書の抜粋が出ているのですけれども、これの5ページの下の二重線のところです。「一定期間後に第2レイヤー(官民半々負担)までの範囲内で一定規模の地震に対応できる水準となるまで民間準備金を回復させるとの目標を立て、これに向け毎年必要額を積み上げる、といった方策が考えられる」と記述されているのですけれども、これを導入することについてどう考えるかということが御議論いただきたい最初の点でございます。

これで毎年必要額を積み上げるということになりますので、これから説明します、どこを積立ての目標にするのか、あるいはどのくらいの年数でやるのかということで変わってくるのですが、いずれにせよ、必要額を積み上げている期間においては、今までは保険責任に応じた保険料収入配分ということができていたわけですけれども、この積み上げている期間中は一時的にこの関係を特例的に切り離すということになります。それについて、どうかということを後で御議論のときに指摘しますが、そういうことになります。

次に、では、この積上げ目標設定方式を導入するに当たって、回復させる目標となる一定規模の地震に対応できる水準というのはどこに置くのかということが2つ目の点でございます。資料4の1の②には3つほど書かせていただいてございます。

「(i)官民保険責任割合が半々になると考えられる水準」と書きましたが、いろいろな前提を置いて試算しなければいけないとは思われますけれども、現行のレイヤーで計算して、この官民保険責任割合、5対5、1対1になる水準というものは、概ね民間準備金残高が2兆円台の後半から3兆円というくらいの水準になるのではないかと考えられます。

次に、「(ii)東日本大震災前の民間準備金残高の水準」ということでございまして、先ほど説明しましたように、直前で約1兆200億円あったわけですので、これが2つ目の目標水準の案として考えられるのではないかということでございます。

もう1つは、「(iii)民間準備金が「自律的に積み増されていく」ことが期待できる水準」と書きましたが、これもいろいろな前提条件を置いてはじかないと、どこが自律的に積み増されていくかということがよく分からないところであります。

1つの参考値として申し上げますと、資料3の6ページに、平成元年以降の官民保険金支払額の推移を載せてあります。仮にレイヤーに当てはめて算出される保険料収入額が年間の支出を上回っていれば、自動的に民間準備金も自律的に積み増されていくということが大いに考えられるところでございますが、制度発足以来だと、民間の方の保険金支払額の平均は1年当たり255億円でございました。しかし、過去10年とってみると、東日本大震災がございましたので、この額は1,200億円弱ということになってございます。

ちょっと異常値みたいなものも含まれているので、一概にこの数字が最近のトレンドかというとなかなか難しいのでございますが、その他、平成元年以来、過去20年、過去5年といろいろ取ってみて、450億円、636億円、848億円という数値になるのですけれども、大体過去20年、2000年代に入ったくらいのことを念頭に置いて、このくらいが定量的な支出ではないかと考えて、630億円とか650億円くらいの支出を上回るような配分がもしあれば、自律的に積み増されていくと考えられるのですが、それを一定の仮定を置いて計算していくと、その準備金残高は7,000億円とか8,000億円というような感じになろうかと思います。

以上が水準の議論でありまして、次に、では、今度は積み上げて、特例的に保険料配分を変えて、どのくらいの期間で積み立てていくかということです。これは、③の(i)で書きましたけれども、短く設定すると、もちろん、それは目標達成の蓋然性は高まると思います。それによって目標をどこに置くかにもよりますが、1年ごとに積み立てていかなければいけない、配分を変えて民間に回さなければいけない額というのは大きくなりますので、官民配分割合は大きく変動するということになろうかと考えます。

他方、非常に長く設定してしまうと、これは期間中に大きな地震が発生した場合においては、目標達成はさらに遠のく可能性が高くなりますし、いずれにしても、特例的に保険料配分を変えるという期間が長くなるというデメリットもあろうかと思います。

仮に機械的に試算をしたらどうなるだろうかということで作ってみたのが、資料3の民間準備金積上げのシミュレーションというものでございます。前提条件としましては、民間準備金残高、平成30年度末は2,273億円で置いてあります。それから、年間の保険料収入は、今2,000億円強、もうちょっとあるのですけれども、計算の便宜上一応2,000億円と仮定して計算してあります。それから、支出ゼロと仮定しておりまして、実際には、先ほど支出は数百億円の単位で起きているわけですが、一応ゼロとして仮定して計算してみました。

これを仮に、現行は官が8、民が2になっているわけですけれども、オレンジの5対5と便宜上置いてみたという形で試算してみます。そうすると、まず1兆円に達するまで支出ゼロと仮定しても8年、2兆円で18年間、3兆円に達するには28年間かかるという試算になります。

これだとちょっと時間がかかり過ぎるということではないかと思いますので、官を3、民を7にして、今の関係をほぼひっくり返すみたいな形で試算したのが青い線でございますが、これでも1兆円に達するのは6年間、2兆円で13年間、3兆円では20年間というような期間がかかるということになります。

こういうものを踏まえて、では、一定期間あるいは目標水準をどこに置くのかというのを考える必要があるかと思われます。

資料4の民間準備金残高の次の論点ですが、④でございます。では、仮にこの積上げ目標設定方式を導入すると、本来あるべき保険料収入配分とは違う特例的な措置があるわけですけれども、それは言い換えれば、政府の部分の収支相償が後退するということになろうかと思います。したがって、特例的に配分を変えて行う、ここでは回復期間と書かせていただきましたけれども、回復期間終了後、一定の間は、今度は逆に政府の方に保険料配分を高めるという方策を導入しないといけないと思われるのですが、これについてはどのように考えれば良いでしょうかということが次の論点でございます。

一時的においても、特例という形で配分を変えるわけですので、最終的に財政当局とも話をしなければいけない話ではありますが、財政当局の理解を得るためには、こういう回復方策をやることはある意味必須ではないかと考えているところでございます。

最後、⑤ですけれども、これはどのような組み方をしたとしても、特例的な期間がある程度一定期間続きます。したがって、保険責任に応じた保険料配分という考え方をある意味長期間逸脱することになるのですけれども、これをどう考えるべきか。もちろん、こういう逸脱期間は短い方が良いのは言うまでもございませんけれども、この点についてはどのように整理すべきかということが民間準備金残高を回復する上で最後の論点でございます。

以上が民間準備金残高の回復策に関する本日御議論いただきたい事項でございまして、その他、先ほど日本損害保険協会さんから説明がございました損害査定の簡素化でございますが、さらにその改善に向けて検討をしていかなければいけないもの、検討を深める点があるかどうかについて御意見をいただければと思います。

それから、継続検討中といった点についても御説明がありましたけれども、それについて留意すべき点が特にございましたらよろしくお願いしたいと思います。

3ですが、その他として、本日民間準備金残高の回復策と損害査定の簡素化について論点を提起させていただいておりますけれども、その他、昨今の事情の変動に応じまして、地震保険制度について議論すべき事項がもしあるということでございましたら御提示いただければと思います。

以上です。ありがとうございました。

○佐藤座長ありがとうございました。ちょっと論点が幾つかありますけれども、まずは、今の事務局及び損保協会からの説明につきまして、質問、御意見、コメント等があれば、いかがでしょうか。不明瞭な点とか、確認しておきたいところとかありますか。

○目黒委員一番基本的なところで、民間準備金を増やさなければいけないという一番のモチベーションは何なのですか。理由は何なのですか。

○中澤信用機構課長そもそも地震保険、官民の共同保険という形でやって、基本的には民間の自助の世界だと考えているのですけれども、民間準備金残高がなくなってしまうと、完全に最初から官が出ていくような保険になる。それは制度の趣旨とは違うのではないかというのが最大の問題点だと思っていまして、先ほどちょっと申しましたけれども、本当であれば、きちっと設計されていると、基本的にきちっと配分が決まって、比較的小さな規模の地震については民間が担当する、規模が大きくなって、民間ではリスクが取れなくなるような地震については官が補助するという麗しい世界ができるはずなのだと思うのですけれども、それが、このままいくと、そうはならなくなってしまう。それは、この地震保険の制度として、強靱性あるいは持続可能性と考えて、違うのではないかというのが最大の問題意識です。

○目黒委員持続可能性とか強靱性ということを言うのだとすれば、今の延長上には、強靱なシステムは僕はないと思っています。それは何故かというと、収支を考えたときに、収入に対して、今のこのままいけば、出る方がどんどん増えていくことが予想されるので、比率を多少いじったところで、全然強靱性には貢献しないのではないかと思うのです。

なので、こういう重要なものを考えるときには、物差しとしては、長い物差しと短い物差し、両方で考えるべきなのだけれども、今ここでの議論では、短い物差し、究極な対症療法的なことを仰っているけれども、この延長上には解がないわけなので、一方で大きな物差しで、簡単に言えば、今の収入の範囲内では、もう保険金は払えないということが見えてきているわけなので、そちらを増やすということと、あとリスクコントロールに貢献するような保険制度を考えていかないと、今弱い人たち、つまり、災害に遭う人たちを遭いやすい場所に、遭いやすい建物にそのまま住まわせておいて、多くの方々が被災するから、積立金をいっぱい用意しておかなければいけないという制度設計をしているのです。簡単に言うと。

これからは、少子高齢、人口減少、例えば人口減少というのは、元気が出ない最大の理由のように思われるけれども、災害リスクの低いところで、人口減少で空くスペースが増えるという意味なのだから、1つは、土地利用施策としてより安全性の高いところに、もう1つは、物件としてより安全なものに皆さんに移っていただくような大きな仕組みを持っていかないと、今のままでは、比率を多少変えたところで、過去10年で、平均で1,100億円くらいずつ支出は出ているわけなので、2,000億円で支出ゼロのシミュレーションを出していただいているけれども、もうこのようにはなりません。なので、そこら辺をどこまで本気で今日議論して良いのか、僕はその辺の境界条件もあまり分からない状況です。

○佐藤座長今のお話ですけれども、保険料率に関わる話で、かといって、保険料率を上げろという単純な話ではなくて、今目黒先生が仰っているのは、今日でいけば3のその他の、論点で出てきていませんでしたけれども、フォローアップで出てきた立地割増・立地割引に関わる議論だと思います。一応それは検討事項としては残っていたと思いますので、経済学の言葉を使うと、要するに逆選択が起きていて、どうしてもリスクの高い人たちが保険に加入した結果として保険の支払が増えているのではないかという認識はなきにしもあらずなので、1つの長い物差しという解決策としては、実はこれはフォローアップでも既に挙げられていることですけれども、建物の構造に対するめりはりは既にかなりつけてきてはいます。立地に関しては、今申し上げた立地割増・割引の議論が残っていた。その点を多分指摘されたのかと思うのです。

○目黒委員建物に関しての被害率も全然違います。今最大50%の割引しかしていないけれども、もう普通に横軸に地震動を取って、縦軸に被害率を取れば、その比は50%なんていうものではないです。そういう意味で言うと、保険における一番重要な公平の原則が上手く成立していないと言われてもしようがない状況があるのではないかと思います。

○佐藤座長まさに保険料率の体系のところの議論、本当はこれは長い物差しとして必要ではないかということなのだと思います。もちろん、建物の構造も含めてかもしれません。

○堀田委員まず、先に御質問ですけれども、民間の方ではなくて、政府の準備金は今一体どのくらいあるのですか。先に確認させてください。

○茶谷大臣官房総括審議官1兆5,202億円でございます。

○堀田委員私が申し上げたいのは、この間、最近起こった幾度かの地震の結果、民間がリスクを担っている部分というのは極端に減ってきていまして、現状を見ると、これはほぼ政府の保険となってしまっている。ところが、先ほど仰っていたように、地震保険というものは自助の制度ですと仰っているわけです。つまり、基本的には民が主であるべき、政府はそれを背後からサポートする、そういう位置づけ、官民の役割関係といえば、主は民で、それを支援するのが政府ですという恐らく建前なのだろうと思うのですけれども、現状はその逆になっていると思います。

したがって、私が申し上げたいのは、民の引き受ける領域をもっと明確にする。明確にするという言い方をもう少し突っ込んで言えば、もっと大きく責任を負う。もちろん上限はあります。あるのだけれども、もう少し広げる、そういう措置が必要です。そういう観点からいけば、民間準備金をできるだけ早く適正規模に引き上げる必要があると思います。

あくまでも政府なしには民が成り立たないというのは、制度の理念から言って、ちょっと違うのではないか。主はあくまでも民で、民で基本的な地震リスクについてはカバーするのだけれども、巨大災害に関しては、政府を頼りにせざるを得ない。これは地震の性格ですから、当然そうだと思いますけれども、そういう制度に、つまり、正常な形にできるだけ早く持っていく必要があるだろうと思います。

○纐纈委員今の御質問と関連するのですけれども、準備金は分かったのですが、官の保険責任額というのはどのように計算するのでしょうか。

○中澤信用機構課長民の方ができますので、その反対側が官になるわけです。

○荒川委員先ほどから民と官の役割という話で、民が主体でということは与件と取れているように思ったのですけれども、私は損害保険会社さんの監査をしていまして、一応会計処理とか拝見しているのですが、家計分野の地震保険は、民間の保険会社で一切利益を取らないで、全額を準備金に計上するということで、もともと営利目的は全くないわけなのです。

どちらかというと、地震保険制度そのものを成り立たせるためには、民間の損保さんの販売網であったり査定網であったり、それを使うことが一番効率的な制度運営になるという趣旨があって関わられていると考えたときに、営利目的であれば、巨大災害があったときだけ国がバックについているという論理も成り立つと思うのですが、もともと一切そこから利益は取らない。そういう制度であるにも関わらず損失だけは当然負担するのであるということは、制度の運営という面で与件として良いことなのかどうかというのが私は疑問に感じます。

○堀田委員そういう意見もあるだろうと思っていますけれども、基本的にこの地震保険は加入が任意なのです。そういうことは、強制であるならば、もっと強い形が可能だと思うのですけれども、加入するかしないかを民に任せた上で、そして、政府がその加入した人たちだけに、ある意味では便宜を払っている。これは、一般国民の公平性の観点から言っても、ある意味では少し地震保険の加入者に対する偏ったという言い方はあれですけれども、便宜がある。これは、そういう意味では、任意を貫いている限りにおいては、やはり自助努力で入りなさいと。それに対して、政府は支援をします。それは、例えば地震保険料控除を入れて、自ら地震保険に入るようにということなのだろうと思います。

今仰っているノーロス・ノープロフィットも十分承知しています。むしろ私は民がリスクを取るくらいの意識が必要だと思っていまして、というのは、今の仕組みは、民はリスクを取っていないと理解します。基本的には準備金の範囲内で払いますと言っているわけですから、ということは、ノーリスクで、当然のことながら、コミッションは業界として持っていくわけですから、その観点でいくと、保険業界は、必ずしもこれは地震保険制度に対して積極的にコミットしようとしているように見えないと私は見えますということであります。

○佐藤座長この議論は最初にあった議論で、随分昔ですけれども、要するに、本来地震保険の制度の主体性は官なのか民なのかということは、最初にプロジェクトチームの時によく出てきた。ただ、今堀田先生が仰ったとおり、基本的にこれは自助努力の一環であるということと、実際任意の加入であるということであったので、とりあえず民が主体で官が補助で、若干玉虫色ですけれども、そんな位置付けになった。ただ、どちらにせよ、官が別に全くバックアップしないわけではなくて、ちゃんと民の強靱性を担保するようにレイヤーとかの見直しについて配慮しましょうと、そのように落ち着いたということです。

○荒川委員任意というのは、契約者さんは任意だと思うのですけれども、保険会社さんも引受け拒絶できない制度ではないですか。

○堀田委員それは、ノーリスクだからではないですか。

○荒川委員ノーリスクであれば、準備金を超えての負担はない制度になると思います。先生が仰るリスクを取れという話なのですが、民間がリスクを取るのは、リターンがあるから取るのであって、リターンがないのにリスクだけ取るという制度は多分継続性がないのではないですか。

○堀田委員もちろん、そうです。その意味においては、リスクプレミアムをちゃんと応分の形で入れるという考え方もあるのではないですかということです。

○荒川委員そうすると、現在のように一切利益が認識できないという制度も変わるということでないと成り立たないのかなと思います。民間の方でも、家計分野ではなくて企業分野でやるとか、そういうリスクをちゃんと管理してやっていますけれども、ただ、家計分野のものは各社基本的に商品は同一の内容になっていますし、政府が関与しているということで、民間の経営の自分の意思でやれる制度ではないのかなというところで、そこは大きな差があるのかなと理解しています。この話が長くなると、あれなのかもしれないので。

○堀田委員言いたいことは本当はいっぱいありますけれども。

○佐藤座長ちょっと言い過ぎると、多分パンドラの箱を開けることになるので。

他はいかがでしょう。論点を整理すると、これまで我々は地震保険のまさに民にとっての強靱性をいかに担保するかというときに、保険料の配分と官民のリスクの分担と、これは整合的でなければならないということを前提に、前はレイヤーの見直しというところで落ち着いたわけです。結果的に民間サイドの保険金支払が増えれば増えるほどレイヤーはどんどんと民間の保険責任が少なくなる方に行ったわけです。これは、民間の強靱性を担保するためには、これまではレイヤーを見直すしかなかった。

ただ、それが裏返しは、結果的に民間の準備金の積立ても遅くなってしまう。この問題に陥ってしまって、これまで私たちは、プロジェクトチームのときは、結構巨大地震を心配していたのですけれども、ここに来て中規模が連続で起きているので、結構下のレイヤーのところで保険金がどんどんと支払が起きるということになりますと、やはり民間の積立てが滞るわけです。だから、そこで今日は事務局の御提案にあったとおりで、それならば、ひとつ強靱性を担保するという方法として、良し悪しは横に置いておいて、保険料の配分の話と、リスク分担の議論は一旦切り離して、一時的に民間の積立金の積増しに力点を置いたらいかがかと、それが1つの御提案だと思います。強靱性に対して、これまではやってこなかったわけではなくて、それはレイヤーの見直しという形でやってきて、今の状況になっているということだと思います。

○堀田委員質問を1つだけ良いですか。お話しされている一定規模の地震、それを2回分までカバーしますと、その一定規模というのは、聞き漏らしたかもしれませんけれども、どうやって算出されているのですか。それの2倍ということは、その前の元の1回というのはどのように算出されているのでしょうか。つまり、1回分であるということをどうやって確認できるのですかということです。今の民間準備金が2回分をカバーできますというその前の段階として、したがって、地震規模というのはどうやって求めていらっしゃるのか。

○中澤信用機構課長要は、準備金があって、それの半分が続いて、でも、半分の規模が2回あっても大丈夫という形になっているので、先に準備金ありきです。だから、実は一定規模というのは、当時のプロジェクトチームで言われたのは、一定規模というのはよく分からない、どこだか分からないのですけれども、今はとりあえず準備金の残高があります。それを半分にします。その半分くらいの規模のものが連続して2回あっても、何とか耐えられるというような計算の方法をしているということです。

○堀田委員私も何か曖昧にしか受け止められなくて、規模が適正な2回分に相当する準備金なのですと言われると、要するに元にある地震というのは、今の話だと。

○佐藤座長逆なのですね。準備金があって、それを2回で耐えられるようなリスク分担だと。

○堀田委員ということは、2回であるかどうかなんていう保障はないという。

○茶谷大臣官房総括審議官仰るとおり、まさに本当だったら、地震保険金の支払状況の実績から逆算して2倍ということが本来なのですけれども、今の考え方は、単に第2レイヤーが準備金割る2で設定しているから、結果として2回ですねと言っているだけで、規模を全く想定していない。それが実態とやや離れているというのが。

○堀田委員非常に重要な点で、つまり、では、適正規模は一体幾らなのですかという議論をするときに、2回分に相当する準備金が必要なのですと言ったときに、その元になる1回、それはどう算出するのでしょうかというところと引っかかる気がするのです。

○中澤信用機構課長それは非常に難しい論点でありまして、どこにするかということはなかなか決め手がない。先生が仰っているのは本当にそのとおりでございまして、例えば大きな地震があるとレイヤーを引き下げるのですが、仮にある年度が最初3,000億円あって、では、1,500億円が2回あっても大丈夫というような計算で、では、その時の1回というのは1,500億円だったのですが、その期中に大きな地震があって、その準備金残高が2,000億円になりました。レイヤーを引き下げました。そのレイヤーを引き下げた瞬間、耐えられる1回の地震は、最初1,500億円だったのに、ある時点から、次は1,000億円に変わっているわけです。だから、それを本当はどこかで決めなければいけないと思うのですが、では、それをどこにしますかということは非常に難しい問題で、そこも含めて御議論いただければと思います。

○茶谷大臣官房総括審議官それが、まさに先ほど、「本日ご議論いただきたい事項」の②にローマ数字で書いてあったのが、そういう観点から、やや違和感があるかと思いますが、こういう形でとりあえず考えられないかということで、例を示させていただいています。

○纐纈委員そういう推定で難しいのは、地震学者の責任がかなりあると思うので発言いたしますが、地震の予測というものは非常に難しくて、だから、それがきちんとできれば堀田先生の仰ったようなことができるし、皆さんも頭を悩ませなくていいわけです。そうではない現状を踏まえれば、私は現行の制度でやっていくしかないかなと思っております。

○佐藤座長何が理想かは分かりませんが、将来幾ら地震保険の支払が起きるかということは確かに分からないのですが、過去の実績というところで、先ほど6ページに出ていましたけれども、つまり、実績をベースに考えろと言われたら、②でいえば(iii)の自律的の意味はともかくとして、自律的に積み増されていくことが期待できるというのは、これは読み替えれば、過去の支払実績に基づいて、少なくともこれ以上の保険料収入が入るような形ということが多分1つあると思うので、ですから、過去の支払実績に基づいて考えるということが1つの考え方。もちろん、将来同じことが起きるとは限らないのはそうなのですが、他にデータがないのでということも1つの割切りかとは思うのです。

○堀田委員要するに積上げ方の話をするときに、保険料の引上げと同時に考えなければいけなかったりするでしょう。今、まだ3回目が残っていますというわけですけれども、この3回目は一体どのくらいのところを予定されているか。そっちが予定されているわけですよね。その数字を組み入れると、数字もまた変わってくるのではないですか。

○中澤信用機構課長料率の話は関係省庁の話もあるのでなかなか答えにくいところがあるのですけれども、先ほど資料1の方で料率の話をさせていただいて、3回目は引上げ幅、時期、未定ということで、1回目が29年で2回目が31年なので、では、3回目はという感じも推測がつかなくもないけれども、これは全然決まっていないのでよく分からないということと、全体で、2回目改定時に引上げ幅14.2%に引き下がっているので、これまで5.1%、3.8%と平均で上がってきたので、その残り分ということになると思うのですけれども、それが終わった後、保険料収入がどうなっているかというのは、確実にこうなりますとは言い難いところがあります。

例えば先ほど2,000億円で年間保険料収入を計算しましたけれども、足元は2,200億円弱くらいだと思います。それが2回目の引上げ前の額ですが、3.8%引き上がって、さらにもう何%引き上がってということで計算していくと、2,300億円にいくかどうか分かりませんけれども、そのくらいのレベルだと思います。全然足りないのではないかと、目黒先生の視線も怖いのですが、それも念頭に置いて議論は進めなければいけないかと思います。

○佐藤座長さっきの機械的なシミュレーション、7ページのところ、これは今の保険料を前提にしているので、1月と最後の引上げの部分はまだ織り込まれていないということで良いですね。

○目黒委員でも、支出はゼロだよ。

○佐藤座長支出がゼロなので、ここが言いたい仮定です。きちんと実績ベースで考えろと言われるのであれば、まずは保険料を上げたことを前提に、それがいわゆる平年ベースの収入になるはずなので、本当は保険料の増加も織り込んで収入を計算し、かつ支出が出ているわけですから、過去の平均的な支出がある程度、これらをベースに支出が出たとして、ネットでどれくらい積み重なるかという計算をするのが多分正しいと思うのです。確かに支出ゼロはかなりきついです。

○目黒委員勾配は、簡単に言うと2分の1でしょう。2,200億円か2,300億円で、1,100億円か1,200億円の支出が出る。

○佐藤座長時間的にはもっとかかる。

○堀田委員これは、ただ単に私の考えをこういうのもあるのではないですかということだけ申し上げるつもりです。例えば3rdレイヤーの扱いについてですけれども、ここには134億円という数字が載っています。仮にこれを全くゼロにしてしまうという形で、つまり、1stレイヤー、2ndレイヤーだけにして、3rdレイヤーをなくしてしまうという考え方だってあるような気もします。

それは、いろいろな意味は言えばあれですが、例えば11.7兆円を支払限度額に設定している、これにも関わってきます。3rdレイヤーを切るということは、もっとはっきり言えば、官と民の役割を小規模と大規模に明らかに分けるということを意味しています。そうすると、我々が一番心配しているのは巨大大震災なのですけれども、中小地震は頻発しています。地震に実は区別はつかないということにはなるのだろうと思うのですが、民の役割ということにおいては、中小の方も民が──今既にそういう状態ではないですかと、そのとおりだと思うのです。だったら、3rdレイヤーに0.1~0.2%ついているというのが何の意味があるのかなとむしろ思うくらいで、これを一気に取り払って、そうすると、民の準備金のある種目標値も少し修正されるかなと思います。

○中澤信用機構課長前回のPTフォローアップのときに議論があった点でありまして、3rdレイヤーもある程度民間の方の損害査定の規律を働かせるためということで存置され、ただ、レベル感は昔に比べれば、本当に必要な程度に限定するという形には下がってきたので、基本的な考え方は今もそのとおりではないかと私自身は思っているのです。ただ、すごく技術的なことを言いますと、実は3rdレイヤーのこの部分を取り払ってしまうと、先ほど言った官民保険料配分の計算をするときに、実は政府の方に多く配分される方に働くこともあるので、現実的には取りにくいという点もあるかなと思います。

期待値を計算するときに、3rdレイヤーの部分の損害が全部政府の負担になるわけですから、そうすると、必然的に計算すると、官がまたまた取り分が増えてしまって、民に回らないということが出てしまうので、ただ、今回これをどうするかということを考える上で。

○堀田委員今日の議論に乗せる必要は別にないのですが、今総支払限度額というものが設定されていますよね。これだって、民がカバーするものを仮に無限大という形にもし設定するとした場合、民の責任も無限大に理論上なるわけですよね。でも、実際に総支払限度額で支払を制限するということは多分無理ですよね。もし巨大なものが起こったとしても、約束していたものに対して、あなたはこの比例配分になりますという支払の仕方ができるとは到底思えないわけです。つまり、事実上総支払限度額というものはないに等しいのではないかと私は理解しています。だとすれば、民がここで上限を設定して、その分だけが民間の準備金ですと維持しておく理由というものはかなり低いのではないかと思うのです。

それから、今仰った査定のところで、モラルハザードが働くかもしれないと、これは、基本的には民の社会的責任の問題と関わるので、それはそんなに心配するような話ではないのではないでしょうかと思うのです。いずれにしても、今日の議論に乗せるべきかどうか知りませんが、そういう選択肢もあるのではないでしょうか。

○佐藤座長オブザーバーの方からでも、もし御意見があれば、いかがですか。言っておきたいこと。

○荒川委員今、準備金の枯渇ということで問題になっているのは、このレイヤーの1つの設計だけではなくて、これは1事故当たりの話なので、数回出たときの話だと思うのです。そのときに、今の保険料では足りていないということは先ほど目黒先生が仰ったとおりのことで、準備金を突き抜けた場合には、元受会社と日本地震再保険さんの役割がまたちょっと違っていて、ただ、結果として民間での負担というのが、年間で1,300億円に限定されているかというと、そうでもなくて、複数回来たときには、もっと大きな金額までいってしまいます。

という中で、先ほど目黒先生の長期的にどうなのでしょうかということは私もそう思うのですが、ただ、制度を大きく変更するということが短期間ではできない中で、目先、この制度を安定的に運用させるという面では、民間が保険料も取れていないのに保険負担をする、引受け負担もするということは、ある意味民間会社としてできないことなのかなと思って、本質のみではなくて、先ほど座長がパンドラという話がありましたけれども、目先、ある程度そこに至らないで安定的に運営していくということが大事なのであれば、今すぐできることは保険料の配分をある程度変えて、少なくとも民間の準備金を積み増していく。

そのときのスピードは、くどいですが、先ほど目黒先生が仰ったように、支払がない前提でというわけでは当然ないと思うので、できるだけ短い期間でやるという話をしたとしても、明日地震が起こってしまえば、また使ってしまうかもしれないので、なるべく早い期間である程度のところまで積み増していく。ある程度積んだところで、また次の議論というのがあるのかなと、会計の数字を扱っている人間としては、制度は足りなくなった時に何が起こるのかということについては、実務家としてそれを考えたときには、損保さんとしては保険料としてお金をもらっていないのに保険金を払うということはできませんので、そういう面では、契約者の方に不測の損害を与えないという面では、きちんと保険料をもらっている範囲内で制度が運営できることをできる限り対応していくということが、まずは目先の対応として大事なことなのではないかと思います。

○佐藤座長まとめていただきましてありがとうございます。短期的な観点、つまり、この段階で今我々が判断しなければいけないことと、堀田先生、目黒先生の問題提起でいくと、もうちょっと長いスパンで考えたときに、抜本的に見直すべきところというのは多分分けて考えても良いのかなと思うのです。

○纐纈委員民間の保険責任額を超えるような保険料の支払があった場合は、全部政府が見るのではないのですか。民間はやはりノーリスクだと思います。

○荒川委員それはちょっと違っていて、これは1事故当たりなので。

○佐藤座長これは3回起きたらアウトなのです。2回目までオーケーなのです。3回起きたらアウトになる、そういうことです。

○荒川委員1,300億円の範囲内でも、3回目が起きた時には、民間は保険料をもらっていない分から払うことになるので、そこはストレートに損失に繋がってしまいます。

○佐藤座長たしか、それで2回なのです。実は結局その度にレイヤーを見直して、準備金に応じた形で民間の保険の責任範囲を抑えてきた。良いか悪いかは横に置いておいて、そういう経緯があって、ただ、それが間に合わなくなる、レイヤーの見直しが間に合わない可能性があるので、たしか、2回分という建付けにしていたのです。ただ、3回起きると分からない。

○堀田委員それを今度は将来の保険料から回収するということもできるわけなので、ですから、今ある範囲内でしかそれを一切払いませんという考え方では地震保険制度そのものに関わるけれども、それはちょっと違うのではないかと思います。今ある範囲の準備金だけしか一切お金を出しませんというのはちょっとおかしくて、それは将来の保険料から借りてきても良い話ですよね。ですから、3回目があったって、当然のことながら、それは払わなければいけないのですよね。払う予定になっているわけですから。別に今2回だろうが3回だろうが関係ないのです。

○中澤信用機構課長要は、先ほどの資料の2ページのレイヤーで、青いところが民間の負担部分なのですが、ここに損害額が来た場合には、例えば縦の部分で、ここの小さいところですが、これは民間が全部ずっと払う。民間が100%払う。そのために準備金を積み立ててあるわけですが、その準備金が仮になかったとしても、それが起こってしまえば、民間保険会社はその時払います。ただ、それは堀田先生が仰ったように、将来の保険料みたいなもので補塡する。長い目で見て収支相償ですから、そういう関係にあります。

逆に政府の方は、白い部分のところに来れば、これはどんな場合でも政府が払うということになっていまして、例えば今11.7兆円が総支払限度額ですけれども、例えば8兆円くらいの支払がありましたという時に、残高は1.5兆円しかないわけです。だからといって、政府が払わなくて良いかというと、そんなことはなくて、そこは借入れをして、何とかして工面して払うのですけれども、それは、その年度だけではなくて、後ほど入ってくる保険料で賄うというような関係になっているということです。

○佐藤座長いかがでしょう。話が根本的な話になってしまいます。

○目黒委員査定の方で良いですか。以前、何回か前のときにも、保険の損害の程度の査定をするのに、今の延長上には解がないということで、それで、スマホなども使って、写真だけ撮ってもらって判定するだとか、自己申告だとか、いろいろなものを僕は当時提案させていただいたのですけれども、それに対して研究室まで来てもらっていろいろ見てもらったり説明したりしたときに、当時は、地震保険は自分たちが実際に行って、お家の方にお話をして、それで真心を込めて査定するのが基本なので、あなたが言っているようなものはだめですみたいなことを言われていたのですけれども、今はさすがにそれでは無理だということで変わってきたと理解してよろしいのですか。

○山元火災新種損害調査PTリーダー地震保険のPTフォローアップ会合を受けて、基本的には小規模というか、中規模の地震については今も立会いを原則にしております。ただ、首都直下地震を想定しますと、立会いとなると、迅速な支払ができないという可能性がございますので、そこで、まさに先生が仰った自己申告方式、要は書面をお送りして、写真を撮っていただいて、お返しいただいてお支払いするということを先般の東日本でも行いましたし、熊本地震も、当初交通途絶、なかなか立会いに行けない、その時期はこの自己申告方式を使って迅速な査定を行ったということでございます。

○佐藤座長ちなみに、自己申告は何件くらいなのですか。

○山元火災新種損害調査PTリーダー熊本のところは、実際の件数まで、各社の対応なので確認はできていないのですけれども、各社で取り組んでいるということでございます。

○目黒委員もう1つ関連して、資料1の4ページなのですけれども、以前は3区分だったものを今4区分にしました。それで、以前は半損だったものを大半損と小半損とに分けたわけですけれども、これで、例えば一番上の熊本地震の半損で2,418という数字が出ていますが、これを平成29年1月以降の基準に則った際に、この2,418というのがどのように割り振りされるのかとか、あるいはその後の大阪とか胆振東部の3つが平成28年12月までのもので集約すると、それぞれが全損と一部損も含めてどう分配されるのかということを確認はされているのでしょうか。つまり、基準を変えたことによって支払がどう変化したかということは見ておかれた方が良いのではないかと思うのですが、いかがでしょう。

○山元火災新種損害調査PTリーダーここについては、まだ細かいデータを取って検証ということは現時点では行っておりません。

○佐藤座長大阪と北海道で半損が残っていますけれども、これは前の契約がそのまま残っているという理解で良いのでしたでしょうか。

○山元火災新種損害調査PTリーダーそうです。

○佐藤座長今はあくまで半損は大半損か小半損かに分かれているという理解でよろしいのですよね。

○山元火災新種損害調査PTリーダー仰るとおりです。

○目黒委員大半損を用いたことによって、全損の一部が大半損の方には行かなかったでしょうか。それは全然ないですか。

○山元火災新種損害調査PTリーダー全損からはないです。

○目黒委員それだと、2ページの図が、この図がすごく分かりにくいです。間違っていますね。この図を見て今そう言ったのですけれども、半損はこのまま下に真っすぐに落ちてくるべきですね。

○佐藤座長そうですね。範囲は、一部損は一部損のまま、半損を2つに切っただけです。正確に言えば、同じ半損でも、小半損に分類されれば保険金の支払は減って、逆に大半損になると、保険金の支払は増えるので、ネットで見てどうなったのだろうかということは、まさに強靱性の観点からも見ても、検証された方が良いのかもしれない。

他はいかがでしょう。これをまとめろと言われるとすごく困るのですけれども、とりあえず、長期的な課題がまだ、特にここ数年の地震が続いているので、強靱性の観点から見ても、公平性の観点から見てもかもしれませんが、要するに地震保険制度について、長期的な課題はありそうだと。長期的というより、構造的な課題はありそうだということは1つあって、ただ、今日の議論として、準備金の回復について、これは特に、まさに民間が本来担う地震保険という趣旨も考えれば、民間の強靱性を高めるということは喫緊の課題であろうと。それならば、とりあえず保険料配分と保険責任の問題は一旦切り分けて、前のPTでやったような積上げ目標設定というので、一時的に民間準備金の残高を回復させていく、この方向性は是で良いですか。どうですか。嫌だというのがなければ、ただ、テクニカルな問題はここから先で、では、幾らなのだという話が残ります。

○目黒委員民間の損害保険会社の方々からすると、ここで自分たちの民間準備金を増やすことに対してのインセンティブは何かあるのでしょうか。

○佐藤座長こういう要望というか、必要性を感じているかどうか。損保協会さんはどうなのですか。

○大知地震保険特別委員会委員長損保協会の地震特別委員長の大知と申します。

今の御質問にお答えしますと、幾つか議論が出ていましたが、今回のこの地震保険制度自体としては、リスクを保険会社として持っているのです。保険会社は単年度決算でやっていますので、将来取り戻せるとは言っても、赤がぼんと出るというリスクはありますし、流動性の問題で、実はコストがかかるのですが、そういうものは料率の中に反映されていないです。

そういうものもあるので、この制度は、株主から言わせると、リターンを生まないものにどれだけ人、物、金をつぎ込んでいるのだという御意見も実はいただいていまして、そこにも対応しなければいけませんので、私どもは社会的責任と、それから日本の社会を支えるという意味でやっているのですというお答えをしていますので、その中で最低限支えるべきものはいただきたいというのがインセンティブで、まず準備金があれば安心して、引受けの奨励もそうですし、支払の方もできます。その形にしていただきたいという思いは持っておりますので、それがインセンティブだと御理解いただければ結構かと思います。

○佐藤座長率直な御意見ありがとうございます。

○目黒委員支払えなかったとしても、ちゃんと補塡はされるわけですよね。

○佐藤座長誰がお金を貸してくれるかという問題ですね、最後は。でも、多分こちらだと思うのですけど。

○大知地震保険特別委員会委員長補塡してくれるであろうという期待は持っているのですけれども、今制度的な裏打ちはないです。

○佐藤座長つなぎの資金だと思ってくれれば良くて、国は良いのです。ぶっちゃけ、これは借金しても何とか回せるではないですか。なので、お金がなくなっても、国はお金を借りるという手段があるのです。しかも、意外と低いコストで。ところが、損保さんも、前も議論があった。彼らが赤になったとき、選択肢その1は、国が補塡してあげる。当面の資金を融通してあげる。もちろん、融通です。将来の保険料でそれを返してもらうというやり方なのだけれども、ただ、それは制度的に誰も担保していないというのが彼らの主張です。さもないと、外からお金を借りなければいけなくなる。

○荒川委員地再社さんはこの事業しかやっておられないので、危険準備金を超えた再保険の支払というものは資金的な裏打ちが全くないので、誰かからお金を借りてこないと払えない制度なのです。

○佐藤座長民間の積立金があって、政府の積立金があって、お金を払うときに、まず民間がだっとなくなったとすると、もうお金がないのです。ただ保険金は支払わないといけないので、足りなくなってしまうのです。もちろん、政府も政府でお金を払っている。1つのやり方としては、政府が再保険会社とかに資金を融通してあげれば良い。

○纐纈委員融通するというか、再保険という契約を結んでいるのだから、必要額は払うということではないのですか。

○中澤信用機構課長分担しているので、民間の守備範囲のところは、再保険先は地再社さんなのですが、基本はそこで止まるわけです。政府は出てこないのです。そこは政府の守備範囲、民間の守備範囲と分かれているので、政府の再保険は政府が、もちろん出ていく先は地再社さんなのですが、地再社さんの先は民間と政府と両方に分かれていて、民間の方は、その世界で全部完結してしまう。政府の方は政府が再保険しているのですが、そこも我々がやっている再保険という世界なので、その意味では、だから、民間の方はある意味のリスクは負っているということなのです。

○岡﨑常務取締役今の日本での家計地震は全て元受会社が引き受けております。日本の国内で営業しております、その元受会社から保険を集めたものは全て日本地震再保険に再保険されています。まずここで1回の再保険が成り立っております。私どもとしましては、そのうちの今で言う大半に近いものを国の方に再保険をお願いしております。これが大部分の割合があります。残り部分は最終的には当社が保有しているリスクを持ったままの状態にしているということでございます。

したがいまして、国にお渡しした分については、国の方で最終的な対応をいただけるのですが、当社、日本地震再保険が保有したものはこの会社の中で最終的に出さなければならない。それにつきましては、制度的に言いますと、先ほどからのお話のとおり、将来の保険料、この制度に裏打ちされたもので回っていくという考え方でございますが、ただ、私どもは一民間会社でございますので単年度決算の問題もあって、そこでは借入れをして、一種の債務超過の状態に近いものになって、借入れをしてお支払を元受社にする。ただ、私どもは借入れできなければ、その分は元受社にとってはリスクとなるという可能性もある。これは全ての仮定の話でございますが、そういう状況でございます。

○纐纈委員では、先ほどの話に戻りますけれども、責任額というのはどういう意味合いなのですか。

○中澤信用機構課長責任額というのは、どの規模の損害があったときに、誰が支払をするかというのを決めるということです。

○岡﨑常務取締役先ほどの絵でございます。例えば資料3の3ページでございますが、ここの一番右の下、31年度当初予算で見ていただきますと、民間が1,338億円となっております。これが1回目起こる。2次補正があるなしは便宜上省略させていただきまして、連続して起こりますと補正が間に合わなければ2回目起こる。ここまでは今準備金を民間で持っております。ただ、3回目が不幸にして起こったら、これがそのまま当社としては借金になる。地震保険法上は、それにつきましては、8条で国があっせん融資するという条項はございますが、その話は別にしまして、基本的にそれを全部即国に肩がわりいただけるという話ではございませんということでございます。

○中澤信用機構課長今仰った3ページでいくと、白い面積のところに、例えばここで言うと3,000億円くらいの損害額のある地震が起きましたというときには、その部分については地再社さんから我々が再保険契約して、貯めている準備金の中からそれを支払うという形になります。

○茶谷大臣官房総括審議官要は1,000億円規模の地震が例えば10回起こった場合、ほとんどこの青から払われていって、1兆円の地震が1回起こると、この政府の。

○佐藤座長例えばこういう極端なことを考えてみましょう。中規模な地震が3回起きた。民間の資金が全部なくなっている。ところが、3回は中規模なので、政府はほとんど支払がない。政府の中にはまだ積立金が残っている。不足していたら、この部分が民間に充てられるのかと思いきや、そういう制度設計にはなっていない。何故かというと、これは中規模の地震で、被害額は限定的なので、あくまでも民間が払わなければいけない保険ということになるので、政府に積立金が残っている、イコール、民間がお金がなくなったからといって融通して良いという制度には実はなっていないというのがポイントです。

○堀田委員でも、事実上そういう話は理解した上でですけれども、要するに政府借入金という仕組みがあるわけですから、リスク自体は事実上ないに等しいのではないのですか。つまり、一時的に融通しなければならない道が確保されているということは期待の範囲ですと仰るかもしれないけれども、仕組み上は今さっきから何度も出ているように、将来の保険料から充当して、しかも、長い年月、それこそ100年200年300年という単位のスパンとして考えている中での話なので、今の仕組みの範囲で、民間保険会社がリスクを取っているという理解が僕にはあまりできないのですけれども、そんなに取っているのですか。一時的に融通するかもしれない。だけれども、それは後から取り返すことができるわけですから、他の保険とは違うのではないですか。

○荒川委員取り返せるかどうかという面では、この制度が導入されてきて今まで貯め込んできたお金が今枯渇しようとしているときに、将来に向かって余剰が出るという前提が成り立たないとその議論はできない話で、制度設計としては、保険料だけでは多分成り立たない保険なのだと思うのです。

○堀田委員枯渇すること自体は仮説で今議論しているのですけれども、だけれども、今の仕組みは、仮に万が一枯渇したとしても、そういう道が残されてあるので。

○荒川委員将来の保険料で過去の分の損を穴埋めしていると、将来の地震に耐え得る保険料が残せないということなのではないかと思うのです。

○堀田委員でも、それは、5年10年とか短いスパンではなくて、100年とかということを想定しているわけですよね。

○荒川委員それで、変な話、この強制保険というか、政府が勧奨する形、例えば自動車の自賠責保険であれば、制度設計として保険料で収支相償するようになっているかと思うのですけれども、地震保険の場合には、多分十分に取り切れていない。取ろうと思うと、多分単価が上がって契約者さんが加入できないという問題があるのかなと思いますので、ただ、その辺の制度設計の本質みたいな話をここで急に解決する話ではないと思いますので、そうすると、目先、この制度を維持するために、借入金で対応するというと、会計士としては、何年くらいで回収できるかということを普通に考えるのですけれども、現実的にそれが回収できるという想定は、結構会計の世界では難しいかなと正直思います。ということが現実の話としてある中で、今、この話を議論しているのではないのかなと思っているのです。

○佐藤座長多分この保険の厄介なところは、単年度で収支相償しているわけではなくて、長期で収支相償なので、言い方を変えれば、今日保険金が発生しても、理論的には将来の保険金でカバーできるので、だけれども、それは将来だというところで、民間から見れば流動性という問題が発生します。ただ、政府にとってみれば、大体の場合は、流動性というのは大きな課題ではないので、なので、財政の話と切り分けた議論になるのかもしれないです。

○纐纈委員責任額というのを1年間当たりに変えるというやり方はあるかなと思います。

それを離れて、もっと大きい問題としては、勝手に私から言ってしまいますけれども、保険会社さんにとっては、これは日本という地震国の会社としての社会的責任を果たしている1つの表れだと。その面において貢献しているということが最終的には各会社さんのメリットになっているのではないかと勝手に想像しておりますので、ぜひこの制度を維持していただきたいと思います。これは政府が全く関与しないというと、純民間であると、もうとてつもない保険料になるのは目に見えていますし、その現状は準備金の減少に当たるわけですけれども、アメリカなんかはそういう制度はないですから、純民間でやっているのはものすごく高くて、地震学者は一人も入っていないという話ですので、日本が世界に誇る制度として、ぜひサステーナブルに続けていただきたいと思います。

○佐藤座長次はいつ会合があるのですか。

○中澤信用機構課長まだ決まっていないです。

○佐藤座長今日の議論でも、ちょっと錯綜しがちなのは、特によく分かっていないのは、シミュレーションのところをもう少し精査をいただいた方がよろしいかなと思います。さすがに支払ゼロはないと思いますし、あと、よく分かっていないのは、自律的に積み増されていくと、多分ここのところをどのようなプロセスで計算できるのかとか、どういう前提条件を置いているのかとか、数字を正しく置かないと議論のしようがない。ではないと、どれくらい積み立てるのか、それから、どれくらい期間がかかるのかというのを見通しが立たないので、それはお願いします。

今日は、準備金残高の話と、さっき目黒先生からも御指摘があった簡素化の話が議論の中心でしたけれども、あと、もちろん地震保険にかかる根本的な問題として幾つか御指摘がありました。あと、もしあれば。

○堀田委員準備金の問題にも関わるのですけれども、地震保険の加入率が、当然のことながら、今さっき出てきた保険金支払の近年に増えている大きな背景にあるのだろうと思います。その意味では、今後も含めて、地震保険の加入率を想定した上で、シミュレーションも含めて考える必要がある。保険料引上げもさることながら、どんどん加入率が上がれば上がるほどリスクも大きくなっていくという関係ですよね。ですから、最近になって、急に保険金の支払が増えているように見えるのですけれども、この背景は加入率が高くなっているということが一番大きいのではないですか。

○中澤信用機構課長加入率は、今日は資料がありませんけれども、一番新しいので31.2%くらいまで来ていたと思います。世帯加入率が、29年度で31.2%、火災保険の付帯率が29年度63%とかなり上がってきていて、まだ上げた方が良いのではないかという人もいるのですけれども、御指摘のように。

○目黒委員仰るのはそのとおりだと思うのだけれども、でも、一方で、加入率が上がっているということは収入も増えているはずなので、1世帯当たりのリスクという意味では、リスクの評価が正しくないというだけの話です。簡単に言えば。収支のバランスが合っていない状態の人たちを増やせば増やすほど支出が多くなるなんていうのは当たり前の話で、リスクの評価の部分が適正ではないからそうなっているというだけです。

あともう1つ言うと、この資料で言うと、資料3の1ページを見てみると、大阪府北部地震で1,000億円ですよね。要はあるレベル、集積度が高いところに小さな地震でも起こると、エクスポージャーとしてこれだけ大きいから、すぐ1,000億円という世界になるので、あれくらいのものが大都市圏で起こると、1回で1,000億円規模になると感覚的に持っておかないといけないと思うのです。

そうなると、先ほどのシミュレーションも、もっとかなり安全側で見ても、いつくらいまでにこれくらいの民間準備金が確保されると、少しシミュレーションを何パターンかできちんとやっておいて、かなり危険性を見たとしてもそこそこいけるというところを踏まえた上でデシジョンしないと、変えたからといって、またすぐ変えなければみたいなことの繰り返しになるのではないかと思うのです。

○佐藤座長これは損保さんに対する質問になってしまうのですけれども、4ページで、まさに今大阪の地震のときに一部損が随分高いです。全体の半分以上です。1,000億円という保険金の支払に対して、私が今見ているのは資料1ですけれども、4ページのところにある一部損が700億円近いです。これは、普通一部損は件数は多いけれども、1件当たりが少ないから、支払額はそこまでないではないですか。これは何か特殊要因なのですか。

○目黒委員さっき、それを調べた方が良いという理由なのです。

○山元火災新種損害調査PTリーダーここの原因ははっきりとは分かっていないのですけれども、もちろん件数が多いということ。

○佐藤座長めちゃくちゃ多かったのですか。

○山元火災新種損害調査PTリーダー一部損の件数という意味でいけば、件数は多いです。多いところと、平均の保険金の単価の方との掛け算で高くなっている。都市部でございます。

○佐藤座長これは意外と大事かもと私が思うのは、実はこれまで、どちらかというと、全損とか半損のところでの支払金、これがまさに支払の総額、ものすごく影響するだろうと思っていたのですけれども、久しぶりに起きた都市部での地震ではないですか。これで意外と一部損が多く出るということは、この部分、これから首都直下とかを考えるときに、出てくる被害なのではないかということです。

○堀田委員この4ページですけれども、大半損と小半損を比較すると、小半損の方に偏っていますよね。つまり、今まで半損にカテゴライズされていたもののうち、均等に50対50に分かれるのではなくて、むしろ小半損の方に偏っているということでいくと、結果的には保険金の支払は抑えられているのですか。

○佐藤座長半損のところを見れば、理屈上はそのはずです。

○堀田委員そこは検証していただきたいような気もしますけれども、要するに、この4区分にした結果、保険金の支払は多少抑制されているのかということです。

○大知地震保険特別委員会委員長誤解を避けるために敢えて申し上げますが、必ずしも地震が起きると、正規分布のように半損から全損に対してきれいに分布するわけではなくて、地震のありようによって、比較的小さいというか、ショックのあり方によって、分損に寄る地震と、揺れ方によっても、地震学者の方がいる前で恐縮ですが、全損がものすごく多い地震というのは統計的にはあると思います。ですから、必ず今までのパターンと同じような比率の分布になるはずだというのはなかなか難しい議論かなと思っています。

加えて、地域によって、例えば鉄筋コンクリート造の建物が多い地域であれば、全損は比較的少ないというのは傾向的にはあります。これは、しっかり調査に基づいた発言ではないので恐縮ですが、大阪の場合には、比較的家財系の損害が多かったので、例えば建物は平気なのですが、中でテレビが吹っ飛ぶみたいなものがあると、どうしても分損が多くなります。そういうパターンの違いは踏まえた上で分析しないと、違った方向に迷走してしまいますので、どういう分析ができるか考えますけれども、その要素があるということだけ申し上げておきます。

○佐藤座長都市型とか地方型とか、いろいろとパターンはあると思うので、特に家財は今まであまり加入率は高くなかったので気にしなかったけれども、多分上がってきているとすると、このあたりで一部損で出てきているのかもしれない。そのパターンを幾つか類型化して分析される方がよろしいかと思います。

他はいかがでしょうか。

では、今日は一応いろいろと議論を出していただいて、とにかく第1回目なので、いろいろな議論をテーブルの上に出していただくということで、それを今度は論点として今後整理して、喫緊に取り組めること、少し先というか、中長期的に考えるべきこととか、幾つか分けていくことになるのかなと思います。ただ、幾つか宿題は出ていると思います。最後の方に出てきた話も、今の保険金の支払状況がかなり変わり始めてきているので、これは何なのかということは少し詳細な分析があって良いかなというのと、シミュレーションにつきましても、支払ゼロはないでしょうということで、幾つかのパターンでもう少し精緻な分析があって良いのかなと思います。その辺を出していただけると、もう少し議論が前に進むのかと思います。

では、大体こんなところかなと思います。

では、最後に事務局の方から、今後の予定について連絡をお願いいたします。

○中澤信用機構課長次回につきましては、皆様方の御予定を伺った上でまた連絡をさせていただきます。目途としては、5月末から6月上旬くらいを予定しております。よろしくお願いします。

○佐藤座長どうもありがとうございます。

では、以上、これで閉会とさせていただきます。お忙しい中、ありがとうございました。

午後4時00分閉会