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地震保険制度等研究会第6回 議事要旨

1.日時 令和4年5月30日(月)10:00~12:00

2.場所 オンライン

3.出席者

(委員)佐藤主光(座長)、阿部美雪、纐纈一起、清水香、鈴木隆樹、中埜良昭、藤田友敬、堀田一吉、目黒公郎(敬称略)

(オブザーバー)一般社団法人日本損害保険協会、一般社団法人外国損害保険協会、日本地震再保険株式会社、損害保険料率算出機構、金融庁監督局保険課、国土交通省水管理・国土保全局海岸室

(事務局)横尾信用機構課長

4.議題

  • 地震保険に関する最近の動きについて

  • 令和3年福島県沖を震源とする地震への対応

  • 民間準備金の現状

  • 基準料率改定の届出

  • 地震保険制度等研究会における議論のとりまとめ(令和2事務年度)のフォローアップについて

  • 加入促進策の取組状況

  • 立地に応じた保険料の割増・割引(立地割増・立地割引)

5.議事内容

(地震保険に関する最近の動きについて)

  • 日本損害保険協会、日本地震再保険株式会社及び損害保険料率算出機構から、地震保険に関する最近の動きについて説明を行い、討議を行った。

  • 討議における委員からの主な発言は次のとおり。

  • 自己申告方式による査定やオンラインの活用など、査定に新たな手法が取り入れられたのは良いことである。

  • 今後、自己申告方式にWEB申告方式の導入やデジタル技術の活用を検討していくことは、支払の迅速化や不備事項の減少という観点から望ましい。なお、デジタル化を進めるに当たっては、高齢者等の弱者への配慮が必要。

  • 自己申告方式という新たな取組が導入されながら、大きなトラブルは発生していないと認識している。これは、代理店によるサポート体制や、不備に対する電話や対面での対応等が適切に行われたことによるものと思料。

  • 地震保険の請求を勧誘する業者等とのトラブルが増加しているため、大きな地震の発生後には、テレビCMやインターネット等も活用し、請求勧奨と合わせて一層の注意喚起を行ってほしい。

  • 自己申告方式により、損害状況の改ざん等による不正請求が行われる可能性があるため、保険会社は適切に対応する必要がある。

  • 自己申告方式について、過剰又は過小な申告がないか事後検証を行ってほしい。

  • 地震保険の加入率が高まったことで、令和3年福島県沖を震源とする地震の保険金支払額は大きなものになった。加入率の更なる高まりは、加入者の属性によっては保険料率の計算に大きな影響を及ぼす可能性があるため、検証が必要になるだろう。

  • 民間準備金が減少したためにその回復を図る方策を実施している現状に鑑みると、現在の保険料率は低く今後も不足する方向に進んでいると考えられ、保険料の引下げを行うことは整合的でないのではないか。保険料負担の公平性を是正しつつ全体としての保険料を増やすことが必要と考える。

  • その他、日本損害保険協会、損害保険料率算出機構及び事務局から、次の発言があった。

  • 地震保険の請求勧誘業者等への対応として、SNSや書面での連絡、新聞チラシ等によりトラブルへの注意喚起を行っている。引き続き業界として対策に取り組んでいきたい。

  • 保険料率は、長期で収支相償となるようにシミュレーションに基づき算出されるものであり、今般の料率改定は、地震調査研究推進本部が作成する震源モデルの更新に基づく引上げ要因と、住宅の耐震化等の引下げ要因とを合わせた結果、全体として引下げとなったものである。

(地震保険制度等研究会における議論のとりまとめ(令和2事務年度)のフォローアップについて)

  • 日本損害保険協会、事務局及び金融庁から、地震保険制度等研究会における議論のとりまとめ(令和2事務年度)のフォローアップについて説明を行い、討議を行った。

  • 討議における委員からの主な発言は次のとおり。

  • 損害保険料率算出機構の調査によれば、地震保険の加入を検討した場面として多いのが、「地震災害の報道を見たとき」である。地震発生後に請求勧奨のためのCM等を行うことは、未加入者に対する加入促進の観点からも重要。

  • 火災保険水災料率の細分化と地震保険の立地割増・立地割引とでは共通項も多いが、火災保険は完全に民間保険であるのに対し、地震保険は政府関与があるという違いがあるため、料率のあり方にも違いが出てくるものと思料。

  • 保険料率の議論においては、公平性の観点からリスクに応じた保険料率にすることと、保険料が高すぎるがゆえにリスクのある人が保険に加入せずリスクに備えないという現象を防ぐことの両面を考慮する必要がある。立地割増・立地割引の議論においても、保険料負担の公平性を高めることだけでなく、保険を通じて国民の潜在的リスクへの備えにどのように貢献できるかという観点がある。

  • 過去の保険金支払実績に占める津波の割合が1割程度であることや、今後、大きな津波被害をもたらす南海トラフ巨大地震の発生が予想されていることを踏まえると、津波リスクの算定の仕方について検討が必要ではないか。

  • 現行の都道府県単位の料率体系では、全ての津波のリスクを適切に反映できていないのではないかという問題意識を持っており、立地割増・立地割引は、こうした問題意識を踏まえ、より明示的に津波リスクを料率体系に取り込むための議論であると考えている。

  • 非常に大きな被害をもたらした地震が、この約10年間に集中して発生している。過去のトレンドとは違った被害が発生し、保険金支払額が大きくなっているのであれば、津波に限らず全体の保険料率の検討が必要ではないか。

  • 東日本大震災や南海トラフ巨大地震等の大地震が発生した後は、多数の大きな余震が発生する可能性が高い。また、大きな地震が発生する確率が高いという認識が広まれば、付帯率は向上する。このことを踏まえると、保険料率が超長期では正しくリスク評価されていたとしても、例えば50年といった期間で見た場合、準備金が不足する可能性があるのではないか。

  • その他、損害保険料率算出機構及び事務局から、次の発言があった。

  • 保険料率の算出においては、地震調査研究推進本部が公表する震源モデルに基づき、南海トラフ巨大地震等を含む全ての地震についてシミュレーションを行っている。

  • 大地震の発生等により震源モデルの見直しが行われた場合や、被害状況の分析により被害関数の見直しを行った場合などには、得られた新たな知見をシミュレーションに反映し、保険料率の算出手法の精緻化を行っている。

  • 地震保険制度創設以来、支払保険金は保険料の積立金で賄ってきている。制度上、仮に積立金が不足する場合には、将来の保険料収入で返済することを前提として国庫からの繰入れ等を行うことで、保険金支払を行える仕組みとなっている。

(以上)