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中間論点整理(要旨)

-21世紀の資金の流れの構造変革に関する研究会-

1.「資金の流れ」を研究する趣旨、目的

(1)「資金の流れ」に着目し研究する必要性の高まり


 90年代の資金の流れの構造変化
 フロー面では、従来一貫して資金不足主体であった法人企業部門における資金余剰の継続と、公共部門の大幅な資金不足がみられる。
 また、ストック面では、1200兆円を超える個人金融資産を含め、巨額の金融資産が蓄積される一方、一般政府の債務残高は先進国中最も深刻な水準となっている。このようなストックの拡大を受け、わが国経済を分析するに当たってはフローだけをみるのではなく、フローとストックの双方を関連づけて分析する必要性が高まっている。


 21世紀の資金の流れを研究していくにあたり考慮すべき事項
 21世紀の資金の流れの構造変化を展望する上で、経済の国際化や高齢化の進展が、資金の流れやそれと表裏の関係にある貯蓄・投資などの経済動向、さらには、政策効果にどのような影響を与えるかについて、適切な見通しを持つことが重要となっている。
 さらに、21世紀の入り口である2001年に向けて、金融システム改革、財政投融資改革など、資金の流れの構造に大きな影響を与えうる種々の改革が進行していく。

(2

)「資金の流れ」を研究する視点


 上記のような問題意識を踏まえ、下記の視点から、本年4月より研究会を開催し、検討を行ってきた。


 少子高齢化が進展していく中で、21世紀初頭の資金の流れの構造をどのように考えるべきか。


 経済の潜在力を高め最大限発揮するために、効率的な資金配分を確保していく上での政策課題は何か。


 市場を通じた効率的な資源配分に加え、公的部門が果たすべき役割は何か。


 中間論点整理は研究会の中で示された委員の意見を整理したものであり、今後1年程度かけてさらに検討、研究を進める予定である。

2.議論の整理

(1)今後の資金循環・経済動向と公的部門による資金調達のサステナビリティ



ポイント)


 21世紀の資金の流れの構造変化を展望するに当たっては、高齢化の進展の中で、21世紀初頭の経済動向及びISバランスがどのような姿となっていくのかについて幅広くシナリオを描く必要がある。


 公的部門のISバランスに関しては、仮に潜在的な経済成長が実現されても、相当規模の財政赤字が残るとみられることから、そのマクロ経済への影響と財政赤字のサステナビリティに関して検討を深める必要がある。


 公的部門による資金調達に関しては、国債、地方債とともに、今後発行されることとなる財投債、財投機関債など、公的部門全体の資金調達の観点から検討する必要がある。

 (

個別の論点)

1

 資金循環の前提となる今後の経済動向、貯蓄・投資の動向

i

)経済動向
 一昨年来の景気の低迷についての見方。
 中長期的な潜在成長率(技術進歩率の見方、構造改革の進展など)。

ii

)民間投資の動向
 設備投資の回復に向けた見通し。
 今後の設備投資の水準についての見方(国際的な資本コストの収斂の影響など)。

iii

)民間貯蓄の動向
 貯蓄率が90年代に高止まりしている原因について。
 高齢化の進展が貯蓄率に与える影響と21世紀初頭の貯蓄率の見方。

2

 公的部門による資金調達のサステナビリティ

i

)公的部門による資金調達のサステナビリティ
 現状の財政赤字のサステナビリティの評価(金利・成長率とプライマリー赤字の水準など)
 経済動向等を考慮した部門別のISバランスの検討の必要性。

ii

)財政赤字が経済に与える影響
 経済の国際化の中で財政赤字が世界の実質金利に与える影響。
 財政状況に対するマーケットの評価により、リスクプレミアムが発生する可能性。
 他の先進国でみられた「非ケインズ効果」。

iii

)国債の負担の再検討と効率的な資金配分
 世代間の公平性。
 民間経済と公共経済の間の資源配分のあり方。
 経常収支への影響を通じた国債の負担。

iv

)地方財政の赤字を巡る論点
 地方財政における自律性、自己責任の必要性。
 地方債と市場メカニズムとの関係。

3

 公的部門の資金調達、フロー及びストック管理のあり方

i

)広義のデット・マネージメント・ポリシーの必要性
 国債、地方債、財投債に加えて、政府保証、年金の将来債務などオフバランスの債務を含めて国全体の債務を把握する必要性の高まり。
 よりアクティブな国債政策に転換する必要性。

ii

)フロー及びストックの認識・評価方法、ストックの管理に関する検討の意義
 国内各部門のバランスシートの現状を整理することが重要との見方。
 公的部門のフロー及びストックの認識・評価方法に関する検討の必要性。

(2

)資金の流れからみた効率的な金融市場と資金配分機能の強化



ポイント)


 現状においては、日本の金融市場のリスク配分機能、価格機能は十分に機能しておらず、また、資金余剰下にも拘らずリスクキャピタルが不足している。


 今後、効率的な金融市場を展望する上で、金融の持つ機能のうち、リスク管理、情報の提供の機能、ガバナンスの機能を強化する必要があり、また、経済の多様性を確保していくために market-based システムに移行する必要がある。


 特に当面は、いわゆる「市場型間接金融」の拡大とともに、ガバナンスの機能など日本の金融市場に不足している機能の拡充が目指すべき方向ではないか。


 そのためには、現下の緊急対応に伴う政府によるリスク負担の代行の拡大により歪められている市場のリスク配分機能及び価格機能を回復し、市場の規律・ガバナンスが働く仕組みにすること、及び高度の金融技術を備えた人材を育成し、活用する仕組みを社会に確立することが今後の課題である。


 金融市場がその本来期待される機能を回復・拡充していく中で、公的部門はどのような役割を果たしていくべきかについて検討を進める必要がある。

 (

個別の論点)

1

 現状認識

i

)金融市場のリスクテイク機能、価格機能の低下
 リスクキャピタルの不足。
 背景として、不良債権処理、公的部門の関与の高まり、金融機関の貸出行動、キャッチアップ型経済の終焉、など。

ii

)金融業の現状
 資金の仲介業からリスクの仲介業へ移行。
 信用リスク管理のために規模と質的変化を追求する必要。

iii

)公的部門によるリスクテイクの拡大とその評価
 金融システム不安に対する緊急非難的措置としての公的部門のリスク負担の代行の拡大。
 公的部門のリスク負担の代行による金融市場におけるプライシングの歪みの発生。
 金融システム改革の理念の再確認。

2

 効率的な金融市場の整備に向けた展望

i

)効率的な金融市場のあり方
 日本の金融市場には、リスク管理、情報の提供、ガバナンスの機能が不足。
 経済の多様性確保のための market-based システムへの移行。
 特に当面は、いわゆる「市場型間接金融」の拡大を目指すべき。

ii

)効率的な金融市場の整備のための課題
 市場のリスク配分機能、価格機能の回復。
 銀行経由の既存チャネルと資本市場経由の新規チャネルが併存する複線型システムへの移行。
 創業期、再編期の企業に対するガバナンスや情報提供の機能を発揮する、いわゆる「alternative investments」の確立。
 制度面やシステム面での市場インフラの整備。

iii

)今後の金融機関と金融サービスの姿
 様々な機能の組み合わせを持った金融機関の多様化。
 リスク管理、流動性管理、情報提供等の機能への要請の高まり。

3

 効率的な金融市場と資金配分機能の強化に向けた対応

i

)金融システム改革と財政投融資改革
 効率的な金融市場の構築に向け、全体として整合性のとれた改革とする必要。

ii

)リスクマネーの創出と金融仲介機能の強化
 集団投資スキームの整備。
 ディスクロージャーの一層の推進、企業会計原則の整備。

iii

)市場の機関化
 市場の機関化が市場及びその参加者に及ぼす影響と市場秩序の確保。
 郵便貯金、年金資金の自主運用。

iv

)ベンチャーキャピタル、M&A等の新たな金融サービスに必要な技能の高度化
 経営面の規律付け等新たな金融サービスに必要な技能の高度化。
 希少な人材を社会全体で有効に活用していく仕組みの整備。

v

)セーフティネットのあり方
 システミックリスクと制度的対応。
 特例措置とモラルハザード。


iv


)

公的部門の役割
 政策金融の意義、公的部門の役割。
 財政投融資改革の資金の流れに対する影響。