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国の債務管理の在り方に関する懇談会(第54回)議事要旨

.日時 令和3年6月24日(木)16:00~17:30

.場所 財務省 第三特別会議室(オンライン開催)

.内容

1.これまでの国債管理政策の取組と今後の課題



まず、理財局より「これまでの国債管理政策の取組と今後の課題」 (資料1資料2)について、説明が行われた。その後、自由に意見交換が行われた。



 ▶ 当局からの説明概要は以下のとおり。


 (1.はじめに)

 ・本日で現メンバーでの開催は最後とし、今後、新たな議論の場の設置を検討していくことを考えている。

 ・これまでの国債管理政策の取組を振り返った上で、今後は、ポストコロナの我が国の経済社会を見据えた国債管理政策について検討を進めていくことが必要。

 

 (2.国債管理政策の主な取組と評価・課題)

 ・「1.『市場との対話』の強化、入札制度の改善等」に関して、PD制度については、2004年10月から開始し、これまで状況に合わせて見直しを適時実施してきた。これにより国債は安定的に入札・発行ができてきていると考えており、今後も、引き続きこうした取組を続けていくことが重要と考えている。

 ・在り方懇を含め、これまで種々の「市場との対話」の会議を開催してきており、引き続き、「regular and predictable」な国債発行を意識しながら取り組んでいく必要がある。

 ・民間人材の登用については、「市場分析官」の新設など、様々なノウハウを蓄積するための取組を進めてきた。

 ・「ディスクロージャーの拡充」については、債務管理リポートの発行をはじめ、様々な形での情報発信に努めてきた。

 ・「2.国債市場の流動性の維持・向上(インフラ整備)」に向けた取組に関して、「流動性供給入札」については、2006年に導入して以来、発行額や対象ゾーンの見直し・拡充などの取組を進めてきた。

 ・「買入消却」については、必要に応じて買入対象の見直し等を実施してきている。

 ・「原則リオープン化の推進」にも取り組んできており、また、「決済期間の短縮化」として原則T+1化の取組も進めてきた。

 ・「3.商品性・保有者層の多様化」に関して、「超長期債市場の育成」の観点から、40年債を2007年に導入し、少しずつ発行規模も拡大してきている。40年債については、現在まだ隔月の発行となっているため、今後、状況を見ながら、毎月発行化やコンベンショナル方式への発行方式の変更なども検討課題になると考えている。30年債についても、これまで発行規模を拡大してきた。

 ・超長期国債先物は、現在ほとんど取引が行われていないと承知しているが、こうした取引の活発化も今後の検討課題と考えている。

 ・「個人保有の促進」においては、個人向け国債について、10年債を皮切りに5年債、3年債と順次導入を進めてきた。若年層を含む国民の認知度の向上・ニーズの掘り起こしが今後も必要と考えているため、一層戦略的な販売促進や広報活動などに取り組んでまいりたい。

 ・「海外保有の促進」を目的に海外IRを積極的に力を入れて実施してきている。これまで累計43か国の地域で実施してきているが、この1年間については、コロナの影響もあり、対面での実施ができなかったため、オンラインを活用して実施してきている。今後も、特に海外の中銀や生保、年金などの安定的な保有が見込まれる層を中心に戦略的な海外IRを実施していく所存。また、今後もオンラインのメリットも生かしながらやっていくことが必要と感じている。

 ・「4.国債の平均償還年限」については、以前は徐々に長期化することを掲げてきたが、現在は諸外国に比べても遜色ない水準になってきている。こうした中、当懇談会においても、特にフローベースの各年度の年限について、長期化にこだわり過ぎると、逆に、ニーズに応じた柔軟な対応が困難となるのではないかという議論もあり、ここ数年前から、特にフローベースに関しては、長期化することを目的化せずに、自然体でニーズに応じた発行を行ってきている。しかし、足元では、新型コロナの対応に伴う短期国債の増発により大幅な短期化が進んでいるため、その是正は今後取り組む必要のある課題だと認識している。

 ・「5.債務管理の高度化」としてのコスト・アット・リスク分析について、昨年11月の在り方懇において、新型コロナ対応で平均償還年限が大幅に短期化した影響として、コストとリスクの両方を定量的に示し、議論いただいたことは1つの成果と考えている。今後も様々な分析の実施について検討していきたい。

 ・「6.BCP体制の強化」については、非常時に日銀からの一時借入が可能となる制度を創設した。また、今般の新型コロナ対策を踏まえ、非常時においても安定的に入札事務ができるように、様々な体制整備にも取り組む必要があると考えている。


(3.ポストコロナを見据えた国債管理政策の検討)

  ・今後、ポストコロナを見据えた検討においては、特に次の4つの点に留意すべきと考えられる。(1)「短期化した平均償還年限の是正」。足元で短期化したものを是正していく必要があるが、この点に関しては、昨年11月の本会合で、委員からのプレゼンにおいて、過去に危機対応などで平均償還年限が短期化した後、それを長期化していくというサイクルにおいて、比較的大きなショックが発生している例があるという点も御指摘があり、こうした点も頭に置きながら、今後の対応を検討していく必要がある。

 ・(2)「日銀の金融政策が国債市場に与える影響」。現在の日銀による量的・質的金融緩和の下で、国債金利は非常に低位安定的に推移しているが、今後、金融政策の方針が変更される場合には、国債市場にも影響が出てくる可能性が考えられるため、こうした点も頭に置いて検討していく必要がある。

 ・(3)「市場の流動性・機能度の維持・向上」。昨今、国債市場の流動性や機能度が低下しているという指摘やJGBマーケットからの人材流出を懸念する声も聞かれてきている。こうした状況が続けば、さらに市場の機能が弱まることになるため、流動性・機能度を維持・向上するために、発行当局として、どういうことができるかということも含めて、考えていく必要がある。

 ・(4)「より多角的な議論の必要性」。例えば、世界的な金融のリスク、自然災害のリスク、地政学リスク、サイバー攻撃、AI・ビッグデータの活用を含む金融技術の発展など、国債市場を取り巻く社会状況の大きな変化が国債管理政策にどういう影響を与えていくかといったことも、頭に置いておく必要があるため、今後はより多角的な視点・観点からの議論・検討が必要だと考えている。


▶ メンバーから出された意見等の概要(当局においてとりまとめ)は以下のとおり。


・ HFT(High Frequency Trading)取引は、恐らくT-Billなどの短期金融市場で活用されていると思う。HFTの分析は、株式市場では金融庁が行っていると思うが、為替市場や国債市場におけるHFT取引の分析についても行う方がよいのではないか。

・国債市場を考える際に、最悪のシナリオに対していかに対処するか、ということを事前に考える必要がある。金融政策の緩和が終わり、引締めが行われるときに、格付がシングルAからトリプルB・ダブルBに格下げされることが、1つの悪い方のシナリオだと思う。こうした状況に対して、中央銀行が必ずしも国債を買って対処することができなくなった場合にどう対処するか、という最悪のシナリオを考えておく必要がある。

・グリーンボンドについて、現在のヨーロッパの基準では色々なボンドがグリーンボンドと呼べてしまうため、日本あるいはアジアできちんとした定義を作ることによって、グリーンボンドに国内の人たちが投資できるような環境を作ることが必要ではないか。

・日本国債の需要では、海外勢の保有が、特に今は短期のところでは増えているが、ギリシャの危機などの事例を見ると、海外勢の逃げ足は速い。今のところ海外勢の保有割合が大きいのは短期金融市場だけではあるが、逃げ足の速い海外の保有が一定程度以上になったときに、不安定性が増すような気がする。国内投資家による安定的な国債需要の維持が望まれる。


・在り方懇は、基本的には市場との対話を目的として発足されたのだろうと思うが、この市場との対話は、歴史的に4つの局面があるのではないかと考えている。98年の運用部ショックや財投改革、また、国債の大量発行という形で1つの危機があり、2000年に国債市場懇談会ができた時というのが第1ステージ。その後、2002年のムーディーズの格下げ、それから2003年のVaRショックなど、様々な危機もあり、また同時に、シ団の見直しに伴い、国債市場特別参加者制度ができたことが、第2ステージ。いずれも、やはり大きな危機に対応したものであったと思う。
 その後の第3ステージにおいては、リーマンショックに対応して、物価連動債や15年変動利付債への様々な対応ができたということと、マクロ的な大きな危機における円高への対応など、こうした状況の中で、大変な劇薬の処方が行われた。これが第4ステージとしての2013年以降の異次元の緩和や、その後のYCCにつながる。この第4ステージにおいては、市場との対話というよりは、日銀との対話という形に大きく変質したのではないか。市場との対話というよりは、非市場化と、市場機能に麻酔をかけたような状況になったということで、今に至っているのではないか。    
 いわゆるアメリカでいう債券自警団といったように、国債市場に非常に緊張感があったような状況から、ほとんど緊張感がなくなったような状況になってしまったと思う。そういう状況の中で、現在、1つの節目を迎えている状況なのではないかと思う。

・今後の動向としては、債券アナリストとして、国債というのは非常に重要な身代わり地蔵ということを申し上げてきたが、国債の安定には、3つの要素があると思っている。1番目は経常収支の安定、2番目にホームカントリーバイアスが日本の場合は大きいこと、3番目に、最低限の財政規律であり、私は「市場への愛」と申し上げていたが、そういうものが支えていたと思う。

・今後、1番目に日本の構造問題として経常収支の安定がどこまで保てるのか、2番目に、足元のような円高不安がなくなってくる中では、徐々にホームカントリーバイアスも変わってくるのではないか、3番目に、財政規律の観点から、日本銀行のこれだけの強い麻酔がかかっている状況がいつまで続くのか、ということに対して、いつか必ず出口が起こり得るという状況の中で、国債管理政策はある面では防災に似ていると思っており、いつか来る危機に対してどう備えるのかを常に考えておくことだと思う。

・シ団もなくなった中で、一定の協調解を描いていくという状況が市場との対話の中にあったため、危機の時にどういう形で協調を機能させていくのかという点が重要となる。また、新たな参加者が減少してきている中で、危機のときには参加できるような状況として、プレイブックや危機対応の予備役のようなものを用意しておく必要があるのではないか。


・日本銀行の金融政策によって様々に変わってきていると思う。確かに今は、調達コストの抑制という意味では国債管理当局と日銀が同じ方向を向いている一方、流動性の面や、多様な投資家がいる必要のある市場の機能という点では様々な課題が出てきていると思うし、また、財政と金融の関係も非常に曖昧なものになってきていると感じている。

・最近では、新型コロナ対応のため、大量に国債を発行し、大幅に短期化が進んだということがある。前回会合でのプレゼンテーションにもあったが、今後、市場をよくウォッチしながらこれを正常化していく試みもしていかなければいけないので、短期的な課題としては非常に重要な課題になってきていると思う。

・これからは、国債管理政策をトータルに様々な観点から検討していく必要があると思う。市場の機能を回復させながら、また、金融政策が正常化していく過程で同時に財政再建についても取り組んでいく必要があるわけだが、現状、市場から財政規律のwarningがないため、どのように財政再建を進めていくかということについては、日本全体の課題として考えていく必要があるのではないか。その意味では、例えば60年償還ルールをどう考えていくべきか等、様々な論点について、今後も議論していくことが大事ではないかと思う。


・今のマーケット環境を改めて見ると、中央銀行の異例の緩和政策によって市場機能が制約される一方で、財政面での負担が異例のテンポで増大している特殊な状況である。先進国で発行が急増しているという状況は、債券市場への圧力という点で見ると、市場でマッチポンプがフル稼働しているような状況であり、ガスが世界的にたまっているという思いで見ている。

・先進国のマクロ政策の方向性が少しずつずれてきているため、出口政策が重要になっていると思うが、日本は、先進国通貨圏の中でも一番遅れる可能性が高く、債券市場に思わぬリスクが出てくる可能性があると展望している。これまで取っていた政策の中で、例えば、国債の多様化や、流動性向上策、特に海外IRについては、その効果が出るのではないかと期待している。

・新型コロナ関係の課題が上げられているが、今後大事になってくるのが4点目の多角化の議論だと思う。気候変動や地政学、サイバー、テクノロジー、様々なアジェンダがあるわけだが、金融界のみならず、金融市場の公共性がより重要になってくるのが不可逆な流れだと思うため、例えばESGや、SDGs、グリーンボンドも含めて、積極的な研究をこれからも続けていく必要があると考えている。


・プライマリーについては、発行額の抑制と毎年度の平準化は、プライマリーディーラー」としては、すごく大切だと考えている。2年程前には前倒債が52兆円程積み上がっていたのが現在は10兆円程度であり、そのときは積み上がり過ぎではないのかという議論があったが、このような何年かに一度の出来事があるとあっという間になくなっている。ここ2年ぐらいは前倒債で助かっている部分が大きいと思う。前倒債についても、どの程度の額が適正なのか今後ぜひ議論してほしい。

・セカンダリーに目を向けると、流動性の確保が必要不可欠と思っている。大きな枠組みで金融政策を運営していく中で、日本銀行が国債の40%超を保有しているが、T-Billを除くと50%近い保有になっているという状況も事実で、しばらく緩和の方向性自体は変わらなくても、方針の微妙な変更の影響から逃れることはできず、マーケットと金融当局の対話は必須ではないかと考えている。  
 超低金利の長期化で国債市場の流動性と機能度が低下しているのは事実で、それに伴って価格発見機能のようなものは低下してきている。これを放置すると、マーケットの参加者が少しずつ減少していき、最終的には発行コストの増加という一番大きな代償となるリスクであるため、ウォッチしていかないといけないと思っている。

・マーケットのベンチマークは、長期債である10年債から20年債に移ってきている。一方、マーケットの金利上昇の一番の大きなヘッジ手段は、今でも長期国債先物であるのは事実で、イールドカーブ全体を7年1点でヘッジしているというのがマーケットの実情である。スワップやデリバティブのマーケットは大分大きくなっており、この場でも超長期国債先物の検討などをしていただくなど、多様化しているとは思うが、引き続きセカンダリーのマーケットをサポートしていくことが大切だと思っている。プライマリーとセカンダリーは表裏一体であるので、よくウォッチしていかないといけないと感じている。

・グリーンボンド等は、当然、新しいものをすぐ発行すればよいというわけではないので、難しいと思うが、個人向け国債も含めて検討の必要があるとは思っている。


・やはり市場機能に麻酔がかかっている状況である。発行年限の長期化は非常に重要な課題だと思っているし、また、財政政策と金融政策の境目が大分曖昧になってきているという御指摘について、同じように感じている。
 今、日本でも大量に国債発行を増やし、これから発行年限を長期化していかなければいけないという課題があり、一方で、政策の方向性を見ると、数年先と言ってもアメリカも利上げの方向が視野に入ってきているという状況で、国際的なマーケット環境が変わっていくことが想定される中で、このまま市場機能が低下している状況を放置していいのかということに関しては、非常に大きな懸念を感じている。

・これまでも日本銀行との意見交換や情報共有を進めてきてはいるが、通常であれば金融政策と財政政策は景気循環的な意味で相互に影響を及ぼすことは当然あり得ることだが、市場機能の低下に関しては、非常に構造的な問題になってきているし、これまでの枠組みを超えた形で、今後、日本銀行と意見交換や連携を強化していくことが必要ではないかと思っている。制度的な枠組み上、近過ぎるのは問題というのもよく分かるが、構造問題に関しては例外的に、これまでとは違った形の情報共有、連携が市場機能の回復のためには必要になってくると思う。


・「3.ポストコロナを見据えた国債管理政策の検討」について、1点目は、(1)の短期化の是正については、まさに今直面する課題であり、取り組む必要がある。より重要なメッセージは、(1)の3つ目のパラグラフと考えている。過去よりも国債増発が膨らみ、かつ金融機関の金利リスク量も急増している中、この先、FRBのテーパリングに向けた議論が本格化していくことにより、金融システムの不安定化といった不測の事態への対応等がこれまで以上に求められてくる局面への備えが短期的に必要になってくるのではないか。

・2点目は、想定されるシナリオへの備えの大切さである。様々な環境変化やリスクに対し、これまでも適切に国債管理として対応いただいたとは認識しているが、想定外というよりは、想定としてシナリオを作り対応策を考えておくことが、非常に重要ではないかと思う。日銀の金融政策が正常化していく局面においては、これまで同じ方向を向いていた状況が異なってくるかもしれないという指摘は同感である。前回、量的緩和政策を是正した時とは日銀の資産規模も違うが、財政状況が大きく悪化している点について、より留意する必要があると考える。また、高齢化が本格化していく中で、政府債務と家計の純金融資産の逆転も、中長期的に予想される1つの変化と思うが、そうなれば、海外への依存度は増していく。さらに、(4)で挙げられている震災リスクも、いつ起きるかは誰にも分からないが、政府が出している報告書によると、確率は高いといわれている。

・今回の新型コロナ危機を改めて振り返ると、地域医療構想の重要性が長らく言われてきたが、実際にこうした危機が起きてみると、医療の機能分化や連携ができていなかったことがあぶり出されている。国債管理で同じ轍を踏まぬよう、最悪の場合も含めて幾つかシナリオを描き、起きたときの対応策を考え備えておくことが、国債管理上、さらには国の危機管理として、重要ではないかと考える。


・これからどのように議論するかについて、他の委員会とのつながりをどうするかということも1つのポイントだと思う。ここで議論していることは、かなり財政審と重なっている点もあると思う。ここでは市場の観点から見るが、財政審などとの関連も考えるべきではないかと思う。  
 ここ何年間も議論しているが、財政悪化については、大体、赤字が増えているということで考えてきたが、財政悪化の定義として若干足りないと思う。つまり、財政赤字は大きくても、お金を使っている場所や目的について適切に実施しているということであれば、特に大きな問題はないと思う。  
 そのため、ポストコロナの時にお金をどう使うか、という点に新しい課題が多くあると思う。例えば、これからDXあるいは脱炭素の世界になるため、大量の設備投資が必要である。その中で、今のまま社会保障を放っておくのであれば、必要なDXや脱炭素の設備投資ができなくなるため、DX、脱炭素の議論と社会保障の議論は、一緒にした方がよいのではないかと思う。

・財政の役割について、例えばDXが進むと生産性が上がるため、救い主ともいえる。マクロ的に言うと、供給曲線が右シフトであり、これはすばらしいが、需要曲線は右シフトか左シフトか分からない。設備投資が多くあるため右シフトの面もあるが、途中で雇用破壊が発生するため左シフトになる。左シフトになった分、雇用者の学び直しを支えながら次の経済を作らないといけないため、社会保障の構造や、DX及び脱炭素等、財政政策や財政支出が貢献できるような形にしないといけない。この委員会のテーマである国債の発行と直接関係ないかもしれないが、必要な投資をすることを目的として議論する中身を考えていったらどうか。


・国債の年限構造や残存年数といった情報は、大事だと思っている。財政赤字を基本として、最初に国債の年限構造を示した発行計画が出されるわけであるが、それがマクロ的にも大事である。例えば、「preferred habitat theory」(投資家の年限選好がイールドカーブに影響を与えるという理論)的な考え方をすれば、その経済の金利が需給の年限構造で決まるというほど重要であり、FTPL(物価水準の財政理論)の考え方だと、インフレ期待が年限構造で決まるというような大事な情報だということを改めて認識した。

・ポストコロナで短期化した平均償還年限の是正という問題がある。確かに景気が非常に悪くなることが見込まれるコロナショックにおいては、長期のリスクプレミアムは上がるリスクが高いため、危機の時に短期化することは正当化されることではあると思うが、今後長さを戻していくということは大事なことだと思う。

・リーマンショックの時も短期化が進み、その後、短期化を是正していくような政策がなされてきたわけだが、その際の金融政策の方向性の関係や、長期化していく上で考慮しなければいけなかったこと等、当局で蓄積があると思うので、その辺の知見も使いながら、今後、短期化した平均償還年限の是正を検討してほしい。


・本懇談会の前身の国債市場懇談会がなぜ生まれたかと言えば、1998年の暮れから1999年にかけて、いわゆる資金運用部ショックが発生し、長期金利が0.7%台から2.5%まで急騰したことがある。この反省を受けて、当局も、市場参加者の意見を聞かなければいけないということで、2000年9月に第1回の国債市場懇談会が開催されたと記憶している。その時の第1回目の議事録を見ると、国債管理政策とともに、その前提として、財政の健全化を進めることが重要、というコメントがある。21年前に、そもそも国債の発行量が多過ぎると書かれている。    
 ただ、今どうなっているかと言えば、2000年9月段階の利付国債の残高が、大体377兆円。最新のデータで去年の12月は財投債を含めて1,043兆円ということで、大体3倍弱に増えている。その間、実は日本銀行の保有比率は、2000年9月時点では僅か11.3%だったものが、昨年12月段階では48.3%、と5倍近くに膨れ上がっている。ここまで国債の発行量が増えても金利がほとんど動かないのは、日銀のYCC政策、要は日銀が利付債の5割を持っていることにある。だからフロー及びストック効果が大きいということであり、これがもう普通なのかと言えば、多分普通ではなく、どこかで変化が訪れると思う。能動的に日本銀行が出口政策に向かえるような状況であれば、これは問題ないと思う。景気、経済が活性化し、良い金利上昇が起こるかもしれない。

・問題は、日本銀行が抱えきれないような状況、最後に書かれているが、今後の日本の国債市場の大きなリスクは3つあって、1つ目が少子高齢化の一層の進展、2つ目が南海トラフ地震、首都直下型地震等の自然大災害、3つ目が米中摩擦、要は日本に極めて直接的な影響を与えるような地政学的リスクの可能性がないとは思わない。南海トラフ地震や首都直下型地震は、30年以内の発生確率が南海トラフ地震で74%、首都直下型地震で70%であるから、皆さんが生きている間に起きて然るべきである。    
 また、少子高齢化が足元で一層喫緊の課題となっており、今回のパンデミックの影響で出生数が大幅減少し、昨年は84万人まで低下した。今年はフルで影響が出てくるため、場合によっては80万人を割ってくる可能性がある。他方、日本の昨年の死亡者数は一昨年比で減っており、パンデミック下においても、全体としては平均寿命が大幅に伸びている。少子高齢化は大きく進んでおり、今後、年金問題、社会保障問題について相当深刻な影響が出てくる。その際、日本銀行が国債を抱えきれなくなった時にどうするかということが次の最大のテーマであり、今後はぜひ、そういう点を直視する体制で臨んでほしい。

・国債残高と日銀による国債買入れが膨張する中で、当局がいかに国債の安定消化と流動性維持に腐心されてきたか、改めて確認した。今後も努力を続けていく必要があるが、国債の安定消化と流動性維持のための根本的な課題は、やはり債務残高の膨張を抑制していくことだと思っている。一方で、国内の金融政策は既に限界に来ており、海外でも限界に来ている中で、今後も経済的なストレスが起きるたびに、財政政策に頼ることが益々多くなってくると思っている。    
 こうした中で、財政政策については、中長期的な視点で潜在成長率を上げるための方策が大変重要になってくると思う。少子化対策、そして高齢者の雇用も考えていかなくてはいけないと思うし、グリーン、デジタルなどの政策を長期的な視点で進めていくことが、とても重要だと思う。

・民間では、企業におけるコーポレートガバナンス・コード、そしてスチュワードシップ・コードの両輪の導入以降、企業の成長性は高まっていると思うが、依然として企業の超過貯蓄状態が続いているため、需要を創出していくようなリスクテイクをしていくことで、一段と成長を求めた投資を企業が行っていくことが重要になると思う。


・大量の国債発行があり、極めて短期に集中しているものを平準化していくことは今後の大きな課題であるが、過去を振り返ると、そういう局面では大きなストレスがかかりやすく、改めて主要なプレーヤーである財務省と日銀と投資家の3者で緊密にコミュニケーションすることが肝要。

・今後の多角的な視点では、デジタル証券の発行も検討課題として挙げられる。これからCBDCがどう進展するか分からないが、デジタルの活用は進む可能性が高い。民間でデジタル証券を発行する場合、流通面などで課題がある中、国債でデジタル証券が発行されれば、課題解決に向けた動きが加速されると思う。

・今、財政のニーズがあって、国債が大量に発行され、お金が出回っているわけであるが、残念ながらこれが経済を回転させていないようにみえる。銀行に預金が集中し、それが日銀に集まるという形で、まだ空回りしているように感じられる。お金をどう使うかに焦点を当てると、グリーンボンドのように使途を限定する債券の発行も、お金が有効に回るためには重要と感じている。


・昨年度の国債の増発は短期に集中しているが、振り返れば結果的には金利上昇とイールドカーブのスティープニングが起こっており、ショックのような状況には至ってないが、前回会合での委員からのプレゼンテーションのとおり、今後、償還年限の平準化をするという点では、丁寧な債務管理の必要性が増しているのではないかと思っている。

・年限別の国債発行額については、その発行額や決め方も含め、投資家の需要を考慮していただいていると思っているが、PDとして参加している身として、入札の供給量に対する瞬間の消化能力という意味では心もとなさを感じる場面というのは多々あり、日々、緊張感を持って流通市場に携わっている。日本銀行の関与度合いは高くはなっているが、引き続き、市場との丁寧な対話を踏まえて、発行計画等の柔軟な変更の在り方や発行方法を検討していただきたいと思っている。

・発行当局である理財局の様々な取組みに加え、財務省内や、歳出要求サイド、諮問会議のメンバーにも、国債市場の現状を正しくご理解、ご認識を深めて頂くよう、より一層の連携を図っていただくことは、国債市場の安定化だけでなく、丁寧な債務残高の管理という点においても、重要だと考える。ポストコロナの国債管理政策の在り方を議論する場を新しくご検討する上で、この点は是非ご考慮いただきたい。


・国債発行が再開されてから、国債利払費をできるだけ少なくしようという考え方の下、国債発行はシンジケート団が引き受ける制度の下に置かれ、当時、マーケットは不自由かつ不完全であった。特に、1966年から10年間、銀行シ団は、引き受けた国債の売却を自粛要請されており、マーケットはない状態だった。1977年から自粛措置が緩和され、マーケットは大きく拡大した。しかし、市場金利が上がると国債発行を休債するということが何度も、1984年ぐらいまで行われていた。その後20年経ち、日本にアメリカとほぼ同じPD制度が導入された。市場との対話を踏まえた「regular and predictable」な国債発行計画の下で、全ての国債を公募入札発行することが国債市場の流動性を高め、結果として、国にとっては安定的な資金調達と長期的な国債費の抑制につながる。この考え方に基づき、現在、日銀の量的・質的金融緩和政策の下で、全ての国債を公募入札発行しているということである。

・国債費を抑制すると言う人は減ってきたが、ヘリコプターマネーという考え方も、国債費を抑制することを強調する。大事なことは、補正予算を含めた国債発行総額の抑制である。多くの方々が指摘された昨年度の短期国債発行額が急増した問題であるが、年度途中の補正予算で急に増えたので、やはりイレギュラーであり、定期的な国債の公募入札発行を守るためには、前倒債の活用に加えて、短期国債の発行にも依存せざるを得なかったということだと思う。もちろん、これから先は、意識を持って長期化を進めていくことが大事だと思う。

・ポストコロナについては、我が国は経済危機や大規模な自然災害、そして安全保障リスクの顕在化から決して無縁ではない。したがって、今後は、当初予算だけではなく、補正予算にも規律が必要である。日本国債の国際的な信用がこれ以上低下すれば、本邦企業、金融機関、外貨調達コスト、企業の海外事業展開に大きな影響を与えかねないからであり、さらに、日本銀行の金融緩和政策も効果をなくしてしまう危険がある。    
 これまで30年間、金利低下が続き、市場が警告をほぼ発生することができない環境が長く続いていた。市場が正常な機能を取り戻し、長期的に利払費の最小化を実現するためには、決して規制金利の時代に戻ったり、ヘリコプターマネーの考え方に屈したりするのではなく、市場関係者は、PD制度と「regular and predictable」な公募入札発行を守り、そして、来るべき日に備えて、各社はレビュー体制の維持を図っていくことが必要だと思う。国債の歴史が教えるように、国債管理政策には秘策も奇策もないため、我々は王道を歩んでいくことが大事である。


・アメリカにおけるダイナミズムと、日本経済のあまりにもダイナミズムを欠く現状が気になっている。その点で、国債の流通価格も、日本銀行がどう出るか、あるいは財政支出を抑制する仕組みがいかに働いていないのかといった議論が出てくる。例えば、アメリカで、国債の流通価格にも影響を与えた労働市場での新しい動きがこの1か月ぐらい見られる。一番興味深いのは、コロナパンデミックからの終焉を迎えつつある中で、今年に入って、働き手が自己の都合で職場を辞める比率が急速に上がったことだ。様々な理由があるが、一番の理由は、自分の職歴にもう一つを加えることがある。パンデミックの中で、リモートワークになり、次のコロナの後の局面にと、1人1人が考えることになり、自己の都合で退職し、リトレーニング、リスキルのために時間を使う。その後は、マーケットで、例えばリンクトインで、需要サイド、企業サイドから出ている情報を自分なりに理解すれば、どういうところにオファーできるということが分かる。今年に入ってから離職が増え、4月に大きな変化が起きた。
 そうすると、当然であるが、労働需給に影響が及ぶため、賃金の決まり方や期待インフレ率、結果として、国債の流通価格にも影響を及ぼす。    
 今後の道筋については、マーケットは右往左往しているようだが、最も重要なのは、国民の1人1人が、能力がある人や見立てができた人は自分で行動し、結果としてマクロの労働需給や期待インフレ率、国債の流通価格に影響を与えること。働き手は、自分でリスクを取って、新しい行動に出ているが、日本でこういうことが見られることは残念ながらないだろう。    
 中国を見ると、共産党は消費者物価を上げさせないようにするが、卸売物価に相当する「Producer Price Index (PPI)」には手がつけられない。エネルギー価格等、世界的に不足している資材には介入できないため、原材料高の製品安という利益圧迫が民間企業の常態となりつつある。これから本当につらい道筋になっていくだろうと思う。    
 アメリカは1人1人が意思決定に踏み出している。日本でも、1人1人が自分の責任で、どういう意思表示をして行動に出るのか、つまり、国の在り方をマクロのフレームワークで変えていくということをもう一遍考えなければいけないのではないか。自分ならこうするという行動を伴ったボイスが日本社会でも出てくれば、我が国の国債の流通市場がこれまで何のサインも出していなかった点が変わる可能性があるのではないか。物価、金利、賃金の抑制枠組みだけに議論を押しとどめてはいけないと思っている。

 
→(理財局から説明)

・委員の皆様のコメントで共通しているのは、今後を様々な視点で、あるいは最悪なシナリオを考えるべきということだと思う。

・問題意識としては、我々も同じであるし、日銀の金融政策が今後どうなるかということも、頭の体操をして、様々な状況を考え、対応を考えていく必要があると考えている。

・HFTの監督自体は、金融庁が所管になると思うが、国債発行当局としても、そうした市場の状況などは注視していく必要があると考えている。

・グリーンボンドについて、昨年の11月の会合でも申し上げた通り、現時点で直ちに発行することを考えているわけではないが、引き続き、海外の動向などについては注視していきたいと考えている。

・市場機能の回復が重要だという御指摘や、それに関連して日銀との連携についても御指摘をいただいた。この点では、これまで市場との対話に力を入れてきており、今後とも、国債市場特別参加者や国債投資家をはじめ、市場との対話を十分に行っていくのは当然であるが、日銀ともしっかりとコミュニケーションを取っていくことも重要と考えている。


▶ 最後に、大鹿理財局長より挨拶が行われた。


(以上)



連絡・問合せ先:
 財務省 理財局 国債企画課 企画係
 電話 代表 03(3581)4111 内線 2565