国の債務管理の在り方に関する懇談会(第47回)議事要旨
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.日時 平成30年6月15日(金)9:30~11:30 |
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.場所 財務省 第3特別会議室 |
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.内容 |
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1.国債市場の現状と国債への投資環境(資料①(PDF:2727KB)) 2.国債管理政策を巡る今後の論点(資料②(PDF:70KB)) |
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まず、三菱UFJ銀行 内田委員より、国債市場の現状と国債への投資環境(資料①(PDF:2727KB))について説明が行われ、意見交換が行われた。
▶ メンバーから出された意見等の概要(当局においてとりまとめ)は以下のとおり。
・ 現下の国際経済に置かれている日本の位置づけ、すなわち日本が海外に門戸を広げていかざるを得ない
状況において、外貨の調達需要が強まっており、その中で、円の有効活用という意味でも、日本国債の
担保としてのリユースは非常に重要な位置づけである。
・ 債務危機を起こす国は、国内債務型と海外債務型に大別され、日本は国内債務型だと思う。万が一、日本が債
務危機に直面した場合、海外債務型として過去に債務危機を経験した国と比較して何が違うのか、どのような点
に注目してくべきと考えるか。
・ 海外債務型については、まず、経常収支が赤字となり、その後対外債務国に転じ、危機が起きるというのがほと
んどのケースである。一方、国内債務型の債務危機は、1945~48年のイギリスが典型的な例であるが、その時
は国内において、インフレによる国内債務バランスの変動や市場の大きな変動、国内外における為替の大きな
変動が生じており、こういった点に十分注視が必要。
・ 国内債務型の場合、通貨の信用がある間は、外国人も買い続けると思うが、その結果、国内債務型から海外債
務型に移り、その後で格付け低下のような事態になると、危機が起きる可能性もあると思う。何%程度までであれ
ば、海外投資家の保有を進めて問題ないと考えているか。
・ また、経常収支の黒字が続く間はいいかもしれないが、今後、経常収支の構造が変化していくだろう。銀行は、貸
し出しにより次の産業を支える役割も担っていると思うが、AIやロボットなど、今後、日本が経常収支黒字を続け
ていくためにどういった分野が重要だと考えているか。
・ 30%が海外保有となっている日本の株式市場は、海外投資家の投資動向による影響を受けやすくなっている。
一方、現行の国債の海外保有比率が10%程度で、国内投資家の取引が一方向に振れた場合に市場が不安定
化する可能性があることを踏まえると、20%程度が1つの目途ではないかと思う。ただ、単なる比率の問題という
より、日本国債自体が金融におけるグローバルなプラットホームとして認められ、外貨準備の運用先や担保とし
て位置づけられてさえいれば、一定の安定性・持続性は維持できる筈。
・ 産業革命は第5次革命に入っている中で、IOTやAIが主軸になっていくと思うが、ポイントは資本収支。輸出の主
軸になる次の産業が何かというよりは、金融資産の運用を通じ、グローバルなプラットホームで円がどう位置付
けられるかが重要。
・ 現行の金利政策により、長期金利が事実上固定化しており、市場機能をなくした規制金利下から自由化するよう
な状況で、歴史を見てもあまり事例がない。
・ 金融政策の出口においては、諸外国の例でもフラッシュクラッシュが起きたことがあり、また、過去の日本では
VaRショックとして、リスク管理や投資の方向性が一緒になったこともあり、プロシクリカリティが生じやすい。
財務省・日本銀行・市場参加者の三位一体としてのコーディネーションの発想は、今後ますます必要。
・ かつての金利上昇時にも言われていたが、保有者層の多様化も重要。また、商品設計としては変動利付債で
あったり、国内・海外・個人向けの商品性をどのようにしていくのかなど、引き続き議論していく必要。
・ いつかは分からないが、最終的に日本の金融政策の出口で起きる市場変動は、過去に例もない。財務省・日本
銀行・市場参加者のそれぞれが、主体的に各々の役割・責任を認識し、三位一体で円滑な発行・流通・消化を
行っていくことが大切であり、そのための仕組みを予めどう構築するかが重要。
・ 国債管理政策に関する市場との対話は、いわゆる運用部ショックで金利が急騰したことを契機に始まった。一
方、現状では、金融政策の結果、長期金利が固定相場制に回帰したような状況になっているが、当時と比較し
て、今の状況に対する懸念・危惧はあるか。
・ かつては、日本国債の影響度が、国内の部分的な動きだけであったが、今や日本の国債の問題は、海外も含め
たセンシティビティの高い問題に昇華したとは感じている。
・ 10ページのIMFのデータについて、プライマリーバランスが各国ともマイナスにも関わらず負債比率がピークアウ
トしている要因が分かれば教えてほしい。
・ ここ数年はグローバル経済の拡大局面が続き、名目GDPが潜在成長率を上回る状態となっていることや税収が
増加していることが、債務残高比率を抑えているのではないか。ただし、名目成長率の上昇に持続性があるのか
は分からず、構造的に良化しているのかと言えるかどうかは不明。
次に、理財局より、国債管理政策を巡る今後の論点(資料②(PDF:70KB))、海外IR(資料③(PDF:1010KB))、および主要諸外国の国債管理政策の動向(資料④(PDF:339KB))について説明が行われ、その後、自由に意見交換が行われた。
▶ 当局からの説明概要は以下のとおり。
(国債管理政策を巡る今後の論点)
・ 一つ目は、議論の前提となる外部環境に関わる論点として、「経済・財政状況」、「金融政策」、「金融規制」。
-「経済・財政状況」として、今後の内外経済の見通しに加え、財政健全化に向けた取組に対する評価など
-「金融政策」として、日本銀行のQQEやイールドカーブ・コントロールが投資家の資産運用や債券市場に与える
様々な影響
-「金融規制」として、金融規制による投資家の投資行動への影響に加え、規制がマーケットメイクのコストを高
め、市場の流動性に影響を与えること。この点については、各国の発行当局の意識も高まっている
・ 二つ目は、国債の発行政策に関わる論点であり、発行当局にとっての中心的な課題。
・ 国債管理政策の究極の目標は、「確実かつ円滑な発行と中長期的な調達コストの抑制」であるが、昨年10月の
当懇談会でも説明したとおり、「中長期的な調達コストの抑制」を実現するには、短期的な需要の変動に過度に
対応することなく、中長期的な需要を踏まえ、安定的に発行していくことが大事。そのため、主要投資家である
銀行や生命保険会社の「中長期的な投資動向」を的確に把握していくことが重要。
・ また、現在は国内の機関投資家中心となっている保有者層を多様化することも重要。保有者層が多様化してい
れば、市場急変時に、取引が一方向に偏らず、市場を安定化させる効果が期待できる。将来への備えという意
味からも、個人投資家や海外投資家の国債保有を促進していきたい。
・ また、物価連動債については、現状、わが国において、投資家のインフレヘッジニーズが高まらない中、投資家
層の広がりを欠いているが、発行額の2割近くを物価連動債で占めている国もあり、市場環境が変化した時の
備えとして、市場を育成しておくことが重要。
・ 三つ目は流通市場関係。中長期的な発行コスト抑制のためには、活力あるセカンダリー・マーケットの存在が不
可欠。
・ 日本銀行の金融緩和が長期化する中で、市場流動性が低下すれば、「いつでも必要な金額を合理的な価格で換
金できる」という国債の最大の魅力が失われるとの懸念が、当懇談会でも議論されてきた。また、債券市場には、
本来、経済状況の変化や財政規律の緩みに対して、金利変動という形でシグナルを発する機能があるが、そうし
た機能の低下も懸念されている。
・ また、本年5月からの国債の決済T+1化が流通市場にどういう影響を与えているか、金融緩和が長期化する中
で現物市場と表裏の関係にある先物・レポ市場にどういう影響が出ているか、といった点にも留意する必要があ
る。
(海外IR)
・ 海外IRの目的・方針は、「確実・円滑な発行」、「国債市場の安定」の観点から、海外投資家の国債保有の促進を
図ること。海外投資家は、国債保有割合(ストック)では1割強に留まっているが、国債流通市場での売買シェアは
現物では3割強、先物では6割弱と高いプレゼンスであり、「市場の安定」に向け、海外投資家の役割は大きい。
・ 今のところ、豊富な家計金融資産を背景に、国内投資家中心に国債を消化。しかし、高齢化の進展による貯蓄
率低下等から、家計金融資産と政府債務の差は縮小傾向。政府債務が増加していく中で、「国債の確実・円滑な
発行」に向け、海外投資家の役割が大きくなる可能性。
・ 海外投資家の資金は足が速く、ポジションが一方向に傾きがち。海外IRを通じて、海外投資家に対して日本に関
する正確かつタイムリーな情報提供を行っていくことが「市場の安定」に当たり重要。
・ 海外投資家の保有割合について、10年前と比較すると海外投資家の国債保有割合は上昇。増加の大宗は短期
ゾーンであり、昨年初めて保有割合が60%を超えた。
・ 海外投資家のT-Bill保有は、通貨スワップを使ったドル運用。T-Billの「確実・円滑な発行」という観点から、通貨
スワップ市場も含めた市場環境の変化を注視していく必要。
・ 平成29年海外IRは、18か国131先への訪問。また、平成29年度からは、海外拠点に加え、東京拠点にも訪問し、
拠点ごとの体制・機能に係る情報収集に加え、東京拠点との新たな関係を構築。
・ 海外IRを行う中で把握した海外投資家の動向について、低金利かつ低ボラティリティの環境下では、日本国債の
投資妙味は乏しいとみる投資家が多く、ドル円ベーシス・スワップ等を活用した短期ゾーン投資が中心。なお、
格付け基準をもとに投資先を限定している一部の投資家が、投資基準を満たしていないにも関わらず、好調な
日本経済の状況を踏まえ、日本国債への投資を継続した先も。このような投資家に対しては、今後とも丁寧に
対応していくことが必要。
・ 引き続き、長期保有が見込める投資家を重視したIRを推進し、長期的かつ緊密な関係を構築。同時に、将来的
な保有や市場の活性化に向けて、現在の保有状況に関わらず、大手運用会社等にも定期的に接触を図る。
・ 海外IRにおいては、日本の情報を正しく伝えていくことが重要。金利等の数字が投資の判断基準であるとはい
え、日本の政治や政策に関する情報に対する海外投資家の関心は高く、一方で、そのような投資判断を左右し
得る重要な情報が彼らに十分に伝わっていない。発行体と投資家の信頼関係の下で、日本の情報を正しく伝
えていくことが、海外IRの意義のひとつ。今後も引き続き、国際会議等マルチの場でのIRのみならず、個別のIR
にも注力していきたい。
(主要諸外国の国債管理政策の動向)
・ 主要諸外国においては、現下のグローバルな低金利環境を受け、多くの国が平均償還年限を長期化。
・ 一方で、その場合のリスクとコストはトレードオフの関係にあり、平均償還年限の長期化が唯一の解ではない。例
えば、アメリカやドイツのように長期化路線を見直し、現状の平均償還年限の水準に安定化させる国も出てき
ている。
・ また、量的緩和政策やリーマンショック後の金融規制の強化が市場流動性の低下につながっているという点は、
多くの債務管理当局の共通認識。流動性改善のために各国は幅広い施策を実施。
・ 米国は債務管理政策の運営に当たって、「規則的かつ予見可能な発行」と「中長期的な調達コストの抑制」が
基本目標。大型減税による歳入減、国防費やインフラ投資等による歳出増に加え、FRBによる保有国債の再
投資額縮減により、市場から調達する必要のある金額が大きく増加する見込み。
・ 昨年11月に公表されたフォワードガイダンスでは、今後の国債発行増額に当たっては、コストとリスクの双方
を考慮し、2年債、3年債、5年債中心の増額が望ましいとしている。加えて、2年変動利付債やT-billも増額
が合理的と整理しており、平均償還年限を現在のレベルで安定させようとしている。
・ 次に、イギリスでも、BOEの量的緩和の下、流動性低下が懸念されており、金融規制によりバランスシートコスト
に苦しむプライマリー・ディーラーの負担を軽減するため、一回当たりの入札規模を縮小。大きな特徴の一つ
は、先進国で最長の平均償還年限。その要因として、イギリスでは、積立方式の確定給付型企業年金のプレ
ゼンスが大きく、主流が終身年金であるため、負債のデュレーションが長いことや、資産運用方針として負債
対応投資を採用していることから、投資家の50年債に対する需要が強いことが挙げられる。また、投資家の
インフレヘッジニーズも高く、発行額の約2割が物価連動債。
・ ただ、イギリスにおいても、我が国と同様、確定給付型年金から確定拠出型年金へのシフトが進んでいること
に加え、インフレ高進により物価に連動した政府負債を増やしていくことへの懸念が高まっており、これまでの
方針の見直しが迫られる可能性もある。
・ ドイツでも、ECBの国債買入れの下、流動性低下への懸念。イギリスの短期ゾーンを増やす動きと同様、1回
あたりの入札規模を縮小するほか、短期ゾーンのリオープンの導入等を実施。短期ゾーンを増やす一方で、
30年債を増額しており、平均償還年限は安定的に推移。
・ フランスも同様に流動性低下を懸念。我が国と同様、新発債のリオープンを積極的に実施するとともに、
既発債の追加発行を実施。 また、2017年・2018年に50年債を発行するなど、平均償還年限を長期化。
・ 最後に、カナダでは、毎年度の国債発行計画とは別に、今後10年間の中長期的な債務管理戦略を策定。
アメリカと同様、コストとリスクのバランスを改善させるため、2011年度から2年、3年、5年債の発行額を
重点的に増額。一方、2014年以降、不定期に50年債を発行しているが、直近では、2018年2月に発行を
見送っており、平均償還年限は安定的に推移。
▶ メンバーから出された意見等の概要(当局においてとりまとめ)は以下のとおり。
・ 金融規制について、現状導入されているもので、マーケットメイク業務に何か問題が生じていることはない
が、今後ストレスがかかった時に、今の状況を前提とした規制で本当に大丈夫なのか疑問。規制によるマ
イナスの影響にも注意を払う必要がある。
・ 安定調達比率(NSFR)の導入準備が現在なされているが、欧州においては、国債市場への影響を鑑み、
緩和措置を取って導入することを検討中で、米国でも緩和すべきとの意見もあると聞いている。我々としても、
規制による影響をマーケット参加者の立場から分析しながら、情報の提供をさせて頂きたい。
・ 目下の市場状況では、インフレヘッジニーズが限定的だが、欧米が金融正常化に向かいつつある世界の
経済情勢を考えれば、今後物価連動債へのニーズが出てくる可能性もある。このような商品は、急に発行
増額できるものではないので、今のうちから、マーケットメーカーとして市場育成をサポートしていきたい。
・ 国債にかかる金融規制は、マーケットのプロシクリカリティを増すのみならず、業者のコストを通じて流動性
に影響を与え得る。NSFRに関して、欧州ではECOFINで議論されており、適格流動資産の定義が厳しすぎる
と、レポ市場を通じて国債市場の流動性に悪影響が出るとの懸念が示されているところ。日本の場合は、
財政そのものの信頼性が本丸となる問題ではあるものの、流動性を維持していくためのフレームワークへ
の目配せも必要。
・ 個人向けの国債をどう育成していくか、今の段階で考えていくべき。また、変動利付債についても、アメリカの
ように2年の変動利付債がいいかは別にして、どのように取り組むべきか、もう一度議論を行ってもいいの
ではないか。
・ 現在の市場環境では、正直なところ、投資家として日本国債に取り組みにくいのは確かだが、一方で、国債
に対するHQLAとしてのニーズが規制上確実に高まっており、一定の需要はある筈。グローバルなバランスの
中で日本国債がどのように位置づけられていくか、海外IRの際にヒアリングしてみるといいのではないか。
・ ①高齢化という構造変化、②市場の変動に向けた対応、③金融政策の出口への方向性が3つの軸。日本の
個人の金融資産は、今後、2,000兆円という次元にもなっていくと思うが、その大宗は高齢者の保有であり、
高齢者ニーズに即した国債のあり方を考えるべき。高齢化すれば、年金などの負債の年限も長くなるため、
それに合わせた発行年限の長期化も検討材料のひとつとなり得る。
・ 出口における金利上昇に備えるという観点からは、変動利付債の商品設計について議論が必要となる。また、
金利上昇リスクを日本銀行が負っている状況であり、金融政策が出口に向かう際、日本銀行の財務を通じた
市場の変動が起きる可能性。これに対して、財務省、日本銀行、市場参加者が連携してどのように対応する
か、その道筋を示せるようにすることが日本の信認に繋がる。
・ 市場を取り巻く環境を中長期的に見れば、3つの変化のポイントがある。①欧米の金融政策の正常化による
国債市場を取り巻く環境変化、②日本も金融政策の出口が展望されつつあること、③高齢化に伴う構造問題。
これらに対応できるよう、将来への備えとして、国内・海外の両方を見据えた政策が必要。
・ 根本的な問題は、財政規律。市場からのシグナルがないから財政規律が緩むとの議論を否定する気はない
が、逆にシグナルがあれば財政規律が回復するかは疑問。むしろ、シグナルがあってからの対応では遅く、
金融政策が出口を迎え金利が上昇する前に、財政に対する信認を確保すること、即ち、持続的な財政規律を
確立できていることが、重要な本質。
・ 生命保険会社は負債が長く、超長期ゾーンを主な投資対象としているため、超長期ゾーンのマーケットを引き
続きしっかり育成してほしい。
・ 高齢化について、生命保険業界は自分ごととして捉えている。現在の金利状況では、円建て貯蓄性商品の
運用は厳しく、外貨建てに舵を切っている状況。外貨建て貯蓄性商品を高齢者に勧める際には、誤解のない
よう丁寧に説明しているつもりだが、もう少し金利が立ち上がってくる状況では、円建てのより確実な商品が
普及できるような本来の姿に戻ることが望ましい。
・ あるフィナンシャル・プランナーによれば、人生における大きな支出は、子どもの教育費・住宅ローン・退職後
の生活資金の3つ。例えば、退職後のために金利を上乗せした個人向け国債を出せば、富裕層の資金を集
められるのではないか。
・ 5年~10年後には、ドル・ユーロ・円に加え、元が主要通貨として入ってくるだろう。この頃に日本国債への
信認が失われていれば、円ではなく元に投資する動きが出てくる可能性。
・ 取引が一方向に流れないよう海外保有を増やすという説明だが、なぜ国内の投資家は皆同じ行動をしてしま
うのか、どのようにすれば、多様な投資行動を日本国内で生み出せるかが課題。
・ 日本銀行の資本金は、政府から出ており、国債の価格変動時の日本銀行の財務への影響は、結局、日本
銀行と当局との間で相殺されるのではないか。
・ 市場効率仮説に基づけば、債券価格は需給に関係なくファンダメンタルズで決まるはずであるところ、実際
の市場には摩擦があり、裁定取引を行う者が出てくる。この裁定取引をする者が、どれだけリスクを取ること
ができるかが、市場でショックが起きた時の振れの大きさを左右するのではないか。
・ 国債市場における人材の流出に懸念。イールドカーブに基づく投資戦略など、取引のスキルが守られ、育て
られるような環境を守ることが大事。
・ 日本相互証券での業者間取引において、今週だけで2度、新発10年債の取引が成立せず、今年5回目と
なった。業者間取引の不成立が今年になって急増している要因は、
-異次元金融緩和が継続し、日本銀行が大量に国債を買っていること。昨年12月時点の日本銀行の利付債保
有割合は43%に達している。
-イールドカーブ・コントロール政策により、金利が動かないこと。金利が動かないため、投機的なディーリングの
ニーズ、またヘッジニーズがなくなっている。
-国債取引の決済が短縮化されたこと(T+1化)。これにより、今までは入札から発行までの期間が一定程度空
いており、すぐには売却できなかった新発債も、すぐに日本銀行に売ることができるようになった。
・ このように業者間取引が減っても、足元では問題にならないが、日本銀行が国債を買わなくなったときには、混
乱が起きる可能性。QQEやYCCが続くと、水面下でマグマが溜まることにも留意が必要。
・ 国債管理政策において最も理想的な姿は、国債を発行しないこと。しかし、今年の骨太方針を見る限り、増税は
するが、
景気が腰折れをしないよう歳出も増やすという哲学に則っており、これでは財政健全化にならないし、構造改革や
長期的な経済成長にも繋がらない。
・ 歳出抑制策の具体的施策のうち、新規のものとして、費用対効果を加味した薬価改定があるが、スピードが遅す
ぎる。
・ 個人投資家の国債の保有割合については、海外は約1割あるのに対し、日本は約1%と低い。原因は、低金利
もあるが、構造的要因も2つある。1つは、間接金融中心で、民間金融機関や生損保等といった機関投資家が
受託された資金を運用していること。2つ目は、個人投資家の国債保有の枠組みの問題。アメリカの「個人退職
口座(IRA)」のように、国債の個人消化が進むような仕組みを作ることも一案。
・ 市場変動時の財務省・日本銀行・市場参加者の三位一体の議論は、結果的に、個人投資家から離れたところで
の議論になりかねない。家計金融総資産は、現在約1,800兆円あり、マネーフローにおいても、巨大な資金余剰を
保有している個人投資家を国債保有促進のターゲットにすることに加えて、個人投資家に国債管理政策を十分に
理解いただくことが重要。
・ 今の低金利環境は、国債が日本銀行の当座預金に短期化して置き換えられている中で起こっている。この巻き
戻しが起これば、結局、超過準備に対する付利が必要となる訳で、ある意味、現状は、短期金利連動の変動利
付債で調達しているのと同じ構造。結局、財政コストが安くなっていると考えること自体がフィクションであり、今の
低金利環境下で、財政規律が緩んでいるとすれば、それが最大のコストではないか。
→(理財局から説明)
・ 個人向けも含めた新商品について、何人かの委員からご指摘をいただいたが、検討にあたっては、
-持続的に発行できるような中長期的な需要があるか
-発行体にとってコストやリスクを過度に高めるようなものにならないか
等が課題となると考えている。
(以上)
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