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国の債務管理の在り方に関する懇談会(第38回)議事要旨

. 日時 平成27年10月21日(水)14:00~16:00

. 場所 財務省  第3特別会議室

.内容

(1)財政健全化に向けた取組(主計局)

(2)国債市場の現状と国債への投資環境(稲井田委員、藤戸委員)

(3)国債管理政策の当面の課題(理財局)




(1)主計局より、財政健全化に向けた取組について(資料①(PDF:2262KB))、説明が行われ、その後自由に意見交換が行われた。


▶ メンバーから出された意見等の概要(当局においてとりまとめ、以下同)は以下のとおり。


・仮に財政規律が失われると市場参加者が捉えれば、マーケットで大混乱が起き日本経済全体への影響が大きい。財政規律の確立に関する基礎的なデータは一般に提供されており、このような状況について民間サイドでどういう議論や試算、政府に対する要請がなされているか、当局として把握し検討を行っているか。


・民間シンクタンクにおいても財政に関する中長期の試算について、どういった改革が歳出・歳入サイドで必要かということをリサーチし公表している。経済前提を変えれば必要とされる改革の度合いも変わってくるが、内閣府中長期試算の経済再生ケース(中長期的に名目3%以上の成長率を想定)であっても政府債務が膨張することに注目すべき。社会保障制度の改革なくして債務残高の発散を止めていくことは難しいのではないか。


・内閣府の中長期試算は2023年までとなっているが、本懇談会にて国債発行計画を考えていくうえではより長期的な視点が不可欠であり、今回説明のあったような財政の長期推計を参考にしたい。



(2)稲井田委員より、国債市場の現状と国債への投資環境について(資料②(PDF:1110KB))、藤戸委員より、生命保険会社の投資動向について(資料③(PDF:538KB))、説明が行われ、その後自由に意見交換が行われた。


▶ メンバーから出された意見等の概要は以下のとおり。


・足元ではベーシススワップがマイナス方向にワイド化しており海外から見た日本国債の相対的な投資妙味が上がっているが、欧米の金利情勢やその時々の信用状況によって左右されるため、こうした事態が長く続くとは思えない。一方でベーシススワップのマイナス幅ワイド化の動きはその時々の信用状況によっても変わるものであり、中期的に日本全体の信用コストが高まっているとすれば、ワイド化が定着し、外国人投資家の姿勢にも影響を与えうるのではないか。


・ベーシススワップが今後どうなっていくか、均衡点がどこかを見極めるのは難しいが、現状では、日本の事業会社や金融機関が高収益を求めて対外投資を活発化させつつ、為替リスクを回避しようとしており、そのような投資家が多くいる限り、ベーシススワップのマイナス幅はなかなか修正されないと考える。


・ベーシススワップについては、ドル需要の増加に加え、レバレッジ比率規制の導入で米銀からレポの提供がなかなか得られなくなっている、通貨スワップに対するリスクウェイトが引き上げられている、といった規制の影響もあり、本邦金融機関の海外業務の展開にとって逆風となっている。


・(金融機関にとって)格付機関による日本国債のシングルA格への格下げの影響は現在のところ大きくないが、BBB格になると担保価値がなくなることとなり、クロスボーダーの資金調達や決済上の影響が出てくる。これからの更なる格下げは影響が大きいと考えられるため、格付け機関とのコミュニケーション、財政健全化のスケジュール通りの達成がともに重要。


・日本銀行の量的・質的金融緩和によって国債市場の構造が変化している中、現行の金融政策がどこまで続くのかマーケットも見通せない状況であり、当懇談会において、流動性向上策について引き続き検討していくことが必要。


・少子高齢化が進展していく中、経済面、金融市場、資金循環等には相当大きな影響が、今後5~10年のうちに出てくる。このような情勢の変化を踏まえ、市場の将来的な国債消化能力をどう維持しつつ、市場を安定化させるかということが、長期的な課題として今後より問われてくる。


・都市銀行や生損保等の国債の売買高が低水準にあり、海外勢の市場への影響が強まっている印象。海外勢の売買動向等についてウォッチをしていくことがこれまで以上に求められる。


・都市銀行においてはここまで金利要因で国債の保有残高が減ってきたが、国際的な金融規制の動向が今後の大きな課題。銀行勘定の金利リスク(IRRBB)やソブリンリスクの見直しもあるが、巨大銀行の破綻時の損失吸収力(TLAC)に係る規制の影響は大きく、このような規制要因も見ながら、国債の残高をコントロールせざるを得ないという状況である。


・従来、各国の債券市場においてショック・アブソーバーの役割を果たしてきた証券会社の国債保有残高が減少している。市場の流動性を低下させる要因となる可能性もあり、注視していく必要があるのではないか。


・国債市場の流動性低下により、証券会社がマーケットメイクしづらい状況、特にショートポジションを取るのが難しい状況になっている。日本銀行の国債補完供給の規模や利用期間の拡大など、レポ取引の活性化に向けた取組をぜひ検討いただきたい。


・日本銀行の量的・質的金融緩和が継続する中、海外投資家の国債市場における存在感は高まっているが、最近、日本の財政規律や金融緩和の出口に対する海外投資家の見方が厳しくなっている。



(3)理財局より、国債管理政策の当面の課題(資料④(PDF:79KB)及び資料⑤(PDF:11219KB)


▶ メンバーから出された意見等の概要は以下のとおり。


・国債発行計画の策定にあたっては、基本的には平時の対応を考えてきたのだろうが、イベントリスクといったものは念頭に置かなくてもいいのか。


→(理財局より説明)28年度発行計画に関しては、現在の内外の経済・金融環境に鑑み適切に対応するのが基本となると考えている。むろんリスクイベントが生ずる可能性が皆無ではなく、対応策を常に検討しておく必要がある。


・資料⑤のp.14について補足すると、保有契約高が右肩下がりとなっているが、これは、高齢化が進む中で死亡保障から生存中の保障へのシフトを必ずしも反映していないことによるもの。この点、年換算保険料の方が保険料収入の状況をより実情に即した形で見ることができると思う。


・(生命保険の将来の商品性に関して)金利が上がってくると、保険会社からも様々な視点に基づき商品が出てくると考えられる。貯蓄性商品の市場もこれからより広がっていくと考えられる中で、物価連動債も購入資産の一つの候補になるだろうが、より多様な資産へのニーズが出てくるのではないか。


・円滑な国債発行と中長期的なコストの抑制という国債管理政策の基本的な目標のもと、平均償還年限の長期化を進めてきたと理解しているが、基本的にはそういった流れの中で長期化を進めていくと考えてよいか。


→(理財局より説明)円滑な国債発行と中長期的なコスト抑制という基本的目標に変更はない。その目標の下で、供給側の事情としては、趨勢的に要発行額が増加傾向にあると見込まれる中で、借換えの頻度や借換リスクを抑制する観点から平均償還年限の長期化には引き続き意義があるのではないかと考えている。一方で借換コストは需要と供給との関係で決まるものであり、現在の発行環境が今後変化しうることも考慮し、投資家の中期的な需要動向を見極めた上で、長期化の今後の在り方を判断してまいりたい。


・中国の国際金融市場における存在感が増している中、中国リスクが顕在化したときに日本を中国の金融情勢からいかに遮断するのかが重要となる。中国の金融が不安定化すれば日本の財政規律や国債管理政策が国際的な目線にさらされるということを意識し、十分に議論する必要がある。



(以上)



連絡・問合せ先:
 財務省 理財局 国債企画課 企画係
 電話 代表 03(3581)4111 内線 2565