このページの本文へ移動

国の債務管理の在り方に関する懇談会(第49回)議事要旨

.日時 平成31年3月8日(月)14:55~17:05

.場所 財務省 第3特別会議室

.内容

1.平成31年度予算及び国債発行計画(報告)

2.国債市場の現状と今後の動向見通し

(1)生命保険会社の投資動向

(住友生命保険相互会社 松本 巌委員)

(2)グローバル金融財政環境について

(みずほ総合研究所 高田 創委員)


まず、主計局より平成31年度予算(資料1(PDF:1970KB))について、続いて理財局より平成31年度国債発行計画(資料2(PDF:1253KB))について説明が行われた。

次に、住友生命保険相互会社 松本委員より生命保険会社の投資動向(資料3(PDF:1733KB))、続いてみずほ総合研究所 高田委員よりグローバル金融財政環境について(資料4(PDF:1460KB))の説明が行われ、その後、自由に意見交換が行われた。

▶ メンバーから出された意見等の概要(当局においてとりまとめ)は以下のとおり。

・今年、新元号制定を1つのターニングポイントとして、今後の財政運営に関して、新しい時代に向けたメッセージを打ち出すよいタイミングなのではないか。


・今後の国債発行を考える上で、3つのポイントがあると考えている。1つ目は、各業態における国債に対する需要がどうなっていくか。2つ目は、国債発行が、日銀保有分を含めた市場全体のリスク許容量と見合っているかという点。例えば、超長期ゾーンにウェイトを置いた発行をすれば、国の借換リスクが低下する一方、市場へのリスク供給が増えることになるが、何らかのストレスが発生した際に市場がそのリスクを許容できるのか。特に、日本銀行による金融政策が、今後出口に向かう中では、それぞれの国債の年限でリスクの許容度がどれだけ市場にあるのかという点をチェックし、バランスさせていくことが必要。3つ目は、国債発行におけるコストの検証。発行年限の長期化により借換リスクは低下しているが、振り返ってみれば短期化していた方がコスト面では効率的だったともいえる。このうち、1つ目の業態ごとの需要分析については、これまでも当懇談会やPD会合等の場で行われてきたが、今後は、リスク分析やコスト検証も幅広く行い、バランスの良い国債発行を行っていくことが必要。


・生命保険会社は、金利が上がりきった後であれば超長期ゾーンにも需要があるという話だったと思うが、むしろ、まさに金利上昇している最中において、国債に対する安定的な需要がどの程度あるのかを引き続き見ていくことが大事だと思う。

・今まで、財政赤字を前提として、その中で最善の国債発行計画を策定することを考えてきたが、反対に、発行の持続可能性やリスク分析等を基に、財政規律を高めていくというアプローチも必要になってきているのではないか。


・金利が上昇した時に何が起こるかを考える際には、政府と日銀の統合勘定で考えると、これまでの日銀による国債買入には、長期の国債を短期の負債に変換する効果があることに留意することが必要。高田委員の説明にあったように、麻酔が打たれている間に手術がなされれば良かったが、マイナス金利政策によって利払費が減っているにも関わらず、むしろ、プライマリーバランスの黒字化の目標年度を2025年に後ろ倒しするなど、財政規律の緩みが懸念されるというより、実際に緩んでしまっていると感じている。

・長寿化によって今後生保の資産のデュレーションの長期化が必要になるという説明があったが、人口動態の変化について、長寿化ではなく生産年齢人口の減少の方に着目すれば、生産年齢人口の総所得と保険料収入には密接な関係があるため、生命保険に対するニーズはそれほど大きくならないどころか、相対的に減少するとも考えられる。また、サードライフが長くなる影響についても、介護保険のような商品が多くなるという面もあり、個人年金保険だけではなく保険商品全体がどうなっていくかという観点からALMを考えることが大事なのではないか。


・一概に生命保険と言っても、様々な商品があり、定期保険や終身保険等、次世代に資産を残すというニーズは徐々に減少してきている。一方で、サードライフという意味では、介護、あるいは働けなくなった場合のリスクに備える保険については、ニーズが非常に拡大してきている。貯蓄性の保険でも、利回りの高い外貨建て保険の販売が伸びているということもあり、老後の生活の備えという意味での生命保険のニーズというのは、非常に強いものがある。

・責任準備金が積み上がるのは貯蓄性の保険であり、今後デュレーションの長い責任準備金が積み上がってくるのに対して、資産サイドでの運用ニーズが出てくるため、生命保険会社の超長期債へのニーズは、今後も伸びていくのではないか。


・世界的な潮流の中で、再び財政にウェイトをかけるべきではないかという議論も一部出てきている。2016年にはFTPLやヘリコプターマネーといった議論もあったが、最近ではアメリカにおいて、Modern Monetary Theory(MMT)が取り上げられる状況である。日本の中でも今後どのような形で羅針盤を持っていくのかということは重要。

・金利上昇にどう備えるかが大事という話があったが、むしろ、現在の超低金利環境が続いてしまうことのリスクの方が深刻になっていると感じている。世界的にもインフレ率は上がりにくくなっており、特に、日本は、先ほどの説明にもあった人生100年時代に備えた資金運用ニーズもあって、非常に金利が上がりにくい状況にもなってきてしまっている。


・2016年3月から2016年9月にかけて、Economic Solvency Ratio(ESR)の数字がかなり下落したという状況があった。当時は、20年債金利がゼロ%に到達するような局面であり、生命保険会社の負債と資産の関係が非常に厳しくなり、金利が下がれば下がるほど苦しい状況になった。もう一度20年債金利がゼロ%に達するような状況になった際に、2016年のように金利が再び上昇すれば良いが、現在の経済情勢や世界の情勢を考えると、その水準で留まってしまうことを懸念している。テクニカルな理由で相場が一方向に振れれば、通常は、逆サイドの取引を行う投資家が出てきて修正されるものであるが、市場流動性の低下が議論される中で、そうした動きが出てこないことも懸念される。こういう状況は健全ではなく、財務省や日銀と意見交換をしながら、そういう特別な事情には特別な対応ができるようにしておかなければならないのではないか。


・負債年限の長い生命保険会社にとって、現在の超低金利環境は非常に厳しい状況という説明があったが、負債年限の短い銀行にとっても、最近、収益面で厳しくなっているというニュースが相次いでおり、日本の金融界全体にとって、低金利環境の長期化の影響が相当大きくなっているという印象を持った。

・今、世界的に様々な転換期を迎えつつあるのではないかという意見に賛成する。過去30年を振り返ると、大体10年に1回程度ごとに大きな危機が起きてきたし、様々な経済指標を見ても、グローバルに景気がピークアウトしつつある状況。また、この30年間、世界経済は、新興国の成長に支えられてきたが、中国等では相当高齢化が進んできており、大きなイノベーションがないともう一段の成長は難しいという気がしている。過去の危機時のような処方箋も思い浮かばず閉塞感がある中で、転換点を迎えつつある状況であり、個人的には強い危機感を持っている。


・金利がこれだけ下がっても実体経済が改善しないのはリスクの低下が見られないからであり、家計、企業、新興国、テクノロジー等、様々なポテンシャルはあるが、まだテクノロジーの過渡期にあり、持久戦になっていると感じる。

・国債管理政策上の課題としては、この持久戦の中で国債市場の機能をしっかり維持していくことが重要。特に、その中でも人材問題を特に心配している。投資家や業者を含め、参加者をしっかり引きつけておくことが重要だと思う。例えば、新手の投資家としては、新興国でも富裕層が育ち、投資家としてのプレゼンスが出てきており、IR等を通して、国債市場に関心を持つ人を引きつけておくことが重要。


・中国は、財政状況が必ずしもよいわけではないにもかかわらず、何かあるとすぐ追加財政を発動するという状況になっており、アメリカも、トランプ政権の下で財政政策が用いられやすい状況になっている。主要国で何かあるとすぐ財政出動をして、財政にしわ寄せがくる体制になっているというのは、非常に由々しきこと。

・日本においては、財政拡張の余地があまり残されていないということもあり、財政当局として、諸外国と一線を画し、その路線には乗らないという決意を何らかの形で示して頂けると安心できる。ここ数年税収が増えたとは言え財政赤字は残っている状況であり、やはり歳出を削減しないとどうにもならないというのが財政問題の本質と感じている。


・良く債券市場が機能不全に陥っていると言われるが、現状を見ると、景気サイクルが変わり、これまでのように株で収益があげられなくなるなかで、債券でキャリーをとってしのぐしかないという状況をまさに鏡として反映させており、その意味では市場は機能しているのではないか。

・金融緩和によって健全な形で設備投資が起きて需要が増えるという流れが長期間起こっておらず、資金は全て発展途上国に流れ、その収益も不動産やクレジット市場に向かってしまうという状況。それでも金融市場がクラッシュしていないのは、リーマンショック後に規制が導入されたこともあり、参加者が過度にリスクをとらないということが定着したお陰。その意味でも、市場はそれなりに機能していると感じている。


・人生100年時代の第2・第3ステージが長くなればなるほど、老後のため貯蓄しておかなければならなくなり、消費が減少してしまう。しかも、貯蓄の期間は、今よりも長期化するかもしれないという懸念がある。ここまでの長寿化は初めて直面する状況。また、低金利が長期化する下で、中央銀行は政策金利のゼロ制約に直面している。我々は、このような教科書にない世界でどうやって今後の市場を保ちながら対応していくかという、極めて重大な課題に直面していると感じている。

(以上)



連絡・問合せ先:
 財務省 理財局 国債企画課 企画係
 電話 代表 03(3581)4111 内線 2565