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第2回 不当廉売関税の迂回防止に関するワーキンググループ(令和7年10月10日)議事要旨

1.    日時 令和7年10月10日(金)15:00~16:10

2.    場所 財務省第3特別会議室(オンライン併用)

3.    出席者

(関税分科会委員)注:◎は座長

 阿部 克則(◎)学習院大学法学部教授

 石黒 憲彦   (独)日本貿易振興機構(ジェトロ)理事長

 内山 智裕   東京農業大学国際食料情報学部教授

 片山 銘人   日本労働組合総連合会経済・社会政策局長

 河野 真理子  早稲田大学法学学術院教授

 木村 旬    (株)毎日新聞社論説委員

 古城 佳子   東京大学名誉教授

 佐藤 英明   慶應義塾大学大学院法務研究科教授

 下坂 朝子   (一社)日本経済団体連合会国際協力本部長

 末冨 純子   弁護士

 杉山 晶子   東洋大学経営学部会計ファイナンス学科教授

 手塚 広一郎  日本大学経済学部学部長・教授

 野原 佐和子  (株)イプシ・マーケティング研究所代表取締役社長

 樋口 容子   (公社)日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会副会長

(敬称略、五十音順)

(財務省) 寺岡関税局長、中澤大臣官房審議官、大関総務課長、三浦関税課長 他

(経済産業省) 森井貿易経済安全保障局特殊関税等調査室長、佐藤同室特殊関税等調査官

(外務省) 畑中経済局国際貿易課首席事務官、大嶋同課課長補佐

4. 財務省より、不当廉売関税にかかる迂回防止制度の調査手続等について説明を行った後、委員から意見等を伺った。

  主な意見等は以下のとおり。

(合理的な経済活動への規制について)

✓合理的な理由なく迂回行為を行う者を規制するため、迂回防止制度の創設は重要。一方で、例えば経済連携協定を利用して合理的な手段により国際分業を行っている者等、合理的な経済活動を行う者まで規制することとならないよう、その点で、比較的厳格な制度とすることが重要と考える。

(調査期間)

✓昨今、経済活動に対しては、より一層迅速な対応が求められていると考えられ、可能な限り調査期間を短縮するようぜひ工夫していただきたい。

(調査対象期間)

✓迂回防止措置の調査対象期間について、「原措置では原則として3年分以上だが、大きく短縮の方向」と整理されているが、昨年11月の関税分科会における経済産業省の要望と同様に、「1年以内」へ短縮する方向でご調整いただきたい。

(その他)

✓制度創設後、迂回防止制度に係る還付請求・除外申請はそれぞれどの程度の申請件数を見込んでいるのか。また、制度で規定される調査期間の法的拘束力及び調査期間の延長可能性はあるのか。調査期間が延長される場合、手続のコストをはじめ経済的コストが発生することが予想される。制度をより現実的かつ実効性のあるものとするため、ある程度の申請件数の見込みを把握しつつ、制度を導入したらどうなるかを念頭に置いて制度設計を進めていただきたい。

✓国内産業を保護するため、迅速な対応が求められている一方で、利害関係者の権利を保護するためきめ細やかな調査も求められており、両立が難しいところかと考える。スタッフの増員など工夫は考えているのか。

5. 財務省より本ワーキンググループのとりまとめ資料について説明を行った後、委員から意見等を伺った。

意見を踏まえ必要な修正を行うこととし、とりまとめの関税分科会への報告については座長一任とされた。主な意見は以下のとおり。

(制度設計案について)

✓ルールの明確化や手続透明性の確保を担保しつつ、課税要件の数値基準は目安とするなど柔軟で適切な運用が可能な制度設計となっており、評価できる。

(輸入国迂回の課税対象)

✓輸入国迂回において、前回のWGの議論を踏まえ、課税対象を「原措置対象貨物の供給者から輸出され、本邦に輸入される部品等に限定する」ことと整理いただき、輸入者ではなく、供給者単位で絞る旨を明確にしていただき感謝。さらにこの供給者について、「原措置の調査において調査当局が知り得た供給者との資本関係や取引実態等に鑑みて実質的に同視できる者を含む」と限定しており、より明確になっていてよい。

✓輸入国迂回の課税対象貨物の供給者について、例えば原措置対象貨物の供給者が何らかの商社等を通しており、供給者と商社の間には資本関係は全くないものの取引実態としては供給者が直接輸出することと変わらない場合、当然こうした供給者も「実質的に同視できる者」に含まれるべきと考えている。資本関係がないような場合、「同視できる者」と判断できるかは難しいところがあるので、供給者との資本関係がある者や取引実態等に鑑みて実質的に「同視できる場合」を含むという方向で制度設計をしていただきたい。一方で過度な制約とならないよう(課税対象が広がりすぎないよう)、その点もご配慮いただきたい。

(還付請求)

✓還付請求に対して、「輸入者からの申請に基づき、提出された証拠に基づいて要還付額を調査・算出する」点に賛成。還付請求に対して証拠を提出させてその金額を確定するという形が適切と考える。

(除外申請)

✓EUの制度にならい、我が国の制度においても除外申請の求めを行うに際し、正当な経済活動であるとする一応の証拠が付された除外申請であると認められることをもって初めて調査当局が調査を開始する形にすると、安易な申請を防ぐこととなり、当局の調査能力を浪費することもないと考える。

(調査期間にかかる記載)

✓とりまとめ案において迂回防止措置の調査期間について、「原則として10か月、要すれば最大6か月」と整理されているが、「10か月以内」へ修正いただき、必ずしも10か月かかるわけではないことを明示し、スピード感のある運用が可能となるようにしていただきたい。

✓「原則として10か月」という記載は6か月延長の可能性があることも踏まえてのものであると理解しており、よほどの事情がない限りは、10か月以内のなるべく早い期間で調査を終了するという目安を示すものと考え、「原則として」の記載は必要と感じる。

✓調査期間について、迂回防止制度は新たに創設されるものであるため、実務の成熟に伴って短縮化される可能性は十分にあると考えられ、タイトな表現とせず現状のまま「原則として10か月」でよいかと考える。

(調査の実効性・効率性等)

✓迅速な対応や経済活動を阻害しないよう配慮するといった論点に加え、実行上の論点も十分に加味して検討いただきたい。制度案のとりまとめ報告では、調査当局が実行可能な範囲で明言(記述)するようお願いする。調査資源の浪費を防ぐことも含め、制度における各当事者が無理のない範囲で運用できるものとなるようお願いしたい。

(その他)

✓「迂回」について、最近様々な「迂回」が問題となっている。関税が非常に注目されている御時世で、トランプ関税の「迂回」とこの不当廉売関税の「迂回」の話とが誤解されやすくなっていると感じるため、この「迂回」について一般の方々へご説明する際は、少し注意されたい。

問い合わせ先

財務省関税局関税課

電話:03-3581-4111(内線5277)