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国有財産分科会(令和7年3月3日開催)議事録

財政制度等審議会国有財産分科会
議事録

令和7年3月3日
財政制度等審議会


財政制度等審議会国有財産分科会議事次第

令和7年3月3日(月)9:59~11:48
第3特別会議室(本庁舎4階中412)

  • 1.開会

  • 2.議題

    • (1)庁舎等使用調整計画について

    • (2)国有財産行政のあり方について

    • (3)留保財産の現状と課題について

    • (4)国家公務員宿舎の整備について

    • (5)報告事項

  • 3.閉会

出席者
委員 奥田 かつ枝
亀坂 安紀子
川口 有一郎
筒井 義信
若林 茂雄
臨時委員 大久保 恭子
川嶋 三恵子
佐谷 和江
滝澤 美帆
竹川 正記
松尾 弘
村木 美貴
持永 勇一
野城 智也
山内 弘隆
吉原 祥子
専門委員 津田 廣喜
財務省 窪田 理財局長
石田 理財局次長
坂口 理財局総務課長
尾﨑 理財局国有財産企画課長
梅野 理財局国有財産調整課長
原井 理財局管理課長
中島 理財局国有財産企画課政府出資室長
高木 理財局国有財産調整課国有財産有効活用室長
鈴木 理財局国有財産調整課国有財産監査室長
中野 理財局国有財産業務課国有財産審理室長
上乗 理財局管理課国有財産情報室長
河邊 理財局管理課電算システム室長
皆川 大臣官房専門調査官


午前9時59分開会

〔 筒井分科会長 〕 皆様、おはようございます。定刻より若干早うございますが、おそろいでございますので、財政制度等審議会第63回国有財産分科会を開催いたします。

 なお、今日は、川口有一郎委員、荒谷裕子委員におかれましては、先ほど御連絡がございまして、本日は御欠席となります。また、山内弘隆委員におかれましては、若干遅れるという御連絡をいただいております。

 それでは、早速議事に入ります。

 まず、庁舎等使用調整計画についてでございますが、これは資料1-1をもって、財務大臣から財政制度等審議会に諮問がなされております。この諮問につきましては、財政制度等審議会令第6条第7項及び財政制度等審議会議事規則第8条第3項によりまして、当分科会の議決が財政制度等審議会の議決となります。

 それでは、まず事務局より御説明をお願いいたします。

〔 梅野国有財産調整課長 〕 国有財産調整課長の梅野と申します。よろしくお願いします。

 令和6年度庁舎等使用調整計画の議案について御説明いたします。

 特許庁総合庁舎に関する計画と、西新宿再開発建物に係る権利床に関する計画の2件になります。

 資料1-1と資料1-2がございますが、資料1-2で御説明いたします。

 1ページ目を御覧ください。特許庁では、One JPOを掲げまして、分散している職場を本庁舎に集約をして、業務の効率性や一体感を高める施策を進めており、その実現のため、フリーアドレスやテレワークの推進などにより空きスペースを捻出することに取り組んでおります。

 2ページ目をお願いします。資料左側の特許庁総合庁舎にある赤色部分①が空きスペースの創出が見込まれる約1,700平方メートルであり、今回使用調整計画を作成しようとするものでございます。

 真ん中の矢印②と黄色い箱②の特許庁の審判部等についてでございます。資料の下の括弧書きに細かい字で記載しておりますが、特許庁の審判部等は平成24年度の庁舎等使用調整計画により、民間ビルから経済産業省別館に入居したという経緯があり、現在特許庁総合庁舎に入居している部署と分散をして業務を行っている状況にあります。今後捻出される空きスペースに特許庁の審判部等を移転させることにより、分散解消及び業務の効率化を図ろうとするものでございます。

 また、補足説明でございますが、資料右側の大きな括弧書き、矢印③と右上の箱③についてです。今回の使用調整により、経済産業省別館に空きスペースが生じることになりますが、これについては、当面経済産業省の本館で実施される大規模空調工事で対象になった部署の一時移転場所として活用される予定となっております。

 3ページ目をお願いします。西新宿再開発建物の権利床の使用調整計画を御説明いたします。

 この建物は、西新宿駅と中野坂上駅の中間にございまして、権利床取得の経緯といたしましては、防災街区整備事業により、国立印刷局の宿舎跡地が権利変換され、国が取得したものになります。

 4ページ目をお願いします。真ん中の図が西新宿再開発建物であり、赤色部分の権利床が使用調整の対象となります。

 左側の点線の矢印①についてでございます。現在権利床部分に入居している東京労働局助成金事務センターは、元々は民間ビルに入居しているハローワーク助成金事務センター新宿分室の一部署でありましたが、新型コロナウイルス感染症に係る助成金事務の事務量が増加したため、令和5年3月に竣工した西新宿再開発建物に移転したものであります。

 次に、左側の矢印②と箱②のところですが、今般新型コロナウイルス感染症に係る助成金業務について完了の目途が立ったことから、業務縮小に伴い、令和7年度以降、元々入居していたハローワーク助成金事務センター新宿分室に機能移転、集約されることになりました。これにより権利床部分1,218平方メートルの空きスペースが生じることになります。

 続いて右側の矢印③と黄色い箱③ですが、関東信越厚生局東京事務所では、病院等において診療報酬の請求が適正に行われているか、必要に応じて病院等に対しても指導を行いカルテやレセプト等の確認を行っております。現在右側の図のとおり、民間ビル及び外部書庫を借り受けている状況でございますが、今回空きが生じる権利床部分に移転することにより、民間ビル等の借受け解消及び業務の効率化を図ろうとするものです。

 ただいま御説明いたしました2件が令和6年度庁舎等使用調整計画になります。よろしくお願いします。

〔 筒井分科会長 〕 それでは、ただいまの説明につきまして、委員の皆様から御意見等ございますでしょうか。

 それでは、特に御意見がございませんでしたので、本分科会からは意見なしとさせていただきたいと存じます。よろしくお願いいたします。

 続きまして、国有財産行政のあり方について、留保財産の現状と課題について及び国家公務員宿舎の整備について、3つの議事について事務局より御説明をいたします。3つの議事の説明の後、まとめて質疑応答を行いますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、お願いいたします。

〔 尾﨑国有財産企画課長 〕 国有財産企画課長の尾﨑でございます。

 私からは、資料2の「国有財産行政のあり方について」という資料に沿って御説明をさせていただきます。

 今日の御説明、大要を申し上げますと、令和元年にこの分科会で最適利用答申を取りまとめていただきましたが、それから5年以上が経過いたしまして、この機会に改めまして、社会情勢の変化や足下の取組を振り返りつつ、中長期的な視点も含め、国有財産行政のあるべき姿を示し、今後の国有財産行政の指針としてはどうかと考えているということでございます。

 それでは、早速御説明に入らせていただきます。

 1ページを御覧ください。今日の御説明ですが、このページに記載されている4本の柱に沿って御説明をさせていただきます。

 まず1つめの柱、「はじめに」からでございます。

 2ページを御覧ください。こちらが令和元年度「最適利用」答申の概要ということでございます。元年度の最適利用答申におきまして、上段で示しているような状況の変化、例えば左側上にあります人口減少・少子高齢化ですとか、その下にあります未利用国有地のストックの減少などに対応するため、下の囲みになりますが、青で塗られている部分で3つの方向性を示し、多面的な視点から、国有財産の「最適利用」を追求するというお取りまとめをいただきました。

 3ページを御覧ください。国有財産行政のあり方につきましては、社会情勢の変化とともに、国有地の果たす役割も変容いたしますので、国有財産行政のあり方も随時見直しを行ってきたというところでございます。

 4ページですが、ここから説明の2番目の柱になります。社会情勢の変化につきまして、元年答申で今御紹介しましたような人口減少・少子高齢化などの変化、これは引き続き現在も起こっているわけでございますけれども、より詳細に2つの視点から変化を掘り下げてみたいと考えております。キーワードは2つありまして、1つは、「地域の不均衡性」、もう1つは、「ニーズの変化」ということだと考えております。

 5ページを御覧ください。最初のキーワードの地域の不均衡性について、まず人口減少から御紹介したいと思います。

 右の表を御覧いただきますと、これは、都道府県別の人口の推移で、2020年と2050年を比較したときの増減でありますが、一番左の東京都につきましては、2050年のほうが2020年よりも多くなるということになります。それ以外の県は減少しておりまして、特に一番右の秋田県などを御覧いただきますと、2050年には2020年と比較して人口が半分強くらいまでになるということでございます。

 6ページを御覧ください。より詳細に市町村別に2020年と2050年の人口を比較いたしますと、こちらは年齢階層別になっておりまして、左半分が64歳までの年齢層になっております。ピンクの部分は、人口が2020年と2050年を比較して半分以下になるという市町村ですが、これが4割を超えるなど、ほとんどの市町村が、64歳までの年齢層の人口は減少となるという見込みになります。

 他方で、右側の、65歳以上につきましては、もちろんピンクの大幅に減る市町村もあるわけでございますが、逆に青で塗られている5割以上増えるような見込みの市町村もそれなりの数があるということでございまして、人口の増減は地域によって画一ではないということが示されていると存じます。

 7ページを御覧ください。次は、地価でございます。これらのグラフでございますが、三大都市圏が黄色で、それ以外の地方圏が青になります。これらについて、用途を問わず、地価の乖離が進んでいるということが示されています。

 8ページでございます。足下のコロナ禍に時系列を絞っており、令和3年から令和6年の地価を示しています。こちらについて時系列を絞っても、やはり用途を問わず三大都市圏と地方圏の地価の乖離というのは加速化しているということでございます。

 9ページを御覧ください。地方圏の中でも、赤色の人口の多い自治体と、緑色のその他の自治体を分けて見てみますと、この両者間でも地価の乖離が進んでおり、地価につきましても、地域によって動向は画一ではないということが示されるかと存じます。

 10ページを御覧ください。次に、地方財務局ごとの国有地の内訳を見ていきたいと思います。

 例えば左上の関東財務局では、オレンジの利用予定財産やピンクの処分対象財産が合わせて4分の3を占めておるわけでございますが、その右の北海道財務局では、青の処分・利用困難財産が6割程度に上るということでございます。これは、どちらがいい悪いということではないですが、それぞれの財務局で異なった課題に直面するということがはっきり示されていると存じます。

 11ページを御覧ください。同一の財務局管内においても、事務所・出張所ごとに国有地の性質というのは大きく違うということをお示ししたいと存じます。

 例えば左側が関東財務局であるわけですが、この中で東京と甲府を示しています。御覧のとおり色が全く違っておりますし、右側の北海道財務局でも、函館と北見を比較してみると、やはり大分様相が違うと見てとれると存じます。

 12ページを御覧ください。三大都市圏に利用等の可能性のある国有地が集中しているかというと、必ずしもそうではないというのがこの表でございまして、例えば宇都宮ですとか大津などを挙げておりますけれども、そういった形で利用予定財産ですとか処分対象財産というのはあるということでございます。

 ここまで人口、地価、地域ごとの国有地に関する1つ目のキーワード、「地域の不均衡性」を見てまいりましたが、次のページからは、2つ目のキーワード、「ニーズの変化」を見てまいりたいと存じます。

 13ページを御覧ください。まず自然災害の激甚化・頻発化でございますが、左の表にありますとおり、ゲリラ豪雨の回数が増加傾向にあるなど、さらに災害は激甚化・頻発化しておりまして、未利用国有地や宿舎・庁舎の活用などを通じた貢献が求められております。

 14ページを御覧ください。育児・介護につきましても、ニーズは引き続き増加傾向が見てとれると考えております。

 15ページを御覧ください。安全保障の観点から、令和3年に重要土地等調査法が制定されました。そのことを踏まえ、基地の周りなどの指定区域における国有地の管理処分のあり方を見直しております。

 16ページを御覧ください。地域連携は、そもそも財務局のアイデンティティでございまして、国有財産の最適利用はその観点でこれまでも取り組んできたところです。昨今、地方創生2.0ということで、単なる地方の活性化だけではなく、日本の活力を取り戻す政策というのが動きだしておりまして、その考え方も踏まえ、今後も地域それぞれの課題やニーズに応じた地域連携を推進していく必要があると考えております。

 17ページを御覧ください。ここからは、3番目の柱「令和元年度答申と足下の状況」です。ここまで地域の不均衡性、ニーズの変化という背景事情について見てまいりましたが、次に、令和元年の最適答申をいただいたことを受けて、足下で国有財産行政としてどのような取組をしてきたか振り返りたいと考えております。

 18ページは、令和元年答申、先ほどお示ししたものですので、飛ばさせていただいて、19ページ、留保財産制度でございます。こちらにつきましては、この後別途現状と課題を御説明させていただきますので、ここでは御説明を割愛させていただきます。

 20ページを御覧ください。次に、相続人不存在による国庫帰属制度、相続土地国庫帰属制度でございます。

 前者、相続人不存在による国庫帰属制度が左側にございます。これは民法上の制度でございますけれども、下の図を御覧いただきますと、赤い折れ線グラフで示す件数は増加傾向にある一方、灰色の台帳価格はむしろ減少傾向が見てとれます。

 また、後者の相続土地国庫帰属制度でございますが、右側になります。令和5年に開始された制度でございます。右下の表を御覧いただきますと、財務局で引き受けた件数でございますが、令和5年度1年間の件数に比べまして、今、まさに足下、進行年度の9か月のみで既に件数は3倍となっており、この管理件数の急増への対応というのが喫緊の課題となっております。

 21ページを御覧ください。令和3年には、令和元年答申を踏まえまして、庁舎や宿舎などの行政財産の維持管理のあり方につきまして、行政財産の未来像研究会報告書を有識者の先生方に取りまとめていただきました。

 22ページを御覧ください。この報告書も踏まえまして、国家公務員宿舎につきましては、老朽化や需給ミスマッチ、BCP用宿舎の不足という課題に向き合っておるところでございますが、こちらも詳細は別途御報告をさせていただきますので、ここでは御説明を割愛させていただきます。

 23ページを御覧ください。災害対応の一例として、昨年1月に発生した能登半島地震などの自然災害における国有財産の活用として、被災者の方々の応急的な住まいや瓦礫置場等として、国家公務員宿舎や未利用国有地等を地方公共団体に無償で提供する取組を行っているところでございます。

 24ページを御覧ください。定期借地権を活用した貸付けの取組は、保育・介護等のニーズに沿って、売却のみならず、定期借地権を活用した貸付けも含めて、より柔軟な土地活用を進めております。

 25ページを御覧ください。このように足下だけでも様々な新たな課題に対応しているところでございますが、国有財産行政に係る予算、財務局の定員は横ばいにとどまっておりまして、常にリソースの確保、人とお金の確保についても配意が必要だと考えております。

 26ページ、27ページでございますが、この分科会におきましても、委員の皆様方から様々な御意見を賜っております。時間の関係上、個別の御紹介は省略させていただきますが、26ページは国有地の管理処分等に関する御意見、27ページは宿舎等に関する御意見をいただいたところでございます。

 28ページ、最後に4番目の柱として、国有財産行政のあり方について触れたく存じます。

 29ページを御覧ください。この資料におきまして、背景事情とこれまでの取組を概括的に振り返ってきた整理といたしまして、現状、上から2行目を御覧いただきますと、個々の財産の管理処分において、その考え方を実現していく段階にあり、社会情勢の変化はより一層進行し、各地域が直面する中長期的な課題もさらに多様化していくということが予想され、留保財産制度をはじめとする取組を進める中で、新たな課題も顕在化しているところでございます。

 そのため、下の令和元年答申の方向性の見直しの必要性として、足下で顕在化している課題を整理し、その解決のために必要となる改善策について検討を深めるとともに、中長期的に課題となり得る潜在的な懸念点をあらかじめ把握し、その解決に向けた見直しに着手することが必要だと考えております。

 30ページを御覧ください。そこで、今後の見直しの姿勢といたしまして、足下への課題の対応として、現状把握はもちろんやっていくわけでございますが、さらに以下にお示ししているような①~④にある中長期的なあるべき姿を示し、今日の分科会はもちろんでございますが、それにとどまらず、今後、不断の見直しを図る指針としてはどうかと考えております。

 令和元年の方向性からさらに進化させようと試みた点は大きく言って3点あると考えています。

 まず1点目ですが、①~③につきまして、これは施策の内容になります。より大きな中長期的な目的である、最後にそれぞれあります地域の発展に貢献、安心で豊かな社会を支える、国家行政全体の円滑な運営に寄与ということを掲げているところでございます。

 それから2点目、①の冒頭の地域それぞれの課題やニーズに応じたという部分は改めて重要だと考えています。元年答申でも、地域社会のニーズが多様化しているということは既に御指摘いただいておりますが、本日の資料でもお示ししたとおり、各地域で状況が異なる中で、個々の状況をより丁寧に今後も見ていく必要があるという認識を改めて持っているところでございます。

 それから3点目でございますが、④として、国有財産行政を支えてくださる職員の皆様にも着目しまして、財務省と財務局が一体となって、誇りと向上心を持って働くことができる組織を目指すことを明記しております。

 このあるべき姿にとどまらず、様々な角度からの委員の皆様の御意見、御示唆を賜れれば幸いでございます。

 私からは以上でございます。

〔 筒井分科会長 〕 ありがとうございました。引き続き留保財産の現状と課題について、事務局より説明をお願いいたします。

〔 皆川大臣官房専門調査官 〕 国有財産業務課の皆川と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

 私からは、資料3の留保財産の現状と課題について御説明させていただきたいと思います。未利用国有地の管理処分につきましては、元年に答申をいただきまして、留保財産制度を創設して運用してきているというところでございますけれども、運用後5年を経過いたしまして、課題も確認されるということでございますので、今回現状と課題を御説明させていただきまして、運用の円滑化に向けた検討を進めさせていただきたいと考えているところでございます。

 1ページ目でございます。答申においてお示しいただきました留保財産に関連する考え方について御説明させていただきます。

 まず一番上でございますけれども、未利用国有地のうち国として保有する必要のないものについては、これまで原則として速やかに売却し、財政収入の確保を図ってきているが、相続税物納の減少や宿舎削減計画に伴う宿舎跡地の処分の進展などから、未利用国有地のストックが減少しているところ、こうした状況を踏まえて、将来の地域・社会のニーズに備えるため、地域に一定程度の国有財産を確保していくことが必要であるとの基本的な方向性についてお示しいただいたところでございます。

 残しておくべき、確保しておくべき有用性が高く希少な国有地については、将来において行政需要が生じる可能性があるかとの観点から、人口の多い地域に所在し、1度手放すとその再取得が困難となる財産とすること。この留保財産は各財務局におきまして一定の地域・規模を目安としつつ、それぞれの各土地の実情等を踏まえて総合的に判断するとされまして、各地域の国有財産地方審議会での審議の上決定することとされました。

 さらにこの留保財産は、将来世代における行政需要に備えつつ地域のニーズに対応するため、売却せずに定期借地権による貸付けを行い、最適利用を図るとされたところでございます。

 こうした答申の考え方に基づきまして、留保財産制度を創設し、運用しているところでございます。

 2ページ目になります。こちらが留保財産制度の取組状況でございます。

 現時点、令和7年2月時点でございますが、留保財産として全国の財務局で63件の財産を選定しているところでございます。下の参考のところに処理フローがございますけれども、各財務局におきまして、地方公共団体の協議や民間へのヒアリング等を通じて、地域ニーズの事前調査等を行った上で利用方針を策定するといったプロセスを経まして、定期借地での活用を進めておりまして、利用方針につきましては、現在31件について決定しているところでございます。こうした手続につきましては、地方公共団体の協議でありますとか、地域ニーズの掘り起こしといった丁寧なプロセスを経る必要があることもございまして、相応の期間を必要としているところでございます。

 それから、枠の3つ目でございますけれども、留保財産のうち、定期借地権による貸付けにつきましては、現時点では全国で9件が契約済みとなっているところでございまして、下にお示ししてございますが、こちらについては、福岡県へ福岡武道館用地として定期借地により貸し付けた事例を参考として記載させていただいているところでございます。こちらが取組状況でございます。

 3ページ目を御覧ください。こうした取組を進めているところでございますが、制度開始後5年が経過いたしまして、運用における課題も確認されてきているところでございます。

 上段の枠の1つ目でございますけれども、現行の取扱いに基づき留保財産として選定した財産のうち、低層の住居系の用途地域に所在しているものでありますとか、敷地形状等の理由により有用性・希少性が乏しい財産というものも確認されておりまして、そうした財産をはじめとして有効活用が図られていないというところと、留保し続けることによるコストが発生しているという財産が一部にございます。

 4ページ目で、参考として記載させていただいているんですけれども、低層住居系の地域に所在する財産でございますとか、土地の一部が急傾斜地にかかっていて災害リスクを一部有する財産、それから物件の特性として間口が狭小であるといったことから、活用のプランが描きづらい財産が一部にございます。

 恐縮ですけれども、3ページに戻っていただきまして、上段の枠の2つ目でございます。こちらは定期借地ということで、更地化というものを前提としてございますので、国が既存建物の解体撤去等を行っているということで、関連する手続等も含めますと相応の時間を要しているというところで、事業の早期実現化を図りたいといったようなニーズも寄せられているところでございます。

 留保財産制度につきましては、先ほども申し上げましたが、各財務局におきまして、地方審議会での御審議をいただいて、選定、それから利用方針の決定、策定を行っているところでございますが、地方審議会におきましても、制度としては有効であるという御評価をいただいていると承知してございますので、こうした観点からも、建物の解体撤去といった手続に限らず、運用の円滑化を図って、早期に地域社会のニーズに対応した活用を進めていくことが必要であると考えているところでございます。

 続きまして下段でございますが、こうした課題を踏まえまして3点挙げさせていただいているところです。

 留保財産の選定に当たって、選定時に考慮すべき視点はないか。

 留保財産の活用策について、定期借地権による貸付けのみとされているが、見直すべき点はないか。

 留保財産の活用に当たって、事業の早期実現化のための方策はないか。

 こうした点につきまして、運用の円滑化を図る観点から、選定方法でありますとか、有効活用に向けた具体的な方策というものを検討する必要があると考えておりまして、御意見をいただきながら検討を進めていきたいと考えておるところでございます。

 私からは以上でございます。

〔 筒井分科会長 〕 ありがとうございました。それでは、引き続き国家公務員宿舎の整備について、事務局より説明をお願いいたします。

〔 梅野国有財産調整課長 〕 国有財産調整課長の梅野でございます。

 資料4についてでございますが、宿舎整備を行う場合には、その具体的な計画につきまして本分科会に御報告するということになっておりますので、御説明させていただきます。

 1ページ目をお願いします。簡単にこれまでの経緯について御紹介をいたします。

 平成23年の国家公務員宿舎の削減計画において、特に設置戸数の削減目標が設定され、その後、宿舎跡地の売却により計画上の概算額を大きく上回る財源が捻出され、計画を達成したところでございます。

 その後、当分科会においても御議論、御報告をさせていただきました令和元年答申及び行政財産の未来像研究会報告書におきまして、削減計画における廃止宿舎の選定が主に老朽化や売却収入確保等の観点から行われたことや、近年の行政需要の変化に伴い宿舎需要が変化していることにより地域ごとの需給のミスマッチが生じている。また、住戸規格にミスマッチが生じているなどの課題があり、宿舎需要の変化等を見極めつつ、これらの課題への対応について検討を進めるべきとされているところでございまして、こうした議論を踏まえて、令和5年度から宿舎の新規建設を進めているところでございます。

 2ページ目でございます。おさらいでありますが、課題といたしましては、既存宿舎の老朽化の進展に加えまして、地域ごとの需給ミスマッチ、特に東京23区内で不足をしている。また、独身・単身者用宿舎が不足している。さらには、地方においては、広大な敷地の中に多数の低層宿舎が建ち並び、敷地が低利用となっている宿舎があるといったものがございます。

 こうした課題に対する対応の方向性としましては、すべからく建て替えるということではなく、個々の宿舎の状況に応じて長寿命化を図っていくという対応に加えまして、宿舎が不足している地域においては、コスト比較を実施した上で、建設優位であれば建設を検討することとし、また、建設に当たっては、若手職員を中心とする独身・単身者向け宿舎の整備を優先するほか、非効率な土地利用になっている宿舎は集約化し、建て替えることを検討することとしております。

 なお、整備財源については、今後廃止する宿舎の売却収入を充てることで新たな国民負担が生じないように対応することとしております。

 令和5年度予算で措置した葛飾区小菅を皮切りに、令和6年度予算に引き続き、令和7年度予算案におきましても、東京都北区十条と、熊本市の2件について必要経費を計上しております。

 3ページ目をお願いします。資料の3ページは、東京都北区十条の事案でございます。所在は、JR埼京線十条駅の東方約0.9キロメートルに位置しており、霞が関までの通勤時間は約45分となっております。本財産は、元々は東京都に対して都営住宅敷地として貸付けしていたものが返還されたものでございまして、この土地に6階から8階建て、269戸の宿舎を建設する計画であり、完成は令和11年度頃の予定でございます。

 4ページ目をお願いします。これは、熊本市の事案でございます。所在はJR南熊本駅の東方約0.5キロメートルに位置しており、本財産は熊本県に貸付けしていたものが返還されたものでございます。真ん中の地図を御覧いただきますと、赤丸が3つありますが、白川住宅、東町南住宅、湖東住宅について集約化することとし、11階から13階建て、250戸の宿舎を建設する計画であり、完成は令和11年度頃の予定でございます。

 なお、地図左側に緑色で熊本地方合同庁舎をマークしておりますが、この地方合同庁舎は2棟ございまして、2010年度、2014年度に竣工しているものであります。熊本市では、この合同庁舎に通勤する職員が多くいるところ、今回の集約化によって宿舎が西側にシフトすることにより、通勤利便性が向上するといった効果も図られることになります。

 また、熊本市における宿舎需給については、宿舎建設により、将来的に宿舎の需給状況がバランスし、不足が生じない見込みとなります。

 最後、5ページ目でございます。こちらは新規建設ではなく、廃止したものを宿舎として復活させる取組について紹介しています。

 資料左側のさいたま市中央区の事例でございますが、廃止決定された合同宿舎45戸についてリノベーション工事を実施しており、4月から供用開始予定でございます。本宿舎は、さいたま新都心合同庁舎から約1キロメートルに位置しており、災害等緊急時対応職員の宿舎として活用する予定でございます。

 資料右側の葛飾区立石の事例ですが、これは在外公館に行かれた職員の御子息が入る育英寮が廃止されましたが、合同宿舎化した上でリノベーション工事を実施し、独身用59戸について7月から供用開始予定でございます。

 説明は以上でございます。

〔 筒井分科会長 〕 ありがとうございました。

 それでは、ただいま3つの議事について説明がございました。ぜひ委員の皆様から御意見等がございましたら御発言をお願いしたいと存じます。いかがでございましょうか。

〔 奥田委員 〕 御説明ありがとうございました。

 まず冒頭で、社会経済状況の変化ということでお話がありましたが、コロナ禍を経て、急速に都心部を中心に不動産価格が上がっています。この背景には幾つかの要因があるのですが、共働き世帯も増えていて、都心部に住まないと仕事も続けられないというニーズがある中で、また一方で、世界的な傾向も踏まえて、建築費が非常に上がっている状況にあります。

 この傾向というのは当面まだ続くだろうと見られていまして、若い世代、子育て世帯については、各自治体等を中心に大分手当ても進んでいるようですけれども、これから結婚しようというような、そういう若年層への手当てはなかなか進んでいないように認識しておりまして、この方たちが住む家を確保することが、極めて難しい状況になっていると思います。

 国家公務員に関しては、従前から福利厚生という形ではないというお話をいただいていますが、多くの企業さんが福利厚生に非常に力を入れていらっしゃいまして、若手を確保するために、住居手当、これも増やしているような状況です。給与水準もそうですけれども、ある程度国家公務員についても施策を考えていかないと、本当に人材が不足してしまうのではないかということを懸念しております。考え方を少し変えていくほうがよろしいのではないかと認識しているところです。

 留保財産の活用のところで、基本、定借だというお話がありましたが、活用が難しいところに関しては、隣地の方に買っていただくとか、当然そういう形で管理コストを下げていくということも考慮すべきだと思いますが、ここが進んでいないのはなぜなのかというところが気になりました。まずはそこまでで、ありがとうございます。

〔 梅野国有財産調整課長 〕 まず、宿舎の関係についてコメントさせていただきます。

 福利厚生に力を入れていくべきではないかという話でございますが、まさに貴重な御意見と承っております。これまでの分科会におきましても、国家公務員の人材確保の観点から、適切な宿舎を提供していくべきだという御意見も頂戴しておりまして、特に若手職員向けの宿舎の確保についても重要性が高まっていると考えております。今いただいた御意見を踏まえながら、まずは若手職員の処遇改善のために何ができるかというところについても引き続き検討していきたいと思いますし、まさに顕在化した課題の1つだと認識しておりますので、引き続き検討していきたいと思います。ありがとうございます。

〔 皆川大臣官房専門調査官  〕 留保財産のニーズが低い場合というところでございますけれども、まず、元年の答申におきましても、留保財産につきましては、期間を十分にとって、官民の広い知見を活用しながら検討していくというところでございまして、十分な検討期間を確保した中で、自治体、民間の事業者、地域住民の方々を含めて御意見をいただきながら意見を集約していくというところがまず大事だと思ってございます。

 その中で、ニーズに関しましては、例えば先生がおっしゃいましたとおり、地域の経済情勢でございますとか、例えば都市機能の集約化といったところが進んでいく中で、そうした中で当然まちの変化というのもございますし、そうしたところをしっかり自治体ともコミュニケーションをとりながら、まず土地の活用というのを検討していく。その中で、留保財産としての有用性、希少性といった観点で見たところで、まずそこがまちの中でどういう位置づけにあるかというものを改めて確認していくというところが、例えば隣地というお話がございましたけれども、ほかの活用方策といったものを検討していく必要があるのではないかと考えてございまして、そうした点につきまして今後の課題だと考えてございます。

〔 窪田理財局長 〕 今委員から、給与水準や手当についても考え方を変えていくべきではないかというお話がありました。大変ありがたいお話でもあり、身にしみる話でもあるわけです。もちろん、人事院なども、公務員の給与体系はラスパイレスという形で民間準拠でやっているわけですが、今いただいた御意見のような御指摘を人材確保の観点からも多くの人が問題意識を感じていると思います。

 他方で、10年20年と振り返れば、全く真逆の議論がされていた時期もありまして、新しい制度にいくときに、ある程度安定的に、あまりにも裁量的に流れないようなそういう仕組みというのは、人事院などともいろいろ相談していく必要があると思っておりますし、我々としても、特に宿舎の観点から、強い問題意識を伝えていければと思っております。

〔 松尾臨時委員 〕 ありがとうございます。

 国有財産行政のあり方について、令和元年答申を踏まえて、その後の社会情勢の変化を考慮して、今後どういうことを考えていくべきかというこの指針については、非常にすばらしい方向性を向いている分析だと感じました。まさに正しい方向を向いていると思います。とりわけ地域の不均衡性をどういうふうに考慮していくか、それから、財務省がこれまで掲げてきた地域連携をどういうふうに効果的に進めていくかということは大きなポイントになるのではないかと考えます。そのこととの関係で、地方創生2.0、それを基にした政策連携も図っていくべきだということも非常にタイムリーな視点であると思っておりまして、ぜひこの方針を進めていただきたいと感じた次第です。

 特にこの地域連携を図るという意味では、近時、国土形成計画法および国土利用計画法に基づいて進められている第三次国土形成計画および第六次国土利用計画が令和5年にそれぞれ出されておりますが、その中で提示されている国土の管理構想というものがございます。これは、従来のトップダウン式の国土の計画の在り方から、ボトムアップの計画への変化を促そうという考え方です。

 そうした各々の地域の管理構想を出発点にして、複数の地域を市町村が繋いでいく。さらにその複数の市町村を都道府県が繋いでいく。そして、指針のつくり方等について国が管理構想の方法論を示す。こうして徐々にボトムアップにしていくという国土計画の在り方が示されております。地域の管理構想については、実際に策定している例は十数件という段階のようですけれども、約30万あると言われる日本の地域コミュニティの中にもこういうものが徐々に普及していくプロセスが始まったのではないかと感じております。そういう動きと国有財産行政の地域連携を重視するという財務省の指針をうまく連携させて実現していくという方向性が望ましいのではないかと考えます。

 具体的にどういう形で連携を実現するかについて、資料2の30ページで、令和元年度からの答申の進展として、1番目に、地域の発展に貢献するというテーマを掲げていただきましたけれども、例えば地域の管理構想を策定しているということを考慮して、当該地域における国有財産の活用の仕方も決定していく方向が考えられると思います。

 資料3の留保財産制度との関連もあるかと思いますが、課題として、選定時に考慮すべき視点を掲げていただいております。そのときに、例えば地域管理構想をつくっている、あるいは市町村の管理構想ができているということをこの留保財産として選定し、利活用するときの1要因として積極的に考慮するという視点も考えられると思います。それがインセンティブとなって、地域の管理構想、市町村の管理構想ができていく、そういう流れもつくり得るのではないかと考えます。そういう意味でも、非常にすばらしい視点を今回提起していただきましたので、ぜひそれを実現していただきたいと思います。

 それと関連して、国家公務員宿舎についても、それぞれの地域の中で、国家公務員宿舎が存在するということが良好な環境形成要因になり得ると思いますので、地域の計画の中にそれを組み込んで、国家公務員宿舎があることによって、その地域の環境が改善していく、よりよいものになっていくという視点も積極的に進めていただければと考えます。

 以上です。ありがとうございました。

〔 尾﨑国有財産企画課長 〕 御指摘いただきありがとうございます。地域との連携ということについては非常に重要だと思っておりまして、これまでも御紹介したとおり、財務局では今でも市町村や自治体、あるいはコミュニティと連携を図ろうということはしてきたつもりではありますけれども、より一層入り込んでやっていく必要があるんじゃないかということは、私も各財務局に出張等で行かせていただいてお話を聞くときにそういうことを思います。

 例えば市町村で今立地適正化計画というのを作成しているわけでございますけれども、そういうところにおいても、国の宿舎や庁舎の活用というところまで全部しっかり勘案されているかということも含めて、より連携やコミュニケーションを密にして、よりよい方向に向かっていくべきなのではないかという問題意識を持っておりまして、そういったところにおいても、各財務局、それから、本省同士でも、例えば国土交通省と意見交換するなど、より実効的なものにしていく。それは、最後に御指摘いただいたような宿舎について、コミュニティに対して良好な環境を示すのではないかということも含めて考えていきたいと思っております。御指摘ありがとうございます。

〔 竹川臨時委員 〕 ありがとうございます。

 1つは、公務員宿舎の問題ですが、福利厚生目的は認めないということですけれども、ここを実態に合わせたほうが良いのではないかと思います。原則的なところをちゃんと一定程度の福利厚生というのがないと人材確保はできないということもありますので、そうじゃないと、それできれいにしていっているのが、逆に後から、そう言っているのに矛盾しているんじゃないかみたいな批判を浴びるリスクもあるので、正面から、それは必要性があればちゃんと言って、きちっと正面から整備していったらいいと思います。それが1つです。

 それから、留保財産制度、こちらは、定借以外の方法というのは、居抜きで貸してリノベーションしてもらって使ってもらうとか、そういうイメージでしょうか。サステナブルというか、環境配慮とかそういうことからも、そういう貸し方や活用の仕方ができるなら多分望ましいと思うので、その辺の事情を教えていただければと思います。

〔 梅野国有財産調整課長 〕 宿舎の関係でございますが、奥田委員からも同様な御意見をいただきまして、貴重な意見として承りたいと思いますし、何ができるか検討したいと思いますし、まさに顕在化された課題の1つと認識しておりますので、ぜひ貴重な意見ということで承りたいと思っております。ありがとうございます。

〔 野城臨時委員 〕 野城でございます。

 もう皆さんがおっしゃいましたので繰り返しになりますけれども、公務員宿舎につきましては、実際に10年前に真逆の議論をしたことがありましたが、その結果、かなり人材確保に齟齬が出てきているように私は個人的に思います。財務省の方々は本当に頑張っていらっしゃいますけれども、他省庁の方とお付き合いしていますと、時々ある事象に対して、いろいろと複雑な社会的な情勢の中で、本質はまた別なところにあるにもかかわらず、別なところに一生懸命にやっていらっしゃるところに遭遇いたしますと、残念ながら、国家公務員、特に霞が関で働いている方々の資質の低下というのは顕在化してきているように私は危機感を持っております。

 そういう意味でも、一つの要因というのが、十数年前にあったある一面的な議論の副作用だと思っております。特に民間の住宅が投資対象にもなって、都市部では集合住宅でも公務員ではなかなか持ち家を持てなくなってきているという状況等々を含めて考えますと、今回とられている措置というのは是正の第一歩として非常に大事だと思っております。

 それと、他の2つの課題について、1つはそのとおりで賛成でございますけれども、施策を進めるについて1つ持っていただきたい視点は、今データをベースに考えていくということが大事になっております。国有財産のまちの中での位置づけや、あるいは相続人不明の土地を持ち込まれた際にどうするか。それも御説明のように、限られた財務局の人員の中でどう行政の仕事を進めていくかというときに、一々また家捜しのようにしてデータを集めている作業を1件1件やっているのは具合が悪いと思います。地理的な情報については、国交省が今プラトーという、地図情報から様々な情報、データベースが引き出せるようなシステムを整備する方向で、様々な情報を結びつけていくようなことをされています。そういった仕組みの活用も含めて、電子的な地理的な情報を活用しながら、今日御説明のあった2つの施策を進めていかれるといいのではないかと思いました。

 以上でございます。

〔 皆川大臣官房専門調査官 〕 先ほどの留保財産の活用の方向性として、リノベーションというお話をいただきました。まず、その件について御回答させていただきたいと思います。

 まず、現時点で活用の検討というところでいきますと、定期借地に限らずというところで、ニーズとしては、こちらは定期借地で当然ながら建物所有を目的とするところでございますので、まずそうしたところに限らず、平面的な利用のところでも地域活用ができないかとか、そうしたところを検討する必要があると考えてございまして、実際にリノベーションになりますと建物付きというところになるのですが、現状で申し上げますと、こちらは行政財産が用途廃止をされて引き継がれるところでございまして、経年劣化が激しいものも多くございますので、実際に使えるものがあるかと申しますと、今のところ、そうしたものがあるかどうかというところは個々に見ていって、ただ、そういったところは排除せずに、柔軟な形ででき得るのかというところは個々に見ていく必要があるのかなと考えてございます。

 以上です。

〔 野城臨時委員 〕 今申し上げた地理的情報というのは、例えば、街区だとか、そういう視点で見た場合に、竹川委員もおっしゃったように、リノベーションされていないけれども、ここは長期的な視点に立つと、まちづくりのためにかかる調整コストを考えれば、多少陳腐化した状態でも何とか10年間何らかのキャッシュフローが出る形で使って、そして、その10年後のまとまった事業に供していくとかいう視点がもてるようにようにするための手がかりとして、地理的空間情報は大変大事だと思っております。そういった意味でその活用を御検討いただければということでございます。

 以上でございます。

〔 尾﨑国有財産企画課長 〕 ありがとうございます。まさに今いただいたようなデータの活用ということは不可欠だと思っています。私も昨夏からこの仕事をさせていただいていて一番最初に思ったのが、相続土地国庫帰属制度の件数がどかんと増えているということですとか、民法上の相続人不存在による国庫帰属制度の利用がすごく増えているということで、現場がすごく管理コスト──コストという意味は、お金の面もそうですけれども、人的にも非常に手間がかかっていて、本当に苦労しているという話をよく聞きまして、その中で、最後のあるべき姿のところにも書かせていただいていますが、引き取り手のない土地を適正なコストで維持管理するということの難しさというのは今直面している課題でございます。

 その中で、今お話しいただいたようなデータベースの活用等は、当然考えていかなければいけないということでございますので、そういったことも含めながら、どうやってこの状況に臨んでいくかということは財務局ともよく相談しながら考えていきたいと思っております。

〔 野城臨時委員 〕 相続人のことについては、境界確定までやるような行政コストをかける必要があるか。むしろ衛星写真のような地理的な情報だけで場所特定ができればそれで取引が成立する事例もあり得ますので、そういった観点も含めて、ぜひ行政コストを下げるという観点からいろいろと活用いただければと思います。

 いろいろ申し上げまして、すみません。以上です。

〔 村木臨時委員 〕 ありがとうございます。私も、先生方が既に御指摘された点だと思いますが、繰り返しになって申し訳ございませんが、意見を申し上げさせていただきます。

 資料2の30ページにあるあるべき姿の①のところは非常に良いと思い見させていただきました。地域それぞれの課題やニーズに対応するということはとても良いと思いますが、その前段にあった処分困難な財産というのが各地にかなり多く、災害時などの有事に、しっかり活用が本当にできるのかということが気になりました。

 それから、処分困難な財産を今後どうするのかといった際に、活用性が高そうなところから何らかの手を打っていくか、その辺の方向性も考えていく必要性が非常に高いのではないかと思いました。

 関連して、資料3にもある留保財産についても、活用可能には課題が多いことからすると、これらの国有財産への対応もどうしていくのかと思いました。

 以上です。

〔 尾﨑国有財産企画課長 〕 御指摘いただきましてありがとうございます。

 まさに処分困難財産が今後増えていくことになるということだろうと思います。その中で、今までのやり方だけでやっていけばいいのか。その延長線上ではないやり方、今御示唆いただいたような、例えば地方自治体に対しても無償で渡してしまうとか、そんなことも含めて、今までの考え方にとらわれないような形での何かができないかどうかということについては喫緊の課題だと思っておりますので、よく検討させていただきたいと存じます。

〔 大久保臨時委員 〕 大久保です。御説明ありがとうございました。資料2について幾つかコメントさせていただきたいと思います。

 まず1点目ですけれども、2050年の都道府県別の人口の推移のデータをお示しいただいて御説明をいただきました。そうしたことを踏まえて見ていきますと、東京を代表とするような都市化がどんどん進んでいく地域の財産に関する対応策と、それから、秋田県のように過疎化がどんどん進んでいく地域の財産の在り方、管理の仕方というのは、全く次元が異なるといいますか、都市化が進み需要が多いところでは、いかに価値ある活用法を今後もどうやって突き詰めていくかということが大いに求められるでしょうし、皆さん、いろいろおっしゃっておられますけれども、過疎化が進み活用の見込みのない財産をどのように低コストで管理していくのかということについても、これまでとは違う手段を含めて突き進めて考えていくということがものすごく重要だなと感じております。

 さらに2050年ぐらいをにらんで考えますと、例えば今申し上げました過疎化の進む地域で日本人を対象とすれば、なかなか活用の見込みがない財産もあろうかと思いますけれども、インバウンドなどを通して、日本に訪れる外国人で日本が気に入って長期滞在をしたいとか、そういった方々も多く増えてくるだろうと予想がつきます。ですので、日本人だけでは活用のめどが立たないようなものについても、長期的に滞在を志向する日本人以外の方々を対象とした活用の方向性なども考えていけば、もう少し日本の国土の活用というのが進むのではないかと考えます。

 3点目なんですけれども、29ページに、中長期的に課題となり得る懸念事項というふうな記載がございます。中長期的というのは、やや抽象的であります。例えば2030年をにらむのか、いや、2040年、2050年、もう少し長期的な視点で俯瞰して打つ手を考えていくのかということについて、スパンを考えますと、そのスパンによって出てくる課題も、それから、それに対する対応策も変わってきますので、もう少し抽象的な中長期的を具体的な時間軸でどの程度のスパンと考えていただいたほうが的確な課題の把握と解決策というのが出てくるのではないかと思います。

 私のほうからは以上です。ありがとうございます。

〔 尾﨑国有財産企画課長 〕 御指摘ありがとうございます。今いただいた点、どれも大変重要な点だと思っています。特に、まず1点目なんですが、この資料でとても言いたかったことをそのまま委員のほうからおっしゃっていただいたと思っていまして、例えば都市部と地方部では全く課題が違うのだから、まさに次元が異なる施策を地域ごとにちゃんとやっていかなければいけないということなんだろうと思います。

 他方で統一的な取扱いが求められているところがあり、当然国有財産法を含めて法体系というのもあるものですから、このバランスをどう取っていくかということが非常に重要なことだろうと思っています。当然ながら、個々の課題にどうやって対応していくかということについて、まさにルールのほうも一定程度柔軟にしていかなければいけないというところもある反面で、統一的な取扱いみたいなこととどういうふうにバランスを取っていくかということについては今後よく考えていかなければならないと思っています。

 3点目の「中長期的に課題となり得る潜在的な懸念点」、これも御指摘のとおりでございまして、その中で、様々な施策によって異なってくるものだろうと思うんですが、例えば資料2の14ページを御覧いただきますと、これは育児・介護のニーズの表を示しています。左側の要介護認定者の推移、これは2040年に向かって増えていくわけですけれども、右側の保育所ニーズの推移の推計というのは、少し前のように一律に増えていくということよりは、だんだん横ばいになってきております。定期借地権というのは非常に長く土地をお貸しするということになるものですから、そのようなニーズの変化に対してずっと同じ形で進めていいのかということについては、常に考えていく必要があると思っています。

 他方で足下のニーズは引き続き、これも御示唆いただいたとおり、都市部と地方部では違うものですから、そういったところをよく見ながら、施策ごとにタイムスパンということを意識しながら考えていきたいと思います。

 私からは以上です。

〔 川嶋臨時委員 〕 ありがとうございます。ほかの先生方からいろいろな御意見があったので、端的に意見として述べさせていただきます。

 この国有財産行政の在り方についての足下の課題とか人口減少社会の中でどう対応するかという問題意識については、完全に共有しているところで、そこの問題意識を提案されたということは高く評価したいと思っております。ほかの先生方がおっしゃっている引き取り手のない土地を適正なコストで維持管理するというあるべき姿の②については、ここが一番重要なところで、これをいかに進めていくかということを引き続き考えていただくのが喫緊の課題であろうと思います。

 具体的な話に落としていくと、相続土地の問題は制度が始まったばかりですので、これは法務省、農水省などと連携して、見直し規定があると伺っておりますので、できるだけ速やかに具体的な協議を始めていただきたいと思ったところです。

 あと同じ観点からいきますと、国有財産も国民の財産なんですが、それを管理するためのコストも国民の財産だと思いますので、留保財産に関しては、コスト意識を強く持っていただきたいと思って伺っておりました。

 これは、基準を拝見すると、東京では1,000平米以上、政令指定都市2,000平米以上ということが細かく書かれておりましたけれども、留保財産にするべき財産についての基準はもう少し厳格にして考えていただくべきなのではないかと思いました。活用の方法が見込めない土地が出ているということは、そこに甘さがあるのかなと思いますので、基準をもう少し厳格にされることも選択肢かなと思います。

 さらに、地方の審議会で審議されているということですが、ここは財務省も厳格に見守っていただいて、将来活用見込みのない土地まで留保財産としていくということには厳しい視線を向けたほうが、より留保財産の意義が発揮できるのではないかと思いました。

 あと1点、国家公務員宿舎に関しては、私は、首都圏など公務員の確保を考える上では、できるだけ有効活用しつつ整備を進めていくべきだということは皆さんと同じ意見なんですけれども、先ほどご提案がありました福利厚生に位置づけることについては若干慎重に考えておりまして、福利厚生という観点で宿舎を強化するということをしていくと、また同じような轍を踏むことになるのではないかと懸念しています。

 それは、一時期ありましたような公務員優遇であるとか、そういった感情的な議論を引き起こしかねないと懸念しておりまして、宿舎の観点から考えるというよりは、人事院が進めているように、公務員の全体の在り方、公務の在り方というもう少し総合的な、人事院主導の中でやっていくものの中で、一つの働きやすい職場環境という意味で公務員宿舎については位置づけたほうがいいのかなと個人的には思っております。あまり過剰な批判を招かないように慎重に運営していただきたいと考えております。

 以上です。

〔 皆川大臣官房専門調査官 〕 御指摘ありがとうございます。

 先ほど留保財産について、選定を厳格にとの御指摘をいただいたというところでございますけれども、確かに留保財産の選定に当たりましては、今後運用の円滑化も視野に入れて、選定時に考慮すべき視点を明確化していくことが大事だと思っておりまして、そうした中におきましても、先ほど少し申し上げたとおり、まちづくりの変化でございますとか、当然立地適正化計画の内容でございますとか、マスタープランでございますとか、そうしたところの変化を捉えながら、ニーズというものを継続的に確認した上で、ただ、有用性の選定時の要素というものが変更するというところもございますので、そうしたところを捉えながら見直しをしていくことが大事だと思っておりまして、引き続き選定の考え方を明確化して整理していきたいと考えているところでございます。

〔 梅野国有財産調整課長 〕 宿舎の件、福利厚生の点についての捉え方について、貴重な御意見をありがとうございます。なかなか難しいところですが、我々としても、東京23区については独身用宿舎が足りないという事実がありますので、整備する際には、十条もそうですが、独身用の戸数を一定程度厚めに整備するということはきちんとやっていきたいと思います。

 一方で、処遇改善というところについては、まさに宿舎だけでということではないというのは全くそのとおりでありまして、人事院でも、人事行政諮問会議でいろいろ御議論されているのも承知しておりますし、一方で、宿舎として何かできるかというところについては、いろいろ議論、検討していきたいと思っております。

 貴重な御意見ありがとうございます。

〔 持永臨時委員 〕 ありがとうございます。資料2のコメントと資料4の確認が1つずつございます。

 まず、資料2の30ページになります。これまで国有財産分科会で様々な議論をしてくる中で、このタイミングで中長期的なあるべき姿をお示しいただいたというのは非常に価値があると思っています。その中で、一番最初に御意見を述べられた奥田委員に始まり、皆様同じことを考えておられると思うのですが、一番下の④になります。私は、会計の専門家でヒューマンリソースの専門家ではないのですが、日本を代表する企業、さらには中堅、中小まで、人材の育成、確保、非常に苦労されています。

 その中で、従業員のエンゲージメント指数ですとか、「人財」、人の材料ではなくて人の財産という形で大事にするという観点を皆さん持っておられます。その中で、一番最後、「誇りと向上心をもって働くことができる」とあるのですが、実は違和感を持って、代替する言葉が見つからなかったのですが、職員の方々を大事にするという考え方からすると、「誇りとやりがい」ではないのかと考えます。

 適切な日本語とするとなると、「誇りを持ってやりがいを感じられる組織を目指す」に修正しますと、今様々な委員の方から御意見があった人材の話ですとか宿舎の話ですとか、こういったところも含めて、人を大事にするというスタンスがお示しできるのではないかというのが1つ目でございます。

 次に確認で、資料4になります。資料4の5ページになるのですが、個別の物件等を考えながら、実態を見て経済的、合理的な対処をしてこられたということは分かりました。確認はこの5ページ、左側は昭和51年という非常に古い物件になります。右側はまだ少し新しい平成9年なのですが、このような古い物件、比較的新しい物件等々において、活用される場合の基本的な考え方、これについて教えていただけますでしょうか。

 以上2点でございます。

〔 尾﨑国有財産企画課長 〕 御指摘ありがとうございます。

 まず、資料2の30ページの④ですが、そもそも今まで職員というものに着目することがなかったということで、今回施策のところに加えさせていただいたものです。誇りと向上心ということ、私もワーディングをいろいろなことを考えて、思考過程を申し上げることになり誠に恐縮ですが、やりがいを感じられるという表現もあり得ると考えていたところです。

 向上心と書いたのは、やりがいを感じてもらって、それでさらに上に向かっていく。まさに今委員にいただいたような御指摘を包含して考えたつもりでございまして、それで職員を大切にしていないということを思っているつもりではないんですけれども、今いただいたような御示唆は非常に貴重なことだと思いますので、それも含めて考えてみたいと存じます。ありがとうございます。

〔 梅野国有財産調整課長 〕 資料5ページの廃止が決定された宿舎を再活用する事例、左側の昭和51年築の建物がまだ使えるのかということだと思うんですが、長期使用可否判定、つまり、今後20年軀体が大丈夫かどうかという判定をしています。この宿舎については長期使用可否判定において大丈夫という判定を受けて、リノベーション工事をやったということでございます。

 以上です。

〔 滝澤臨時委員 〕 説明ありがとうございました。いずれの議論につきましても賛成という前提で2点申し上げたいと思います。

 1点目は、留保財産制度についてですが、これは、一般的な売却益の物件ではなくて、長期的な公共利益を確保するという観点から、妥当な政策であると思います。その評価基準が明確であるか、また、留保された土地の具体的な活用計画が地域のニーズと合致しているか、あるいは将来的な行政需要があるかどうかを現時点でどのように判断するのかなど、さらなる議論が必要な点もあるかと思います。例えば定量的な選定基準や、定期的な留保財産の再評価などが必要になってくるのではないかと思います。

 2点目は、国家公務員宿舎の問題についてですが、本日最初の議案の特許庁総合庁舎の庁舎等使用調整計画の御説明の際にも、テレワークを推進されているという話がございました。ここでBCP用宿舎が不足というお話がありましたが、どの程度緊急時に集まる必要があるのかということも、例えばICTテクノロジーの発達に伴い変化しているものと思います。例えば災害時におきましても、通信可能なネットワークの構築というものが進むのだとすると、宿舎の不足問題につきましても、働き方とか、そうしたテクノロジーの変化に伴って、そもそもの不足の基準などを含めて再評価していく必要があるのではないかと思いました。

 私からは以上です。

〔 皆川大臣官房専門調査官 〕 留保財産につきまして御質問ありがとうございます。

 留保財産につきましては、将来的な行政需要の把握といった御指摘をいただいたところでございます。確かに長期的な需要の把握というのは難しい部分はあるのですが、そこは、まず将来、国で直接使う可能性、それから、国有地を活用して国の施策を推進していくというところ、まさにそれが地域のニーズに合致していくという考え方はあると思います。

 将来的な行政需要はなかなか難しい中でというところで、大都市圏を中心として、その可能性が高いかという観点から選ばせていただいているところでございまして、ただ、今後、確かに行政需要というものをデータとして把握していく中で、そうした検討の資料とさせていただく可能性の高さというか、確度を高めていきたいと考えておりますので、そうした点も検討していきたいと考えております。また、定期的な評価をしていくというところも大変重要だと思っておりますので、そうした御意見を踏まえて対応していきたいと考えてございます。

〔 吉原臨時委員 〕 ありがとうございます。私も委員の先生方の御発言に大変賛同するところです。

 私からは、資料2につきまして、特に処分に困る土地の扱いという点についてコメントを申し上げたいと思います。

 30ページにあるべき姿(仮案)というところが①から④と示されておりまして、特に①、②の部分になります。

 その前にちょっとだけ付け加えますと、④について、先ほど「多様な職員が誇りと向上心をもって働く」というこの向上心について、やりがいではいかがでしょうかというコメントがございまして、確かにそれもそうだなと思って拝聴しておりました。ただ、私は、先ほどお答えにございましたように、向上心の中にやりがいも包含されているのだというのは非常に納得のいく御説明だと思った次第です。やりがいをもってと書きますと、今やりがいがないようにも取れかねませんので、より成長とか伸び代、上を向くエネルギーというものが感じられるような向上心という言葉は、今後の若い世代への期待を込めて、非常にいい言葉であると個人的には思いました。

 それから、処分に困る土地につきまして、先生方がおっしゃったとおりだと私も思っております。中山間地域、過疎地域、地方の中核都市、都市部など、地域ごとに不動産の状況が大きく異なる状況があり、例えば冒頭で奥田委員から御指摘のありました都心部の不動産のように、土地・建物が引き続き優良な資産として取引が活発に行われるところと、他方で、需要が不足し、流通できずに放置されるおそれのあるところ、ここに対する懸念が本日も多く示されたところであると思います。そして、その後者のほうがこれから増えていくであろうと。

 理想的には、あらゆる様々な土地がマーケットで流通し、その中で適正に利用や管理がされるのがベストなわけですけれども、それが難しい土地についてどうしていくかといったときに、国土管理の方法の選択肢の1つとして、行政が受け取ることの必要性、重要性、これは高まってしまっているのだと思います。

 冒頭の御説明の際に、相続土地国庫帰属制度や民法上の手続において、非常に人手がかかって御苦労されているという声の御紹介がございました。これは、単なる国有財産の管理とか、権利処分の話だけというよりも、そもそも日本における相続制度が根本の原因ですので、これは財務省における国有財産管理の議論の枠を超えて、国全体として、人口減少時代における相続の在り方というものを社会としてどう支えていくのか、土地だけではなくて、様々な財産の承継について考えていかなければいけないのだと思います。

 それを踏まえた上で、では、国有財産管理については何ができるかということについて、限定的であるかもしれないけれども、省庁連携を見据えて考えるという、考え方の転換が必要であろうと思います。行政が受け取るというときに、国か民間か、あるいは行政か民間かというこれまでのような二元論ではなくて、国土の安定的な保全と、それから、民間の自由な経済活動の両立という観点での新しい仕組みや役割分担、新しい土地ガバナンスとも言えると思うのですけれども、そうした新しいスキームをつくっていく必要があると思います。

 民間だけでは適切な管理や流通が難しいところについては、まずは行政、すなわち、国や地方公共団体において、安定的に最低限の管理を行う。権利を適切に保全していくことが何より重要です。その上で民間が利用権などを設定して自由な経済活動を行っていくという柔軟なスキームが必要だろうと思います。先ほどインバウンドに期待をして、日本人だけでなく、多様な方々に活用していくことが有用であるという御指摘がありました。まさにそれは避けては通れない選択肢だと思います。そのために、安全保障上の観点からも底地の権利は国がしっかりと持っておくということが本当にこれから重要だと思います。

 そして、その際に、管理コストの試算が重要であるということが前回の会議でも松尾委員より精緻な御指摘があったところで、管理コストをしっかりと分析していくということ、その上で、公有地の民間による有償利用、無償利用について、より多様な在り方を検討していくことが必要であると思います。地域との連携が重要であるという御指摘が多々あるわけですけれども、うまく回っているところとそうでないところ、そうでないところが圧倒的ではないでしょうか。

 地域という言葉には、市町村などの行政と、それから、地域の民間団体という2つの要素が含まれていると思いますので、それぞれに対して、国として、財務局としてどういう関係性を持っていくのかということをより具体的に考えていくことが必要だと思います。市町村は、率直に申し上げて、こうした未利用土地についての関心は非常に低いと思います。そこまで手が回らないというのも現状ですし、住民の個人財産に関与するようなことに積極的に乗り出そうという余裕や知識、はっきり申し上げて、専門知識も限られていると思います。国の政策に関する情報も行き渡っていないところも多いと思います。

 そうした中で、これから財務局の役割は非常に重要になっていく。相続人も高齢化が進んで、これまで相続登記が義務ではなかったですから、数次相続、多数共有になっているものを75歳を過ぎて何とか調整しようという意欲も湧いてこない人も多くなってくる。地域住民も高齢化が進んで、民間で手弁当でやろうという人たちも減ってくる中で、より国が能動的にプッシュしていく必要性がとても高い。それは国の権限を広げるという意味ではなくて、民間の活力を引き出す、民間主導で取り組んでもらうためにも、国が適切なプッシュをしていくということがとても重要だと思います。

 そこで、財務省だけでは難しいところも多々あると思いますので、国交省が低未利用地、空き地などについてもガイドラインをこれから出すと聞き及んでおりますし、既にいろいろな事例集も出しています。民間団体による公有地の無償利用や有償利用についての事例も出ておりますし、推進法人の取組もあります。そうしたものも活用しながら連携して取組を進めていくということが重要ではないかと思っております。

 以上です。

〔 尾﨑国有財産企画課長 〕 貴重な御指摘をありがとうございます。

 国有財産行政を取り組む中で、まさに権利とかそういうようなこともありますが、一番大事なのは、この国の在り方をどうするのかという根本のところをまずきちっと考えていかなければならないという問題意識に至っています。今御指摘いただいたとおり、国の在り方として、人口が増えているときには、土地が足りない、土地が欲しいということが多かったと思うんですけれども、人がどんどんいなくなっていて、そこをどうするんだと、空き家対策だとかそういったことが昨今は非常に話題になっている中で、先ほど別の委員の御指摘にもお答えしましたけれども、管理の在り方については、まず我々の中においては今までと同じようなやり方ではなくて、違うやり方をやっていく必要があると思っています。

 加えて、それだけではとどまらず、今御指摘いただいたような国土交通省のガイドラインや事例集なども検討の材料とするとともに、公有地の有償利用や無償利用の在り方、そういった自分たちの制度だけにとどまらず、広い視野を持ってやらなければならないんだという意識を財務局とも共有しなくてはいけないと思っています。

 ただ、まさに国有地を一度手放してしまうとそれが返ってこないことでは困る場合に、例えば重要土地の法律等で、一定の歯止めをかける制度を創設するなど、これまでのやり方にとらわれないという問題意識を当然持っているわけでありますけれども、さらに今までの枠組みにとらわれないような広い視野を持って、財務局と一体となってやっていく必要があると思っているものですから、今の貴重な御指摘を踏まえまして、我々も取り組んでいきたいと思っております。ありがとうございます。

〔 亀坂委員 〕 ありがとうございます。私は、まず、国有財産行政の在り方に関しては、社会情勢を勘案して見直す、これに賛成で、あと留保財産に関しては、コストも勘案して、有効活用などの今後の具体的な方策を検討するということに関しても賛成です。

 国家公務員宿舎に関しても、これまでもいろいろ意見をさせていただいていたので、例えば私は内閣府で行っている生活満足度に関連する調査の研究会のメンバーなんですけれども、例えばワーク・ライフ・バランスを改善する、ウェルビーイングをもうちょっと改善しないと国家公務員とかの優秀な人材が確保できないんじゃないかということをこれまでも申し上げてきましたが、特に持永委員が御指摘の資料2の30ページの記述に関しましてコメントをさせていただければと思います。

 OECDでは、大分前から英語で言うとディーセントワークということを推奨していまして、働く側の人権とかやりがいとか、そういったものを重視しています。そういったことも勘案して、内閣府の生活満足度に関する研究会でも、実際に国民全体の代表的なサンプルとなるような大規模なデータをとっています。そのデータの中で、特に最近では、仕事のやりがいと満足度ということの調査結果を大企業の経営者の方々からも注目していただいていて、満足度・生活の質に関する調査報告書2023というものが内閣府のホームページで公表されています。

 それに関して、最近朝日新聞出版社のAERAからも取材を受けまして、実はつい先日、2025年2月17日号、その結果も掲載されています。私に対するインタビュー、あともう1人の研究者の方の2人に対するインタビュー記事で3ページにわたってAERAで特集していただいていまして、2025年の2月17日号の18ページに、内閣府の調査結果の仕事のやりがいと満足度というものが掲載されています。

 例えば仕事にやりがいを感じない年収700万円以上の人よりも、やりがいを感じる300万円未満の年収の人のほうが満足度が高いんです。ですので、やりがいとかそういったものを考慮して優秀な人材を確保するというのは非常に重要なことだと思っております。表現は多少変えるものの、そういったことも重視して、あるいは通勤時間です。今回の内閣府の調査結果とは別のいろいろなところで調査結果がありますが、日本は通勤時間が長いことも、日本人の睡眠時間を短くしているという時間の調査結果もあります。

 そういったデータもいろいろ公表されていますので、ぜひそういった裏づけ、内閣府では、もうずっとEBPM、エビデンス・ベースト・ポリシー・メーキングとか、データの見える化というものを進めていて、そういったデータも充実させているので、ぜひそういったちゃんとしたデータの裏づけをもって今後また議論させていただければと思っております。

 以上です。

〔 尾﨑国有財産企画課長 〕 ありがとうございます。今後国有財産行政をやっていく際にデータをきちんと活用して、いろいろなデータを見ながら、様々な情勢を見ながらやっていくということは大変重要だと思っておりますので、よく肝に銘じてやっていきたいと思います。

〔 山内臨時委員 〕 資料2の30ページのところ、これは皆さんおっしゃっているように、国有財産の今後の在り方として正しいことが記述されていると思料いたします。この方向でよろしいと思うんですけれども、ただ、あえてもう少し踏み込んでほしいという感じを持ったところについて申し上げます。

 例えばこれはさきの御説明だと、①、②、③が具体的な方針で、④が包括するような、そういう御説明だったんです。①のところで、地域の発展に貢献するということで、土地の在り方みたいなものを考える。それから、②が安心で豊かな社会を支えるということで、例えばそれは防災や云々、それで適正なコストで維持しつつと、こういう形になっているんです。

 ③のところは、国家行政全体の円滑な運営に寄与するということで、職務の能率云々で、最初のところで、「行政ニーズに応じた庁舎・宿舎の整備等」と書いてありますが、これは財務省の中にとどまっている話だと読めてしまいます。先ほどからいろいろ議論がありますように、全体を通じて、例えば地域の話だと、地方創生2.0とかとありますし、それから、先ほども言及がありました国土形成計画とか、あるいは今日はあまり出てきていないですけれども、GXの実行計画とか、いろいろな国家全体の計画があって、そういうものを具体的に支援するような形で国有財産行政があるべきだというのが③だと思うので、そういったところに視野を広げていただくといいのかなと思います。

 それで、先ほども省庁連携という話が出ましたけれども、それも大事だと思っています。ただ、私は個人的には、具体的にそれを財務省として実現するのは地域の問題だと思います。いろいろな行政を見せていただいていますけれども、縦割りでしようがないんですけれども、地域に行くと、それが縦割りではどうしてもやっていけないという状況がかなりあって、そういうところに国がどういうふうに関与していくか、それをサポートしていくかというのは、地域の発展や地域行政のまさに円滑なものとか、それをするために大変重要だと思っています。

 今回のこの方針として、地域の連携というのを出されたことは、そういう意味で非常にすばらしいことだなと思っていまして、この点、一番下に、「財務省と財務局が一体となって」とありますが、恐らくこういうことをやろうと思ったら、財務局の主体性みたいなものをより発揮させる必要があるのではないかと思っています。いろいろな組織内の権限問題とかも含めてそういうことを考えていただくのがいいのかなと思っております。

 それから、これは、指摘がありましたが、処分困難な財産について、もう少し目を広げて、例えば民間から募集するとか、いろいろなやり方をしたらどうかと、私もそのとおりだと思います。というのは、今回の資料2で、もう少し触れてほしかったと思うのは、例えば地域の格差がなくなりましたとか、高齢化とか福祉とかあるんですけれども、経済構造自体が変化しているというのがあって、そういうことを踏まえると、今まで要らなかった、あるいは今までは使えなかったけれども、新しい産業構造の下で有用になるということがあるかもしれないです。そのようなことを考えると、もう少し広い目を持って利用を促進する、そういう必要性があるのではないかと思っています。

 それから、宿舎の話は、長くここにいるので議論の流れを存じ上げていますけれども、極端な議論に走って、宿舎自体が造れない状態になっているという時代もありました。今皆さんがおっしゃったように、広く言えば働く人の環境とか福利厚生とか、こういうことが大切にされる世界になっているというのはその通りだと思いますし、このことは、国家公務員であっても、当然同じだと思っています。特にそのほかの待遇が他の民間企業と比べて改善の速度がちょっと遅いかなという感じがあるものですから、そういったことを考えると、宿舎という一つの事象に限っても少し考えて、福利厚生というかどうかは別として、何でもいいですけれども、そういった働き方の改革ということにしてほしいと思います。

 実は、これは財務省の問題にとどまりません。私が前にいた国立大学は宿舎があったんですけれども、それを廃止することになりまして、それは、そういう世の中の流れの中で宿舎を廃止するということを決定されたのは致し方ないのですが、その後どうするかというとこの財務省の資料にもあるように、土地を定借で貸し付ける。これはこれでいいことだとは思いますけれども、財務省の考え方というのは、国家の財産全体に及ぶので、例えばその場合でも、宿舎と民間活用をうまく組み合わせられないか、そういうことだってあり得るわけで、なるべくはっきりと財産の使い方について、財務省としても考えていただいて方向性を出していただく。この問題についてはそういうふうに思います。

 以上です。

〔 尾﨑国有財産企画課長 〕 御指摘ありがとうございます。まず、資料2の30ページですけれども、行政ニーズというのが狭く解されるような表現になってしまっているかもしれませんが、庁舎宿舎というよりは、各省で持っているような行政財産、いろいろなことに活用されています。自衛隊で言えば隊舎とかもそうですし、そういったことで行政財産が持っている範囲というのはかなり広うございますので、そういう広い意味を持って考えていたつもりですけれども、いただいた御指摘も踏まえて、よく思いに留めてやっていきたいと思います。

 それから、財務局の役割、これは不可欠といいますか、常に現場ありきだと思っていまして、現場がないところに、我々が本省だけで考えてもできるはずがないと思っているものですから、よくお話は伺いながらやっていますし、コミュニケーションをとりながらやっているつもりではありますけれども、より一層深めていかなければいけないということで、財務省と財務局が一体となって、まさに国有財産行政を担っていこうということをあえて思いとして書かせていただいています。

 それから、経済構造の変化というのは御指摘のとおりで、ニーズに応じたと、その中に読み込んでいるつもりではありますけれども、おっしゃるとおり、経済構造の変化は当然ありますので、それもよく心に留めておきたいと思います。

 最後に、財産の活用の仕方ですが、これまで縷々申し上げているとおり、今までの延長線上だけではなくて、民間の知見ですとか、民間のニーズみたいなもの、これもまた変化していくことだろうと思いますので、そういったことも踏まえながら、やり方について、何がいいのか、どういうようなやり方が効率的にできるのかということをよく考えていきたいと思っております。ありがとうございます。

〔 佐谷臨時委員 〕 見直しの件なんですけれども、見直しすることは、皆さんと同じように賛成です。そのうえで、終盤ですが、1つお話ししたい点があります。

 それは、海外投資、外国資本の参入をどのように考えるかということです。基本的には、国有財産の処分の中で、海外投資家の資金を活用するエリアと、制限を設けるべきエリアを区分しながら、戦略的に進めていく必要があると考えます。全体のトーンとしては、重要土地等調査法の関係で、制限のあり方が比較的強調されていると思います。一方で、地方の活性化という観点では、海外資金の活用は非常に重要ではないかと思っています。

 例えばシンガポールでは、国有地の割合が高いため、日本と同じにはならないかもしれませんが、政府系の投資ファンドが主導して、海外投資とバランスを取りながら開発を進めています。代表例として、マリーナベイ・サンズも政府系の投資ファンドと海外投資をうまくバランスさせながら、国有地を活用したプロジェクトです。 日本においても国有地活用において、海外投資をどのように組み込むかを長期的な視点で検討することが重要ではないかと思い、コメントさせていただきました。

 以上です。

〔 尾﨑国有財産企画課長 〕 ありがとうございます。御指摘のように日本の経済だけではできませんので、海外の資金をどうやって導入していくかということも貴重な視点だと思います。御指摘のように、重要土地等の法令との関係もあるかと思いますけれども、今後の処理に向けて重要な視点だと思いますので、よく検討させていただきたいと思います。ありがとうございます。

〔 筒井分科会長 〕 ほかによろしゅうございますでしょうか。たくさん御意見をいただきましてありがとうございました。

 それでは、次の議事に移らせていただきます。

 株式会社商工組合中央金庫の株式の処分につきまして、事務局より報告事項をお願いいたします。

〔 中島政府出資室長 〕 政府出資室、中島と申します。よろしくお願いいたします。

 株式会社商工組合中央金庫の株式の処分につきまして、現状の御報告をいたします。

 政府が保有する商工中金の株式についてですが、一昨年9月の本分科会でいただいた答申、それから、昨年10月に本分科会にて御了承いただいた処分方針に沿いまして、参考に記載のとおり、2回目の入札を実施いたしました。

 開札の結果ですけれども、落札株式数は2,940万株であります。現在、売却株式数確定に向けて売買代金の払込み等といった所要の手続を進めているところでございます。

 売却に至らなかった残りの株式につきましては、2回目の入札の売却手続が終了次第、いただいた答申等に沿って、速やかに3回目の入札を実施したいと考えております。

 私からは以上です。

〔 筒井分科会長 〕 本日予定しておりました議事は以上で全て終了とさせていただきたいと存じます。

 最後になりますが、事務局から連絡事項をお願いいたします。

〔 尾﨑国有財産企画課長 〕 本日は、御多忙の中、お時間を割いていただき、貴重な御議論を賜りまして、誠にありがとうございました。

 本日の議事録、議事要旨、資料につきましては、会議後に財務省ホームページに掲載することといたします。また、議事録、議事要旨につきましては、委員の皆様方の御確認をいただいた上で公表させていただきます。

 記者レクにつきましては、本日この後、事務局のほうで対応させていただきます。

 ありがとうございました。

〔 筒井分科会長 〕 今期の国有財産分科会の開催は本日が最後となります。今回で御退任の委員がいらっしゃいます。これまで貴重な御助言、御意見を賜りました。本当にありがとうございました。

 それでは、これをもちまして財政制度等審議会第63回国有財産分科会を終了とさせていただきます。大変御多用のところ御出席を賜りましてありがとうございました。また、ウェブで御参加の委員は御退室をいただきたいと存じます。ありがとうございました。

午前11時48分閉会