<補論> | ||||||||
I | .作成基準の取りまとめにあたっての基本的考え方等 | |||||||
1 | .特別会計の特性等 | |||||||
(1) | 特別会計の特性 特別会計は、国の会計の一部を区分して経理するために設置されたものであるが、次のような特性があり、業務の実施主体として完全に独立しているものではないことから、独立した会計主体として捉えることが適切とは認められない特別会計も存在し、また、その程度も区々である。 | |||||||
![]() | 特別会計は、特定の業務等に係る経理を明確にするために設けられたものであり、特別会計によっては、資産等をほとんど保有せず、財政資金の流れのみを経理している場合がある。 | |||||||
![]() | 特別会計が対象としている経理の範囲及び具体的な経費の計上等については、各特別会計法等の規定及び国会の議決を経た予算によって定まっており、特別会計が経理する業務に伴う人件費及び庁舎等に係る費用等の全てを負担していない場合がある。 なお、特別会計法等の規定に基づき勘定が設けられている場合には、特別会計の経理が勘定単位に細分化され、当該勘定が経理する業務内容等は、さらに限定されたものとなる場合がある。 | |||||||
![]() | 特別会計が経理する業務に必要な財源については、保険料等の独自の財源により賄われているものもあるが、一般会計からの繰入金により財源の大部分が賄われているものがあるなど、財源的に独立したものとはなっていない場合が多い。 | |||||||
(2) | 全特別会計における財務書類の作成 特別会計は上記のような特性があるため、会計主体たり得るかについての疑義はあるものの、現行の特別会計制度を前提とし、公的な会計主体として財務内容のディスクロージャーの充実及び説明責任の適切な履行を図るとの観点から、独立した会計主体として捉えることが適切ではないと考えられる特別会計においても財務書類を作成することとした。 なお、新たな特別会計財務書類が提供する財務情報は、特別会計が経理することとされた業務の範囲内のものに限られることから、今後、省庁別や業務別等のセグメント単位で財務書類を作成することにより、セグメント別の資産・負債の状況やコストの状況等が明らかになることが期待される。 | |||||||
2 | .財務書類の作成単位等 | |||||||
(1) | 財務書類の基本作成単位 新たな特別会計財務書類は、歳入歳出決算でもって示される特別会計の財務内容を補足説明するものであることから、原則として、特別会計単位で作成することとした。 ただし、各特別会計法等により勘定区分が設けられている特別会計においては、勘定区分毎に作成されている歳入歳出予算・決算と同様の作成単位であることが必要であること、また、区分された勘定において、財源とその充てられるべき使途(支出)が特定されているなど、それぞれの勘定が事業としての一定のまとまりを持ち、かつ、基本的に独立採算で運営されていること等から、勘定単位で財務書類を作成することとした。 | |||||||
(2) | 全特別会計で同一の基準による財務書類の作成 特別会計の経理している業務の内容は区々であり、財政資金の流れを明確にするために設置されている特別会計や、保有する資産及び負債が極めて少ない特別会計が存在しているなど、企業会計の考え方及び手法を採り入れて財務書類を作成したとしても、作成意義が乏しいと考えられる特別会計がある。 しかしながら、全特別会計において同一の基準による財務書類を作成することにより一覧性や比較可能性が高まることから、全特別会計において新たな特別会計財務書類を作成することとした。 ただし、特別会計によっては、人件費等が計上されていない場合や、整備を行った施設が完成後一般会計に無償で移管される場合があるなど、企業会計とはその前提が大きく異なる特別会計もあることから、作成した財務書類の内容について誤解がないよう、これらの点も含め、特別会計の経理している業務内容等についての説明が必要不可欠である。 | |||||||
(3) | 勘定を合算した財務書類の作成 勘定を有する特別会計において、特別会計における財務内容のディスクロージャーの充実を図るとの観点から、勘定を合算した財務書類の作成について検討を行った。 特別会計の勘定は、セグメント的な位置付けにとどまらず、法令的にも会計単位と同様、独立して運営されており、また、同一の特別会計内とはいえ、その業務内容等が大きく異なっているものも多い。 このため、各勘定の財務書類を合算した財務書類を作成することにより、勘定間で財政資金の融通が可能であるかのような誤った情報を提供するおそれもあるが、一般会計から区分して経理するために設置された特別会計という単位での財務情報を開示することは、ディスクロージャーの面からは一定の意義があると考えられることから、勘定を合算した財務書類を参考情報として作成することとした。なお、合算することで誤解を与える情報を提供することとなる懸念がある特別会計においては、必要な注記を行うこととした。 | |||||||
(4) | 共通勘定の取扱い 業務勘定等のいわゆる共通勘定を有する特別会計においては、共通勘定の経費等を各事業勘定に配賦した各事業勘定の財務書類を作成することが考えられる。しかし、特別会計の勘定区分といっても、様々な業務に係る経理を行っているなど、勘定区分が業務単位としてのセグメントとして必ずしも十分ではなく、共通勘定の経費等を各事業勘定に配賦したとしても、個々の業務の状況が完全に明らかになるというものではない。このため、共通勘定の経費を各事業勘定に配賦した財務書類の作成は行わないこととした。 | |||||||
3 | .国有財産の計上価額 | |||||||
(1) | 国有財産の計上価額 公共用財産(公園及び広場を除く。以下同じ)を除く土地や建物等の国有財産については、国有財産法に基づき管理が行われており、また、国有財産台帳によって価格管理がなされている。国有財産台帳の計上価格については、時価等を反映させるとの観点から、出資金等一部の財産を除き、5年ごとに時価等を反映した価格改定が行われている。 貸借対照表の資産の計上価額については、基本的に、取得原価を基礎として計上することとしている。国有財産について取得原価を基礎として評価を行うためには、国有財産台帳とは別個に取得原価を基礎とした価格管理を行う必要があるほか、国有財産の情報開示としては、時価が反映された価格を提供することも意義が認められることから、新たな特別会計財務書類では、国有財産台帳価格を基礎とし、償却資産については、定率法による減価償却を行い、減価償却費相当額を控除した後の価額を計上することとした。 | |||||||
(2) | 公共用財産の計上価額 公共用財産については、国有財産法上、国有財産台帳の作成等が適用除外となっていることから、その価格が管理されておらず、また、新たに評価を行うことも困難である。このため、国の所有となる公共用財産については、過去の用地費や事業費等を累計することにより取得原価を推計し計上することとした。 なお、償却資産については、推計して算出した取得原価に基づいて、定額法による減価償却を行い、減価償却費相当額を控除した後の価額を計上することとした。 | |||||||
4 | .公的年金等の負債計上 | |||||||
(1) | 厚生年金及び国民年金 | |||||||
![]() | 公的年金である厚生年金及び国民年金については、国における過去の勤務により支払義務が生じるものではなく、また、企業年金のように積立方式が法定されているものではないことから、企業会計における退職給付の会計基準をそのまま適用することは適当ではないと考えられる。 また、公的年金の負債計上については次の考え方がある。 | |||||||
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![]() | このように、公的年金に係る負債計上については、種々議論があるところではあるが、新たな特別会計財務書類における、厚生保険特別会計及び国民年金特別会計に係る公的年金の負債計上については、以下の取扱いとした。 公的年金は、社会保険制度であり、その財政方式は賦課方式を基本とした制度となっており、また、年金の支払義務は保険料の払込によって発生するものではなく、受給資格を満たすことによって発生するものであることから、これを負債としては認識しないこととした。 ただし、この場合でも、過去期間に対応する給付現価のうち、一部は保険料として徴収し、積み立てることとなっているため、過去期間に対応する給付現価のうち、積立金で賄われるべき部分、すなわち財政再計算における各年度末の所要積立金に相当する金額を「公的年金預り金」として計上することとした。 なお、公的年金に係るディスクロージャーの充実を図るため、公的年金の積立方法、将来給付現価額及びこれに対する財源の見込額等について注記により説明を加えることとした。 | |||||||
(2) | 国家公務員共済年金 国家公務員共済年金は、国家公務員を対象とする公的年金制度としての社会保険制度であり、給付設計は厚生年金に準拠したものとなっている。また、年金給付に要する費用について、雇用者としての国は、保険料の2分の1を負担しているほか、公経済主体として、基礎年金拠出金の3分の1等を負担している。 国家公務員共済年金について、企業年金と同様、国家公務員の労働の対価であり、負債として計上すべきとの考え方もあるが、厚生年金が担っている機能を有し、遺族に対する支給、物価スライド等を行っており、単に労働の対価という意義を超えた公的年金制度としての性格を色濃く有していることから、これを負債としては認識しないこととした。 ただし、国家公務員共済年金のうち、整理資源(昭和34年10月前の恩給公務員期間に係る給付分)については、事業主としての国が全額負担することとなっていることから、恩給公務員期間に係る将来給付見込額の割引現在価値額を「退職給付引当金」として負債計上することとした。 なお、整理資源の具体的な計上額については、国家公務員共済年金の再計算等は国家公務員共済組合連合会で、また、各特別会計における毎年度の予算計上額の計算については財務省主計局で行われており、各特別会計での算出が困難なことから、同局において計算された額を計上することになる(恩給公務員期間に係る将来給付見込額は、5年ごとに行われる財政再計算時における見込額を用いて算出する。)。 | |||||||
(3) | 恩給給付費 恩給は、共済年金制度移行前において相当年限忠実に勤務して退職した公務員等に対して、国が公務員との特別な関係に基づき、使用者として給付するものであることから、退職給付と同様の性格を有している。また、恩給は一般会計から支給しているが、国の会計内部の負担関係については、特別会計において退職等により給付事由が発生した者の公務員期間に係る恩給支払財源を、当該特別会計が負担(一般会計へ繰入)することとされていることから、当該特別会計の負債として、将来給付見込額の割引現在価値額を「退職給付引当金」として計上することとした。 なお、具体的な計上額については、恩給の給付等は、総務省人事・恩給局において行われており、各特別会計での算出が困難なことから、同局において計算された額を計上することになる。 | |||||||
5 | .資産・負債差額 特別会計は、特定の事務・事業に係る経理を一般会計から区分したものであり、企業会計のような払込資本に関する取引がないこと、また、特別会計の設置目的やその目的遂行のための手段の相違等により、資産・負債差額の保有状況が大きく異なること等を踏まえ、資産と負債の差額について、その位置付けを検討した。 資産及び負債の差額については、政府の財政運営の結果として、この部分をどう捉えるか、その位置付けについて種々議論があったが、国の資産は必ずしも将来の支払財源に充てられるものではないことに加え、一定の仮定を用いて資産評価を行わざるを得ないこと等から、積極的な位置付けを与えることは適切でないと考えられる。このため、貸借対照表における資産と負債の差額については「資産・負債差額の部」として整理することとした。 ただし、「資産・負債差額の部」の内訳の一部について、その性格を明らかにすることができるため、基金、資金(積立金)、資産評価差額等の科目によりその内訳を表示することとした。 | |||||||
6 | .業務費用・財源計算書 | |||||||
(1) | 作成目的 企業会計においては、当期の経営成績及び処分可能利益について、その額及び発生原因を明らかにすること等を目的として損益計算書が作成されている。 これに対して、特別会計は営利を目的としておらず、業務費用と財源の間に、企業会計でいう費用と収益の対応関係のような関係がないことから、損益計算書を作成することは適当でない。 そこで、特別会計の業務実施に伴い発生する費用を発生主義により認識し、その総額と財源を明らかにするための財務書類として、業務費用・財源計算書を作成することとした。 特別会計の業務実施に当たっての財源としては、手数料等の対価見合的な収入のほか、目的税収入や一般会計等からの繰入金が充てられているが、業務実施に伴い発生した費用との対応関係が存在しないことから、業務費用と財源の差額は、当該年度に発生した業務費用から、本年度に受け入れられた財源を差し引いたことにより計算された計算上の概念として位置付けることとした。したがって、業務費用・財源計算書の「本年度業務費用・財源差額」は企業会計の損益計算書の当期純利益又は当期純損失とは性格が異なるものである。 | |||||||
(2) | 業務運営実績の評価資料としての活用 特別会計の業務運営実績について財務面からみた評価を行うための資料として、業務費用・財源計算書の活用を検討したが、次の理由により、直接的に業務運営実績の評価を行うための計算構造とすることは困難である。 | |||||||
![]() | 特別会計が対象としている経理の範囲及び具体的な経費の計上等については、各特別会計法等の規定及び予算措置によって定まっているため、特別会計が業務実施に伴う費用等のすべてを負担していない場合がある。また、機会費用の算定により、実質的な費用を算定することも考えられるが、国有財産の使用料や人件費等の算定には大きな仮定が伴うことから、業務運営実績の評価の基礎としての計数としては適切ではないと考えられる。 | |||||||
![]() | 特別会計の財源は、手数料等の対価見合的な収入のほか、予算措置でその額が定まる一般会計からの受入金、更に業務量に関係なく法令の規定により特別会計に帰属することとなる目的税収入等があり、これらの財源と費用には期間的な対応関係がなく、業務費用と財源の差額でもって業務運営実績の評価を行うことはできない。 | |||||||
![]() | 特別会計の業務運営実績を、企業会計のように費用と収益の差額のみでもって評価をすることはできず、業務の実施に伴う便益・効用等のその他の要素を含めたところで評価する必要がある。 | |||||||
しかしながら、業務費用・財源計算書は、業務実施に伴う費用を発生主義で捉えたコスト情報等が明らかになるなど、政策評価に資するための情報を提供するものとして活用が考えられる。 | ||||||||
(3) | 評価差額の取扱い | |||||||
![]() | 国有財産台帳の価格改定に基づく評価差額 国有財産については、国有財産の現況を表示するとの観点から、5年ごとに価格改定が行われ、時価評価に伴う評価差額が発生することになる。この国有財産の価格改定に基づく評価差額は、5年に一度発生するものであり、また、基本的に売却を予定していないものが大半であり、特別会計の業務実施に伴って生じた業務費用又は財源と整理することは適当でないと考えられることから、貸借対照表の資産・負債差額の部の「資産評価差額」で整理することとした。 なお、国有財産の処分時に、処分損益を適切に計算するためには、評価差額部分も含めたところで計算する必要がある。しかし、現在の国有財産の管理システムでは、処分損益等の管理は行えず、事務的に対応は困難である。したがって、処分時に評価差額部分を取崩すことができないことから、評価差額を計上した国有財産が処分された後においても、当該国有財産に係る評価差額が残ることになるが、将来的には、時価評価に伴う評価差額部分が適切に処理される必要がある。 | |||||||
![]() | 市場価格がある有価証券等の時価評価に伴う評価差額 満期保有目的有価証券以外の有価証券で市場価格があるもの及び市場価格がある出資金については、企業会計に準じて、時価で貸借対照表に計上することとしている。 これらの資産は、時価の変動により利益を得ることを目的として保有するものではなく、評価差額については、金融商品に係る会計基準でいうところの「その他有価証券」に係る評価差額と同様の性格のものと考えられることから、貸借対照表の資産・負債差額の部の「資産評価差額」で整理することとし、業務費用・財源計算書の「業務費用」又は「財源」としては整理しないこととした。 | |||||||
![]() | 強制評価減による評価差額 たな卸資産、有価証券及び出資金については、企業会計に準じて、資産価額の著しい下落があった場合には、その状況を開示するため、強制評価減を行うこととしている。 この強制評価減に基づく評価差額、臨時的な損失であるが、資産価額の著しい下落に伴う資産価額の改定であることから、業務費用・財源計算書の「業務費用」として計上することとした。 なお、特別会計においては、資産価額の下落の状況を開示する必要性が高いと考えられることから、有価証券及び出資金について、市場価格があるものについては市場価格及び市場価格がないものについては純資産価額の下落率が30%以上となった場合には、原則として、強制評価減を行うこととしている。 | |||||||
![]() | 外貨建て資産及び負債の換算差額 外貨建て資産及び負債に係る為替相場の変動の影響額については、特別会計の業務実施に伴い生じた費用又は財源として積極的に開示することとし、原則として、「業務費用」又は「財源」として計上することとした。 | |||||||
7 | .区分別収支計算書 | |||||||
(1) | 作成目的 企業会計においては、企業の支払能力を評価すること、企業の資金創出能力を評価すること及び異なった会計処理の影響を排除し、企業の経営成績の比較可能性を高めること等の観点から、現金及び現金同等物の増減を示すキャッシュ・フロー計算書が作成されている。 これに対して、特別会計においては、歳入の見積もりである歳入予算を踏まえて歳出予算が組まれ、また、支払元受高制度により歳出予算の限度内であっても支払いに供する現金等の残高を超えての支払いができない仕組みとなっているほか、本作成基準においては、会計処理等の選択肢を限定していること等から、企業会計と同様の目的で、現金及び現金同等物の増減を示す財務書類を作成する必要性はないと考えられる。 しかし、歳入歳出予算は、予算統制等の観点から区分されており、企業会計的な観点からは分かりにくいものとなっている。 このため、歳入歳出決算とは別に、財政資金の流れを分かりやすく示すための財務書類を作成することは有用であると考えられることから、歳入歳出決算を基礎として、その計数を活動別に並び替えることにより、財政資金の動きと収支の状況を明らかにするための財務書類として、区分別収支計算書を作成することとした。 | |||||||
(2) | 区分別収支計算書の区分 区分別収支計算書においては、企業会計の営業活動、投資活動及び財務活動の3区分に準じて、特別会計における財政資金の流れを「業務収支」、「施設整備収支」及び「財務収支」に区分することとした。 なお、特別会計における余裕資金の運用は、財政融資資金への預託が義務づけられていることから、企業会計の「投資活動によるキャッシュ・フロー」の区分としては整理せず、施設整備関係の収支を示す区分として整理することとした。 | |||||||
(3) | 資金運用特別会計の区分別収支計算書 一部の特別会計においては、財政法第44条の規定に基づく特別の資金を保有している。特別会計が保有する資金は、歳入歳出決算上の剰余が積み立てられたものが大半であり、その機能としては、歳入歳出決算上の過不足を調整するものである。 これに対して、資金運用特別会計である財政融資資金特別会計の財政融資資金及び外国為替資金特別会計の外国為替資金は、特定の目的を行うために設けられた資金であり、これらの特別会計の歳入歳出決算には、利払費、事務費及び運用収入等が計上されるのみで、債券の運用や貸付金、外貨資産等の売買等の資金における受払いは計上されないことから、歳入歳出決算を並び替えて区分別収支計算書を作成した場合には、これらの資金における財政資金の受払の状況が表示されないことになる。 このため、資金運用特別会計における財政資金の流れを明らかにするための区分別収支計算書としては、これらの資金に係る受払いを含めたところで作成する方法と、区別したところで作成する方法について検討を行った。 資金運用特別会計における実質的な活動は、これらの資金を中心としたものであり、また、これらの資金は、歳入歳出予算・決算と一体として運営・管理されていることから、これらの資金に係る受払いも含めたところで区分別収支計算書を作成することとした。 | |||||||
(4) | 貸借対照表との連動 企業会計におけるキャッシュ・フロー計算書の「現金及び現金同等物の期末残高」と貸借対照表の「現金及び預金」は基本的に連動し、また、現金及び現金同等物の期末残高と貸借対照表に掲記されている科目の金額との関係を注記することとされている。 区分別収支計算書は、キャッシュ・フロー計算書とはその計算構造が異なっているが、「本年度収支」では、前年度末の現金・預金残高に本年度の財政資金の収支を加算したところの本年度末の現金・預金残高を表示することとしているため、この「本年度収支」が貸借対照表の「現金・預金」の計数と基本的に一致することになる。 ただし、歳入歳出決算との関係を保持する計算書の構造上、「本年度収支」の下で「資金(積立金)からの受入」(決算処理によるもの)を整理し、また、「本年度収支」の上で「資金(積立金)への繰入」(予算措置によるもの)を整理していることから、これらに該当する計数があった場合等には一致しないことになる。 このため、区分別収支計算書の「本年度収支」と貸借対照表の「現金・預金」の計数が一致していない場合には、その理由及び内訳等について注記することとした。 | |||||||
8 | .機会費用 業務費用・財源計算書における業務費用とは、特別会計が経理する範囲内において、業務実施に伴い発生した費用が計上されることになる。特別会計の中には、人件費等が計上されていないものや、庁舎等の使用料の費用負担をしていないものがある等、業務実施に関するすべての費用が計上されているわけではない。 業務費用・財源計算書の業務費用としては認識されていないが、特別会計が業務を実施する上での国民の負担と考えられる資金の調達コスト、一般会計等が負担している人件費や一般会計等が負担している庁舎等のコストがある。 これらのコスト情報を機会費用として開示する必要があるが、一般会計所属の職員が特別会計の業務を行っている場合や一般会計所属の庁舎等を無償で使用している場合に係る機会費用の算定については大きな仮定が伴い、特殊法人等において算定される機会費用に比べ、情報の正確性は大きく劣ると考えられるため、資金調達コストに相当する機会費用を参考情報として記載することとした。 | |||||||
9 | .連結財務書類 | |||||||
(1) | 特別会計における出資の内容等 特別会計から特殊法人等に対して出資がなされている。しかし、これらの出資は民間企業における出資とは異なり、その内容は、法人設立の際の基本財産としての現物出資、出融資の原資、施設整備のための出資、社会資本整備における利用者負担の軽減のための出資のほか、出資の特殊な形態として、公社の民営化によって特別会計に帰属した株式等である。 これらの出資は、特殊法人等を支配する目的で行われているものではなく、また、当該出資には議決権がないものが多く、出資を通じて支配しているものとは言い難いものであり、特殊法人等に対する出資をもって民間企業と同様の支配従属関係があるとは言い難く、特別会計と特殊法人等とで経済的一体性があると判断することは適当でない。 他方、特別会計の業務と関連がある特殊法人等に対しては、特別会計から出資や補助金等が支出されており、これらの財政資金が支出されている特殊法人等を連結することにより、特別会計の経理している業務の全体像を示すことは意義があることから、このような業務関連性がある場合には連結財務書類を作成することとしたものである。 | |||||||
(2) | 連結対象 連結対象としては、特別会計と一体として説明責任を果たす必要があると考えられる主体を対象とすべきと考えた。 特殊法人及び認可法人は、個別の設立根拠法によって設立され、法人の役員任命及び事業計画等について主務大臣の認可等を受けている。また、特別会計から補助金等の財政支出がなされている場合が多く、このような特殊法人及び認可法人は、特別会計と一体として説明責任を果たすべき対象とした。 また、独立行政法人も、特殊法人及び認可法人と同様に個別法に基づいて設立され、法人の役員任命及び事業の中期計画等について主務大臣の認可等を受けているほか、これまで国並びに特殊法人及び認可法人が行っていた事務・事業を独立行政法人という形態により行うこととしており、業務の特殊性とともに、国の業務との関連性が強く、特別会計と一体として説明責任を果たすべき対象とした。 | |||||||
(3) | 連結の基準 特殊法人等との業務の関連性について、客観的な判断を行うことは困難である。しかし、出資や補助金等の財政支出が相当程度ある場合には、業務関連性が強いと考えられることから、原則として、これらの財政支出が相当程度ある場合には、業務関連性があるものとし、連結対象とすることとした。 ただし、この「財政支出が相当程度ある場合」には該当しないが、特殊法人等において特別会計の一部の業務を実施している等の業務関連性が認められる場合には、連結を行うものとし、一方、「財政支出が相当程度ある場合」には該当するが、政策的な投資を行っている特別会計からの財政支出がある特殊法人等、特別会計からの出資及び補助金等の財政支出が僅少な特殊法人等及び政策的に保有している株式等を発行している特殊法人等については、特別会計との業務関連性は認められないことから連結対象から除外することとした。 また、特別会計の実施する業務とは関連があるが、特別会計の管理大臣と特殊法人等の主務大臣が異なる場合には、政策的に一体性があるとは言い難いため、特別会計と一体として説明責任を果たすべき対象ではないと考えられる。このため、業務関連性の判断に加え、特別会計の管理大臣及び特殊法人等の主務大臣が同一であるか否かについての判断も加えて連結対象とするかどうかの判断を行うこととした。 | |||||||
(4) | 連結の方法 特別会計においては、業務関連性でもって連結の判断を行うため、業務が関連する割合で比例連結を行うことが適当とも考えられる。しかし、業務関連の割合の判断が困難なため、個別の財務書類の金額を基礎とした上で必要な相殺消去の処理を行うなど、企業会計の連結の方法を準用して連結財務書類を作成することとした。 ただし、特別会計の特性等から、業務関連性による連結の判断や資本連結の方法など、一部企業会計と異なる処理を行うこととした。 | |||||||
![]() | 会計処理の統一 企業会計においては、連結に際しては同一の状況下での会計処理は統一されている必要があるが、特別会計と特殊法人等では、その会計処理基準自体が異なっている。連結に際しては、会計処理の統一が図られることが望ましいが、事務負担等の観点から困難であるため、特殊法人等の既存の財務諸表を利用し、特殊法人等に特有の会計処理について、連結に際して必要な修正を行うこととした。 | |||||||
![]() | 特殊法人等の資産及び負債の時価評価 企業会計においては、連結に際して、子会社の資産及び負債の時価評価を行うこととしている。これは、子会社化をいわゆる「子会社の取得」と考えることを前提とした処理である。 しかし、特殊法人等に対する出資の性格は支配権の獲得を目的としたものではなく、また、特別会計における連結においては、特別会計の業務と関連性がある特殊法人等を一体として説明責任を果たすべきものと位置付け、連結対象とすることから、いわゆる「特殊法人等の取得」といった考え方を採ることは適当でないと考えられる。このため、連結に際しては、企業会計における支配獲得時の子会社の資産及び負債の時価評価と同様の処理を行う必要はないと考える。 | |||||||
![]() | 資産・負債差額の部の表示 特別会計の資産・負債差額の部と特殊法人等の資本の部では、その位置付け及び内容が大きく異なっており、性格が異なる両者の資産・負債差額の内訳を詳細に表示した場合には、かえって理解し難いものになると考えられる。このため、連結貸借対照表において、資産と負債の差額は、一括して「資産・負債差額」として表示することとした。 | |||||||
![]() | 少数株主持分 企業会計において、子会社に対する出資割合が100%でない場合には少数株主持分が生じ、また、親会社説の考え方に基づき、少数株主持分は、連結固有の項目であることを考慮して、負債の部と資本の部の中間に独立の項目として表示することとされている。 特別会計の連結財務書類は、特別会計の持分保有者のために作成されるといった親会社説的な考え方はとり得ず、国民全体に開示されるものであるから、他会計等からの出資に相当する部分を負債又は独立の項目として表示する必要はないと考えられる。 また、特殊法人等の解散については法律で規定され、その剰余金等については必ずしも持分(出資)割合に応じた分配がなされるわけではないことから、他会計等からの出資について、持分額で表示することは適当でないと考えられる。 さらに、資産・負債差額の部には特段の位置付けをしていないことから、他会計等からの出資がある場合においても、連結貸借対照表の資産・負債差額の部に他会計等の出資金額に相当する部分も含めることとした。ただし、連結貸借対照表における資産・負債差額の部には、他会計等から特殊法人等に対する出資金額も含まれていることを明らかにするため、他会計等からの出資金額を内書きで表示することとした。 | |||||||
II | .各特別会計固有の会計処理等 | |||||||
1 | .農業共済再保険特別会計及び漁船再保険及漁業共済保険特別会計 国の予算制度においては、総計予算主義がとられており、歳入と歳出を相殺し、純額での予算計上は原則として認められていない。 しかしながら、農業共済再保険特別会計においては、農業災害補償法に基づき、国(一般会計)から同特別会計を経由した共済掛金の一部負担について、事務処理上の観点から、同特別会計に納付する保険料等と相殺したところで予算措置することができることとされている。 また、漁船再保険及漁業共済保険特別会計においても、漁船損害等補償法及び漁業災害補償法に基づき、国(一般会計)から同特別会計を経由した保険料の一部負担及び共済掛金の一部補助については、事務処理上の観点から、同特別会計に納付する保険料等を相殺したところで予算措置することができることとされている。 このように、相殺後の歳入歳出決算を基礎として業務費用・財源計算書を作成した場合には、業務費用及び財源の総額が表示されないこととなる。このため、これらの特別会計においては、法令の規定に基づき相殺が行われたことにより、歳入歳出決算に計上されていない部分についても、業務費用・財源計算書に反映させて作成する必要があると考える。なお、予算措置とは異なり総額で表示していることについて、注記により明らかにすることが必要と考える。 | |||||||
2 | .特定国有財産整備特別会計 | |||||||
(1) | 売却を前提として保有している国有財産の評価 企業会計においては、販売用不動産はたな卸資産に該当し、時価が著しく下落した場合には、強制評価減を行うこととされている。 特定国有財産整備特別会計が保有する国有財産については、一般会計からの所管換時点より売却が予定されていることから、企業会計でいう販売用不動産と同様の性格を有するものと考えられる。 このため、特定国有財産整備特別会計が保有する国有財産については、強制評価減の規定を適用する必要があるとも考えられる。しかし、国有財産台帳価格は5年ごとに価格改定が行われ、時価の変動が反映されること、また、国有財産台帳の価格改定とは別に毎年度の時価評価を行うことは事務的に困難なことから、特定国有財産整備特別会計が保有する国有財産については、「たな卸資産」として表示し、その評価は国有財産台帳価格に基づくこととした。 なお、特定国有財産整備特別会計のほか、農業経営基盤強化措置特別会計も売却を前提として国有財産を保有している。 | |||||||
(2) | 特定国有財産整備計画における受入資産の評価 特定国有財産整備特別会計においては、庁舎及び宿舎の整備の結果、不要となる旧施設に係る資産を売却することを前提に、まず借入金を財源に施設整備を行い、旧施設資産の売却収入で借入金を償還する仕組みとなっている。また、特定国有財産の整備にあたっては、基本的に、新施設の整備額と旧施設の処分見込額が見合うかたちで、特定国有財産整備計画が定められ、旧資産は一定のリスク等を考慮した処分見込額で計画が立てられている。しかし、国の会計間で所管換えが行われた資産については国有財産台帳価格をもって計上されるため、財務書類上では、整備計画の段階での処分損益が生じることとなる。 このため、特定国有財産整備特別会計の性格を考え、施設整備に見合う処分見込額で旧資産を計上することも考えられるが、国有財産の価格は、国有財産法に基づく台帳価額が公式な価格であること、また、国有財産台帳価格は、5年ごとに価格改定が行われ、時価の変動が反映されており、処分見込価格と国有財産台帳価格の乖離は限定されていることから、他の特別会計と同様に、他会計から所管換えが行われた資産については国有財産台帳価格で計上することとした。 | |||||||
3 | .食糧管理特別会計 食糧管理特別会計では、損益の処理を行うために調整勘定が設けられ、食糧管理勘定等の損益は調整勘定に振替整理し、調整勘定に損失が発生すれば、調整勘定内に設けられている調整資金を減額し、利益が生じれば調整資金に組み入れて処理することが特別会計法で規定されている。なお、この損益処理の金額は法定の財務諸表に基づいて算定されている。しかし、新たな特別会計財務書類においては、勘定ごとの財務内容の開示を目的として作成することとしており、また、法定の財務諸表のように損益計算を行うこととしていない。 このため、食糧管理特別会計における新たな特別会計財務書類においては、勘定間の損益の振替整理は行わずに、勘定ごとで完結した財務書類を作成することとした。 | |||||||
4 | .外国為替資金特別会計 | |||||||
(1) | 換算レート 新たな特別会計財務書類の作成基準においては、外貨建て資産及び負債については、原則として、会計年度末の為替レートで換算することとされている。しかし、外国為替資金特別会計においては、外国為替資金特別会計法第8条の規定に基づき、基準外国為替相場等により換算を行うことが規定されているため、会計年度末の為替レートではなく、基準外国為替相場等で換算を行うこととしている。 | |||||||
(2) | 換算差額の取扱い 外国為替資金特別会計においては、公的外貨準備として外貨建て資産及び負債を保有しており、円貨建てで評価することによって特別の経済関係を生じることを予定するものではないが、特別会計の財務内容を開示する観点からは、保有外貨資産の含み損益を表示することが適切であると考えられる。このため、基準外国為替相場等で換算を行った換算差額は、業務費用・財源計算書の「業務費用」又は「財源」としては整理せず、貸借対照表の資産・負債差額の部で整理することとした。 また、外国為替資金特別会計において保有する外貨建て債券については、外貨による債券の時価の変動と為替レートの変動の二つの要因によって、取得原価からの差額が生じることになる。このため、貸借対照表の資産・負債差額の部において当該差額をその要因別に区分して表示する必要があると考える。 なお、外国為替資金特別会計においては、外国為替資金特別会計法第8条の規定により、基準外国為替相場等で換算を行った換算差額は、歳入又は歳出として計上されず、貸借対照表上で繰り越し経理することとされており、個々の資産又は負債ごとに管理されていないのが現状である。このため、新たな特別会計財務書類においても、外貨建て資産及び負債を処分する際に、この差額を取り崩さず、貸借対照表の資産・負債差額の部で、処分損益と資産評価差額を両建てで計上している。 | |||||||
5 | .国債整理基金特別会計 | |||||||
(1) | 国債整理基金特別会計の負債等 国債整理基金特別会計は、一般会計又は特別会計から受け入れた財源等を国債整理基金として、これを公債の償還発行の費途(国債及び借入金等の償還、利子及び割引料の支払並びに発行等に係る事務取扱費)に充て、もって国債の整理状況を明らかにするために設置されたものである。 このように、国債整理基金特別会計は、国債の償還等に関する経理を明確にする特別会計であることから、一般会計として発行された公債については特別会計の負債として帰属するわけではなく、また、償還のための財源(一般会計から繰入れ又は償還のための借換債の発行による財源)が特別会計に繰り入れられ、その残高は、将来の償還財源として特別会計内にプールされているものである。(なお、償還の財源としては、これらのほか、特別会計に帰属されたNTT株式、JT株式及び営団地下鉄出資持分等がある。) このため、国債整理基金特別会計においては、公債の償還を目的として一般会計等から繰り入れられた償還財源の残高を、貸借対照表の資産・負債差額の部で「国債整理基金」として整理している。 | |||||||
(2) | 国債整理基金特別会計の業務費用・財源計算書 国債整理基金特別会計は、国債の債務償還等に関する財政資金の流れを明らかにする特別会計であることから、債務償還費(国債及び借入金の元本部分の償還費)も含めたところで「国債整理基金」の減少となるものを業務費用として捉え、一方、「国債整理基金」の増加となる、償還等のために受け入れられたもの全てを財源として計上する考え方もあるが、国債及び借入金の元本部分の償還費については一般的な費用の概念にはなじまないことから、業務費用として整理することは適当でないと考えられる。 このため、業務費用については、上記から債務償還費を除外することとし、財源については、上記から債務償還費に充てられる公債金及び株式売払収入並びに他会計からの受入のうち債務償還費に充てられる部分を除外して業務費用・財源計算書に計上する必要があると考える。 |
特別会計一覧(32特会) |
(平成15年4月1日現在) |
1.事業特別会計(26) | |||||||||||||||||||||||||||||||||
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2.資金運用特別会計(2) | ||
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3.その他(4) | ||||||
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(注) | 平成15年4月に、造幣局、印刷局、簡易生命保険、郵政事業及び郵便貯金の各特別会計が廃止。 |
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