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【公会計に関する基本的考え方】2.公会計の意義・目的/財政制度等審議会

2.公会計の意義・目的

 公会計基本小委員会では、公会計に関する検討の前提として、公会計のそもそもの意義・目的を整理することから議論に着手した。会計とは、一般的に、経済主体の経済活動を貨幣額によって測定し、かつ、報告する行為であり、その機能としては、経済主体外の投資家等に会計責任を明らかにする「報告機能」と経済主体内の者の判断と意思決定を支える「管理機能」とがあると考えられるが、公会計の意義、目的について、誰のために何をするためのものであるのか、公共部門の特性や企業会計との相違点に留意しつつ、整理を行った。


(1)公共部門の活動の特性

 一般に、企業は、市場での利潤の追求を目的とし、企業の業績は、獲得した利潤により定量的、画一的な評価が可能である。また、企業の予算は内部的に作成される場合も基本的には事前の見通しに過ぎず、予算の制約にとらわれない経済活動が行われている。

これに対し、国を始めとする公共部門は、民間企業では行い得ない公共の福祉の向上等を目的とし、税収を根源的な財源として市場性のないいわゆる公共財の提供等を行っている。このため、公共部門の活動は、定量的な評価にはなじみにくい分野も多く存在しており、その財政活動は、議会における予算議決を通じた事前統制の下に置かれている。


(2)企業会計の目的

 企業会計は、外部報告上、決算を中心とする事後の会計として、株主に対する配当可能利益を確定し、関係者の利害調整を図るために企業の損益を合理的に計算すること、及び、企業の経営成績や財政状態を把握し、その内容を株主や債権者等の外部利害関係者へ開示することを主たる目的とする。

 他方、企業内部で作成される予算や計画は、企業の内部管理を目的として、各種の予測や仮定を活用し、事前の経営上の意思決定や部門ごとの業績評価に用いられるものであり、近年においては、このような企業における管理会計の重要性が認識されている。


(3)公会計の意義、目的


議会による財政活動の民主的統制

 国の財政活動の基本は、国家により強制的に徴収された税を政策に基づき配分することである。このため、我が国の憲法においては、国会による財政統制に関する規定が厳格に定められている。予算を通じて事前の資金配分を明確にし、これを国会の議決による統制の下に置くこと、また、予算に基づく適正な執行を管理するとともに、その結果を決算として事後的に整理し国会へ報告することは、財政民主主義の観点から不可欠である。


財政状況等に関する情報開示と説明責任の履行

 行政活動の多様化や厳しい財政状況等を背景として、行政府が、税財源の使用状況や資産・負債の状況を分かりやすく開示し、説明責任を果たす必要性が高まっている。

 この場合、行政府による説明責任の履行は、統制の裏返しとして資源管理の改善を促す側面がある点が重要である。また、情報の開示に当たっては、誰に対する説明責任であるのかという視点が意味のある開示を行う上で重要であり、国の財政状況について、議会に対する報告義務を果たすとともに、広く国民に対する情報開示と説明責任を果たすことが必要である。また、開示する情報によっては、将来世代の国民や市場関係者をもその対象に含み得ることに留意する必要がある。


財政活動効率化・適正化のための財務情報

 財政活動を効率化・適正化していくためには、財務情報の充実を図り、その活用を進めることが重要である。ニュー・パブリック・マネジメント(NPM)の考え方においても、費用や便益に関する客観的な情報を活用して歳出の合理化を進めるとともに、予算編成のプロセスにおいて、事業の将来コストや予算の執行実績の状況を的確に把握し、それを予算の編成にフィードバックすることが重要となっている。

 他方、この場合、財務情報の具体的な活用手法については、公共部門の活動は、必ずしも定量的な評価になじむ訳ではなく、また、財務情報をどのように評価するかという問題もあるため、より実効性のある事後評価手法の確立を含め、十分な検討が必要となると考えられる。


独立行政法人の財務諸表

 特独立行政法人の財政状態及び運営状況を明らかにするとともに、独立行政法人の業績の評価に資することを目的として、企業会計に準拠した独立行政法人会計基準に基づき、平成13年度決算より、各法人が財務諸表を作成している。

 このように、公会計の意義、目的は、以上の3点に整理することができると考えられるが、公会計の扱う財務情報は、議会の議決対象となる予算及びそれに対応して議会に報告される決算と、財務報告としての財務書類等に大きく分けることができる。上記の意義、目的との関係では、予算及び決算については、「議会による民主的統制」を直接の目的とし、財務報告としての財務書類等は、「情報開示と説明責任の履行」及び「財政活動の効率化・適正化」の機能を果たすと考えられるが、財務報告として作成される財務情報を、単に情報開示と説明責任の履行にとどめることなく、予算の効率化・適正化にいかに活用し、聖域なき歳出改革につなげていくかが重要であることを指摘したい。