海外調査報告書
平成19年6月
財政制度等審議会 財政制度分科会
財政制度等審議会 財政制度分科会
海外調査報告書
財政制度等審議会財政制度分科会は、北米・欧州で進められている中長期の財政健全化の取組みにつき実地調査を行うため、今般、下記のとおり海外調査を実施した。
本報告は、この調査結果を取りまとめたものである。
記
| 日程: | 2007(平成19)年3月21日~27日 | |
| 出張者: | 井堀利宏委員、長谷川幸洋委員 | |
| 訪問先: | 米 国: | 大統領府行政管理予算局(OMB) 財務省 議会予算局(CBO) 下院歳出委員会 シンクタンク(CBPP)ほか |
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| カナダ: | 財務省 カンファレンスボード・オブ・カナダ カールトン大学公共政策学部 |
| 日程: | 2007(平成19)年3月25日~3月31日 | |
| 出張者: | 岩崎慶市委員、土居丈朗委員 | |
| 訪問先: | 英 国: | 財務省 地方・コミュニティー省 |
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| ドイツ: | 連邦財務省 ベルリン州財務省 |
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| フランス: | 経済財政産業省 |
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| 経済協力開発機構(OECD) | |
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| スウェーデン: | 財務省 スウェーデン地方政府連合会(SKL) |
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| 【注】スウェーデンは事務局のみで対応。 |
財政制度等審議会財政制度分科会 海外調査報告書 目次
○はじめに ○第1部 主要国における長期の財政推計の取組み I 米国 II 英国 III ドイツ IV EU ○第2部 主要国における政府間の財政調整 第1章 財政調整制度の国際比較 第2章 各国の財政調整制度 I 英国 II フランス III ドイツ IV スウェーデン V カナダ ○第3部 主要国における中期の歳出管理 I 米国 II 英国 ○おわりに |
はじめに
1990年代末に改善した欧米主要先進国の財政状況は、2000年代に入って経済の低迷や大規模減税の実施、歳出増などの要因から再び悪化した。その後、世界経済の全体的な回復や各国の財政健全化努力により、財政状況は2000年代半ばから徐々に改善し、今後も改善傾向が続く見込みである。米国では、過去最高の5,210億ドルと見込まれた2004年度の連邦財政赤字を2009年度までに半減させるとの目標が2006年度中に達成され、ドイツでは、マーストリヒト条約の過剰財政赤字の判断基準である一般政府財政赤字対GDP比▲3%を2002年から2005年まで4年連続で超過していたが、2006年には同▲1.7%まで大幅に改善され、2007年は1月からの付加価値税(VAT)引上げなどによりさらに改善する見通しである。
このような財政状況の好転にもかかわらず、主要先進国は財政健全化努力の姿勢を堅持している。その背景には、人口の高齢化が急速に進む中で、改革なしには社会保障関係支出の急増により財政の持続可能性が保たれないという強い危機感が見受けられる。2007年1月の上院予算委員会の公聴会において、米国連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長は、2010年代以降の社会保障支出の急増により債務残高対GDP比が拡散的に拡大していく議会予算局(CBO)の推計結果を引用し、現在の財政状況を「嵐の前の静けさ」と喩えて財政の持続可能性について強い懸念を示している。
このような中、今回の調査では、欧米主要先進国における中長期の財政健全化の取組みに関し、以下の3点に焦点を当てた。
一つ目は主要国・地域における長期財政推計の取組みである。21世紀に入り、主要先進国では、将来の人口動態の変化を踏まえて50年から75年程度の長期間を対象とした財政推計の取組みを進めている。本報告書では、米国、英国及びドイツのほか、2006年に公表された欧州委員会の財政の持続可能性レポートについても言及している。
二つ目は、昨今の地方団体の財政力調整の議論に関し、中央の税収比率が高い英国及びフランス、地方が中央と同等の税源を有するドイツ、スウェーデン及びカナダの財政調整制度の動向を調査した上で、諸外国における財政調整を目的とした財政移転の規模、中央・地方の税源比率と財政調整を目的とした財政移転の財源負担の所在との関係などの整理を試みた。
三つ目は、中期的な歳出管理の取組みである。米国の1990年代の財政健全化に大きく貢献したと言われるキャップ制・ペイ・アズ・ユー・ゴー原則や英国が1990年代後半から実施しているスペンディング・レビューについて、各年度の予算プロセスとの関係を踏まえて改めて調査・整理した。
なお、本報告書の文中の意見にわたる部分については、個人的な見解も含まれており、必ずしも各国当局等の公式な見解等ではない場合があることを予め申し添える。