財政制度等審議会財政制度分科会歳出改革部会
議事録
財政制度等審議会財政制度分科会歳出改革部会議事次第
令和2年10月26日(月)9:30~12:00
第3特別会議室(本庁舎4階中-412)
1.開会
2.議題
文教・科学技術について
中小企業、エネルギー・環境について
防衛について
3.閉会
部会長 | 増田寛也 | 伊藤副大臣 元榮大臣政務官 矢野主計局長 角田次長 宇波次長 青木次長 中山総務課長 森田法規課長 高田給与共済課長 有利調査課長 中島主計官 大久保主計官 飯塚主計官 渡邉主計官 関主計官 岩佐主計官 一松主計官 坂口主計官 波戸本主計官 藤﨑主計官 渡辺主計官 山川主計企画官 井上主計企画官 | ||
部会長代理 | 土居丈朗 | |||
委員 | 遠藤典子 佐藤主光 武田洋子 中空麻奈 宮島香澄 | |||
臨時委員 | 秋池玲子 上村敏之 葛西敬之 河村小百合 木村旬 権丈英子 小林毅 進藤孝生 末澤豪謙 竹中ナミ 田近栄治 田中里沙 冨田俊基 広瀬道明 堀真奈美 神子田章博 村岡彰敏 横田響子 | |||
オブザーバー | 大槻奈那 黒川行治 神津里季生 十河ひろ美 宇南山卓 小林慶一郎 平野信行 |
午前9時30分開会
〔土居部会長代理〕皆様、おはようございます。定刻になりましたので、財政制度等審議会財政制度分科会における歳出改革部会を始めます。
本日、冒頭でカメラが入りますので、そのままお待ちください。
(報道カメラ入室)
〔土居部会長代理〕ただいまから、財政制度等審議会財政制度分科会における歳出改革部会を開催いたします。
皆様におかれましては、御多用中のところ御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
本日も、対面とテレビ会議の両立てで開催いたします。
本日は、文教・科学技術、中小企業、エネルギー・環境、防衛を議題としております。
それでは、報道関係者の方は御退室をお願いいたします。
(報道カメラ退室)
〔土居部会長代理〕それでは、文教・科学技術の審議に入ります。
岩佐主計官より御説明をお願いいたします。
〔岩佐主計官〕おはようございます。それでは、早速、資料に沿って御説明申し上げます。
1ページ目、目次ですが、本日は、義務教育、それから高等教育、科学技術の3本立てで、ポイントを絞って御説明申し上げます。
2ページです。教職員定数の話です。今年の「骨太の方針」の抜粋ですが、中ほど、赤字で、少人数によるきめ細かな指導体制の計画的な整備などについて関係者間で丁寧に検討するとされております。この手の教職員定数の話は、過去にも財審で度々、議論が積み重ねられてきましたが、今年はコロナ禍において、児童生徒の3密回避、身体的距離の確保などのため、少人数学級を実現すべきといった追加的な声が出ているのが実情です。感染が拡大している状況下ではスペースの確保は必要かと思いますが、ワクチン等が出てきまして状況が落ち着けば、こうした論点はある意味、無意味になるわけでございまして、一時的な対応と恒久的な政策対応をやはり分けて考えるべきであると思っております。
3ページです。現在の教職員定数の仕組みです。教職員定数は、学級数等に応じて機械的に計算されている上の基礎定数の世界と、毎年度の予算編成過程において政策目的に応じて配分される加配定数の2つの世界に分けられます。学級編制の基準の変更は、この基礎定数の増に直結するということになります。
4ページです。平成以降、少子化の影響により、児童生徒数は大きく減少してまいりました。一方、教職員の定数はそこまでは減少しておりません。また、日本の学級規模は主要先進国と比べて大きいと言われますが、右下のグラフにあるとおり、教員1人当たりの児童生徒で見ると日本は主要先進国並みとなります。これは、日本は担任外の教員が多くいるということによるものでございます。
続いて、5ページ、クラスサイズの実情ですが、少子化の進行の中でクラスサイズ自体は既にダウンサイジングが相当進んでおります。現状、36人以上の学級数は、小学校では全体の1割以下となっております。さらに、こうした36人以上の学級は、東京都をはじめ、都市部に集中していることがお分かりいただけると思います。一方で、加配定数の利用状況を見ますと、福島県のように加配の多くを少人数学級の実現に充てている県もありますが、クラスサイズが大きい都市部では、むしろチームティーチング等の少人数指導に活用されているということです。地域、学校により実施は様々であり、一律にクラスサイズを下げるということはどこまでニーズがあるのか自体、やや怪しいのではないかと思います。
続いて、6ページです。少人数学級主張の根拠として、学力等の向上を上げる向きもあります。近年、日本でも、大規模なデータを使った多くの研究が蓄積されており、端的に結論だけ申し上げると、学級規模の縮小の効果はないか、あっては小さいことを示しているというのが最近の研究結果でございます。他方、社会経済的背景が低い学校の生徒には、有意な効果が確認されたという研究結果もあります。こうしたエビデンスを踏まえますと、一律にクラスサイズを小さくするというのではなく、その地域の実情や、今、効果を見極めた弾力的な配置こそが重要ではないかと考えます。
7ページです。それでも教員は忙しいので、何とかしてほしいという声もあります。教員の働き方改革が重要なことは当然ですが、日本の教員の授業時間数は主要先進国の中では低水準であることも事実です。教員が負担感を感じているのは、むしろ保護者等からの要望対応ですとか、国や教育委員会からの調査対応、部活動指導等であり、何も教員だけで全て抱える必要はないということで、教員以外の方との役割分担も不可欠と考えます。
その関係で、8ページです。近年、「チーム学校」ということで、補習等指導員、スクールサポートスタッフ、部活動指導員等々、大幅に増やしてまいりました。これらの方は、正規教員に比べれば単価も安いわけであり、教員の増だけが選択肢ではないことにも留意すべきと考えます。
続いて、9ページ、こうした教員の増員を考える際、避けて通れないのは教員の質の問題かと思います。近年、採用倍率は大きく低下しており、小学校教員ではもう全国で3倍を切っている状況です。新潟県に至っては1.2倍といったような状況であり、定数の増が採用倍率のさらなる低下につながり、教員の質の低下が相当深刻な問題となることを真面目に危惧しなければいけないと思います。
続いて、10ページ、教員の採用倍率が低下している中で、教員の質を全体として確保するためには有為な外部人材の中途採用を積極的に推し進めるべきと思います。一方、小学校での中途採用の割合は3%程度と極めて低調な状況です。そもそも、現在の教員養成システムは、教育大学とか教育学部における免許の取得を中心とした、新卒前提の極めてクローズドなものとなっています。意欲と能力のある外部人材が教育現場に入り込んでいけるように、免許制度の在り方を含めて、教員養成システムをオープンなものに抜本的に転換していくという発想も必要ではないかと思います。
続いて、教育のICT化のお話です。12ページになります。昨年、本年の補正予算によりまして、小中学校に1人1台の端末が整備されることになりました。こうした端末をいかに有効に使うか、新しい授業の在り方を早急に検討すべきであると思いますし、校務のICT化等を併せて進める必要があると思います。経産省の報告書によれば、教育現場のICT化を進めることにより、相応の業務時間の削減は可能ということです。文科省自体から、どうしてこういう発想が出てこないのか、私自身は非常に不思議です。
続いて、13ページです。こちらも経産省の実証事業の例ですが、授業の理解度や学習スピードは生徒によってまちまちです。個々の理解度に合わせた出題を選択するようなAIドリル教材等の活用により、個別最適化された質の高い教育を実現すると同時に、教員の負担軽減を図ることができると思います。端末1人1台を導入しても、中身が伴わなければ、ただの文鎮と化すわけであり、これまでの延長線上の授業の形ではなく、ICTを活用した全く新しい授業の形、教員の業務の効率化を真剣に検討すべきと考えます。
続いて、学校施設の話です。15ページになります。学校施設につきましては、今後、第2次ベビーブーム世代に合わせて建設された施設の更新時期が到来してまいります。長寿命化改修により経費を縮減して、平準化を図っていく必要があると考えますが、同時に、単に現在ある施設を単純に長寿命化するというのではなくて、残すべきものをきちんと見極めた上で行っていくことが重要です。将来的な人口動態も踏まえ、学校施設の統廃合や、それから学校に限らず、他の施設との複合化等を推進していく必要があると思います。
ところが、16ページです。左上の表にありますとおり、各地方公共団体で今年度末までに個別施設計画を策定することになっておりますが、実際には、そうした統廃合や他の施設の複合化、共有化等はあまり意識されていないのが実情です。こうした課題に対応するためには、各部局の縦割り打破も必要であると思います。現在、学校施設に関する課題は教育委員会、その他は市長部局と様々な部署で検討されています。各部局が一体となった検討体制を構築して、新たな横断的な実行計画を、期限も区切って策定する必要があるのではないかと思います。
これまでの義務教育のパーツで申し上げたいことは、つまるところ、学級規模や教員の数のみを拙速に議論するのではなくて、端末1人1台を前提とした教育のコンテンツや、ICT活用の校務の効率化など、新しい教育や学校の在り方を徹底的に議論した上で、それに必要な教員と外部人材、それから学校施設の在り方を総合的に、まさに丁寧に検討するということに尽きると思っております。
次に、高等教育の話です。
18ページになります。国立大学の運営費交付金についてです。財審におけるこれまでの御議論も踏まえ、令和元年度に共通の成果指標による相対評価に基づく配分を導入いたしました。令和2年度にはさらに拡充を図っておりますが、他方で、運営費交付金の基幹経費に対する影響はいまだ大きくございません。インセンティブ効果を高めるために、引き続きその金額と再配分率を拡大していくべきと考えます。
さらに、19ページです。相対評価を行ってはいますが、指標をよくよく見ますと、左側の表にあるように、もう全ての国立大学は達成している指標や8割以上の大学が達成している指標が半分程度と当たり前の項目が並んでいるわけでして、総じて相対評価の体をなかなかなしていないのではないかと思います。指標を、よりアウトカム志向なものに見直していくべきと思います。それから、評価結果が実はどのように、大学内で配分、活用されているかという点も重要でございます。この点、いまだブラックボックスのようになっておりまして、情報の一層の開示はもとより、その評価結果の内訳が各学部に示されて予算配分に活用されるよう、例えば評価に基づく学内配分を一生懸命やっている大学に対しては、インセンティブが利くような仕組みにすべきではないかと思います。
続いて、20ページ、評価自体は重要ですが、一方で、評価が多過ぎて事務負担になっているという声も聞こえてきます。重複があるのも事実ですので、各評価の整理、合理化を進めるべきと思います。
続いて、21ページです。コロナの拡大をきっかけに、オンライン授業を高等教育でも加速しております。やってみると、左下の学生アンケート等では、オンライン授業に肯定的な意見が8割ぐらい、それから講義の録画が見られると、繰り返して復習しやすいという声も聞こえてきます。オンライン授業については、大学設置基準上、60単位までと設けられている上限が現在は特例的に取り払われておりますが、そもそも、この条件の必要性についても再検討が必要かと思います。それから、オンライン化が進み、学生がほかの大学の授業も容易に履修するようなことが進めば、大学の枠を超えて授業単位での競争が進むと思います。大教室での講義形式による授業は、質の高いオンライン授業にどんどん代替されていくのではないか。さらに、オンライン授業が進展すれば、対面を前提とした大学設置基準の在り方そのものも根本から見直す必要が生じるのではないかと思います。国立大学の再編に関する検討の契機になればと思います。
次に、科学技術についてです。
23ページです。日本の研究力の低迷の理由に、予算の不足を挙げる声もありますが、科学技術関係予算の対GDP比は主要先進国で上位の水準です。問題は、予算の多寡ではなくて、右の図のとおり研究生産性の低さにあるということで、解決すべき課題にしっかり手を入れていくということが大事であると思います。
24ページです。まず、競争的研究費の全体像を簡潔に御説明します。競争的研究には、研究者の自由な発想に基づく研究を推進するボトムアップ型の世界と、政策目標に基づき、出口を見据えて研究を推進するトップダウン型がございます。ボトムアップ型の代表例が左下の科研費でございます。基礎研究のほか、様々なメニューがあり、その規模は数百万円から数億円まで多岐にわたります。右側、トップダウン型の研究費についても、いろいろメニューはありますが、規模は科研費よりは大きく、数千万円から十数億円となっています。
そこで、25ページです。まず、研究の生産性向上に向けた第1の課題が研究の硬直性であると思っています。左の図表を見ますと、国際的に注目を集める研究領域のうち、日本の研究者が参画する研究領域数は諸外国と比べて限定的です。科研費については、審査区分別の応募課題数と、それから応募経費額に応じて配分額が決まってまいります。学問分野別のシェアが固定化しやすいということで、平成30年度に審査区分の大くくり化を行いましたが、これをさらに進めるとともに、それから科研費のメニューの中の新学術領域研究や挑戦的研究の予算配分を高めて採択率を上昇させるなど、研究費のポートフォリオ自体の見直しが必要ではないかと思います。
続いて、26ページです。第2の課題が研究の閉鎖性であると思っています。トップ10論文数の伸びにおける外国と日本の差は、国際共著論文の伸びの停滞が一因です。ネイチャー論文では、研究のインパクトに相関があるのは、政府投資の規模ではなくて国の開放性にあると言われていますが、日本の開放性は主要先進国で極めて低い水準にあるということです。
こうした課題解決のヒントになるのが、27ページのWPI(世界トップレベル研究拠点プログラム)です。このプログラムは、研究者の3割以上を外国からの研究者とする、英語は標準にするといった研究環境の構築を求める中で、国際共著論文数の伸び、それからトップ10論文の割合で相応の実績を上げてきています。こうしたノウハウをしっかり横展開することで、国際共同研究をさらに促進すべきであると思います。英語は、もう言い訳にならないということです。
続いて、28ページ、第3の課題が若手研究者の活躍の機会の不足であると思っています。左下の図で明らかなとおり、論文の生産性が高いのは若手研究者です。他方、この間、国立大学においては、法人化以降の定年延長等により、本務教員によるシニア層が増加し、若手の割合が低下傾向です。やはり大学側にも人事・給与マネジメント改革をしっかり進めていただいて、若手研究者の処遇を改善していく必要があると思います。
29ページです。こうした問題意識に基づき、近年、科研費について若手の採択割合を上昇させてまいりました。一方で、若手向けのメニューの研究規模はあまり大きくありません。優秀な若手研究者の挑戦を後押しするため、科研費の若手向けのメニューから、さきに申し上げましたトップダウン型の、より研究費の規模が大きい右側の世界へとステップアップさせていく仕組みを構築すべきではないかと考えます。
続いて、30ページです。博士課程学生の問題です。これまで、ポスドク1万人計画等、多額の財源を投じてきました。一方で、多様なキャリアパスの確保がなされてこなかったということで、長い間、博士課程人材が不安定な身分に滞留してしまって、ネガティブイメージが上昇しているということです。こうした反省を生かし、博士課程学生の支援に当たっては、人数の増加のみの一律で追求するのではなく、質の高い論文を生み出すような優秀な学生に重点化すると同時に、アカデミズムに偏ったキャリアパスを産業界に拡大するための方策とセットで考えていく必要があると思います。
31ページです。博士人材の企業への就職が低調な原因の一つに、企業側の目線と、それから学生側の目線にずれがあるということが考えられます。このギャップを解消し、産業界へのキャリアパスの拡大をしっかり図っていくために、ジョブ型インターンシップや共同研究等、民間と大学で協調しながら、積極的に進めていく必要があるのではないかと思います。
それから、32ページです。第4の課題が産学連携の弱さです。日本企業、研究開発投資の規模は主要先進国の中でもトップクラスの水準ですが、一方、大学に落ちる金が小さく、かつ1件当たりの規模も小さいといった状況です。この点、大阪大学のように、個別案件中心の産学連携ではなくて、組織対組織の本格的な参画連携を実現するための包括連携契約のようなもので、大型の資金獲得を実現している例もございます。こうした資金獲得ノウハウを横展開し、さらなる産学共同研究を推進すべきと思います。大学側にも、しっかりと汗をかいていただかないといけないということです。
最後に、33ページです。これも「骨太の方針」で、中ほどに世界に伍する規模のファンドを大学との間で連携して創設する云々と書かれております。こうした議論は、海外のメジャー大学が、卒業生からの多額の寄附金を原資に、多額のファンドを運用していることを参考にしているものですが、これまで申し上げてきました研究の生産性の低さ、そうした構造的な要因にメスを入れないままでは、どんなに多額の固定資金を投入しても、日本の研究力はなかなか思うように上がらないであろうということで、こうした仕組みの検討に当たっては、これまでの反省も踏まえて、研究資源を新たな研究領域や若手に振り向けるような組織の新陳代謝ですとか、産業界にも、国際的にも開かれた大学を再構築するといった改革は大前提ではないかと思います。
非常に駆け足の説明で恐縮ですが、私からは以上です。
〔土居部会長代理〕ありがとうございました。
それでは、ただいまの御説明に関しまして、御意見などがございましたらお願いいたします。なお、本日、欠席の赤井委員より意見書を御提出いただいておりますので、お手元にお配りしております。お目通しいただければと存じます。
いつものように、御意見のある方はネームプレートを立てていただければ幸いです。また、テレビ会議システムを通じて御参加の皆様には、御意見がある場合にはテレビ会議システムの挙手するボタンをクリックしていただきたく存じます。会場に御出席の委員から、先に指名いたします。なお、御発言は手短にお願いいたします。
それでは、木村委員から順番に、こちらのほうに戻ってくる形でお願いいたします。
〔木村委員〕御説明、ありがとうございました。
義務教育に関しては、社会の少子化やデジタル化という新しい変化に対応して、新しい学校教育の在り方を徹底して議論していくべきであるという岩佐主計官の御説明はそのとおりであると思いました。特に少子化の問題、それこそ50年後に人口1億人を維持するという政策目標は大事な話でしょうが、現実的には難しく。そうしたスローガン先行の政策が目立ちました。実際は少子化という厳しい現実を直視した上での政策が、例えば今回でいえば教職員の定数とか、学校施設とか、そうしたものをしっかり厳しい現実を直視して組み立てていくということが大事であると思っています。
それから、もう1点、高等教育のうち、国立大学への運営費交付金についてです。共通の成果指標に基づく相対評価は公的な資金の配分であり、一定の規律が必要ですし、今回、挙げられた改善点も様々大事であるとは思っています。一方で、今回、日本学術会議の問題などが出てきたことを踏まえると、今回の相対評価に関してもより高い透明性と明確な説明が、今後、一層重要になると思っていますので、そうしたことも意識した上で取り組んでいただければと思っています。
以上です。
〔土居部会長代理〕ありがとうございました。
それでは、佐藤委員、お願いいたします。
〔佐藤委員〕ありがとうございます。私も、義務教育について3点ほど。
1つ目は、まず13ページです。今、GIGAスクール構想が進んでいますが、このPCやタブレットの調達は地方公共団体ごとにやっています。その結果として、なかなか価格が安くならないとか、調達の手間で普及率に地域差が出てくるということもあります。これは、本来、国が主導してやっていることですので、タブレットぐらいであれば国が一括して調達しても良いのではないかという気がします。推進するのも良いですが、特に機器の調達については再考が必要なのではないかと思います。
もう1つ、16ページですが、施設について、地方公共団体の仕事をしていると何となく分かるのは、教育委員会が半独立王国化しているのです。だから、学校という施設に市長部局がなかなか手を出せない。例えば、空き教室があっても、なかなか複合化できないという問題を抱えているような気がします。学校施設の管理責任者は学校の校長になっており、校長先生は何かあったら困りますので、どうしても教育以外の目的に教室等々の施設を転用することに対しては消極的。学童保育などが良い例です。わざわざ公園に建物を建てているのに、トイレの使用さえも制限している地域があるわけです。なので、ここはむしろ学校施設の管理責任の在り方自体を根本的に問い直して、全てを市長部局に任せて、要するに運営のところだけを学校長の責任にするとか、やり方を工夫しないと、赤井委員からの指摘があった学校の統廃合といったものはなかなか進まないと思いました。
最後に、1点だけ。7ページ、これは前から言っている学校の先生方の業務負担ですが、やはりこれは公共部門の悪い癖が出て丸抱えですよね。仕事を何でもかんでも丸抱えして、結局、自分たちの首を絞めてしまっているという状況です。これは、もともと「チーム学校」という構想があったかと思いますので、アウトソーシングを進めていくこと。ただ、これは、言うはやすし、するは難しであり、業務フローをちゃんと確定しないと民間はなかなか受託できないので、業務フローの整理をまず行うべきかと思いました。
以上です。
〔土居部会長代理〕ありがとうございました。
それでは、末澤委員、お願いいたします。
〔末澤委員〕どうもありがとうございます。
意見が1点と、また、質問1点です。いずれも義務教育関連でございますが、まず4ページ目です。これは、毎回、もう10年ほど、7、8年申し上げていますが、4ページの左のように、児童生徒数はどんどん減っているが、教職員の定数はあまり減っていません。実は、今週、報道がございましたが、昨年の出生数は86万5、6000人、今年は84万人になるのではないかという試算も出ておりまして、恐らく、この動向は変わらない。そうすると、義務教育、小学校の児童数は6、7年後には80万人になってしまう。団塊の世代は270万人ですから、3分の1どころではない、3分の1未満まで下がる。
この中で、教職員の定数はそんなに変わらないということは、明らかに無駄な部分がある。4ページの右下のグラフでも、日本の場合は教員1人当たりと生徒数で見るとそんなに多くない。これは、先ほど主計官からもありましたが、恐らく、いろいろなサポート役の方が多い。逆に言えば、学校の数が多いと相当非効率になってくるということで、以前から申し上げていますように、これだけ人数が減るのであれば、やはり統合化して、その中でいろいろな教育の質、また、例えばいじめの問題等を解決するということは、今後、本当にもっと本格的に考えていかないと、出生数の減少に政策が全然追いつかないと、そうしたことが続くのではないかと思っております。
もう1点は、質問ですが、ICT化の話は昨年もございましたが、こうした中、今、COVID-19がパンデミックになって、先週末、アメリカの新規感染者数は8万人を超えてきています。これは過去最高です。全世界でも、1日当たり50万人に近づいてきている。私は、この秋、感染の第2波ないし第3波で各国で感染者が急増する可能性が高いのではないかと思います。そうした中、昨年のICT化の問題は、今年の春の学級の休校等に何らかの寄与をしたのか。例えば、タブレットは渡しても、Wi-Fiがなくて、つながらないので全然できないということであれば、これだけCOVID-19対策費を出しているのですから、これを奇貨として、本当にこの秋にも全校でリモート授業ができるような形に早めにやっておくことが、むしろ来年以降の様々な教育の質、また、効率化の向上に役立つのではないかと思っております。つまり、ICT化が何らかの寄与をしたのかどうか、分かれば教えていただきたいと思います。
以上でございます。
〔土居部会長代理〕御質問については、後でまとめてお答えさせていただきたいと思います。
それでは、中空委員、お願いします。
〔中空委員〕ありがとうございます。
岩佐主計官のおっしゃっていた御指摘のポイント、ことごとくそうであると思います。その中で、3点ほど思ったことを伝えさせていただきたいのですが、1点目は、若手研究者のさらなる活躍というところについてです。本来は、若手かシニアという年齢ではなくて、成果によって活躍がもっと嘱望されるとか、そうしたことであるべきであると思うので、研究者を年齢で切るということはおかしいのではないかと思っています。これが1つ目。
2つ目としては、7ページにありましたが、教員が忙しいということについてです。何年かこの議論を聞かせていただいて、教員が忙しいです、とずっと言われていて、そのたびに忙しいとはどういうことかといつも思うのです。例えば、あなた忙しいですかと言われたら、この中にいる多くの人は忙しいと言うと思うのです。なので、忙しいのをどうやって忙しくしないかとか、効率性を図るということで改善できないものなのかなど、素朴に疑問に思っています。教員の忙しさの質について、ちょっと知りたいなと思います。
3点目は、科学技術や文科省の予算については、量から質への転換というのが割と見られます。それは100%アグリーですが、質とは何ぞやということがいつも分からないと思っています。例えば、授業がものすごく面白くて、ちゃんと分かりやすいということは良い先生であるとは思いますが、その代わり機械的な人で、あまり人間味がない人でも良い先生と言えるかなど、様々な観点があると思います。なので、先生の質に関して、こういう先生が欲しい、理想ですというものがまずあるべきではないでしょうか。それがないのはなぜかと考えると、この日本にどういう人材が必要で、どういう人材を育てたいかという理念が不足し過ぎているのではないかと思っています。その理念なしで、一応、仕方ない、子供たちが必要なので数を何とか合わせましょうという話に、私には見えてきてしまっている。なので、その根本を少し整えていかなければいけない時期に来ているのではないかと思いました。
ちょっと元も子もないことを言いましたが、東大が大学債を出し始めて、自立した資金調達をし始めている昨今です。この分野の予算の在り方について少し考え直す時期が来ているのではないかと思って申し上げました。
以上です。
〔土居部会長代理〕ありがとうございました。
それでは、神子田委員、お願いいたします。
〔神子田委員〕御説明、ありがとうございました。
私は、まず、6ページの学級規模の学力への影響は限定的ということについて一つ意見があるのですが、この中で、学級規模の縮小は通塾していない児童生徒に対しては僅かに大きいということと、家庭の経済的な資源が不足している子供に質の高い教育を提供することの重要性とありますが、実際、日本でも貧富の差が広がって、東京でも富裕層の多い地域の子供は塾に通っているし、そうでない、例えば給食費も払えないような親がたくさんいる地域ではそんなに塾にも通っていない。そうしたところで、やはり教師の配置も、経済的に恵まれていない子が、親のせいで格差を自分も引き継いでいくということはあってはならないと思いますので、そうした地域に関しては、より目配りして多くの教員を配す。
一方、例えば、できる子供のいる小学校や中学校では、先生の代わりにできる子が他の子に教えたらよいのではないか、それも教育の一環なのではないか。人に教えるということは、自分の理解も深まるということです。別にこれは教師がさぼるということではなくて、全体の中で、教育格差を生まないという観点から考えていただければと思いました。
2つ目は、16ページの横断的な実行計画です。学校を造るとき、単に学校を造るだけでなく、いろいろな機能を持つ建物にしていく。建物自体、どんがらを建てるのにお金がかかりますので、私が特に注目しているのは、学校を災害のときに避難できる施設にしたら良いのではないかと思います。よく体育館に避難して、1日中、体育館にいるのですが、昼間は教室でくつろげたらもっと快適なのではないか。例えば、保健室などの医療機能は、学校だけにはそんなに必要ないのですが、まさかのときにはそうしたことにも使いますということなら安心して避難できる場所になりますので、省庁横断的に学校の建物の使い方を考えるときには、そうした災害の観点も考慮に入れたらよいかと思います。
以上です。
〔土居部会長代理〕ありがとうございました。
河村委員、お願いいたします。
〔河村委員〕御説明、ありがとうございます。
岩佐主計官、御説明くださった全体として、義務教育で硬直化しないように新しい風を入れるであるとか、それから研究の生産性を高めるためのいろいろな方向性について、全体として本当に賛成でございます。
私からは、1点、時間の関係もありますので、国立大学法人制度、特に運営費交付金に絞って意見を申し上げたいと思います。
国立大学法人は、今、6年ワンサイクルの中期目標期間の3サイクル目で、来年度で終わるというところです。この3期目に入ったところで、研究のパフォーマンスの低下が明らかになってくるとか、いろいろ問題が出てきて、それに対して、いろいろ評価制度もあったのですが、残念ながら内部からのPDCAサイクルで改善策が出てくるということにはなっておりません。今日も御説明がありましたが、例えば人事運営でシニア優遇になってしまっているとか、講座の配分のところで硬直的になっているといった指摘は、本当に外部からの指摘が出てきて表面化した。そうした指摘はどこから出てきたかというと、やはり財政当局から御指摘いただいた、それから、この審議会の建議で御指摘いただいてきたことが大きな意味になって、去年の「骨太」で国立大学法人制度を見直せという方針が打ち出され、文科省がやっと今年に入ってから国立大学法人の戦略的経営実現に向けた検討会議というものをやられていると思います。9月には中間とりまとめが出ています。
19ページのところでお示しくださった、各国立大学法人、法人化時点の運営費交付金の配分を硬直的なままずっと続けるということはとんでもないことで、こうした相対評価も入れていただいて進めていく必要がある。それで、よりアウトカムを意識した指標に持っていくべきであるとか、それから評価の結果が学内にもきちんと伝わって、きちんと自律的な経営改革につながるようにという方向、本当にごもっともで賛成です。
ただ、今後については、来年度予算にとどまらないと思いますが、国立大学法人が2中期目標期間はほったらかしにされたのが、やっと改革の機運が出てきて、今制度改革がされるようになってきています。それがきちんとした改革の方向に進んでいくように、国民の立場から見て望ましい改革の方向に進んでいくように、財審として促す方向性を出したほうが良いですし、運営費交付金の在り方もそれに合わせて少しブラッシュアップしていくことを考えたほうが良いと思います。
具体的に申し上げると、9月の戦略的検討会議の中間報告などを見ますと、大学と国との自律的な契約関係を打ち上げたり、全般的に自由度を高めたりという方向性が打ち出されております。定員の規制緩和をするとか、目的積立金などという話も出てきます。それから、評価の簡素化、これは重複を排するという意味では本当に良いことであると思います。
ただ、お話を聞いていると、6年サイクルだけにして年度評価を廃止するとか、一方で情報開示を徹底するところをどう徹底するかといった議論が全然聞こえてきません。文科省に言わせると、これからやるつもりですとおっしゃるのかもしれませんが、これでは6年に一遍しか外に対して説明しない。やはり毎年毎年、見ていかなければいけないところもあると思いますので、そうしたところをおざなりにしないか非常に心配になります。
また、この中間とりまとめには入っていませんでしたが、授業料の自由化の是非もこの検討会議の議題に上がるということが運営要綱には書いてあります。そうすると、今のこの法人制度の立てつけのままでいって本当に大丈夫かどうかということは、よく考えたほうが良いのではないかと思います。
法人化は2004年度にされたものの、やはり独法とは随分違う枠組みであり、大学の機能は大別して、教育、研究、それから産学連携、社会連携、3つぐらいあると思いますが、区分経理も全然できていない。大学単位でお金をばんと渡して、そのお金をどう使ったかという事後的な説明も全然できていない。その辺は、やはり独法と非常に対照的なところで、こういうままでいって、果たして授業料の自由化なんてことを言われたときに、大学に自由に授業料を上げていいですと言って、大学がそのお金を一体どこに使ってしまうのかも分からない。これは国民にとっての利益と言えるか、非常に問題ではないか。目的積立金もそうではないかと思います。
ですので、私が思いますのは、法人化されていますし、大学ですので自律性を尊重しなければいけないので、あまり口を挟むのはもちろんよくない。自由にやっていただくのは良いのですが、せめて教育、研究、産学連携ぐらいの3つの勘定に分けてきちんと経理をしていただいて、その上でこそ、アウトカムを意識した指標に基づけば、やはり教育のアウトカム指標、研究のアウトカム指標として出しやすくなるのではないかと思います。
これまで、大学側からいろいろ不満も出てきていました。例えば、研究のパフォーマンスが下がったと。先ほど主計官もおっしゃっていましたが、悪いのは財政当局がお金を十分につけてくれないからであるといった不満がいっぱい出てきたり、挙げ句の果てには法人化が悪かったという意見も出てきたりしたと思います。
でも、そうではなくて、例えば運営費交付金を出すときにも、全体でばんとやって、そのうちの何%だけ相対評価にとやるよりは、せめて教育の部分のアウトカム指標、それから研究の部分のアウトカム指標、産学連携のところは運営費交付金を出す意義が乏しいかと思いますが、そこもアウトカム指標をきちんと見て、それぞれ大くくりにした上で出すようにしていったほうが、やはり国民側も納得できますし、また、受け取る側の国立大学側も、恐らく、今、あまり納得されていないと思うのです。逆に言うと、独法の運営などを見ていても思いますが、きちんと、何のために、国はこの部分にお金はつけないが、この部分はつけるということになれば、納得できるようになると思います。
それから、教育についても、これだけ18歳人口が減っているのに、高等教育に幾らでもお金を出せないと思います。やはり国としてはこれぐらいしか出せないが、定員を自由化するのであれば、あとは各大学でお考えいただいて、定員を増やしたかったら増やしていただいても良いと思いますが、そこは自力でやっていただくという方向性を明確にしたほうが良いのではないかと思います。
その文科省のやっていらっしゃる検討会議も、構成が少し気になるところもあって、我々国民の意見が反映されているのか。一部のトップクラスの大学の先生方と財界だけで決めていらっしゃる感じがしなくもない。ぜひ財政当局としては、国民の見方、それから学生の視点をきちんと守るような形での配分ができるように、そうした改革を文科省にやっていただくように促すとともに、在り方も考えていくことが必要ではないかと思います。
すみません、よろしくお願いします。
〔土居部会長代理〕進藤委員、お願いいたします。
〔進藤委員〕現下のコロナ禍の下で、一層その必要性が明らかになってきたデジタルトランスフォーメーション、DX化やリモート化という観点から、3点だけ申し上げたいと思います。
1点目は、10ページに記載のある特別免許状の制度の活用促進ということで、会社で経験したことがあるといった社会人が教員として教壇に立つということは、私は非常に良いことであると思っているのですが、この資料を見ると、民間企業の経験者で採用される人数は、ほぼ横ばいで、比率では減っていますよね。特に、情報関係の科目については、企業で、システム関係の仕事をした後、定年退職された方は結構いっぱいいると思うのです。そうした人が、小学校や中学校に1人いれば、次の議題にもなりますが、学校業務のデジタル化も結構進むのではないか。例えば、民間企業はこんなふうにしていませんとか。したがって、この制度はなぜ活用が進まないのか、もう少し原因を分析して、人材を有効活用することを考える必要があると思います。これが1点目。
2点目は、教育のICT化、デジタル化で、経産省の報告書からの抜粋として紹介されている資料を読んで私はものすごくよく分かったのです。あの資料が一番よく分かった。EdTechですが、教育の負担軽減、それから個々人の児童生徒に着目した個別最適学習は、こういうことで実現できると思います。そのために、これはビジネスでも同じですが、やはり核となる人がいないと進まないので、先ほどの話と絡みますが、経験者を入れていくということが必要であろうかと思います。また学校だけがやっても、個々の先生だけがやってもうまく進まないので、家庭との連携、各教師間や学校内の連携、さらに、国として進めているデジタル化全体との関係もよく考えてもらいたいと思います。
それから、3点目は、大学、高等教育についてですが、今、オンライン化、リモート化が非常に進んでおります。単位相互認定の話も出ました。これを促進したり、オンライン授業で取れる単位数の上限を撤廃したりすることで、国内外の競争、あるいは学内での教授間の健全な競争を促進することを私も強く期待したいと思います。一方で、忘れてならないと思うのは、教育は知識教育だけではないということです。大学の先生たちと議論しても話に出てくるのですが、やはり教師、教授との人格的な接触であるとか、学生間の人間関係の形成や構築によって人格を陶冶していくという面も相当あるので、リモート、オンラインと、面着のリアルな授業とのバランスを取るということが重要なのであろうと。この辺り、よく留意して検討していただければと思います。
以上、3つです。
〔土居部会長代理〕ありがとうございました。
武田委員、お願いいたします。
〔武田委員〕ありがとうございます。
科学技術予算について意見を申し上げます。人口が減少し、資源も乏しい我が国にとって、科学技術力は非常に重要です。また、最近の国際情勢を踏まえますと、この重要性はますます高まっていると考えます。しかし、残念なことに、現実的には様々な指標で日本の科学技術力が低下していることが表れております。
では、どうすればよいかということですが、毎年、科学技術の予算の在り方、質を高めましょうという議論をしてきましたが、国として何が課題なのかをしっかり議論して、戦略的な科学技術予算の活用を実行する段階に来ているのではないかと思います。ここでそれが出来なければ、議論を続けても、残念ながら国際的な順位は益々低下していくのではないかと、危惧しております。
以上です。
〔土居部会長代理〕ありがとうございました。
では、田中委員、お願いいたします。
〔田中委員〕田中です。ありがとうございます。
義務教育と国立大学について。12ページ、13ページにEdTech等ありますが、民間のシステムや人材を投入して、子供の教育も、教員の働き方も改善しているような例がありますので、ぜひ横展開をスピーディーに行いつつ、また、13ページのGIGAスクールも、また別な形で民間と連携が動いている感じもありますので、ぜひセットで効率化を目指すべきであると思います。担任の先生以外の先生が多いというデータも示していただきましたので、ICTで教え方が変わる中で、やはり教育の資源を効果的に生かす取組が必要であると感じます。
19、20ページ、国立大学の評価のところを示していただきました。確かに、本当に精緻な項目ですが、実施していることを大変な分量で報告するという作法が求められますし、どうしても現在であると閉じた評価とも言えるような現実があるかと思いますので、こうした評価のところ、もし規定をこなすのであればAI等を導入して効率的に出せば良いですし、本来の趣旨である個性及び地域の特性ある価値やアウトカムが発出され、そこに予算が配分されるという流れができるとよいかと思います。
1点質問をさせてください。参考資料1の35ページに、「運営費交付金に限らず多様な財源により教育研究の質を確保する」ということで、オックスフォードやハーバードの事例がありますが、ここにある「その他の財源」というものが、51%や32%などと大きな割合を占める大学があるので、その他の内容がもし分かれば後ほど教えていただければと思います。よろしくお願いします。
〔土居部会長代理〕ありがとうございました。
それでは、宮島委員、お願いいたします。
〔宮島委員〕多くの方々の意見が本当にそのとおりであると思うので、短くいきますが、コロナでいろいろなことが大きく変わる中で、まさに教育の現場も、今、どちらの方向に変わるのかが問われていると思います。その中で、変わる良いチャンスなのに、昔、一旦撃退された、べたっと教員を配置して小規模にするという意見がここで出てくることは、何というか、少しびっくりしてしまうというのが正直なところです。まさに必要なことは、どこに本当に先生が必要で、どこはほかに任せたほうが良いかということをちゃんと切り分けていく。そして、こんなに子供が少なくなってしまったわけですから、日本の未来のためには、この子たちを本当にしっかり育てないと日本は本当に沈むぞという覚悟の下に、教員だけではなくて、いろいろな人がここに手を出していくという形をつくることが、まず必要であると思います。
そのような中で、未来の子供たちにこれが必要であるということは、EdTechと「未来の教室」などでかなりちゃんと出てきて、実証実験などでも、これで学力がしっかり上がったり、やる気が出てきたりということが出てきているので、これを広げることが必要であると思います。別に機械を渡して放っておけばできるわけではなく、それを効果的にどのように進めるかということについて、教員の力が試されるわけなので、それができるように人材を配置してやる。そして、今、実証実験で成功していることが、どの学校でもちゃんと実現できるように進めることが非常に重要なのではないかと思います。文科省、前は前向きでしたが、今、少しそこから腰が引けているような印象を持っておりまして、それは非常に心配しているので、一刻も早く一番の先進事例、良かったと思われた先進事例を広げるためにどうしたら良いかということを考えていただきたいと思います。
〔土居部会長代理〕ありがとうございました。
大槻オブザーバー、お願いいたします。
〔大槻オブザーバー〕ありがとうございます。
私も、義務教育のところと、それから研究費のところと、1点ずつお願いします。
まず、義務教育のところですが、やはりレジームチェンジが確実に起こっているということを見据えて、結構、抜本的にいろいろ変えなければいけないのではないかと思っています。そこで、一つ注意していただきたいと思うのは、これからオンライン教育の是非について調査、特に質についての実施をしっかりお願いしたいと思います。導入のパーセンテージなどは出てきていますが、質のところの検証はこれから出てくると思います。それは、導入当初ですから、様々なトライアル・アンド・エラーで、こういうところはうまくいかなかったという数字がどうしても出てくるのではなかろうかと思っていますが、そこは割り引いて、オンライン教育がいかに個別最適化教育の方向性に合致しているものか、というポジティブな受け止めも必要であると思っています。
それを考えると、ここでもお示しいただいている学校の統廃合など企業であれば、業界の規模が縮小していけば統廃合なりの施策は当然ですし、地方では、専門外、担当外教員の増加による質の低下なども懸念される中ですから、抜本的な改善を考えていただきたいということが1点です。
それから、研究費について、先ほど中空委員も年齢のことをおっしゃいましたが、私も同様の意見を持っていまして、広い研究を促すような予算をと思っています。大昔であれば、1人の天才が突如イノベーションを起こすこともありましたが、年間の科学技術論文250万も発表され、それらの読むべき論文が毎年累積していくわけですから、ある程度の年齢と経験も必要になってくるわけですので、年齢だけでなく、広い形での研究費を考えていただきたいです。また、企業側から見た場合のイノベーションについては、ここでもおっしゃっていただいている広範囲のチームで、有機的な協力で、国際的、そして分野にとらわれない、審査の大くくり化などで、そうしたことを進めていただきたいと思っています。
以上です。
〔土居部会長代理〕ありがとうございました。
神津オブザーバー、お願いいたします。
〔神津オブザーバー〕ありがとうございます。
これまでも、この場で申し述べてきたのですが、コロナの問題はもともと日本の社会の弱い部分を露呈させていると思います。教育の問題も、そのうちの大きな要素であると思います。いろいろあるのですが、特に強調しておきたいのは、経済状況による教育機会の不均衡であるとか、貧困の連鎖という問題です。これをなくしていくことは喫緊の課題であると思います。その環境整備を基本とした予算措置が求められると思います。その前提に立って、ここでは義務教育に関して、2つの点に絞り込んで申し述べたいと思います。
1点目は、少人数学級の実現に向けた教職員の定数改善です。教員が一人一人の子供と向き合う時間を確保し、きめ細かな教育を行うためには、少人数学級は不可欠であると思います。文部科学省による2015年度の調査を見ても、学級規模が小さいほど学習規律、授業態度が良くなる。そして、授業内容、学習意欲が高まる傾向になるということが明らかになっています。とりわけ、都市部を中心に40人程度の学級も多くて、特別支援学級との交流時には45人程度となっています。感染症対策の観点からも、少人数学級は直ちに取り組むべき課題であると思います。少なくとも、30人学級を早急に実現するために、教員の定数増をはじめとした環境整備が必要であると思います。
2点目ですが、事務職員の定数改善、そして外部人材の活用が必要であるという点です。他の先進国と比べて、日本においては、7ページの右上段の表にありますとおり、様々な業務の負担が際立って大きいという問題があります。加えて、部活動が単なる時間では計れない大きな負担となっています。過労死、過労自殺を根絶する働き方改革の観点も併せて、教職員の定数の改善に加えて、ICT支援員や部活動における外部人材の活用、スクールスタッフなどの拡充が必要であると思います。
オンライン授業に関する対応はもとより、感染予防対策なども、決して以前の状況にやがて全てが戻る、あるいは全て戻すという性格のものではないと思います。外部人材等の予算人員は、今年度の数字を見ても6万人ということで、1校当たり平均ではおよそ2名、これはスクールカウンセラーやソーシャルワーカーを含んでいますので、それ以外では1名にもならないということですので、抜本的な改善が急務であると思います。
以上です。
〔土居部会長代理〕ありがとうございました。
小林慶一郎オブザーバー、お願いいたします。
〔小林(慶)オブザーバー〕手短に、科学技術について2点だけ言いたいと思います。
1点目は、科研費などの研究資金の使い方について、研究のレベルを上げるために、やはり個人へのインセンティブを高める使い方ができるような設計にすべきであると思います。アメリカであると、外部資金でもらった研究費から大学にお金を納めると、例えば1学期間、授業をやらなくて良いといった契約ができる。そうすると、時間が十分に取れるので研究が実行できると、こういうインセンティブのつけ方がある。あるいは、研究者個人の所得にダイレクトに上乗せするといった使い道もアメリカであるとできる。そうしたやり方があると、やはり研究への取組は大きく変わりますので、そうしたインセンティブをつけるような科研費の使い道を設計すべきではないかということが1点目。
もう1つは、博士人材のキャリアパスですが、民間企業でやはり雇ってもらいたいということはそのとおりですが、そのために、まず公務員でそうした人材をちゃんと使えるキャリアパスを考えるべきではないかと思います。これもまた、アメリカで同じような制度がありますが、産学連携の研究プロジェクトを目利きする。要するに、採択するかしないか、幾らお金をつけるかを目利きする人材として、Ph.D保有者が大量にアメリカ政府では活躍しているという話があります。ですので、例えば文科省の職員として、あるいは経産省の職員として、産学連携の研究プロジェクトをちゃんと理解して、採択するかしないかを審査するような人材として、まず博士号取得者を大量に雇用して、それが当然、企業へも還流していくと、そうしたようなキャリアパスを考えるべきではないかと思います。
以上です。
〔土居部会長代理〕ありがとうございました。
また、オンラインで4名の御発言をお受けしています。時間を大幅に超過しておりますので、誠に申し訳ございませんが、オンラインでの御意見につきましては極めて簡潔にお願い申し上げます。堀委員、上村委員、黒川オブザーバー、宇南山オブザーバーの順で御発言をお願いいたします。
まず、堀委員、いかがでしょうか。
〔堀委員〕すみません、では簡潔に。
義務教育についてです。公立小中学校の学級規模ですが、コロナ対策で一時的な対応は必要であると思うのですが、恒久的な対応はやはり別であると思っています。規模が、少人数であればあるほど質が良いとは言い切れないと思いますし、エリアによっても違うと思いますので、そこはメリハリが必要であると思っています。
また、負担感の大きいものを見ますと、保護者、地域からの要望等の対応などありますが、こうしたものは民間企業のクレーム対応であるとか、あるいは教育的な要素もありますが、どのようなものが必要なのかをエビデンスベースで対応していく必要があると思っています。
外部人材の活用も必要ですが、私の知人で、皆様のように民間企業出身で、外資系企業でも働いた経験のある方が公立学校の教員になったときに感じていることは、業務の非効率化が非常に多いということで、それをかなり指摘しても、現場が今までと同じやり方しかできず、同じことをずっと繰り返すと。彼女は、なぜできないかがよく分からないし、そこを改革すべきであると言っても、現場の教員がなかなかそこに抵抗しているとの話を聞きますので、やはりDXは、デジタル化だけではなくて働き方の見直しも必要ですし、単純に人が増えれば良いのではなく、どのような人を増やしていくのか、戦略というか、メリハリが必要であると思っています。
また、ほかの委員からもありましたが、学校数が減っていないということも問題であると思いますので、統廃合を進めるなりして、エリアに応じた教育の質の確保ができるようにしたほうが良いかと思っています。高齢者施設と共有すればシニアの活用もできると思いますし、今までとは全く違う発想であれば、同じ人数であるとしても違う教育の在り方ができると思いますので、そこを検討すべきなのではないかなと思います。
ICTについては、これは賛成ですが、教員の能力差もありますし、外部化するだけではなくて、そもそも教員自身のICTスキルの研修などが必要なのではないかと思っています。
最後に、高等教育ですが、ポストコロナにおける大学教育で、修得単位数の上限、あるいは60単位の弾力的な運用と大学設置基準の柔軟化、これは大賛成です。ニューノーマル時代を見据えると、オンライン授業のメリットを生かしてデメリットを減らすことを検討すべきで、ほかの大学や海外の授業を受けられることもメリットです。一方で、大学で学ぶのはオンライン授業だけではないので、その質をどのように確保するかを検討していく必要があると思います。
本当に最後ですが、若手研究者の話です。先ほど中空委員がおっしゃっていたと思いますが、年齢というより、恐らく若手研究員は任期制が導入されているのでプレッシャーがあります。なので、研究業績をとなっています。恐らくこれは年齢だけの問題ではないので、逆説的に、若手研究者の処遇を良くするためにも、大学の人事・給与マネジメント改革をセットでしなければいけないという主張はそのとおりであると思いますので、そこは包括的に検討すべきであると思います。
以上です。
〔土居部会長代理〕ありがとうございました。
上村委員、簡潔にお願いいたします。
〔上村委員〕関西学院大学の上村です。
21ページのポストコロにおける大学教育ですが、今、対面が良いとか、オンラインが悪いといったことが言われていますが、こうした一面的な評価ではなくて、やはりアウトカムであり、学修効果の高い指標は何なのかといったところから検討すべきであると思います。ハイブリッドとか、ハイフレックスとかいろいろ出ていますので、様々な授業形態がある中で最も高い学修効果のものを選ぶということです。その意味で、オンライン授業の修得単位数の上限撤廃に賛成です。
学修効果が高い授業を選ぶには、学修効果を測定しないといけないので、IRによる教学データを活用して最適な授業形態を選ぶことが重要です。このIRデータは、就職活動にも活用できると思います。雇用形態はジョブ型に移行するので、学修履歴を蓄積して、インターンシップなどのマッチングに活用するということも重要になってくると思います。
また、教室の在り方の再検討は非常に重要です。今後、大講義室などが必要なのかどうか、Wi-Fiや電源設備をどうするのかということも考えながら、今後の設備計画を考え直すという意味では、大学設置基準の見直しに賛成です。
DXは大事ですが、より大事なのは、どうやって高い学修効果を得るべきなのか、得ることが正道なのかということで、常にその手法と目的を確認しないといけないと思っています。これは大学だけではなくて、小中高も同じであると思います。
以上です。
〔土居部会長代理〕ありがとうございました。
黒川オブザーバー、簡潔にお願いいたします。
〔黒川オブザーバー〕ありがとうございます。
それでは、私から1点だけ、博士課程修了者等の就職先の多様性の問題についてです。長期的な観点でいつもお話していますが、我が国にとって、どのような若者たち、次世代の人たちを育てたいかということを、いつも考えていましたが、先生方とのコンセンサスは、結局、一人一人が創造力を持って、応用力を持って、そして自分で考えて、自分のいろいろな問題について切り替えていく、そうした人を育てなくてはいけないのではないか、それが日本のためだ。これについては、先ほども言いましたように、皆様方、コンセンサスは取れていると思います。
私自身は、大学でどのように学生たちと接してきたかというと、特に研究指導の点では、学生たちがわくわく、どきどきして、自分で自分のテーマについて研究していくという習慣を身につけたら、もう大体、論文は完成できます。それは、結局、自分自身がそうだったからで、一番大事なことは、結局、わくわく、どきどきするという習慣づけをすることです。博士課程まで進んだ人ということは、どこかで喜びを感じているはずです。こうした経験をした人を、小中は少し難しいと思いますが、高校の先生になってほしいと思うのです。高校の段階で、そのわくわく、ときどきした喜びというものを若者たちに伝える、これがすごく大切なのではないかと思います。
そこで、お願いは今のことですが、博士課程の修了者の企業就職を勧めるべきであると、ずっとこのところ財審も言ってきましたが、高校のほうはどうなっているのか、どのぐらい高校の先生になっているかを調査していただくと同時に、私の意見としては、そこをもう少し考えてほしい、文科省にも考えてほしい、これが意見です。
長くなりました。失礼いたしました。
〔土居部会長代理〕ありがとうございました。それでは、御質問をいただいておりますので事務方より回答をお願いします。
〔岩佐主計官〕休業時点で、GIGAスクールがどれだけ役に立ったかという話ですが、基本は調達中で、ほとんどの学校で入ってくるのはもう少し後の時期になっています。ということで、マクロではそんなに利いていない。ただ、元からいろいろやっている学校も一部にあるので、そうしたところでうまく活用されていたという話は、全くなきにしもあらずということで御理解いただければと思います。
それから、大学の収入のその他の部分ですが、主には知的財産収入ですとか、出版に関係した収入を考えていただければよいと思います。
以上です。
〔土居部会長代理〕ありがとうございました。
すみません、冨田委員から御発言があるということで、手短にお願いいたします。
〔冨田委員〕申し上げたい点は義務教育についてです。
今日、5ページの表の下の部分で、福島県以下の少人数学級の多い県では、加配分を学級規模の縮小のために充てようとしているように見えます。それから、学校規模について、今日は学校施設の維持更新コストの最小化からお話がございました。手短に申し上げますと、増加を続ける基礎年金受給者には、制度の持続可能性を高めるためにマクロ経済スライドが導入されておりますが、児童生徒の減少が続く義務教育についても、学級規模及び学校規模に下限を設けるなどして、義務教育制度の持続可能性に配慮することが必要です。皆様、いろいろな御指摘がありましたが、いろいろな手だてでもって今の教員の問題を解消していくには、やはり高齢者の増と対称的な形で児童の減少に対応いたしませんと、制度全体がもたなくなってしまうと思います。
以上です。
〔土居部会長代理〕
それでは、次の議題に移らせていただきます。
中小企業、エネルギー・環境につきまして、渡邉主計官より御説明をお願いいたします。
〔渡邉主計官〕おはようございます。
それでは、資料に沿って御説明いたします。まず、中小企業です。
1ページ、中小企業の目標、基本理念の推移をまとめたものでございます。中小企業基本法は、制定当初、中小企業と大企業との間の経済的、社会的な格差是正、そして、中小企業の自主的な努力を助長して、中小企業の成長と発展を図ることを政策理念としておりました。99年の改正で、中小企業の多様で活力ある成長発展を目指すという方向に変更しておりますが、ちょうどこの時期に、事業者数、それから従業員数とも、それまでの増加傾向から減少に転じております。2013年の改正におきまして、地域経済の担い手としての小規模事業者に焦点を当てて、中小企業政策の再構築を図るとの観点から、小規模企業の活性化を明記いたしました。
次の2ページは、中小企業の概要でございます。我が国の企業の99%以上が中小企業で、8割以上が小規模事業者となっております。中小企業の従業員数は、全体の約7割を占め、付加価値ベースで見ると約5割強を占めております。業種別で見ますと、事業者数、従業員数ともにサービス業が最多となっております。付加価値ベースでは、製造業とサービス業がともに4分の1を占めてございます。
次の3ページと4ページは、中小企業の直面する課題の1つ目、新陳代謝の促進、すなわち事業承継の円滑化と新規創業の支援についてです。3ページ、図の3-1と図3-2は、中小企業の経営者の高齢化が進み、2025年に平均引退年齢である70歳を超える経営者の約半数が後継者未定であることを示しております。図3-4は、休廃業、解散件数が年々、増加傾向にあることを示しており、その理由として、図3-5、業績悪化に並んで後継者不足を挙げる経営者が多いことを示しております。なお、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、2020年の休廃業、解散件数は過去最多を更新する勢いで増加しております。
次に、4ページ、先の見込みのない生産性の低い中小企業が自主的に休廃業、解散することは、経済全体にとってはむしろ望ましいという意見もございますが、例えば優れた生産技術を持った中小企業が、後継者不在であるがゆえに休廃業等に追い込まれるとすれば、経済にとって損失は大きいと考えられます。こうした中小企業の後継者不足に対応する上で、第三者承継やM&Aを含む事業譲渡による事業承継をいかに円滑に実現できるかが喫緊の課題であると考えております。くわえて、図4-1、我が国の開業率は諸外国に比べて低い水準にございます。図4-2のグラフにあるとおり、起業家の数も年々、減少しております。新陳代謝の促進という観点からは、新規創業者支援の在り方も重要であると考えております。
事業承継や新規創業につきましては、予算面だけではなくて、税制、政策金融、マッチング支援といった制度などによって、総合的に支援する環境整備を行っているところですが、予算面でもさらに重点化する必要があると考えます。
次の5ページと6ページは、中小企業の生産性向上についての説明でございます。図5-1と図5-2に示されるとおり、中小企業と大企業との労働生産性における格差は拡大傾向にあります。中小企業の生産性の向上は引き続き課題であると考えます。
生産性向上のための設備投資等を支援する補助金として、図5-3にあるとおり、ものづくり補助金等が存在しますが、これらにつきましては、昨年の建議を受け、KPIを生産性向上に資するものに変更し、さらに補助要件に賃上げ要件を導入する等の見直しを行っております。
労働生産性向上にはIT投資が有効と考えられますが、図5-4のとおり、中小企業のIT装備率は大企業と比べて低いのが現状でございます。新型コロナウイルス感染症の影響により、在宅勤務やリモートワーク等の必要性が高まりましたが、図5-5で示されるように、多くの中小企業は対応できず、中小企業のデジタル化、DXの促進が喫緊の課題であることが改めて確認されたところであると思います。中小企業のデジタル化等を支援する補助金としてIT導入補助金がありますが、補助対象となる設備等を、真に中小企業のデジタル化等に資するものに重点化する必要があると考えております。
次に、6ページ、図6-1にありますとおり、企業規模と労働生産性との間には正の相関関係が認められます。他方、図6-2のように、中小企業を卒業し、中堅企業へと成長する企業数は例年300社前後にとどまっており、その大きな理由といたしまして、中小企業にとどまるほうが政府の支援策のメリットが大きいことが指摘されております。
基本法上の定義上、資本金または従業員数のどちらかの基準を満たしていれば中小企業として扱われることになっております。例えば、製造業であれば、資本金3億円以下、または従業員数が300人以下であれば、定義上、中小企業となります。図6-4の赤囲いは、資本金か、従業員数の基準のどちらか一方しか満たさない製造業の中小企業の数を示しています。図6-5のA社のように、大企業並みの多額の売上高がありながら、中小企業と扱われる企業も存在しています。
中小企業の法律上の定義の妥当性につきましては、税制等の取扱い等の観点から、長年、議論されていると承知しておりますが、予算の観点からは、基本法の定義に当てはまるからといって、機械的に中小企業向け補助金等の対象とするのではなく、補助金の政策目的を踏まえて、適切に補助対象の絞り込みを行う、支援を重点化していく必要があると考えます。例えば、今年6月末まで実施したキャッシュレス・ポイント還元事業では、大企業の子会社や課税所得の平均額が一定以上のものにつきましては、対象から外したという取扱いをしております。同様の絞り込み、限定を、ほかの予算措置についても検討すべきではないかと考えております。
7ページ、図7-3は、新型コロナウイルス感染症の影響で打撃を受けた中小企業への主な支援策、すなわち持続化給付金、家賃支援給付金、資金繰り支援の事業規模、支援内容、進捗状況等をまとめたものでございます。図7-1に示されているとおり、中小企業の多くが売上げを大幅に減少させる中、図7-2にあるとおり、政府の支援策に加え、裁判所の一部業務縮小などといった抑制要因も働き、倒産件数は低い水準にとどまっているところです。
8ページを御覧ください。今回の一連の支援策は、新型コロナウイルス感染症により我が国経済全体が深刻な影響を受けるという緊急事態への対応、言わば日本経済の止血措置として、危機時における中小企業の事業継続を支えた意義はあったと考えております。他方で、こうした支援策が長期化すれば、中小企業の新陳代謝を著しく阻害するおそれがあります。したがって、これらの支援策につきましては、中小企業がウィズコロナ、ポストコロナ社会の、いわゆる新たな日常に対応するための前向きな取組を支援するものへと移行していくべきであると考えております。こうした観点からは、持続化給付金と家賃支援給付金につきましては、来年1月の申請期限をもって予定どおり終了とし、資金繰り支援につきましては、リーマンショック時の対応と比較いたしまして、今般、大幅に拡充しているところですが、単なるつなぎ資金の提供といったことではなくて、新たな日常の下での中小企業の前向きな取組に対する、成長資金の提供といった支援へ段階的に移行していくことを検討すべきであると考えております。
続きまして、エネルギー・環境に移りたいと思います。
9ページを御覧ください。図9-1のグラフは、我が国の温室効果ガス排出量の推移、及び温室効果ガス排出量削減に関する、現時点における我が国が表明済みの主な国際的なコミットメントを赤で書いてございます。温室効果ガス排出量は、2014年度以降、5年連続で低下しておりますが、パリ協定における2030年に温室効果ガスのマイナス26%の目標を達成するためには、オイルショック後に実現されたエネルギー消費効率の改善と同程度の改善が必要となっております。
10ページを御覧ください。省エネ政策の推進に当たっては、規制的な手法が重要な役割を果たしていると考えます。省エネ法に基づくベンチマーク制度やトップランナー制度等の下で、エネルギー消費の効率化努力を継続していく必要があると考えます。予算面では、2012年にいわゆる温暖化対策税も導入し、省エネ、再エネ設備等の導入支援、省エネ等技術の研究開発実証事業への補助を大幅に拡充してきております。
次に、最後、11ページでございます。昨年の建議にもありますとおり、省エネ、再エネを民間の自律的かつ持続的な活動として根づかせていくために、その重要性について、国民への説明強化を通じて理解を得ていく必要があると考えてございます。また、予算措置につきましても、特に経済産業省と環境省が行っているエネルギー特会の事業につきましては、必要性、有効性、効率性、官民の役割分担等の観点から、民間の自主的な取組を促すものとなっているか、両省で事業の重複はないかといった不断の検証が必要と考えております。特に、温室効果ガス排出量の削減について、2050年カーボンニュートラルといった達成目標の前倒しということであれば、相当な技術面でのイノベーションや、経済社会構造の大きな変革が必要とされるということを踏まえれば、エネルギー特会事業のさらなる効率化、重点化は待ったなしであると考えております。
最後に、補助金以外の手段といたしまして、ESG投資をめぐるグローバルな潮流等を踏まえまして、事業者が持続可能な社会の形成に適応できるかどうかを投資家の方々が適切に判断できるような情報開示を進める。そうした環境整備を進めることによって、民間の投資資金の活性化や、民間資金の活用等の強化を図る必要があると考えております。
駆け足でしたが、以上です。
〔土居部会長代理〕ありがとうございました。
ただいまの御説明につきまして、皆様から御意見などを賜りたいと存じます。先ほどと同様に、ネームプレートを立てていただければと思います。また、テレビ会議システムを通じて御参加の方は、挙手ボタンをクリックしていただきたいと存じます。御発言につきましては、先ほどにも増して手短にお願い申し上げます。
それでは、今度は順番を逆にいたしまして、平野オブザーバーから順番にお願いいたします。
〔平野オブザーバー〕ありがとうございます。
中小企業関係と、それからエネルギー・環境、1点ずつ申し上げます。
まず、コロナ対策の融資制度についてです。これは、資金繰り対策から始まって、第2次補正では資本性の資金に進んで、当初の政策目的、すなわち企業の倒産増加、それから雇用を守るという意味からは成果を上げたと言ってよいと思います。民間の倒産率を見ていても、当初、3月ぐらいに予想したモデルは明らかに低い数字になっているということです。
ただ、問題は、やはりモラルハザードであり、これは借手、それから貸手、双方について問題があると私どもは思っております。それを回避するために、一体どうすればよいか。すなわち、緊急対応を恒常化させないようにするために何が重要かということで、2点、申し上げたいと思います。
まず、1つは、イグジットの時間軸を明確にするということであると思います。先ほどの資料でも、東日本大震災のときのイグジットはやはり相当時間がかかっているわけですが、これが先ほどから話題になっている、この間の企業の新陳代謝等を一方では阻害する要因になっていたということは否めないだろうと思います。したがって、例えば、今回、無利子・無利息3年間の融資が行われておりますが、この3年間経ったところでこれからどうするかということを考えるのではなくて、もう今から3年間という期限を明確に示して、貸手と借手、双方で対応を協議すべきであると思います。
2点目、仮にこうした制度を続けていく上でも、対象となる融資、あるいは施策を絞り込むべきであるということです。ウィズコロナ、ポストコロナでの持続可能なビジネスへの転換を意欲的に図ろうとしている企業も数多い。ただ、一方でそうでないところもあるわけですので、そこの見分け方をどのようにつくっていくのか、制度的につくり込んでおく必要がありますので、これがもう一つ重要であると思っております。
そうした脈絡で言うと、新陳代謝を促すという意味では、事業承継、場合によっては廃業、この制度を明確につくっていくことも極めて重要であると思います。要するに、体力を全部使い果たして、不幸な廃業に追い込むのではなくて、余力があるうちにどのように次の時代、世代に継承するか、あるいはやめるかを考える必要があると思います。
次に、エネルギー・環境ですが、先ほどもお話があったように、仮に菅政権が、世の中、世界の大きな流れに沿って、2050年のカーボンニュートラルを打ち出すということであれば、これは明らかにパラダイムシフトです。従来、省エネ、効率化は日本の得意技であったわけですが、これに加えて、脱炭素化に向けたイノベーションという政策テーマを明確に掲げて、それを促進する政策と財政上の措置を打ち出すべきであると思います。例えば、革新的な技術開発への投資は、収益化できるまでに相当時間がかかります。リスクも高い。したがって、民間だけではやり切れないところがあるので、重点分野を絞り込んで政府研究開発投資を拡充させていくなど、これまでとは少し違う形での政策をまとめていくべきであると思います。
以上です。
〔土居部会長代理〕ありがとうございました。
小林慶一郎オブザーバー、お願いします。
〔小林(慶)オブザーバー〕私は、中小企業政策のコロナウイルス感染症対策について1つ申し上げたいと思います。
今、平野オブザーバーからお話あったようなことですが、資料の8ページには、ウィズコロナ時代への新たな日常に対応した取組をやる企業に支援する、移すべきであると、これは全く賛成です。
そこに関連するのは、まずビジネスモデルを転換するということと、関連して労働移動を高めていくということと、債務の削減ということだろうと思います。ビジネスモデルを変えていくということは、これは平野オブザーバーがおっしゃったように、3年程度の時間軸で、それまでに、3年でそのビジネスモデルを変える。ウィズコロナに対応した形に変えるということを、今、計画して、3年で実行するという指導というか、プレッシャーを金融機関、あるいは政府から事業者にやってもらうべきではないか。
その際、コロナ感染症はこれから3年以上、数年以上にわたって続いていくという前提を置いた上でビジネスモデルを考えなければいけないということ。それから、先ほどのグリーンリカバリーのような話ですが、長期的に二酸化炭素の排出を減らしていくということも、その際の視点に入れていくべきではないかと思います。
そして、3点目に、債務の整理については、これから1年後、2年後には大きな問題になってくると思います。今のうちから債務整理の制度を設計して、その際には信用保証の弁済など、あるいは金融機関の資本不足のような問題が生じるでしょうから、そこは財政的な措置を事前に用意して、準備をするべきではないか。要するに、資本注入とか、信用保証協会への補助金というものを事前に準備して、処理をむしろ加速する。必要な処理は早くできるようにするという体制をつくっておかないと、財政措置ができていないと、問題を先送りするというインセンティブを与えてしまいますので、むしろ債務処理は早くやるという姿勢を政府が示すべきではないかと思います。
以上です。
〔土居部会長代理〕ありがとうございました。
神津オブザーバー、お願いいたします。
〔神津オブザーバー〕ありがとうございます。
中小企業に関して意見を申し述べます。中小企業の生産性向上を図る取組自体が不可欠であるとともに、コロナ禍以前から、もともと構造的に生じている我が国の人口減少、デフレの状況を踏まえますと、より生産性が高く、賃金が相対的に高い優良企業に収れんさせていくことに目を向けていく必要があると考えます。適切な形での中小企業の再編が価格の上昇につながり、経済の好循環を生み出すことにつながると思います。
そのためには、国がしっかりとした雇用と生活保障のセーフティーネットを担保した上で、責任を持って導いていく必要があると。その前提の上で、手短に各論について申し述べます。
まず、新陳代謝の促進における雇用維持や人材育成の予算措置です。昨年は、年間4万者以上の企業が後継者不足等を背景に休廃業、解散をしたわけですが、このうち約6割は黒字企業です。中小企業の事業継承の円滑化や、新規創業支援、新陳代謝促進に向けた予算を重点化するとされているわけですが、その際には、技術を担う従業員の雇用のセーフティーネット、そして、新たに技術を身につけ、磨いていくための人材育成に向けた費用などの予算も措置すべきと考えます。これまで培ってきた貴重な経営資源を引継ぎ、さらに発展させていくために不可欠と考えます。
次に、補助金等に関してですが、ものづくり補助金等について、KPIに賃上げの要件を導入したことは重要と認識しています。一方で、申請書類や手続の簡素化、支援窓口のワンストップ化のさらなる推進等の事務負担削減策も検討すべきと思います。あわせて、制度、施策の周知、広報なども徹底する必要があると思います。
IT導入補助金等については、真に中小企業のデジタル化、デジタルトランスフォーメーションに資するメニューとしては、設備投資だけでなくて、人材の確保、育成に関わるものも含めるべきではないかと思います。
最後に、コロナ禍における企業への給付支援、資金繰り支援についてですが、緊急経済対策として実施された持続化給付金等については、予定どおり終了というだけではなくて、感染症の状況や経済動向に応じて柔軟に対応できる余地を残すべきと考えます。資金繰り支援について、支援内容を変更する際には、資金のショート等による倒産や雇用不安を招くことないよう、十分な経過措置を講ずべきではないかと思います。
以上です。
〔土居部会長代理〕ありがとうございました。
大槻オブザーバー、お願いいたします。
〔大槻オブザーバー〕ありがとうございます。
既に話の出ている中小企業とESGについて1点ずつです。コロナ禍でこれだけ中小企業の倒産が少ないことは、これはもう本当に支援のたまものであると思います。一方で、金融機関側から見ると、コロナの前から不良債権とその予備軍が54兆円もありまして、それにもかかわらず、これだけ維持できるということは、良いことでもある一方で、ひょっとしたら長い延命を図ってしまっているのかもしれないということを懸念しています。そうした企業に対する現状維持の支援は、やはり適切なタイミングで適正化を図るべきであると思いますし、今までお話も出ましたが、業態転換に必要な教育、それから人材の流動化の拡大、また、M&Aの促進といったことを積極的に推進できるような仕組みづくりが必要であると思います。そうしないと、やはり業界が変わっていく中で、成長業界の恩恵にあずかれないことを考えると、そこで働く方々にとってもプラスにはならないのではないかと思っております。
それから、ESGについてですが、最近、個人投資家もESGに関して非常に興味を持っていますし、投資から、ひいては環境に配慮したアクション自体にもつながっていくものと期待しているのですが、今、非常にESG関係、特に環境に関しては指標がまちまちで、それを判断する指標があまりにもまちまちなので、もしかしたら、これは政府としての方向性を示す、あるいは何らかのガイダンスを示すということもあり得るのではないかと思っています。
以上です。
〔土居部会長代理〕ありがとうございました。
宮島委員、お願いいたします。
〔宮島委員〕キャッシュレス政策でもそうでしたが、今、中小企業とはいっても、ある程度、政策によって個別対応がなされていると思います。今、中小企業とは何なのかという定義を、もう1回し直すタイミングにもあるのではないかと思います。その際には、新陳代謝を促す、ゾンビは許さない、生産性を上げるという3点で、どういう形で全体を押し上げていくかということを、もう1回考え直すタイミングであると思っております。
コロナに関しても、皆様のおっしゃるとおり出口をきっちりなのですが、とにかく、先ほどの教育もそうですが、コロナを機に、今まで進めるべき、進めてきた改革が、僅かでも緩んだり、後退したり、逆行したりすることがないように進める必要があると思います。
〔土居部会長代理〕ありがとうございました。
広瀬委員、お願いいたします。
〔広瀬委員〕ありがとうございます。
中小企業政策の基本は、あくまで頑張っている事業者さん、あるいは意欲的な事業者さんを応援することは、これからも堅持していくべきであると思います。
そこで、3点、申し上げたいと思いますが、課題の1つである事業承継の問題については、これまで制度面とか、予算面とか、税制でいろいろな有効な政策を講じてきて、それなりの効果はあったのではないか。今後も、もちろんメリハリ、あるいは重点化をしなければいけませんが、そうした政策について、当面、維持をしていくということが必要なのではないかと思っております。
2つ目の課題の生産性向上の問題ですが、確かに設備集約的な製造業は規模との関係、生産性はありますが、労働集約的な小売業とか、飲食業は必ずしもそうとは言えないのではないか。むしろ、規模と生産性の関係で一番大きなものは、規模との関係でいきますと、やはりデジタル化ではないか。したがって、中小企業のデジタル化、これをどういうふうに進めて生産性を上げるか。ある程度そこに焦点をこれから絞っていったほうが良いのではないかと思っています。
それから、3点目、コロナとの関係ですが、確かに今、緊急時ですから、これを平時に戻すタイミングは非常に難しくて、慎重にやらなければいけないところもありますが、当然のことながら、政策的な判断と同時に、実態といいますか、データといいますか、例えば失業者の数や倒産件数の実態と、ある程度マクロ的な政策判断、この辺のバランスをどのように取って間違いないようなタイミングにしていくか、こういうことが必要なのではないか。
それから、エネルギーで1点だけ。10ページの上段の左と右の関係ですが、これは、どちらかが重要ということではなくて、むしろセットものであると思っています。日本は、今、省エネの最大の国になったわけですが、これはまさに左と右をパッケージで進めてきた効果ではないか。したがって、これから2050年にCO2ゼロにするわけですが、これは大変なことです。中身は当然のことながら違っていきますが、左と右のパッケージをうまく連動させていくということでやっていかないと、CO2ネットゼロはなかなか大変なことですので、ぜひ仕組みとしてはこれをパッケージで、中身は当然のことながら変えていくということで進めていただきたいと思います。
以上でございます。
〔土居部会長代理〕ありがとうございました。
武田委員、お願いいたします。
〔武田委員〕ありがとうございます。
中小企業とエネルギー・環境について、1点ずつ申し上げます。
1点目ですが、中小企業の予算に関しては、皆様からもございましたように、危機時の中小企業支援という形から、新陳代謝や生産性向上などの構造問題へ対処するための支援といった形に、ある程度時間をかけて、軸足を移していく必要があるのではないかと思います。応援や支援を打ち切るというよりは、応援や支援の中身、質を変えていくということではないかと思います。
2点目、エネルギー・環境についてです。既にこちらも出ていますが、カーボンニュートラルを目指すこと、これは大きな目標になると思いますが、それを実現するためには、エネルギーの供給側の議論にとどまらず、どう使っていくかというイノベーションの観点、これが極めて重要と思います。例えば、地域でのエネルギーマネジメントをどのようにしていくか、この辺もデジタルをうまく活用することの重要性がますます高まるのではないかと考えます。
以上です。
〔土居部会長代理〕ありがとうございました。
進藤委員、お願いいたします。
〔進藤委員〕私は、エネルギーについて一言申し上げたいと思います。
今回のコロナ禍で、世界恐慌のような状況で経済活動が抑えられていることによって、CO2はどれぐらい減るのかと、IEAが試算しました。2、3か月前の試算ですが、全世界で8%の減少です。2050年までに80%、あるいは100%減らすとなると、これを10回以上経験しなければいけない。それぐらいのマグニチュード、規模であるということです。
したがって、省エネはやらなければいけないのですが、インクリメンタルに省エネを積み重ねれば実現できるということではなくて、エネルギーの転換をしないといけないわけです。その転換のためには、非連続なイノベーションが必要であり、例えば鉄鋼業で言えば、現在、カーボンで還元して鉄を作っていますが、これを水素で還元して水が出るようにする必要があります。そのためには安価な水素を大量に生産するもう一方の仕組み、もう一方の産業が必要です。今、経済界も、チャレンジゼロということで、各業界の課題、研究開発テーマ、イノベーションテーマを総ざらいそて取り組んでいるわけですが、今日の施政方針演説で2050年ゼロ、ニュートラルでいくということであれば、これは国策として相当の財政資源、財源を入れないとできないであろうと、私は思っています。
したがって、ここは省エネ、そして規制的手法の強化という議論になっていますが、それを超えた、もっと大きな枠組みでやっていかないと、2050年実質ゼロは達成できないということを頭に入れて取り組まなければいけないと、こう思います。
〔土居部会長代理〕ありがとうございました。
遠藤委員、お願いします。
〔遠藤委員〕私も、エネルギーに関しまして1点だけ申し上げます。
日本のエネルギー効率は、先進国と比較して非常に高いわけです。これまでの企業や、産業界の不断の努力によって、これは達成されたものでございます。その際に、省エネなどの予算や税制措置というものも一定の役割を果たしてきたと考えております。
少し皆様とは違うかもしれませんが、現在、省エネや再エネの導入のインセンティブは、図表にも示されていましたが、CSRの文脈や厳しい投資家の姿勢を背景にした投資コストの文脈によって十分発揮されているものと思われます。ですので、財政による過度な誘導ということは、見直す方向性で検討されるべきではないかと思っております。
温室効果ガスの排出の問題についてですが、こちらは、削減のために再生可能エネルギーだけが必要であるという誤解の下で、財政措置が行われることがないように御検討いただきたいと思っております。例えば、既に再エネの誘導の政策は十分に打たれてまいりましたし、炭素の有効活用とか、もっと言えば原子力の有効活用であるとか、ゼロエミに向かうという方針の下でいろいろ採用される電源は、エネルギー安全保障上の問題もあって多面的に考えられるべきであると思っております。そうした総合的な判断が必要と思われますので、一点集中主義のような財源配分はないように御検討いただければと思います。
〔土居部会長代理〕ありがとうございました。
神子田委員、お願いいたします。
〔神子田委員〕私は、5ページの中小企業の課題のデジタル化、DXについて発言があります。もちろん、これは必要なことですが、重要なのは、個々の中小企業、しかも小さなレベルの企業で、デジタル化、DXとは何ぞやということがちゃんと腹に落ちてくれるかどうかであると思います。この間の流域治水のところでも言いましたが、国の中央で政策を考えても、末端の市町村では、例えば様々な事業を組み合わせて、より有効に治水に当たるという話は、何をやってよいか分からないということになると、結局、政策の意図どおりに予算が使えない。これに関しても、国が具体的に、いわゆるDXとは何をするのか、何のためにやるのかを分かりやすく示して、かつ商工会議所や商工会等を通じて、それぞれの中小企業にきちんと政策意図が届いて、正しく補助金を使ってもらうことが大事なのではないか。
もう1つは、キャッシュレスの推進を進めるべきではないかということです。去年、消費税の対策でキャッシュレスのポイント還元が始まったために、一時的なことで終わってしまいました。しかし、今、日本全体でデジタル化を進める上でキャッシュレス決済は重要な項目なので、ぜひ、もう一度、全国的に、中小の末端までキャッシュレスが進むような予算編成をお願いしたいと思います。
以上です。
〔土居部会長代理〕ありがとうございました。
中空委員、お願いいたします。
〔中空委員〕ありがとうございます。
中小企業から1点と、エネルギー・環境で1点、お話したいと思います。
中小企業に関しては、皆様もおっしゃっていましたが、基本的に財審での議論としては、キーポイントは線引きであると思っています。何となく農業と同じ問題があると感じるのは、基本、補助金があることによって、競争力や収益性が阻害されていると思っているので、きちんと線引きをして、資金を投入していく必要があると考えます。
また、エネルギー・環境ですが、皆様から既にお話がありました。特に、広瀬委員と進藤委員のおっしゃっていたことは、事業会社の涙ぐましい努力の片りんに聞こえて、とても心を揺り動かされたわけですが、遠藤委員が言ったように、財政措置をどうするかということは慎重に考えなければいけないだろうと思います。
一方で、私は欧州の金融機関にいて、欧州の人たちと話をすると、彼らの前のめり感は、この日本における説明ページを見ているだけでは温度差があり過ぎてこれでいいのか、と思います。
世界を見ると、基本的に欧州は前のめり、中国も相当、前のめりぎみです。もし、バイデンが勝ったとして、これからアメリカもこちらのほうに行くとすると、この数ページの日本のESGの発想だけでは到底生ぬるいという話になると思っています。今、投資家は、ソブリンのESGの観点をどう評価するかというところまで行っています。そうすると、ESGの観点で日本を見たときに一体何なのかという話に、当然なると思っています。なので、私は、日本はどうするべきかということを、もう少し政府が前面に立って、ESGに関してはこうしていくというものが必要なのではないかと思います。言うだけ言って、はい、民間任せと言っているような気がしてならなくて、これではESGの発想でうまくいくものもいかないのではないかと思っています。潮流だけではない、本当の本音のところでお金を動かしていくという基本観が必要であると思います。
以上です。
〔土居部会長代理〕ありがとうございました。
田近委員、お願いいたします。
〔田近委員〕期せずして、中空委員の続きの話をしたいと思いますが、私からは1点、今までここで議論を聞いていて、分野横断的な議論が重要で、もっとするべきではないか。それが我々の役目である、財務省、大臣、ひいては政府へ重要であるとインプットすることであると。財審としては、そうした分野横断的という点で言えば、もちろん財政健全化ということは言うまでもない。
7ページを開いて、今日、主計官の御説明で、非常に分かりやすい、よくできていた資料であると思いますが、分野横断的ということでコロナ対策なのですが、今日、見せていただいたのは中小企業ですが、経産省の予算と財務省の予算ということですよね。持続化給付金、家賃給付金も予定どおり終了することには、私も賛成です。
ただ、御指摘になっていないのは、分野横断的と言っているのですが、持続化給付金を始めたときの大混乱です。これは、最初、事業所得に対して適用するということでやったが、蓋を開けてみたら個人事業主はいろいろな方がいる。私は、雑所得まではそうかなと思ったら、給与所得まで入ってしまった。そうしたことで枠を広げたら、実態的にそこで詐欺まがいのことも起きた。これも、言葉は悪いですが、経産省に任せていて、できなかったということを我々が証明したようなものですよね。それから、特別定額給付金も私が説明するまでもない。
だから、コロナ対策に関しては、今後も考えて、主計官の方が皆並んで考えてもらうように、我々も一緒に考えるということですが、やはりコロナ対策の全容に対して財審がどう取り組むのか。執行も含めて、そうした体制が必要である。
それから、中空委員につながりますが、今日の資料、環境の9ページ、先週、事務局の方にこの資料を見せていただいて、私も2月に財審でEU本部とドイツに行かせてもらって、EUに行ったら、もうとにかくクライメイトニュートラルとデジタル対策、それしか言わない。そうしたら、中国が2060年にカーボンニュートラルと。ああ、そうだね、日本もということを言っていたら、その数日後に日本も2050年にカーボンニュートラルにすると。
次に申し上げたいのは、11ページ、外交のときも申し上げたのですが、SDGsの取組は部分的なのか。これなどは、SDGsの中で本命ですよね。それをインプリメントする一つの仕方として、企業の会計基準もあるし、中空委員のおっしゃったESGもある。
ここまで来ると、この議論はもう分野を超えて、財審総がかりでやらなければいけないということで、コロナの問題と環境の問題を申し上げましたが、このような時代になってきて、つまりグローバル化して、デジタル化した中で、我々の取組も、財政健全化のほかに、皆でスクラムを組んで向かっていく、そうした立てつけが必要なのかなと思います。そうした意味で、最後の11ページの資料、ESG、企業のディスクロージャーのガイドラインも書いていただいて、非常によかったと思います。
以上です。
〔土居部会長代理〕ありがとうございました。
末澤委員、お願いいたします。
〔末澤委員〕私も2点、中小企業と、エネルギー・環境について1点、申し上げます。
まず、中小企業政策です。これは、毎年取り上げていますが、私は、少し言い方はよろしくないかもしれませんが、中小企業は、マクロ的に申し上げると、国内市場に依存した家内制工業、主に小売り・サービス業の集合体的なものであると思います。なぜかというと、今日、お示しいただいた資料でも、1ページの図1-2を御覧いただくと、中小事業所数のピークはいつかというとバブル期です。その下にありますが、中小事業所の従業者数は、95、6年、日本の生産年齢人口のピークとリンクしています。また、5ページ目を御覧いただくと、左上のグラフ、中小企業の労働生産性、赤が大企業、中小企業は青です。これを御覧いただくと、大企業はリーマンショックのときにどんと落ちています。つまり、大企業はグローバルの景気循環とリンクしていますが、中小企業は一緒なのです。そうしたことがもともとある。
この状況で放っておくと、先ほど申しましたが、人口はどんどん減っていきます。少子高齢化が進むと、相当厳しいことになるのは間違いないです。これは、中小企業の好き嫌いとは関係ない。残すとなると、前段の文教の問題と近いですが、やはりICT化と、統合、M&A等を含めた後継者問題を解決して、日本経済、日本国にとって必要な企業を残し、伸ばしていく。もうこれしかないと思いますので、基本的には、マクロ的にそうした政策運営をしていただくしかないと思います。
また、エネルギー・環境についてですが、今日、皆様おっしゃっていますが、やはり11月3日のアメリカの大統領選、また、議会選、この動向で大きく変わっていく。民主党は、従来、リベラル派を中心に、サンダース上院議員とか、オカシオコルテス下院議員がグリーンニューディールという言葉を使っています。但し、今回、ジョー・バイデン氏は、全くグリーンニューディールという言葉を使っていません。テレビ討論会でも、トランプ氏が追及しても、いや、私は使っていないと。
ただ、ジョーのクリーンエネルギープランというものが昨年6月に出ていまして、これは10年間で国費を1.7兆ドル使うと。それが、最近、変わりまして、4年で2兆ドルです。だから、倍以上になってしまった。結果的には、予算規模からいうと、グリーンニューディールと全く一緒、ないし、それより多くなっています。4年で2兆ドルということは、1年間で5,000億ドル、日本円でいいますと50兆円です。それで、2050年のゼロエミッションを達成するという計画なのです。日本が同様の対応をする場合、人口で見たら、50兆円の3分の1の15兆円とか使っていくのですかという話になるぐらい大ごとです。
私は、結果が出るには2、3週間、場合によったら年明けになってしまう可能性があると思いますが、その結果次第では相当、本腰を入れて対応しないと、これは大変なことになると思っています。
以上でございます。
〔土居部会長代理〕ありがとうございました。
佐藤委員、お願いいたします。
〔佐藤委員〕ありがとうございます。
私も、中小企業関係で3点ほど簡単に。まず第1は、今回、コロナ禍で、7ページにありますように、様々な支援策が中小企業、あるいは個人事業主に講じられていますが、やはり支援のデジタル化というか、オンライン化といいますか、ワンストップであるべきと思うのです。窓口がまるで違う、結果として高い委託費を民間事業者に払っているわけだから、ある意味、効率も悪いわけであり、緊急時において支援策はワンストップ化させる。それは、平時においても、企業の再編成、事業の再編成などにも使えるということです。
それから、3ページで新陳代謝の話がありますが、この国は企業を続けることにはいろいろな支援がありますが、やめることに対する支援がないのです。例えば、廃業したくても借金がありますという人はどうするのですかとか、家を担保にしている事業者もいるわけですから、やはり持続化、継続に対して支援する、事業の継続に支援するなら、廃業にも支援してあげても良いだろう。もちろん、単に補助金を出すだけではなくて、M&Aを促すとか、事業譲渡を容易にするとか、これはキャピタルゲイン課税にもかかる話であると思いますが、その辺りを見直していくということはしかるべきかと思います。
それから、先ほど田近委員が分野横断的と言ったので、そうであると思ったのですが、中小企業というと経産省の話をしているものだから、製造業だ、サービス業だという話になりますが、実は最大の中小企業は介護であり、薬局であり、病院なのです。なので、これは実は医療費問題でもあるということ。日本の医療費や介護費をばか高くしているのは、やはり彼らが中小、零細だからです。なので、まさに社会福祉の分野に、こうした中小企業対策が講じられてよいのではないかということ。
最後に一言だけ、エネルギー特会について簡単に申し上げます。10ページですが、こちらは行政事業レビューの常連でもありますので、事業の中身についてはかなり精査いただいたほうがよろしいかと思います。かなり怪しいものがたくさんありますので、よろしくお願いします。
〔土居部会長代理〕ありがとうございました。
木村委員、お願いいたします。
〔木村委員〕御説明、ありがとうございました。
私も、中小企業に関連して1点だけ、コロナ対応の支援策に関してですが、おっしゃるとおり、支援の長期化が新陳代謝を阻害するおそれがあるということで、出口政策を示していくということは大事なことであると思っています。そうした観点から、持続化給付金や家賃支援給付金は予定どおり終了すべきと御指摘になっているのでしょうが、そこまで明確に言い切ってよいのかという気もしています。
倒産件数、確かに抑制されていますが、休廃業とか、解散は過去最多の勢いですし、これは事業承継の問題もあるんでしょうが、依然として中小企業に厳しいのではないか。多くの中小企業は、漫然と経営しているわけではなくて、これまでなくならなくてもよい企業が休廃業や解散を余儀なくされていて、なおかつ、これまで支援とかで持ちこたえてきた企業も、これからコロナが長期化していくと、それこそもたなくなる企業も結構あるのかなという気もしています。今後の状況を踏まえた、柔軟な対応ができるような表現も考えてよいのかなと。今回、特に言及なかったですが、雇用調整助成金とか、企業支援のトータル的なパッケージとして、政府としてどうしていくかという全体的な姿を示すということが、今後、大事なことではないかと思っていますので、そうした観点からの御検討もお願いしたいと思っています。
以上です。
〔土居部会長代理〕ありがとうございました。
それでは、テレビ会議システムを通じて御発言を求めておられる方、こちらで把握しているのは上村委員と横田委員です。挙手ボタンを押していながら、こちらで把握できていない場合は、チャットでお申出などしていただければと思います。
それでは、時間、押しておりますので、手短にお願いいたします。上村委員からお願いいたします。
〔上村委員〕関西学院大学の上村です。
11ページの省エネ・再エネ関連予算についてですが、何度か行政事業レビューを担当した経験で話をします。現状の予算措置による事業は、環境省と経産省にまたがって事業を展開されていますが、個々の事業を集めて全体を見たときに、なぜその事業はその金額だけ必要なのかという根拠がよく分からないことがあります。とにかく目的を達成するために、何でもやるのだということになっていないかが気になります。
個々の事業には、1トン当たりCO2削減コストが示されていますが、これが全体的、横断的に評価できる一つの指標になっています。この削減コストが低いものから高いものまで並べると事業の優先順位を決めることができるはずで、その費用対効果を考えると、コストの低い事業から優先的に展開するということが重要であると思います。あまりにコストの高い事業は見直すべきであると思います。そうした考え方で、全体の事業の組立てがなされているかどうかの検証が必要であると思います。
もちろん、個々の事業で事業規模が異なるということとか、削減効果がすぐに出ないということもありますし、事業をやっていると削減コストが変化するということもあるので、単純に並べることはなかなか難しいのですが、それでも優先順位としては非常に重要ですし、国民への説明も強化できると思います。
以上です。
〔土居部会長代理〕ありがとうございました。
横田委員、お願いいたします。
〔横田委員〕ありがとうございます。横田でございます。
中小企業者支援についてです。前向きな企業にサポートしていくことに、重点的にやっていくことは大賛成ですが、前向きの定義ですよね。私の中では3点セットであると思っていまして、新業態、サービス提供手法の転換はもちろんですが、デジタル化、それに加えて柔軟な働き方をセットで組み入れているかが大事なのではないかと思います。先ほど他の委員が、国としても中小企業のサポートのトータルパッケージをということをおっしゃっていましたが、中小企業側も同じであると思っています。デジタル化のために装備品を買うだけでは使いこなせませんし、その上で、これから雇用調整助成金が期限を迎えて、フルタイムの雇用維持が難しくても、週3、4日は雇用を維持し、他の時間で他のデジタル化が進んでいるところで学んで、それを本業のほうに生かすなど、中小企業側の人材の生かし方とデジタル化、全てをセットで計画を立てているところに、サポートをしていくということが大事なのではないかと思っております。
以上です。
〔土居部会長代理〕ありがとうございました。
このほか、堀委員にはチャットで御意見をいただいております。こちらで承りました。
ここで、この議題を終わりにいたします。残り2分でお約束しております時間ですが、誠に申し訳ございませんが、もう1つ、防衛についての審議がございます。時間を超過して申し訳ございません。御予定がございましたら、適宜、御退席していただいて結構でございます。
申し訳ございませんが、次の議題に移らせていただきます。
防衛につきまして、渡辺主計官より御説明をお願いいたします。
〔渡辺主計官〕防衛を担当しております渡辺と申します。簡潔に御説明をしたいと思います。
まず、2ページ目ですが、我が国周辺の安全保障環境をまとめております。北朝鮮、中国、ロシアとありますが、パワーバランスの変化が加速化、複雑化しておりますので、より重大な事態へ発展していくリスクをはらんでいる状況にあるということを申し上げたいと思います。
3ページ目を御覧ください。こうした安全保障環境を踏まえまして、現在の中期防衛力整備計画では、令和元年度から5年間の防衛関係費につきまして、25兆5,000億円を目途とすることを規定しております。近年の予算は、下にありますように増加傾向にございます。
4ページ目を御覧ください。この中期防におきましては、防衛関係費を適切にマネジメントする観点から、5年間の新たに契約する事業の総額17兆1,700億円程度を新たに規定しております。
これを踏まえまして、現在の状況を御説明したのが次の5ページ目になります。近年は、新規後年度負担額が歳出化経費、これは既に結んだ契約に基づく支払いですが、これを上回っておりまして、後年度の支払い額が累増していると。これがあまりにも増えますと、直近の状況を予算に反映する余地が狭まりますので、調達の効率化、合理化などを徹底することが求められると、こういう状況でございます。
6ページ目を御覧ください。これまで総論的なことを申し上げましたが、若干、各論に属することを申し上げたいと思います。宇宙、サイバー、電磁波という3つの領域は、近年、非常に重視されている分野でありまして、これまでの安全保障の在り方を根本から変化させると言われております。資質的な変化が迫られているということを認識することが予算編成においても重要かと思っております。
次の7ページ目は、人口動態ですが、申し上げたいのは1点だけです。支え手の確保が課題になりますが、自衛隊もその例外ではないという点でございます。
次の8ページ目を御覧ください。今回、人口が減少する、宇宙、サイバー、電磁波の新規領域での対応が必要になってくる。一方で、資源は限られている。ヒト、モノ、カネ、モノの中には産業基盤も入ると思います。その観点から、ここにありますように組織・人材、防衛装備品、財源確保、この3つについて取り上げたいと思います。
10ページ目を御覧ください。まず最初に、人材活用について御説明を申し上げます。課題1.2.と書いておりますが、1.が量的な問題です。2.が質的な問題です。新規採用の問題、中途採用の問題、あるいは人材の活用の問題、こうした問題がございます。後ほど申し上げますが、この問題を放置したまま装備品を調達いたしましても、有効な対応ができるのかという懸念を持っております。また、財政上も、不必要な経費を支出することになるのではないかという懸念がございます。
11ページ目を御覧ください。これは、組織・人材についての現状を説明したペーパーになります。自衛官の定員は、近年、25万人、実際の人員は23万人で推移しております。年間、約1万5,000人の新規採用を行っておりまして、来年度予算要求では1,500人強の増員を求めております。採用年齢の上限の取組などの施策を打っておりますが、今後も人口の減少は見込まれるという状況にございます。
次の12ページ目を御覧ください。新規採用の実態です。現在、全国50か所で、2,400人強の職員が、年間約9万人の応募者を確保しております。しかしながら、応募者数は2割減の状況にあります。こうしたことは日本だけではなく、米軍でも同様の事態が起きております。例えば、アメリカ陸軍では採用目標数割れが発生しておりますが、注目すべきであると考えておりますのは、米軍は、工業時代における人員配置システムから、情報化時代における市場ベースの人事モデルへと移行しているように、状況の変化を明確に認識しているということです。
次、13ページ目を御覧ください。中途退職についての現状です。現在、約5,000人の方が中途退職されておりますが、10年間で4割増加しております。先ほど1万5,000人の採用と申し上げましたが、3分の1に相当する方が辞めていることになります。資格が必要な方が約3割、しかも、かなり早めに辞められている方が大半を占めていると、こうした状況にございます。
14ページ目は、中途退職の続きです。資料の詳細は割愛したいと思いますが、人口減少なども考えますと、新規採用をやみくもに頑張るというよりは、まず既存の人材をきちんと活用できるように、退職の抑制、そして組織文化の抜本的な対応などが必要ではなかろうかと思われます。
15ページ目です。こちらは、先ほど申し上げた宇宙、サイバー、電磁波といった領域の方々についての現状です。簡潔に申し上げまして、こうした方に特化した採用ですとか、活用の方法は今、制度的に特別なものはない。今後、この方々は、陸、海、空共通の基盤であると同時に、日本経済にとっても重要な方々であると考えております。
以上をまとめましたのが16ページ目です。現在、下の図にありますとおり、まず採用いたしますと、適正と希望を聞いた上で陸、海、空に分けまして、一定の職種でずっと育成がされていくということですが、宇宙、サイバー、電子、といった分野は、むしろ組織に横串を通していく、しかも適正な方を優先的に配置していく、そうした部分ではなかろうかと思います。組織の柔軟性を求める文化も一定程度でございますので、こうした垣根を越えて、全体の柔軟性を高めることが必要ではなかろうかと考えております。
以上が、組織・人材です。
次に、調達についてお話をいたします。
18ページ目です。財審でも、これまで御議論いただいてきておりまして、様々な調達方法の工夫なども行っておりますが、一部、効果は上がっておりますものの、全体的なコスト管理としては不十分であると考えております。
まず、現状を19ページ目で御説明いたします。重要な装備品につきましては、プロジェクトマネジャーを配置いたしまして、ライフサイクルコストを管理することとしておりますが、増加しているものが多い。下に例を挙げておりますが、その中でもかなり大幅に上がっているものがあります。
では、なぜこういうことなのかと原因を探ってまいりますと、次の20ページ目です。コストが上がりましたというときに、私どもがその原因を聞きましても、例えばこの下のフォーマットにありますような項目の中であれば、それが上がったということは分かりますが、さらにその先、なぜ上がったかということは分かりません。データベースなどもなかったり、非常に不十分であったりします。
さらに、今回は、なぜこういうことが起きるのであろうかと、それを組織に立ち入って分析したのが次の21ページ目になります。これは、ライフサイクルプロセスの上流から下流までをまとめたものとなります。構想、設計、調達、量産と並んでいくわけですが、緑のところが主担当、青のところが従となる担当です。見ていただいて分かるとおり、上流部分は各幕僚監部という陸、海、空の組織が権限を持っているのに対して、中、下流部分は装備庁が権限を持ってまいります。コストが上がりましても、上流の方々は下流にあまり関心がなく、中、下流を担当している装備庁からしますと、もう既に上流で大方決まってしまっているということなのであろうかと思います。したがいまして、権限と責任の所在を一致させることが必要ではなかろうか。上流が中、下流について責任を持つ、その逆、あるいはペアになって組む、いろいろあろうかと思います。
22ページ目は、今、申し上げたことですので省略をいたしまして、23ページ目は、今、申し上げたことをまた別の角度で申し上げます。海外の要人の発言などを追っておりますが、最近、エスパー国防長官は産業基盤づくりについて言及が増えていると感じました。そのため、調査をしてみますと、例えば米軍で修理の遅れなどが発生している。さらには、日本企業への委託を米軍が始めておりますが、これなども恐らくこうしたものが背景にあろうかと思います。今まで申し上げたような調達改革を進めていくことが、仮にこの産業基盤の一角を日本が担うということにつながるのであれば、これは財政にとどまらない安全保障上の効果があるのではなかろうかと考えている次第です。
以下、収入の確保について簡単に申し上げたいと思います。
中期防におきまして、調達合理化に並んで収入の確保も挙げられております。25ページ目に挙げておりますものは、先般の競り売りですとか、一定の施設の有料見学。
26ページ目は、不用品を処分する際の処分費用が自衛隊の中で大幅にばらついておりますので、うまくやっているところに合わせれば全体は改善するという話です。
27ページ目は、例えば諸外国では再利用前提で売却しているものもあり、かなりの収入が見込める。こうしたことも、将来的には検討をする必要があろうかと思います。
28ページ目は、一定のイベント、あるいは防衛医科大学などの施設の活用などについて述べております。
大変駆け足でしたが、説明は以上でございます。
〔土居部会長代理〕ありがとうございました。
それでは、ただいまの御説明につきまして御意見などがございましたら、先ほどと同様にネームプレートを立てていただき、テレビ会議システムを通じて御参加の方は挙手ボタンをクリックしていただきたく存じます。
それでは、葛西委員から御発言をお願いいたします。
〔葛西委員〕世界の状況が大きく変わってきており、コロナの問題、あるいは地球環境の問題など色々と言われておりますが、今、緊急かつ深刻な問題のひとつに、東アジアにおける安全保障問題があります。北朝鮮が核武装して、その抑止がきかなくなってしまっているという状況にあります。
日本の置かれた位置は、非常にリスキーといいますか、危機的な状況の地域です。コロナであれだけのお金が使えるのであれば、安全保障にももう少しお金を使えるはずであり、真面目に考えるべき時期に来ているように思います。
この問題をどう考えていくかはなかなか難しいのですが、今年から来年にかけて具体化され焦点を浴びてきている問題としては、宇宙の問題があります。これは、中国がアメリカの覇権に挑戦すると宣言し、アメリカが目を覚ましたところから始まるのですが、日本の安全を考えたときに、結局、アメリカの核抑止力に日本の国の最終的な安全を委ねるしかないとすると、日本は日米同盟を強化していくしかないことは政府が繰り返し言っているところです。アメリカとの信頼関係を強める上で、宇宙において日本がアメリカの不可欠なパートナーであるという立場を維持すること、また、その意思を明示することが非常に大切であると思います。
アメリカはアルテミス計画という月面に人間を送る計画をスタートさせており、日本もそれに真っ先に協力するということを宣言しております。ですから、今年度から来年度にかけての財政支出を考えるに際しては、宇宙関係は、これまでの去年から今年、今年から来年という延長線上ではなくて、非連続的な飛躍、大きな階段を1段上るという最初の年に今年はしていくべきではないかと思います。宇宙は現実に安全保障そのもの、一番生々しい世界になりつつあります。
もちろん、宇宙は安全保障だけではありません。新しい先端的な技術を持ち、宇宙システムをワンセットで保有している国で見ると、今はアメリカ、ソ連、その次はヨーロッパです。自由主義圏では、日本はアメリカ、ヨーロッパに次いで3番目につけていますが、これをせめてヨーロッパ並みに上げていくということをしていかないと、日本とアメリカの間の同盟における抑止力、あるいは有事の際にアメリカが日本を守るために行動するという即応の保証というものが確保されなくなる可能性があると思います。その辺を踏またうえで、時代の変わり目の財政をどうするかということを考えていただきたいと思います。
〔土居部会長代理〕ありがとうございました。
末澤委員、お願いいたします。
〔末澤委員〕どうもありがとうございました。
足もと、世界は、コロナのパンデミックに覆われているわけですが、葛西委員からもありましたように、地政学的リスクは全然弱まっていないのです。南コーカサスで、ナゴルノ・カラバフ紛争、これは1990年代初頭以来の大規模な紛争が発生していまして、今なお、中東、北アフリカでも紛争が続いている。東アジアでも、中国の海洋進出等、強まっていまして、私は、むしろバイデン政権が誕生したほうが、極東アジアでは相当長期的な米中等の覇権争いは本格化するのではないかと思っておりまして、この分野については相当重要であると思っています。
ただ、一方で、財政状況は厳しい、今、コロナ禍で財政が相当厳しくなっています。ちなみに、人口の少子高齢化も進んでいまして、先ほどありました米国の定員の不足は、大体、好景気になると不足するのです。これは、大体、失業者が軍に応募する、特にヒスパニックであるとか、カラードの方々が多いので、そうなりやすいのです。
かつて、アメリカの好景気は、2000年代にもありまして、あの頃はちょうどブッシュ政権下で、RMA、レボリューション・イン・ミリタリー・アフェアーズですか、軍事革命という言葉を当時の副大統領と国防長官が唱えて、要は情報装備して、少ない人数で戦力を維持する、ないし向上させるという構想です。これは、実は今、中国も同様であり、人民解放軍の定員を減らして情報装備化すると。今日、ICTという話がずっと続いていますが、実はこの分野でも同様でございまして、特に日本の場合、これから若年層がどんどん減っていくとなると、RMAを日本でも進めざるを得ないであろうと思います。
ただ、そのときに調達の問題です。ここ数年、財審で調達改革についての議論をしています。19ページにありますC-2、P-1のライフサイクルコストに関して確認すると、C-2は2兆円で22機ですから、1機、大体1,000億円になってしまうのです。P-1は、3兆7,000億円で70基ですから500億円と。P-1は特殊装備なのでしようがないかもしれないです。C-2は、ちょっと語弊あるかもしれませんが、言ってみれば中型輸送機です。しかも、不整地空港での離着陸に難がある。これが1,000億円は相当高いであろう。こうした調達が続くと、本当に必要なもの、場合によっては通常の演習、自衛隊の福利厚生にも相当リスクが出てきて、士気の低下にもつながると思います。予算規模の問題もありますが、特にこれから情報装備化等をするのであれば、よりワイズスペンディングに努めていかないと、なかなか厳しくなるということを一言申し上げたいと思います。
以上でございます。
〔土居部会長代理〕ありがとうございました。
時間を超過しておりますので、再三で恐縮ですが、発言は手短にお願いいたします。
それでは、神子田委員、お願いします。
〔神子田委員〕ありがとうございます。
3ページの防衛関係費の推移の上から3行目、格段に速度を増す安全保障環境の変化に対応するため、防衛力を強化する必要があるという点に全面的に賛成です。というのは、中国が尖閣諸島の領域内にもう何度も入ってくるとか、今日、地図の添付がないのですが、最近では東シナ海から太平洋のほうまで進出していまして、日本が目を配るべき領域は非常に拡大している。そのような中で、予算を増やせればよいのですが、それもできませんから、その限られた予算の中で、例えば陸から空と海、あるいは北から南へというような、どう配置すれば効率的かということを考えて予算配分をしていってもらいたいと思います。
それから、最近、省庁横断というのが一つの、縦割り打破が流行りになっていますが、この安全保障に関しても、もちろん戦艦とか、戦闘機とか、また、対空ミサイル防衛とか、金のかかる装備も重要ですが、一方で、いざ日本が攻撃を受けるときに、例えばダムとか、原子力発電所とか、インフラ施設を狙って攻撃されるということもあって、そうしたことに対する注意もしないといけない。それには、電力を所管する経産省とか、ダムを所管する国交省とか、安全保障においても省庁横断的な対応が必要になってくると思います。
最後に、葛西委員から発言のあったアルテミスですが、私、先日、予算の要求の仕方としておかしいのではないか、要はコロナ関連として要求するのはおかしいのではないかと言いましたが、この計画自体は非常に意義があることであると思っております。1つは、科学技術は、今、アメリカで惑星探査をやっていて、それをニュースなどで、アメリカ版はやぶさ、要は日本が元祖と。これは、子供たちにも非常に良い影響を与えるので、わくわくするような、まさに科学に興味を持つようなことであると思いますので、まず、これ自体は賛成です。プラス、今、中国が月の裏側に着陸するという宇宙での技術を非常に高めているという中で、やはり日本としても宇宙での開発、これは宇宙探査だけではなく、安全保障にも跳ね返ってくる記述であると思いますので、ここにはぜひ、コロナであるからという1年限りではなく、長期間にわたる視点で予算をつけていただければと思います。
以上です。
〔土居部会長代理〕ありがとうございました。
遠藤委員、お願いいたします。
〔遠藤委員〕各委員の論調と同じでございますが、近年の地政学上の最も重要な、最重要リスクは米中の対立の先鋭化です。では、米国の同盟国としての日本がその中で役割を果たせるのかどうか、その重要性は増しているところですが、本来、科技のところで申し上げるべきであったのかもしれないのですが、その米中の対立においては、これまでの国防の域を超えて、科学技術の覇権争いの様相になってきていることは言うまでもありません。中国の軍民融合とか、千人計画とかを鑑みても、基盤技術とか、最先端技術の重要性ということは、安全保障の文脈からも重要であろうと思われます。
そうした意味では、先ほど葛西委員がおっしゃいましたが、科学技術、安全保障、その両方の最先端の領域である宇宙領域ですが、実は予算の規模を上げると、米国は日本の15倍で、欧州でも3倍、2018年の増額分はもう4,000億円に上っておりまして、これはもう日本の1年の予算額を上回る規模でございます。宇宙領域での日米の連携が必要となる中で、これだけの予算規模の格差で、同盟国としての役割を果たせるのかという問題意識が宇宙政策の議論の中では常に起こってまいります。
もちろん、財政の制約について分かっていないわけではないのですが、いつも財審の議論では、少子高齢化は所与の条件として設定されているのですが、安全保障上の構造的な変化については所与の条件としてあまり議論することがないように思われます。こうした安全保障上の各種の資金は、民間活用を生かすにも限界がある分野でして、もちろん生かせるとして、民間投資の呼び水となるのは、やはり間違いなくアンカーテナシーとしての政府調達の役割があると思います。
防衛予算の増大、拡大は決まっておりますし、案件に上がっておりますし、科学技術の予算拡大についても、安全保障につながる分野は、同じような文脈で議論を進めていただきたいと思っています。そうした意味では、少子高齢化と同じ所与の条件であるということを念頭に入れていただければと思います。
〔土居部会長代理〕ありがとうございました。
河村委員、お願いします。
〔河村委員〕冒頭、御説明くださった厳しい安全保障環境は、本当にそのとおりであると思います。やはりしっかり進めていく、対応していく必要があると思います。
私からは、人材育成と調達改革、1点ずつ要点だけ申し上げます。今般のいろいろ情勢変化について考えますと、人材確保もいろいろ工夫していただくことは、御説明くださったとおり必要であると思います。それと、サイバー面、そうしたところに対応できる人材、ここが欠けてしまうと、本当に幾らほかのいろいろな装備品をやってもということにもなりかねませんので、やはり人材確保について手厚く手を尽くしていただきたいと思います。仕事の性質上、なかなか民間と人材交流的なことは難しいと思いますが、同じ官庁の中でも、例えば警察庁であるとか、総務省であるとか、そうした省庁から同じような話を聞くこともありますので、そうしたところと連携するように、必要な人材をきちんと確保できないか、御検討いただければと思います。
もう1点は、調達のほうで、冒頭で御説明いただきましたが、やはり非常に特殊な分野であると思います。私も、行革で防衛省に伺ったことありますが、レビューシートを見ても本当に特殊で、後年度負担がばんばん出てくる。何が正しい価格で、何が最安値なのかが分かりにくい。ほかの省庁の事業であれば、調達の競争原理を高めるとかいうことはできるのですが、防衛省ではなかなかできない。
そうした中で、参考資料の14ページにも出ていましたが、もともと国内で参入している産業が少ないところ、撤退するところもさらに出てきているという話もありますので、やはり何とか新しい参入とかを求めていくようなことはできないかといったところを工夫する必要もあると思います。私が行革で伺ったときには、根幹のところは難しいでしょうが、部分的には海外の企業も対象に含めながら、価格等を調査しながらという話も出ておりました。そうしたところも工夫しながら、やはり特殊な分野だからということでそのままになってしまうことのないよう、ぜひきちんと、後年度負担を含め、調達コストの低減に努めていくことが必要ではないかと思います。
以上です。
〔土居部会長代理〕ありがとうございました。
小林毅委員、よろしくお願いいたします。
〔小林(毅)委員〕今回、宇宙、サイバー、電磁波という新しいテーマに着目されたのは非常によかったと思います。人材確保は、これまでの自衛隊の人材育成システムの中ではなかなか難しいのかもしれないと、それは非常に良い着眼点であると思うのですが、そこで1つだけ留意しておいていただきたいと思っているのは、こうした分野で優秀な人材を得る場合、技術の分野は非常にスピードが速いです。だから、今日、最優秀だった人材でも、5年後にはひょっとしたらそうではないかもしれない。そうしたときにどう対応していくのか。ひょっとすると、先ほど民間交流との難しさと言われましたが、人材の流動化といったことも視野に入れながら、いろいろなことを考えていかなければならないかもしれない。その仕組みをどのようにつくっていくのかを考えて進めていただきたいと思っております。
以上です。
〔土居部会長代理〕ありがとうございました。
広瀬委員、お願いいたします。
〔広瀬委員〕ありがとうございます。
防衛費が増大している、あるいは、これから増大することについては、今のこうした情勢ですから、国民的な理解というか、コンセンサスはできつつあるのではないかと思います。一方で、だからこそ、コスト改革等についてもしっかりやってほしい、これも国民の声ではないかと思います。
民間でいろいろな調達改革をしているわけですが、それをそのまま適用するのは非常に難しいと思います。例えば、情報開示と説明責任は一つの方法ですが、事の性格上、これは非常に難しいと思います。先ほど主計官のほうで、折衝の中でいろいろなことをされているというお話がありましたが、ある面では財務当局がそうしたことをきちんとやっていただいているということを通して、国民に理解を得ることも必要なのではないかということで、この部分は財務当局の皆様の役割が非常に大きいのではないかと思っております。
冒頭、申し上げましたように、こういう情勢ですから、増加すること自体はもちろん理解をする上で、よりコスト改革、あるいは調達改革、そうしたことの必要性も高まってくるのではないかと思っています。
以上でございます。
〔土居部会長代理〕ありがとうございました。
宮島委員、お願いいたします。
〔宮島委員〕ほかの案件同様、額を上げれば良い、装備の数をそろえれば良い、人の数を増やせば良いというだけではない側面が非常にあると思います。今後、どのような戦いが行われていくのか、どうしたら日本は守れるかというところを根本から考えて、そのためにどういう人材を、どのような活躍をしてもらうかという視点は、いよいよ必要であると思っております。これは聞きかじりですが、自衛隊の中の組織はやはりまだ硬直的なところがあると聞いておりますので、そこを財政当局としても擁することが大事であると思います。特に、中途退職者について初めて調査が行われたということですが、やはりそこにいる人材を最大限に生かすことは、今、どの組織も一番考えるべきことであると思いまして、ここのところ、どのように教育して、どのように転換していくのが良いかということを、今後も重要な視点として入れていただきたいと思います。
〔土居部会長代理〕ありがとうございました。
それでは、オンラインで、冨田委員から御発言をお願いいたします。
〔冨田委員〕ありがとうございます。
私も、防衛力の整備水準の引上げを前提として意見を申し上げたいです。今日、19ページで御説明あった点、C-2とP-1のライフサイクルコストが当初の見積りよりも大きく増加していることが示されていました。5年前に防衛装備庁が設置されましたとき、やはりこうした問題を改善することが目的であったはずです。実際、当時の防衛大臣は、防衛施設庁を設置しまして、装備品の構想段階から研究開発、取得、維持、整備といったライフサイクルを通じて、コストも含めたプロジェクトの一元的、かつ一貫した管理を実施すると述べておられました。また、適正な調達価格を独自に算定するために、コスト情報のデータベース化、これらの数値を用いた統計分析によるコストの推定、評価するための手法の確立を実施いたしますと、国会で答弁されておりました。
しかるに、本日の資料20ページでお示しがあったわけですが、防衛装備庁設置から5年たってもコストデータベースが整備されておりません。さらに、21ページで指摘されておりますように、防衛大臣が言われた、プロジェクトの一元的、かつ一貫した管理は存在していないということであって、私は、防衛省は、この厳しい環境に向き合った防衛力の整備に本気で取り組んでおられるのかと疑問に思うわけでございます。今日も指摘があった調達改革を体系的にきっちりと進めていくことがまず大事であって、予算の規模ではなしに、防衛力の整備水準をいかに引き上げるかが大事であるということを申し上げたい。
以上です。
〔土居部会長代理〕ありがとうございました。
今日の議論も大事な分野ばかりですので、皆様からも十分にお話を承りました。お時間の関係で、御意見、不十分にしか御発言いただけなかった場合には、事務局に個別にお寄せいただければと存じます。
私の不手際で、予定した時間を大変超過しまして、誠に申し訳ございませんでした。本日の会議は、これにて終了したいと存じます。
本日の会議の内容につきましては、会議後、記者会見で御紹介させていただきます。会議の個々の発言につきましては、皆様から報道関係者などにお話しにないよう御注意をお願いいたします。
次回は、11月2日、13時から、社会保障、地方財政をテーマに、再び財政制度分科会の開催を予定しております。よろしくお願い申し上げます。
それでは、大変超過して申し訳ございませんでした。本日は、これで閉会いたします。御多用中の御出席、ありがとうございました。
午後0時00分閉会