財政制度等審議会財政制度分科会歳出改革部会
議事録
財政制度等審議会財政制度分科会歳出改革部会議事次第
令和5年4月24日(月)9:00~11:00
第3特別会議室(本庁舎4階中-412)
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1.開会
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2.議題
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3.閉会
部会長代理 |
土居丈朗 |
秋野副大臣 宮本大臣政務官 青木大臣官房長 渡部政策立案総括審議官 新川主計局長 寺岡次長 中村次長 前田次長 渡邉法規課長 尾崎給与共済課長 松本調査課長 一松主計官 三原主計官 佐久間主計官 有利主計官 小澤主計官 寺﨑主計官 大沢主計官 端本主計官 河口主計官 坂本主計官 渡辺主計官 内之倉主計監査官 山岸予算執行企画室長 鈴木主計企画官 園田公会計室長 |
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委員 |
秋池玲子 河村小百合 熊谷亮丸 佐藤主光 武田洋子 宮島香澄 |
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臨時委員 |
上村敏之 遠藤典子 小黒一正 木村旬 権丈英子 末澤豪謙 滝澤美帆 田中里沙 中空麻奈 広瀬道明 福田慎一 神子田章博 横田響子 吉川洋 |
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オブザーバー |
大槻奈那 小林慶一郎 藤谷武史 芳野友子 角和夫 平野信行 |
午前9時00分開会
〔松本調査課長〕財務省主計局でございます。定刻でございますので、ただいまから財政制度等審議会財政制度分科会における歳出改革部会を開催させていただきます。
まず、事務局から御報告でございますが、部会長・部会長代理につきましては、審議会令によりまして、部会長につきましては分科会長が御指名し、分科会長代理は部会長が指名することとされてございます。先日事前に御報告申し上げましたとおり、部会長には増田委員、部会長代理には土居委員が指名されておりますので、御報告申し上げます。
それでは、ここからは土居部会長代理に議事進行をお願いしたいと存じます。よろしくお願いいたします。
〔土居部会長代理〕皆様、おはようございます。ただいま御紹介いただきました土居でございます。本年度も部会長代理を務めさせていただきます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
なお、本部会の所属委員につきましては、資料1の委員名簿を御覧いただきたいと存じます。また、分科会の委員で本部会の委員でない方におかれましても、オブザーバーとして本部会の御議論に御参加・御発言を頂けることとしております。
それでは、冒頭カメラが入りますので、そのままお待ちください。
(報道カメラ入室)
〔土居部会長代理〕ただいまから財政制度等審議会財政制度分科会における歳出改革部会を開催いたします。皆様には御多用中のところ御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
本日は、冒頭から秋野副大臣、宮本大臣政務官にお越しいただいております。誠にありがとうございます。
歳出改革部会におきましては、財政制度分科会を補完する形で様々なテーマを御議論いただき、財政制度分科会における建議につなげたいと考えております。
それでは、報道関係者の方は御退室をお願いいたします。
(報道カメラ退室)
〔土居部会長代理〕それでは早速ですが、事務局説明に入りたいと存じます。
今回の議題は、財政各論①:成長となります。
それでは、松本調査課長、簡潔に御説明をお願いいたします。
〔松本調査課長〕主計局調査課長でございます。資料2「財政各論①:成長」の資料について説明をさせていただきます。
まず、1ページです。こちらは、一昨年2月の経済財政諮問会議に当時の麻生財務大臣から提出をさせていただいた資料でございます。豊富な民間資金を活用した投資の活性化と持続的な賃金上昇により、経済の好循環を実現していこうというストーリーとなってございます。
続いて2ページです。岸田内閣が掲げる「新しい資本主義」も、成長と分配の好循環を目指すものでございます。重点投資分野として、人への投資、科学技術、スタートアップ、GX、DXが掲げられており、財政面でも成果に結びつく効果的な対応が求められているということでございます。
3ページでございます。経済成長の要因は、労働・資本・生産性の三つでございますが、まず労働面では、人への投資による質の向上と、成長分野への円滑な移行を可能とする労働市場の実現が必要と考えております。資本面では、民間投資を促していくため、特にGX・DX分野において官民を挙げた取組が必要です。そして、イノベーションを生み出していくためには、先端的な科学技術への投資あるいは社会実装を担うスタートアップの振興も必要です。こうした観点から、本日説明をさせていただきます各分野での取組が重要と考えているということでございます。
4ページ目は留意点でございますが、昨年秋の建議でも御指摘をいただきましたとおり、ワイズ・スペンディングといった言葉の下で、特定の分野の支出が拡大するだけとならないよう、アンワイズな支出の見直しとセットで取り組むべきと考えております。成果志向の支出を徹底し、成果を検証していくことが重要であると考えております。
それでは、5ページから各論に入らせていただきます。まず1点目、労働市場・人への投資でございます。
6ページ、企業の生産性向上を伴う持続的な賃上げ、構造的な賃上げの実現を目指して取り組むこととされております。
7ページは労働市場政策についてでございます。事業主に大きく依存する仕組みを転換し、成長分野に労働力が投入されていくという環境を整備していく必要があると考えております。
8ページです。学び直しにつきまして、企業を通じた支援から個人への直接支援に重点を置いていくといった方向性が考えられると思っております。
続いて9ページです。今般のコロナ禍のような危機時の対応でございます。雇用調整助成金の特例対応の長期化が健全な労働移動や労働者のスキルアップを阻害した面もあったと考えられます。休業による雇用維持に重きを置くのではなく、経済社会の構造変化への対応を促す制度としていくことが考えられます。
続いて10ページ、雇用のセーフティーネットの適用拡大の関係でございますが、それによって、非正規雇用でも主体的に学び直しに取り組める環境を整備する必要があると考えております。具体的な検討を早急に進めていくべきと考えます。
11ページ、同一労働同一賃金につきましても、実効性を高めていく取組が必要であると思われます。
続いて12ページは、昨年の経済対策で強化をいたしました人への投資の施策パッケージでございます。今後も取組状況を確認しつつ、必要な改善を行ってまいりたいと考えております。
13ページは、ただいま申し上げた労働市場・人への投資パートのまとめでございます。主体的な学び直しが進むよう、個人への直接支援に重点をシフトしていくべきこと等を掲げてございます。
続きまして、14ページから、2点目、GXに進ませていただきます。
15ページです。日本は1次エネルギー自給率が低く、貿易収支、経常収支の悪化要因ともなっております。電源構成の見直しあるいは省エネ推進などが成長にとっても重要と考えております。
16ページです。今後、新興国でエネルギー需要が増えていくこと、更に世界的に再エネが拡大していくことが見込まれております。このように拡大していく海外の需要を取り込んでいくことが重要と考えております。
17ページです。その一方で、各種の再エネ関連設備の日本のシェアは、残念ながら低下をしているということでございます。単なる導入支援、投資支援では限界があるのではないかと考えています。海外の需要に対応して、真に競争力のある技術・製品を生み出していくことが必要であると考えます。
18ページは、GX実行会議の議論の状況です。2月に基本方針が閣議決定をされているということでございます。
19ページです。そのGX基本方針におきましては、GX経済移行債を活用して20兆円規模の先行投資を行うこととされております。それと加えまして、規制・制度的な措置と一体的にそうした支援を行うという考え方も示されております。
続いて20ページ、GX基本方針で示された政府支援の基本原則についてでございます。民間のみでは投資判断が真に困難な案件であって、競争力強化・成長・温暖化対策のいずれにも貢献する分野を対象とすることとされております。
21ページ、支援の在り方についてでございます。今申し上げたような観点からの対象の吟味、あとは規制・制度的措置を一体的に行うといったことのほか、研究開発支援につきましては、モニタリング指標を設けて、ステージゲートで案件を絞り込んでいくなど、精密な進捗管理も重要であると考えております。
22ページが、ただいま申し上げたGXパートのまとめでございます。高い成長が見込まれる海外の需要を取り込んでいくことが重要である、そうしたことを掲げてございます。
続いて23ページからは、本日の3点目、DXについてでございます。
24ページです。我が国のデジタル競争力の低さについては、規制枠組みや人材不足などが指摘をされているということでございます。
25ページは、アナログ規制の問題です。今後、テクノロジーによる新たな手段が登場してまいります。それに合わせて、規制の枠組みを時代に合ったものに見直していくということも不可欠であると考えております。
26ページです。現在、アナログ規制の一掃に向けて、規制の類型と見直しに必要な技術との対応関係を整理したテクノロジーマップというものを整備をしようということになっております。
27ページを御覧ください。テクノロジーマップに沿って、技術の検証を各省横断的に行い、企業の検査負担を軽減していくことで、技術革新と規制緩和のサイクルを短期化していくといったことが目指されております。
28ページです。行政手続に関しましては、行政の内部に至るまでのデジタル完結ということも重要でございます。社会的に大きなインパクトをもたらす程度にまで、手続時間あるいは労働リソースの節減が進むことが望まれます。
29ページです。DXで人手不足解消が期待される分野として、介護を例示しています。左側、DXによる生産性向上の好事例を紹介しておりますが、他方で、業界全体にこうしたことを展開する上でのネックも指摘をされているということでございます。DX先進事業者の目線に立って、徹底的に改革を進めていくべきと考えております。
30ページからはシステム調達の問題です。官民を問わず、レガシーシステムの刷新は喫緊の課題です。官におきましては、調達側の能力不足、あるいはベンダーロックインの問題が指摘をされているということでございます。
31ページです。デジタル庁がシステム調達の課題と対応策を整理しているということでございます。トライアルと効果検証を進めてもらい、各省庁に広く展開していただくべきと考えております。
32ページです。システム開発を柔軟・迅速に行うためには、内製化を進めることも重要と思われます。デジタル庁等で取組が進んでおり、これを段階的に拡大していくべきと考えます。官の取組が民間に波及していくといったことも期待をされるところでございます。
33ページは、今申し上げたDXパートのまとめでございます。規制改革、行政手続の見直しにより、民間の技術革新を促すべきことなどを掲げてございます。
それでは続きまして、34ページから4点目、科学技術・イノベーションについてでございます。
35ページです。研究開発予算は主要国と比べて遜色のない水準となっておりますが、論文の生産性は低迷をしているということで、大学等の戦略的な対応が必要ではないかと考えてございます。
続いて36ページです。寄附や研究受託といった財源の確保は、依然海外よりも少ない状況となっております。民間資金の導入拡大に向けた取組が重要になっていると考えます。
37ページです。戦略的な産学連携につきまして、例えばですが、大学本部で組織的に対応し、適正価格で研究を受託できるように取り組むといったことが考えられるのではないかと思います。
38ページです。大学が獲得した研究費のうち、間接経費部分についてでございますが、これは競争力のある研究者に対して適切に配分されるべきものと考えております。
39ページは、研究環境の改善についてです。事務負担の軽減に向けて、専門職等の活用を進めていく必要があると考えております。
40ページ、この専門職員等の育成・配置に当たって大学間で連携をしているような好事例もございます。こうした取組を推進することが必要と考えております。
41ページは研究の国際化の推進でございます。研究者向け事業では海外経験を評価する、あるいは大学向け事業では教員等の国際化への取組を評価するなど、一定の後押しが必要であると考えております。
42ページです。これは科学技術政策全体の評価づけについてでございますが、「メリハリ」づけが不足をし、「ハリ」だけが強調されがちであるということを指摘をしております。優先順位づけが不可欠であると考えております。また、競争的資金の全体像の整理も必要です。CSTIが司令塔機能をしっかりと担うべきということを書き込んでございます。
43ページ、今申し上げた科学技術・イノベーションパートのまとめでございます。大学等における戦略的な取組などについて掲げてございます。
それでは、44ページから最後の5点目、スタートアップについてでございます。
45ページにお進みください。左の図表のとおり、日本では、社会・文化的規範がマイナス要因であると、オレンジ色のところですが、これが指摘をされてございます。政府支援のみならず、多角的な議論・取組が必要と考えられます。
46ページです。日本は開業率だけでなく廃業率も低く、新陳代謝が乏しくなっていることはよく指摘をされるところです。スタートアップの成長のためにも、既存企業のリソースを円滑に移動させていくことが不可欠と考えられますので、そうした環境を整備すべきです。
47ページです。スタートアップへの補助金等の公的支援は、ともすれば非効率になりがちであると指摘をされています。支援先の選定には目利きが重要であり、民間のベンチャーキャピタル等の知見を活用することが考えられます。
48ページです。官公需におきまして、新規の中小企業者と3%以上の契約を目指すこととされており、スタートアップの活用を増やす余地がまだあるのではないかと考えられます。
49ページは、スタートアップの活用方策の一案として宇宙関係を挙げてございます。例えばですが、JAXAからスタートアップへの発注拡大、あるいは国研法人とスタートアップとの共同研究を促進していくといったことも考えられるのではないかと書き込んでございます。
50ページは、スタートアップによる研究成果の事業化に向けて、TLOがマーケティングを積極化すること、あるいは複数の大学が連携した広域型TLOの活用なども考えられるということでございます。
51ページは、ただいま申し上げたスタートアップパートのまとめでございます。新陳代謝の促進、支援に当たっての目利きの活用などを掲げてございます。
私からの説明は以上でございます。本日の資料の内容に限らず、委員の皆様方から大所高所からの御意見をいただきますよう、よろしくお願いいたします。
〔土居部会長代理〕ありがとうございました。本日は、安永委員より意見書の御提出をいただいております。お手元にお配りしておりますので、お目通しください。また、芳野委員からも資料を御提出いただいております。
それでは、ただいまの御説明に関しまして、委員の皆様から御意見、御質問を頂戴いたしたいと思います。御意見、御質問のある方は、ネームプレートを立てていただく、もしくは、テレビ会議システムで御参加の方は挙手するボタンをクリックしていただきたく存じます。指名順につきましては、会場5名、テレビ会議システム5名という順に行いたいと思います。
それではまず、会場で挙手されている方から参ります。それでは、神子田委員から順にお願いいたします。
〔神子田委員〕おはようございます。御説明ありがとうございました。今日は、テーマ横断的な御説明ということで、財審何年かやっておりましたが、こうした試み、非常に新鮮に感じております。
思ったのは、今日は1番労働市場、2番GX、3番DXと大項目がありますが、実際の予算編成のときにも、役所縦割りでなく、こうしたテーマ横断的な予算の組み方をしたらどうかと思っております。それによって、各省庁ごとの縦割りによる無駄なところですか、あるいは、省庁を超えて力を合わせることで、何か新しい発見とか新しい価値が生み出せるのではないか、より効率的な予算が使えるのではないかと思いました。
個別に関しては、前回のPDCAという議論がありましたが、いろいろな施策を行うときに、1年たったときにどれだけ有効に使われたかということも大事なのですが、年度の途中でも、例えば具体的にどう予算が執行されていくかは分からないのですが、特に私、最近中小企業などを取材したときに、結局、中央の官僚が机の上でプランを考える。これはこれで当然、地方から上がってくる意見も参考に、こうした施策が有効であろうということを考えるわけですが、一つはさすがに、末端と言ってはあれなのですが、地方の中小企業の現場で有効に役に立つ政策になっているかというのがありますし、その前に、中小企業の人がちゃんとそうした政策を知っているのかどうか。知っていたとしても、ではどこに問い合わせたらよいのかというところで、なかなか多くの企業にせっかくの政策が有効に活用されていないのではないかという実態があるように思うのです。
ワイズ・スペンディングといったときに、もちろん有効な予算を使うということはあるのですが、つけた予算が有効に使われているかどうかもワイズ・スペンディングのうちであると思いますので、それを各省庁に、ちゃんと予算執行されているかという年度内でも点検をして、年度内でも政策を修正する必要があればしていく。予算を修正するわけにはいかないですが、ついた予算が有効に使われているか点検チェックをして直していくという、それで、今毎年毎年PDCAでなくPDPDになっているのですが、そうならないように年度途中でも考え直していくということが重要なのではないかと思いました。
それと、雇用のことに関しては、確かに、成長産業への労働移動は重要であると思うのですが、一つは、その移動の過程で何か起こしてしまう人がいないようなセーフティーネットというのは大事だなということと同時に、やはり守られるべきは、特に中小企業で言えば、中小企業の経営者個人ではなくて、そこで働いている人々であると思いますので、その人たちが、特にこれから人手不足という問題に、どうやってそのミスマッチを埋められるかということが大事であると思いますし、あるいは中小企業の経営をより効率的なものにするため、あるいは事業承継で困っている際に、最近は中小企業のM&Aというのがはやっているのですが、実際に業者にお願いしようとすると大変な手数料を払ってうまくいかないというか、お金がないとかいって進まないというケースもあるので、何かそうしたものを助成する。その際には、M&Aしたからといって効率ばかり追求しないで、人の首を切るということは許さずに、ちゃんと雇用の維持を条件に助成するような制度があってもよいかと思いました。
また、GXに関しては、もうかなり今の時点で、例えば風力発電とかは技術的に海外から遅れていて、実際に今、秋田県のほうで洋上風力とかやっても、実際の風車とかは海外から輸入して、ほとんど国内で雇用が生まれないというような状況になっておりますので、これなんかはやはり発想を転換して、TSMCのように企業ごと誘致して日本で全部作るような、何かそうした発想があってもよいかなと思いました。
以上です。
〔土居部会長代理〕それでは、中空委員お願いします。
〔中空委員〕ありがとうございます。今、神子田さんがおっしゃったように、横断的であるがゆえ、どこでコメントしたらよいかというか、もうたくさんコメントしそうになるので、できるだけ絞ってお話をしたいと思います。
人への投資、新しい資本主義というような話が出たときに、それは何であるのかと多くの海外投資家から私は聞かれましたが、具体的に3.8%賃金が上昇しますよという数字が出て以降は比較的雄弁だったということを勘案すると、やはり数字が出てくることの強さというのはあるのだなと思います。なので、来年以降もどうやって賃上げを継続させるかということが本当に必要になってくると思うわけで、そのためにも“成長”が肝要です。
成長をいかに具体的にという意味でいけば、GXに関してもたくさんの措置が出ているのですが、では具体化されているかというと、とても自信がありません。具体化に関しては、いろいろなことをやっているということは十分承知した上で、あえてまだ言うのですが、あまり目覚ましい動きがありません。GX経済移行債は、夏に出る、夏に出ると言われているのですが、では夏はいつなのかというとはっきりしない。金融市場から見ると発行をすごく待ちわびている状態です。しかもその財源も、排出権取引のものと、それから賦課金と言われているのですが、いまだに具体的な進展がないため、どう徴収するのかもいま一つ分からない。しかも何に使うのかもはっきりしないし、トランジションの定義がどうなのかもよく分からない。こうしたところについては、より具体的なものが早晩出てこないと、本当に成長戦略なのかどうか心配になってしまうというところでございます。私は、GXについては日本にとっては、貿易黒字に復活し得る最後の砦であると思っているので、どれだけ具体的に数字を出してもらえるか、そこが重要であると思っています。
最後にもう一つだけ。DXです。どうやって横断的にやっていくかということもとても重要なのですが、そのDXをやるためにはデータがないと話になりません。この国は意外といろいろなところでデータが欠落したり不足したりをしているので、データ整備を徹底するということを最初にやらなければいけないのではないかということを伝えて終わりにしたいと思います。ありがとうございます。
〔土居部会長代理〕それでは、木村委員お願いいたします。
〔木村委員〕御説明ありがとうございました。今回、成長と財政というのがテーマになっていますが、これは非常に時宜を得たテーマであると思います。というのも、今、日本経済は大きな岐路を迎えています。インフレ率がすごく高まる中で、今年の春闘で、中空委員もおっしゃいましたが、賃上げ率が30年ぶりの高い水準になるという見通しになって、これから物価と賃金の好循環が定着するか、それとも従来のような長期停滞に舞い戻るかの分かれ目になっていると思っております。
そこで留意しなければならないのは、物価と賃金の好循環になるかもしれない起点が、今はコストプッシュ型で、日本経済の成長力の高まりではないということです。通常なら、成長力が高まったので好循環の兆しが見えてくるという流れでしょうが、今の日本経済というのは、その好循環を定着させるために成長力を高めなければならないという厄介な課題に取り組まなければならない状況にあります。
これまで足かせになってきたコロナというのは正常化のほうに向かっていますが、ペントアップ需要だけでは持続性がないのは明らかで、そこで財政の果たす役割が大事になるということでしょうが、そこで大切なのは3点あると思います。
まず、今回の資料で示されたそれぞれの各論というのは、相互に連関していると思います。例えば、大学の研究体制の様々な課題がスタートアップ活用の低迷につながってひいてはDXとかGXの遅れをもたらしていないかということです。資料で挙げられた、人材が流動するエコシステムの形成促進などに努めれば、相互連関が動き出す可能性があるとも感じました。それぞれGX、DX、大学、スタートアップと別々に分析されていますが、こうした相互連関の分析を更に深めれば、より成長力を高めて、より効果的な財政支出に結びつけることも可能になるのではないかという気もしました。
2点目はメリハリです。今回、成長分野をより伸ばしていくアウトカム・オリエンテッド・スペンディングが明確に示されましたが、ならば、優先度が低い非成長分野を明確にすることも大事ではないかという気がします。単に需要不足を埋めてきたような分野というのは、今回取り上げられなかった分野にも多くあります。財審として今年度から始めたテーマ別の議論の意義というのは、横串を刺すということでもあるので、様々分野横断的な幅広い議論が大事になるのでないかなという気もしました。
あと最後に、過去の政策の検証と総括です。これまでも歴代政権は成長戦略として様々な政策を打ち出してきましたが、成長力を十分高めることには結びつきませんでした。実際、予算編成でも、政府の成長戦略に沿った予算を優遇する特別枠、令和5年度予算では重要政策推進枠を設けてきたのですが、それが果たしてこれまで有効に機能してきたのか、あるいは十分機能していなかったとすれば、その原因は何なのか。原因を明確に示さなければ有効な政策も打ち出せないということですので、ここは政府とか財務省としても、きちんと検証して総括することが今後の成長戦略にとって重要ではないかと思います。
以上です。
〔土居部会長代理〕それでは、遠藤委員お願いします。
〔遠藤委員〕政治においては、バラマキのインセンティブがますます高まっていて、一方、財政の制約がある環境下で、成長を考えなければならないなら、政府は、制度設計やプラットフォームの構築をまず優先して、民に委ねるという分野と、もう一つ、アンカーテナンシーとして政府が直接に財政投入をする分野と、その二つに分けて考える必要があるのだろうと思っています。
一点目、制度設計で特に欠けているところは、今回の1番目のテーマではあると思うのですが、やはり雇用の問題で、新陳代謝が進まないところが経済において低い生産性の大きな要因になっていると思いますので、こここそ政府として制度設計を深めていく必要があるのだと思います。
優良企業では2019年から黒字下のリストラが始まっていまして、希望退職も相次いで、私の記憶ですと36社、1万1,000人を超えるような人たちが黒字でもリストラをされています。ところが、中小企業では、新陳代謝が起きない。しかも、新陳代謝を防ぐような財政投入を行っていることが非常に問題であると思います。政府が行うべき制度設計の重要課題でしょう。
では、2番目のアンカーテナンシーとして政府が直接関わるべき分野ですが、この中では安全保障に絡む科学技術・イノベーションに尽きると思っていまして、ほかは民がやればよいと思っています。とはいえ、この安全保障の分野に絡む科学技術で日本が成長を遂げられる分野がどのぐらいあるのかというところも極めて厳しいところでして、私が政策議論に参加しているエネルギーであるとか、宇宙であるとか、そうしたところは、周回遅れどころの話ではないという状況です。ですので、何もかもできるわけはないので、例えば日米関係の中で日本が役割を果たす優位性を持つ技術は何かという見極めと集中投資もしていかなくてはならないと思っています。
こうした分野においても、制度設計で遅れている分野はたくさんありますので、今政府で議論されていますが、デュアルユースであるとか、それに必要なクリアランスの問題であるとか、そうした制度設計が急がれないと、財政投入をしてアンカーテナンシーをやろうと思っても、グローバルには全然相手にされないということになってしまう。
とにかく、成長の全部が政府に委ねられる問題ではないと。政府がどうしてもやらなければならないことは何かという見極めが一番重要になってくるのではないかということです。
以上です。
〔土居部会長代理〕それでは、佐藤委員お願いいたします。
〔佐藤委員〕ありがとうございます。では私から大きく3点ほど。
一つ目は、まずは財政政策の目標について。ここでもさんざん申し上げたとおり、これまでの需給ギャップの穴埋めから潜在的成長率の引上げへと、その目標自体を転換すること、そのためには、皆様ワイズ・スペンディングという言葉を使われますが、このワイズ・スペンディングというのは意外と誤用されている面があって、例えばデジタル化を進めるかどうかという話をしているのではなくて、政策の優先順位づけであると思うのです。財源は限られているわけですので、ちゃんと検証を通じて政策を優先順位づけして、今必要なものは何なのか、積極的にできるものは何なのか、やめてよいものは何なのかということをちゃんと評価していくということになると思います。私も行政事業レビューとかやってきていますが、事業評価というよりは施策評価がやはり求められるかなと考えます。それが1点目。
2点目ですが、前回から出ているモダン・サプライサイド・エコノミーですが、別に私は否定はしません、どっちかというと売っているほうなので。ですが、政府の介入というのは限定的というか、いわゆる経済学の教科書でいえば市場の失敗の範囲にとどめるべきであって、成長の主役は民間であるということ、政府は側面支援である、民間が成長するための機会と環境整備をするのが政府の仕事なのであるという、ここをはっきりさせたほうがよいと思います。ややもすれば、あれも政府がやります、これも政府がやりますというと、逆にそれは過度な期待を民間に与えてしまっても、それはそれでいけないということになると思います。
ただ、ここでもう一つ、政府が一方で拡張するべき政策は、やはりセーフティーネットのほうであると思うのです。つまり、先ほどもあったように、学び直し、人への投資のところでも、企業への支援から個人への支援のような話があったと思うのですが、セーフティーネットについても、これまでのように雇用を通じたセーフティーネットから、国がきちんと勤労者を対象にしたセーフティーネットを整備していくという、この発想の転換はやはり必要かなと思いました。
最後は新陳代謝になります。誰が成長の担い手になるのかというときに、それはこれまでの企業もそうかもしれませんが、恐らくモア・ライクリーには、スタートアップであるとか新しい企業たちであると思います。これは農業の分野でもそうですし、私は今、医療・介護の規制改革の仕事をしていますが、その分野でも同じなのです。これまでやっていた人たちがこれまでどおりの仕事をしていたら、これはイノベーションにはならないわけです。特に医療とか介護、どの分野も今デジタル化が進んでおりまして、これまでそうした分野に携わってこなかった、農業もそうであると思いますが、IT企業とか通信事業者たちが参入しようとしているわけですが、これは今、規制がその壁になっているわけなのです。であれば、政府が先ほどの民間主導を促すため、企業の活躍の機会を拡大させるという観点から見ても、規制改革というのをやっていく必要があるのではないかと思います。この辺りはなかなか難しくて、成長、だから企業への支援ということで、目先の目の前にいる企業の支援、つまり中小企業の保護、おしまいになってしまうと、これは恐らく成長にはならないということですので、ここもパラダイムシフトが必要なのかなと思いました。
以上です。
〔土居部会長代理〕それでは続きまして、テレビ会議システムで挙手されている委員の方から御発言をお願いしたいと思います。宮島委員、上村委員、権丈委員、末澤委員、田中委員の順に、まずは御発言をお願いしたいと思います。それでは、宮島委員お願いいたします。
〔宮島委員〕ありがとうございます。人材育成はこの先とても大事であると思います。ここで挙げてある施策として、個人に対する支援も、企業を通じた支援も、セーフティーネットもどれも必要であると思うのですが、一番重要なのは、そこで学んだことが本当にそれぞれの組織で生きるか、あるいは横断的な労働の移動につながるか、生産性の向上につながるかということだと思います。それには、リスキリングをちゃんと評価するステップ、ちゃんと雇用の持ち上げにつなげられるような環境整備というのがすごく大事ではないかと思います。
学び直しは、10年ぐらい前から、例えば今の四、五十代の女性、本来は能力がありながら当時の環境であまり企業などで働いてこなかった人たちがかなり積極的にやっている空気はあるのですが、実態として、リスキリングで勉強しても、それそのものが必ずしも直接に正社員としての雇用やスキルアップにつながっていないという声をよく聞きます。つまり、企業の側、採用する側も、これができたらここに採用するということをそんなに明確に示さないし、自分のほうも、これができるのですということをそんなにちゃんと示せないという中で、結局のところ、年齢で切られてしまったり、能力にマッチした職が得られなかったりということがまだ続いていると思います。今、日本はジョブ型雇用ではないので、そこを明確にするというところがすごくまだ難しいとは思うのですが、完全にジョブ型雇用にならない間でも、自分のできることを、あるいはリスキリングでできるようになったことを何か認証とかシートのような形で示せるような標準やガイドラインのようなものがあったら、少しは前に進むのではないかと思います。
例えば、全然話は違いますが、知財がなかなか融資に結びつかないという話を議論したときに、経営デザインシートという、自分たちが持っている知財をシートに書いて、それを金融機関で示せるといった、そうしたものをつくったということが内閣府でありました。形は違うかもしれませんが、自分はこれを学んできてこれができるいうことを示し、それから、採用側は、これとこれがあれば採用しますというようなところをより明確化して、同じリスキリングでも、勉強しました、しかし勉強しただけで終わりましたとならないように、そこの間をしっかりつなぐ制度をつくっていく必要があるのではないかと思います。
同じように、大学の学びも多少そうしたところがあるなと思っておりまして、もちろん大学は、就職のために学ぶばかりではないのですが、これだけいろいろ言われた中でも、結局はポテンシャル採用とか、そうしたところが基本になってはいるなと思います。大学で学んだことが、一部の理系の学部とかは違うかもしれませんが、これを学んだからこれができるというようなことをなかなか示せないというところは大学でも同じかと思います。
そもそも大学は、もう少しいろいろなことを示す必要があると思っていて、以前、海外のいろいろな大学の公表資料などをたまたま調べたことがあったのですが、日本の大学は相対的に、自分たちがやっていることの評価を示すのがまだ十分ではないと思うし、その評価が甘いのではないかと思います。大学は、これから急激な少子化の中で、今のスピードよりもずっと早く再編しなければ、定員割れで、今までだったら高校ぐらいの能力をつけて社会に送り出すといったところにすごく国もお金をかけなければいけないということになりかねない、今のスピードですと。ですので、それぞれの大学の学部の再編や全体の再編をもっともっとスピードアップしなければいけないと思います。
大学だけではなくて、中等、初等教育などであっても、本当に今必要な成長のための教育ができているのか、それは、これまで未来の教室などいろいろなところで実験などしていますが、それをもう少し早く横展開して、本当に成長に必要なものをそれぞれの段階で学んでもらうというような体制を一刻も早くつくる必要があるかと思います。
あとは、DXはとにかく頑張ってほしいということなのですが、やはりまだ中央で旗を振っていても、それぞれディテールのところ、自治体レベルですとかいろいろなところでついてこられていないなということをしばしば感じますので、そうしたところを整備して頑張っていただきたいと思います。
以上です。
〔土居部会長代理〕それでは、上村委員お願いいたします。
〔上村委員〕おはようございます。御説明ありがとうございます。今回のように横串のテーマを設定されたことについては、国民にとってとても分かりやすいという意味で私は評価したいです。その上でいくつかコメントします。4点あります。
1点目です。財審は、基本的に国の歳出を扱う審議会ですが、今回のテーマの成長を考える場合、歳出だけではなくて、規制緩和、税制、さらにはPFI・PPPといった公民連携など、歳出以外の手段について検討が必要になってくるわけですが、成長するためにどのような政策手段が望ましいのか、補助金だけに頼らない幅広い政策の手段の検討をお願いしたいと思います。その意味では、今回の資料は規制改革にかなり言及されているということを評価したいです。
2点目です。他の委員も言われましたが、今になって成長を目指したわけではなくて、これまでも成長は目指されたということですが、それでも低成長に甘んじてきたわけです。何がボトルネックなのか、この点の整理があってしかるべきかなと思います。その上で、優先順位づけ、最適な手段を選んで、いつまでにどれぐらいの成長を目指すのかの数値目標を設定することが必要かと思います。
3点目です。各論として、労働移動の促進は非常に重要であると思っています。このとき、企業に人材を留め置くのではなく、人への投資を促進してリスキリングを進めるということで労働を流動化するということが大切です。行政事業レビューでも取り上げているわけですが、政府の現在の補助金は、労働を企業内に留め置くことが非常に重視されているように感じています。企業向け補助金を個人向けに再構築していくことが大切であると思います。
最後、4点目ですが、今回のような横断的なテーマのくくり方をするときに意識すべきことは、民間部門と公共部門の役割分担であると思います。要は、主語が誰なのかを明確にしておくべきであると思います。その上で実施計画レベルに落とさないといけません。大きい絵としては理解できるのですが、誰が何をするかを明確にして、実行可能性を高めていく段取りを組んでいくことが重要であるということを最後に指摘をしておきます。
以上です。
〔土居部会長代理〕それでは、権丈委員お願いいたします。
〔権丈委員〕権丈です。御説明ありがとうございます。私からは労働市場、人への投資に関してコメントを2点、質問を1点ほど申し上げます。
1点目は、本日の総論部分でも御説明があった、労働の量に頼れない以上、人への投資による質の向上が必要であるという点については、労働力希少社会の中で取り組むべき課題であると考えています。その中で、今回、非正規雇用が明示的に取り上げられていますが、女性労働にはほとんど触れられておりません。先ほど宮島委員が女性労働に関して話されたところは、大事であると思います。そして、恐らくは次回の人口の部分などで扱うということであると思いますが、非正規雇用や就業を中断することが多い女性労働に関しては、継続就業しやすい、また、再就業しやすい環境整備は、量だけではなく質の面にとっても重要になってきます。職場経験によるスキルの向上により質を高めることになりますので、意識しておいてよい点であると考えております。
2点目は、教育訓練を通じた労働力の質の向上についてです。企業内の訓練投資も引き続き重要ですが、今回御指摘されている、個々人が主体的に学び直しに取り組むというところも大切なところです。2007年にワーク・ライフ・バランス憲章ができ、数値目標を示した行動指針の下、就業率の向上や長時間労働の是正などに取り組んできたのですが、目標年である2020年までにほとんど進捗が見られなかったのが、自己啓発を行っている労働者の割合です。能力開発基本調査によれば、自己啓発を行う上での問題点として最も大きな理由となっているのが、仕事が忙しくて自己啓発の余裕がないとなっています。正社員、正社員以外ともにこの点を挙げています。自分たちで自由にできる可処分時間がないと、主体的な学びも家事・育児もできないので、労働時間については、様々な観点から引き続き取り組むべき課題であると思います。
また、長時間労働の背景には、賃金が低く長時間働かざるを得ないという面もありますので、今回御提示いただいた経済の好循環の実現には取り組むべき課題であると考えております。
3点目は、7ページの労働市場政策への公的支出のグラフについて、質問とコメントを兼ねてとなります。質問としては、ここでは、積極的労働市場政策を取り上げているのか、それとも、これに加えて失業給付等のパッシブ、受動的・消極的な労働市場政策も含んでいるのかというのが質問です。数値から見ると、両方含んでいると思われます。例えば、数値が最も大きいデンマークは、職業訓練、職業紹介、援助つき雇用などの積極的労働市場政策が大きく、柔軟な労働市場を形成し、柔軟性と保障のバランスに配慮した政策を展開していると読めるのですが、第2位のフランスは、むしろ恒常的に失業率が高く、失業給付が大きい国になります。解釈上注意が必要になりますので、できれば二つを分けて示しておくとよいですし、少なくとも定義の説明をしておくとよいと思います。
以上でございます。ありがとうございます。
〔土居部会長代理〕御質問につきましては、後ほどまとめて御回答いただくという形にさせていただきたいと思います。
それでは続きまして、末澤委員お願いいたします。
〔末澤委員〕おはようございます。実は私は本日、東京6時発のぞみ1号に乗って、今大阪に来ております。私が乗った車両は満席でございまして、ビジネスマンが中心なのですが、一部外国人の観光客もいらっしゃると。ビジネスマンは大体新大阪で降りましたので、相当経済再開本格化、出張も本当にパンデミック前に戻ったということであると思います。
一方で、外国人の観光客が6時の新幹線に乗っているというのは、私は以前はあまり見たことがないので、相当この日本というのが、ある意味でお安い観光立国になってきたのだろうということであると思います。
それで、これは何の話をしているかというと、今日はスタートアップの45ページのところへ行きたいのですが、実は今日、日本経済新聞の1面に、衆参5補選の話ではなくて、その下に、新規ユニコーンが10分の1に急減したという記事があります。新規ユニコーンというのは、要は、企業価値が10億ドル以上の未上場企業、これが今年の1―3月期に新たに誕生したのが13社と。去年は130社近かったので、10分の1になったという話なのです。今年の3月時点でユニコーンの数が世界全体で1,206社なのですが、そのうち実は日本は僅か6社にすぎないと。6社です。1,200プラス6ということでございます。何で10分の1になったかというと、これはやはり昨年以降のインフレ高進、金融引締めによって金融環境が相当厳しくなったので減ったと。そうした意味では、やはりアニマル・スピリットが海外では相当生きていて、金融引締めによって減ったと。日本は6社で変わっていないのです。ずっと増えてもいないし減ってもいないということなのです。
それで、このスタートアップのグラフの右側を見ると、米国、カナダ、英国、フランス、ドイツ、日本とあります。私はこのグラフを見たときに、似たグラフがあるなと。何かというと、合計特殊出生率です。G7の中で最も出生率が低いのは、日本、イタリア、ドイツで、フランスとかアメリカとかは高いわけです。
何が言いたいかというと、こうしたスタートアップが増えないということもやはり少子高齢化が私は起因しているのではないかと。つまり、バブル期以前、もっと言えば、今75歳に近づいていますが、団塊の世代の方はお子さんが多いので、要は家業を継げるわけではないのです、これは農家であろうが商業であろうが。そうすると、次男、三男、四男は、女性も含めていろいろ外へ出て、場合によっては新しい会社をつくる。今はもうお一人様が中心なわけです。そうすると、家業はもう自動的に継ぎたくなくても継げるし、逆に言えば、家の中にずっといることもできるわけです。
だから要は、スタートアップの、今日は成長戦略があるのですが、やはりこれは日本の人口政策、また、いろいろな社会的な慣行も含めて、本当に一から総見直ししていかないと、少し補助金出した、金融緩和したぐらいで増えるような話ではない、相当構造的な話になっているということを言いたいということで、次回の人口のところを期待して話をつなげたいと思います。
以上でございます。ありがとうございました。
〔土居部会長代理〕それでは、田中委員お願いいたします。
〔田中委員〕田中でございます。ありがとうございます。私からは2点御発言させていただきます。
一つ目は、8ページのところにあった学び直し支援に関してなのですが、こちらは、現行制度では対象とならない人たちの層が大きく二つありまして、一つは経営者で、スタートアップで会社を設立はしたのですが、次のステップに悩んでいるような方とか、もう一つは事業承継者本人で、次のステージに行くために相談相手もいない、だから学びたいという個人がいるのですが、セーフティーネットという観点では少しずれるかもしれないですが、なかなか人も原資も限られる中で困っているというふうな方々がいて、もう一つは、地方公務員の中で、学校の先生ですとか特別支援学校の先生なんかも、今、個人で学び直しをしているということを周りでよく聞くのですが、社会の今を知って、そこに呼応するような政策立案や教育指導を志向して、学び直しを決意するというふうな流れが顕在化をしています。課題や実行することが明確になっている人への支援というのは、スピード感も出せますし、現行の仕組みは、企業派遣による場合が主軸で、今回の問題提起にも整理していただきましたが、そのとおりで、実際、大手企業等では、手続も多少煩雑だからか、本制度をあえて使わないというふうなところも散見されます。財源が、こうした保険等によるところで対象外に現状なっている方々なのですが、成長の担い手である人たちですので、このタイミングで加速をしてもらうことに意味がありますし、成果も見込めるのではないかと想像しております。
もう1点は、最後のほうの51ページ辺りでTLOの話なんかもしていただいたのですが、大学が保有する技術シーズを基にグローバル市場を目指したり、また、地域課題の解決を行うような大学発のベンチャーの創出というふうなことを目指して、GAPファンドプログラムというのも始まっていますが、ここもVCやエンジェル投資家が入って、採択後のサポートやアドバイスやメンタリングが実施できて成果が出せるかどうかというのが大きな課題になっていますし、従来から大学と企業をマッチングするような装置として、JSTとかNEDOが機能してきているというところがありますが、やはり今、大学の技術シーズというのは、社会にとってはまだまだ分かりづらい。同時に、企業は基礎研究から離れているというふうな現実もあるわけで、今回の財審のテーマも、横断で見通すような企画が今日も始まっているところですので、高等教育機関領域内での更なる連携が必要で、大学の知恵を社会につなげるという、そのやる気と企画を顕在化して打ち出すということが問われていると思いますし、予算措置もいろいろ今、少し分散化しているところがあるかと思いますので、ここをやはり認識をすることが強みになるかなと思っております。
よろしくお願いします。
〔土居部会長代理〕それでは、また会場に戻りまして、河村委員から順に御発言をお願いしたいと思います。
〔河村委員〕御指名ありがとうございます。御説明ありがとうございます。私からは、総論のところからの人への投資、GX、科学技術・スタートアップと、少し一言ずつ言わせていただければと思います。
最初、4ページのところで御説明くださった成果志向、アウトカム・オリエンテッド・スペンディングのほうに、ワイズスペンディングではなくてアウトカム・オリエンテッドにということで、まさにそのとおりであると思うのですが、やはりもう一つ、少し観点が別になると思うのですが、大事なところがあるのではないかなと思っておりまして、国が関与する、財政支出が関与するというところは、市場の失敗が行われるところに政府として関与していく、そこを考えていくべきなのではないか。何でもかんでも出すと、政府の失敗ということもありますよね。ですから、そこをやはりきちんと考えてやっていくべきなのではないのかなと思います。
人への投資のところですが、企業ではなくて個人への直接支援にだんだん転換していくべきであるとか、それから、非正規のところにも目を向けた提言をいろいろ書いてくださっていて、本当にこのとおりであると思いますし、是非お願いしたいと思います。
先ほど申し上げたお話と関連で言いますと、非正規の問題がこれだけ根深くなってしまった元をたどっていけば、例の日本が銀行危機に陥った時代のことがあって、本当に産業界も含めて大変な状況にあって、雇用が部分的に、一部の正規は守りながら、だんだん非正規のほうのウエートを上げていってということになっていった。企業の側にはいろいろ理由がもちろんおありになったとは思うのですが、ある意味企業からすれば合理的な行動だったのかもしれませんが、そのままにしておくとこうした状況になって、社会的に大きな問題になって、やはりこの国の低成長の大きな原因になってしまっていると思いますので、こうしたところこそ、同一労働同一賃金というのも出ていますし、非正規と正規の間で溝ができているのを縮めるというか、一回非正規の世界に入ってしまったらずっとそのままになってしまいがちなんて、そんなことがないように、そうしたところにこそやはり政府の力を使って財政支出をしていくべきなのではないかなと思います。
GXのところです。ここは、16ページでお書きくださっているように、脱炭素に向けて、国内だけではなくて海外需要の取り込みが重要であるということで、まさにそのとおりであると思います。ただ、それに向けた動きができているかというと、残念ながら非常に疑問であると思います。去年アメリカでインフレ抑制法が成立したとき、あの国も後発ですが、かなり力を入れてやってくるということなのですが、これに最初反応したのはフランスでしたよね。マクロン大統領が猛反発し、ドイツが猛反発し、フォン・デア・ライエンさんが猛反発した。ヨーロッパは早い時期からカーボン・プライシングも入れて、企業がこの分野での世界的な覇権を取りたいと思って一生懸命やっている。アメリカも巨大市場です。ただ、そこから締め出すような感じの内向きの法案ですよね。そこにヨーロッパがかみついたのに、同じ声が日本から上がってきたか。出てこなかったですよね。やはりここに正直、非常に残念ではありますが、現状が出ていると思います。
ここは財審なので、歳出の話をするところなので、あまりほかのところのことを言うわけにはいかないし、言ってはいけないのかもしれませんが、やはりカーボン・プライシングの導入が遅れている。2030年から?え、本気でやるの?という感じですよね。そうしたところがやはりすごく出てきてしまっているのではないかなと。ですから、そこはよく財政としても出方を見極めてやっていく必要があると思います。
次に科学技術のところです。今回のように、今までは文教ということで科学技術と大学とか一緒に議論を下さったのが、科学技術ということで分けて、これはこれで良いと思うのです。ただ、やはり何となく、「技術革新の成長力を高めるためにはお金が必要」的なほうに行ってしまわないかなというか、資料の最初のところでは、35ページのところですか、政府支出が論文の生産数とは相関するがインパクトとは相関しないとか、ちゃんと書いてくださってはいるのですが、とかくお金、お金にばかりなってしまわないかなと。で、心配しておりますのは、今日ここでは直接的に取り上げられていませんが、大学ファンドは、ここでもいろいろ議論があって、問題点の指摘も出ていると思いますが、運用のところ、高いリスクばかり取ってというほうにばかり行ってしまわないのかというのを非常に心配します。やはり基金を受け入れてということで、それも運営費交付金とか国の助成だけに頼らないでというのは大事であると思うのですが、少しリスクの取り過ぎ――3月末には東大がオルタナの比率を6割に上げるとか出ていても、やはりそうだったのねという感じで、ぞーっとしてしまうというか、GPIFは、オルタナは長期的に見てもやはり5%が限界ということで慎重に慎重にやっていますが、それから比べるとどれだけリスクを取ることになるのか、そうしたところはやはりよく考えたほうがよいと思います。
最後にスタートアップのところなのですが、廃業率が低いという御指摘が46ページでありましたが、本当にそのとおりで、でも、これはやはり金融環境の影響も大きいですね。金利水準が正直申し上げて少し低過ぎる状態が長く続き過ぎていないか、そちらの影響も大きいと思います。この分野での政府の支出の在り方は、冒頭で申し上げたような、やはりここはなかなか難しいですよね、一番こうしたところでお金を補助金とかで出してしまうと、政府の失敗につながりやすいところでもあるので、そこは十分気をつけてやっていったほうがよいと思います。
以上です。
〔土居部会長代理〕秋池委員お願いします。
〔秋池委員〕3点ございます。
一つ目ですが、ワイズ・スペンディングということについて、先ほど来、お話がありましたが、政府のお金の使い方には、費用的な部分と投資的な部分があると考えております。まず、費用的な部分については、これが適正な水準の単価ないし量で使われているのかということが重要です。これは過去にも随分議論されてきているところであると思います。このときの適正さというのが、今日的観点で言いますと、以前はそれが多過ぎないかという議論が多かったわけですが、特に人件費を含めて、過剰な買いたたきであったり、転嫁できないような水準になっていないかということで、少な過ぎるのもよくないわけで、適正な水準であることというのを見極めていく必要があります。費用的な予算につきましては、費やすことのアウトカムが見えやすいというところはあろうかと思います。
一方で、難しいのが投資的予算であります。投資的なお金は、目的がないとそれを評価できないわけで、何が目的だから何をリターンとみなすかというところの設定をしなければいけないということ、また、そのお金の使い方、そのタイミングであり、量というものによっては、せっかくトータルで同じ金額であったとしてもタイミングを逸すれば成果につながらないということも出てまいりますので、こうした辺りはよく考えていく必要があろうかと思います。
そこに関わるところで、2点目ですが、イノベーションについてです。この数年、研究開発に関しましては予算の額も随分上がってきたと思います。一方で、イノベーションが本当に形になるのは、これが研究開発からスケールアップされて事業化するということでして、それによって初めて雇用も生み出されるし、社会を変えるような良い技術が実現することにもつながるわけです。
では、投資が、これは民間も当然やらなければいけないわけですが、その量が少ないというのもあったのですが、やはりこれは例えば製品化のために投資をすれば顧客に使われてリターンが出るということが予見できないと資金調達もできませんし、経営としても意思決定がしにくいところがございます。このあたりの長期的な計画なりが見えることが非常に重要であです。一過性ではなく継続的に顧客に使われるということが見えないとなかなか踏み切れないのではないかと思います。
3点目です。緊急事態、例えば今回のコロナ禍、あるいは自然災害のようなものがあったときですが、このときのお金の使い方は新しい産業構造に導くものであるようにと思います。起きた瞬間は、やはりその瞬間の雇用を維持することであったり、まず人々の生活を維持していくこと、元に戻していくことに集中するのは当然ですが、その後にも何年間という時間は当然ながらあるわけです。これが新陳代謝を阻害するものであったり、あるいは復旧なり、復興なりをしたことの投資が、むしろ将来の維持費用を増やすことにつながって、地域にとって重荷になるということがあってもいけません。しかし、こうしたことが起きたときというのはどうしても、情緒も含めて、危機が起きたときに厳しい判断というのはしにくいと思うのです。ですので、あらかじめよく考えておくことが非常に重要であると考えております。
以上です。
〔土居部会長代理〕熊谷委員、お願いいたします。
〔熊谷委員〕ありがとうございます。私からは、我が国における労働生産性低迷の原因と、必要とされる対応策等についてコメントさせていただきます。
第1の原因は、産業企業の新陳代謝の遅れです。米国では、生産性の高い分野に資金や労働資源が投入されているのに対して、日本では、低生産性分野にそれらが張りついています。また、供給過剰の構造が定着していることなどにより、不当に低い価格設定、プライシングが継続するという経路からも労働生産性の低迷が続いています。具体的には、日本では、2000年時点より労働生産性が低い業種に対して、直近の労働資源の35%が導入されていますが、この比率は、米国では26%、英国では21%、スウェーデンでは僅か13%にすぎません。今後、我が国は、適切なペースで、産業の新陳代謝を進めるともに、積極的労働市場政策を加速することなどを通じて、失業なき労働移動を促進する必要があります。
第2の原因は、第1の原因とも密接に関連しますが、労働市場の機能不全です。我が国では、正規、非正規という、世界でも例を見ない労働市場の極めて不健全な二極化が定着しています。私は、同一労働同一賃金の実現を通じた正規、非正規の格差是正などを中核とする抜本的な労働市場改革こそが、我が国の成長戦略のセンターピンであると考えております。具体的には、正規、非正規の格差是正に加えて、いわゆる女性労働のLカーブの解消、さらにはそれらと表裏一体の問題として、正規雇用の流動化や中途採用の一般化などを推進するとともに、人への投資を中心とする無形資産投資を増加させ、リスキリングを推進して、労働者のエンプロイアビリティーを高めることなどが喫緊の課題です。
なお、御参考まで、私ども大和総研の暫定的な試算を御紹介させていただきますと、女性のLカーブを解消できれば、向こう20年間で60兆円以上の経済効果があります。また、不本意非正規をゼロにすることができれば、同じく30兆円以上の経済効果が生じます。
その他の原因につきましては、時間の関係もございますので、簡単に申し上げます。
第3の原因として成長分野への投資が不足しています。第4にダイバーシティの欠如などからイノベーションが起きておりません。第5に、現状は企業経営力が満足できるレベルに達しているとは言い難い状況であり、今後は、コーポレートガバナンス強化などのミクロの問題にまで踏み込んだ政策対応が必要となります。
ここまで日本経済が抱える五つの代表的な問題点を指摘しましたが、いずれも政府が財政支出の量を増やしただけで解決するような単純な問題ではなく、PDCAサイクルの強化やEBPMの推進などを通じた財政支出の質の向上と、規制・制度等の改革を車の両輪として解決を図ることが不可欠であると考えます。
私からは以上でございます。ありがとうございました。
〔土居部会長代理〕武田委員、お願いいたします。
〔武田委員〕ありがとうございます。本日は包括的な資料の取りまとめをありがとうございます。
共通項として感じたことを3点申し上げます。
1点目は、他の委員もおっしゃいましたように、政府と民間の役割の明確化、これがもっとなされるべきではないかと感じます。最近では、モダン・サプライサイド・エコノミクスということで、従来以上に政府の役割を重視する志向はございますが、やはり成長の源泉は民間主導でのイノベーションであることは揺らがないと思います。その中で政府がやるべきことをしっかり見極めて行っていくことが重要で、単に補助金支出だけではなく、制度設計、ルール化、規制緩和、税制、これらを組み合わせて最適化を図っていく視点が重要ではないかと思います。
本日、資料の中で人材をかなり厚く取り扱っていただいていますが、やはり長年言われている労働市場の流動性に関する議論に加えて、働き方に中立な税制という観点で、配偶者控除や第3号の問題、にも取り組むべきではないかと思っており、そうした議論との組合せで政策議論が進むことを望みます。
2点目は、アウトカム志向の浸透です。検証の重要性はこれまでも何度も議論されてきましたが、形式的にレビューシートを埋めることで終わると、本来の効果が得られません。アウトカムが何かを意識して政策を立案すること、こちらから始めていくことが重要と思います。結果として、アウトカムが達成されたかを検証し、必ず次の政策決定のプロセス、予算編成に生かすところまで仕組み化していただきたいと考えます。
3点目、海外経験の適切な評価についてです。24ページ、DX人材について、左下に表がございましたが、デジタルスキルに加えて、国際経験が63位でデジタルだけの問題ではないという点。また、長らく指摘されている研究の国際化の遅れ、こちらも本日提出いただいている資料では、海外研究について努力に見合う評価が得られないとございます。こうしたインセンティブが働かなければ、国際化を唱えても進まないという現状を繰り返しておりますので、産官学で適切な評価指標をもっと浸透させるべきではないかと思います。これは必要な投資という考え方が必要ではないかと考えます。
以上です。
〔土居部会長代理〕小黒委員、お願いいたします。
〔小黒委員〕ありがとうございます。私からは3点、コメントと、また、一つお願いさせていただきます。
まず1点目ですが、財審の資料の4ページ目のところにありますが、これは改めて確認です。拡張的な財政運営は持続的な成長につながっていないということはそのとおりかなと。これはデータ上、1990年度から2022年度末までの債務残高(対GDP)ですが、分母をGDPで、分子を債務残高と見た場合、この期間において債務は大体860兆円ぐらい増えております。その中で歳出の拡大の寄与分が大体620兆円ですが、名目GDPは僅か90兆円ぐらいしか増えていないということで、歳出の寄与を100(100%)とした場合、名目GDPは14(14%)ぐらいしか増えていないのが現状です。拡張的な財政政策で経済を刺激すれば債務残高(対GDP)を抑制できるという意見もありますが、過去のデータ上、現実はそうなっておらず、それで財政の持続可能性を高めるのは極めて難しいと思います。
次に、では、成長の関係でどうするのかということで、労働市場の話が出ておりましたが、これはひとつコメントで、こうした話もありますという話を少しさせていただければと思います。
財審の資料の6ページ目のところに、労働生産性のグラフがございます。これは下の注のところで、GDPを総労働時間で割った値となっておりますが、一人当たりの実質GDPの伸びをバブルのあるピークであった、例えば1990年を基準に比較した場合、私が一つ抜けているのは、労働時間の要因も結構大きいのかなと思います。こちらのグラフはドルベースで見ておりますが、各国の通貨ベースで実質化して、例えば(日本の経済力が世界的に最も高かった)1990年度の各国の一人当たりGDPを1とした場合に、その後のアメリカと日本がどうなっているのかということです。そもそも、1990年のときのアメリカの労働時間は1,700時間ぐらいでしたが、日本は、労働者一人当たり年間2,000時間ぐらい働いているという形でございました。
今どうなっているかといいますと、アメリカは1,700時間になります。他方で、日本は1,500時間ぐらいしかなっていないと。これは仮定の計算ですが、仮に日本とアメリカで比較したときに、日本の労働時間は減ったわけですが、日本が1990年と同じ時間、働いたらどうなるかということです。現状では、一人当たり実質GDPは2019年時点で、アメリカは1990年度と比較して1.5倍ぐらいになっているわけですが、日本は大体1.3倍ぐらいしかなっていない状況です。他方で、日本の労働時間が仮に1990年と同じであるとした場合、どうなるかといいますと、実は日本は1.6倍ぐらいになっているという試算ができます。いまは働き方改革も重要で、これは労働時間を増やせという意味ではないですが、労働時間の変化要因も大きいのではないかということです。
3点目です。資料にはありませんが、やはり空間的なところも含めて人口密度も考えていく必要があるのではないかと思います。もう御存じのとおり、生産性は人口密度の高い地域のほうが高いということは、経済学の査読論文を含め、これは学術的にもかなりいろいろな実証分析が出ております。他方で、日本は、全体で人口が2050年までは大体25%減少しますし、2100年までには50%の減少になる。そうしますと、首都圏、東京も含めまして人口減になることはもう避けられないということで、どういった地域にどのような投資していくのかということ、それと同時に、人口密度の維持をどのように誘導していくのかというところも重要ではないかと思います。
特に都市部への投資、ここをどうしていくのかということで、バラマキではなくて、やはり集中的に人口密度が維持できるエリアに投資していくというところが必要なのではないか。この関係では、政府のDXとかいろいろな民間の試みも進んでおりますが、社会資本投資や民間投資の政策的な誘導につき、例えば空間的に共用できるものについては、バラバラにやるのではなくて、共有化してやっていくというところも重要になってくるのではないかと思います。
それから、最後にお願いなのですが、岸田政権の肝は、人への投資ということになってございます。奨学金や子育て支援の拡充などの動きもあります。しばらく政府がずっと前に出していた世代会計がありますが、これはやはり人への投資というのは、人的資本投資を含め、特に若い世代に対してどのようになっているのか可視化することが重要であると思います。そうした意味では世代別にどうなって変わっていくのか。あるいは、今日お話にもありますが、セーフティーネットの関係で言えば、再分配政策も含めて所得階層別でどうなっていくのかというところ、それから、昨今の少子化対策でも出てきておりますが、税、それから、社会保険料の負担がどうなっていくのかというところ。これは特に手取りで、一時点ではなくて、生涯賃金に対してどう変わっていくのかということも世代会計では生涯賃金税率のような形で出すこともできます。生涯賃金税率というのは(各世代の生涯における)受益と負担の差額である純負担が生涯賃金に対してどうなっていくのかということですが、そうしたものも少し見ていく必要があるのではないかなと思っております。
以上でございます。
〔土居部会長代理〕それでは、再びテレビ会議システムで挙手されている委員の方々に御発言をいただきたいと存じます。
福田委員、横田委員、小林慶一郎委員の順に御発言をお願いしたいと思います。
それでは、福田委員、お願いいたします。
〔福田委員〕2点、コメントさせていただきたいと思います。
既に多くの方がおっしゃっていることとも少し絡みますが、財政政策といったときに、景気対策の財政政策と、それから、成長を促進するための財政政策というのは本質的に異なるということであると思います。景気対策の場合には、財政拡大、金額がある程度重要ですし、増税というのは景気には足かせになりますので、できるだけ避けたほうがよいという議論はあると思います。
一方で、成長を拡大するための財政政策というのは、あくまでも市場の失敗というものを是正するというのが大きな目的になります。その際には、いわゆるアメとムチの政策が多くの場合、重要で、一生懸命頑張っているところに関しては補助金でそれを促進すると同時に、消極的なところに対しては課税する。これは景気対策上は課税するというのはあまりよくないのですが、成長促進的な政策の場合にはそうしたことも必要であるということです。
例えば、今、日本の大きなテーマである脱炭素化は典型的であるとは思いますが、当然クリーンなエネルギーを生み出しているところに対しては、ある種の補助金というのは一定程度必要であるとは思いますが、一方で、そうしたものに消極的でないところに対しては炭素税を課すということが大事で、これは両方、両輪になって政策というのは機能するものであって、やはり景気対策の発想で、お金さえ支出すれば何か物事がうまくいくという発想は改める必要があるとは思います。
それから、2点目は、経済全体の資金フローに関してですが、日本経済全体として見ると、資金余剰が家計セクターだけではなくて、企業セクターに存在しているということは事実ではありますが、事務局の資料でもありますが、やはりスタートアップとかそうしたところに関しては資金を供給して、成長を促進していくということが必要ということであるとは思います。
ただ、日本の金融システムというのは、これまでどこに資金が流れやすくなるような仕組みづくりがつくられてきたかというと、余剰資金がもう政府セクターにどんどん流れやすくなるように、流れやすくなるように資金の流れがつくられてきたと思います。巨額な余剰資金というのを政府セクターが、そんなに高いリターンではないが、非常に安定的に資金を吸収してくれていた。それが、他方では本当に必要なところに資金が十分流れないというメカニズムを他方では生み出してしまっていたという面はあるのだろうとは思います。
そうした意味では、政府セクターがせっかくある余剰資金をどんどん吸収してしまうという流れはやはり断つべきで、そのためにはやはり財政再建というのが必要になってくる。そうした意味で、成長を促す上での資金フローの流れを変えるという意味でも、過度の政府債務を削減することが必要であるということは申し上げたいと思います。
私からは以上です。
〔土居部会長代理〕横田委員にお願いしたいのですが、小林委員が途中退席をされるということですので、申し訳ございませんが、順番を変えさせていただきまして、小林慶一郎委員に先に御発言をお願いできればと思います。
それでは、小林委員、お願いいたします。
〔小林委員〕すみません。聞こえていますでしょうか。
〔土居部会長代理〕はい。聞こえております。
〔小林委員〕順番を変えてすみません。横田委員に申し訳ありません。先に一言、発言させていただきたいと思います。3点、簡単に発言します。
一つは、今日の資料に入らないような総論的な話かもしれません。先ほどの福田委員の最後のお話にもあったようなことですが、財政の持続性が確保されることによって、将来不安や、将来の不確実性が軽減されることで国民が成長できる、あるいは国民が安心して、消費や投資を増やしていけるという、こうしたメカニズムもあるということを我々は明確にすべきではないかと思います。要するに、財政の持続性の確保自体が将来不安を軽減して、成長を促進するための政策にもなっているということは強調してもよいのではないかと思います。今回の資料の文脈にはなかなか入らないと思いますが、財政審議会としてはそうした考え方も強調すべきかと思います。これが1点目です。
二つ目は労働市場の話です。これは多くの委員から出ていましたが、私も一つあるのは、失業についての捉え方です。失業がない状態で労働移動が起きて、生産性の高いセクターに人が円滑に移動できるというほうが理想ではありますが、失業が増えることに対して、政策対応を充実させることが必要であるということから目を背けることがあってはならないのではないかと思います。
ですから、失業した場合に備えたセーフティーネットは手厚くするべきであって、雇用保険の被対象者の失業に対する支援というものは特に充実させるべきであると思います。雇用保険への加入資格のない、一部の短時間の労働者であるとか、あるいはフリーランスの方についても、雇用保険の拡大であるとか、あるいは所得が中断したときの所得補償の制度のようなものの導入をしっかり検討するということであると思います。
大きな考え方として、失業を出さないための政策を頑張るとしても、それをやっても失業者が多く出る場合があると。それは産業構造が変わるときには多くの失業者が出る場合があるので、それに備えるための政策をしっかり充実させるという、こうした思想を堂々と政策展開すべきではないかというように思います。
3点目は、やや小さな話ですが、今日のテーマであるDXとかGX、あるいはイノベーション、スタートアップ、これらの項目はそれぞれに独立ではなくて、当然相互に有機的に連関していると思います。その連関についてしっかり着目して、財源のメリハリをつけるべきであると思います。例えば各項目の集合のベン図のようなものを書き換えてみれば、例えばGXとイノベーションというのは当然重なりの部分があって、その重なりの部分にある政策というのがあるわけです。そうすると、いろいろな政策、これらのDX、GXなどの政策分野の重なりの部分にある政策については手厚く財源を配分する。それ以外についてはやや、手厚くはしないとかそうしたメリハリのつけ方を工夫して、政策資源の投入の優先順位というものを明示すべきではないかというように思います。
私からは以上です。ありがとうございました。
〔土居部会長代理〕それでは、お待たせいたしました。横田委員、お願いいたします。
〔横田委員〕ありがとうございます。私からは、3点、コメントと、1点、リクエストをさせていただきたいと思います。
まず労働市場の件ですが、人材育成に関して、企業から個人に移管していくということは非常に重要であると考えております。というのも、先生方もおっしゃっていますが、流動化が進んでいく中でいうと、企業によっては育成マインドというのがそがれてしまう部分もあったりしますし、そこを個人の判断でスキルアップのための研修等を受けやすい環境を後押ししてあげるということがフェアになっていくのではないかと感じているというのがまず1点目です。
また、人材に関する2点目は、企業も柔軟な働き方や人材登用の観点では二極化していると感じております。なので、正規、非正規だけの問題ではなくて、先ほど小林委員がおっしゃったように、今後、フリーランスも含めた幅広い射程の中で、労働市場全体でどう人材育成を行っていくのかというのも1点ありますし、人材育成は研修だけではなくて、例えば兼業、副業することが実は社外OJTでもあるという見方もあったりしますので、柔軟な考え方を持って、制度も見直すというのを抜本的にしていくというのが良いのではないかと思います。
2点目です。2点目はDXなのですが、自治体の法定受託事務に関するシステムの標準化が固まり、導入に向け、着々とビルトインが進んでいるというところであると思います。今回、中央省庁におけるシステムの項目の標準化によってデータの流通がもっとよくなるようにするという方向性、是非早急に進めていただきたいと思ったのが2点目のコメントとなります。
最後は、スタートアップについてとなります。田中里沙委員のコメントと重なりますが、現在、文部科学省で、JSTを通じて、国内で8つのプラットフォームができ、大学間で連携しつつ、民間も巻き込みながら、研究シーズのベンチャーとしての立ち上げる支援が積極的になされているところです。なので、TLOのマーケティング力の強化というところは大賛成ではあるものの、TLOで並行してプラットフォームが立ち上がるということであればあまり賛成できないと思います。是非連携してやっていただきたいと思います。
大学の先生方も特許を取ったものをスタートアップで立ち上げるのが良いか、ライセンシーをして、スタートアップに活用してもらうのか、悩みながら文科省のプロジェクト側でも動いていたりもします。連携して、うまく効率的に成長力を高めていくということが重要であると思います。
ということなので、最後にリクエストとなります。せっかくテーマ横断でいろいろ挙げていただいて、今、試行錯誤というところであると思うのですが、今回、TLOの件に関しては事例として出ていましたが、スタートアップの中でどれだけの予算が各省に振り分けられているのかというのもかなりバラバラになっていて、俯瞰的に見るのが難しいので、そうしたところも是非出し合って、俯瞰できる状況の中での1例としてお示しいただけるのがよいのではないかと思いました。
以上でございます。
〔土居部会長代理〕それでは、会場に戻りまして、6名の委員の方からの御発言を順にお願いしたいと思います。
それでは、滝澤委員、お願いいたします。
〔滝澤委員〕ありがとうございます。私は生産性の研究をしておりますため、本日は特に1の労働市場・人への投資に対してコメントさせていただきます。8ページ目の企業から個人への支援というのは、労働市場の流動化の観点から適切なように思いますが、2点留意すべきことがあると思います。
1点目は、恐らくバブル崩壊まではうまく機能していたメンバーシップ型の雇用システムですが、現状においてもそうした雇用システムを維持している企業が多いように思います。メンバーシップ型では、企業を通じた支援あるいは個人を通じた支援であれ、労働者がどういったスキルを習得すべきかを自律的に検討することがやや難しいように思います。こうした支援を進めると同時に、自身に必要と思われるスキルが明確な職務限定型の雇用システムに移行していく必要があるように思います。
それから、本日、吉川先生がいらっしゃる中で私がイノベーションについて申し上げるのは大変恐縮ですが、人口減少下の日本経済にとって、イノベーションが成長のドライバーとして重要であることは言うまでもありません。恐らくディスラプティブなイノベーションとも、雇用システムや多様な人材が活躍して、その結果が評価されるシステムが関係しているように思います。そうした観点からも少しずつ職務ですとか勤務地、労働時間などを限定したジョブ型の導入も促進していくべきと思います。
2点目は、人への投資に対する支援に関する評価です。9ページ目は、雇用調整助成金が取り上げられてはいますが、これに限らず、長らく実施されている教育訓練給付制度についても、例えば英会話学校に通う費用の助成が付加価値の向上に寄与したのかなど、本来であれば、適切な手法の下、効果検証されるべきであったものがたくさんあると思います。適切な評価のためには、私自身は、エンプロイヤー、エンプロイーがマッチしたデータが必要で、その辺りは統計の整備を省庁横断的に協力して、お願いしたいと思います。
私からは以上です。
〔土居部会長代理〕それでは、広瀬委員、お願いいたします。
〔広瀬委員〕ありがとうございます。2点ほど申し上げたいと思います。
1点目は、1ページの経済の好循環です。マクロ的に見ると、このとおりであると思うのですが、やはり問題は、そのマインドと、それから、実際のビヘービアであると思います。今年は、各企業は相当頑張って賃上げして、2.5%ぐらいになるのではないかという数字もありますが、問題はそのうちどれだけそれが消費に回るかということがポイントになるわけです。
やはり消費者心理として、これがまだ一過性と見れば、やはり財布のひもは堅いのではないかなと。これからも継続的、将来的に賃金が上がると、こうした確信を持って初めて支出に回るというふうに、恐らくそうしたことになると思います。そうなりますと、今年で終わりということではなくて、今後ともしばらく賃上げを続けなければいけないということになるわけですが、果たして企業がそこまで続くかどうか。特に中小企業がそうした継続的な、今年は頑張ったとしても、賃上げというのは累積で効いてきますから、将来的にそうしたことがどこまで可能かというのは新しい問題になってくるのではないかなと。そうした面で、やはり消費者が安心してお金を使おうと、こうしたような空気感というか、ムーブメントですね。そうしたことを醸成していくのも併せて大事ではないかなと思っております。
それから、2点目は、46ページですが、先ほどからいろいろな議論がありますが、日本は廃業率が低い。それから、古い企業が多いとなっているわけですが、これは恐らく同時に、労働の流動性も低いということも言っているのではないかなと思います。日本は、創業100年以上の企業が4万社もあるということだそうで、世界一の長寿企業国でございます。これをどう考えるかですが、私は大変すばらしいことではないかなと。これまで戦争、自然災害とかいろいろな経済危機を、そうした環境変化に柔軟に対応して生き抜いてきたということが言えるわけで、あるいは労使一体となって頑張ってきた結果がこうした数字で、これは誇るべき日本の歴史とも言えるのではないかなと思っています。
ただ、今、起きているのは、グリーンにしても、デジタルにしても、非連続な変化ですから、確かにもう少し企業も労働も流動性というか、これまで以上に大胆な変化が求められているということも、これも間違いないと思います。
そこで大事なのがここに書かれている再チャレンジできるような環境整備ということで、まずはセーフティーネット、これはやはりしっかりとまず支えてあげる。これがないとどうしても第一歩を踏み出せませんし、それから、えてして抵抗勢力になる。抵抗勢力というのは、言い方が少し変なのですが、非常に時間もかかるし、コストもかかるので、なるべくそうしたことがないようにしていくというのが賢いのではないかなと。
その上で、先ほど神子田さんからも話がありましたように、M&A、学び直しとか、そうした制度、仕組みが整備されて初めてスムーズな移行ができるのではないかなと。決して退出ではありません。よく、本来は退出すべきゾンビ企業が云々というようなことがよく言われますが、もちろんそうした表現、そうした側面もありますが、やはり経済というのは、マインドとビヘービア、つまり、人間が経済をやるわけですから、そうしたマインドとかビヘービア、これをやはり大事にしなければいけないのではないかという面で、やはり尊厳というのですか。そうしたものも経済の中には、理論だけではなかなか動かないわけで、そうした人権とか尊厳とかそうしたものがないと実際の経済というのはうまく回っていかないのではないかなと思っています。
以上でございます。
〔土居部会長代理〕それでは、吉川委員、お願いいたします。
〔吉川委員〕私からは2点、コメントさせていただきます。
1点目ですが、先ほどからワイズ・スペンディングということが何人かの委員の方からお話が出ていると思います。昨年の私ども財審の建議でも、ワイズ・スペンディングについて言及したということですが、確かに無条件にアンワイズと、そうしたものが時々目につくということはあるわけですが、ワイズ・スペンディングは必ずしも無条件ではないということを指摘したいと思います。これはもう何人かの委員が基本的には同じことをおっしゃっていたと理解しますが、具体的には、適当な規制改革と掛け算になることによって、言わば真のワイズ・スペンディングになると。それでないと、ノット・ワイズ・イナフということになってしまう可能性があるのではないか。具体的には、本日の資料の29ページに、DXの関係で介護分野の資料があります。皆様、御承知のとおり、医療、介護の分野というのは、特に雇用、付加価値でも成長しているわけですが、これはもう改めて言うまでもなく、高齢化の進展で、ニーズ、需要が増えることによって、雇用も増えているということですが、生産性は必ずしも高くないと。少なくとも高くない時期がかなりあったと理解しています。
今日いただいた資料でも、右側に、今でもと絶句するような問題点が指摘してありますが、この分野というのは、保険もあり、政府がきちっと適当な、言わばマーケットメイキングしないと、これは民間の事業者や何かもベストプラクティスをできるだけ早く実行しようということにならないわけですね。ですから、戻りますが、介護、医療の分野で、非常に分かりやすいということですが、ワイズ・スペンディングというのは、適当な規制改革と掛け算が同時に行われることによって奏功する。もう少し言えば、介護の分野で賃金が安いというので、賃金を底上げするということを少し前にやったと思うのですが、これは一時的な措置としてはともかく、持続可能な政策とは思えません。やはりこうした分野で生産性が上がるような新しい技術の導入、規制改革、それから、各事業者ができるだけ早くベストプラクティスに近づくようなことと相まって、そうした中で賃金上昇も起きて、人々が喜んでこうした分野に流れていくという姿にならなければいけないということであると考えています。
以上が1点目です。
もう1点、48ページでしょうか。中小事業者に関する記述があったと思います。官公需に関することです。ちょうど今、画面で指示していただいていると思うのですが、こうしたことなのですが、要は、中小企業、中小事業者というものをどのように考えるか。もう20年ぐらい前に基本法も変わって、中小企業が全て弱者ではないというようなことで、やはり規模にかかわらず、頑張るところで公的な応援が必要なところは応援しようという、そうしたようなフィロソフィーに転換したということだったと思うのです。ただ、官公需の目標に関する記述を読む限りでは、そうしたフィロソフィーというのは読み取れないということであると思っています。
これは財務省だけの問題ではないですが、財務省も政府の一翼を担っているわけで、本日も副大臣、大臣政務官もいらっしゃるのですが、やはりもう一度、企業の規模というもの、そのことに関する根本的な認識をきちっともう1回やるべきなのではないですかね。そうしたことを1回やったのではないかと思うのですが、何十年たってもあまり変わらないような印象を受けてしまう。そうすると、先ほどの1点目のワイズ・スペンディングの話とも関わってくるわけで、こうした基本的なことに関しては、政治がしっかり議論して、国民全体でコンセンサスを確認すべきではないかと思います。
以上2点です。どうもありがとうございました。
〔土居部会長代理〕それでは、平野委員、お願いいたします。
〔平野委員〕ありがとうございます。今回からテーマごとの審議が始まりましたが、最初に成長をテーマに取り上げていただいたということは大変歓迎すべきことであると思っています。そもそも過去30年にわたる日本経済の長期停滞の主たる要因は、人口問題を除けば、民における圧倒的な投資不足と事業構造改革の遅れに加え、官においては財政、金融への偏重と民の活力を引き出すための制度的な構造改革が進まなかったためであると思います。この点、現政権は、昨年来、重点的な投資分野を明らかにして、イノベーションや新しい価値の創造力を高めようとしており、その狙い自体は評価できると思います。
ただ、今日の主題である財政ということに関しては、財源は限られているので、まず第1に、いかに有効な施策を絞り込めるかと、スクラップ・アンド・ビルド、すなわち財政資源の配分の全体最適化が求められ、第2に、財政だけに依存しない構造改革、すなわち規制改革や、先ほどから皆様が御指摘されている労働市場改革、産業、企業の新陳代謝などをいかに進められるかがポイントになると思います。
それに加えて、財政において重要となるのは、先ほど御指摘されておりましたが、補償的な支出から投資的な支出へのシフトであると思います。世界の国々が失業対策や年金といった補償的な支出と、子育て、教育、研究開発といった投資的な支出にどれだけお金を使っているか、という統計をみると、日本の投資的な支出は、対GDP対比で、OECD加盟国中最低水準であるということが示されています。
また、これも先ほどから何人もの方が御指摘されておりますが、例えば、これまでの日本の産業政策や労働政策は、企業の倒産や失業の発生を食い止めることに傾きがちであり、それが間違いなく、新陳代謝を遅らせる原因の一つであったと思います。
その意味で、今回、労働市場政策において、労働移動推進型への移行と、そのためのリスキルの充実、すなわち離職、失業をより魅力的な仕事に就くための能力向上に結びつけていくという考え方、すなわち積極的労働市場政策へのシフトが示されたのは大きな前進です。もちろん財源の問題はありますが、この中で触れられている個人への直接支援及び非正規雇用に対する支援やセーフティーネットの拡大も含めて、支持したいと思っています。これらが実現すれば、ジョブ型へのシフトが進む環境整備が行われることにもなると思います。
その上で、それ以外の施策について、3点申し上げます。
1点目、GXについては二つあります。今回、規制・支援一体型投資促進策という言葉が使われています。財政的な支援だけに頼らずに、規制的な手法や経済的な手法をポリシーミックスとして活用するという考え方に賛同したいと考えています。特に、経済的手法に関して言えば、資本主義社会において行動変容を促すためには市場メカニズムを導入することが最も有効的だと考えます。例えば、気候変動問題が市場の失敗によるものであるとすれば、経済的な手法を通じて外部経済を内部化することで、財政的な負担を抑えながら政策効果を発揮することができるはずです。
もう一つは、先ほど中空さんも触れられていたGX経済移行債についてです。今般のG7の議論の状況を見ても、日本の移行への取組はなかなか正当に評価されていないと思います。そうした中で、移行債の20兆をトランジションウォッシングとみなされないようにするためにも、調達された資金の使途の明確化に加えて、効果の測定、開示などを通じて、有効性を評価できるような態勢を構築する必要があると思います。これは、ある意味、日本のトランジションボンドが世界的な標準になり得るというチャンスでもあると考えます。
2点目、DXについても二つあります。
まず、DXの本丸は、何といってもデータの利活用だと思います。そのためには民と官、特に官における省庁横断的な態勢づくりが必要です。例えば、先ほども申し上げたリスキルの個人宛の直接給付を推進する場合にも、省庁間や国、地方の壁を越えてデータを活用すれば、効果的、効率的な提供体制を構築することができるはずです。
また、いずれ話題になると思いますが、今後、医療を含む社会保障制度改革を進める上で、国民の所得と資産、負担と給付の総合的なデータの把握に基づいた制度の再設計が求められますが、そのためにも省庁横断的なデータの収集と連携は大前提になると思います。
もう一つは、一方で、DXは、劇的な行政コストの削減ももたらします。例えば、プッシュ型の給付を導入すれば、省庁間にまたがる申請受理や審査にかかる行政コストを約22%カットできるという試算もあります。しかし、それを実現するためには、明確な目標を時間軸も含めて設定した上で、進捗を確り管理する必要があると思います。この点については、特に地方自治体に課題があると思われますので、場合によっては適切なインセンティブを与えるということも考えられるのではないかと思います。
3点目、科学技術についてです。先ほど、今後は投資的な支出のウエートを高めるべき、と申し上げました。経済、安全保障の環境が大きく変化する中で、各国は先端的な科学技術開発に巨額の資金を投入していますが、我が国もこうした熾烈な競争で遅れをとってはならないと思います。そうした中で、いかに対象を選別するかという話は、先ほども出ましたので省略しますが、1点申し上げたいことがあります。
大学に関する指摘や、如何にメリハリ付けをしていくのかという仕組みづくりに関する議論については賛成しますが、35ページの図表はミスリーディングではないかと思っています。以前にも申し上げたことはあるのですが、OECDの統計で、政府部門による研究開発支出額を比べた「政府負担研究開発費」(Government financed Gross Domestic Expenditure on Research and Development)をみると、日本の水準は対GDP比でドイツの約半分、アメリカの3分の2にとどまっていることが分かります。この点は、産官学で、統計の読み方も含めて議論を深めるべきではないかと思います。私としては、不足しているのではないか、という印象を持っています。
最後に、今後の審議の進め方についてです。最初にも申し上げましたが、今回のテーマごとの取組はすばらしいと思いますが、これを続けると、必然的に重要分野を取り上げることになります。しかしながら、重要なのは、それと並んで、全体最適化、すなわち、スクラップ・アンド・ビルドだと思いますので、スクラップすべきはどうするのかという議論ができるような場を、この財政審の議会でもつくるべきではないかと思います。
以上です。
〔土居部会長代理〕芳野委員、お願いいたします。
〔芳野委員〕ありがとうございます。本日は、労働市場・人への投資とGXに絞って申し述べたいと思います。意見書も提出しておりますので、併せて建議案に反映いただきたいと思います。
まずは、労働市場・人への投資について、3点申し述べます。
まず1点目は、我が国の労働市場政策の現状についてです。雇用政策は、雇用、生活の安定の確保に向け、能力開発、人材育成と、処遇改善による雇用の質の向上などを図る施策であり、失業を防ぎ、雇用不安を緩和することが目的です。社会情勢が変化したとしても、雇用の安定に加え、OJTなど、企業内での訓練の重要性は変わりません。逆に、無理な労働移動は失業率を高め、労働者の将来不安につながり、消費が抑制され、経済の好循環を阻害しかねません。今後の雇用政策においては、現行の雇用システムを維持し、リスキリングを含む人への投資を強化するとともに、労働市場のセーフティーネットの整備を図るべきと考えております。
2点目は、学び直しの支援についてです。個人の学び直しは、今後の社会変化に対応するため、雇用形態等にかかわらず、希望する誰もが利用できる制度とすべきです。また、その予算拡充と併せて、企業への支援も維持、拡充し、訓練、研修のための休暇制度導入など、環境整備が不可欠です。特に、日本の7割を占める中小企業の人材育成、能力開発の推進は喫緊の課題であり、財政的支援やノウハウ提供が必要です。
3点目は、雇用のセーフティーネットの適用拡大についてです。全ての労働者に雇用のセーフティーネットが適用されるよう、社会保険と足並みをそろえながら、雇用保険の適用の拡大について検討することが重要です。
次に、GXについて触れたいと思います。政府の「GX実現に向けた基本方針」の実施に当たっては、「公正な移行」の実現や、S+3Eの確保を念頭に、分野横断的課題に対応できる体制を省庁横断的に構築し、関係産業や地域の労働組合を含む関係当事者との積極的な社会対話を基本に進め、丁寧な国民的合意形成を図る必要がありますが、「GX実現に向けた基本方針」のロードマップには「公正な移行」が入っておりません。早期にこれらの体制を構築し、グリーンな雇用創出や地域脱炭素化、必要なき労働移動と重層的なセーフティーネットの検討など、必要となる政策や、複数のシナリオの検討に着手するとともに、実現に必要な予算措置を十分に講じることが重要です。
以上でございます。
〔土居部会長代理〕最後になりまして、申し訳ございません。大槻委員、お願いいたします。
〔大槻委員〕ありがとうございます。成長というテーマで、皆様がおっしゃったことも、ここに書いていただいている財務省の方々の御意見も全てもっともであると思いました。
その上で2点だけ。まず一つ目は、結局、成長というのは、やはり個々人と、それから、民間企業の自律的な成長を促すものであって、政府支援はそれの呼び水及び潤滑油ということであると思います。
それと2点目は、今これだけ環境が変化している中ですと、やはり財政の使い方ということについても、アウトカム・オリエンテッド、かつ、やはりアジャイルに、先ほど平野委員からもありましたが、スクラップ・アンド・ビルドでやっていくことが必要であると思います。これら、今まで皆様にも、規制改革、制度改革の重要性ということも触れていただきまして、今、規制改革のほう、関わらせていただいていますが、正直、岩盤になっているところがあまりにも多いということも感じています。ですので、そこについては一体となって政府のほうでも進めていただきたいと思います。
個別に少しだけ触れさせていただきたい点がございます。第1に、自立成長というポイントについてなのですが、補償金のこと、それから、中小企業融資支援もそうですが、これまでの支援をいろいろやってきたわけなので、どこまでの支援が最適だったのか、効果検証をしっかりとやっていただきたいと思います。それから、スタートアップのことについて直接的に今日は触れていただいていないですが、経営者保証によらない融資というのが今、推進されつつありますが、こうした形で自立成長を促すことを重視していただきたいという点が1点目です。
それから、細かい点の二つ目としては、ローカルルールの見直しというのを触れていただいています。29ページ目、これはDXに限った話ではないですが、規制改革の話の中でも、これは非常にいろいろ出てくるところでございます。中には、数年後のDX化を理由に、現在のローカルルールについて非効率な運用を放置しているようなケースも見られるわけですので、できる限り、DX化といったときに、これを前倒しするとともに、移行措置的な、その前の効率化できるようなところについては早期に着手するような、そうしたインセンティブも設けていただきたいと思っています。
それから三つ目に、先ほど申し上げた急激な変化に対しての支援ということについての具体例なのですが、フリーランス等、いくつか皆様のコメントもありましたが、そうした請負型の労働が増えていくということを予想される中では、8ページ目にあるような、個人により適切に届くような支援とともに、学び直しで何を学ぶかということであると思います。これは現場でも関わっているところなのですが、学び直しといったときに、本当に刻々と変わる学ぶべきことを把握しているような講座の内容になっているのか。過度な監督ということは不要であると思いますが、学びを提供する側の在り方についても目配せをしていくことが重要であると思います。
それから、研究支援でございます。42ページのようなCSTIのインセンティブには期待したいところなのですが、正直、政府がこの分野が伸びるといったような予見が、過去どれくらい当たってきたのかということもなかなか難しいところかと思いますので、現場の硬直性という御指摘の点を排除しつつも、研究者の自発的な意欲を側面支援していただくということが重要であると思いますし、また、大学のガバナンス、これは大分、企業的に変わってきましたが、ただ、企業ほど成長を促すという方向になっていないという、まだまだコンプライアンスの面が重視されているといった印象があります。そうしたことも一体的に改革していく、その中で分配をどうやってしていくかということが重要なのではないかと思っています。
以上です。
〔土居部会長代理〕これまで委員の皆様から御意見をいただきまして、誠にありがとうございました。
1点質問がありましたが、端本主計官、よろしくお願いします。
〔端本主計官〕7ページだったと思いますが、権丈委員から御質問ございました労働市場政策への公的支出、これは御指摘のとおり、失業等給付は含まれております。そうした意味で、この失業率を同時にプロットさせていただき、あるいはコロナ禍で世界的に失業率が上がる前の2018年の数字にさせていただきましたが、その点、明示させていただきたいと思います。ありがとうございました。
〔土居部会長代理〕ありがとうございました。
前体制よりは少しお時間を確保して皆様に御意見をお話しいただけたのかなと思っておりますが、あいにくお時間が参りましたので、御意見を賜る時間としてはここまでとさせていただきたいと存じます。
以上をもちまして、本日の議題はこれにて終了させていただきます。
本日の会議の内容につきましては、会議後の記者会見で御紹介することとさせていただきます。詳細につきましては、後日、委員の皆様に御確認の上、議事録を公開させていただきますので、それまでは、会議の個々の発言につきましては、皆様方から報道関係者等に対してお話しされることのないよう御注意をお願い申し上げます。
次回は、4月28日15時から財政制度分科会を開催する予定となっております。
それでは、本日はこれにて閉会いたします。皆様、御多用中のところ、御出席ありがとうございました。
午前11時00分閉会