財政制度等審議会財政制度分科会歳出改革部会
議事録
財政制度等審議会財政制度分科会歳出改革部会議事次第
令和4年4月20日(水)15:00~17:20
第3特別会議室(本庁舎4階中-412)
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1.開会
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2.議題
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社会資本整備について
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産業・中小企業、グリーンについて
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防衛について
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3.閉会
部会長 |
増田寛也 |
岡本副大臣 藤原大臣政務官 高村大臣政務官 水口政策立案総括審議官 奥次長 坂本次長 阿久澤次長 八幡総務課長 藤﨑法規課長 園田企画官兼公会計室長 渡邉主計官 三原主計官 福田主計官 坂口主計官 有利主計官 一松主計官 野村主計官 北尾主計官 渡辺主計官 鈴木主計企画官 |
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部会長代理 |
土居丈朗 |
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委員 |
遠藤典子 佐藤主光 武田洋子 中空麻奈 宮島香澄 安永竜夫 |
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臨時委員 |
上村敏之 河村小百合 木村旬 熊谷亮丸 小林毅 末澤豪謙 竹中ナミ 田近栄治 田中里沙 冨田俊基 広瀬道明 別所俊一郎 堀真奈美 神子田章博 村岡彰敏 横田響子 吉川洋 |
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オブザーバー |
榊原定征 大槻奈那 小林慶一郎 角和夫 |
午後3時00分開会
〔土居部会長代理〕お時間になりましたので、始めさせていただきたいと思います。
本日は冒頭でカメラが入りますので、そのままお待ちください。
(報道カメラ入室)
〔土居部会長代理〕ただいまから、財政制度等審議会財政制度分科会における歳出改革部会を開催いたします。
皆様には、御多用中のところをお集まりいただきまして誠にありがとうございます。
歳出改革部会におきましては、より少ない人数で各歳出分野における予算編成上の各論について集中的に御議論いただき、財政制度分科会における建議につなげていきたいと考えております。
また、歳出改革部会の議事進行につきましては、増田部会長に代わりまして、私、部会長代理の土居が務めさせていただきます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
本日は、社会資本整備、産業・中小企業、グリーン、防衛について議論いたします。
それでは、報道関係者の方は御退室をお願いいたします。
(報道カメラ退室)
〔土居部会長代理〕それでは、議題に入ります。
本日は、質疑の時間を十分に確保する観点から、まず、事務局から社会資本整備、産業・中小企業、グリーン、防衛について御説明いただきまして、その後、委員の皆様方からまとめて御意見をいただくという流れにいたしたいと存じます。
まず、社会資本整備につきまして、北尾主計官から簡潔に御説明をよろしくお願いいたします。
〔北尾主計官〕ありがとうございます。公共事業担当主計官の北尾でございます。
資料をおめくりいただきまして1ページ目、今後の社会資本整備に向けた課題と視点ということで、三つ掲げさせていただいております。一つ目が災害リスクの低い立地への人口集中・コンパクト化、二つ目がストック効果の最大化、これは効率化であるとか生産性の向上といった視点でございます。それから、三つ目に維持管理ということでございまして、こちらも効率化を目指したものでございますが、便宜上このような三つの分類ということで御説明させていただきます。
おめくりいただきまして2ページ目です。こちらは秋の財審のときにも御議論させていただいた資料でございまして、災害リスクの高い土地にこれまで少し人口が集まってきてしまっていると、いろいろ施策を講じているにもかかわらずこうした状況になっているということでございまして、むしろこうした指標を中心にして、より多くの人がより災害リスクの低い土地に居住するように各政策をチェックしていく、PDCAサイクルを回していくということが必要なのではないか、こうしたことを、右側の四角枠の中ですが、昨年12月の財審の建議で御指摘いただいているところです。
このような人口減少下ですが、土地利用の変化が災害リスクを高めている状況に鑑みれば、災害リスクの低い土地への人口の移動・コンパクト化は、災害被害の軽減のみならず、行政効率化等を通じた財政の持続可能性の確保にも資するというものですので、極力被災前に、遅くとも被災のタイミングで災害リスクの低い土地に人口が移動できるよう、事前復興計画を地方公共団体において策定する、中長期的な国土計画にも位置づけていくという方向を目指すべきだろうと考えてございます。
3ページ目でございますが、まず、PDCAサイクルをきちんと回していくために、どのように政策が効果を発揮しているかを測るものが必要でありまして、右側下のイメージ図ですが人口動態のデータを地図上に置いたもの、それと災害リスクのデータを重ね合わせまして、右側のイメージ図ですと四角の格子の枠が人口の増加、このメッシュごとに人口増加を表しておりまして、例えば赤枠で太い赤枠になっている所が人口が増えている所、それから右下の凡例によりますと、洪水区域が黄色ですと浸水深が低い、それから色がだんだん濃くなって紫色になると非常に浸水深度が深いということになりますので、赤枠で囲われている所で色が濃い所、これは人口が増えている、かつ被害想定が、被害のリスクが高い所という望ましくないような地区ということですが、こうしたものを国土交通省は本年6月から順次公表予定にしておりまして、こうしたものでリスク土地の人口が増えているか、減っているかというのをきちんと評価していくと。
さらには、こちらも一つの人口動態メッシュの精度の中でも色が濃いところ、薄いところがありますので、今後こうしたところを、マクロとして数字を把握するにはまずこのレベルから始めていく、今後いろいろと運用改善を図っていくとか、それからほかの災害リスクデータを重ね合わせていくといったことで試行錯誤しながら精度を高めていくとか、あるいは、国レベルではこうした把握の仕方がありますがが、市町村では更に細かくミクロで把握できているところもあるかもしれない、そうしたところを足し合わせた形でマクロとしても把握できるかなどなど、いろいろ試しながらPDCAサイクルの核になるような政策評価の指標となるものですので、こうしたものをしっかりと可視化していくということに取り組んでいきたいと思っております。
おめくりいただきまして4ページ目です。こちらは、前回御紹介した議論の中でそれぞれ進展している事項の御報告も兼ねてでございますが、災害リスクに応じた地域ごと、市町村ごとの損害保険料率の設定ということです。金融庁の有識者懇談会におきましても、これまで全国一律の保険料の参考となる「参考純率」ということでしたが、市町村等の行政区分ごとに細分化するという検討の方向性を記載しているところです。
おめくりいただきまして5ページでございます。こちらは地震にフォーカスしたソフト対策ということですが、これまで割と豪雨災害が近年頻発しておりますが、地震・津波というのは発生頻度が低いので、どうしても常日頃から備えていこうという意識が薄くなりがちです。こうしたところもソフト対策、例えば地域ごとの津波避難計画の策定状況とか、こうしたソフト対策が十分に行われているか、これをハード整備の要件にしていくことをこうした分野でも検討すべきであろうということです。
6ページ目以降へまいりますが、6ページ目からは幾つかの大震災の経験を踏まえた実効的な事前復興計画ということで、これまで事前復興計画をなるべくつくってくださいというお願いはいろいろしているところですが、それだけではなくて、どういうところを意識した事前復興計画にすべきなのかという論点を幾つか拾ってございます。
東日本大震災のときには復興期間が長期間にわたったために住民の意識が変化し、それで必ずしも当初意図したとおりに再建が進まなくて、せっかく整備されたインフラが有効に活用されていないという事例もございますし、左下の写真でも、せっかく整備した土地の空き地が非常に目立つという実態もございます。これは震災が起こったときに立てた計画で人口の見積りがどの程度冷静にできるかどうか、こうした問題も実は絡んでいるところですが、そうした心理的な側面も踏まえつつ、平時の冷静なときに将来的な人口がどう動くか、こうした冷静な判断を踏まえて事前に復興計画をつくるということも非常に重要なことであろうということでございます。
おめくりいただきまして7ページですが、こちらも事前復興計画の中で土地利用の在り方として、いかに事前に活用可能な土地を確保、把握できているかどうか、これも特に復興の初期段階でも非常に有効なものですし、災害が起きますと、まず瓦礫をどこに一時的に片づけるか、その後、では、仮設住宅をどこに建てるか、何戸ぐらい建てられるか、その後公営住宅をどこに建てるのかどうか、そうした復興初期の段階からまちづくりの段階に至るまで、活用可能な土地がどこにどれぐらいあるか把握しておくというのが計画を立てる意味でも非常に重要な要素になるわけですので、そうしたものをよく把握しておく、さらに把握する中では所有者不明土地も、災害時の使用権などを都道府県知事が事前に設定しておくことによって、災害が起こった場合に迅速に所有者不明土地も含めて活用できるようにしておくべきであろうということです。
おめくりいただきまして8ページ目です。こちらも事前復興計画の中で、今度は公営住宅の整備ということです。東日本大震災でも災害公営住宅を建てるときに、累次の意向調査を踏まえて整備戸数を確保するということをやっておりますが、結局心配になって過大に戸数を見積もる、足りなくなると非常に困るので多めに造るといったような心理がどうしても働くこともございますし、実は、これは日頃から民間の空き住宅ストックがどれぐらいあるかというのを把握しておいて、いざというときに例えばセーフティーネット登録住宅として登録しておいて、それも大体頭の片隅に置きながら災害公営住宅の整備計画を立てる、こうしておくことによって過大にならない住宅整備計画ということも可能なのではないかということです。
それから、9ページ目以降ですが、こうしたことも含めて中長期的な国土計画であります「国土形成計画等」の改定に向けまして、人口減少を踏まえて優先的に維持すべき土地を明確化すること等を内容とするような国土の管理構想という概念を、今、国土交通省において検討しているというところですので、国土の持つ多面的な意義に留意しつつ、財政の持続可能性も確保できるように、今まで挙げましたような事前復興の観点も踏まえてコンパクト化、効率化を計画的に進めていく必要があるということですし、中長期のまちづくり計画ですとか事前復興計画、こうした枠組みの中できちんと位置づけていくということが必要であろうということです。
おめくりいただきまして10ページですが、中長期的な国土利用の在り方を考える上では、各地区、各分類においてコンパクト化をある程度進めていくということが必要であろうということです。例えば中心地におきましては、立地適正化計画におきまして更にコンパクトで効率的なまちづくりを進めるということですし、それから、青い線の都市計画制度の中では市街化区域、市街化調整区域という分類がありますが、市街化区域の範囲を人口減少に応じてなるべく縮めていくとか、あるいは、さらに、都市計画区域外についても、かなり散らばって点在して住んでいる中でも、郊外の中でも多少拠点というかコンパクト化を図ることができるのではないか、そうすることによって市町村の維持管理コストというのも大部減らすことができて、効率的な管理ができるのではないかということでございます。
11ページですが、そのような市町村レベルでの地域管理構想を活用した中の、例えば一案というか、これは様々な工夫、いろいろな創意工夫を考えていただきたいところですが、例えば一案として地域管理構想、市町村の構想に基づきまして、どうしても離れた所に住んでいると、冬の間はそこまでの道路維持費、除雪費が非常にかかる、しかし、ライフラインという意味でも除雪しなければならない、こうした状況ですが、例えば雪が積もる間だけでも中心市街地に近い所の空いている公営住宅に数か月間入居していただく、そうすることによって、例えば余計な除雪費をかけなくて済むということも可能ではないかということでありまして、あくまでも住民間での合意というのが当然の前提ではありますが、そうしたものも可能であると思いますし、そうした場合に、節約した除雪費の一部を居住支援等に活用するなどのインセンティブ等も考えられるのではないかという、これは一案ということでございます。
それから、12ページです。立地適正化と整合的な住宅政策ということです。これまで、立地適正化計画の中の居住誘導区域に都市再生整備計画事業で整備するような公共施設、これを補助対象にする・しないというインセンティブづけが明確になされているところですが、公共施設だけでなく、割と良い住宅を建てると、これも30年、50年とずっとその場所に建ち続けるとこうしたことになりますので、このように長期にわたる使用が想定されるような新築住宅の立地がこのような方向性と整合的に進むように、少なくとも公的な新築住宅支援を行う場合には、インセンティブづけとして居住誘導区域内に限定していくという方向が考えられるのではないかということでございます。
災害の中で、最後、13ページは盛土の安全性を踏まえた立地適正化ということです。こちらは、昨年熱海の土砂災害がございましたが、これを踏まえて盛土の規制強化が行われたところでございますので、このような盛土の適正化の措置と整合的に立地適正化計画における居住誘導区域、危険な造成地というのは対象外とすべきだろうということでございます。
以上が災害関係です。
続きまして、14ページ以降が経済成長等につながるストック効果の最大化でございます。
15ページでございますが、これはよくこれまでもお示ししているような表ではありますが、インフラ、これは道路と港湾をサンプルにしておりますが、整備が進むに従って資本ストックとしては非常に積み上がっていっている。だが、例えば交通量ですとか取扱貨物量というのがそれに応じて増えるわけではなくて、限界効用という意味ではどうしても逓減していくという状況にあるわけですので、ストック効果を最大化するために、より一層事業の選定とか執行の在り方というのが重要になってくるということでございます。
おめくりいただきまして16ページです。民間投資を促進するために、各種の補助金において産業拠点の形成と併せてアクセス道路を整備するとした場合に、道路整備について重点配分の対象にするということをこれまでも行ってきているところですが、肝腎の民間が工場を建てるための土地造成の事業が頓挫してしまっている例がございまして、頓挫して中断しているにもかかわらず道路整備が進められているのは、道路は道路で当然B/Cを取って整備しているので、それはそれで事業としては問題ないのですが、重点配分というのは近隣の産業用地のアクセス道路であることが前提になって重点配分されていますので、頓挫した場合は当然重点配分の要件を満たさないので配分率を引き下げる等の対応を行うことが必要であろうということですし、これは、実はインフラ整備において民間投資を誘致しようとする場合のインセンティブとしてこうしたものが設けられているものですので、ここの事例ではインセンティブの元となるものがなくなってしまったので重点配分の対象から外しましたということなのですが、より一般的に考えれば、17ページをおめくりいただきまして、例えば民間投資と連動した形でインフラ整備の支援ということを連動させまして、民間投資のインセンティブ/ディスインセンティブという形にできないかということでありまして、例えば工業団地のアクセス道路という例でいきますと、工業団地の稼働面積というのをKPIに設定しておきまして、それに伴って配分率というのを上げる、下げる、こうしたこともインセンティブの仕組みとしては考えられるのではないかということです。
おめくりいただきまして18ページ目ですが、こちらは既存のストックを更に有効活用していきましょうという文脈でのお話でございます。ダムにつきまして、事前放流、利水ダム等の治水対策に活用する体制を整えておりますが、必ずしも事前放流によって、今あるダムでもよりキャパシティを最大限活用していこうという取組が行われているところであるにもかかわらず、まだまだ事前放流できる余地があるということを示しているのがこの右側の表ですので、ちょうど線状降水帯予測等の予算措置もいたしまして精度向上に取り組んでいるところでもございますし、降雨予測の精度が上がっていくに従って、さらに事前放流の余地はまだまだありますので、さらにこれを賢く行う、これによってダムの容量を増やすというハード整備に頼ることなく効果を発揮できるのではないかといった指摘でございます。
それから、19ページでございます。気候変動に伴いまして、近年降雨量が非常に増加していますので、これを踏まえまして全国の河川整備計画の見直しを順次行うということになっております。これまで、このような見直しに当たっては、前のページで述べたような事前放流とか、あるいは人口が減っていくのであれば、人口が少なくなった土地を移転する、さらにそうした土地を遊水池として活用するなど、何に一番費用がかからなくて効率的な整備になるのか、人口減少を踏まえればオプションが増えてくる部分もあると思いますし、それから実際の事業採択するときも、費用便益分析などでも、今までは人口は一定であるという仮定を置いていたものが減っていくとなれば優先順位の違いというのも出てきますので事業の選択、それから優先順位ということも将来の人口減少を踏まえて行うべきであろうということでございます。
それから、次の20ページは、発注における効率化ということを目指したものです。これまでも、一般的に我が国の公共工事は設計と施工は別々に発注して、発注した結果、契約してできてきた設計に基づいて施工をまたもう一回入札をかけて発注するというのが一般的なやり方ですが、諸外国におきましてはECI方式といいまして、設計段階から技術を持っている施工業者が関与するという方式がございまして、米国などの例でもこれによってコスト縮減できたという事例もございます。このやり方を絶対やれということではなくて、このECI方式等によって効率化する場面では積極的にこの方式も導入してはどうかということです。まだまだ実績としてはこの方式は我が国では僅かしか取られておりませんので、積極的に活用してはどうかということです。
それから、21ページですが、こちらも入札における効率化ということです。不成立、不調・不落になった場合に発注ロットの見直しや、見積活用方式などによってもう一回入札をかけるということが行われておりますが、発注ロットの見直しを行うと、例えば規模を大きくしたほうが割と予定価格も下がって非常に経済的になる、安く契約できるという例もありますので、こうした工夫をなるべく活用するということ。それから、単に見積りを活用して、不調・不落になったときにもう一回値段をつけると単純に高くなるだけの結果に終わることが多く、そうした見積活用方式は安易な予定価格の増額につながりかねないので、それを防止するためにも、なるべくそうした方式ではなくて、発注ロットの見直し等を活用すべきであるということです。
22ページ以降は最後の維持管理ということでございます。23ページ目、これは今までも何度もお出ししている資料ですが、将来的な人口は減っていく、右側を見ると今後の維持管理・更新費用は増えていく見込みであるということで、一人当たりの維持管理・更新費は増大していくということですので、一層真に必要なインフラを厳選していくということ、それから、新規投資による場合は極力民間資金を活用するということです。
24ページは下水道のストックマネジメントなのですが、過去の実績単価でインフラのライフサイクルコストを計算しているという例もありますので、なるべく新技術等を取り入れた、安くてより長もちするような方法を検討するようにしていただきたいということです。
25ページですが、こちらはインフラの維持管理コストの適切な分担ということでありまして、新しくバイパスを造ったときに古いほうの道路、これは基本的には都道府県に維持管理を移管すべきであるということは地方分権の考え方の中でも整理されていることですが、可能な限りこの原則に従って移していくべきであろうということ。
それから、26ページです。高速道路の中で有料区間、無料区間が混在しているというのが現在の実態ですが、今後整備が予定される路線については有料区間としての整備を可能な限り推進するということ、それから既存路線についても、適切な利用者負担に基づく維持管理を検討すべきであろうということです。
最後、27、28ページで新幹線についてですが、北海道新幹線は今年度に事業再評価を予定しておりますが、物価上昇が見込まれることもありますので、見直しの際に、過去の見直しにおいては工期、いつまでにということを決め打ちするとどうしても工事費が高くなるということがございますので、工期の柔軟化ということも併せて検討を行うべきであろうということ。
それから、最後、28ページです。これまで新幹線の貸付料をJR等から取っているわけですが30年の定額にされていた、これは31年目以降に大規模改良が想定されるので30年間ということで貸付料を取っていましたが、東海道新幹線の例を見ると、実際の大規模改良は50年後ぐらいに行っているということですし、それを踏まえてB/Cの算出期間は50年になっておりますが、そうした意味では31年目以降の貸付料というのもきちんと見込んでいくべきであろうということ、現にそうした例もございますので、最大限貸付料収入等を見込むべきであろうということです。
私からの説明は以上でございます。
〔土居部会長代理〕ありがとうございました。
続きまして、産業・中小企業、グリーンにつきまして、坂口主計官から簡潔に御説明をお願いいたします。
〔坂口主計官〕環境省、経済産業省を担当しております坂口でございます。私からは産業・中小企業、グリーンに関して御説明を申し上げます。
資料をおめくりいただきまして、まず、産業・中小企業に関する御説明をします。2ページ目でございます。コロナの支援策として資金繰り支援と様々な給付金を中心にしまして、中小企業関係予算はかつてない規模にまで膨らみました。こうした支援策は、コロナの感染状況などによりまして先が見通せない中にあって、多くの中小企業の事業の継続を支える役割を果たしたと考えております。しかしながら、コロナが国内で発生して2年以上経過する中で、政府としても感染拡大を防止しつつ社会経済活動を維持するということでございますので、メリハリのある施策を講じていく必要があると考えてございます。
この表ですが、真ん中の棒グラフですが、企業の経常利益をコロナの前と比較いたしてみますと、左下ですが、資本金が1億円から10億円の製造業で見ますと、ここ1年間は営業利益が増加している上に営業外収益も増加しております。また、その右側ですが、資本金が1,000万円から1億円の飲食・宿泊業で見ますと、昨年の7月以降、営業利益が減少する一方で、営業外収益はそれを上回って増加いたしておりまして、その結果、経常利益はコロナの前よりも多くなっているという状況になっております。したがいまして、真に支援が必要な事業者は誰なのかというターゲティングをしっかりと行うということが求められているのではないかと考えております。
続きまして、3ページでございます。まず、中段左側の企業倒産の状況でございます。倒産件数は、政策効果もございましてかつてない低い水準にございます。こうした中、我が国の生産性は右側の折れ線グラフでございますが、OECDの平均を下回る水準になってございます。市場のメカニズムを機能させて、新陳代謝を過度に阻害しないように留意すべきと考えます。
また、左下でございますが、中小企業向けの貸出は少しずつ民間金融機関によるリスクテイクを伴う貸出が増えてきている状況にございますので、その動きを阻害しないように留意する必要があると考えてございます。
4ページ目を御覧ください。手厚い支援策を行ってきた結果といたしまして、一種の補助金依存ともいうべき状況が一部で生じているのではないかという懸念がございます。一例がこのページでございますが、ポストコロナに向けた事業の多角化等を支援いたします事業再構築補助金というものがございますが、その執行状況を見てみました。事業再構築補助金に採択されるには、事業者が税理士ですとか公認会計士などの認定支援機関と共に事業計画を策定いたしまして、これを事務局が審査するというプロセスを経ます。今回、こうした審査を経て採択された案件一覧を見ますと、同一の認定支援機関が支援した案件に関しまして、例えばここの事例でしたら千葉県や東京都や愛知県、様々な地域で事業を営みまして、対象となる顧客も異なると考えられる事業者にもかかわらず、全く同じ事業計画が採択されたものが複数確認されました。こちらの例示はフルーツサンドですが、その下の注でありますように高級なパン屋とか、それからテイクアウトのから揚げ屋とか、そうしたものも複数確認できたところでございます。本来、こうした補助金というのは企業の行動変容の呼び水となるべきところ、補助の手厚さの観点から、事業の採択されやすさという観点から似たような申請がたくさん出ているのではないかという懸念がございます。
次のページを御覧ください。5ページ目でございます。手厚い支援を行ってきたことの帰結として投資が過大となっている、過大投資が誘発されているのではないかという懸念もございます。これは昨年の審議会で御議論いただいたところでございまして、それを踏まえまして、令和3年度補正予算では企業規模に応じた補助上限に見直すなどの対応を行ったところでございます。ただ、引き続き執行状況を見て必要な見直しを行っていく必要があると考えてございます。
6ページを御覧ください。既にマスコミで不正受給について多数報道されておりますが、過大な公的支援というものは不正の誘因となるおそれがあると考えております。こちらには持続化給付金などの例を記載してございますが、迅速な支援の実施と同時に、不正を厳格に防止する仕組みというのも確立していく必要があると考えてございます。
続きまして、ページをめくっていただきましてグリーンに移ります。8ページ目でございますが、こちらは昨年の審議会でも御議論いただきましたように、世界各国におきましてカーボンニュートラルに向けて取り組んでいるという状況でございます。日本も、2050年末までに脱炭素社会を実現するという目標の下で取り組んでいるところでございます。
中段左側の円グラフを御覧いただきますと、日本のC02の排出のシェアというのは赤枠で囲ってございますが3.1%でございますので、日本だけ排出削減に取り組んだところで温暖化という地球規模の課題の解決にはならないという状況です。世界の各国といかに足並みをそろえて取り組んでいくかということが重要であると考えてございます。
そこで、実行状況に関しまして9ページ目に記載いたしております。これまでの温室効果ガスの削減実績のグラフが左側でございます。赤い折れ線グラフがアメリカ、緑がEU、そして紫が日本ということでございますが、日本はほぼ2030年にマイナス46%、そして2050年にカーボンニュートラルという目標に沿って着実に進んでいる、結果を出していると、これまでのところは言えると考えてございます。ただ、排出削減が進めば進むほど更なる削減のためのコストというのは大きくなるものでございますので、引き続き努力が必要であると考えております。一方でアメリカの削減実績、あるいはEUの削減実績を見ますと、2030年目標を達成するにはまだ不十分な状況と言えるのではないかと考えております。
それから、その右側、様々な国際的な枠組みにおける日本企業の取組でございますが、日本の企業はほかの国の企業と比べても非常に熱心に脱炭素経営、温暖化対策に取り組んでいるという状況にあるのではないかと考えてございます。
おめくりいただきまして10ページでございます。カーボンニュートラルに向けては多大な投資というものが必要となりますが、当然民間資金をどう取り込んでいくかということが非常に重要であると考えております。ここに記載してございますように予算、税制といった財政措置に加えまして、金融、規制といったあらゆる政策を総動員して対応していく必要があると考えてございます。
おめくりいただきまして、次に予算事業の論点でございますが、11ページです。温暖化対策事業は主にエネルギー対策特別会計で行っておりますが、その規模といたしましては7,000億円強という令和4年度予算になっております。右下の表では令和4年度当初予算で重点的に措置した事業というのを記載いたしておりますが、そのうちの一つを取り上げております。
12ページを御覧ください。電気自動車の購入補助でございます。ここでのキーワードというのは、左下に記載してありますが、電費という概念がございまして、これは1キロワットアワー当たりの走行距離のことでございますが、真ん中の表の赤枠に電費の推移が書いてございますが、ここ数年の推移を見ても電費性能というのは全体として向上してはいないという状況にあります。
また、上の新車販売台数に占めるEVのシェアですが、こちらの販売シェアも減っているという状況にありまして、これは補助金の内容を見直す必要があるのではないかと考えました。したがいまして、ここで補助金の算定は右側の黄色い色をつけたところなのですが、電費という概念を補助額の算定の中に取り込みまして、高価だが電費性能が低い自動車に関しましては補助額が低くなるような見直しを今般行ったところでございます。このように、補助金の内容というものをしっかり検証しながら政策目的を考えていくということが必要であると考えております。
おめくりいただきまして13ページでございます。温暖化対策に係る財源でございますが、石油石炭税を財源といたしまして温暖化対策を実施しているところです。長期的に見ていけば、原油等の消費量が減っていけば税収も減っていくと見込まれますので、きちんと財源を確保しながら事業を実施していくということが必要であると考えてございます。
最後に14ページを御覧ください。足もとのガソリン価格の推移を各国で見たものでございます。特にロシアのウクライナ侵攻以降、EU、アメリカでは価格が急上昇している一方、日本はほぼ横ばいとなってございます。ガソリン価格が急騰する場合には、政府として一定程度激変を緩和するということの必要性はあると考えられますが、脱炭素に向けて再エネへのシフトを促していく観点からも、原油価格の動向やウクライナ情勢も見極めながら政策の在り方を考えていく必要があると考えてございます。
私からは以上です。
〔土居部会長代理〕ありがとうございました。
続きまして、防衛につきまして、渡辺主計官から簡単に御説明をお願いいたします。
〔渡辺主計官〕防衛担当主計官の渡辺と申します。よろしくお願いいたします。時間が限られておりますので、要点をかいつまんで御説明いたします。
まず、1ページ目を御覧ください。政府では現在、国家安全保障戦略等のいわゆる三文書を年末までに策定する予定となっております。特に中期防衛力整備計画では5年間の防衛費の総額が示されますので、予算の面でも極めて重要となります。
2ページ目を御覧ください。最近の防衛費、防衛関係予算の推移を示したものとなります。防衛関係予算は最近増額を続けておりますが、これは他の経費を削減・効率化することによって実現しております。複数年度の防衛費の在り方は予算全体の在り方に大きく影響いたします。
3ページ目を御覧ください。今回お示ししましたテーマは二つです。一つは、全体の論点として有事に備え、かつ、抑止するための経済・金融・財政の在り方。もう一つは、個別の論点として防衛態勢、研究開発、防衛産業です。国防には国民生活・経済・金融の安定が必須であると考えておりますが、くわえて、防衛予算が他の経費に影響することを踏まえますと、国民の合意と納得が不可欠であると考えております。
まず、全体像について御説明いたします。5ページ目、6ページ目となりますが、映していただくのは5ページ目だけで結構です。我が国を取り巻く安保環境が5ページ目、6ページ目はウクライナ侵攻の状況をまとめたものとなります。言うまでもなくロシアの脅威の高まりというのは一つの大きな変化ですし、また、ウクライナにつきましては、経済・軍事での教訓を抽出しまして、これを我が国も活用していくということが重要であると考えております。
7ページ目を御覧ください。これはこれまでの秋の財審などでもお示ししておりますが、宇宙・サイバー・電磁波という新分野の重要性を示したものです。特にサイバーにつきましてはウクライナ軍もかなり健闘しているという報道もありますので、重要性が再確認されているというところであると思います。
8ページ目を御覧ください。8ページ目は事実の確認となります。我が国の国防費ですが、NATO基準で見ますと7兆円弱、対GDP比で1.24%となります。金額の絶対額で見ますと、英・仏・独とほぼ同程度ということになります。
9ページ目を御覧ください。我が国は、生産年齢人口の減少が進んでいく中で、今後も厳しい安保環境が続いていくと思われます。これに対応する際の留意点を示したものとなります。継続的な支出を暫定的な手段によって裏づけなく賄い続ければ、それ自体が我が国の脆弱性になると考えます。
次の10ページ目を御覧ください。こちらは、国防費の増額を表明している欧州の状況をまとめたものとなります。NATOで国防費のGDP比2%目標が公表されましたのは2014年で、その後も欧州各国は財政状況を改善させつつ、防衛の強化に取り組んできております。今回の増額が可能になった一つの背景には、そうした努力があると考えられます。なお、ドイツ、スウェーデン、この2か国は国防費の対GDP比2%の増額目標を表明しておりますが、併せて財源の方針も示しているところです。
次の11ページ目を御覧ください。こちらは、今国防費の対GDP比の議論がありますので、これを税収の配分と国民負担に分解して示したものとなります。見ていただきますと、国民負担を抑えて配分を国防費に手厚くする米国あるいは韓国のグループと、国民負担を高めて国防費を確保していっている欧州型に分かれております。単に国防費、防衛関係費の増額を求めるだけではなくて、日本はどういう方向を目指すのかということが問われていると思います。
12ページ目からが経済全体の話となります。まず、12ページ目を御覧ください。こちらは経常収支の推移を示したものですが、経常収支の黒字が近年、所得収支に依存してきているということ。しかも所得収支が海外からの利子・配当であるということもありまして、その相当部分が現地へ再投資されていることを示しております。エネルギー、食料を海外に依存する我が国は、外貨といいますか、外から物を買うためにも、平時からそうした能力をどのように確保していくのかということが重要になると考えます。
13ページ目を御覧ください。表題は周辺国との相対関係となっておりますが、専ら中国との関係を取り扱っております。中国との貿易投資の関係を示したものとなります。我が国の対中依存度が上昇する一方で、中国側は低下していることが分かると思います。
次の14ページ目を御覧ください。こちらは、今まで申し上げたことをまとめたものになります。有事における我が国の経済・金融・財政の脆弱性について取り扱ったものです。有事になりますと、貿易や投資面で我が国に対して相手国から様々な措置が想定されます。それが貿易収支であったりとか所得収支、物流、物価、あるいは日系企業・金融機関の資金繰り、資本移動、こうしたものに対して大きな影響が生じることが予想されます。いろいろな経路を通って波及が及んでいくわけですが、こうしたことを踏まえますと、有事に十分耐えられるようにマクロ経済の構造と運営が必要であると考えております。平時にできること、平時からしておかなければいけないこと、有事の対応、それぞれあるかと思いますが、その中で財政の在り方も問われると考えております。
以上が全体論となります。
以下、個別の論点に入ります。
16ページ目を御覧ください。こちらは防衛態勢について扱ったものとなります。16ページ目は、海洋国家である日本がどういう防衛戦略を取ればよいかと。中国が陸軍を削減して海空を強化して、A2/ADと言われる相手を近づけない能力を向上させるということは秋の財審でも申し上げたところです。
17ページ目は、防衛装備に関する説明責任について扱っております。イージス・アショアとウクライナでの戦い方の例を挙げておりますが、これはそれぞれのものの是非を申し上げているというよりも、多方面から当方にいろいろな問題点を指摘する声が寄せられておりまして、こうしたものについては私どもも査定の中で議論してまいりますし、また防衛省、自衛隊にも対外的な説明責任が強く求められると思っております。
次の18ページ目は、これは少し昔の話になりますが、昭和60年代にイージス艦を導入した際を例に、特に今は次期戦闘機ですとか敵基地攻撃能力という非常に大きいテーマがありますので、こうしたものについて説明責任をより果たすべきではないかと申し上げたものです。
次に、研究開発について御説明いたします。20ページ目から23ページ目までは研究開発について取り扱っておりますが、全体をまとめて申し上げますと、防衛関係の研究開発の大幅増額を求める声が非常に強くあります。現在の予算の水準は、欧州各国等の比較では遜色ない水準にあります。一方で、情勢が緊迫している際に、装備品等時間のかかる研究開発の間でどういう資源配分をするのか、こうした問題もあると思います。また、装備品の移転の観点から見た経済効率性であるとか、我が国の比較優位のある分野に重点化すべきではないかといった論点なども提起しております。
24ページ目を見ていただきますと、こちらは秋の財審でも取り扱いましたが次期戦闘機についてです。無人機の活用について、様々な場面での活用を求める声が私どもにも寄せられております。一方で、開発コストなども示されておりませんので、これについても説明責任をきちっと果たして国民の納得が必要であると思っております。いずれの装備品も、これが要らないのだとかそうしたことではなくて、きちんとそれはどういう状況で必要性があるのかという説明が求められるということを申し上げたいと思います。
最後に防衛産業について申し上げたいと思います。26ページ目から28ページ目まで取り上げております。
26ページ目を見ていただきますと、企業の撤退などが相次いでおりまして、その原因をアメリカからのFMS調達の増加による国内向け予算の減少などとする声がありますが、実際は、26ページ目を見ていただくと分かりますように国内調達額は増加しております。一方で、企業が疲弊していると感じているのも事実です。私どもは昨年来、企業の方々からお話を伺い、現場も拝見しましたが、そのいろいろな声を踏まえますと、唯一の顧客である防衛省の要望に100%応えることが求められている環境の中で、少量多種、独自仕様を取っているということが問題の本当の原因ではないかと考えております。装備品の移転の在り方も含めて、我が国の企業ですとか産業の強みが発揮できるようにする必要があると思っています。
全体をまとめたものが29ページ目でありまして、今回の視点を二つお示ししております。一つは、真に有効な防衛力を持つため、現実を直視した議論をするべきではないか。もう一つは、経済・金融・財政面における脆弱性の低減と防衛力強化をいかに両立させるかの2点です。
説明が駆け足となりましたが以上となります。よろしくお願いいたします。
〔土居部会長代理〕ありがとうございました。
本日は、赤井委員、平野委員、芳野委員より、本テーマに係る意見書を御提出いただいております。お手元にお配りしておりますのでお目通しください。
それでは、ただいまの御説明に関しまして、委員の皆様から御意見、御質問などを承りたいと存じます。会場におられる委員の皆様にはネームプレートを立てていただきまして、テレビ会議システムを通じて御参加の委員の皆様には挙手するボタンをクリックしていただきたく存じます。
なお、今回も御出席の委員が多数おられまして、限られている時間の中でできるだけ多くの方に御発言いただきたいと思っております。そのため、御発言は二、三分以内におまとめいただいて御発言いただきたいと存じます。
それでは、会場から5名程度、その次にテレビ会議システムから5名程度、そしてまた会場に戻りまして5名程度という順に御指名させていただきます。
会場にいらっしゃる委員の皆様には、会場備付けのマイクをオンにしてから御発言をお願いいただき、それから、御発言の後にはオフにしていただきますようお願いいたします。御発言の際にはマイクにできるだけ近づいていただくとともに、差し支えなければマスクを外して御発言をお願いいたします。
それから、テレビ会議システムを通じて御参加の皆様には、テレビ会議システムのミュートを解除して御発言いただき、発言後にはミュートに戻していただきますよう、よろしくお願いいたします。
それでは、まず、会場の委員の皆様から御発言をお願いいたします。
それでは、小林委員、神子田委員、広瀬委員、宮島委員、木村委員という順で御発言をお願いいたしたいと思います。
それでは、小林委員、お願いいたします。
〔小林(毅)委員〕小林でございます。よろしくお願いいたします。
昨年の秋の建議のときに、日本の抱えるリスクということで、リスクに備える財政力がないと備えられないという建議を出したと思うのですが、そこで言う自然災害リスク、感染症リスク、金利上昇リスク、このほか国際情勢に起因するリスク、金融経済危機リスクと、これらが同時に起きるリスクもあるとしてきたのですが、まさに今、こうしたものが一斉に全てが顕在化しつつある、そんな状況であると思います。今日のテーマは、偶然かもしれませんが、いずれもこれに直結したテーマであると思います。
それで、それぞれ簡単に述べさせていただきます。まず、社会資本整備なのですが、やはりリスクを見える化するというのは緊急の課題であると思います。3ページの災害リスクデータと人口動態を重ねる地図、これなどは一つの今の課題をあぶり出すとともに、都市計画を進める上でも極めて重要であると思います。
そこから、あと6ページから8ページにかけて実際にどのような手法でやるかというのを、これまで建議で記したような提言を具体的に提案しているのですが、これは非常に重要なのですが、今の状況を考えて、地震が頻発している、それから台風が4月に大きいのが来てしまうという状況を考えると、これを加速させるということが何よりも大事なのではなかろうかと思います。
それから、中小企業についてのコロナ対策は、財政余力を維持するという観点から、知見とか経験が蓄積してきた今、これまでの対策の中でどれを続けるべきなのか、やめるべきなのかという取捨選択、対象を絞るなどして財政的に次に備える時期が来ているように思います。これに限らないのですが、これまで緊急措置、臨時措置が必要以上に延長されて、半ば恒久措置のようになってしまう例があまりに多いので、これが逆に本当に必要な緊急対応に踏み切るのをちゅうちょさせてしまうような空気が出ていると思います。緊急時にはすぐに措置をする、緊急事態が去ったら速やかに元に戻すということをしないと、これはほかの国はやっているわけですから、それをしないと逆に対策が遅れるということになってしまうことは、特に政治家の方々には肝に銘じてもらいたいなと思います。
最後に防衛についてなのですが、GDPの2%にするということで議論が進んでおります。これについてはいろいろなメディアなどを通じて自由民主党の政治家さんからも、専門家からも、額が先に決まってしまうと不要なものを買ったり、必要以上に高い額で買ったりしてしまうという懸念は出ております。ドイツの場合、世界がみんな驚いてしまったのですが国防費をGDPの2%まで増額すると大転換しました。今はウクライナ問題でドイツ国内の大きな反発があるとは伝わってきていませんが、これはそのうち何を買うのか、あるいは何を買ったのかというのが問われる局面が、あの国は必ず来ると思います。そう考えると、日本の場合も2%まで増やすというのが目的ではなくて、真に必要で効果的な物を、それを時間軸も勘案しながら装備強化を図るというような方針を取るべきであって、その結果が1%を超えて2%に近づくというような形になるのが健全な姿ではなかろうかと考えております。
以上です。
〔土居部会長代理〕それでは、神子田委員、お願いいたします。
〔神子田委員〕詳細な御説明、ありがとうございました。
まずは社会資本整備についてなのです。災害リスクの低い土地とか、あるいはコンパクト化に向けて住む場所を適切に誘導していくことが必要なのですが、少し人里離れた所とか災害に弱い所というのは恐らく土地が安くて、だからあえて住む人がいると思うので、そうした人たちに固定資産税を大幅に引き上げて新規に住めないようにするとか、そうした政策は取れないのでしょうかというのが質問です。
もう一つ、資料の16ページの民間投資を促進するためのインフラ整備で、土地区画整理事業に合わせて道路を造るという趣旨だったのに、土地区画整理事業が中断しても道路を造っている問題というのがありましたが、これはよく私、経済のニュースを伝えるときに企業のトップに求められる三つの「ion」としてVision、Decision、Communicationと言っているのですが、中央の政策でこうしたことが必要で、ディシジョンを下して国会なりで議決して法律とか制度を変えたと、その趣旨をコミュニケーションとして地方自治体にきちんと伝わっているのかどうかというのは問題で、自治体が知っていてやっているのかもしれないのですが、そこは徹底させるということが、こうした事例を見ると求められるかなというように思いました。
次に、フルーツサンドの話なのですが、私、少しこれは一見してくさいとは思うのですが、いや、実はこの税理士にフルーツサンドの鉄板のノウハウがあって、どんな立地でも、どんな業態でもフルーツサンドをやれば当たるとひょっとしたら思っていたのかもしれないなというのは、実は疑ってはいるのです。それで、ただ言いたいのは、絶対的に問題であることをしたら税理士名とかを公表したらどうですかと。つまり、自分の心に恥じることだったら公表されたらやらないと思うので、そうした措置は取られないのでしょうかというのが一つです。
それとグリーンなのですが、この電費の話はなるほどなと思って、確かにメルセデスベンツの電費4.2キロは低いなと、もともと高級車は燃費も低いのですが、電費に応じて補助金をというのはすごくリーズナブルな話であると思いますし、高い車を買うのはどうせ金持ちなのだから補助金は要らないのではないのかとも思いました。
ただEVは、そもそもEVの電気をどうやって作っているかということは温暖化対策では問題でありまして、今は4分の3ぐらいを火力で作っているのです。だから、その辺のところをエネルギー政策全体としてどう考えていくのかということもないと、EVだけ普及させてもしようがないかなというのは思いました。
最後に防衛なのですが、今、小林委員もおっしゃったのですが、ドイツは財政の状況はとても良いので、できるというところはあるのかと思いまして、日本は、主計官がおっしゃったように防衛費を増やすのは良いのだが、それで借金が増えてかえって国の構えが弱くなってしまうということもあるので、そこは考えないといけないなと思いました。
私、1回、防衛省の人に日本の防衛戦略というのをブリーフしていただいたことがあって、とにかく中国が脅威だから南に戦力を移していくのですという話をしていたので、「いや、そんなことを言って、もしロシアが北から攻めてきたらどうするのですか」と聞いたら、当時は今のこうした状況ではなかったのですが、「いや、そうならないように外交で何とかするのです」とおっしゃっていましたが、今は少し外交で何とかならないような状況になっているときに二正面作戦を強いられると、かといって一気に防衛費を2倍にはできないということだと思うのです。だから、ここはやはりこれまで以上に、今ある防衛費も再三主計官がおっしゃったようにかなり効率的でない使われ方をしているようですから、これは効率的に使うということが国の防衛力を高めることであるということを肝に銘じて、一層の歳出の効率化を図っていただきたいと思います。
以上です。
〔土居部会長代理〕広瀬委員、お願いいたします。
〔広瀬委員〕ありがとうございました。
中小企業とグリーンについて、2点申し上げたいと思います。
まず、コロナに伴う一連の財政支援、特に中小企業に対する手当は、先ほど御説明がありましたが本当に効果があったのではないかなと思います。これによって急激な倒産とか失業が抑えられて、本来ですと相当な社会不安が起こるような状況だったわけですが、一部起きているのかもしれませんが、それほど大きな社会不安を起こさないでウィズコロナに移行できたという面では、まさに財政の一つの役割が果たせたのではないかということで、この点は評価してもよいのではないかなと。
一方で、日本商工会議所の調査では、6割以上の中小企業がコロナの影響は続いていると、あるいは9割以上の中小企業が今後の資源価格や原材料価格の高騰が心配であるという声があることも事実ですから、先ほど小林さんがおっしゃったとおりメリハリはつけなくてはいけませんが、今後とも必要な支援策は残さざるを得ないのではないかなと思います。
問題は、これからがまさに正念場で、いよいよいろいろな借りたものを返済するという時期に入るわけですから、中小企業の経営としても本当に正念場をこれから迎えるのではないかなと思います。ですから、基本的には中小企業の経営者の皆様にはそうした認識を持っていただくことが必要ですし、当然今持っていただいていると思っております。ポスト補助金がまた補助金になるというのは、これは一番いけないことですから、そうならないように、これはしっかりと確認しておく必要があるのではないかなと思っています。
それから、2点目はグリーンです。グリーンは皆様がおっしゃるとおり二つの側面がありまして、一つは成長戦略という側面で省エネルギー技術を開発するとか、あるいはいろいろな新しい産業を創出とか、これが本線であると思いますがが、一方で相当なコストがかかりますから、産業の空洞化ですとか、あるいは地方の疲弊化、そうした成長戦略とは真逆なことが起きることも間違いないわけで、そうしたプラスの面を伸ばしてマイナスの面を少しでも少なくする、そして本来、世界のCO2を減らす一番良い方法は2国間のクレジット、これをこれからどのようにうまく活用していけるのかというのが日本のグリーン政策の一番のポイントになるのではないかなと私は思っています。
もちろん、日本でいろいろな努力をすることはもう当然ですが、これからアジアで人口が増えて、産業が発展してエネルギーをたくさん使って、相当そこで非効率な使い方がされるわけですから、そこを日本がどのようにサポートしていけるか、その辺のメカニズムがきちんと世界的にオーソライズされて実質的なCO2削減につながり、成長戦略、あるいは痛みも少なくできると、その辺のグリーン政策の方向に行けるような財政政策が必要なのではないかなと考えています。
以上でございます。
〔土居部会長代理〕宮島委員、お願いいたします。
〔宮島委員〕ありがとうございます。
先ほどもあったように日本は社会保障が大変だ、エネルギーが大変だという中にあって、ここで防衛というのが物すごく意識されたと思います。というのは、平均的な人は社会保障や何かが足りないことは我が事と考えていたのですが、防衛に関してはどなたか偉い人がしっかり守ってくれる、国際交渉でやってくださるものというのが普通の感覚だったと思うのですが、今、20世紀ばりのああいった戦争の、戦場の映像を見るにつけ、万が一の事態でも私たちの国というのはいざというときに戦費を調達できる国なのか、ちゃんと耐え得る国なのかというようなことまで意識するようになったかと思います。
そうした中で、それをどうやって出すかというのはまさに重要で、今でも足りないと言っているほかのところを削るのか、いわゆる皆様のザ・無駄ですが、誰から見ても無駄というのがどこにあるか分からない中で、それを削るだけで本当に調達できるのか、あるいは次の世代に押しつけるだけでよいのかというところは本格的に議論を進めるべきであると思います。
さらに、防衛に関して以前話を聞いたときに、陸が強いなと思ったことがあって、自衛隊に行こうとする人にも非常に身近な感じはあるのですが、一方で、今日挙げていただいたイギリスの例などで、確かに日本は海洋国家だし、本土決戦をするわけでなければ陸ではないのではないか、といったような感じもしまして、そもそも全体フレームとして縦割りではないか、あとは、本当に起こり得る事態に対してちゃんとバックキャストで用意できているかというようなことをもう一度、一般の人が安心できるような形で説明できるような形を取っていただきたいと思います。
先に防衛を言いましたが、ほかもいろいろ心配はあって、社会資本に関しては災害のみならず、スマートシティ、コンパクトシティというのは望まれていると思います。もちろん居住の自由というのはあるのですが、いろいろな所で、数軒か10軒ぐらいしか家のない所のために道路を通し、郵便とか配達とか電気とか水道とか全部やっているという状態、それはその方々を尊重はしたいものの、この国でそれを一体どこまで頼るのかという問題はとてもあると思います。そのときに、その方々が意外と状況を知らないでいる場合もあるし、自治体から働きかけがない場合もあるということなので、まずは災害をフックにというか、このお住まいの所にはこうした部分がありますというようなことをちゃんと分かっていただいて、自治体もみんなにとって望ましい住まい方とはどういう住まい方なのかということを住民にもちゃんと説明するような形で、できるだけストレスがない形でスマートシティ、コンパクトシティが進んでいけばよいなというように思います。ここは本当に自治体の力の見せどころといいますか、国としてはそこを後押しするような形にしたいと思います。
最後にグリーンですが、これはまさにいろいろなお話を聞いても、絶対的にこれをやればカーボンニュートラルは大丈夫であるというものがあるわけではないので、やはりお金がかかってしまうものであると思います。それをどうやって成長につなげていくかというところで、国際的なバランスもそうですし、日本だけが物すごく突出してやってお金を使ったが失敗したようなところがあるのもできれば避けたいと思います。また、そのバランスというのはとても難しいと思いますし、企業も見極めていないと思うのですが、何よりも企業の経営者の人たちに乗り出す責任に関してしっかり表明してもらって、新たな技術開発でもちゃんとステージ、ゲートごとにチェックしながら進めていく、それが何となく、もう道が変わってしまったのにそのまま続けていくというようなことがないような開発というのが大事であると思います。
さっき言いそびれたのですが、そもそも全体観があるかというところで、今、ローカル線に全然人が乗ってなくて、赤字でどうしようかという話があると思うのですが、あれも、もちろん人口減少でローカル線が苦しくなったというのはとてもよく分かるのですが、もう一つ、道路の整備がどんどん進んだ結果として鉄道に乗る方が少なくなっているという部分に関しては、そのときの総合的な視点はどうだったのかなと思うのです。どっちにどうバランスするかということをどこかで一旦考えるべきだったのではないかというように思います。そうした意味でいうと、今のグリーンのところで自動車が今のガソリン車から電気車になるというところは理解できるのですが、それは1対1で本当に移動するものなのか、つまり電気車になったらみんな乗るのかとか、そのときになるともうスマートシティになって、みんな車にそもそも乗らなくなるのではないかとか、みんなそんなに電気に頼る気持ちになるかとかいろいろな疑問が湧きまして、単にガソリンを電気にすればよいというだけではなくて、そのときの移動の仕方全体のフレームの中でどの程度電気自動車を推進するか、といったようなことを考えたら良いかなと思いました。
以上です。
〔土居部会長代理〕木村委員、お願いいたします。
〔木村委員〕御説明ありがとうございました。
私からは手短に3点申し上げたいと思います。
まず、防衛についてです。冷戦が終結して、国際社会というのはいわゆる平和の配当というのを得てきて、それによってグローバル経済の発展につなげてきたという時代だったのですが、ロシアのウクライナ侵攻でそうした状況が一変して、我々は言わば民主主義を守るコストが求められる時代になっているのかもしれないなということです。
コストというのは2種類あるのかなと、一つはインフレで、ロシアへの経済制裁というのは当然必要ですが、その反作用として資源価格が高騰しているので、そうしたインフレのコストというのが一つ。それから、もう一つはいわゆる防衛費で、この二つの問題に真摯に向き合っていく必要があると。要するに、いずれも民主主義を守るために一定の負担増というのは受け入れることはやむを得ないかもしれないが、その負担というのをできるだけ抑える努力もしなければならないということであると思います。
日本でも防衛費の拡大を求める声が強まっていますが、資料にも御説明があったように、果たして防衛費だけを取り出して議論することが妥当なのかどうか。御説明があったように安全保障というのは防衛費だけではなくて、その国の経済、さらには食料とかエネルギーも含めた総合的な観点から取り組む必要があるでしょうし、さらに日本というのは戦後、節度ある防衛力を保って平和国家に徹してきたからこそ国際社会の安心感とか信頼を得てきた面もあるということで、そうした非軍事的なソフトパワーも勘案して日本の安全保障戦略というのを多角的に、あるいは中長期的な観点から練り直して、その中で適切な防衛費というのを導き出すことが必要なのではないかなという気がします。
それから、2点目は社会資本整備です。資料で御説明されたようにコンパクト化というのは、人口減少という日本の歴史の流れを踏まえると非常に必要な措置であるとは考えております。とりわけコロナで人口減少が加速している状況なので、コンパクト化の取組というのは一段と重要性を増していると思います。
確かにいろいろ資料で説明された発注方式の工夫による公共事業の効率化とか、新たなインフラ整備に伴う維持管理コストの適切な分担なども重要なのですが、その前の段階について、公共事業とかインフラ整備そのものを更に絞り込むことが検討できないかということです。要は、幾ら効率化を工夫しても、公共事業とかインフラ事業、インフラ整備そのものの必要性が低ければ、効率化の財政的な効果というのは限界があるのではないかなと。日本の社会資本整備の水準というのは主要先進国の中でも高い状況であるということは、財審の中でも既にもう御説明されているわけですし、ましてコロナ関連で様々な支出が拡大していて不要不急の事業の選別が問われている中で、公共事業の当初予算というのはずっと6兆円というのが長く続いていて、更に補正で上積みされている状況ですが、コンパクト化に見合う公共事業の選別というのを積極的にこれからも進めていただきたいというのが2点目です。
あと最後、3点目はグリーンです。従来の気候変動対策に加えて、ウクライナ危機で化石燃料の価格が高騰しているわけです。そうした化石燃料に依存しない経済の転換を更に加速させる、急ぐことが必要であるということでグリーン政策に積極的に取り組む、2050年のカーボンニュートラルに向けた流れを政策的にも加速させていく必要があると思っています。
またその際に重要なのは、資料でも御説明があったように効率的な支援ということで、例えば電気自動車の導入支援にしても、電気自動車への買換えを考えていても、なかなか価格が下がらないなと思っている人も多いと思われ、いたずらに予算額を増やすのではなくて、そうした質の向上を不断に検証するということが今後より重要だなというように感じました。これは、引き続きこうしたことも積極的に取り組んでいただきたいということです。
以上です。
〔土居部会長代理〕それでは、続きまして、テレビ会議システムを通じて御参加の委員の方々に御発言をお願いいたします。横田委員、田近委員、佐藤委員、冨田委員、河村委員の5名に、順に御発言いただきたいと思います。
それでは、横田委員、お願いいたします。
〔横田委員〕ありがとうございます。横田からは社会資本整備に関して2点と、中小企業対策についてお話しいたします。
まず、社会資本整備は、今回、人口減少を織り込んだ形で国土全体の危機管理構想を検討、策定がなされるとのこと、非常に良いと思っております。
一方で、他の計画との連動性をいかに図っていくか、コミュニケーションを取っていくのかということが非常に重要であると思います。事前復興計画の策定の促進や各自治体で多く策定されている中長期計画との関連性のようなところをしっかりと見ていただきたい。全体最適と個別最適の双方の視点から落としどころをつくっていくべきであると思います。
二点目は災害危険区域にお住まいの方に関する点です。まず、あえて災害危険区域に居住者が増加している理由が全く分かりません。やはりディスインセンティブなどこれから住まう方に関してはきっちりと設けることで減らしていくべきであると思います。一方で、もう既にお住まいの方に関しては、先ほど例でいただいていた大雪地域の方の例などもありましたが、やはりお住まいの方々の中での議論が必要。その上で、費用削減ができた部分の一部をお返しは、選択肢を広げるメニューのひとつとして、議論が前に進みやすいよう示していくということは重要であると感じました。
中小企業対策については2点あります。緊急時にある一定の費用を使って対策を早急に実施していくということは大事なことであると思う一方で、どさくさ紛れのフルーツサンドや不正受給があるというのは非常に憤りを感じます。そうしたものは何かペナルティーを大きくしてほしいと思うところです。
ただ、一方で中小企業のコロナ対策という観点では、今回挙げていただいたものに加えて、恐らく雇調金も中小企業のためのものですし、時短の協力金もほかの今回お示しいただいた予算の中には含まれていないところ。コロナ対応における中小企業支援対策という観点で、総合的に本当に幾らかかって、今後どうしていくべきなのかというのを改めて幅広くきちっと整理して、議論していくべきではないかと思います。
以上です。
〔土居部会長代理〕それでは、田近委員、お願いいたします。
〔田近委員〕田近です。よろしくお願いします。私からは、産業・中小企業というところについて意見を述べさせていただきます。
できれば2ページを開いていただきたいのですが、これは前回、社会保障のところでも大変議論がされたし、今回の財審の一つのコンセンサスになっているような気がするのですが、コロナに対して財政面からどう対策したかと、その実績面を踏まえてレビューするということ、いつまで何をどうするかというのはこれからの議論でしょうが、夏前までにできるのか、あるいはそれができなければ夏を越えて秋までにということで、是非コロナ対策の実績を踏まえたレビューをするべきであると思います。
それに関して、今まさに御意見、御指摘があったことと重なるのですが、この2ページの図を見ていて、中小企業に対するコロナ対策をどうやって全体を概念化するのかということで、一つの見方は所得補償ということで、それは事業主、被用者と、被用者のところで雇調金が入ってくると思うのですが、事業主のほうもいろいろあって、まさに御指摘のとおり協力金をどうするかと。すると、中小企業に対するコロナ対策として所得補償、それから次は資金繰り支援、それをどういうスキームでやったのかと、税金でやったのか、財投でやったのかとか、幾つか全体が構想できるような形を考えて、実績を踏まえて是非取りまとめていただきたいと思います。
第2点は、この図で私も非常に印象的だったのですが、最近の中小企業対策の上の一番左の図ですが、これはオレンジ色の部分が補正予算で、青いのが当初ですよね。恐らくずっとこれも議論していて、黄色い部分は信用保証の部分とか、ずっとこれを議論してきましたが、これもやはり今さらながら重要であると思いました。ぜひこの部分も今後、必ずと言ってもよいと思うのですが、何で補正予算がこれだけ膨らんだのかということを説明いただきたかったと思います。
以上です。
〔土居部会長代理〕それでは、佐藤委員、お願いします。
〔佐藤委員〕よろしくお願いいたします。私からも3点ほど。
一つ目は、資料1の7ページにあった事前復興計画です。方向感として是非進めていただきたいのですが、やはり課題は、これを実際に行うのは自治体なので、どうやって自治体に積極的な取組を求めるかということかなと思います。実際復興計画をつくってみればいろいろな利害関係というのが明らかになりますし、いろいろな見たくないものも出てくるわけなので、下手をすると知らぬが仏を決め込むというのはどこにでもあることですので、何かてこ入れが必要かなという気がします。それは金銭的なインセンティブかもしれませんし、あるいは何らかのガイドライン的な技術的なサポートかもしれませんが。
次が第2点目です。資料2の4ページにあります中小企業支援なのですが、ものづくり補助金と言ってみたり、今回は事業再構築補助金と言ってみたり、いろいろな形で補助金が出ていくのですが、どうも政策と現場に目線が合っていないのかなという気はします。これは大学のようなことを言ってはいけない気がするのですが、政策側は、もしかしたら本気で産業の、事業の再構築とか生産性の向上とか競争力のアップとかそうしたものを志向しているかもしれませんが、補助金を受け取る現場は、どうやったら補助金を受け取りやすいかなということを考えるわけです。我々、大学もそんなことを考えますよね。なので、どうしても補助金が取りやすい方向に行くというのは、本来のこの事業の趣旨が現場に浸透していないというのは一つあるかなという気はします。どこかの段階で、これは地方自治体に対しても言えることなのですが、どこかの段階で、国は本当はもっとシリアスなのであると、ゲーム、レジームは変わったのであると、つまり、これからは、もちろん中小企業も自走が求められるわけだし、やはりいや応なく新陳代謝は進むわけですし、このあたりの強いメッセージが本当は現場に対して必要なのかなという気がします。
最後、13ページ目、これは地球温暖化対策です。これは別の研究会で言われてはっとしたのですが、地球温暖化対策税、石炭に対する優遇措置、これはやはりやめたほうが良いのではないですかということで、全体として地球温暖化対策税の税率を引き上げるということはあってしかるべきでして、その中でも石炭が比較的低い水準で抑えられているというところ、このあたりのバランスを考えなければいけないのかなという気がします。
もちろん、今こうした形でエネルギー価格が上がっている中において、更に税金を上げるというのはけしからんということはあるかもしれませんが、いずれにせよ長期的な見通しとして税率を引き上げるというのは長期的なトレンドであると思いますし、本来やるべきは、トリガー条項をやるとか解除するとかではなくて、いかに経済の構造を省エネ、再生エネルギーのほうに転換していくのかという、そこが求められているのかなという気がしました。全体的にそうですが、今は痛み止めを打つよりは、将来をちゃんと志向した改革が求められるのではないかと思いました。
以上です。
〔土居部会長代理〕冨田委員、お願いいたします。
〔冨田委員〕ありがとうございます。私からは、我が国のvulnerability、脆弱性について、防衛関係費をその観点から申し上げたいと思います。
冷戦終えん後、各国経済の相互依存関係が拡大・深化いたしまして、グローバル化が進展してまいりました。特に我が国については、今日の資料の13ページで御説明がありましたように中国との相互依存関係が顕著に拡大を続けてきました。しかし、世界経済の相互依存関係はコロナ危機、ロシアのウクライナ侵攻によって大きな転換を迎えているように思います。
それは、カントの恒久平和の考え方によるデモクラティックピースに対するホッブズの言うところのパワーポリティクスの世界への転換を意味することかもしれません。また、それは民主主義と市場経済を不可分とする体制と、権威主義、隠蔽体質の体制との対立と言えるかもしれません。このため、各国の相互依存の進展によって各国の脆弱性が増してきたという認識が広がりまして、Weaponized Interdependence、相互依存関係を武器にするという考え方ですが、その言葉が示しますように貿易・投資規制、金融制裁などの経済的な手段を政治目的、軍事的目的に用いる傾向が強まってきました。
このため、軍事的な有事を抑止し、有事に耐えるためには、今日事務局から問題提起がありましたような経済・金融・財政の全体を見渡した運営が必要です。これまでの防衛関係費の議論は、安全保障政策、安全保障環境の不確実性の高まり、すなわち防衛関係費の増額という1次方程式的な考え方、議論が中心でありましたが、安全保障環境にとどまらず、経済・財政・金融・国民生活、企業の各分野におけるvulnerabilityの高まりという全体を見渡した対応という連立方程式の問題となったと考えるべきです。防衛の脆弱性の克服が重要であるからといって、他の分野の脆弱性が増すことになってしまえば、そこをつかれてしまうかもしれません。この観点から、今日、11ページで大変重要な資料を見せていただきました。我が国のこの原則に反して、我が国が現在の位置から防衛費の増額を図るに際しまして、税負担増によって上に行かず、他の経費の削減によって右にも行かない、すなわち国債の増発を選んで防衛関係費を増やすとなりますと、当然のことですが、我が国財政は脆弱さを免れません。既に日本国債はシングルA格に格付されて久しく、日本の国債金利には海外の市場ではリスクプレミアムを求められております。
この観点から、今日、9ページに第2次世界大戦時のファイナンスの図がございましたが、これを国債金利との関係で見ておきたいと思います。1899年に発行されました4%利付、1953年満期のポンド建ての日本国債の金利は、発行当時はイギリス国債の2.7%に1.7%ものリスクプレミアムを求められておりましたが、日露戦争の後の1906年に国債整理基金への繰入れを始めたことによりましてリスクプレミアムは1908年には1.2%に縮小いたしました。しかしその後、1932年に定率繰入を停止し、日中戦争勃発によりまして臨時軍事特別会計を設けた1937年8月にはポンド建て日本国債の金利は10%を超え、リスクプレミアムは6%を大きく超えました。国内では、この後も日本銀行によります国債の直接引受けの下で、満期17年の3.5%利付国債の発行が終戦まで続きました。こうして累積した国債が、戦後のインフレーションと財産税で償還されたのです。申し上げたいことは、我が国のvulnerabilityが、既に現在もドル建て日本国債の上乗せ金利、リスクプレミアムに表れ続けているということでございます。
以上です。
〔土居部会長代理〕河村委員、お願いいたします。
〔河村委員〕御説明ありがとうございます。順番に簡単に意見を言わせていただきます。
まず、社会資本整備のところですが、本当にいろいろな多分野に、広い分野にわたる詳細ないろいろな御説明、御提言、ありがとうございました。被災地の実態、北尾主計官は復興庁とかでいろいろな実際の例、特に復興の初期の状況を御覧になっていたこともあって本当によく御存じでいらして、どのようにすればよいのか、やはり事前にいろいろな状況を把握して計画を立てておくこと、そのときにいろいろデジタルも使えると思いますし、そうしたことが重要なのではないのかなということを本当に思いました。災害に向けての居住地域の誘導をしっかりとか、それから、治水の問題しかりではないかなと思いました。
次に、中小企業のところですが、コロナ危機後も2年目を過ぎて、この局面でどういうところを打ち出していくかというところで、本当に今回のような方向、ただ単に助ければよいということではなくて、いかに国としての自律的な成長軌道を回復していくのかということに重点を置く、こうした方向は大変良いと思いました。やはり国の支援、補助金とかを使った支援というのは呼び水であるはずが、市場の失敗への対応であるはずが、これが下手すると過大なことになって産業の新陳代謝を阻害するであるとか、結果的に政府の失敗のようなことになってしまいかねないと思うのですが、そうしたことは繰り返さないようにしなければいけないと思いました。
そして、グリーンの部分なのですが、いろいろ多岐にわたって御説明くださっていて良いと思うのですが、財審の歳出改革部会としてのグリーンのところの扱い方というか打ち出し方、それからもともとの守備範囲ということもあると思いますので制約はあるとは思うのですが、少し考えてもよいかなという気が少しする部分もあります。
今日の御説明ですと、これまでの日本企業の努力であるとか非常にプラスの面というところを御説明くださっていて、それはそれで事実ですし、良いと思うのですが、では、そのまま日本のグリーンの取組はこのままで大丈夫かというと、恐らく決してそんなことはなくて、それはこの資料でもお書きくださっていたとおり、それこそ税制であるとか、それから補助金だけでなくほかのいろいろな分野の規制とかも含めたいろいろな対応が必要になるのだろうということで、この部会とかでやっていくときの一つの役割としては、例えば全体像的なところをもう少し示してもよいのではないのかなと。
ですから、私が思いますには、炭素生産性という概念があると思うのです、単位当たりの排出量でどれだけ経済成長を実現できるかとかそうしたことで見ると、日本は恐らく全然駄目になってくると思うのです。本当にそれこそグラフを描くと、ヨーロッパとか北欧の国が上をバーッと行くのに、アメリカとかカナダと一緒に日本は地べたをはっているようなグラフになってしまうと思うのですが、そうしたところも現実問題として見せて、この国としてまだ取り組む余地があるというところを打ち出していくことも一つ手かなというように思います。
また、最後に防衛のところについて意見を言わせていただければと思います。渡辺主計官が打ち出してくださった視点の1番目、それから2番目は、ともにおっしゃるとおりであると思います。特に視点の2番のところです。防衛面での脆弱性というところだけでなくて、国全体として経済・金融・財政の面での脆弱性、ここはやはり併せて減らしていかないと国全体をとても守っていけない、今の国際情勢の変化に対応していかれない、もう本当におっしゃるとおりではないかなと思います。その脆弱性を放置し続ければそこを狙われかねないというのは、本当にこれはおっしゃるとおりで、これは防衛力の面だけではなくて、それこそ国の基盤である経済であるとか財政の運営と、本当にそのとおりではないかなと思っております。今回の防衛の部分のお話から大変な危機感を感じて本当に共感いたしますが、この危機感は、今回の財政総論のところでももう少しこうした危機感があっても良かったのではないかなと、すみません、思ってしまったくらいでありました。
本当に今回のウクライナ危機の状況を見ていても、日本も一緒になってロシア向けの制裁をやっていますが、そうした現実をいろいろ見ていても、国にとって交戦状態になったときのことも含めて基盤となる経済、それから財政運営、それから通貨の問題がどれほど重要かということがまざまざと明らかになったのではないかなと思います。日本ですと、隣国でデジタル人民元とかを用意しているような国もあったりしますし、そうした国全体として防衛力をしっかりとやっていくという意味でも、やはり経済・金融・財政全体の面での脆弱性の軽減ということでしっかりやっていくことが必要なのではないのかなと思います。
また、防衛力強化のための財源のところで、ドイツであるとかスウェーデンの例も使ってお話しくださったのですが、本当にそのとおりで、日本は、単に今は大変だから防衛予算増額でよいよねと、それで終わらせるのではなくて、それを一体誰が負担するのかということをきちんと議論していったらよいと思います。プライマリーバランスの均衡も達成できていないわけですから、お金に色はありませんし、防衛予算だって一部を国債に頼っているのは間違いないわけで、それではやはりおかしい、今のこの情勢に対しては私たち現役の世代、現世代がしっかりと負担する形で、みんなでどう負担するかを考えてやっていくべきなのではないかなと思いました。
以上です。
〔土居部会長代理〕ありがとうございました。
まだテレビ会議システムで御参加の委員の方の御発言はあるのですが、5人ずつということでしばらくお待ちいただきまして、対面で御参加の方々にまた御発言をお願いいたしたいと思います。
それでは、熊谷委員、お願いいたします。
〔熊谷委員〕ありがとうございます。それぞれの分野について簡単に申し上げます。
まず、社会資本整備に関して、私は今回の財審における議論の目玉は大きく二つあると受け止めています。一つは7ページから10ページのあたりですが、所有者不明土地の活用ですとか、もしくは新たな国土計画に向けた国土の管理構想、それから各種制度が連携した実効性のあるコンパクト化の推進というあたりが、まず一つ目の大きな柱です。二つ目の柱は17ページの業績連動型補助金です。いずれも今までの財審の議論の方向性を踏まえて更に深掘りした御提案であると思いますので、これらの点は是非とも実現していただきたいと考えます。
それから、産業と中小企業のところは、前回少し申し上げましたが日本には二つ問題があって、財政再建ができないということと、日本経済が低迷しているということですが、そこに通底する理由は、やはり財政支出などの痛み止めを打ち続けた結果、現状維持バイアスが強く働き過ぎていることです。ですから、何をやればよいかというと、私は大きく言うと三位一体で三つのことをやるべきであると考えていて、一つは産業と企業の新陳代謝を進める、これが1点目。2点目として、積極的労働市場政策を強化して、失業なき労働移動を実現する。3点目として、併せて全世代型社会保障改革を断行することによって、経済の活力を維持しながら格差の拡大を防ぐという、ここが最も重要ではないかと考えます。
違う角度から申し上げると、今まで日本は基本的に企業を救ってきたわけですが、今後は、ある程度の産業と企業の新陳代謝を前提としながら、弱い個人に焦点を当てて、ピンポイントで本当に困っている個人を守るという、インクルーシブな政策を取らなくてはいけないと考えます。こうした政策を行う前提として、デジタル化ですとか、税と給付の一体改革、税と社会保障の一体改革などを進めることが不可欠ではないかと思います。
グリーンに関して言うと、財審ののりを少し越えるかもしれませんが幾つか重要であると考える点がございます。一つは、産業政策と環境政策を一体化して司令塔を一元化することです。2点目として、サプライチェーン全体でのCO2の排出量について徹底的な見える化を進めることです。3点目は、時間軸がカギで、ロードマップをつくる必要があります。具体的には、時間軸を示しながら、分野ごとにアベイラブルな代替技術を明示して民間の予見可能性を高めること。その一方で、影響が大きい産業のトランジションに対する一定の配慮を行うことなどがポイントとなります。最後に4点目としては、カーボンプライシングについて、今から検討に着手することです。炭素税と排出量取引制度には、それぞれ一長一短があるわけですから、これらのベストなポリシーミックスを、今からしっかりと議論していくことが肝要だと思います。
最後に、防衛に関しては、先ほど冨田先生がvulnerabilityとおっしゃいましたが、私もまさに同じことを考えています。3ページ目の二つ目の丸のところに防衛力は、国民生活・経済・金融などの安定が必須である、との記載がございますが、ここがまさに今回の財審の最も重要なメッセージです。すなわち、借金して防衛力を強化したとしても、真に我が国の安全を確保することにはならない、やはり安定財源をしっかりと確保することが不可欠だということです。具体的には11ページで示されている様に、これは本当にすばらしい図表だと思いますが、まず国防費を増額するか否か、次に、もし増額するのであれば負担の引上げを実施するのか、それとも国防費の配分を増加するのかといった点を、透明性を高めて情報開示を行う中で、国民にしっかりと選択してもらうことが非常に重要ではないかと考えます。
私からは以上でございます。ありがとうございました。
〔土居部会長代理〕武田委員、お願いいたします。
〔武田委員〕ありがとうございます。
私はポストコロナ社会のキーワードとしてレジリエンスとサステナビリティ、この二つが重要と考えておりますが、本日の三つのテーマは、このいずれにも関係するものと考えております。3点、まとめて申し上げます。
1点目は社会資本整備についてです。災害リスクの低い土地へのシフトや、災害前のソフト対策、これは極めて重要で、是非進めていただきたいと思いますが、進める上ではデータと技術の活用が非常に重要ではないかと考えております。本日、見える化の事例をお示しいただいたことはとても良かったと思います。今後パーソナル防災の在り方や、平時の備えや、コミュニケーションの高度化など、ハードに依存するだけではなく、ソフトにより力を入れる余地が技術によって高まっているのではないかと思いますので、是非その点をお願いしたいと思います。
2点目、グリーンです。昨今の情勢を踏まえますと、世界では短期的により戻しは起こり得ると思いますが、中長期的にカーボンニュートラルを目指す方向性はますます加速するでしょうし、エネルギー安全保障と両立していく必要があることは世界が認識したところではないかと思います。
その点について、広瀬委員がおっしゃいました我が国としての打ち手としてクレジットを活用していくことや、世界情勢を踏まえたアジアへの関わり方と貢献は、全体を俯瞰してみればその重要性は高まっているのではないかと思います。
3点目、防衛についてです。まず、秋の財審でも申し上げましたが、国際情勢が大きく変化する中で経済・金融の脆弱性、これが脆弱なままであるということについての危機感を一段と高めなければいけない、脆弱な状況ではこうした世界情勢の中で大きな問題を抱えると思います。特に国としての財政余力、これを持っていくことは極めて重要であると思います。
補正の議論が足もとで出ておりますが、短期にとらわれ過ぎて、将来の甚大なリスクに対処できないことは避けなければならないと思いますので、それを念頭に置いた議論を是非お願いしたいと思います。
また、経済安全保障の議論が進んでいると思いますが、本日のグリーン戦略とも連携して考えていく必要があるのではないかと考えています。例えば再生エネルギーが普及し、電気自動車の生産が増えていきますと、従来の資源とは異なる資源の確保が必要になります。日本の輸入構造を調べてみますと、カーボンニュートラルに使われるであろう資源の特定の国への依存や偏在の構図が浮き彫りになります。また、同時に日本が世界に対して重要な存在でいられるかどうかも大事であり、日本にとってのチョークポイントのみならず、世界から見たときの日本の重要性が発揮できる部分についての理解とその強化も必要ではないかと考えます。
以上です。ありがとうございます。
〔土居部会長代理〕安永委員、お願いいたします。
〔安永委員〕ありがとうございます。グリーンと防衛について、経済界の視点で少しお話をさせていただきたいと思います。
グリーンに関しては、まず9ページに、ほかの委員からも御指摘がありましたように日米欧の排出量の推移がございますが、確かに日本の国民も企業も意識は高くて、いかにして省エネだ、あるいはリサイクルだ、というのを更に強めていくかということをやっているわけですが、もうここまで来ると乾いた雑巾を更に絞るような状況になってきていて、現在利用可能な全ての技術を動員してようやく2030年の2013年度比46%削減が達成できるか、すなわち原子力も含めて議論をしっかりしていただかなければいけないと。
それから、2050年の断面について言えば、明らかに現在利用可能な技術ではカーボンニュートラルは達成できないと考えておりまして、それこそ昨年秋に御指摘いただいたとおり、民間企業がアニマルスピリッツを発揮してこの分野で新たなR&Dを行って、しっかりとした世界に通用する新たな再生エネルギーであったり、あるいは省エネであったり、リサイクルの技術を確立しなければいけないと考えているのですが、そのためには、国としてグランドデザインといいますか、ロードマップというのをきっちり見える化していただかないと、今のようにビジビリティの低い中でR&Dをどのようにやって、どの分野でどれだけ使っていくのであるということについては、相当官民の間で議論させていただく必要があろうと思っています。そうした意味では、経済産業省、環境省でGXリーグをつくって、ここで今後のことをしっかり話してサステナブルなシステム、プロセスというものを議論するというのはありがたいことですし、そこに既に400社を超える民間企業が参加を表明しています。
この観点でもう一つ、13ページにあります財源について、一方的に炭素税という格好でカーボンを出している企業に税金を課す、という形でやると、R&Dに最もお金を使わなければいけない企業というのはそうした分野ですので、やはりもう少し自主的、自律的に企業が活動できるような、例えば排出権取引の枠組みをしっかりつくっていくということのほうが現実解ではなかろうかと思っています。それも含めてGXリーグでしっかり議論していくことが、今後の日本にとっては必要なのではないかと思います。
それから、防衛についてですが、26ページに装備品の利益率が一般産業より高いというのがありますが、これは我々の実感とはかなり乖離しています。それはどうしてかというと、是非もう少し踏み込んで防衛産業に当たっている企業と会話をしていただきたいのですが、定常的に発注が来ないということや、初期の契約時の利益率は高くとも、その後にチェンジオーダーがあるとか、様々なスペックの変更に伴うコストについて、なかなかこれを吸収できないとか、結果として見ると普通の事業に比べて防衛装備品の事業というのは利益率が低い。したがって撤退する企業が続いて出てきているという事実を、やはりきちんと見ていただく必要があろうかと思います。現在のまさにリスクの高まっている中で防衛戦略をどうするのかということと、当然ながら国内で防衛装備品の開発・生産の維持、運用・保守をやる体制が整わなければ軍備を持っていても実は回していけないという意味では、国内の軍事産業を、防衛産業をどうやってこれからの防衛戦略にアラインさせていくのかということを議論すべき大事なタイミングに来ていると思います。一方で、GDP比で幾らというような乱暴な議論ではなくて、日本の場合は経済や外交と絡め、かつ抑止力の観点でどこまで本当に必要なのかという議論をするほうが現実的ではないかと考えます。
以上です。
〔土居部会長代理〕吉川委員、お願いいたします。
〔吉川委員〕ありがとうございます。三つのテーマそれぞれについて、簡単にコメントさせていただきます。
社会資本整備、15ページの図についてのコメントなのですが、この図は、ニーズに比べてマクロで見ると社会資本のストックがもう十分になって、限界的なリターンも低くなっているのではないかという問題提起であると思います。そのことに私、全く異存ありません。
ただ、個別で見ますとこの右側の港湾は、スーパー港湾の整備というのがいまだに必要であると考えています。この港湾でのコンテナの取扱量でしょうか、最初は急勾配で上がって高度成長期、やがて高度成長が終わって少し傾斜が緩やかになる、95年あたりでピークアウトして減っていますよね。これは、スーパー港湾が整備されなくてハブ機能を失ったことによる面も何がしかあるのではないかというように私は思います。ですから、この図の基本的なメッセージには、先ほど申し上げたとおり全く異存ありません。ですが、港湾という個別についてはスーパー港湾の整備という宿題は残っているのではないかと。さらにそこから進めれば、言い古された選択と集中というのは、社会資本整備でもいまだにやはり重要な課題になっているのではないかというのが1点目です。
2点目の中小企業については2ページ目に、既に田近委員がおっしゃったことの2、セカンドです。つまり、ある段階でこの効果について検証する必要があるのではないかと。一昨年ですか、2020年の個人への給付金については、かなり経済学者等によって研究が進んでいます。残念ながら多くの家計では貯蓄に回ったというようなことがかなり明らかになっていますが、事業体を対象にしたこうした支援についてもしっかりと検証する必要があるのではないかと。とりわけ、円グラフで見ますと融資が16兆円でしょうか、あるわけですから、リーマン後の金融危機のときにもいろいろなこうした融資が行われたわけですが、それと比較しての今回のコロナ時の融資がどのような結果をもたらしているのか、とにかくある段階でしっかりと調査していただければと思います。
三つ目の防衛については最後のページ、29ページ目に視点①と②を挙げてあると思うのですが、この視点②というのは今の時期、なかなか言いにくいような雰囲気もあるように少し思うのですが、私は一番大事なことであると考えております。国防、防衛ということであれば、いわゆる国力、経済がなければ、いかなる兵器というのでしょうか、装備があっても何の役にも立たないと言ってもよいのではないでしょうか。
先ほど、冨田委員が明治時代の国債の金利リスクプレミアムについて言及されましたが、明治時代と今は時代が違いますが、実際に日露戦争があった時代、当時の指導者は十二分に日本の経済力というのを考えていたわけです。そのたがが外れたのが戦前の昭和ではないでしょうか。要するに経済と個々の軍事装備、軍備というもののバランスが明治時代と逆転したのが戦前の昭和であると私は思っていますが、今回、防衛に関して視点②というのを掲げられたのは全く正しいことであると思いますし、今だからこそということで財審、あるいは財務省としてもこうした視点を世の中に訴えていただきたいと思います。
私からは以上です。
〔土居部会長代理〕中空委員、お願いいたします。
〔中空委員〕ありがとうございます。今、吉川委員が言われた最後のところから少し戻る形でお話をしていこうと思います。
もういろいろな先生が言われたのでリダンダンシーは避けたいと思っていますが、円安が進んでいます。スワップ上のプレミアムは今日300ベースを超えてきていて、結構なものです。なので、日本国債市場や、あと日銀がこれから態度を変えるか、変えないかということも相当注目を浴びていますが、機動力が日本全体で減ってきている、強くなくなってきているということをもう一回再認識する必要がある状況かなと思います。
それから、グリーンに関してなのですが、何人かの先生から2国間クレジットとかクレジットも良いのではないかという話が出たのですが、クレジットもとても良いのですが、流動性とか流通主体というのがあります。といいますのは、グリーンで書いていただいた中で、果たして財審で語ることなのかという議論はあるものの、私はサステナブルファイナンス市場の拡大というのを是が非でもしないと、日本国債市場にもう一回グリーンの話も依存するというわけにはいかないと思っていて、ここを大きくするためにはアジアを取り込むこと、それから流動性の高いものをつくっていくこと、ひいては、一番最初に必要なのは二酸化炭素に値づけをすることであると思っております。だから、それが炭素税という形であれ、何だってよいのですが、まずはそれをしていかなければいけない、そして融通する、流動性を高めるということでいくと排出権の取引ということが必要なのかなと思います。でも、これは考えていく必要があるということなので、サステナブルファイナンス市場を拡大するという文言とか、その辺は今回もこのグリーンのところに入れていただいたら良いのではないかなと思っています。
一番最初の社会資本整備に戻りますが、2ページ目にあったセンセーショナルな図なのですが、このデータはやはり更新していただきたいなという希望があります。よく見ると平成27年の人口の話になっているので、その次のページは今年の6月にデータ更新予定という説明がさっきあったので、もしかしたらこの2ページ目のデータも新しく更新されてくるのかもしれないのですが、このやってきたことがどれだけ効いたかということを見る上でも、面倒ですがデータ更新をお願いしたいなと思っています。肝腎なのは有事のときには強制力が発揮できるということかと思っているのですが、そのためにもデータが必要ということでお願いしたいと思います。
以上です。
〔土居部会長代理〕それでは、まだ対面で御発言の希望の委員がおられるのですが、もう一度テレビ会議システムのほうに戻らせていただきます。
それでは、テレビ会議システムで御参加の田中委員、上村委員、小林慶一郎委員の順に御発言をお願いいたします。
それでは、田中委員、お願いいたします。
〔田中委員〕田中です。ありがとうございます。皆様がいろいろおっしゃっているので、私も短く2点お話しさせてください。
まず、中小企業に関しましては、機動力ある措置が迅速に取られたということは有効であると思っていますが、メリハリづけを見える化するという必要がやはりあると承知しました。資金繰りの補助については、シンプルに状況を精査できる体制を整えることがやはり必須要件と思いますし、IT補助金などの未来への投資は、計画策定とか事業計画の見極め、あとはお金以外の支援が大事なところもあるかと思います。2022年1–3月の中小企業の景況調査では、前期より全ての業種で赤字企業がまた増加しているというデータがありまして、まだ厳しい状況と思われますが、アドバイザーとか専門家の人的支援などソフト面のサポートや、実質無利子の貸付なども協会や団体や自治体などで続いていますので、これまでの国の補助金がきっかけとなって有効なお金が回るよう工夫していただきたいと思います。
また、誰かが少し不当にこうしたときに得をして、同時に困っている人がいるというようなことを明らかにしないと当事者以外に情報は広がりませんので、どこかで精査をという話もありましたが、各施策の趣旨にそぐわない手当を受けている悪質なものというのは早期に返金措置も取るべきであろうと感じます。
また、防衛費のところについては、防衛省がよく広報活動で具体的な目的を設定されて、いろいろ国民の理解をということで活動を長年にわたりされてきているところは承知しておりますが、これまでの内容は現状を知ってもらうということに注力されているかなというような印象もございますので、国防費はなぜGDP比で語られてきたのかとか、この先どうしていくのかとか、三文書の見直しに向けて既に検討されていると想像しますが、11ページにプロットしていただいた日本の置かれた現状という、GDPとの関係の中でとか、ここのところも国民と共に考える広報に切り替えていくといった方針転換を期待したいと思います。
以上、よろしくお願いします。
〔土居部会長代理〕上村委員、お願いいたします。
〔上村委員〕御報告ありがとうございます。
まず、社会資本整備についてです。災害リスクが高い地域の人口動態の可視化ですが、現場である地方自治体において、危険な地域を意識しない施策展開が行われている可能性があると思います。情報公開とともに、地方自治体を巻き込んだ政策誘導が必要であると考えます。
コンパクト化は非常に重要で、道路もそうですが、特に上下水道の設備投資や維持管理をどうするかは、地方における喫緊の課題になっています。人口減少といっても、人が全く住まなくなる地域が増えるというわけでもなく、スポンジ化していきますので、結局は人があまり住まない地域にも社会資本を維持しないといけないということになります。結局効率性がどんどん悪くなるわけですが、うまく人口を誘導することができると効率的な社会資本整備や、あと運用コストも下げることにつながると考えます。
中小企業ですが、コロナ禍において中小企業対策費は非常に膨らんでいきました。とりわけ事業再構築促進事業には巨額のお金がつぎ込まれているということで、本事業ですが、事業終了後3年から5年で付加価値の平均3%以上を目指すということですが、果たしてその成果はどうなのかということで3年後に検証というわけですが、3年を待たず、毎年データをチェックして検証するべきであると思います。本事業は、事業継続のために新規事業の業態の変更や規模の拡大を促すという補助金ですが、フルーツサンド販売店が有望なのかは少し分かりませんが、有望であると思われる業態に一斉に多数の企業が参入したときに、競争が激化してステージが落ちるということも危惧されますので、そうであるとすると、まさに政府の失敗であると思います。単にコンサル会社をもうけさせたということになっていないかということも含めて本事業の動向を注視しながら、効果が薄ければ現状の事業体を、事業をどうするかという見直しを図っていくことであると思います。この事業に限らず多くの中小企業対策が行われているわけですが、それらの対策が企業の成長ではなくて停滞を招いているということであるとすると非常に本末転倒であると思います。中小企業対策全般が中小企業の成長に寄与しているのかどうかの検証を実施する必要があるように思います。
最後、防衛ですが、有事における我が国経済・金融・財政の脆弱性についてという資料がありましたが、今回のウクライナ危機も踏まえながら、仮に日本や近隣諸国に戦争が勃発したときにどのような事態が想定され、その際の財政への影響はどうなるのかということについて、様々なシミュレーションが必要なのかなと思いました。
最後に、財政の健全化が国家の防衛につながるという考え方や、さらに国家の防衛に国民負担が伴っているのだという考え方について、これは当たり前のことですが、その考え方について、今後も是非発信していただければと思います。
以上です。
〔土居部会長代理〕小林慶一郎委員、お願いいたします。
〔小林(慶)委員〕小林です。では、中小企業と、それから防衛について簡単にお話をしたいと思います。
中小企業の2ページ目で飲食・宿泊の零細企業の経常利益がプラスになっていたという御指摘で、私は少し存じ上げなかったのですが、このようなことが起きている一方で債務の量は非常に増えている、借金の量が増えているということはあると思います。返済に困難を来してきている中小零細企業は飲食・宿泊において過去2年間で急増しているという分析の結果は、先日出た日銀のワーキングペーパーでもそのようなことが確認されております。財政措置で中小企業に対して激変緩和の作用があって有効であったというのは、それは確かに良いことではあったと思いますが、これからの数年というタイムスパンで考えれば、コロナと共存する社会に向けてビジネスモデルを変えていかなければいけない、先ほどフルーツサンドの話がありましたが、何かしらそうした新しい分野に出ていかざるを得ないということは、多くの中小零細企業が直面していることであると思います。
そのときに、政策も現状維持ではなくて、企業の退出であるとか、あるいは退出した後の再チャレンジを支援するような方向で設計されるべきであると思います。事業を転換していく上で、過剰な債務の負担というのは生産的な活動を阻害しますので、債務の負担を減らすという政策も考えていく必要があるだろうと思います。これは90年代の不良債権問題を経て我々が経験してきたことでもありますので、早めの債務処理が特に中小や零細企業で実行できるようなシステムをつくる、政策をつくるということが必要だろうと思います。ですので、それは当然法制の効率化であるとか、あるいは私的整理のより一層の効率化というようなことが必要であると、そこには何かしら財政的な資金を信用保証協会や地域の金融機関に対して資本注入するというようなことも考える必要があるのではないかというように思います。
二つ目に防衛についてですが、これはもう多くの方々が発言されておりましたように最後のページの視点②ですが、これは非常に重要であると思います。防衛の資料の中の14ページですか、そこで経済・金融・財政上の脆弱性の指摘が詳しく書かれていて、大変感銘を受けました。皆様がおっしゃっているように軍事的な有事というものを真剣に検討するならば、それは国力全体を総合的に分析して、国力全体でどう反応するかということを考える必要があるということであると思います。ですので、こうした軍事的な有事が日本の周辺で起きた場合に財政・金融上の問題でどういう事柄が発生して、その後の展開がどうなっていくのか、そしてどうやって解決することができるのかというシナリオをしっかり分析すべきではないかと。この14ページで書かれている問題提起を更に詳しくシナリオ化して、コンティンジェンシープランというものを描くべきではないかと思います。その結果、有事に脆弱性が顕在化しないような健全な財政・金融をつくるためには平時からどのような財政運営をすべきなのかということについて国民的な合意を図っていく、そうしたメッセージを財務省から是非出していただきたいというように思います。
以上です。
〔土居部会長代理〕ありがとうございました。
それでは、対面のほうに戻りまして、末澤委員、お願いします。
〔末澤委員〕ありがとうございました。私からは社会資本整備、グリーン、防衛についてお話しさせていただきたいと思います。
まず、社会資本整備ですが、災害に関してこうしたことわざがあります。「天災は忘れた頃にやってくる」、「備えあれば憂いなし」、私もよく使う言葉なのですが、よく考えると、この二つを両立するのは難しいと。たまにしかやってこない災害のために備えをしますかということで、一方で日本の人口は、先週総務省が発表しましたが昨年10月1日現在、前年比で64万4,000人減と、これは恐らく鳥取県の人口より多く、島根県の人口に近いと思うのですが、そこまで減っていると、これは戦後最大です、1950年以降最大です。つまり、少子高齢化が進む中、今のような対策では恐らく私はなかなか難しいと。やはり新法、規制等で国サイドから指示していくのと、災害に対しても、アメリカでは連邦緊急事態管理庁(FEMA)というのがありますが、こうしたことも必要なのではないかということです。
また、グリーンです。グリーンは、私も書いていることはもう全てアグリーなのですが、一つ注意点を御説明すると、今年の欧米の環境政策についてはよく見ておく必要があると。アメリカでは11月8日に中間選挙があります。今、バイデン民主党の支持率は極めて低いです。また、フランスでは今週末に大統領選があります。マクロン氏が勝つとは思いますが相当な僅差で、6月には国民議会選挙があって、ここではコアビタシオンですね、つまり首相と大統領の出身政党が変わる可能性がある。ちなみにマクロン氏は環境政策に熱心なように思われるのですが、直近であった世論調査で、フランス国民のマクロン氏の環境政策に対する信頼感は20%台前半しかないです、あまり信頼されていないのです。また、ドイツは御案内のとおり今回、国防政策とともにエネルギー政策を相当変える可能性があるということです。なので、今年の状況はよく見る必要があると、これがグリーンです。
また、最後は防衛なのですが、今回のウクライナ侵攻を受けて防衛費を増やすべきであるという議論が高まっています。ただ、ここで考えておく必要があるのは、防衛力というのはある面で手段なのです。目的は国を守る、つまり国民の生命・財産を守ることであって、そのためにどういう防衛政策が必要で、そのためにどういう防衛力を整備すべきか、こうした順番があるので、まずここを間違えないということです。
あと二つ目、今回の資料はよかったと思うのですが、本当に総合的な対応、経済・金融、食料、外交、財政、こうしたものに総合的に対応しないと結局持続可能力、継戦能力にも影響してくると思います。
三つ目は、これは皆さん、今回のウクライナ侵攻を御覧になって分かったと思うのですが、私はやはり耐久力、回復力、レジリエンスと言ってもよいかと思いますが第1撃に対する守備、これが重要であると思います。湾岸戦争以降の世界の紛争は、まず第1撃は弾道ミサイル、巡航ミサイル等の精密攻撃で防空システム、艦船、戦闘機等を攻撃するわけです。その次に本格的な戦闘が始まると。日本は今、いろいろな高い防衛装備品を買おうとしていますが、第1撃で基地が全部撃破されたら全く丸裸になるわけですから、まずレジリエンスの問題は極めて重要であると。
ちなみに、これは極端な事例ですが、戦後の米ソ等の核相互抑止戦略、抑止論の基本は第2撃、つまり反撃力を維持するということなのです。その結果、今はどうなっているかというと、イギリスの場合は実戦配備されている核弾頭の100%がバンガード級のSLBM搭載原子力潜水艦に搭載されています。これは100%です。フランスは、昔はいろいろ持っていたのですが、今は85%が、ル・トリオンファン級SLBM搭載原子力潜水艦に搭載されていると。米国でもオハイオ級原子力潜水艦、戦略原潜に、これはトライデントSLBMで7割、70%の核弾頭が搭載されていると、SLBM搭載原潜がやはり生き残る可能性が高いということなのです。別に私は日本でSLBMを持てとか、原子力潜水艦を持てということではなくて、少なくとも第1撃を防ぐ、ないしは耐久して上陸戦闘に備えられるような防衛態勢、ここが第一義的に重要であると思います。F-X導入議論以前に、こうした問題への対策が、日本の防衛力整備の中では従来視点が欠けていたのではないかと、このことは今回のウクライナ侵侯攻でより明確化したのではないかと思っております。
以上でございます。
〔土居部会長代理〕遠藤委員、お願いします。
〔遠藤委員〕財審の議論では、防衛は防衛、社会保障は社会保障の枠の中で予算の再配分を検討するということが、それぞれ主計官が率いる部隊の御尽力の下で行われているわけなのですが、それはそろそろ限界がありまして、前回も申し上げたとは思うのですが、分野を超えたというか領域を超えた再配分、端的に申し上げますとソーシャルからセキュリティのほうへの分配を議論していかなくてはならないということをもう一度申し上げたいと思います。
そうした意味では、防衛の資料の11ページ、これは再配分の議論か、国民負担を引き上げるかという選択肢を示していただいているものなのですが、私は、両方必要であるとは思うのですが、まずは税収の再配分をしっかり検討していく必要があるかと思います。なぜかというと、例えばF-35を何機買ったらよいか、主計官がその説明責任があるとおっしゃっておられたのですが、国民からすれば、コロナの医療費だけに16兆円使ったと、F-35はそれで1,600機買えるのですよねという話になるわけです。また、雇用調整助成金6兆円は、防衛費の6兆円と同額ですよねと。コロナ禍の時限的な措置ではあるのですが、そうした国民感情もあろうかと思います。特にコロナの医療費ということになると主にシニア世代への給付のために使われたと思いますが、安全保障は次世代の安全基盤としての安全保障ということですので、これはソーシャルとセキュリティの分配を超えて世代間の分配につながっていく議論に発展していると思います。財政当局の中で一分野の中に限定した細かいやり繰りは大事なお仕事であるとは思うのですが、国民の意識や財政のリアリティとは乖離していくのではないかと思っております。重ねて申し上げますが、こうした地政学上の変化を鑑みれば、ソーシャルのほうからセキュリティのほうに予算を振り分けていく時代になってきているのだと考えます。
何人かの委員の方々がおっしゃったことですが、経済は安全保障そのものであり、科学技術もそのものであって、国家安全保障という定義の中に含有する、包含するようなものであると思います。もっとも、マクロ金融政策の出番というのは、今の円安の状況を見ていても非常に期待されるところなのですが、例えば財政が直接政策効果を及ぼせるか、については、経済に対しては限界的なところもあるのはしかりであると思います。
せっかくなので、この視点で参考資料の8ページのところに触れたいのですが、防衛費の増強とともに、民間の技術力を利用した防衛刺激策というか、そうした好循環を生み出すような仕組みというものは非常に大事でして、アメリカは財政に依存するだけではない民間技術が貢献する防衛力の増強という好循環が行われています。日本でも今、経済安保推進法でいわゆる経済安全保障の問題が議論されて、法律が可決されたわけなのですが、例えば民間技術のスピンオフと謳われていますが、では、民間のクリアランスの問題はどうするか、また例えば防衛省の研究開発予算を大学は積極的に取りに来ないというような問題があるわけです。こうした産業界とか学術界との連携が全く絶たれているような状態の中で、財政だけの投入に依存するということのリスクは大きくあると思います。恐らく防衛省もこれから経済安保的な検討を三文書とともにまとめてくると思うのですが、民間、大学の力を使っていく前提で財政がアンカーテナンシーとして機能し、好循環を生み出すような仕組みを、是非財政当局としても支援いただきたいと考えております。
以上でございます。
〔土居部会長代理〕大槻委員、お願いします。
〔大槻委員〕ありがとうございます。
まず、全体を通して、これまでにとらわれないで非連続な改革を、ということであると思っています。皆様も御存じのとおりでコロナであり、ウクライナであり、これまでの10年と違うことが今後の5年に起こり得るという観点では、やはり大きく変えるという気概でやっていかなければいけないのだろうと思っています。
その意味で幾つかですが、まず、フルーツサンドです。これはコンセプトとしては、業態を変えていくということは非常に重要であると思うのですが、ウェブサイトで見ても、税理士さん等が申請件数とか採択率の高さをアピールしてフィーをもらっているというのは、これは明らかにおかしいと思います。計画が作りっ放しになっていてリスクを取らないような形になっているということであれば、その役割というのは金融機関がハンズオンでやっていく、伴走型と最近よく言われますが、それが重要かと思っています。
なぜそれがそこまで活発ではないかというと、そうした形のインセンティブのつけ方があるということに加えて、最近メインバンクというのは役割が薄れているという形で、他国に比べて銀行取引が中小零細企業でもすごく多くて、そこの責任というか、やりがいが不明瞭になっていると。これを医療のかかりつけ医制度的に、銀行もメインバンクか、そうした形でやるところまで全部やっていくというような形の伴走型が望まれるのではなかろうかと思います。
また、スピード重視でやっているとしようがないと思うのですが、とにかくデータを集めて、次に支援が必要になったときにそれらがいかされるような形でやっていただければと思います。
2点目に社会資本なのですが、9ページ目は全部、すばらしくよく練ってある計画であると思いますが、一つ、もうすぐ中間報告が出るとされている国土交通省の国土管理構想ですか、既にやっていらっしゃると思いますが、財務省さん、それからその他のあらゆる省庁と、それから地方公共団体、これが主役になると思いますので、そうしたところとしっかりと連携を取っていくことが極めて重要であると思っています。
それから、最後にグリーンと防衛ですが、グリーンの11ページ目の研究開発費については、皆様に御指摘いただいているとおり、防衛面でも、やはり喫緊の一番重要な課題というのはエネルギーであると思います。時間軸が全然違うので、それをこのグリーン政策でもってすぐに代替できるようなことはないとは承知していますが、ここはやらざるを得ない、その重要性はさっき申し上げた非連続な改革の一つであると思っています。その意味では、お金を出せばよいというものではないと思いますが、もっと大胆な施策を打ってもよいのかなと思っております。
以上です。
〔土居部会長代理〕ありがとうございました。
以上で委員の皆様から御発言いただけたかと思います。それでは、ほかにございませんでしょうか。
それでは、これまでの委員の皆様からの御意見、御質問に関しまして、事務局から何か御回答できることがあればお願いしたいと思いますが、主計官、いかがでしょうか。
〔北尾主計官〕公共主計官、北尾でございます。
いただいた意見、それぞれを踏まえて、またいろいろ検討したいと思いますし、データをそろえるとかも含めてよく進めていきたいと思います。
それから、神子田委員から固定資産税を引き上げて取ることで住めないようにすることは可能かという御質問がございましたが、制度的には、恐らく地方税の税制改正の中で議論されていくべきものかなと思いまして、政府全体で災害対応は重要ですので、問題意識等は関係部局に何らかの形で伝達できないかなと考えております。
〔土居部会長代理〕どうぞ。
〔坂口主計官〕経済産業と環境を担当しております坂口でございます。たくさんの貴重な御意見をありがとうございました。
その中で御質問が1点だけございまして、多くの委員に言及いただきましたフルーツサンドの件ですが、事務局のホームページではこの税理士法人の名前とか、それから株式会社の名前というのも全て公開されております。この趣旨として、そこの名前に焦点を当てるのは不本意ではございませんので今回は伏せましたが、ホームページでは御確認いただけます。
以上です。
〔土居部会長代理〕それでは、皆様の御協力によりましてパンクチュアルに進んでおります。大変ありがとうございます。
それでは、お時間もまいりましたので、本日の議題はこれまでとさせていただきたいと存じます。
本日の会議の内容につきましては、会議後の記者会見で御紹介することとさせていただきます。会議の個々の発言につきましては、皆様から報道関係者等にお話しになることのないよう、御注意をお願い申し上げます。
次回は5月16日月曜日10時から財政制度分科会を開催いたしまして、建議の素案について審議する予定でございます。
本日はこれにて閉会いたします。皆様、御多用中のところを御出席いただき、誠にありがとうございました。
午後5時20分閉会