財政制度等審議会財政制度分科会歳出改革部会
議事録
財政制度等審議会財政制度分科会歳出改革部会議事次第
令和3年4月30日(金)14:00~16:40
第3特別会議室(本庁舎4階中-412)
-
1.開会
-
2.議題
グリーンについて
社会資本整備について
農林水産について
-
3.閉会
部会長 |
増田寛也 |
元榮大臣政務官 矢野主計局長 角田次長 宇波次長 青木次長 日室司計課長 森田法規課長兼給与共済課長 有利調査課長 中島主計官 大久保主計官 飯塚主計官 渡邉主計官 関主計官 岩佐主計官 一松主計官 波戸本主計官 藤﨑主計官 渡辺主計官 井上主計企画官 山川主計企画官 高田内閣官房気候変動対策推進室総括参事官 |
||
部会長代理 |
土居丈朗 |
|||
委員 |
赤井伸郎 遠藤典子 佐藤主光 武田洋子 中空麻奈 宮島香澄 安永竜夫 |
|||
臨時委員 |
上村敏之 河村小百合 木村旬 熊谷亮丸 小林毅 末澤豪謙 竹中ナミ 田近栄治 田中里沙 冨田俊基 広瀬道明 福田慎一 別所俊一郎 堀真奈美 神子田章博 村岡彰敏 横田響子 |
|||
オブザーバー |
大槻奈那 神津里季生 十河ひろ美 小林慶一郎 平野信行 |
午後2時00分開会
〔増田部会長〕時間が参りましたので、間もなく会議を始めます。本日は冒頭でカメラが入りますので、そのままでお待ちいただきたいと思います。
それでは、お願いします。
(報道カメラ入室)
〔増田部会長〕ただいまから、財政制度等審議会財政制度分科会における歳出改革部会を開催いたします。
この歳出改革部会ですが、より少ない人数で、各歳出分野における予算編成上の各論について集中的に議論していただいて財政制度分科会の建議につなげていきたいと、このように考えております。
よろしゅうございますでしょうか。それでは、報道関係の方、御退室をお願いします。
(報道カメラ退室)
〔増田部会長〕今日は、初めに部会長代理の指名を行いたいと思います。
所属委員につきましては、資料4を御覧いただきたいと思います。名簿の一覧が出ていると思います。
部会長代理の選任につきましては、財政制度等審議会令の規定によりまして部会長が指名することとされております。そこで、部会長代理には土居委員にお願いしたいと思います。あわせまして、今後の議事運営について、土居部会長代理にお願いしたいと思います。
〔土居部会長代理〕謹んで引き受けさせていただきます。よろしくお願い申し上げます。
〔増田部会長〕ありがとうございます。それでは、土居委員におかれましては部会長代理席にお移りいただきたいと存じます。
(土居委員、部会長代理席へ移動)
〔増田部会長〕部会長代理が決まりまして、また、議事運営は土居部会長代理に進行していただくこととなりましたので、ここからは土居部会長代理に議事進行をお願いしたいと思います。
それでは、どうぞよろしくお願いします。
〔土居部会長代理〕部会長代理を拝命いたしました土居でございます。これから皆様とともに議事を円滑に進めてまいりたいと思いますので、御協力、何とぞよろしくお願い申し上げます。
それでは、早速でございますが、グリーンの審議から始めたいと存じます。渡邉主計官、有利調査課長、高田前給与共済課長、現内閣官房気候変動対策推進室総括参事官より御説明をお願いいたします。
〔渡邉主計官〕ありがとうございます。司法・警察、経済産業、環境担当の主計官の渡邉でございます。よろしくお願いいたします。
それでは、資料に沿って御説明いたします。
まず、3ページ、御案内のとおり、現在の世界的な地球温暖化対策の枠組みにつきましては、2015年のCOP21で採択されましたパリ協定に基づいております。パリ協定においては、全ての締約国が、それぞれの温室効果ガスの削減目標(NDC)をつくり、今世紀後半の世界の脱炭素、いわゆるカーボンニュートラルを実現することを目標にしております。
図3-1は、各国のエネルギー起源二酸化炭素排出量を比較したものですが、排出量の大半は途上国起源のものであり、途上国をいかに巻き込んでいくかが地球温暖化対策における大きな課題とされております。
表3-2は、先日の米国主催の気候サミット後の主要国の削減目標です。同サミットにおきまして、菅総理から我が国の2030年削減目標を従来の2013年度比マイナス26%からマイナス46%へと7割以上引き上げることを表明されました。さらにマイナス50%の高みに向け、挑戦を続けていくことも付言されております。基準年が異なりますので、各国の削減目標の単純比較はできないのですが、多くの先進国は、2030年の削減目標の引上げ、それから最終目標である2050年カーボンニュートラルを表明しているところでございます。
次に、4ページの図4-1のグラフは、我が国の温室効果ガス排出量の推移及び排出量削減に関する、現時点における我が国が表明済みの主な国際的なコミットメントをまとめたものでございます。2050年カーボンニュートラル、2030年マイナス46%を踏まえますと、従来の緑色の矢印から赤色の矢印に沿って排出量を削減していく必要があるということになります。特に、2030年マイナス46%を達成するためには、単純計算で2030年の温室効果ガス排出量を約7.6億トンにまで削減する必要があるということでございます。2019年までに合計約2億トンの温室効果ガス排出量を削減してきておりますので、残り10年程度でこれまでの2倍以上の削減が必要ということになります。
右側の表4-2は、今年11月に英国で開催されるCOP26に向けた地球温暖化対策関連の主な国際会議の予定でございます。
続きまして、5ページ、2050年カーボンニュートラル目標を達成していくためには、昨年末に策定されましたグリーン成長戦略等では、民間企業が保有する技術や資金を積極的に活用していくことが必要であり、そのために、予算、税、金融、規制改革・標準化、それから国際連携といった、あらゆる政策を総動員する必要があるとされているところでございます。なお、地球温暖化対策では、産業構造、経済社会の変革や非連続的なイノベーションが求められるものですので、省エネ、再エネを民間の自律的かつ持続的な活動として根差していかせるためには、対策の重要性について国民への粘り強い説明と理解が不可欠と考えております。
続きまして、温暖化対策と予算でございます。7ページをお開きください。こちらは、2016年に閣議決定されました地球温暖化対策計画の概要です。この中では、部門ごとの2030年温室効果ガス削減量の目安が示されており、その目安達成のために取るべく各種の対策等が定められているところです。なお、右側の関連予算額とあるのは、環境省が各省から関連予算を聞き取り、取りまとめの上、地球温暖化対策予算として公表しているものでございますが、毎年5,000億円程度が措置されているということでございます。今後、新たな目標であるマイナス46%を踏まえ、エネルギーミックスを含むエネルギー基本計画や、地球温暖化対策計画が改定されることになります。適切な官民の役割分担、そして国と地方の役割分担の観点も留意する必要があると思っております。これまで大きな役割を果たしてきた規制的手法、予算措置、その他支援策をパッケージとして戦略的に取り組む必要があると考えております。
次に、8ページでございます。国の温暖化対策予算の4分の3程度は、エネルギー対策特別会計エネルギー需給勘定におきまして、経済産業省と環境省が石油石炭税を主要な財源、いわゆる特定財源として実施しているところでございます。図8-1は、同勘定の歳出の推移を示したもので、青い部分の再エネ、省エネ設備導入支援、それからオレンジ色の部分の技術開発実証事業への補助が地球温暖化対策関連となります。なお、灰色のその他には、石油備蓄や資源開発等が含まれております。2012年には、石油石炭税の課税の特例として地球温暖化対策税を導入し、この導入支援や、技術開発への補助を大幅に拡充してきたところでございます。縦割り排除は言うまでもなく、支援事業が新たな削減目標達成に真に貢献するものか否かという観点から、必要性等について不断に検証する必要があると考えております。
9ページ、導入支援です。導入支援の補助金につきましては、表9に示されているとおり、少なからぬ事業において、二酸化炭素削減コストにかかる目標値や実績値が示されていないということでございます。政策効果を検証するために、KPIの設定や実績値の公表といった「見える化」が不可欠と考えております。なお、個別の導入支援の補助金の例については、参考資料を御覧いただければと思います。
次に、10ページでございます。令和2年度第3次補正予算におきまして、グリーン関係の革新的技術の研究開発、実証事業を10年間にわたり継続して支援するということで、2兆円のグリーンイノベーション基金が、経済産業省所管の国立研究開発法人である新エネルギー・産業技術総合開発機構、通称NEDOに創設されております。基金の執行の基本方針等につきましては、経済産業省の審議会で議論されているところでございます。
表10-1にございますとおり、同基金は単にお金を薄く広くまくのではなくて、グリーン成長戦略における14の重要分野における研究開発、実証事業に絞って支援することにしております。これにより、民間企業の研究開発と設備投資、15兆円の誘発を見込んでいるところでございます。2兆円という巨額の基金で、相当、革新的な技術開発等を支援することに鑑みまして、表10-2にあるとおり、成果最大化のための様々な取組、仕組みを取り入れることとしております。その中には、例えば図10-3にあるとおり、企業側のコミットメントが不十分と判断される場合の委託費等の返還や、目標の達成度に応じたインセンティブ措置の導入等、これまでにない措置を含んでおります。本基金の執行に当たっては、既存の研究開発事業との役割分担、重複排除はもちろんのこと、支援対象をグリーン成長戦略に基づく真に必要なプロジェクトに限定させていただきます。民間企業の研究開発、設備投資の喚起、民間資金の呼び込みにも留意しつつ、何よりも透明性のある執行を行うことが不可欠であると考えてございます。
次に、11ページでございます。これは御参考ですが、エネルギー対策特別会計エネルギー需給勘定で実施している地球温暖化対策の財源、いわゆる特定財源となっている石油石炭税及びその課税特例として設けられました地球温暖化対策税の税収の動向でございます。2012年10月、温暖化対策税を導入して以後、段階的に税率を引き上げたことに伴い、税収は増加基調にございましたが、近年では、技術開発による燃費効率の向上や、原油輸入の減に伴い、減収傾向にあるということでございます。
最後に、温室効果ガス削減目標の達成には、あらゆる政策手段を総動員する必要があるとされているところでございますが、更なる対策、施策が必要となるのであれば、将来に負担を先送りしないよう、必要な財源を確保しながら取組を進める必要があると考えてございます。
私からは以上でございます。
〔有利調査課長〕続きまして、調査課長の有利でございます。諸外国の動きについて御説明申し上げます。
13ページを御覧ください。主要国における気候変動対策について、予算面と、その財源の観点から御説明したいと思います。
米国では、気候変動分野、インフラ分野を対象とした2兆ドルの米国雇用計画を発表しましたが、同時に、法人税率の引上げを含む税制改正により財源の全額を確保するとの方針を発表してございます。
イギリスですが、気候変動分野への投資として、昨年秋、120億ポンド、つまり約1.8兆円の10-Point Planを発表しております。この財源は明示されておりませんが、英国では財政健全化全体として法人税率の引上げ等を発表しております。
EUですが、昨年末に総額1.8兆ユーロの予算を採択し、3割を気候関連支出に充てるとしております。この1.8兆ユーロは、既存の枠組みである多年度財政枠組みと、新設される次世代のEU資金の2つのパーツからなっておりまして、いずれも加盟国に配分されます。MFF、単年度財政枠組みですが、これは加盟国からの拠出金が財源でございまして、借金で賄うわけでありません。次世代のEU資金は、EU共通債券を発行して賄いますが、その償還財源として、導入済みのプラスチック賦課金のほか、今後、排出権取引制度の見直し、炭素国境調整メカニズムなどが検討される予定となっております。したがって、EUも財源をしっかり確保する方針を打ち出しております。
ドイツですが、コロナ前に気候変動対策プログラムを発表しましたが、財源はCO2に関連する税や利用料の引上げによって全額確保しているという状況です。また、つい3日前に公表された復興強靱化計画でも気候変動関連施策が盛り込まれておりますが、財源の大部分は先ほどの次世代のEU資金からやってきます。
また、フランスでも、同じく3日前に公表された復興強靱化計画で気候変動関連施策を盛り込んでいますが、財源のほぼ全額は次世代のEU資金からやってきます。
このように、各国とも財源確保をしっかり考えている状況でございます。
次のページ、おめくりください。14ページです。これは、グリーンに限った話ではなくて、経済全体の部門別の資金過不足の状況を日米英独と比較したものです。コロナ前までの状況ではございますが、我が国では政府部門が資金不足状態がずっと続く一方で、企業部門の大きな資金余剰状態が長期間継続している、この点が諸外国と大きく異なってございます。したがって、特に我が国にとって、政府が予算や税のみならず、規制改革等あらゆる政策を総動員するということ、そして民間企業の預貯金を積極的な投資に向かわせると、そうしたことが重要な課題であると考えております。
私からは以上でございます。
〔高田内閣官房気候変動対策推進室総括参事官〕続きまして、内閣官房の高田と申します。私、2015年から18年までパリのOECDに出向して、そこでグリーンファイナンスを担当しておりました。3月に新たに設置されました内閣官房気候変動対策推進室に出向しまして、その総括担当の参事官をしております。また、それまでは主計局の給与共済課長として、この後、お話ししますが、国共済連合会によるESG投資の推進等に取り組んでおりました。本日は、そうした立場から、特に金融面、ESG投資についてお話をさせていただきます。
16ページです。これは、OECDが2017年に出したレポートの抜粋ですが、低炭素社会へ向けて、再生可能エネルギーや、巨額のインフラ投資が必要となります。2016年から30年の平均で、年6.9兆ドルの投資が必要と試算されております。ただ、真ん中の図にありますが、気候変動対策を行わない参照ケースと比較して追加的なコストは限定的であると、また、右にありますように、むしろ化石燃料の支出が節約されるメリットのほうが上回る、とのことです。ただし、支出節約によるメリットは年を経て順次発現されていくのに対して、インフラ投資はアップフロントで巨額の資金が必要になり、それをどう工面するのかというのがグリーンファイナンスの課題です。各国政府とも財政余地は限られておりますし、コロナ禍に至ってはなおさらです。したがって、民間資金をいかに動員するか、それが鍵であるということです。
17ページです。OECDの同じレポートの抜粋ですが、グリーン投資は経済と矛盾しない、むしろ経済成長を加速するという議論が世界的には主流になってきております。2度目標を達成するシナリオにおいて、G20の2050年時点のGDPはネットプラス2.5%になる、また、気候変動を回避することによって損失が回避される分をカウントすると、プラス4.6%になると試算されております。
18ページです。また、気候変動は、環境問題のみならず、金融市場にとってもリスクであるという議論が、近年、高まってきております。その一つのきっかけとなったのが、2015年9月に、当時、イングランド銀行の総裁、金融安定理事会の議長であったマーク・カーニー氏がロンドンで金融機関向けに行ったスピーチの中で、気候変動が金融市場にもたらすリスクを強調しました。フィジカルリスク、自然災害の増加等による物理的なリスク、また、トランジションリスク、世界が低炭素経済に向かっていくと石油や石炭が使えなくなり価値が失われ、それらを扱っている企業の株価も下がり、さらに、それらに投資している投資家もダメージを受けます。そうした変化が非連続的に起きると、金融システムへの不安定性につながるということです。
19ページです。今や、気候変動は環境問題にとどまらず、財務、金融に関わる問題として、各国の財務省、金融規制当局、あるいは中央銀行が対処する課題となっております。先ほどのマーク・カーニー氏の問題意識を踏まえまして、2015年12月にFSBがTCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)を設置して、2017年にその報告がなされております。現在、これに沿って、世界、日本の多くの企業が気候変動のリスクを把握し、それに対する戦略を開示する取組を進めております。2016年には、中国がG20の財務トラックにグリーンファイナンススタディーを設置しました。これは財務トラックですから、各国の財務省、中央銀行が参加することになります。2017年には、NGFS(Network for Greening the Financial System)、気候変動に対する中央銀行と金融規制当局のネットワークが発足しておりまして、日本の金融庁と日銀も加盟しております。2019年には、気候変動に対する財務大臣連合が発足をしておりまして、先般、日本の財務省もこれに加盟をしたところです。
20ページです。ESG投資とは、御案内のところかとは思いますが、環境社会、企業統治といった要素に配慮し、それを投資の意思決定に組み込んでいく取組です。ESGは非財務的要素とも呼ばれますが、近年では、むしろこれは中長期の財務パフォーマンスに影響しているものとの認識が広がってきております。したがって、ESG投資は決してモラルの観点のみから行うのではなく、あくまでも金融的リターン、追求の一手段ということです。また、機関投資家は、受益者のために、この金融リターンを追求する受託者責任を負っておりまして、かつてはESGといったほかのことを考慮することは許されないのではないかという議論もあったわけですが、現在では、これは決して他事考慮ではなくて、むしろ金融的リターンを追求するという機関投資家の受託者責任の一環であるとの認識が高まってきているところです。
21ページです。実際にESG投資は、通常のベンチマークに比べても、リスク、あるいはリターンの点から高いパフォーマンスを上げているという分析、研究は様々出ているところです。ただ、強調すべきは、ESGとはあくまでも将来に向かって中長期的にリターンを確保する取組ですので、過去の一時点におけるパフォーマンスのよしあしに過度にとらわれるべきではないということではあります。
22ページです。こうした中で、ESG投資の規模は世界的にも、日本においても拡大をしております。特に日本での拡大は急速です。しかし、世界の市場規模に占めるシェアで見ますと、日本の金融市場の規模からすれば、まだ少ない水準にとどまっております。ただ、これは裏を返せば、日本の市場に伸びしろが大きいということです。
23ページです。政府としても、様々な公式文書においてESG投資の推進を表明しているところです。
24ページです。日本でも取組が進んでおります。左のグラフにもありますが、グリーンボンド等の、いわゆるSDGs債と呼ばれる債券の発行は、世界でもそうですし、日本でも急速に増加をしております。また、TCFDへの賛同機関数で見ると、日本は世界一となっております。
25ページです。政府の中でも、金融庁において、関係省庁と連携をしながら、日本にグリーン国際金融センターを実現するための様々な取組、施策を進めているところです。
26ページです。機関投資家、中でもアセットオーナー、年金基金等がそれに当たりますが、これはいわゆるインベストメントチェーンの上流に位置しまして、このアセットオーナーの動きがこの市場全体の動向を左右する重要な存在です。その代表的なものとして、GPIF、これは世界最大の年金基金ですが、ESG投資について様々な先駆的な取組を行っておりまして、世界でもリーダー格と目されております。
27ページです。同様に、民間のアセットオーナーとしては生命保険会社等がこれに当たりますが、各社ともESG投資の推進に力を入れているところです。
28ページです。こうした動きを受けまして、私、前職、給与共済課長として所管をしておりました国家公務員共済組合連合会、KKRといいますが、これによるESG投資の更なる推進に取り組んだところです。経緯としましては、昨年2月に、GPIFやKKRに共通に適用される積立金基本指針が改正をされまして、ESG投資の推進について必要な取組を行うということが明記されました。これを受けて、昨年の夏、私どもからKKRに対してESG投資の更なる推進について検討を要請しまして、合同勉強会等も開催をしました。昨年12月、この財政制度審議会に国共済分科会というものがありますが、そちらでKKRから取組方針の発表を頂いたところです。
29ページです。その主な取組ですが、KKRとして、全ての運用委託先に対してESG考慮を明示的に要請、評価する。パッシブ運用に関しても、ESGインデックスの活用可能性について検討する。グリーンボンド等の購入についても前向きに対応する。また、TCFDの賛同に向けて準備をするということも明言していただいております。ちなみに、これらの項目は、全てGPIFでは既に行われていることです。ただ、GPIFに続いて、KKRでもこうした動きができたということは望ましいことであると思いますし、我々としても、更にこの取組を促していきたいと考えております。
以上です。
〔土居部会長代理〕御説明ありがとうございました。
ただいまの説明につきまして、御意見、御質問等がございましたらお願いいたします。いつものように、御意見のある方はネームプレートを立てていただければ幸いです。また、テレビ会議システムを通じて御参加いただいている皆様には、御意見がある場合はテレビ会議システムの「挙手する」ボタンをクリックしていただきますようお願いいたします。会場に出席されている委員を先に指名させていただきまして、その後、会議システムを通じて御参加の方に御発言を頂きます。限られた時間の中で、できるだけ多くの方に御発言を頂くということで、発言はできるだけ手短にお願い申し上げます。
それでは、向かって左から参りますが、熊谷委員からお願いいたします。
〔熊谷委員〕ありがとうございます。
総論と各論ということで申し上げたいと思います。まず総論的な部分で言えば、グリーン化は、やはり世界の潮流であって、その背後には資本主義の構造変化というものがあるということ。少し大げさに言えば、過去数百年間の資本主義は、お金、株主が重要なのか、それとも人、従業員が重要なのかということで、ずっとこの間で右に行ったり左に行ったりして動いてきたわけですが、例えばボルタンスキーという人は資本主義4.0と言っていますが、今の資本主義は相対的にはやはり人が重要な資本主義に入ってきた。第3期は、1970年代のレーガン、サッチャリズム、そして2000年代のグローバル資本主義で、株主の近視眼的な利益だけが過度に重視をされる非常にバランスの悪い資本主義であったわけですが、これが大きな潮流として、やはり人が重視されて、また、株主と従業員の利害が一段高いところで一致をする、いわゆるステークホルダー資本主義と言われる、よりサステーナブルでインクルーシブな資本主義へと変わってきた。そこの潮流を踏まえた上で、やはりグリーン政策を推進する必要があるということが、まず総論の部分です。
各論については、少し駆け足で簡単に思うところを申し上げます。まず1点目としては、昨年末に工程表が出ましたが、これを見ると経済産業省と環境省がそれぞれに工程表をつくっているわけで、ここはやはりデジタル庁のように脱炭素化に関する予算と権限を司令塔に集約していくことが重要です。
2点目としては、諸外国の事例を見ると、CO2の削減に成功している国は、同時に産業の新陳代謝、そして労働市場の流動性向上、こうした政策を同時に進めています。我が国もこうした政策を同時に進めることが必要であると思います。
3点目として、本気でグリーン化を進めるのであれば、やはりカーボンプライシング、炭素税や排出権取引の導入はやはり不可欠であって、そこでCO2排出削減のインセンティブをしっかりつくっていく必要があります。
4点目として、より一層、電力の自由化、発電と小売の分離等を推進しなければいけません。
5点目としては、2兆円の基金の話になりますが、やはり再エネ、蓄電池、EV、水素、アンモニア等に集中的に、しっかりとコストを見ながら投資を行うことが必要であると思います。
最後、6点目として、家計に対するグリーンインセンティブをしっかり与えて、例えばESG投資に対する税制優遇等を含めてインセンティブを与えていく必要があります。
全体として言えば、世界の潮流を踏まえた上で、菅政権の目玉政策としてグリーン化をしっかりと推進することが必要であると考えます。
私からは以上でございます。ありがとうございました。
〔土居部会長代理〕それでは、末澤委員、お願いいたします。
〔末澤委員〕どうもありがとうございました。
ここ数年、気候変動対策は世界の大きなテーマなっておりまして、米国でも、民主党リベラル派のグリーンニューディールに加え、バイデン政権のクリーンエナジープラン、EUでもグリーンディールインベストメントと、こうしたものが出ております。ただ、ちょうど昨日、バイデン大統領の議会演説が日本時間午前中にありまして、バイデン大統領がおっしゃっていたのは、気候変動対策は重要だ、なぜかというと、これは米国の雇用につながると、こうした言い方をしています。つまり、気候変動対策を持続可能なプランに、それ自身を持続可能なものにするには、国民の理解とともに、やはりビジネスとして成り立つ、成立するようなものにしなければいけません。要は補助金漬けになるだけでは実現できません。やはりその点についてもう少し具体的な道筋をつける必要があります。特に風力発電ですね。今後、恐らく、日本でも大きなテーマになると思いますが、日本の場合、日本海溝等、相当水深が深いということもあって、北海やバルト海等と異なり、なかなか固定式、着床式の風力発電のスペースは少ないです。今後、浮体式を検討していく必要がありますが、このコストは相当高いということで、やはり相当大きなイノベーションが必要になるかと思います。そうした意味では、掛け声だけではなくて、国民の理解、あとビジネスベースとして成り立つようなイノベーションを、やはり国としても推進していく必要があるだろうと考えています。
以上です。
〔土居部会長代理〕ありがとうございます。
それでは、田近委員、お願いいたします。
〔田近委員〕田近です。
熊谷委員が御指摘されたことと、一部、大切なところで重なります。私は、グリーン化、カーボンニュートラルに対する国の執行体制をしっかり示すべきであるということを私たちは言うべきであると思いますが、具体的にはこうしたことです。
7ページの予算ですが、まず温暖化、温室効果ガスに対して、足元、5,000億円ぐらい使っています。次に、エネルギー、石油石炭税を原資とした特会で7,000億円。そして、去年の3次補正で2兆円、イノベーション基金がつきました。熊谷委員がおっしゃっていたように、今度、これを経産省と環境省がやっているわけです。この全体像がどうなっているのか、結果として温暖化ガスが削減されるという、見取図まで行かないでしょうが、全体像がなくて議論しろと言っても無理なのではないでしょうか。例えば、カーボンプライシングにしても、誰が設計して、どうやるのか。だから、ぜひ予算執行のゴールを、どうつくるか知りませんが、一目で見て、ここまで達成できたというようなものを、最初、出来、不出来はともかく、財審でそうしたものを思い切ってつくってもよいのではないかと思います。
以上です。
〔土居部会長代理〕広瀬委員、お願いいたします。
〔広瀬委員〕ありがとうございます。
今回、46%という大変高い数値目標が提示されたわけで、これはどちらかというと積み上げというよりも、チャレンジ目標、努力目標というようなことであると思いますが、いずれにしても非常に高い目標で、当然のことながら官民一体でやらなくてはいけないし、特に財政がある程度これをサポートする必要があるかと思います。今回、2兆円基金が出たわけですが、先ほど御説明ありましたように、今回は相当分野を絞っておりますし、成果を相当注意深く見ていくということが必要であると思っています。
それから、これはもう言うまでもないですが、エネルギー政策は、よくS+3Eということで、安全を大前提として、安定性、経済性、環境性のバランスをどう取っていくかという非常に難しい課題ですが、正直言って、今、日本のエネルギーは、いろいろな理由があるにせよコストが高いと思います。理由はいろいろありますが、例えば石油石炭税も入っていますし、あるいはFITという大変大きなものが入っていたりします。やはりエネルギーは価格、料金が極めて重要なところですし、国内の産業が空洞化したり、中小企業にしわ寄せが寄ったりということを防ぐべく、この辺のS+3Eをどうやってバランスを取りながら、もちろん46%に向かっていく、あるいは2050年カーボンニュートラルへ向かっていくというような、まさに今、お話がありましたように総合的に政策を検討していくべきかと思います。
それから、最後に一言だけ。エネルギー政策も、よく言われるのは、やはりしたたかさとしなやかさ、先ほど国際的ないろいろな動きがありましたが、各国とも基本的にはもちろんエネルギー環境政策、環境政策とはいっても、それぞれいろいろな国益をかけてやっているわけですから、日本もぜひエネルギーの一番大事なしたたかさとしなやかさで取り組んでいくべきではないかと思います。
以上でございます。
〔土居部会長代理〕河村委員、お願いいたします。
〔河村委員〕御説明ありがとうございます。既にいろいろな委員の方がおっしゃっていることと重なりますので、要点だけ。
今回、非常に高い目標を、菅総理は掲げられたということで、やはりこれは時代の流れもあって達成しなければいけない話であると思っております。達成するに当たっては、それをいかに、どう効率的に達成するか。そして、経済成長との両立を図ることも必要ですので、やはり大前提として、コストの内部化をきちんと図るということ、汚染者負担を求めることによってきちんと実現していく、そしてカーボンプライシングをきっちりと基礎として入れていくということが非常に重要なのではないのかと思います。
財源についても、温対税等の今、課している水準が、炭素排出が社会的なコストをどれだけ広げているのかという点に見合っているかというと、日本の場合はまだ全然そこまでいっていないという話もあります。そうしたところも含めて、あとは排出権取引等も入れて、各排出主体、企業の方それぞれ、自分のところでどれだけ削減するにどれだけコストがかかるのかということを総体的に捉えて、社会全体として一番効率的な形で対応していけるようにするということが、やはり無駄がないような形で進めていく上で大事なのではないかと思います。
あとは、御説明いただいたように、諸外国では財源の確保もきちんと考えながらやっていますので、我が国としても、この財審のミッションと少し外れるかもしれませんが、やはり財源確保をどうしていくのかということを同時に考えていくことが必要であると思っております。
以上です。
〔土居部会長代理〕武田委員、お願いいたします。
〔武田委員〕ありがとうございます。
まず、グリーンという横断テーマを取り上げていただきまして、ありがとうございます。各省庁での重複、あるいは整合性を欠く動きにならないように、皆様もおっしゃいましたが、全体のグランドデザインは必要であると思います。その上で、意見を3点申し上げます。
1点目は、戦略分野でのワイズスペンディングです。46%削減は相当野心的な目標であると思いますので、供給、需要両方のイノベーションが必要であると思いますが、着実に成果を出すには、戦略的分野に集中して社会実装をしていくロードマップは必ず必要であると思います。
2点目は、民間の貯蓄を大きく動かすことです。限られた財源の中で、先ほど申し上げたようなイノベーションで成果を上げるには、本日の資料にもございましたが、ISバランスで貯蓄超過になっている民間セクターの資金を、いかに限られた予算・税で動かしていくかという視点が欠かせないと思います。
3点目は、では、どう動かすかという視点です。本日、御説明いただいたような規制緩和や高田参事官から御説明いただいたESG投資もそうであると思いますが、民間主体の行動を変化させる規制や金融の力、そしてカーボンプライシングの活用による制度設計で、民間主体の行動を脱炭素に向かうように促していく取組が重要ではないかと考えます。結果的には、それが財源の確保につながり、ひいてはカーボンニュートラルの実現とグリーン投資による成長戦略、そして財政健全化が初めて両立するのではないかと考えます。
以上です。ありがとうございます。
〔土居部会長代理〕田中委員、お願いいたします。
〔田中委員〕御説明ありがとうございます。
まず、温暖化対策と予算の面から、脱炭素に本腰を入れて高い目標を達成していくという中で、単独の企業や自治体の取組のみならず、やはり財源も意識しながら、生活者も参加したサプライチェーン全体の環境負荷や、CO2排出を減らさなければいけないという中で、2兆円ファンド基金への注目ということは良い機会になりますので、政策を生かした新規ビジネスの創出に力を入れて、インセンティブとペナルティーのバランスを取りながら、費用対効果を迅速に公開して見せていくということが問われると思います。
ESG投資については、民間企業もかなり関心高く取り組もうとしていますが、企業側と投資家とのギャップも見られると感じます。理念の追求や訴求に集中している企業も見られますが、これに限らず、やはり具体的な取組、目標設定及び成果が重要であるということを今日の資料からも理解しましたので、環境配慮のどの活動がマーケットから評価されるのかということを明らかにすることで、グリーン財源にも活力が生まれますし、また、民間のやる気も高まるかと思いますので、ここを強調したいと思います。
以上、よろしくお願いします。
〔土居部会長代理〕神子田委員、お願いいたします。
〔神子田委員〕田近委員が言われたこととも重なりますが、私は、8ページのエネルギー対策特別会計における事業の状況というところで、一目で分かりますが、経産省と環境省が色分けされているということです。実際に話を各省に聞くと、事業に重複はなく、そうしたことはきちんと両省で話し合ってやっており、お互いがどのようなプロジェクトをやっているかも把握しておりますと御回答されます。それで問題はないのかというと、私はそうは思いません。例えば経産省に水素ステーション整備事業費補助金というものがありますが、環境省は水素をもとからどうやって作るかのような研究開発をやっています。私は、水素なら水素で、作るところから使い、配るところまで一つにまとめたほうが、より効率的な研究開発ができるのではないかという気がしてなりません。ですから、予算面から、これは同じ水素なのだから一つでやり、色分けできないようにすることが一つのガバメント、ワンガバメントとして求められることではないかと思います。
以上です。
〔土居部会長代理〕木村委員、お願いいたします。
〔木村委員〕御説明ありがとうございました。
私も、カーボンニュートラルの実現は極めて重要であると思っております。資料の5ページで挙げられていましたように、特に民間企業の技術や資金を積極的に活用することは不可欠であるということは、おっしゃっているとおりであると思っています。資金でいえば、ESG資金、資料にありますように世界に3,000兆円あるということですから、とりわけアメリカ、欧州、あるいは中国等が温暖化対策にしっかりこれから積極的に取り組むと言っている中で、日本がいかにその資金を呼び込める魅力的な環境をつくれるかどうかが、今後、大事な鍵になると思います。
技術面では、日本企業はこれまでエコカー等で世界をリードしてきたわけですから、十分優れたものはあると思っていますし、では、あと政府として何をするかということです。その後押しということで、様々な手法はありますが、当然、予算も必要になると考えております。その際、やはりしっかりした財源が必要になるのではないでしょうか。財源を求めると、国民や企業の負担も一時的に増しますが、借金に頼らずに安定的な財源の裏打ちがあり、それで予算を確保して対策に投じれば、その分、投資先としての魅力も高まり、海外からの投資が増え、最終的に国民及び国全体にとってもメリットが大きいのではないかと考えますので、そうした道筋を描いていただければと思っております。
以上です。
〔土居部会長代理〕佐藤委員、お願いいたします。
〔佐藤委員〕ありがとうございます。では、できるだけ手短に3点ほど。
まず、カーボンプライシングについてですが、やはり今の地球環境対策税の枠にとらわれない形で、炭素税というものを抜本的に考えていく時期かと思います。それは、単にグリーン投資のための財源確保だけではなくて、今のコロナ対策にかかる赤字国債の償還財源の問題もありますので、復興という観点から見ても、やはり炭素税の導入を早急に考えるということです。その中で、国境調整の話が出ていますが、今、世界のトレンドは、デジタル課税を含めて市場国課税が強化されていますので、ある意味そうした新しいフレームの中で考えてよいかと思います。
それから、基金についてですが、金額が大きいということで、さもなければ新たなる公共事業にならないかと少し懸念するところではありますが、単にお金を呼び込む、15兆円のお金を使わせることが目的なのではなくて、炭素を減らすことが目的なので、そこは本来、KPIとしてしっかりと含められるべきであるということだと思います。また、私、行政事業レビューで浮体型の風力発電をやったことがありますが、ややもすれば技術論に偏ります。素晴らしいものを造ることは良いのですが、それを社会実装につなげることができるかどうかが重要であると思います。恐らく経産省と環境省の連携がまずいとしたら、この社会実装に関わってくるかと思いました。
最後に、ESG投資ですが、これは、恐らく、リスクコントロールの話をしていると思います。いかに炭素を減らして、長い目で見れば災害や気候変動を抑えていくかであると思いますが、もう1つあってしかるべきはリスクシェアの観点です。この後の話に関わりますが、いずれにせよ気候変動に伴う災害がこれから増えていくときに、災害復旧のコストは全部、国が賄ってきているわけなので、ある意味、異常気象の最終的な財政リスクは国が負っているということになるわけです。これをもう少し市場とリスク分担できないか。つまり、保険の活用はあってしかるべきで、具体的には保険リンク型証券やキャットボンドのようなものもありますので、その辺の利活用は考えられてよいかと、マーケットのリスクシェアというものも新たなESG投資としてあってよいのではないかと思いました。
以上です。
〔土居部会長代理〕中空委員、お願いいたします。
〔中空委員〕ありがとうございます。もう多くの委員の方が御指摘になったので、私は金融市場からのコメントだけしたいと思います。
私はもう5年ぐらいESGのストラテジストをやっておりますが、そこで出会う事業会社の人たちや欧米の投資家たちを見ますと、この5年ぐらいだけでも様変わりしていると思います。どういう様変わりの仕方かというと、ESGという経営をしなければいけないとか、サステナブル経営がなければいけないとかというものではなく、それがあると儲かるのだろうか等という質問を軽々しくすると怒られるぐらいの状態になっていて、あって当たり前という考え方になっています。なので、日本企業も、ここにおられるような立派な経営者の方々はそんな方はいらっしゃいませんが、ESGやSDGsを
やらなければいけないのか等と言っている経営者がいたら、もうそれは
大問題ということになります。そのような状況ですから、この分野に資金を回すのは適した分野と言えますが、どういうやり方で、どの分野に、ということはよく考える必要があると思います。
その意味で、リーダーシップが非常に必要になっていると思っています。私は、金融市場から見て、やはり日本は責任が取られなさ過ぎると思います。例えば規制はかけないし、自由に成長してくださいと言っても、なかなかサステナブルファイナンス市場は自由には成長できません。他の国のように、例えば中央銀行が金融政策に一環として使うとか、発行する国債の中にグリーンボンドを出してみるとか、そうした関与の仕方は幾らでもあると思うので、リーダーシップをきちんと取っていただきたいと思います。
その流れの中で、もう1つ財審として気にしなければいけないのは、グリーンだからといって債務を増やしてよいのかという問題です。グリーンは、良い話ではありますが、それを理由に債務を増やしてよい話ではない。他の国もそうですが、確実に資金の原資をちゃんと用意してグリーン投資をしています。次世代の競争力にも資するものではありますが美名の元、債務を増やしてしまうことはあってはならないと考えます。そこは肝に銘じて、いたずらに債務を増やすのではなく、財源をしっかりと確保していくということを考えたいと思います。
以上です。
〔土居部会長代理〕安永委員、お願いいたします。
〔安永委員〕企業側から申し上げますと、機関投資家からの要請を待つまでもなく、ESGを経営の眼目にするのは既に当たり前のことになっておりますし、何よりもミレニアル世代を含めた社員の中でも、そうした活動をしていないと企業として自分たちの自己実現をできないということは、もう当たり前になっています。一方で、認識しなければいけないことは、まず、2050年カーボンニュートラルは、現在の利用可能な技術では達成が不可能であるということです。したがって、皆様御指摘のとおり、技術的なブレイクスルーを実現するために、官民挙げて人とお金をこの分野に入れて、新しいイノベーションを起こさなければ達成できません。これは世界共通の認識です。
一方で、2030年の46%という数字、これは日本の政権の野心的なターゲットではありますが、日本を取り巻く自然環境、あるいは電力の問題、全てにおいて日本はハンディキャップを背負っていると考えています。言い換えれば、削減費用が最も高い、あるいは既に利用すべき平地はかなりの部分が利用されていて、平地当たりのリニューアブルの発電量は諸外国の中でも大きいです。平地が少なく、あるいは先ほどどなたか触れられましたが、海が深いところに着床型の風力もままならないということで言えば、2030年は先ほどのイノベーションの具現化が恐らくまだ完全には完成していないというタイミングで、積み上げ以上のものを政治的に打ち出した以上、相当な覚悟を持ってこれに取り組む必要があり、資料にもありましたように、あらゆる政策を総動員してやるということが求められているわけです。あえて触れさせていただきますと、リニューアブルを更に増やすに当たっても、その非安定性から考えて、安定電源としての原子力の稼働、そのためにはやはりコミュニティの同意、特にバックエンドの対策、核燃料の最終処分をどうするのかというところは避けては通れない課題であると思っています。
それから、ここにも書いてありますとおり、科学的にどこに、どうやって戦略的にお金を振り向けていくか、あるいは、削減効果や技術的開発手法がどうなっているのかをしっかりと定期的にモニターするメカニズムがないと無駄金が出てしまいます。これは、やはり民間側でも同じようにきちんと検証を続けていく必要があると思っています。そうした意味では、2兆円を単なる呼び水にするのではなく、民間の投資を促すような形をつくっていくことはまさに大事ではありますが、今のままですと、日本国内で投資してもリスクリターンが合わないということが2030年まで起こってきます。したがって、CO2を削減するのはどこでも同じですから、海外連携も含めたクレジットの活用をしっかりやっていかないと、下手にカーボンタックスを課していけば、産業の逃避が起こり得ると危機認識をしております。
それから、海外において削減貢献の高いブルーのアンモニアや水素、こうしたものを開発して日本に持ってくるというメカニズムも、やはりしっかり考えていくことが必要ではないかと考えています。
以上です。
〔土居部会長代理〕大槻委員、お願いいたします。
〔大槻委員〕ありがとうございます。
今までの皆様の話どおり、グリーンは非常に大きな流れであると思っております。そのためには、やはり国民全体で臨む必要があるという観点から、特に個人の視点から少し申し上げたいと思います。
ESG投資ですが、今、皆様の中では当たり前になっているようですが、1月に私どもで調査をしたところ、何と60%の人が知らないと答えておりました。ということを考えると、まず、こうした予算の中でやっていかなければいけないのは周知であり、知っているというだけでもまだ足りません。くわえて、やらされている感ではなく、国民全員がやっていく、未来は分かるものなのであるということを考えて、積極的に取り組んでいくということのパーセプションをつくっていくことが、極めて大事なのではないかと思っております。
それから、同じく個人の話として雇用です。これだけ大きな流れの転換ということは、雇用の形態、働き方が変わっていくことも不可避であると思うのですが、そこで取り残されていくような伝統的な業界、業態が出てくるということも考えざるを得ません。そこに向けての職業訓練、リカレント、そうしたことの重要性も認識していって、予算を振り分けていく必要があるのではないかと思っております。
最後に、先ほど来のワイズスペンディングですが、この分野だから例外としてということがないように、そしてKPI等もしっかり踏まえた上で、ワイズスペンディングを財審として促していくことが必要なのではないかと思っております。
以上です。
〔土居部会長代理〕平野委員、お願いいたします。
〔平野委員〕ありがとうございます。
全体像を示すべきだ、マスタープランをつくるべきだ、ワイズスペンディング、全て賛成ですが、私からは2兆円基金と金融について申し上げたいと思います。
先ほど安永委員もおっしゃったとおりで、一部の方が信じているように、日本の省エネ技術であるとか環境技術は優れているので、頑張ればできるということは全く的外れなわけです。2050年のカーボンニュートラリティーは、日本だけではなくて世界中、今の技術の延長線上では実現できないということですし、それもあるので、欧米の各国は、言わば国家的・戦略的な課題と捉えて、競い合うような形で、今、政策対応を進めているということです。
そうした意味では、やはりイノベーションが鍵なので、今回、2兆円を10年間にわたって使い、支援をするという枠組みができたのは大変結構なことであると思います。そもそも2兆円で十分かということに対しては、諸外国との比較の中でもやや疑問を感じるところではありますが、その議論は今日は少し置いておくことにしまして、この2兆円をどう有効に機能させるかというポイントを2つ申し上げたいと思います。
1つ目は、先ほどから話題が出ていますが、官民の役割分担と連携ということです。今回の気候変動問題の対応では、政府がリスクマネーを供給する、すなわちカタリストという役割を果たす一方で、それと平仄を合わせ、民間企業が創意工夫を凝らし、かつ将来に向けた投資に自分たちのお金を使っていくということで、官民がそれぞれの役割を連携しながら果たしていくべきであるということです。
民間の金融も同じです。2兆円の財政資金だけでは、いずれにしても全く不十分なわけなので、ファイナンスの面から企業の取組をサポートすることが重要です。あるいは、先ほどからESGの話が出ていますが、融資対象の選別、例えば石炭火力をどうするかであるとか、カーボンニュートラリティー実現に向けての各企業のロードマップの策定です。もう1つ重要なのは情報開示を促す金融の仕組みをつくって、企業のグリーン化を促すということが、私ども金融にとっても重要な社会的使命と認識しています。
実際、先ほど高田参事官からもお話があったとおりで、機関投資家、金融機関の関心は急速に高まっています。最近でも、グリーンボンドであるとか、サステーナビリティー・リンク・ローンの調達金利、以前は一般のコーポレートボンドとほとんど差はなかったのですが、さすがに、僅かではありますが、2ベーシスポイントから5ベーシスポイントぐらい有利になりつつあります。つまり、それだけ供給量が増えているということで、競争原理が働いてコストが下がってくるという構図が、今、見え始めています。
また、私が勤めている銀行も、サステーナブルファイナンスに関する2030年までの目標を20兆円から35兆円に、今回相当頑張って引き上げました。ただ、その一方で、民間資金の性格上、投融資の対象になるのはやはり実用化にめどが立った技術の社会実装がポイントです。社会実装の取組であるとか、あるいはトランジションファイナンス、ここは今、議論していただいていますが、これが中心になるので、アーリーステージの革新的な技術の研究開発を民間資金、民間の金融資金だけで支えるのは難しいです。実際、アメリカでは、そうした分野の研究開発資金はDOE、エネルギー省が9割以上拠出していると言われています。欧州でも、Horizon Europeという枠組みの下で財政措置が講じられています。ここに、2兆円の出番があるという役割分担をすべきであるということです。
2点目、これも先ほどから話題に出ています基金の運用についてです。逆に言えば、今回の取組がイノベーションを目指す長期にわたるチャレンジである以上は、今後、個々の案件の中には計画どおりに行かないケースが出てきます。これは覚悟しないといけないと思います。もちろん、国民の税金を原資にした基金ですから、「見える化」を図り、アカウンタビリティーを確保することが極めて重要です。先ほど渡邉主計官からも御指摘があり、広瀬委員が触れられましたが、今回のスキームにも途中でいろいろ議論があったので、様々な工夫が凝らされています。ただ、今日はおられませんが、榊原会長の東レにおける炭素繊維の例があまりにも有名であるように、画期的な技術開発には時間がかかります。したがって、アカウンタビリティーを一方で確保しながら、成功案件の芽を摘んでしまうことがないような配慮が必要であるということです。
その点で申し上げると、リスクマネーという意味では、ベンチャーキャピタルの投資の意思決定に似通ったところあるわけですが、単なる経営指標やKPIだけではなくて、技術や事業の目利きによるハンズオン的な支援を通じて、柔軟かつ機動的な投資判断が行われているベンチャーキャピタルが成功しているということなので、今回の基金は少し性格は違うかもしれませんが、やはり各案件の実態をよく見極めて判断していくことが重要であると思います。
最後に、少し趣旨を外れるかもしれませんが、今回のスキームは大企業を中心に設計されているように見えます。ただ、特に欧州等のケースを見ていると、イノベーションはこの環境分野でも、スタートアップ企業から結構出てきているケースがありますので、限られた財政資金をカタリストということで有効に活用するという意味では、そうしたベンチャー、スタートアップにこの2兆円資金を活用していくことを、財審として考えてもよいのではないかと思っております。
以上です。
〔土居部会長代理〕ありがとうございました。対面での御参加の方々の御発言を頂きました。
ウェブでの御参加の方からのご発言を、今、7名、承っております。遠藤委員、冨田委員、堀委員、上村委員、福田委員、宮島委員、神津委員ということですが、まず先に早退される福田委員から御発言をお願いいたします。
〔福田委員〕ありがとうございました。既に多くの方が、もう非常に重要なことを御指摘になりましたので、手短に発言させていただきます。
大きな流れとしては、グリーンがこれから非常に大事であるということはもう多くの方がおっしゃっているとおりであると思います。その流れはもう不可避であるということであるとは思います。ただ、現状では何がグリーンかということは十分なコンセンサスがないと思います。1つは、原子力をどう考えるのかに限らず、何をもってグリーンで、何をもってグリーンではないのかは非常に重要なものですが、実はまだきちんと定まったスタイライズドファクトは、必ずしも多くの分野においてないということなのだろうと思います。
そうした意味では、日本が世界の中でこうしたルールづくりにも積極的に参加していくことが重要です。国際連携ということが掲げられていますが、やはりルールづくりというものが非常に大事なのだろうと思います。例えば、自動車等の分野では、我々はハイブリッドカーは非常に環境に優しいと思っていたわけですが、現状では必ずしもそうしたようにはみなされていないというような問題もございます。また、ESG投資は非常に大事であるということですが、何をESG投資と呼ぶかということは非常に曖昧です。例えば、東京大学もESG投資のPRIには一応、調印はしていますが、では何に投資しているかというと、大半は一般的な投資で、もちろん非常に変なところには投資はしませんが、その内容はまだまだこれから詰めていかなければいけない点は十分にあります。そうした中で、日本は何に強みがあって、どういった形でのグリーン、何をグリーンとするかというルールづくりの策定に参加し、日本の強みを生かせるような形で資金を投入していくということが重要です。そして、そうした筋道がはっきりすれば、民間企業もそれに向けて設備投資を積極的に行うことができると思いますので、そうしたような形で財政も発動していくことが大事だろうと思います。
私からは以上でございます。
〔土居部会長代理〕遠藤委員、お願いいたします。
〔遠藤委員〕先日の気候変動サミットで46%の削減目標を表明したわけですが、2030年ということは9年後であって、極めて難易度が高い理想値であると思います。ここは財審ですので、その中身は議論しませんが、世界最大の排出国である中国が気候変動に関して相変わらず表明をせず、3.2%の日本が世界に善を示して、京都議定書と同じ轍を踏むのではないかと、この分野の研究者としては非常に案じております。
電源開発には10年以上かかります。エネルギーミックスやカーボンプライシングの議論はまだ途中です。どのような手段で削減を行うのか道筋も見えていなくて、今日の資料7ページのような削減策にかかる費用の算出もできぬまま、歳出だけが膨らむことも看過できないと考えております。令和2年度の行政レビューシートによると、令和元年度の削減コストは1トン当たり1万6,451円です。2013年の排出量の46%を減らすためのコストは、それだけでもざっと見積もって7兆7,000億円を超えます。高齢化社会が進む中、社会保障費が膨らむ一方で、果たしてこのコストを国民に負担させるのでしょうか。既にエネルギーコストが高い日本で、産業界、特に製造業を死滅させることになりはしないでしょうか。広瀬委員も仰せでしたが、したたかで国益に資するような議論が必要であると思っております。
財源なきカーボンニュートラルは、あってはならないことであると思っています。炭素税、温対税でもよいですが、増税は有効であると思うのですが、もちろん削減が進めば税収が縮減します。もっと言えば、政府内にはグリーンボンドの発行を狙う動きもありますが、グリーンと名がつけども、赤字国債であることには変わりはありません。既にグリーンイノベーション基金、2兆円の基金が用意されているわけです。民間セクターは、自助努力でESGを推進することや、そこにビジネスの勝機があることについて異論は挟むつもりはありませんし、アンカーテナンシーとしての国の役割もあるとは思います。ただ、菅政権の基幹政策とはいえ、財務省も少し大盤振る舞いが過ぎるのではないかという部分もありまして、財布のひもを緩めぬよう努力していただきたいと考えております。
以上です。
〔土居部会長代理〕冨田委員、お願いいたします。
〔冨田委員〕御説明ありがとうございました。
2兆円のグリーンイノベーション基金、これは御説明あったように、財源を全て赤字国債で調達して設けられました。これだけでも異常な措置であるわけですが、仄聞いたしますところ、更にもう一度と、お代わりを求める動きがあるといいます。企業としての矜持はないのか、アニマルスピリットはどこへ行ったのかと厳しく問いたいわけです。
19世紀の半ば、経済学者のウィリアム・スタンレー・ジェヴォンズは、石炭を浪費している現代世代が将来世代になし得る償いは国債の償還であると論じました。その翌年に、グラッドストン大蔵大臣が債務残高を抑制する政策に転じました。これは、ヴィクトリア王朝期の環境問題と財政問題に関わる逸話ですが、将来の地球、将来の人類のためと言いつつ、財政の持続可能性を犠牲にしております今日の我が国の姿は、極めて悲惨な話であって、悪い冗談と思っていましたら、更にお代わりを求めるという話は噴飯ものです。環境の持続可能性を主張するのであれば、民間投資の呼び水としての政府資金が必要であるといたしましても、ペイアズユーゴー、すなわち財源確保義務という原則を守るべきです。
以上です。
〔土居部会長代理〕堀委員、お願いいたします。
〔堀委員〕ありがとうございます。
2050年のカーボンニュートラル、2030年の温暖化対策の目標達成は、既に他の委員からもお話がありましたが、技術的にかなり厳しいと思います。遠藤委員もおっしゃいましたが、中国の動きもかなり懸念されますし、1か国だけではできませんので、世界的なレベルの共有地の悲劇が起こり得る分野でもあると思います。過去の京都議定書の失敗を繰り返さないためにも国際連携の協力も必要な分野ですので、成果目標を1か国だけで見るのはとても難しい分野であると思います。しかし、アメリカのバイデン政権の総額2兆ドルの投資というのもありましたし、世界的な風向きも変わる可能性があると信じたいことと、コロナ後の新しい産業として投資する分野としては、新しい雇用、インフラの再建、Z世代が関心を持たれている気候変動という問題に対応するということでも、積極的な、選択と集中において集中的に投資する分野ということについては、総論としては賛成いたします。
ただ、日本は、現実に脱炭素にはもう程遠いといいますか、一次エネルギーに占める石炭割合も増えていますし、先ほどもお話ありましたが、新規販売乗用車に占める電気自動車、プラグインハイブリッド車の比率も、恐らく先進諸国で相当低い状態かと思います。目標を達成するには、残りの数年でできるのかと少し思いますので、この投資、2兆円の金額が大きいかどうかはその成果によると思いますので、投資をする以上は導入支援に見合うようなKPIを設定した上で、進捗状況を見ていく必要があるのではないかと思います。また、先ほど神子田委員でしたか、環境省と経済産業省の縦割りについて御指摘されましたが、これだけの大きな規模ですので、そこも省庁ごとにKPIを見るだけではなく、省庁間の事業によって成果を見るような指標をつくる等、何らかの工夫が必要なのではないかと思います。
最後に、佐藤委員がおっしゃったと思いますが、やはり財源確保のところで炭素税のような仕組みは検討する必要があるのではないかと思いました。
以上です。
〔土居部会長代理〕上村委員、お願いいたします。
〔上村委員〕関西学院大学、上村です。
行政事業レビューで温暖化対策事業を何度か経験していますので、その経験から申し上げます。例えば、9ページの導入支援についてですが、CO2削減コストによる事業の優先順位づけは非常に重要で、効果が高く、規模の大きな事業から優先的に実施していくという原則が大切ですが、この優先順位づけの意識がなかなか定着していないように思います。提示されているCO2削減コストをうまく使えていないと感じます。さらに、事業実施前に予期されているCO2削減コストと、実施段階の削減コストの乖離がどうなのか、モニタリングと「見える化」の取組が不十分なように思います。事業実施前は、コストは低いが、実施すれば相当かかってしまうという事業があるように感じます。
その一方で、技術革新があると削減コストは大きく変動しますので、個々の事業のコストのモニタリングも重要になります。中には、実現まで時間がかかる事業もありますので、中間評価が組み込まれているかどうか、そして実証実験もありますが、横展開の可能性がどこまで考えられているかどうか、個々の事業で確認しておくべきであると思います。
8ページに、エネルギー対策特別会計の事業が書かれていますが、本省の事業と特会の事業を比べたときに、私の感覚的には、どうしても特会の事業は設計が甘くなっているように感じます。特定財源があるから使い切ろうということにならないように、チェックをしていくことが必要かと思います。
以上です。
〔土居部会長代理〕宮島委員、お願いいたします。
〔宮島委員〕ありがとうございます。
皆様おっしゃるように、カーボンニュートラルはとても高い目標なので、いろいろな形で、代わりに補助をください、税をまけてくださいというような要求はもう既に出てきていると思いますが、その中で、皆様がこれまでおっしゃったように、極力、民間資金を引き出すこと、省庁の縦割りを防ぐこと、あるいは財源確保をちゃんとやること、「見える化」すること、それは本当に必要であると思います。
特に、内容によってちゃんと対応を分けたほうがよいと思っているのは、この分野の場合、トランジションの技術をどうするかというところです。ゴールに向かう過程で、本当にゴールに着いたときには必要なくなっている可能性は高いが、今、状況を改善するのには必要な技術等がたくさんあります。そこに対してはやはり対処をちゃんと考えないと、そこに出した補助金が、逆にトランジションにお金を出したことで最終ゴールへの時間が延びてしまうとか、ゴールへの移行が、プレッシャーが弱くなるとか、そのようになることを恐れています。
そうでなくても、日本のいろいろな政策の中で、始めるときは良いですが、出口がなかなかないというか、もうあまり必要ではないかもしれなくても、そのままだらだら続く補助金や税制があると思っておりますので、特に移行過程のことに関しては、できるだけ民間の金融等を中心にして、移行期間が長く、必要以上に続いてしまうことがないように、その位置づけを間違わないようにすること、それから効果をしっかり見ながら進めるということが必要ではないかと思います。
以上です。
〔土居部会長代理〕最後になって申し訳ございませんでした。神津委員、お願いいたします。
〔神津委員〕ありがとうございます。
2050年のカーボンニュートラルに向けて、資料の5ページにあるとおり、様々な施策の総動員によって進めるべきであると認識します。したがって、到達目標に向けたロードマップを示すことで、予見可能性を高めるということは不可欠であると思います。
そのもとで失業なき労働移動が極めて重要であるということを申し上げておきたいと思います。雇用の公正な移行ということで、ジャストトランジションという世界共通の言い方があるわけですが、この失業なき労働移動はグリーンエコノミーの成否を握る鍵であると言って過言ではないと思います。2030年はもうすぐ先ですし、2050年も、このカーボンニュートラルを進めるということでは雇用や地域経済に影響があります。これは、プラスの影響もあるし、マイナスの影響もあります。それらの課題、対応に係る分析を早期に着手すべきであると思います。
資料の12ページに、諸外国の気候変動対策をめぐる動きが一覧として整理されていますが、特にEU、そして米国においては、産業構造の転換に備えた失業なき労働移動、雇用のセーフティーネットへの移行支援が、この資料には必ずしも詳しく記載されていませんが、それぞれに重点を置いてこの計画を持たれているということでありまして、我が国はその辺が率直に申し上げて遅れていると思います。早急に対処すべきであると思います。
あと1つ、ESG投資についても一言ですが、ESGの指数をどう設定できるのかはまだ発展途上であると思います。特にSのところについては、まだまだ深掘りの余地があり課題であると思っています。23ページにあります政府の推進策にも、着実な実施に期待をしていきたいと思います。
以上です。
〔土居部会長代理〕ありがとうございました。
それでは、続きまして社会資本整備の審議に移りたいと思います。藤﨑主計官より御説明をお願いいたします。
〔藤﨑主計官〕国土交通、公共事業総括担当の主計官の藤﨑でございます。どうぞよろしくお願いたします。
それでは、1ページを御覧ください。今日の御説明する項目として、こちらに書いてございますが、昨年12月に国土強靱化の5か年加速化対策が決定されておりますので、その関係で予算等がどうなっているかを最初に御説明させていただきます。その後、今後の課題として、ソフト・ハードが一体となった防災・減災対策の取組の進捗状況の御報告と今後の課題、それから建設公債と、それにより整備される公共事業評価の徹底といったものをお話しさせていただければと思います。その他は、建設業の生産性の向上、それから立地適正化計画のお話でございます。
2ページを御覧ください。我が国の公共事業予算の状況ということで、5か年加速化対策、昨年12月に決定いたしておりますが、令和3年度から令和7年度までの5年間の計画でございます。初年度分につきましては、昨年度の3次補正予算で対応しており、公共事業関係費については1.65兆円、事業規模に直しますと2.4兆円ということになってございます。国土強靱化の関連予算につきましては、令和3年度の予算におきましても6.1兆円の中で3.8兆円の予算措置をいたしております。
ちなみに、こうした公共投資の水準でございますが、国・地方を合わせることになりますが、右側の棒グラフでございます。フローの公共投資は、OECD諸国の中で中程度、主要先進国は濃い青で表現しておりますが、そこに比べると高い水準を維持しているところでございます。過去の投資額の累積を示しますストックにつきましては、我が国はOECD諸国の中で1位になっているということでございます。
3ページを御覧ください。国土強靱化関係予算の推移ということでございます。一番右側の上、当初予算とございますが、非公共予算を含めて4.4兆円、括弧の中は3.8兆円と書いてございますが、これが公共事業関係費でございます。近年、着実に増加してきているところでございます。また、平成30年度以降につきましては、3か年の緊急対策、または5か年の加速化対策ということで、別途、措置されているものもあるということでございます。
4ページを御覧いただければと思います。防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策ということで、令和7年度までの5年間で、事業規模はおおむね15兆円程度を目途とする対策を決定しております。来年度以降につきましては、災害の発生状況等も踏まえ、機動的、弾力的に対応する方針となってございます。
6ページ以降が、ソフト・ハードが一体となりました防災・減災対策ということでございます。
7ページを御覧ください。流域治水の推進ということでございます。川の上流部分、治水ダム、それから利水ダムの治水活用につきましては、昨年秋のこの審議会におきまして連携が進んだという御報告をさせていただきましたが、その後、国土交通省に御努力いただきまして、令和2年度中に全ての一級河川におきまして流域治水協議会が設置されました。関係省庁が一元的に対応していく、そうした体制が整備されたということでございます。予算関係ですと、国土交通省の中にございます防災・安全交付金、地方向けの交付金でございます8,500億円のうち、3,300億円を流域治水に優先配分したところでございます。それから、農林水産省、あるいは文部科学省の事業とも連携して対策を実施すると、こうしたことが始まってございます。
8ページを御覧ください。浸水災害レッドゾーンの指定促進ということで、これも昨年の秋でございますが、真ん中左側、災害リスクエリアの分類という表がございます。レッドゾーンということで、開発規制を伴う土地規制をかけることができる制度がございますが、これは土砂災害についてでございましたが、水害についてはございませんでした。今国会に国土交通省が法律を提出いたしまして、水曜日に成立いたしております。したがいまして、今後は浸水被害防止区域ということで、水害に特化した形でも区域指定が行えるような形になってきますので、早期の区域指定を促すために財政支援はこうした区域指定をした自治体を優先すべきというような、めり張りづけを行っていく必要があるだろうと思っているところでございます。
9ページ、10ページは、令和3年度予算で行ったことの御紹介でございます。9ページにつきましては、都市構造再編集中支援事業というものがございます。これは、都市のコンパクト化に取り組む市町村等に対する国の支援ということでございますが、左側の下を御覧いただきますと、都市のコンパクト化を行うに当たりまして、病院、デイサービスセンター、子育て支援、こうしたものを移転するといったときに、通常の場合でございますと、同施設1都市1施設までという支援要件がございましたが、災害ハザードエリアから移転する場合には、こうした数量の支援要件を緩和いたしまして、数量制限を撤廃したところでございます。
10ページでございます。先ほど少しレッドゾーンというようなことを申し上げました。建築規制がかかる災害リスクが高い区域、これまでそこで住宅を新築しようと思いますと、住宅金融支援機構の政策金融の支援、あるいは、その他補助制度というものが適用対象となっております。これは、何をするかという観点から信用していたので適用対象となってございましたが、令和3年度からはどこでするかということも入れるということで、こうした災害リスクが高い区域につきましては政策支援の対象から除外をさせていただいたところでございます。
11ページ、12ページでございます。先に、12ページを御覧いただければと思います。洪水浸水想定区域内人口の変化ということで、これは秋の本審議会におきまして、若干、数字は変わっておりますが、お示しをさせていただいた資料の再掲でございます。1995年(平成7年)と2015年(平成27年)のそれぞれの地点での人口を比較したものでございまして、青の棒グラフが都道府県の全人口の増減率、赤が洪水浸水想定区域内の人口の増減率ということになってございます。洪水浸水想定区域は、2012年(平成24年)の時点で切っておりますので、区域の拡大の影響は排除されているということでございます。見ていただきますと、21の道府県で人口が減少し、洪水浸水想定区域内の人口が増加しているというような状況にございます。
戻っていただきまして、11ページでございます。今、都道府県をお示しいたしましたが、現在、国土交通省にお願いいたしまして、1,700の市町村の自治体について、それぞれ分析をしていただいているところでございます。まだ全て出てきているわけではございませんが、こうやって見ますと、やはり増加率が著しく高い、あるいは人口が減少しているにもかかわらず、洪水浸水想定区域内は人が増えている市町村も結構ございますので、こうしたところについてはそれぞれの市町村の方々にも気づいていただく必要があるだろうと考えております。災害リスクを考慮したまちづくりを進めていっていただきたいと思いますが、そのためにも、例えば現在、国土地理院が行っているハザードマップポータルサイトといったところで、ハザードマップの状況だけではなくて人口動態の変化を反映させる等、何らかの形で「見える化」、可視化をしていって、関係者の気づきというものにつなげていきたいと考えております。
13ページを御覧ください。津波災害特別警戒区域等の指定促進ということでございます。先ほど、土砂災害については特別警戒区域等があるということを申し上げました。津波もございます。ただ、取組状況が非常に遅れておりますので、やはりその第一歩として、自治体職員に対する制度趣旨の周知徹底等を通じて、早急に津波災害についても対応していただく必要があると考えております。
14ページ、15ページは、今度は災害が起きた後の復興、復旧の話でございます。やはり今後、人口減少社会を迎えることを考えますと、原状復旧では過大な投資となる可能性もあるということで、事前に都市の再建をどのように行っていくかを考えておいていただくことが有効だろうと考えております。ただ、それを行っていただいております市町村は全体でまだ5%という状況でございますので、この都市再建プランの策定に向けて、要は市町村に取組を進めていただく必要があると考えてございます。
15ページでございます。そうした中で、インフラの原形復旧を前提としないというような復旧もあるだろうと思っておりまして、右側の例を御覧いただきますと、これは港でございます。もともと水深7.5メートルのところを、船舶の大型化もないということで、6メートルで復旧しているというような例もございます。こうした個別の取組がございますが、全体でもこうした取組ができないかということで、何らかの仕組みを検討すべきではないかと考えております。
16ページ、17ページでございますが、衛星関係のお話をさせていただきたいと思います。
現在、気象衛星ひまわり8号機、9号機が飛んでおりますが、8年後、後継機の運用が開始されます。そのためには、2年後に後継機の製造に着手ということでございます。現在は気象衛星でございますが、その前は多目的でございましたので、こうしたほかの用途と一緒に使えないかということも、そろそろ本格的に御検討いただければ、ということが16ページでございます。
その際にということで、17ページでございますが、衛星を活用した災害対応の迅速化、高度化ということでございます。左下、御覧いただきますと、現状では、夜間、悪天候時はヘリコプター、ドローン等が飛ばせないということで、なかなか災害状況の把握が困難でございますが、衛星を活用しますと、夜間、悪天候時でも観測可能な場合があると聞いておりますので、まだ技術的課題等もあるようでございますが、こうしたことも含めて検討していただきたいと考えております。
次は、建設公債の増加抑制と事業評価の徹底ということで、19ページを御覧いただければと思います。釈迦に説法で恐縮でございます。建設公債で整備される社会資本は、民間部門ではできないことをするものでございますが、それ自体は利用料収入等の収益を生じない資産が大宗であるということになってございます。したがって、税収等で償還を行うことが基本でございます。その考え方といたしまして、建設公債で整備される見合いの資産がございますが、その平均的な効用発揮期間はおおむね60年であるとの前提に立ちまして、その効用を60年間受益しているとみられる国民が負担するという考え方の下で償還していることになっていると認識しております。公債残高は、令和3年度は285兆円ということになってございます。
20ページでございます。現在の特例公債の発行が続く財政状況におきましては、公債の元利償還を税収等で賄うことができていないということで、建設公債の元利償還に当たっても、税収等では足りず、特例公債が追加発行されていると言うこともできるだろうと思っております。
ここで、一定の仮定を置いて試算すると、試算の方法自体は下に書いてございますが、単純に申し上げますと、左側の棒グラフ、2本あって、緑色の消費税等につきましては社会保障財源ということで特定財源でございます。それから、建設公債につきましても、公債発行対象経費に当たっているということになりますので、それを除きます深い青色の政策的経費の部分、それから灰色の国債費、これを賄うために黄色とオレンジの税収税外収入等と特例公債が当たっていると。それが一定の比率で当たっていると考えますと、令和元年度は例えば63%と37%になると。そういたしますと、建設公債の元利償還財源の37%が特例債であっただろうと推定するものでございます。
こうしたものを建設公債の発行年から全て積み上げてまいりますと、令和元年度の決算の段階でございますが、特例公債残高608兆円のうち57兆円が建設公債の元利償還に由来したものと推計できるところでございます。建設公債の発行が特例公債の残高の増加につながっていると捉え得るということ、それからインフラの維持管理費の増加や、受益者である後世代の人口が減少していくということを踏まえますと、今後、真に必要なインフラを見極めて整備を行っていく必要があるだろうと考えてございます。
21ページでございます。先ほど少し効用発揮というような話をしましたが、それを説明するためにということで、1つとして費用便益分析というものもあるだろうと思います。公共事業予算6兆円のうち、B/Cを活用して事業決定しているものは半分弱ということになってございます。御覧いただきますと、B/C未算出事業、維持・管理費等、災害関係経費、その他、その他の中でも灰色のところで社会資本総合整備1.2兆円ございますが、これは国から地方への交付金となってございまして、こうしたものにはB/Cが算出されていないということでございます。
維持管理事業につきましては右側でございます。近年、増加する傾向にあるということもございますので、真に必要なインフラを峻別するためにも、費用対効果を把握した上で事業実施を判断する仕組みというものを、何らかの形で検討していく必要があるのではないかということでございます。
では、B/Cで算定していればよいのかという話でございます。22ページでございます。費用便益分析ということで、見てみますと、近年3年間で再評価した事業につきまして新規事業採択時に遡ってみますと、新規事業採択時と再評価時でB/Cが低下する傾向にございます。これは、やはり様々なリスクを織り込んだ慎重な新規事業採択時評価が必要なのではないのかと思います。
23ページでございます。その場合、Bが課題なのではないのかというところでございますが、道路と港湾それぞれの複数の事業につきまして、交通量、それから貨物量の推計を行った結果でございます。事後評価時の交通量、あるいは貨物量の数字と新規事業採択時の数字では、やはり事業実施後のほうが落ちる傾向にあるということが確認されているところでございまして、適切なBの算定も行っていただきたいところでございます。
24ページからは、B/CのCでございます。新幹線に関連して申し上げておりますが、北陸新幹線、金沢-敦賀間につきましては、もともとは1.2兆円と言っておりますが、3年前に1.4兆円、そして去年、1.7兆円弱ということで、工費が増加しているところでございます。これは、施工しております鉄道・運輸機構の開業ありきでの工程、事業費管理をはじめ、機構における事業の管理体制や、鉄道局における管理監督の在り方等の課題が国土交通省の検証委員会でも指摘されておりますが、適切な事業執行を行っていただきたいというのが24ページでございます。
25ページは、これに関連いたしまして、現在、同じく新函館北斗-札幌間で北海道新幹線が建設されておりますが、いろいろ聞こえてくることがございます。再評価が令和4年度に予定されておりますが、それを待つことなく、速やかに現状を踏まえた分析を行うべきではないかということを申し上げさせていただいております。
26ページでございます。整備新幹線につきましては、着工5条件を確認することになっておりますが、その中で、事業進捗に伴いまして工事費が増加し、B/Cが悪化する傾向にあるということになってございます。こうした事態を引き起こさないためにも、事業着手に向けた見積りについては、将来の増加リスクを踏まえて考えていただく必要があるということと、工期の柔軟化、あるいはコスト縮減の観点から、民間活力の導入といった検討も必要なのではないかということを申し上げさせていただいております。
27ページ以降、その他ということで細かい話でございますが、i-Constructionを通じた生産性向上、28ページでございます。5年前から、国土交通省で、建設現場の生産性向上ということでICT技術の活用を進めております。従来施行に比べて、当初、コストはかかりますが、そのうち費用は低減すると想定されておりましたが、導入後5年を経過しても、現在、まだ費用は下がっておりません。そろそろ結果を見せていただければというのが28ページでございます。
29ページは、建設業における経営の多角化ということで、これは生産性といいますか、1人当たりの付加価値、生産性という形で、他業態への展開をしている例もあるという御紹介でございます。
30ページ以降は、立地適正化計画の関係でございます。
30ページ、今、立地適正化計画をつくってコンパクト化を進めていただいておりますが、市町村ごとにつくられている例が多くございますので、生活圏を考えたときに果たしてそれが最適なのかということは、また一度見て、考えていただく必要があるのではないのでしょうか。
31ページは、国の補助、あるいは交付金の制度の中でございます。何をやるかということは、我々もこれまで意識してきておりますが、どこでやるかということはあまり意識されていない場合もあるということで、地方創生拠点整備交付金の例をここに出させていただいております。左側の2つに関しましては、立地適正化計画上、要は居住誘導区域、そこに住んでくださいという地域以外で整備した事例、右側は立地適正化計画がない市町村で支援をしている事例でございます。
32ページは、制度的な話でございます。立地適正化計画は、都市計画区域内でつくられるということでございますが、そもそも人口集積が見込まれない都市計画区域外につきましては対象外となってございます。ただ、現実としては、真ん中の下の写真図を見ていただければ分かりますが、計画区域外のところで、すぐ外に、開発計画が緩いということで宅地等の開発が行われている例があるということでございまして、都市のコンパクト化をきちんと進めるという意味では、ここら辺についてもきちんと考えていく必要があるのではないかということでございます。
私の説明は以上でございます。
〔土居部会長代理〕ありがとうございました。
それでは、ただいまの説明につきまして、御意見、御質問等がございましたらお願いいたします。なお、本日、赤井委員と安永委員より意見書を御提出いただいておりますので、お手元にお配りしております。お目通しいただければと存じます。
先ほどと同様に、ネームプレートを立てていただきますとともに、テレビ会議システムを通じて御参加の方は「挙手する」ボタンをクリックしていただきたく存じます。
それでは、今度は反対側から参りますが、時間が若干、先ほどのもので押していますので、より手短に御発言をお願いできればと思います。
それでは、佐藤委員からお願いいたします。
〔佐藤委員〕よろしくお願いいたします。
まず、10ページと14ページに関してですが、安全な場所、災害リスクの低い場所に立地を誘導するという観点から見て、もう少し税制の役割があってよいかと思います。例えば、固定資産税について、今、新築であると2分の1の減免措置が3年間ありますが、こうした危険地域においてはそれを認めないといったことや、14ページにおいては事前復興計画というものがありますが、逆に災害が起きたときには必ずあなたの土地はこの値段で買いますからという、ある種プットオプションのような発想でやれば、例えばそれに応じて固定資産税を減免する。一種のプットオプション税です。こうした形で、事前復興計画の実効性を高めるというやり方はあってよいかと思いました。
それから、2番目のB/Cの話ですが、もうこれは間違いなく確信犯です。最初から過少評価になっているわけでありまして、これは恐らく、誰がやるかが非常に大事でありまして、BもCもやはり第三者的な見地が必要かと思います。工事する当事者、事業を行う当事者ではなく第三者による検証は、やはり体系的に必要かと思いました。
それから、最後の話、少し細かい話で32ページ、都市計画についてです。日本は、都市計画はまさに名前のとおり都市ですが、ある意味、自治体の全域を都市計画の対象にして、その中で利用計画をつくっていくという視点はあってもよいかと思います。先ほど申し上げた居住地の誘導という観点から見ても、乱開発を避けるという観点から見ても、都市計画法の見直しはあってもよいかと思いました。
以上です。
〔土居部会長代理〕木村委員、お願いいたします。
〔木村委員〕御説明ありがとうございます。
資料で挙げていただいた国土強靱化の5か年計画、去年、予算が決まってしまいましたが、今後5年間で15兆円と、命を守る費用を惜しむべきではないでしょうが、極めて巨額です。なおかつ、過去3か年の緊急対策の効果と検証もまだはっきりしていませんし、積算の根拠はどこまで明確なのか、そこは必ずしも明確ではないと思っています。もう決まったことではありますが、今後5年間ありますし、資料で挙げていただいたようにソフトとハードと一体となった防災対策、あるいは建設業の生産性向上について、今後5年間でそれなりに進展もあると思われます。そうした成果を生かして、15兆円の支出を固定化せずに、これからもできるだけ圧縮に努めるといったことが必要ではないかと思っています。
以上です。
〔土居部会長代理〕神子田委員、お願いいたします。
〔神子田委員〕以前から申していますが、やはり流域治水、あるいは災害対策は、ハードだけでは守り切れない、お金も足りない等ありますので、ソフト面の対策が必要であると思います。7ページに幾つかソフト対策の例がありますが、最後に衛星の活用ということがありました。やはり人の命を守るということで早めの避難指示が大事で、これもやみくもに出していると狼少年になって、信用を失ってなかなか避難してもらえないということがあるので、より正確に降水予想をして、より正確に避難誘導するという意味でのソフト対策にもお金をかけるということは非常に有効かと思います。
今、木村委員もおっしゃっていた予算面の話ですが、去年の経済対策の中で15兆円という数字が、私の理解が正しければ当初予算とは別にということになっていると。これについて、規模もさることながら、私、去年、防災の工事現場に行って、現地の事務所の人の話とか聞いていますが、要は当初とは別にというと補正なのか。補正は、毎年、組まれるとは限りませんよね、それが補正ですからという話だが、使う側からしても少し不安面があるということです。出す側からしたら、やはり必要なものだったら当初でちゃんと組むべきではないでしょうか。当初を抑えることに意義があるといって、毎年、暮れの解説委員相手の主計局長の懇談などでは、当初は抑えましたと胸を張られている人が多かったです。矢野局長がどうだったかは、記憶はありませんが。
財審でも、補正で膨らんだらしようがないでしょうと。当初を抑えることは、やはり来年のベースにもなるから意味があるのは認めます。ただ、必要な予算があるのだったら、別の予算を削って当初を抑えればよいのではないかと私は思うわけです。やはりそれができなければ、財務省がある意味はないのではないかと思います。
以上です。
〔土居部会長代理〕小林毅委員、お願いいたします。
〔小林(毅)委員〕私、前回も申し上げましたが、今回の財審の建議をいろいろ考えるときに、やはりコロナであぶり出されてきた問題をどうやって財政の中で生かしていくのかということであると思っております。その一つの顕著な例は、省庁間の壁、国と地方自治体の壁、自治体の横の壁、自治体同士の壁、この辺りが様々な目詰まりを起こして、いろいろな問題が起きてきたと思います。
その観点で、今回、注目といいますか、ぜひウォッチしていきたいと思っておりますのが、先ほども出ました流域治水の問題です。ここには、非常に丁寧に、様々な省庁がいろいろなことをやって、それを一つにまとめましたということが書かれていて、これはある意味、省庁間の壁を取り払う、垣根を取り払うことができたかのように見えております。その司令塔として、先ほどグリーンのときにも司令塔が必要であるという話が出てきましたが、これは官邸ではなくて国土交通省が司令塔の役割を果たしたと私は理解しています。そうした理解でよいのかどうかはさておき、これは一つの省庁の垣根を越えて、うまく一つの事業をまとめていく考え方のモデルになり得るのかもしれません。
なぜ、「かもしれない」という言い方をしたかというと、ここまでは良いです、ただ、先ほどから出ていますが、事業の重複等は各省庁の案件の中にないのか、あるとすれば本当に効果をあげているのか、それはチェックしなければいけません。効果が上がるとしたら、その効果をどうやって図るのか、そうした手法をまた確立しなければならないと思います。手法が確立されて、検証して、効果が出ていれば、これは非常に、今後、ほかのところにも、横展開ではありませんが、やっていける一つの例になるのではないかと思っております。まず、それが1点です。
もう1つは、9ページにあります都市機能の移転は、もう明確にコンパクトシティーを意識したとありますが、それ以外の、例えば災害後、インフラの原形復旧を前提としないとか、発災リスクの高い地域からの移転とか、そうしたものもある意味、全てコンパクトシティー、これは何度言ってきていても全く進まないわけですから、そうした流れの中に置いて動かしていくことができるものなのかどうか。もし、できないのであれば、どうすればそうした流れに出ていくのかということを考えていかないといけませんし、先ほど最後の例でありましたように、コンパクトシティーの足かせになるような施策が実行されるようでは、もうマイナスしかないということですので、その辺りのところを少し見ていきたいと思っております。
以上です。
〔土居部会長代理〕河村委員、お願いいたします。
〔河村委員〕幾つか申し上げます。
まず、御説明いただいた中で、防災・減災対策のところ、ソフト・ハード一体、本当にこのとおりであると思います。やはり災害のリスクが高い地域に住まない、それから都市機能もなるべくそこに置かないということを、もっと徹底する必要があるのではないかと思っております。10ページのところで御説明くださいました住宅金融支援機構のもの等を使った、新築の住宅を災害リスクが高い地域には造らないようにという話ももちろんそうですし、やはりこれからのことを考えると、災害リスクが高いということが後から分かってきたところに既にもう住んでいる方がいらっしゃるわけですから、そうした方にどういう形で住む場所を円滑に移転していただくか、それを促すような措置を考えていくことが必要なのではないかと思います。
もう1つは、災害リスクが高いという地域の指定の問題です。数年前の千葉の災害の事例であったと思いますが、自治体がここは崖崩れで危ないということで指定したいと思いながら、地元の方はやはり抵抗感ありますよね。そのような地域に指定されたら、自宅の固定資産としての評価額が下がってしまう、不動産屋にもやはり少し嫌な顔をされてしまう等、いろいろあって、なかなか進まないといったところに、先に災害が来てしまったという事例等も聞いておりますので、やはりきちんと客観的な専門家の御判断で危ない所がきちんと指定できているかどうかといったチェックをして、できるだけ災害を未然に防ぐ。災害に遭ったら何でも国に助けてもらえると思っているようでは、とても国も助け切れないということは、増田部会長が今まで何度もおっしゃっていることであると思いますが、そのとおりであると思いますので、そうした誘導が必要ではないかと思います。
建設公債のところも本当におっしゃるとおりで、建設公債なら出してよいということにはもちろん全然ならない、本当に当然ではないかと、御説明のとおりであると思います。
それから、B/Cのところは、佐藤委員もおっしゃいましたが、やはりきちんと第三者的な目で客観的な評価をすることによって、何か事業をやることが前提という感じで、コストが幾らかかっても、ずるずるやってしまうことにならないような仕組みをつくっていくことが必要であると思います。
以上です。
〔土居部会長代理〕広瀬委員、お願いいたします。
〔広瀬委員〕ありがとうございます。
グリーン、デジタル、レジリエンスという3本柱のうち、レジリエンスは大変大事であると思います。レジリエンス中で一番重要なポイントは、私は合理性と効率性であると思います。レジリエンスというと、どうしてもなかなかそうしたことが言えない部分がありますが、やはり合理性と効率性がなくなってしまうとネガティブに受け止められるようになると思うので、常にそこを意識しておかなくてはいけない。3.11から10年たちましたが、今、少しそのような反省もあるようです。
もう1つは、レジリエンスの中でネットワークインフラというものが非常に重要な、電気、ガス、水道、通信、交通ですが、このようなネットワークインフラは集積度がやはり一番のポイントになるわけで、今、お二人の方からお話がありましたようにコンパクトシティー、ネットワークインフラの後ろにというか前にというか、当然、人のネットワーク、コミュニティーがあるわけですから、コミュニティーの在り方によってネットワークインフラは全て決まってしまうわけですから、人のネットワークをどういうようにコンパクトにというか、良い形で持っていくか。これもお話がありまして、なかなか実際に難しいですが、もう1つ、ネットワークインフラのメンテナンスは非常に大きな金額になるわけですから、そこを考えると、ある程度インセンティブをつけても移ってもらうとか、そうしたような効果は非常に大きいのではないかと、私は思います。
そうした面で、先ほど説明がありましたが、リスクのある所に住まない、徐々に町の中心に移っていく等、そうしたことをこれからぜひ進めていただきたいと思います。
以上でございます。
〔土居部会長代理〕末澤委員、お願いいたします。
〔末澤委員〕ありがとうございます。
前段のグリーン、気候変動対策との関連で申し上げますと、12ページです。今、皆様から御指摘ございましたが、洪水浸水想定区域内人口の変化で見ると、一部の県ではリスクの高い所にどんどん建っているということです。これは、ある面、外部不経済であると思います。
と言いますのは、実はこれは平成27年です。平成27年に何があったかと申し上げますと、火災保険の契約期間が従来36年だったのが10年に変わりました。一部報道では、来年の後半には5年に変わると言われています。何が起きたか。この10年間で火事が増えたかというと、そうではないです。火事は増えていません。増えているのは、台風や洪水の被害です。つまり、民間の損害保険会社では、地震は再保険がありますが、結局、台風被害等は自らが再保険会社に出すしかありません。今、世界的な気候変動や災害の増大で、再保険料率が上がってしまっています。その結果、保険料も実は近年、どんどん上げていますが、長期契約ができないということで、36年が10年、来年には5年に変わると、これがもう現実です。
ということは、国としても、今、そうした所にお住まいになられていること自身が、御本人にとっても、地域にとっても、国にとっても相当なリスクであるということで、やはりこれはもっと税制、補助金等を使って前向きな政策誘導をやるべきではないでしょうか。もうそうしたタイミングに来ているのではないかと考えております。
以上でございます。
〔土居部会長代理〕熊谷委員、お願いします。
〔熊谷委員〕1点だけ申し上げると、菅政権の目玉政策はやはりデジタル化とグリーン化ですから、こうした施策との連携を図るという視点が重要なのではないでしょうか。まず、デジタル化に関して言えば、村井純内閣官房参与などがおっしゃっていますが、日本におけるデジタル化の在り方は、災害やパンデミックへの備えを考慮することが非常に重要であって、例えばITを活用して、より効率的、低コストで、災害に強い国土を造るということも可能かもしれません。また、災害やパンデミックに備えて、常に参照できるような土地や建物等の社会の基本データを整備すること等も必要かもしれません。
グリーンということで言えば、今のグリーンの成長戦略はやはり具体性やリアリティーに乏しいという見方をしている経済人が非常に多いわけであって、より一層、具体化しなくてはいけません。例えば、日経新聞に毎日、グリーン関連の記事が出ていますが、今のところ、どちらかと言えば実証研究等にとどまっていて、まだ巨額の投資にはつながっていない状況であると思いますから、もう一歩、背中を押してあげて、例えばその過程で水素を積み下ろすような港の整備等が必要になることもあると思います。その意味では、そこであと一押し民間の背中を押して、グリーンに民間の資金が活用できるような状況をしっかりとつくらなくてはいけないのではないでしょうか。
これを進めていけば、大げさに言えばグリーン、デジタルの国土総合計画のようなものに行き着くわけですが、そこまでやれということではありません。いずれにしても、やはり社会資本の整備に当たってデジタル化、グリーン化という施策との連携を強く意識するという視点が重要なのではないかと考えます。
以上でございます。
〔土居部会長代理〕ありがとうございました。
それでは、ウェブで御参加の方々にお願いをいたします。今、6人の方から「挙手する」ボタン、挙げていただいていると認識しております。順番に、小林委員、神津委員、上村委員、横田委員、冨田委員、赤井委員の順で御発言をお願いしたいと思います。
それでは、小林慶一郎委員、お願いいたします。
〔小林(慶)委員〕小林です。2点ほど申し上げたいと思います。
1つ目は、浸水リスクのあるレッドゾーンを設定する考え方とは、結局、災害リスクの高い地域には人がなるべく住まないようにしようと、そうした考え方であると思います。そうすると、その少し後に出てくるインフラの原形復旧をしないという前提の復興の在り方ということが、当然、入ってくると思いますが、今のところ、インフラを原形復旧するという考え方のほうが基本としては強いと伺っています。やはりそれは変えていかなければいけない、むしろそうした危険な地域、災害が起こったような地域にはなるべく住まないようにしつつ、そうであればインフラも原形復旧する必要はないと、そうした考え方にしていかないといけません。
そうすると、復興を誰が計画するのかというところで、今、市町村が中心になってこうした復興の計画を立てるという状況になっていることに、やや問題があるのではないかと思います。もう少し広域で、都道府県が全体を調整して、地域の移転や、あるいは復興について考える。広域の地域全体のバランスを考えた復興を立てられる、復興計画をつくれるような仕組みを、事前に平時から入れておく必要があるのではないかと思います。これが1点目です。
2点目は、費用便益分析のところです。これは、佐藤委員からも御指摘があったと思いますが、やはりどうしても事前の費用便益分析を甘く想定するということはありがちなわけですから、これに対する非常に簡単な規律づけとしまして、事後的に費用便益分析が甘かったと、費用を少なく見積もり過ぎていた、便益を大きく見積もり過ぎていたということ等が分かった場合、それに比例して公共事業の予算を削るというような、何か分かりやすいペナルティーを事前のルールとして入れておく。例えば、シーリングが削られるというようなルールを事前に入れておくと、事前の費用便益分析が甘くなるというようなことが少しは軽減できるのではないか。そうした簡単なルールを導入することが有効なのではないかと思います。
以上です。
〔土居部会長代理〕時間が限られておりますので、手短にお願いいたします。
神津委員、お願いいたします。
〔神津委員〕ありがとうございます。
道路橋や水門などの4割近くが、建設後50年を経過しています。トンネルについても、およそ4分の1が50年を経過しているということですから、地域住民の暮らしの安全の確保のためには、インフラの維持、管理、更新は大きな課題であると言わざるを得ないと思います。資料の2ページのところで、我が国の公的固定資本は、主要先進国と比べて高い水準であるという指摘があります。その上にあっても、地域住民の命と暮らしを守ることを最優先にした、持続可能な社会資本整備については最優先で進められるべきであると思います。予防保全を基本に、積極的に進めるべきであると思います。
あと1つ、大型化する台風、近年、風水害の被害が多発しています。7ページの流域治水の推進の考え方は大変重要であると思います。人命を最優先にして、被害を最小化するための流域治水プロジェクト、これは小林毅委員からも言及ありましたが、省庁横断で着実に実行することが不可欠であるということを申し上げておきたいと思います。
以上です。
〔土居部会長代理〕上村委員、お願いいたします。
〔上村委員〕1点のみです。
人口減少が進む中、都市のコンパクト化、そして居住に適さない地域を明確化して、誘導することは重要であると思っています。「見える化」、規制緩和と政策金融による対応が示されていますが、佐藤委員が言われたように、対象地域の固定資産に課税するような税制による対応も検討できるものと思います。固定資産税は、基本的に市町村税ですが、政策誘導部分については都道府県に持たせるようにできると、小林慶一郎委員が言われたように広域で考えることができるように思います。
以上です。
〔土居部会長代理〕横田委員、お願いいたします。
〔横田委員〕私は2点で、復興計画の策定促進とi-Constructionの件についてです。
まず、復興計画の策定促進、今、上村委員、小林委員からもありましたが、やはり広域的に考えることが非常に大事であると思います。以前、東北の復興に携わられた首長より、スピーディーな復興、インフラ復興にすることができた好事例の御紹介を別の会議で御共有いただきましたが、最後にぼそっと、数年たって冷静に考えると、本当は広域的な復興デザインもあり得たのではないかと反省の弁を述べられていたことが印象的でした。やはり災害が起こってからではなく事前に議論を進めることが重要。また、現在5%のみが計画策定できているということですが、例えば10年以内に災害発生可能性が高く予想されている地域で広域的に検討することを促進する等、考え得る。
2点目、i-Constructionについてです。導入後5年を経過して、コスト削減につながっていないというデータが出てきたことは非常に重要な共有であると思います。早急に、原因分析とともに、改めて見込みの再設定が必要であると思います。現状、ICT化やDXをすれば、いろいろなことがバラ色に解決されるという流れの中で話がなされていますが、導入の中ではいろいろな壁にぶち当たることもあって、その一事例になるかと思いますので、ぜひ分析を進めていただきたい。
以上です。
〔土居部会長代理〕冨田委員、お願いいたします。
〔冨田委員〕御説明ありがとうございました。1点、建設国債とB/Cについて申し上げます。
我が国の建設国債の原則ということは、イギリス等ではゴールデンルールと言われてきました。これは、後世代に受益以上の、受益を超える負担を残さないという考え方を示すものです。後世代に受益以上の負担を残さないということを、公共事業は赤字国債と違って箱物が残るから良いのであるということで判断するのではなくて、今日、御説明いただきましたように、費用対効果、B/Cを、公共事業の種類ごとに作成されております精緻なマニュアルに従って計測することが大事です。その際、今日、主計官が御説明されましたように、楽観的に分母の費用を少なく見積もったり、あるいは分子の便益及び裨益する人口を過大に見積もったりいたしますと、このゴールデンルールが適切に運用されなくなってしまいます。
これは事前評価ですので、小林委員は事後的なことを言われましたが、それも大事ですが、やはり事前にも特に費用であれば、やはり財務省が過小な見積りになっていないかどうかとかチェックを入れる。それから、例えば洪水で被害が起きて、その被害から守るために損害がどれぐらいかということを推計する際に、防災事業では裨益する人口をやはり見積もるわけですが、それが過大になっていたりします。大体、原因は明らかであると思います。
したがって、これらの適切な運用を行うということは、建設国債の原則とB/C、これをやはりワンセットで行っていくということが大事であると思います。
以上です。
〔土居部会長代理〕赤井委員、お願いいたします。
〔赤井委員〕ありがとうございます。今日、机上配付で資料をまとめさせていただいたものがありますので、そちらを見ていただければと思いますが、少し簡単に。
ほかの委員が言われていなかった、言われていた中にあったかもしれないですが、やはり今後も持続可能な社会資本整備を行っていく上で、税収も限られていますから、重要な視点、これまで言われたようなB/Cにくわえて、T/Cという新しい言葉での概念で一言だけ述べたいと思います。
3つほど視点がありますが、1つ目は、ほかの委員も言われたように、財政コストが後で上振れしないように徹底的にチェックをするとか、情報公開、「見える化」が大事であるということです。それから、B/Cを行う上でも、コストに対して一番便益が出るもの、便益に対してコストが一番小さいものを選択していくという点。最後に、財政持続可能性の観点からすれば、便益が出ていればよいという話ではなくて、実際、便益がCを上回っているとしても、Cに見合うだけの税収が入ってこないと財政的に持続可能ではないわけですから、つまりBからどのぐらい税収として戻してもらえるのか。いわゆるT/Cが十分に1を超えているということが財政の持続可能性のためには重要であると思いますので、そうした視点も、今後、必要かと思います。
以上です。ありがとうございました。
〔土居部会長代理〕ありがとうございました。
続きまして、農林水産の審議に移りたいと思いますが、残り時間が25分でございます。それでは、波戸本主計官、御説明をよろしくお願いいたします。
〔波戸本主計官〕農林水産担当主計官の波戸本でございます。よろしくお願いいたします。今回は春財審ということで、少し長い時間軸の論点も含めて御説明したいと思います。
2ページ目を御覧ください。農地面積・農業人口にかかる論点でございます。農地面積については、農林水産省の試算に基づきますと、10年後には5%減少、20年後には11%減少する見通しとなっております。一方で、基幹的農業従事者数ですが、その趨勢を機械的に延伸いたしますと、10年後には44%減、20年後には69%減との見通しでございます。農地面積の将来試算を実現するに当たっては、1人当たりの農地について、10年後にはおおむね2倍、20年後にはおおむね3倍の集積を達成することが必要となるわけですが、更なる集積がこれまでより進むかは予断を許さないのではないかと考えております。
この点について、3ページ目を御覧ください。これまでの集積状況について見ますと、上段のグラフですが、これは経営規模別の耕地面積の割合を示したものでございます。この20年で、5ヘクタール以上の割合、黄色部分が増加しております。とりわけ10ヘクタール以上の割合については、倍増していることが見てとれます。下段のグラフからは、専ら農業を営む者への農地集積が着実に進んでいるという状況でございます。
一方で、これまでの引受けに伴いまして、実は農地の分散が進んでいるといった担い手の方々が多い状況でございまして、こうした方々からは、これ以上の引受けは更なる経営コスト増となるので困難であると、こうした声が大きい状況です。そうした意味でも、農地集積を進めるためには農地の集約度を高めることが不可欠である、そのためにも実効的な農地集約推進のための制度の構築、あるいは集約状況の指標化、KPI化が必要になるのではないかと考えております。
4ページ目を御覧ください。集約のためのツールとして、左の図で農地バンク、右の図で人・農地プランを御紹介しておりますが、いずれもなかなか利用が低調な状況でございます。申し上げましたとおり、分散の抑止は待ったなしの課題ですので、これらの制度改善等が必要であると考えております。
5ページ目を御覧ください。少し視点が変わりますが、地域類型別の農地の集積状況をお示ししております。最も耕作条件が良いと考えられる平地農業地域で、赤の部分ですが、3割超が兼業的な農業に活用されているという状況になっております。こうした地域を中心に、更なる集積、集約を進めていく必要があるのではないかと考えます。
6ページ目を御覧ください。農産物の輸出拡大の意義についてでございます。これまで我が国の農業については、様々な制約要因があるということで、海外市場の展開については至っていないという状況でありました。近年、我が国の人口減少によりまして、食の市場は縮小傾向にある状況ですが、他方で、世界的な日本食の普及、アジア諸国の所得向上等によりまして、日本の農産物需要の拡大は現実的なものになってきた中で、実際に高い農業技術を生かした海外マーケットの進出も始まっています。こうした環境変化の下で、農産物・食品の輸出5兆円目標、うち農産物1.4兆円という目標を掲げています。足元の農産物の輸出額は0.3兆円でございますが、この目標を高嶺の花としてではなくて、我が国農業が安定的、持続的に発展するためにも、確実に実現すべきものと捉えるべきではないかということを強調したいと思っております。
なお、安永委員から御意見いただいていますとおり、この目標達成のためには、政府もそうですが、生産者の方々の意識も含めて、抜本的な改革が必要なのではないかということはそのとおりであると思っております。委員の御意見にもありますように、輸出における規模感、持続性の担保、戦略商品、ターゲット市場の選定等、供給体制をしっかり確保する、あるいは輸出商品の緩和、解消を包含した戦略を策定すると、こうした点も非常に重要なポイントかと思われます。
7ページをお願いします。輸出拡大と食料自給率の関係でございます。食料自給率は、分母を国内消費量、分子を国内生産量として算出されます。これまでは、輸入を国産に置き換えるということで自給率を高めることを目指してきましたが、ここ20年で見るとほぼ横ばいでございます。この点、輸出拡大も、国内生産量を増加するといった意味で食料自給率の向上につながるものです。実際、自給率の向上については、輸出拡大を実現するということがより現実的かもしれません。例えば、左下の図で、2030年目標に向けて右肩上がりの点線となっておりますが、この引上げ幅についてはかなりの部分が輸出5兆円目標の実現で確保されているところでございます。
なお、自給率は食生活の内容、いわゆる分母に大きく左右されるところでありまして、食料安全保障という観点からは、仮に輸入が遮断されても必要カロリーが供給できるといった潜在的生産能力を維持するという考え方が、むしろ重要になるような思いもあります。
8ページ目は、輸出関連予算の推移でございます。
9ページ目は、昨年末に政府として決定しました実行戦略の概要でございます。この実行戦略の概要については、安永委員の御意見とかなり重なるところがございます。
11ページ目を御覧ください。我が国の米・水田農業についての論点でございます。農業産出額に占める米の割合ですが、約20年で4分の1から5分の1に減っているという状況ですが、耕地に占める水田の割合、あるいは米を作付する農業経営体の割合はなお過半以上を占めている。米・水田農業ということは、冒頭で御紹介した農地面積や、農業人口の観点を含めまして、我が国の農業の極めて重要な課題であると考えます。
12ページ目を御覧ください。米・水田農業に対する財政支援でございますが、初めにございますように約3,000億円の転作助成金等が挙げられますが、耕作地の過半が水田であることを踏まえれば、⑤にある農業の公共事業予算であるNN事業予算など、水色の部分もその多くが米、あるいは水田農業に充てられていると考えられます。
13ページをお願いします。主食用米の需要ですが、食生活の変化、あるいは少子高齢化もありまして、最近は需要減少が加速しています。これに合わせて、生産量も減少させております。価格は、需給を反映した民間在庫に大きく影響を受けるところでございますが、在庫増加時の価格下落、在庫減少時には価格上昇を伴っていることが見てとれるという状況でございます。
14ページをお願いいたします。主食用米の価格安定を目的としまして、国は2017年までは生産抑制に関与してきましたが、2018年からは農業者の経営判断によるとされております。他方、2018年以降も、水田活用の直接支払交付金という形で供給抑制の支援が行われております。足元、この棒グラフを御覧いただきますと、約700万トンの米を生産しておりますが、黄色い部分にありますように、約300万トンの生産余力、生産力のある水田を転作に回しております。今後、人口減少は確かに避けられないですが、現行スキームに頼った生産抑制を続けるのみということでは、財政面でも持続可能ではないと思われますが、米・農業自体の持続的な発展も望めないのではないかと考えます。したがって、市場前提縮小志向といいますか、こうしたところから脱却して、国内外の新たな需要を開拓するという視点も不可欠ではないかと思います。そのためには、米の生産性、競争力を高めることが重要になると考えます。
15ページをお願いいたします。そうした意味で、生産コストの現状に関する資料を提示しております。一番上のグラフで経営規模別の米の生産コスト、2番目のグラフで経営規模別の作付面積の割合、3番目で転作割合を示しております。1番目、2番目のグラフから、生産コストが手取りを上回るような、つまり米で所得を稼いでいないといったような小規模経営体の方々の耕作面積が、実は全体の4割を占めているということが見てとれます。一方で、3番目のグラフからは、転作については、米の担い手として期待される大規模、あるいは中規模の経営体で9割、大宗を占めているということが見てとれます。今後、転作が必要になってくるという状況かもしれませんが、そうした中で大規模、中規模中心の転作を継続していくと、我が国全体として米の生産性、競争力の向上を阻害するおそれがあるのではないかと思われます。そうした意味で、農業人口の減少が進む中で、小規模経営体の耕地が担い手に着実に集積、集約につながるよう取り組むべきではないかと思っております。
16ページをお願いいたします。ページの2番目、3番目のグラフの経営区分をより詳細にしつつ、米の作付と転作の面積を並べたものでございます。大規模経営体が米の作付面積に比べても転作を大きく引き受けている状況等のイメージがつかめるのではないかと思っております。
次のページを御覧ください。地域類型別の米などの作付面積の割合を示した表でございます。これを御覧いただきますと、いわゆる都市的地域で米の作付割合が大きいことが見てとれます。なお、平地、中間、山間といった地域では、米の作付面積、あるいは転作の割合はほぼ同水準です。
18ページをお願いいたします。主食用米の兼業農家シェアは、2004年から現在まで約4割との水準は変わっていないという状況でございます。
次のページをお願いいたします。昨年秋の財審におきまして、大規模経営体の転作は収益性が低く、補助金大であることをお示ししました。転作地における高収益への取組の必要性も、改めて確認しておきたいと思います。
20ページ、お願いいたします。経営規模ごとの米の生産コストの推移ですが、御覧いただきますと、大小を問わずほぼ横ばいとなっております。その背景として、長期にわたる生産抑制が、大規模経営体を含め、生産性向上のインセンティブを阻害しているのではないかと思っております。
なお、これ以外の要因についてですが、農林水産省の分析を紹介しますと、例えば農業機械費等は規模拡大で低減を図れるわけですが、小規模、中規模ではそうした効果が生じにくいです。あるいは、小規模では、米の生産、販売のみでは生計を立てていないということもありまして、生産コストを下げようという意識は低いのではないでしょうか。また、大規模層においては、条件の悪い圃場、例えば分散地であるとか、区画整理がなされていない圃場を継続的に引き受けている中で、作業効率がなかなか上がってこないといったようなことが挙げられました。生産性向上によって、ある意味、価格引下げ余地を大きくするといった中で競争力を強化していくことが、国内外の新たな需要喚起につながることですので極めて重要であると、そうした道筋も具体的に描いていく必要があるのではないかということでございます。
21ページ、お願いいたします。そうした意味で、ここ20年間の水稲の単収が横ばいとなっているという状況はどうなのかということ。
22ページでございますが、生産コストの引下げの取組の例もこのようにございますが、なかなか数字としては表れていないといったような現状でございます。
23ページをお願いいたします。繰り返しになりますが、継続的な縮小均衡を打破するためには、やはり新市場の開拓しか道はないと思われますが、この点については輸出拡大が鍵となるのではないかと考えます。新市場開拓を推進するために、これまでも予算面で支援を行ってきておりますが、近年、輸出が増加基調にあるのも確かですが、2020年、足元の輸出量は約2万トンということでして、国内の主食用米生産量の僅か0.3%にとどまっているという状況でございます。輸出5兆円目標においては、2030年には米は5倍増、量におきましては約10万トンが目標になっているという状況でございます。
24ページを御覧ください。これは、農林水産省作成の、農家の方々向けにも利用される説明資料でございます。この資料を御覧いただきますと、一番右端にある輸出向けを含む新市場米生産ですが、そこから得られる所得はこの中で最も低い数字になっているという状況でございまして、これを見て、なかなか輸出に取り組むインセンティブは湧かないのではないかという状況かと思います。そうした意味でも、今後、輸出に向けて生産性、あるいは競争力の向上に取り組む農業者の方々への支援の在り方については、早急に検討を深める必要があるのではないかと考えます。
一方で、実際、輸出マーケットが拡大するのか、その実現可能性はどうなのかという点も重要であると思います。次のページを御覧ください。米の海外市場について、我々としても米の輸出に取り組まれている事業者に御意見を伺っております。そうした中で、拡大の可能性は十分あるのではないかというような印象を持っております。例えば、丸の3つ目ですが、日本産米の可能性は高いと、60キロ7,000円という価格のハードルが少しありますが、これをクリアすることが前提ではありますが、アジア地域で10万トン程度の消化、これはまさに2030年の目標値ですが、現状でも十分可能であるといったような感触でありました。
ただ、先ほど申しましたように、300万トンの転作を行っていくことに鑑みますと、10万トンではなかなか物足りないところですが、例えばこれを50万トン更に拡大させるということであれば、市場開拓に加えて、物流のキャパシティー、保管施設の整備、輸出の船便の増便等をおっしゃっていましたが、こうしたものを向上させる必要があるといったような御意見でありました。
その次のポツにありますが、昨年、一昨年は米の価格が上昇したこともありまして、輸出用米ニーズがあるにもかかわらず、十分に確保できなかったといったような声もありました。
さらに、国の支援策として、日本米全体としてのブランディングなどにも継続的に取り組んでほしいといったような御意見を頂いております。
次のページは、今、御説明したことを総括的に整理したものでございまして、説明は省略させていただきたいと思います。
以上でございます。
〔土居部会長代理〕ありがとうございました。
それでは、ただいまの御説明に関して、御意見、御質問等がございましたら、お願いいたします。これまでと同様に、会場におられる方はネームプレートを立てていただければと存じます。ウェブ会議システムで御参加の方は「挙手する」ボタンをクリックしてください。予定された時間を恐らく超過することになろうかと思いますが、何とぞお許しいただければと存じます。
それでは、まず会場から参ります。熊谷委員からお願いいたします。
〔熊谷委員〕手短に申し上げます。
日本の国家戦略として見たとき、グローバルに言うと、これから米中の対立、体制間の争いが10年から20年ぐらいの時間軸で続く可能性があると。恐らく、IT、デジタル、AI、量子というような広い意味でのハイテクの分野はブロック経済化の可能性がありますから、日本の活路は、そうしたブロック化されないような広大な非ハイテク部門で、例えば中国等との経済関係を深めること。その中で、やはり代表的なのがインバウンドであり、農産品の輸出であると思います。そして、米について言えば、やはり非常に伸びしろが大きいということですから、まさにマーケットインの発想で、戦略的に米の輸出に取り組むということが非常に重要であると考えます。
ありがとうございます。
〔土居部会長代理〕それでは、末澤委員、お願いいたします。
〔末澤委員〕すみません、一言だけです。
16ページと24ページですが、16ページの一番下です。15ヘクタール以上の経営規模については、32.9平米のうち転作が32.9であると。一方で、24ページを御覧いただくと、右から3つ目、飼料用米の多収が一番所得が高い。この2つのグラフを勘案すると、合理的に考えると、広域に経営している企業は飼料用米を使って安定的に収入を得ていることになります。これが日本の農業政策にとって持続可能なのかということを1点、指摘したいと思います。
以上でございます。
〔土居部会長代理〕河村委員、お願いいたします。
〔河村委員〕農業をいかに持続可能な形にしていくかということ、その中でもやはり担い手をどう維持していくかということも一つ重要な課題ではないかと思います。主計官からいろいろ御説明くださいまして、2ページのところでは農業従事者数の推移とか出ていますが、最近の若い方々の農業参入の動向とか見ると、農業法人等に就職、就業する方は増えています。ですから、新しい流れがそうしたところから出てきているという所もあります。では、そうした所に農地を集約できているかというと、なかなかそれは難しいところがあると思いますが、そうしたところも含めて、担い手をうまく確保して継続していけるような形でやっていくのが良いのではないかと思います。
そのためにも、やはり国内の需要と人口の減少という大きな流れがありますので、それだけではもちろん駄目で、輸出促進ということは本当に主計官の御説明どおりで、賛成です。特に、近くにあるアジアで、経済成長に伴って本当に高所得層が出てきていて、日本の農業、野菜にしても、果物にしても、お米もそうであると思いますが、やはり品質で売っていくべきではないかと思いますので、そうしたアジアの高所得層をターゲットに絞る形で、安永委員からも指摘が出ていますが、やはりいろいろ障害が出ている中ですので、風評被害の対応のようなところも含めて、しっかり国として対応して、後押ししていくことが、日本の農業の持続可能性を高めることにつながるのではないかと思います。
以上です。
〔土居部会長代理〕小林毅委員、お願いいたします。
〔小林(毅)委員〕今回、非常に興味深かったのは、農産物をかなり戦略物資という本来の役割、そうした捉え方をするということが背景にあるのではないのかという感じがいたしました。食料自給率、食料自給力、それと輸出の関係、先ほど熊谷委員からも少しお話がありましたが、今の世界的な状況の中で輸出される農産物が持っている役割も少し見せていき、さらに今回、主食用米を取り上げたということを組み合わせていくと、農業の別の姿を国民の皆様に提示できるのではないかと考えました。
以上です。
〔土居部会長代理〕田中委員、お願いいたします。
〔田中委員〕ありがとうございます。
最近、農業をやりたい方や、稼げる農業を標榜して頑張ろうとしている民間企業やベンチャー企業等も出てきています。今日、農地バンク等が活用されていない現状も御紹介いただきましたが、やはりデータや情報が集約されていない問題もあると思っています。農業DXと言われていますが、生産部門のDXだけではなく、やはり様々な場面で検討して、実装して、徹底した情報共有が図られると良いだろうと思います。
また、行政と民間の連携で食と農業の産業団地の形成等、大規模化かつ効率的な農業体制を目指しているところもあります。ただ、そうしたところが参入するときに、どうしても気候によって生産が左右されて、リスクや対策に費用がかかるというような悩みもあるかと思いますので、こうした新たな動きに対応して従来型の補助の出し方等を見直して、生産性や効率的な成果が見込めるところに活用できるようなスキームが設計されると良いだろうと思います。
輸出拡大については、食×(かける)プロジェクトは、磨き上げをして、日本の食を文化も含んで海外に売っていこうというようなことに取り組んでいますが、生産者の方と一緒にそれを考えると大きな気づきがあって、プロダクトアウトではなくてマーケットインで考えて実践するということで、確実に数値が出ていくという手応えがありますので、こうした成功事例を早く公開して、成果も「見える化」をしていくということをやりたいと思います。
以上です。
〔土居部会長代理〕佐藤委員、お願いいたします。
〔佐藤委員〕ありがとうございます。
米の輸出拡大については、米だけであると付加価値があまり高くないので、やはり外食産業自体の輸出化、具体的には大戸屋でも、松屋でも、吉野家でもよいですが、つまりそうした外食産業を海外展開していく方向があってもよいかなというのと、これはいつも思いますが、和牛もそうですが、日本はブランドが多過ぎますよね。米だろうと、肉だろうと、特産物が多過ぎです。安定供給という考え方からすれば、ブランドの統一はあってもよいという気はいたします。
それから、今日のお話を聞いていて、やはり財務省の考えていることと、農林水産省が考えていることと少し違うかもしれないということは飼料用米の扱いで、彼らは、もしかしたら飼料の自給率を上げるということと農業保護ということもあって、どちらかというと意図的に飼料用米の拡充を進めているのかなという気がしますが、これはエコフィードというらしいですが、いわゆる循環型の問題であって、一方では食糧は破棄されているわけですから、それを飼料に転換させるとか、飼料用米ではなくて飼料の安定供給を併せて行うことによって飼料用米を抑制できるのかなという気がしました。
それから、農地の集約化についてはずっと議論していて、少しずつ進んでいるのかもしれませんが、ずっと進まないような気がやはり少ししているかなと思います。大規模化の経済的なメリットは明らかに分かっているのに、なぜ進まないのだろうというときに、もちろん土地に対する愛着心云々もあるかもしれませんが、もう1つは、やはりガバナンス、経営形態の問題もあるのかなと。どうしても農家が主体になった経営形態になっていますので、やはりある程度、資金力のある投資家を呼び込むために、本来は普通の株式会社でもよいはずですが、今、規制がかかっています。農業関係者が半分でなければいけないとか、やはりそうした規制が農業経営、いわゆる経営形態の大規模化を阻害しているという気がします。零細農家を減らすのは良いですが、零細農家を減らして、逆に小規模農家、中小農家ばかり増やしてもしようがないので、やはり大規模化を進めていく、大規模農業を進めていくという観点から見ても、経営主体、経営形態の在り方は少し規制を通して、規制の見直し等で考えていく必要があるかと思いました。
以上です。
〔土居部会長代理〕竹中委員、お願いいたします。
〔竹中委員〕
実は、先ほど少しドローンの話が出たので一言だけ。今、私たちプロップ・ステーションは、障害のある人のドローンの就労支援活動をやっていて、実際、一流のプロのドローンパイロットの方から技術を学ぶということをやっています。その中で、今、やはり方向性として、いろいろなドローンの活用がありますが、農業に対する活用に非常に関心が高まっていて、農薬散布や、どこの生育が悪いからここだけ集中的に肥料をやるかであるとか、いろいろな意味で広範囲に御関心がありまして、それで農業関係者にドローンのこととジョイントをお願いして、しばらく見ていただいたのですが、人手も価格も約10分の1になるという想定が実は出ました。これはまだ小さな取組ですから、その数字が正確かどうかは分からないですが、ぜひとも、これだけ大きな結果が出そうなものなので、ドローンと農業とのジョイントについても、少し国としても研究を進めていただけたら嬉しいと思います。
以上です。
〔土居部会長代理〕中空委員、お願いいたします。
〔中空委員〕ありがとうございます。
コロナ前なので、もう随分前ですが、香港に行った時にイチゴを食べました。その時のイチゴが物すごくおいしくて、どこ産かと思ったら韓国産でした。マーケットインの話は非常に良いことですが、うかうかしていると、ほかの国に作られてしまうものがいっぱい出てきます。イチゴもそうだし、お米にしたって、私たちだけが日本産米も勝ち目が高いと思っているかもしれないと考えなければいけないと思っています。競争をしなければならないわけです。何でこんなに競争心がないのかと考えると、やはり補助金や負担金があり過ぎた弊害ではないかと思います。なので、その競争心をうまく鼓舞していくという考え方を一つ入れる必要があるのではないかと思いました。
以上です。
〔土居部会長代理〕大槻委員、お願いいたします。
〔大槻委員〕ありがとうございます。
私も、農業はこのままであると、やはり自律的に持続するのは非常に難しいという危機感を改めてこの資料で強くしたわけですが、先ほど佐藤委員からもありましたが、どの政策も相当昔からやっていて進まないという非常に難しい問題なのだろうと思います。その中で、あえてトップラインの拡大と生産性の向上、これはもう早急に取り組まなければいけなく、トップラインという意味では先ほど来の輸出の話で、それには恐らく、日本人がなぜかいろいろな産業で苦手としているブランド化、中空委員から実は質が良くなっている話もありましたが、そうではなくて、やはり日本産だから買うというような何らかの形のブランド化を、コンサルテーション等何か入れて早急に進めるべきだろうということが1点。
それから、生産性については、20ページ目を見ると、それぞれの規模ごとにIT化とDXを進めても難しいということが明らかな中で、やはり集約化ということになっていくのだろうと思います。そこで、15ページ目のところで、事前にも御説明いただきましたが、なぜかコスト割れでも非常な勢いでやっていただいている方々の理由等も、もうデータを集積して、ここら辺の集約化を、もっとインセンティブとディスインセンティブをつけることによって進めていくことが必要かと思いました。
以上です。
〔土居部会長代理〕ありがとうございました。
それでは、ウェブ会議システムで御参加の方3名、こちらで把握しております。冨田委員、堀委員、宮島委員という順番で、まず冨田委員からお願いいたします。
〔冨田委員〕ありがとうございます。
今日、主計官は御説明なさいませんでしたが、14ページの右下の図でございます。これは、将来、水田活用の直接支払交付金がどうなるのかという予算が拡大する姿が示されているものです。私は、これは非常に大事な資料であると思います。つまり、これから先、左のグラフが示しますように、主食用米の需要が減少し、そして、これまでいろいろ御説明があったような形で農地の集積が進みます。それが進むほど、支払い対象面積が増えて予算額が拡大してしまいます。したがって、現在の米政策は持続可能性がどんどん低下するという悲劇的な仕組みを将来に投影したもので、非常に重要であると私は思います。こうしたものがいろいろ政策の対話のツールになっていくと思いますが、こうしたことを避けるためには、私は対象面積当たりの単価の在り方の見直しをやって、これまで議論してきたような、内外の消費者の需要に対応しようとする農家にインセンティブを拡大するために使ってはどうかということでございます。
以上です。
〔土居部会長代理〕堀委員、お願いいたします。
〔堀委員〕3ページ目の集積の話で、長年、進んでこなかったということは恐らくボトルネックがあるはずかと思います。佐藤委員からも、農業の経営主体の規模の問題も指摘されましたが、ここで書かれたように集約状況の指標化、KPIは必要であるとは思います。ただ、恐らくそうしたものができたとしても、今の経営規模の状態であるとなかなか進まない。もっと構造的な課題があるような気がしますので、そこのところを分析していく必要があるのではないかと思いました。
また、輸出拡大と食料自給率のところも、確かに輸出拡大が進めば食料自給率も上がるということはそうであると思いますが、食料自給率は、国防ではありませんが、それとはまた別の意味でも非常に重要ですので、それは進めていく必要があります。輸出拡大については、プロダクトインからマーケットインにするということも、ほかの委員がおっしゃったことと同じですが、幾ら農業生産者を支援してもなかなか難しいといいますか、言葉の問題とか、グローバル化するための人材は別の意味で必要かと思いますので、そうした人材を育てる。農業生産者、要はプロダクトインをする人は、生産者は生産の質にこだわる方であると思うので、売るところは農業を売れる人材育てていく等、そうしたところにも目を向ける必要があるのではないかと思いました。
以上です。
〔土居部会長代理〕最後になりまして恐縮です。宮島委員、お願いいたします。
〔宮島委員〕延びているのにすみません。
やはり私も、特に米に関して、この政策がずっと持続するようには見えないと思っています。集約に関しては、集約できそうなところは、ある程度、農業法人等いろいろな形で集約も進み、そうした人たちは転作もしていますが、農業の中にはどうしても、自分たちはそんなに稼がなくても、今のままの兼業でよいという人たちがある程度いるという状況がずっとあるために、特に小さな土地に関してなかなか進まないという部分があると思います。これは、その人たちの自由もあるので、できることとできないことはありますが、今よりもその地域のプランをもっと強力に推し進めて、その地域をこの先どうしていくのかというところを、今もありますが、今よりもっと実質的に進めないと前に進まないと思います。
また、需要をキャッチするためにDXの活用とか、そうしたことは非常に大事であると思いますし、実はお米はコロナがあっても思ったほど食べられなかったということがあって、もう需要はこのぐらいのものであると考えざるを得ず、生産の抑制とかで価格を維持するという考え方をどこかで変える必要もあるのではないかと思います。結局は、ほかの産業と違って、需要等に対して素直に応じていないところは、人材を引っ張ってこられないところになっているようにも思いますし、実はまだまだ、パック御飯等、いろいろやればできるところでやっていないこともいろいろありますので、そうしたところに広げるようにドライブをかける必要があるのではないかと思います。
以上です。
〔土居部会長代理〕ありがとうございました。
皆様の御協力で超過が10分で収まりまして、幸い全ての議題を終了いたしました。それでは、お時間を過ぎておりますが、本日の議題はこれにて終了させていただきます。
本日の会議の内容につきましては、会議後の記者会見で御紹介させていただきます。個々の御発言につきましては、皆様方から報道機関等に対してお話にならないように御注意をお願いいたします。
次回は、5月11日、14時から、再び財政制度分科会を開催いたしまして、建議案について御審議いただく予定になっております。
それでは、本日はこれにて閉会いたします。御多用中、御出席いただき、ありがとうございました。
午後4時40分閉会