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財政制度等審議会 財政制度分科会
〔議事要旨〕

  • 1.日時令和4年4月20日(水)15:00~17:20

  • 2.場所財務省第3特別会議室(本庁舎4階)

  • 3.出席者

    (委員)

    増田寛也、土居丈朗、遠藤典子、佐藤主光、武田洋子、中空麻奈、宮島香澄、安永竜夫、上村敏之、河村小百合、木村旬、熊谷亮丸、小林毅、末澤豪謙、竹中ナミ、田近栄治、田中里沙、冨田俊基、広瀬道明、別所俊一郎、堀真奈美、神子田章博、村岡彰敏、横田響子、吉川洋、榊原定征、大槻奈那、小林慶一郎、角和夫(敬称略)

    (財務省)

    岡本副大臣、藤原大臣政務官、高村大臣政務官、奥次長、坂本次長、阿久澤次長、八幡総務課

4.

    • 事務局説明

  • 社会資本整備について

  • 産業・中小企業、グリーンについて

  • 防衛について

5.議事内容

    • 本日は、「社会資本整備について」、「産業・中小企業、グリーンについて」、「防衛について」という議題のもと、審議を行った。

    • 各委員からの質疑や意見は以下のとおり。

【社会資本整備】

<委員からの御意見>

  • 災害リスクの低い土地やコンパクト化に向けて住む場所を適切に誘導していくことが必要。人里離れた地域や災害リスクがある地域について、土地代が安くてあえて住む人がいると思うが、固定資産税を大幅に引き上げて住めないようにする政策を取れないか。

  • 災害への備えを契機として、自治体があるべき住まいの在り方についてしっかり住民に説明し、その中でできるだけ住民にストレスがない形でスマートシティやコンパクトシティを進めるべき。

  • コロナ禍で人口減少が加速している状況であるため、コンパクト化の取組は一段と重要性を増している。コンパクト化に見合う公共事業の選別を積極的にこれからも進めるべき。

  • 災害リスクデータと人口動態を重ねた地図を作成し、リスクを見える化する取組は、都市計画を進める上でも極めて重要。

  • 災害リスクの高い地域の人口動態の可視化について、現場である地方自治体において危険な地域を意識しない施策展開が行われている可能性がある。情報展開とともに、地方自治体を巻き込んだ政策誘導が必要。

  • 災害リスクの低い土地へのシフトや災害前のソフト対策は極めて重要であり、進める上ではデータ、技術の活用が非常に重要。さらに、見える化の事例に関連して、技術を活用したパーソナル防災の在り方や平時からの備え、平時のコミュニケーションの高度化など、技術によってハードよりもソフトに注力する余地が高まっている。

  • 人口減少を織り込んだ形で新たな国土全体の危機管理構想を検討・策定する際に、事前復興計画など、他の計画との連動性をいかに図っていくか、コミュニケーションを取っていくかが非常に重要。

  • 自治体が事前復興計画を積極的に作れるよう、金銭的なインセンティブやガイドラインなど技術面のサポートが必要。

  • 所有者不明土地の活用、新たな国土計画に向けた国土管理の構想や、各種制度が連携したコンパクト化の推進、業績連動型補助金の創設などの提案は、今までの財審での議論の方向性を踏まえて深堀りしたものであり、是非実現してほしい。

  • 国土の管理構想について、あらゆる省庁や地方公共団体と連携して作ることが極めて重要。

  • 災害について、規制等による国サイドからの指示に加え、日本においても米国のFEMA(アメリカ合衆国連邦緊急事態管理庁)のような組織が必要。

  • マクロで見るとニーズに比べて社会資本のストックが十分になってきており、限界的なリターンは減ってきている。しかし、例えば、スーパー中枢港湾などの個別分野では、いまだに整備が必要なものもあり、選択と集中が社会資本整備において、重要な課題。

【産業・中小企業、グリーン】

<委員からの御意見>

  • 新型コロナ対応について、財政余力を維持するという観点から、どの政策を続けるべきか、止めるべきかについて取捨選択、対象を絞るなどの判断をし、将来の危機に備えた財政余力を確保すべき。

  • 中小企業からは「コロナの影響は続いている」、「原材料価格の高騰が心配」といった声もあり、メリハリをつけつつ、今後とも必要な支援策を残さざるを得ないのではないか。

  • 中小企業の対策という意味では、資金繰りや給付金に加え、雇用調整助成金や時短協力金もある。コロナ対策では、全体でいくらかかっていて、効果があったのかは、改めて幅広く整理して議論していくべき。

  • コロナに対する財政面での対応について、その内容と、それを実績面からレビューすることが必要。

  • 各種政策について、ある段階で効果について検証する必要がある。特に資金繰り支援については、リーマンショック後の金融危機時に行われた融資と比較して、今回の融資がどのような効果をもたらしたのかも検証すべき。

  • 中小企業支援について、機動力ある措置が迅速に取られたことは有効だが、メリハリ付けや見える化が必要。資金繰りの補助の体制整備や、未来への投資について計画策定や事業計画の見極めを行うべき。また、人的支援などお金以外の支援も重要。補助金の趣旨に沿わない不正な利用については、返金含めて早期に対応を講じるべき。

  • 中小企業について、数年のタイムスパンで考えると、コロナと共存するため、ビジネスモデルを変える必要。政策としても、現状維持ではなく、企業の退出や退出後の再チャレンジを支援すべき。その際、過剰債務の負担は生産的活動を阻害するため、法制の効率化や私的整理の活用など、債務負担を減らす政策も考える必要。

  • コロナ危機からただ単に助ければよいのではなく、自律的な成長軌道に載せていくことが重要。国の支援は、あくまで呼び水であるはず。公的支援が過大になって産業の新陳代謝を阻害することを繰り返すべきではない。

  • 産業・中小企業政策について、財政再建ができないことと日本経済が低迷していることの共通する理由は、痛み止めを打ちすぎて、現状維持バイアスが強いこと。①産業と企業の新陳代謝や労働の流動化、②積極的労働政策の強化、③全世代型社会保障の徹底、を三位一体で進め、経済の活力を維持しながら、格差の拡大を防ぐことが重要。

  • 政府は事業再構築や生産性向上を志向している一方で、補助金を受け取る現場は、どうすれば補助金が受け取りやすいかを考えており、政策と現場の目線が合っていない。中小事業者には、補助金に依存せず、自走していくことが求められているという強いメッセージを発していく必要。

  • 事業再構築補助金について、有望な業態に多数の企業が参入するようなことは政策の失敗なので、効果が薄ければ見直しが必要。また、多くの対策が企業の成長の停滞を招いているとすると本末転倒なので、単なるコンサルへの補助金にならず、中小企業対策全般が中小企業の成長に寄与しているのかどうか、きちんと検証が必要。

  • 事業再構築補助金について、業態を変えるというコンセプトは良いが、実態を見ると税理士が採択率をアピールして高額なフィーをもらっているのはおかしい。メインバンクが伴走し、しっかりフォローすべき。

  • グリーンについて、世界では短期的により戻しが起こりうるが、中長期的にカーボンニュートラルを目指す動きやエネルギー安全保障との両立の必要性は世界が認識している。

  • 2050年カーボンニュートラルを実現するためには、民間企業がアニマルスピリッツを発揮し、R&Dによる再エネや省エネ・リサイクルの技術を確立しなければならない。そのために、国がグランドデザインを描き、ロードマップを見える化していくべき。

  • 選挙などによる政治変動の可能性から、今年は特に、欧米のグリーン戦略について動向を見ておく必要

  • グリーンについては、「カーボンニュートラルに向けて絶対的にこれをやればいい」という方法はなく、どうしてもお金がかかってしまうもの。それをどうやって成長につなげていくか、ということや、国際的なバランスが重要。企業の経営者がカーボンニュートラルに乗り出す責任に関してしっかり表明してもらい、新たな技術開発であってもステージごとに検証しながら進めていくべき。

  • グリーンについては二つの側面があると思う。一つは、省エネ技術の開発や新たな産業の創出といった成長戦略という側面。もう一つは、相当なコストがかかることによる、産業の空洞化や地方の疲弊といったマイナスの側面。いかにプラスの面を伸ばして、マイナスを少なくするかが重要。また、世界のCO2を少なくするために最も良い方法は、2国間クレジットをいかに活用していくかということ。

  • グリーンについて、税制・規制も含めた色々な対応が必要。

  • グリーンについて、サステナブルファイナンス市場を拡大しなければならない。そのためにも、二酸化炭素に値付けをするのが必要ではないか。

  • 電費に応じて補助金額を決めるというは、とてもリーズナブルな良いこと。ただ、そもそもEVで使用している電気をどう作っているのか。電力の4分の3は火力発電で作られているが、地球温暖化対策の観点で問題。EVの普及だけでなく、エネルギー政策全体として考えていくべき。

  • 電気自動車の導入支援の例などいたずらに予算額を増やすのではなく質の向上を不断に検証していくといった効率的な支援が重要。

  • 長期的な見通しとして税の引上げはトレンドであり、トリガー解除ではなく、どう経済構造を省エネ、再エネへと転換していくかが求められている。痛み止めを打つよりも将来を志向した改革を考えるべき。

【防衛】

<委員からの御意見>

  • 防衛費対GDP比2%の議論が進んでいるが、額が先に決まってしまうと、不要なものを買ってしまったり必要以上に高い額で買ってしまったりする懸念がある。防衛費を増やすことを目的とせず、時間軸を勘案しながら装備強化を図る方針を取るべき。

  • 対GDP比で幾らという乱暴な議論ではなく、経済・外交と絡め、かつ抑止力の観点でどこまで防衛費が本当に必要なのかという議論をする方が現実的。

  • 防衛省は、三文書の見直しに向けて既に検討されていると思うが、国防費がなぜ対GDP比で語られてきたのか、この先どうしていくのか、諸外国と国防費対GDP比で比べたときの日本の置かれた現状などを、国民とともに考える広報に方針を転換すべき。

  • 一般の人にとって防衛は我が事とされていなかったが、20世紀ばりの戦場の映像を見るにつけ、万が一の事態でも日本がいざというときに戦費を調達できる国なのか、ちゃんと耐え得る国なのかということが、意識されるようになった。そうした中、他の経費の無駄を削るだけで本当に戦費を調達できるのか、次の世代へ負担を押し付けるだけでよいのか、本格的に議論を進めるべき。

  • 冷戦が終結し、国際社会は平和な配当を得て、グローバル経済の発展につながったが、ロシアのウクライナ侵攻でそうした状況が一変し、民主主義を守るためのコストが求められている。そのコストのうち一つはインフレであり、ロシアへの経済制裁の反作用として資源価格が高騰している。もう一つは防衛費であり、両者ともに真摯に向き合う必要がある。いずれも民主主義を守るために一定の負担増の受け入れはやむを得ないかもしれないが、できるだけその負担を抑える努力をすべき。防衛費だけを取り出しての議論は妥当ではなく、日本の安全保障戦略は経済、さらには食料やエネルギーを含めた総合的な観点、非軍事的なソフトパワーも勘案するなど、多角的、中長期的な観点から練り直し、その中で適切な防衛費を導き出すべき。

  • 円安が進んでいる。日本国債市場や日銀が今後態度を変えるのか否かについて相当注目が集まっているが、機動力が日本全体で減ってきているということを再認識する必要。

  • コロナやウクライナなどこれまでの10年とは違うことが今後の5年間で起こり得るという観点では、これまでにとらわれない非連続な改革が必要。

  • 冷戦終えん後、各国経済の相互依存関係が拡大・深化し、グローバル化が進展し、日本も特に中国との相互依存関係が顕著に拡大を続けてきた。しかし、ロシアのウクライナ侵攻によって世界経済の相互依存関係は大きな転機を迎えた。民主主義と市場経済を不可分とする体制、権威主義と隠蔽体質の体制との対立とも言えるかもしれない。各国の相互依存の進展によって、各国の脆弱性が増してきたという認識が広がり、相互依存関係を武器として貿易・投資規制、金融制裁などの経済的な手段を政治・軍事目的に用いる傾向が強まってきた。

  • ウクライナ危機に際して、国家にとって基盤となる経済、財政運営、通貨の問題が、どれほど重要かということが明らかになった。日本も安全保障環境が大変だから防衛予算増額でよいと終わらせるのではなく、誰が負担するのかということもきちんと議論すべき

  • 「継続的な支出を暫定的な手段によって裏付けなく賄い続ければそれ自体が我が国の脆弱性につながる」という事務局の指摘は本当にそのとおり。

  • 国防について、いわゆる国力・経済力がなければ、いかなる兵器があっても何の役にも立たないと言ってよい。実際に日露戦争があった明治時代にも、当時の指導者は十二分に日本の経済力を考えていた。経済と個々の軍備のバランスが明治時代と逆転したのが戦前の昭和時代。今だからこそ、こうした視点を世の中に訴えるべき。

  • ドイツは元々財政状況も良いため国防費を増やせるが、国の借金が増えてかえって国の構えが弱くなってしまうこともあるため、その点はしっかり考えるべき。今般の情勢に鑑み、これまで以上に防衛予算を効率的に使うことが国の防衛力を高めることを肝に銘じ、一層の歳出の効率化を図るべき。

  • 借金をして防衛力を強化しても、真に我が国の安全を確保することにはならず、安定財源をしっかり確保することが不可欠。国防費を増額する場合、負担の引上げなのか国防費の配分の増加なのか、透明性を高めて情報開示する中で、国民にしっかりと選択してもらうことが非常に重要。

  • 防衛について、今回のウクライナ危機も踏まえながら、仮に日本や近隣諸国で戦争が勃発したときに想定される事態や財政への影響についてシミュレーションが必要。財政の健全化が国家の防衛につながるという考え方や、国家の防衛に国民負担が伴っているという考え方について、今後、発信が必要。

  • 防衛費は防衛費、社会保障費は社会保障費の中での予算の再配分を検討するということが行われているが、分野・領域を超えた、ソーシャルからセキュリティへの再分配が必要。

  • これまで防衛関係費については、安全保障政策、安全保障環境の不確実性の高まり、すなわち費用の増額といった一次方程式的な考え方・議論が中心だったが、安全保障環境にとどまらず、経済・金融・財政、国民生活、企業の各分野における脆弱性の高まりへの全体を見渡した対応という連立方程式の問題となったと考えるべき。防衛の脆弱性を克服しても、他の分野で増した脆弱性を突かれる可能性がある。

  • 国際情勢が大きく変化する中で、経済・金融の脆弱性が低減したままであることに対する危機感を一段と高める必要があり、脆弱な状況ではこうした情勢の中で非常に問題を抱えてしまう。国としての財政余力を持っておくことは極めて重要。短期的な目先のことにとらわれ過ぎて、将来の甚大なリスクに対処できないということは避けなければならず、それを念頭に置いた議論をすべき。また、グリーン戦略とも連携して考える必要。例えば、再エネの普及や電気自動車の生産が増えると、従来の資源とは異なる資源の確保が必要。日本の輸入構造では、カーボンニュートラル資源の特定の国への依存、偏在が浮き彫りとなる。同時に、日本が世界に対して重要な存在でいられるかも大事であり、世界から見たときの日本の重要性を発揮できる部分の理解も必要。

  • 軍事的に有事を検討するならば、国力全体を総合的に分析して国力全体でどう反応するかを考えるべき。また、軍事的な有事が日本で起きた場合に、経済・金融・財政上の問題でどういう事柄が発生し、その後どう展開し、どう解決できるかのシナリオをしっかり分析すべき。有事に耐えられる経済・金融・財政を更に詳しくシナリオ化してコンティンジェンシープランを描くべき。有事に脆弱性が顕在化しないよう、健全な財政・金融をつくるためには平時からどのような財政運営をすべきか国民的合意を図っていくよう財務省からメッセージを発信していくべき。

  • 防衛費を増やすべきという議論が高まっているが、防衛力はある面で手段であり、目的は国民の生命・財産を守ることであり、そのためにどういう防衛政策が必要で、どういう防衛力を整備すべきか、という順番であることを間違えてはならない。また、経済・金融・財政、食料、外交に総合的に対応しなければ、持続可能力、継戦能力にも影響してくる。

  • 国債の増発を選んで防衛関係費の増額を検討するとなると、我が国財政の脆弱さは免れない。

  • 日本の防衛は「陸が強い」という印象を受けるが、日本は海洋国家であるため本土決戦をするわけではない。全体フレームとして縦割りになっていないか、本当に起こり得る危機にちゃんとバックキャストで用意できるようになっているのか、一般の人が安心できるように説明すべき。

  • 防衛省が持っているような研究開発予算を大学は取りに来ないという問題がある。こうした中で、産業界・学術界との連携が全く絶たれている状態で、財政だけの投入に依存することに対し危機感あり。全体として民間・大学の力を使っていく中で、財政がアンカーテナンシーとして好循環を生み出す仕組み作りを財政当局として支援すべき。

  • 国が行う防衛費の増強とともに、アメリカで行われている、財政に依存するだけでない民間の技術力を利用した防衛刺激策、好循環を生み出す仕組みも重要。

  • 事務局資料によれば、防衛産業の装備品の利益率が一般産業より高いとのことだが、企業側の実感とは乖離している。定常的に発注がこないことや、初期の契約時点での利益率は高くとも、途中のオーダー変更などのため、結果として見ると普通の事業に比べて利益率が低くなり、撤退する企業が続出している。