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財政制度等審議会 財政制度分科会 歳出改革部会
〔議事要旨〕

  • 1.日時令和3年4月30日(木)14:00~16:40

  • 2.場所財務省第3特別会議室(本庁舎4階)

  • 3.出席者

    (委員)

    赤井伸郎、遠藤典子、大槻奈那、神津里季生、佐藤主光、十河ひろ美、武田洋子、土井丈朗、中空麻奈、増田寛也、宮島香澄、安永竜夫、上村敏之、河村小百合、木村旬、熊谷亮丸、小林毅、末澤豪謙、竹中ナミ、田近栄治、田中里沙、冨田俊基、小林慶一郎、平野信行、広瀬道明、福田慎一、別所俊一郎、堀真奈美、神子田章博、村岡彰敏、横田響子(敬称略)

    (財務省)

    元榮大臣政務官、矢野主計局長、角田主計局次長、宇波主計局次長、青木主計局次

4.

    • 事務局説明

      • グリーンについて

      • 社会資本整備について

      • 農林水産について

5.議事内容

    • 本日は、「グリーン」、「社会資本整備」、「農林水産」について審議を行った。

    • 各委員からの質疑や意見は以下のとおり。

【グリーン】

<委員からの御意見>

  • グリーン分野の厳密な基準や範囲が定まっておらず、ルール作りを行うことが重要。ルール作りに参加し、必要な分野に資金を投入していくことが重要。

  • 経産省と環境省の間で予算の色分けがないようにすることが、ワンガバメントとして重要。デジタル庁のように、脱炭素化に関する司令塔に集約していくことが重要。全体像としての見取り図がなければ議論はできない。国としての執行体制等、一目で分かるものを財審で思い切って作ってはどうか。

  • 戦略的分野において社会実装に向けた投資に集中することが必要。諸外国は国益を追求しており、我が国も「したたかさ」と「しなやかさ」をもって、エネルギー政策に取り組んでいくべき。

  • 温室効果ガスの削減コストを国民に負担させてしまうことを真剣に検討すべき。また、エネルギーコストの高い日本では特に製造業への悪影響を危惧。

  • 温室効果ガス削減目標は46%という高い目標なので、官民一体でやらなくてはならない。財政はある程度サポートする必要。

  • 到達目標にむけてロードマップの作成によって予見可能性を高める必要。

  • 世界レベルの共有地の悲劇が起きないか懸念。京都議定書の失敗を繰り返さないようにすべき。

  • どう効率的に目標を達成するかということ、経済成長との両立を図るためにコストの内部化をきちんと図ること、汚染者負担を求めることが重要。カーボンプライシングの取組によってインセンティブを作る必要。

  • 社会全体として効率的に、無駄がないように進めることが重要。諸外国も財源を確保しており、我が国としても、財源確保をどうしていくかを考えるべき。

  • カーボンプライシングや炭素税については、今の枠組みにとらわれない検討が必要。

  • 安定的な財源を確保する必要。企業・家計には負担になるが、適切に支援を講じることで、投資先としての魅力も高まり、国民にとってもメリットが生じる。

  • グリーンだから、次世代の成長力に資するから、といって債務を増加させてよいということではない。諸外国も原資を用意している。グリーンという美名にとらわれず、財源を確保した上で投資をすることを肝に銘じるべき。

  • グリーンは将来世代のためと言いつつ、財政の持続可能性を犠牲にする姿を悲観。Pay As You Goの原則を守り、安定的な財源確保を行うべき。

  • どのような手段で削減するのか道筋が見えておらず、歳出だけが膨らむことを懸     念。

  • グリーン国債を望む声もあるが、実態が赤字国債であることには変わらない。

  • ESG投資に関して、金融市場の姿勢は5年で様変わりしており、現在は、儲かるかどうかではなく、当然取り組むべきものとして捉えられている。ただし、規制もせず、自由にやっても成果が出るものではないため、グリーンボンドの発行等について国がリーダーシップをとっていく必要。

  • ESG市場に3000兆円が向けられる中、米国や欧州、中国が温暖化対策に取り組むようになっており、どう日本に資金を呼び込むかが重要。

  • ESG金融について、リスクコントロールだけでなく、リスクシェアの観点が重要。現状では、気候災害の被害は国が負担しているが、保険制度等により市場とリスクシェアを行うという観点も重要。

  • ESG投資は、民間企業の関心は高いが、企業と投資家の間でギャップを感じている。民間企業のどういった活動がマーケットから評価されるのかを明らかにすれば、民間企業側のやる気も上がる。

  • 家計に対し、グリーン投資・ESG投資に対する税制優遇を行う等、インセンティブを付与する必要。

  • 電力の自由化を更に進めるとともに、2兆円基金について、コストを見ながら、再エネ、水素発電等に集中的に投資をする必要。

  • 基金の真の目的は民間の資金を呼び込むことではなく、炭素を削減すること。注意深くKPIを見て判断していくべき。その際、省庁ごとにKPIを見るだけでなく、全体のKPIを見る必要。

  • 2兆円の基金は大盤振る舞いが過ぎるのではないか。財源は赤字国債であり、異常な状態。

  • 2兆円基金について、戦略的な予算配分や技術をモニターするメカニズムを構築しなければ、無駄なお金を使うことになってしまう。また、技術開発だけではなく社会実装につなげることが重要。

  • 官民の役割分担と連携が重要で、政府がリスクマネーを供給し、民間企業が将来に向けた投資を行うべき。

  • 国内の産業の空洞化や中小企業への負担に配慮しつつ、S+3Eのバランスをどのように取るかが重要。

  • 貯蓄超過状態の民間セクターの資金をいかに動かすかがポイント。規制緩和、ESG投資、カーボンプライシング等、企業が脱炭素に向かうことを促す仕組み作りが必要。

  • カーボンニュートラルに向けた各企業のロードマップの策定や情報開示を促すという取組も重要。

  • 「見える化」・アカウンタビリティが重要であるが、画期的な技術開発にはリスクが伴うことから、成果の芽をつまないように注意する必要。

  • 民間資金の投資対象は、社会実装段階とトランジションが中心で、アーリーステージの研究開発の資金を民間で賄うのは難しく、国が取り組む必要。イノベーションを担うスタートアップやベンチャー企業にも資金が配分されるような配慮もすべき。

  • 取り残される伝統的業界が出てくるため、職業訓練やリカレント等も必要。グリーンだから例外ではなく、ワイズスペンディングを促すことが必要。

  • 気候変動対策については、声掛けだけではなく国民の理解が重要であり、ビジネスとして成立させる必要。補助金漬けにしてはいけない。生活者も参加した環境対策が必要。

  • 国民全体で取り組む必要があるという観点から申し上げると、1月に調査したところ、ESG投資を60%の人が知らないという結果が出た。取り組むべきは、周知にくわえて、積極的に取り組んでもらうようなパーセプションを作り上げること。

  • 諸外国でCO2削減に成功している国は、産業の新陳代謝・流動性の促進を行っており、我が国でもこうした取組が必要。

  • CO2削減コストによる優先順位付けは重要だが、優先順位付けの意識が各省に定着していない。

  • エネルギー対策特別会計の事業は、予算を使い切ろうとして、設計が甘い傾向にあるため、特にチェックが必要。

  • 移行期に必要な技術については、対応を間違えると、最終ゴールへの時間が伸びてしまう、移行のプレッシャーが弱くなる可能性があるため、民間金融の活用を中心とする等、位置づけを見極め、効果を見ながら進めることが重要。

  • 失業なき労働移動は、グリーンエコノミーの成否を握る鍵。グリーン施策が雇用や地域経済に与える影響の分析に早期に着手すべき。

【社会資本整備】

<委員からの御意見>

  • 国土強靭化の対策に当たっては、ソフト・ハードが一体となった対策、生産性向上等の取組を通じ、成果を出しつつも、15兆円目途の支出をできる限り圧縮できるようにすべき。

  • 国土強靭化において、グリーン化、デジタル化との連携を強く意識することが重要。

  • 5か年で取り組む必要があるのであれば、当初の他の予算を削ってでも行ってもよいのではないか。

  • 災害に対する予防保全を今後は積極的に進めるべき。

  • 流域治水の問題では、国土交通省が司令塔の役割を果たしたのであれば、省庁の垣根を超えて事業をなすモデル事例になり得る。ただ、各省連携のモデルとなるよう、本当に省庁間に事業の重複がないか、また効果を上げているかについてチェックする必要。さらに、効果をどう図るかの手法を確立すべき。

  • 災害リスクの高い地域に住まない、都市機能を置かないことを徹底する上では、新規の立地のみならず、災害リスクの高い地域から安全な地域への転居を促していく措置が必要。

  • 民間保険会社が災害保険の契約期間を短期化させているほど、災害頻度が高まってきている。災害リスクの高い地域に住むことは、本人、自治体及び国にとってもリスクであり、税や補助金を活用して前向きな政策誘導を行っていくべき。また、インフラの原形復帰も不要というやり方に変える必要。

  • 復興計画は、市町村が中心となって立てているところに問題があり、より広域の都道府県が全体を調整し、地域全体のバランスを考えて計画を作れるような仕組みを平時から導入する必要。災害が起こってからではなく、事前に復興デザインを考えておくことはできないか。

  • 建設国債は、赤字国債と違って箱が残るからといって良いのではなく、B/C(費用便益分析)の精緻なマニュアルに従い検討すべき。第三者的な見地で検証する仕組みが必要。

  • 費用・便益を客観的に評価することによって、必要のない事業をなし崩し的に継続しない仕組みが必要。受益以上の負担は将来に残さないという建設国債の原則とワンセットで考えるべき。

  • 従来のB/Cの確認は重要であるが、税収が限られている中では、Bに見合うだけの税収の確保といった観点から、費用対税収比(T/C)の概念が重要ではないか。

  • i-Constructionについて、ICTやDXにより何でも解決できるというわけではなく、実際には施工費が下がっていないことへの原因分析と今後のコスト削減の見込みの再設定が必要。

  • 人口減少が進む中で、コンパクト化や居住に適さない地域の明確化は必要。あらゆる対応が想定されるが、固定資産税の在り方については、検討価値があるのではないか。原則的に固定資産税は市町村税であるものの、政策誘導について、都道府県における広域の視点から検討することはできないか。

  • コンパクトシティの足枷になるような施策が実行されないようにすべき。

  • 都市計画区域外を含む土地利用誘導について、都市計画区域のみならず、県全域を対象とした都市計画を行う視点は重要。

  • 電気水道などのネットワークインフラについて、集約・修正が重要になるが、ネットワークインフラは、コミュニティの在り方によって決まるものであるため、まずは人のネットワークをどうコンパクトにしていくかということが課題となる。

【農林水産】

<委員からの御意見>

  • 担い手をどのように増やしていくかという視点も重要。最近、農業法人への就職等の流れが出てきている。

  • 農業経営のガバナンスの問題もあり、株式会社の参入や経営の大規模化を阻害していると思われる「経営形態への規制」の見直しが必要。

  • 農地バンクが活用されない背景には、データや情報が集約されていない問題がある。

  • データを集約して分析をした上で、必要に応じて小規模農家に対して農業界から退出を促せるようなディスインセンティブを仕組めないか。

  • 今回の議論のように、農産物の輸出と主食用米を組み合わせて取り上げたことは、農業の新たな姿を国民に示すことができるという面で重要。

  • 少子化で減少していく国内の需要だけでは不十分であるため、輸出を促進していくことに賛成。

  • コメの輸出の伸びしろは非常に大きいと考えており、マーケット・インの発想で戦略的に輸出戦略を立てることが重要。

  • 日本はブランドが多すぎるため、ブランドの統一化を進めるべきではないか。

  • 農業の持続的な発展を考えると、交付金の対象面積当たりの支払い単価を見直すべき。

  • 輸出拡大について、グローバル人材や農産物を売れるメンバーを育てる、といったことにも焦点を当てるべき。