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〔土居部会長代理〕皆様、こんにちは。本日、財政制度等審議会財政制度分科会歳出改革部会が開催されました。引き続き部会長代理を仰せつかることになりました、土居丈朗でございます。改めまして、皆様どうぞよろしくお願い申し上げます。

それでは、本日の議事内容につきまして、御紹介をさせていただきます。まずは事務方から、財政各論:成長につきまして説明がありまして、その説明の後、委員からの発言がありました。主な発言内容について御紹介をさせていただきたいと思います。

まず、全体を通じた御発言です。ワイズスペンディングについては、適当な規制改革と掛け算することによって奏功する。生産性が上がる新技術の導入、規制改革、各事業者がベストプラクティスに近づく取組などを通じて賃金上昇を実現していくことが重要であるという御発言をいただきました。それから、成長の主役は民間であり、政府は側面支援をする。過度な期待を民間に与えてはいけない。拡張すべきはセーフティーネットであり、人への投資、企業への支援から個人へシフトさせていくこと、雇用を通じたセーフティーネットから勤労者を通じたセーフティーネットへとつなげていくべきであるという御発言です。

続きまして、人への投資に関する御発言を御紹介いたします。リスキリングを評価し、雇用の向上につなげていく環境整備が必要である。具体的には、リスキリングを通じて得られた個人の能力を示すことができる仕組みと、採用側がどのような能力を必要としているかを明確にする仕組みが必要である。リスキリングが単なるお勉強で終わりましたということにならないようにする必要があるという御発言をいただきました。それから、非正規雇用は根深い課題である。企業の合理的な行動でかつてはあったかもしれないが、それが社会的には大きな問題となり、低成長の原因となってしまっている。同一労働同一賃金や正規・非正規の格差の固定化の解消にこそ政府が財政支援をしていくべきであるという御発言をいただきました。

それから、企業経由から個人への直接支援への移行は労働力の流動化の観点から重要であるが、2点の留意が必要である。まずは、メンバーシップ型の雇用システムを維持している企業が依然多く、労働者がどういったスキルが必要なのか自律的に考える機会が少ないのが現状である。職務限定型、ジョブ型の雇用システムに移行していく必要がある。2点目が人への投資への評価である。雇用調整助成金に限らず、長らく実施されている教育訓練給付についても、その内容について適切な評価が必要であるという御意見をいただきました。

デジタルトランスフォーメーション、DXについての御意見が次のようにありました。DXの本丸はデータの利活用である。省庁横断的なデータの連携、国・地方横断的なデータの連携が必須であるという御意見です。それから、DXは劇的な行政コストの削減を実現する。時間軸や目標をセットして取り組む必要がある。特に地方自治体が対象となるケースが多いので、目標設定が重要であるという御意見をいただきました。

それから、GX、グリーントランスフォーメーションですが、次のような御意見をいただきました。市場はGX経済移行債がいつ出るかを待っている状況であり、排出量取引や炭素に対する賦課金といった償還財源も詳細はこれからとなっている。具体的数字が求められているという御意見をいただきました。それから、規制・支援一体型促進策の考え方には賛同する。財政支出を抑えるには、市場メカニズムの導入が最も有効である。GX経済移行債がトランジションウォッシングと言われないよう、20兆円の使途の明確化、効果測定、開示をしっかりやっていく必要があるという御意見をいただきました。

続きまして、科学技術・イノベーションに関しての御意見です。例えば大学の研究体制の課題がスタートアップの低迷につながり、DXの遅さ、遅れといったようなことになってはいないか。産学官の人材流動化の低さや人材育成エコシステムといった点について相互連関の分析をしてはどうかという御意見をいただきました。それから、日本の大学による評価が弱い。今必要なことができているのか、横展開ができるのか、検証をして成長につながるものを一刻も早くつくる必要があるという御意見をいただきました。

それから、スタートアップについての御意見をいただきました。成長・イノベーションを牽引するのは新しい企業であり、企業の新陳代謝が重要である。既存企業に対する手厚い支援、財政資金の投入は、かえって新陳代謝を阻害するおそれがある。また、新陳代謝を促すためには、再チャレンジできる環境、セーフティーネット整備が必要であるという御意見をいただきました。それから、スタートアップ促進には、人口政策や社会的慣行などの構造的な見直しが必要であり、補助金や金融政策だけではなかなか変わらないのではないか。また、補助金には政府の失敗のおそれもあることに留意する必要があるという御意見をいただきました。

私からは以上となります。それでは、御質問があれば、お答えさせていただきたいと思います。

〔幹事〕では、質問があれば、よろしくお願いします。

〔質問〕人への投資の中で、今回財務省資料の中では、雇用保険について、週の所定時間が20時間未満の人ヘも適用拡大すべきではないかという文言があったと思うのですが、これについての委員の意見があったかどうか、もしあったらどういう話があったのか、あとは、この点について部会長代理としてどのように考えているかなどお伺いできたらと思います。

〔土居部会長代理〕雇用保険の適用拡大については、賛成する、積極的に支持する方が多くいらっしゃいました。少なくとも適用拡大に反対であるということをおっしゃった方はいらっしゃらないということです。賛否は全員には問うていませんので分かりませんが、少なくとも賛成する御意見が多数の方から寄せられたということです。

特にその御意見の中でも、フリーランスとか、非正規といってもこれまでではなかなか雇用保険の適用対象にならない働き方をされている方がおられるというところは、もっとしっかり政府としても視野をそこまで広げていくべきではないかというような御意見もいくつかの委員からはございました。私も基本的にはその意見に賛同している立場でございます。

〔質問〕保険料の負担の在り方のところは、委員から意見はありましたか。

〔土居部会長代理〕今回はさすがにそこまでの詳細設計にまつわるようなお話は出ておりません。本当は雇用的自営でありながら、働くという機会という意味での雇用といいましょうか、働く機会に対しての不安定さがあるということでありながら雇用保険の適用対象になってないという方に対しては、しっかりセーフティーネットを構築していくべきであるということまでぐらいが今日の御意見だったかなと思います。

〔質問〕雇用調整助成金についての委員の意見はどのようなものがあったのかということと、また、土居先生から見て、雇用調整助成金の課題というのはコロナ禍であったとは思うのですが、どういった課題を認識されていて、またその見直しについてどのようにお考えなのかというのも教えてください。

〔土居部会長代理〕雇用調整助成金についての御意見は、労働保険特別会計の運営とかそうしたところにまつわる御意見はありませんでした。むしろ先ほども少し御紹介しましたが、どちらかというと、コロナ禍での雇用調整助成金の助成に対しての反省といいましょうか、振り返ってみてというようなニュアンスでの御意見として、企業に対して支援をするという形になっていて、雇用の流動化を妨げた面があって、むしろこれからは企業への支援というよりは、個人、就業者に対する支援という方向にかじを切っていく、シフトさせていくべきなのではないかという御意見が複数の委員から、そうした意味では雇用調整助成金ばかりではないかもしれませんが、雇用調整助成金も含めてそうした御意見があったというところです。

私もそうした意味では、雇用調整助成金に限らずですが、働き方、リスキリング、こうしたことに対して、もっと働く方々が生き生きと働けるようにするということであれば、企業に対する支援ということばかりに注力しているというよりは、もう少し個人を対象とした形でどういう形で支援ができるのかということは、いろいろもっと検討を深めていくべき課題なのではないかと思っております。

〔幹事〕今のところに関連なのですが、個人のほうにシフトという話もあったと思うのですが、そもそも今の雇用調整助成金の中で、休業向けと教育訓練向けがあるかと思うのですが、そのバランスを変えていくか、企業に渡すのだが、教育訓練のほうにシフトしていくようにすべきであると、そうしたような趣旨の意見交換はあったのでしょうか。

〔土居部会長代理〕その点については、必ずしもそれぞれの委員の方がその視点で強く意識されて強く御意見をおっしゃったという感じではなくて、どちらかというと、その辺りは二つは両者含んでというような形での意見表明が多かったかなと思います。

〔幹事〕ほか御質問ありますでしょうか。

〔質問〕雇用者のセーフティーネットの拡大のところなのですが、今、雇用保険が適用されていない週20時間未満の労働者の方々の実像といいますか、どういう方々を頭に思い浮かべながら皆様議論されていたのかなと。いわゆるフリーランスの方とか、あるいはいわゆる短時間労働者というとパートとかアルバイトとかそうした方々も含めてというような、そうしたようなイメージを持たれていらっしゃるのでしょうか。

〔土居部会長代理〕それは委員の方々がどこまで具体的にイメージを持たれているかというところは私としても少し心もとないところがあるのですが、もう既に公になっているところで申しますならば、私は全世代型社会保障構築会議の構成員でもありまして、そこでもこの点については議題になっております。私がそのときにイメージしていたものということでお答えに代えさせていただくと、複数の箇所で計20時間以上働いていらっしゃるのだが、あくまでも社会保険料は主たる勤務地でもって加入するということになっていて、勤務時間を合計することがそもそもあるはずなのだが、慣行としては、任意というか御本人に委ねられていると。例えばほかの事業所でもっと働いているかもしれないが、その勤務時間の分の記録を主たる事業所で報告していないというようなことが、ないという前提なのだが、あるかもしれない。そこについては、深くは突き合わせて名寄せをしていないというのが現状なものですから、そういたしますと、そうしたフリーランスというか、複数の事業所で合計すると20時間を超えているかもしれないが、一つ一つであるとそうでない方々はままいらっしゃる。もちろん保険料をどうするかとかという大問題はそれはそれとしてあり、その点については、先ほどもお答えしたように今日の歳出改革部会では全く議論はしておりませんが、そうしたものをきちんと記録を取ることで、そうした方々が一つ代表的な適用拡大対象者になるのではないかなと思います。

〔質問〕先ほどの学び直し、リスクリング、働き方のところでの御発言で、個人を対象にしていくような形にするための理由として、働く方々が生き生きとして働くためにという御説明があったと思うのですが、それに加えて、この資料とか政府のお話を聞いていると、成長分野に人が流れないこととか、成長分野に必要となる知識を、その企業でばかり働いてたら学び直しの機会がないとか、それがひいては賃上げにつながっていく、もしくはより良い待遇のところを選んでいくということにつながっていくという説明がある一方、日本は基本的にセーフティーネットを企業にも担ってもらって、安心して同じところで働けるということがメリットだったりとか、もしくは労働者間の競争を防ぐという狙いとかももともとあると思うのですが、こうした考え方については全体としてどういうふうに、日本社会のこととか含めて考えていらっしゃるかということをお聞きしてもいいですか。

〔土居部会長代理〕この点については、必ずしも委員が共通してかくあるべしと認識していたわけではないというような印象が私はありました。つまり、積極的にもっと個人単位にするべきであるというお考えの方もいらっしゃる一方で、実態としてはやはりメンバーシップ型雇用が残っているというようなことだから、そもそもそうした形で働いていらっしゃる方の働き方というのは、能力というのは個々人に能力形成も含めて任されていて、それは企業が雇うか雇わないかは是々非々で決めるような感じでは全然なくて、企業ぐるみでその人のキャリアパスまでも考えながら人材育成もしているというようなことであるとすると、ひょっとすると従業員の方には必ずしも自分がどういう能力があって、どういう能力が求められているのかということは強く意識しなくても、その会社の中で重要な役割が与えられて働けているということだが、いずれ社会のニーズが変わってきたり、ないしは個人のニーズとして別の働き方をしたいと思ったときに、自分がどういう能力を持っているのだろうかということについては、必ずしもこれとあれとそれですといって明確に言えないような状態で働いているという方に対して、では、リスキリングは何が必要なのですかということになるとなかなか判然としないというようなこともありますし、無理に労働移動を強いるというようなことになると働いている人たちに雇用の不安を与えるという、そうした御意見もありました。

そうした意味では、そこについては必ずしも企業ばかりというのではなくて、個人を対象にしてリスクリングとかを支えるべきであるというところについての御意見に対して強い反対はなかったが、かといって、もう全部、企業任せはやめて個人にしましょうというふうな御意見だったかと言われると、今回の部会全体の雰囲気を私なりにまとめると、それはそれぞれに両方意見があったというようなところかなと思います。

〔質問〕土居先生御自身はどちらの考えなのでしょうか。

〔土居部会長代理〕そうですね、経済学の理論に基づけば、企業という単位よりは、企業はベールであると称されていますので、ステークホルダーの契約の束のようなそうしたようなことを言われたりしますので、どちらかというと私が理論として支持している経済学は個人主義的なものですから、企業というよりは個人を対象として財政支援するということなのだろうと思います。しかし、実際、世の中がどうなのかと言われたら、やはり日本社会は特に欧米よりも個人主義的ではない要素を多分に持っている社会・経済であると思いますから、そこの折り合いをどうつかせていくかということが重要になってくるのだろうなとは思います。

〔幹事〕ほかよろしいでしょうか。

では、以上で終わります。ありがとうございました。

〔土居部会長代理〕どうもありがとうございました。