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〔土居部会長代理〕それでは、記者会見を始めさせていただきます。

私は、財政制度等審議会財政制度分科会の歳出改革部会で部会長代理をさせていただいております、慶應義塾大学の土居でございます。よろしくお願いいたします。

本日9時30分より財政制度等審議会財政制度分科会の歳出改革部会を開催いたしました。

本日はまず、社会資本整備、農林水産についての事務方からの説明がありました。事務方からの説明については、まず社会資本整備については、公共事業の量的水準、防災・減災、国土強靱化の進捗、公共事業の一層の効率化、地域公共交通についての説明がありました。それから、農林水産につきましては、食料安全保障上のリスクと対応の方向性、それから、水田の畑地化、飼料用米から高収益作物などへの転換の必要性を中心に説明をいただきました。

各委員から主な質疑や意見につきましては、通例どおり、委員の個人名を伏せまして御紹介をさせていただきます。なお、議論の詳細につきましては、後日公表される議事録を参照していただきたいと思います。

それでは、順に御紹介させていただきますが、委員の方々からは社会資本整備と農林水産の両方にまたがって意見などを述べていただくということにいたしましたものですから、御紹介は社会資本整備と農林水産両方が混在した形で、ただし、どちらの議論についての意見かということは分かるようにしてお話をさせていただきたいと思います。

まず社会資本整備につきまして、公共投資にも経済的な効果が期待されており、全体としてアウトカム目標をもっと取り組むべきであるという御意見をいただきました。それから、農林水産につきましては、有事における食料の確保は重要であるが、国際貿易はより重要である。国際貿易のメリットを認識した上で有事に備えるべきであるという御意見をいただきました。

それから、次の委員の方からは、まず社会資本整備につきまして、道路など新たに整備していくというモメンタムはやめて、老朽化対策にシフトするべきである。それから、コンクリートで防ぎ切ることはできないので、早く逃がすということを優先すべきである。これは災害時のことを想定しての御意見ということです。それから、那覇空港の例で示されているが、防衛上のニーズを踏まえて民生ニーズと調整しつつ整備するものについては、防衛費として考えられるべきであるというふうな御意見をいただきました。

それから、次の委員の方からは、社会資本整備ですが、スマートシティ、コンパクトシティといったことを含め、人口減少を見据えて未来志向でインフラ整備を考えてほしい。それから、農業問題については、抜本的に変えようとすると、法人や企業の参入など思い切ってかじを取れるようにしておくべきであるという御意見をいただきました。

それから、次の委員の方からは、社会資本整備につきまして、安全な場所へのコンパクト化を進め、2050年の姿を見据えて、今から補助金の対象を立地適正化計画における居住誘導区域内に限定していくなどの施策を打っていく必要があるという御意見。それから、安全保障体制の強化について、インフラは防衛用、民生用で共有できるものは、関係省庁が縦割りではなく連携して対応していくことが重要である。自衛隊や海上保安庁が使用することも念頭に置いた権限のルール整備など、既存のインフラの活用の検討が必要であるという御意見をいただきました。

それから、次の委員の方で、社会資本整備につきましては、技術も発展してきている、ないしは蓄積もあるので、社会資本整備の効果が可視化できるようにするべきであるという御意見をいただきました。そして、農林水産につきましては、現実問題として食料を国内だけで賄うというのはやや現実的ではないのではないか。国際的な友好国とのネットワークを構築していくことが重要であるという御意見をいただきました。

それからまた、別の委員からは、社会資本整備につきまして、これからは将来のメンテナンスが重要になる。どう修繕、維持、廃止していくかという議論や検討が一層深まることを期待したい。それから、農林水産については、食料安全保障については、世界的なネットワークによる役割分担が重要だが、利用できる農業用の土地の活用も勘案しながら総合的に検討してほしいという御意見でありました。

それから、次の委員の方からは、社会資本整備につきまして、公共交通について広域的に計画を検討していく必要がある。立地適正化計画との関係も重要で、また、計画の策定状況をフォローしていくべきであるという御意見。それから、今度は農林水産についてですが、食料安全保障に当たっては、戦略的に作付転換を促し、生産性を向上させて、もうかる農業をつくっていく方向性を示し続けることが重要であるという御意見。くわえて、国内資源を活用して肥料を作るという取組も重要であるという御意見をいただきました。

それから、また別の委員の方からは、社会資本整備につきまして、公共交通について、更なる人口減少と高齢化に直面する中で、居住と生活サービス施設などとの距離を短縮することも考える必要があるということ、それから、地域交通単独の問題として捉えるのではなく、ネットワーク、居住地域のコンパクト化の問題として考える必要があるという御意見をいただきました。それから、農林水産ですが、主食用米の生産抑制のために作付の転換が進み、米の作付面積は減った一方で、飼料用米の生産が急増しているということを御指摘されました。そして、食料安全保障の強化という新しい環境への適応を進めるために、水田から畑地への転換を進め、長期的な農業基盤の拡大につなげるべき、まずは水田活用の直接支払交付金措置を縮小するべきであるという御意見をいただきました。

それからまた、次の委員の方からは、社会資本整備につきまして、地震・津波災害を見据えたソフト対策の強化が重要であり、土地利用の規制的手法によって考えるべき。国土強靱化政策にアウトカム指標を設定するべきであるという御意見。そして、公共投資については、規模ありきの議論は避けるべきであるということです。そして、農林水産につきましては、農林水産物、食品の輸出について、売上げ目標だけではなく、付加価値や農業所得の増加を目標にしていかなければならない。そして、大規模化によるコスト削減と農業所得の増加に向けて、農地の集約化が重要である。どこまで農地を守る必要があるか、利用の在り方を考える必要があるという御意見をいただきました。

それから、次の委員の方からは、社会資本整備の関連で、地域交通機関について、究極的にはまちづくりが重要である。立地適正化や地域公共交通計画をしっかりやれば、都市のコンパクト化も図れ、結局のところ、地域公共交通との共存ができるというエビデンスもあるという御意見をいただきました。

それから、次の委員の方からは、社会資本整備に関連して、防災・減災についてこれだけ成果が出ているのであれば、令和7年までの加速化計画及びそこに書かれている事業規模についても、それを踏まえて柔軟に見直すべきではないかという御意見をいただきました。そして、鉄道につきまして、各種交通機関がバラバラに検討するのではなく、縦割りを排して検討していくべきであるという御意見をいただきました。そして、農林水産に関連して、食料安全保障は必要なことだと思うが、農業政策の転換というこれまでの方向性に逆行しない形で考えるべきであるという御意見。そして、食料安保の名の下に食料自給率の強化が殊更強調される議論は果たして妥当なのか。付加価値の高い農業を後押しすれば、農家の強化を通じて食料安全保障につながるという御意見をいただきました。

それから、次の委員の方からは、社会資本整備に関連しまして、港湾や空港など、民生用と防衛用を完全に分けていては極めて非効率である。民生用の港湾や空港等については、プラスアルファの整備をすれば、防衛や国民保護の目的でより有効に活用でき、大幅に効率化できるので、省庁間の縦割りを排して、防衛、国土交通の関係部局で連携してニーズをマッチさせるべきである。必要なときには防衛や国民保護の目的で既存のインフラをすぐに使えるように、権限調整を有事に備えて事前に整理しておくべきではないかという御意見をいただきました。それから、農林水産に関連して、畑地化は極めて適切な施策であると思う。畑地化をしっかりと推進していただき、農業の産業としての競争力強化と食料安全保障とをバランスよく両立する解の一つが輸出であると思う。輸出を是非促進していただきたいという御意見をいただきました。

それから、次の委員の方からは、社会資本整備に関連して、気候変動や少子高齢化といった様々な制約が増える上に財政上の制約も増えているので、量から質、ハードからソフトへの転換が重要であるという御意見をいただきました。そして、農林水産に関連しましては、食料安全保障について、備蓄も含めいろいろなシナリオに基づいた効率化、実効性のある対応が必要であるという御意見をいただきました。

それから、次の委員の方からは、農林水産に関連して、主食用米が減ったのを補うかのように飼料用米が増えている。米から野菜などの収益が高いものに移っていけばよい。これは非常に重要な問題であるというふうに御指摘をいただきました。

それから、次の委員の方からは、社会資本整備に関連しまして、国土強靱化で災害への対応力がここまで向上しているということは国民も知らないのではないか。対外的な情報発信を強化するべきであるという御意見。そして、地域公共交通に関して、国土交通政策を総動員して取り組むべきであるという御意見をいただきました。

それから、次の委員の方からは、社会資本整備に関連して、建設業の生産性の向上について、何をどのレベルまで目指すのかということをはっきりさせる必要があるのではないかという御意見をいただきました。それに加えて、社会資本整備のスタートアップの環境をつくっていくことが有効ではないかという御意見をいただきました。農林水産に関連しては、輸出を促進する取組は、収益が更に上がるように、ビジネス支援をしたり、販売促進を進めてほしいという御意見をいただきました。

それから、次の委員の方からは、社会資本整備に関連して、防衛と社会資本整備をうまく連携させることで相当効率化できるのではないか。それから、地域交通の在り方については、それぞれの地域にとって、出費を抑えながら、住民にとって一番良いのは何かということを地域主体で住民も含めて考える必要があるという御意見をいただきました。そして、農林水産に関連して、水田から畑作に転換して、需要の多いものにシフトする必要がある。小麦やトウモロコシを畑地の本作で作ったほうが生産性が高くなるというのもとても大切であるということです。そして、若者や企業の参入は課題だが、この今のペースでは遅い。新しい未来を見据えた、地域を引っ張る人への政策を中心としてほしいという御意見をいただきました。

それから、次の委員の方からは、社会資本整備に関連して、自動運転技術の活用による公共交通の確保についても、国として地方自治体の取組を積極的に推進するとともに、安全性や利便性を確保することが必要であるという御意見をいただきました。

次の委員の方からは、社会資本整備につきまして、地域の公共交通機関について、需要側に支援することによって、地域への補助金などで見ると税の負担が小さくて済むということも考えられるのではないかという御意見をいただきました。

それから、別の委員の方からは、社会資本整備に関連して、これまでの国土強靱化で一定の成果が上がったのは、民間の創意や地域住民の知恵、あるいは有識者の知見といったものが結集した結果になったのであろうという御意見。そして、ハードでは限界があるので、ソフトが重要である。情報による防災というのは相当進んできた。デジタルによる防災はこれからの中心となると思うので、DX自体のレジリエンスも一緒に取り組んでいただきたいという御意見。そして、地域交通については、地方自治体が中心だが、現実的には地方任せでは限界があるので、場合によってはもっと国が前面に出て、実効性のある支援をすることも必要ではないかという御意見をいただきました。そして、農林水産に関連して、食料安全保障だけではなく、産業化や企業化を進めることが必要である。農業をやりたい志のある人が入っていくための可能性もつくってあげることが重要なのではないかという御意見をいただきました。

それからまた、次の委員の方からは、社会資本整備に関連して、高速ネットワークについて、地方の整備も必要だが、いかに観光資源として使うか。収益源の確保手段、自動化や無人化などを進めていかなければいけないという御意見をいただきました。それから、同じく社会資本整備の続きですが、補修ビジネスを産業として見ていくと、世界の老朽化したインフラに対して日本のノウハウを提供していくべきであるという御意見をいただきました。それから、農林水産に関連して、友好国、民主主義国、市場主義の国からの調達が輸入についてはほとんどであり、経済合理性に基づいて考えるべきである。産業維持という観点も必要であり、稼ぐ農業に転換するべきであるということと、それから、今日は直接、漁業については事務方からの説明はありませんでしたが、委員の御意見として、漁業について、温暖化を含め漁獲高減少への危機感がある。養殖については、養殖業の自由化という点も漁業資源の確保のためには重要ではないかという御意見をいただきました。

そして、最後の委員になるわけですが、社会資本整備につきましては、立地適正化計画の策定を進めるとともに、まちづくりのコンパクト化の実効性を向上させる取組が必要であるという御意見。そして、EBPMで強靱化に係る効果測定手法を具体化し、PDCAを回す体制を構築することが必要であるという御意見をいただきました。そして、農林水産に関連しては、国民の間でも食料安全保障について危機感が高まっているが、農業政策の見直しを進める絶好のチャンスである一方で、食料安全保障というだけで経済合理性を無視した情緒的な議論にならないよう、内容に注意するべきである。食料自給率を高めることを目的としたような補助金漬けの政策によって農業の弱体化を招いてきた失敗を繰り返すことがないようにしなければならない。それから、小麦・大豆の生産拡大が重要であることに加え、補助金に頼らない自立した農業を発展させるために、高収益の作物への転換も必要である。日本の農業が目指すべき姿を描いて、自給率向上のためにどの作物の作付をどの程度増やすのか、時間軸を含めたグランドデザインを策定するべきであるという御意見。そして、過剰なインセンティブを与えて飼料用米を作らせてきたことや担い手不足といったことについても、今回の状況を契機にして、規制緩和も含め本格的に見直すべきではないかという御意見をいただきました。

私からの委員の方々の御意見の御紹介はここまでとさせていただきたいと思います。ありがとうございました。

〔幹事〕食料安全保障の分野について、今回財務省の説明の中でも、化学肥料の原料となるものの調達の多様化とか様々な論点が示されたと思いますが、土居先生のお立場でどういったことが今回の食料安全保障を議論する上では重要であると考えていらっしゃるでしょうか。

〔土居部会長代理〕これは財政制度等審議会ということですので、何かと予算に関連づけられるものでの議論ということにはなるわけですが、やはりせっかく農業従事者の方々に国から支出をしているが、なかなか期待したような成果が上がってないということを感じておられる委員が多数いらっしゃったということかと思います。稲作についても、主食用米から別の作物への転換を期待していろいろ交付金とかを出しているが、実態としてはなかなかそこがうまくいってない。しかも一方で、米の需要がどんどん国内で減っているということに対応して転換が自発的に進めばよいが、補助金を出してもまだ不十分にしか進んでない。こうしたことになっているので、やはり補助金の出し方をもっと工夫するべきであるという御意見が委員の方からは多数寄せられていて、そこを今回農林水産省で基本法の改正をお考えになっているということですから、こうしたまれな機会、5年に1回とか何年に1回かしかないような機会ですから、予算の在り方も大きく見直してはどうかという、こうしたことが期待を込めて意見として述べられたと受け止めております。

〔幹事〕各社、質問お願いします。

〔質問〕メインのテーマではないのですが、社会資本の参考資料の中で、一番最後に旅行・観光のことが加えられているところがあります。これを見ると、旅行者数が、国内に関していえば、コロナ以前の水準まで回復してきている中、先般、全国旅行支援が始まって、足もとでは便乗値上げなのではないかとかという声も高まっている中、こうしたコロナ禍の支援での補助金というのは経営支援と需要喚起という二つの側面がある中、需要が結構回復してきているということは、経営支援の側面が結構強いのではないのかなと。この補助金の在り方について思うところがあれば、御意見伺えますでしょうか。

〔土居部会長代理〕これは財政制度等審議会全体での私どもが関わらせていただいている中でのほかの委員の方々の御意見というか雰囲気ですね。そう思いますと、この観光支援だけでなくて、コロナの対策というのは、やはりコロナの収束と合わせてだんだん店じまいしていく方向にしていくということにしないと、やはりいつまでも平時に戻れないということになるということであると思います。昨年も建議で書かせていただいたわけですが、やはり平時に戻るならば、予算規模も予算の出し方も平時に戻らないといけないということであると思いますから、一時的な支援ということは必要なところには必要ですが、この観光についても平時に戻るというような環境になれば、当然コロナ前には行っていなかったようなことについては店じまいをするということが基本なのではないかということかと思います。

〔質問〕最初のほうの委員の御説明の中で、那覇空港とかの事例でインフラ整備を防衛費に含めるべきであるという意見があったということなのですが、その趣旨としては、そうしたインフラ整備を恐らく防衛費の中でやれというよりは、今NATO基準とかで公表しているのですが、そうしたところに含めて考えるべきであるという趣旨ですか。

〔土居部会長代理〕基本的にはそうです。結局、何ゆえの2%なのかということで申しますと、基本的にはNATO基準でNATOの定義に従って防衛費を計算したときにGDP比で2%になるという、そうしたことをおっしゃりたいことなのだろうと思いますから、当然ながら、NATO基準でいえば、そうした施設に関してのものについてはきちんと防衛費としてカウントするということが当然として考えられる。もちろん額を増やすかどうかということはまた別次元の問題ではありますが、防衛用と民生用と両方で使っている施設などでは、防衛用からお金が出るということで民生のニーズも助かるということがあったりすれば、それはGDP比2%で言っているところのNATO基準のほうの公共事業としてカウントされるということもありつつ、既存ストックを有効活用するということもできるということで、そうした御趣旨でおっしゃったということであると思います。

〔質問〕ありがとうございます。

〔幹事〕食料安全保障について重ねて伺いたいのですが、これまでいわゆる畑地への転換とか大豆の生産などを国として促してきたところもあると思うのですが、これが進まなかった要因といいますか、改めて今回食料安全保障について農林水産省が予算要求している中で、そこのやはり持つべき視点とか、土居先生として大事であると思われる視点を改めて伺ってもよろしいですか。

〔土居部会長代理〕これは私個人の意見が入るところですが、やはり特に稲作の農業従事者は高齢化が進んでいるということであるとか、これは主計官からの説明にもありましたが、ほかの作物に比べると実際農業に従事する時間は少なくて済む作物であるということがあって、やはり本腰を入れてといいますか、主業農家とまでは言わないまでも、相当労力を費やして従事しないと、米以外の作物に転換することは難しいということではありますから、補助金を出してインセンティブ、あめをぶら下げてというか、ニンジンをぶら下げてというか、そうした形で促せるのではないかと期待していたが、結果的には今のところそこまで進んでないということは、何か別の方法で、つまり、ニンジンをぶら下げてというわけじゃない、何か別の方法を考えないと、そろそろ転換も難しくなってきているのではないかとは思います。

これは先ほど御紹介した御意見の中にもありましたが、インセンティブだけではなくてディスインセンティブも考えないといけないのではないかということは、委員の方からの御意見としては出ていたということは先ほど御紹介したとおりでして、場合によっては補助金の出し方も、ディスインセンティブを働かせるような、つまり、今までの耕作を維持し続けると逆に良くないというふうに認識するような補助金の出し方も場合によっては考えないといけないということを委員の方もおっしゃっていたということもありますし、私も賛同できる御意見だなと思って拝聴しておりました。

〔幹事〕質問がないようですので、これで会見を終わります。ありがとうございました。