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〔土居部会長代理〕皆様、お待たせいたしました。本日13時より、財政制度等審議会財政制度分科会歳出改革部会を開催いたしまして、その司会進行させていただきました部会長代理の土居でございます。本日の議論につきまして、御紹介させていただきたいと思います。

本日は、文教・科学技術、中小企業、エネルギー・環境(グリーン)について事務方から説明がありまして、その後、質疑を行いました。質疑が大変活発に行われまして、予定よりも時間を超過してしまいまして、皆様への御説明が遅くなりまして申し訳ございません。

それで、事務方からの説明につきましては、文教・科学技術につきましては、義務教育、高等教育や科学技術におけるそれぞれの課題、それから、中小企業、エネルギー・環境(グリーン)については、新型コロナの影響を受けた中小企業の現状と今後の支援の在り方、それから、2030年度の二酸化炭素排出量削減目標及び2050年のカーボンニュートラルに向けた現状と政策手法の在り方を中心にしたものとなっております。

各委員からの主な質疑や意見につきましては、通常どおり、委員の個人名を伏せまして御紹介をさせていただきます。なお、議事の詳細につきましては、後日公表される議事録を御覧いただきたいと思います。

まず文教・科学技術からですが、委員の方からは次のような御意見がありました。

まず、義務教育における働き方改革、それから、熊本市や戸田市の例が事務方から紹介があったわけですが、これらの例は効果が上がっているのかという御意見。それから、人口が少ない中で、学校の統廃合、民間へのアウトソーシング、ICTの3つを着実に進めていかないと、持続可能性がないという御意見をいただきました。

それから、これは義務教育のことですが、人数を増やして公立小中学校の教員の質を下げてしまうと、親が不安になって、結果的に、塾などの教育費にお金がかかり、少子化が進むのではないか。限られた人数でどうやって効率的にやるかを考えるべきであるという御意見をいただきました。

それから、私立大学につきましては、全体として入学定員割れになった中で、再編なのか、撤退するのか、維持することだけ考えるのではなく、今後の議論をしてほしいという御意見をいただきました。

それから、また別の委員からは、人口が減る中で人材をどの分野でどのように活用したいのかという議論が欠けているのではないかという御意見をいただきました。

それから、教育分野でも効率性の議論をもっと取り入れるべきであるということです。それから、科学技術の研究資金について、入り口では、文部科学省や厚生労働省の科学研究費、それから、大学独自に獲得する資金、大学ファンドによる支援、企業のオープンイノベーションなど様々ある。一方で出口としては、グリーンなど様々な新しい社会課題がある。これは特に研究においてということです。その研究資金の入り口と出口の全体像の中で、大学ファンドはどのような位置づけとなり、何を目指すのかの議論をするべきであるということです。

それから、大学ファンドについて、もう一方。大学ファンドについて、大学改革を促進し、寄附獲得や自己収入などを増やして、それによりJSTの借入れを返済するというイノベーションエコシステムを設計すべきであるという御意見をいただきました。

それから、今度は義務教育に関してですが、子供や保護者の質の変容といった問題、これは過去と比べて現在の子供や保護者の質というものが変わっているという意味ですが、そうした変容といった問題が先生たちの時間を奪っており、その結果、子供への教育の質が全体的に下がってきているという御意見がありました。

高等教育については、大事なのは、教育の効果の把握ができていない、質がきちんと担保されているかという点である。それから、国立大学の運営費交付金については、運営費交付金の配分をオープンに透明化することが重要である。そして、客観的な指標で競争を促すべきであるという御意見をいただきました。

それから、義務教育の教科担任制についてですが、エビデンスを見ながら進めていくべきであるという御意見をいただきました。

それから、国立大学の運営費交付金の配分については、共通指標の順位を全大学や全教員、研究者が見られるようにして、どの大学がどの位置でどのように評価されているかを自分で分析できるようにするべきであるという御意見をいただきました。

それから、学校の働き方改革についてですが、学校の働き方改革については、横展開が重要である。熊本市や戸田市の事例は良い事例で、質を高めるために連携した情報共有は重要であるということです。

それから、また別の委員からは、科学技術投資の効果については、特に国際性が低いこと、若手研究者の活用ができていないというところが問題である。国際性の向上、若手の活用を併せて推進する仕組みの検討が必要ではないかという御意見をいただきました。

それから、これは義務教育における外部人材については、量的問題だけでなく、質の向上のため、企業の人材を含めた活用を考えるべきではないかという御意見をいただきました。

それから、ICT化ですが、1人1台の端末を配布したことは評価したいが、いかに活用するかが重要であるという御意見をいただきました。

それから、高等教育と科学技術についてですが、産学連携については、企業側の経営層がトップダウンで担っていくべきではないかという御意見をいただきました。

それから、義務教育に関連するところで、教育行政のガバナンスの問題に思える。地方交付税交付金でもらうと教育にお金が届かないという現象は、一般財源であると、お金が自治体内で教育にうまく回せていないということが問題ではないかという御意見をいただきました。

それから、稼ぐ大学という論点ですが、稼ぐ大学をつくるという点については、稼げる部門が稼いだお金を基礎研究に充てるというお金の回し方が重要であるという御意見をいただきました。

それから、これは義務教育の教員に関して、特に働き方改革の議論のところですが、先生が忙しいから授業時間数を減らすという考え方はいかがなものかと思っておられるということです。それから、先生は子供と触れ合うことにやりがいを感じているということを御意見としていただきました。

それから、教育予算全体に関わるところではあると思いますが、低所得者への負担軽減を行うためには、その財源として、高所得者への支援をどう考えるかということなど、メリハリづけをする必要があるのではないかということです。それから、大学への交付金については、パフォーマンスに基づくべきという方向は正しいが、相当性格が異なる大学間で競争が自己目的化することのないよう不断の見直しが必要であるという御意見をいただきました。

それから、義務教育の特別免許に関連するところで、特別免許などがあまり進んでいない状況に鑑みると、免許の交付主体の在り方、外部人材活用の在り方を都道府県に任せるべきなのか、国としてやるべきなのか、実効性重視で検討するべきではないかと御意見をいただきました。

それから、宇宙分野の科学技術につきましては、安全保障の観点もしっかり踏まえつつ、長期的な視点から、集中的投資が必要な部分とそうでない部分にメリハリをつけるべきであるという御意見をいただきました。

それから、これは義務教育の教員数に関してですが、今の形態のままで教員の定員数を増やせば良いというわけでなく、資源を必要なところに集約する仕組みに転換する必要があるという御意見をいただきました。

以上が文教・科学技術に関する御意見ということです。

続きまして、中小企業、エネルギー・環境につきましての御意見ですが、次のような御意見がございました。

中小企業について、今後の資金援助について、果たしてその業態にとどまることが適切かという論点はあり、ガバナンスを利かせてより良い資源配分につなげる必要があるという御意見。それから、労働生産性については、デジタル化を進めるに当たり、資金面の支援のみならず、ハンズオンのきめ細かな支援をしていく必要があるのではないかという御意見をいただきました。

それから、環境・エネルギーのところで、カーボンプライシングについては、痛みを伴うものを先延ばしにしてはいけない。財政資金の投入と併せて、財源の仕組みの検討をしていく必要があるという御意見をいただきました。

それから、環境政策全般にわたる部分での御意見ですが、環境政策では、財政のサステナビリティも問われている。環境のサステナビリティと財政のサステナビリティを両立すべきであるという御意見をいただきました。

それから、中小企業についてですが、中小企業に対する補助金について、補助金の実効性を検証し、補助金のリピーターを生まないようにする必要があるという御意見をいただきました。

それから、グリーンについてですが、グリーン化について、赤字国債を発行して、次世代につけ回すのは持続可能とは言えない。ペイアズユーゴールールをつなぐとともに、戦略的分野に集中すべきであるという御意見をいただきました。

それから、中小企業の過剰債務問題についてですが、債務のリストラクチャリングを早い段階で政策として進めるべきである。金融機関に対する支援政策と中小企業の事業再構築を一体として進めるべきであるという御意見をいただきました。

それから、環境についてですが、カーボンニュートラル実現のため、財源の裏づけを含め、産官学で目標やステップを共有する必要があるという御意見をいただきました。

それから、これは中小企業への支援ということを中心とつつ、それに限らない部分も含んでいる御意見ですが、日本だけだらだら支援していることは成長につながらないという御意見をいただきました。

それから、また別の委員で、中小企業支援について、民間事業者を支援できるような呼び水効果となるような支援の在り方、補助金の仕組みが必要であるという御意見をいただきました。それがワイズスペンディングになるのではないかという御意見です。

それから、同じく中小企業支援についてまた別の委員からの御意見ですが、事後検証を併せて行っていただきたいという御意見をいただきました。

それから、中小企業についてですが、デジタル化の流れを元に戻さず定着させ、さらにデジタル化を進めていけるような支援の在り方を考えるべきであるという御意見をいただきました。

また、別の委員から、中小企業支援について、日本は現状維持のために財政を使い、結果、無駄遣いになっている。グランドデザインの下で検討していくべきであるという御意見をいただきました。

それから、中小企業に関しての御意見で、効果や支援の重複についてきちんと評価をする必要があるという御意見をいただきました。

それから、温暖化対策についてですが、何を国でやって何を民間でやるのか、役割分担が重要であるという御意見をいただきました。

それから、これはグリーンに関連するところでの御意見ですが、バイデン政権は今後の経済政策の法案を財源とセットで議論しており、日本でも中長期的な歳出と財源の姿を見せていく必要があるという御意見をいただきました。

それから、また別の委員からは、グリーンについては、民間ができることは自主的に行うべきであるという御意見をいただきました。

最後に、環境についての御意見ですが、環境も財源のサステナビリティもどちらも重要だが、産業の観点からも考えるべきであるという御意見をいただきました。

以上が各委員からの御発言の御紹介ということでございます。

以上です。

〔幹事〕ありがとうございます。すみません、幹事社から最初に質問させていただいてよろしいですか。文教のところで今御紹介いただきましたところで、大学ファンドについての御意見があったと思うのですが、これについての土居先生自身の受け止めと、またもう1点、今日の中で教科担任制のところの財務省からの指摘もあったと思うのですが、そこについての受け止めも併せて教えてください。

〔土居部会長代理〕大学ファンドにつきましては、これから更なる詳細な制度設計の議論が深まると思われますので、その点について、しっかりと真に大学の支援につながるような仕組みをつくっていただくということが重要なのではないかと思います。特に今回の歳出改革部会は、どちらかというと主計局マターといいましょうか、財政投融資の話は含んでおりませんので、今日はここではあくまでも大学への支援、それから、科学技術の振興という観点での御議論ということに限らせていただきますが、その点から見ますと、基本的に今日いただいた各委員からの御意見も、ちゃんと生きたお金といいましょうか、有効活用をしていただくということを求めている、そうした御意見が多かったと思います。そうした意味では、大学ファンド自体の是非とかそのようなところについて御意見があったということではなく、やはり大学改革もきちんと促せるような枠組みの中で大学ファンドが位置づけられるということを期待する、そのようなところが重要なポイントになってくるのではないかと思います。

それから、教科担任制の話については、基本的に教科担任制の導入自体で定員増は要らないというようなことまで結論を出したわけではありませんが、そもそも年間授業時間数が増えていることに対して、教科担任制の導入を求めるということではないと。特に授業時間数を増やすという話と連動しているわけでなくて、新たな仕組みを導入するに当たり、教科担任制を設けて教員の定員を増やすということをしたいという文部科学省からの予算要求であるということを前提にこの歳出改革部会でも議論をしているということです。

当然ながら日本全体が人手不足であるということですので、教員だけ人が足らないから人を増やしてほしいと言って、それで全体にとって良いかどうかということは、これはもう少し大きな議論をする必要が私はあるのではないかと思うわけです。各委員からも、教員だけが人手が足らないと言っているわけではない。ほかの分野だって人が足らないと言っている中で、人員配置をこれ以上工夫しても人員的に本当に教えられる余地がないと、そうしたことなのかというと、必ずしもそうでもなさそうであると。教員の負担軽減という点でも、学校行事の精選とかデジタル化を更に進めて業務の効率化を進めることによって、教員の負担を軽減して、授業に専念できる余地が時間的にもつくれるのではないかというようなこととか、外部人材の適正配置を考えれば、今の定員でもより充実した高学年への専門科目の教育はできるということになるわけですので、そうしたことをきちんとやるということとセットで、定員をどうするかということを考えていく。そうしたことが必要なのではないかと。総じて今日御参加の委員からの御意見では、そうした御意見が大半だったとは思います。

〔幹事〕ありがとうございます。

それでは、各社さん、お願いします。

〔質問〕衆院選が終わりまして、今後新たな経済対策の策定に進んでいくと思うのですが、委員の先生方からも、ワイズスペンディングの話であるとか、無駄遣いのないようにという様々な分野で御指摘があったと思うのですが、岸田首相は今日の会見でも、経済再生なくして財政再建なしなので、順番が大切なので、まずは赤字国債を使ってでも成長分野に投資していくというお話をされていましたが、土居先生御自身の考えとして、一方でというところはあると思うのですが、今日の財審などでの議論も踏まえてのお考えをお聞かせいただけますでしょうか。

〔土居部会長代理〕結局幾らの経済対策になるかということはこれから具体的な御議論があるかと思いますので、現時点で良いとか悪いとかというものは具体化していないので、何とも論評のしようがないというところは、まず申し上げておく必要があります。

その上で、今日の議論でも大なり小なりそうした各委員からの御意見だったと思いますが、一切借金してはいけないというわけではないが、かといって、過度に負担を後世に残すような形での国債の増発ということはやはりバランスを欠くというところは、今日の御出席の委員の方々も基本的にはそうしたスタンスで議論をなさっておられた。ですから、当然のことながら、将来のためになると言いながら本当に将来のためになるのかということは、よりきちんと議論をしていただきたいと。そうすることで、より良い予算が出来るということに。これは別に今般の経済対策に限った話ではないのですが、特にコロナから回復する、コロナの打撃から経済を回復させていくのであるという、その視座であれば、なおさら、限られた予算をより有効に活用していくということをぜひとも考えていただきたいと思います。

〔質問〕個別の話で恐縮なのですが、中小企業で提案がありました事業再構築補助金のことで、財務省としては、補助金依存とか業種間のミスマッチが起こっているというふうな指摘だったかと思うのですが、この指摘を踏まえて、土居先生の受け止めというか、お考えをお聞かせいただければと思います。

〔土居部会長代理〕コロナ禍の中で早急に事業継続に窮された事業者の方々に支援をしなければいけないということでしたので、これは効果があるのかないのかということを熟慮した上でお金を出すということは、タイムリーに支援するという観点からするとなかなか難しい状況ではあったと思います。ですから、今ようやく感染者数も落ち着いてきているという、こうしたタイミングですから、少しコロナ後も見据えながら冷静に議論できる時期に来ているということですので、いろいろな客観的な指標を活用しながら、どういう出し方だったら本当に有効な支援だったのか、次また出すということになったときには、どういうような出し方が本当のかゆいところに手が届くような支援になるのか、そうしたことを冷静に考えられる時期が今であろうと思います。

今と言っても、そんなにゆっくり、1年か2年かけて考えろと言うほど悠長にはできませんが、来年度の予算編成というこのタイミングで冷静に考えられる時期ですから、そうした時期に、より効果的に中小企業を支援できるようなそうした仕組みにうまく改めるべきところがあれば改めるということが私は必要ではないかと思いますし、今日の部会での御意見も、中小企業の支援をより今後につなげていくことが重要であるという御意見がたくさん出たと私は思っております。

〔質問〕今の共同さんの質問とかなり似ているのですが、御紹介いただいた御意見の中で、事業再構築補助金についてはリピーターを生まないようにする必要があるという御発言があったと聞いています。主計局のレクでは、このリピーターの問題はものづくり補助金にも非常に大きくあったということで、説明では、要は、20人以下の小規模事業者が採択の5割を超えるような年があったりとか、あるいは過去3年間で複数の事業者が採択している例があったりとか、こうしたことの問題点は、これが示すことは何なのか。つまり、企業の競争力の強化とかにつながっているかどうかという、そこら辺の土居先生のお考えを。

〔土居部会長代理〕補助金をもらい慣れしてしまうと、なかなか補助金依存を断ち切れないということは、これは一般論としてあると思います。ですから、願わくば、今は困っているので補助金で助けてもらうが、それをもらった暁にはそこから立ち直るのである、ないしはそこから新たなテイクオフをしていくのであると、こうしたふうにうまく中小企業が事業を継続していけるようになると最も望ましいというわけです。もちろん全て成功するという保証はありませんが、できる限りそうした事業者の方々に補助金を有効活用していただきたい。

そういうわけなので、いつまでも支援をしてほしい、支援をしてほしいと言って、なかなか支援に頼らなくて済むような状況に至らないということになると、補助金の出し方に問題があるのかもしれない。もう少し言えば、中小企業政策の分野ではこの言葉はあまり使いませんが、どちらかというと今日の議論でいえば文教・科学振興で使う言葉遣いですが、アウトカム志向というのですかね。中小企業も補助金をもらった後どういうふうなパフォーマンスの改善が見られるのかも問うような形で、だから、補助金をもらってもその後のパフォーマンスは問われますよというような形で促していくことがあれば、もう少しリピーターとかというふうに、具体的にそのようにおっしゃった委員がおられたのですが、委員からリピーターなんていうふうに言われなくても済む。そうした状況が生まれてくると思いますから、そうした状況をつくり出せるような補助金の出し方も今後検討していただく必要があるのではないかと思います。

〔質問〕ありがとうございます。お聞きしたいことは今すごく言っていただいたのですが、先ほどの発言のリピーターということは、これは何か個別の○○補助金について言われたのか、それとも、中小企業向けの補助金全般と。

〔土居部会長代理〕どちらかというと、ものづくり補助金とかその点に関してです。

〔質問〕その点についてですか。分かりました。ありがとうございます。

〔質問〕少しざっくりした質問で恐縮ですが、私も中小企業向けの補助金の件で伺いたいのですが、コロナ感染者が大分収束に近づいてきて、補助金の在り方も当然見直していくべきタイミングなのかなと思うのですが、たしか去年の財審でも、持続化給付金とか家賃支援給付金は、もうそうしたフェーズではないので改めるべきであるということがあって、延長はしないような提言をされたと思うのですが、土居先生、今現在コロナの状況を踏まえて、中小企業に対する補助金の在り方は、今はどういうふうな段階になって、どうあるべきであると考えていらっしゃるかお伺いできますか。

〔土居部会長代理〕今、御質問を賜りながら、去年の秋の建議の、私も起草委員をさせていただいていましたが、起草したときの情景を思い起こしました。あのときはまだ第2回の緊急事態宣言を発令するということが全く予想できなかった状況。ただ、感染者がじわじわと増え始めているかなと、第3波と言われているようなそんな状況かなというような中で建議を出させていただいた。あの当時の判断としては、まさか第2回の緊急事態宣言が出るとは想定していないということだったわけです。もしそうであれば、当然ながらこのまま大きな感染拡大にならずに済んで、緩やかかもしれないが、だんだんポストコロナへと向かっていくと思っていたので、あのような建議ということです。

もし今回も、この秋も、来年の初旬、来年初め、年頭に第6波ということにならずに済むということが大分見通せそうになってくれば、やはりポストコロナに向けて、だんだん支援からむしろ自律に向けた中小企業経営に転換していただきたいというふうになる、そうした時期ではないかと思います。いかんせん第6波が来ないことを願うのみということなのですが、感染収束がだんだん近づいてくれば、支援をだんだんこうフェードアウトしていって、その後、自律的な経営に転じていただくということが必要な時期になってきているかなと思います。

〔質問〕ありがとうございます。何度もすみません。土居先生、せっかくの機会なので、先ほどの財政の役割のことについて少しお伺いしたいのですが、成長率が金利を上回るような期間が結構続いておりますが、そうした情勢では、プライマリーバランスの赤字と成長率と金利の関係によっては、債務残高対GDP比が、発散していかないといいますか、ある程度の赤字は許容されるという考え方があると思うのです。

そうすると、厳密なプライマリーバランスの黒字を厳密に求めていくということは実はそこまで必要がなくて、むしろある程度の赤字は許容して、財政を出して、経済成長なり、底上げにやっていくことに意味があるのではないかという議論がありますが、そうした議論についてはいかがお考えかというのを少し教えていただければ。

〔土居部会長代理〕今日の部会とは全く関係ないですが、ただ、財審の記者会見の場ということなので、あえて財審の中での議論というところにこじつけてお話をさせていただきますと、今年の4月に私も委員として財審の場で私の分析を御披露させていただく機会がございました。その際には、金利と成長率の関係について、債務残高対GDP比がその後どういうふうになるのかということで、内閣府の中長期試算のベースラインケースと成長実現ケースと、その間に2つの中間的なケースということで4つのケースを成長率等について想定したときに、債務残高対GDP比がずっと下がり続けるのか、それとも、ある年から反転、上昇して、また債務残高対GDP比は上昇局面に入っていくのかというようなことを議論させていただきました。

その中では、確かに金利のほうが低い、成長率が高いという状況では、その幅が大きければ大きいほど、債務残高対GDP比は下がっていくということにはなるのですが、その幅があまり大きくない、少しだけ成長率のほうが高いという状況ですと、ある一定程度の基礎的財政収支赤字があると、むしろ逆に、2030年代に債務残高対GDP比が反転、上昇するようなことが起こり得ると議論させていただいたわけです。

ですから、本当にこれは加減乗除というのでしょうか、足し算・引き算・掛け算・割り算という世界の話で、特に価値観とか、イデオロギーとか、何かの経済理論の考え方とかに関わらず、足し算・引き算・掛け算・割り算の世界で、ある一定以上の基礎的財政収支の赤字があると、少しだけしか成長率が高くなければ、いずれ債務残高対GDP比が上昇するような状況が起こり得る。そういうことなので、やはり油断禁物といいましょうか、金利が低ければ良いのですが、あまりにも基礎的財政収支の赤字が大きいと、なかなか債務残高対GDP比は下がらない。

残念ながらこれまで過去に、この10年間、債務残高対GDP比が内閣府の試算では下がると予測しておきながら、翌年になってその実績値を見ると上がっていたということが、これも4月の財審のときに私が資料で出させていただきました。そうした残念な結果になっていますので、そうした意味では、成長率を高めることは大事であるが、油断なく、債務残高対GDP比を下げるためには、基礎的財政収支の赤字を減らしていく不断の努力が必要であると、こうしたことが言えるのではないかと。これは、私が申し上げていますが、どなたが計算しても同じ結果になるということかと思います。

〔幹事〕ほかよろしいですか。なければ、これで終わりにしたいと思います。ありがとうございました。

〔土居部会長代理〕ありがとうございました。