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令和元年10月17日
財政制度等審議会 財政制度分科会 歳出改革部会


 

〔増田部会長〕 本日、13時30分から、財政制度等審議会財政制度分科会の歳出改革部会を開催いたしました。

 本日の議題は2つありまして、1つは農林水産、もう1つは社会資本整備です。これにつきまして、事務局から初めに資料に基づいて説明をしてもらって、その後、各委員からの質疑という形で議事を進めました。

 事務局の説明は、農林水産については、農業や水産業を魅力ある産業としていくための方策、それから将来的な公的支援のあり方、こういったものを中心に説明があったと、このように理解しております。それから、社会資本整備については、既存ストックの活用、それから利用者負担による整備と、こういったものが事務局資料の中心だったかと思います。

 各委員からの主な質疑について、私のほうからご紹介をして、そのあと皆さん方からご質問いただきたいと思います。通例どおり、委員の個人名を伏せて紹介いたします。

 まずは農業関係でありますけれども、最初の委員です。この方は、農業を成長産業としていくに当たって、補助金の見直しという次元での議論ではなくて、補助金をどのようになくしていくのかについて考えていくべきという意見であります。

 次の方の意見です。これまでの農水省、あるいは政府の政策について、政策的に演出された農業というものが今の農業の形ではないか。これを市場に向いた農業に転換するに当たっては、やはり補助金によって市場に向いた農業に適切に転換していく必要があると、こういう意見であります。それから、この方はもう一つ、将来的には、農業は財政投融資という公的支援に依存するのではなくて、民間の金融機関の融資で十分やっていけるようにしていかないといけないと、こういう意見であります。

 次の委員の方ですけれども、補助金について、飼料米などへの転作支援に偏り過ぎている部分を調整して、稼げる農業にシフトする必要があるということ。その上で、将来的には自立的であるべきで、そういう補助金に頼らないということですが、過渡的として補助金などによるインセンティブも必要と、こういう意見であります。

 次の委員の方の意見でありますが、農業は本来的に労働集約的であるが、少子高齢化、グローバル化が進んでいる。持続可能性のためには、強みが日本の場合も必要ではないかということでありました。具体的にどうかということまではおっしゃっていませんでしたが、持続可能性のためには日本も例えば花や野菜を強みとしているオランダに匹敵するような強みが必要と、こういう趣旨だと思います。それから、水産業について、日本の場合もかつては遠洋漁業が国際競争力を持っていた時代もあったが、今はもうそうではなくなっていると。日本の漁業の中で可能性の高いものは養殖ではないかと。それから、ある程度手間がかかるものにフォーカスしないと、これからはやっていけないだろうという意見であります。最後に、災害面も含めて農業の持続可能性を高めなければ、若い新規就農者が入ってこないので、今後30年ぐらい先を見て、長い間にわたって国際競争力を保てるように、国として支援をしていくべきという意見であります。

 次の委員の方ですが、自由貿易の中では、関税を引き下げていくということも農業にとっては重要であると。これまで関税で守られてきたわけですが、関税を引き下げるという視点が重要だと。関税で農業を守るよりも、厳しい財政の中でありますが、予算の効率化を図って、ポイントを絞った財政支援を行っていくべきという意見であります。

 次の方の意見でありますが、農業の輸出先を見るとアジアが多いわけですが、香港、中国など、これから所得が伸びていく国に高品質の日本の農産品を輸出していくということを、今、後押しをしていくべきであるということ。それから、農地の利用について、耕作放棄地を生まないようにするには、農地がまとまった形で、新たな担い手に継承されることが重要であって、そういうことが実現できるような支援を考えていく必要があるという意見であります。

 次の委員の方ですが、農業分野における予算づけにおいては、いろいろな農業のやり方を変えるという人を応援するという観点、これを第一にしていくべきだと。変化をしないという人たちに、今は農業の予算が相当向かっている。そこを変えていくという方向に、チャレンジする人を応援するような観点を大事にすべきということです。

 次の方ですけれども、新規就農する人たちが農業にチャレンジするということは大変素晴らしいのですが、初期投資が非常に大きい、それから災害リスクもあるので、今ある支援だけではなくて、長く農業に従事する人からの継承など、もう少し幅広く後押しをする、そういう取り組みが必要だという意見であります。

 次の方の意見は、今の農業を将来の稼げる農業に変えていくためには、財政的な支援のスクラップ・アンド・ビルドが必要であると。現在は水田に多額の補助金が入っているのですけれども、将来のビジョンを描いて、やはり優先順位づけを考えていく必要があると。それから、食料安全保障の問題については、食料自給率だけではなくて、食料自給力の観点を見据えて、どのように国のリソースを配分していくかを考えて、来年の基本計画の中にそういった考え方を入れていくべきということであります。

 次の方の意見は、農業について、いわゆる食料資源ということと、エネルギー資源というのはリンクしていると。農業へ投入されているエネルギーというのは、化石燃料で暖めたり、電気を使ったりとか、いろいろなエネルギーが投入されており、できるだけ投入されているエネルギーを少なくするという観点も非常に重要なのですが、農業とか林業の分野において、そこの分野でエネルギー問題の解決に貢献するという視点も重要ではないか。農業と、それから林業もあり得ると言っていたので、例えばそれをバイオマスのエネルギーとして使うようなことを、念頭に置いての発言ではないかと思います。

 農林水産の関係は以上であります。

 それから、後半の社会資本整備の議論のほうの各委員の意見を、同じような形で紹介したいと思います。

 まず、最初の方の意見です。ストックの長寿命化、それから維持コスト縮減はこれからの日本にとって非常に重要であると、そういう観点で御意見ございました。

 次の方ですが、人口減少の中でインフラの新設に資源配分していいのかどうか、それをどうするかをよく考えるべきという意見であります。

 次の方です。この方は、治水の関係で、ストックも大事だけれども、ソフト施策も重要であると。今回の台風で、被害に遭った場所のほとんどがハザードマップで示された区域にあって、適切な避難ができていれば被害もより抑えられたと、こういう指摘もあるというご紹介がございました。

 次の方です。この方も、ストックの選択と集中が不可欠で、しかもソフト面でも従来とより違う対応も必要になってくるのではないか。日本全国で、今回の災害を見ても各地で避難勧告等が出ていたわけですが、百聞は一見にしかずで、いろいろ情報が自治体等からも出ていて、自分で映像を見れば、これは避難しなければいけないとか、まだいいとかいうこと、ここまでくると危ないということがわかると。その上で、そういう意味で避難が非常に重要だということであります。

 次の委員ですが、この方も、ソフト面を今後しっかり検討していく必要があると。あと、もう一つ違う観点で言うと、土地利用のあり方の見直しが課題ではないかと、こういうご指摘がございました。コンパクト化、それから、どうやってインフラを維持するかという観点から、今後、考えていく必要があるということでございます。

 次の委員の方の意見です。治水について、今回の災害の事例も引かれて、ハードだけでなくてソフトの面でも考えていく必要があると。それから、もう一つ違う指摘でありますが、下水道の料金について、今回の資料の中にも書いておりますが、経費回収率が低いということがあるわけですが、地域住民、それから自治体にも十分認識されていない、地方の公費で赤字を消しているのが今の状況だと。2018年の秋の建議では、社会資本について、下水道について、汚水処理の部分について集合処理から個別処理へと、ですから浄化槽ですね。こちらのほうが合理的なやり方ではないかということで、そういう地域も多いわけですから、汚水処理の集合処理から個別処理へということを指摘したわけですけれども、コンパクト化する方向で、多くの方にこの考え方を理解してもらう必要があると、こういう御意見であります。

 それから、次の方ですが、この方も社会資本について、量をいたずらに拡大する条件にはないと、使い方を改善して既存のストックを最大限活用していくことが必要ではないか、こういう考え方が重要ということです。

 次の委員の方です。この方も、今回の災害に関連して、今回も異次元の災害が起きてきて、これについてはスーパー堤防があっても、自然の猛威には追いついていけないのではないか。まずは、ハードについて優先順位をつけるということは賛成であると。それでも、予測できない浸水は起きてくるので、こうした中で人命を守るためにはソフト面の充実が重要であると、こういうご指摘をされました。

 それから、次の委員の方です。マクロ的に見ると、戦後、復興して、我が国人口も増大してきた、そういう中で社会資本の充実を行ってきたということだったのですが、そのイメージを変える必要があると。今の時代時代に合った最適化が重要であって、既存のインフラを見直して、いかにオプティマイズするかが重要だという意見であります。

 各委員の御意見を、以上、ご紹介をいたしました。

 次回は10月23日水曜日の午前9時から、テーマは外交、防衛、エネルギー・環境、中小企業と、この大きく3つの固まりについて、今日と同じく歳出改革部会という形で開催を予定しております。

 私のほうの今日ご紹介は以上でございます。

〔幹事〕 ありがとうございました。

 農業のほうで、日米貿易協定を踏まえて、真に競争力の強化に資するべきものというような資料が出されていたかと思うのですけれども、先ほどご説明ではそのところについて触れてはおりませんでしたけれども、特にやりとりなどは。

〔増田部会長〕 今日の議論の中で、そこの部分について意見はなかったと記憶しております。

〔幹事〕 ありがとうございます。

 もう一点だけ。社会資本整備のところで、ハード、ソフトのお話があって、ソフト面が非常に大変だという意見がかなり幅広く出られたと。

〔増田部会長〕 そうでしたね。多かったと思います。

〔幹事〕 具体的に、ソフトというのは幅広いと思うのですけれども、どういうところがとか、何か、もう少し議論が深まっているところがありましたら。

〔増田部会長〕 避難の仕方、いろいろ見ていると、ある区では全域で避難のことが出ていたけれども、多くは川沿いということもありましたので、そこのあたりをもっときめ細かく、全国共通の形で、住所を入れると、そこの地域が今、どういう状況になっていて、どれだけ動く必要があるのかとかがわかるようなものが、しかも、いろいろな人たちが自由に使えるものがあればよりよいので、そういう面で、ソフトの充実でまだまだ随分やる必要があるということを、その方はおっしゃっていました。

 ある委員の人は、ソフトの内容も随分、以前に比べて進んできたと。ハザードマップもほとんど公表されていますし、それから、あと雨量についても1、2、3、4、5と気象庁のほうで発表されて、非常にわかりやすくなってきたのですが、現実に動く方が実際にはそれほどおられなくて、被害に遭われた方もいらっしゃったわけですから、やはりソフトで、それぞれ皆さん方が思っている内容というのは多様だろうと思いますけれども、どうさらに行動に結びつけるか、そこをもっと掘り下げなくてはいけないと、そんな趣旨の議論が出ておりましたので、その点はご紹介しておきます。

〔幹事〕 ありがとうございます。

〔質問〕 土地利用の見直しについて、今、お話にあったのですけれども、災害リスクを軽減する土地利用の見直しが十分に行われるとは言いがたいと本日の資料では出ていましたが。

〔増田部会長〕 出ています。

〔質問〕 この点について、もう少し土地利用を、警戒区域、での開発をもう少し抑えるとか、そういう具体的な議論というのは何かあったのですか。

〔増田部会長〕 議論としては、土地利用まで踏み込んで考えていくべきという趣旨のことをおっしゃった方が何人かおられましたし、それから、今、まさにおっしゃったように、開発許可件数というのが一定程度あって、それから立地適正化計画の中に災害の危険性のある区域が含まれているところが非常に多く出ているので、こういった点をもっときちんとしたものに、土地利用を考えるような形にしていくべきではないかというような御意見をおっしゃる方が中におりました。

 ですから、土地利用について、ハード、典型的には堤防だとか、ダムだとか、いろいろありますけれども、それではやはり限界がある。ですからソフトというお話があったのですが、それは多分、私の理解では、今、お住まいになっているところを前提に考えておられるわけですが、その人たちに移ってもらうという選択肢をとるかどうかは、それぞれの委員でも思いがあると思います。その今、あるところを前提というよりも、さらにまちづくりだとか、それから土地利用で、そういうことに触れられた方の背景には、土地利用で、災害のリスクが高いようなところにこれからお住まいになることをどう考えるかということも、もう考える時期に来ているということがおそらく背景にあって、そういうご発言につながっているのではないかなと思います。 

〔質問〕 先ほど、日米貿易協定を受けた国内の農業対策で、真に競争力に資するもの。

〔増田部会長〕 競争力ですね。

〔質問〕 それは特に意見、出なかったということですけれども、これはもう意見、出なかったというか、むしろもう皆さん自明のものという理解で。

〔増田部会長〕 そうだったと思いますね。聞いたわけでありませんが、おそらく。それに異論があったり何なりすればご指摘されるでしょうし、ほかの面でも今、補助金等々によって行われている農業についていろいろな御意見が出ていました。もっと真に自立する農業になるべきということでしたので、今、おっしゃったとおり、そういうのは自明のことだろうというふうに私も理解します。

〔質問〕 二点ありまして、一点は、部会長ご本人として、何か農業の議論に対する考え方、あと会合の中でご発言されたこと、ご紹介できるものがあればというのと、あと、すみません、ちょっと確認なのですが、この部会の位置づけと、今後の進め方をちょっと改めて。どういうふうに進めていくか。

〔増田部会長〕 私は、農業分野について今日は特に発言しませんでした。

 部会の位置づけですけれども、歳出改革部会で、より少ない人数で掘り下げた議論をするものという趣旨で歳出改革部会が設けられていて、歳出改革部会での議論を、今度は財政制度分科会という全体の会議のほうにご報告をして、建議はあくまでも全体会として取りまとめると、そういうことで歳出改革部会が設けられています。

 今日、秋のシーズンでの歳出改革部会の第一回目ですが、次回も歳出改革部会で、先ほどご紹介したような外交とか、防衛とかをテーマとして、それから、分科会で議論しようとしているのは社会保障ですね。この間、第一回目をやりましたけれども、社会保障、おそらく地方財政なんかもやはり大きなテーマでもありますし、財政制度分科会の議論でやっていくと。それから、歳出改革部会のほうは、より掘り下げた、きめ細かな議論に供して本体のほうに報告する。そういう位置づけで、今後の予定もそういう形で審議することになっています。

〔質問〕 すみません、今回の資料は、あくまで財務省として参考資料として用意されたものでしょうか。

〔増田部会長〕 はい。資料自身は、財務省で審議のために供した資料ということ。ですから、それを受けてこれから、この資料の中にはファクトと、それから財務省的な考え方も当然、入っいるわけですが、それは財務省のものということですので、それをどういうふうに委員が判断して、それに対してどういう意見を言うかということは、これからということになります。

〔質問〕 関連で、同じく部会長としての御意見について、社会資本整備のほうでご発言などされていたら教えていただきたいのですが。

〔増田部会長〕 社会資本整備のほうは1つだけ、土地利用について私も発言をいたしました。今、あれだけの災害が起きていますし、やはり、生活を守っていく上でハードとソフトを組み合わせた対策が重要だというふうに思いますし、それはほかの方もおっしゃっているとおりで、そのためにハードだけに頼らず、もっとソフトを重視して、ソフトでもやるべきことはまだまだありますので、そういう避難といったもの、で、いろいろなハザードマップが出たり、それから情報もできるだけよりわかりやすく、高齢者はもう避難してください、ほかの方は避難の準備してくださいとか、それを数値であらわしたりとか、いろいろな仕組みを、最近、つくりましたけれども、なかなか、時間的な、夜中ということもあるし、やはりお使いになれなかったり、それから実際にご自身が考えられても、単身の高齢者の方はどうやって大雨の中で避難するかとか、そういう問題があるわけですよね。

 したがって、私が本日申し上げたのは、やはりソフトを掘り下げるということが大事だという、で、まだまだそこでやるべきことがあるということと、かなり長い長期の視点で考えると、まちづくりだとか、住まい方だとか、そういう問題もあわせて考えないと、これからはこの問題を解決するわけにはやはりいかない。

 そうすると、今回の資料で、ちょうど問題提起ということで出ていた土地利用、先ほどございました立地適正化計画の中に災害の危険性があるものがかなり含まれていますが、これはもうそういうもの、一方でそういうものが含まれてしまうという事情もよくわかりますけれども、コンパクトシティー化するとき、もう今、人が住んでいるところには、必ず川が流れていれば、その周りというのはそういう危険性を持っているわけですので。

 ですから、私が今日、意見として申し上げたのは、住まい方とかいう問題もあわせて、今後、考えていかないと、トータルの意味での防災対策というのはなかなかいけない、そういう時代になってきているということです。

 一つ言いますと、人口増の時代というのはなかなかそこまで考えるというのは難しくて、今日の資料でも出ていましたけれども、調整区域中心ですが、開発許可なんかはやはりどうしても出さざるを得なかった。都市化すると、コンクリートで埋められるので内水の排除ができなくて、そこもあふれたりするとか、災害を誘発してくるのですが、今、状況が変わって、私も今、開発許可を出していくような時代かなというふうに思うので、ですから住まい方ということをもっと冷静に考えられる時期に、だんだんなってきているのではないかなというふうに思い、そういう趣旨の発言をしています。

〔幹事〕 ほか、ありますでしょうか。

〔増田部会長〕 どうもありがとうございました。

〔幹事〕 ありがとうございました。


(以上)