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財政制度等審議会 財政制度分科会
法制・公会計部会
議事録

令和4年1月21日
財政制度等審議会


財政制度等審議会 財政制度分科会 法制・公会計部会
議事次第

令和4年1月21日(金)10:00~11:17

Web会議

1.開会

 

2.議題

  • 〇 令和2年度「国の財務書類」等について

 

3.閉会


配付資料

資料  令和2年度「国の財務書類」
 参考資料1  令和2年度「国の財務書類」のポイント
 参考資料2  「国の財務書類」ガイドブック
 参考資料3-1  国の財務書類等の財務諸表(4表)一覧
 参考資料3-2  国の財務書類等の財務諸表(4表)一覧(英訳)

4.出席者

部会長
部会長代理
委員


臨時委員

藤谷 武史
黒川 行治
赤井 伸郎
土居 丈朗

大塚 成男
小林 慶一郎
佐藤 綾子
椎名 弘
関根 愛子
冨田 俊基
山内 暁


           奥主計局次長
           藤﨑法規課長
           大久保司計課長
           大沢調査課長
           園田公会計室長
           山嵜会計制度調査官
           宮嶋課長補佐
              桑野課長補佐
           
          

午前10時00分開会

〔藤谷部会長〕 
 ただいまから財政制度等審議会財政制度分科会法制・公会計部会を開催いたします。

 皆様におかれましては、ご多用中のところ、ご出席いただきまして、ありがとうございます。

 新型コロナウイルス対策のため、本日はウェブ会議システムを活用して会議を開催させていただくことにいたしました。皆様には大変ご不便をおかけいたしますが、ご協力のほど、よろしくお願いいたします。また、ご参加の委員の方に音声が明瞭に伝わりますよう、できるだけパソコン等のマイクに近づいてご発言いただきますよう、お願いいたします。

 まず、本日の議題に入ります前に、事務局職員の異動がありましたので、事務局より報告いたします。園田室長、お願いいたします。

〔園田公会計室長〕 
 それでは、昨年9月の当部会開催後、10月に事務局職員に異動がありましたので、紹介させていただきます。

 調査課長の大沢でございます。すみません、調査課長、まだ立て込んでございますので、調査課長の異動がございましたことをご報告させていただきます。

 以上でございます。

〔藤谷部会長〕 
 ありがとうございました。

 それでは、次に、当部会の所属委員の本日の出席状況、そして資料の確認を事務局からお願いいたします。

〔園田公会計室長〕 
 本日は、宍戸委員、田近委員はご欠席となっております。なお、本日、委員の皆様にはウェブで参加していただいておりますが、事務局の議場出席につきましては、配席図をご覧ください。

 次に、議事次第をご覧ください。配付資料につきましては、参考資料を含め、2.のとおりでございまして、事前にご郵送させていただいております。

 資料の紹介は以上でございます。

〔藤谷部会長〕
 
では、本日の部会の進行についてご説明いたします。

 本日の議題ですが、令和2年度「国の財務書類」等について、事務局からの説明と、それについての質疑応答を行う形で進めさせていただきます。

 では、議事に入る前に、奥主計局次長からご挨拶がございます。奥主計局次長、どうぞ。

〔奥主計局次長〕
 主計局次長の奥でございます。

 委員の先生方、本日は、何かとご多忙の中、ご出席を賜りまして、誠にありがとうございます。

 国の財務書類につきましては、委員の先生方皆様ご案内のとおりでありますけれども、平成15年度の決算分から作成・公表を始めまして、それ以来、国全体のストックあるいはフローの情報などを提供してまいりました。この間、法制・公会計部会の先生方には立ち上がり期から非常に熱心にご議論をいただいて、そして、改善点など様々なご指摘をいただき、ご指導賜ってまいりました。これによりまして、国の財務書類に関するパンフレットの記載内容は、年を重ねるごとに順次改善、充実が図られ情報開示の内容が整ってきていると考えております。

 このたび令和2年度についての財務書類がまとまるということになりまして、これにつきましても、昨年度に様々いただきました、この部会での先生方のご意見も踏まえまして、資料の作成を公会計室を中心に行ってまいりました。

 今回作成をいたします令和2年度といいますと、新型コロナウイルスの感染症が拡大いたしまして、大変な事態になった年度でありました。これは財審の財政分科会でも様々にご議論いただいているところでもありますが、経済面でも、財政面におきましても、戦後最大の例外というような事態となりました。

 令和2年度においては、3次にわたる補正予算の編成ということもありましたし、また、今年度、令和3年度に入りましても、先月、経済対策を実施するための3年度補正予算が成立したところでございます。これら累次の補正予算の編成などによりまして、国の資産、負債、費用、財源といった国の財務状況は大きく変動しているところでありまして、そういった中で、国民、あるいはマスコミなどにおいても、財政への関心が強まっていると考えております。

 こうした状況の中で、私どもといたしましては、今後とも国の財務書類などの利活用を図るため、その材料提供を促進してまいりたいと考えております。

 法制・公会計部会の諸先生方におかれましては、引き続きどうかご指導賜りますようよろしくお願い申し上げます。

 では、今日は何卒よろしくお願いいたします。

〔藤谷部会長〕
 それでは、令和2年度「国の財務書類」等について、事務局から説明をさせます。

〔園田公会計室長〕
 よろしくお願いします。

 それでは、参考資料1「令和2年度『国の財務書類』のポイント」を用いてご説明させていただきます。ポイントの2ページをご覧ください。

 令和2年度末における国の資産、負債の状況は、資産合計720.8兆円(対前年度末比プラス39.5兆円)、負債合計は1,376.0兆円(対前年度末比プラス102.9兆円)となり、資産と負債の差額である資産・負債差額は、前年度末に比べ63.4兆円悪化し、マイナス655.2兆円となりました。

 令和2年度の業務費用合計は190.7兆円(対前年度比プラス40.9兆円)、財源合計は131.7兆円(対前年度比プラス2.1兆円)となり、財源と費用の差額である超過費用は、前年度に比べ38.8兆円増加のマイナス59.1兆円となりました。引き続き1年間の業務費用を財源で賄えない状況が続いております。

 令和2年度財務書類の特色でございますが、令和2年度は、経済再生と財政健全化の両立を実現すべく当初予算が編成されましたが、新型コロナウイルス感染症拡大への対応として「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」や「国民の命と暮らしを守る安心と希望のための総合経済対策」を実施するために必要な経費等について、3次にわたる補正予算が編成されました。

 これらの財政運営により、フローの状況としましては、費用面、業務費用計算書でございますが、補助金・交付金等が家計への支援を行うための特別定額給付金給付事業費補助金の計上、また、医療提供体制等の強化を図るための新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金の計上などにより31.5兆円増加し、また、中小企業等に対する持続化給付金等が7.2兆円計上したことなどにより、前年度に比べ40.9兆円増加の190.7兆円となりました。

 財源面、資産・負債差額増減計算書の財源でございますが、まず、消費税率引上げの平年度化等により消費税収の増加、また、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた巣ごもり需要等により法人税の税収が増加したことなどにより、租税等収入が2.8兆円増加したこと等で、前年度に比べ2.1兆円増加の131.7兆円となっております。

 1年間の業務費用を財源で賄えない状況が続いておりますが、超過費用、財源と業務費用の差額は、前年度に比べ38.8兆円増加の、国の財務書類作成以降最大のマイナス59.1兆円となりました。

 次に、ストックの状況、貸借対照表でございますが、まず、資産の部におきましては、令和3年度への繰越等により一般会計の歳計剰余金が増加したことなどにより、現金・預金が23.4兆円増加、また、政策金融機関等に対する財政融資資金貸付金の増加等により貸付金が12.9兆円増加、中小・小規模事業者等の資金繰り支援のための日本政策金融公庫への出資金が増加したこと等により出資金が7.1兆円増加した一方で、為替相場の変動等による外貨証券の減少等により有価証券が6.8兆円減少したことなどで、前年度末に比べ39.5兆円増加の720.8兆円となっております。

 負債の部におきましては、一般会計の普通国債等は57.3兆円増加しました。また、財政融資資金貸付金の貸付けの財源を調達するために発行した財投債は27.7兆円増加するなど、その結果として、公債は85.1兆円増加し、1,083.9兆円となりました。全体として、負債合計は、前年度末に比べ102.9兆円悪化の1,376.0兆円となりました。

 これらの結果、資産・負債差額はマイナス655.2兆円となり、前年度末に比べ63.4兆円の悪化となっております。

 3ページをご覧ください。資産の主な増減要因についてご説明いたします。

 現金・預金につきましては、対前年度末比の23.4兆円増の69.5兆円となっております。新型コロナウイルス感染症対策に係る一部の事業等が令和3年度へ繰り越されたことなどにより一般会計の歳計剰余金の増加が主な要因でございます。

 有価証券につきましては、対前年度末比の6.8兆円減の119.7兆円となっております。過去の為替介入により取得した外貨証券の為替相場の変動、また、時価による評価差額の減などにより全体として6.8兆円減となっております。

 貸付金につきましては、対前年度末比12.9兆円増の120.1兆円となっております。これは財政融資資金貸付金において新型コロナウイルス感染症の影響を受けた事業者の資金繰り支援等のため、政策金融機関等への貸付規模が増加したことなどにより、全体として12.9兆円増加しております。

 運用寄託金につきましては、対前年度末比0.7兆円減の112.6兆円となっております。支払上現金に不足がある場合に備えた運用寄託金の償還による現金化があったことなどにより、全体として0.7兆円減の112.6兆円となっております。また、運用寄託金の令和2年度末のGPIFの金融商品の時価を186.2兆円、令和2年度における運用益37.8兆円となってございます。

 出資金につきましては、対年度末比7.1兆円増の83.4兆円となっております。中小・小規模事業者等の資金繰り支援のための出資等により日本政策金融公庫への出資金が3.1兆円増加、大学ファンドの創設に向けた出資により科学技術振興機構への出資金が0.5兆円増加したことなどにより、全体として7.1兆円増となっております。

 棒グラフの吹き出しの中の「有価証券」の中に、日本郵政株式の一部(政府保有義務分以外)が1.0兆円ございます。これは、復興財源に充てるために保有しているものでありまして、令和2年度末におきましては、まだ保有しておりましたが、令和3年度中、10月末までの間に売却しておりますので、財務書類本体において、後発事象と記載しておりますので、このパンフレットにおきましても、注書きさせていただいております。

 4ページをご覧ください。負債の主な増減要因でございます。

 政府短期証券につきましては、対前年度末比15.3兆円増の92.8兆円となっております。外国為替資金特別会計においては、国庫余裕金の繰替使用の減少に伴い外国為替資金証券の発行残高が増加したことなどにより、全体として15.3兆円増の92.8兆円となっております。

 公債につきましては、対前年度末比85.1兆円増の1,083.9兆円となっております。建設国債は9.7兆円増の290.2兆円、特例国債は48.0兆円増の635.3兆円、復興債は0.7兆円増の6.8兆円、財政融資資金貸付金の貸付財源を調達するために発行した財投債は27.7兆円増の118.9兆円となっております。

 借入金につきましては、対前年度末比0.5兆円増の32.9兆円となっておりますが、原賠機構に対して発行している交付国債の償還財源として民間金融機関から資金調達したことなどによります。

 公的年金預り金につきましては、対前年度末比0.6兆円増の121.8兆円となっております。資産側の運用寄託金は0.7兆円減少しておりますが、一方で、支払上現金に不足がある場合に備えた積立金の繰替使用による現金・預金の増加、また、厚生年金保険料の納付猶予の特例等による未収保険料の増加など、その他の年金給付財源が1.3兆円増加していることで、全体として0.6兆円増加しております。

 続きまして、5ページをご覧ください。フローの状況、費用の主な増減要因でございます。

 社会保障給付費につきましては、対前年度比4.2兆円増の54.6兆円となっております。雇用調整助成金の特例措置等により雇用安定等給付費が3.0兆円増加したことなどが主な要因でございます。

 補助金・交付金等につきましては、対前年度比31.5兆円85.3兆円となっております。特別定額給付金給付事業費補助金が12.7兆円、新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金が3.1兆円、新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金が2.6兆円計上されたことや、中小企業再生支援利子補給補助金が1.8兆円増加したこと等に加え、グリーンイノベーション基金を造成するため産業技術実用化開発事業費補助金が2.0兆円増加したことなどにより、全体として31.5兆円増となっております。

 持続化給付金等につきましては、対前年度比7.2兆円皆増となっております。中小企業等の事業の継続を下支えするため、事業全般に広く使える持続化給付金が5.6兆円、地代・家賃の負担を軽減する家賃支援給付金が0.9兆円、また、Go To キャンペーン事業を実施するためサービス産業消費喚起事業給付金が0.7兆円計上されております。

 続きまして、6ページをご覧ください。財源の主な増減要因でございます。

 租税等収入につきましては、対前年度比2.8兆円増の64.9兆円となっております。消費税は令和元年10月からの消費税率引上げの平年度化等により2.6兆円増の21.0兆円、法人税は巣ごもり需要等により0.4兆円増の11.2兆円、所得税は前年度とほぼ同額の19.2兆円となり、全体として2.8兆円増の64.9兆円となっております。

 社会保険料は、横ばいの55.2兆円となっております。被保険者数は増加したものの、賃金の減少等により厚生年金保険料が0.1兆円減の32.6兆円、健康保険料及び船員保険料が前年度とほぼ同額の10.6兆円、労働保険料が0.1兆円増の2.6兆円となったことなどにより、全体として前年度とほぼ同額となっております。

 この結果、下のほうの超過費用でございますが、財源合計が131.7兆円、また、業務費用合計が190.7兆円、これを差し引きしますとマイナス59.1兆円となり、令和元年度のマイナス20.3兆円から比較しますと、業務費用の増加により38.8兆円増加し、国の財務書類作成以降、最大となってございます。

 7ページでございます。補助金・交付金等についてでございます。

 令和2年度の業務費用の約45%である85.3兆円を「補助金・交付金等」が占めており、これらの所管別の状況について示しております。

 厚生労働省は、対前年度比6.4兆円増の41.5兆円となっております。令和2年度は新型コロナウイルス感染症への対応として、医療提供体制等の強化を図るための新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金の計上3.1兆円や、緊急小口資金等の特例貸付の実施による生活困窮者就労準備支援事業費等補助金の増加1.0兆円などにより6.4兆円の増となっております。

 総務省は、対前年度比で15.8兆円増の16.0兆円となっております。令和2年度は、特別定額給付金給付事業費補助金の計上12.7兆円や、地域の実情に応じたきめ細やかな事業を実施するための新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金の計上2.6兆円などにより15.8兆円の増加となっております。

 経済産業省は、対前年度比7.1兆円増の9.0兆円となっております。令和2年度は、2050年までのカーボンニュートラル目標に向けグリーンイノベーション基金を造成するための産業技術実用化開発事業費補助金の増加2.0兆円や、新型コロナウイルス感染症の影響を受けている事業者の資金繰り支援のための中小企業再生支援利子補給補助金の増加1.8兆円などにより、7.1兆円の増となっております。

 その他、文部科学省が1.0兆円増の6.4兆円、国土交通省は0.4兆円増の4.2兆円などでございます。

 8ページは、国全体の社会保障財源及び給付につきまして、国の財務書類がどの部分をカバーしているかを示しているものでございます。

 財源においてピンクで塗り潰されている部分が国の会計に計上されるものでございまして、これらに対応する給付が国の財務書類の業務費用に計上されているという状況でございます。

 9ページをご覧ください。資産・負債総額の増減要因でございますが、前年度末資産・負債差額マイナス591.8兆円を起点とし、先ほどご説明しました超過費用マイナス59.1兆円、資産評価差額がマイナス1.5兆円、為替換算差額がマイナス4.2兆円などが加味され、本年度末資産・負債差額はマイナス655.2兆円となってございます。

 10ページですが、こちらは令和2年度末における資産・負債差額がマイナス655.2兆円、これは国の財務書類の作成初年度(平成15年度)期末時点での資産・負債差額マイナス245.2兆円から約2.7倍の水準となってございます。平成16年度から令和2年度における資産・負債差額の変動額の合計がマイナス410.0兆円となっておりますが、このうちマイナス475.1兆円が超過費用の累積によるものです。

 このように、資産と負債の差額である資産・負債差額はその大部分が過去における超過費用の累積でありますので、概念的には、将来への先送りである特例国債の残高に近いものとなります。

 11ページはストックの推移でございますが、国の財務書類作成初年度の期末時点の平成15年度末以降で見ますと、資産は平成15年度末695.9兆円から令和2年度末720.8兆円と、大きな増加とはなっていないものの、負債は平成15年度末941.1兆円から令和2年度末1,376.0兆円と年々増加しており、資産・負債差額は410.0兆円の悪化となっております。

 12ページはフローの推移でございます。

 超過費用は、平成20年度のリーマンショックの影響により平成21年度に一時大きく増加し、その後は減少傾向にありましたが、令和2年度の新型コロナウイルス感染症拡大の影響により再び大きく増加し、国の財務書類作成以降最大となっております。

 13ページをご覧ください。こちらは、近年10年間の資産の内訳の推移でございます。

 下の棒グラフをご覧いただきますと、一番上の赤色の「現金・預金」につきましては、平成27年度末と令和2年度末に大きく増加しております。令和元年度末までは国債発行額の平準化を図る等の理由により前倒債の発行額が増加傾向にある中、平成27年度末以降はマイナス金利の影響により日本銀行への日銀現先を行っていないことなどにより、増加傾向となっておりました。令和2年度末においては、新型コロナウイルス感染症対策に係る一部の事業等の令和3年度への繰越等により大きく増加しております。

 上から2番目の、青色の「有価証券」でございますが、こちらは外国為替資金特別会計の外貨証券という部分が大宗を占めておりますので、為替相場の動向に大きく影響される状況でございます。

 黄色の「運用寄託金」につきましては、平成27年度以降は比較的増加傾向となってございます。

 下から2番目の「出資金」は、平成22年度末比で25.9兆円の増加となっております。出資先法人の株価の上昇であったり、純資産額の増加等により年々増加しており、令和2年度末は日本政策金融公庫への出資金が増加したことなどにより7.1兆円増加となっております。

 14ページをご覧ください。

 負債の合計は、平成22年度末比で333.1兆円の増加となってございます。

 中でも、下のグラフ、公債の内訳を見ていただきますと、平成22年度末から令和2年度末までの10年間で、建設国債が43.2兆円の増加となっているのに対し、特例国債は近年の財源不足を反映して270.2兆円の増加となっておりまして、急激な増加の状況がうかがえます。

 また、財投債につきましては、財政融資資金貸付金の貸付規模が縮小傾向にある状況を反映し、令和元年度末までは減少傾向となっておりましたが、令和2年度末に新型コロナウイルス感染症への対応による貸付規模の増加に伴い増加となった結果、10年間では0.6兆円の増加となっております。

 続きまして、15ページでございます。近年10年間の費用の内訳の推移でございます。

 費用合計は、平成22年度以降は高齢化に伴う社会保障給付費の増加や補助金・交付金等の増加などにより、令和元年度までは緩やかな増加傾向となっていましたが、新型コロナウイルス感染症への対応により、令和2年度に大きく増加しております。

 補助金・交付金等は、平成22年度以降、東日本大震災への対応や社会保障関係経費の増加等により緩やかな増加傾向となっていましたが、新型コロナウイルス感染症への対応により令和2年度に大きく増加しております。

 また、支払利息は、公債、政府短期証券、借入金、預託金の合計額が増加している一方で、公債等のオーバーパー発行に伴う債券の発行額と額面額の差額の償却が続いている中、平均金利が低下しているため、減少傾向にあります。

 16ページをご覧ください。近年10年間の財源の内訳の推移でございます。

 財源合計は、平成22年度以降、消費税などの租税等収入や、年金制度改正に基づき平成16年から平成29年9月までの保険料率が段階的に引き上げられた厚生年金保険料などの社会保険料が増加傾向にあるため、年々増加しております。

 租税等収入は、平成22年度以降は景気の緩やかな回復基調により増加傾向となっており、基幹3税の所得税、法人税及び消費税は平成22年度と比べまして、それぞれ6.2兆円、2.3兆円、10.9兆円増加しております。特に消費税は、消費税率が平成26年度に5%から8%に、令和元年度に8%から10%にそれぞれ引き上げられたことなどにより、大幅に増加しております。

 次に、17ページ、18ページをご覧ください。

 17ページは、国の一般会計の歳入歳出決算、特別会計の歳入歳出決算、そして国の実質上の財政規模を示す純計をご説明させていただいております。

 18ページは、純計ベースの歳入決算額353.3兆円と、発生主義ベースで見る財源131.7兆円の差額、また、純計ベースにおける歳出決算額305.8兆円と、業務費用190.7兆円の差額の関係をご説明させていただいております。この図によりまして、国の財政を企業会計の視点で見た場合においても、多額の超過費用、いわゆる当期純損失がマイナス59.1兆円という状況を端的に示してございます。

 19ページでございます。こちらのページは、昨年度までは「『国の財務書類』のポイント」におきまして、政策別コスト情報のうち、主要な政策別コストを開示しておりました。一方、昨年度の法制・公会計部会における政策別コスト情報から、事業別フルコスト情報への見直しに伴いまして、「『国の財務書類』のポイント」において政策別コスト情報での開示はできないものの、代替的な情報開示が必要ではないかというご意見をいただいておりますので、現金主義ベースの主要経費別分類を用いて、本年度からこのような資料を作成しているものでございます。

 令和2年度における歳出決算額(純計)が305.8兆円、これを各主要経費ごとに分類すると、下の図のとおりでございますが、年金給付費が53.2兆円、医療給付費が22.5兆円など、社会保障関係費が100.9兆円と、全体の約3分の1を占めております。

 また、参考としまして、下の図のグラフの下段及び括弧には、令和元年度の歳出決算額(純計)を記載してございます。

 20ページになりますが、こちらは一般会計財務書類と国の財務書類(一般会計・特別会計)合算の比較でございます。

 資産・負債差額は、一般会計がマイナス667.8兆円、合算がマイナス655.2兆円となっており、合算においてマイナス幅が12.6兆円小さくなっております。これは特別会計の資産・負債差額がプラスであることによりますが、資産・負債差額がマイナスの状況は変わらないところでございます。

 続きまして、21ページ、22ページでございますが、こちらは国の資産をどう見るか、また、その場合の留意点でございます。

 有価証券、貸付金、運用寄託金などの多額の金融資産は、原則として対応関係にある負債が存在するということ。また、それ以外の資産は、現金化が想定されていない資産が大部分であることを記載してございます。

 また、23ページは、令和2年度公債残高の償還年次表をお示しするとともに、四角囲みの中で、例えば、令和3年度は借換えが認められる国債が157.7兆円の償還予定がございますが、143.7兆円の借換債の発行が予定されているということを記述させていただいております。

 24ページは、公的年金について、財務書類上、会計上の考え方を解説しているものでございます。基本的に例年と同様な内容となってございまして、その次の25ページ、26ページは、令和元年度の財政検証、厚生年金及び国民年金の財源と給付の内訳を参考として記載しております。

 令和2年度「国の財務書類」についての説明は以上となります。

 次に、お手元の参考資料3-2をご覧いただければと思います。3-2は、昨年3月の法制・公会計部会におきまして、椎名委員から、まずは手始めに財務書類の4表一覧ぐらいを英訳してウェブサイトに掲載し、公表してはどうかというご提言をいただきまして、今回、日本公認会計士協会からのご協力の下、事務局で作成したものでございます。

 こちらにつきまして、今年度から手始めにということで、公表していきたいと思っておりますので、ご参考いただければと思います。

 最後になりますが、事業別フルコスト情報につきましては、現在、各省鋭意作成中でございまして、3月の法制・公会計部会におきまして、ご報告させていただきます。

 事務局からの説明は以上になります。

〔藤谷部会長〕
 ありがとうございます。

 それでは、ただいまの事務局からの説明について、ご意見、ご質問等ございましたら、ご発言をお願いいたします。

 ご発言を希望される委員を順番に指名させていただきますので、委員の皆様方は、ご意見等があります場合は、ウェブ会議システムの「挙手する」ボタンのクリックをお願いいたします。

 それでは、冨田委員、お願いいたします。

〔冨田委員〕
 昨年度は3回も大規模な補正予算が行われまして、全体像の把握がなかなか、どうなっているかということは、たくさんの関心を集めておると思うのですが、今回、国の財務書類という形で、この全体像を決算ベースで示すことができたというのは、非常にその面で大きな意義があると思います。

 その上で今回、先ほど、19ページで、主要経費分類で歳出決算について純計額を表示されているわけですけれども、これもこれまでの政策コストに比べて、私なんかは非常になじみのある分類で、大方、戦後日本の財政は、こういう主要経費分類でなされてきたということから見て、非常に利用する意味があると思います。特に、特別会計も一緒になっているので、非常に意義があろうかと思います。

 その意義を認めた上で、私、少し分かりにくいなと思った点は、「その他の事項経費」に財融への繰入が出ております。これは、「その他の事項経費」は大体これまでは、各府省の間接的な経費を中心にして計上されているもので、確かに、この分類でいけば、財融への繰入39.1兆円というのは、ここの分類に該当しようとは思うのですけれども、多分、「その他の事項経費」の外側に財融資金への繰入として、別にしたほうが分かりやすかったのかとも思います。それを今回直せというわけではないのですけれども、分かりやすさの意味ではそのほうがよかったと思います。

 それと、これに関係して幾つか、もう少し具体的なご説明をいただきたいと思ったところがございます。

 中小企業対策費で、非常に大きくなっている、あるいは文教科学技術費、これは多分、財投機関への出資金だと思うのですけれども、その内訳について、ご説明がいただければと思います。

 また、先の課題として考えれば、社会保障関係費が非常に大きいので、その他が252,000億円と大きいのですけれども、これも主要経費分類でいけば、介護給付費とか、少子化対策費だとか、そういう分類になっておりますので、もしそういうことが可能であれば、ここでは数字では出ているのですけれども、もう少し、雇用対策でどうだとか、雇用対策も出ていますね。そういうものがあると、ここはこれで出ているのでいいのですけれども、そういう、分類自体は過去からの継続性があるので、私は非常に意味があるものだと思います。

 以上です。

〔藤谷部会長〕
 
冨田委員、ありがとうございました。

 現時点で挙手をされているのが椎名委員、山内委員と承知しております。そこで、椎名委員、山内委員からご質問をいただいた上で、お三方にまとめて事務局からご返事いただくという形でいかがかと思いますが、よろしゅうございますでしょうか。

 差し支えなければ、椎名委員、よろしくお願いいたします。

〔椎名委員〕
 ありがとうございます。

 コロナの影響の部分ですけれども、先ほど、冨田委員からも言及ございましたように、令和2年度は新型コロナウイルスの感染症の拡大の対策のために多額の財政出動が行われたということで、これについてポイント資料で、随所で書かれてはいますけれども、その全体像の示し方として、一つ大きな見出しを立てて、そこで、特集ページといいますか、そういった形で示すという方法も考えられたのかと思っていまして、令和2年度分はもう既に公表が間近でございますので、今から作り替えるのは難しいかと思いますけど、一つ例を紹介いたしますと、スイスの2020年度の財務諸表ですと、FINANCIAL MEASURES TO COMBAT THE COVID-19 PANDEMICというページを設けて、給付金等、資材調達、融資及び出資、保証と4項目に分けて、総額と、そのうち費用処理された金額を表にして開示しているということがございます。

 コロナ関連の財政出動とそうでないものの線引きというのは、結構難しいかとは思いますけれども、何らか、全体像がより一覧できるような、表示の仕方ができると、なお結構かと思いますので、来年度等、ご検討いただけたらと思います。

 それから、参考資料3-2の、4表一覧の英訳につきましては、私が昨年3月の当部会でご提案申し上げたことですので、こうしてご対応いただいたことに深く感謝を申し上げます。

 なお、区分別収支計算書をStatement of Revenue and Expenditureと訳しておりますけれども、これは発生主義に基づく財務業績計算書と紛らわしくて、内容的にはほぼキャッシュ・フロー計算書と思われますので、Cash Flow Statementと訳したほうが、より良いのではないかと思いました。

 それから、財務報告というのは、財務諸表と、その討議と分析、いわゆる「ディスカッション・アンド・アナリシス」が車の両輪と思っております。当年度、まずは財務諸表からということで、こうして英訳をしていただきましたので、来年度以降、討議と分析の部分の英訳に少しずつ手を広げていくとよろしいのではないかと思います。

 例えば、参考資料1、ポイント資料の2ページに【令和2年度財務書類の特色」というページがございますが、まず、このページだけでもよろしいのではないかと思いますので、ご検討いただけたらと思います。

 それから最後に、国の財務書類に関する日本公認会計士協会の取組のご紹介をさせていただけたらと思います。当協会には公会計委員会、その下に政府会計専門委員会というのがございまして、今、国の財務書類を国際公会計基準(IPSAS)と比較して、相違点などを明らかにして、国の財務報告への提言を行うという研究報告の取りまとめをいたしております。恐らく来月には当協会のウェブサイトに掲載して公表できると思いますので、ご参考にしていただけましたら幸いでございます。

 以上でございます。

〔藤谷部会長〕
 ありがとうございました。

 それでは、引き続きまして、山内委員、山内委員までご質問いただいた後、1回事務局からお答えをいただくということで、よろしくお願いいたします。山内委員、お願いいたします。

〔山内委員〕
 一つは次回に向けての意見で、もう一つは、質問になります。

 次回に向けての意見につきましては、椎名委員の一つ目の意見と同じ意見になります。冨田委員の最初のほうのコメントにありましたように、新型コロナの影響の金額につきましては、国民の関心も強いところかと思っております。今回は包括的な金額の抽出が難しかったということをお伺いしたのですけれども、次回は、できましたら新型コロナの影響を金額として抽出して、一覧にまとめるといったようなことがあるとよいかと思いました。

 例えば、参考資料1の5ページ、(2)のフロー状況についての箇所では、新型コロナの影響が金額として幾つか明示されておりますけれども、ほかにもいろいろとあるかと思いますので、コロナの影響を、全ては難しいかもしれないのですけれども、可能な範囲で網羅した形で、金額の明示があると、次回はよいかと思っています。こちらが意見です。

 もう1点、細かい箇所ですけれども質問させてください。参考資料1の6ページ、財源の箇所の主な増減要因等についての箇所において、所得税は前年度とほぼ同額(微増)と記載されておりまして、そのように説明もされていました。コロナの中で微増しているという点が少し気になったのですけれども、その理由について教えていただけますでしょうか。よろしくお願いします。

〔藤谷部会長〕
 ありがとうございました。

 それでは、今の冨田委員、椎名委員、そして山内委員からのご質問、ご意見について事務局からお答えをお願いいたします。

〔園田公会計室長〕
 ありがとうございます。

 冨田先生からいただきました19ページの、例えば、今回、中小企業対策として、政策金融公庫への出資であったり、一方で、財政投融資特別会計において貸付けが行われております。ここら辺の関係が見づらいところはあるかと思いますけれども、例えば、政策金融公庫への出資であれば、それは中小企業対策費に含まれております。また、財政投融資特別会計からの貸付けであれば、その貸付けのお金は「その他の事項経費」の中の財政融資資金への繰入のお金をもって、その資金から貸付けが行われますので、そういった意味で、今、このような形で記載させていただいております。ただ、先生のご指摘、どのようにそこを開示するかは、また引き続きご検討させていただければと思っております。

 椎名先生からいただきました、一つ目がコロナの部分をできるだけフォーカスしたようなものがあってもいいのではないかというところでございますけれども、この部分につきましては、まず、そもそもが、コロナ対策の補正予算がついておりますが、これは既存の当初予算の項目にひもづく形になっておりますので、決算上コロナ関係という形で切り出すことはできない状況にございます。とはいえ、国の財務書類の全体像で見れば、仮に令和2年度の3次にわたる補正予算がコロナ対策であると想定した場合ですけれども、例えばコロナによる影響で今回業務費用が40兆円増加している、ストックで現金・預金が増加している、出資金が増加している、また、財政投融資特別会計の貸付けの増加であったり、財投債の増加であったりというような全体像が見えるような形となっておりまして、それを「『国の財務書類』のポイント」の中で、個々の項目でできるだけ増減要因の中で説明させていただいているという状況でございます。したがいまして、大前提としてそこが切り分けられない状況の中で、我々として、今回工夫させていただいているという状況をご理解いただければと思います。そこは山内先生からいただいたお話と同じでございますけれども、そういった形で今我々としては、工夫させていただいているところでございます。

 もう一つ、椎名先生からいただいた資料の3-2の区分別収支計算書の英文につきましてですが、これは、キャッシュ・フローという風には、我々として、なかなか言いづらいのかと。というのは、区分別収支計算書というのは、あくまでも歳入歳出決算を別の項目、いわゆる業務収支と財務収支に分けた形で報告しているものでございますので、いわゆる企業会計ベースのキャッシュ・フロー計算書とは意味合いが違うというところがありますので、今、歳入歳出という表現にこだわっている状況でございます。

 いずれにしても今回、初めての取組でございますので、こういった部分につきましても、また、日本公認会計士協会様も含め、意見交換させていただきながら、良いものをつくれていければと思っておりますし、また、討議と分析というご提案も、我々としては検討していきたいと思ってございます。

 また、山内先生から所得税の部分について、ご説明させていただきます。

〔宮嶋課長補佐〕
 山内先生からのご質問に対して、ご説明させていただきます。

 所得税の税収がほぼ同額ということだったのですけれども、要因としましては、給与税収や配当税収は減少したのですが、株式の譲渡税収が増加したことによりまして、トータルとしては、ほぼ同額の微増といったことでございました。

〔山内委員〕
 ありがとうございました。

〔藤谷部会長〕
 事務局からは、差し当たり以上でよろしゅうございますか。

 ありがとうございました。

 それでは、ただいま佐藤委員、関根委員、大塚委員、土居委員、黒川委員が挙手していらっしゃいます。まとめて5人だとちょっと質問がありますので、申し訳ありませんが、佐藤委員、関根委員、大塚委員までで一旦切らせていただいて、お三方からご質問をまとめて頂戴して、それに事務局からお答えいただき、土居委員、黒川委員、少しお待たせして恐縮でございますが、よろしくお願いいたします。そのように進めさせていただきます。

 それでは、佐藤委員、よろしくお願いいたします。

〔佐藤委員〕
 ありがとうございます。

 私からは、先ほどの2名の委員の先生方と重なるのですが、次年度に向けた意見ということで申し上げさせていただきます。

 国民への説明というものを前提とした場合、やはりもう少し分かりやすいアピールが必要かと感じております。そのためには、このポイントというパンフレットからさらに、スリーブレットポイントのようなものをまとめた、一見して分かるものが必要であろうと考えます。

 国民に理解してもらうためには、メディアに理解してもらう必要があります。このパンフレット自身は、このままでもいいかと思うのですが、それを発表するときの資料の工夫などが考えられると思います。そこでは、例えば、特徴となるスリーポイントで、業務費用は前年比40兆円増とし、そこに、コロナ交付金30兆円と、持続化給付金7兆円が影響を与えたとするだけでも、全ての区分を切り分けて数字を整理しなくても、コロナの特徴を拾うことが出来ます。また、超過費用が過去最大など、もちろん情報の中立性というのは必要であって、過度な誘導はすべきではないのですが、まず、単純な見出しから、このパンフレットまで誘導するという仕組みについても、今後、工夫されるとよろしいかと感じました。

 以上です。

〔藤谷部会長〕
 ありがとうございました。

 それでは、関根委員、お願いいたします。

〔関根委員〕
 ありがとうございます。私の意見は今の佐藤委員の意見に非常に似ているものでございます。

 今回、委員としては、初めてこの議論に参加させていただき、改めて、国の財務書類等の資料を読ませていただいたところ、私も含め企業会計を中心に業務を行っている者にとっても、非常に読みやすく分かりやすく書かれているのではないかと思っております。もちろん国の財務書類等に特有な用語等も結構ありますが、非常に細かく分析されており、いろいろな観点から皆さんにご指摘いただいた点を公会計室の方が検討いただいて作成されていると感じております。

 他方で、国民の方々にアピールし理解して頂くという観点からすると、もう少しポイントを絞った全体像がわかるざっくりしたまとめが必要なのではないかと思います。企業会計等もあまりよくご存じでない方もいらっしゃることを考えますと、佐藤委員が、おっしゃったようなスリーブレットポイントのようなものでもよいですし、官庁でも、また企業の決算発表などでも1枚物で全体像をまとめているものがあるかと思います。そうした形で特徴的なことをまとめたものをつくって、その詳細は注をつけ、このページを見てくださいといった形にすると、すごく分かりやすいかと思っております。今回は既に発表も迫っていますので難しいかもしれませんけれども、来年度以降、そういったことを検討いただければと思います。

 そういう意味では、先ほど話のあったコロナの状況というのも、国民の関心が高いところと思いますので、細かい分析というのは来年になってもなかなか難しいのかもしれませんが、ざっくりとした説明もいれていければ、よいのではないかと思います。

 なお、説明にもありましたように、当初予算は財政健全化も踏まえてつくられていましたが、ここまでコロナ禍が続いたことから、ある程度やむを得ないところがあるのかと思いますものの、財政健全化という旗印とはかなり異なる方向に行っているのではないかと思います。この点は、現在、いろいろな議論が行われているところですので、財務省として、このような形で、事実をしっかり見せて、国民の方、皆様に理解いただくことは非常に大切だと思っております。

 そういう意味では、国の財務書類等の取りまとめ、公表がこの時期になってしまうという点については、もう少し早くならないかと思っております。この点、以前も申し上げましたところ、現行の制度ではなかなか難しいということでしたが、国としては、本来はもう少し早いタイミングで作成・公表していくことが必要ではないかと思っております。これは、最後の財務書類をつくるところだけが一生懸命やっても難しいということだと思いますが、これを早めに作成し、しっかりとアピールして、事実を理解し活かしてもらうということが非常に重要だと思いました。

 私からは以上です。ありがとうございました。

〔藤谷部会長〕
 ありがとうございました。

 それでは、大塚委員、お願いいたします。

〔大塚委員〕
 すみません。発言させていただきたいのですが、既にここまで発言された委員の先生方言われた点、それとまた、私としても同じ意見で、今回3回も補正が行われて、結果としてコロナが財政にどういう影響を与えたのかということに関しては、今回作成された国の財務書類が非常に重要なものになっていると考えています。逆に言えば、そういう全体像を捉えられるのは、この資料しかないのではないかと思います。

 そういう意味で、今、佐藤先生、それから関根先生は国民への説明ということでお話をされていたのですけれども、私としてはそれだけでなく、やっぱり今後の国の財政運営や、政策決定に関して、非常に重要な資料になってくるだろうと考えております。

 ただ、正直まだ現段階では基礎資料の段階で、まだ十分に分析が行われているわけではない。これも多くの先生が言われているように、コロナによる影響の部分、出したいのですけれども、まだ出しきれてない部分があるということで、その事情は十分承知していますが、それを分析する基礎資料であることは確かです。ですから、この辺は質問という形になるかどうか分からないですが、これを公開した上で、活用を促していく取組が今後さらに必要になってくるのではないか。まだ現時点ではコロナ対策は今の状況に対しての対策がまず最優先であるのですけれども、当然にその後、一体何が行われたのか、どうなったのかという、総括が行われることになると思います。その総括に対して、国の財務書類の活用を促すような取組が必要だと思うのですが、そういった点に関して、今後、何らかの取組というか、それを促すようなことを、これから何かされていく予定があるのかどうか、あるいは今後の総括がどういう形で行われると見込まれているのかというようなところについて、もし見込みがあれば、教えていただきたいと思います。よろしくお願いします。

〔藤谷部会長〕
 大塚委員、ありがとうございました。

 今のお三方からのご質問、コメントは基本的に同じ方向を向いていたと承知しております。どうやって分かりやすさを高めていくかということでありますけれども、今の最後の点、時間も限られておりますし、大きな宿題だと思いますので、今の大塚委員からの最後のご質問に絞る形で、事務局からお答えをいただければと思いますが、いかがでしょうか。

〔園田公会計室長〕
 大塚先生の、非常に大きな話かと思います。まず、我々としまして、その活用をどう定義するかという話でございますが、我々としては、こういった形で、企業会計の手法を用いて、国にはこれだけの資産が実はあるのではないかといった誤解や、また、一般会計、特別会計合わせても、実はそういう、一般会計の、特別会計に何かしらの不正な操作がなされているのではないかといった誤解について、まず、説明責任を果たすということが、一つの大きな活用だと我々は思っています。

 また、こういった国の財政状況の全体像を示すことによって、また、それをどう分かりやすく説明するか、先生方からいろいろ意見いただいていますけれども、それを踏まえ分かりやすく説明することによって、財政に対する認識が醸成されることで、大きなPDCAサイクルにつながればというのが、今我々の大きな意味での活用、国の財務書類の方向性と考えております。

 そういった意味での取組を進めておりますが、これをまた具体的に、この数字をどう使うかという意味で、これは我々の現時点の取組としましては、事業別のフルコスト情報という形で、この数字をどうPDCAサイクルに回すかという部分は、また3月に公表しますが、そういった意味で公会計という枠組みの中での活用方法については、今いろいろ模索はしている段階でございますが、大きく、マクロ面での国全体の財政状況の説明責任を果たしていく、また、ミクロでの事業別のコストを明らかにしてというような、二つの両輪で今取り組んでおりますので、そういった、大塚先生のご意見も踏まえまして、引き続き検討していきたいと思っております。

〔藤谷部会長〕
 ありがとうございました。

 それでは、今、土居委員、黒川委員、小林委員から挙手をいただいております。恐らく残り時間の関係で、お三方、3先生からのご質問で打ち止めになってしまうのではないかと思いますが、お待たせいたしました。それでは、土居委員から、順次お願いいたします。

〔土居委員〕
 どうもありがとうございます。私はまず、先ほど来ご議論のコロナ対策にまつわる決算をどういうふうに表示するかというところについて、意見を述べさせていただきたいと思います。

 基本的に、先ほど室長からも話がありましたように、もともとそういう経理をしていないということなので、決算ベースで区分して、コロナ対応に幾らかかったかということを精緻に表示するということは難しいと私も思います。

 さはさりながら、幾らかかったのかということに対する国民の関心というのはあるだろうし、さらには、これは財務省でもそういうふうにお決めになってないとは思いますけれども、経済学者側からの提言でもあるわけですが、コロナ対応のために発行した国債は、60年償還ルールにとらわれずに、追加の償還財源を確保した上で区分経理して、国債の償還を早期に行うべきだということから鑑みても、ある一定程度の割り切りでもって、コロナ対策のためにどういう形でお金がかかったのかということを、それなりの見積りをした上で、それに対応していた、その財源に充てられていた国債を別途早期償還するということのためにも、何らかの割り切りでもって、コロナ対応で幾らかかったのかということについての情報を把握しておくということは必要ではないかと思うわけです。

 ただ、精緻に、発生主義とか国の財務書類の基準に照らして、どれだけかかったのかということを精緻に調べるというのはなかなか難しかろうと思います。例えば、私が説明するには一番分かりやすいのは、国立感染症研究所の職員の人件費というのは、あれはコロナ対応なのか、コロナ対応でないのかというと、あの研究所は極めて最前線でコロナ対応に当たっておられる研究所であるということで間違いないわけですけれど、常勤の、コロナでなくても必要とされる人件費というのは、それはそれとして当初予算で計上されているということなので、それがコロナ対応ではないというのか、それともコロナ対応というのかというのを、話を始めるとどこまでたっても、なかなか結論が出てこないという面もあるわけなので、私の割り切りということで1案申し上げると、経済対策では、2年、3年と、数次にわたって出しておられるということですので、コロナ対策のための経済対策と関連づいている予算の決算額を、これは現金ベースになるのかもしれませんけれども、これをコロナ対策のための経費だと割り切るということもあり得ると思いますし、さらには、予備費ですね。コロナ対策予備費は既に財務省も、どういう使途をその予備費から出したかということを公表しておられるわけですので、これは実際支出したということであれば、既に公表されている予備費の使用状況が、そのまま決算とほぼ近い額になるということが考えられるというようなことなので、そういう割り切りの下で、コロナ対策のために幾ら費やしたかということを示すということは、より簡便な方法でできるのではないかと思います。これを国の財務書類というパッケージで出すかどうかというのは、また別問題かとは思いますけれども、何らかの形で、そういう、経済対策で打ち出した予算の見合いとなる決算額、それから、予備費の使途というところで分類をして、お示しになるということは考えられるのではないかと思います。

 少なくとも、基本はなかなか、今の国の財務書類の中から切り出して、コロナ対策のための支出というものを色分けするというのは難しいということは、私もそのとおりだと思いますので、より簡便な方法でできるところはチャレンジしていただきたいと思います。

 以上です。

〔藤谷部会長〕
 ありがとうございました。

 それでは、引き続き、黒川委員、小林委員の順番でお願いいたします

〔黒川委員〕
 黒川です。どうも皆さん、お疲れさまです。

 私から幾つかあるのですが、まず、7ページでミスプリを1か所発見したので、2番目の総務省のところの「16.0兆円:対前年度比+15.8円」というところ、「兆」が抜けている、7ページ、分かりますか、そこ「兆」を入れておいてくださいね。

〔園田公会計室長〕
 ありがとうございます。失礼しました。

〔黒川委員〕
 
それはミスプリなので、よかったね、僕も見落としていました。

 それからあと質問は、4ページの国債の保有者内訳、これずっと私も見てきたわけですけれども、海外の6.84%ということになっているのだけど、財務省の発表だと多分十数%になっていたと思うんですよね。この違いというのが、こちらのほうはずっと日銀統計を持ってきたのだけど、財務省のほうは十数%と。

 これはあれかしら、保険とか年金基金、そういうところ、あるいは預金の取扱機関で、外国系統のところを、財務省はそちらのほうに分類しているのか、分類の仕方が違うのかどうかを、今分かれば教えてほしいということが2番目です。これは自分も含めて、これまで見てきたうちで、うっかりしていたところです。

 それから、3番目は、さっきのCash Flow Statementについてですけれども、これは椎名先生がおっしゃったように、私もどうなのかと思っていたのですけど、「revenue」という言葉が、普通、企業会計だと「収益」ですけれども、政府とかそういうようなところだと「歳入」という言葉で「revenue」を使っていることもあって、事務局も、Cash Flow Statementにするか、あるいは政府系統の言葉、政府会計のほうの言葉を使うかというところで悩んだと思うんです。一応公認会計士協会の方々とも相談しているということだったので、それを踏まえて、「revenue」という言葉を使ったのかなと理解していたのですけれども、でも椎名先生が、専門家だけど、ここはCash Flowだということなので、どこの公認会計士協会と、どこと相談したのか、ここは僕もよく分からなくなりましたけど、いずれにせよ、私もこれをCash Flow Statementにするかどうかというところは、どうなのかなというふうに、気にはなりました。

 それから4点目は、これは大きな話で、コロナ対策というところについて、国民は非常に関心があるという問題ですけれども、恐らく、まだまだ、予算は取ったけれども、使い残し、東日本大震災のときもそうだったんですよ。使い残しが結構あって、今年度、この財務諸表の後、次年度のところに、もう少しはっきりした数字も出てくる可能性があると思うんです。

 それもあるので、総括というのは、大塚さんがおっしゃいましたけれども、もうちょっと後、まだまだ終わってないし、総括はその後だろうとも思います。それと同時に、コロナでこれだけ使ったのはよかったじゃないか、だから全体的にいいんだとなるのは、また恐ろしくて、ずっと20年以上も財政の悪化を見てきた、私は公会計室とともに歩んできたので見てきたのですけれども、定常的に問題なんですよ。だから、これは園田さんと全く同感で、室長とも同感ですけれども、コロナだからよかった、こういうことはいいことだというか、そういうことになるようなものでもない。定常的に問題だということを忘れてはいけない。もし総括ということになると、その先のことまで考えなくてはいけないことになるんです。

 ですから、もう少し総括については、ただただコロナ対策を出して、これだけ助かったよねというような雰囲気ではない。あるいは、もう少し慎重に考えて、トーンを考えなくてはいけないのではないかという気がします。

 それから5番目は、コロナ対策費を抜き出すのは難しいというのは全くそうだと思うのですけど、土居先生がおっしゃったところに少し感じると、キャッシュベースというか、予算ですね、予算と、だから発生主義ではなくて、予算に対して実績計算していますよね。歳入歳出の決算。これは土居先生のほうが詳しい、全く専門なんですけれども、あそこの決算があまり国会で議論されない。予算に対しての決算。あっちのほうから持ってくれば、予算上はコロナ対策とかいろいろ銘打っているわけだし、そこの予算と決算の対比というところから、何か表を持ってくるということはできないのかどうか。これは公会計室の仕事ではなくて、どこの仕事なのか。主計局の仕事なのかどうかということですけれども。それから国会が、一体予算と決算という決算の情報というものをもう少し総括すべきだ、コロナに対して。

 こういうふうに私は思うので、これは土居先生にもお聞きしたいのだけど、そっちのほうから持ってくるわけにいかないか。

 以上5点、長くなりました。失礼いたしました。

〔藤谷部会長〕
 ありがとうございました。

 それでは、最後に、小林委員からご質問いただいて、併せて事務局からお答えを、少し時間も迫っておりますので、手短にお願いできますと幸いでございます。よろしくお願いいたします。

〔小林委員〕
 小林です。もう手短に言います。コロナ対策にかかった費用を別にできないか。別にというか、計上できないかということですが、土居先生や黒川先生と、私も同じようなことを考えています。少しだけ視点を変えて言うと、これから先、いずれコロナ対策にかかった費用を賄うための、何らかの新しい税とか新しい財源を措置するということになる、あるいはそういう議論が出るということだと思います。東日本大震災の復興所得税のようなものをつくろうという議論が出るだろう。

 そうすると、コロナ対策用の新しい税で賄うべき債務はどれなのか、どの金額なのかということは、分かっておいたほうがいいだろうと思うんですね。ですから、それはコロナ対策で実際使った金額がどうなのとか、どういう事業に使ったのかということとは別に、別というか積み上げるべきなのでしょうけれども、それとはまた違った配慮があるかもしれません。

 ですので、今後、コロナ向けの特別な税とか財源措置に対して、それに対応すべき、今の政府の債務はどれぐらいの金額があるのか。それは、細かく見れば、どの事業にひもづいているのかというところが分かるといいなと思いました。

 そういうひもづけの作業は公会計室がやるのか、あるいは研究所がやるのか、どこがやるべきなのか分かりませんけれども、国の財務諸表を使って、何らかの分析をして、そして、参考資料として国民に示すことができるといいのではないかと思っております。

 手短ですが、以上でございます。

〔藤谷部会長〕
 ありがとうございました。

 それでは、今のお三方からのご質問、ご意見に対して、事務局から手短にレスポンスいただければと思います。

〔園田公会計室長〕
 まずは、黒川先生からいただいた個別の話でございますが、まず、ご指摘いただいた誤植につきまして、ありがとうございました。

 また、4ページのほうについて。

〔山嵜会計制度調査官〕
 4ページの公債の保有者内訳について、ご質問ございました。当時、財務省のホームページでは、国債及びT-BillT-Billのみの保有者別内訳が載っておりまして、これをパンフレットに入れるときに、国債及びT-Billの保有者別内訳を載せるということを考えたのですけれども、その際、委員の先生方から、国債のみの保有者内訳を書いてはどうだというようなお話がございました。その関係で、公債の保有者内訳を日銀の統計から計算してここに載せています。そのために、海外がこのような計数になっております。T-Billのほうは海外の保有者が非常に多ございますので、それを合わせたところで保有者内訳を出しますと、先ほど黒川委員ご指摘のような数字になるということでございます。

〔園田公会計室長〕
 あと、黒川先生から参考資料3-2のキャッシュ・フロー・ステートメントの話をいただきましたけれども、ここについては、バランスシートであったり、業務費用計算書であったり、キャッシュ・フロー以外の、いわゆる区分別収支以外の部分については、基本的に協会様からいただいたご意見を反映させていただいております。

 区分別収支計算書だけ、我々も慎重に、ここはいわゆる歳入歳出、国の出納整理期間を含んだ、現金・預金残高となっておりますので、そういう意味合いを残すという意味で、この部分については、予算上も歳入・歳出をRevenueExpenditureとしておりますので、やはり歳入歳出決算をベースとしているということを示す意味で、こういう形にさせておりますが、ほぼほぼ協会様のご意見を反映させていただいているという状況でございます。

 先生方からいただいた大きな一つのコロナの部分のお話につきましては、これは国の、まず決算のほう、まず、当初予算の項目にひもづく形で決算もつくっておりますので、そもそもコロナ関連だけを切り出すということが、決算においてもできない状況にありますので、そういった状況を踏まえつつ、また、我々としてどのように取り組むべきかという部分については、引き続き、検討させていただきたいと思っております。

〔藤谷部会長〕
 ありがとうございました。

 司会進行の不手際で、先生方に窮屈な思いをさせてしまいましたこと、おわび申し上げます。予定しておりました時間になってしまいましたので、まだご質問、ご意見おありの委員も恐らくいらっしゃることと存じますが、残りはメール等によりまして、事務局宛てにご意見をいただければ、大変ありがたく存じます。ご協力、誠にありがとうございました。

 それでは、以上をもちまして、本日予定しておりました議題を終了させていただくことといたします。

 なお、資料につきましては、特別会計財務書類が1月25日に国会提出予定であることから、いずれの書類も同日に公表される予定と聞いておりますので、資料の扱いにつきましても、保秘にご注意、ご協力くださいますようお願いいたします。

 最後に事務局から連絡事項をお伝えいたします。

〔園田公会計室長〕
 次回の部会につきましては、3月22日を予定しております。既に事務局から日程調整のご連絡をいたしておりますので、ご協力のほどお願いいたします。

 また、国の財務書類やパンフレット等につきましては、公表後、郵送させていただきます。

 以上でございます。

〔藤谷部会長〕
 それでは、本日はこれにて終了とさせていただきます。ありがとうございました。

 

午前11時17分閉会