財政制度等審議会 財政制度分科会
議事録
財政制度等審議会 財政制度分科会 議事次第
平成30年11月8日(木)10:00~12:05
第3特別会議室(本庁舎4階 中-412)
1.開会
2.議題
取りまとめに向けた審議
3.閉会
分科会長代理 |
増田寛也 |
鈴木副大臣 伊佐大臣政務官 太田主計局長 神田次長 阪田次長 奥総務課長 安出司計課長 阿久澤法規課長 中澤給与共済課長 一松調査課長 西山参事官 寺岡主計官 日室主計官 北尾主計官 斎須主計官 前田主計官 中島主計官 吉野主計官 関口主計官 森田主計官 岩佐主計官 内野主計官 渡邉主計企画官 佐藤主計企画官 |
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委員 |
倉重篤郎 黒川行治 神津里季生 佐藤主光 武田洋子 竹中ナミ 中空麻奈 永易克典 藤谷武史 宮島香澄 |
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臨時委員 |
秋池玲子 老川祥一 大槻奈那 小林慶一郎 小林 毅 進藤孝生 末澤豪謙 十河ひろ美 田近栄春 冨田俊基 冨山和彦 神子田章博 吉川 洋 |
午前10時00分開会
〔 増田分科会長代理 〕 おはようございます。ただいまから財政制度等審議会財政制度分科会を開催いたします。
お忙しい中、御出席をいただきましてありがとうございます。
本日は、建議の取りまとめに向けて、お手元に配付をしてございます平成31年度予算の編成等に関する建議(案)について、御審議をいただきます。本日お配りしております建議(案)につきましては、これまで小林毅委員、田近委員、土居委員、冨田委員、中空委員、吉川委員に御審議をいただき、取りまとめていただきました。起草委員の皆様方、大変御苦労さまでした。
今回の建議について、現時点での取りまとめのスケジュールを初めにご紹介したいと思います。本日、これから建議の本体、参考資料、概要について御審議をいただきます。そして次回の分科会は、今月の20日火曜日、午前10時からを予定しております。タイトなスケジュールということで、円滑な意見集約のため、本日のこれからの御審議のほか、書面によるコメントの機会を設けたいと思います。したがいまして、本日の会で皆様方から御意見をいただき、さらに、その会議終了後に追加でコメントがある場合は、大変タイトで恐縮ですが、明日の9日金曜日のお昼12時までに事務局に提出をいただきたいと思います。何とぞ御理解をいただければ幸いでございます。
それでは、スケジュールは以上にしまして、これから議事に移らせていただきますが、全体を大きく3つに分けて審議をいたしたいと思います。まず初めに建議の総論についての議論を行います。その後、各論について、起草委員の方々の御予定も踏まえて、順序は3番目から8番目まで、すなわち文教・科学技術が3番目ですが、それから次に4番目の社会資本整備、そして5番の農林水産、6番のエネルギー・環境、7番目の中小企業、8番目の出入国在留管理・治安、これらについて、40分程度議論すると。そして最後に1番目の社会保障、2番目も地方財政、さらには9番目の外交関係、10番目の防衛について、こちらを目安ですが50分程度と。総論、その次に3から8まで、そして最後に1、2、9、10というふうに大きくパートを3つに分けて審議を進めたいと思います。
そして委員の皆様からいただいた御意見を、起草委員の皆様方からお答えしていただくという形で進めていきたいと思います。
それではまず、総論の本文及び参考資料、概要の記載について、御意見をいただきたいと思いますが、お手元に神津委員及び本日欠席の岡本委員、宮武委員より意見書を提出していただいておりますので、お手元にお配りをしてございます。お目通しをいただきたいと思います。
それでは、いつもどおりですが、ネームプレートを立てて、まず総論の部分について、御意見をいただきたいと思います。全体を終わらせるという意味で極力手短に御意見をいただきたいのと、それから是非、できるだけ具体的な修文案でいただけますと議論が進みやすいと思いますので、その辺りも御配慮をいただきたいと思います。
それでは御意見を、今ネームプレートが上がっている、まず永易委員、宮島委員、老川委員、この順番で進めていきたいと思います。永易委員からお願いします。
〔 永易委員 〕 起草委員の先生方、本当に迅速に、作成していただき、本当に内容も良いと思いますので、ありがとうございました。
私からは、この総論部分については3つほど申し上げたいと思います。要は全体の印象ですけれども、私がこの会に入らせていただいて、当時のトーンと現在のトーン、これはかなり変わってきているのではないかという気がします。5月にやりましたよね、春の陣。これとも少しトーンが変わっていないかという印象を受けております。そういうものを背景に、5月には、やっぱり消費税の更なる引上げという、これは明示的ではないけれども、更なる歳入改革ですよね。これも国民的な議論を盛り上げないといけないというトーンがあったのですが、これが消えております。秋の陣ですから、総論の総論みたいな話なのだと思うのですけれども、やはり春の陣でせっかく次のステップのコメントがあるわけだから、是非秋の陣も踏襲してほしいな。5ページ辺りの10行目ぐらいがいいのかなと思うのですけれども、その後の文言とのかかわりで、入れ方はいかようにもなるのではないかという気がいたします。これが1点。
2点目が、歳出目安ですね。これも結構コメントがありますけれども、私が何回も申し上げていると思うのですが、考え方というよりは金額目安ですね。これがやっぱり欲しいという気がします。これは今回ではなくて次回かもしれませんけれども、5,000億とか、ああいう数字があると、非常に効くんですね。実際この3年間を見て一番効いたのはあれではないかという印象があるので、是非そういうことを検討してほしいなという気がするわけです。
それとやっぱり補正予算ですね。これもやっと春の陣で入ったと思ったら、今回は消えております。したがって、文言は前回と同じようなトーンでいいと思うのですけれども、例えば8ページの最後に、その部分に触れていただくとちゃんと入るのではないかという気がいたします。
以上です。
〔 増田分科会長代理 〕 ありがとうございました。今の点はお聞きしておいて、またまとめて何かございましたら起草委員のほうからお答えいただきたいと思います。
宮島委員、お願いします。
〔 宮島委員 〕 ありがとうございます。総論のところは、平成に関する思いを強く出した起草委員の方々の思いが入っているなと感じて拝見しました。
1つ御質問なのですけれども、途中でキーワードのように「共有地の悲劇」というのが入っているのですが、これは私が無知なのか、すごくよく分かっている単語ではないのですが、これはどうした形で入れていただいたのかをお伺いできますでしょうか。
〔 増田分科会長代理 〕 それでは、これは起草委員のほうからお願いしたいと思いますが、総論のところですから田近委員か冨田委員かどちらかでよろしいですか。
それでは、田近委員。
〔 田近委員 〕 「共有地の悲劇」自身は、ここに書いてあるようにハーディンの「The Tragedy of the Commons」、その説明は本日はしませんけれども、気持ちとしては、公費というのは皆ただで使えると、だから気がついたら、要するに公費頼みだと。あたかも共有地のように、公費は皆が使えるものだと思っているということをただしたということで、この言葉自身は、以前に社会保障のところでも使っていたと思います。違和感とかあるならば、是非それを伺って、こちらで修正すべきことがあれば修正させていただきます。
〔 増田分科会長代理 〕 宮島委員。
〔 宮島委員 〕 ではそれに関して意見ですが、違和感というほどのことはないのですが、私が思うに、総論を見たときに、記者たちが、自分たちに近いと思うかどうかというのは、少し気になるところです。キーワードとして、この共有地のほかに「ポスト真実」、「合理的無知」と、やっぱりかぎ括弧で入っているのですけれども、その入り方が、これ、知っているでしょっていう感じの入り方だと思います。少なくとも「共有地の悲劇」に関しては前に説明はありますけれども、「アクセス可能な資源が過剰に利用され枯渇する問題」というのは、これだけで頭に入るのが少し厳しいかなと思っておりまして、これをキーワード的に入れるということに反対するわけではないのですが、キーワードを入れるときに、言葉の順番を変えるというか、こういう単語があります、これが問題です、みたいな形で入れていただくほうがいいのではないかと思います。
同じように概要のほうに、やっぱり「共有地の悲劇」というのがぽんと単語だけで入っていますけれども、場合によっては概要しか見ない人もいるのではないかと思います。もちろん概要を見て、お、これは何だと思って本文を読むようにするという引きつけ効果があれば、それはそれでいいとも思いつつも、こういう「共有地の悲劇」という単語だけを見て、俺には分からない、というようになるのは嫌だなと思いまして、よろしくお願いいたします。
〔 増田分科会長代理 〕 ありがとうございました。小林委員、お願いします。
〔 小林(毅)委員 〕 ほぼ同業の方なので、その気持ちもよく分かりますけれども、今おっしゃった後者の部分ですね。ここで何だろうと思ったら、やっぱり普通は本文に当たるのではないかと。この「共有地の悲劇」に関して言うと、ある意味、術語というかテクニカルワードみたいなところがありますので、一応注のところにも、この文言を入れてあるので、これ以上書くと、今度は逆に間違った解釈というか、間違った提起の仕方になってしまうのかなという気が個人的にはします。
もう一つの「ポスト真実」のほうについては、もう少し工夫してもいいかなと思いますけれども、「共有地の悲劇」は、これ以上書いて今度は逆に、そこだけ読んでわかったような気になられてもちょっと困るかなという気もいたしますので、その辺りは検討させてください。
〔 増田分科会長代理 〕 それでは、また検討をお願いします。
老川委員、お願いします。
〔 老川委員 〕 私は総論の趣旨については大筋同感で、異論を唱えるところはあまりありません。起草委員の方々、本当に御苦労さまでした。ありがとうございます。
その上で、私も文章を書くのが商売なもので、若干気になるところがありますので幾つか申し上げますが、今、宮島委員が取り上げた「共有地の悲劇」、これについては、確かに一般の人にはあまり聞きなれない言葉で、注を読めば意味は分かるのですが、ここに注目を引きつけるというのであれば、むしろ「コモンズ(共有地)の悲劇」とやると、全然それは知らない人も何なんだと思って注を読んで、ああ、そうかというふうに納得するのではないかなと思うので、そのちょっとした工夫だけでも大分違ってくると思いますので、御参考までに申し上げます。
それから私が気になっているのは、第一に、1ページの14行目に「ハイパーインフレーションなどの惨禍を招いた歴史がある。この過程で」、これでも分かるのですけれども、要するにここで言いたいのは、このインフレによって国の債務は実質的に目減りしたけれども国民の資産が減ってしまったということを説明しているのでしょうが、「この過程で」という言葉が、どの過程を言っているのかよく分からないと思うので、「このインフレ―ションによって」とかですね、そういうふうにもう少し砕いて言ったほうがいいのではないのかなという気がします。
それから20行目、「現在の世代のみが受益する費用の負担」、これも意味は分かるのですけれども、「現在の世代のみが受益し、その費用の負担は将来世代に」というふうに言ったほうが分かりやすいと思うので、そこのところはひと工夫していただくとありがたいなと思います。
それから、これはあってもなくてもいいとは思うのですが、3ページの一番上の、「社会保障関係費については、我が国の社会保障制度は」とあって、この「社会保障関係費については」は、多分9行目の「次に、税収については」というふうに項目をはっきりさせるために言ったのだろうと思うのですが、「関係費については、我が国の社会保障制度は」と、「は」がつながるので、最初の「社会保障関係費については」という言葉はなくても、「我が国の社会保障制度は、こうこうこういう考え方のもとで」ということで十分意味は通るのではないのかなと思います。
あと4ページ目の19行目、これもこれで間違いではないのですけれども、「財政問題の解決には国民の理解が不可欠である中、受益と負担の乖離が」とあるのですが、ここももう少し分かりやすく、「国民の理解が不可欠であるにもかかわらず、受益と負担の乖離が云々として受けとめるのが困難となっている」というふうに、もう少し砕いて説明していただいたほうがいいのではないかなと思います。
以上です。
〔 増田分科会長代理 〕 ありがとうございました。また御検討ください。
佐藤委員、お願いします。
〔 佐藤委員 〕 ありがとうございます。
「共有地の悲劇」は、私も授業で教えているのでいいのかなと思います。細かいことは井堀先生が論文に書いているので、参考にされてはいかがでしょうか。
さて、なぜ受益と負担の乖離がいけないのかということについて、もう少し踏み込んで議論があっていいと思うのですね。それは単に将来世代に対して不公平というだけではなく、負担は実はシグナルであるということなのですね。例えば負担が高いということは、実は本当はコストが高いのだとか、財政状況が悪いのだというシグナルを国民に送ってくれているはずなのです。でもその負担が例えば一般会計からの繰入れの結果、公共料金が意図的に下げられたりすると、本当は水道料金はもっと高いよね、だって原価が高いのだから、というというシグナルが伝わらないわけですし、まさに奈良方式のときの議論にありましたけれども、保険、一般会計からの繰入れで社会保険料を意図的に下げていれば、医療費は安いのだというシグナルを国民に送ってしまうということになりますので、なぜ受益と負担は乖離してはいけないのか、負担は大事なシグナルなんだ、だからそのシグナルを伝えなければならないのだ、というメッセージ、これは金利についてもそうですが、そういうメッセージがあっていいのかなと思いました。それが1つ目。
それから7ページのところで、例の消費税の増税対策、増税に伴う経済対策については、当然のことながら効果的・効率的かつ財政規律と調和しなければならない、それは当たり前なのですけれども、もう少し踏み込んで議論があっていいのかなと思う。例えばこれをきっかけに財政の膨張につながってはいけないとか、本来やるべき支出を前倒しにするとか、そういった形でできるだけ将来的な財政の膨張につながらないようにするとか、もう少し強い口調の議論があっていいのかなと思いました。
以上です。
〔 増田分科会長代理 〕 ありがとうございます。
大槻委員、お願いします。
〔 大槻委員 〕 ありがとうございます。
非常に分かりやすい建議だと思うのですが、私もネットの世界で仕事をしていますと、皆様が伝えていただいている新聞ですら読まない世代がどんどん増えているという中で、どこまで伝えられるのかというのを非常に思いながら読んだ次第でございまして、その意味では、キーワード、先ほど来の「共有地の悲劇」も、もっと前面に、何らかの形で伝える工夫というのをしていったらいいのではないかなと思いますし、総論の総論の、そのまた総論かもしれませんが、そもそも、このプレゼン資料ですとかも、もう少し直接ネット世代にも伝えられるような工夫というのがあってもいいのかなと感じた次第です。
最後に細かい点で2点ほど、ページ4の先ほど来の「共有地の悲劇」の「コモンズ」をつけ加えるというのは、メッセージ性がより伝わりやすいと思いましたので、それはいいのではないかなと思った次第です。
それともう1点、5ページ目の下から2行目の「合理的無知」は、例えば「国民をあえて情報を獲得しないという望ましくない選択に追い込む」とか、そのような感じのほうがベターかなと思った次第です。
以上です。
〔 増田分科会長代理 〕 ありがとうございます。後のほうは分かりました。最初のネット世代に伝える工夫というのがなかった、というのはもう少し具体的にありますか。
〔 大槻委員 〕 別ページで、このいただいている資料のさらに絵解き版的な、今の課題は何であり、それに向かってどういうことを提案しているのかというのを簡単にまとめるような工夫があってもいいかと思った次第です。
〔 増田分科会長代理 〕 ありがとうございます。
神津委員、お願いします。
〔 神津委員 〕 3点申し述べたいと思います。
まず1点目ですけれども、財政再建健全化、財政規律の重視、これは当然のことでありまして、しっかりと表現されていると思いますが、事後に補正予算が抜け穴にならないということについても、言っておくべきだと思います。
それから2点目ですが、財政規律はもちろん重要ですが、一方で貧すれば鈍すという事態を招来することがあってはならないと思います。この間の20年以上の格差拡大の実態を直視し、生活者の安心・安定の基礎となる社会保障、教育といったところの持続性の担保ということの観点が不可欠だと思います。
3点目ですが、将来世代にこの国をどう引き継いでいくのかという観点が極めて重要です。受益と負担の乖離については十分な表現があると思いますが、税財政の構造問題ということについてメスを入れるということが不可欠だと思います。財源調達能力の回復であるとか、あるいは一方での再分配機能の強化といったことも含めて、やっぱり構造問題についてもメスを入れるべきだということ、そこへの踏み込みもあわせて必要だと思います。
以上です。
〔 増田分科会長代理 〕 ありがとうございます。
別資料でもいろいろいただいていますので、それも含めてまた検討させていただきます。
進藤委員、お願いします。
〔 進藤委員 〕 私も、この「共有地の悲劇」に少し違和感を覚えているという意味で、あえて発言したいと思います。コモンズというのは、やはり、牧草地のイメージで、資源に上限があり、皆食べてしまったらなくなってしまうものであるということで、それが公費、税金だと言っているわけですね。しかし、公費は、資源のように限定されているものではないため、どこまで行けば「共有地の悲劇」なのかが必ずしもよく分からない。この「共有地の悲劇」という比喩が、拡大しつつある財政に対する比喩として本当に適切なものなのかどうか、もう一度有識者の皆様で確認をお願いしたいと思います。また、多くの人に読んでいただく文章なので、「何だこれは」と思わせてしまう表現は望ましくないのではないか、少なくとも、よくわからないと思う読者が一人いるということを申し上げたいと思います。
〔 増田分科会長代理 〕 ありがとうございました。今の点も含めて、また検討いたしたいと思います。
小林慶一郎委員、それから末澤委員とお願いします。
〔 小林(慶)委員 〕 すみません、短く2点だけコメントしたいのですけれども、総論についても私は基本的にすごく賛成しております。それで最後に「将来世代の代理人にこの審議会はなるべきである」というような位置づけが出ているのは、大変良い主張だと思うのですけれども、もう少し強調されてもいいのかなと思ったのは、将来世代の代理人が今いないということは、そもそも今の民主主義あるいは今の人間の政治体制の、解決しなければならないある種の欠陥であるということだと思うのです。ですから財政以外のいろいろな環境問題とかも含めて、将来世代の利益を代理する人が必要になってきている時代なのだということを強調して、その任務というか、その責任を財政審議会として担うべきだということなのかもしれないと思います。以前、財務省のOBの方から、そもそも財務省というのは将来世代の代理人であるという、そもそもそうあるべきだったのだというような話を昔聞いたことがありますけれども、そういう意味では、こういう役割を果たす機関が必要で、それを財審が担いたいというのが非常に強くて良い主張なのではないかと思いました。
あともう一つ、細かいことですけれども、概要の85ページ以降の3枚紙のところで、総論の2ページで将来、要するに後世への申し開きができるのかという強い表現があって、これは、私自身は非常に良い表現だと思うのですが、それを例えばこの概要のほうにも一言入れてみるというようなことがあってもいいのかなという気がいたしました。
以上です。
〔 増田分科会長代理 〕 今の最初のほうの将来世代の代理人がいないという民主主義の悲劇、もし具体的に、どの辺りに記述するという何か案がありますか。
〔 小林(慶)委員 〕 それがその6ページの最後の部分に、将来世代の代理人になりたいと。そうですね、そこの最後の段落のところに少し、そもそも現在の民主主義の体制の中では、そういう将来世代の代理人の役割がいなくて、それが今まさに非常に大きな問題を引き起こしているのだというようなことを表現しておくといいと思う。修正文のアイデアは、何か後でお送りしたいと思います。
〔 増田分科会長代理 〕 分かりました。ではお願いします。
末澤委員、お願いします。
〔 末澤委員 〕 どうもありがとうございます。
先ほども何人の方から御指摘がありまして、私も今回、こちらの総論を読んで、やっぱり前回までと相当トーンが違うなと。今回は下書きを執筆された方の能力、レベルの高さがちょっと際立ち過ぎている感が若干ありまして、というのは、先ほどの4ページの上のほうから行きますと、8行目「フリーライダー」、その後「共有地の悲劇」ですね。右のページ、5ページに行きますと「ポスト真実」、あと「エピソードに基づく政策立案」、「エビデンスに基づく政策立案」、その下には「合理的無知」ということで、短いところで一般の方には聞きなれない名称がちょっと多過ぎる感があるのと、その場合、もう少し前後に説明を入れたほうがいいのと。
あとこれは是非修正いただきたいのですけれども、2ページの16行目です。先ほどのものと実はベースは同じかもしれないのですが、「平成14年度(2002年度)から掲げている国・地方合わせたプライマリーバランスの黒字化」という、昨年までの最大の目標について一言触れているのですけれども、じゃあプライマリーバランスの黒字化って何だと、何で必要かということが書いていないのですね。そうするとこれをぱっと読んで、これは去年までの議論を分かっている人でないと理解できないなというトーンが相当出てくるんじゃないかと。少なくともプライマリーバランスの黒字化の意味と、なぜこれが必要かについて、昨年まではそれなりに言及があったと思います。これは少し詳しく書いていただかないと、もうプライマリーバランスの黒字化もどうでもよくなったような感が、逆に去年も読んでいらっしゃる方から見ると出てくるのではないかと思いまして、内容はもうまさしく私の思いと全部一緒なのですけれども、特に初めて読まれた方が、やっぱり納得感を得る、そうだなと思われるような書きぶりにされたほうがいいのではないかと思います。
以上でございます。
〔 増田分科会長代理 〕 ありがとうございます。
神子田委員、お願いします。
〔 神子田委員 〕 私も最初に補正予算の点は、皆様おっしゃったように触れたほうがいいと思います。
それから今、末澤委員がおっしゃったプライマリーバランスってどういう意味があるのかという話ですけれども、これは確かに前回、補注のところで詳しく、こういう意味があると書かれていたのですが、私が前回のこの審議会で、何か改善点はないかみたいな意見を言ったときに、この起草に当たって、初めてこれを読む人でも分かるように、新しくこの議論に興味を持って参加するようなことができるように書いてもらいたいと注文したのですけれども、今のプライマリーバランスの話は、全く私の意見が見向きもされなかったということで、非常に残念に思っております。
それで先ほどから内容が難しいという話がありますけれども、最初の、記者がこれしか見ないと言われた概要ですね。ここの最初の数行って非常に大事だと思うのですけれども、まず2行目に「平成の時代は」という構え方、非常に良いと思って、この辺はやっぱり記者も飛びつくところなのですが、「極めて厳しい財政事情を新たな時代に残し」と、ここまでは分かるのですが、この「伝えようとしている」という、「伝えようとしている」の意味がわからなくて、何か良いことを伝えるのであれば分かりますけれども、これはやっぱり平成の時代はだめでしたということを伝えたいということですね。そうすると何を伝えるかというと、何かその次に書いてあること、「平成は」というところの、この教訓を伝えようとしているのではないかなと感じるのです。ですから何を伝えようとしているのか、そのメッセージをはっきりと打ち出したらいいと思うのですね。打ち出したらというか、このメッセージを伝えようとしているんだということをはっきり書いたほうがいいと思うのです。
それと「受益と負担の乖離が、国民が財政をみずからの問題と受けとめることを困難にした」というのは、私も前回の地方財政のところで、ああ、だから、何とかなっちゃうから危機感を感じないのだというのはなるほどというふうに、それは地方レベルからそうなのだと思って、非常に重要なポイントだと思うのですけれども、多分、ここを1行読んだだけでは、何のことだか分からないという人がいると思うのです。これは非常に大事なメッセージなので、ここはもう少しうまく書いたらいいかなと思っていて、私も後で考えてメールで送らせていただこうと思います。
それと概要の4つ目、「エビデンスに基づく政策立案の推進」と、その後の「当審議会の発信力の強化」。このエビデンスに基づく政策を立案するのは、おそらく財務省あるいは各省庁で、当審議会とは主体が違うのですね。だからここで並列にしているのがよく分からなくて、例えば「エビデンスに基づく政策立案の推進をすべきである。そのためにも当審議会の発信力の強化が必要」というような言い方をしていただいたほうがよいかと思います。
それと本文の中で5ページ目の20行目、「複雑で専門的に過ぎる説明は、財政問題やその解決のための方策を理解しようとする際において」、これ、問題意識は分かるんですけれども、そこでまた「機会費用」というあえて難しい言葉を使っていると。これはやっぱり何か書いている人が、心から分かってもらおうと思っていないのではないかと私は思ったりもします。
最後に6ページ目の13、14の財審の改革のことを書いてあって、まさに代理人という言われ方で私たちも頑張っていかないとと思うのですけれども、「体制や運営のあり方を改革していくことを辞さない覚悟である」というほど、我々の委員の間で議論が深まっていたりコンセンサスがとれているかというと、前回、後半にちょっと意見はありませんかと聞かれただけで、その言った意見も聞いてもらっていないわけですから、本当にその覚悟があるのかよく分からないし、そもそもこの書き方、「改革していくことを辞さない覚悟である」、我々はこういう言葉をあまり使わないと思うので、ここは「改革していきたい」でいいのではないかと思いました。
以上です。
〔 増田分科会長代理 〕 ありがとうございました。
黒川委員、それから十河委員というふうにいきます。
〔 黒川委員 〕 ありがとうございました。起草委員の先生方、御苦労様でした。
私は、6ページの「将来世代を『共有地の悲劇』から守る代理人」という言葉に大変感銘を受け、さっきからずっと考えていました。共有地の問題はいろいろなところで使われますが、環境問題で一番分かりやすいのですね。資源の枯渇を招くというのが一番の大きな問題です。では資源の枯渇を防ぐためにはどうするかという方策で、それぞれ所有権を分割して与えたらどうかというような解決策も言われるわけですね。そうすると自己の効用を最大化するために人々は考えるだろうから、今なくなってしまうよりも、皆それぞれ節度ある使い方をしたほうが長く使えるので、結局効用は大きくなるだろう、というような使われ方をして、「共有地の悲劇」を防ぐためには、それぞれの当事者の交渉とともに、究極的には所有権を分割して与えるというのもあるのです。
それからもう一つ、この「共有地の悲劇」の問題を、環境に関して、特に強くディープな人たちはどういうふうに思うかというと、意思決定に参加できない当事者がいるという問題があるのです。例えば動植物、生態系を保存しようという人たちからすると、我々人間は人間自身にとって都合の良いことは言っているけれども、社会あるいは世界を構成する彼らは交渉に参加できないわけです。そこでディープな人たちは、その生態系の、我々人間以外の人たちの代理人になって、それで交渉に参加するんだというような言い方もするのですね。こういうような意味合いもある。そこで今回使われているこの言葉を見たときに、今言ったように子供たちが意思決定に参加できない、あるいはこれから生まれてくる子供たちは参加できない。その代理人として我々は考えるんだというところまで言っているのか、それを言いたいのだろうとは思うのですね。私であればそういうふうにとったのですけれども。今、私は、数分話していると思うのですよ。それで、その思いが、この「共有地の悲劇」という言葉だけで分かるかということなのです。今お話ししたくらい言わないと分からないような気がします。それからいろいろな派生する問題がある。これを少し考えたほうがいいのではないかな。分かりやすい話をもう一つ言います。
〔 増田分科会長代理 〕 すみません、簡潔に。
〔 黒川委員 〕 分かりました。では、一つ、「共有地の悲劇」問題を財政に関わらせると、我々が今使っているもの、我々には意思決定する手段とか資源はあるのですけれども、それらが枯渇してしまうと、子供たちにはそれだけのものを使えなくなるという問題が一番大きい問題なのです。我々は、100兆円くらいいろいろなものに使いましょうなどと言っているけれども、子供たちはもう余裕がなくて、意思決定の範囲・手段がすごく狭まってしまっている。それを考えなくちゃいけない。
以上です。
〔 増田分科会長代理 〕 ありがとうございます。
十河委員、それから藤谷委員までにさせていただきたいと思うので、起草委員のほうからまとめてお答えをお願いします。
〔 十河委員 〕 起草委員の先生方、お取りまとめありがとうございました。
そのような中で、私も今までの委員の先生方と同意見でございまして、全般的にこれが平成最後のということで、平成に達成できなかった残念なお気持ちは非常に伝わってまいりました。ただ、それが繰り返されているため、重たく感じられている気がいたします。むしろ逆に、次の時代こそという決意のようなものを少し強調されたほうがよいのではないかと思いました。
具体的に申し上げますと、例えば2ページ目の14行目に、「先人たちが苦労の末に達成した特例公債からの」や「バブルとともに潰えた一時の夢であったかのようである」といった箇所は情緒的な表現に感じられますので、少し弱めてはいかがかなと思います。
また、先ほど末澤委員も述べられたようにプライマリーバランスについては、これまで黒字化を非常に大きな目標として毎回議論してきたわけですので、この14行目、15行目を取る、あるいは少し弱めた上で、「そして何よりも深刻なのは、平成14年度から掲げているプライマリーバランスの黒字化という目標が、いまだに達成されていないということである」の部分をもっと強調してはいかがでしょうか。
それから4ページ目の5行目から11行目、こちらも同じく平成時代に達成ができなかったという似た内容ですので、全般的に集約してはいかがかなと思いました。
そして最後に7ページ目、これは私の個人的な受け止め方ですが、19行目に「首の皮一枚の状態である」という表現がありまして、まさにそうではあるものの、文字にしたときにちょっと恐ろしいな…と。女性的な目線かもしれませんが、「待ったなし」といった普通の表現に変えてみてはいかがかでしょうか。
以上です。
〔 増田分科会長代理 〕 藤谷委員、お願いします。
〔 藤谷委員 〕 ありがとうございます。
先ほど進藤委員が「共有地の悲劇」という比喩は本当に当たっているのかという違和感、私もそれを大変共有いたします。結局、公費が共有地なのではないと思います。というのは、公費はもし仮に増税できれば増えますので、これはむしろ例えば国民貯蓄とか、結局なぜ国債が安定的に消化できているかというと国民の貯蓄がまだあるからと。これは資料ではいろいろなところで出ていますが、要するに食い潰しつつあると。そういうことを書いていいかどうかは御判断が分かれますし、また少し税のほうに踏み込むのは微妙な問題があるということは承知していますのが、ここは今のままだと、詳しく説明せよという御意見が出たのですが、説明すると多分ぼろが出るおそれがある。コンセプトは共有しますが、共有地に当たるのは公費ではないのではないかと思います。後で詳細な意見は提出いたします。
以上です。
〔 増田分科会長代理 〕 ありがとうございました。
倉重委員、ここまでということにさせていただきます。
〔 倉重委員 〕 遅れましてごめんなさい。本当に御苦労様です。皆よく言うよなというように思いますけれども、私も言わせていただきます。
最初1ページ目の真ん中ぐらいの、赤字国債を出してはいけない、法律をもとに出さなきゃいけないという、17行目ですか。「非募債主義等」とありますよね。財政法上ね。この言葉というのは、普通あまり財審でも出てこないし、教科書にも載っているのかもしれないけれども、あまり聞かない。もっと分かりやすく、要は下の欄に書いてあることなのです。赤字国債を出すときには法律で決めなきゃいけないということですよね。であるならば、そういうふうに書いたほうがよっぽど分かりやすい。せっかくのその前の論調が、そこでぐっと止まってしまう感じは何だろうと思い、そこが気になりました。
それから2ページ目の9行目から10行目ですけれども、これは、いつも私は思うのですが、日本の財政赤字は幾らなんだと。公債残高883兆円なのか、あるいは世界で比較するときに使うトータルにした、これ、1,400兆円くらいですか、一般政府債務残高対GDP比238%なのか。どっちが大事なんだと。どっちも大事だと思うのですけれども。少なくともこの2つの数字の関係について、下の下欄でもう少し詳しく説明したらいいような気がするのです。非常に多くなってきたということは分かりますけれども、この2つの数字の関係の説明はやはり必要だと思うのです。
それからそのもう少し下、22行目の「申し開くことができる」って、まさにそういう覚悟を書いているのですけれども、その2行前に「万死に値する」という言葉がありますね。これ、すごくいい言葉ですよね。私が聞いたことがあるのは、竹下登さんがリクルート事件で、自分の秘書がお金をもらったことについて、証人喚問で「万死に値する」と、そこまで彼は責任を持っていたのかと感動しましたからね。ただ、多分これは想定としては太平さんか誰かですかね。大平さんが言っていたとしたら、大平さんの名前をきちんと入れて書いたほうが、説得力があるのではないかなと思いましたけれども。昭和のある政治家じゃなくて。太平さんであれば、皆もっと納得感があると思うのですけれどもね。
それから次の受益と負担の乖離、ここが一番問題だと思うのですが、なぜ乖離が生じているのかというところのポイント、幾つかあると思うのですけれども、やはり私は、結論から言えば、異次元緩和だと思っているのです。異次元緩和で、いくらでも日銀が引き受けてしまっているから、金利ゼロで、放漫財政を可能にしているという、その本質的な部分が多分書かれていないと思うのです。現政権のやっている政策に弓を引けないということであれば、それは財審としては、本質的な原因の指摘を怠ったと言われてしまうと私は思うのですが。表現はどういう表現でもいいのですけれども、原因の一部について、そういうことを国民に分かってもらう必要があるのではないかと思いました。
それから最後です。「共有地の悲劇」、確かに私もぴんとこないのです。ただ、説明を見れば分かるのです。多分、書かれているほうは、これがキーワードとして見出しどころにならないかなという感覚だと思うのだけれども、ちょっと見出しにはしにくいです。それ自身を説明しなければならないし。ただこれについて、ずっと展開が、最後は共有地の代理人でありたいというところに落としているので、一種これがキーワードになっているので、これを変えてしまうと、なかなか物が成り行かないと思うので、別に見出しどころにしてもらう必要はないわけだから、それはそのまま残してもいいのではないかなと私は思ったのですけれども。1つ足りないと思うのは、この覚悟はいいのですが、毎回、財審で覚悟を発露しながら、現状は何だと、234%は何だという財審の反省を、やはりどこかに入れたほうがいいような気がするのです。ここまで毎年言ってきながら、全く権威と権能が示されていない。財審そのものの無力感を是非どこかに入れていただきたいと思います。
以上です。
〔 増田分科会長代理 〕 では、意見はここまでとして、冨田委員からまとめてお願いします。
〔 冨田委員 〕 大変重要な事柄についてコメントをいただきました。その中で、最後のところを御覧いただきたいのですけれども、8ページですが、「平成という時代の過ちを二度と繰り返さぬよう」というのが基本的な考えなのです。これはものすごく強い表現をさせていただいたつもりなのです。前回は、「これまでの成功と失敗」というふうに、ちょっと相半ばすることで表現していたのですけれども、この「過ちを二度と繰り返さない」という中に、先ほど来、永易委員はじめ皆様から御指摘いただいた補正予算の問題とか、これまでですと経済成長が楽観的過ぎるというようなことであったわけですが、ここで今御指摘の点については吸収させていただきたいと思うのです。
それと「共有地の悲劇」について、これはまた検討させていただきたいと思います。学生に話すと、いや、日本は入会地というのがあって、ちゃんと守られているよということがあります。もちろん共有地と入会地ではテクニカルには違いがありますけれども、ここは再度検討させていただきます。
それから「ポスト真実」の話ですけれども、これが分かりにくいというお話がございましたが、先ほど大槻委員からもお話があったような点を踏まえると、やはりこの言葉は使っていきたいと思うのです。特にそういうものと、エビデンスに基づく分析というものとの対比をしていただくという意味から重要だろうと思います。
それからプライマリーバランスについて、神子田さんからも御指摘があったのですけれども、これこそまさに現世代における受益と負担のバランスの話です。過去の借金をそのまま将来世代に回す、それはプライマリーバランスがバランスした状態でもそれがそのまま先送りされるわけでして、まさに今回のキーワードとして欠くことができない言葉ですので、御指摘どおりお入れさせていただきたいと思います。
倉重委員からいつものように非常に厳しい御指摘がございました。テクニカルにお答えできるところから言いますと、非募債主義というのは戦後、政府保証債も含めて発行しないことにしておりましたので、ここで言っているのは、建設国債は但し書きでということでして、昭和40年までは本当に何も発行していなかったわけでございます。
以上、再度検討させていただきたいと思います。
〔 増田分科会長代理 〕 ありがとうございました。
この「時代の過ちを二度と繰り返さぬ」ということに強い表現としていろいろな思いがそこに入っているということですが、さらにそこに例として、補正予算の財政規律が守られていないとか、そういうことをあえてさらに書くかどうかも含めて、また起草委員の中で御検討をよろしくお願いいたします。
総論のところなので、少しきちんと時間をとっていろいろ議論をいたしましたのですが、時間が来ていますので、後のほうはできるだけ効率的に進めさせていただきたいなと思います。
全体の中で少し順番が、冒頭申し上げましたように入れかえてございまして、3番目から8番目、文教・科学技術のところから8番までをまとめて、これ以降、議論したいと思いますので、こちらについての御意見をよろしくお願いします。すみません、できるだけ手短に御指摘をいただければと思います。
進藤委員から、進藤委員、神津委員という形でお願いします。
〔 進藤委員 〕 文教から。3から8までですね。
〔 増田分科会長代理 〕 はい、そうです。
〔 進藤委員 〕 エネルギー・環境の67ページでありますけれども、1行目から2行目の「FIT制度の抜本的な見直しを行うべきである」、ここまではいいと思うのですが、その後も賦課金の記述が続きます。今、賦課金の負担を抑制するためにFIT制度を抜本的に見直そうとしている中で、今の賦課金の詳細について、ここであえて言う必要があるのかというのが、まず大きな枠組みとしての意見です。
具体的な記述については、「これについては」以下、検討の視点を挙げています。まず、「対象となっている事業者は国際競争力の観点から妥当か」とありますが、これは、論点としてあると思います。国際競争力に、あまり関係がないのに減免されているというところが確かにあると思います。次に、「電力消費者全体で負担を分かち合うとのFIT制度の趣旨からすれば、国費での補てんが適当か」とありますけれども、この国費は、エネルギー特会であり、石油石炭税なので、不適切ということでもないと思います。
それから一番問題なのは「そもそもCO2を多く排出している電力多消費産業の負担を軽減することが妥当か」という記述です。これは、どこの産業を指しているのかよく分からないのですが、あるとすれば、高炉メーカーではなく電炉産業かもしれません。そもそも、この賦課金というのは、CO2を排出することに対するペナルティーではなく、エネルギー構成全体をリニューアブルに変えていこうとする中で作られた仕組みであって、技術的に電力を多消費しないと物ができない電炉業界が、国際競争力上、デメリットを被ることについては、産業政策上、考慮するべきではないかということで減免制度が導入されたわけです。「CO2を出しているから軽減するのはけしからん」ととられかねない表現は、おかしいと思います。ですから、も誤解があると思うので、とについては、全部「等」で括っていただくような表現にしていただけないかというのが1点目です。
それから2点目は、(2)省エネルギー関係予算で、30行目から次のページにかけて「規制的手法が重要」とあります。しかし、前回も申し上げましたが、省エネ効果は昔に比べるとだんだんサチュレートしていますが、だからこそ、大事なのは規制的手法ではなくて技術開発であり、抜本的な研究開発に資金をかけて、もう1回ブレークさせるべきだと、こういう議論であるべきです。実際にCO2の削減や省エネの産業界の自主的な行動として、経団連の低炭素社会実行計画があり、それがピアレビューという形で、実行されています。ですから、規制的手法しかないということではなく、例えば、68ページの4と5行目、「省エネの規制的手法との組み合わせで重点化を図っていく必要がある」の前に「革新的技術の開発・普及促進を進めながら」等、一言入れていただければと思います。
以上です。
〔 増田分科会長代理 〕 ありがとうございます。
神津委員、お願いします。
〔 神津委員 〕 戻って申しわけないですけれども、総論のところで、先ほど冨田委員から取りまとめについて話がありましたが。
〔 増田分科会長代理 〕 そしたらこの後にしましょう。中空起草委員が間もなく退席するので、必ず。
〔 神津委員 〕 一言で済むのですけれども、「平成という時代の過ちを二度と」というところは、少し括り過ぎだと思います。先ほど引き取っていただいたように補正のことも入れていただきたいと思います。
〔 増田分科会長代理 〕 補正のこと、分かりました。
〔 神津委員 〕 それと何だか平成という時代が誤っていたというふうにとれるので、検討いただきたいと思います。
文教・科学技術以降ですけれども、意見書に細かく記載していますので、どうしても補足させていただきたいところだけ申し上げておきたいと思います。意見書には13ページのところを記載していますけれども、教職員定数ですが、この間、障害がある子供、通級指導を受けている子供は、24年前から10倍に増えているということです。それから外国人の子供、日本語指導が必要な子供、これが今2倍に増えている。これはこれから飛躍的に伸びていくかと思います。そういう負担が相当増えているという現状を直視していく必要があると思います。ここに調査の内容も出していますけれども、過労死ラインを超えた勤務をしている教員は、小学校教員の約3割、中学校教員の約6割いるというのが実態です。
それから高等教育のところですけれども、一言つけ加えるならば、当事者である6万人の高校生が経済的な理由で進学できない。当事者もつらい話ですけれども、これは国家としての大きな損失でありますから、そこのところは十分に考えていただきたいと思います。
中小企業の問題です。2-7ですが、生産性が低い問題は、中小企業だけに問題があってそうなっているわけではない。そのことを十分踏まえて考える必要があると思います。
出入国ですけれども、目下、新たな在留資格の創設ということで審議が始まるということですが、国として考え方を示している以上、財政的な裏付け、ここをやはり十分考える必要があると思います。入管行政に対する予算措置はありますが、労働行政だとか、あるいは共生に係る施策、そういったところについて全く触れられていない。もう既に足元は相当遅れていると私は思いますので、先手を打って補強するという観点がないと、実際には矛盾がさらに拡大するおそれがあるということだけ申し上げておきたいと思います。
以上です。
〔 増田分科会長代理 〕 ありがとうございました。
佐藤委員、お願いします。
〔 佐藤委員 〕 ありがとうございます。
まず42ページ、幼児教育の無償化のところですけれども、幼稚園については、私が理解する限り、利用料は彼らの裁量なので、旧来制度の幼稚園については、どこかの新聞で出ていましたが、補助金をもらうのを契機に利用料金の引上げを図る幼稚園が出てくるのではないかということがあるのですね。そうすると誰を支援しているのか全く分からないという話になりますので、無償化を進めるのは構わないのですけれども、保育料、利用料についての推移、便乗値上げがありませんという、そこのところはちゃんと注視しておくということはメッセージとしてあっていいのかなと思いました。
それから47ページ、今回あまり議論にならなかったのかもしれないですけれども、私、別の内閣府の仕事をしていてはっと思ったのが、ある地方の私立大学について、文科省の説明や総務省の説明を聞いていても、実はこれ、僕のところの責任じゃないみたいな雰囲気になっているのですね。つまり地方なので、文科省的にはこれは総務省の管轄になるし、でも教育なので、総務省的にはこれは文科省の管轄になるので、特に経営改革がこれから求められるのは特に地方の私立、定員割れも起きていますので、そこのところはかなり両省ともどもきちんと連携して横断的に取り組むということをやらないと、何かお互いに仕事の押しつけ合いになる可能性が、誰も見ていないという状況になりかねないということです。
それから58ページのPFIですけれども、もう少し強く言ってもらってもいいのかなと思うのは、多分、これからの財政健全化の中で肝となるのはおそらくこのPFIのところで、これは要するに公費の抑制にもなりますし、それから収入の源にもなるからなので、何かトーンとして、例えば今回、道路とか下水道とか出ていますけれども、やはり上水道、それから公営住宅とか、国際会議場とか、こういったところについてもやはりPFIを進める、特に20万人以上については検討課題にすると言っているわけですから、これはやることを原則にするというぐらいの強いトーンでやらないと、何かなかなか現場は動かないかなという気がしました。
あと70ページですけれども、さっきの中小企業ですが、今、結構災害が増えていて、その災害を契機にグループ補助金を含めていろいろな支援が中小企業に行くのですけれども、言葉は悪いですがゾンビ企業と言いますが、さもなければ撤退していた企業の存続につながっている可能性もあるのですね。ですから、これから災害が起きて、地域振興のために、地域の経済の再生のために何らかの支援が必要なのは前提ですけれども、やはりその支援についてはメリハリのある形で、妙に中小企業がある意味生きながらえることになると、後々問題の先送りになるということだけは注視しておいたほうがいいのかなと思います。
以上です。
〔 増田分科会長代理 〕 老川委員、お願いします。
〔 老川委員 〕 文教について3点ばかり申し上げたいと思います。43ページの29行目、「総量規制を含めた部活動のあり方」を見まして、部活動について指摘していただいたのは、私は大変ありがたく思っています。ただ、「総量規制を含めた部活動」というのは、少し意味が分かりにくいと思いますので、「部活動について、目的、意義、回数などを含めあり方の見直し」というふうに言っていただくといいのではないかなと思います。何が何でも部活動をやらなければいけないというような思い込みで先生方も生徒も一生懸命やっているのだけれども、そこまでやる必要があるのかとか、いろいろ考え直す点があるのではないかと思いますので、その点を申し上げたいと思います。
その次のページ、44ページの29行目から30行目、「特に公立高校生の少ない東京都において、より一層云々」ということ、これが少し分かりにくいというか、この文章だけだと、東京都は公立高校生がもともと少ないのだということに読めますが、私の理解ではそうじゃなくて、私学、私立高校が無償化になったので、無償化だったら私立のほうへ行ってしまおうというので公立がすかすかになっちゃっているということだと思いますので、私立校に対する無償化の影響で公立校の生徒が減少しているという東京都の現状を見るにつけ、参考にして、こういうことがこのままいくともっと減ってしまいますねと。そうすると公立高校の存在意義そのものがおかしくなってしまうわけだから、そういう意味で言っているのだと思いますので、もう少し言葉を補ったらいいのではないかなと思います。
それからもう1点、これは高等教育の51ページ目の21行目から、「企業が大学に投ずる研究開発費の割合は低水準でもっと云々」ということで、この趣旨には私は賛成なのですが、その場合やっぱり企業が大学に営利目的ではなくて研究活動そのものを促そうという意味の寄附ですね、これをしやすいように税制上の措置を考えるということが僕は必要ではないかと思いますので、これは財務省の中でも御意見が分かれるところだと思いますけれども、財審としては税制上の措置も含めて、この促進の措置を考えるというような文言が入ったらいいのではないかなと思います。
以上です。
〔 増田分科会長代理 〕 ありがとうございました。
武田委員、お願いします。
〔 武田委員 〕 ありがとうございます。まず起草委員の皆様、大変御尽力いただきましてありがとうございます。御礼申し上げます。
今回、P42ページからの文教・科学技術について1点と、社会資本に関して意見を述べさせていただきたいと思います。
まず文教・科学につきましては、新陳代謝が入った点であるとか、あるいは質の重視、こうした点は非常に賛同するところでございます。しかし、日本が置かれている状況も、もう少し総論の冒頭の部分では触れたほうがいいのではないかと考えております。具体的には「少子化が急激に進んでいる中で」と入っているのですが、「国内では少子化が急激に進み、また世界ではテクノロジーをめぐる競争が厳しさを増す中で」というふうに、国際的に日本が今、置かれている状況を十分認識しているという点は触れたほうがいいと思います。主旨としては、「国内で少子化が急激に進み、世界ではテクノロジーの覇権をめぐる競争が厳しさを増す中で、人的資本の質の向上や科学技術力の強化の重要性は増している。一方で、現在及び将来の子供たちに対して既に巨額の負担の先送りをしてきており、教育や科学技術分野を考える際に、このことを忘れるわけにはいかない」と。つまり教育や科学技術のレベルを上げることは重要だけれども、一方で負担も増えているので、だからこそ量ではなく質の議論をしていかなければいけないとつなげてはどうかと思います。「したがって真の課題は予算の量ではなく、予算の使い方を見直し、目的は教育や科学技術の質をグローバル基準で高めていくことにある」というふうにはっきり書いたほうがいいのではないかと思いましたのでコメントさせていただきます。
また、社会資本整備に関して、こちらも冒頭の部分の53ページ、上からの8、9行目に、「災害が頻発し、深刻な被害をもたらしている」と書いてあるのですが、この後に、「こうした現状を踏まえた上で、生産性の高い事業」と書いてありますけれども、災害の話とは直接はつながらないので、災害の話の後に、その後ろの実効性の高い防災・減災対策に話を移して、生産性の高い話については、その下に、「日本の成長力を高めるために生産性の高い事業に重点化していく」と書いたほうが、まずは防災・減災の話でひとまとまりになり、続いて下段に成長力・生産性というまとまりで整理されたらどうかと思いました。
以上になります。
〔 増田分科会長代理 〕 ありがとうございました。
中空委員、それでは。
〔 中空委員 〕 ありがとうございます。起草委員をやらせていただいているのに途中退室で本当に申しわけありません。
いただいた御意見、どうもありがとうございました。いろいろメモを書きとめて、検討していこうと思っていますが、幾つか申し上げさせていただきます。神津委員が、資料にも出していただいているのですが、文教・科学技術のところの1つ目の修正提案というところがありました。これは、「実は日本の教育費ってOECD諸国と比べて多くないのだよ」という話を書くところですが、今回の主眼は、今、武田委員からありましたように、予算の量ではなくて使い方、質ですよということを強調したい書き方になっています。ですのでここで、「いやいや、本当はOECD諸国の中で低いかもしれない」みたいなことを書くと論点がずれると思っております。なので、ここは数字に間違いもないですし、ここの趣旨を御理解いただければ幸いです。ただ、ほかのところで御指摘いただいたような書き方、例えば障害があり、通級指導を受けている子供が増えていることについては、例えば注意書きなどで指摘したほうがいいか、これはほかの先生たちと一緒に考えたいと思っています。
老川委員にいただきましたものについては、そのまま考えたいと思います。
次は税制改正ですが、税制改正について踏み込んで書くべきかどうか、ここは疑問が残るところですので、課題にさせていただきたいと思っています。
社会資本整備のところで武田委員に指摘されたところは、そのとおりだと思いましたので、そうさせていただきたいと思います。
あとPFIの話、これは佐藤委員からいただきました。ここをもしもっと力強く書けということで良いアドバイスがありましたら、送っていただくと大変助かります。
それから重要な、進藤委員からいただきましたエネルギー環境のところです。FIT制度の賦課金について、こんなに書く必要があるのということだったのですが、今回、再生エネルギー関係予算の中で、FIT制度の賦課金についてはやはりしっかり書いているということを申し上げたいと思います。66ページからですね。なので、どこが問題だったかということを書くのは必要であろうと考えております。ただ、書き方を考えろということについては、御指摘を受けたいと思います。どんなことが問題だったかは指摘しておきたいと思っていますが、どう書き込むかについては検討したいと思います。
CO2をより多く排出している電力多消費産業の負担を軽減することが妥当かということを書いたときに、私も実は進藤委員の顔が頭に浮かんでいたのですが、別に特定の何かを指摘しようと思っているのではありません。ただ、世の中的にはリニューアブル、あるいは再生可能エネルギーということのほうに焦点が当たっているということもまた事実であります。我々財審は長い間、取り組んでおりますが、世の中の変化をきちんと理解しているということを踏まえていく上でも、再生エネルギーそのものが本当に必要かどうかは別の議論が必要なものとして、再生エネルギーやCO2についての言及というのはあっていいかなと思っています。いずれにせよ、ほかの先生たちとも、相談して進めたいと思っています。
また神津委員から御指摘がありましたが、FITを抜本的に見直すべきというのが財審での議論の大勢であったので、FITについてはきちんと書き込むことを、ここはお許しいただきたいと考えています。
中小企業については、御指摘いただいたとおりにしたいと思っています。最後に、出入国管理のところで、これも神津委員から御指摘いただきました。労働行政のところに言及すると。先ほど税制改正の話で老川委員のところでも少しどうかなというふうに申し上げましたが、そこまで踏み込むべきなのかどうか、ちょっと不適当かなと私は考えております。私自身は不適当な議論ではないかと思っていますが、最終的にはほかの先生たちと話し合わせていただいて、そこは任せていただければなと思います。
とりあえず以上です。ありがとうございました。
〔 増田分科会長代理 〕 ありがとうございます。
すみません、藤谷委員を飛ばしてしまいましたので、どうぞ。
〔 藤谷委員 〕 ありがとうございます。
私は43ページなのですが、これは文教マターですが、本質はむしろ地方財政かなと思っています。ここで資料の2-3-5がついている、21ページ以下ですね。御紹介があったところですけれども、市町村費の負担、事務職員の問題ですね。交付税のほうの基準ではたくさん措置されている、当然、交付税が行っているはずなのに、現場には人がいないという問題ですね。これについて指摘した上で、30行目ですけれども、「市町村費負担事務職員の適切な活用を図るべきだ」と書いてあるのですが、結局誰に向かって言っているのかというと、おそらく文科省から言ってきたので、文科省に投げ返して、文科省とあとは地方自治体と総務省とで頑張ってくださいというメッセージになっているんだと思うのですが、ただ、先ほど武田委員がとても重要なポイントをおっしゃっていて、量ではなくて質の問題だということ、それから人づくり革命というコンテクストがありますので、単純にうちは削る、削る、削るという話をしていると、やはり何というのか、無用の反発を招きかねないと。実際、初中等教育のクオリティーというのはその国の教育水準を決めてくというのが大きいところにあって、事務仕事を専門職である教員がやり過ぎているというのが非常に問題としてあると思うのです。ですからここ、もう少しパンチを出せないかということであります。要するに現状の地方税制算定基準の見直しも含めたこと、もちろんこれは総務省マターでありますので、財務省としては言えない。ですが、財審は言ってもいいのではないかと思うわけです。あくまでも有識者としては、問題の本質はそこで、そういうふうに適正に合理的な資産配分を考えるのだったら、例えばその分、交付税を削って、直接補助金をつけるということはあり得る、そこまで書くかどうかはともかくですが、と無責任な専門家集団は言っていますがどうですかというような形で、各省間でやっていただく。何というのか、財務省が言えることと、財審が言うことというのがイコールである必要はないのではないかという感想であります。ここはもう少しパンチを出していただきたい。
以上です。
〔 増田分科会長代理 〕 ありがとうござました。
それでは、意見のほうはここまでとさせていただきまして、起草委員で小林委員のほうからどうぞ。
〔 小林(毅)委員 〕 どうもありがとうございました。
先ほどの武田先生からの社会資本整備の冒頭の部分の順番の変更ですね、これはまさにおっしゃるとおりで、逆に気がつかなかったこと、不名誉を恥じます。
それから神津委員が、ペーパーで出ているのですけれども、社会資本整備の項で修正提案ということでソフト対策というお話の中で幾つか提案されておりますが、これも基本的には生かしていきたいなと思っておりますので、どうも御指摘ありがとうございました。基本的には議論が出てこないものはあまり入れないことになっているのですけれども、こういう形で、前回の実際の分科会の議論で出ないものでも、こういう形で入れていただければ建議に反映させることはできますので、ありがとうございました。
以上です。
〔 増田分科会長代理 〕 ありがとうございました。
それでは、最後のパートになります。残り、1番目の社会保障、2番目の地方財政、そして9番目の外交関係、10番目の防衛と、こちらのほうに移りたいと思います。
それでは同じく、名札を上げてお願いしたいと思います。
老川委員からお願いします。
〔 老川委員 〕 ありがとうございます。
社会保障のところで10ページ、予防医療について後段で述べておられて、予防医療等の促進も重要な課題だと。社会保障費の伸びの抑制にもつながり得ることになると。そこまではいいのですが、「他方」とあって、「予防医療等による医療費や介護費の削減効果についてはさまざまな見解がある」と。注釈の中で、限界があるし、むしろ費用が増えるのだという研究者の方の御意見が載っていて、それで、何はともあれ予防医療で節約できるだろうから、今の改革すべきところを緩めちゃだめよと、ここが言いたいのだろうと思うのですが、私は、予防医療が医療費の削減の効果に限界がある、むしろ増大させるという説には少し理解に苦しむところで、常識的に言って、病気になる人が少なくなれば医療費も介護費も減るだろうと思うのが普通だろうと思うのですね。いや、そうじゃないのだという絶対的な本当の根拠があれば別として、どなたかがこう言っているというだけで、何かブレーキをかける、せっかくこっちをやろうということを言っているのに、そこでブレーキをかけてしまうというのは疑問があると思うのです。むしろ、ここで言うべきことは、削減効果が期待できるというので、「他方」から「見解がある」は削ってしまって、むしろここのところはそうではなくて、逆に、実際に予防医療等について医療費や介護費の削減効果が実際に上がるように、効果が上がるように具体策をしっかり徹底してやっていくべきだと。それからまた、これで医療費なり介護費が仮に多少減るにしても、それで改革の手を緩めてはならないというふうに言ったほうが、一貫性があっていいのではないかなと思うのです。ここでせっかくこうすれば医療費なり社会保障費が削減されるだろうと、推進しましょうねと言いながら、いや、そうではないのだという異論がありますよということをわざわざ言ってというのは、僕は少し文章表現としてもおかしいし、それからやろうとしているのはどっちなんだということについて混乱を招くのではないかなと思いますので申し上げたいと思います。
以上です。
〔 増田分科会長代理 〕 ありがとうございます。
宮島委員、お願いします。
〔 宮島委員 〕 ありがとうございます。
地方財政に関して、概論との関係で申し上げます。私の認識として、地方財政のすごく問題なところは、結局のところ給付と負担がうまく結びついていなくて、それを地方の住民が実感していないというところにあるのではないかと思います。この概論の形では、全体的な問題意識が少し伝わりにくいかなと思います。本文においては38ページで、「各事業の給付と負担の関係の見える化に取り組むことで」ああだこうだと書いてあって、そこを概論にも出すか、あるいは例えば法定外一般会計、国民健康保険の法定外繰入れの解消というのは、そもそも何のためにやるかというと、これによって実態が見えるようにするということをやりたいのだと思うのですね。だからそうした言葉を足していただくか、全体として地方財政が見えるようにすることが大目標として大事であるというようなことを概論の中にも何らかの単語で入れていただければと思います。
〔 増田分科会長代理 〕 分かりました。概論のほうの御指摘であります。
佐藤委員、お願いします。
〔 佐藤委員 〕 ありがとうございます。
今も御指摘ありましたが、10ページの予防医療とかのところですけれども、やっぱりメッセージは2つあると思うのですね。1つは人が健康であること、それ自体良いことであるということ。それは別に医療や介護の抑制のためだけじゃなくて、要するに労働参加にもつながりますし、マクロ政策という観点から見ても優良な労働力を提供できるわけですから、健康でいること、それ自体1つは是としていいと思います。ただし、予防医療とか、皆が健康になるからということを口実に本来やるべき改革、あとはベッド数の抑制であるとか、診療報酬の見直しとか、それに手を怠ってはならないという棲み分けでいいのではないかとは思うわけです。多分、ここでの問題意識は、特に厚労省はよく「健康であれば」「健康であれば」と言うので、それがいつも何かほかの改革で手を抜く理由になってしまっているので、そこに何か違和感を覚えたのかなと思うのですけれども、であればはっきりそう書くべきで、言い訳にしてはだめなんだというふうに言えばいいのかなと思います。
それから17ページのところで、ここから先はテクニカルな話になるのですけれども、普通調整交付金の話です。私はそのとおりだと思うのですが、最後のところで「実際の医療費ではなく自治体の年齢構成のみを勘案した」というのは、これはリスク構造調整としては粗過ぎると思うのですね。諸外国ではせめて性別と年齢ですし、あと実際のところは疾病構造の違いであるとか、あとは地域的な特性、都会だとどうしても値段が高くなります。要するに財政運営の努力によらない地域的な特性とか、このようなものを勘案するというのが正しいので、「年齢構成等」にするか、今言ったような幾つかの例示をするかで、本来これがデータヘルスだと思うのですけれども、本来、精緻化に向けて、いろいろ疾病とかの医療費の情報を収集して、よりリスク構造調整を精緻化させていくというデータヘルスの構築に向けていったらどうかというのが本当は中長期的な課題だろうなと思いました。
それからあとは21ページのところですけれども、金融資産を考慮に入れた負担を求める仕組み、これは非常にありがたいと思うのですが、本来は税制調査会のほうでやるべき話でもあって、金融資産の一体課税等のかかわりを見てもいるので、金融資産の捕捉というもの自体は、これは金融課税の一体化の問題等も連携させながら進めていくぐらいのことを言ってくれると嬉しいかなと思います。
それから36ページですね。これもテクニカルな話で申しわけないのですが、36ページで例の枠計上の話と、それから例の計画と決算の乖離、これは35ページからの議論になりますけれども、ここに来て気をつけるべきことは、例の質問、さっきから出ている幼児教育の無償化の話ですが、これに伴って、例えば公立保育園の保育料も無料になるので、その分だけ実は自治体の持ち出しもあるはずなのです。ただ、その自治体の持ち出しがどういう形で補償されるのかというプロセスが、実は今の地財計画の中では分からないとなっているはずなのです。なぜかというと、一般行政経費で、一部、例えば上乗せしている単独のところなので枠計上ですし、さらに基準財政需要に至っては、実際に幼児無償化の補塡がどの基準財政需要にぴたっと当てはまっているのかということは、自治体側からは見えにくいというクレームがよく来るのです。なので、そういった観点から、何が言いたいかというと、国の都合で制度改正をしたときに、それに伴う地方に対する補塡措置は本来必要であると。それも実は見えなくなっているというところ。単に計画と決算の乖離とか枠計上というのは、国の財政の観点から重要なだけじゃなくて、本来やるべき財源補償まで見えなくしているという。これはやっぱり問題だというふうに言ってみるのは一案かなという気がしました。
それから最後に41ページですけれども、これも税調で言えないから言うだけですが、偏在税制の問題ですけれども、これも本来何が問題かというと、地方が法人2税に偏り過ぎているのがいけないのであって、本来は法人2税の見直しとあわせて、税制改正とあわせて、「安定的かつ偏在性のない税体系の再構築につなげていく」という一文があってもいいのかなと思いました。
以上です。
〔 増田分科会長代理 〕 今の点はまた起草委員のほうで検討をお願いしたいと思います。
次、神津委員ですね。
〔 神津委員 〕 同じく意見書に縷々記載しておりますので、どうしても補足しておきたいということに絞って申し上げたいと思います。社会保障全般にわたってですが、財源として非常に大きいわけですから、いろいろな対応が必要なことは理解をした上ででありますけれども、この間の格差の拡大でありますとか、あるいは単身世帯が非常に増えている。それから地方の過疎が深刻化しているという中で、家族や地域の支え合い機能が低下をしているということです。そういう中での重要性が増しているということに着目しておかなければならないと思います。そういったことを含めて、やはり国民各層に、将来に向けての不安というのがかなり社会保障に対してあることも事実でありますので、やはり制度の安定性だとか、社会保障の機能が低下を来さないということについては慎重に検討いただきたいということを申し上げておきたいと思います。
それから医療ですが、ここにも記載しているのですけれども、地域医療構想の推進、これは極めて重要なことだと思いますので、積極的に進めていくべきだということを補足しておきたいと思います。
それから医療保険ですけれども、一方で所得の多寡による医療アクセスの格差が拡大をしてしまうと、国民の健康を後退させてしまうということだと思います。この点は慎重に検討いただきたいと思います。
介護でありますけれども、既に政府として出されている介護離職ゼロの方針に基づいて進めてくということは極めて重要ですから、処遇改善による人材確保、これをさらに進めていただきたいと思います。負担増については、結果として、回り回って介護の負担が増える、あるいは離職が増えるということにはならないように慎重に検討していただきたいと思います。
加えて介護療養病床の介護医療員などへの転換、ここは非常に重要な観点でありますから、これは6年間の期限内での確実な転換を推し進めていくことは不可欠だということだと思っています。
最後は、子供・子育てです。従来に比べるとかなり事態が前に進んだとは思うのですが、まだまだ非常に不十分であることも事実であります。様々な意見書に記載をしておりますけれども、特にこの間、質の問題、ここは非常に懸念をしているところです。やはり質の確保・向上が追いついていないといいますか、少し枠を広げていることがあって、そういうことも生じているということかもしれませんが、実際に預けた先で赤ん坊が命を落とすという事例が増えていますから、そういう状況にも鑑みて、是非そこのところはよく考えていただきたいと思います。
以上です。
〔 増田分科会長代理 〕 末澤委員、お願いします。
〔 末澤委員 〕 ありがとうございます。
防衛のところで1点御質問がございまして、この内容自身は、我が国を取り巻く厳しい安全保障環境の中で、どうやって効果的・効率的な調達を行っていくか。調達改革の重要性が分かりやすく、しかも詳しく述べられておりまして、よろしいから賛同させていただくのですが、79ページの調達改革の14行ですね。ここで「とりわけ今後、宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域における」ということがありますが、ちなみに米軍の場合ですと、今ある4軍プラス沿岸警備隊に加えて、第6軍としてこの宇宙軍をつくるというトランプ大統領の方針がありまして、一方サイバーというのは統合軍、コマンドで、サイバーコマンドってありますけれども、電磁波はあまり聞いたことがなくて、何でここへ電磁波が出てきているのか、細かい話ですみませんが質問でございます。
〔 増田分科会長代理 〕 冨田委員、お答えいただけますか。
〔 冨田委員 〕 ほかに並列でこうやって書いてあるのを見かけたものでこれを使っているのですけれども、また詳しく末澤委員よりお教えいただけたらと思っております。
〔 増田分科会長代理 〕 それでは、また御検討ください。
末澤委員、以上でよろしいですか。
〔 末澤委員 〕 結構です。
〔 増田分科会長代理 〕 それでは、武田委員が終わってから、起草委員の方は答えてください。
〔 武田委員 〕 ありがとうございます。
社会保障についてコメントをさせていただきたいと思います。全般に非常に網羅的に書いていただいているわけでございますけれども、もう少し期限を明確に書いていただきたいと思います。財政健全化において、社会保障制度改革は避けられないと思いますし、ずっと書いているのですが、なかなか進まないということもありまして、もう少しいつまでに、医療・介護制度改革を行っていくという姿勢を幾つかの箇所に明記していただきたいと思います。例えとして申し上げれば、10ページの一番冒頭の文章ですが、「以下の視点に基づいて、医療・介護制度改革を行っていくべきである」のところを、「以下の視点に基づいて、団塊世代が後期高齢者入りする2022年までには」と、そうした書き方が1つあると思います。また同じように、11ページの4行目に書いていただくというのも一案かもしれません。
それから2点目の意見として、優先して行うべき事項が何なのかというのが、やや分かりにくいと感じています。確かに社会保障制度は、いろいろやることがあるのは事実ですけれども、おそらく人口動態などを踏まえると、優先してまずやるべきこと、それから中長期的な課題のこと、来年度の予算でやること、かなり明確にあるはずなので、そこがもう少し分かるように書いていただけると着実に進みやすくなるのではないかと考えます。
あと大変細かいことですけれども、参考文献として後段でついている図表集の中のトップのページですが、社会保障について1、2、3と書いてありますけれども、1と3が全く同じ文章になっていますので、おそらくこれは3が違うのではないかと思いますので訂正をお願いしたいと思います。
以上です。
〔 増田分科会長代理 〕 ありがとうございました。
文章のほうの訂正はまた考えていただきたいのですが、とりあえず今の段階での意見は以上にさせていただいて、起草委員のほうで田近委員からお願いします。
〔 田近委員 〕 社会保障のところで多くの御意見をいただきましたけれども、これからこちらで諮りますが、私が今まで伺ったところでこんなことを考えています。社会保障の方向を書くときに、やっぱり改革の全体像をまず示すべきだということで、10ページ、前から財審でも出ていますけれども、3つの視点が出ている。本日いただいたのは、その後の問題で、3つの視点を受けて、だからどういうふうに政策を構築するのか。そこでいきなり予防が出てきて、いろいろな議論が出てきたと思うのですけれども、ここは議論いただいたように、基本的にはエビデンスに基づく医療、それから検証可能なKPIに基づくことで、予防医療、大きなこの3つの課題に対して狭く書き過ぎたのかなという気はしています。言いたいことはエビデンスベース、それから検証可能なKPIですから、これを言う。その次も、実は消費税が10%に引き上げることに対する対応ということで、そこももう少しポイントを絞る。
それからあと武田さんが大切なことを最後におっしゃいましたけれども、じゃあこれで中長期的にどういうふうに政策をコンストラクトしていくのかということもここに書くことで、10ページ、11ページのところを大きなフレームワークに対してどういうふうに社会保障改革を進めていくのかというような形で書きかえられるのではないか。多分、それは老川さんたちの御意見に対する答えになるように思います。
それから佐藤委員のおっしゃったエビデンスベース、それはそのとおりで、ちょっと専門的になりますけれども、17ページ、「自治体の年齢構成のみを勘案した」、ここで佐藤委員がそうではないだろうとお考えで、私もそう思います。だからこれは標準的な医療費をどうするかということも、テクニカルですけれども。
あと神津さんからも大変適切なことをいただきまして、地域医療構想の徹底、これはもう要中の要ですから、これは今いただいた議論をまたこちらで整理させていただきたいと思います。
そういうことで社会保障について、事務方としては四十幾つかの改革工程表があって、それが頭にばっちり入っているので、それを前提に書いているわけですけれども、読むほうは武田さんがおっしゃったように、大きなフレームワークの中で中長期的にどうするのかというのを書いてほしいということで、それは了解させていただきました。
〔 増田分科会長代理 〕 ありがとうございました。
佐藤委員、それから老川委員。
〔 佐藤委員 〕 34ページですけれども、地方財政の冒頭で前回申し上げましたとおり、地方自治体が様々な行政サービスを提供している主体であり、財政が一旦破綻というか行き詰まれば、そういう行政サービスが要するに滞ることになり、そういう形で国民は財政危機の負担を被ることになるわけですので、ある意味、本来、国や地方が様々な行政サービスを担っており、財政の悪化というのはこの行政サービスの停滞につながるのであると。だから本当は地方財政を通じて、地方財政に国民が関心を持つことによって、財政を自分ごととして考えてもらいたいというのが本当のメッセージだと思うのです。ただ、それを阻害しているのは、冒頭で出てきている、総論で出てきている受益と負担の乖離なのだと。その受益と負担の乖離の要因としては交付税とかエトセトラ、様々な財源補償がありますねという、何かそういう一文が冒頭にあったほうが、何で地方財政なのかというのをもう少し強調できるかなと思いました。
それから、さっき私は幼児教育の無償化の話をしましたけれども、もう一つ最近になって出てきている新しい地方財政における展開が、いわゆる圏域マネジメント、要するに広域行政ですが、下水道とか上水道は良い例ですけれども、そういう自治体間の連携というのが出てきているので、これは一般論になってしまうかもしれないのですが、交付税の算定とかにおいて、いわゆるトップランナー方式などを入れて、もっと民間委託とかを促そうというのと近いのですけれども、要するに広域連携といったものをいわゆる小規模自治体に対する補正係数とか、そういう形での手厚い財源補償がかえって阻害しているのではないかと。だから一般論ですけれども、広域化連携です。広域連携などを阻害しないように、交付税の算定の見直しとか中立化、簡素化というのはあっていいのではないか、というぐらいの一文はどこかであっていいかなと思います。
以上です。
〔 増田分科会長代理 〕 老川委員、どうぞ。
〔 老川委員 〕 今の田近委員の御説明は、それで理解はできるのですが、私は予防医療の問題をここに明記していただいたということについては大変意義があるし、大事なことだと思っているわけです。予防医療の問題というのは、今まであまり議論されていなかったけれども、最近は内閣府のほうの調査会、会合でもそういうものが出てきているということで、大変望ましい傾向だなと思っています。ただ、この予防医療がどういった効果があるのかということは、一部の自治体では既に年間何千万ぐらい予算が節約できたとか、そういう実例ももちろんありますけれども、まだあまり一般化されていませんので、これはこれからの問題だと思うのです。したがって政策をエビデンスに基づいて構築していく、これはもちろん大事だけども、まだ必ずしも、これがエビデンスだというふうに明示できない、あるいは必ずしも十分なエビデンスがないものであっても、新しくやっていくものというのもあるのだろうと思います。そういう意味で、こういうことをやればかなり効果があることが期待されると。であれば、そこを現実に効果があるように、具体的に研究して進めるべきだということを言い、かつ、それで、だからといってやるべきことをやらなくていいわけじゃありませんよと、こういうことであれば、非常に的確じゃないのかなと思って申し上げています。
〔 増田分科会長代理 〕 ありがとうございました。
それでは、全体を通じてお願いして、それからまた起草委員のほうにお願いしたいと思います。
永易委員、どうぞ。
〔 永易委員 〕 ありがとうございます。
社会保障関係で、田近先生からコメントで、多少で私も腹落ちしたのですけれども、やはりこれ全体を見て、項目ごとに見ると、大体そうだよねというのはよく分かるのですが、例の改革の工程表、これは瞬間的には各々のところで出てくるのですけれども、やはりこれが全体のところでやるのか、各々でやるのでは無理でしょうから、あの44項目があって、それに関する記述というのが必要なのではないかという印象を受けております。
要はそのやり方という面で、やはり金額の目標みたいなのがありますよね。期限の目標がありますよね。それがうまくいかなかったらどうするのだという3段階ぐらいの管理の仕方がどうしても必要でしょうけれども、大々的に出た44項目ですから、やっぱりそれをきちんとやっていくのだというトーン、それと今申し上げた、こういうチェックをしながら進めていくのだというのが社会保障の総論の中でどっかに入ったらいいのかなという感じを受けました。田近委員が言われたことで相当程度理解できたのですけれども、やはりその点は残っているのかなという印象があるということであります。
それと小さいことで恐縮ですけれども、19ページに診療報酬、薬価の適正化というのがございますね。ただ、この項目は、もちろん難しいのはよく分かりますけれども、薬価オリエンテッドですね。全て薬価である。やっぱり診療報酬というところにも絶対いずれメスを入れないといけないわけですから、そういうトーンがどこかに必要ではないか。いつも途中、ラップで消えますよね、診療報酬のほうは。それは大変難しい問題であるというのは理解しておりますが、財審としては、やはりこれも避けて通れないというトーンがどこかに入ってほしいなという気がいたします。
〔 増田分科会長代理 〕 ありがとうございました。
冨山委員にお願いして、それから後、起草委員の方にお願いします。
〔 冨山委員 〕 全体的な話ということで少し申し上げます。途中で大槻委員が言われたのかな、今回の書いている中で一番やっぱり響いたのは、将来世代の代理人だというのが一番響いていて、財政の問題は結局そういう構図なんですよね。それでそのときに、将来世代って新聞を読まないのですよ。テレビもひょっとしたら見ていないかもしれません。もう既にそうなっているわけです。そうすると、この議論が、ある意味ではもう一番近い将来世代は今の10代、20代、あるいは今の1桁ですね。今の子供たちから20代ぐらいまで。彼らにこれをどう響かせるかということは、これは本当に真剣に考えないといけない、かなり本質的な問題だと思っています。コミュニケーションをどうするかというのは、これは多分、財審の改革の一番の背骨だと思います。ここは本当に皆で英知を結集して、どうしたら今の1桁世代、10代、20代、あるいはその親の世代、今の子育て世代に伝えられるか。今の子育て世代もはっきり言って新聞を読んでいるかどうか怪しい。今の30代ですから。ここは是非、そろそろ真剣に、いわゆるかけ声じゃなくて、具体的にどうするのかということを是非審議会としても考えるべきだし、是非とも財務省の中でも議論してほしい。やっぱり今回、アメリカの中間選挙を見ていて思ったのですけれども、あれは明らかに活字で動いていないでしょ。ブルーウェーブは何で動いているかといったら、これは完全にネットと、それからフェース・ツー・フェースです。ネットは今、ライブ放送もできてしまうから、ある種ネットを含めたフェース・ツー・フェースでもう政治が動く時代で、やっぱり日本は民主主義国家ですから、最終的には民主的統制のもとで、あるいは民主的正当性がないとこれだけ財政の問題は動かないと思っているので、とするとやっぱり特に若い世代、これからの将来世代にどう訴えかけていくかということは、これは是非、考えてもらえたらうれしいなと思います。
以上です。
〔 増田分科会長代理 〕 ありがとうございました。
冨山委員、少し具体的に考えて出していただければいいのですが、何かとりあえず思いつくことはありますか。
〔 冨山委員 〕 要するに建議なりこういう問題が、まさにエビデンスベースでどれだけ子供たちや学生が分かっているのかというのを絶対調べるべきだし、そうすると次にじゃあいろいろな手立てを講じていったときに、どうしたら上がるのか、上がらないのかというのはやっぱりモニタリングをしていって、やっぱりその過程で、当然、ある意味で新聞記者の方もいらっしゃるのは、多分これを伝えてもらいたいと思っているわけですから、多分これ以外のルートですよね。だから例えばネットメディアの人も私はここにいたほうがいいと思うし、彼らにも協力してもらったほうがいいし、いろいろな手立てを講じながらモニタリングしていくということを私は始めたほうがいいような気がしています。
〔 増田分科会長代理 〕 どうもありがとうございました。
それでは、大槻さんからお願いします。
〔 大槻委員 〕 今、冨山委員のおっしゃったことに補足で、私も次世代にどう伝えるかということで、是非お願いしたいこととして、何かやるときに、本日の議論を聞いていて、とても緻密でとても正確でとても深いと思ったのですが、時として個人に、特にネット世代に伝えるためには、相当程度それを捨てなければいけない、捨象しなきゃいけない部分というのがあると思います。分かりやすさを重視するためには、あえて誤解を恐れないでいろいろなものをつくっていかなきゃいけないということはお伝えしておきたいと思います。一方で、そうはいっても案外、次世代というか若い世代は、エビデンスは非常に重視します。数字及びエビデンスというのは非常に重視しますので、それも示しつつ、いかに分かりやすいものを届けていくかというのは非常に重要だと思います。ちなみにですが、我々のようなオンラインで生きている者は、今や分かりやすさの競争になっていて、分かりづらいと見られないだけではなく、わかろうとしない個人ではなくて、わからせないおまえたちが悪いのだというふうな世の中になってきているということも肝に銘じなきゃいけないと思った次第です。
以上です。
〔 増田分科会長代理 〕 ありがとうございました。
佐藤委員、お願いします。
〔 佐藤委員 〕 次世代についてだけ言います。気になるのが、やっぱり今ネットが普及しているというときに問題が2つあると思うのです。1つは、フィルターがないのですね。例えば、我々学者ですから、普通、学術研究をして査読論文とか学会とかそういうところを通った、フィルターを通ったものが世の中に公刊されていく。でも今はこういうネットで、もう自分の主張だけが乗っていくという形になる。マスコミは本来、フィルターの役割を果たすはずなのだけれども、ネットにはこのフィルターがないという現実がある。
やっぱりエビデンスと言うけれども、まさに「ポスト真実」じゃないけれども、トランプでもそうですが、エビデンス自体否定する人もいるわけですよね。なので、エビデンスが本当に伝わるかというのが、このネット社会の新しいやはりチャレンジになってきて、先ほど御指摘があった分かりやすさを皆が求めるけれども、分かりやすいことと正しことは全く違う話なので、分かりやすいのが常に正しいわけはないということになりますので、となってくると我々は、今度はネットに対してどれぐらい戦略的に向き合うかということは考えておいたほうがいいと思うのです。
本日、評判の悪かった「共有地の悲劇」ですけれども、例えばこういうワンフレーズ、良いか悪いか分かりませんが、今の政治も全部ワンフレーズ化しているので、このフレーズをどうやってネットに配信していくかとか、そういった形でやっていく。非常にコンパクトに提言、今これはすごく文章が長いし、概要も長いのですけれども、もっとコンパクトな形にしてネットに流していくとか、あるいはセグメントじゃありませんけれども、若い人向けのメッセージと年寄り向けのメッセージを変えていくとか、何かそういうふうな戦略があっていいのかなと思いました。
以上です。
〔 増田分科会長代理 〕 宮島委員、お願いします。
〔 宮島委員 〕 ありがとうございます。
冨山委員や大槻委員のおっしゃったとおりだと思います。多分この会議にいらっしゃるどなたもがここまで易しくするのかと思うところまで易しくしたつもりでも見てもらえないぐらいのところに今来ているというところに危機感を感じております。
総論で申し上げたことは、少なくともこの文章において上から目線や、分かっている人しかついてくるなという印象ができるだけないほうがいいなと思っていて、もう1回読み直そうと思います。例えば総論の中で少しひっかかったのが、総論2ページの7行目にある、これは建設公債だとか公共事業のことを言っている文章ですけれども。つまり、整備をしたけれども人口が少なかったということを言っている文章ですが、その文章の中に「投資に見合う受益人口を確保することがないまま」って書いてあるのですね。長くは申しませんが、人口というのは投資に対して帳尻を合わせるために確保されるものではないと思いますし、もっと言うと、何ていうか人口を増やせ圧力とかですね、いろいろなことを思う人がいるわけです。生まなかったお前が悪いと言われるのではないかとか、この単語の使い方は、まさに行政が人を国のための物資として見ているのではないかと思わせるような言葉遣いじゃないかなと思います。
〔 田近委員 〕 すみません、ありがとうございます。そういうつもりは全然なくて、ここの本質は人口推計が過大だったということにあるわけです。
〔 増田分科会長代理 〕 竹中委員、お願いします。
〔 竹中委員 〕 ありがとうございます。もう長年この財審に参加させていただいて、毎回たくさんの方の議論でこういうふうに建議が取りまとめられているということ、とても感謝します。
ただ、今、最後に皆様の意見も出たように、これだけ一生懸命議論したにもかかわらず、どれだけの方に読まれているかというところが、やはりすごく私たちにとっては残念な部分で、私たちの活動、プロップ・ステーションの活動はもうネットだけでやっているのですが、なぜかというと、全く見えない方でも音声で全部読み出せるのですね。それから自分で本を持ったり新聞をめくったりということができない方も、ネットだと自分の指、本当にわずかに動く指先で情報を得ることができるというふうに、全ての人に情報を届けようと思うとき、今はやはりもうネットしかないと私は思っています。そういう意味で、これがもう少し分かりやすい、ネットに乗りやすいレイアウトというか、そこも工夫していただかないといけないと思いますけれども、それだけの私たちが議論し、深めて、でき上がったものを一人でもたくさんの方に見ていただくという意味では、やっぱりネット対応というのをできるだけ早急に知恵を絞っていただければありがたいなと思います。
以上です。
〔 増田分科会長代理 〕 末澤委員、それから倉重委員、神子田委員でおしまいにして、あとは起草委員のほうに回したいと思います。
〔 末澤委員 〕 この文章に対してということではないのですが、先ほどからありましたように、私どもはこの財審で財政再建健全化の重要性を毎回説明しているわけですが、実際上は、私、機関投資家向けに講演するとまず出ない質問ですけれども、個人向けに講演したりとか、銀行の先輩とかと飲むと最近多いのは、今、日本の財政状況は悪いけれども、日銀が買っているので、現実に借金ないという話を聞くのだけれども本当ですかという質問がわりと多いのですね。これは1件、2件じゃなくて、広範囲にわりと来ます。これは多分、そういう主張をネットでされている方がいらっしゃって、それを見ての反応なのですね。何が言いたいかというと、要はこの財政健全化自身の必要性自身が、やや一般の方々が揺らいでいるところがありまして、まず、なぜ財政再建が必要かと、そこで迷惑を被るのはどのような世代なんだということをもっと分かりやすくどこかで発信しないと、この答申自身を読む必要性があまり感じられていない状況がもう既に発生していると。そこをやっぱり分かりやすい話をネット等で紹介するということが、私はこの文章をきちんとつくるとは別に必要になっている時代にあるということだと思いまして、これは世界の情勢を見ても、これは本当にそういうことが言えるのだと思います。
以上です。
〔 増田分科会長代理 〕 倉重委員、どうぞ。
〔 倉重委員 〕 今おっしゃった財政健全化の必要性を感じていないというのはなぜかということですよね。私、またさっきの話に行き着いちゃうのですけれども、やはりそれは日銀が国債をこれだけ買っていたら、健全化の必要性は世の中の人は感じませんよね。専門家じゃないから、最終的に出口がどうなのかも分かる必要もないし、だからどうしても今の現在行われている政策についてどっかで触れないと、何か全体像が描けないという印象を持ちました。
それと冨山委員の先ほどの話は確かに正しいと思うのです。将来世代にどう読んでもらうか。将来世代がちゃんと問題意識を持って、俺たちが損するから、きちんと声を上げて選挙に行って、そして彼らの希望を、彼らの声を政治に反映させなきゃいけないという意味ではそのとおりだと思うのだけれども、だけど将来世代というのは、被害者同盟としてそういうことをしてもらいたいと思うけれども、やはり現役世代なんですよね、加害者同盟は。現役世代の人が十分活字を読むのです。新聞も読むし、それから新聞の影響力はまだ残っているのです。これは活字派だから言うのではないのですけれども。政治家は皆読みますし、それから団塊世代も読むのです。でもそういう人たちの心に落ちないのですね、その必要性が。そっちのほうに大きな問題があるのです。それは今の御指摘の、財政再建は本当に必要なのかいという。ヨーロッパとかアメリカは一生懸命やっているけれども、日本は全然、その間、大したこと起きていないじゃないかというところが私は問題だと思って、その辺を、全体のからくりを明らかにして問題提起をしないと、やはりいつまでたっても毎年反省をするということになってしまうのではないかなと思いました。
〔 増田分科会長代理 〕 神子田委員、どうぞ。
〔 神子田委員 〕 ネット世代へアプローチする必要性というのは全く賛成ですけれども、先ほど末澤委員がおっしゃったように、いや、借金なんてないのだみたいなことが広まっているのはネットのせいだろうと言われたように、フェイクニュースも広がってしまう世界でもあるんですね。ネットへのアプローチをしつつも、私はこの6ページの総論の5行目から書いてある、若年層に対する財政租税教育というのは、すごく良いことが書いてあると思うのですね。特にこの8行目の「考えてもらうことが重要だ」ということなのです。じっくり考えた上で、今、消費税を上げないで借金が増えるほうがいいのか、それとも将来世代につけを回さないほうがいいのか、そういうことをじっくり考えて結論を出せる若い人たちを育てていく。要は消費税を上げないので、皆様、楽でしょうみたいなことを言う政治家に対して、無責任ではないかと考えられる若者たちを育てていくということが、この国にとって長期的に重要なことではないかなと思います。ですからこの5行目から9行目の精神というのは非常に大事にしていってもらいたいなと思いました。
〔 増田分科会長代理 〕 それでは、御意見のほうはここまでにいたしたいと思います。最後に起草委員の方からお願いしたいと思います。
〔 田近委員 〕 じゃあ一言。
〔 増田分科会長代理 〕 それでは、田近委員。
〔 田近委員 〕 いろいろ議論いただきまして、倉重さんの、危機がないのではないか、それをこれから一言で言えば、やっぱり日銀がいつまでも低金利を続けていくわけにはいかないし、それで円安になればトランプが何を言ってくるか分からない。そこで金利が上がったときの状態というのは、もう説明するまでもないと私は思います。それはそうで、今回この建議をまとめさせていただいて、やはり先ほど「首の皮一枚」という言葉が良いか悪いかともかく、私の印象は、本当に苦渋に満ちた今回は建議なのかなということで、私たちはずっと、2015年の骨太をある意味バックボーンとしてやってきたわけですよね。耳にたこができるように、一般会計全体で、3年で1.6兆円、社会保障が1.5兆円、それを3で割って社会保障は5,000億で抑えようと、それをやってきたわけですよね。それをやってきたところで2017年の12月の新しい政策パッケージで、もう消費税が上がったらその使い方は変えるのだと。2020年は25年にすると。そこで永易さんがおっしゃった、私も言っている、じゃあ次の18年の基盤強化のときに、財政健全化の数値を出していないわけですよね。その中で今回、苦渋と言ったのはそういう全体的な地合いの中で、この財政制度等審議会が何を出すか。やっぱり言葉はともかく、もう「首の皮一枚建議」なんじゃないかというのが私の苦渋に満ちた答申、今回そういう思いで私は加わらせていただきました。
以上です。
〔 増田分科会長代理 〕 ありがとうございます。
冨田委員、小林委員、お願いします。
〔 冨田委員 〕 御意見、たくさんありがとうございました。ここでいろいろネットの時代の話を言われました。私もそのとおりだと思います。それがゆえに今回、「ポスト真実」ということで一文入っているわけですね。ただ、私は、昭和の時代にはまだ理解があったと思うのです。それが何で平成になってからこうなったかということを1つやっぱり客観的に考えれば、物価が上がりにくい構造、下落し、上がりにくい構造になってきて、金利が上がらないという状況が非常に続いたことがあったと思うのです。それがこれからもどうかというのはまたいろいろ議論の余地がありますけれども、少なくとも昭和の時代に皆万死に値するというぐらいまで考えた問題だったということをここで思い起こしていこうというのが1つあります。
それから、いろいろ御指摘ありました中で、老川委員がおっしゃられた予防医療のところについて、また佐藤さんも同じところで、まず健康は良いことだというところから入っていないのではないかと。何か予算を削ることばっかり書いているのではないかというふうに思われてしまうのであれば、それは大問題であって、やっぱりそこらは配慮させていただきたいと思います。
それから佐藤委員御指摘の医療保険の調整交付金の計算のところですけれども、私は年齢だけでやはり、年齢構成だけで計算するのが客観的だと思います。それは地域差といったって男女の構成比がそんなに県単位で変わるわけではありません。これは、県の新しい体制で見たものなのですね。これまで、基準財政需要の計算自体は客観性を欠くものであったわけでして、そういうことの二の舞をこの医療保険で踏んではならないということで、先ほど田近委員から話があった実質医療費の話と同じですね。実質的な医療費の増加を単純に年齢構成の変化だけで計算しているというところから、やはりそこは明確に計算しておく必要があると私は思います。
それからもう1点、佐藤委員がおっしゃられた計画と決算との乖離が新しい保育の無償化についても何か不透明な処理が行われるとすれば、それは大きな問題だろうというのは全くそのとおりだと思います。ただ今回、それをきちんと書けるかどうかはまた別の問題だと思うのですけれども、そういうふうに思います。いろいろとありがとうございます。
〔 増田分科会長代理 〕 小林委員。
〔 小林(毅)委員 〕 本当に皆様、御意見ありがとうございました。実は起草委員会の中でもいろいろな意見が出て、なかなかうまい表現あるいはうまい書きぶりがないなというところがあったのに、本日皆様からの御意見で、なるほど、こういうふうにすればいいのかと、あるいはこういうふうな形でまとめればいいのかというような意見もあったと私は認識いたしました。この後また起草検討委員会の中で、そういうのを参考にさせていただきたいと思います。
それからネットの話が出ました。これからおそらく、この中に書いてある今後の体制や運営のあり方の改革の中には、この項目もおそらく入ってくるのではなかろうかとは思いますが、やっぱり1つだけ、今回こういう建議をまとめるときに、私が少し気にしていたのは、やっぱり分かりやすさの罠というのがあって、分かりやすさの罠にはまっちゃいけないよと。やっぱり四捨五入すれば分かりやすくなるのだけれども、四捨五入できない部分でいろいろな問題が発生しているということも事実なので、そこの部分をどうあって兼ね合いをとっていくのか。そこをあまりに軸足を移し間違えると、それはまた逆の意味での誤情報を流してしまうことになりはしないかという、これは自分の仕事の中でも同じようなことを考えているのですけれども、その辺りのところも考えながら議論を進めていかねばいけないのかなと。これは皆様から非常にそういう意見が出たので、ちょっとそう思いました。
本当に本日はどうもありがとうございました。
〔 増田分科会長代理 〕 ありがとうございました。
それでは最後、吉川先生、お願いします。
〔 吉川委員 〕 今回は、私は事情があって起草に参加できなかったものですから、本当に書いていただいた方にありがとうございましたと言わなければいけない立場です。どうも本当にありがとうございました。
〔 増田分科会長代理 〕 それでは、一応本日の建議の審議も終わりましたので、冒頭申し上げましたけれども、追加の御意見がございましたら、明日の9日金曜日の12時までに、事務局にメールはじめ、それぞれ任意の形で結構ですが、御提出をいただきたいと思います。
次回は11月20日の10時から会議を開催したいと思っております。よろしくお願いします。
最後に、お手元に配付しております建議(案)、恐縮ですが保秘の観点から会議後回収ということで、右上に番号を振ってございますので、そのまま席の上に置いてお帰りをいただきますようによろしくお願いします。
本日は、以上で閉会いたします。ありがとうございました。
午後0時05分閉会