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財政制度分科会(平成30年10月30日開催)議事録

財政制度等審議会 財政制度分科会
議事録

平成30年10月30日
財政制度等審議会


財政制度等審議会 財政制度分科会 議事次第

平成30年10月30日(火)10:00~12:15
第3特別会議室(本庁舎4階中-412)

1.開会

2.議題

  • 有識者ヒアリング
    「社会保障制度改革における自治体の役割を問う
    ~医療行政の都道府県化の現状と課題~」

  • 地方財政

3.閉会

出席者

分科会長代理

増田寛也

うえの副大臣

伊佐大臣政務官

太田主計局長

神田次長

阪田次長

宇波次長

奥総務課長

安出司計課長

阿久澤法規課長

中澤給与共済課長

一松調査課長

西山参事官

寺岡主計官

日室主計官

北尾主計官

斎須主計官

前田主計官

中島主計官

関口主計官

森田主計官

岩佐主計官

内野主計官

渡邉主計企画官

佐藤主計企画官

秋山咲恵

黒川行治

神津里季生

佐藤主光

武田洋子

竹中ナミ

土居丈朗

中空麻奈

藤谷武史

宮島香澄

臨時委員

井堀利宏

老川祥一

大槻奈那

小林慶一郎

進藤孝生

末澤豪謙

田近栄治

田中弥生

冨田俊基

神子田章

宮武 剛


午前10時00分開会

〔 増田分科会長代理 〕 間もなく会議を始めますが、今日も冒頭でカメラが入りますので、そのままお待ちいただきたいと思います。

それでは、お願いします。

(報道カメラ入室)

〔 増田分科会長代理 〕 ただいまから、財政制度等審議会財政制度分科会を開催いたします。

大変お忙しい中、御出席をいただきまして、ありがとうございます。

本日は、講師として、三原岳ニッセイ基礎研究所准主任研究員にお越しをいただいております。どうもありがとうございます。

本日は、まず三原様から、社会保障制度改革における自治体の役割、特に医療行政の都道府県化の現状と課題についてお話をお伺いした上で、地方財政について御審議をいただきたいと思います。そのような順番で進めていきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

それでは、ここで報道関係の皆様方には御退室をお願いします。

(報道カメラ退室)

〔 増田分科会長代理 〕 今年の4月に国保の都道府県単位化がスタートしまして、社会保障制度の中で都道府県が果たす役割が大変重要になってきております。また、地方財政の中でも、国の場合と同様に社会保障が占める割合も上昇してきております。

本日、これから御講演いただきます三原様ですが、私も、昨年か一昨年に全国知事会の地域医療研究会でお話をお伺いしておりまして、社会保障制度はもちろんのことでありますが、各自治体における医療行政の取組状況について深い識見を有していらっしゃる方でございます。そういうことで、今日、御講演をお願いさせていただきました。

それでは、三原様、どうぞよろしくお願いいたします。

〔 三原講師 〕 皆様、おはようございます。ニッセイ基礎研究所の三原です。

今日は、社会保障制度改革における自治体の役割ということで、特に医療行政の都道府県化が、18年度にいろいろなされたわけですけれども、その現状と課題と、今後の論点といった話で、30分ほどお時間いただければと思います。

少し前置きですけれども、私、大変緊張しておりまして、その理由の1つは財審で話すためです。

ここから少し略歴が絡みますが、もともと私は新聞記者でして、16年間、時事通信という会社に勤めました。そこで、2年間、実は財務省の担当をしておりまして、そのとき大変お世話になった主計官の一人が今の太田主計局長です。その太田主計局長の前でしゃべるというのは大変心苦しいなと思っています。

その後、6年半、東京財団というシンクタンクで働きまして、去年の10月からこちらに来たのですけれども、東京財団のときに大変お世話になった先生が、本日、ちらほら姿が見えます。その先生を前にプレゼンするというのも大変緊張するなと思っている次第です。

実際、最初に主計局からお話しいただいたときに少し考えたのですけれども、まず地方財政のパーツでお話ししてほしいのですという御依頼に少し反応しました。どうしてかというと、地方財政と医療行政と本来は密接にかかわっているのですが、あまりそこをリンクして考えている人がいないということです。それから、医療行政と地方分権がこれから絡んでくるのですけれども、そこの観点でもあまり理解している人が少ない。なおかつ、都道府県の現状がそこそこ分かっていて、インディペンデントに分析したり、研究したり、調査している人もそれほどいない。だとすると、私が少しお役に立てるかなと思って、本日、お邪魔した次第です。そのため、本日は地方財政と医療行政辺りをブリッジするような話になりますが、お聞きいただければと思います。

それでは、プレゼンに入ります。右上のほうにページ数が出ていますので、ページ数を御覧いただければと思います。3ページです。本日お伝えしたいことですけれども、社会保障制度改革というと、一口に言うと年金、医療・介護、少子化、生活保護、雇用、いろいろあるわけですが、医療・介護というのはやはり患者と医者の関係をベースに考えなければいけない。そうすると、現場で対応しなければいけないことが多々あるわけで、そこは年金とは違うわけです。だから、やはり現場に近い自治体の役割が非常に大きいと私は思っています。なおかつ、医療行政に関しては、都道府県の総合的なガバナンスの強化が、2018年度になされましたので、その辺の総合的なガバナンスの強化に向けた制度改革について都道府県がどういうスタンスで臨んでいるのか、あるいは国との間にギャップが生まれていないかというのが、本日のプレゼンの仮説というか、基本的な問題意識です。

具体的には、都道府県が2017年の3月までにつくりました地域医療構想を分析しました。それから国民健康保険の都道府県単位化。こちらについては、先ほど増田分科会長代理からありましたけれども、制度改革に際して都道府県がつくった運営方針を分析して、一定の定量化を図ったということです。そして、地域医療構想と国保の都道府県単位化について都道府県のスタンス、それから国とのギャップを明らかにしていこう、というのが今回のプレゼンであります。

4ページのところは、少し簡略化し過ぎている感はあるのですけれども、まず左側の図表は、医療費が効率化されると何で国、地方の財政が改善するのかというところです。小さくなっていますけれども、円グラフを見ていただければ分かりますが、国民医療費というのは大体こんな割り勘の状況になっています。なので、円グラフが小さくなれば、あるいは円グラフが拡大するペースを抑制できれば、国の税金が減るとともに地方の税金、13%を占める地方の公費の部分が減りますので、結果的にそれは交付税の抑制を通じて国庫負担が減り、将来世代の国民負担が軽減されるということになります。ただ、医療・介護というのはサービスのアクセスとか、質とのバランスも意識する必要があるので、そこは年金とは少し違うのかなと思います。

もう一つ、都道府県が医療行政を頑張っていかなければいけない点というのが5ページ目になります。左側は、2015年と2025年の人口と高齢化率の増減を簡単にグラフにしたのですけれども、結構ばらつきがあるのはお分かりいただけると思います。つまり、人口減少と高齢化のスピードがこれだけ違うということは、地域における医療行政のニーズとか、医療サービスに対するニーズとか、課題が変わってくるということです。ある意味、1国2制度的な対応が必要になってくる可能性があるということです。

特に、それは右側の絵になっているのですけれども、これは2014年ないしは2015年と2025年を比較した病床のギャップです。左側が将来余剰、右側が将来不足になります。なので、これから高齢化が進む3大都市圏プラス沖縄は病床が不足するという結果になっているのですけれども、ほかの県は将来余剰になります。もし、将来余剰だということで、病床を適正化するために診療報酬の単価を変えると、左側には対応できるのだけれども、右側の赤には対応できなくなる可能性があるということです。そうすると、全国一律で診療報酬を変えた場合の影響を最小化するような取組が都道府県に求められたり、ひょっとしたら地域別診療報酬制度のような形で都道府県が独自の医療政策を展開していかなければいけない可能性があるということです。つまり、30年前からずっと地方分権が論じられているわけですけれども、その趣旨が問われているということになると思います。

7ページ目から、少し制度改正の議論になっていきます。

2017年度は惑星直列と言われたのですけれども、2年に1回の診療報酬、3年に1回の介護報酬、それから5年に1回の医療計画、3年に1回の介護保険事業計画の改定が同時になされましたので、15年ぶりぐらいの同時改定になったわけです。さらに、国保の都道府県単位化という、国民皆保険を1961年に導入して以来の大改正がなされましたので、半世紀ぶりぐらいの大改正が並んだということになります。そのメッセージの一つには、都道府県の役割を強化するというところにあったわけです。

それが8ページ目の絵になるのですけれども、これは財審の絵を引っ張ってきました。ポイントは赤で括ったところです。この絵に全て賛成しているわけではありませんが、非常に良くできた絵なので、よく使っているのですけれども、医療計画、地域医療構想は一体的なものなので、まずこれが1つ目。それから、医療費適正化計画、これが2つ目。国保財政運営、これが3つ目。私は、これを3点セットと言っていますけれども、この3点セットで都道府県が医療行政にもっと関与してもらおうではないかというのが、2018年度制度改正のメッセージだったわけです。

実際、「骨太方針2017」を見ると、総合的なガバナンスを強化して、医療費、介護費を抑制しながら、効果的なサービスを効率的に提供すると書いています。なので、都道府県がそういう役割を果たすべきであるというのが国のメッセージなわけです。

さらに、今年、医療法が改正されまして、都道府県は医師確保計画をつくっていくことになりました。上の話は比較的お金の話がメインですけれども、さらにマンパワーのことも都道府県は考えていかなければいけないということで、医療行政に関する都道府県の役割が大きくなってきているわけです。

では、その中の地域医療構想はどうなのかということです。地域医療構想は、既に社会保障で一度議論されていると思いますが、少しおさらいです。要は2014年ないしは2015年の現状と、2025年の必要病床を比較するというのが主眼です。どういうことかというと、各医療機関が都道府県に対して、うちは高度急性期をやっています、急性期をやっています、慢性期をやっていますと報告させるのです。この表で言うと、地域医療構想の数字を足し上げたのが「現在」になります。

ここの部分については、地域医療構想で使われているデータを使ったので、厚生労働省の出しているデータと少し違いますし、2014年と2015年の双方が含まれますので、実は少し発射台がずれている面があるのですけれども、そんなに大幅に違うわけではありません。ここでは地域医療構想に盛り込まれた病床数を書いています。

一方、2025年の必要病床、これは厚生労働省令に定められて、都道府県が将来の病床数を予想したものです。これを比較すると、将来の姿が浮き彫りになるということです。プラスが余る、マイナスが足りないということで将来の姿をここに出していますけれども、全体で言うと8万3,000床ぐらいが余りますがその内訳は、急性期がすごく余って、回復期が足りなくて、慢性期が余る。慢性期が余るので在宅医療を普及させなければいけないというのがメッセージになっています。

各都道府県は、これをもとに、このデータどおりにするわけではないのですけれども、地域医療構想調整会議という場をつくって、その場で医師会とか、医療機関の関係者とか、市町村とか、場合によっては住民と合意形成しながら、地域の特性に応じた医療提供体制をつくってくださいというのが地域医療構想のメッセージです。左のようなプロセスの中で地域医療構想がつくられてきました。

ところが、地域医療構想のシンポジウムとか、説明会とかに行くと、やや違和感があるのです。何が違和感かというと、前半は11ページの左側についてずっと話しているわけです。つまり、病床ですね。過剰な病床をいかに削るか。地域医療構想というのは病状数をコントロールする政策ですから、当然、病床の議論になります。ところが、後半ぐらいになってから、誰かが急に「地域医療構想って病床を削るための政策ではないのですよね」と言うと、皆思い出したように、「ああ、そうそう」となるのです。それで、右側の議論がなされるということであります。地域医療構想というのは「過剰な病床の適正化」、「提供体制構築」という2つの説明が混在しているのです。

左側は、諮問会議とか、こちらの財審で語られるような文脈で議論されているわけですけれども、右側は厚生労働省が説明しています。つまり、財政当局の説明と厚生労働省の説明がやや食い違っているわけです。言い換えると、地域医療構想は2つの目的が混在しているということをあらわしているわけです。

その次の12ページのスライドは参考です。これまでの政府の文書とか、あるいは医師会の関係者の対談等々をここに反映しています。

そして地域医療構想の分析に際しては、2つの軸が混在していると考えて、制度化の背景とか、プロセスとか、国の動向などを分析する必要があるだろうと考えました。以下では、2つの目的で整理・分析して、少し定量化していきたいと思います。

まずは、都道府県のスタンスを考えるために、都道府県が2025年の必要病床数について、どんなスタンスで臨んだのか見ました。私がもし都道府県の職員で、過剰な病床の適正化にすごくやる気があるのであれば、現状を必要病床数に少しでも近づける努力をするわけです。そうでない場合は、削減目標ではないと明記して、医師会と関係者と調整をしていくということになっていくと思うのです。

それで都道府県はどちらを重視したかというと、後者を重視したわけです。つまり、削減目標ではないとわざわざ地域医療構想に明記した県が3分の2もあったということです。これは、日本医師会がそういう要請をしたことも影響していると思われるのですが、地域医療構想は病床の削減の政策ではないと都道府県は思っているということです。少なくとも、それを公式に打ち出した上で地域医療構想をつくり、地域医療構想調整会議の調整に臨んでいるということになります。

それから、地域医療構想、国保の都道府県単位化、医療費適正化の3点セットを地域医療構想にどこまで盛り込んだかというのが、15ページ目のスライドになります。

まず、地域医療構想の中で国保の都道府県単位化に言及した県はわずか2県です。言及というのはどういう意味かというと、例えば「国民健康保険の都道府県単位化との整合性を図る」とか、「国保改革との連携を意識しながら」みたいな表現があるかどうかなのですけれども、実はそれを明確に言及したのは奈良県だけでした。佐賀県が残りの1県なのですけれども、佐賀県は最後の工程表にちらっと述べているだけで、実質的には奈良県だけだったということです。

医療費適正化計画への言及ということですけれども、例えば地域医療構想の文言で、「医療費適正化計画との整合性を図り」とかという表現があるかどうかをチェックしたのですけれども、これも10県ぐらいです。つまり、4分の1もないわけです。だから、3点セットをリンクした県はほとんどなかったということです。これは、ガバナンスの強化を促して、医療費適正化に向けて都道府県に頑張ってもらおうと国は考えているわけですけれども、そこに認識ギャップがあるのではないかということです。

なぜ認識ギャップが生まれるのかということは後で述べます。

次に、16ページ。先進事例として幾つか事例が上がってきているのですけれども、これは青森県の事例です。青森県については、厚生労働省が一時期、先進事例と説明していました。ここでは具体的な事例として弘前市など津軽構想区域を挙げたのですけれども、国立病院と市立病院を統合して、中小の自治体病院が急性期を諦めて回復期、慢性期をやって、地域医療構想で各医療機関の役割を定めて、病床を適正化していこうというのが青森県の考え方だったのです。

しかし、厚生労働省は最近、青森方式を先進事例として紹介しなくなりました。それは恐らく青森県の特殊性を認識したためではないかと。つまり、青森県は自治体病院のウエイトが非常に高いので、県が影響力を行使しやすい面があったということです。しかし、他の地域では民間病院が多く、このやり方はダイレクトに適用できません。つまり、青森方式のやり方は、一つの事例ではあると思うのですけれども、これをいきなり横展開するのはなかなか難しいだろうということが分かってきたからだという気がします。

実際、合意形成を地道にやっていくことが、地域医療構想では求められています。その意味では、スピード感が少しなくなる面はあるのですけれども、そこはやはり都道府県がコツコツ頑張っていくことが求められるということになります。

17ページ目、なぜ先ほど言った地域医療構想で病床適正化とか、3点セットをあまり意識しなかったのかということが、ここから少し伺えます。私が都道府県の担当者だったら、地域医療構想をつくるときの委員会など必ず医師会の関係者は入れると思います。切れ目のない提供体制の構築に向けて、在宅医療の普及とか、医療・介護連携の促進をするときに、地元医師会の協力は絶対不可欠です。

なぜかというと、日本は民間中心の医療提供体制ですから、やはり地元の医師会と連携しなければいけない。実際、地元の医師会では頑張っているところもありますから、そういう人は必ず入れるだろう。しかし、必ず入れたら、あまり数字として定量化できないので、医師会の関係者を地域医療構想の検討組織のトップに据えたかどうかをチェックしました。つまり、地域医療構想を具体的に検討する組織について、そのトップが地元医師会の関係者がどうかをチェックしました。

そうすると、判明できた範囲で3分の2から4分の3ぐらいが、医師会の関係者をトップに据えていました。つまり都道府県は、過剰な病床の適正化を進めて地元の医師会と関係を悪化させるよりも、切れ目のない提供体制の構築に向けて、地元医師会と二人三脚で提供体制を進めていこうと考えていたことが、この結果から明らかになるかと思います。

なぜ不明が出るのかということですが、私は非常に問題だと思っています。つまり、都道府県の情報開示がなされていなくて全然分からなかったということです。地域医療構想をチェックするときに、トップがどうかというのはまず冊子を見れば、冊子の一番後ろに本日の財審みたいにリストが出ていて、そのリストの中で座長に丸がついていればチェックできます。ところがこれがない。これがない場合、どうするかというと、もし資料が公開されていれば資料を見るわけです。ところが、資料を公開している都道府県は、実はあまり多くありません。資料がなかったら、今度は議事録をチェックしに行くわけですけれども、議事録さえ出していない県が多々あります。なので、結果的に不明がここで発生したということです。都道府県の情報開示に向けた消極的なスタンスがここに表れています。

以上、総合すると、過剰な病床の適正化という軸で見てみると、都道府県は消極的だったということです。一方、切れ目のない提供体制の構築という点では、地元医師会と連携しながら策定している様子が浮き彫りになったということです。そこは、都道府県と国の間でやはりギャップがあるのではないかということです。

ただ、一部の都道府県では、佐賀方式とか、奈良県とか、大阪府とか、和歌山県とか、幾つかそれなりに、自前で物を考えた医療行政がなされ始めていますので、その辺は地域医療構想の成果として言えるのかなと思います。ただ、これが効果を上げ出すのには、少し時間を要するのかなと思います。

国保の都道府県単位化の実情に移っていきます。20ページ目です。これは、2月から3月に厚生労働省がウェブにアップしたパンフレットです。国保の都道府県単位化で、こう変わりますというパンフレットです。ところが、このパンフレットを見てもよく分からないわけです。保険料の負担の公平な支え合いと見える化についてこの中に書かれているのですけれども、その関係性があまり分からない。それから、サービスの拡充と保険者機能の強化という言葉も分かりにくい。例えば、サービスの拡充は国民にとってハッピーな話で、保険者機能の強化というのはやや給付の抑制に使われますから、軸としては違うはずなのですけれども、給付の抑制と給付の充実を同じ項目に立てているというのは非常に分かりにくいわけです。これでは伝わらないだろうと思うのです。

実際、これを見て新聞記者から問い合わせが来て、「分からない」と聞かれて、なるほどと思いました。そのときに見せた資料は21ページ目です。これは、当時の局長が雑誌のインタビューに答えた国保の都道府県単位化の狙いです。1つは、財政基盤の飛躍的な強化、消費税を増税した分も含めて3,400億円の税金を投入して、国民健康保険の赤字を解消するということです。

2つ目は、保険者の集約、財政単位を拡大する。保険の世界では大数の法則と言われますけれども、サンプル数を大きくすればするほど正規分布に近づいていくという点では、保険者を集約することで財政が安定化する。

3つ目は、リスク構造調整という話です。つまり、同じ年齢で同じ所得であれば、保険料を同じにするような制度改正をしたということです。その結果、負担と給付の関係を見えるようにしたということを言っているわけです。負担と給付の見える化というのは、リスク構造調整の導入を含めて、国保の都道府県単位化でこれだけ負担しているのだから、これだけ給付があるのだということが国民に分かりやすくなるということです。これが国保の都道府県単位化の本来の目的だったわけです。

もう一つ、国保の都道府県単位化は狙いがありまして、22ページ目です。提供体制改革とリンクする目的、先ほど申し上げた3点セットです。これはいろいろな政府の公式文書でも書かれているところです。もっと言うと、もう10年ぐらい前から医療行政を都道府県単位にする動きは継続化していましたので、18年度にそれが顕在化したということが言えるかもしれません。

なので、国保の都道府県単位化を分析するときも、やはり2つの軸で分析しようと考えました。1つは負担と給付の関係の見える化。今、国民健康保険では赤字が出ると法定外繰入という形で市町村が赤字を補塡しているのです。その結果、どれぐらい給付を得ているから、どれぐらい保険料を払っているのだということが分かりにくくなるということです。法定外繰入は、往々にして裏から入っています。裏から入るというのは少し分かりにくいかもしれませんけれども、不透明で、補正予算で入れたりとか、あまり国民にも説明をしていないケースがあります。そういうことはよそうではないかというのが、負担と給付の関係の見える化になります。もう1つが提供体制改革とのリンクです。

この2点を軸に、国民健康保険の都道府県単位化について都道府県が運営方針をつくりましたので、その運営方針を見ていきます。

次、24ページ目です。国民健康保険は、赤字が毎年、トータルで3,000億円から4,000億円ぐらいあるのですけれども、少し税金の支援が入ってきたので、今回、1,500億円ぐらい減りましたが、赤字があると。赤字をそのままにして制度改正するわけにいかないので、赤字の処理をどうやるかをちゃんと明記しているかどうかをチェックしました。これは、計画どおりにならなくてもしようがないかなと思うのです。ただ、「5年でやるといって7年になりました」といったことを国民に説明をしなければいけないわけです。その発射台になる説明をきちんとやっているかどうか運営方針をチェックしたわけです。

その際、国は策定要領、つまり運営方針をこういうふうにつくってくださいという技術的助言を都道府県に出しました。技術的助言を見ると、「5年以内に」と書いています。別の文書で6年以内と書いているので、五、六年が一つの標準だと国は考えているということになります。

これと比較すると、29道府県が赤字処理の年度を明記して、25道府県が五、六年としていました。ところが、3分の1ぐらいの都府県は明記していないのです。つまり、赤字の処理についてあまり国民に説明しようとしていないということが、残念ながら浮き彫りになります。積極的な団体としては、千葉県、大阪府、奈良県、佐賀県辺りです。これらの自治体では、きっちり制度改正以前の赤字と、制度改革した後の赤字を切り分けて、過去の赤字は市町村の責任で、新しい赤字は都道府県も責任を持ちながら赤字を処理するといった役割分担をきっちり書いています。負担と給付の関係の見える化に向けて、こういうことが本当は必要なのだろうと思います。

これが一番問題なのですが、26ページ目のスライドを御覧ください。実は、財政安定化基金という制度があるのです。これは介護保険と後期高齢者にありまして、国保にも導入されました。これは介護保険の絵なのですけれども、財政安定化基金をつくることによって何が良いかということです。

先ほど申し上げたとおり、国民健康保険の場合は市町村が後から赤字を不透明に出している。これは、一般会計繰入とか、法定外繰入と言いますけれども、その法定外繰入を介護保険は認めていないのです。認めていないかわり、どうしているかというと、どうしても計画期間中、介護保険の場合は3年ですけれども、3年で給付が急激に増えたり、保険料を取り損ねたりすることが起きます。そうすると、何が起きるかというと、財政安定化基金が貸し付けたり、交付したりするのです。市町村は、次の計画で取りはぐれた分の保険料を上乗せするという仕組みになっています。このことによって、野放図あるいは無計画な法定外繰入を制限しているわけです。

これが介護保険で導入されて、後期高齢者で導入されて、国民健康保険にも導入されました。つまり、財政安定化基金と法定外繰入というのはバーターの関係というか、一対の関係のはずなわけです。法定外繰入を制限するから、財政安定化基金をつくるという意味です。

そこで25ページ目、では運営方針にどういうように書いているだろうと見てみたわけです。国の策定要領、つまり国の技術的助言を見てみると、財政安定化基金の説明の中に「法定外の一般会計繰入を行う必要がないよう」という文章が書かれています。つまり、法定外繰入の解消と財政安定化基金というのは対の関係だと、ここで意識しているわけです。

ところが、都道府県の運営方針を見てみると、わざわざ半分の県が法定外繰入の制限に関する部分を削っているのです。つまり、財政安定化基金の説明に際して法定外繰入のリンクを外しているということになります。技術的助言は自治事務ですから、それに従うか従わないかは都道府県の判断ですけれども、都道府県はあえて自分の判断をした上で、法定外繰入の制限を外しているわけです。

これは、私は由々しき事態だと思います。つまり、財政安定化基金で税金を投入しているわけですから、法定外繰入の制限は当然やってもらわなければいけないわけですけれども、残念ながらやろうとしている都道府県が少ないということになります。ある意味、抜け道をつくっているわけです。ここは問題だろうと思います。

27ページ目になります。もう一つの3点セットのうち、国保の都道府県単位化と医療計画、あるいは地域医療構想、医療計画というのは地域医療構想の一部ですから、医療計画、ないしは地域医療構想をどこまでリンクしたかというのを見てみました。例えば、国保の運営方針の中に「医療計画との整合性を図り」みたいな文章があるかどうかです。そうすると、今の状態であったとしても、4分の1の県がやはり言及していないのです。

この4分の1をどう見るかという問題はあるわけですけれども、地域医療構想のときの3点セットとリンクをしなかった都道府県のスタンスとあわせて考えると、やはりここもリンクを避けたのではないかということが推測されます。医療費適正化に関しては全ての都道府県が言及しているわけですけれども、そう考えると、やはり総合的なガバナンスの強化を抱えているのだけれども、都道府県とは依然として温度差があるのではないかということが言えるわけです。

その3点セットを意識したのが奈良県です。奈良県は、こういう形で国保の都道府県単位化で保険料を統一して、医療費適正化計画で上限をはめて、地域医療構想で病床数の適正から在宅医療の推進を図る。もし上限を超えたら、地域別診療報酬制度で単価を引き下げる、1点10円の診療報酬の単価を1点9円に下げるようなことも考えたいというのが奈良県のやり方であります。

以上、国保の都道府県単位化の実情をトータルで見てみますと、残念ながら負担と給付の関係の見える化という点では、都道府県のスタンスとしては消極的だったということです。特に、法定外繰入の制限に関するところがやはり一番問題かなと、私は思っています。それから、提供体制改革とのリンクについても、やはり少し避けたいという動きが見受けられました。

結果的に、トータルすると、過剰な病床の適正化ということはやはり都道府県は後ろ向きで、提供体制の構築をやろうとしている。さらに法定外繰入の制限は後ろ向きだと。そう考えると、やはり先ほどお見せした財審の絵と比べると、都道府県の総合的なガバナンスの強化を国は期待しているわけですけれども、都道府県との間には認識ギャップがあるということが言えると思います。

終わりに、31ページで全体像を示してみました。ガバナンスという言葉は、本来は関係者との連携を含めて統治のレベルを上げていくことですので、ガバメントの強化だけがガバナンスではないので、こういう関係者を列挙していきました。あえて国を書いていないのは、都道府県の中で完結する関係者を書いたわけですけれども、こういった関係者との協議、連携が問われるということが言えるだろうと思います。今回、プレゼンさせてもらったところが赤の地域医療構想と、国保の都道府県単位化です。

課題としては、32ぺージで認識ギャップ、33ページで都道府県と関係者の連携と2つを挙げました。まず前者の点では国と都道府県の間に認識ギャップがある。これは、先ほどさんざん申し上げたとおりです。つまり、病床適正化について、国はどうしてもそちらにアクセルを踏みたがるのだけれども、都道府県は医師会との関係を連携しながら、切れ目のない提供体制の構築、在宅医療の普及とかを重視しているので、そこのギャップはなかなか埋まらないという気はします。あとは、国保の都道府県単位化に関しても、見える化に関しては都道府県が住民に説明することを避けたがっているというところは少し認識ギャップだろうという気がします。

これが最後ですが、都道府県と関係者の連携ということで、先ほど絵をお見せしましたけれども、地域内のガバナンスをどう強化するのか、都道府県の力量が問われることになります。その際、住民は重要なステークホルダーですし、それから医師会、市町村、被用者保険、この辺りがステークホルダーだと思いますが、そういうステークホルダーと都道府県がどう関係を強化しながら、地域内の本当の意味でのガバナンスの質を上げていくことが求められるということになるのかなと思っています。

雑駁ですが、以上です。ありがとうございました。

〔 増田分科会長代理 〕 どうもありがとうございました。

それでは、ただいまの三原様の説明について質疑をお受けしたいと思うのですが、本日の欠席の岡本委員から意見書が提出されておりますので、お手元に配付をしております。お目通しをいただきたいと思います。

ネームプレートを立てて御意見をいただきたいと思います。初めに、佐藤委員。佐藤委員から順に、井堀委員、宮島委員と行きますので、よろしくお願いします。

〔 佐藤委員 〕 御説明ありがとうございました。

認識のギャップ、つまりベッド数を削減して医療費を抑えるのだという財務省的な思考と、切れ目ないサービスを提供するのだという厚生労働省的な思考というのは、よくある玉虫色というか、同床異夢というか、この国の政策形成をよく表していると思います。ただ、ここまでは笑い話ですけれども、由々しき事態は、やはり制度設計と現場がうまくつながっていないのだと思うのです。やはり現場の認識、例えばほかの公共事業、PFIとか、PPPの推進でもそうですし、よく笛吹けど踊らずと言うのですが、制度設計的にはインセンティブも含めて推進しようと。ここで言えば、地域医療構想や病床数の削減を推進しようというような制度設計をしているはずなのに、現場のほうは全く動いていないというのはほかの分野でもあることなので、ではどうするか。

私は内閣府の仕事もしているので、まさに本日、三原さんから見ていただいたような地域差、つまりサボっているところと頑張っているところの差はやはり見せていく。私も奈良県の仕事をしていたのでなんですが、奈良県をもっと持ち上げても良い、頑張っていると言うぐらい、頑張っているところは褒めてあげる。そういったストーリーも見せていく必要があるかと思います。

本日の話で、特に最後のところで大事だなと思ったのは、やはり一般会計からの赤字補塡があることによって、住民にとってコストが見えなくなっているのだと思うのです。これもよくある話で、結局、自治体が、県が住民と医師というか医療関係者の間に立ってしまって、お医者さんも困らないように、住民も困らないようにしてあげている。つまり、何とかしてあげているというのがこの国の構造で、そうなると住民は何とかなると思ってしまって、結局、コスト意識を持たないままになります。これは、地方財政の分野では限界的財政責任とも言いますけれども、やはり住民にフルコストを見せて、受益が増えればコストも増える、つまり保険料も上がるのだという姿を見せていくことだと思いますので、ここもやはりしっかり進めていかなければいけないのかなと思いました。

以上です。

〔 増田分科会長代理 〕 では井堀委員、お願いします。

〔 井堀委員 〕 どうもありがとうございました。

今日のお話で、医師会との関係に関してかなり触れられたと思うのですけれども、例えばレジュメで医師会関係者が協議会のトップに入っているのは24道府県だと。それが医師会の影響力の一つの指標ということだと思うのですけれども、その話と最後のところの財政安定化基金との関係で、法定外繰入の制限に言及していない地方が半数ぐらいあると、そことの相関はどうなのでしょうか。最後のレジュメだと、医師会との過剰な関係を意識しているというのですけれども、具体的にトップにある自治体が、結果として法定外繰入制限に言及していない自治体とかなり相関しているのですか。

〔 増田分科会長代理 〕 三原さん、何か関係は見られますか。

〔 三原講師 〕 そこは、あまり見られないです。都道府県の差がなぜ出るのか、よく問い合わせを受けるのですけれども、これは都道府県の担当者の意識で結構変わるので、病床の数字とか、国保の財政が悪いからこういう結果になっているということはあまりないように見えます。都道府県が地元医師会を意識しているのは、むしろ提供体制改革のほうなので、国保の財政運営とは少し切り離して考える必要があると思っています。

〔 増田分科会長代理 〕 ありがとうございました。

宮島委員、お願いします。

〔 宮島委員 〕 ありがとうございます。

地域医療構想は期待が大きかったので、現場がこんな感じだというのはかなりがっくりくるものがあるのですけれども、御指摘されているように厚生労働省の説明がちょっと違うのではないかという辺りは、厚生労働省にこれを聞いたことがある方がいらっしゃるかどうか、厚生労働省にお問い合わせをしたかというのが一つの質問です。

更に言うとPDCAサイクルをちゃんと自治体でも回す必要があると思います。これはまだ始めたばかりなので、まさに今日、やろうとしていることがそれなのかもしれませんけれども、そもそも自治体でも、自分たちはちゃんとできているのか、目的に合ってやっているのかを見直す仕組みがあることが大事だと思っておりまして、そういうものがあるかどうかをお伺いしたいと思います。

さらに、お話にあったように青森県が参考にならないとすれば、奈良県は参考に、横展開できるかどうかというのは非常に重要だと思うのですけれども、1つには、私も知事のお話を伺ったことがありますが、やはり相当そこで推進力があるというか、ちゃんと県民を説得しようというところがあると感じられますけれども、こういう方ばかりではないわけです。そうではない場合に、奈良県の例をどのような形で横展開することが可能だと思われるか、その辺りを伺いたいと思います。

〔 増田分科会長代理 〕 三原さん、お願いします。

〔 三原講師 〕 ありがとうございます。

地域医療構想に関する厚生労働省の方針に関しては、いろいろなシンポジウムでの発言とか、雑誌の発言や説明などほぼ目を通したつもりですけれども、やはり軸がぶれていると考えざるを得ません。

12ページ目のスライドを御覧いただきたいのですけれども、もともと地域医療構想の淵源は2008年の社会保障国民会議中間報告から始まります。ここには病床の適正化がうたわれているわけです。しかも、思い切った適正化と書いてあるわけですけれども、これが右側の制度改正の議論を経て、結果的に2つの軸が混在してしまったと理解しています。なので、そこは佐藤先生がおっしゃったとおり、曖昧な説明で乗り切っているというのが実態かなと思います。

もう一つ、PDCAサイクルで自治体がどこまで運営しているのかということですけれども、最近、厚生労働省が結構、地域医療構想ワーキングに先進事例を出していますし、都道府県の医療担当職員に政策研修会をやったり、そこには医師会の関係者と一緒に来てくださいということをやっていて、結構、医師会の関係者を連れてきている都道府県もあるのです。なので、その辺は少しPDCAサイクルを回して先進事例を出していく。しかも、病床適正化だけではなくて提供体制の構築のほうも入ったような資料が出始めていますので、その辺はこれからウォッチしていく必要があると思います。

最後、青森方式と奈良方式の話ですけれども、私が今、先進事例として見ているのは奈良県と佐賀県です。奈良県は、やや県が力を発揮してガバナンスを強化しているという印象です。一方の佐賀県は、比較的、合意形成を重視しているタイプです。地域医療構想を進めるときに、合意形成するときはやはり関係者との意思共有とか、情報共有とか、信頼感が必要なわけです。あるところが「急性期を急に取得する」となった瞬間に、別の病院が「じゃあうちもとる」といった形で軍備拡張競争的なことが起きてしまい、病床が過剰な方向に増えていきかねないので、これを逆回転させる、つまり「軍縮」するときはやはり信頼醸成や合意形成が大事です。

そこで、佐賀県は何をやったかというと、例えば地域の医療提供体制に重要な変更を伴う意思決定をする場合は、地域医療構想調整会議で説明してくださいというようにしたのです。それを地域医療構想調整会議の合意形成にしてしまったのです。つまり、ある病院が研修医をいっぱいとりたいから急性期をとりたいといっても、調整会議の協議、合意事項にしてしまったわけです。それから、国民健康保険の都道府県単位化も、運営方針を分析した時点で佐賀県は保険料の統一について明記していなかったのですけれども、市町村と協議して方針を決めていくという話が1週間ほど前の地方紙に出ていました。だから、佐賀県は比較的、合意形成を大事にしている印象です。

なので、各県、そうやっていろいろなことを考えながらやっていくことが必要なのかなと。だから、奈良県は一つのベストプラクティスだと思いますけれども、それ以外もいろいろなベストプラクティスがあるので、先ほど佐藤先生おっしゃっていましたけれども、先進事例を出して褒めてあげるということは一つ大事なことなのかなと思っています。

〔 増田分科会長代理 〕 冨田委員、お願いします。

〔 冨田委員 〕 ありがとうございます。

お話を伺っていて、冷戦が終わったころのソビエトとか、東ヨーロッパで、赤い工場長と、ソフトバジェットコンストレイントというソフトな予算制約が経済の非効率性の大きな元凶だったわけですけれども、それがここにもあるような感じがします。お話を伺っていると、それぞれの利害関係の中で、利害関係がきっちりと明確になればまだ良いのですけれども、予算制約が緩いがゆえに、こういうことが起こっているのだなと理解させていただきました。大事な点は、国で、医療費を中心に、年齢構成の変化でもってどれだけ増額が許容できるものかということで決めてやっているのですけれども、現場ではなかなかそうなっていない。そのお話もございました。

そこで、財政安定化基金ができて、予算制約をどんどん緩くしている法定外繰入について閉じましょうというお話がありました。私もそのとおりだと思うのですが、もう一点、我々が財審で議論いたしました点は、国保の普通調整給付金の配分の仕方を、現実の医療費ではなしに、国と同じように年齢階層別で各地方公共団体で計算し直して、配分し直すことを提言しているのです。

先ほども御指摘あったのですけれども、地域差は年齢階層別に再計算した医療費、それから医療の供給体制も病床でものすごく違うわけです。20万病床ほどを2025年までにという目標なのですけれども、実態は、この前お聞きしたら、たった2,000床でした。もう2025年まであまり時間がないわけですけれども、全然進捗がないわけです。その理由は、本日お話を聞いたもので、なるほどとはなかなか思えない。やはり都道府県ごとの供給体制の違いを、三原さんからどんどん知事会に御指摘なさるとか、そういうことがやはり一番大事かなと思うのです。

もう一点、最後の33ページ、今後の論点のところであるのですけれども、我々、最終的に受益と負担がきっちりと分かるように、どうやって折り合いをつけるかと書いてあるのですけれども、折り合いをつけるのが民主主義であり、市場経済のはずなのです。もう既に我々は、コルナイが指摘したソフトな予算制約について、ハードランディングではなくソフトな形で、つまり財政安定化基金をつくってソフトな感じで着陸しようとしているのだけれども、それを現場で拒否していたら、ショック療法的なものに必然的になってしまうというリスクですね。そういうことも説いていく必要があるのではないかと思いました。

ありがとうございました。

〔 増田分科会長代理 〕 小林委員、お願いします。

〔 小林(慶)委員 〕 ありがとうございました。

2点だけ簡単にコメントしたいと思ったのですけれども、1つは、医師会の問題が非常に強いと思うのですが、医師会とのある意味で大きな目標の共有をどうやって図っていくかということが問題だろうと思っていて、それはやはり財政の安定化、最終的には切れ目ない提供体制を維持するための必要な条件なのだということを、各地の医師会にどうやって分かってもらうのかということだと思うのです。

2008年にはこういう議論をしていたと思うのですけれども、昨年ぐらいになると、たしか日本医師会の中で、財政問題、財政の安定性についての勉強会が始まったという話も聞きましたので、ある程度、医師会の中でも財政について問題意識が出てきているのではないか。そうだとすると、もう少し議論をするとか、あるいは財務省や財政の関係者が情報を提供することによって、各地のお医者さんの考え方もより変わっていくのではないかということが一つあります。

2点目は、やはり自治体のインセンティブの設計ももう少し踏み込んで工夫することが必要かなと思うのです。先進的な事例を褒めるのももちろん大事なのですけれども、例えば病床の削減などができて10の経費が削減されたら、そのうちの3割は自治体の金銭的な報酬になるとか、ある程度ハードな報酬体系みたいなものを設計して、より政策を推進したくなるような制度設計ができないものかという感想を持ちました。

〔 増田分科会長代理 〕 ありがとうございます。

宮武委員、お願いします。

〔 宮武委員 〕 28ページの3点セットを意識した奈良方式、この図はとても分かりやすいと思っております。都道府県が国民健康保険の主体、財政の責任主体となると同時に、その地域における医療の提供体制を再構築してほしいという要請を、かつての高齢者医療制度改革会議では出した。むしろ、後者のほうが非常に難しい課題だろうなと当時から思っておりました。

次いで、社会保障制度改革国民会議では地域医療構想を進めてほしいということを強く打ち出した。現実に、日本の大半の地域で、人口減少と超高齢化で急性期の病床はそんなに多くは要らなくなっている。現に、地方の県庁所在地の急性期病院でも、ベッドの稼働率は7割ぐらいしかない。現実を見据えて、データでコントロールしてくださいと。将来的な人口推計のデータはちゃんと出ているのだから、そういうデータに基づくコントロールができるかどうかということですよね。

同時に、病床を再編成するということは、それだけ入院期間が短縮し、退院の患者も多くなるわけで、その方たちを在宅の医療・介護の連携で受け止めてほしい。つまり、病床の再編と、急性期から在宅への切れ目のないサービスの提供というのは、どちらかをとるのではなくて、一体とした改革として進めてほしいということであります。つまみ食いをしないためにはどんな方策があるのか、三原さんがお考えのことがあればお聞きしたいと思います。

一方、左側は、都道府県が市町村と協力して医療費の適正化計画を進めてくださいという流れでありますけれども、この中で奈良県は地域別診療報酬の設定権限を県に与えよと主張されています。これは、賛否両論が激突する大変な難問です。奈良方式が正確に理解されているのかというと、私自身も当初は少し誤解した読み方をしておりました。それだけこの問題は根が深く、会長代理にお願いしたいのですが、地域別診療報酬について賛成の方、反対の方、お一人ずつでも結構ですから、ここにお呼びして、議論の機会を是非つくってほしいと思っております。これはお願いでございます。

以上です。

〔 増田分科会長代理 〕 三原さんにまずお答えいただきます。

〔 三原講師 〕 ありがとうございます。

幾つかコメントと質問をいただいたので、少し整理しながらお話ししたいと思うのですが、まず、やむを得ないと思っているのは、都道府県が地元医師会との関係のバランスを考えなければいけないという点であって、法定外繰入をやむを得ないと思っているわけではありません。法定外繰入は財政安定化基金とバーターなわけですし、冨田委員がおっしゃったとおり、ハードランディングではなくてソフトランディングの手段として財政安定化基金をつくった以上、法定外繰入は原則、制限すべきであるということです。法定外繰入がやむを得ない場合は、住民に説明してきっちりやるべきだということです。それには、ソフトな予算制約を潰すということがまず大前提だと思います。

小林委員から、目的の共有とインセンティブという話をいただきましたが、目的の共有で一つ大事なのは情報開示かと思っています。ところが、地域医療構想の策定プロセスに関する情報開示を全部調べたのですが、議事録はもちろん、資料さえ出していない県が多々ありました。そのわりに、地域医療構想を見ると「県民の理解が必要だ」とか書いてあり、「それ、県民は理解できないでしょう」というのが私の素人的な感覚だったわけです。やはりその辺りをきっちり出していって、もちろん全ての会議を表の会議でできるわけではないですけれども、きっちり公開で出していく、あるいは非公開で決めたことを公開の場できっちり出していくということが、目的の共有につながるのかなとは思っています。それは、国保の都道府県単位化も、地域医療構想も、おそらく同じだろうと思います。

それと、インセンティブの話ですけれども、先ほど宮武委員がおっしゃっていた地域別診療報酬との絡みが出てきます。少し分かりやすく言うと、現在、都道府県の医療費は1.3倍ぐらいあるわけですが、これはほとんど高齢化率と病床数と医師数で説明できるというのが、大体、医療経済学の知見になってきています。冨田委員がおっしゃっていたとおり、年齢と所得は都道府県で解決できないので、ここは調整しましょうと。調整した上で、それでも残る地域差に関しては、医療サービスの利用差で生まれている以上、地域で完結してください、その結果、ソフトな予算制約をハードにしていくことが必要だと思います。

奈良県の試みは一つの試みだと私は思うのですが、これを国全体でやる場合は、例えば国保のお金の出し方、あるいは協会けんぽのお金の出し方を変える。現在は協会けんぽに16.4%とか、定率で出していますよね。これをやめてしまって、医療サービスの利用差のところは出さない。つまり、平均のところしか出さず、平均を超える地域差は保険料で面倒を見るというやり方が必要なのかなと。

仮に病床が多い県があり、そこが医療費も大きい。そして、平均よりも出っ張った部分は、その県民だけではなくて東京の我々も負担しているわけです。もちろん社会保険ですから、負担の支え合いは大事なわけですけれども、全国平均を超えるところまで負担することが本当に適切なのか。平等かもしれないけれども、公平なのかという議論はあっても良いのかなと。ただその場合、所得と高齢化率はきっちり調整しなければいけないとは思います。その上で、地域別診療報酬制度で出っ張ったところを都道府県の判断で下げるとか、そういうことはあっても良いのかなという気はしています。なので、そこはインセンティブになっていくのかなと。つまり、きっちりやらなければ保険料をいっぱい負担しなければいけなくなりますから、税金の出し方を変えていくということは一つ大事なことなのかなと。それが、宮武委員がおっしゃっていた地域別診療報酬制度の導入の一つの文脈になるのかなと思っています。

最後、つまみ食いをどう避けるかという話ですが、これは非常に難しい問題です。私は地域医療構想というのは根本的な問題点が1個あると思っていて、それは病床という提供体制の中で非常に小さいところを動かして、提供体制という全体を動かそうとしているということです。つまり、国民の生活を考えてもらうと分かるのですけれども、入院することはそんなにメインではないはずです。在宅医療はもちろん大事だし、外来も大事なわけです。

しかし、社会保障制度改革国民会議の報告書に、川上が病床で、入院患者を川下の地域に流すみたいなことを書いています。ところが、国民の生活から見れば逆で、川上が生活を支える医療で、川下が病床なはずです。だから、やはりそこは思想をひっくり返して、もっと身近な医療を支えるプライマリーケアのところを整備していくことが本当は必要なのかなと思っています。それは、日本で言うかかりつけ医という言葉になるのかもしれませんけれども、そういう視点がないと、地域医療構想をやるときにやはり病床削減だろうと思われてしまうということです。

本日はプレゼンしませんでしたけれども、かかりつけ医あるいはプライマリーケアの専門医として身近な医療を全人的かつ継続的に診る総合診療医に言及している県がどれぐらいあるか、実は地域医療構想を調べたのです。そうすると、3分の2ぐらいの県が言及していました。つまり、病床削減にとどまらずに提供体制の構築をしようとする都道府県が多いということは、少し前向きなことだと思っているし、国としてそれを考えていかなければいけないのかなと思っています。

〔 増田分科会長代理 〕 ありがとうございました。

宮武委員から、もう一つ、地域別診療報酬の話があったのですが、この後の建議のスケジュール等も考えて、今、取り上げるのはちょっと難しいと思っています。

〔 宮武委員 〕 はい、将来的に。

〔 増田分科会長代理 〕 将来的に議論の必要性があれば、またそのとき考えていきたいと思います。

次、中空委員、お願いします。

〔 中空委員 〕 ありがとうございます。

三原さん、分かりやすい御説明、ありがとうございました。法定外繰入の解消を目指しましょうということや、受益と負担の見える化をしていきましょうということは、なるほど、そのとおりだと思いました。三原さんからいろいろな先生方の質問にお答えした中に、すでに私が今からお聞きすることの答えがあったようにも思うのですが、単純な質問を幾つかさせていただきたいと思います。

1つは、良くできている奈良方式とか、褒めるべきところは褒めるというのはその通りだと思うのですが、では褒めて何があるのだろうとシンプルに思いました。小林委員から、自治体のインセンティブをつけたらどうかとありました。実際にそれは良いアイデアだと思うものの、財源がないという制約の中でどうするかという話の中で、インセンティブというのは少し苦しいかなという気もしていて、だめなところを怒る、ペナルティをかける、という仕組みも必要だと思っているのです。

つまり、あまり法定外繰入解消をしなくてもやっていけている現実のほうが、むしろ問題なのではないか、ということです。何も頑張らなくても良いという考えを、やらない県には与えているのではないか。そこが本当にあるのか、ないのかということが1点目です。先ほど御説明の中で、例えば奈良県が頑張ったのは意識が高いからだとありました。逆に言うと、ほかのやれていない県は、意識が低いということと医師会が強いということ以外に何があり得るのでしょうか。もう一つ気になるところは、奈良県のようにうまくいったケースは住民や患者が利用するときのサービスとして十分満足したものになっているのかどうか、実際に野方図な県と野方図でない県とでサービスの質にリンケージがあるのかどうか。もし、そこをお調べになっていたら教えていただきたいと思います。

以上です。

〔 増田分科会長代理 〕 三原さん、お願いします

〔 三原講師 〕 ありがとうございます。

インセンティブの関係では、国民健康保険の補助金を分配するときに保険者努力支援制度という制度ができて、現在、非常に細かく分配ルールが決まっています。健診の実施率とかがインセンティブになっているのですけれども、私はこれにはあまり賛成ではありません。もちろん法定外繰入をきっちり頑張ったらお金を出すということは必要なのかなと思うのですが、インセンティブのつくり方次第では中央集権的になってしまって、都道府県が「国の評価項目さえやっておけばよい」という形でやる気をなくしてしまいますので、そこら辺のバランスは大事だろうと思っています。

奈良県で、地域の先進事例が生まれている理由は、職員の意識の差と首長のリーダーシップと、医師会との関係性があるのかなと思っていますが、制度がスタートしたばかりですし、先進事例と言われているものが、結局うやむやになるケースもよくありますから、その辺は少し様子を見てみないといけないのかなと思っています。

〔 増田分科会長代理 〕 土居委員、お願いします。

〔 土居委員 〕 プレゼンテーション、どうもありがとうございました。

本日、三原さんがここでお話になるということは、社会保障の制度や予算というのは、単に社会保障予算だけのものではなくて、地方財政の予算も通じて適正化していくことができると。つまり、社会保障に対して働きかけるツールというのは2つあって、社会保障予算と地方財政の予算なのだということを顕著にする、非常に重要なプレゼンテーションだったと思います。

ただ、非常に詳細に地域医療構想の現状などをお示しいただいて、多くの委員からも現状に対する懸念を示されたと思いますけれども、地域医療構想策定ガイドラインに関する検討会で厚生労働省の議論に参画していた身としては、想定内だろうと思っております。2018年はその程度だろうと思っていたので、これから更に働きかけていく、適正化していく、そういうことが必要だろうと思います。現状、決してこれで満足だとは全然思いませんけれども、更に地域医療構想の政策意図が反映されるように、いろいろな媒介を通じて働きかけていくことが必要だと思います。

地域医療構想に、外来や医療費適正化計画についての言及がないということを三原さんは御指摘されたのですが、7ページにあるように地域医療構想のほうが先につくられたので、やむを得ないと私は思っています。私も、地域医療構想策定ガイドラインの検討をしているところで議論に加わらせていただきましたけれども、別に厚生労働省が外来医療について何も考えていなくてサボタージュしたというよりは、むしろ緻密に入院医療の需要予測をするためのレセプトデータの構築までに相当時間がかかってしまったものだから、本当は地域医療構想の中で外来医療まで議論したかったのだけれども、その議論をする時間がないまま発車したので、そのかわり第3期医療費適正化計画では外来のほうをしっかりやると。

こういうタイアップの関係があり、地域医療構想で外来について言及できていないとか、医療費適正化に言及がないというのは、あいにく地域医療構想を先につくったということがあるので、それは致し方なくて、むしろ第3期医療費適正化計画、ないしは第7次医療計画でしっかり入院医療と外来医療、両方を目配せしながら適正化していくということに取り組んでいただくほうが重要だと思います。

確かに、地域によっては医師会がいろいろ、病床の削減に消極的だという話はあります。ガイドラインをつくっているときからそうだったのですけれども、「必要病床数」という言葉がありますが、医師会は「病床の必要量」と言えと強力に主張して、実際、病床の必要量という言葉を使うことになったというような経緯もあります。何がどう違うのかというのは私も全部は説明できませんけれども、ある種、言葉のあやというのがあって、削減と言われるとつらいけれども、やはりデータに基づいてしっかり需要予測していて、患者の数が減ると分かっているのに、引き続き多くのベッドを抱えているのですかという暗黙のメッセージは、相当、地域の医師会にも効いているわけです。

ですから、最初の出足はいきなり100点満点をとれないような地域医療構想の進捗ということかもしれませんけれども、2025年までには、10ページに書かれているように119万床に近づけられるようにすると。

これもまた面白くて、119万床という数字を最初に出したのは、全国統一に数字を推定した内閣官房であったわけです。内閣官房は、各都道府県に計算させる前に、119万床、2025年にという数字を先に出した。医療界からは、何でこんな数字が先に出てくるのだ、各都道府県でこれから必要な病床数を決めると言っているのに、何で勝手に119万床と先に決めるのだというお𠮟りを受けたのだけれども、実際、47都道府県それぞれに全部計算したらどうだったかというと、やはりこの数字なわけです。

だから、結局、レセプトデータという客観的なデータに基づいて需要予測をすれば、確かに各県には温度差があって、微妙に消極的な県もあるかもしれないけれども、やはりこの数字というのは、客観的に計算したら、それ以上鉛筆をなめられないような数字なわけで、私は、地域医療構想の一つの象徴としてこれをしっかり取り組んでいけば、やがて適正化はうまくいくのだろうと思っています。

ただ、進捗管理は非常に重要で、例えば厚生労働省からしっかり進捗管理をやってもらうということもあるのだけれども、もしそれがうまくいかないならば、例えば地方交付税の措置で、補正係数などいろいろな方法で、都道府県が消極的だというのだったら地方交付税がもらえなくなりますよとか、そのような形のインセンティブづけというのもあって、顕著に出てくるのは病床稼働率です。病床稼働率を進捗管理に使うというのは非常に重要なポイントだと思います。

以上です。

〔 増田分科会長代理 〕 田近委員、お願いします。

〔 田近委員 〕 では、端的に1点。

私も、地域医療構想の内閣府の集まりにいたのですけれども、本日、話を伺って、なるほど、こういうような議論に進むのかと思いました。地域医療構想は、基本的には地域の急性期からの病床を推測して、それを実現していこうというもので、そのときに、消費税の一部を地域医療介護総合確保基金につけて、そこで病床管理するということになっているのですけれども、私の質問は、この総合確保基金がどう生かされているのか、せっかく県が国保の保険者になってきているわけですから、県はどういうようなリードをしているのか、その1点を伺いたいと思います。

〔 増田分科会長代理 〕 ここで、うえの副大臣、次の御公務のため退席されます。どうもありがとうございました。

(うえの副大臣退室)

〔 増田分科会長代理 〕 三原さん、お願いします。

〔 三原講師 〕 まず、土居委員から、地域医療構想の進捗状況はこんなものかなという話があったのですが、これを分析したのは診療報酬改定の前なのです。診療報酬改定が18年度になされたので、これからどうなるのかというのは少し見ていきたいと思います。結局、今後も診療報酬改定では、急性期、7対1を減らしていくという形になっていきます。その際、都道府県によっては7対1が維持できなくなって、地域の医療提供体制に不安が出るといったことが起きてきます。その影響を緩和するため、都道府県が本腰になって地域医療構想を動かしていくパターンを想定できると思っています。

例えば、診療報酬改定と地域医療構想の役割分担、違いを考えてみると、診療報酬は2年に1回ですよね。地域医療構想は10年、医療計画は6年なので、タイムスパンが違うわけです。だから、地域医療構想を一つのありたい姿にしつつ、少しずつ診療報酬を改定していく形になっていくと思うのですが、その際に報酬改定の影響を地域でミニマイズするとか、地域でローカライズするということが、多分、都道府県が地域医療構想を使ってやっていく役割分担になっていくのだろうと、私は見ています。厚生労働省がこの役割分担をどう整理するかということは必ずしも明確になっていませんけれども、結果的にそうなるのかなと思っている次第です。

あとは、外来についてですが、日本の医療提供体制の政策自体がずっと病床コントロールで終始していますから、その意味では、もっと外来を含めてプライマリーケアを強化しなければいけないというのが私の持論です。今回の法改正で、外来についても地域医療構想と同じような形をやっていこうということになっていますから、その辺りもこれから期待かなと思います。

最後に、田近先生から、地域医療介護総合確保基金、長いので基金と言いますが、基金はどうなっているのだという話なのですが、残念ながら地域医療構想の目的の曖昧性をそのままダイレクトに反映しています。具体的には、11ページ目を見ていただけば分かるのですけれども、財政当局としては、地域医療構想は急性期の削減に充ててほしいと、つまり回復期に移行するときの設備の変更とかに使ってほしいと考えているのだと思います。ところが、私が見聞きした範囲で、都道府県側は、在宅医療の人材の確保、例えば訪問看護ステーションの人の確保とか、そちらを重視しているわけです。だから、ここでも国と都道府県の認識ギャップが生まれており、急性期削減に使って欲しい国の方針と、提供体制構築を重視する都道府県が板挟みにあっているのではないかと。2年前にヒアリングした段階ではそのような状況でした。なので、この目的の曖昧性がそのままダイレクトに基金の使い道に反映しているということが実態だと思います。

〔 増田分科会長代理 〕 ありがとうございました。

三原さんに対しての質疑は以上とさせていただきまして、続きまして地方財政に入りたいと思います。

こちらは、まず前田主計官から説明をお願いします。

〔 前田主計官 〕 地方財政担当主計官、前田でございます。よろしくお願いいたします。

今ほど、三原先生から医療行政の都道府県化の現状と課題について御説明がございましたので、それを踏まえながら地方財政の課題について御説明をさせていただきます。

1ページの目次を御覧ください。「骨太2018」で定められましたように、「新経済・財政再生計画」におきまして、地方財政の一般財源の総額については2018年度と実質的に同水準を確保するとされております。したがいまして、我々の予算編成の課題はこのルールを守るということだと考えております。

そこで1番目として、一般財源総額実質同水準ルールについて改めて御説明をさせていただきます。

その上で、地方においても高齢化による社会保障費の増加があって、一般財源の水準を横置きとし続けることは厳しい、社会保障費の増加の分だけ一般財源総額の上乗せを認めてほしいという御要望がございますので、これに対して2番目として、地方財政計画と実際の地方財政運営にはギャップがあり、そのギャップの精査なしに、社会保障が伸びる分、単に一般財源を上乗せすることは難しいという点を御説明させていただきます。

3番目としては、そのギャップを前提としても社会保障費が増加していることは事実であって、その抑制について、今後は地方においても取り組んでいただく必要があるのではないかという点を、今の三原先生のプレゼンも踏まえて御説明をさせていただきます。

最後に、一般財源総額実質同水準ルールのもと、社会保障費の増加等を勘案して、必要な財源を確保するためには、地方の税源偏在の是正を進めることも重要な課題であるといったことを御説明させていただきます。

3ページを御覧ください。地方交付税総額の算定と、一般財源総額実質同水準ルールについて御説明をいたします。既に委員の皆様、御案内のとおり、地方交付税は左下の図にございますとおり地方財政計画に基づいて算定をしております。地方財政計画におきましては、地方公共団体全体の標準的な歳出を見積もった上で、地方税、国庫支出金等の歳入を見積もっております。

その上で、歳出と歳入のギャップ、図の赤枠部分ですけれども、ここにまず所得税、法人税等の一定割合、地方交付税の法定率分と呼ばれますが、これを充てまして、さらに地方法人税等の特別会計の財源を加えた上で、なお足りない部分については国と地方で折半して手当をするというルールになってございます。その結果、図の一番下の四角で地方交付税(出口)16.0兆円と示された総額が、交付税の法定率分等、特会財源、折半対象財源不足の国負担を合わせたものになっております。

これに対しまして、一般財源総額実質同水準ルールというのは、地方財政計画の歳入について、地方交付税、地方税、臨時財政対策債等、この図で黄色く塗られた部分ですが、ここを実質的に固定するものです。このルールは、当然、地方に安定した歳入を確保するという趣旨があるわけですけれども、一般財源以外の財源というのは基本的に使途が特定されていて、その裁量性が低いことから、一般財源の金額を固定すると同時に、歳出の伸びが抑制されてくるということで、歳出抑制の規律として機能しているということになります。したがいまして、「新経済・財政再生計画」においては、このルールを今後3年間の地方の歳出水準の目安としたということでございます。

4ページを御覧ください。一般財源総額実質同水準ルールは、平成23年度から導入をされております。2本の棒グラフのうち、左側の青い棒グラフで示されました一般財源の総額ですけれども、薄い青色の部分は調整項目である水準超経費ですので、これを除いて、さらに濃い青色で横に引かれた赤い点線を超えた部分、これは消費税率の5%から8%への引上げに伴って社会保障の充実等が行われた分となっておりまして、それを除きますと、この赤い横の点線、約59兆円なのですけれども、ここでほぼ横ばいとなっている。一般財源の総額は、この7年間、実質的に一定であったと言えます。その結果、2つの棒グラフの右側ですけれども、下の緑色の地方税が増収傾向にある中、オレンジ色の地方交付税は年々減少しているということが起きております。

次に、5ページを御覧ください。これは平成31年度の地方交付税の要求の概要でございます。地方交付税の要求というのは、税収であるとか、国における制度改正など非常に他律的な要素が多いので、要求時点ではあくまで仮置きの試算ということですけれども、ここで示されているのは、一番左、歳出側で、一般行政経費の補助分が0.6兆円、単独分が0.2兆円の増となっておりまして、この大宗は社会保障費の増に対応しております。その結果、地方税の増収を受けて、地方交付税総額は昨年度より減額となっているものの、一般財源総額は一番右下の赤枠囲いにございますように0.5兆円の増額となって、一般財源総額実質同水準ルールは確保されていないといった形の要求になっております。一般財源総額を実質的に同水準に保つためには、社会保障費が増えた分は地方においてほかの歳出削減によって賄うことが求められますので、冒頭、申し上げましたとおり、地方からは、その分については一般財源を増やしてほしいという要望が寄せられておるところでございます。

続きまして、地方財政計画と実際の地方財政運営とのギャップについて御説明をいたします。7ページを御覧ください。

まず、歳入面のギャップについて見てみます。資料では、地方税収につきまして、水色の計画上の金額と青色の決算の金額の推移が示されております。一般財源実質同水準ルールを導入いたしました平成23年度からは、基本的に地方税収は決算において上振れをしており、直近では少し下振れましたが、累計でプラス2.6兆円の上振れとなっております。この決算の上振れにつきまして、例えば交付税を遡及して減額するという精算は行っておりませんので、上振れ分はそのまま地方の追加歳入となっております。

次に、歳出面のギャップについて見てみますと、8ページを御覧ください。赤色が地方財政計画上の歳出金額、そして青色が財務省側で試算した決算上の歳出金額ということでございます。両者の差は近年、縮小傾向にはあるわけですけれども、平成23年度からはしばらく、計画額が決算額を1兆円を超えて上回るという状況でございました。こちらも、特段精算は行われておりませんので、地方の追加の財源となっていると考えております。

この歳出の計画と決算の乖離の要因を分析しますと、9ページを御覧ください。国庫補助事業につきましては、毎年、一定額の不用が生じておりまして、その裏負担である地方負担分も当然、不用が生じていると思われますけれども、これを精算する仕組みがございませんので、中段の表にありますとおり、金額にして毎年2,000億円弱の不用が生じている。これが全体として計画と決算の乖離につながっているだろうと思っております。

また、一番下段ですけれども、地方財政計画上は、国で言えば予備費に当たる追加財政需要分というものを計上しております。近年、災害が頻発しておりますので、かなり執行されるようになってきておりますが、なお毎年1,000億円程度の未使用分がございまして、これも計画と決算の乖離につながっているだろうと考えております。

今、御覧いただいたように、地方においては、歳入は計画より上振れ、歳出は計画より下振れしている現状があるので、結果として基金が累増しているということが起きてございます。

10ページを御覧ください。地方における基金残高の推移ですけれども、近年の増加の要因は、今、御説明した各般のギャップが剰余金として摘み上がっていったものと推測しております。そして、このギャップの各項目につきましては、もう御案内のとおり、近年、財審でも問題として指摘をしてきたわけですけれども、まだ十分な対応がなされているとは言えませんので、社会保障費の増加に伴う一般財源を増やしてほしいということを議論するのであれば、当然、このギャップについてもあわせて精査して、真に必要な財源保障の水準を議論すべきではないかと考えております。

なお、基金について若干補足をさせていただきますと、平成29年度、一番右側、赤枠囲いにございますように22兆円と過去最高を記録しましたが、その要因としては、先ほどの説明の中でも、三原先生が触れられておりましたけれども、幾つか国による社会保障関連の施策に伴って、国から資金を交付して基金を造成しております。その基金の影響を除けば、実は東京都・特別区以外では基金の残高は微減となっておりまして、数年前とは少し状況が変わってきたかなということは認識をしております。

続いて、11ページを御覧ください。これもかねてから指摘させていただいております、いわゆる枠計上経費というものでございます。グラフの推移を御覧いただけばお分かりのように、地方財政計画上は、リーマンショック後の危機対応として計上した歳出特別枠を、これは平成30年度に廃止しましたが、まち・ひと・しごと創生事業費ですとか、重点課題対応分などに振り替えてきている形になっております。もちろん、これらの枠は特定の政策目的を持って計画に計上しております。ただ、具体的な実績が検証できていないということは問題点として指摘しておりまして、逆に申し上げると、一部は社会保障費の増加に充てられている可能性もあるだろうと思っておりまして、計画と実際の財政運営の間のギャップに加えて、計画上でもなお精査すべき項目は残っているのではないかと考えております。

続きまして、13ページを御覧ください。一般財源総額実質同水準ルールが導入されて以来、地方財政には歳出、歳入ともにギャップがあって、その中で何とかやってきたという御説明を申し上げたわけですけれども、このギャップが縮小傾向にある中で、今後は社会保障費の増加の抑制に地方も取り組んでいただきたいということの御説明をいたします。

右側のグラフでございます。これは、同ルールを導入した後、地方財政計画上の歳出、歳入の増減の累積を示したものでございます。右側の歳入を御覧いただきますと、青い矢印で示されたとおり、地方税等が伸びれば交付税と臨財債が減るというのは、まさにこのルールそのものでございます。これに対しまして、左側の歳出ですけれども、赤色で示された部分、一般行政経費のうちの補助事業、これが4.8兆円と大幅に増加しております。この増加を給与関係経費や公債費といったものの減で賄いつつ、差し引き4.4兆円の増加、これが右側の歳入を見ますと、国庫支出金、補助金の増加と、消費税率の引上げによる増収と見合う形になっているということです。一般行政経費の補助事業のうち約95%は社会保障費ですので、地方財政における社会保障費の抑制というのは、常々申し上げている一般財源総額実質同水準ルールを維持していくためには必要不可欠であるということが言えるかと思っております。

続いて、14ページを御覧ください。これは、決算ベースで社会保障費等の経費の推移を見ております。中央は単独事業で、これは大きく伸びていないのに対して、右側の補助事業のところは、児童福祉費も若干、制度改正の関係で伸びていますけれども、基本は老人福祉費とか、社会保障費とか、高齢化を要因とした増加が生じていることが見てとれるということでございます。

これらの補助事業ですけれども、従来は国が補助金と地方交付税において財源保障すべきであると、あるいは全体の増加については国において制度改正等の抑制策が講じられるべきものであると、地方においてはそういう理解であったろうと思っておりますけれども、今後は地方においても抑制策を講じていくことが期待されているということで、今、三原先生からもお話のあった医療費を取り上げたいと思います。

15ページを御覧ください。これは、先日の社会保障の御審議の際に厚生労働係からお示しした資料でございます。左のグラフにあるとおり、医療費につきましては年齢構成では説明のできない地域差がある、すなわち国全体の制度とは関係のない形で差が生じている。また、右のグラフにございますとおり、例えば入院医療費を取り上げれば病床数で地域差が相当程度説明できるということですので、先ほどのお話のとおり、病床数を適正化することによって、医療費の抑制の余地があるのではないかということが言えると思っております。

16ページを御覧ください。こちらは、三原先生の説明の中でも同じような図があったかと思いますけれども、都道府県は、図の赤枠囲みにございますとおり、医療計画と地域医療構想、医療費適正化計画、国保の財政運営を一体的に行う主体となっています。したがって、都道府県において医療行政における総合的なガバナンスの強化がなされれば、我々としては、医療費が適正化され、地方においても社会保障費の伸びの抑制は可能になるのではないかと考えておりますけれども、現場ではなかなかそういうことになっていない。どちらかと言えば、切れ目のない医療提供体制の構築に重点が置かれているのではないかというのは、御説明のあったとおりでございます。

以下、地域医療構想と国保、公立病院と3点を御説明させていただきます。

17ページを御覧ください。左下の表は、もう既に話題に出て、冨田委員からも指摘がございましたけれども、地域医療構想に基づいた病床の再編は大変遅れています。さらに、右側のグラフですけれども、いわば都道府県の身内である公立病院とも、病床の調整について議論すら開始されていないところが見られるということでございます。そういう意味では、今後、都道府県が医療行政を主体的に行うということを認識していただいて、県庁の組織であるとか、人事といったものから体制整備を行うことが求められている。さらに、病床再編につきましては、都道府県の関係者と話をすると、もう少し厚生労働省のほうで都道府県の権限強化についても検討する余地があるのではないかとも考えております。

続いて、18ページを御覧ください。国民健康保険につきましては、都道府県単位化を契機に法定外一般会計繰入を解消してほしいということは、今、さんざん御議論があったところかと思います。我々としても、都道府県単位で給付と負担の関係を見える化して、それによって給付と負担相互の牽制関係から、住民、医療機関双方にとっての医療費の適正化を働きかけるということを期待しているわけでございますけれども、真ん中のグラフにございますとおり、公費で財政安定化基金を設けたにもかかわらず、なお3,000億円を超える法定外繰入が行われているということでございます。一番下の赤い線は財政力指数ですけれども、財政力指数の高いところ、余裕のあるところほど、法定外繰入を行っているということが現実であろうかと考えております。

なお、法定外繰入は、地方財政計画上、財源保障の対象とはなっておりませんが、支出されているのは事実ですので、先ほどの逆で「マイナスのギャップ」となっているという点からも、速やかに解消していただきたいと考えております。

続いて、19ページを御覧ください。国民健康保険につきましては、今まで御議論のあったところ以外に、事務の効率化ということも我々はたびたび指摘をしておりまして、例えば広域連携、左下のグラフにあるように国保については全く進んでいない。あるいは、窓口業務の民間委託、これは右側の円グラフにあるように検討すらしていないところが8割ということで、国保の事務においてもまだまだ改善する余地はあるだろうと考えております。

3つ目の最後は公立病院です。20ページを御覧ください。こちらも、従来から公営企業改革として問題の提起をしてきたところでございますけれども、都道府県のガバナンスの強化に当たっては、公立病院というのは非常に重要なツールになってくるだろうと考えてございます。しかしながら、左のグラフにございますように、不採算地区でないところでも著しく収益の悪い病院が存在し、逆に濃い青い点でお示しいたしました独立行政法人化した病院は大変良好な経営状況に一般的にはあると。右側の三浦市立病院の例にもあるとおり、やはり公立病院の経営改革には、経営マインドを持った民間人材の登用、運営が不可欠であろうと思っております。その経営改革の知見が都道府県の医療行政部局に戻ってくることで得られる知見の蓄積も必要だろうと思っております。

21ページでございますけれども、もちろん公立病院の経営改革では、医療のガバナンスの知見の蓄積以外にも、当然、赤字そのものも解消していただきたい。公立病院というのは、本来、独立採算が原則で、過疎地の医療など一定の政策目的があるものについては一般会計の負担が可能ですけれども、左下のグラフにあるとおり、いわゆる基準外の繰出し、先ほどの国保の法定外繰入と似たような基準外の繰出しが1,000億円ございます。これも、国保の法定外繰入同様に、地方財政の圧迫要因になっているだろうと思っております。右下にございますように、この繰出しの中身を見れば、多くが赤字補塡ということですので、各病院の経営効率化に向けた意欲を阻害しかねず、早急な改善が必要だろうと考えております。

最後に、地方法人課税の偏在是正について御説明したいと思います。

23ページ、御覧ください。高齢化に伴う社会保障費の増加は事実であろうと思っておりますので、まず歳出の改革努力を求めていきたいと考えておりますけれども、歳入面で手当をするということになれば、この偏在是正も一つの考え方であろうと。平成20年度から各般の偏在是正策が講じられており、一番下の赤枠囲いにございますように、与党の税制調査会では、更なる偏在是正を行うべく新たな措置について検討し、この年末に結論を得ることとされております。これにつきましては、現在、総務省でも検討を進めております。

24ページを御覧ください。これは東京都の問題ということになってくるわけですけれども、赤い折れ線グラフは東京都の地方税収が全国の地方税収に占める割合でございます。実は、平成20年度の税制改正による偏在是正で、ピークに15.79%あったシェアが低下したわけですけれども、近年、また法人税収の増加に伴って、偏在是正措置が講じられる前の水準まで戻っている。

最後に、25ページ、ちょっと例を出して御説明いたします。もちろん偏在是正、いろいろな考え方があろうかと思いますけれども、左のグラフにありますように、現在、地方では個人の小売店が急速に姿を消しておりまして、コンビニエンスストアに形態を変えていると。その結果、右側の図にありますように、従来、個人の小売店であれば、売上げに応じて全て地元の自治体に納税されていたものが、コンビニエンスストアに変わると、フランチャイズ料を通じまして、仮に東京に本社があれば東京に納税をされる。このこと自体、フランチャイズ料というのはノウハウに対する対価であったり、物流の問題があるので全く問題はないわけですけれども、地方において、同じように商店で、極端なことを言えば経営者も変わっていない商店で同じように買い物をして、全く同じ経済実態があるにもかかわらず、税収の偏在だけが拡大するということが起きていることを踏まえれば、やはり何らかの制度的対応を考えても良いのではないかと考えておりまして、年末の税制改正の議論については注視をしていきたいと考えております。

以上で、御説明を終わらせていただきます。

〔 増田分科会長代理 〕 ありがとうございました。

ただいまの説明についての質疑に移りたいと思いますので、ネームプレートを立てて、2分程度で、よろしくお願いしたいと思います。

初めに、黒川委員のほうからお願いします。

〔 黒川委員 〕 ありがとうございました。大変分かりやすい図で、勉強させていただきました。

2点、意見なのですけれども、1つは、アメリカの例だったと思うのですけれども、民間病院が非常に大規模に各病院を傘下に収めて、同一のマネジメント下に置かれると。そうなりますと、やはりこれは市場を通しますので、傘下に置かれている病院間の調整が非常にスムーズにいくというような例がある。ただし、これは地元においては、効率性があまりにも進み過ぎてしまって、社会性という点でどうかなという点はあるのですけれども、やはりM&Aを通じて同一のマネジメント下に置くことによって効率性を重視すると。こういうような政策をあり得るのかどうかということが1点。

2点目は、法制・公会計部会のミッションで、この間、独立行政法人の国立病院機構にお邪魔したのですけれども、地域の医療構造の一つの核みたいなものとして、国の独立行政法人である国立病院機構が何らかの役割を果たせないものかどうか。この辺について何か御意見がございましたら、教えていただきたいと思います。

〔 増田分科会長代理 〕 前田主計官、簡潔にお願いします。

〔 前田主計官 〕 民間病院につきまして、私が地方財政の世界から何か申し上げるということはなかなか難しいだろうと思いますけれども、公立病院の世界であれば、おっしゃるとおり、従来は病院ごとに運営していたものが、一つの独立行政法人という傘下に入って、その下に病院をぶら下げるような形にすると、例えば薬の購入であるとか、いろいろな形で効率化が進むということは言えるだろうと思っております。

2点目ですけれども、独立行政法人の国立病院については、本来であれば地域医療構想の核となっていただきたいと思いますが、私の経験で申し上げると、やはり都道府県で医療行政をする上においてなかなか難しいのが、旧国立病院であり、国立大学医学部の存在だろうと思っておりまして、都道府県からは何ら働きかける手段がないものですから、今後、国の機関との調整は課題になってくるでしょうし、国のほうからも少し手助けをする必要はあるのではないかと考えております。

〔 増田分科会長代理 〕 田中委員、お願いします。

〔 田中委員 〕 クリアな説明をありがとうございました。

私の質問はすごくシンプルなのですけれども、8ページの計画と歳出の棒グラフを描いていただいた御説明の際に、私の記憶が正しければ、歳出は財務省のほうで試算をしたとおっしゃっていたと思います。そもそも、なぜそういうことが起こるのかというところを教えていただきたいのと、コスト計算が一体、地方でどうなっているのか。私も幾つか地方の機関を見ていますけれども、意外とコスト計算ができないのですね。もし、コスト計算がきちんとできていないのであれば、計画もきちんとつくれないだろうと思いますので、この辺りについて御回答いただけたらと思います。

〔 増田分科会長代理 〕 では、お願いします。

〔 前田主計官 〕 財務省のほうで試算したと申しますのは、単純に決算をとりますと決算のほうが計画を圧倒的に上回っております。それは、地方が独自に超過課税をしたり、あるいは独自に基金を取り崩したり、様々な形で歳入を増やす余地があるので、それらを除く形で、計画で保障されたものと、その保障された範囲内の決算を比較するために、我々のほうで試算をしているという趣旨でございます。

それから、地方自治体のコスト計算はなかなかなされていないというのは事実だろうと思います。それも今後の課題だろうと思っています。

〔 増田分科会長代理 〕 冨田委員、お願いします。

〔 冨田委員 〕 意見なのですけれども、地方財政計画の計画と決算の乖離について、本日はギャップという話でまとめられたと思うのですけれども、13ページにギャップの中で何とかやってきたというように表現されました。しかし、それは非常に誤解を生む。先ほど来、問題になっている予算制約をソフトにしてきた元凶がこのギャップだったわけです。だから、やはり計画と決算の乖離というのは、ギャップについてはきちんと精査しないと、国民に対して予算を提示して、その予算の中で最大に近い項目が地方交付税交付金なわけです。その説明ができていないということだと思うのです。それを13ページで、ギャップの中で何とかやってきたというのは表現としていかがなものか。少し厳しく申し上げますけれども、そういうことが私の感じた意見です。

〔 増田分科会長代理 〕 神津委員、お願いします。

〔 神津委員 〕 まず、一般財源の総額につきましては、地方の現場において引き続き良質な公共サービスを提供できる水準を確保していくことが大切だと思います。そのことを申し述べた上で、各論で3点、申し上げたいと思います。

まず、基金について、これは中長期における歳出の平準化ですとか、大規模災害などへの備えとしての役割があるという点については留意をしておく必要があると思います。その上で、積立てや取り崩しの背景などについて、国と地方による継続的な対話を行うということは大切だと思います。

次に、地域医療構想についてです。三原さんから、大変分かりやすいお話をいただきました。私どもも、医療の効率化の観点を含めて、地域差の是正は非常に重要だと考えています。そのためには、地域医療構想を着実に行うということにおいて、民間病院も含めた地域一体の取組が欠かせないと思います。したがって、都道府県知事の権限を強化することによって、適切な進捗管理と病床の機能分化を進めていただきたいということを申し上げておきたいと思います。

3点目は、地方法人課税の偏在是正についてです。地域による偏りが少なく、安定的な地方税体系の実現に向けて、税源の偏在を是正する措置は必要だと思います。ただし、現行の地方法人税の仕組みは、地方の課税自主権との関係で課題を残していることには留意が必要だと思います。中・長期的には、より偏在が少ない税制の実現であるとか、地方における社会保障の安定的な財源確保の観点から、地方法人課税と地方消費税の税源の交換など抜本的な見直しも検討する必要があるのではないかと考えます。

以上です。

〔 増田分科会長代理 〕 佐藤委員、お願いします。

〔 佐藤委員 〕 ありがとうございます。

地方財政というのは、財審の中で1つの項目として、分野別の項目として議論されることがあるのですが、本日のお話からもお分かりのように、全ての分野が実は地方財政につながっているのだと思うのです。本日は、たまたま医療の話の中で一般会計から赤字繰入の話が出ましたけれども、同じことは実は下水道における経費回収率の問題でも言えることでありますし、実は地方財政のところでコストが見えなくなっている。1つは、もちろん公会計の問題があって、フルコストが出せない。減価償却とか、引当金とか、こういったものがちゃんと加味できてない。でも現在、総務省で公会計改革を進めていますので、ある程度これから見通しが立つと思うのです。

問題は、フルコストをちゃんと料金、あるいは税金に反映できる仕組みになっていない。先ほどの冨田委員の言葉を使えばソフト化させているわけでありますので、ある意味うまくフルコストと税、あるいは保険料、あるいは料金、公共施設の場合は料金なので、これをちゃんと連動させる仕組みを担保する。これを地方財政用語では限界的財政責任というのですけれども、平たく言えば予算のハード化を進めていくというのはやはりミクロレベルで求められる。これは、全ての分野で言えると思うのです。

これを意外と軽視してはいけないのは、なぜ国民の間で財政再建に対してあまり関心が渡らないかというと、国の財政は誰も分からないわけです。霞が関に来る人はそんなにいないですから。むしろ、自分たちの街でごみがどうなっている、自分たちの公園がどうなっている、学校がどうなっている、そちらのほうに皆様関心があって、そこで自治体がいろいろ補助金をもらったり、赤字補塡したりして、結局、真のコストが住民に伝わらない。だから、財政再建をなぜしなければいけないのかと思ってしまうということになりますので、財政再建に対する国民の支持を固めるという点においても、やはり地方財政での予算のハード化は絶対やるべきことだと思います。

あと、時間がないので二言だけ言いますけれども、1つは、地方財政計画のPDCAサイクル話は、引き続き建議の中で言い続けていくことは大事かなと思います。

それから、法人税の偏在是正の問題です。これは、実は税制改革の問題だと思うのです。本当は、抜本的な税制改革の枠の中において税調で議論したほうが良いのではないかと思います。

以上です。

〔 増田分科会長代理 〕 末澤委員、お願いします。

〔 末澤委員 〕 どうもありがとうございました。

7ページ、ないし4ページ辺りで先ほど御説明ありました一般財源総額実質同水準ルールについて、こちらが23年度に導入されて以降、実はこの五、六年間を見ますと、年末の予算編成で地方の財源があまり揉めたという報道はなかったですよね。これは多分、この間、国税の収入も伸びて、地方税も伸びて、特に国税が決算ベースで余剰になりましたら、それは後でまた地方に回りますという部分もあって、それなりにウイン・ウインでいけたから、こういうルールが維持できたのだと思うのです。

まだ来年度辺りも大丈夫だと思います。地方の場合は、通常、税収は1年、国税に遅効します。昨年度の国税の決算は1.1兆円上振れましたから、今年度はその分が行きますし、来年度もそこそこ良いと思うのです。ただ、来年度以降、国税の収入を見ますと、私はもうそろそろ世界経済がピークアウトするのではないかという見通しを持っていまして、実際、ここのところ相当、先行性のある株式市場が不安定な動きになっています。そうすると、多分、ここまで進んできた地方ベースの少子高齢化による社会保障費の増圧力だとか、また歳入増が一挙に逆回転する可能性があると。

実は、来週火曜日にアメリカでは中間選挙がございますので、ちょっとアメリカの政治家に絡んだお話をさせていただくと、JFK、ジョン・F・ケネディが昔、言った言葉に「屋根を修理するならよく晴れた日にするべきだ」、英語でいきますと「The time to repair the roof is when the sun is shining」ということでございます。つまり、地方税収は、まだ今年度から来年度ぐらいは良いと思うのです。その間にやはり改革を進めないと、多分、2年後辺りは相当、国も地方もひどいことになる可能性があるということで、是非まだ税収が好調の間に、こういうところの改革は進めていただきたいと考えております。

以上でございます。

〔 増田分科会長代理 〕 武田委員、お願いします。

〔 武田委員 〕 ありがとうございます。2点、申し上げたいと思います。

まず、見える化や説明責任を徹底していく、これは当然、重要なことだと思います。特に、11ページ、まち・ひと・しごと創生事業費の中身が分からないということですけれども、やはりきちんとPDCAサイクルを回していくことが重要だと思います。提案ですけれども、ちょうど31年度で5年経ちます。もちろん、こうした取組は1年、2年ではなかなか成果は出ないと思うのですが、ちょうど5年が経ちますので、どのような計画のもとで、何を行い、どのような成果が得られたのか。あるいは、今、どういう成果が出つつあり、どういう目的を果たしていこうと考えているのか、一度、整理するきっかけにしてはどうかと思うのですが、その点について、もしお考えがあればお聞かせください。

2点目、地域医療構想については、皆様と同じようにしっかり進めていただきたいと考えております。先ほど時間がなかったので札が上げられなかったのですが、三原先生の御説明、大変分かりやすくて理解が深まったと思いますし、今回の地方財政は、先ほどほかの委員からもございましたけれども、社会保障、医療についてもかなりフォーカスを当てている点は非常に重要だと思います。佐藤委員がおっしゃったとおり、国レベルで議論していても、身近な問題として国民が感じるのはおそらく地方自治においてだと思いますので、今後もリンクさせて議論していくということについては賛成でございます。

その上で質問ですけれども、先ほど所得や高齢化以外の医療費の地域差、残る部分についてどう対応していくかというお話が三原先生からありました。今回、出していただいた資料の15ページと17ページを比べてみますと、15ページの右上に飛び出ている県の群の中で、17ページで見ると議論を開始していない施設の割合が多く、具体的な対応方針が低いところはこうした施設が目立つわけで、やはり意識の問題もこのグラフを並べてみると指摘できるのかと思います。

したがって、今後、こうした見える化、そして、それを踏まえたマネジメントをいかに進めていただくかが重要だと思うのですが、それを進めつつも、どこかで地方交付税や基金とリンクさせていく。先ほど来、出ていますソフト化ではない形について、どういうようにお考えか、御質問させていただければと思います。

以上です。

〔 増田分科会長代理 〕 それではお願いします。

〔 前田主計官 〕 1点目のまち・ひと・しごとは、おっしゃるとおり平成31年度まで1兆円計上することになっていますので、終わったところで検証するのが良いタイミングだろうというのはもう御提案のとおりだろうと思って、総務省とそこはよく話をしていきたいと思います。

2つ目は、先ほどの議論の中でも、こういう取組の鈍い県に交付税をどうしたら少しというようなお話がございました。いろいろな仕組みは考えられるだろうと思いますが、もうここはよく御案内のとおり、総務省とはどうしても決定的に考え方が違っていて、交付税はお渡しした以上、どう使うかというのは地方の自治の問題であるというのが彼らの考えです。そういう意味では、私が御説明したのも、医療費が地域において見えて、そして住民が地方自治体に対してプレッシャーをかけることで適正化が進むという仕組みを、今、構築しようとしているわけです。国が交付税を絞ることによって何か都道府県に鞭打つということは、現在は想定をしていないということだろうと思っています。

〔 増田分科会長代理 〕 田近委員、お願いします。

〔 田近委員 〕 1点。23ページの地方法人課税の偏在是正で、佐藤委員から既に言及されたように、これ、財政制度等審議会でどこまで議論するかというのは議論の余地はあると思うのですけれども、意義があるとすれば、やはり偏在是正で地方交付税全体にどうはね返りがあるかということだと思うのです。23ページで、分かりやすく言うと、平成26年度に法人住民税の一部を国税にして、その部分は地方交付税に配分すると、そういうスキームになったわけです。

私の質問は、ここで地方交付税が増えたわけですから、そのはね返りというか、それは全体でどういうように影響されるのかということで、全体となると交付税が増えるわけですよね。それは何に使われるかといったら、本来的には折半対象財源を解消するとか、それも解消できたら、次は法定繰入部分を減らすとか、私の質問なのですけれども、偏在是正で地方交付税が増えた部分は、交付税全体の財政のはね返りをどういうように考えたら良いのか伺いたいのですが。

〔 増田分科会長代理 〕 主計官、お願いします。

〔 前田主計官 〕 11ページを御覧いただくと分かりやすいと思いますが、過去の処理で申し上げれば、その分、一般財源を増やして歳出枠を増やしております。11ページは、平成26年度から平成27年度に、まち・ひと・しごと創生事業費が入ったときに全体の枠が増えていると思いますけれども、この一部には偏在是正の財源が当たっています。そういう意味では、偏在を是正した以上は地方にやはり使ってもらうというのがこれまでの考え方だったわけでけれども、田近委員がおっしゃるように、今回、偏在是正の規模にもよりますけれども、少し臨財債の縮減にそれを充てるべきではないかという議論は総務省としておりますし、総務省も同じ問題意識は持っておると思っております。

〔 田近委員 〕 私もそのとおりで、せめて臨財債は、国も特例公債で持っているわけで、その部分に増えた交付税を回すという意見は、考え方は、財審の議論として十分価値があると思います。

〔 増田分科会長代理 〕 土居委員、お願いします。

〔 土居委員 〕 1点だけ申し上げます。

公営企業改革、20ページ、21ページで、特に公立病院が挙げられているわけですけれども、非常に重要な論点で、主計局からそういう形で問題提起をするということで、更にこれを進めていただきたいと思いますけれども、財務省の中でもう一つ、理財局の財政投融資で、実は地方向け財政融資で公営企業にお金を貸していると。当然、病院事業も、上下水道両方とも貸していると。さらに、そこで債権者の立場から実地監査を財務省でやっているということですので、マッチポンプという言い方はあれですけれども、このスピリットを実地監査でもしっかり踏まえてやっていただく。実地監査というのは、実際、当該事業の担当者にヒアリングをして、経営状況を改善するとか、そういうようなことをアドバイスしたりするようなこともあるわけなので、車の両輪で財政融資のほうでもやっていただきたいと思います。

以上です。

〔 増田分科会長代理 〕 大槻委員、お願いします。

〔 大槻委員 〕 補足的なことで申しわけないのですけれども、金融市場を見ている者として、先ほど末澤委員からもあった、今こそ地方財政をきちんとすべきだというところについて1つだけ補足なのですけれども、最近、非常に心配していることとしては、地域金融機関が、収益上、近い将来、厳しくなるのではないかということが相当言われている中で、御存知のとおり、地方自治体の一つの財源として地方債、及び地域金融機関からの借入れというところで、占めるウエイトも、果たしている役割も非常に大きいわけであります。現在は財政上、非常に潤沢に資金を供給しているから、このような形でも回っているというのは一つ側面としてあると思うのですけれども、これから先、地域金融機関に脆弱性が生まれたときのためにも、将来的に何か状況変わったときにも、しっかりとした財政が確立され、どういった形でも調達できるような形を早目に構築していくべきだろうと思っております。

以上です。

〔 増田分科会長代理 〕 それでは、地方財政はここまでにしたいと思います。三原様には、本日は大変貴重なプレゼンをいただきまして、ありがとうございました。

三原様、ここで退室をされます。

(三原講師退室)

〔 増田分科会長代理 〕 それでは、9月以降、来年度の予算編成に向けて、少し時間等が窮屈だったところはあるかもしれませんが、1ラウンド、審議をしていただきました。次回から建議の起草に入るため、起草委員の皆様方によろしくお願いしたいと思いますが、本日、残りの時間といってもわずかですが、限られた時間の中で、これまでの当分科会の体制や運営も含めて、あるいは建議の内容にかかわることでも結構ですが、少し御意見を承るフリーディスカッションの時間とさせていただきたいと思います。こちらもネームプレートを立ててお願いしたいと思いますが、何かございましたらお願いしたいと思います。

最初に立てられた土居委員からお願いします。土居委員から、向かい側の末澤委員のほうに行きます。

〔 土居委員 〕 ありがとうございます。

大変有意義な機会をいただき、ありがとうございます。日頃、なかなか運営については直接、意見を述べる機会がないものですから、この場を借りて申し上げたいと思います。

事務局には、いろいろな資料の作成等々で御苦労をかけていて、我々として大変ありがたいと思っているのですけれども、やはり1人当たりの発言時間がだんだん短くなっているという感じがあって、それをどういうようにうまく確保するかというのが一つの課題なのかなと思っています。もちろん、委員のメンバーを減らせば1人当たりの時間が増えるということかもしれませんけれども、逆に審議会としての発信力が弱まるという欠点もあって、そこのバランスはなかなか、私として一つの結論があるわけではないのですけれども、意見の発言と、もう一つ、欠席された方がよく出されますけれども、意見書のようなものもあわせて出して、要約みたいなものを口頭で話すというような工夫を委員側がするとか、そういうような形で、できるだけ多くの方に発言いただけるような工夫をお願いできると良いのかなと思います。

以上です。

〔 増田分科会長代理 〕 ありがとうございました。

末澤委員。

〔 末澤委員 〕 ちょっとまた最近の政治の話になるのですが、今週、欧州では、ドイツでございますけれども、バイエルン州に続いてヘッセン州で与党が大負けしまして、昨日、メルケルさんが退陣表明と。これは党首のほうで、首相は続投されます。一方、ブラジルでは極右的な候補が勝利しました。ある程度通じているのは、世界的に一般の方が深く考えるというよりも、ワンフレーズポリティクスといいますか、割とそのときの感情だとか、イメージに流されやすいというのはあるのだと思うのです。アメリカの選挙の状況を見ても。

そういう面では、当審議会でも、有権者、国民の皆様に、やはり分かりやすい説明をするということはもう大前提で、そういう面では資料に関しても、初めのうちに要約をもう少し分かりやすく載せるとか、一般の方が読まれても分かるような説明を初めの部分だけは入れていただくというようなことが必要なのではないかと思います。

そうはいっても、では後の審議はどうするのだということなのですけれども、現体制をベースに維持するとすれば、やはり1人当たりの発言時間を、先ほど土居委員から少し長くしたほうが良いというお話もありましたが、発言時間は絞るべきだと思うのです。2分ということであれば、国会だとか、別の公聴会などでやっていますけれども、鈴を2分で鳴らして、2分30秒では強制終了とか、そういうことをやらないと、多分、全員が時間内に発言することは難しいと思います。それが無理なら、もう回数を増やすか、1回当たり2時間を3時間にするしかない。ただ、これはある面、足元の働き方改革には逆行することで、多分、事務方の議事録作成努力ももっと増しますから、私は、なるべく要点を絞る形の発言、それも時間の制約を入れるという形でやるしかないのではないかと考えております。

以上でございます。

〔 増田分科会長代理 〕 佐藤委員。

〔 佐藤委員 〕 ありがとうございます。

今年の建議に関して言うと、まず、補正の話と、これから消費税増税に伴う経済対策がありますので、この辺りについてやはり何らかの見解を見せたほうが良いのかなと思いました。それが1点目。

2点目ですが、これからの審議の進め方ですけれども、例えば少し小委員会のようなところをつくって、毎年の予算についてはこういう大きな委員会で構わないと思うのですが、もうちょっと中・長期的な観点から、まさに2025年度に向けてどうやって財政再建するのかということに関して、少ない人数で構わないので、中・長期的な観点から議論する、しかも膝詰めで、けんけんがくがくに議論する場があって良いのかなとは思いました。

〔 増田分科会長代理 〕 宮島委員、お願いします。

〔 宮島委員 〕 ありがとうございます。

この委員に参加させていただいてから、昔、記者時代と比較して、発信力がどうしたら上がるかということをずっと考えてまいりました。

1つは、今、一般の記者たちが、財審の建議や毎回の会議も含めてクオートすることは、昔よりもものすごく減っていると思うのですけれども、1つの理由は、多分、皆が大変だと思っている財政なのに全然進まないという現実があるので、ここに参加している委員の方々の意見が、どうしても普通に考えるとこうなるだろうということが一致しやすいというか、誰が考えてもそれはそうだよねということが比較的多くなっているので、なかなか対立の議論にはなりにくいなとは思っております。別に対立の議論を喚起する必要はないのですけれども、ただ、毎年の中では幾つか、多分、他省庁ですとか、外の世界も含めて議論になりそうなことはあって、そこについてはいろいろな方がどういうようにお考えになっているのかなということは、私は非常に関心があります。

なので、もちろん広く全部を見るということは必要なのですけれども、今日の三原さんのお話のように、地方財政の中でものすごく大事な、特に今年、大事だと思われることについて、皆で突き詰めたり、外部の方を読んだり、あるいは1人1回だと、なかなかほかの方が言ったことに関して反論とかがないのですけれども、そのような機会があると良いなと思っております。

その工夫の一つとしては、これはルールの問題かどうか分かりませんけれども、前段の中ですごく丁寧にしていただく事務方の説明がちょっと長目かなと思っております。私が参加している別のものでは、これが良いかは分かりませんけれども、40ページの資料を10分で説明されるような会議もあります。もちろん議事録に載せることも大事だと思うので、短くすれば良いというものではないと思うのですけれども、例えば主計官の主張は別の形で、この会議で全部言わなくても分かるような別の形をとることによって、皆が顔を合わせたときの議論の時間をもうちょっととるとか、そういうようなことができないかと思います。

さらに、秋ではなくて、春の幅広に考えているときには、ゲストの方を少し呼んでいただけると嬉しいかなと思います。というのは、この中では、先ほども申し上げたように、かなり意見が一致してしまっていることが多くて、そして何年も進まない議論が多いのですけれども、それは記者にどう受けとめられているかというと、また財審が高い球を投げて、こんなのは絶対無理だと記事的には完全にスルーされると、そういうことが繰り返されておりまして、それを何回もしてもしようがないと思うのです。むしろ、この財審の人たちは考えないけれども、外でパワーを持っている意見というのが存在しています。例えば、そういう方を呼んで、なぜここの大方の意見とこんなに違うのかということを、可能かどうかは分かりませんけれども、ぶつけてみるというようなことも、春の幅広の建議の中ではしてみても良いのではないかと思います。

すみません。

〔 増田分科会長代理 〕 冨田委員、お願いします。

〔 冨田委員 〕 1つは、回数についてです。今、3つのテーマを1回でやることがあるのですけれども、1回の審議会で2テーマだと比較的議論できると思うのです。だから、もう一回、回数を増やせば、それができるのではないかというのが一つです。

それと、今日の三原さんのお話もそうなのですけれども、やはり我々、現場のことを知らな過ぎるので、訪問してヒアリングさせていただけるとか、そういう工夫が必要で、またそのときに、かつてですと地方財審というものがありましたが、そういう場所でもやはり発信をさせていただく。発信力低下と言われますけれども、財審が財政支出を増やせと言ったらニュースになりますけれども。我々はやはり粛々と、財政規律をきっちり守るという姿勢を貫いていくことが大事だと思うのです。

それから1点、事務局の件なのですけれども、これは予算を組まねばなりません。だから、予算ができた後になると、やや態度が豹変なさって、これまでの批判的な観点が後退して、なかなか真実の姿が伝わりにくい面があると思うのです。そういうときこそ、我々、外部の委員の役割かもしれないなと、そういう感じを持っております。

〔 増田分科会長代理 〕 田中委員、お願いします。

〔 田中委員 〕 私のほうは、1点目でロジを中心に課題を述べさせていただいて、2番目にどういうソリューションがあるかということについて述べたいと思います。

課題については、3つぐらいあると思います。まず、1つは、今、冨田委員おっしゃったように発信力のところでありまして、毅然と言うべきは言うときに、私たちを使っていただいても良いですし、そこはもっと強く出て良いのではないかと思います。

2点目ですが、これまでの財審の議論、トピックの取上げ方なのですが、年々、やはり一個一個の、地方だとか、社会保障だとかの取上げ方に偏在が起きていまして、どうしても金額の大きいところに時間が集中するのですが、そのほかの外交だとか、司法だとか、この辺りがだんだん圧縮されている傾向が強くなっているような気がします。そういう意味でも、もう少しじっくりほかのものについても議論する時間があったほうが良いのではないかと思いました。

他方で、ディスカッションの内容ですが、やはり人数が増えたということもあるのでしょうけれども、もともとあまり委員の間でインタラクションがそんなになかったのですね。ここは、やはりけんけんがくがく、主計官とだけではなく、私たちの中でも違う意見があると思いますので、もう少しインタラクティブなディスカッションはできないか。これが3つ目の課題であります。

ソリューションなのですが、いろいろ考えたのですが、先ほども出ていましたが、例えば緩やかなグループをつくって、いつでもグループのメンバーは変えられるけれども、テーマ別に手を挙げてもらってインデックスに議論するようなグループをつくる。もちろん、全体会議のときには皆様にお集まりをいただくのでしょうけれども、そのように小編成のものをつくらないと、トピックをカバーすることと、インタラクションが欲しいという問題にはなかなかつながらないのではないかと思いました。

以上です。

〔 増田分科会長代理 〕 竹中委員、お願いします。

〔 竹中委員 〕 ありがとうございます。

今、田中委員おっしゃったみたいに、分野別に、それぞれ得意の委員の皆様とか、あるいは、そのことに関して集中的に意見を言われたいという方の、いろいろ分科会的にやるというのは、私もすごく賛成です。それから、ある時間で鈴を鳴らすというのも、できるものならやったら良いと思います。

本日、最後まで言おうかどうか迷っていたのですけれども、私自身の立場は、障害のあるチャレンジドと呼ばれる人たちをタックスペイヤーにできる日本に、というテーマで、財審にももう十数年、参加させていただいているのですけれども、今回、障害者雇用の水増し問題が起きてから急激に、オールマスコミで取材は来るし、この間、総務会長になられた加藤勝信さんに相談に乗ってくれと言われたので、膝詰めで少しお話をしてきまして、何と本日は、財審が終わってから、財務省から自分のところの水増し問題の相談に乗ってくれと言われたので時間をとっているのです。

そういうように、問題になったときだけ語られるテーマなのだなと、やはりすごいショックを受けていて、本当に彼らをタックスペイヤーにするための議論は全然ないのですよね。雇用率制度というのは、あくまで旧厚生省というか、厚生労働省がつくった制度であって、雇用率制度しかないと彼らは70年間、言いますけれども、プロップの仲間たちというのは、情報通信技術を使ってどんどんタックスペイヤーになれる働きをされていたり、あるいは、もう雇われるより自分で業を興すということで、自ら業を興したり、NPOを起こしたり、アーティストとして活躍したりしています。皆様、ホーキング博士なら御存知かも分からないですけれども、本当に彼に負けず劣らず素敵な方たちも、日本にはいっぱいらっしゃるのです。

今、現場をちょっと見ればというような御意見も冨田委員からありましたけれども、もしそういう実態をお知りになりたいということであれば、いろいろ事例を御紹介することもできますし、是非ここで私が話す意義を、何か御一緒に、共有をしていただければ嬉しいなと。そして、絶対働けないと言われているような人が働ける、あるいはタックスペイヤーになれる社会というのが、私は本当に日本の元気だと思っているので、是非少しそういう目線に、水増し問題で目くらましにあわずに捉えていただければ嬉しいと思います。

以上です。

〔 増田分科会長代理 〕 小林委員、お願いします。

〔 小林(慶)委員 〕 運営の在り方については、ほかの先生方の話の繰り返しになってしまいますけれども、やはり委員の間でインタラクティブに議論ができる場というのはつくったほうが良いのかなと思いました。

一言だけ追加でコメントをすると、何ていうか、事務局の官僚の方々からのフランクな問題意識の表明とか、共有とかいうこともできると良いなと思うのです。こういう大きな会合だと、どうしても資料の形式的な説明に終始することが多いと思うのですが、この間、財審の懇親会という新しい試みで、飲み会のような形の中で議論をさせていただくと、そこでの事務局の方たちの問題意識というのは非常に伝わりやすいような気もしましたので、委員の間で、そしてまた委員と事務局の方々との間で双方向的な議論ができるような形での会合を、もう少し工夫をしながらできれば良いのではないかと感じました。

以上です。

〔 増田分科会長代理 〕 神子田委員、お願いします。

〔 神子田委員 〕 できるだけ短くやります。

今日の議論でなるほどなと思ったのは、地方財政のことで、国からも補塡を受けたりして何とかなっているというところで、地方の人たちは財政危機に関する実感がないというようなお話がありました。こういうところをうまくすくい上げて、話し合っていけたら良いかなという感じがしました。一つの国民にアピールするヒントかなと思いました。

それで、まず、この運営なのですけれども、各主計官の発表がちょっとディテールに入り過ぎているのですよね。それは別に読めば分かるのではないかという話もありまして、今、竹中委員のお話を聞いたら、やはりすごくフィロソフィーがあるじゃないですか。チャレンジドをタックスペイヤーに、みたいな。各主計官は、この財政をどういうようにしたいと思って、だから私はこういうようにこの予算を査定していくといった、フィロソフィーみたいなことを聞かせていただきたいと思います。

それと、私は本当に門外漢なので、そんなことあり得ないと言われるかもしれないのですけれども、主計官はこの予算は要らないとか言ってくるのですけれども、僕は是非当該省庁の反論を聞いてみたいなと。主計官のことだけ一方的に聞いていても、それはなるほどなと思うのだけれども、もしかしたら違うかもしれないということがあるかもしれない。この会だとあり得ないかもしれないのですけれども、私は各省庁の反論を1回聞いてみたいと思いました。

起草に関しては、分かりやすい言葉でということは毎回、言っているのですけれども、もう何年も経っていると、いや、その議論は去年もやっていて、去年から書いてありますからということがあるのですけれども、我々としては、できるだけ多くの国民を財政再建の議論に巻き込んでいきたいので、毎年毎年、ニューカマーを歓迎していかないといけないと思うのです。そのために、初めて読んだ人でも分かりやすい文章を心がけて書いていただけたらと思います。

以上です。

〔 増田分科会長代理 〕 武田委員、お願いします。

〔 武田委員 〕 貴重な意見、ありがとうございます。私からは、2点申し上げたいと思います。

まず、1点目ですけれども、前回、たしか遠藤委員から御提案があったと思いますが、春の財審のほうでは、もう少し予算上重要なテーマを議論する場があっても良いかと思います。例えば、項目別に、予算別に議論することが多いのですけれども、分野横断的なトピックは結構あるのではないかと思います。例えば、社会保障なども、今回、良い例だったと思いますけれども、厚生労働係と地方財政係とで、一緒にテーマとして取り上げるというのもあると思いますし、今後の国土の在り方を考えていきますと、人口減でコンパクト・プラス・ネットワークを進めなければいけない。また地域医療計画も考えていかなければいけない。そうすると、省庁横断的なテーマとして、厚生労働省と国土交通省、さらには技術活用という話になると、おそらく経済産業省も関係してきます。つまり、省庁で分けるというよりは、省庁横断的なテーマで議論するときもあって良いのではないかと思いました。

2点目は、政策の優先順位がもう少し見えてくるとありがたいと思っております。それを意識して御説明いただいている方も多くいらっしゃるわけですけれども、全てを議論する時間が限られていることと、国として絶対これだけは今年度中に進めなければいけないものというのは必ずあるので、その時間軸で、ここだけは今回、やり抜かなければいけないといった政策の優先順位をもっとクリアにしていただき、建議でもそこを強調するといった工夫もあって良いのではないかと思いました。

以上です。

〔 増田分科会長代理 〕 ありがとうございました。

いわゆるロジ周りを含めてのフリーディスカッションはここまでにしたいと思います。若干、時間が過ぎまして恐縮です。今、特に運営のほうにいただいた意見については、私も会長のほうに報告をして、会長とも相談したいと思います。それから、事務方でも当然のことながら考えていただきたいと思うのですが、できるだけそれぞれの意見がうまく反映できるように、回数をどこまで増やせるのかとか、1回でどこまで長くできるのかとか、それぞれごもっともな意見なので、できるだけ両立できるような、実行可能な運営にしていければと思います。次回から建議のほうの話に入りたいので、あと2回ほど予定していますが、そこはどうしても現在の運営の延長にしかならないかもしれませんが、引き続き皆で考えるべき課題だと思いました。

時間が参りましたので、以上で本日の議題は終了としたいと思います。

秋の審議における総論、各論の議論は本日で終了となり、今、申し上げましたように、次回は建議案についての議論ということになりますので、起草委員の皆様方、6名の委員にお願いしていますけれども、お忙しいところ大変恐縮ですが、どうぞよろしくお願いいたします。

本日の会議の内容については、この後、記者会見で御紹介いたしますので、皆様方から個々に報道関係者にお話しすることのないように、恐縮ですが、御注意いただきたいと思います。

次回は、11月8日、10時から開催を予定しておりますので、よろしくお願いします。

以上です。ありがとうございました。

午後0時15分閉会