財政制度等審議会 財政制度分科会
議事録
財政制度等審議会 財政制度分科会 議事次第
平成30年10月24日(水)15:00~17:25
第3特別会議室(本庁舎4階 中-412)
1.開会
2.議題
文教・科学技術
エネルギー、中小企業、環境、出入国在留管理・治安関係
防衛
3.閉会
分科会長 | 榊原定征 | うえの副大臣 鈴木副大臣 伊佐大臣政務官 神田次長 阪田次長 宇波次長 奥総務課長 安出司計課長 阿久澤法規課長 中澤給与共済課長 一松調査課長 西山参事官 寺岡主計官 日室主計官 北尾主計官 斎須主計官 前田主計官 中島主計官 吉野主計官 関口主計官 森田主計官 岩佐主計官 内野主計官 渡邉主計企画官 佐藤主計企画官 | ||
分科会長代理 | 増田寛也 | |||
委員 | 赤井伸郎 秋山咲恵 遠藤典子 倉重篤郎 佐藤主光 武田洋子 土居丈朗 藤谷武史 宮島香澄 | |||
臨時委員 | 井堀利宏 宇南山卓 老川祥一 岡本圀衞 葛西敬之 加藤久和 小林 毅 進藤孝生 末澤豪謙 田近栄治 冨田俊基 冨山和彦 神子田 章博 宮武 剛 |
午後3時00分開会
〔 増田分科会長代理 〕 ただいまから始めたいと思いますが、本日は冒頭でカメラが入りますので、そのまましばしお待ちいただきたいと思います。
(報道カメラ 入室)
〔 増田分科会長代理 〕 ただいまから、財政制度等審議会財政制度分科会を開催いたします。
皆様には、御多用中のところ御出席いただきまして、ありがとうございます。
本日は、文教・科学技術、エネルギー、中小企業、環境、出入国在留管理・治安関係、そして防衛を議題としております。この順番で進めてまいります。どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、ここで報道関係の皆様方には御退室をお願いします。
(報道カメラ 退室)
〔 増田分科会長代理 〕 それでは、議題に入ります。
初めに、文教・科学技術の審議に入りますが、まず中島主計官から説明をお願いします。
〔 中島主計官 〕 文科主計官、中島でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
まず、1ページ、目次を御覧ください。ここで、この後御説明申し上げないものを簡単に付言しておきたいと思います。
論点1ですが、公財政教育支出の対GDP比がOECDの中で最低と指摘されるわけですけれども、在学者1人当たりで見ればOECDの中で遜色があるわけではないということを申し上げているものであります。
それから、論点2、これは2019年10月から幼児教育が無償化をされます。幼稚園が預かり保育の無償化を求め、本格的に幼稚園でも保育に取り組むということであれば、旧制度の幼稚園から、幼保連携型こども園といった使い勝手の良い新制度への移行が進まない理由を分析すべきではないかというようなことを申し上げております。
論点4は、私立高校授業料の実質無償化、これは昨年冬の新しい経済政策パッケージにおいて、安定的な財源を確保しながら、2020年以降に590万円未満の世帯を無償化するということになっておりますけれども、その財源をきちんと確保すべきだというようなことを申し上げているものであります。
それでは、中身に入ります。14ページを御覧ください。義務教育、小・中学校の話でございます。
具体的には15ページです。左の表の下のほうを御覧いただきますと2,615人、これが31年度の小・中学校の先生の増員要求でございます。その右、1万8,912人、これは8年間の増員要求であります。
中身は、上に行っていただきまして、小学校専科指導の充実1,000人ということで、これは英語の教科化に伴う増員。それから、その下、学校の事務の共同化で400人、これは8年間で8,325人と非常に大きな要求になってございます。
これについてどう考えるかということでございますが、17ページを御覧ください。まず、英語のコマ数の増加についてでありますが、下のグラフの左側の固まり、指導要領ベースというところでありますが、青い棒グラフ、941コマ、これは現行の学習指導要領です。オレンジの棒グラフ、これは新学習指導要領、平成32年度から英語が教科化されて、23コマ増えて964コマになるというものであります。
こういうことになるわけですが、右の実態調査ベースの濃いグレーのほうのグラフを見ていただきますと981コマ、これは小・中学校悉皆調査で、学校でどれだけの授業が行われているかというものでありまして、941の現行学習指導要領に対して、それを上回る981コマの授業をしている。それは、新学習指導要領の964コマを上回っている部分を英語に振り替えることが可能なのではないかということを考えております。
それから、右の薄いグレーのグラフは、教員の勤務実態調査を文部科学省が行っております。教員の皆様の残業時間がこれだけあるといった調査をしているわけですが、その中で先生は授業を合わせて4時間25分しておられるということになってございます。これを子供たちが受ける授業ベースに直して、更に年間ベースに換算すれば、おおむね1,100コマ前後の授業を受けているということになるわけですが、なかなかにわかには信じがたく、この教員勤務実態調査の適切性にも疑問はあるわけですけれども、いずれにしても現行の学習指導要領を上回っている時間がありますので、その分を英語に振り替えることは可能ではないかというのは、やはりこれを見てもそう考えられるわけです。あとは、中学校英語教員の活用だとか、あるいは特別免許の活用といったことも考えていく必要があろうかと思っています。
次のページ、18ページです。左側の上の表、、これは先生方が負担を感じておられる業務ということですが、小学校の1位は保護者・地域からの要望等への対応、2位は国や教育委員会からの調査の対応。中学校も1位、2位は同じです。4位に部活動が入っていると。
また、事務の関係ですが、下のの表、市町村費負担事務職員という表を御覧いただきますと、左側の表は地方交付税で算定されております市町村費負担事務職員、これは1.7万人と0.9万人、2.6万人ほどが積算上、乗せられているわけであります。私どもの予算執行調査で実際の配置を見ますと、常勤換算で小学校は4,650人、中学校で2,597人ということになっておりまして、積算で見ております2.6万人を下回る水準になっています。もちろん交付税でございますので、積算どおり配置しなければいけないというものではありません。自由に使えるものではありますけれども、現場では事務職員を必要としていないという現状がこれを見てあるのかなと。そういう中での国庫補助のある事務職員の増員要求をどう考えるかというのは、大きな問題だろうと思っています。
それから、右の-1、
-2、これは部活動の関係であります。先生全員が部活動に当たることになっているような現状があるのと、下の表は、棒グラフは平日の時間数ですが、2時間、3時間と部活をしておられる。土・日は折れ線グラフですけれども、合わせて6時間以上やっているところも結構あるわけですので、こういった総量規制を含めた部活動の見直しが必要だろう。
いずれにしても、先生の数を増やすということよりも、業務自体の削減を考えていくことが先決ではないかということを考えております。
それから、20ページを御覧ください。小・中学校の規模の話であります。上の固まりの棒グラフは小学校、下が中学校です。黄色い部分は、1つの学校で12学級から18学級ある学校、これは言い換えれば1学年2クラスないし3クラスある学校ということで、適正規模だとされています。それを下回る学校が半分ぐらいある、つまり1学年1クラスしかないような学校が結構あるということです。
右の四角囲みに書いてありますように、小規模校の問題点として、1つ大きなものは教育上の問題点でありますが、クラス替えができない、あるいは切磋琢磨の機会が少なくなるといったような子供たちにとって大きな問題があるということなので、子供を第一に、学校規模の適正化というのは考えていただく必要があるだろう。それから、学校運営上の問題ということで、教職員1人当たりの校務負担も大きくなってしまう。こういった意味で考えると、働き方改革という観点からもやはり適正化はしていただく必要があるだろう。
下の円グラフですが、もちろん過疎地ではなかなか難しいのは承知しているところでありますけれども、必ずしも地理的な理由でできないわけではないというのが77%もあるので、更に進めていただくことは可能なのではないかと考えております。
それから、27ページ、御覧ください。ここは、高等教育、大学、専門学校の実質経済負担の軽減というものでございます。
中身は31ページまで飛んでいただきまして、「骨太2018」で定められた学生の要件、それから大学の要件ということで、2020年4月からですが、住民税非課税世帯で、大学、あるいは専門学校の負担軽減をすることになってございます。上の固まりは、支援対象者の要件ということで学生の要件になっております。は、高校在学時の成績だけで否定的に判断せず、本人の学習意欲を確認するということになっています。
は、大学に入った後ですけれども、単位が6割以下しか取得できていないときとか、成績が下位4分の1に属するときには大学が警告を行って、警告を連続で受けると支給打ち切りということになっています。こうしたきちんとした学生を対象にするという姿勢を、更に具体化していくことが必要なのではないだろうかということが一つ。
それから、下半分は大学の要件ですが、は実務教員がいること、
は外部理事がいること。大事なのは
、
だと思っていますが、シラバスの作成をして、授業の内容をあらかじめ子供たちに見せ、適正な成績管理をしているということ。
は財務情報、つまり赤字でないということ。それから、教育活動、特に就職の状況などを一般に公開、オープンにしていることが大事だろうと思っています。それから、専門学校も対象になるわけですが、学校評価といったようなこともきちんと開示をしてほしいというのが
。
何よりも大事なのは(注)のところでありますけれども、経営指導の対象になっている、つまり大きな赤字を抱えているような大学とか、継続的に定員の8割を割っているような大学については、無償化の対象にしないといったことなどを検討することになっていますが、検討にとどまらず具体化を進めてほしいということであります。
それから、42ページまで飛んでいただきまして、ここは私立大学の関係でございます。定員割れ大学の問題を拾っていきたいわけですが、具体的には46ページを御覧ください。特別補助の問題を提起しております。私学助成は3,000億円ほどありまして、特別補助で500億円ほどの補助をしているわけであります。
具体的には、の左側の表にあるように、ⅠからⅤまでは何らかの改革をすれば特別補助を交付するといったものです。Ⅵ、Ⅶ、Ⅷは、授業料減免とか、震災の関係なので、必ずしも改革ということではないのですが、ⅠからⅤのメニューでどれほどの大学がこれらを受けているかというのが右の円グラフです。特に、右の円グラフの右のほうを御覧いただきたいのですが、定員割れ大学274校のうち、ⅠからⅤのどれももらっていないというのが白抜きの6校、2%です。裏返すと、98%が特別補助をもらっている。したがって、何ら特別な条件での補助にはなっていないと我々は思っています。特に、62%、169校は、ⅠからⅤのうちの4個以上をもらっているということなので、この特別補助の対象の絞り込み、あるいは実効性のあるものにしていくことが必要なのではないだろうかということです。
47ページは、金額的に見たものですけれども、左側は一般補助プラス特別補助、右側は特別補助だけを取り出したものです。一般補助と特別補助を合わせて、私学助成は3,000億円で、学生が200万人ですから、ざっくり言って1人当たり15万円が補助されていることになります。そうすると、濃いグレーのところが平均値ということになるわけですが、赤い70%未満の定員割れが激しいところでも、平均を上回る30万円とか、50万円とかもらっている大学が7校、3校あるということなので、やはり中身の見直しが必要だろうと思っています。
それから、48ページは、メニューのもう少し中身を見たものですけれども、例えば社会人を受け入れていれば特別補助をもらえるだとか、あるいは語学力の習得をするためにレベル別クラス編成をしていれば特別補助があるだとか、いずれも大学として当たり前のことではないかと思うわけですが、そういったことが補助要件になっている。それから、大学のブランディングをするために国庫補助をしていると。それぞれ特徴、特色を出すのが大学の役割そのものではないかと思うわけですが、それに対して国費を使うというのはどういう意味があるのか、疑問を感じているところであります。
それから、52ページ、ここから科学技術の関係に入ります。
次のページ、53ページの左側のグラフは、2000年を100として、各国の科学技術予算がどういう推移をたどっているかを見たものでありますけれども、これを見て日本は伸びが乏しいのではないかと言われます。ただ、右のGDP比で見たときには、必ずしも日本は遜色があるわけではありませんので、見方の問題があるのではないかということが一つ。
次に55ページでありますけれども、左側のトップ10%論文のランキングの推移を見ていただきますと、そういった伸びが少ないということもあって、上から4位、4位、9位と徐々に論文のシェアが低下していって、研究力が低下しているのではないかといったようなことが指摘されています。しかしながら、論文数自体を見ていただきますと、3,600本、4,500本、4,000本ということで、でこぼこはありますけれども、4,000本前後で推移している。
一方、中央政府、国がどれぐらい科学技術関係予算を使っているかを見たのが右の棒グラフですけれども、日本は減税まで含めれば401億ドルの公的支援をしていると、4兆円ほどの公的支援をしているということですが、4兆円を使って4,000本しか書けていない。ほかの国は、アメリカはもちろん日本より多いわけですが、イギリスやドイツ、フランスについては、日本よりも少ない公的支援の額で、日本よりもたくさんのトップ10%論文を書いている状況なので、真の課題は論文生産性の低さということではないだろうか。お金に頼った力ずくの研究をやっていくことで、必ずしも日本は強くなるわけではないと思いますので、こういったことの課題解決をしていく必要があるだろうと考えております。
では、こういう状況にあるのはなぜなのか、いろいろ分析をしなければいけないわけですが、57ページを御覧いただきまして、右のマトリックスを御覧ください。これは、日米の研究者に、あなたの研究動機は何ですかと聞いたものであります。特徴的には、下のグレーの固まりの一般の論文の日本のところを見ていただきますと、あなたは、現実の具体的な問題解決を大事にしましたか、あるいは基礎原理を大事にしましたかと聞いたところ、どちらでもないと答えておられる方が41%もあって、これはアメリカと比べて非常に高い数値を示しています。具体的な問題解決だとか、基礎原理の追求ということであれば注目を浴びる分野ということになるわけですけれども、必ずしも注目を浴びる分野ではなくて、書きたい分野、あるいは書ける分野の論文を書いている結果、論文の生産性が低いということになっているのではないかと推察されるわけであります。
それから、58ページの左側ののマトリックスを御覧ください。ここは、注目を集める分野で書いている論文を4つに分けたものです。科学技術政策研究所でこういう4つの分類に分けたものですけれども、茶色のコンチネント型というのは大型、かたい、大規模、競争大、継続性あり、確実性高い、入れ替わり少ないと書いてあります。言ってみれば、伝統的な分野で、長く続いている分野であります。そこにはたくさんの人が入ってきていますので、論文が非常に多く書かれている。たくさんの人が入ってきますので競争も激しいと、そういった分野だと思っていただければ結構です。
その対照にあるのがブルーのスモールアイランド型、これは小型、小規模、競争小と書いてあります。言ってみれば、ユニークで、革新的で、新しい分野でありますので、そんなにたくさんの人が入ってきておらず、アイデア勝負なので、競争もそんなに激しいわけではない。ただ、今日生まれた分野が明日にはなくなっているかもしれない、そういう入れ替わりの激しい分野だということであります。
上のペニンシュラ型というのはほかの領域と関連性があるということなので、スモールアイランドで生まれて、つながっていってペニンシュラになり、それがコンチネントに進化していくといったような経緯と、右のグレーのアイランド型というのは他の領域と関連性がないということなので、スモールアイランドの中にいろいろな人が入ってきて、どんどんそれが大きくなってアイランドになって、コンチネントになっていく。そのように進化をたどっていくわけです。
そういう4つの分類で見たときに、日本はどうなのかというのが下のの棒グラフです。まず、日独の比較をしてありますが、そもそも、まず書けている領域数がドイツの半分程度しかないというのが一つ大きな問題であるわけですが、その中でもコンチネント型というところに割と傾斜しているように見えます。
そのコンチネント型で勝負をして勝てているのかというのが、右のの棒グラフであります。横軸は、1領域当たりで書けているコアペーパー数、論文数であります。幅が領域数を示しているつもりなので、領域数×1領域当たりのコアペーパー数で、掛けた部分の面積が総論文数ということになって、日本は379本、ドイツは677本ということになります。ここでドイツに300本ほど差をつけられている。
ここで勝てると論文数も多いわけなので、非常にたくさん稼げるわけですが、競争も激しいので、伝統的な分野に固執していることによって、資源の浪費をしている可能性があるのではないかと思われるわけであります。こういった伝統的な分野へ固執を排除せず、新陳代謝をしていかなければいけないわけですが、そのためには若手の力を頼るというのは非常に大事なことではないかと思うわけです。
59ページを御覧いただきますと、左がトップリサーチャーということで、今、申し上げたようなトップ10%論文を書けている人たちの年齢構成を見たものですが、これは若手に偏っているというのは想像にかたくないことであります。しかしながら、真ん中のグラフ、これは大学の先生の分布を見たものですけれども、残念ながら若手のところは少ない。ある種、やむを得ない部分はあるわけですけれども、若手が少ない。それから、右のところは1人当たりの科研費の配分額であります。もらっている人、もらっていない人いらっしゃるわけですけれども、それを平均したものでありまして、シニアも、若手も同じぐらいの単価になっている。若手の先生たちの生産性は非常に高いにもかかわらず、人も、お金も、どちらかと言えばシニアのほうに偏重している。これをどう改善していくかということであります。
60ページは、今、申し上げたような硬直性ということを、いろいろな先生方が言葉でしているものであります。
61ページで、その硬直性にメスを入れるためには、昔、司令塔である総合科学技術会議がS、A、B、Cと、Cまで各分野の優先順位づけをしておりました。それが、平成23年度にSとAだけで9割になってしまったということで、止めてしまっています。その後は、にありますように、言ってみればSというか、ハリの分野だけを拾った提示の仕方をしていますので、上から下まで、Cまでつけるというような優先順位づけをしないと、こういう硬直性はなかなか直っていかないのではないだろうかと思っているところであります。
それから、63ページに行っていただきまして、ここから研究力の主力たる国立大学の話を申し上げたいと思います。
64ページを御覧いただきますと、運営費交付金が減ってきているようには見えるわけですが、実質はそれほど減っていないのではないか。補助金まで合わせれば、実際、増えているのではないかということを申し上げているものであります。
66ページに飛んでいただきまして、今、申し上げましたように公的支援は必ずしも減っているわけではないと我々は思っているわけですが、仮に公的支援を見たときに、主要先進国と比べた、国立大学、州立大学も含めてですけれども、国公立大学の学生1人当たりに公的支援をどれぐらい入れているか。日本は、2万ドル近く、つまり200万円ほど、国立大学には公費を入れているわけです。ほかの国は、1万ドルとか、1万ドルに満たないところもあるわけなので、そういう意味では世界トップクラスで国立大学にはお金を入れているという状況にあると。
それをうまく使えているかというのが67ページですけれども、これだけ公的な支援を入れているのにもかかわらずお金が足りないということに対しては、無駄な使い方をしているのではないかという疑念もあるわけです。我々、予算執行調査をしたところ、例えば左側の棒グラフを見ていただきますと、赤い部分が随意契約、青い部分が入札ということで、国立大学は半分ほど随契になってしまっていて、理研だとか、NIMS(物質・材料研究機構)、QST(量子科学研究開発機構)といった独法関係は、多くは入札をかけていただいている。
次のグラフの固まりは、随契だと高めのお買い物になっているということ。
それから、右ののほうのグラフ2つは、国は150万円以上で競争入札をかけるわけですが、大学は300万円とか、500万円とか、ちょっと高目になっています。その300万円とか、500万円という水準の直前のところで、随契が固まっているということが分かろうかと思います。こうしたことを考えると、少し高目の買い物を大分しておられるのではないかと思われるわけです。
それから、68ページ、御覧ください。これは、若手の教員ポストが少なくなっているということがよく言われるわけですけれども、のグラフは、そうはいっても常勤教員数が増えているのではないか。
のグレーのところは、教員の業績評価をこれまで雇用の判断とか、任期の判断に利用してこなかったのではないでしょうかということ。緑の
は、法人化以降、定年延長をしてきてしまっているということ。その結果もあってか、
、65歳以上のシニアの教員が増えてきている、あるいは40歳以上の採用も増やしているというような状況にあります。こうしたことを考えると、必ずしも運営費交付金の問題ではなくて、大学の人事マネジメントの問題なのではないだろうかと思われるわけであります。
次に73ページまで飛んでいただきまして、つらつらこう見てくると、国立大学の運営費交付金の量の問題というよりは、やはり配分の問題が大きいのではないかと思われるわけです。左側の帯グラフの固まりは、大学を第1から第4グループまで分けたものです。第1グループはトップ論文を書けているほうのグループ、第4グループはそうでないほうのグループということになります。一番左は、教員のシェアです。それから、真ん中は総事業費のシェアということで、人、お金、いずれも第1グループは10%ぐらいのシェアであるにもかかわらず、良い論文は36%書けているということです。したがって、右の棒グラフの固まりは生産性を表したものですけれども、上段は先生1人当たりのトップ論文の数、下段は総事業費10億円当たりのトップ論分の数。御覧いただきますと、10倍ぐらいの差が第1と第4の間にある。我々は、この第1グループのような先生方にお金も、人も張りたいと思っているわけです。
しかしながら、74ページでありますけれども、これは国立大学の運営費交付金を86大学、並べたものです。上の固まりは平成16年度、下が平成29年度です。濃いブルーは旧7帝大ですけれども、旧7帝大だけ見ましても、平成16年度も34%、平成29年度も34%ということでシェアが変わっていません。
これは当然のことでありまして、75ページを御覧いただきますと、大学の収入は運営費交付金とか、授業料とか、いろいろあるわけですけれども、運営費交付金1兆971億円のうち、大宗は基幹経費と称する9,078億円の部分で、ここは原則、前年同額で各大学に配分されています。したがって、シェアが変わらないということになります。一部、赤い点線で囲ってあります重点支援評価に基づき配分285億円、この部分だけは評価をして配ることになっています。これを我々、全体の10%、つまり1,000億円ぐらいまで増やすべきではないかと思っています。それが問題点の1、この割合が小さいのではないかということ。
それから、問題点の2は、評価の仕方で、インプット指標で、かつ絶対評価になっている。つまり、アウトカムでも、相対評価でもないというのが問題だと思っています。具体的には、76ページですけれども、上から見ていきますと、会議の開催回数だとか、宿舎の整備数、自習施設、あるいはAO入試の募集人員とか、こういったインプット指標で評価をして配っているので、何ら教育研究の質とは関係ないことになっている。
77ページは、もちろんアウトカム指標で評価しているものもあることはあるわけです。点線で囲ってあるのところで、11教育大学で見てみますと、英語力とか、就職率とか見てアウトカムを使っているところもあるわけですが、下の表にあるように、英語力で言うと平均スコアを目標として据えていたり、一定以上の学生の比率を据えていたり、比べられないような状況になっているので、これを隣の大学と比べるようなことにすべきだろうと。我々、オレンジの表にありますように、教育であれば就職率とか、進学率といったもの、研究であれば教員1人当たりのトップ論文の数とか、若手の教員比率とか、外部資金の獲得とか、アウトカム、ないしはアウトカムに類するようなもので指標を厳選して、それらを各大学共通に設定して、相対評価して、少なくとも1,000億円程度は配分すべきではないかと考えているわけであります。
それから、最後の固まり、80ページ、ここは科学技術の関係で、官民の役割分担であります。
81ページを御覧いただきまして、官民の研究開発投資は企業部門にも頑張っていただいていることもあって、主要先進国を上回るかなりの水準の研究開発投資をしていただいています。特に企業部門はこれだけ多い状況にあるわけですが、右の模式図を御覧いただきますと、基礎研究は国が重点的に対応していくということはあろうかと思います。商品化に近い部分については、企業の皆様に御対応いただくというのはあるべき姿かなと思っておるわけですが、社会実装のところに補助をするといったことも見られるわけであります。
具体的には、82ページですけれども、左の下は第1期SIPで、エンジンの開発をしているものです。国から19億円、企業の皆様から4億円といったような水準。真ん中のの固まりは物流の関係、これからやります第2期SIPですけれども、順次、企業負担を上げていただくようにはなっているわけですが、それでも24%。右側は、ImPACTの事業で、ゴムの開発みたいなことをしているものですけれども、企業の御負担はいただけていないような状況なので、こういったものを見直していく必要性があるのではないかと、今、思ってございます。
それから、83ページは、企業から大学への投資をしていただきたい、そういうことによって大学に社会のニーズを打ち込んでもらいたいといった思いで、企業から大学への研究投資をしていただければというものであります。
それから、85ページは基金の関係です。これもいつも申し上げていることでありますが、文章のところのにありますように、どんとお金を渡してしまうものですから、例えば評価を4年経過するまでやらなかったとか、あるいは、BHQ問題と書いてありますが、(注)にありますように十分なエビデンスがないまま公表してしまうといったような、評価が必ずしも十分でないので、こういったずさんな使い方になっているので、基金については慎重な対応が必要だろうと思っております。
最後、86ページは、研究不正についてきちんとした対応が必要だろうということを申し上げているものであります。
私からは以上でございます。ありがとうございました。
〔 増田分科会長代理 〕 ありがとうございました。
なお、本日の議論を通じて、欠席の伊藤委員、神津委員、田中委員、中空委員から意見書が提出されております。お手元にお配りしてありますので、お目通しをいただきたいと思います。
それでは、文教・科学技術のところについて、御意見、御質問、意見交換の時間にしたいと思いますので、いつもどおりネームプレートを立ててお願いしたいと思います。もう既に立っていますが、すみません、大玉が幾つかあるので、2分程度の目安ということでお願いしたいと思います。
それでは、武田委員からにしましょう。では、武田委員、お願いします。
〔 武田委員 〕 どうもありがとうございます。詳しい御説明ありがとうございます。
いつも同じようなことを申し上げているのですが、人口が減少し、かつ、ますます世界での技術の競争が激しくなる中で、どの分野の予算をどういうように使っていくべきかという議論が、この国の将来を左右するのではないかと思っております。この分野をどういうように伸ばしていけるかという観点も重要で、予算を一律に考えるよりは、より効果的に、必要なところにはしっかりつけるという視点も重要なのではないかと考えております。
その意味では、一つのキーワードは、「新陳代謝」になると考えております。以前からお話ししているとおり、学生数がそもそも日本全体で減る中で、大学の数、供給の面はほとんど変わっていないことについてどう考えていくのか、という論点があろうかと思います。また、60ページに、権威ある先生方、識者の方のコメントが載っておりますけれども、新陳代謝を妨げている要因も一部で指摘されているわけですので、そこをどういうような形で変えていけるのかということを真剣に考えていかないと、根本的に、どうしていったら教育の質のレベル、科学技術のレベルを引き上げていけるのかという議論に、つながっていかないのではないかと思います。そういう意味では、競争原理をより働かせられるような環境に促していくということが必要ではないかと思います。
また、科学技術に関しても、これは非常に重要な論点だと思っております。先日、ノーベル賞をおとりになりました本庶先生も、なかなか良い研究があっても、日本企業からの投資よりは、海外の企業からの投資に頼らざるを得ないという御発言もされていらっしゃいましたけれども、どうしたら日本の基礎研究と、企業の研究開発とを結びつけていけるのかということも、あわせて考えていく必要があるのではないかと思います。例えば、ノーベル賞をおとりになるようなレベルの方、あるいは、将来の候補の方々がペーパーワークに追われていて本当に良いのか。そこは、むしろその役割を担う人をしっかりつけることが、逆に重要ではないのか。アウトカムを良くする方向になるのであれば、予算を一律に抑制するというよりは、つけるところにはつけて、成果につなげていく。一方で、新陳代謝のメカニズムを働かせ、全体の予算をマネジメントしていく、その論点が必要なのではないかと思います。
以上です。
〔 増田分科会長代理 〕 ありがとうございました。
それでは、加藤委員、お願いします。すみません、少し札が多いので、短目にお願いします。
〔 加藤委員 〕 端的に2点ほど。
まず、1点目ですが、義務教育の教職員の定数のことは、毎年毎年、文部科学省はこういった形で非常に多く出してくるのですが、やはり出生数が100万人を切った段階でこれだけ増やしていったときに、1人雇用すると40年間雇用しなければいけない。こういうことを考えたときに、やはり数ではなくて仕事の効率化を考えていかなければいけない。仕事が大変だということはよく知られていることですが、やはり効率化をして対処しなければいけないことだと思いますので、まずそれをやっていただきたいというのが1点。
それから、今日はあまり話題にならなかったのですが、いわゆる所得連動型返済金の話です。これは、本当に非常にリスクが大きくて、例えば将来的に追跡不能であるとか、あるいは返し切れない、そういった意味で言うと財政負担が相当大きくなるようなリスクもありますし、個人にとっても大きなリスクがあるだろう。進学に対する支援というのは、貧困家庭に対しては基本的に所得再分配をやっていくべきであって、こういったものを拡大することについては慎重であるべきだと考えております。
以上であります。
〔 増田分科会長代理 〕 ありがとうございました。
岡本委員、お願いします。
〔 岡本委員 〕 ありがとうございます。
私も、武田委員の言われる競争原理を働かせるというのは本当に重要だと思うのです。その関係で、76ページですが、インプット指標とか、無関係な指標で評価と、こういうようなページは、私も初めて見たような感じがします。この中で見ると、まともなものもあるが、例えばA大学は年2回開催が1回でAとか、C大学は49人以上なのに4人でAと。これは33年度末と書いてあるが、Aがついているとか、かなり甘いという感じがする。あと、下に教育研究とは無関係なものがあると。これは、まさに指摘のとおりでして、こういうものはどんどん出してもらって、具体的な議論をしたら良いと思うのです。
そういう意味で、77ページ、第三者でと言うのですが、いろいろな第三者がいますので、やはりまずは文部科学省がしっかりした人による評価を是非やってほしいと思います。
もう一つ、75ページの285億円ですか、重点支援評価とありますけれども、これは昔、1%という感覚を持っていたのですが、これで見ると2.6%ぐらいになります。先ほど1,000億円と言われましたよね。1兆円の中の1,000億円といえば約10%ですから、企業だったら比例配分は当たり前です。基幹経費は、先ほどもありましたが、前年同額とありますよね。これでは、やる気もなくなるし、インセンティブも働かない、緊張もない。そういう意味では、論文の生産性も悪いだろうと思いますので、これについては是非やってほしいということ。
それから、これは大学の先生にもよく聞くのですが、文部科学省の指導もどうかなと思うのです。例えば、平成24年度は官民イノベーションプログラム、平成26年度はスーパーグローバル大学創成支援、平成28年度は運営費交付金の3つの重点支援の枠組みと2年ごとにころころ変わって、そのたびに大学はこれに対してしっちゃかめっちゃか作業をするわけです。こういうようにころころ変わるよりも、やはり今、大学とは何かとか、あるべき姿とか、結構、経済団体でもやっているのですが、そういうような中ではもっとどっしりとした、本当に社会の要請に応えられるような長い目での指導をやってほしいと。
以上です。
〔 増田分科会長代理 〕 ありがとうございます。
冨田委員、お願いします。
〔 冨田委員 〕 ありがとうございます。
先週は、国土交通省の社会資本整備の総合交付金、そして外務省の独立行政法人JICAの運営費交付金の問題を議論させていただいたわけですけれども、今日は、主計官から国立大学の運営費交付金の問題の話がございました。これらの交付金は、やはり事前の統制を緩くしている。その反面、何とか事後評価を厳しくしようというガバナンスの方法なのですけれども、今日、お話ございましたように、また、岡本委員おっしゃられたように、事後評価が全然、アウトカム指標でもなければ、相対評価もできていないという問題があります。そういう評価であるがゆえに、多くの研究者、大学の先生方のご不満とか、鬱屈感を生んでおり、それで済めば良いのですけれども、我が国の研究開発の生産性の問題が生じているということですので、おまとめの78ページのように相対評価を導入することが大事だと思います。
それから、今日の60ページにあり、前回も御指摘あった問題ですけれども、研究開発の生産性を高めるために新陳代謝に問題があるのではないかと。それをするために、61ページ、研究開発、新規事業について優先順位づけを、メリハリづけをしなければいけないということが指摘されております。しかるに、平成23年度以降、それが機能していない。また、現在の中期の第5期計画におきましては、そうしたメリハリづけ、メリがないので、どうしたってGDP比でたくさんと、26兆円の計画というように規模が大きくなる方向になってしまっているわけです。
なぜ、教育面においても、研究開発においても優先順位づけ、事後評価がきっちりできないのかということをやはり根本から考える必要があると思うのです。我々、これまでいつも優先順位づけが大事だということで提言が終わってしまっているのですけれども、そこからどういうように踏み込んだら本当に変えることができるのか、ということを議論しなければいけないと思うのです。
そういうことで、ちょっと質問させていただきたいのですけれども、優先順位づけがない中で第5期の計画があるわけですけれども、どうやって具体的に20ほどある競争的資金供給の制度を国があるべきと思う方向に持っていこうとしているのか、各研究開発の予算がどうやってつけられているのかということがわからないのです。そういうプロジェクトの予算審査と全体の国の計画との関係が、現在、何もなしに行われているような感じを受けるのですけれども、それでは良いはずないわけでして、その現状がどうなっているかということをもう少しお聞きしたいと思います。
〔 増田分科会長代理 〕 では、今の点、中島主計官、お願いします。
〔 中島主計官 〕 1つは、総合科学技術会議という、一応、内閣府の司令塔機能を果たすところで全体の評価をするということにはなっているわけです。したがって、やるべき分野についてはそこでやるということが決まっていくわけですが、先ほど申し上げたように、止めていく分野というか、C評価をやっていないというところが問題なのだと思っています。やるべきところ自体は、いろいろな学術コミュニティーの人たちに入っていただきながら、議論はしているというような状況です。
〔 冨田委員 〕 その止めるところは、何も、誰も議論していないのですか。
〔 中島主計官 〕 止める分野を明示的に議論されているところがないというのが、我々、問題ではないかと思っているということです。
〔 増田分科会長代理 〕 ありがとうございました。
それでは、老川委員、お願いします。
〔 老川委員 〕 御説明、どうもありがとうございました。2点、意見を申し上げたいと思います。
1つは、教員定数の問題で、いつも議論になるのですが、しろうと的に考えると、子供の数が減っているのに、先生が忙しくなって人手が足りないというのはなかなか理解しにくいところで、いろいろ聞いてみると、仕事の量が増えているとか、あまり表に出ていないけれども、文部科学省からのいろいろな調査で結構忙しくて人手がとられていると。これをもう少し合理的にできないのかということが一つ。
それから、よく言われるのは部活が忙しい。昔は、中学校のとき、そんな毎日やらなかったのではないかと思うのです。スポーツにしたって、あるいは別な学問的な活動にしても、いきなりプロになるようなつもりで、毎日、練習しなければいけないとか、あるいは学習しなければいけないというものでもない。そんなに先生の負担が大きいのだったら、部活の数を週1日にするとか、2日にするとか、そういうことで解消できるのではないかという気がするので、現状、こうやっているから人手が足らないというだけではなくて、もうちょっと、先ほども意見が出ましたけれども、効率化できるものはしたら良いのではないかと思います。
もう一つ、科学技術関係の研究開発ですが、最近は産学連携の抵抗というのはかなり少なくなってきて、大分進んできて結構なことだと思うのですが、一つはやはり寄附税制ですね。企業側が大学の研究にもっと寄附をしてやってもらいたいと思っても、寄附できる上限がそれぞれの企業で決まってしまっていて、ほかに寄附してしまっているとこちらにはできないとかいうことが現実にはあると思うので、やはりそこら辺は、主税局は嫌がるかもしれないけれども、多少そちらの面で税収が減ったって、企業が内部留保している部分を大学の研究に協力してあげて、それによって日本の産業も効果が上がるというようなことはいっぱいあり得ると思うので、そこら辺、もう少し柔軟に考えていってもらえないだろうか、検討してもらいたいというのが私の意見です。
以上です。
〔 増田分科会長代理 〕 ありがとうございます。
それでは、藤谷委員、お願いします。
〔 藤谷委員 〕 ありがとうございます。ごく手短に2点申し上げます。
まず、1つは、18ページの左下ののところです。大変興味深いデータだと思います。この読み方ですが、ここの御説明のときに中島主計官は、現場では実は事務職員をそんなに必要としていないのではないかとも読めると。その読み方も一つの読み方だと思うのですが、もう一つの読み方は、結局、配った地方の中での力関係として、何と申しますか、結局、そこではないところにお金が行ってしまう。つまり、現場といったときに、本当の現場と、そうではなくて地方で予算配分しておられるところのいろいろなプロセスと両方ありまして、そこはどちらの可能性もありますので、これを押し出すと、おやっと言われてしまうおそれがあり得るのではないかと気になりました。
もう一つ、58ページ、これも非常に面白いデータと思って拝見していたのですけれども、なるほど、コンチネント型とか、ペニンシュラ型と分け方があるのですねと思ったのですが、研究者に自分をどう思っているかと聞くというのは、どのぐらいエビデンスとして強いのかというのはちょっと心配なところがあります。あと、どの単位で区切っているのかもわかりません。今、大学で問題になっているのは、若手研究者は将来、不安なので、どうしても保守的なほうに流れると。大きなプロジェクトに属して、コンチネント型をやっていて、しかも研究室の中で競争原理を働かせるためには、若手の人たちは、ほかにはない、あなたが良い成果を上げれば研究室に貢献できるということになると、当然、自分の研究がほかにやられるのは心配ということになるわけです。
そうすると、新陳代謝を促すだけだと、実はもっとリスクをとらない研究が出てくる可能性があると思うのです。結局、大学の数が多過ぎる、大学間で無駄が多い、大学間でオーバーヘッドの重複があって、しかし個々の大学を見ると事務職員が少なくてという問題と、研究者の数が多過ぎて、研究者に研究原理が働いていなくてという2つの問題がちょっとごっちゃになっている気がするので、そこの精査が必要ではないか。
まとめます。我々は、やはり一つ一つの予算を刈り込んでいくということしかできないわけですけれども、本当のバイアスが別のところにあって、予算を削るというところで締め上げる、それでインセンティブを効かせようとすると、かえって、本当に我々が生かそうと思っているものが、むしろ弱いところにひずみがいって、本当の構造的な問題は温存されてしまう、大学の数は減らないということはあるのではないかと心配しております。
以上です。ありがとうございます。
〔 増田分科会長代理 〕 はい、どうも。
次は、宇南山委員、お願いします。
〔 宇南山委員 〕 私も大学のことでありまして、近年、集中と選択ということが非常にキーワードになっていると思うのですが、その点について幾つか危惧がありますので、それについての懸念を簡単に話させていただきたいと思います。
1つは、集中と選択をすること自体にはかなりのコストがかかるということでありまして、研究の評価をお互いに研究者同士でするわけですが、集中と選択をしようすると、そのコストがものすごく高くて、例えば科研の審査がものすごい負担になってしまうとか、そういうことで非常に大きいプロジェクトを選択していくことは重要ですが、あまねく競争を効かせようとすると、むしろそのコストが大きくなり過ぎるということがあるのではないか。
もう一つ、高齢で仕事をしない教員がいるというのは全く事実だと思うのですが、先ほど藤谷委員からありましたように、そこを締め上げようとすると2つの点で問題があって、1つは意思決定をしているのはそういう人たちだという点。もう一つは、そういう人を締め上げると、研究にはリスクがありますので、研究に失敗すると俺は大学から追い出されるのだと思うと、優秀な若手が研究者を目指さなくなってしまうという、その意味での非効率も発生し得るわけで、集中と選択を過度に進めることに対して少し危惧を表明したい。
もう一点だけ。教育機関としての大学という評価と、研究機関としての大学の評価が、今日も前半と後半でありましたが、結局、運営費交付金で賄っているのは両方でありますので、そこの位置づけ、もちろん大学が自らポジションを選んでいくということになるのだと思いますが、研究者に選ばせればもちろん自分は研究大学だというポジションをとりたがりますので、何か制度側で工夫して教育と研究というところを分けていかないと、なかなかうまい集中と選択はできないのではないかと思います。
以上です。
〔 増田分科会長代理 〕 ありがとうございます。
それでは、神子田委員、お願いします。
〔 神子田委員 〕 まず、教員の人手不足の問題ですけれども、今、小・中学校で起きていることは、結構、PTAの父兄の負担が重くなっています。例えば、子供が鼓笛隊のパレードをやるとかいったら、その案内文をお母さんたちがつくらされるとか、警察への許可願もお母さんが出しに行くとか、そういったところまでやらされている。結局、先生に余裕がないから、そういうことになっているのだと思うのです。今、お母さんたちも共働きの人が増えて、なり手の押しつけ合いみたいな状態になっていて、できる人がいないのだったら止めたら良いのではないか。子供たちは多少かわいそうですけれども、やはり無理してやるのは限界があるのではないかということを、最近、感じております。
もう一つは、今回、大学の先生がいらっしゃるので、僕は、ゼロ歳から高校生までどんな教育が必要なのかという漠然とした考えなのですけれども、せんだって経団連会長が就職のルールを設けないという話がありましたし、通年採用とか、あとはリカレントというか、時代が変わっていくに従って、今までやっていた仕事がもうなくなってしまった人たちに新しく出てくる仕事の職能を身につけてもらいたいとか、もう一つ兼業の話とかもあって、要は一毛作が二毛作になったり、一方で定年も延びるということで、同じ仕事をずっと続けるのも良いのですけれども、これも一期作ではなくて二期作になって、非常に多様化していくのです。企業が欲しい人材というのは、研究とは別に、実際、企業とか、役所とかでどんな人間が役に立つかというときに、よく言われる地頭が良いとか、感性にすぐれているとか、あと教養も身につけてほしいとか、企業からいろいろな注文が出ているのですけれども、これは何かどこかの、例えば高校だけでとか、大学だけでとか、いきなり身につくものではなくて、やはりゼロ歳からいろいろ学んでいくことの中で、自然と身につけていけたら理想なのだろうと思うのです。
そういった中で、そもそも就学前の児童とか、小学生、中学生、高校生に一体何を勉強させていくと社会にとって優位な人材が育つかということを、ちょっと根本から考えていく時期に来ているのではないかと思います。
以上です。
〔 増田分科会長代理 〕 ありがとうございました。
井堀委員、お願いします。
〔 井堀委員 〕 私学助成の話ですけれども、私学の定員充足率がかなり落ちている大学のかなりの部分というのは、いわゆる教育大学で、研究というよりは教育面で頑張ろうという大学だと思うのです。そういった大学への補助金をどうしたら正当化できるかと考えますと、基本的には、大学で教育を受ければ大学生本人のスキルが上がりますし、それから大学自体も就職がうまくいけば大学のブランドが上がって、いろいろな面でメリットがあるわけで、本来、そういった大学生本人や大学自体に便益が属するようなものに関しては、公的な助成を正当化する根拠はないと思うのです。公的な助成というのは、基本的にそれによって地域全体にメリットが波及するとか、あるいは将来にメリットが広く拡散するような場合で、当該の大学や本人に帰属できないような外部性がある場合には、当然、補助金が必要なわけです。
そういう面から考えますと、私学助成で、教育大学で、定員の充足率で苦戦しているようなところにそもそも公費を出すのか。特に国費、国のお金を出すというのはかなり問題がある。そういうところでも、地域に対してある程度の貢献はあると思うのですけれども、その場合は必要であれば地方自治体のほうでお金を出すべきであって、文部科学省を通じて国の予算でお金を出すのは少し考えたほうが良いのではないか。大学といってもいろいろな大学があるわけで、国がきちんと補助する大学というのはやはり波及効果、外部性の高い大学に限定すべきではないかと思います。
以上です。
〔 増田分科会長代理 〕 ありがとうございます。
宮島委員、お願いします。
〔 宮島委員 〕 ありがとうございます。
高等教育を、国民のお金も使って低所得者に強く勧めていこうということになった以上、大学はやはり大きく変わって、そして、こんなふうに役に立っているのだということを示す必要があると思います。その点において、予算の面からもプッシュが必要で、補助金の配り方というのは一つのフックになると思うわけですけれども、もうこれまでの方もおっしゃったように、評価の仕方ということに関しては相当厳しく精査する必要があると思います。
また、ちゃんと説明をして、社会の要請に応えるという姿勢をちゃんと見せられない大学に関しては、やはりお金の面で差をつけるべきだと思います。これは、よく批判にある実学だけやれば良いのかとか、そういうことではなくて、別にリベラルアーツとか、いろいろなことも、どのように社会に身につくかということの意味合いを、ちゃんと大学や高等教育が自信を持って示してくれれば良いということで、それは見える化、そして厳しい評価ということで、昔と同じ漫然とした授業があっても放置されるようなことは避けるべきだと思います。
また、大学内のお金の配分がシニアに寄っているという問題に関しましては、やはり効果的に若い人にポストも、お金も与えたいということなのですけれども、おそらく企業で考えても、組織内でこれを変えるというのは、既得権とかいろいろあってなかなか難しいのかなと思います。なので、これはお金を渡す側から、いろいろな指標ですとか、インセンティブを含めて、チャレンジをするところに効果的なお金が渡るような仕組みを外側からも考える必要があるのではないかと思います。
小・中学校の教育ですけれども、大分以前の、とにかく人数が足りないから予算をくれというようなことではなく、具体的にどこが足りないかということが大分示されるようになったということは、議論がしやすくなったと思います。現状の教員の負担感は理解しますけれども、実は現場の方々に聞くと、個別の教員によってかなり労働や忙しさに差があり、かつ教員、小・中学校、初等教育は特に長期の休みがあって、この労働を企業の労働と全く同じような形で比較するのは、なかなか難しいというようなことも意見として出ております。今、文部科学省で教員の働き方の議論、特に1年単位で変形労働時間制をとれないかといった導入の議論も始まっていますけれども、こういったこともきっかけに、子供のために教員の力を一番効果的に役立てていただくには、どうすれば良いのかということで議論を進めていただきたいと思います。
以上です。
〔 増田分科会長代理 〕 ありがとうございます。
赤井委員、お願いします。
〔 赤井委員 〕 簡単に2点だけ。
まず、1点目が小・中学校の統廃合、これはずっと言われているのですが、いまだに問題が残っているので、20ページですかね、いろいろな策を立てて、交付税措置などもしながらということもあるかなと思うのですけれども、もっと促進をしていきたいと。これは財政だけの問題ではなくて、学生への教育にかかわると思います。
それから、64ページのところで、国立大学の予算配分があって、総額では増えているということで、補助金、科研費、競争的資金を増やしているということですが、この流れはあると思うのですけれども、大学側からすると、競争的資金と基盤的な青い部分のバランスをどうするのかということが、議論をしていて、総額では増えているこのバランスというのもどうあるべきかと思うのですが、いずれにしろ評価をしていくということで、インセンティブを持たせないといけない。
そういう意味では、75ページのところで配分の在り方、さらに77ページのところでKPIをどのようにしていくのかということで、まずは大学ごとに評価すると思うのですが、私、個人としては、大学は学部の構成とか、分野も様々ですので、学部ごとに評価して、学部ごとにランキングをつける。もちろん国際ランキングも重要ですけれども、まずは国内のランキングをつけて、その学部が頑張ったというのは同じ分野、同じ学部であれば評価はしやすいと思うので、そういうことでランキングをつけて評価した上で、それを足し合わせて大学に配る。まさに細かい交付税で、それぞれのケースを合体させて配るのと同じように、配った後は大学の裁量で良いと思うのですけれども、そうすることで、より学部ごとに、例えば経済でしたら基礎的なことが必要ですから、そういうものも学部ごとでしたら、カリキュラムの良さなども比較ができるのかなと思いますので、そういう仕組みもどうかなと思いました。
以上です。
〔 増田分科会長代理 〕 ありがとうございました。
こちらは、佐藤委員からお願いします。
〔 佐藤委員 〕 では、手短に。
まず、義務教育に関してですけれども、18ページにありますとおり、教員がかなり忙しいといった話が出ているのですが、もうちょっと客観的に彼らの業務フローをちゃんと分析したほうが良い。つまり、何に対して、どれくらい業務時間を費やしているのかということを、部活なら何時間かとか、会議や資料の作成にはどれくらいかとか、教育以外にはどれくらい使っているのかということを、やはり業務フローをちゃんと分析していく必要性がある。
実は、これは結構、自治体とかやっているのですよね。どういった業務に時間を割いていますかと調べて、次に、この業務は本当に教員がやらなければいけない業務ですかということが問われて、それはもしかたら普通の職員ができるかもしれない、民間委託できるかもしれない、それから今ならICT化できるかもしれない。そういうように業務として切り出せるので、結果として業務を圧縮させることは可能だと思うので、忙しいというアンケートの感覚論ではなくて、どれくらい時間を使っているのかという定量的な分析がないといけないのかなと。いずれにせよ、子供の数も減りますが、先生のなり手の数も減るので、人を増やして解決するにはさすがに限界があるだろうと思います。
もう一つ、20ページのほうで、赤井委員からも指摘がありました学校の統廃合ですけれども、統廃合とあわせてもう一つ懸念するべきは空き教室の利用問題です。要するに、学校で1学年当たり1教室、2教室しか使っていないということは、残りの教室があいているということです。では、あいている教室で何をしているかというと、PTAの会合とか、子供たちの何とか学習とか程度で、ほとんど使っていないのです。そのあいている教室を、例えば介護とか、福祉とか、公民館とか、図書館の分室とか、そういったほかの用途に使えば良いのに、あるいは学童保育に使えば良いのにと思うのですけれども、学校の施設の責任者は学校長なので、学校長は教育以外のことで責任をとりたくないから、そういうことに使わせないわけです。そこで施設の有効利用が阻害されてしまうので、学校の施設管理の在り方を根本的に学校長に任せておいて良いのかということは考えないと、むしろ本格的に学校の複合施設化は考えないと有効利用にならないと思います。
最後、極めて簡単に、18ページのところに出てきた市町村費負担の事務職員ですけれども、配置の人数と、交付税算定上、見込まれる人数が違うではないかということですが、これはどっちがどっちというのは何とも言えないのですが、基準財政需要がもしかしたら多過ぎるというのであれば地方財政の問題かなと思いました。
以上です。
〔 増田分科会長代理 〕 進藤委員、お願いします。
〔 進藤委員 〕 ありがとうございます。
31ページ、高等教育にかかる骨太2018の主な内容のところですけれども、これは骨太2018なので、ここで言っても仕方がないことかもしれませんが、支援対象者の要件についてです。住民税非課税世帯の対象者についてこういう基準で支援を行うということですが、若干甘いのではないかというのが私の率直な感じです。つまり、「成績だけで否定的な判断をせず、本人の学習意欲を確認」ということについては、やはり能力と意欲のある人であれば、どんなに貧しい家に生まれてもきちんと大学教育が受けられるということは、やはり大事なことだと思います。ただ、この能力と意欲をどうやって確認するかというときに、意欲は面談とレポートで分かるかもしれませんが、能力というのはやはり高校時代の成績であるとか、学校の成績で一次近似せざるを得ないのだろうと、こう思うのです。
それから、の基準についても、どんなことがあっても支給は続けるという感じに受けとめられるので、ここで言ってもしようがないかもしれませんけれども、大学要件等の具体化が必要と書かれているとおり、具体化する際には是非、能力をきちんと見定める具体的な方法を入れていったほうが良いと思います。この分科会でも、幼児教育は教育の外部性があるので公的な資金でやるべきである一方、大学、高等教育であれば、半分は個人の投資という要素も増えてくるので、これはやはり個人の責任が半分出てくると位置付けるのであるなら、なおさらここは能力をきちんと判断する。こういうことは、やはり入れていくべきだと思います。
〔 増田分科会長代理 〕 それでは、最後になります。末澤委員、お願いします。
〔 末澤委員 〕 どうもありがとうございました。
毎回、実は申し上げているのですが、先ほどの統廃合の問題でございます。我が国は、人口全体が今、少子高齢化で減っていると。いわゆる人口ボーナスが、今、人口オーナスに転じているわけです。19ページを御覧いただくと、通常、人口が減れば、例えば民間企業であれば支店は減ります。生徒数、児童数に比べて学校の減少数が少ないということは、多分、相当部分が地元の、学校関係者と関係ないところの御要望があるのだと思うのです。
そうすると、子供サイド、児童生徒にとってみますと、20ページの右側にございますように、例えばいじめの問題が起きたときにクラス替えができないとか、運動会がなかなかクラス対抗でできないとか、学年対抗ができない。中学校ですと、これは専門教育なわけですけれども、免許を持っていない人が別の教育もやらなければいけないとか、その学科がしばらくないとか、むしろ教育の質の低下に相当つながっている。
本来、義務教育というのは、国として最低限度の教育を全国民に与える、これは憲法上の義務ですから、そこの部分から考えると、やはり相当統廃合して、少なくとも教育の質を確保すると、これが大前提だと思います。その場合、やはりスクールバスですね。近年、通学路での事故が朝も帰りも相当増えておりますので、ここはちょっと別の観点でスクールバスをもっと拡充すべきだと考えております。
実は、この人口動態の問題は、高等教育にもかかわってくることだと思っております。28ページを御覧いただくと、進学率はOECD加盟国の平均を相当上回り、学位保持率はトップだと。しかも、今後、大学の学生数は、少なくとも日本人に限ればどんどん減っていくわけです。ですから、本来なら今の学校数、学部数は不要になるはずですから、これはもっと統廃合して、大学の数も減らして、そこでより専門性を高める。そうすれば予算も集中投資できます。例えば、総務セクション、管理セクションを1つにしたほうが効率化できます。やはり今の日本の人口動態を考えた上で日本の教育自身をもう一度見つめ直すと、再構築するということが重要ではないかと考えております。
以上でございます。
〔 増田分科会長代理 〕 それでは、文教関係はここまでにしたいと思います。
次のエネルギー、中小企業など、こちらのほうに移りたいと思いますので、初めに斎須主計官から説明のほうをお願いします。
〔 斎須主計官 〕 ありがとうございます。斎須でございます。よろしくお願いいたします。
では、資料のエネルギー、中小企業、環境等と書いてあるものから行きたいと思います。
まず、エネルギーでございます。
3ページ、これまでのエネルギー政策の経緯を載せておりますが、2012年に固定価格買取制度、FIT法の施行があり、それから石油石炭税に地球温暖化対策のための課税の特例、温対税が導入されたということであります。この時期の前後で予算を比べまして、議論していきたいと考えております。
4ページ、今年の7月に閣議決定されましたエネルギー基本計画で、まず省エネは13%、2030年度までにやっていかなければいけない。それから、右下の電源構成、再エネ、原子力ともに、20%強のエネルギーミックスにしていかなければいけないということであります。
5ページに行きますと、このための政策ツールといたしまして、エネルギー対策特別会計、その中にエネルギー需給勘定、それから電源開発促進勘定と2つ勘定がございます。それぞれに見てきます。
まず、6ページでありますが、エネルギー需給勘定、こちらの財源のほうでありますけれども、石油石炭税収ということでありまして、温対税が導入される前後、平成22年度と足元の今年度で比較いたしますと2,000億円ほど財源が増えております。これに対して歳出のほうを見ていただきますと、所管は経済産業省、環境省でありますが、それぞれ1,000億円ずつ増えていると、こういう状況にございます。
7ページ目は、温対税の概要でございます。
8ページ、これが電源開発促進勘定の同時期を比較した状況でございます。電力消費量が若干減少していることを反映して、税収のほうは若干減っております。これに対して、主に文部科学省、経済産業省が所管している原子力関係、文部科学省は核燃料サイクル、経済産業省は原発の立地対策ということで、原発が稼働していきますと、再稼働していきますと、この交付金も上がっていくという状況にございます。それから、核燃料サイクル、いろいろ廃炉措置、今後、しなければいけないということで、電源開発促進勘定については、歳入が伸び悩む中で歳出は増圧力があるといった状況でございます。
9ページ、電源開発促進税の分かりやすい説明ということで、標準家庭、7,000円程度の電気料金を払っているご家庭で、どれぐらいご負担いただいているかということですが、7,000円ぐらいですと100円ぐらい。これに対しまして、FIT、固定価格買い取りの賦課金のほうはもう電気料金の1割以上を占めていると、754円ということでございます。
このFIT制度でありますが、10ページにありますように、再エネの事業者から固定価格で長期間買い取って、その費用は電気利用者が負担するという仕組みでございます。
FIT制度によって、どういうことが実現したのかというのが11ページから12ページでございますが、11ページ、再生可能エネルギーの設備容量は、FIT導入後、2012年の導入後、飛躍的に増えております。この大半は太陽光発電ということでございまして、これに伴って、右側のグラフ、負担金、賦課金のほうも急増しているという状況でございます。
12ページ、左側の表を見ていただきますと、2030年度のエネルギーミックスを実現するために必要な各再エネの導入量、必要な導入量が試算されております。これに対して、足元の認定量までで、地熱を除きますとほぼ達成している状態ということでございます。ただ、認定されても、まだ稼働されていないものがありますので、再エネがそこまで行っていないということであります。このうち、太陽光発電につきましては、右側のオレンジ色の表でありますけれども、2012年、2013年、2014年と過去に高い価格で調達した未稼働のものが大量に残っておりまして、これが稼働することになりますと賦課金がまた増えていくという状況であります。この見直しについては、現在、資源エネルギー庁のほうで検討しているという状況でございます。
13ページにございますように、FIT制度については、再来年度末までに抜本的な見直しを行うということが法律上、あるいは今年7月のエネルギー基本計画の中で明記されているということでございます。FIT制度自体は、電力政策の問題でありますけれども、電力料金の中に電源開発促進税とともに国民の負担として入っているということ、それからFITに関連する予算があるものですから、財政当局としても関心を持って見ていきたいと考えております。
14ページ、再生エネルギー関係の予算、温対税が入る前と後を比較したものでありますが、200億円程度入っております。ただし、FIT関連の太陽光関係の補助金等を整理しておりますので、その分を加えていきますと相当な増加になっていると。
なかんずく、15ページを見ていただきますと、FIT賦課金の減免制度というものがございます。FIT導入以来、大口の電力消費者、事業者が多いのですが、これに対しては国際競争力の観点から賦課金の減免を行っておりまして、これを平成27年度までは全額、エネルギー特会の財政措置をしていた。賦課金が上がってくるに従って、この歳出もどんどん増えていきまして、28年度以降、この予算を切る一方で、減免額も抑えてはいるのですが、平成30年度で1,000億円を超えておりまして、ここの部分は他の一般の需要家の方の賦課金を上乗せするという形で、賦課金の中でのリバランスという形で措置されております。大口事業者にもエネルギー関係の責任があるということを考えますと、こういった財政措置についても見ていく必要があろうと考えております。
16ページは、FIT制度の運営自体もかなり事務作業が大変になっておりまして、運用のための業務委託費、うなぎ登りになっております。こちらも、効率化を抜本的に進めていかなければいけないと考えております。
18ページから省エネでありますが、2030年度、13%ということで、これを実現するのにどうしていくべきかという課題があります。右側を見ていただきますと、1970年から90年の20年間、オイルショック後、かなり省エネは進みました。ただ、その後の1990年から2010年の20年間で見ますと、そこまで行っていないという状況であります。2030年度の目標を達成するためには、赤の点線で書いておりますような石油ショック後のような省エネをやらなければいけないという課題に直面しているわけであります。
19ページを見ていただきますと、省エネのための政策ツールですが、予算、税制、規制と様々なものがございまして、右上のグラフ、製造業の省エネを見ていきますと、オイルショックがあって、それから省エネの規制が導入されて、大幅に省エネが進んだわけでありますけれども、最近は低迷していると、こんな状況であります。
20ページ、省エネ関係の予算とありますが、温対税の前後で比較しますと600億円増加していると、こういった状況でございます。
次に、研究開発関係もエネルギー特会でかなり歳出が出ております。22ページ、見ていただきますと、左側のグラフ、日本のエネルギー関係の研究開発の歳出が研究開発予算に占める割合でありますけれども、諸外国に比べて突出しているという状況。それから、右側の表を見ていただきますと、エネルギー関係の研究開発のGDP比についても諸外国と比べて突出しているという状況であります。
こういったエネルギー関係の研究開発、具体的にどんなものをやっているかという一例でありますが、23ページ、AI、あるいは自動車の自動走行といったものの研究をやっております。これについては、御案内のとおり民間投資もかなり出ていたり、あるいは自動走行は他省庁もやっていたりということでありますので、そういうことも踏まえた査定が必要かと考えております。
エネルギー開発をやって、成果はどうだったかというのが24ページであります。NEDOが発表している数字でありますが、右側の表で、これまでに3.6兆円投入して、実用化されたのが7,000億円であると。この割合がどうかというのも論点でありますけれども、より具体的に成果を見るためには収益納付という制度がございます。NEDOが補助したものが実際に事業化されて、収入が入ってくると、その一定割合がNEDOに納付されます。それがどれぐらいかというのが右下のオレンジ色のところ、欄外にこれまでの累計額を書いておりますが、6.3億円ということであります。当然、基礎研究とか、バイドールとかありますので3.6兆円そのままではありませんが、この3.6兆円という数字と6.3億円という数字、これをどう考えるかということだろうと思います。
それから、26ページ、資源関係であります。資源関係も、温対税の前後で600億円ほど増えております。なかんずく、自主開発比率を高めようというJOGMECの出資金がございます。
これについては、27ページを見ていただきますと、2030年度のエネルギーミックスを考えますと、石油・天然ガスの割合は減ってまいりますので、足元の自主開発の分量でもって、資源エネルギー庁が目標としている40%にかなり近づくと、2030年度には近づくということであります。
次に、中小企業でございます。
30ページ、中小企業は99%以上を占めておりまして、従業者も7割ということで重要な政策課題であるのですが、31ページを見ていただきますと、足元では中小企業の数は減ってきております。それから、雇用されている人も小規模事業者については減ってきている、それから倒産件数も減っているという状況であります。
そうした中で、32ページ、中小企業のほうがより人手不足は深刻であり、それから右側のグラフでありますが、生産性の向上は大企業に比べて低迷していると、こういった状況であります。
この課題に対応する政策ツールとして、33ページ、中小企業対策費というものがございます。これは、大きく2つの部分に分けられまして、下の薄い青と濃い青の部分、これが政策金融、信用保証と公庫融資、それから上の部分の様々な補助金ということでございます。
34ページ、昨年の建議におきまして、この中小企業関係の補助金について、生産性向上につながるようなものに重点化すべきだと、あるいは補助率のメリハリづけをすべきだというご指摘をいただきました。
これを受けまして、35ページ、商店街関係の例を挙げておりますが、補助率を見直したり、廃止したりということをしております。
36ページ、しかしながら全体として見ますと、まだまだ補助率の高いものが残っておりまして、37ページ、中小企業基本法にありますように、独立した中小企業者の自主的な努力が助長されることが旨だということを踏まえて、引き続き中小企業に対する補助の見直しをしていきたいと考えております。
38ページ、これは信用保証でございますが、全国の信用保証協会が民間金融機関から中小企業への融資の保証をしているわけでありますけれども、日本公庫が再保険のような形で保険を行っております。
39ページ、これが保険の収支でありますが、下に棒が出ているところが保険の収支です。2007年に、責任共有制度ということで、民間金融機関も責任を共有する形にいたしまして、近年、収支が大幅に改善してきております。改革の成果が出ているものと考えております。
40ページ、公庫融資のほうであります。公庫融資については、民業補完という形になっているかどうか。それから、下のほうの箱に書いてあります貸し付けの利率、基準利率という調達金利プラス信用リスクを加味したものでありますけれども、そこから一定のパーセントポイントを引くという形で、政策的な配慮で特別利率というものが設けられております。これをどう考えるかという2つの論点があろうかと思います。
まず、民業補完については、41ページ、融資の伸び率で見ますと、国内銀行の融資の伸び率がマイナスになっているときに公庫がプラス、国内銀行がプラスになっているときに公庫がマイナスという形。
それから、42ページ、最近、民間金融機関との協調融資が増えてきているということ。
それから、43ページ、残高ベースでいきますと、最近、公庫のほうは漸減傾向にあるということで、民業補完について一定の評価ができるのではないかと考えております。
44ページ、基準利率でありますけれども、公庫の基準利率、国民という零細企業対象のものと、中小というもうちょっと大きな中小企業を対象のものとございますが、いずれも民間金融機関と同じようなバンドの中にいると見てとれると思います。ただ、これに特利を適用いたしますと民間金融機関よりも低い水準になってくる。
それから、45ページ、公庫始まって以来、こういったら特利の制度があるのですが、始まったときに比べまして、異次元の金融緩和で市場金利、大変低くなっております。そういたしますと、一定のパーセントポイントで金利を下げますと、顧客の負担軽減という意味では大きな負担軽減になってきているということであります。
46ページ、特利から
とありますが、様々なものに張りつけられています。これが適切かどうかということも論点だと考えております。
次、環境でございます。
50ページに行っていただいて、廃棄物処理施設でございます。右側のグラフを見ていただきますと、平成の初めから10年代にかけてダイオキシン対策が大変重要になりまして、整備が進みました。これが今、更新時期を迎えておりまして、財政需要が大変高まってきているという状況にあります。
51ページ、左下、見ていただきますと、そういう中であるのですが、1日100トン未満の非常に小さな焼却炉がいまだに半分あるということでありまして、これを人口減の中で効率化する必要があると考えております。例えば、右上のPFIを実施した例、御殿場で見ていただきますと、コスト削減効果36%、それから右下のところを見ていただきますと、大規模なものでは熱も再利用しているということであります。
それから、52ページ、ごみを出すのは有料か、無料かというのは自治体ごとに違うわけですが、3分の1が無料となっております。有料化するとごみが減ると言われておりまして、それから下の真ん中のところのグラフ、歳入としても2,500億円を超えるような歳入になる。それから、一般廃棄物の会計基準の導入も大変おくれておりまして、ほとんど導入されていない。導入したところでは、コストの見える化によって、長野市の例でありますけれども、7%程度コストが削減したということが言われております。
最後、出入国在留管理・治安関係であります。
55ページ、ご案内のとおり、インバウンド、それから在留外国人が増えております。
その中で、56ページ、今国会に新しい在留資格、特定技能ということで、更に外国人が入ってくるという状況にございます。
この間に対応するため、57ページにありますが、法務省の入国管理局が出入国在留管理庁という形で機構定員、増加してまいります。今後とも、入ってくる外国人の問題、重要な課題だと思いますが、業務の合理化は当然のこととして、財源についても考えていく必要があろうと考えております。
それから、58ページ、警察関係でありますが、来年度、再来年度、大きなイベントが目白押しになっておりまして、一時的な要因ではありますが、既存のリソースも対応して、しっかり対応していきたいと考えております。
以上であります。
〔 増田分科会長代理 〕 ありがとうございました。
それでは、これから質疑に入りたいと思います。ネームプレートを立ててお願いします。では、岡本委員からお願いします。
〔 岡本委員 〕 私からは中小企業についてですが、いろいろ補助をしてきて、効果も上がってきたと。そういう中で、実態を踏まえた補助率の見直しというのは私も必要だと思うのですが、ただ、言われたように、中小企業は企業の99%とか、従業員の7割とか、こういう膨大なこととか、あるいは社会に対する影響とか、世の中の安定性とか考えた場合に、ただ冷たくするだけで良いのかというのはあると思うのです。だから、そういった意味では、10%に消費税を上げる一環として、中小の小売店でカード払いした人に対してポイントを還元する制度とか、こういうことはやはりキャッシュレス化の促進そのものにつながったりし、結構プラスのところもあるので、そういうところも検討に値するかなと思うのです。
ただ、こういうことをやっていくと、今も景気対策が目白押しで、ほかのいろいろなバラマキとかありますので、こういうものはやはりきっちりと見ていかないといかんと思います。といいますのは、これは大きな話としていつもある2%だと5.6兆円の負担増だと。ところが、軽減税率、それから例の子ども・子育て、教育無償化ですか、これはもう3.6兆円もかかってしまっているわけですから、残りが2兆円しかない。これで景気対策をやったら、上げたのが結局はもうずっと先延ばしと同じような効果があるので、そういうところも見て、やはり財政再建という視点も重要ですので、そういうことを全体で考える必要があると思います。中小企業に対して補助率の引下げということがありますが、それは分かるけれども、そういう点でも配慮する必要があるのではないかということが一つです。
あと、出入国の話ですが、今まで入国だけだったのが出入国管理ということですけれども、これは入ってくる外国人が増えてくるという中で、こういうように変えていくということなのでしょうが、一方で留学生などが入ってきて、不法労働しているとか、どこでどう行ってしまったかわからない。要するに、制度そのものを構えるのは良いのですが、その間の、本当にきちんと途中、途中をしっかり見ていくということがないと、やはり国民の不安感というのは大変だと思うのですよね。これもちゃんとやるという中で、これからの外国人の受け入れがスムーズに行くように、運営面をしっかりしてほしいということを伝えていただければと思います。
以上です。
〔 増田分科会長代理 〕 ありがとうございます。
土居委員、お願いします。
〔 土居委員 〕 2点、申し上げます。
最初のポイントで、エネルギー対策特別会計の点、触れられました。エネルギー対策特別会計の歳出というのは、行政改革推進会議に私もかかわらせていただきながら、毎年のようにルーズな使い方が出てきて、また看板の掛け替えみたいな事業が出てくることが割と多い特別会計というように思いますので、しっかり事業を精査していただいて、一般会計留保分もしっかり確保するということをお願いしたいと思います。
それから、もう一点は出入国管理のところで、確かにこれから訪日外国人が多くなるとか、新たな外国人材を日本に受け入れるということはとても大事なことで、特に財源としては、来年から国際観光旅客税を課税することになっているわけですから、CIQ(税関、出入国管理、検疫)に国際観光旅客税を活用する、積極的に使っていくということで、財源も確保しつつ支出をしていくということでやっていただければと思います。
以上です。
〔 増田分科会長代理 〕 加藤委員、お願いします。
〔 加藤委員 〕 1点だけ。
出入国管理、外国人材の受け入れですが、これはもう当然、必要なことだろうと思うのですが、例えば短期的に見たときに様々な形で、生活保護、あるいは求職者給付等々、やはり財政負担が出てくることもありますので、その点も考えなければいけない。さらに、特定技能2号という形になりますと、在留期間が相当長くなってくることによって、国民年金に10年間加入することによって給付が可能になってくる。そういうことを考えますと、長期的に相当、財政に対する負担も出てくるだろうと思いますので、その点もしっかり考えていかなければいけないだろうと思います。
以上であります。
〔 増田分科会長代理 〕 ありがとうございます。
進藤委員、お願いします。
〔 進藤委員 〕 フィード・イン・タリフ、FIT制度の見直しの話がありましたけれども、エネルギーの価格を下げるために、今、経済産業省を中心に、入札制度を入れるとかやっておりますので、これは必須だと思います。
これに加えて、省エネの話が出ておりましたけれども、やはり省エネもエネルギー原単位、今、改善が少しサチュレートしてきているのですよね。以前は、オイルショック以降から相当、企業も、エネルギー関連費用が減るということで自主的に削減をしてきました。そういう省エネ設備もかなりの程度普及していまして、サチュレートしているのが実態だと思います。
省エネは、エネルギー費用の削減のほかに、今回、新しくCO2の削減ということにもなるわけなので、もう一段下げるためには、やはり革新的な技術開発、例えば今、水素閣僚会議というものが催されたということは聞いていますけれども、水素をエネルギーとしてどういうように大量生産して活用していくかとか、そういう革新的な技術開発のほうに省エネ補助金の資源を移す、こういうような政策設計も必要なのではないかと考えております。そこをお願いしたいということです。
〔 増田分科会長代理 〕 ありがとうございます。
佐藤委員、お願いします。
〔 佐藤委員 〕 ありがとうございます。
まず、20ページからですけれども、温対税が入って予算が増えて、何か変なことに使っているというのは、温対税に限らず、例えば森林環境税とか、先ほどちょっとお話が出ましたが、国際観光旅客税とか、新しい税金、目的税や特定財源が出てくると、どうしても使い道が甘くなる。多分、この省エネルギー関係予算以外でも言えると思うので、財審としてちょっと注意するべきは、そういう目的税関係で充当されて、目的税を財源に充当されている予算というのは、果たして本当に効率的に使われているのかどうか。特別会計と発想はあまり変わらないと思うのですよね。あれも、ある種、特別な収入があって使われていることが多いので、ちょっと重点的にチェックしておいたほうが良いのかなという気がします。具体的には、先ほどお話があったようにAIとか、IoTとか、本来、これは税金を使ってやるべき仕事なのかどうかということも含めて、予算執行のところを重点的に見るほうが良いのかなと思いました。
それから、FITですけれども、12ページの未稼働のものはもう良いのではないかという議論があって良いと思うのです。つまり、認定したけれども、やらないのだから、もう使わないよね、来年いっぱい使わないならもうなしねと、私は、それで良いと思うのです。やはり何事にも有効期限があるわけですから、期限を過ぎてしまったのですと言って切らないと、どうせこれ、高い価格で認定を受けたので投機的に動いているだけだと思うので、であれば、この2,350については、もう来年1年間とか、あるいは2020年度までに稼働しなければなしと、そういったやり方はあるのかなと思いました。
もう一つ、中小企業に一言だけですけれども、この間、農業でもそうだったと思うのですが、経営者が高齢化しているときに、これからちょっと中小企業政策、農業もそうですが、出口戦略が求められてくる。農業の出口は集積化だったと思うのです。多分、中小企業の出口は、1、廃業、2、M&A、もちろん息子さんとか誰かいれば事業承継かもしれないのですが、となってきたときに、おそらく中小企業庁がやっているいろいろな補助は、経営を続けることに対して補助しているのです。止めることに対する補助ではないのです。なので、もし補助金支援を受けたければ続けざるを得ないという状況なのだと思います。
もちろん、止めれば国民年金とか、今だったら小規模企業共済とかあるのですが、やはり退職後の糧というか、収入源がかなり限られているということで、結果的に、続けてしまっていると言うとあれですけれども、経営が続くというケースもあるし、それを結局、支援せざるを得ないというケースもある。本当は中小企業戦略として考えるときには、もちろん育成というのも一面ありますが、もう一つは出口戦略、止めるという選択肢に対する支援、いろいろな廃業に対する支援ですかね。そういったものも、やはり視野に入れていく必要があるのかなと思いました。
以上です。
〔 増田分科会長代理 〕 ありがとうございました。
それでは、このセクションはこの程度でよろしいですね。
そうしましたら、次、防衛に入りたいと思うのですが、私の記憶だと、たしか昨年の防衛は質疑も含めて10分あったか、ないかぐらいだったと思うのですが、今日は、あと45分ぐらいありますので、内野主計官からしっかりと説明していただきたいと思います。よろしくお願いします。
〔 内野主計官 〕 ありがとうございます。防衛でございます。
1ページ目をおめくりいただきまして、春の財審でも申し上げましたが、今年は31年度から5年間の装備品の購入の計画を立てる、いわゆる中期防衛力整備計画、中期防の策定の年でございますので、これに向けた論点を3つ挙げております。
1ページ、おめくりください。論点を挙げながらも、2ページ目のところ、我が国周辺の安全保障環境、もう御案内のとおり大変厳しい情勢でございます。殊に、朝鮮半島のミサイル、小康状態とはいえ脅威は全く変わっておりませんし、南西諸島の防衛も待ったなしということ。それから、この資料の一番下のところを御覧いただきたいのですが、周辺国による軍事力の近代化・強化、これはAIを入れた自律的兵器から始まって、宇宙、サイバー、電磁戦等、相当程度の進展が見られるところを我が国はキャッチアップしなければならないと、こういう情勢にあろうかと思います。
次のページです。それでは、次期中期防や防衛関係費の水準についてどう考えるか。なかなか定量的な議論は難しゅうございますが、定性的にはちょっと言いたいことがあるということで、4ページ目でございます。これは、戦前からの債務残高をGDP比で見た、調査課がつくってくれた表でございます。戦前の日清、日露、第1次大戦のころの政府債務残高がこれで見てとれようかと思います。日露戦争のときの戦費調達の高橋是清の苦労話は語りぐさなわけでございますが、現状の債務残高、これが一体、戦争できる国力の状況であろうか。いわば有事のための防衛力整備、有事のための、例えば災害対応、国土強靱化ということがございますが、そのときに財政が有事モードになったとするとどうなるか。有事に備えるのであれば、財政だけ平時モードということではないのではないかということでございます。
次のページ、御覧ください。先人たちの言葉をちょっと引いてみております。高橋是清は「やはり国防と一国の、この国の経済との調和」「国防の程度は国民の財力に耐える程度のもの」、あるいは加藤友三郎、ワシントン軍縮会議の全権大使でございますが、「平たく言えば金がなければ戦争ができぬ」「武備は資力を伴うにあらざればいかんともするあたわず」と。ただ、この時代は、日本はまだ軽工業の時代でございまして、ここでおっしゃっている国力というのは、おそらく国の経済力のほうを指しておるのだろうと。
では、経済力はGDP世界3位の日本はどうであろうかということが、次のページの議論でございます。6ページでございます。国力というものは、経済力のほかに当然、財政力もあるということで、黄色の三角は国防費の対税収比でございます。これはマイナスではございませんで、あくまで税収比でございます。租税負担率が青の棒グラフになっていると、そういう表でございます。真ん中あたり、赤い四角で囲っております米国を除いたNATO平均が、税収比で見ますと4.7%の国防費を支出にしているのに対して、日本の場合は4.9%ということで、NATOと比べてGDP比で少ないではないかとよく言われるのですが、税収比で見るとよく頑張っている。消費増税をしても、これが4.7%ぐらいになるという構造でございます。
当然、現代戦は国家間の総力戦は想定しがたいわけでございますので、しっかりとした抗堪性とか、弾薬、燃料の備蓄等をもう少しやっていくことによって、一時的な紛争、フリクションに対抗することは十分可能かと思いますが、他方で一般論として、抑止を含めた実効的な防衛力整備というのは健全な財政あってこそということはやはり言えると。この表から読み取れるところは、今後は国民負担率との関係も考えていく時代に入ってきたのかもしれないと、こういうことでございます。
7ページ目でございます。では、そういった国民負担率の中で歳出構造はどうなっているか。御案内のとおりのものでございますけれども、左側の円グラフで御覧いただきますと、防衛と、文教・科振費と、公共が5兆円の固まりのクラブということになってございます。これ、右側の主要経費の伸び率で見ていただきますと、社会保障関係費の1.5%を除きますと、大幅に伸びておるのは防衛関係費のみということでございまして、他の経費は軒並みマイナスか、横ばいというところでございます。こういった他の経費とのバランスも慎重に見て、何よりも国民的な信頼や理解を得ながら、防衛費の増強はやっていく必要があるということでございまして、この国民的な理解と信頼という観点から、幾つか次の論点に参っていきたいと思います。
論点でございます。次期中期防策定に当たり、国民に対する説明責任の観点からということでございます。
もう一枚おめくりいただきまして、9ページ目でございます。中期防衛力計画というのは、ここに概要が書いてございますが、左側の構成というところが全体の中身を概略したものでございますが、整備規模として別表、そして所要経費が書いてあります。真ん中に別表を掲げました。何を幾つ買うということが書いてございます。それから、右側に所要経費、5年間の総額の経費が書いてございます。ちょっと何か足りないということでございます。
すなわち、各年度の歳出額は出ているのですが、これは特注品を製造請負で発注しますので、納入されるのが5年後とかになってまいりますと、29年度や30年度に契約したものは後年度にまだ支払いが続いていく、その部分について何の管理もない。つまり、新規後年度負担の管理がないものですから、今中期計画で買ったものが31年度以降の歳出化経費として膨らんでしまっている。これは、なかなか管理可能なものではないので、やはりローンを組んで買い物する以上は、もうちょっと計画的にやれということを中期防に盛り込むべきではないか。つまり、新規後年度負担についての何らかの御挨拶が要るであろう。
もう一つ、装備品の総量は、これを買いなさいと書いてあるのですが、単価が書いていないのです。なのに総額はある。もちろん、物の値段でございますので、鉄鋼の価格が動くとか、いろいろありますから、人件費も変わりますので、単価を閣議決定しろとまではさすがに言えないのですが、ここで数量を買うぞと閣議決定されていますと、とんでもなく値段が上がったものも、いや、この数量を買うことになっていますからと、私も公務員ですので、予算措置を片目をつぶってしなければいけない。非常に不健全でございます。
次のページで幾つか説明します。まず、10ページ目でございますが、新規後年度負担額でございます。30年度予算での歳出化経費、いわばローン、割賦払いの予算が2兆円弱、1.9兆円ぐらいでございます。25年度ぐらいまでですと、大体、管理可能な水準であったのですが、どーんと伸びてしまっておる。近年、29年度、30年度は少し抑え込んではみたのですけれども、なかなか尺に合わない。やはりここは、何らかの歯止めを中期防上も書くべきであろう。
次のページ、11ページ目でございます。実は、積算単価というのは積極的に防衛省は公表していなかったのですが、情報公開請求が来れば出さざるを得ませんという判断を防衛省がしてくれましたので、この際ですのでオープンにいたしましたのが、この26中期防計画上の単価でございます。25年度価格でということではございますが、為替の影響額は抜いております。ただ、消費税が上がった分はオンされておる単価でございます。
右側に目をずらしていっていただくと、クリーム色に塗ったところは平均単価が計画単価より上がったもの、そして平均単価より最終単価が上がったものがオレンジで塗ってあると。軒並み値上がりが、しかも値上がり幅が何十%というものがごろごろしておると。
この状況の中で、真ん中の数量というところを御覧いただくと、計画に対して達成したものと足りないものとある。毎年度の予算編成で、これが足りないと、財務省が切った、けしからんと言われるのですが、ちょっと待ってくださいと。コスト管理を失敗した防衛省のおかげで数量を減らざるを得なかったものは財政当局の責任でしょうか、総額においてはきちんと管理をして、歳出的には計画をしておるわけでございまして、やはりこの計画単価というものは、閣議決定の対象で縛ることはできないまでも、しっかりと明示して説明責任を果たし、そして、それに向けたコスト低減努力を続けていくべきではないかということでございます。
論点でございます。調達改革の一層の強化に向けて、更に何を行うべきか。このように、コスト管理をちゃんとやらなければ、防衛費を増やすことについての国民的な理解もなかなか得られない。自衛隊の現場の対応は頑張っておりますけれども、市ヶ谷に対する不信感が募ってはいけませんので、よほどしっかりとした調達改革をやっていただく必要がある。そして、装備品のメリハリづけも考えなければいけないということで、この2点を申し上げます。
まず、調達改革でございます。13ページでございます。調達改革は、今まで財審でも、軽機関銃の価格がアメリカ軍の7倍であるとか、もろもろ御説明をしてまいりました。そうすると、防衛省は、わかりました、それを直します、でもコストダウンはこのぐらいしかできません、どうしますかと。いや、違うのだ、あれはただの例示だと。私どもからの指摘事項というのは、もうちょっと大幅な、一般的なことを言いたいということで、防衛省の各部局が一丸となって調達改革をやれという指摘をさせていただきたいということでございます。
各幕僚幹部、左側の緑色のところでございますが、ここは各幕にそれぞれの職種がございます。普通科とか、機甲科とか、それぞれ大変な、苛酷な訓練を続けておられて、殉職者も出ているようなレベルでございますが、そこは自分たちの部隊のためにということで、これが要る、これが要るということが積み上がって、各幕からボトムアップでやってくる。しかし、陸・海・空が一体となって何とか国難に立ち向かおうという時代でございますので、やはり統合運用の観点から、トップダウンで優先順位をもうちょっと決めていくべきではないか。南西の島々とか、ミサイル防衛という優先順位があるのであれば、当然それに伴って、必要性があっても優先順位が落ちるものはあろうと。そここそ決めるのが、まさに大きな判断であろうと考えてございます。
あるいは、内部部局につきましても、先ほどの単価の議論等もございますし、情報システム分野などについてもまだまだ問題があるということをちょっと見ております。そこはオミットいたします。
防衛装備庁がやるべきことは後から御説明します。
面白いのは防衛監察本部でございまして、これは実は防衛施設庁の談合事件を契機に法律設置ででき上がったものでございます。巨大な買い物官庁で、しかも入札談合ということに対応してできたものですから、実は訓令上、予算の適正かつ効率的な執行の担保というものも監察本部の任務となっております。もちろん非違行為中心ですので、競争性の確保とか、間接的なものをやるわけでございますが、実は防衛監察本部、一者応札を毎年8,000件ぐらい抽出してチェックをしてくれておるということでございましたので、大変心強い、応援したいから中身を聞かせてくれ、何を指摘しましたかと言いましたら、モップ等の清掃用具の一者応札と。ちょっと待ってくれ、モップを見る前に見るものがあるだろうと。
例えば、システムなどですと、大手ITベンダーの型番を指定して、この汎用PCを入れないとだめですというような入札仕様書ができてきたり、これはもう一者応札せざるを得ないです。他社は入りようがない。汎用PCですから、どこの会社でも良いのですが、なぜかその特定会社のPCを指定している。そういうことを何でチェックしないのかと言いますと、システムの知見がございませんと。防衛監察本部さん、応援しますから頑張ってやりましょうということで、ここはメリハリで言えば大いに支援をしていきたいと思っております。
14ページを御覧くださいませ。組織を挙げてということで、私、老舗と申しますか、原価低減の元祖と言って良いかと思いますが、トヨタ自動車さんの決算発表での社長の挨拶を伺って感動しましたので、引いております。トヨタも、今、いろいろ苦しいところもあると聞いておりますけれども、下線部でございます。「トヨタの真骨頂は、トヨタ生産方式と原価低減」「原価に適正利潤を上乗せして販売価格を決めるのではなく、我々にできることは原価を下げることだけだ」というようなことが縷々書いてあります。一番下の下線部をもじって申し上げれば、防衛にかかわる全ての人が全員参加で、地道に、泥臭く、徹底的に原価低減を重ねてほしいということが願いでございます。
ただ、これを求めたいのは、現場の隊員はもう既にぎりぎりのところでやっておるわけでございます。正面の装備ばかりを注力して、後方を軽視するという旧軍以来の悪弊がまだあるのではないか。メディアなどを見ますと、トイレットペーパーを買うお金がないので、隊員が自腹でトイレットペーパーを買っておると。それで財務省が予算を切っているからだと言われると、ちょっと待ってくれ、それはさすがに配分の問題でしょうと申し上げたいところがございます。これは、あくまで現場の駐屯地の隊員をいじめるということではなくて、市ヶ谷にいる方々にもう少し頑張ってほしいという趣旨でございます。
それから、防衛装備庁、まさに買い物の総本山、15ページでございます。防衛省改革ということで、真ん中のブルーのところでございます。装備取得業務を一層、公正、効率的かつ最適化された形で行うよう、新しい官庁を設置したということでございます。
防衛省設置法の改正ですので、国会での審議がございまして、当時の防衛大臣の答弁をちょっと見てみました。3点ほどおっしゃっていまして、ライフサイクルコストを通じてプロジェクトを一元的、かつ一括して管理していくということ。それから、2点目で、コスト情報をデータベース化して、この数値を用いた統計的な分析でコストをしっかりと推計、評価していく。3点目、装備庁に教育部門も設置しまして、いわばプロフェッショナルの育成を行っていくと、こういうことを国会でお約束になっておられるわけでございます。
では、できてから4年ぐらい経っていますので、どうでしょうかというのが16ページ目でございます。まず、ライフサイクルコストの算定でございますが、今、15品目を重点管理しておいでです。うち、現行基準よりコストが増になったのが10品目、結果が全てでございます。これはできていない。
それから、コストデータベースをつくって、きちんと管理しますというお話でしたので、予算執行調査をやってみました。調査結果のところ、直接材料費や加工費等の金額を入力しているだけ。これは何を申し上げているかといいますと、(注)に書いてありますけれども、潜水艦建造にかかった直接材料は総額幾らですとしか入力されていないのです。これは全く意味をなしません。高張力鋼板、1トン当たり幾らで買いましたとか、どのゴムを、どういう品質のものを幾らで買いましたということがないので、これはコストデータベースの体をなしません。データに基づくコスト管理の取り組みは、かけ声倒れと言わざるを得ません。これは、会計検査院もこの秋に指摘事項として言っております。
17ページ、御覧くださいませ。人材の積極的な育成です。防衛装備庁に、研修体系を見せてくれということで説明を聴取しましたところ、ほぼ全て座学でございました。工場の現場を見ないで、原価低減の議論が本当にできるのであろうか。プロジェクトマネジャーというのが15人おりまして、これが開発から廃棄まで全て一気通貫でコストを見るということになっておりますが、15人中、研修すら受けていない人間が4割、6人です。とんち話の柿の見張り番みたいな状況でございます。見ていろと言われて、見ていましたら柿を持っていかれた。しかも、全く素人ですから、渋柿か、甘柿かの区別もつかない。ちょっとこういうことでは困りますので、一番上の四角の一番下の丸でございますが、コスト管理に精通した民間出身者、公認会計士、米軍の専門家など、外部人材ももっと活用するべきではないか。閉じた世界で何とかしようとしても、これはお雇い外国人でも構わないからやるべきではないかということでございます。
最後に、発注側の問題として18ページのところでございます。これ、ちょっとテクニカルなので、かいつまんで御説明しますが、防衛装備品、特注品ですので、適正な価格を算定する必要があるということで、予定価格訓令というものを組んでおります。左側のイメージというところで御覧いただきますと、防衛装備品の材料費に加工費を足して、そこに本社経費とか、適正利潤を乗せるということになっておるわけですが、予定価格訓令、子細に見ていきますと加工費のところがちょっと工夫されています。この加工費は、工場単位でやってください、課の単位でやってくださいと、企業の判断でようかんの切り方が決まっているのです。
例えば、ある工場単位でやってくださいと言われましても、その工場で民需のものも、防衛需要のものもつくっているわけです。その工場トータルでの期間費用、民需の設備投資とか、研究開発とか、工場の人件費とかが全部乗っかってきた期間費用を総額しまして、それをトータルの期間工数、工数ですので従事時間数ですね。これで割り算してレートを出しまして、このレートに防需でかかった工数を掛け算すると、こういう計算をするのです。
そうすると、その工場で大量生産のものをやったり、研究開発した成果を入れていくと、設備投資とか、研究開発投資がものすごく膨らんでくる。他方で、機械化の時代でございますので、工数はぐっと小さくなるわけです。他方で、防衛装備品の場合には、以前の財審でも御説明しましたが、初度費と申しまして、設備投資は100%国が払った上に、それに利潤まで乗せて差し上げているのです。なので、期間費用は小さいところに、工数は少量生産なものですから、非常に手数がかかっている。これで割算して防衛の工数を掛けると、どう見ても割り勘負けするわけでございます。いわば、民需の部分を防衛装備品の単価の上昇で賄って差し上げているという構造になっておるわけでございます。
これは、おそらく高度成長期の労働集約型の製造ラインでわーっとやっているころには、そこに一緒に乗せてもらったほうが、結局、コストダウンできるから、そういう時代には合理性があったと思うのです。ちょっと今の時代にはそぐわないのですが、漫然とこれでやってきてしまっている。国内製造業の空洞化が叫ばれて久しい中で、いわば民需の減少を装備品の単価の上昇で賄うという非常に不健全なことになっております。例えば、航空機産業を国が支援すべきというのは、私もある意味で日の丸航空機でよろしいかと思いますけれども、そうであれば別途の対策でおやりになるべきで、防衛装備品の単価に乗せてやるというのはどう考えてもおかしいと。やはりここはよく考えてほしいということでございます。
19ページ目、受注側の構造がどうかということでございまして、これは春の財審でもビッグピクチャーでお示ししましたが、米国、欧州は合従連衡が進み、航空機産業はボーイングとエアバスの一騎打ち、エンブラエルもボーイング傘下に入りました。日本のほうは、航空機メーカーというのは、この3社に新明和さんがあって4社体制で、それぞれに分散投資している。とてもじゃないですけれども、これで競争に勝てるでしょうかと申し上げました。
米国や欧州がどのような産業政策をとったか、もうちょっと調べてみました。20ページでございます。まず、アメリカでございますが、アメリカはクリントン政権下の93年の春に、国防総省の高官が防衛産業の大手15社の最高責任者をお招きしまして、夕食を開催したそうでございます。これは、その後、業界で「最後の晩餐」と名づけられた、語りぐさになった夕食だったそうでございます。ここに書いてございますとおり、業界の過大な能力を保持するつもりはない、業界再編は自分たちでやってくれ、我々は関与しないというようなことをおっしゃって、これを契機に、この15社がロッキード・マーチン、ボーイング、レイセオン、ノースロップ・グラマンという4社に収れんしていった。この4社は、もっと元をたどりますと80年代後半には51社あったということで、このような巨大なコングロマリットをつくることで、様々なシステムインテグレーション能力を磨き抜いてきて、今日のアメリカの防衛産業があるということかと思っております。
それから、キャメロン政権下では何が行われたかということでございますが、これは国防省が出した白書に書かれてございます。白書では、装備品のバリュー・フォー・マネーが強調され、防衛産業の利益よりも軍の要求を満たすほうが重要であると、当たり前なのですが、そういうことが言われておるということで、世界及び国内の市場でオープンな競争による装備品の調達を行うと、国産偏重であったものを大きくかじを切った。シティの改革、ビッグバン、あるいはウィンブルドン現象みたいなことが防衛産業にも入ってきたということかと理解をいたしております。当然、競争力の向上とともに、合理化が目指されるということで行われていったわけでございます。
他方で、タフ・ラブという、愛のむち的な概念と解釈されていますが、このラブとされる部分が一番下の下線部でございます。国防予算の1.2%を研究開発投資、中小企業支援と輸出促進。輸出促進は、武器輸出三原則を変更しました。中小企業支援は、先ほど斎須主計官からも説明がありましたように、なかなかジェネラスにやっておると。研究開発費というのは、一番下の(参考3)でございますが、日本は既に2%やっているということで、愛はたっぷりあるわけでございまして、あとはむちの部分をどうするか。やはり防衛産業政策というものを、もうちょっと真摯に考える必要があろうかと思っております。
21ページでございます。防衛省自身も、防衛生産・技術基盤戦略で再編の必要性というものはよく認識しておるようでございます。他方で、防衛産業政策というのは経済産業省でございます。経済産業省の顔がなかなか見えませんでしたが、「アビエーション・ウィーク」をめくっておりましたら出てまいりました。財審の委員でもいらっしゃった大宮会長は、3月に経済産業省の審議会で日本版エアバス構想というものを表明しておられまして、これは是非やっていきたいという意欲を「アビエーション・ウィーク」の取材に対しても答えていらっしゃったそうでございます。スバルはコメント拒否、川重は回答しなかったという中で、経済産業省も同様の考えであるということでございます。ただ、経済産業省にはツールがないわけでございますので、是非防衛省が発注の仕方を工夫することによって経済産業省としっかりと連携をして、防衛産業をより強靱な方向に、コストダウンをさせながら持っていくことができないかと、これを求めていきたいと思っております。
それから、22ページ、装備品の優先順位づけ、調達改革とともに装備品のメリハリづけという観点で、ちょっと米軍の取組を見てみました。これは、先ほど申し上げましたとおり、トップダウンでちゃんと優先順位をつけてくれということは、まさに米軍がやっていることでございます。Joint Capabilities Integration and Development System(JCIDS)というものを2003年に米軍は導入していますが、左下のオレンジのところでございます。例えばということで、陸軍が開発した自走砲を、これからは戦闘爆撃機と誘導ミサイルの組合せのほうが展開が容易なのだから、そちらにするということでストップになったとか、こういうことが起こっているわけです。もちろん日本の場合、戦闘爆撃機はまさに専守防衛という国是の中でできませんので、それなりの火砲なども必要であろうということは確かに戦術的にはわかりますので、これほどドラスティックではないにしても、優先順位づけは防衛省においてよく議論をいただきたいということであります。
もう一つ、23ページでございます。優先順位づけの際に、島嶼防衛とか、ミサイル防衛、あるいは宇宙、サイバー、電磁戦といった議論で優先順位があるから、それ以外のものは少し我慢しましょうということだけでなく、ちょっとコストパフォーマンスとか、新しい技術の導入をもっと真摯に考えてほしい。ドローン活用が、もう諸外国ではほとんどコモディティー化しつつありますが、日本は遅々として検討段階にあると。偵察用オートバイとか、オブザベーションヘリなんていうものは非常に高額でございます。ドローンのほうが安価で、かつ人材の損耗もないということですので、これはもっと早期に、早くに導入を決断するべきではないかということ。
それから、単位当たり輸送費、実はアメリカの国防総省に監察官室みたいなところがございまして、そこが全ての国防の航空機の1機1時間当たりの運用コストを計算して出しております。ライフサイクルコストの管理というのはどうしても散漫になりがちでございますので、こういう単位時間当たりのコスト管理みたいなものをちょっと徹底してもらったらどうか。C-130Jが61万8,000円、C-17という戦略輸送機、大きいものが150万円に対して、この中間サイズのC-2が274万円もかかる。これは、やはりコストダウンをもっと頑張ってほしい、こういう見える化はもうちょっと進めてほしいということでございます。
まとめの部分でございますが、25ページでございます。論点、
、
の御挨拶を、今、申し上げましたようなことを整理してみましたが、論点
の調達改革でございます。現中期防による達成額、7,700億円というのは以前も御説明したと思います。これは、防衛装備庁が正式発足して、29年度と30年度は2,000億円を達成してございますので、是非次期中期防は、「骨太の方針」でも安倍内閣における歳出改革の努力を継続するということになっておりますので、この2,000億円を次期中期防は5年間、つまり1兆円以上のコストダウンを是非求めていきたいと思っております。
私からの御説明は以上でございます。
〔 増田分科会長代理 〕 ありがとうございました。
それでは、以降、質疑にしたいと思いますので、ネームプレートを立ててお願いします。一番早く立ちましたので、それでは倉重委員からお願いします。
〔 倉重委員 〕 時間があるようなので、3点ばかりちょっとお聞きしたいのですけれども、まず1つは最初の国際情勢認識です。厳しい状況は変わらないと思うのですけれども、朝鮮半島情勢は若干、雪解けが進んでいる。これに対して、多少のそういう認識があっても良いのではないかと思います。というのは、今、お話をお聞きしていますと、どちらかというと、私の印象ですが、厳しさを全面的に出すことによって、むしろ防衛省サイドの代弁者的な印象をちょっと受けたので、高橋是清さんではないですけれども、それは別の立場から、むしろ抑えるというような印象のある情勢認識のほうがふさわしいと思いました。
それから、防衛主計官の御苦労が非常によくわかりまして、勉強になりました。しかし、単価と新規後年度負担、これは中期計画の場合のみの話ですかね。それが明らかにされずに、どうやって予算査定を歴代主計官はされてきたのかという素朴な疑問を感じたのです。今回の主計官の、豪腕で出させたのか、それともそうではないのか。それから、よくアメリカの、MFSでしたっけ。
〔 内野主計官 〕 FMS。
〔 倉重委員 〕 FMSね。あの値づけなどもなかなか難しいと思うのですが、その辺の御苦労話があったら一つお聞きしたい。
もう一点は、すみません、ど忘れました。結構です。今の2点だけ。
〔 増田分科会長代理 〕 少し時間があるようではありますが、とは言いつつ、札がいっぱい上がっているので、実はあまり時間がないので、内野主計官、簡単にお答えいただいて、それで次に行きます。
〔 内野主計官 〕 国際情勢認識にもろもろの御意見がありますので、そういうお話があることはよく承りますが、防衛大臣答弁等々、官房長官答弁等も踏まえながらの御説明をいたしております。
それから、これまでの歴代は、中期防単価というものは認識した上で、ただ高性能化しているので値段が上がってしまっているのですというような説明で、なかなか苦しい議論をしてきたというのが実際のところでございます。新規後年度負担も、それぞれ歴代、苦労してきたと思います。
それから、FMSにつきましては、昨年8月31日に、当時、小野寺防衛大臣がマティス国防長官に対して直接、直談判をしてくださいまして、それ以降、政治的に極めて大きな動きがございました結果、FMSは昨年の予算ベースで300億円ほどコストダウンを達成しております。なので、これはもうアメリカの言い値ではなくなっておるという認識でおります。
〔 増田分科会長代理 〕 それでは、今、札が上がっている人までとしたいと思いますので、次は葛西委員、お願いいたします。
〔 葛西委員 〕 1つは、防衛の環境、安全保障環境、これを見ますと防衛省作成資料ということになっているのですが、先ほど口頭で説明された中では多少厳しいことも言われていましたが、これは我が国周辺というところに限ったような話になっています。でも、実際には、私もアメリカ人やイギリス人の友人もいますが、こういう人たちの話を聞くと、今、日本の置かれている立場は世界で最も危険な最前線にいるということが共通認識です。北朝鮮の核は、除去できるかどうかという見通しは立っていません。中国は軍拡をやり、海洋並びに陸上で膨張政策をとっている。アメリカがそれに対して抑止力を強めて、これから冷戦状態に入っていこうというところです。したがって、防衛の環境は極めて厳しいということを、幾ら強く感じても感じ切れたことにはならないような環境にあると思います。
そういうことを前提として、では防衛の必要レベルをどうするのだというところで、ここに資料が幾つか付いているのですが、これは必要な観点や認識が欠けている部分がありまして、一体そのころの防衛予算はどのぐらいのウエートを占めていたのかということ。あるいは、その当時の軍事力というのは実際に行使して戦う前提のものでした。これが今は、戦うことを前提としない、抑止力をいかに持つかということが大事になっています。そうすると、アメリカと日本の一体化した同盟の力をどう強くするかという観点が、防衛予算の中にも当然、入っているべきだと思います。
それは、アメリカの核抑止力を我々は当てにしているのですが、では北朝鮮の地域核に対して、一体、日本はどれだけの刺し違え要素を持っているのかというところは決まっていません。イスラエルとイラン、あるいはパキスタンとインドは決まっている。しかし、北朝鮮対日本の間では決まっていなくて、北朝鮮は中国のいわばエージェントとして動いている可能性が高いと私は考えています。それに対してどうするかというのは、もうアメリカと日本の間の不動の決意を見せしめるしかないということで、安全保障というのは抑止力だと、抑止力というのは決意と瞬発力だというところにウエートを置かなくてはいけないと思います。
そうすると、高橋是清とか、加藤友三郎の時代の話なんていうのは、そもそも参考資料として挙げること自体、不見識だろうという感じがします。その辺のところをまずきちんと整理して、どのレベルが必要なのだというのは、予算の中における、あるいは税収における一定比率というのではなくて、予算全体を見た上で、どのぐらいのウエートを防衛に置かなければならないか。同盟の維持のためには、どのぐらいの防衛努力をアメリカにしてみせなければならないか、どれだけの決意を示してみせなければならないかということを明らかにしていくことこそが防衛政策であり、防衛予算の在り方だと私は思うのです。
それから、中期防の単価がわからないのは当たり前です。当社の計画だって、そんな先の単価などわかりません。ただ、書いておいて目安にするということは良いかもしれません。
それから、調達改革は大いにやったら良い。ただ、調達改革を進める過程で、日本の防衛産業の技術力とか、製造能力を殺してしまいますと、アメリカにとっての日本の価値が下がり、安全保障努力の一部分が欠落することになりますから、その辺のところは時系列をよく見た上で、来年度予算をどうするかという話と、5年後どうするかという話と、やはり仕分けて議論をしていただくと良いのではないかと思います。
以上です。
〔 増田分科会長代理 〕 ありがとうございました。
それでは、土居委員、お願いします。すみません、ちょっと時間の関係で手短にお願いします。
〔 土居委員 〕 2点、手短に。
11ページの中期防での単価という話は、総額が決まって、数量が決まって、後から単価が割り出されるような形で今の中期防は決まっているということですから、少なくとも国民にどれだけ公開するかとか、先ほど主計官も閣議決定するかということはあるとはいえ、少なくとも予算の総額を決めるところで、どれぐらいの単価を見込んでいるのかという数字を、内部的にでもしっかり見定めながら、総額なり、数量を中期防で決めていただきたいと思います。何も単価が、後づけで決まるみたいな形ではないように、目安の数字ということで考えていただけると良いのではないかと思います。
それから、16ページの防衛装備庁の件ですけれども、やはりライフサイクルコストも緊張感を持ってコントロールしていただきたいと。厳しい安全保障環境なわけですから、その厳しさと同程度に、ライフサイクルコストに対しての管理もしっかりやっていただきたいと思います。
以上です。
〔 増田分科会長代理 〕 それでは、冨田委員、お願いします。
〔 冨田委員 〕 主計官より、非常に力のこもったお話をありがとうございました。
中期防、そして防衛関係費に関して、その水準についてよくGDP比でどうだというようなお話があります。それに対して一つの明快なお答えをいただいたように思いますが、加えて、GDP比で水準を議論するときに大きな問題がございます。それは、財政健全化と同じように、楽観的な見通しに傾きがちになってしまうという問題です。成長実現ケースとベースラインケースで比較いたしますと、次期中期防の2019年から23年までの5年間、例えばGDP比1%ということで仮に計算いたしますと、累積で7,000億円も違うわけです。だから、そういうことも十分に考慮する必要があると思います。
したがって、次期中期防におきましては、9ページにありますような別表で具体的な議論をする必要があると思います。交付金の議論、私、何回も批判いたしました。それは、大括りの予算だから問題なのです。それと同じことが、戦前の臨時軍事費特別会計で、陸軍費1本、海軍費1本の予算なわけです。だから、大括りの多年度予算の問題というのは、やはり国民に全てを見えなくしてしまうという危険があります。
したがいまして、この別表のように、具体的な個々の主要装備品について整備規模をきっちりと明記すること。ここでは、陸上、海上、航空と分けてありますけれども、統合運用というのは現在の中期防でも大きな課題だったわけでして、そういうことを考慮しながら単価のことも、やはり国民への説明責任なので明確にする。後年度負担もそうだということで、やはり別表というもので、単価×数量という一番オーソドックスな予算編成に立ち返って、その基本を守る必要があると思います。
〔 増田分科会長代理 〕 それでは、老川委員、お願いします。
〔 老川委員 〕 私も、基本的な情勢認識は葛西委員とかなり共通するところがありまして、朝鮮半島一つとりましても、米朝間はかなり緩和の雰囲気はあるけれども、この先、またどうなるかわからないし、仮に今までの展開から、あるいはアメリカ大統領の発言等から見ると、例えば緩和して在韓米軍は縮小するとか、そういったようなことも言われたりしています。そうなると、それとあわせて日本も状況が楽になるかというと、むしろ逆になることもあり得るので、やはり統合運用といいますか、要するにこういう情勢、あるいは当面予想される状況の中で、どういうことが必要なのかという統合運用の観点から、どういう装備が必要なのかということを考える、そういう順序だろうと思うのです。
あわせて、やはりそれはアメリカとの役割の分担といいますか、日米同盟で対応するしかないわけなので、そうするとアメリカの軍事力と日本の防衛力をどういうように組み合わせて、どういう役割をそれぞれが果たしていくのかということを念頭に置いた装備計画でないと食い違いが出てくる。したがって、優先順位についても判断が変わってきてしまうと思うのです。28ページを見ると、島嶼防衛などは優先度が低いのではないかということも書いてあるけれども、そうなのだろうか。私の読み違いかどうかわからないですが、二十何ページだったかな。
〔 内野主計官 〕 25ページ。
〔 老川委員 〕 25ページでしたか。ああ、そうそう。必要性が認められても優先順位が低いものという例として示していると。
〔 内野主計官 〕 ちょっと日本語が下手ですみません。島嶼防衛や弾道ミサイル防衛を重視するので、それをちゃんとやっていくとすると、それ以外のものでは優先順位が低いものも出てくると、そういうちょっと不器用な記述に。
〔 老川委員 〕 そうですか。それでは、ちょっと読み違いだと思うのですが。
〔 増田分科会長代理 〕 島嶼防衛については優先度が高いと、そういう認識です。
〔 老川委員 〕 そういう意味ですね。それならわかりました。そういうように、やはりメリハリのつけ方が、全体を見た上でやらないと変わってきてしまうと思いますので、そういう観点からいろいろ予算編成も、装備計画も検討していただきたいと思います。
以上です。
〔 増田分科会長代理 〕 冨山委員、お願いします。
〔 冨山委員 〕 皆様の議論はそのとおりだという前提で、調達のところだけちょっとコメントすると、私、今、東電の役員をやっているので、調達の話は何となくリアリティーとしてわかるのですが、調達改革を議論するときに、調達、購買担当と相手のところだけで議論をすると極めて不毛な、要するに下請叩きにみたいになってしまいます。これは、実は持続性がなくて、多分、ロス・ロスになる。
東電は、おかげさまで大分コストが下がりました、調達も合理化されました。だけど、その中で、実は一番ペインフルな思いをしているのは東京電力自身です。要は、自己改革をしないと、コストなんて合理的に下がらないのです。だから、それを与件として調達だけ頑張れとやってしまうと、多分、ここに意図していることと反対の方向に行ってしまって、単なる下請叩きになってしまって、要は質が下がるし、いろいろな意味でおそらくコストは下がりません。
ですから、ちょっとトヨタの話が出てきましたけれども、要するに必要なお金を使わなければいけないわけで、戦略的にそこにお金を回そうと思ったら、やはり昔から成り行きでやっているいろいろな問題がきっとあるはずなので、そこに自分自身でどこまでメスを入れるかが勝負だと思うので、そこは是非とも突っ込んでもらいたいのと、そこで知恵と人材が必要であれば、やはり積極的にそういう人に来てもらう。東電も、今、トヨタからミスター・カイゼンの人に来てもらって、やはり彼の貢献はもう絶大なので、そういったことを是非やってもらいたいと思います。
〔 増田分科会長代理 〕 それでは、遠藤委員、お願いします。
〔 遠藤委員 〕 厳しい財政事情の中で、各省庁予算において、主計官をはじめとする皆様が切り込んでいただいたおかげで、ある種の、危ういながらの均衡が保たれているのだろうとは思っております。それを前提としながらも、今日の話題の中で、エネルギー、安全保障、国防、科学技術等の話がありましたが、安全保障のコストを誰が払うのかということが、重要課題の一つであろうと思っていて、これに対する国家の役割というのは極めて重要度を増しているように考えております。
特に、我々の目の前にある、国防予算を膨張させている中国との均衡の中において、やはりセキュリティーのコストというのはある種、膨らんでいかざるを得ないような状況になり、INF(Intermediate-range Nuclear Forces・中距離核戦力全廃条約)脱退等、安全保障環境が非常に激変、流動化している中で、セキュリティーのコストというのは国防だけではなく、エネルギー、サイバー、テクノロジーといろいろな分野で膨らんでいるものと思われます。もちろん、個々の予算の中では個別に切り込んでいくことは大事だと思うのですが、殊、財審においては、予算全体のトレードオフについてはあまり議論の機会が多くなく、この場でしかできないようなダイナミックな予算配分の話がもう少し含まれるべきではないかと思っています。
社会保障や、その他予算との間でどうバランスをとっていくか、そういった議論も一方で必要なのではないかと思っております。
以上です。
〔 増田分科会長代理 〕 今の意見は、次回以降の建議の中の議論がその場だと思います。
宇南山委員、お願いします。
〔 宇南山委員 〕 入札の話ですが、防衛品のような個別性が高くて、かつ財同士の補完性が高く、かつ情報の非対称性が大きいような財の場合には、単純な価格による入札というのは必ずしも有効ではないと考えられるので、もちろん汎用品についてはどんどん切り込んでいただけば良いのですが、例えば入札の件数であるとか、そういったものを目標にするというのは、結果的にはあまり良い方法にはならないと思います。例えば、オークションセオリーであるとか、マーケットデザインの専門家のような人の意見を聞いて、どのような契約形態が望ましいかという知見を是非活用していただければと思います。
〔 増田分科会長代理 〕 ありがとうございます。
それでは、あとお二人ですが、小林委員、お願いします。
〔 小林(毅)委員 〕 今回は、次期中期防の策定が絡んでいるということで、これまで以上に、建議で言うところの前文ですね。現在の安全保障状況をどういうように見ていくのか、これは少し踏み込んだというか、書き込んでいく必要があるのかなという気がいたします。もう既に何人かの方がおっしゃっておられたので、あまり大きく繰り返すつもりはありませんが、やはり今の周辺状況をあまり安易に、改善してきているというか、緩和してきているというような見方を前提にするのは、ちょっとメッセージとしてもいかがなものかという気がしております。それを踏まえて、財審としてどういうように切り込んでいくのかというところだと思うのです。
そこでやはり一番大きいのは、先ほど単価の話が出て、これが最終単価まで上がっていくという例が過去の財審でも非常に問題になっておりました。そのときに、本当にそのままのスペックを、フルスペックのままで続けていくのが良いのか、上がっていく場合には、そのスペックをある程度、全体のバランスの中で落としていきながら調達の値段を交渉していくのが良いのか。これは、別に防衛力を落とすとか、そういうレベルの話ではありませんので、そういうような努力を続けていくことで、どこまで抑え込めるのか。やや個別的な話にはなるかもしれませんけれども、そういった辺りをしていく。それで、全体として防衛の中に行く。
それから、先ほど遠藤委員がおっしゃいましたけれども、やはり全体の中でどういうように防衛費を捉えていくのか。今回は、ここにも入っていく良い機会なのかなと、そういうタイミングなのかなという気がしております。これは意見であります。
〔 増田分科会長代理 〕 ありがとうございました。
末澤委員、お願いします。
〔 末澤委員 〕 どうもありがとうございました。
先週、申し上げたのですが、WEF(世界経済フォーラム)が向こう10年の世界経済のリスクというのを毎年1月に発表しておりまして、昨年、今年と発生可能性の高いリスクの1番は異常気象、一方で影響の大きい、インパクトの大きいリスクが、昨年、今年とも大量破壊兵器ということでございます。
先ほど、北朝鮮情勢の問題がございました。これは若干、小康状態ではあるのですが、一方で、先週末にトランプ大統領は、INF条約、中距離核戦力条約、これは1987年に締結されていますが、これから離脱するということで、多分、このままいくと、相当、中距離核がまた世界的に拡散される。これは戦略核に比べて使用のハードルが低い可能性もあって、むしろ相当、懸念が高まる状況だと思います。
また、「BAS」という、これはアメリカの雑誌でございますけれども、人類、皆様の寿命はあと何分かということでございまして、実は今年の1月では11時58分、人類滅亡まで残り2分と、1953年以来、最低でございます。皆様の寿命はあと2分間でございます。やはり地政学的リスクが引き続き高まっているという状況は、特に今のトランプ政権の状況と、またロシア、中国との状況は変わらないと思うのです。中東でも、むしろ新しいリスクが今、高まってきております。
そういう中で、やはりそれなりの防衛力を引き続き、着実に整備するということは極めて重要だと思うのですが、一方で、前回も申し上げました19ページです。このグラフを御覧いただいても、米軍の場合、戦闘機メーカーは戦後間もなくでは20社ぐらいあったのが、今、ロッキード・マーチン、F-35ライトニングをつくっているのは1社になってしまっております。これだけやはり開発コスト、リスクが相当高まっているということでございまして、その競争の中でやっていくということが重要です。
一方で、日本の今の自衛隊の装備を考えますと、23ページですが、これも実は私、何回かこの場でちょっと御質問させていただいたわけですが、C-2という輸送機です。これは、日本の民間機への技術転用ということで、開発の重要さはわかるのですが、実はC-2と、一番右側のC-17、グローブマスター、これはマクドネル・ダグラスが開発して、今、ボーイングがメンテナンスをやっていますが、こちらの1時間当たりコストは大体倍かかりますと。一方で、貨物室床面積、最大貨物重量は半分ですから、言ってみれば4倍のコストがかかっているのです。例えば、輸送機で言えば4倍と。先般、申し上げましたMINIMIという軽機関銃、これはオーストラリアと日本、いろいろなところでライセンス生産して10倍かかっていると。
4倍、10倍かけてつくっていたら、これはなかなか必要な装備の充実はできませんし、下手すると訓練費だとか経常経費、自衛隊員の福利厚生費を削減するとなると士気にも影響してきますから、選択と集中というのは今以上にやはりしっかりやっていただいて、これは内野主計官のようにきちんと切り込む方がいないと、なかなか難しいのではないかということで、是非とも今後とも頑張っていただきたいと思います。
以上でございます。
〔 増田分科会長代理 〕 それでは、防衛の関係の議論はここまでとしたいと思います。したがって、今日の議題のほうは以上で終了したいと思います。
次回以降のことについて申し上げますと、今回、秋の陣は9月7日以降、審議を行ってまいりまして、次回、地方財政の審議を残すだけになっています。そこで、次回の審議は、社会保障制度改革における自治体の役割、特に医療行政の都道府県化、今年の4月から行われましたが、国保の都道府県保険者一元化ですね。そうしたことの現状と課題について、有識者をお呼びしてヒアリングを行う。そして、今日のような地方財政に関する事務方からの説明を聴取した上で、皆様に議論していただきたいと考えております。できるだけ効率的にやって時間を生み出したいと思うのですが、そういう時間があれば、これまでの議論や運営などについてのフリーディスカッションも、次回は最後のほうで時間をとりたいと思います。
そして、次回の審議が終わりますと、今後はいただいたご意見を踏まえて、平成31年度予算の編成等に関する建議、秋の建議の起草に入っていきます。建議を起草いただく委員につきましては、これまでもお願いしておりますが、小林毅委員、田近委員、土居委員、冨田委員、中空委員、及び吉川委員の6名の委員に引き続きお願いすることとしたいと思いますが、よろしゅうございますか。
それでは、以上の6名の委員の皆様方には、お忙しい中、大変恐縮ですが、よろしくお願いいたします。
本日の会議の内容につきましては、この後、私のほうから記者会見で紹介させていただくこととしておりますので、会議の個々の発言につきましては報道関係者にお話をすることのないよう、御注意をいただきたいと思います。
次回は、10月30日、午前10時から開催を予定しておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
本日は、これにて散会をいたします。ありがとうございました。
午後5時25分閉会