財政制度等審議会 財政制度分科会
議事録
財政制度等審議会 財政制度分科会 議事次第
平成30年9月7日(金)15:30~17:15
第3特別会議室(本庁舎4階 中-412)
1.開会
2.議題
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我が国財政をめぐる現状等について
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麻生財務大臣とのフリーディスカッション
3.閉会
分科会長 |
榊原定征 |
麻生大臣 うえの副大臣 木原副大臣 岡本事務次官 太田主計局長 神田次長 阪田次長 宇波次長 奥総務課長 安出司計課長 阿久澤法規課長 中澤給与共済課長 一松調査課長 西山参事官 寺岡主計官 日室主計官 北尾主計官 斎須主計官 前田主計官 中島主計官 吉野主計官 関口主計官 森田主計官 岩佐主計官 内野主計官 渡邉主計企画官 佐藤主計企画官 |
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分科会長代理 |
増田寛也 |
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委員 |
赤井伸郎 黒川行治 佐藤主光 武田洋子 竹中ナミ 土居丈朗 中空麻奈 永易克典 藤谷武史 宮島香澄 |
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臨時委員 |
秋池玲子 伊藤一郎 井堀利宏 大槻奈那 岡本圀衞 葛西敬之 北尾早霧 末澤豪謙 田近栄治 田中弥生 神子田 章 博 宮武 剛 |
午後3時30分開会
〔 榊原分科会長 〕 ただいまから、財政制度等審議会財政制度分科会を開催いたします。
委員の皆様におかれましては、御多用の中御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
今般の北海道胆振東部地震、また、台風21号もございまして、被災された方々、多くいらっしゃいます。まずは、心からお見舞いを申し上げたいと思います。
まず、議事の進行に先立ちまして、会長代理の交代について申し上げたいと思います。
この分科会におきましては、これまで田近委員に会長代理を務めていただきまして、議事進行を含めまして多大なる御尽力をいただいてまいりました。このたび、田近委員から、御体調の面で、委員は続けていただけるということですけれども、会長代理としての職務の遂行は難しいといったお申し出をいただきまして、会長代理を他の委員の方にお願いしたいと思います。田近委員には、今、正面に座っていただいておりますが、引き続き委員を務めていただくということで、今後とも委員として活発な御発言をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
後任の会長代理の指名につきましては、財政制度等審議会令という規則がございますが、この第6条に基づきまして会長の指名ということになっております。本日、私から指名をさせていただきたいと思います。会長代理につきましては増田委員にお願いしたいと思います。皆様の御賛同をいただきたいと思います。いかがでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
〔 榊原分科会長 〕 よろしゅうございますか。ありがとうございます。
それでは、本分科会の会合以降、増田委員に会長代理をお願いすることにしたいと思います。今後は、増田会長代理に議事進行をお願いしたいと思います。
その前に、本日はこの秋の財審分科会のキックオフの会合でございますけれども、キックオフに当たりまして、私から一言コメントを申し上げたいと思います。
この春の財審では、委員の皆様に活発な、また密度の高い御議論をいただきまして、建議を取りまとめたわけです。そのポイントを振り返って、2点、申し上げたいと思います。
まず、1点は、これ以上の財政健全化の遅れは許されない、そういった強い決意のもとに、遅くとも団塊の世代が全て後期高齢者になる2025年度までに、プライマリーバランス、PB黒字を安定的に確保しておく必要がある、これが建議の1点目であったかと思います。
2点目は、その実現のため、今後の3年間においては、大括りの歳出分野ごとに歳出の水準に関する規律を設けるとともに、個別の改革について具体的な内容と工程を定めた上で、取組の進捗状況を検証する、必要な追加措置を検討する、そういった新たな財政健全化計画を策定すべきと、こういったメッセージを建議に取りまとめたということでございます。
2025年度のプライマリーバランス黒字化に向けて、引き続き本格的な歳出改革に取り組んでいく必要があるわけでございますけれども、とりわけ来年度予算、平成31年度予算は、この6月に取りまとめた「骨太方針2018」、この中の「新経済・財政再生計画」というものがございますが、その計画に沿って策定される最初の予算でございます。財政規律を確保していためにも、非常に重要な予算編成となるわけでございます。
委員の皆様方におかれましては、この秋の財審におきましても、春と同じように活発な御議論をいただいて、我々、分科会としてしっかりとした建議を取りまとめたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。
また、本日、御案内しておりますけれども、分科会の意見交換の後、16時15分ごろから麻生財務大臣に御出席いただいて、フリーディスカッションの機会を設けておりますので、是非活発な御意見を出していただきたい。フリーディスカッションをしたいと思いますので、お願いしたいと思います。
それでは、この後の議事進行につきましては、増田会長代理にお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
〔 増田分科会長代理 〕 ただいま会長から御指名をいただきました増田でございます。会長を補佐し、職務を果たしてまいりたいと思います。ちょうど目の前に、田近委員、おられますけれども、急なことで私が代理を務めることになりましたので、どうか委員の皆様方、御協力をよろしくお願い申し上げます。
早速ですが、議事に入らせていただきたいと思うのですが、本日は、今、会長からお話ございましたとおり、我が国財政をめぐる現状等を議題としております。また、後ほど、16時15分ごろをめどでございますが、麻生財務大臣にもお越しいただいて、平成31年度の予算編成等についてフリーディスカッションの場を設けたいと思っております。
本日は、冒頭から、うえの副大臣、木原副大臣の両副大臣もお越しをいただいております。ありがとうございます。
両副大臣を含め、改めまして私のほうから、事務方の幹部の交代もございましたので、順に紹介をさせていただきます。
まずは、うえの副大臣でございます。
〔 うえの副大臣 〕 よろしくお願いします。
〔 増田分科会長代理 〕 続きまして、木原副大臣です。
〔 木原副大臣 〕 よろしくお願いします。
〔 増田分科会長代理 〕 次に、事務方幹部に移りたいと思います。
まず、岡本次官でございます。
〔 岡本事務次官 〕 よろしくお願いいたします。
〔 増田分科会長代理 〕 続きまして、太田局長です。
〔 太田主計局長 〕 よろしくお願いします。
〔 増田分科会長代理 〕 神田次長です。
〔 神田次長 〕 よろしくお願いします。
〔 増田分科会長代理 〕 阪田次長です。
〔 阪田次長 〕 よろしくお願いします。
〔 増田分科会長代理 〕 最後に、宇波次長でございます。
〔 宇波次長 〕 よろしくお願いいたします。
〔 増田分科会長代理 〕 お手元に配付の座席表に、その他各分野の主計官等、記載してございますが、御確認をいただきたいと思います。
それでは、議事に入りたいと思います。
初めに、我が国財政をめぐる現状等について、一松調査課長から説明をお願いしたいと思います。簡潔に、よろしくお願いします。
なお、ペーパーレス化でございますので、スクリーンか、お手元のパソコン端末を御参照いただきたいのですが、もし使用方法で何かトラブルあれば、近隣の職員のほうにお声がけをいただければと思います。
それでは、課長、よろしくお願いします。
〔 一松調査課長 〕 ただいま御紹介にあずかりました調査課長の一松でございます。よろしくお願い申し上げます。
それでは、駆け足になりますが、まず資料1に基づいて財政の現状等を御説明させていただきます。
資料1の2ページにお進みください。青のボックスのところを御覧いただきたいと思います。1つ目の丸にありますように、平成31年度予算は、先ほども会長から御発言があったように、「新経済・財政再生計画」をもとに編成する初年度の予算になります。同時に、2つ目の丸にありますとおり、平成最後の予算編成になります。
平成初期の予算を振り返りますと、最初の予算である平成元年度予算は消費税導入初年度の予算でした。ただし、平成元年予算は越年編成でしたので、平成に入って実質的に初めての予算編成となったのは平成2年度予算でございまして、特例公債脱却を達成した予算でありました。当時、財審からいただいた建議、そこから下のところにお付けしております下線部を引いた部分を御一瞥いただければと思いますが、要すれば特例公債脱却に至るまでいかに苦労がなされてきたか、そして特例公債脱却をしても我が国の財政状況はなお厳しいといった指摘が書かれております。
次の3ページにお進みいただければと思います。3ページにも財審の報告を付けておりまして、特例公債脱却という目標は、目標年度の先送りを続けながらも、ようやく平成2年度に達成されたのだという趣旨の振り返りが1ページにわたって書かれております。1.の下線部の最後のところだけ御覧いただければと思いますが、特例公債脱却の実現の道のりは平坦なものではなく、15年もの歳月を要したということがしみじみと書かれているわけでございます。
4ページにお進みください。今、申し上げたのは、年表で申し上げますと左下に縦の赤字で書いてあるところでございまして、55年度、59年度、65年度と目標年度を変えながら特例公債脱却目標が設定されてまいりました。
棒グラフの赤い部分を御覧いただくと、これが特例公債でございます。昭和50年度から赤が15年間ずっと続いてまいりましたが、最後には目標どおり昭和65年度、すなわち平成2年度になりますと赤が消えております。これが平成2年度の下のところに縦の赤字で書いてある特例公債脱却でございます。
この平成2年度の歳出と歳入の差額、いわゆるワニの口ですが、真ん中やや左側に黄色で囲ってあるとおりでございまして、9.2兆円の差額しかなく、かなり締まっておりました。残念ながら、そこからワニの口は拡大傾向にあるところでございます。平成2年度は、青の折れ線グラフが示す税収が60.1兆円とピークにありましたが、そこからバブル経済の崩壊で税収は減りまして、平成6年度には特例公債を再び発行することになりまして、棒グラフの赤い部分が再び始まり、以降、ずっと特例公債依存が続いていることになります。
平成6年度の下に、赤字で特例公債発行と書いてあります。ここからは、縦の赤字を左から右に目で追っていただければと思います。その後、財政構造改革法が成立いたしまして、ここで再び特例公債発行脱却が目指されましたが、アジア通貨危機等で停止を余儀なくされました。
財政健全化目標は、国・地方を合わせたプライマリーバランス黒字化に切り替えられることになりまして、平成14年度の下にありますように、最初、2010年代初頭という幅のある目標年度が定められ、税収が比較的良かった平成18年度には2011年度というピンポイントの目標年度が設定されました。
しかし、その後、リーマンショック等で青の折れ線グラフの税収が激しく落ち込む中、目標年度の再設定をせざるを得なくなり、平成22年度に改めて2020年度という目標年度が再設定されることになり、この2020年度という目標年度は安倍内閣に引き継がれて継続してまいりましたが、後ほど御説明しますとおり、このたびの「骨太方針2018」では2025年度ということになりました。先ほど、財審の報告で特例公債脱却に15年の歳月を要したと書かれていることを御紹介申し上げましたが、PB目標の達成については、目標を立てた平成14年度から既に15年以上の年月が流れていることになります。
5ページにお進みください。平成2年度予算と平成30年度予算を比較しております。歳出の横の棒の赤い部分を御覧いただきたいのですが、平成2年度には一般会計歳出の5分の1にすぎなかった社会保障予算が、平成30年度には3分の1を占めるようになりまして、その増大と国債費の増大を特例公債で賄う形となっておりまして、平成30年度の特例公債の発行額は、右下の赤囲いしてある黄色のところでございますが、27.6兆円となっております。かつて目指そうとしていた特例公債脱却ですと、この27.6兆円を歳出歳入両面の努力で、しかも国だけで何とかしようという財政健全化目標を意味していましたが、現在は、右下に書かれております平成30年度時点の国・地方を合わせたPB15.7兆円の赤字を、国・地方を合わせた努力で黒字化しようという目標になっているわけでございます。
6ページにお進みください。このページでは、財審の当時の建議で160兆円を上回る巨額の債務残高とされていた公債残高が、累増の一途をたどっていることを示しております。左側のボックスの中にありますとおり、普通国債残高は166兆円から883兆円と約5.3倍に膨れ、対GDP比は37%から150%に上がり、特例公債残高は65兆円から604兆円と約9.4倍になっております。
7ページにお進みいただければと思います。この普通国債残高の累増要因ですが、右下の赤囲いにありますとおり、社会保障関係費の増加と税収の減少等で約7割が説明できます。おなじみの資料でございますので、本日は2枚ほど参考資料をお付けしております。
8ページにお進みください。8ページは税収の推移でございまして、先ほども御説明いたしましたとおり、平成2年度が税収のピークでございまして、青い棒グラフが示すとおりでございます。内訳で、黒の折れ線グラフは消費税収を示しておりますが、消費税収は平成2年度の4.6兆円から、平成30年度予算では17.6兆円と13兆円増えておりますが、消費税と法人税を合わせるとそれを若干上回る減少となり、あたかも帳消しのようにも見えます。
この要因分析は、次の9ページにあります。そちらを御覧いただければと思います。上の所得税収のほうはバブル期との比較になります。黄色い部分は分離課税の土地の譲渡所得でございますが、相当落ちております。また、これは青の部分ですが、金利水準が随分違いますので、利子にかかる分離課税も相当落ちております。真ん中にありますように、こうした分離課税の落ち込みで▲4兆円と、累進緩和、控除の引上げ、税源移譲――税源移譲だけで3兆円あります。そういった制度改正による減少4兆円ということで、ほぼ所得税収の減少分は説明でき、法人税収につきましては下のほうにありますように累次の税率引下げの影響が見られます。
話を公債残高に戻させていただきまして、10ページに参ります。赤の下線を引いてある数字を追っていただきたいのですが、先ほど普通国債残高及び対GDP比について紹介しました。これに交付税特会の借入金やら、地方債残高を付け加えますと、国・地方の公債残高は266兆円から1,107兆円、対GDP比は59%から198%という数字の推移になっています。
11ページは、長期系列でございます。長期系列を見ますと、これは理財局のデータなのでベースが若干異なりますが、第2次世界大戦時に匹敵する状況にあることが分かります。
次のページ、12ページでございますが、国際比較でございまして、青のボックスに書いてあるとおりでございます。平成2年度当時の財審建議では、先進諸外国と比較してみても依然として極めて厳しいとされておりましたが、このグラフを見ていただくと、当時は60%台の債務残高(対GDP比)で、先進諸外国と同じレンジにいたようにも思いますが、今や比較にならないほど極めて高い水準にあります。
13ページにお進みいただければと思います。これから平成最後の予算編成に向けまして、当時との社会・経済情勢の差異を踏まえておきたいと思っております。
人口から説明します。平成20年にピークを迎え、その後、減少いたしますので、平成元年と比較しますと、今、足元の人口はまだ上回っている状況になっています。その下、御覧いただくと分かりますように、しかしながら14歳以下の年少人口は減少、15歳から64歳までの生産年齢人口は減少、65歳以上の人口は増え、高齢化率も11.6%から27.9%と16.3%ポイント高まっております。人口の増加は、3大都市圏、中でも東京圏で説明できまして、それ以外の地方の人口は減っていることも留意する必要があります。
他方で、明るい材料もございます。その下、就業者数で見ると、人口の約半分は確保し続けておりまして、2時点の比較で見ると就業者の増加が人口の増加を上回っています。支えているのは、女性の就業、高齢者の就業であることが数字から見てとれます。このように、就業して所得を稼得する人々の数は増えている、支えている力が持続していることは、年金制度や経済成長を考えていく上では重要なことと考えます。ただし、数字にありますとおり、その内容は、現時点では非正規雇用者の増加で支えられている点にも留意する必要があると思います。また、医療や介護分野の費用を考えていく上では、やはり上の方の高齢化の影響は免れませんので、医療・介護費の増加の問題に対処するために、様々な改革を行わなければならないということは変わらないと思われます。
なお、第1次産業、第2次産業の就業者も減っております。第3次産業の就業者が増えておりまして、サービス化が進んでおります。
また、交流人口の関係指標として、訪日外国者数は大変増えているということを一番下に参考資料としてお付けしています。
次のページを御覧ください。こうした今日の姿が当時から予測されていたかを検証してみました。14ページの山型のグラフでございますが、高い山が平成初期に存在した昭和61年推計、低い山、青で塗られている部分が足元の平成29年推計、オレンジの部分がその差分でございます。
高い山は昭和61年推計で、人口のピークは2013年に来ると推計していたのですが、実際には2008年と想定より早く来てしまいました。結果として、2015年の人口で見ますと、当時の推計の1億3,594万人より884万人少ない1億2,710万人となりました。このことは下の表で整理しておりまして、2015年の総人口の差分が▲884万人とされております。その差分のほとんどは、年少人口の差▲793万人で説明することができます。この差がどうして生じてしまったのかは、下の出生率を御覧ください。昭和61年の推計では、当時の出生率1.8よりやや高くなりまして、2.0近傍で推移するという将来推計をしておりました。しかしながら、現実は、2015年の出生率は1.45となるほど低く推移しました。このため、年少人口は、当時の推計の3分の2程度にとどまってしまっているということでございます。
ここで何を申し上げたいかというと、平成初期までに特例公債を脱却する、将来世代に先送りをしないという財政運営が目指されてきましたが、その頃想定していたよりもぐんと少ない将来世代になっておりまして、そこに負担を求めることは更に酷な状況になっているということでございます。他方で、社会保障の給付を受け取る高齢者人口は、平均寿命の延伸で想定より増えているということが、上の青のボックスの2つ目の丸で書かれています。
3つ目の丸に書かれていますように、想定より増えた高齢者への給付にかかる負担を含めた現世代の負担を、更に先細りする将来世代に送ることになりますと、ますます酷なことになります。特例公債の発行による将来世代への負担の先送りの影響は、かつてより深刻と言えるのではないかということでございます。これは建設公債についても同様で、御承知のように60年償還ですが、平成の初めに行われました公共事業によって築かれたインフラから受益を受ける将来世代は、想定よりはるかに少なかったということになります。これからも、ますます受益を受ける将来世代は減るので、少なくとも選択と集中が必要になるのではないかと思います。
15ページは、先ほど訪日外国者数を取り上げましたが、お金の面でも取引のクロスボーダーが進んでいるということでございまして、青いボックス、1つ目の丸にあるとおり、海外投資家の国債保有割合も上昇しております。右下の緑の折れ線グラフで見てとれるように、平成元年からのデータがあれば良かったのですが、データ上、平成16年度からしかありません。青いボックスの2つ目の丸のとおり、海外投資家は売買を積極的に行います。右下の、のグラフでも割合が増えていますので、昔と比べますと公債の信認を確保する必要性が高まっていると言えます。
17ページにお進みください。17ページは、先ほども御説明した「特例公債脱却」から、「国・地方を合わせたPB黒字化」に至る財政健全化目標の変遷、目標年度の変遷を整理した表でございます。繰り返しの説明になりますので、説明は省略させていただきます。
18ページ、19ページは、そのバックデータになりますので、説明を省略させていただきます。
20ページは、春に御議論いただきましたときのベースとなりました「骨太2015」の「経済・財政再生計画」でございます。これとの対比を念頭に置きながら、22ページから、新たに策定された「新経済・財政再生計画」を説明させていただきたいと思います。
22ページでございます。まず、財政健全化目標のところでございますが、旧計画では2020年度とされていた目標年度は2025年度に変更されたところでございます。次に、団塊世代が75歳に入り始めるのは2022年度でございますが、その前年度までの3年間を「基盤強化期間」と位置づけることになりました。その「基盤強化期間」の歳出規律でございますが、の社会保障関係費の下線部の部分、実質的な増加を高齢化による増加分に相当する伸びにおさめるという方針を継続することとされました。その算定の考え方は、一番下に(注)として印されております。旧計画では、3年間で1.5兆円との数字があらかじめ入っていた部分でございますが、今後3年間については高齢化の伸びが鈍化することもありまして、各年度、適切に伸びを算定して抑制していく方針となったものでございます。
次の23ページでございます。一般歳出のうち非社会保障関係費でございますが、安倍内閣のこれまでの歳出改革の取組の継続となっています。旧計画では、一般歳出で3年間で1.6兆円との伸びの目安が入っておりました。社会保障の1.5兆円を差し引くと、3年間で0.1兆円の伸びとされていた部分に相当します。地方財政については、地方一般財源実質同額ルールということで今までもやってきましたが、そのとおりのものが文章に入っております。
計画実現に向けた今後の取組のところを御覧いただきますと、2020年度の「骨太方針」で社会保障の総合的かつ重点的に取り組むべき政策を取りまとめるということが書かれております。
続きまして、24ページにお進みいただくと、これらを踏まえて内閣府が提出した中長期試算についてでございます。経済シナリオとあるところのでございます。右側の経済成長率の前提、今後、名目3.3%で推移するという成長実現ケースで見ますと、下の試算結果のポイントの2つ目の丸、2025年度の国・地方PBのを御覧いただきたいのですが、2025年度のPB赤字は▲2.4兆円となっております。ただし、ちょっと上にお戻りいただきまして、財政前提のところの丸を御覧いただきたいのですが、2019年度については一部の歳出改革のみを織り込む、2020年度以降については、社会保障では高齢化以外の伸びも含めて伸ばし、その他の一般歳出も物価上昇率を伸ばすとしています。先ほど御説明した基盤強化期間中の歳出規律を守った歳出改革を行えば、2025年度の国・地方PB黒字化は可能という説明になります。ただし、経済成長がそこまで行かず、一番上の経済シナリオの2番目にあるベースラインケース、名目1.7%の成長率で推移する場合は、2025年度の国・地方PBは、試算結果のポイントのでございますが、▲8.1兆円の赤字となってしまうということでございます。
以上が、資料1の御説明でございます。
続きまして、資料2に基づきまして、先ほど午後3時に発表が行われたばかりの各府省からの概算要求額について簡単に御報告申し上げます。
資料2の1枚目、合計欄の右から2番目の数字を御覧いただきたいと思うのですが、平成31年度の概算要求・要望額の合計値は102兆7,658億円となります。前年度予算額との比較で、約5兆530億円の増加となっております。内訳は、その2行上の数字で括弧書きのところを御覧ください。国債費、地方交付税交付金等を除きました一般歳出ですが、62兆3,672億円、前年度予算との比較で3兆4,714億円の増加となっております。
要求、要望の段階での計数の大小を比較することに特段の意味はないと思っていますが、先行報道でもございましたので念のために申し上げれば、今、御説明した一般会計全体の歳出の金額、及び一般歳出の金額は過去最大となっております。ちなみに、この中には社会保障関係費の自然増、約6,000億円の要求も含まれておりまして、ここから先ほど御説明した新計画にのっとりました、高齢化による増加分に相当する水準におさめるための作業が進められていくことになります。また、来年10月に予定される消費税の引上げに伴う需要変動への対応として行われる「臨時、特別の措置」等につきましては、予算編成過程において検討していくこととしておりますので、数字の中にはまだ入ってきていないということになります。
私からの説明は以上になります。
〔 増田分科会長代理 〕 ありがとうございました。
それでは、ただいまの説明について御意見等をお願いしたいのですが、本日、神津委員、欠席でありますので、意見書が提出されています。お手元にお配りしてありますので、お目通しをいただきたいと思います。
いつものように、御意見がある場合はネームプレートを立てて御発言をいただきたいのですが、この後、大臣もいらっしゃるので、ここのパートは少し時間が限られますので、できればお一人2分以内ぐらいで御発言をお願いできればと思います。
それでは、どうぞ、ネームプレートを立てて。岡本委員からお願いします。
〔 岡本委員 〕 ありがとうございます。
特例公債に力を入れた御説明をいただきましたが、やはり我が国財政の根本的な課題は、4ページの資料にもありますとおり、確かに税収面でも、財政面でも、それなりに努力はしているものの、赤字は毎年40兆円近く出ているという厳然たる事実がある。にもかかわらず、国全体がそれに慣れ切って、国民生活や経済はそれを前提に営まれていると思います。このような事情から、私も大所高所から意見を言いたいのですが、毎回言っているので、今回は具体的な質問1点と、意見を2点申し上げたいと思います。
まず、1点目は、消費税引上げに対する経済対策についての質問ですが、先ほどお話ありましたように概算要求の総額は過去最大と。しかも、この概算要求には、来年10月に予定されている消費税率10%への引上げに伴う経済対策の予算は含まれていないという話です。したがって、お聞きしたいのですが、消費増税に伴い、時限的な経済対策の必要性は理解します。ただし、その規模によっては増税効果を減殺するわけですし、かなりの額になると実質的に見て増税時期の先送りともなりかねないと思います。ついては、財務省はどのくらいを必要と想定しているのか。これは質問でございます。
2点目は補正についてです。補正の代表は災害の復旧や、防災、減災対策が多いわけですが、最近のように、今もそうですけれども、毎年、巨大な災害に見舞われますと、やはり国土強靱化に本格的に取り組まなければならないし、そのためには当初予算に組み込むべきだと思います。是非補正からこちらに持っていって、それを超えた場合は補正というような感じでやっていくべきだと思うのです。そういうようになると予算が更に膨れてしまうわけで、そういうことを考えれば、なおさら社会保障領域を中心とした歳出削減に真剣に取り組む必要がある。にもかかわらず、足元では厚生年金のパート適用拡大など、早速、国民受けの良い施策だけが先に議論されているように思われますが、こうした施策についてはより厳しく見ていく必要があるのではないか。
3点目は、私が、いつも言っている健保組合の問題です。健保組合が財政悪化で解散するケースが相次いでいると。厚生労働省は、解散前に運営を立て直してもらおうと、来年度から約30億円、新たな財政支援を検討していると聞いております。しかしながら、その背景を考えてみますと、やはり原因の一つは、協会けんぽの国庫補助を減らして、企業にだけ負担増を求め続けてきたことにあると思います。その結果、健保組合は今や62%が赤字でして、解散予備軍が20%以上もあると聞いております。既に後期高齢者支援金で約1,500億円増えて、今後、介護納付金も総報酬割になると1,000億円ぐらい増えるということであります。やはり我々、何とか抑えようと独力で頑張っている各健保組合の努力を無にすることになりかねないので、こうした問題については、あるところから取るというような発想ではなくて、長期的な視点が必要であると思っております。
以上でございます。
〔 増田分科会長代理 〕 ありがとうございました。
1点、質問ありましたので、これはどうしましょう。太田局長でよろしいですか。では、お願いします。
〔 太田主計局長 〕 1点、消費税を来年10月に引き上げることになった場合、駆け込み需要、あるいは反動減も含めて平準化ということになるわけですが、そういうことも含めた対策についてというお話をいただきました。
どれぐらいの規模をというお話だったと承知しておりますが、先に規模ありきということではないと思っています。これまで消費税導入、あるいは3%から5%に上げるとき、5%から8%に上げるとき、いずれも要すれば、財務省はいろいろ言ったけれども、想定外に景気に悪影響を与えたではないかということが言われているわけです。消費税を増税するということは、政府側はそれだけ民間からお金を吸収するので、もちろん何も影響しないというわけではないのですが、これまであったようないろいろな御批判なり、御指摘に応えられるようなことに知恵を絞らないといけないと思っています。
一方で、たくさん金を使えば良いという話ではないので、それは十分、知恵を絞ってということだと思います。マクロ的に、まず先に数字があって、それで考えるということは、最終的にはある程度視野に入れざるを得ないと思いますが、まずは知恵を絞ることを第一で考えていきたいと思っております。
そういう意味で、幾らという規模を考えているかと言われると、まず規模ありきで考えていないので、今、お答えできることではないし、知恵を出すことが優先だと私は思っています。
〔 増田分科会長代理 〕 ありがとうございました。
それでは、他、名札が立っていますので、次、御意見いただきたいと思います。永易委員、神子田委員、宮島委員の順番でお願いします。
〔 永易委員 〕 ありがとうございます。
春の財審でも申し上げたのだけれども、一言で言って、最近の政府の方針というのは財政規律を強めようという方向ではなくて、逆に財政規律は弱めようという動きに見える。これは、誰か見てもそうではないかという気がするのです。先ほど御説明いただきました2015年の「骨太方針」と、今回の2018年の「骨太方針」を比較すれば明白です。1つには、何といっても歳出抑制という点について、非常に抽象的なことしか書いていなくて、もちろん数値目標もない。考え方だけは一緒ですと言いながら、これでできるのでしょうか。どう考えても、そういう疑問が起こる。
更に、PBの黒字化時期、今、申し上げた歳出を抑制するスタンスが見えないということと裏腹なのですが、PB黒字化の時期、2025年度にぽんと変えましたよね。何でそんなに簡単に変えられるのだろうという意見を春に言ったような気がします。中間指標、目標設定も、従来の3年間の歳出抑制の努力を本当の意味で生かせば、2025年度でなくても大丈夫なはずだし、中間目標の数字も非常に甘い数字になっていると思うのです。本当に残念ながら、財政規律を守っていこうということが後退している。これは否めないのではないか。
もちろん、歳出抑制の各論、特に社会保障に対するいろいろな手、44項目が挙がっているわけですし、この進捗状況とか、新しい手も出るかもしれません。これが年末ごろにまとめられるであろうという想定はしていますけれども、それにしても随分トーンが変わってしまっているのではないかという気がするのです。それが全体的なトーンであります。
どうしても申し上げておきたいのは、もうこの何年間か、10%への引上げが2回、見送られた消費税は、当然のことであるというのがこの審議会の議論であって、最初のとき、私はやはり強いトーンで入れるべきであると、こんなの当たり前だからちゃんとやりましょうねと。まあ、脚注ぐらいの扱いを受けたような気がするのですが。2回目のときには、入れたけれども、やはり見送ったということなのですね。今回は、さすがに来年の10月には上がるということは、相当程度そうであろうと私も思いますが、やはり財審の秋の陣のものには絶対入れておいてほしい。今、新聞のトーンも、これは当然であって、いろいろな経済対策を打って、そちらのほうに焦点が移りつつありますけれども、やはりこれはどうしても入れておいてほしいと非常に強く思いました。
それと、岡本委員が言われていたとおり、これを前提として、当然のことながら特別枠で、概算要求とは別にやろうとしているわけです。これは政治的に見て必要だというのはある面では理解できますけれども、この費用対効果はやはり財務省としては相当目を配っていただきたい。絶対額ではないと局長は言われましたけれども、そうかもしれません。ただ、必要性、費用対効果をどうして押さえてほしい。
それと、前半でちらっと申し上げました工程表管理です。去年の工程表管理のときは、44項目は相当遅れていたと思うのだけれども、この12月には進捗状況をもう1回ちゃんと示した上で、更にこういうことをやりたいという案になってほしいという気がいたします。
最後に、補正予算でありますけれども、一応、「も含めた管理をする」という文言が入ったようでありますけれども、これは文言が入ったからいいというわけではなくて、この方法論、審議会でもいろいろ案が出ましたよね。海外でもいろいろな形でやっている。是非具体化をして、全体として決算ベースでも抑制を図っていく、財政健全化を図っていくという方向観を是非出したいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。
〔 増田分科会長代理 〕 次、神子田委員、宮島委員、更に佐藤委員、末澤委員、武田委員、そして田近委員と名札が挙がっています。16時15分に、大臣、御入室と、こういう予定になっているので、すみません、手短に。
〔 神子田委員 〕 すみません、NHK、神子田です。時計を見ながら進めさせていただきたいと思います。
まず最初に、これは春の財審の最後のほうでも言ったことですけれども、財務省の旧体制でいろいろな不祥事がありまして、メディアなどではちょっと財務省の力が弱まっているのではないかとか、これで他省庁に歳出削減とか言いにくいのではないかというような論調もありましたが、私は、そのことと財政再建に取り組んでいくことの重要性は関係ないと思いますので、それはそれとして、今後も必要な財政再建の取組をしっかりと進めていっていただきたいと思います。新体制になったので、それを改めて申し上げたいと思います。
2つ目は、PBの目標、この30年の動きを聞いてみますと、当初は2011年度、2010年代の初めのころということがあったので、最近、2020年度から2025年度と5年遅れたという論調がありますけれども、これは15年遅れたという認識を持って、今後の歩みを速めていく必要があるのではないかと思いました。それと、この30年の歩みを振り返って、出生率が思った以上に下がったということがあったのですけれども、これは裏を返せば少子化の取組が遅れたということもあるのではないか。
そういった感想を持ったのですが、私は、この30年を振り返って、財務省の事務方の責任者の方に、これを教訓に、今後、どういうように財政再建を進めていきたいと思っているか、その所感をお伺いできればと思いました。
以上です。
〔 増田分科会長代理 〕 先に御意見のほうを。宮島委員、どうぞ。
〔 宮島委員 〕 ありがとうございます。
私も、今回は総論的なところで、北海道の地震などの災害を見ても、こういうとき、本当に国が支えたい、被災者を助けたいと思うとともに、こういうときにしっかり歳出をするためには、平時の財政が健全になるということが非常に大事だと思います。
その財政につきましては、一般の人たちは、やはり負担と給付が1対1ではなかなか結びついていないこと、それから、このまま行くとどうなるかということを、なかなか具体的にイメージしにくい中で、一方では、一部に負担増や給付減をしなくても何とかなるというような、思わせるような意見が存在することも確かだと思います。実際には、そういうものをちゃんと潰していかなければいけないと思うのですけれども、例えば景気上昇があれば何とかなるということに関しましては、今だって十分、結構な景気の中なのですけれども、劇的に財政が改善したとは見えませんので、今の歳出を賄えるだけの税収増はとんでもなく景気が良くならない限りは無理だと思います。
それから、人口減少の不安に関して、先ほどのデータでも、確かに女性や高齢者が働くようになって、そして外国人も来てくれて、これで支え手が増えるから何とかなるのではないかというような空気もないことはありません。でも、実際には、女性の多くは非正規で、しかも、いろいろな制約もあったり、育児や家事の負担が今のバランスのままでしたら、とてもじゃないけれども、財政の支え手を、同じようにしろというのは冗談じゃないと思っていると思います。また、高齢者も、若い人と同じような支え手としてカウントするのは無理があります。更には、外国人は社会保障の今後の影響についてしっかり見ていかなければいけないと思います。
このように、財政を考える上で甘い見方も出てきているのですが、それに対して、しっかりとデータと、現状と、分析を示していくことが大事だと思います。更に、一般の人は、負担増や我慢以外に何かできることはないのかと具体的に求めている部分があると思います。それをつらつら言おうと思いましたが、これは次回にします。
以上です。
〔 増田分科会長代理 〕 ありがとうございます。
それでは、佐藤委員、どうぞ。
〔 佐藤委員 〕 手短に。
まず、今回の新たな財政再建プランにおいて、やはり肝になるのは社会保障関係だと思います。一応、「骨太方針」のほうでは、高齢者の高齢化による増加分に相当する伸びにおさめるとは言っているのですが、この段階で概算要求で6,000億円増の要求が出ているわけですから、多分、高齢化の要因を超えているはずです。社会保障費を抑えるというのは、単に財政健全化の問題だけではなく、やはり社会保障が増えれば社会保険料が増えるわけですが、先ほど岡本委員の指摘にもありましたとおり、これは実は企業側の負担、あるいは労働者側の負担になってきますので、社会保障の支え手の負担を高めるということになります。それは経済活動にもマイナスですから、やはり支え手を支えるという観点から社会保障をどう抑えていくかということが肝になるかなと。
それから、消費税増税に伴う経済対策ですけれども、やはり新規の支出を増やす、新規項目で支出を増やすというよりは、それはもちろん国土強靱化も含めてかもしれませんが、本来やるべき支出の前倒しをするとか、要するに公共事業系であれば、単に実施のタイミングを早めるというやり方で、後年は支出しないで済みますので、全体としてはバランスがとれますので、そういう形をとる。あるいは、例の転嫁対策特別措置法ですけれども、総枠表示をちゃんと義務づけて、転嫁のタイミングを事業者のほうに柔軟に任せるというやり方をしないと、また例によって10月1日に一斉に上がることになりますので、その辺は転嫁の仕方を柔軟にするという対策を講じるべきかと思いました。
以上です。
〔 増田分科会長代理 〕 それでは、末澤委員、お願いします。
〔 末澤委員 〕 どうもありがとうございます。
資料1の4ページ、ちょっと開けていただけますでしょうか。先ほど一松課長から、今回、平成に絡んでお話がございましたが、このグラフを見ると、ちょうど平成元年あたりが国債発行額のボトムになっていまして、そこから増える。次に、平成10年ごろ、またどーんと増えるのです。これは金融危機の影響です。次に増えるのは平成20年ごろ、これはリーマンショックの影響です。ざっくり言えば、10年に1回ぐらい財政は大きく転換している。これは、ある面、景気の拡張期間のほうが景気の縮小期間より相当長いということです。アメリカの景気拡張局面は、2009年6月をボトムに、来年6月になると丸10年、これは戦後最長に並びます。
つまり、何が言いたいかというと、そろそろ世界経済の縮小局面に備えるべきで、逆に言えば今のように景気が良いときに相当バッファーをつくっておかないと、アメリカの金融政策でも、今の利上げは次の景気後退局面に備えたのりしろというのがあるのですけれども、財政面でも今のうちに余裕をつくって、次に備えるということも考え方としては一つ重要ではないかと考えています。
以上でございます。
〔 増田分科会長代理 〕 それでは、武田委員までお願いして、そこで一旦、区切って、中空委員は大臣が来られてからお願いしたいと思います。
では、武田委員、どうぞ。
〔 武田委員 〕 ありがとうございます。
私からのコメントは、1点です。「骨太方針」に書かれました、「2020年度に社会保障改革を中心とした進捗レビューをし、「骨太方針」において給付と負担の在り方を含め、社会保障制度の総合的、重点的に取り組む政策を取りまとめる」という記述が肝だと思います。この秋の財審も含め、そこに向けて給付と負担の在り方も含めた社会保障制度改革の具体策と優先順位、いつまでに何をすべきか、ここについてしっかり示していただければと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
〔 増田分科会長代理 〕 ありがとうございました。
また、この場でいろいろしっかりと議論していかなければいけませんし、少し質問もございましたが、いずれにしても大臣とのフリーディスカッションの時間になりましたので、そちらのほうに移りたいと思います。
初めに、カメラが入りますので、そのままお待ちをいただきたいと思います。
(報道カメラ 入室)
〔 増田分科会長代理 〕 皆様、入りましたかね。
間もなく、麻生大臣、御入室いただきますので、そのままお待ちをいただきたいと思います。
(麻生財務大臣 入室)
〔 増田分科会長代理 〕 それでは、麻生大臣、おいでになりました。
着席早々で大変恐縮でございますが、麻生大臣から御挨拶をお願いいたしたいと思います。
〔 麻生財務大臣 〕 それでは、財政制度等審議会財政制度分科会の開催に当たりまして、一言、御挨拶をさせていただきたいと存じます。
まず最初に、このたび、というより昨日ですけれども、平成30年北海道胆振東部地震によります被害、及び台風21号によります暴風、大雨等によって亡くなられた方々に哀悼の意を捧げると同時に、被災された方々に対して心よりお見舞いを申し上げる次第です。引き続き、被災者の不安な気持ちによくよく配慮し、状況を的確に把握した上で、政府の総力を結集してまいりたいと考えております。
さて、榊原会長をはじめ、委員の皆様におかれては、日ごろから幅広く熱心に御議論をいただいておりまして、厚く感謝を申し上げる次第です。
平成31年度の予算編成がいよいよスタートするに当たりまして、先月末、ここに出席をいたしております財務省主計局主計官に対して、3点、申し上げております。
第1は、平成31年度の予算につきましては、「骨太方針2018」で策定されました「新経済・財政再生計画」をもとに編成する初年度の予算ということになります。2025年度の国・地方を合わせた基礎的財政収支、PB(プライマリーバランス)の黒字化に向けて、計画に沿った歳出改革等々を確実に実現していかねばならん。これは初年度ですから、まず、ここで間違えると、後々ずっと影響していきます。
2つ目は、来年秋に消費税を2%引き上げ、10%ということを確実に実施するためには、環境整備をやっておかねばならんと、それにしっかり取り組んでおく必要があるということであります。消費税を5%から3%引き上げて8%にしたときには、いわゆる駆け込み需要とか、反動減といったもので、経済への影響が生じたのは間違いない事実であります。この経験を踏まえて、今回、10月にスタートしますから、補正予算を組むというのでは間に合わない。したがって、あらかじめ今年度のうちから、その点を踏まえて来年度の予算編成を考えておくことが大事なところだという点が2点目です。
3点目は、昨年来のいわゆる文書の改ざん等々、一連の問題があったことによって、財務省に対する信用が失われた、信頼の回復に向けて動かねばならんということです。したがって、信頼を取り戻すために、国民の将来に向けた、従来にも増した良い予算をつくろうと真剣に努力してもらいたいという話をしております。
本日、御議論いただいておりますように、平成という名のつく最後の予算編成でもあります。これまでの予算を振り返り、財政というものを振り返りながら、資料を見ていただいたと思いますが、5月でしたか、建議をいただきました。あの中に、後がないという危機感のもとでしっかりという表現が入っていたと思いますが、歳出改革、予算編成にしっかり取り組んでもらいたいと考えております。是非、皆様方からも引き続き活発な御議論をいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。
以上です。
〔 増田分科会長代理 〕 どうもありがとうございました。
それでは、報道の皆様方はここで御退室をお願いします。
(報道カメラ 退室)
〔 増田分科会長代理 〕 それでは、大臣が御出席でございますので、この機会に皆様方から御意見、御質問等を大臣にしていただきまして、フリーのディスカッションということに移りたいと思うのですが、先ほど来、ずっと名札を挙げておられました中空委員、土居委員、田中委員、田近委員と、こういう順番で進んでいきたいと思います。極力、手短にお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
〔 中空委員 〕 ありがとうございます。せっかく大臣も参加していただいたので、幾つかお話をさせていただきたいと思います。
資料1の15ページ、国債の保有・流通市場の状況というところで、調査課長のほうから、海外投資家は売買を積極的に行っていて、国債流通市場でのプレゼンスは高まっていますという説明がありました。それはそのとおりだし、だから海外投資家からがっかりされないように信認を確保する必要があるということはそのとおりなのですが、特に大臣に聞いておいていただきたいのは、こうした海外投資家も積極的にやっているわけではないということです。外国人投資家は、日本の国債を買いたくて買っているというよりは、マイナス金利で調達して安く調達できるお金で投資ができるというメリット、それに加え日銀が確実に買ってくれるということもあるものですから、その利ざやが簡単にとれるということで入ってきているだけなのです。少なくとも日本国債市場に喜んで入ってきて、日本国債市場が魅力的だからやっているわけではないということが言いたい点で、何か政策を失敗するとさーっといなくなる、そういう類いのものであろうという警戒は必要だということです。
あわせて、14ページですが、この表を見たときもかなりショックだったのですが、そもそも日本の将来推計において、景気の見通しは非常に甘い。今回は、成長実現という名前に変え、経済再生ケースではなくて、少し現実を加味しているという話ですが、それでもやはり甘い。この経済見通しも甘くて、さらには、人口推計も甘いとなると、これは誰から見ても何を推計しているのだろうという話になりかねないと思います。できるだけこういう推計のところも厳しくやっていく必要があるということです。これが2つ目です。
3つ目ですが、先ほど岡本委員や永易委員から消費増税は当然やるべきだという御指摘がありました。それは本当にそうだと思います。しかしながら、それとあわせて、必要なものでしょうが、臨時特別措置として大きなお金を使ってしまっては、問題だということも意識するべきではないでしょうか。私たちは財政再建を目指しているのであって、消費増税をすることが目的ではないということを考えると、トータルで見る必要があります。その中で考えなければいけないこととしては、歳入の増加、徴税の在り方にしても、消費増税だけではなく、いろいろな取り方があるということではないでしょうか。例えばそろそろ炭素税を考えることも一案だと思います。歳入の在り方のフレキシビリティーを高めるというのでしょうか、いろいろなことを考えていくべきではないかという点も、大臣、ちょっと頭に入れていただけるとありがたいと思います。
どれを答えていただいてもいいのですが、以上、意見です。ありがとうございます。
〔 増田分科会長代理 〕 かなり札が挙がっているので、3人ぐらいずつ区切って進めていきたいと思うので、次、土居委員のほうからお願いします。
〔 土居委員 〕 先ほど、大臣からの御挨拶で、まさに今年度は新しい「経済・財政再生計画」の初年度ということで、大変その御覚悟、大臣の決意のほどをお示しいただいて、私も大変心強いと思っております。
消費税の増税を確実にするということも非常に重要なポイントだと思うのですけれども、消費税が10%で終わるということは、我が国の財政状況からするとちょっと考えにくい、10%よりも更に上ということが、将来、いずれの日にか上げざるを得ない時期が来ると思いますので、是非10%に上げた後、それは悪くなかったのだと。もちろん増税ですから、嬉しいとか、とても良かったという国民の声はすぐにはないかもしれませんけれども、上げて間違いではなかったと思っていただけるような、そういう形の消費増税を是非やっていただきたいと思います。
もう1つは、確かに災害復旧、非常に重要な局面で、国民もその重要性を今、肌で感じていると思います。そのためには、やはり財政がしっかり余力を持っていないと、急場しのぎの災害復旧のための余裕がないと、助けたい人を助けられない。こういうことも、是非大臣から国民にメッセージとして、財政に余裕がないと災害が起こった後、復旧できないということもあわせて、災害復旧の予算を執行するタイミングで、是非国民にお伝えいただきたいと思います。
〔 増田分科会長代理 〕 それでは、田中委員、どうぞ。お願いします。
〔 田中委員 〕 ありがとうございます。
先ほど、大臣が平成最後のということをおっしゃって、そして調査課からも、資料1の4ページにあるのですが、年表をつくっていただきました。そういう歴史的な視点で、僣越ながら申し上げたいと思います。
私は、2020年以降の日本の姿について、夢ではなく、やはり現実的な路線で、その方向性を今の政治は出し切れていないのではないかと思います。その結果として、やはり国民は不安です。先が見えないということは前から言われてきましたけれども、人生100年という言葉で更にその不安を増長させているようなところがあります。その不安というのは、やはり確実な情報がないために覚悟が決められない、何をどうしたらいいのか分からないというところに基づく不安です。
更に、この不安というのは歴史に鑑みれば、大体、大きな過ち、誤った選択をしていると思います。例えば、第1次世界大戦から第2次世界大戦のドイツは、結局は国民が民主主義を追放してファシズムを選択していますけれども、今、ナチスの研究などでは、その最大の原因は国民の不安だったと言われています。
そのように考えると、厳しい現実でもいいのですけれども、やはり2020年以降、日本は何を覚悟して、どこまでできるのかということについて、もう少し具体のイメージを国民と共有していただきたいというのが、私の、一国民からのお願いでもあります。
以上です。
〔 増田分科会長代理 〕 ありがとうございました。
今、ちょうど3人の委員の方から御発言いただきました。フリーディスカッションということなので、明確な、これが質問だというわけでもないのですが、3人お聞きになって、大臣のほうから御感想でもお願いしたいと思います。
〔 麻生財務大臣 〕 中空委員の、買いたくて買っているわけではないというのは正しいのですけれども、他に買うものもなく、確実だからという要素もあると思う。大きいですよ。これ、外国人に聞いたって皆言うから。彼らもそれだけかたいので買っているというのも事実だと思いますし、事実、国債はドルやらユーロでは買わずに円で売られていますから、そういった意味では、自国通貨だけで発行しているのはアメリカ、日本、スイス、ノルウェーぐらいかな。他はユーロやら何やら、皆外貨でやっているんだと思う。確かにおっしゃるとおりですけれども、そういった点にはそれなりの理屈がなければ、買いたくて買っているわけではないけれども、結論、儲かるから買っているのであって、あの人たちは損すると思ったら買いはしませんからね。そういうものだと思っています。
経済の見通しが甘いというのは、なかんずく甘いのは先ほど出ていた人口推計です。人口推計という政府が出す資料の中で最も当たると言われた資料が外れている。合計特殊出生率が2.0になるという予想でやっているのですけれども、全然増えなかったとか、平均寿命だとか、こんな大きなずれが生じてしまったのが原因だったと思っています。
経済の話も、いろいろな意味でフレキシブルに考えなければいかんというお話だったので、間違いなくそうなのですが、私は日本で一番考えなければいかんのは、皆様は日本はこれから何で食おうと思っているのかということだと思っています。
例えば、イギリスは、重商主義時代のときに稼いだ金をためて、ロンドンの中にシティというまちをつくって、早い話が、そこで世界中に金貸しを始めたわけでしょう。アメリカも、戦後、世界のGDPの40%を1カ国で握って、ウォールストリートをつくって、そこで世界中の金を集めて、サブプライムローンなる怪しげな金をつくって、それを世界中に売り飛ばしたこともあるわけでしょう。
日本は、あれをやるのですかね。金、これだけたまっていますよ。対外純資産世界一とか、個人金融資産だって1,800兆円持って、我々はイギリスやらアメリカと同じように世界中の金を集めて金融をやるのですかね。皆何で食っていこうと思っているのですかね。それは政治家が考えることですか。私、それが知りたい。私、自分なりに考えはありますよ。しかし、言おうものなら、全く別の意見で、それは政治家がしゃべるべきことではないとか言う人がいっぱい、学者にもおられますし、もちろん新聞記者、マスコミにもいっぱいいるのだけれども、誰が考えているのか。私、正直、そこのところが分からない。そこのところは、我々の世代だけでなく、中空委員を含む今後の世代でもしっかり考えてもらわんといかんのではないかと思います。
それから、歳入はもっといろいろなフレキシブルなものを考えなければいけないと。間違いないです。私もそう思います。こちらを下げて、こちらを上げるとか、いろいろなことを考えなければいけないのは確かだと思います。財務省は、今、少なくとも金を考えるときに、予算付けるという発想しかどうしてもありませんけれども、例えば、事業承継税制というのを去年12月にやらせてもらいましたけれども、一時期は、亡くなったときに入ってくるはずの多額の相続税があれによって入ってこないことになる。しかし、これによって会社はそのまま存続しますから、引き続いて法人税だ、事業税だ、もちろん個人の所得税やら何やらが入ってくるほうが全体としてということを考えて、あれをやらせてもらったのです。
この半年ぐらいの間に、よく知っている人から、事業を息子に譲ることに決めましたという話をよく聞きます。息子は、銀行を辞めて帰ってきている。この事業承継税制によって相続税を払う予定がなくなったものだから、その分でうちは新しい設備を入れますとかいうのは、今年に入ってもう十何人聞いたと思います。一つの例ですよ。
企業で、内部留保が446兆円もあるのでしょう。企業は、その金をためて何をするのですか。金利もつかないのに。そう言っても、いつの日か危ないときがあるとずっと言っていますよね。そういう話をされていますけれども、その金をもっと使いたくなるようなものを考えたほうがいい。何に使いたいのですか。私は、それが分からないのです。設備投資か、配当か、もしくは給料を上げる、普通はその3つに使われるものですけれども、御存じのように内部留保はこの4、5年平均して、大体25兆円増えています。今回、40兆円増えていますけれども、平均25兆円程度増えて、設備投資は2兆円から3兆円、給料は2兆円から5兆円毎年増えています。
内部留保はそういったことになっていますから、その金はもっと別のものに使われてしかるべきではないですか。内部留保に金利がつくならまだいいけれども、今、ほとんどつかないわけでしょう。そうなってくれば、正直、何にその金を使おうとするかという理論が私には全然分からない。元企業経営者だから、特にそう思うのです。何を考えているのだろうと、正直、私には分からない。
ただ、今の時代は金が余って、金があっても金を借りに来ないという前提で経済学の本を書いてもらわなければいかんのですけれども、学者は全然不勉強ですから書きませんものね。書かないでしょう。皆金があれば、金利が安ければ金を借りに来るという前提の経済学の本は何十冊とあります。しかし、今、その逆が起きているのですから、それに合わせて、是非こういった時代に合わせた本を、きっと学者は後づけでいろいろなことをしばらくたつと書くのでしょうけれども、それは歴史の話であって、これからの話を書いてもらいたいというのが率直な実感です。
それから、土居委員の質問に関連して、これも私どもは、ヨーロッパと比べてみて、いわゆる高福祉・高負担でやるのか、アメリカみたいに低福祉・低負担でやるのかといろいろ悩んで、基本的には中福祉・中負担で行こうと、大体そういった合意ができていると思うのです。これは、まだ与謝野先生が生きておられるころの話、あのときは政調会長をしていたときだったと思うのですけれども、そのとき、この話を延々とやって、中福祉ということになって、今のような話になってきていると思うのです。
ヨーロッパ、北欧みたいに20%を超えるようなところまで行ったほうがいいのか。これは人間の生き方の話ですから、もう1回、真剣に考えていかなければいかん大事な問題だと思います。低福祉・低負担でやって、オバマケアを吹っ飛ばすというようなアメリカみたいなことをやるのか。それはごそっと下げられますけれども、その分だけ福祉はというのが今の日本にはまるか言えば、なかなか難しいのではないかと思うのです。やはりある程度ということになると、直間比率やら何やら考えたら間接税でいかないと、高齢者の比率が増えてきて、より働くことがなくなった高齢者の方々の絶対量が増えて、払うほうの勤労者の絶対数が減ってきて、その比率が、かつての6対1から、もはや2対1ぐらいになってくると、3倍にしてもらわないと計算が合わない。
それから、災害復旧に財政の余裕がというのはもう間違いない話ですが、やはり今回の地震を見ても、もう既に自衛隊の活動も、本日中に2万4,000人から2万6,000人の数になると思いますけれども、これだけ速やかに、暴動が起きるわけでもなく、何にもなく自衛隊が出ていける。この国の民度の高さというのは非常に素晴らしいレベルです。私どもは、そういった国民を有しているのと、もう1個は、これまで災害というのが、この国は台風とか、地震とかいうものには、もう慣れていると言えば慣れているのです。ですから、この国の国民というのは、起きた翌日から建設の槌音なんて普通にやるわけです。しかし、それに甘えていると、ろくなことはない。
江戸時代の資料を見たのですけれども、江戸の270年間、大火が17回起きたと書いてあるのですが、大火の条件は、1,000人以上亡くなっていないと、焼け死んでいないと大火と言わなかったと書いてあるのですけれども、その話によると、江戸ははなから大火が起きるという前提でうちを建てる。したがって、うちの柱は3寸角以上は建てさせない、火事が起きたら消火はしない、とにかく前のうちは全部倒す、そして類焼させないようにするというルールなのです。いろは組なんかをつくって。だから、最初からうちを倒しやすいようにつくっている。したがって、すぐさまちゃんとできるように、板と3寸角なんかが大量に木場に用意してある。
米も、今で言う町内会みたいものでしょうけれども、町会所に50万石用意していると書いてあるのです。50万石と簡単に言うけれども、当時の年間の消費量が三百何十万石ですから、すさまじい米を江戸にためていたわけです。しかも、それは政府支出ゼロです。
それを組合、町、町人だけでやっていますから。先ほどの引き倒すルールも、全部、町会所でつくっているというほど日本は自治が進んでいたのに比べて、この国は明治になってからのほうがむしろ違ってきているのではないですかね。私にはそう見えるのですけれども、いずれにしてもいろいろなものをもう1回考えないかんと思っています。
最後に、田中委員が言われた2020年以後の不安というのは、先ほど申し上げたところと一部重なるのですけれども、やはり今までの不安というのは間違いなくデフレが進んでいましたから、そういったときの不安と、今、また同じような状況かというと、6年前、7年前の不安と今とは大分違ってきていると思います。いろいろな人に会ってみても、少なくともオリンピック以後の話、新聞に書いてあるから、一応、皆つき合って2020年以後は心配ですと言っておけば、大体、普通の答えになりますから、そういうことは言われるのですけれども、2020年以降、少なくとも今のような経済は確実に行く。この不安の最大の要素は、多分、中国、北朝鮮、南シナ海というところの不安が一番大きいのであって、経済的な問題で今、特に不安を抱えているという話は、最近、聞かないと思っています。
将来どうなるかというのは、昭和20年代、戦争後のほうが間違いなくもっと不安でしたよ。今よりはるかに貧しかったし、私はその時代、学生ですから、生きていますので不安でした。先輩たちの退職金は幾らだろうなんて計算して入社している人は聞いたことがないです。それでも、あのころは、皆元気にやっていたのです。あのころは、そんなに将来が見えていましたかね。昭和25年、朝鮮戦争が始まったとき、私どもがおりました北九州は、空襲警報も、夜間の灯火管制も全部やっていましたから、そのころのほうがよっぽど不安だったと思いますけれども。だから、何がどうなるかというのは、正直、一概にはなかなか言いにくい問題だとは思います。
〔 増田分科会長代理 〕 大臣には、本当に丁寧にいろいろお話しいただきまして、ありがとうございました。
それでは、田近委員と竹中委員、簡潔にお願いします。
〔 田近委員 〕 大臣には、再三、財政健全化の要望を申し上げ続けているのですけれども、私、本日は1点、またぎりぎりの要望ですけれども、財政健全化の目標に関して、是非大臣の力で数字の裏づけを与えてほしい、これが私の本日のお願いです。
資料1の20ページ、今までこの財審では、「骨太2015」しかないと言ったら語弊はあるのですけれども、「経済・財政再生計画」をどうやって日本の財政に反映させるかということでやってきた。春の建議で、それを更に2016、17、18年度以降、反映させるかということでやってきた。それぞれの中身については大臣に御説明する必要はないですけれども、ある意味で国の一般歳出、社会保障、地方財政についての枠を決めた。
22ページ、それが今度「骨太2018」になるのですけれども、似て非なるとは言いませんけれども、集中改革期間が基盤強化期間になって、16、17、18年度が19、20、21年度になった。では、一般歳出に対しての枠をどうするかというと、数字がないのですけれども、ただ、安倍内閣のこれまでの歳出改革の取組を継続ということは、大臣の力をもってすれば、いろいろな場でこれを数字に翻訳できるのではないか。社会保障に関しても、高齢化要因というのは分かっているわけですから、これも数字に翻訳できる。
前回財審でかなり議論したのは、22ページの下ですけれども、実は19、20、21年度というのは高齢化の踊り場ではないのか。言いましたよね。22年度から本格的に団塊の世代が後期高齢者に入り始めるので、19、20、21年度にためをつくっておかないといけない。それもありますよね。地方財政に関しては、18年度をもとに一般財源を確保する。これは数字が入った。
そういうことで、だんだんこちらの言い分もぎりぎりになってきて、言うこともなくなってきましたけれども、だから、是非、これから19、20、21年度、そして22年度を展望して、大臣の力で「骨太方針」に書いてあることを数字に翻訳するというか、表現することを発信していただきたい。それがないと財審も、何が成功したのか、しなかったのか、なかなか判断がつかない。
私の本日の要望はそれです。
〔 増田分科会長代理 〕 それでは、竹中委員、どうぞ。
〔 竹中委員 〕 ちょっとニュアンスが違うので、今の田近委員のお話に、大臣、返事していただいたほうがいいかも分からないと思うのですけれども、どうでしょう。いいですか。
〔 増田分科会長代理 〕 それでは、大臣。
〔 麻生財務大臣 〕 社会保障関係費はこの3年間、毎年の伸びを5,000億円にとどめた。そして、その他の一般歳出を毎年約300億円ということで、3年間トータルで1兆6,000億円にしたのですけれども、これはできたのです。きっちりやってのけた。それは、間違いなく今の政府でやってのけた一つの大きな功績だと思います。
しかし、19、20、21年度は若い人と高齢者になる人の数の絶対量が、昭和19年、20年生まれの人がごそっと減っているのです。子供を産まなかったというのが一番大きな理由だと思います。だから、団塊の世代というのは22年度からばーんと出てくるというのが今回の話です。
そういった意味では、今までどおりの数字でいけば、増やす額をもっと減らさなければいかん。物理的に減らせるのです。他方で、具体的な数字を現時点で見通し、書き込むのは難しく、政治的にも様々な議論がありうる。このため、今まで同様にやらないかんという表現で書かれているのです。
〔 増田分科会長代理 〕 ありがとうございます。
それでは、竹中委員、大槻委員、赤井委員と、すみませんけれども、発言のほうはそこまでとさせていただきたいと思います。
では、竹中委員、どうぞ。
〔 竹中委員 〕 久しぶりに、財審で太郎節を聞かせていただきました。ありがとうございました。
私は、今、新聞とかでいろいろ大きく騒がれている障害者雇用率の問題で、いろいろなメディアからの取材がわーっと相次いでいるので、ちょっと私の気持ちを言わせていただきたいのですけれども、約70年前にできたあの制度は間違いなく制度疲労を起こしているのです。人を数字でカウントするというような非常に失礼な制度であるということから始まって、しかもプロップ・ステーションで活躍しているような大変重い障害のある人は、その雇用率の中にも入らない。つまり、職安に行っても、あなたみたいなのが何しに来たのかと追い返されるような状況の人たちの中にも、支える力がいっぱい残っているわけです。
ですから、これからすべきことは、あの雇用率の数字をごまかした人らを単に罰するとかいう話ではなくて、いろいろな働き方を障害のある人ができて、本当のタックスペイヤーになる人が増えるようにするということを、これはやはり政治が主導していただかないと、やはり行政はどうしても自分たちがつくった制度をずっと守りたいからこそ、70年、あれで来たわけですから、是非政治が率先して、全ての人の力を生かせるようにせよと言っていただきたい。これだけです。よろしくお願いします。
〔 増田分科会長代理 〕 ありがとうございました。
〔 麻生財務大臣 〕 昔、労働省に雇用促進事業団ができて、私は当時、まだ社長をしていたと思うのですけれども、炭鉱をやっていましたから、炭鉱というのは足が義足になったりした方もおられましたから、そういった人たちは皆、庶務課とかに勤めていたのです。だから、会社の中に身体障害者というのは、普通にどの石炭会社もいたと思います。私がいたとき、少なくとも貝島炭鉱やら、皆おられました。
労働省の雇用促進事業団に、当時、陳情でいろいろ話に行ったら、見た限り身体障害者がゼロだったのです。「ちょっと伺いますけれども、雇用促進事業団で身体障害者と書いてあるはずですけれども、おたくは何人、雇っておられるのですか」と聞いたところ、当時はゼロという回答だった。その後、ずっと増やされた記憶があります。
やはり今回の一番問題は、厚生省はきちんとやっていたのだろうけれども、財務省は数字が違っていたのだけれども、金融庁はぴったり合っている。何で金融庁と財務省は話が違うのか、おかしいじゃないか。そう言うと、金融庁は新しくできた役所なものだから、これはどうするのですかと聞きに行って、きちんとやったのだというような答えが想像できる。よく調べてみたら、警察庁も合っています。警察庁も、ぴったりゼロ。海上保安庁も。何でそちらはぴったり合っていて、財務省や、他の役所はこれだけ違っていたか。
もう1点は、今、言われたように、コンピューターとか、いろいろ機械が発達しましたので、いわゆる身体障害者と言われる方々の働ける要素、フィールドというのは増えてきているのです。そういったものにあわせてどうするかというのは別の問題として、これは主に労働省でされるのだと思いますけれども、やってもらわなければいかん。私も、そう思います。
〔 竹中委員 〕 ありがとうございます。
〔 増田分科会長代理 〕 ありがとうございました。
それでは、大槻委員、どうぞ。
〔 大槻委員 〕 ありがとうございます。
私、2点ほどなのですけれども、1つは、先ほど中空委員もおっしゃった海外投資家の話にもちょっと関連するのですけれども、海外の保有比率が高くなっているということ、それから株式市場もそうですけれども、海外との連動がこれだけ拡大しているということは、やはり相応に不安材料なのかと思っております。大臣、先ほど、いろいろな面で不安要素は今、あまり見当たらないということでありましたけれども、御存じのとおりマーケットのほうですと、新興国の動揺が相当遠い、日本から見ると直接的な連動性はないように見えますけれども、こういったデータを見ながら、そして万が一、ひょっとしてということも含めて考えますと、やはり少し不安に思う次第でございます。そう考えると、改めてJGB、国債残高に関する健全化の道筋というのは、やはりしっかりと付けていっていただきたいということが1点でございます。
もう1点は、今年の冬に海外調査に行かせていただきまして、IMFの方ですとか、カナダ当局の方とかとお話をしたときに、改めてカナダの例を見ても、過去に何らかのショックとか、痛みとか、悲惨な思いをしない限り、痛みを伴うような健全化というのは、なかなか国民の同意と、それから積極的な行動が見られないというような意見があったのですけれども、日本は、そういった悲惨な思いをすることなく健全化を進めていける一つの希有なというか、良い事例にしていっていただきたいということを切に思う次第です。
というのも、私たち、個人の方々、投資家等とディスカッションさせていただく機会が多いのですが、今でも消費増税については、総論として良くても、本当に自分たちの生活に対しての打撃を考えると、やはりなかなか積極的に賛成できないといった意見もまだ聞かれる中で、進めなければいけないものは進めていただきたいと思っている次第です。
以上です。
〔 増田分科会長代理 〕 それでは、大臣、どうぞ。
〔 麻生財務大臣 〕 今のお話は、1番目の話は2つあると思いますけれども、1番目の話は先ほど中空委員の言った話が基本的なところですけれども、外国人に買ってもらいたくなるような債券というところが今の日本の強さだと思っていますし、それを円でやってもらっている。そういった意味では、我々、自信を持ってはおりますけれども、何が起きたときはばっと引く可能性があるということは間違いない。そういうものだと思いますから、そこのところは注意しておかねばいかんところだと思っております。
もう1点、何でしたっけ。
〔 大槻委員 〕 すみません。痛みを伴うような健全化は難しいと言われる中で、消費増税をしっかりとやっていただき、健全化を進めていただきたいということでございます。
〔 麻生財務大臣 〕 安倍内閣になって、これまで2回、消費増税を延長しています。これを延長することによって、財政健全化へのステップとしてはかなり遅れる、後ろにずれることになった大きな要素の一つだと思いますので、そういった意味で私どもとしては、今回はきちんとできるようにおかないと財政健全化に結びついていかんと思います。今回は3%ではなくて2%ですし、いろいろな意味での対策を考えて、これをきちんとやれるような経済環境、値上げができるような状況をつくり上げていくということを、今回の予算で特にやっておかねばならんだろうと思っております。
〔 増田分科会長代理 〕 それでは、最後、赤井委員、お願いします。
〔 赤井委員 〕 ありがとうございます。では、簡単に1点だけ。
これまで出ていない視点で、これまでちょっとマクロの在り方ということだったのですけれども、ミクロにもかかわる、日本国土の在り方といいますか、国と地方の関係、これから人口減少も進みますし、地方でどのようなまちづくりをしていくのか、国土をつくっていくのかというような視点でのお考えがあればということで、今回、震災も起きましたし、私も関西から来ているので、災害が多くなってきているわけです。もちろん、その復旧には一刻も早く、お金も使いながらするべきだと思うのですけれども、今後、老朽化も進みますし、災害など起きたときに、これからもコストがかかってくると思うのです。災害は止められなくても、災害が起きたときに、できるだけコストがかからないようなまちづくりとか、人口減少のもとでも1人当たりコストが増えないような国土をつくっていくというような視点で日本を考えていく。まさに居住地域を誘導していくというようなことも含めて重要だと思うという意見です。
〔 麻生財務大臣 〕 先ほど、江戸時代の話を引きましたけれども、江戸最初の明暦の大火が起きたとき、江戸の人口は50万人なのですけれども、270年たった明治維新のちょっと前ぐらいになると、100万人を超える世界最大の都市に膨れ上がっております。地図を見ると、間違いなく火事のたびにまちが区画整理されているのです。当時は偉かったと思います。そのたび、火が類焼しないように道路の幅を広くとるということをやっていっている。
また、名古屋は、大空襲を食らって灰じんに帰したようなまちだったのですけれども、名古屋市の助役が戦後の復興をやるときに大きい道路を幾つもつくって、当時、まちの真ん中に飛行場をつくるのかと言われたそうですけれども、それをやってのけて、結果として今日のきちんと区画整理のできた名古屋のまちができた。
傍ら、東京はどうだったかというと見るも無残ですよ。東京の世田谷あたりは、右に曲がって、右に曲がって、右に曲がっても絶対もとに戻りませんから。世田谷に住んでいる人なら分かっているでしょう。まちの区画なんかないですよね。 そういった意味では、やはり戦後の吉田内閣時代のこういった区画整理に対する配慮はゼロですね。当時の政府にはそれだけの余裕がなかったのだと思いますけれども、少なくともあのあたりの田んぼが単なるまちに変わっていっただけの話だと思います。
そういった意味では、今回の地震の話も例にとって、それがうまくできるかどうか。これは北海道が考えないといかんところなのかもしれませんけれども、少なくとも高齢者のことを考えたとき、やはり田舎に住んでいる買い物難民をどうするか。私は田舎にいるから良く分かるけれども、買い物難民への対応策をどうやっていくか。やはりいろいろな意味で、今回、出てきている、いわゆる運転手がいない自動車というのは、間違いなく買い物難民に対する答えにはなりますわな。
そういったようなものできちんと対応するのかと言えば、高齢者で買い物難民みたいになる人のうちは、リバースモーゲージでも何でもいいですけれども、都心部に移ってもらえば、救急車や何やらの交通費、救急車等々がたびたび行く経費はがたっと落ちます。もちろん医療経費も落ちます。開いた商店街の2階、3階、空中権を全部、市で買って、その上を老人ホームに全部つくりかえてもらいます。毎日、下に降りてきて商店街に歩いてもらいますから、人通りも増えます。ちゃんとまちの人たちが面倒を見ていってくれます。そういったようなまちづくりをやったほうがいいのではないかという話をやったことがあるのですけれども、当時、受けませんでした。私、総務大臣のときにやったことがあるのですけれども、地方では全く受けませんでした。
あれからまた十何年たっていますので、少し時代が変わってきているのかなとは思いますけれども、コンパクトシティというのは決して間違った発想だとは思いません。日本の場合は、ヨーロッパみたいに別々に住むというより、まとめて住んだほうがより安心なのではないかというような話は、災害やら何やら起きたときに、特にそういうことが言えるのではないか。高齢化が進めば、特にそう言えるのではないかと思って、言うなら今かなと思わないでもないというのが正直な実感です。
〔 増田分科会長代理 〕 ありがとうございました。
大臣には、時間を延長して大変御丁寧に対応していただきまして、感謝を申し上げたいと思います。まさにフリーディスカッションという形になりましたが、これで終了させていただきたいと思います。
麻生大臣は、所用のため、ここで御退席をされます。
(麻生財務大臣 退室)
〔 増田分科会長代理 〕 それでは、ちょっと時間、延長したのですが、本日の議事、これでおしまいということで、今後の進め方ですけれども、こちらについては従来どおり社会保障や地方財政などの個別の歳出分野について御議論いただいて、しかるべき時期に平成31年度予算編成に関する考え方を建議として取りまとめたいと、このように考えております。よろしくお願いいたします。
それでは、時間が参りましたので、以上で本日の議題を終了とさせていただきます。
なお、会議の内容については、会議後の記者会見で私のほうから御紹介させていただくことといたしますので、会議の個々の発言につきましては、本日、大臣、大変自由に、様々御発言をいただきましたので、皆様方から報道関係者に対してお話をすることのないよう、御注意をいただきたいと思います。
次回につきましては、改めて事務局から連絡をさせていただきます。
本日は、これにて閉会をいたします。どうもありがとうございました。
午後5時15分閉会