このページの本文へ移動

財政制度分科会(平成30年5月14日開催)議事録

財政制度等審議会 財政制度分科会
議事録

平成30年5月14日
財政制度等審議会


財政制度等審議会 財政制度分科会 議事次第

平成30年5月14日(月)10:00~12:00
第3特別会議室(本庁舎4階 中-412)

1.開会

2.議題

  • 経済団体からのヒアリング
    • -経済同友会「財政健全化に向けた取組みについて
      ~長期財政試算を踏まえて~」

  • 新たな財政健全化計画等に関する建議(案)審議
    • 総論
    • 社会保障、地方財政
    • 文教・科学技術、社会資本整備、農林水産、防衛

3.閉会

出席者

分科会長代理

田近栄治

今枝大臣政務官

長峯大臣政務官

大鹿次長

神田次長

青木総務課長

中野司計課長

奥法規課長

若原給与共済課長

関口調査課長

湯下主計官

小宮主計官

高橋主計官

中島主計官

岩佐主計官

竹田参事官

前田主計官

中山主計官

内野主計官

北尾主計企画官

黒川行治

神 津 里季生

佐藤主光

角 和夫

竹中ナミ

土居丈朗

永易克典

宮島香澄

臨時委員

秋池玲子

伊藤一郎

井堀利宏

老川祥一

大槻奈那

岡本圀衞

葛西敬之

小 林 慶一郎

小林 毅

末澤豪謙

十 河 ひろ美

田中弥生

冨田俊基

増田寛也

神子田 章 博

宮武 剛


午前10時00分開会

〔 田近分科会長代理 〕 ただいまから、財政制度等審議会財政制度分科会を開催いたします。御多用中のところ、御出席いただきまして、ありがとうございます。

本日は、まず経済団体からのヒアリングを行います。その後、新たな財政健全化計画等に関する建議について、御審議いただきたいと思っております。

お配りしている建議案につきましては、これまで小林毅委員、土居委員、冨田委員、中空委員、吉川委員に御議論いただき、取りまとめていただきました。ありがとうございます。

それでは、最初の議題として、経済同友会からの御報告をいただきたいと思います。岡野貞彦常務理事より「財政健全化に向けた取組みについて~長期財政試算を踏まえて~」ということで御説明いただき、引き続いて10分程度で意見交換したいと思います。

よろしくお願いします。

〔 経済同友会岡野貞彦常務理事 〕 経済同友会の岡野と申します。よろしくお願いいたします。早速でございますが、本題に入らせていただきます。

パワーポイントの2ページ目をお開きいただけますでしょうか。財政健全化のポイントと書かせていただいておりますが、この4点が、本日、私ども経済同友会の主張としてお話をさせていただく点でございます。まず最初に「出ずるを制する」社会保障制度の抜本改革、2番目に消費税率10%への引上げの確実な実行とポスト10%への引上げの検討、3番目に財政状況をチェックする第三者機関の設置、4番目に税と社会保障の一体改革への再挑戦、これらについて御説明をさせていただきます。

3ページに参らせていただきます。まず、現状認識でございますが、我が国の債務残高はGDPの約2倍に達しており、今後、市場金利の上昇や、我が国の財政に対する信認低下に伴うリスクプレミアムの拡大から、更なる事態の悪化を懸念しております。経済及び社会の持続的発展は、国家財政の持続可能性に大きく依存しており、財政健全化に向けた改革目標と具体策を策定し、速やかに実行すべきと考えております。また、企業経営に責任を持つ経営者こそが、経営努力を通じて経済成長の実現に貢献しなければならないという考えも持っております。

4ページ目に入らせていただきます。歳出の面でございますが、やはり財政健全化の基本は「出ずるを制する」歳出改革が重要だということでございます。歳出の中でも、特に社会保障制度の抜本改革が不可欠です。経済同友会では、これまで政府などで検討されている主な施策の効果を1つずつ確認して、どのような抑制ができるかを概算してみました。それが、この表になっております。抑制規模は、2023年度時点で概ね5兆円程度になるという概算の結果が出ております。

5ページ目をお願いいたします。財政健全化を実現するための歳出改革の在り方でございます。まず、社会保障関係費は、集中改革期間で示した目安を次の計画でも設定し、社会保障関係費の伸びを最大でも3年間で1.5兆円以下に抑制すべきです。また、医療・介護保険制度における総報酬割の導入といった財政調整によって財源を捻出するのではなく、社会保障給付そのものの抑制も図るべきです。さらに、団塊の世代が後期高齢者になり始める2022年度までに、データヘルスの推進を含む社会保障制度改革に明確な道筋をつけるべきだと考えます。先程4ページで歳出抑制のメニューを提示しましたが、この他にも、所得だけではなく資産も考慮に入れた負担への見直し、診療報酬・介護報酬の適正化、経済や人口構造等に応じた給付率の調整なども検討すべきと考えております。

さて、6ページになりますが、今般、私ども経済同友会では、税と社会保障を軸とした財政構造改革の在り方を考えるべく、2045年度までの長期財政試算を行ってみました。来年10月に消費税率10%を着実に実施した後、仮にですが、2021年度以降、毎年1%ずつ消費税率を上げていって、2045年度までプライマリーバランス黒字を維持できる水準まで消費税率を引き上げるという形で試算をしてみたところです。また、全要素生産性上昇率が1.1%という内閣府試算のベースラインケースと同時に、それをベースシナリオと置きましたが、TFP上昇率が足元の水準である0.3%程度に留まるリスクシナリオも合わせて、2つの試算を計算してみました。

7ページを御覧いただけますでしょうか。こちらがベースシナリオに基づいた試算であります。特段の歳出改革がない場合、消費税率が14%に達する2024年度にプライマリーバランスが黒字化します。その後、45年度までプライマリーバランスが黒字を維持するには、消費税率は17%まで引き上げなくてはならなくなります。また、公債等残高(対名目GDP比)は2040年代にかけて低下するという形になっております。

一方、8ページですが、リスクシナリオの場合では、プライマリーバランスの黒字化は、2028年度、18%まで引き上げることによって実現します。その後、2045年度まで黒字を維持するためには、22%まで消費税率を引き上げる必要があります。また、公債等残高(対名目GDP比)は、2030年代初頭にかけてわずかに低下するものの、その後、上昇するという形になっております。

なお、いずれのケースをとりましても、単年度の財政収支が黒字化することはありませんでした。

以上が試算の結果になっております。

そこで、9ページでございますが、歳入と財政規律の在り方について申し上げます。まず、プライマリーバランスは、団塊世代全員が後期高齢者になる2025年度より前に黒字化を実現すべきであると考えます。そのためにも、2019年10月の消費税率10%への引上げを確実に実行し、速やかにポスト10%への引上げについて検討を開始すべきであります。また、財政規律を堅持するためには、財政状況を客観的にチェックし、政府を監視する独立財政機関といったような第三者機関を設置することも必要です。三党合意の税と社会保障の一体改革は既に頓挫しておりますが、社会保障のビジョンを再構築し、社会保障の充実、安定化、そのための安定財源確保と財政健全化の両立を目指すために、改めて税と社会保障の一体改革に取り組むことが必要だと考えております。

最後、10ページになりますが、先般、私どもの年次総会で発表いたしました代表幹事所見のうち、財政や社会保障についての記述を紹介させていただいております。

御清聴ありがとうございました。以上でございます。

〔 田近分科会長代理 〕 ありがとうございました。

続いて、今の「財政健全化に向けた取組みについて」の御報告に対しての御意見、御質問を承りたいと思います。どちら様からでも、御発言いただきたいと思います。

では、角委員。

〔 角委員 〕 どうもありがとうございました。

おっしゃっている基本的なラインというのは、当然、経済界としても賛同することになろうかと思いますけれども、1つは、消費税率10%への引上げを確実に来年秋に実行するというところで、基本的に前回の5%から8%では3%、8%から10%では2%ですから、上昇が3分の2、そこに軽減税率を入れるわけです。それに加えて、若い人たちのためにお金を実際に使うということですから、おそらく前回の3%引上げ時に比べて影響は3分の1以下であろうと思います。自民党の一部の若い方があのような発言をされて、ちょっと困ったなという感じなのですけれども、やはり影響度がいかに低いかということをもう少し皆さんに知っていただく必要があるのではないかと思います。

もう1つは、2025年度をターゲットに、要するに団塊世代が75歳以上となる年をターゲットに税と社会保障の一体改革はされてきたと思いますけれども、先般、2040年に65歳以上人口がピークに達するのに向けて国民会議をつくり、例えば健康寿命を伸ばすとか、介護が必要になる人を少なくするとか、そういったことをこれから御議論になるという新聞報道を見て非常に喜んでおりますけれども、ぜひ、その委員には財政規律に見識のある方にお入りいただきたいと思います。

それと、税率を10%以上に上げるのは当然必要だということはよく理解しますけれども、毎年1%というのは、確かに影響が緩やかという意味では良いに決まっているのですけれども、そうしたときのいわゆる社会的なコスト、例えば、企業の色々なシステムを変えなければいけないとか、鉄道事業のことを言わせていただきますと、例えば毎年1%上がっても、それを運賃に転嫁することはどう考えても不可能ですので、3年分ためて上げる等の対策になろうかと思いますが、そこをどのように乗り切っていくのかというあたりを教えていただければと思います。

以上です。

〔 田近分科会長代理 〕 では、最後にお答えいただくということで、続けさせていただきます。永易委員、井堀委員、佐藤委員、小林委員とお願いします。

〔 永易委員 〕 ありがとうございました。

私も財界人の一人でございますので、言っていることは非常によくわかります。ただ、いの一番に「出ずるを制する」と。このとおりだと思うのですけれども、いずるを制するのであれば、1番は社会保障というのは誰でもわかりますが、やはり重要なのは補正予算です。財界人としては非常に難しい判断になるのは間違いないが、これに対する財政規律が欠如しているというのは明らかです。毎年毎年、数兆円に上る補正予算を組んでいます。こういうものに対してどう考えているのか、お聞きしたいと思います。よろしくお願いします。

〔 田近分科会長代理 〕 本日、時間が限られているので、続けていかせていただきたいと思います。

それでは、井堀委員、佐藤委員、小林委員の順番でお願いします。

〔 井堀委員 〕 ありがとうございます。

消費税率の引上げの試算は非常にもっともらしいと思うのですけれども、その前に、これまでの財政再建が、結局うまくいかなかったという反省のもとに、今回、新しい提言が出てくると思うのです。今までの財政再建がうまくいかなかったのは、どこに最大の問題があって、それをどういう具合に直すと、今後うまくいくのか。今までと、この提言との繋がりについて、少し御説明いただければと思います。

以上です。

〔 田近分科会長代理 〕 質問が色々出ていますけれども、最後にまとめてお願いします。では、佐藤委員。

〔 佐藤委員 〕 これは、多分、財審ではなくて税調での議論だと思うのですけれども、消費税増税に伴う税収確保というのは機械的試算が多いのですが、本来であれば人々の反応等を含めたマイクロファウンデーションをつけて、やはり企業や消費者がどのように反応するのかを織り込んだ形でないと、正しい税収見込みは出せないはずです。実は、IMFなどは自分たちのモデルとして、DSGEのモデルを使って推計していますので、そのようなマイクロファウンデーションを使ったモニタリングが少し必要かなというのが1つ。

2つ目、もっと簡単ですけれども、今後の大きなチャレンジは、シェアリングエコノミーやデジタル化だと思います。実は、我々は、消費税は安定税収だと思い込んでいるのですけれども、民泊なども含めてシェアリングエコノミーが普及していくと、多分、消費税の課税ベースに大きな穴があいていくはずなので、これをどう織り込んでいくのか、あるいは、どう対処していくのか、これが課題かと思います。

〔 田近分科会長代理 〕 小林委員、お願いいたします。

〔 小林(慶)委員 〕 ほとんど賛成なのですけれども、消費税率10%の後のプランを検討して出すべきだというお話に賛成なのですが、そのときに、やはり最終的な出口というか、最終的にどこまで、いつまでに上げるかということを国民に示すことで、将来不安は取り除けると思います。本日の試算の中に答えはあったのかもしれませんが、今、佐藤委員がおっしゃったように、多分、数字自体は仮定の置き方によって大きく変わってくる可能性があるので、最終的に消費税を何年以内に、どこまで上げることが出口なのかという長期的な経路を示されれば、経済に対する影響が一番良くなるのではないかと思います。

〔 田近分科会長代理 〕 では、ここで岡野常務理事にお答えいただいて、もし足りないところがあれば、もう一度議論いただくということでお願いします。

〔 経済同友会岡野貞彦常務理事 〕 毎年、1%ずつ上げることについての是非ですとか、今、小林委員からは、いつ、どのくらいという経路がクルーシャルな話になるというお話がありましたが、一応、今回の試算は、いつ、どのくらいということを決めるよりも、負担が増えていくことによって、財政の構造がどの程度変化するかを確認したというのが試算の目的でありまして、申し訳ないのですが、1%上げることの是非までは突っ込んだ形で議論していないというのが現状であります。したがって、それぞれの産業ですとか、もしくは先程お話がありましたような、国民がどのように消費税の上げ方によって行動するのかというところまで議論して、この1%にしているということではございません。

一方、補正予算についての御指摘がございましたが、実は内部では、補正予算が財政構造に大きな影響を与えているので検討を始めなければいけないということを、現在話し合っている段階でございます。まだその分析までは行っておりませんが、問題意識はまさに同じところにあると思っております。

それから、これまでの反省から、どのような点を重視してこのような形の試算をしたかというお話でございますが、まず1つには、成長率の見通しが甘かったのではないかという意識が同友会の中にはあると思います。特に、結果として、成長率が下振れると税収見積もりとの乖離にも影響しています。なので、今回は、TFPなども含めてリスクシナリオを置いておりますけれども、これも財政構造がここまで悪くなっているという確認をしたいということと、専門家の方々が共有している危機感と、多くの国民の方々が持っている危機感に若干違いがあるのではないかということで、わかりやすい仕組みで世の中に提示して議論の素材にしていただきたいと、そのような意図でつくらせていただいた次第です。

シェアリングエコノミーの税収に対する影響については、議論は始めておりますが、まずデジタルエコノミーの中身の検証が先になっておりますので、私どもとしてまだ結論は出ておりません。

〔 田近分科会長代理 〕 まず、今、御意見をいただいた方で、さらに御質問、御意見があれば、お願いいたします。では、岡野常務理事のお答えでよろしいですか。

では、岡野常務理事、本日はどうもありがとうございました。御所用のために、ここでお帰りになるということであります。ありがとうございました。

〔 経済同友会岡野貞彦常務理事 〕 どうもありがとうございました。

(岡野常務理事 退室)

〔 田近分科会長代理 〕 「新たな財政健全化計画等に関する建議(案)」の審議に移らせていただきます。これから、全体を3つに分けて審議したいと思います。まず、建議の総論について、次に主要分野において取り組むべき事項、各論のうち社会保障、地方財政について、その後に残りの分野について審議を進めたいと思います。進め方としては、皆様から直接御意見等をいただいて、起草委員の方が答えていただくと、そのような形でやりたいと思います。

議論していただく前に、起草委員会の様子を一つお伝えしたいのは、この場でも多少議論になりましたけれども、財務省の昨今の問題について建議でどう取り上げるかということがありました。結果的には、起草委員の中でも意見を集約することができなかったわけですけれども、私としては、本日、御意見がなければそれでいいのですけれども、あるかもしれない御意見も踏まえて、最終的には榊原会長のリーダーシップのもとで取り計らっていきたいと思います。私のほうからは以上です。

それでは、まず総論の本文、参考資料、概要について御意見をいただきたいと思います。

老川委員、井堀委員、岡本委員という順番でいきたいと思います。では、老川委員、お願いします。

〔 老川委員 〕 総論の2ページにありますように、早期の財政健全化がデフレ脱却、持続的経済成長に不可欠な前提であるという御指摘で、これはまことにそのとおりで、今まであまり言われたことがなかったような気がします。つまり、成長あっての財政再建という論理のほうが多く語られていて、財政再建というのは成長を阻害するというような主張が行われる傾向があったと思いますが、そうではないのだと、成長のためにも財政再建が必要だと。このようなことは大いに強調していい話で、私はこの趣旨には賛成いたします。

その上で、冒頭の2行「早期の財政健全化は、現政権の最優先課題であるデフレ脱却・持続的な経済成長の実現のために不可欠である」というのはそのとおりなのですが、あまりこのようなように言われたことがないので、「不可欠な前提であることを忘れてはならない」、あるいは「認識すべきだ」と、ここのところの表現をもう少し強調したほうが、前のページの、これ以上の財政再建の遅れは許されないということと繋がりやすいのではないかと思いますので、その点だけ申し上げたいと思います。

以上です。

〔 田近分科会長代理 〕 では、意見を承って、起草委員のほうに答えていただくということで。井堀委員、お願いいたします。

〔 井堀委員 〕 先程の同友会の試算とも関係しますが、同友会の試算だとベースシナリオと、もう1つはリスクシナリオがあり、ベースシナリオは成長率がもっと低いものを前提にしているわけです。政府のものは、成長実現ケースとベースラインケースで、12ページの書きぶりだと、成長実現ケースは危ないかもしれないけれども、ベースラインケースは大丈夫そうではないかという感じに読めるわけですが、同友会のものだとベースラインシナリオ自体も危ないのではないか。成長率に関しての長期試算の前提が下振れする可能性について、少し触れたほうがいいのではないかという気がします。

以上です。

〔 田近分科会長代理 〕 ありがとうございました。

では、岡本委員。

〔 岡本委員 〕 ありがとうございます。

12ページの21行目、今、井堀委員からもお話がありましが、なぜPB黒字化は実現しなかったのかという反省があり、経済成長が1つ、補正予算が1つ、消費税が1つ。その中で、補正予算と消費税はきっちり書き込んであると思うのですが、経済成長について、21行目は「『ベースラインケース』を前提にすべきとの意見もある」となっています。私も今まで色々意見を言いましたが、それは大抵、少数意見として扱われているのです。「意見もある」としますと、これは少数意見なのかなという感じがしまして、やはり「前提とすべきと考える」とか「すべきである」としていただきたい。その後の「仮に」も要らないと思いますが、入れるとしても、少なくとも「意見もある」というのはやめてほしい。

あと、先程の井堀委員の話などを受けると、「ベースラインケース」の前に「少なくとも○○すべきである」と。ここについては何か緩い感じがしますので、特にPB黒字化が2020年度から2025年度に飛んでいってしまったときに、今まで散々、こんなことでいいのかとかなり緊張感を持って議論していましたので、ここの表現はもっと厳しくしたほうがいいのではないかと思います。

〔 田近分科会長代理 〕 では、ここは重要な点でもあるので、老川委員の御意見は、財政健全化なくして経済再生なしということを言うのだから、冒頭のところでもしっかりそれを受けるべきだと、そのようなご趣旨ですよね。

〔 老川委員 〕 はい。

〔 田近分科会長代理 〕 それも含めて、ベースラインケースの扱いについて起草委員のほうから御意見ございますか。

〔 土居委員 〕 御意見ありがとうございます。

老川委員からのご提案は、その方向で修正するように、文章を検討させていただきたいと思います。

井堀委員と岡本委員の御発言ですけれども、確かにごもっともで、そのような保守的な経済見通しのもとに計画を立てるべきということですけれども、あいにく1月の内閣府の中長期試算では、2027年度までの時間視野で、ベースラインケースではプライマリーバランスの黒字化のめどが全く立たないというような結果になっている。その反面、成長実現ケースでは、かなり楽観的ではありますが、2027年度にはプライマリーバランスが黒字化するというような状況になっていて、2027年度よりもどれだけ前の年にPB黒字化が実現するかというところが一つの焦点になっている。

そのような成長率の楽観、悲観ということもさることながら、プライマリーバランス黒字化にめどが立てられるのかどうかが、連立方程式を解くときにもう1つ気にしなければならないところであります。成長実現ケースは楽観的過ぎて、こんなものはもう当てにならないのだとまで言ってしまうと、そもそもプライマリーバランスの黒字化をどこまで実現できるのかというところに、ベースラインケースだとかなり心もとない状況になってしまって、非常に悩ましい状況をそのまま文章にあらわしてしまったところであります。

1つの対応方法としては、そうはいってもやはり楽観的なので、本当に成長率が見通しどおりになっているのかどうかを事後的に検証して、その結果として成長率が見通しどおりにならなくて、その分、税収が少なかったということであれば、追加の財政健全化の措置を講じる必要があるというようなところをもう少し強調しながら、楽観的ではあるのだけれども、見通しと実績が本当にしっかり対応しているのかどうかをチェックするというところを何とか文章に含める形で、検討させていただければと思っております。

〔 田近分科会長代理 〕 悩ましいことは私も承知していますけれども、井堀委員と岡本委員、いかがですか。

〔 岡本委員 〕 ありがとうございます。

ただ、どうも試算すると黒にならないから、経済成長は成長実現ケースでいきましょうというのは、あまりにも理解のし過ぎという感じがします。何しろ、これは厳しい反省の中から来ているので、今の修文も必要とは思いますが、やはりここについては「意見もある」という表現では絶対にないと思うのです。それについては考えてほしいと思います。

〔 土居委員 〕 そのお気持ちをしっかり踏まえさせていただきたいと思います。

〔 田近分科会長代理 〕 井堀委員はよろしいですか。

〔 井堀委員 〕 政府の試算をどこまで前提にして財審の答申を書くかということが問題だと思うのです。内閣府の試算はこの2つしかないので、これを前提にして書かざるを得ないので、そのもとで書くとすれば、土居委員の言われたような形にならざるを得ないと思うのです。だけど、内閣府の試算は一つの試算であって、我々としては必ずしもそれに縛られる必要はないというスタンスで書けるのであれば、もう少し書きぶりはあるのかなと思います。

〔 土居委員 〕 了解しました。その点を踏まえて修文させていただければと思います。

〔 冨田委員 〕 今の点ですけれども、内閣府の見通しは、ベースラインケースを高くして、楽観的なケースを低い見通しに変えたわけですので、先程岡本委員も御指摘のように「少なくともベースラインケースを」とか、そのような表現があったほうが、やはり我々の財政健全化に向けた本気の姿勢を示すことができると思います。

〔 小林(毅)委員 〕 その次の文章が「仮に新たな計画も『成長実現ケース』を前提とするのであれば……強化が必要である」となっているので、これが財審の意見ということであれば、確かに岡本委員がおっしゃったように「も」ではないという気はいたします。この後、起草委員会でまた話し合いますけれども、その方向で進めていきたいと思います。

〔 末澤委員 〕 その点に関してですけれども、成長実現ケースを使うか、ベースラインケースを使うかというのは以前から議論があったと思いますし、今回も多分、皆さん、色々な御意見があろうかと思うのですけれども、一応、政府が成長実現ケースでシナリオをつくっていることを考えると、一旦はこれでやらざるを得ないと思うのです。ただ、今回、2025年度にPB黒字化という議論が出てくるとすると、より目標の時限が長くなります。そのような面で、私は、成長実現ケースを使おうが、ベースラインケースを使おうが、やはり成長実現ケースどおりに日本経済の成長軌道が乗っているかどうかという検証を、以前よりもより細かくチェックするシステムを入れることで、私どもの文言が本当に将来的な財政健全化に向けてツールを提供しているのかどうかということになると思いますので、むしろ途中期間の検証をもう少し書いていただいたほうがよろしいのではないかと思います。

〔 田近分科会長代理 〕 では、続けて神津委員、佐藤委員という順番で。

〔 神津委員 〕 本日、出させていただいた意見書をお手元に配付しています。少し触れさせていただくと、2ページ目以降に、かなり細かいところも含めて色々意見を出していますので、この場で説明することは省略させていただきます。

しからば、くくったところで何を言いたいのかということを1ページ目にまとめております。まず、総論に関しては「Ⅰ.」です。ここには記載しておりませんが、これまで意見を何回か申し述べてきたのですが、安易な補正予算の編成は厳に慎むべきだということ、それから政治のコミットメントが重要だということについて、建議案にしっかりと盛り込まれているということは前向きに受けとめたいと思います。本当にありがとうございます。

その上で、「Ⅰ.」のところですが、社会の支え手を増やすという視点をしっかりと持っておくべきだということです。やはり大枠のところで、なかなか思うに任せないことがありますので、歳出の規律を考えるときに、どうしても一律的な見直しや効率化を考えたり、また、そうなってはいけないということで、色々な工夫も考えていこうということだと思うのですが、やはり国民の暮らしに及ぼす影響を丁寧に検証する必要があると思います。この20年以上、格差の拡大、貧困の増大という問題が重くのしかかっておりますから、社会の支え手を増やすという視点をしっかりと持ちながら進めるべきだと思います。

そういったこととの関係で、これは年金にも関係する話ですが、全ての雇用労働者が安心して働き、暮らし続けられるよう、雇用形態、企業規模の大小を問わず、被用者保険の適用拡大を強力に推進すべきだということについても、ぜひ盛り込んでいただきたいと思っています。

〔 田近分科会長代理 〕 ありがとうございました。

では、佐藤委員。

〔 佐藤委員 〕 先程から話題の12ページのところで、ベースラインケースか、成長実現ケースかという議論もあるのですけれども、もう1つ、この国の問題は、一旦、見通しを立てて、歳出計画や税収確保の計画を立てると、その後の経済状況に応じて、仮に実現できない、要するに目標どおりにプライマリーバランスを黒字化できないとなると、ゴールポストのほうを動かしてしまっているのです。今回、2020年度が2025年度という形でゴールポストが動くのです。それはおかしいでしょうと思います。つまり、仮に2025年度でプライマリーバランスを黒字化させるのであれば、その後の経済状況に応じて仮にそれが困難になったというのであれば、更なる歳出改革を進めるとか、財政再建のPDCAを回す。そこを徹底することで、もうゴールポストを動かすのはやめようという、その辺のメッセージは明確にあったほうがいい。それであれば、シナリオがどちらであろうと、2025年度に基礎的財政収支を黒字化させることに変わりはないということになるからです。

あと、11ページのところで、今後の課題として、いつものとおりですけれども、歳出増加要因についてPay-As-You-Go原則を使うという議論があります。Pay-As-You-Goは悪くないのですが、これはどちらかというと新規事業に対して適用するものです。問題は、既存事業のほうに無駄が多いのが現実であって、現在、政府としてはEBPMを進めるということがあるので、やはり既存事業も含めてEBPMを徹底するという、その種のメッセージはあっていいのではないかという気がします。例えば、この後に各論で出てきます社会保障だろうと、地方財政だろうと、これから増える歳出については色々なことを言いますけれども、既存事業についてはどうなのかという議論は当然、必要です。後で無償化の議論も出ますけれども、今後、EBPMで適切に効果が検証できるようになっているかという議論は、当然、問われてくると思います。

最後に、財務省の件ですけれども、私はやはり盛り込んだほうがいいと思います。なぜかというと、一丁目一番地で、世論が注目するのはその文面だからです。これは財審の建議であって、財務省の建議ではないので、やはり自分たちの建議に対する信認ということを考えたほうがいいのかなと思います。

以上です。

〔 田近分科会長代理 〕 では、永易委員、増田委員、神子田委員、宮島委員とお願いします。

〔 永易委員 〕 全体の建議案は、非常によくできているという印象で読ませていただきました。ただ、今は、3年間やって、振り返って、今度、新しいものが出てくるというタイミングで、なぜうまく行かなかったのか、3つの大きな要因があるということがはっきりしました。税収の問題、補正予算の問題、それと消費税率の延期、これがはっきりした。だから、やはり今度の案を成功させるためには、ここを非常に強く主張すべきではないかという気がするわけです。

したがって、税収の下振れについては、先程議論もありましたが、7ページの17行目「税収が計画策定時の見通しほど伸びなかったこと」、これはさらっと事実関係のみです。ベースラインケースや、成長実現ケースというものはありますけれども、「楽観的な成長シナリオを採用したことにより」という文言を加えるべきではないかという気がいたします。

先程議論になっていた、岡本委員が言われた12ページの例のところもそうです。このようなところをしっかり押さえて、財審としては非常に問題視しているということを示すべきであろうという気がいたします。

もう1つ、先程も申し上げた、補正予算の件です。やはり決算ベースの規律やルールの導入が必要なのだということは、やはりどこかで出てほしい。少なくとも規律に非常に乏しいということを強調したい。具体的に言うと、8ページの3行目のところに、目安がきいたのは確かなので、「3年間の目安に沿った歳出改革が行われた一方」の次に、「我が国の補正予算制度に規律が乏しく」とか、このようなものをぐさっと差し込んでいく必要があるのではないか。経済同友会の第三者機関というのは、やはり規律が乏しいということはどうしても言っておきたい気がします。13ページにも出てくるのですけれども、8ページで押さえておけばいいのかなという気がいたします。

それと、目標時期です。全体として、もう2025年度で仕方がないのだというトーンが非常に強く出ているような気がします。前々回だったか、2020年度で一生懸命やろうとしていたのが、これはいきませんと、何で2025年度まで飛ぶのかという思いがあります。そこをどう表すかというのは、なかなか難しいところですけれども、4ページの25行目のあたり「2025年度までにPB黒字化を確実かつ安定的に実現する必要があるのはもとより」で切って、やはり追加的な歳出改革施策の実行を通じて、もともとどうだったのかということも本当は入れたい。もともとの目標時期である2020年度に可能な限り近づけていく、そのような努力は必要だ、というトーンで入れていただいたらどうだろうという気がいたします。

〔 田近分科会長代理 〕 では、起草委員の方は今の御意見も含め、税収見積もり、補正の話、健全化の時期の問題を御指摘いただいたということで、先に行かせていただいて、増田委員、神子田委員、宮島委員とお願いします。

〔 増田委員 〕 成長率の前提、あるいは補正予算に対しての見解、これまで委員が述べられた指摘、私はもっともだと思います。そこは、もう繰り返さないようにします。

それから、この建議全体で、例えば前回、消費税率を10%まで引き上げたときの使途を変更したわけです。この政策パッケージについても、最後、だめ押しで財政健全化にさお差す形になりました。これをどう評価するかというのも、本来は盛り込む必要があるのではないかと思います。そのようなことをやっているから財政健全化が遠のくと。国会でも成立したことでありますので、それをどう書くかは大変難しいもので、私も何か意見を持っているわけではありませんけれども、そのようなことが繰り返されることについての問題意識というのは、やはりどこかに記載しておくべきではないかということが1つ。

2つ目は、10ページのところで書いているだろうと思うのですが、「PB黒字を安定的に実現する目標年限を明確に設定し」、これはそのとおりであります。その後、「PBの改善幅を適確に認識した上で……改善幅をどう達成するかを具体的に示すべきである」と。私は、2025年度を仮に大前提とすれば、2022年度までは集中期間で、やはりきちんとした中間目標を置いて、それを達成させるということが必要だろうと思います。これは、新聞で書いて、多分、そのように動いているのでしょうけれども、中間目標も債務残高の対GDP比ということだとあまりよろしくないのではないか。やはり赤字幅の改善とか、要するに半減するとか、そのようなことを明確にした中間目標でなければいけないと思います。ここをどのように意識して書くのかというのは、なかなか微妙なところでありますが、いずれにしても申し上げておきたいことは、中間目標を置くけれども、それがGDP比何%以内というようなことであれば、あまり中間目標にならないのではないかということだけは申し上げておきたいと思います。

最後、13ページの(4)のところですが、これは多分、苦労されてこうなってしまったのかなとは思うのですが、「国民の理解の重要性」と。途中で、EUについては「各国の国民が財政健全化の取組を後押ししている」、このような記載に応えて「財政健全化を着実に進め、同時に経済成長も実現している」と、大変うらやましい姿がはっきり書かれています。それで、最後の締めですが、「我が国では」と書いて、本来、そうあるべきだろうと思うのですが、国民もちゃんと後押ししろと言うと、今度は財審が上から目線と批判されるかもしれませんし、現実、そのような状況になっていないということもあるのかもしれませんが、持続可能性に国民の多くが不安を抱いている一方で、消費税を引き上げることについてはどうも反対論が強かったり、非常に悩ましいところもある。

いずれにしても言いたいのは、最後の「我が国では……」の表現は腰が引けているというか、腰だめというか、国民に対してどのようなことを言わんとしているのかがよくわからない。本来、健全化を取り組み、後押ししろと言いたいのでしょうけれども、なかなか書けなかったという苦労の跡はわかるのですが、これだけと、結局、どうなのかということがよくからない。私も十分に練れていないのですが、やはりこれだと総論の締めとしては、伝わるものが非常に薄いような気がするので、ここはもう一度御検討いただければと思います。

〔 田近分科会長代理 〕 御指摘は全部わかりましたけれども、中間目標のところで、増田委員の御意見としては何をしっかり書き込めと。

〔 増田委員 〕 赤字幅を何年までに半減するとか、そのようなことをやはりきちんと書くべきではないか。

〔 田近分科会長代理 〕 数値目標を書けと。

〔 増田委員 〕 はい、そのようなことです。

〔 田近分科会長代理 〕 わかりました。

では、先に行かせていただいて、神子田委員と宮島委員、お願いします。

〔 神子田委員 〕 取りまとめの作業、ありがとうございます。

何人かの方から指摘が出たところもあるのですけれども、1つは、10ページの16行目に「集中改革期間において3年間の目安に沿った歳出改革が達成されたことを踏まえ」の後、21行目で、今後の3年間においても「歳出の水準に関する規律を設ける」とあります。目安を設けたことで削れたということを踏まえて、これからもそうやりますということですけれども、今後ますます高齢化が進んでいく上で、削っていく作業というのは非常にまた困難さを増すと思います。この審議会でも議論されたように、厚生労働主計官などは、今後の制度設計について、これまでにない取組をしていくという意欲を示されておりますので、22行目「水準に関する規律を設ける」というところに「より意欲的な」とか、一段と踏み込んだ構えを示してはどうかと思いました。

それと、永易委員からも御指摘のあった補正予算ですけれども、13ページの上から3行目「補正予算を含めて厳しい財政規律を維持するよう、政府に強く求めたい」というところです。これも、今、言った歳出削減の目安が効果を上げたということを踏まえて、「何らかの歯止めとなる目安を設けるなどの対策を講じて」とか、具体的な文言を入れたほうがより強まるかなと思いました。

それと、佐藤委員から、財務省の一連の問題について触れたほうがよいのではないかということが指摘されました。今、増田委員が言われた国民との関係にもかかわってくると思うのですが、私としては、やはり政府に対する国民の信頼感がないと、財政再建の取組というのはうまく理解を得られないのではないかと強く思っております。財審は財務省と違うので、財審としては、別に財務省がどのような状態であっても財政再建は、それはそれ、これはこれとしてやっていかないといけないということは、言っていったほうがいいのではないか。国民の間からは、財務省と国の財政を一緒に考えられているかもしれないのですけれども、何も別に財務省のために財政再建をやっているわけではなく、将来の国民のためにやっているわけですから、その視点は必要だなと思いました。

それと同時に、国民の信頼感を取り戻すために、先程から御議論になっている成長見通しについて、この間、何で達成できなかったかという原因が幾つかあるうち、やはり一番残念だったのは見通しから下振れしたという表現です。これは、別に下振れしたというより、もともと見通しが甘かったということです。このようなことを繰り返していると、国民の間にだんだんと虚無感が生まれてくる。

日銀の2%達成目標もそうですけれども、本当にオオカミ少年のように、2%になるぞ、なるぞと言ってならないと、もう何かどうでもいいやという感じになってきてしまうわけです。日銀は、この間、ようやくそこを少し改善しましたけれども、やはりこの見通し目標についても、最初から現実離れした目標のもとに計画を立てても、何度も何度も繰り返していると、国民も、もう協力しようという気がさらさら起きなくなってきてしまう、そのような虚無感が生まれてきてしまうと思います。

見通しに関しても、例えば今年の予算で税収がどのぐらいあるか、ある一定の成長率の見通しに基づいて数字をはじいているのですけれども、その見通し、成長率自体が民間の数字とかけ離れているわけです。それをもって、今年度は税収が増えるので新規の国債発行額が抑えられましたと言っても、取らぬタヌキの皮算用で、どうせ最後になったら補正等により大きな赤字が増えているに違いないと思われているわけです。今年は違うかもしれませんけれども、毎年その繰り返しですから。

そういったことが国民の不信感につながって、それが結局、国民と財政再建の距離を更に離してしまうので、その辺つなぎとめるような文言を工夫して入れていただけたらと思います。

〔 田近分科会長代理 〕 もう少し包括的な形で文言を追加ということですね。

では、宮島委員、お願いします。

〔 宮島委員 〕 ありがとうございます。2点、申し上げます。

まず、目安のところですけれども、以前も、結局、目安はどのような効果があったのかという質問をしたことがありました。おそらく、よかったけれども、更に切り込むときに切り込みづらい原因にもなったみたいなお話になるかと思うのですけれども、この文章上で目安をちゃんと評価する必要があると思います。目安のデメリットとして、目安が達成できてそこでいいとなるのではなく、状況に応じて更に切り込むべきなのだと。今、文章上は、目安は達成したけれども、PBの改善が進まなかったという文章に入れ込んだとは思うのですが、これと目安との関係がわからないので、直接的な言葉で、まず目安はしっかりつくるべきであり、更に目安を達成したからといって安心せずに、もっと切り込めというようなニュアンスを明確に入れたほうがいいのではないかと思います。

もう1つは、今、お話にもありました財務省の昨今の、大きく分けると2つの問題です。特に後から出た問題に関しましては、親同士の友達等とのやりとりでも大きな話題になり、質問を受けるような状態となるほど、関心が高くなっていると思います。そして、これは財政政策とは直接には何の関係もないのですけれども、財務省の人たちって自分たちと全然違う人たちなのかなという気持ちにさせた部分があることは否定できないわけです。それで財審が、それをまるでなかったことのように無視して、国民には厳しいことを言い、財務省が嫌そうなことは何も言わないというのは、財審の信頼にとってどうかなと思います。別に具体的に何かを書き込む必要があるわけではなくて、財政にとって国民の信頼はとても大切だということと、そのためには政府のほうにも努力が必要だというようなニュアンスでいいと思います。何もなかったことには、やはりしないほうがいいのではないかと思います。

〔 小林(慶)委員 〕 先程増田委員が言われた13ページのことについて、2つほどコメントがあるのでお話ししたいと思います。13ページの21ページ以降の「我が国では……」の段落の書きぶりについて、私も増田委員と同じような考えで、2つ提案というか、コメントがあります。

1つ目は、やはり2020年度のPB黒字化の目標が先送りになってしまったことについては、我が国の政治のコミットメントに対する国民の信頼を傷つけたとか、あるいは毀損したというような表現は、やはりここでも入れておかれたらいいのではないかということが1つ。では、それに対してどうしたらいいのかということをもし書くとすれば、目標が達成できない見込みが出てきたときに、日本でも早期に是正措置をとれるような仕組み、あるいは先程の成長率の見通しのようなことについても、成長率の見通しを早期に改定できるような仕組みをつくることを検討すべきではないか等、そのようなことを書かれたらいいのではないかと思ったということでございます。

〔 田近分科会長代理 〕 では、伊藤委員、葛西委員、お願いします。

〔 伊藤委員 〕 ありがとうございます。

冒頭のベースラインケースか、成長実現ケースかというところへまた戻ろうという気はありませんが、現実問題としてベースラインケースに近づいてしまって、結局、反省にもそれが出てきているわけです。したがって、消費税について、10%への引上げを確実に実施することが必要であるとともに、ゆくゆくはポスト10%を検討するというところに言及する余地があるのではないかという気がするのです。つまり、これは政治家の覚悟と、国民の理解を得るために一生懸命説明しないといけないわけですから、やはりそこの覚悟のようなものをそろそろ言っておくほうがいいのではないかという気がします。

以上です。

〔 田近分科会長代理 〕 葛西委員、お願いいたします。

〔 葛西委員 〕 12ページに「安易な補正予算」というところがありますが、そのとおりだと思うのですけれども、安易な補正予算というのは安易な本予算のつくり方と表裏一体になっておりまして、本当は厳しい歳出削減をやりたいと思っているけれども、政治的な圧力、その他色々あって、なかなか切りきれないので、それを補正予算という形で膨らませて、来年のときには既に既成事実にしておいて次につなげようという、何かある種のテクニックなのだろうと思うのです。ですから、ここでもって安易な補正予算だけを取り上げておくと、問題は先送りで、当面逃げたという話になってしまいますから、どうせ書くなら、補正予算は安易にやってはいけないということと同時に、本予算の歳出削減等については、より厳しい判断基準で踏み込むべきということを書いておかないと、片一方のほうで穴があいているような話になると思うので、そのような書き方をされたらどうでしょうか。

一例を挙げますと、先程話題に出ていましたが、整備新幹線、敦賀以降のところなどは本当に役に立つのか。私、鉄道の人間としてみると極めて懐疑的です。九州新幹線も同様ですし、北海道新幹線もそうです。それはなかなか言いにくいところではあるのですが、他にもそのようなものはいっぱいあるだろうと思います。その辺のところについてどう考えるのかというのは、両方塞いでおくというのが一番簡単なやり方なので、それがよろしいのではないかと思います。

〔 田近分科会長代理 〕 では、田中委員。

〔 田中委員 〕 すみません。葛西委員のコメントに追従する形ですけれども、やはり補正に関して、規律のための明確なルールや原則がなくて、どのような場合に補正を発するのか、あるいは上限をどうするのか、何回行うのかというようなルール化がされていないままに、ここまで来てしまっているので、できれば私は、ルール化、あるいは規律のためのルール化という言葉は入れたほうがいいのではないかと思います。

〔 佐藤委員 〕 13ページの最後にある、国民の理解についてですが、国民の理解は結果であって、実は我々がどうこうできるものではない。結果、理解をしてもらうためにどのような環境整備をするかが重要であって、もちろん自分たちが襟を正すというのもあるのですけれども、例えば情報公開として、現在の財政状況はどうなのかを示すためには、先程から言っている国民の信頼に足る長期的で慎重なシナリオが本来は必要です。

社会保障についても、わかっているようでわからない。つまり、どれくらいの費用がかかっているのか、それが自分たちの生活にどう響いているのかということについて、やはり情報公開が必要だと思います。だから、理解を促すために対話と情報という2つがやはり軸になるのだと、そのあたりを明確にしたらいかがでしょうか。

〔 冨田委員 〕 たくさん御意見、ありがとうございました。

まず、目標年度についての考え方ですが、2025年度というようにもう新聞などでどんどん出てしまっております。我々としては、非常に先送りされてしまったという残念な気持ちでいっぱいなのですが、書き方といたしまして、これまでPB黒字化という表現で、ワンポイントで2020年度PB黒字化という目標を掲げてきたわけです。今回は、2025年度、もうこれが最後だと、後ろはない。しかも、2025年度の目標としては、何度も文章に出てきておりますけれども、確実に、安定的に黒字を達成する。だから、黒字化ではなく、確実に、安定的に黒字にすることが2025年度の目標であると書かせていただいております。これが1点、目標についてです。

2つ目ですけれども、これまで我々はこの場でいつも、目安を確実に守るということで必死に一生懸命、歳出の効率化、削減について議論をしてきました。そのとおりの本予算を3年間、組んできました。だけど、PB黒字化の中間目標は達成できなかった。それはなぜだろうかということを、今回、9ページ、4行目に、非常に強い言葉で、「成功と失敗」という言葉を使っています。「新たな計画の策定に当たっては、こうした成功・失敗両面の経験とその要因をよく踏まえ」ということで、皆さん御指摘の補正予算、それから税収未達、その背景には高い名目経済成長率の目標ということを、間接的かもしれませんけれども、失敗というように精いっぱい表現させていただいております。

そうした成功と失敗を踏まえて、新しい提言といたしまして、これは皆さん御指摘の10ページであります。国の予算、当初予算については、表現としてはもっと厳しく、厳しい規律を設けるという表現でもいいかと思うのですけれども、これまでの基準を(2)で書いております。

それから、佐藤委員他、皆さんで御指摘の進捗状況の評価、経済成長率が計画より低かった場合とか、様々なことで進捗状況が変化するわけですので、その場合は「3年間の取組の進捗状況を検証し、必要に応じて歳出・歳入両面からの追加措置を検討する」ということを明示しております。これまでは、「歳出・歳入から追加措置等を検討する」と書いてあったように、私、記憶しています。その「等」の中に延期があったとすれば、これは大いに反省すべきことなので、ここにあるように「歳出・歳入両面から追加措置を検討する」と表示しているということです。

補正予算について、色々な御意見が出ました。これについては13ページの2行目、我々、補正予算で審議したことは全くございません。これから先は2行目にありますように、財政健全化目標に及ぼす影響をしっかりと認識、考慮する。これまでは、財政健全化計画との関係で歳出の目安、つまり当初予算についてここで議論いたしましたけれども、財政健全化目標との関係で補正予算についてこの場で議論するかどうか、時間的なこともあるのでしょうけれども、必ずしっかりとPBの確実な、安定的な黒字化との関係で、ぜひとも政治のレベルでも御検討いただきたいということを書いてございます。

私からは以上です。

〔 田近分科会長代理 〕 起草委員の方からは、いただいた御意見に対してどのように考えていこうかという形で、手短にお答えいただければと思います。

〔 土居委員 〕 御意見ありがとうございました。

基本的に非常に重要な、かつ文意を強調するワンフレーズを委員の方々からたくさんお寄せいただいたので、できるだけ反映する方向で文章を書きかえたいと思っております。

一番悩ましい問題は、目標の達成時期の話であります。先程冨田委員からも御説明がありましたけれども、2025年度という年限が報道ベースでは出ているけれども、起草委員としては、必ずしも2025年度でもう仕方がないと受け入れているわけではないところがありつつも、5月14日現在で政府のほうも2025年度と決めたわけではないとか、やはり2025年度が現実だとか、色々押したり引いたりしているところがあります。もう1回、21日に会議がございますので、そのときまでには起草委員として、もう少し皆様のお気持ちが反映できるような方向で、目標年限については修文をしたいと思います。

以上です。

〔 小林(毅)委員 〕 総論の最後の部分、国民の多くが不安を抱いているというくだりで、様々な御意見がありました。これは必ずしも起草委員全員ではないのですが、国民は、現在の財政が厳しい、危機的だということは実は結構わかっていて、消費税についても、色々な世論調査などを見ても全くゼロというわけではない。ただ、それを国民というか、政治のほうが妙に気を回して、あるいは選挙への影響を考えて、物事が進んでいっていない。だから、ここでは「政府及び国会においては、本建議を踏まえて」という部分を特に強調したいわけでありまして、上から目線とか、そのような話でもないのですけれども、国民と政治とのギャップがあるのです、そこをちゃんと認識してくださいということを強調したという意図でここの文を入れたということであります。

御意見、承りましたので、色々と起草委員の中で検討したいと思いますけれども、ここの文意はそのような趣旨であります。

〔 田近分科会長代理 〕 では、総論は一応ここで一区切りにさせていただいて、続いて社会保障、地方財政を1つのくくりで審議を進めさせていただきたいと思います。

では、今度は竹中委員からいきたいと思います。

〔 竹中委員 〕 ありがとうございます。よくまとめていただいて、心から感謝いたします。

社会保障のところ、15ページの上から2行目ですけれども、その前のところで支え手を増やすことがすごく重要であるということを言いながら、「高齢者や女性、障害者の労働参加を適切に推進する」という表現となっており、いかにもここが弱い。本当に支え手を増やすのだということを、ここでもう少しきちんと言うべきと私は思います。例えば「したがって、高齢者や障害者の労働参加を積極的に推進するとともに、女性にとってのいわゆるガラスの天井を打破していくなど、全ての世代がその能力を生かして支え合うという全世代型社会保障の考え方を一層推進することが重要である」という文章にしてみました。

これは、実は先程から何度も出ている13ページ、欧米諸国では国民が財政健全化を後押しする、しかし日本は国民が不安に思っているということの、私はある意味アンサーとしても考えました。つまり、国民は消費者としては尊重されているけれども、支え手として本当に尊重されているのか、あるいは自分が支え手としての誇りをしっかり持っているのかというところを、日本国民は非常に不安に思っていると感じます。

ですので、税を払う側という言い方より、もっと具体的に、一人一人が支え手になっていくことを国がしっかりと推進していくということをここに書くという形でバランスをとっていただければ、私はうれしいと思います。

以上です。

〔 田近分科会長代理 〕 はい、わかりました。お答えは、またまとめていただくとして、角委員、佐藤委員、神津委員、岡本委員。

〔 角委員 〕 先般、かなり素晴らしい病院の理事長さんとお話をしたときに、まず医療、健康の問題に関してビッグデータをどう活用していくかというような議論があり、次にAI診断、アメリカのようにそのようなことが進んでいる国であっても、AIが診断したほうが人間が診断するよりも正確であるということは誰もがわかっています。しかし、アメリカでもやはり既得権益、アメリカはお医者さんが非常にたくさんの報酬をもらえますので、それがAIに取ってかわることに対する既得権益の抵抗があるという話を聞いて、アメリカでもそうなのだと思いました。日本は、これからどんどん地方の人口が減っていきますから、当然、遠隔診断なんていうことはますます進めていかなければならないわけで、そのような技術の進歩をうまく医療費削減に使えないのか、というあたりに触れていただければありがたいという気がします。

あと、28ページのマイナンバーのことを書いていただいているのですけれども、もう少し強く記載していただけないか。要するに、資産をマイナンバーで捕捉するためには、当然、新規口座だけではなくて、今の口座を何とかつなげないと意味がないので、そこはやはり事あるたびにおっしゃっていただければと思います。

それと、補正予算の御意見もありましたし、不退転の決意というお話もありました。そうしますと、やはり補正予算の枠を何らかの基準を設けて決めるだけではなくて、そろそろせめて財政規律基本法を制定していただく時期に来ているのではないか。そして将来はプライマリーバランス黒字化の目標を法制化する。年次はわかりませんが、何年までにやるということをEUのように法律で書いていただく。それに向けて、どのようなやり方がいいかわかりませんが、歳出歳入の改革をしていただければ、まさに不退転の決意になると思いますので、よろしくお願いいたします。

以上です。

〔 田近分科会長代理 〕 最後は総論のところに戻って、PB黒字の達成をどうきちんと担保するかということですね。

〔 佐藤委員 〕 すみません。まず、社会保障ですけれども、19ページの視点1)で「経済性・費用対効果を踏まえて公的保険で対応する仕組み」とあって、それを踏まえての話だと思うのですが、21ページのところで「費用対効果が悪いものについては、保険収載を見送るか、公的保険として対応するのであれば……」とあります。これはHTAのことだと思いますが、諸外国を見ると、タイもそうだし、イギリスもそうですけれども、基本的な判断は価格を決めるのではなくて、保険収載するかどうかを決める手段なのです。日本はそこが変で、もともと保険収載することを前提に、値づけとして費用対効果を行うというのはずれているのです。ですから、本来の費用対効果の趣旨にのっとるのであれば、やはり保険収載に関わる議論として、基準として費用対効果をきちんと使っていくということ。やはり保険収載を前提にしたHTAの活用は厳に慎むべきではないかというのは、問題提起としてあっていいのかなと。

それから、25ページの医療費の適正化に向けた地域別の診療報酬の設定等というところで、1つは受益と負担の見える化をきちんとしようと。繰入金の廃止で見直し、見える化を進めましょうということがあって、最後の段落で「そうした中で」と書いているのですけれども、「そうした中で」が「どのような中で」なのか、繋がりがよくわからない。本音ベースの話をすると、要するに住民というか、加入者に対して判断を求めるわけです。つまり、あなたの負担を上げて診療報酬を上げますか、負担増が嫌なら診療報酬を下げますかというある種の判断、選択肢を示しているということだと思うのです。だから、受益増・負担増、あるいは受益減・負担減という選択肢を示す手段として、高確法第14条が使えるのだということはあっていいと思います。冒頭の国民の理解という中にもあると思いますが、やはり国民は選択肢が必要だと思うのです。ですから、高受益なら高負担だし、低負担なら低受益だし、そもそも選択肢の提示の手段として使えるのではないかという問題意識があっていいのではないか。

地方財政は、2点ほどテクニカルな話です。33ページのところで、もちろん計画と決算のPDCAを回すということは必要なのですけれども、おそらくこれ、間にもう1つ、基準財政需要がかまないと動かないと思います。地財計画があって、次に基準財政需要の算定があって、それから自治体の決算があるわけですので、やはり基準財政需要とも適切に平仄を合わせてもらうということはあっていいのかなと思います。その辺は、少し記載の追加があっていいのかなと。

あと、もう1つだけ。業務改革のところですけれども、ここで念頭に置いているのは広域化を含めたBPRの話だと思います。今、機械化、まさにAIやICTの活用も一つの視野に入ってきているので、ロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)というものが自治体などでも、例えばさいたま市などで導入の実証実験をやっています。やはりICTの活用が地方財政の分野、それから医療の分野でもお話ありましたけれども、ICTの活用を積極的に進めるということが地方財政の分野であってもいいのではないか、それは問題提起として取り上げてもよろしいのではないでしょうか。

以上です。

〔 田近分科会長代理 〕 神津委員、お願いします。

〔 神津委員 〕 先程と同様で、意見書の1ページのところにまとめて記載をしている社会保障についてであります。大きく申し上げておきたいことが2つありますが、1つは基本理念そのものをしっかりと書き込むことが当然、大事なことだろうということです。先程の総論で申し上げたこととも似たようなところがあるのですけれども、この20年間余りの中で一体何が起きたのか。高齢化、過疎化、単身化、そして地域や家族の支え合い機能が低下しているということは大きな問題だと思います。財源的に非常に大きいので、色々な意味での効率化が求められることは事実なのですけれども、社会保障そのものの役割が一層増していることも大きな事実だと思います。したがって、15ページの上あたりのところに、ここで言っている「広く国民に健やかで安心できる生活を保障する」という基本的な理念は、やはりしっかりと書き込むことが不可欠なのではないかということです。

それから、医療・介護ですが、これまでもこの場で何度か申し上げてきているのですけれども、効率化は当然必要で、様々な工夫を加えていくことは避けられないと思います。ただ、そのことによって、医療・介護において状態の重度化を招いてしまっては元も子もないわけで、むしろ財政的に悪影響を及ぼしてしまう懸念も考えられるため、その点、幾つか指摘を具体的に後でしておりますけれども、十分慎重に検討すべきだということも申し上げておきたいと思います。

以上です。

〔 田近分科会長代理 〕 ありがとうございました。

では、岡本委員、お願いいたします。

〔 岡本委員 〕 私からは、28ページから29ページにかけて給付率を自動的に調整する仕組みの導入が背景からまとめてありますが、高額療養費の負担上限の影響等で医療費がどんどん増えていってしまう背景があると。そういった中で、高齢者の窓口負担の見直しその他を行うが、その後にこのような自己負担の調整条項を入れるのだと読めるわけです。ただ、高額療養費というところの手当てが十分ではないまま、最後の自動調整の話に持っていくのか。例えば、外来特例で、一般区分などはずっと特例という名前で放置されたままなのです。やはり高額医療がどんどん増えていくのであれば、具体的にそのようなところをどうするかとか、あるいは負担上限額をどうするべきだとか、まず高額医療は本当に増えるのだという狭義のところでまず手当てをするということを一つ言って、その後、窓口負担ということになると思うのです。当然、窓口負担も大変なわけですから、自己負担調整という制度を入れる前にやるべきことをきっちり書き込むということが1つ。

それから、もう1つ自己負担率の自動調整について申し上げたいのは、財務省の皆さんが本当に苦労して、何かないかということでここまで至ったというのはよくわかりますし、検討会をするべきだというのもそのとおりだと思います。これはこれでやるということは理解できますけれども、そのような自動調整の仕組みで国の財政は改善するだろうが、その負担は誰がするのか。負担する人は全然、今までどおりということであれば、結局、赤字があるわけですから、国は負担しませんよと言ったら、健保組合とか、そちらのほうに回ってくるわけです。今まで総報酬割でも巨大なものが2回来て、保険料負担増に耐えかね健保組合を解散するというのも結構出てきています。

その辺の給付のほうもきっちりと議論して厚生労働省とやってもらわないと、国のほうで負担する部分だけが減ったということになりかねないので、ぜひ交渉するときにはといいますか、これを考えていくときには、その辺もきちんと立ててもらわないといけないと思います。経済界も、賃金を上げるとか、子供の保育所などの関係で3,000億円出しますとかいうことは消費税を上げることを前提にやっています。企業としてもそのようなところでは努力していますが、健保組合など、またすぐ来るな、財政調整なのだなと、このようにならないようにしてほしいと思います。

以上です。

〔 田近分科会長代理 〕 今、井堀委員、十河委員、田中委員と手が挙がっています。質問が重なりますけれども、続けて御意見いただいて、まとめて起草委員からお答えいただきたいと思います。

では、井堀委員、お願いいたします。

〔 井堀委員 〕 30ページの年金のところで、人生100年時代で、支給開始年齢引上げの話はもっともだと思うのですけれども、ここのところの前提条件で高齢者の就労促進と将来世帯の給付水準の維持・向上とあるのですが、もう1つ重要なのは、やはり自助努力、確定拠出の積み立て型の私的年金が充実しないとなかなかここは出てこない。現在、政府のほうでもiDeCo等、色々な自助努力の私的年金の環境整備が進んでいますけれども、そこが充実すれば、就労の有無に関わらず公的年金の支給開始年齢を引き上げることはできるわけです。人生100年のときに、65歳から公的年金を支給しますと、35年も丸々出すことになりまして、どう見ても将来的に持続可能かという点もありますので、私的年金の充実の話を少し入れていただければと思います。

以上です。

〔 田近分科会長代理 〕 わかりました。

では、田中委員、お願いいたします。

〔 田中委員 〕 私のほうは、岡本委員の御意見とかなり重なるのですけれども、29ページの自己調整、一定のルールに応じて給付率を調整するとあっさりと数行書かれているのですけれども、ものすごくインパクトの大きい内容です。この建議が誰に向かって記されているのか、あるいはメッセージを出すのかというところもあるのですけれども、国民にとってはかなりインパクトの大きいところなので、もう少し丁寧に、何が起こり得るのかということも含めて説明を増やしたほうがいいような気がいたします。

以上です。

〔 田近分科会長代理 〕 では、十河委員、お願いします。

〔 十河委員 〕 起草委員の先生方、大変お疲れさまでございました。強調するべきところはかなり強く訴えている内容になっているかと思っております。

私のほうから、表記について申し上げたいと思います。当然ながら、社会保障の部分が大変ページ数も多く、内容も多岐にわたっておりまして、ざっと読んだときに少しわかりづらいかなというところが、正直、ございました。

どうしても内容が細かいので、具体的にどのようにするかは御検討いただきたいのですけれども、医療・介護の2に今後直面する「3つの課題」というものがございまして、こちらの課題は、3つと書いてありながら1、2、3と振られておりません。

ところが、3の対応の方向性「3つの視点」は、視点1)、視点2)、視点3)となっております。またその下に括弧で「(医療・介護制度改革の『3つの視点』)」と重なっておりまして、だんだんわかりづらくなる。

更に、4で改革の視点を踏まえた具体的な対応という言葉になっているのに対しまして、また下に視点という言葉が出てきます。この視点が重なっているというところもわかりづらいので、この箇所についてご一考いただけたらと思いました。

以上です。

〔 田近分科会長代理 〕 では、起草委員の方から。

〔 土居委員 〕 様々な御意見、御指摘ありがとうございました。

特に、最後の十河委員の御指摘は、我々も最初、読んでいて、1がどこの1なのかとか大分こんがらがって、それでも大分整理したつもりなのですけれども、まだまだ不十分でして、ぜひ早急に改めて、せめて対応関係がどうなっているかぐらいはちゃんとわかるようにさせていただきたいと思います。

それから、医療の給付率の自動調整という話でございます。これは非常に重要な御指摘をいただいて、更にブラッシュアップしていきたいと思っております。私としても、結局、自動調整しなければいけなくなってしまうのは何が問題なのかということで、29ページの7行目から8行目にかけて書かれているのですけれども、負担能力に応じた給付を行うという緊張関係が給付側に欠けているということで、結局は給付を増やしても、どうせ保険料とか、そのようなことで国民はいつまででも負担にお付き合いしてくれるだろうという甘えが、給付ないし診療報酬を上げる側にあるのではないかということで、負担には限界があるので、その負担の限界を意識しながら給付範囲を決めてほしいと、そのようなことを究極的には申し上げたいということであります。

では、それならば、2年に1回とかの診療報酬改定の場であるとか、そのようなところでまだまだやるべきことがたくさんあって、それはご承知のように28ページ以前に列挙しておりますから、それらを最初にやってもらうということは言うまでもなく当然なのですけれども、その当然というのが28ページから29ページのところにあまりにじみ出ていないものですから、それ以前の問題はまず列挙しているけれども、今まで財審でも言っていなかった給付率の自動調整という話を建議で初めて出させていただくときに、前後の順序関係はどうなっているのかとか、結局、自動調整すると言っている本当の意味は何なのかというところが、やはり御指摘のとおり、まだ不十分にしか書けていなかったと思いますので、岡本委員、田中委員からも御指導いただきましたとおり、あらぬ誤解をまずは解く。

私の五感で言うならば、別に反対していないけれども、何かこの書きぶりだと、あまり積極的に賛成できないと思われてしまうような書き方がまだありますものですから、しっかり書いて誤解のないものにして、極端に言えば、できるだけ多くの方に賛成していただけるような表現に改めていきたいと思います。

最後、1つだけ。自動調整のところで、「自己負担を調整する」という言葉が29ページの18行目にあるのですけれども、自己負担と言っているのは、岡本委員御指摘の高額療養費の外来特例も自己負担です。そこを特例ということではなくて、当然、現役世代が負担しているようなものも高齢者の方に御負担できる方には御負担をお願いするという方向も含めた自己負担です。窓口負担だけが自己負担というつもりではないのですけれども、私も今、ここで読み直したところ、あいにくそう書いていないものですから、もう少しはっきりと、誤解を払拭できるような表現ぶりにさせていただきたいと思います。

以上です。

〔 田近分科会長代理 〕 ということで、給付率の自動調整につきましては、ここまで議論して、全ての議論がここに集約されてしまうわけではなくて、それに至る前提をしっかりするということは、今、土居委員がおっしゃったように書き込むことで対応したいと思います。

宮武委員、秋池委員からもネームプレートが上がっているので、御意見いただきたいと思います。

〔 宮武委員 〕 自己負担というか、給付率の自動調整について、今、土居委員に御説明いただきましたが、私のほうは反対の意見書を出しておりますので、それを御覧ください。ただ、具体的に検討を開始すべきであると書いてございますので、検討を開始することまで反対する権利はありませんので、以後、議論を深めていきたいと思います。

年金の支給開始年齢についても、前回、私は意見を述べました。これも議論を深めていくということですので、深めていくのに反対もできませんから、それで結構だと思います。ただし、支給開始年齢の引上げについて言えば、他の主要な国々は67歳なり、68歳に上げているわけですが、それらの国々は、日本のように保険料を固定して、そしてマクロ経済スライドで、すでに年金を受給中の方の給付水準まで調整していくという仕組みを持っていないので、支給開始年齢引上げという方策に走らざるを得ないのだということであります。日本と同じように保険料を固定して、給付の自動調整をやっているスウェーデンでは、60歳以降、月ごとに自由に受給時期を選ぶことができるという仕組みをとっています。支給開始年齢の引上げは議論にもなっていない。むしろ、スウェーデンと比べて国際比較をされるべきだと思います。

もう1点は、68歳に限り引き上げるということであれば、現在は、65歳時点で新しく年金を受けるときに、現役の方の手取り収入に比べて50%台の所得代替率を保障している。68歳に上げるということは、68歳で50%台の所得代替率を保障することに変わっていくわけであります。65歳でも受給は選べるとおっしゃるけれども、現在の月に0.5%の減額率を適用すると、3年間、36カ月で18%減額になるわけです。そうすると、65歳時点で受け取る年金はそれだけ減額され、国民年金つまり、老齢基礎年金だけの方だと満額支給の方でも4万円とか、5万円程度の年金しか手にできない。医療保険や介護保険の保険料や窓口負担を払えるのかと心配な年金水準になってくる。そのような方が増えてくるということは、必ず頭の中に置いておかなければならないと思うのです。

マクロ経済スライドで、自動車に例えればフットブレーキをゆっくりとかけていく一方で支給開始年齢を引き上げるということは、サイドブレーキを引くようなものです。両方を同時にかけると車は横転します。そのような視点で、議論を深めいきたいと考えます。

最後に、私は、起草委員の方がお答えになると思ったので、あえて言わなかったのですが、宮島委員が指摘されたように昨今の財務省に対する様々な国民の不信感に対しやはり注文をつけない限り、答申の総論の最後で国民の理解を得るなんていうことはどうしたってできない。これは私も全く同感であります。要するに、今回の建議については、財審として財務省に対して、国民の不信感をどうやって払拭するのか、あるいは国民の常識とかけ離れた落差をどうやって解消するのかということを求めていかないと、国民の理解を得られないと思います。

以上であります。

〔 田近分科会長代理 〕 秋池委員、お願いします。

〔 秋池委員 〕 時間が押していると思いますので、お答えいただく必要はないのですけれども、地方財政のところで、PDCAを回す等の色々な手法が書かれているのですが、誰が主体となってやるのか。国なのか、地域の自治体なのかというところが、いずれも曖昧なように読めますので、そちらをよろしくお願いいたします。

〔 田近分科会長代理 〕 神子田委員、お願いいたします。

〔 神子田委員 〕 29ページの給付率を自動的に調整する仕組みの導入のところで、国民の反発を恐れて非常に慎重に書いているような感じはよくわかるのですけれども、全体としてどちらのサイドから書いているのか、読んでいるとよくわからなくなるところがあります。基本的に国の給付負担が過度になるので、そのために患者にも負担してもらいたいという方向性の話だと思うのですが、1つは29ページの7行目「負担能力に応じた給付を行うという緊張関係を欠いたまま」という文言の意味がよくわからないので、少し表現ぶりを変えたほうがいいのではないかということ。

あと、15ページと17ページに、2度にわたって、支え手の負担が過重にならないようというような文言が入っていて、その趣旨もよくわかるのですけれども、前のほうは、要はこれが入るとどちらのための調整かがよくわからなくなってしまうので、15ページの支え手の負担が過重にならないようというのは、無い方が趣旨は伝わるのではないか。一方、17ページに支え手の負担が過重にならないようと書いてあるので、それでよいのではないかと思いました。

以上です。

〔 冨田委員 〕 地方財政について、佐藤委員、秋池委員から御指摘があったのですが、まず佐藤委員の33ページの話です。基準財政需要をかませないとPDCAは回りませんというのはそのとおりなので、2行目は各経費と書いていますけれども、1のところでは全基準財政需要額についてやりなさいと言っております。今、どのような形で基準財政需要があるのか非常に不透明でして、わずか3.5%しか検証されていないということなので、これを全部やっていこうということを言っております。

秋池委員のおっしゃったことは、国が地方の歳出の財源保障をしているわけですので、それがどのように実際に使われたかということを、計画と決算とを比較するということが一義的に大事でして、次に、ここに書いてありますように、地方公共団体の行政指導を行っている総務省が、具体的にお金をどう配分していくかということの客観性を適切に担保してください、ということを言っているわけでございます。

〔 田近分科会長代理 〕 では、角委員。

〔 角委員 〕 あまり発言する気もなかったのですけれども、例の財務省の信頼を失った件についてかなりの方から意見が出ましたので、私、近畿財務局の国有財産処分地方審議会の委員もしておりましたので、当初からのいきさつはある程度わかっておりますが、今回の一連の件は、色々な意見がありますけれども、やはり前回のしゃぶしゃぶとは違うと。今回は、非常に様々な要素が絡まってこのような現象が起きておりますので、書かれるにしても、財務省発の一連の騒動ではないと私は思います。その辺はよろしくお願いします。

〔 田近分科会長代理 〕 そこは難しいですが、まさに会長の判断を仰いで、まとめていきたいと思います。

では、残りの全ての箇所で御意見いただきたいと思います。

では、老川委員から。

〔 老川委員 〕 ありがとうございます。分科会長代理のご配慮に感謝します。質問1点と、意見を1つ申し上げます。

ものすごく細かい話で申し訳ないのですが、37ページの14行目「小学生より学修時間が確保されていないなど、学修をしていない学生や、その学修……」と「学修」という言葉が3つ出てきてます。私は普通「学習」を使うのではないかと思うのですが、学修を使うのは何か特別の意味があってのことなのかというのが1つ質問です。

意見は、46ページの社会資本整備の箇所で、冒頭、量から質へという話があって、後に話が続いているのですが、質を言う場合、やはり防災・減災の観点も必要ではないかと思うのです。全体として、自然災害などに触れているところはあるのですけれども、やはり大規模災害によってとんでもない金額と尊い人命、そして多大な労力が必要になってくるわけで、事前の災害対策、あるいは災害を防げないまでも、それを小規模でとどめる。そのようなための公共投資というものは、これからはもっと必要になってくるのではないか。気象予報とか、そのようなことも含めてです。そのような意味で、防災・減災という言葉をもう少しどこかで、冒頭のあたりでも触れていただければありがたいと思います。

以上です。

〔 田近分科会長代理 〕 ありがとうございます。

今度は、神津委員から始めて、神津委員、佐藤委員、田中委員、永易委員ということで、よろしくお願いします。

〔 神津委員 〕 同様にして、意見書の1ページの大きい3点目の文教について2つ申し上げておきたいとおもいます。

1点目は、教員の長時間労働の是正についてです。過労死、過労自殺は、かなり特定の分野に偏っているのが現状で、その中の一つに教職員がある、これは厳然たる事実です。国全体として、政府として、教員の長時間労働是正ということは大きく取り上げておられるわけですから、具体的には38ページの21行目あたりの定数に関わるところ、子供の数が減っているということではなくて、やはり長時間労働の是正との関係は具体的に書き込んでいただきたいと思います。

2点目は、総論のところで申し上げた支え手をしっかりと増やすということとも大きく関わりますが、こういった教育の無償化、給付型奨学金についてもしっかりと触れていただきたいと思います。

以上です。

〔 佐藤委員 〕 まず、50ページのところに「エビデンスに基づく」とあるのですけれども、EBPMが出てくるのは社会保障だけなのですが、実はEBPM自体は別にハードだけが対象ではないので、本来、社会保障だろうと、教育だろうと、あるいは地方財政だろうと、例えば地域差の説明や、ベッド数と医療費の関係など、やはりEBPMは様々な分野でも多用されるので、先程も申し上げましたけれども、この種の議論は総論のほうで触れていただければと。

あと、コンパクト・プラス・ネットワークと、下水道を含めた広域化やPFIの普及については、多分、財政再建においても大きな柱になってくるはずなのですが、なかなか進んでいないというのが現状でありますので、果たしてそれはなぜなのかというボトルネックの検証はどこかで必要になってくると思うのです。それは法律や規制によるものなのか、あるいは自治体の取組、やる気なのか、色々とヒアリングをしてもよくわからない面があるのです。もちろん人材がいない、ノウハウがないとか、色々な回答は出てはくるのですけれども、やはりボトルネックの検証をきちんと網羅的にやって、それに対する対応を行うというのが、特に広域化の部分、それからコンパクト・プラス・ネットワークの部分については求められてくるだろう。

それから、先程のEBPMの話とも絡むのですけれども、文教・科学技術のところで、やはり幼児教育の無償化であれ、高校や高等教育の無償化であれ、国の方針としてやるというのだったら、それはそれでしようがないかもしれないのですが、その効果はどうなのかということを適切に検証できる体制はあらかじめつくっておいてください、ということだと思うのです。例えば、幼児教育を無償化したけれども、実はどこかの幼稚園は授業料を上げたとか、入学金を上げていましたとかいったら、ほとんど彼らに対する補助金になってしまいます。ちゃんとデータを集めるということ、それを分析できるということ、そのような効果をちゃんと検証できる体制をあらかじめとっておいてください、ということは明記しておいていいのではないかと思います。

以上です。

〔 田近分科会長代理 〕 ありがとうございます。

では、田中委員、永易委員、神子田委員。

〔 田中委員 〕 私からは、大学、高等教育にフォーカスして述べたいと思うのですが、色々とピックアップしたら6つぐらいになったので、それは大変なので3つにしようと思います。そう思っていたら、学修についての質問があったので、その点について述べさせていただきます。「修」という字なのですけれども、これははっきり言って文部科学省用語で、そこに迎合する必要はないのではないかと私は思います。そのような意味で、40ページにも「学修成果の厳格な」とあるのですが、このニュアンスというのは124単位を修めればそれでいいということになってしまうのですが、財審の議論というのは、むしろ教育の効果がどうであったのかというところにもっとフォーカスをしましょうということでしたので、学修の成果というよりは教育の効果と言ったほうがいいのではないかと私は思います。

その上で3点述べたいのですが、まず高等教育の無償化の一環で出てきたHECSに関してですが、この言い方では甘いので、もっと厳しく述べるべきです。この書き方は、非常にテクニカルに応じて、受け身で書いているのですけれども、やはり前提となるものが必要です。例えば、大学の今の状態で無償化の類いやHECSを入れても格差是正には絶対ならないわけで、そこのところをばっちりとおさえて書いてしまった上で、テクニカルにこのような理由があるというようなことを書かれてもいいのではないかと思います。

もう1つですが、大学改革に向けた資金配分、41ページであります。私は、これももっと厳しく言わないと、特に社会的によくわからないのではないかと思います。というのは、大学制度の現状というのはかなり複雑で、しかも問題が起きるたびに新しい制度や補助金を入れて、スクラップ・アンド・ビルドをしなかったために複雑なジャングルみたいな状況になっていて、それが外にわからないのです。ですから、ここはもうちょっとばしっと本筋のところをおっしゃっていただいて、例えば大学の改革、資金配分と言っていますけれども、結局、大学単体の問題ではなくて、大学と大学行政がセットになって様々な問題を起こしているわけですから、大学改革というのは大学と大学行政がセットでなければ成立しないのだということを冒頭に述べてしまう。

もう1つは評価のことなのですけれども、ここも複数あるとか、重複があるとか、第三者とか、相対評価とか、キーワードは入れていただいているのですけれども、例えば日経新聞などでも挙げられたのですが、身内の評価、その結果として横並び、護送船団方式になってしまっている。ここまで厳しい言葉を書くかどうかわからないのですけれども、それが長年の蓄積の中でメリハリのない評価になってしまっているわけですから、身内の評価程度のキーワードはキャッチーなものとして入れないと、むしろ評価制度の見直しが必要だということにつながってこないような気がいたします。

それから、42ページの私学助成であります。私学助成に関しては、やはりここも問題点をもっと明確に、定員割れだけではなく、定員割れにも関わらず私学助成が増えてきたという問題がないとパンチがきかないと思うのです。実際に出されたデータを見ていても、私学助成の中でも一般補助と特別補助がありますけれども、メリハリをつけても、他の補助金でそれを相殺してしまうようにして、全体で見ると増え続けてきたという事実があって、だからこそ、この問題が出てきているわけですから、私はそれを冒頭に記したほうがいいのではないかと思います。

〔 田近分科会長代理 〕 それでは永易委員、お願いいたします。

〔 永易委員 〕 時間もありませんので、1点だけ申し上げたいと思います。

お一人の発言にはちらっと出てきたのですが、やはり10%超の消費税引上げという問題をどうするのだということが、2度も延期されているので、一番は来年10月の問題に決まっているし、これを強調していくのですけれども、ただ、その後の国民的議論を相当しないといけない、その出だしの文言をやはり入れるべきではないかという気がどうしてもするわけです。

それで、どこに入れたらいいのかなと思ったのですけれども、やはり消費税というのは全額、社会保障へ行くわけですから、社会保障のところのどこかに、今回、ものすごく強調する必要はないと思うのですけれども、少なくとも次につなげるという形は必要なのかなという意味で、ここがいいかどうかはよくわからないのですけれども、14ページの17行目のところに「社会保障の持続的可能性を確保する観点からも」という、それで給付と負担の問題になっているわけですけれども、「観点からも」の後に「来年10月の消費税10%への引上げはもちろんのこと、その後の更なる引上げを視野に入れて、給付と負担のバランス……」とつなげれば、一言で言うとさらっと入るのではないかという気がしたものですから、意見として申し上げます。

〔 田近分科会長代理 〕 では、神子田委員と宮島委員。

〔 神子田委員 〕 社会資本整備について一言、こんな視点もあったらいいのではないかということを申し上げます。

46ページの8行目に、「人口減少社会の本格的な到来を踏まえ、『量』から『質』への転換」という文言があるのですけれども、日本の人口は確かに減っていくのですが、今、外国からやってくる人はどんどん増えていくということになっています。来年1月から国際観光旅客税というものも導入されて、国民1人、日本人も空港、船に乗ると1,000円取られるということがありまして、そういったものの有効活用、それもハードとソフトの両面があると思うのですけれども、そういった視点が全くないので、海外からたくさん人が来た、あるいは、もっと来てもらうという意味での社会資本整備についても、議論のポイントが入ってもよいかなと思いました。

以上です。

〔 宮島委員 〕 38ページ、いわゆる預かり保育や無償化のところで提示されている中に「認定こども園への移行が進んでいない現状と分析」とありますけれども、議論の中では、認定こども園への移行を大前提にするという方向だったのではないかと思います。これが単語として、分析すればよいという形になったのはどうしてかなと思いまして、やはり好きなようにやりたいけれども、お金は欲しい、そして認定こども園には移行したくないという幼稚園をどうしていくかというのは問題の一つだと思いますので、ここは分析だけではだめなのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

〔 田近分科会長代理 〕 十河委員、どうぞ。

〔 十河委員 〕 各論ではなくて総論のほうに一言、これはあくまでも私の個人的な意見ではあるのですけれども、なぜ財政健全化が必要であるかというと、今、1ページ目の1.の23行目に「持続可能な社会を構築していく」という当然のことがございます。では、なぜ持続可能な社会を構築していくことが必要であるかというと、やはりこの国に住む国民一人一人が安心して暮らしていくということが絶対的にあると思います。こちらはあくまでも財政健全化ということでの会だとは思うのですけれども、やはり国民があっての議論ということで、そういった一言をどこかに加えていくということも必要ではないかと思いました。

以上です。

〔 田近分科会長代理 〕 では、末澤委員。

〔 末澤委員 〕 もう一度、総論のところで恐縮です。4ページの(3)のところですが、今回「2025年度までにPB黒字を確実かつ安定的に実現する必要がある」という文章になるということは、前回よりも一挙に5年遅くなるのと、やはりこの背景には団塊世代が後期高齢者になるという点があります。先程土居委員からありましたけれども、これは後がない目標なわけです。ですから、今回の目標というのは従来と違って、本当に後がない。しかも、7年間ありますので、これは中間目標以前に毎年きちんと検証して、これができない場合には入りを増やすか、出を減らすか、毎年、新たな追加的な財政再建、健全化方策を入れていく。アメリカだと、シークエスタという予算管理法に基づいて行政歳出削減が行われて、現実的には毎年、見直しているわけです。本当にうまくいかないのであれば、そのようなシステムをどこかで入れていくという案を、今回は具体化までいかないと思うのですが、一挙に7年先送りして、しかも、このときはもう後がないということであれば、そこのシステムについても検討すべきだという意見を追加してもいいのではないかと。

〔 田近分科会長代理 〕 はい、わかりました。全体的にどう入れるか、ちょっと思案が必要ですが。

個別のところで、起草委員、どうですか。

伺ったところ、竹中委員からは、社会保障のところだけでしたけれども、全て伺ったところで、こちらで対応できるものは対応させていただくと、その形でご趣旨に答えられたかどうかも確認させていただくということで進めさせていただきたいと思います。総論部分をどのようにしていくかというところが圧倒的に多かったですが、また起草委員の方にお考えいただきたいと思います。

今後の進め方としては、本日いただいたコメントは、これから起草委員の方に御議論いただいて改訂版をつくる。そして、それを次回までにお配りする。

お願いは、追加の御意見等がございましたら、申し訳ないのですけれども、明日15日、火曜日のお昼までにメールにていただきたいと思います。

本日は、大変密度の高い議論をいただきまして、ありがとうございます。いただいた議論については、色々ありますけれども、これから検討し、追加の御意見があれば、明日15日、12時までにいただくということで進めさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。

本日は、これに閉会いたします。ありがとうございました。

午後0時00分閉会