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財政制度分科会(平成30年4月11日開催)議事録

財政制度等審議会 財政制度分科会
議事録

平成30年4月11日
財政制度等審議会


財政制度等審議会 財政制度分科会 議事次第

平成30年4月11日(水)13:00~15:00
第3特別会議室(本庁舎4階 中-412)

1.開会

2.議題

社会保障

3.閉会

出席者

分科会長

榊原定征

今枝大臣政務官

茶谷次長

大鹿次長

青木総務課長

中野司計課長

奥法規課長

若原給与共済課長

関口調査課長

湯下主計官

小宮主計官

高橋主計官

中島主計官

阿久澤主計官

岩佐主計官

竹田参事官

中山主計官

内野主計官

北尾主計企画官

藤﨑主計企画官

分科会長代理

田近栄治

赤井伸郎

遠藤典子

黒川行治

神 津 里季生

角 和夫

武田洋子

竹中ナミ

土居丈朗

中空麻奈

永易克典

宮島香澄

臨時委員

秋池玲子

伊藤一郎

老川祥一

大槻奈那

岡本圀衞

葛西敬之

加藤久和

北尾早霧

末澤豪謙

十 河 ひろ美

田中弥生

冨田俊基

南場智子

神子田 章 博

宮武 剛


午後1時00分開会

〔 田近分科会長代理 〕 それでは、定時になりましたので、これから始めさせていただきたいと思います。

本日は、榊原会長も御出席ですので、活発に議論していただきたいと思います。

冒頭でカメラが入りますので、このままお待ちください。

(報道カメラ 入室)

〔 田近分科会長代理 〕 ただいまから、財政制度等審議会財政制度分科会を開催いたします。皆様には、御多用中のところ御出席いただきまして、ありがとうございます。

本日は、社会保障を議題としております。

それでは、報道関係者は御退室ください。

(報道カメラ 退室)

〔 田近分科会長代理 〕 それでは、社会保障の審議に入ります。本日は、お手元の資料にありますように、1時間かけて、事務局の阿久澤主計官と岩佐主計官から社会保障の説明をいただきます。その後は、また1時間かけて、皆様から御意見、御質問等を承りたいと思います。

それでは、阿久澤主計官、岩佐主計官、よろしくお願いします。

〔 阿久澤主計官 〕 厚生労働係第一担当主計官の阿久澤でございます。よろしくお願いいたします。

本日、社会保障について御議論いただくことになっております。先日の財審に示された社会保障費の将来推計におきましても、今後とも大きく増加していくことが見込まれる医療・介護を中心に、制度をめぐる現状や課題、それから改革の方向性等につきまして御説明をさせていただきたいと思います。

それでは、資料を御覧ください。4ページから11ページ、こちらは平成30年度の社会保障予算のポイントを添付しております。

12ページから17ページにつきましては、社会保障と税の一体改革の概要、及び昨年末に閣議決定されました、消費税の使途を変更する「新しい経済政策パッケージ」についての資料を添付しております。具体的な説明は割愛させていただきますけれども、委員の皆様の御議論の際に適宜御参照いただきたいと思います。

その次に、社会保障をめぐる状況についての資料がございます。18ページ以降になります。こちらにつきましては、これまでも財審で概ね同様の資料で御説明させていただいておりますので、簡単に御紹介だけさせていただきます。

21ページの資料では、高齢化の進展等によりまして社会保障給付費は一貫して増加し続けております。

22ページから23ページでは、給付を賄う保険料や税負担といった国民負担が増加の一途をたどっていること。特に、23ページにありますが、社会保障で支出される公費の部分で、それに見合う税負担をいただけておらず、将来世代への負担のつけ回しが生じてしまっていること。

24ページでは、今後、2025年に向けて団塊の世代が75歳を超えるようになってくること。

このため、25ページでございますけれども、今後、医療や介護の給付費が大きく増大していくことが見込まれること。

こうしたことから、26ページにありますように、社会保障の給付と負担のバランスを見ますと、我が国は既に給付に見合った御負担をいただけていないというアンバランスな状況にございます。かつ、このまま給付の見直しなどの改革を行わなければ、さらにこのアンバランスが拡大していくことが見込まれます。そして、社会保障制度の持続可能性を確保する観点からも、社会保障の伸びの抑制のための種々の改革を行うとともに、社会保障と税の一体改革により負担の先送り構造を改善していく必要があることといった資料を添付させていただいております。

これらにつきましても、委員の皆様の御議論の際に御参照いただければと思います。

続きまして、28ページをお開きいただきたいと思います。この資料にありますように、社会保障の自然増は、「高齢化に伴う伸び」と「その他要因に伴う伸び」からになります。このうち、「高齢化に伴う伸び」につきましては、ある意味、社会保障特有のものでありまして、一定程度やむを得ない増としての扱いはしますけれども、「その他要因に伴う伸び」に相当する増加額につきましては、他分野と同様、制度改革や効率化等に取り組むことで抑制していかなければならないといった考え方に基づきまして、「基本方針2015」において目安が設定されまして、2016年度から2018年度の3年間、この目安に沿った予算編成を行ってきたわけであります。

2019年度以降の歳出の目安をどうするかにつきましては、この夏の基本方針に向けて検討されることとなるわけでございますが、社会保障につきましては、29ページにありますように、「基本方針2015」において、2020年度に向けても、消費税率の引上げと合わせて行う充実などを除き、社会保障関係費の伸びを高齢化による増加分に相当する水準に収めることを目指すとの方針が既に示されております。今後、こうしたことも踏まえ、具体的な歳出の目安の水準をどうしていくのかを検討していくことになると考えております。

一方、社会保障の伸びを抑えていくための具体的な改革項目についてでございますが、31ページから32ページで現在の改革工程表における主な改革項目を示しております。このうち、一部対応したが、引き続き対応が必要な事項や、今後、対応していく事項といったものをまとめております。新たに策定されることになる「具体的かつ実効性の高い計画」におきましては、これらについて引き続き改革項目として位置づけるとともに、後に御説明させていただくような新たな改革項目も加えることによって、改革工程表の充実、強化を図っていく必要があると考えております。

それでは、医療・介護について御説明をさせていただきます。

まずは、医療・介護をめぐる状況であります。35ページをお開きください。ここにありますように、医療費・介護費につきましては、これまで国全体の負担能力を大きく超えるペースで増加してきております。その結果、医療費・介護費対GDP比も増大しております。

国民医療費は、患者負担、保険料負担、公費負担で賄われることになります。その財源別の推移が36ページになっております。これまで医療費の増加に対しましては、見ていただくとわかるように、大宗は公費負担、保険料負担の増加によって賄われてきております。一方、患者負担はあまり増えておりません。公費は、高齢者向け給付に手厚く措置されていることから、高齢化の進展に伴いまして医療費における公費の依存は、今後、さらに高まってくると見込まれております。一方で、その公費は、財政赤字によって次世代に負担をつけ回している状況にあるということでございます。

さらに、医療費を支える負担の動向を見てみますと、38ページは保険料率の推移でございます。近年、医療費の増加に伴いまして、協会けんぽ、健保組合ともに保険料率を引き上げております。なお、協会けんぽにつきましては、平成22年度から国庫補助率の引上げも行っております。その効果が足元の両立の動向に見られるところでございます。国保につきましても、平成26年度、平成27年度におきまして、消費税収による公費の拡充によりまして保険料負担の軽減を図っている効果があるものの、1人当たりの保険料負担は増加傾向にあるということでございます。

続きまして、39ページの医療費・介護費の国庫負担についてであります。通常の経費につきましては、施策の必要性、妥当性、費用対効果等の観点から予算を措置し、その範囲内で事業が執行されることになっております。一方、医療・介護などの経費につきましては、病気となった患者が医療機関に行き、そこで実際にサービスが提供されることに伴って生じる給付費に応じて国庫負担が決まることになっております。すなわち、何らかの理由で給付費が増加すれば、それに応じて財政負担も自動的に増加してしまうという仕組みになっておりまして、予算の範囲内で執行額をおさめる仕組みにはなっておりません。こうした中、御覧いただけますように、医療・介護の国庫負担額が大きく増加しております。歳出に占める割合も高まっている状況でございます。

一方、患者負担についてでございます。ページで言うと40ページでございます。このページにありますように、医療費に占める患者負担の割合を実効負担率というのですけれども、これは自己負担割合が低い高齢者数の増加や、医療の高額化が進む中で高額療養費、いわゆる負担の上限が適用される頻度の増加などによりまして、年々、低下をしていることになっております。近年の1人当たり医療費は増加しているのですけれども、その増加額は大宗が給付費で賄われております。給付費は保険料と公費負担で賄われておりまして、患者負担はほとんど変わっていない。特に、後期高齢者につきましては、1人当たりの医療費が増加している中で、患者負担は逆に減少しております。

続きまして、41ページを御覧いただきたいと思います。これまで公費負担の増加をもたらしてきた医療費の伸びのうち、高齢化などの人口動態の変化によるものは半分程度でありまして、残り半分は「その他の伸び」というものであります。この「その他の伸び」の内訳は必ずしも明らかではないのですけれども、受診・診療行動の変化に加えまして、診療報酬改定のほか、新規の医薬品や医療技術の保険収載といった施策・行為に起因するものや、医師や医療機関の増加といったものなどによる影響も含まれると考えております。これらについて、政策的にどのように対応していくのか検討していく必要があるということでございます。

そこで、「その他の増」の具体的な要因についてでございます。42ページは、医薬品の保険収載についてであります。新規に開発されて、薬事承認を得た医薬品は、基本的には全て3カ月以内に保険収載がなされることになっております。薬価につきましては、これまで2年に1回、既に収載されている医薬費などについて、実勢価格を反映した価格の引下げを行い、その影響については予算に反映させております。一方で、高齢化による使用量の増加に加えまして、こうした年度中の保険収載、新規保険収載などが生じるため、薬剤費自体は増加を続けています。これに伴って国庫負担も増加しているということでございますが、現行制度では、年度中の新規保険収載に対して、財政上の観点から検証がなされることにはなっていないところでございます。

続きまして、43ページの提供体制の影響についてであります。患者と医療提供者との間には大きな情報の非対称性が存在するという医療サービスの性格に加えまして、国民皆保険によって自己負担が低く抑えられていること、またフリーアクセスや出来高払いなどといった我が国の公的保険制度の特性もありまして、医療費は医師数や医療機関数といった提供体制に強い影響を受けることになります。しかしながら、我が国では、必要な医療需要に応じて医療提供体制を適切にコントロールするという仕組みが不十分だと、このように考えているところであります。

以上、医療・介護制度と公費負担の現状についてまとめたものが45ページになります。これまで御説明させていただいた状況も踏まえますと、医療給付費が今後も財政に依存しながら増加していく中で、財政と医療保険制度の持続可能性を確保していくためには、特に医療技術の高度化等による増加への対応については、他分野同様、医療の中で支出のメリハリづけや制度改革によって対応していくべきだと、このように考えます。

続いて、今後、医療・介護制度が直面する課題について、御説明をさせていただきます。

まずは、人口動態の変化についてでございます。47ページをお開きください。医療費・介護費に大きな影響を与える後期高齢者の数は、2030年ごろまで大幅に増加をしていくことが見込まれます。その後は、ほぼ横ばいが続きますが、2040年ごろから再び増加すると、このような姿になっております。一方、保険制度の主たる支え手である層、20歳から74歳、ここを74歳までと見るか、64歳までと見るかは様々議論ありますが、広くとって74歳の人口を見ると、今後、中長期的に大幅な減少が続くことになっております。今後の医療保険制度や介護保険制度の持続可能性を確保していくためには、51ページに示したような、「高齢者数の増加による医療・介護費用の増加」という従来からの課題に加えまして、47ページにあるように、「支え手の数の大幅な減少」による保険料等の負担能力の減少といった課題に、どのように制度的に対応していくのかということが極めて重要になってくると、こういうことでございます。

今後、医療・介護制度が直面する課題につきましては、こうした人口動態の変化によるものだけではございません。近年の医療をめぐるイノベーションの状況も踏まえると、「医療の高度化・高額化」という問題も制度の持続可能性に対する今後の大きな課題になってくると考えられます。

52ページをお開きいただきたいと思います。近年、高額な医療技術・医薬品の登場などを背景に、1カ月の1件当たりの医療費が高額であるレセプトが大幅に増加してきております。

53ページでは、高額な医療技術の例として再生医療等製品や遺伝子パネル検査などを示させていただきましたが、技術の進歩によりまして、再生医療やゲノム医療など、これまでの医療技術とはやや次元の異なる医療技術が、今後、実用化してくることが見込まれます。これらの提供価格は、これまでとは大きく異なるレベルまで高額化する可能性があるということでございます。

54ページでありますが、医薬品の高度化・高額化についてもお示しさせていただいております。主な抗がん剤の1カ月当たりの薬価でございますが、薬価収載時の時期に応じて並べたものであります。現時点の薬価のみならず、収載時の薬価を見ていただきましても、どんどんと高額化しているといったことがおわかりいただけるかと思います。医薬品の開発実態を踏まえますと、こうした高額化の傾向は一過性のものではなく、今後とも続いていくと見込まれます。さらに加速化していく可能性もございます。このように医療保険制度の持続可能性を考える上では、医療技術の高度化・高額化に対し、制度的にどのように対応していくのかが極めて重要な課題になるということでございます。

ちなみに、56ページに、国民皆保険の持続可能性についての現場医師の見方について、アンケート調査の結果をお示しさせていただきました。高齢者の医療費の増大や医療の高度化、薬剤が高額になっていることなどから、約半数の医師が現状の皆保険制度は持続可能ではないと考えているという結果となっておりまして、医療現場レベルにおきましても制度の持続可能性に対する危機意識が高まっているということが見てとれるかと思います。

医療制度の持続可能性に対して、今後、直面する課題についてまとめさせていただきますと、従来、医療保険制度の持続可能性に関する課題といたしましては、「高齢者の増加による医療費の増加」が主な課題であったわけでございますが、2040年ごろまでを見通した制度の在り方を考える場合、制度の持続可能性に関する課題はこれにとどまらず、「支え手の大幅な減少」といった課題や、「医療技術の高度化・高額化」といった課題があるということでございます。したがいまして、今後、医療保険制度を持続可能なものとしていくためには、これら3つの課題に公的保険制度としてどのように対応していくのかという観点からの制度改革が不可避であると、このように考えているところでございます。

今後の対応の方向性ということで御説明させていただきますと、ページでいうと59ページにまとめさせていただいています。これまで御説明させていただきました医療・介護制度の公費負担の現状や、医療・介護制度が今後直面する課題を踏まえまして、財政と医療・介護保険制度の持続可能性を確保していくために必要となる制度改革案の視点をこのページにまとめております。

3つの視点でまとめておりますが、1つ目は「制度の持続可能性を踏まえた保険給付範囲としていく」という視点でございます。改革の方向性につきましては、現在は新たな医療技術、また医薬品は有効性や安全性が認められれば、基本的に全て公的保険の給付対象になっておりますけれども、高度・高額な医療技術・医薬品がどんどんと登場してくる状況に対応していくためには、新たな医薬品・医療技術について、安全性・有効性に加えて、経済性や費用対効果も踏まえて公的保険で対応する仕組みにしていくべきであると、このように考えます。一方で、少額の外来医療やOTC類似薬の処方など「小さなリスク」につきましては、従前のような手厚い保険給付の対象とするのではなく、より自助で対応していくべきだと、このように考えております。これは、これまでの財審の中でもよく議論させていただいたところでございます。

2つ目は、「必要な保険給付をできるだけ効率的に提供する」という視点でございます。改革の方向性としましては、まず診療報酬本体や薬価など保険償還の対象となるサービス価格につきましては、国民負担を考慮いたしまして、できる限り効率的な提供となるよう診療報酬・薬価の適正化を進めていくべきだと、このように考えます。また、これまで以上に限られた財源とマンパワーの中で、必要なサービスを過不足なく効率的に提供していくため、医療提供体制についての都道府県を中心としたコントロールの仕組みを整備、充実していくべきであると、このように考えます。

3つ目でございますが、これは「高齢化や人口減少の中でも持続可能な制度としていく」という視点でございます。

1つ目の視点と2つ目の視点は、どちらかといえば医療費の増加をどのように抑えるのかというための取組でございますが、3つ目の視点は、その医療費を制度の支え手が減少していく中でどのような形で負担していくのかという論点でございます。

改革の方向性でございますけれども、団塊の世代が後期高齢者となり始める2022年度までには、世代間の公平の観点も踏まえまして、「後期高齢者の窓口負担の引上げ」などの改革、またここにも書いてありますとおり「年齢ではなく能力に応じた負担」になるような改革を実施すべきであると、このように考えております。また、今後、医療費が増加する一方、支え手が減少していく中であっても制度を持続可能なものとしていくために、負担の先送り構造を解消していくとともに、支え手の負担能力を踏まえつつ給付を見直していくことで保険制度の持続可能性を確保していくべきだと、このようなことで考えております。

60ページでございます。この改革の視点ごとに、具体的にどのような改革を実施していくべきかをまとめさせていただいたものでございます。ここにお示しした改革項目には、現在の改革工程表において既に掲げられている改革項目も含まれておりますが、それだけではなく、新たな改革項目や既存の改革項目の内容を深掘りした項目も追加しております。これまで御説明してきたような、今後直面する課題に対応して、医療・介護保険制度を持続可能なものとしていくためには、新たに追加した改革項目も含めまして、ここに掲げた制度改革にしっかりと取り組んでいく必要があると考えております。

これ以降は、個別の改革項目の内容を御説明させていただきます。なお、諸事情によりまして、本日は視点1、視点2に関する改革項目のみを御説明させていただき、視点3に関する改革項目の説明及び議論は別の回で改めて行うことにさせていただきたいと思います。

それでは、まずは視点1、保険給付範囲に関する改革項目についてでございます。

62ページをお開きいただきたいと思います。「保険収載の在り方」についてであります。先程も申し上げましたけれども、現在、新たな医療技術は診療報酬改定の際に収載されることになりますが、収載に当たって経済性などは特に考慮されません。また、医薬品につきましても、薬事承認が行われたものは、事実上、全て収載される仕組みとなっております。これによって、どの程度、財政影響が生じるかも検証されていないという実態でございます。

一方で、これらの保険収載の影響が医療費の「高度化による増加」の要因の一つにもなっております。このため、先程も申し上げましたが、医薬品・医療技術について、安全性・有効性に加えて、経済性や費用対効果を踏まえて公的保険での対応の在り方を決める仕組みにしていくべきだと考えます。

そこで、「費用対効果評価の活用」についてでありますが、63ページをお開きください。新規の医薬品などにつきまして、既存の医薬品との関係で、効果に比べてどの程度費用が高くなるのかを評価する費用対効果評価の本格導入に向けまして、平成30年度中に結論を得ることとされております。

新たな医薬品の保険収載の価格に関しては、原価計算方式で算定される場合は、企業が提出した原価ごとに営業利益分などを積み上げて価格を設定することになっております。例えば、輸入医薬品の場合などでは、企業間の輸出入価格がそのまま原価になっているなど、価格水準の妥当性は必ずしも明らかではありません。このため、原価計算方式で算定された医薬品につきましては、費用対効果評価を義務づけまして、費用対効果が悪いものにつきましては保険収載を見送るか、もしくは公的保険として対応するのであれば、薬価全体について保険償還可能な価格まで引き下げる仕組みにすべきであると考えます。

また、類似薬効比較方式で算定された医薬品につきましても、補正加算がつくような場合には費用対効果評価を義務づけ、その結果に応じて薬価を引き下げる仕組みにするべきであると考えております。

さらに、保険収載が見送られた医薬品などにつきましては、安全性・有効性があるのであれば、保険外併用療養によって柔軟に対応するか否かの検討も行うべきと考えております。

続きまして、「薬剤の自己負担の引上げ」についてでございます。64ページをお開きいただきたいと思います。これは、これまでの財審でも御説明させていただいているように、薬剤の自己負担の引上げにつきまして、薬剤の種類に応じた保険償還率の設定や、一定額までの全額自己負担といった諸外国の例も参考としながら、市販品と医療用薬品とのバランス、リスクに応じた自己負担の観点なども踏まえまして、速やかに具体的な内容を検討し、実施していくべきであると考えております。

続きまして、「受診時定額負担の導入」についてでございます。65ページであります。諸外国と比較いたしまして、我が国の外来の受診頻度は高く、多くは少額受診となっております。限られた医療資源の中で、医療保険制度を維持していく観点からも、比較的軽微な受診につきましては一定の追加負担は必要ではないかと考えております。

また、効率的で質の高い医療を提供する上で、かかりつけ医や、かかりつけ薬局への患者の受診行動を一定程度誘導する必要があるわけですけれども、そのためにこれまで行われてきた診療報酬上の評価というやり方では、患者と医療機関とで逆方向のインセンティブとなってしまうといった問題が生じます。すなわち、診療報酬上、かかりつけ医やかかりつけ薬局を高く評価すると患者からしてみれば自己負担が高くなってしまう、逆にかかりつけ機能を果たしていないところの報酬水準を適正化すると患者負担が安くなると、そういうことでございます。それに対しても定額負担は有効な手段となると考えております。このため、制度の持続可能性の観点から、少額の受診に一定程度の追加負担を求めるべきだと思います。また、その際、かかりつけ医や、かかりつけ薬局への患者の誘導策として定額負担に差を設けることにつきましても検討を進めるべきであると考えます。

続きまして、66ページであります。「ケアマネジメントの質の向上と利用者負担」という論点であります。介護保険のサービス利用に当たりましては、一定の利用者負担を求めておりますけれども、居宅介護支援(ケアマネジメント)については利用者負担が設定されていないことになっております。ケアマネジメントの主な業務は、初回のケアプランの作成後、毎月のモニタリングと数カ月ごとの評価、ケアプランの変更ということになっているわけでございますが、こうした業務につきまして、利用者負担がないことで利用者側からのケアマネジャーへの業務の質についてのチェックが働きにくい構造となっていると考えられます。やはりケアマネジメントにも利用者負担を設ける必要があると考えます。

続いて、「軽度者の地域支援事業への移行」についてであります。67ページであります。軽度者、例えば要支援者だとか、要介護1、2の方々は生活援助サービスの利用割合が多いのですけれども、こうした生活支援に関わるサービスは、国による一律の基準によるサービス提供よりも、地域の実情に応じた多様な主体によるサービス提供が望ましいと考えます。

こうした考えのもとに、平成27年度から、要支援者に対する訪問・通所介護は総合事業に移行するということで、利用者の状態像だとか地域の実情に応じて、国による基準に基づく専門的なサービスだけではなく、基準を緩和したサービスや住民主体のサービスを実施することになっております。平成29年度に全市町村がこの総合事業に移行しているのですけれども、まだ多くが国の基準によるサービスの実施に留まっているということであります。

今後、先行した自治体の例も踏まえまして、一定の時期までに利用者の実情によって専門的なサービスが必要な特段の場合を除きまして、基本的に緩和型や住民主体のサービスに移行するなどの方針を国において定めることなどによりまして、地域の実情に基づく総合事業の多様化を図っていくべきであると考えます。

その際、単独では、緩和型サービスの基準だとか、住民主体の取組の企画・策定が難しい自治体につきましては、都道府県が積極的に支援することによりまして、複数自治体にまたがる事業の実施も検討する必要があるだろうと思っております。

また、残された要介護1、2の方々の生活援助サービスのさらなる地域支援事業への移行も取り組んでいくべきだと考えます。

次に、視点2についてであります。保険給付の効率的な提供に関する改革項目についてでございます。

70ページをお開きいただきたいと思います。まずは、「診療報酬改定」についてであります。これまでも診療報酬全体がマイナス改定となった場合でも、国民医療費そのものは基本的にプラスで推移をしてきております。医療費が増加をすれば、その分、国民負担も増加するという影響を考えれば、引き続き医療費の伸びを抑制する方向で診療報酬改定を行っていく必要があると考えます。また、診療報酬の中身でございますが、改定においては一定の政策目的でもって単価や要件の設定を行っているものもございます。想定された政策目的が達成されているかどうかについて、その後の検証が行われていくことが非常に重要であると考えております。

続きまして、71ページであります。「薬価制度の抜本改革」についてであります。薬価制度につきましては、平成30年度の薬価制度改革におきまして一定の改革を実施したところでございます。ただし、費用対効果の導入や、毎年薬価改定の対象範囲など残された課題もございます。これらにつきましては、スケジュールに沿って着実に検討を進めていくべきであると考えます。

続きまして、「調剤報酬の改革」についてであります。73ページであります。平成30年度診療報酬改定において、大型門前薬局に対する調剤報酬の引下げなどの実施をしたところであります。今後も、地域においてかかりつけ機能を担っている薬局は適切に評価しつつ、こうした機能を果たしていない薬局の報酬水準は適正化していくことが必要であると考えます。今般の報酬改定における効果も検証しながら、かかりつけ薬局を診療報酬で評価する等、先程も申し上げましたが、かかりつけ薬局を診療報酬で評価すると患者負担も増えてしまうという点への対応、逆に言えばかかりつけ機能を果たしていないところの報酬水準を適正化してしまうと、今度は患者負担が減ってしまうといった問題への対応も含め、調剤報酬のあり方については引き続き検討していくべきだと考えます。

続きまして、「介護施設の多床室における室料負担」についてであります。75ページをお開きください。介護の施設サービスにおける食費や居住費、居住費は室料や光熱水費ですけれども、これを介護保険給付の対象外とする見直しにつきましては、この資料にありますように、これまで2回にわたって行ってきました。しかし、介護老人保健施設や介護療養病床、新設される介護医療院では、多床室の室料相当分がまだ介護保険給付の基本サービス費に含まれたままとなっております。一方、この資料にもありますとおり、特養については多床室も含めて居住費をいただいているところであります。在宅と施設の公平性を確保する観点などから、これらの施設の多床室の室料相当額につきましても基本サービス費から除外する見直しを行う必要があると考えております。

続きまして、76ページの「地域医療構想の推進」についてでございます。効率的な医療提供体制を実現していくためには、地域医療構想に沿って、高度急性期・急性期から回復期や在宅医療等に大幅に医療機能の転換を進めていく必要がございます。そのため、資料の77ページにありますように、都道府県が病床再編を具体的に進めていけるような手段の付与や、進捗に応じた財政支援などのインセンティブ措置、適切な進捗管理を行うための病床機能報告における定量的な基準の策定、医療費適正化効果の検証など、様々な施策を講じながら地域医療構想を着実に実現していくべきだと考えます。

また、資料78ページにありますように、例えば「7対1入院基本料」などにつきましては、これは急性期向けの入院基本料ですけれども、政策的な配慮から単価設定が行われております。想定された政策効果が達成されているかについて、その後の検証を行っていく必要がありますが、必ずしもこれまでそういった取組は十分行われてこなかったということであります。このため、今回の診療報酬改定が全体としてどの程度、地域医療構想に沿った病床の再編や急性期入院医療費の削減といったものにつながっているかについて、適切なKPIを設定した上で進捗を評価し、さらなる要件の厳格化などについても必要に応じて次期改定において実施していくべきであると考えます。

また、79ページの介護療養病床の転換につきましても、地域医療構想の趣旨を踏まえて、提供体制全体として医療費・介護費の効率化がなされるよう、転換状況を適宜把握、分析し、必要に応じてさらなる施策の強化を図るなど、効率的な提供体制の実現に着実につなげていくことが大事だと考えます。

続いて、「医療・介護提供体制のコントロールの在り方」についてでありますけれども、80ページを御覧ください。地域医療構想や基準病床制度によりまして、病床に対しては一定の規制を行う仕組みが整備されつつあるわけですが、一方で、診療所や医師の配置や高額医療機器への設備投資、また介護の在宅サービスは提供体制をコントロールする仕組みがございません。これらにつきましても、医療費の増加を抑制しながら診療報酬や地域ごとの偏在を是正し、限られた医療資源の中で適切かつ効率的な医療提供体制を構築していく観点から、その配置に係る実効的なコントロールが必要だと考えます。そのあり方について、早期に議論を進めるべきだと考えます。

続きまして、「医療費適正化に向けた地域別診療報酬の設定」についてでございます。82ページをお開きください。高齢者医療確保法第14条におきまして、医療費適正化の視点から地域ごとの診療報酬の定めを行うことが規定されておりますけれども、平成18年の法律改正で規定して以来、これまで実施例はございません。どのような内容の診療報酬の定めが可能かについて、都道府県に具体的に示されてもいないといった状況であります。

一方で、平成30年度からの国保改革によりまして、都道府県が県内の医療費の水準や見通しを踏まえた保険料設定と住民への説明責任を負うことになり、県内の医療提供体制の在り方と一体的な検討を行うことになりました。このため、都道府県における医療費適正化の取組に資する実効的な手段を付与し、都道府県のガバナンスを強化する視点もありますので、これも踏まえまして医療費適正化に向けた地域別の診療報酬の具体的な活用可能なメニューを国としても示し、今年度から開始した第3期医療費適正化計画の達成に活用できるようにしていくべきであると考えております。

続きまして、83ページであります。「保険者機能強化のためのインセンティブの活用」でございます。昨年、成立いたしました改正介護保険法に基づきまして、都道府県・市町村の保険者機能強化のための新たな交付金を創設しました。今後、こうしたインセンティブを活用することで、各市町村が保険者機能を発揮し、介護費の地域差縮減に努めていくことが求められるわけであります。

この交付金につきましては、市町村や都道府県の保険者機能強化に向けた体制整備、自立支援・重度化防止の取組など、複数の指標の成績に応じて交付することになっていますので、この指標の達成状況の「見える化」を実施するとともに、達成状況が良い自治体の取組を分析し、横展開を図るべきであると、このように考えます。合わせて、こうした取組をさらに進めるため、調整交付金のインセンティブとしての活用も進めるべきであると考えます。

続いて、「頻回のサービス利用の適正化」についてであります。84ページでございます。訪問介護の生活援助サービスにつきましては、月に100回以上の利用など平均を大きく上回る利用が存在していたことから、平成30年度から全国平均の利用回数を大きく超えたサービス利用についてはケアプランの保険者への届け出を義務づけまして、保険者によるケアプランの点検や地域ケア会議における検証を行うこととし、不適切な事例につきましては是正を促すこととしたところであります。このため、国において、制度施行までに、保険者によるケアプランチェックのための指針等を早急に策定、周知するとともに、今後、ケアプラン点検の実績も踏まえまして、利用者の状態像に応じたサービスの利用回数や内容についての標準化を進める必要があると考えます。

続きまして、「在宅サービスの供給コントロール」についてであります。85ページであります。訪問介護や通所介護の被保険者1人当たりの給付費を見ますと、年齢等の調整を行っても、なお大きな地域差が存在しております。一方で、訪問介護や通所介護をはじめとした居宅サービスにつきましては、自治体が地域のサービス供給量をコントロールする仕組みが十分ではございません。今後、介護費の地域差縮減に向けて保険者機能を強化していくことが必要でありまして、在宅サービスにつきましても総量規制などのサービスの供給量を自治体がコントロールできる仕組みを導入するべきであると考えます。

本日の医療・介護の最後になりますけれども、「介護事業所・施設の経営の効率化」についてであります。87ページでございます。

介護サービス事業者の事業所別の規模と経営状況の関係を見てみますと、規模が大きいほど経営の効率化余地が高いことながら、経営状況も良好な傾向にあることが見てとれます。一方で、一部の営利企業による経営主体の大規模化は図られておりますものの、介護サービス事業全体で見ますと、依然として経営主体は小規模な法人が多いということが伺えます。介護サービス事業者の経営の効率化や安定化、人材の確保や有効活用、さらにはキャリアパスの形成によるサービスの質の向上などの観点から、介護サービスの経営主体の統合・再編を促すための施策を講じていくべきではないかと思っております。

医療・介護については以上でございます。

〔 岩佐主計官 〕 第二担当主計官の岩佐でございます。

それでは、私のほうから、90ページ以降、年金制度に関しまして若干御説明をさせていただきたいと思います。

まず、90ページであります。来年は、5年に一度の年金財政の検証の年でありまして、年金財政の健全性とともに、行うべき制度改革についても合わせて検討していくことになります。このため、本日、残りの時間で年金制度のあるべき制度改革に向けて、時間の関係もあってできるだけ簡潔に、かつ焦点を絞って整理させていただきたいと思います。

御案内のとおり、年金制度につきましては、平成16年に、将来の現役世代の過剰な負担を回避し、一方で公的年金として適当な給付水準を確保するとの考え方のもとに、大きな制度改革を実施しております。具体的には、基礎年金国庫負担や保険料を一定水準まで引き上げるとともに、これらを確保できる財源に収まるように給付の水準を自動調整していく、マクロ経済スライドと呼んでおりますが、そういった仕組みを導入いたしました。これによりまして、年金財政を均衡させるための基本的な枠組みは概ね完成したと言えるかと思います。

一方で、左側の緑の枠の欄ですけれども、マクロ経済スライドは実際、デフレ下では機能を発揮せずに、現在の受給世代への給付額の調整が行われなかった結果、年金財政をバランスさせるために将来の給付水準に影響が生じているのが現状です。

また、右側でありますが、この間、制度創設時に比べればということではありますけれども、働く意欲や能力のある高齢者が大きく増加しているといった社会・経済構造の変化もございます。

こうした社会・経済の変化や年金制度の実態等も踏まえまして、制度をファインチューニングしていく必要があるのではないかと考えております。

制度改革に当たっての主な視点でございますけれども、下の4つの箱に整理させていただきました。1つ目は、一番左側でございますけれども、「世代間の公平性」という問題です。マクロ経済スライドにつきましては、不況時に未調整分をキャリーオーバーして、好況時に取り返すといったような仕組みを導入するなど、一定の改善が図られておりますけれども、もう一段、工夫の余地はないのかということ。次に、「多様な働き方」ということで、短時間労働者への適用拡大をさらに進めていくべきではないか。3つ目、「人生100年時代への対応」、4つ目として「年齢ではなく能力に応じた給付と負担の在り方」としてどうあるべきかといった論点かと思います。右側の2つについては、次ページ以降で若干焦点を絞って御説明したいと思います。

それでは、91ページでございます。「人生100年時代」への対応として、「高齢者の就労の促進と年金制度の在り方」といったものが大きな論点になるかと思います。現在、年金制度は、60歳から70歳の間で受給開始年齢を選択できる仕組みになってございます。この選択制を70歳以降にも、繰下げ受給の柔軟化と一般に呼んでおりますけれども、そうした話が結構議論されていることは事実かと思います。高齢者により活躍していただきつつ、将来世代の年金も維持していくといった観点からは、支給開始年齢、いわば標準的な受給開始年齢は、現在、65歳までに段階的に引き上がっている最中ですけれども、それそのものも引き上げるということもあわせて議論していくべきではないかと考えてございます。

現在、支給開始年齢は、左下の図のとおり65歳へと段階的に引き上がっている最中でございます。給付と負担が長期的にバランスする平成16年改正後の現行の年金制度のもとでは、ある世代で支給開始年齢の引上げなどにより財源が節約できた場合は、その後の世代の給付水準を向上させる効果があるということであります。

右側の表で、そのイメージを掲げてございます。まず、全く何も引き上げがない場合は、年金財政がバランスするまで、各世代に対してマクロ経済スライドによる給付調整が行われて、世代ごとの給付水準が低下していくということであります。ただ、実際にはデフレ下で、これまで調整は不十分でありました。

そうした中、資料の2、真ん中でございますけれども、現在は65歳までの引上げによる浮いた財源が将来の給付水準の向上につながっていく。

これを、例えばの話でございますけれども、さらに67歳、68歳といったレベルまで引き上げていくということであれば、図中の赤い部分が浮いた財源でございまして、それが将来の給付水準をさらに上昇させることにつながるということであります。

なお、受給開始年齢の引上げについてはしばし誤解されることも多くて、財政を助けるために年金をカットするのではないかと言われることもあるのですけれども、御説明したとおり、ある時点で財源を節約しても、それは基本的には後世代に回るということでございまして、支給開始年齢の引上げということで何か近視眼的に財政負担を減らそうとか、そういうことではないということは念のため申し上げておきたいと思います。

92ページでございます。まとめますと、先程も申し上げましたとおり、マクロ経済スライドによる給付調整が将来世代に偏ってきているという現状、それから左側の図表のように、制度創設時から平均寿命は大きく延びて、働く意欲のある高齢者が増えただけではなくて、65歳へと支給開始年齢が引き上がってきた中で、高齢就労が現に促進され、就業率も実際に上がっていくという現状。それから、右側の赤い矢印でございますけれども、高齢就労により保険料収入が増えれば、さらに将来の年金給付水準の充実にもつながるといったこと等々を踏まえれば、さらに高齢就労を促進していく観点から、支給開始年齢のさらなる引上げを真剣に検討すべきではないかと思います。

具体的には、下の箱のとおりでありますけれども、個人の人生設計、それから企業における雇用の在り方などは大きな影響を与えるものでありますので、十分に準備期間を設けることは前提でありますけれども、現在、引き上がっている、2030年に65歳までの引き上げが女性も完了するわけですが、その先もさらなる支給開始年齢の引上げをやっていくべきではないかといった御提案でございます。

最後に、93ページでございます。「高所得者への年金給付等の在り方の見直し」ということで、老齢基礎年金は、老齢期の稼得能力の喪失に対応するものということで、現在、財源の2分の1は国庫負担となってございます。稼得能力の十分ある高所得者については、社会保障・税の一体改革で、基礎年金の国庫負担分相当の支給を停止する制度が提案されまして、今後、検討の上で必要な措置を講じるものとされてございます。

下の箱にまとめておりますけれども、今後、支え手が減少する中で、年齢ではなく能力に着目していくべきだと思いますし、年金の分野におきましても高所得者について基礎年金の国庫負担相当分の給付を停止する、あるいは年金課税のさらなる見直しを行うことで、今後、高齢化で増加する国庫負担の軽減を図っていくべきだと考えております。

駆け足になりましたが、私どもからは以上であります。

〔 田近分科会長代理 〕 どうもありがとうございました。

これまでの説明について、御意見、御質問等ありましたら、御発言ください。いつものとおり、ネームプレートを立てていただいて、こちらから御発言を求めたいと思います。では宮武委員、宮島委員、神子田委員、南場委員、お願いします。

〔 宮武委員 〕 早い指名でありがとうございます。2つお願いごと、2つ意見でございます。

医療について、35ページの右側でございますが、OECD加盟国の総医療費対GDP比というものが出ております。日本は5番目ということでありますが、このデータは各国の高齢化率を全く入れない形の単純な比較だと思います。それを入れませんと客観的な評価ができませんので、次の機会にでも高齢化率を勘案した場合にどうなるかというデータをお示しいただければと思います。

次も要望です。38ページに医療費・介護費の保険料負担とございますが、それぞれのところでOECD等の主要国との比較をデータとしてお入れになっているのであれば、医療保険の保険料率についても主要な国々との比較をお出しいただけないのかということであります。公費医療の国と比べるわけにいきませんので、社会保険方式を採用している、例えばドイツやフランス等についての比較が議論をする際に必要ではないかと思います。

次は、意見でございます。医療につきましては、43ページのところで、今回、提供体制のコントロールということに踏み込んでおられるのは大変意義のあることだと思います。皆保険体制は大事でありますけれども、それに伴うフリーアクセス、自由開業制、出来高払いというのは大変問題点が多くて、フリーアクセスで言えば、どんなところでも自由に外来で行けることになりますと、別のページに日本の外来の平均的な回数は年間で12.7回とございまして、主要国の中で断トツに高いとあります。これは、全国民、しかも健康で1回も受診などしたことがない人も含めて12.7回であります。現実に、70歳以上で受診している人だけをとると、年間44回を超えるという異様な頻回になります。このような現状は、まさにフリーアクセスの弊害であります。フリーアクセスがあることによって、かかりつけ医がなかなか普及しないとか、あるいは出来高払いであるので、薬剤で言えば過剰投与や重複投与が横行して、極めて大きな費用がかかっている。このあたりにやはり強力なブレーキをかける必要性があります。そういう意味では今回、医療提供体制に一歩踏み込まれたことに私は賛意を表しますが、やはり本丸を攻めませんと、出城ばかり攻めていても解決がつかないという思いがしてなりません。

こんなことは、主計官は私などに言われなくても十分御存じであります。私は、主計官の気持ちを代弁するつもりで発言しております。

次は、年金でございます。年金の見直しは、随分後のほうに、ささやかについているのですが、極めて重大なことを御提案いただいたので、私は、これについては反論をしなければいけませんので、91ページを御覧ください。

91ページに、支給開始年齢引上げの効果ということで、右側に3つの図が出ております。かつて支給開始年齢を引き上げた場合には、それによって浮いた財源を使って保険料の引上げを見送ったり、あるいは保険料の引上げ幅を小幅にするという形で浮いた財源を使っており、財政効果は極めて高かったわけであります。現在、厚生年金保険料率は18.3%に固定されておりますので、支給開始年齢の引上げで浮いた財源は保険料には関係なく、既に年金を受けている方から、将来、年金を受け取る方まで、全ての世代に極めて広く、薄く配分されるということになります。これしか使いようがないわけであります。

そのようなことを前提に置いてこの表を見たときに、2ですが、現行の60歳から65歳への支給開始年齢の引上げが給付の改善になったというのは事実でしょうか。支給開始年齢の引上げというのは、1994年に基礎年金から始まりました。そして、2000年改正で厚生年金の報酬比例分の支給引き延ばしに移っていくわけです。マクロ経済スライドは2004年の改正で入れたわけですから、まだそのときには保険料の上限固定も、マクロ経済スライドもなかったわけです。このときの65歳への移行というのは、保険料を高騰させないため、防止するための対策であって、給付の改善ではないと思いますので、これは事実関係が違っているのではないかと私は思います。

また、3番目であります。今度、68歳まで引き上げるということになりますと、確かに下の注に書いてありますように、将来世代だけでなくて、その時点で受給している世代全てに及ぶと書いてございます。そのとおりだと思います。ただ、その後に、将来世代の方が平均余命が延びるからメリットが大きいと書いてありますけれども、より若い世代は、支給開始年齢の引上げによって65歳で受け取るべきものを3年間、要するにお預けを食うわけです。一番被害を食うのです。そのデメリットが書いていなくて、将来受給できる額が少し増えるということがわずかに書いてあるのは、私は公平ではないと思います。

支給開始年齢の引上げをお願いするときには、より若い世代に、あなた方には気の毒だけれども、3年間、受給を待ってください、その代わり年金制度の持続可能性が高まりますと、そういうようにお願いするしかないわけであります。一番被害を被るのはより若い世代、一番得をするのは私のように既に年金受給世代に入った人間なわけです。私たちの世代は何のデメリットもないわけです。私がこのようなことを言うのは、本人にとってみれば大変得でありますけれども、それはやはり社会的に不公平だと思うわけであります。

社会保障制度改革国民会議で私どもが合意したのは、支給開始年齢の引上げではなくて受給開始年齢という形で、なるべく遅く受け取って、自分のライフサイクルに合わせて年金を受け取っていこうという提案をしました。昨年、自民党の一億総活躍推進本部の提案の中でも、支給開始年齢は一切出てこなくて、70歳以降に受給開始を延ばして選択できるようにしようということでありました。2月に高齢社会対策大綱が出ました。ここでも支給開始年齢は触れておりませんで、70歳以降、選択できるような仕組みにしようと提言をしております。

このような大きな流れをひっくり返すのはいかがなものかと思うのと同時に、財務省と厚生労働省の間であまりにも支給開始年齢に対する認識が違うということは、国民を戸惑わせることであると思いますので、ぜひ厚生労働省とのすり合わせをお願いしたいと思います。

以上でございます。

〔 田近分科会長代理 〕 年金支給開始年齢引上げに対して、それをどう理解するかは本日の最後のほうで主計官からもう一回触れていただきたいと思います。

では、続けて宮島委員。

〔 宮島委員 〕 ありがとうございます。

医療費の適正化に関しまして、地域別診療報酬というものが示されています。これに関しましては、現在、奈良県での取組がありまして、大変注目しています。簡単に言うと、県内の保険料の水準を統一して、地域別診療報酬も活用するということですけれども、これは医療費の抑制策として、先進事例として横展開していくべきだと思います。

特に大きなポイントと思っておりますのは、もちろん都道府県のガバナンスというポイントは大きいのですけれども、もう一つは市町村で行われている一般会計からの法定外繰り入れをなくして、医療費と保険料の関係を1対1にする、つまり「見える化」しようというところが重要だと思います。今、病床が多くて医療費が高い自治体でも、結果的に補塡されていることで保険料が安かったり、医療費の負担を保険料で適切に負うという形になっていないために、住民が地域によっての医療費の違いにしっかりと関心を持って、そこに注目して節約していこうというインセンティブが働いていないと思います。この前、海外調査でスウェーデンの例をお話ししたときも実感したのですけれども、とにかく自分たちがこの保険料を払っても、これだけの医療は必要であることを1対1の関係で住民が比べられるものとして認識するということが大事で、それをしますと、現在の誰かが払ってくれるから一応、受けておこうというような過剰な受診や検査、投薬を自分たちでも抑制するというきっかけになると思います。

2つ目ですけれども、49ページにもありました医師数が医療費を増加させる、将来の需要を生み出すというところは明らかだと思います。将来の医療費との関係において、医学部の定員の戦略というのは非常に重要だと思います。今、医学部の定員が臨時的に増えているのは、地域による偏在を是正するためだと理解しておりますけれども、実際問題としては、今、都市部の学生がかなり地方の国立大学の医学部に行って、ある程度お勤めをしても、結局、都市に戻ってしまうというような傾向もありまして、偏在対策が十分に機能していないと思います。これを目的に医学部の定員を増やしているならば、その地域枠や地元枠をよりはっきりさせる必要があると思います。WHOも、医師偏在をどうにかしたいならば、教育にまず介入を、と言っていると思います。

さらに、現実に身近で感じますのは、これは1年前も申し上げましたし、私は別の会議の機会でも申し上げているのですけれども、とにかく現在、理系の能力の高い高校生がどんどん、どんどん多く医学部に行っている。そして、これは毎年毎年、その傾向が顕著だと身近で感じていたのですけれども、実際に幾つかのデータ、例えば都市部の進学校の進学データ、あるいは医学部の偏差値データなどを現実に見て、それを改めて確認しました。とにかく日本全体で考えたときに、日本の理系の頭脳を理工学部や工学部の先端研究にもっとちゃんと配分していかないと、日本の土台としての産業技術が本当に心配な状態だと思います。こうした将来の医療費ですとか、医師の偏在の問題、それからどのような人材に、どのような職業についてほしいかということも含めて、日本の将来の科学技術や産業競争力と合わせて、医学部の定員の問題をもう一度、戦略的に考える必要があると思います。

以上です。

〔 田近分科会長代理 〕 では、神子田委員、お願いします。

〔 神子田委員 〕 1つは、29ページで、新しい目安のことですけれども、過去3年間、高齢化による自然増分をできるだけ抑える。例えば、6,300億円増えてしまうところを5,000億円に伸びを抑えるということをやってきましたけれども、全体の赤字の規模から考えると、まだまだ歳出抑制が必要なのではないかという意見も多く聞かれます。今回、医療費に関して、様々な効率化のアイデアを聞かせていただきましたけれども、次の3年間の目安を立てるとき、額はこれから考えていかれるのでしょうけれども、これまで同様でいいと思われているのか、それとももっと切り込んでいきたいと思われているのか、そのあたりの財務省の認識をお伺いしたいというのが1点です。

もう一つは、53ページ、54ページあたりで、医療の高度化、医薬品の高額化というものがありまして、お金がないから、本当は治る治療法があるのに治せないというのも切ないことですが、高額の医療ほど収入に応じて負担額を増やすという応能負担の考えをさらに拡大して、例えば富裕層は、通常だとほかの人の2倍程度を払うが、高額のものに関しては自己負担の割合を5割とか、8割とか、払える人は払う。そういう極端な傾斜配分というか、そうしたことも考えたらいいのではないかと思うのですけれども、その辺の御見解はどうでしょうかということです。

以上です。

〔 田近分科会長代理 〕 南場委員、お願いします。

〔 南場委員 〕 社会保障の問題は最も重要なテーマだと思うのですけれども、日経新聞のアンケート結果が紹介されていましたが、誰もがマクロでの持続可能性は厳しいと思いながら、ミクロでの日々の取組に変化が起きていないという状況だと思います。自助、共助、公助それぞれの分野において、マクロの行動に影響を与える規律、インセンティブを導入していくという必要性を強調したいと思います。

共助におきましては、先程の宮島委員と私も同じ意見で、医療費と保険料負担の関係を「見える化」したという点で奈良県の取組は非常に素晴らしいと感じています。より身近なレベルで、わかるように説明責任を果たしていくことで規律を働かせていくことが期待できるのではないかと思っています。

自助という観点では、財審ですので、共助の範囲の見直しとしての自助という発想だとは思うのですが、本来的には病気にならないように各個人が自分の健康を維持する自助の取組へのインセンティブを設計して、ビルトインしていく必要があると思います。この分野は民間企業が創意工夫していく分野でありますが、一方で現在の環境は、共助領域のセーフティーネットがしっかりと整備されている、皆保険制度がしっかりと整備されているために、個人の動機づけに課題があります。健康が空気のような位置づけになっているというところが課題ではないかと思います。

自助の取組に対するインセンティブの一つとして、先般、セルフメディケーション税制が創設されましたけれども、どれくらい利用されているのか。さらに踏み込んだ取組を考えてもいいのではないかと思っています。例えば、健診情報により保険料を割り引くという取組が民間の保険分野で出てきていますけれども、もう一歩進んでヘルスケアサービスと保険を組み合わせる商品も出てくる。こういった民間商品の購入へのインセンティブ、動機づけというものを入れるなど、これはあくまで一例ですけれども、社会保障の持続可能性を高める観点から、個人にとってわかりやすく、行動に実際にインパクトを与えるインセンティブ、規律というものを工夫していく必要があると感じます。

あと、今回の資料も全般的にそうですけれども、具体的な施策の案なども提案されているのですが、我々、一般の者にとってはその施策のインパクトがわかりにくいのです。それぞれの施策で、どれくらいの社会保障費の削減の効果があるのか。推計でも、概算でも、間違っていても構わないので、どの程度の効果があるものであるということとセットでないと、なかなか議論ができない。以前にも1回申し上げたのですけれども、ぜひ工夫していただきたいと思います。

それから、既に施行されている施策の利用状況、どの程度活用されて、どの程度効果が表れているのかということの検証も極めて重要で、例えば先程のセルフメディケーション税制などもそうですけれども、一体どの程度の人に利用されているのかということを常にモニターしていく必要がある。全ての施策について、それをしっかりと徹底しないといけないと思うのです。各施策のインパクトのポテンシャルがどの程度で、それと比して何割ぐらいの成果が出ているのかというと、残りの部分はまだまだ徹底する必要があるということになるので、そういったモニタリングがどの程度しっかり行われているのかというところも非常に気になるところです。

以上です。

〔 田近分科会長代理 〕 では、中空委員。

〔 中空委員 〕 ありがとうございます。

今し方、神子田委員から高額医療の話がありました。ここは財審ですので、そもそも財政再建をしなければいけないということを前提に考えますと、高額医療についてのみならず、どこまでの範囲のものを公的なところで負担すべきかという線引きをもう一度しっかりと考える必要があるかと思っています。性善説に立てば、皆を助けるべきなのでしょうけれども、世の中には、極端なことを言うとマザーテレサもいれば殺人犯もいる。その中で、どこまでを公的に支えるべきかという議論は、線引きという意味でしなければいけないのではないかとまずは考えています。

それから、60ページで示されている視点を踏まえた具体的対応というところです。よく整理されていて良いと思うのですが、財審を毎回やっていて、国民の目から見たら、いつも同じことをやっている人たちという感じがしないでもないので、それでも何年も参加させていただいていると、その時々の目玉があるわけですので、今回の目玉だったり、これに注力していく、という方針を打ち出すのも重要だと思います。今回については、保険収載の在り方というのが一つのポイントなのかなとお聞きしましたが、これに力が入っていますというメリハリを少し示していけたらいいのではないかと思います。

もう一点、91ページで、先程宮武委員が様々な指摘をなさっていましたが、宮武委員の話ということではないのですけれども、今回、この議論が出てきたことはやはり良いことだと思っています。というのは、支給開始年齢の引上げというのは、早晩、出してこなければいけない話題だろうと思っています。そういう意味でいくと、他の国、例えばアメリカだって67歳、ドイツだって67歳、イギリスは低かったですが、イギリスの女性の支給開始年齢も制度変更で、2050年近くには68歳まで上がっていくことになっています。なので、他の国との比較も考えて、支給開始年齢を引き上げていこうという話を出していくことに関しては、私は良かったのではないかと思っています。

以上です。

〔 田近分科会長代理 〕 冨田委員、お願いいたします。

〔 冨田委員 〕 宮島委員と南場委員が御指摘になられた保険者機能の発揮ということは非常に重要だと思います。それがゆえに、ここで対策として医療と介護をそれぞれ書かれているのですけれども、82ページの医療についてですけれども、このようなことは新たに保険者となる都道府県にとって、それを実行するインセンティブをどこまで持つことができるかが大事で、これは保険料だけではなく、国からの給付金も出るわけですから、それと同時に両方、給付金の在り方ということをきちんと考えませんと、モラルハザードが起きてしまうリスクというのは絶えず存在していると思います。

同じことは介護についても言えまして、今年は保険者機能強化、インセンティブ強化のために200億円もの交付金を出します。地方交付税交付金の問題点について、本当にこのようなやり方でいいのかどうか。私も何か良いやり方を知っているわけではないですが、特に冒頭、強調されました39ページの、給付費に応じて国庫負担が決まってしまうという構造の中において、こうしたインセンティブの活用や、あるいは保険者機能の発揮について、きちんとした予算の制約をつけませんと、やはり現在の地方財政と同じような問題に陥ってしまうのではないかということを懸念いたします。

私からは以上です。

〔 田近分科会長代理 〕 では、土居委員。

〔 土居委員 〕 まず、2020年度のプライマリーバランスの黒字化が困難になったことを受けての今回の議論であるということを考えますと、29ページにありますように、いかに社会保障の給付を抑制するか、増え方を小さくするかということが、今後、プライマリーバランスの黒字化をできるだけ早く実現するために非常に重要な鍵になると思います。

その中で、確かに「基本方針2015」には、「2020年度(平成32年度)に向けて」、「高齢化による増加分」というように書かれているわけです。実際、人口の統計を見てみますと、実は2020年度と2021年度というのは高齢者の人口の増加が一息つく。このところ、ずっと高齢者の人口が増えている中では稀有な年になるということですので、2020年度と2021年度は高齢化による増加分は非常に低くなるということだと理解した上で、計画を立てていくべきではないか。

具体的に申しますと、2016年度から2018年度までは、75歳以上人口は年平均3.3%で延びていた。2022年度から2024年度は、団塊世代の方々が75歳以上になるので、4%を超えるような年率で増える。それでも、2016年度から2018年度は29ページにあるような形でうまく収めてきたということを考えると、そんなに劇的に、年5,000億円とか言っているよりも倍も増やす程に社会保障費を増やさなくても2020年度から2024年度はやっていけるという目処が立つのに対して、実は2020年度と2021年度は75歳以上の人口増加率は1%弱ということですから、この2年間は他の年に比べて社会保障費の増加を抑えられるはずだと思います。そこは、しっかりと今後の計画に盛り込んでいただきたいと思います。

続きまして、64ページの薬剤の自己負担です。これは、確かに長年、財審の建議でも言っているわけですけれども、なかなか理解が浸透しないところの一つの障害は、医療機関側の自己負担率の違いについての見解があるのだと思いますが、大きなポイントとしては、患者が薬局に行って市販薬を買うと全額自己負担なのに対して、同じような薬効のある薬が病院や診療所に行くと3割自己負担で済んでしまう上に、公定薬価で低い薬価のものが処方されることになるので、患者が受診するのか、自分で薬局に行って治すのかという判断を、価格効果で歪ませているところが問題なんだということを強調していくべきではないか。医療機関が悪いという言い方をすると、なかなか反対にあってしまうので、そうではなくて、患者の自己判断を歪ませているような自己負担率になっているところが問題なので、市販薬類似のものは全額自己負担で、そこは別に医師の判断で処方してよろしい、だけど自己負担率は違いますと、このような説明がいいかと思います。

あと2つですけれども、76ページの地域医療構想については、まさに入院基本料の高いベッドを減らして、より医療密度が低い患者さんを扱うベッドを増やす。トータルとしては減ることになるということですから、単価が違うことを踏まえると、地域医療構想は医療費を抑制するために設けられているわけではないのだけれども、副次的な効果として病床再編が医療費の抑制に通じるというところをしっかりと踏まえて、地域医療構想を進めていただきたいと思います。

最後に、91ページですけれども、年金の話で、2020年度までのプライマリーバランスの黒字化というときには、2019年度の年金の財政検証を踏まえることはできないので、財政健全化と年金という話は少し距離があった。しかし、2020年度以降の財政健全化ということになりますから、2019年度の年金の財政検証をしっかり踏まえた上で、できるだけ早い年にプライマリーバランスの黒字化を実現する。このような意味で、年金は非常に大事な位置づけになってきたと思います。

その中で、先程宮武委員が御指摘になった3つ目の部分は違っているのではないか、主計官の御説明が正しいのではないかと私は思っています。どういうことかといいますと、確かに支給開始年齢が引き上げられる年齢、生まれ年の世代は、一見すると3年分遅らされることはあるかもしれませんが、もともと我が国の年金の設計は繰上げ受給が認められている。だから、68歳の支給開始になっても65歳からもらうことは許されている。さらに、平均余命まで受け取れば、何歳から受け取っても受給総額は同じという設計になっているということは、支給開始年齢自体を遅らせても受給総額は変わらないということがあるわけです。もちろん問題は、所得代替率があいにく下がっていっているところで、他の生まれ年とは違う受取り額になることはやむを得ないということはありますけれども、支給開始年齢自体を遅らせることで受給が減ることはないようにすると御丁寧に主計官がおっしゃったわけで、そこはやはりおっしゃっているとおりだと思います。

なぜこれが必要なのかというと、所得代替率が50%を割らないようにすることが改革の焦点になっているからでありまして、できるだけ所得代替率が50%を割らないようにするためには、主計官が御説明されたような方法もあるのではないかということなので、しっかり支給開始年齢の議論もしていく。これは、別に厚生労働省の意見と違っている話ではないと私は思います。

以上です。

〔 田近分科会長代理 〕 ここで、幾つも質問があったので、主計官のほうから目安について、それから年金の支給開始年齢の引上げの効果ですけれども、事実関係をもう少し、過程を説明したりすることで手間がかかるなら、それは次回以降、きちんと説明してもらうということでも構いません。目安についてお答えください。

〔 阿久澤主計官 〕 幾つか御質問をいただきました。今後、改革は今までと同様でいいのか、もっと切り込むのか、まさに目安をどのような形でということでありますが、それは冒頭、紹介させていただいたとおり、「基本方針2015」であのような形になっている。これを踏まえて、今後、どのような目安にしていくのか。現在、この時点で金額がどうこうと確定的に申し上げることはできませんが、引き続き改革努力を続けていかなければいけないという考え方のもとで設定していく必要があるだろうと、このように考えております。

今回、改革のメニューを様々な形でお示しさせていただいたのは、来年、再来年の削減額をどのように出すのかということも、目安の設定を受けた後、大事だと思いますし、そうしたことも取り組んでいかなければいけないと思いますが、より中期的に見たときに、先程委員が言ったような人口構成の変化だとか、高額化へのリスクだとか、制度の持続可能性を確保するために、今後、どのような改革を進めていかなければいけないのかということにも力を入れて、御説明させていただいたつもりでありますし、それに取り組んでいかなければいけないと考えております。

高額な医療費については、所得に応じてという話でありました。これまでも、ある意味、応能負担的な見直しというのは幾つか、様々な形で行われてきております。その中で、御提案でいただいたような取組については、やはり能力に応じて負担をしましょうという方向での見直しは、これまでも行ってきたし、今後も行っていく必要があるだろうと考えております。

最後に、冨田委員からありました、国からの給付金の配り方についてのインセンティブの話ですが、一言だけ申し上げます。確かに、保険者努力を促すために、国からお渡しする負担金についても工夫が要ると思っています。特に、調整交付金につきまして、医療も介護も保険者の努力に応じて、定率ではなく傾斜的に配分できないか。例えば、地域差がある程度縮小したことが評価できるような配り方ができないか。そういった見直しも必要であると、このように考えております。

〔 岩佐主計官 〕 では、年金の関係で若干補足をさせていただきたいと思います。

宮武委員から、非常に手厳しい御指摘もいただきました。91ページの図の2の絵のところでございますけれども、確かに平成16年の年金制度改正前の段階的な引上げの財源は、ある意味、保険料の抑制につながっているということは事実です。そういう意味では、正確性に欠けているというのは御指摘のとおりです。ただ、イメージとしてわかりやすく示すという意味で御理解いただければと思います。

それから、厚生労働省とよく議論してほしいというような御指摘もいただきました。おっしゃるとおりだと思います。我々、今までの議論を否定するつもりもありませんし、土居委員からも御指摘のあったように、将来の所得代替率を何とか維持していくという観点、プラス高齢者の就労をいかに促進していくかという観点で、大きな視点で一応、問題提起として申し上げたつもりでございます。財政負担にある意味ではつながらない話を、なぜ財政当局が持ち出すのかというような御指摘もあろうかと思いますけれども、高齢就労が促進されることで、社会の支え手として高齢者の方々に頑張っていただく。そうした中では、年金、医療等の社会保険制度の安定運営にもつながり得る話でありますし、高齢者の貧困の防止、あるいは税収の増加といった形で、間接的、直接的に国庫も裨益する話だと思っていますので、私どもの関心事としてのスコープに入っているということでございます。

その上で、宮武委員から様々な形で御指摘もありましたけれども、確かに引上げの効果とマクロ経済スライドの調整の双方を、つまり、ある意味ダブルパンチを受けるような世代が一時生じるということは紛れもない事実でありまして、そういったところの不公平感みたいなものをどう乗り越えていくか、国民的な納得が得られるかという論点は、確かに御指摘のとおりかと思います。若干補足させていただきますと、世代間の公平性の観点から、現在、年金を受給している世代に将来世代の給付水準の維持に御協力いただくために、ある意味マクロ経済スライドの機能が更に発揮されるような工夫ができないかということも、今回、一つの論点として提示させていただいたつもりであります。

それから、これは制度設計の問題ですけれども、支給開始年齢の引上げによって生じた財源を放っておくと、宮武委員は広く薄くまかれるとおっしゃいまして、確かに今、受給している世代も、マクロ経済スライドの調整期間が早く終わることで恩恵を受ける側面は確かにあるのですが、そうした恩恵の受け方を制度上工夫して、より将来の世代に厚くというのは、制度は複雑になりますけれども、工夫の余地はあり得るというのが一つです。

もう一つ、そもそも支給開始年齢を引き上げることによって、就労を促進して、年金が若干減る分、働いて稼いでいただくという側面でしっかりと確保されれば、そこの部分はお釣りが来るわけであります。そうした観点から、先程繰下げ受給の話もされていましたけれども、現状、繰下げ受給は実はあまり使われていないというのが実情であります。多様な選択肢を用意することは全く否定するつもりもありませんし、繰下げ受給そのものの柔軟化という議論もやはりやっていくべきだとは思いますけれども、就労の促進効果ということを考えたときに、過去の年金支給開始年齢の引上げが雇用制度も変え、民間のプラクティスも変えてきたという側面があることは、これもまた一方で事実かと思います。

様々な形で、縷々申し上げましたが、本件については、そう単純な議論ではないということはよくよく承知しておりまして、年金制度の問題だけではなくて、高齢者の就労環境の整備といった雇用政策の面も含めて、国民的な議論をやっていくべき問題だと思っております。そういった意味では、今回、広い意味での問題提起をさせていただきましたけれども、厚生労働省とも引き続きよく議論させていただきたいと考えております。

以上です。

〔 田近分科会長代理 〕 当然、短い時間で議論すべきでないことは、私も承知しています。年金支給開始年齢の話は、本日はひとまずここで終わらせて、次回以降、論点を詰めるべきものがあれば、更に詰めていきたい。

赤井委員、手短にお願いいたします。

〔 赤井委員 〕 もう皆さんに言っていただいたことと重なるのですけれども、39ページのところにここ20年程度の支出の変化がありますが、言われているように財政赤字の伸びはほとんど社会保障から来ているということなので、社会保障の伸びに見合うだけの税金を十分集められていない。逆に言うと、社会保障が伸びているのに、国民には負担していただかないまま、国民はそこに意識がないというのが大きな問題で、両者の間にリンクが必要だということです。37ページを見ていただきますと、同じように保険料負担と公費負担と利用者負担とありますが、公費負担の中には財政赤字が入っていると思いますので、この赤い部分を除いてしまうと、結局のところ、公費負担と言いながら将来世代に負担が回っていて、現役世代の負担が十分なされていない。つまり、今後も社会保障費が伸びていくときには、必ず現役世代からお金を取って、財政赤字を増やさずに、医療費での均衡を目指すような制度に向けた改革が全体としては重要かと思います。例えば、高齢化などの部分に関しては、仕方がないので、自動的に利用者負担を伸びの分に合わせて何らかの形で、所得の高い人の伸びを増やすとか、保険料も高くはなっていますけれども、高齢化により伸びた部分は保険料も自動的に上げるなどのリンクを明示して、逆に利用者に対して、医療費がかかると税金や保険料も伸びてしまうから何とかしようというインセンティブをつけるほうが良いと思います。

以上です。

〔 田近分科会長代理 〕 ありがとうございました。

続けて、田中委員、武田委員、角委員、この順番で。お願いします。

〔 田中委員 〕 1つ質問と、1つはコメントになります。

社会保険、社会保障という全体に守備範囲の大変広い内容について、現状と課題をきれいに整理していただいて、なおかつ、それに対するソリューションも大変論理的に説明していただいたこと、御礼申し上げます。ただし、その説明は、現行制度を是として、前提条件として御説明されていたと私は認識しているのですが、現在の制度について質問がございます。3年ほど前まで、この財審で非常に集中的に議論していたジェネリックの普及率と、その削減効果がどの程度だったのかというところ、ここの議論が急に消えてしまっているので確認をしたいということ。それから、かかりつけ薬局制度も導入されましたけれども、一体どこにどのような効果があるのか、消費者としてよく見えないところがあります。この点について、質的なところ、それから量的な削減効果について御説明をいただきたいというのが質問です。

2点目は意見でありまして、これはスライドで言うと43ページになります。ここに患者と医療提供者との情報の非対称性ということが指摘されていて、まさにそのとおりだと思うのですが、もしそうであれば、患者、あるいは医療機関の自助努力だけでは、おそらく問題は解決しないのではないかと思います。やはり両者に介在する仕組みが必要で、私は以前、ゲートキーパーの必要性を申し上げたのですが、2種類の仕組みが必要で、1つはかかりつけ医制度などのゲートキーパーの問題であります。ただ、そのゲートキーパーとしてのかかりつけ医も、役割や任務の保障があまりされていないために、高額な医療機器を購入しながら何とか顧客を確保しようと動いてしまっているのではないかと私は思います。2点目は、やはり病院側のほうのゲートキーパーなのですけれども、ここはコストのところをもっと頻繁にチェックして、警告を出すような仕組みというもの、これは保険者機能になるのでしょうけれども、介護保険だけではなく医療についてもこの機能を強化するべきではないかと思います。

以上です。

〔 田近分科会長代理 〕 では、武田委員お願いします。

〔 武田委員 〕 ありがとうございます。

私も、財政健全化を進める上では、社会保障の改革こそが本丸で、これができるかどうかが鍵であると思います。したがって、本日、御説明いただきました数多くの改革案には賛成致します。ただ、これをどうやって実現していくのかは非常に難しいと、近年感じておりまして、その上で3つ申し上げます。

まず1つ目は、なぜ社会保障制度の改革が必要なのかということについて、国民にもっと理解してもらうことだと思います。我々、財審としては、財政の観点で議論しており、財政健全化の必要性はもちろん訴えていくべきですが、同時に経済という観点でも、将来不安が消費を抑えている部分がある話や、若い世代にとって、社会保障制度に対する不信感が多くの行動に影響を及ぼしている可能性、また、人生100年時代と言われるようになってきていますけれども、社会保障制度改革は高齢者にとっても非常に重要です。これからまだまだ長生きされる中で社会保障制度が持続的であることを担保するには、負担が若干増えたとしても重要な意味を持つとの理解を幅広く得る必要があります。つまり、なぜ社会保障制度の改革が必要なのかという議論が要るのではないかというのが1点目。

2点目は、改革を進める上で、たくさんの改革メニューがあるため、逆に一つ一つが分かりにくくなっている部分があるかもしれません。したがって、改革を進める上での原則を共有するということも大切と思います。大事な点として、「小さなリスクは広く、薄く負担し、大きなリスクが起きたときには公助がある」という原理原則をしっかり持てば、例えば公的保険の範囲や、線引き、負担の適正化、地域の取り組みを促すことができます。年齢によらず能力による負担も考え方のベースとすれば、より徹底できるかと考えております。

3点目に、行動を変えるという視点も非常に重要ではないかと思います。インセンティブの使い方もそうですけれども、非常に人手不足感が強まっている中で技術をうまく活用することによってコストを下げ、最終的には国の負担を減らす方向に持っていく。自助という観点で言えば、頑張れと言うだけでは厳しいため、自立した生活を行えるようにするための工夫としてうまく技術を活用できないか、そうした視点も重要なのではないかと考えます。

以上です。

〔 田近分科会長代理 〕 角委員。

〔 角委員 〕 ありがとうございます。

今回の問題提起は、ほぼ全ての点において賛同いたします。その上に立ちまして、幾つかの委員から出ました奈良県のモデルについて申し上げます。残念ながら、奈良県は自治体の市町村合併が全然進まなかった。そこで問題意識を持たれて、2008年から既に奈良モデルの検討を始めて、8年後の2016年に検討委員会をつくって、色々と議論された。それは医療の問題だけではなくて、例えば交通インフラの長寿化とか、水道の問題を県として一体的にどうするかとか、そういった全体の中で、今回の参考資料の3ページにありますように奈良モデルが出た。

これを横展開するとおっしゃって、もちろんそのとおりなのですけれども、奈良は拠点病院が県立奈良医科大学附属病院1つという特殊事情の中で、このようなことができているということですので、これを横展開するには西高東低といいますか、医療は供給が需要をつくり出している部分がありますので、西のほうで非常に病院数の多い府県で適正な数にしていくためには、先程ジェネリックの話が出ましたけれども、これもなかなか進まなかったけれども、インセンティブをつけた結果、府県のばらつきはありますけれども、六、七十%まで上がった。ですから、1点10円を固定化せずに、インセンティブ、あるいはペナルティーをつけて横展開していただく必要があるのではないかと思います。

それと、31ページ、改革工程表の検討項目の中で、高額療養費等の見直しが既に対応済みとなっています。一方、次の32ページのほうには、金融資産等の医療保険制度における負担への反映方法とあります。ですから、2022年、2025年に向けて、もう時間があまりありませんので、何度も繰り返しになりますけれども、ぜひともマイナンバー制度を活用していただいて、今、お持ちの銀行口座についてもきちんとリンクしていただいて、所得だけではなくて資産も捕捉した上で、負担できる人には負担していただくということだと思います。

例えばオプジーボは、かなり金額が下がったとはいえ、まだ高額です。これで症状が消えても、お医者さんは投与をとめられないのです。とめて再発したらどうするのだということなので、ずっと投与し続ける。これを、症状が消えてから2年間は投与するけれども、それ以降は自己負担を増やすとか、何らかの施策を行ってエビデンスをとっていかなければなりません。オプジーボだけではなくて色々な薬がこれから出てきますので、何らかの対策が要るのではないかと思います。

年金については、これも以前、言いましたけれども、ある企業で若い人の趣味を聞いたら貯金と言う人が一番多かった。これは、要するに政府が信用されていないというか、若い人たちは、将来、自分たちが年をとったときに年金制度はもう破綻しているだろうと思うから貯金、消費をしないということですので、68歳ではなくて70歳まで延ばしていただければと思います。それに基づいて企業は、以前と同様、公的年金の支給開始年齢に合わせて70歳まで働く制度設計を、時間をかけてやっていくようにしていただけたらありがたい。最後のページ、所得のある人は税で負担している部分の半額は支給しない。この基準はもう少し低くなっても良いように思いますけれども、これはぜひともやっていただけたらと思います。

長くてすみません。

〔 田近分科会長代理 〕 末澤委員、神津委員。

〔 末澤委員 〕 どうもありがとうございました。

感想ですけれども、私もこちらにお邪魔して5年目ですが、今年の社会保障の改革案は、去年、一昨年より相当厳しいなと感じました。といいますのは、先程田中委員もおっしゃっていましたけれども、昨年まではジェネリック薬品の活用という、これは皆さんわりとわかりやすくて、皆さんがウイン・ウインで助かるという方策があったのですが、今回は全ての分野で削っていく、ないしは負担を増やすということで、国民の皆さんに理解をいただくにはハードルがだんだん上がってきている。ただし、これはやるべきではないということではありません。実際、5年、10年たつと相当厳しくなると思いますので。

年金特別会計は、ここ数年、実は相当大幅な剰余金が発生しています。この背景は、高齢者の労働参加率が上がっている。ですから、今回の支給開始年齢の引上げではなくて、任意の年金受給開始年齢が上がるないし下がらなくなっているのです。つまり、最近、景気がいい、または高齢者の健康寿命が少し上昇していることで、実態的に医療、介護、または年金の状況が少しよくなっています。

ただ、これは5年後、10年後には逆の効果が出てきます。年金についても、受給開始を遅らせると受給額は年8%プラスになりますから、あとの人の支払う額は増えるのです。ですから、ここ数年、わりと人口動態的にもよかった。しかも、社会保障関係費も1兆5,000億円の削減がきっちりできている。だから、逆に言えば、こんなに厳しくやる必要があるのかという疑問が出てくると思うのですが、多分、5年後、10年後はもっと大変だという点を主張していくべき、つまり、これだけ厳しいことを提案するのであれば、客観状況が相当厳しいという説明がないと、ちょっとギャップが出てくるのではないかと思っております。これは心配しています。

最後、年金のところですけれども、実は私、支給開始年齢の引上げについては若干慎重な立場をとっております。なぜかというと、私はちょうど1961年8月生まれです。実は、数カ月早く生まれたら老齢厚生年金は64歳でもらえたのが、一番損した年代だと思っている関係で、ここは少しセンシティブなところがあるのですが、もう一つ心配なのは、これから68歳、70歳に引き上げるとすると、多分、ちょうどターゲットが団塊ジュニア世代あたりになる。

この団塊ジュニア世代というのは、以前も申し上げましたが、私ども金融機関の問題もあるのですが、金融危機で就職氷河期というものがあって正社員の比率が低いのです。つまり、結婚もされていない、お子さんもいらっしゃらない、60歳になってから本当に職の確保ができているかどうか相当心配な世代です。ということは、下手すると生活保護に行ってしまう可能性がある。現状でも、生活保護の受給世帯の5割以上が65歳以上ですから、そこの部分について雇用政策を含めて相当程度の対応をとらないと、実は生活保護にシフトすることになりかねないという問題がある。

そうした面では、今、角委員もおっしゃったのですが、高所得者の年金給付は、御自身で負担いただいた5割はお支払いしますが、すみませんが税金部分は寄附してくださいと。ないしは、マクロ経済スライドの厳格適用を行う必要があります。これはロールオーバーではなくて、きっちり毎年やっていく。むしろ、こういったところを優先したほうがよろしいのではないかと、私は思います。

以上でございます。

〔 田近分科会長代理 〕 それでは神津委員、よろしくお願いいたします。

〔 神津委員 〕 ボリュームが相当あるものですから、意見書を出させていただいています。まず、医療ですけれども、最も費用増が懸念される分野だと思います。労働組合として、労働者、生産者としての顔はもとより、生活者、納税者の顔も含めて、頭を悩ませながら政策立案をしていますが、持続可能性の危機にさらされていることは言うまでもないと思っています。それだけに、基本のところは堅持すべきだというのが、私どもがここで述べているところです。7割以上の給付を保障すべく、消費税率の着実な引上げや応能負担の徹底による負担の在り方の見直し、そういうことをまず行うべきではないかという考え方です。

介護ですけれども、意見書の最初の3項目あたりで述べているところをかいつまんで申し上げたいと思います。1つは、介護人材の安定確保、それには処遇改善の実現が最も重要だということ。それから、軽度者を介護保険給付の対象から外すことや利用者負担の見直し、これは適切な介護を早い段階から受けられないくすることにつながり、結果として重度化を進めてしまう。そして、家族と介護者の離職を促進するようなことにもつながってしまうため、この点については慎重な検討が必要だということを申し述べておきたいと思います。

年金につきましては、意見書の冒頭のところで申し述べているようなことでありまして、足元の非正規労働者の割合の高位高止まり、あるいは高齢の生活保護受給者の増加等々の要因を踏まえて考えるならば、基礎年金の強化と公的年金制度の持続可能性の確保を両立させる必要があると思います。こうした観点から、社会保険の一層の適用拡大、それから高所得者の基礎年金の一部支給停止、こういったことを検討すべきだと考えます。

それから、各論として一言だけつけ加えておきたいのですが、子ども・子育て支援です。消費税増税を待たずに、1兆円超の財源の確保については早急に対応すべきだと。保育士の処遇改善によって人材確保を確実に進めるべきだということも申し添えておきたいと思います。

以上です。

〔 田近分科会長代理 〕 では、黒川委員、北尾委員と続けて。

〔 黒川委員 〕 ありがとうございます。

私は1点だけ。頻回受診防止の政策についてですけれども、以前にも発言したことがあったと思うのですが、ゼミの学生がそのようなテーマを卒論にしておりまして、若者の意見ということで代弁をさせていただきたいと思いますが、会計学なので、やはり取引価格というものを取引当事者がきちんと知ることが非常に重要だと思います。今、医療機関に行って払う金額というのは一部なわけで、自分が1回受診したときに、お薬をいただいたときに、総額で一体幾ら払っているのかということを果たして本当に認識しているのか。私自身も、自分が負担した部分だけの金額ではないかというような勘違いをしてしまう。そういうことは非常に大きいのではないかと思います。

そのゼミの学生の結論は、結局、全額一旦払って、その後にバックしてもらうということを提案したのですけれども、この方法についての欠点や実行不可能性があれば、もう一回教えていただきたい、あるいは御示唆いただきたい。

以上であります。

〔 田近分科会長代理 〕 では、北尾委員。

〔 北尾委員 〕 医療・介護費の増加のところで、人口構成以外の部分、説明できない部分を理解するのは、政策を考える上で非常に重要だと思います。これはマクロデータだけではだめなので、やはりミクロデータ、レセプトデータを見て、誰が一体何回使っているのか、利用頻度の分散はどのようになっているのかということで、84ページにあったケアプランの点検というのは非常に有効な政策だと思います。

こういった社会保障制度というのは実験ができないので、政策の効果は幾らなのかということを数量化するのは非常に難しいのですけれども、この政策などは効果を図る上で非常に有効だと思います。例えば、100回以上使っているというのは非常に多いと思うのですけれども、こういった人たちが負担を免除されていたり、軽減されているのであれば、負担を増やすことによってどれだけ需要が減るかということ。もともと値段がゼロであれば、おそらく反応もないだろうということで、有効な政策は何かを理解する上で、こういった一人一人のミクロのデータを見るというのは非常に重要だと思います。

あと1点、負担をどのように分担していくかということで、能力に応じた負担は重要ではないかという議論があったと思います。それはもちろんあると思うのですけれども、非常に気をつけなければいけないと思います。経済学的に言って、能力とは何かということを定義した場合、今の所得、あるいは資産ということで能力をはかるのであれば、それは外生的に外から与えられたものではなくて、労働意欲や、労働時間や、個人の行動によって得られた能力であるということが多いので、能力に課税をすればそれだけ税収は上がるかというと、そうではないかもしれない、意欲をそいでしまうかもしれないことがあるので、これは考えなければいけないと思います。

最後1点、年金受給開始年齢についても、研究のテーマなのでやはり一つ言わなければいけないと思います。受給開始年齢65歳というのは、現在の移行が完了したら先進国の中でも一番低い数字になると思います。さらに日本は寿命も一番長いということで、平均受給年数で見れば日本は最長になるのは間違いないところだと思います。受給開始年齢の引上げ、あるいは支給削減は誰が一番メリットを受けるのかというのは、日本だけではなくて海外でも研究は盛んに行われています。先程コメントに出ていたこととは全く反対で、一番のメリットを受けるのは若い世代、特に生まれていない将来世代というのが結論になっているのが、アカデミアでの研究成果ではないかと思います。まず一つに負担が減るということ、それは直接のメリットでもありますけれども、準備する期間があるということで働く意欲も増える、貯蓄意欲も増えるということで経済が活性化して、それによるマクロ経済の影響も侮れないということで、このようなことは経済の分析を利用して、議論していただければと思います。

以上です。

〔 田近分科会長代理 〕 ありがとうございました。

では、加藤委員、岡本委員、大槻委員、伊藤委員、老川委員はお帰りになってしまいましたけれども、続けてよろしくお願いします。

〔 加藤委員 〕 ありがとうございます。手短に3点だけ。

年金について一言だけ申し上げたいのですけれども、私の理解の中では、今、有限均衡方式を行っているので、給付と負担額が一応、一致していると。その中で言えば、給付の開始年齢を引き上げてもあまり意味がないというのが厚生労働省の立場だろうと思います。ただ、問題としては、平均寿命の伸びはマクロ経済スライドの中に加味されているはずなのですが、マクロ経済スライドが実施されていないことによって、実際には平均寿命の延びと対応されていないということがあります。もう一つは、財政検証そのもの自体が非常に長い期間で、不確実でもあります。そのようなことを考えると、明らかに65歳という支給開始年齢を維持していること自体、とても難しい状況ではないかと思います。何人かの委員がおっしゃるように、諸外国と比べても、これは見直すべきだろうと思います。

2点目は医療の件です。36ページ、これは赤井委員が指摘したところと同じなのかもしれませんが、実際、保険料と税と自己負担があったときに、少なくとも自己負担はもう少し引き上げる。例えば、借金の部分、赤く囲っている部分について、幾らか自己負担に回していかなければならないだろう。それが現在世代と将来世代の負担の在り方を考える意味では重要だろうと思います。

さらに言えば、中空委員がおっしゃっていたように、この医療制度そのもの自体が誰を守るのか、そして、どうするのかということを考えていかなければいけない。痛みがわからないような状態で、これを考えてもしようがないだろうと思いますので、今回、提案があったような定額負担、あるいは保険では免責といったものを入れていくべきだろうと思います。

最後、手短に、56ページ、これは非常にいいと思うのですが、財審や財政学者、我々が、幾ら医療費が大変だと言っても、なかなか外に出ていかない。問題は、医療提供者のほうから、持続性が非常に難しいのだという声をもっと広げていくことも必要なのではないかと思います。

以上であります。ありがとうございました。

〔 田近分科会長代理 〕 ありがとうございました。

では、岡本委員。

〔 岡本委員 〕 78ページの急性期病床の適正化というところについてですが、7対1入院基本料の病床を減少させる取組は4年前からようやく始まって、我々がここで議論した大きな成果だと思っていたのですが、この棒グラフを見ると、実態としてほとんど進んでいないという状況に驚いております。すぐには変更できない病院なりの事情もあると思いますが、現場からの声があるからといって放置しておくことはできないわけであって、厚生労働省に対しては、やはり財務省のほうから本当に強く言っていってもらいたいと思います。

これは棒グラフで出ているからわかりますが、先程からずっとあるような各取組の具体的な効果はどうか。初めは様々な形で取り組むと言うのですが、その取組結果は数字でどうなっているのか。あるいは、次世代のためにと言いますが、言葉はわかるとしても、このようなことをやると、次世代にとって数字的にこうなるのだとか。このような検証といいますか、PDCAを回すということは、一事が万事で全体について言えるようなところがあると思うのです。岩佐主計官も言われていましたけれども、やはり財政が表に出て、それだから削減だ、カットだというような言い方はしないとのことでしたが、確かにそのとおりで、海外ではこうだから削減、カットということではなくて、やはりもっと説得材料を持って、もう少し色々と考えながらやっていく。そのときに、具体的な効果はどうかとか、次世代というのは実はこういうことなのだとか、示していくということをやってほしいと思います。これが1点目。

2点目は、目安の設定についてお二人から話がありましたけれども、今まで1兆5,000億円を集中改革期間で改善したとあり、これは本当に財務省の努力だと思いますが、中身を見ると、大宗は取り組みやすい薬価の改定と企業が負担する総報酬割なのです。このような財政調整によってやるとか、取りやすいところから取るのではなくて、本当に入り込んでやらないといけない。先程人口の構成などを見てとありましたが、それを見ることになると自然増を前提として考えるから、増えることがまずベースで、それよりもちょっと下げましょうと、このような話になりかねない。今、1年間で5,000億円というのがあるのだとしたら、これを実数値でもっと下げることによって、ようやく踏み込んだと言えるのではないか。

先日の海外調査報告で印象的だったものとして、黒字のゼロと表現されたドイツの財政健全化目標がありましたが、我々もこういったシンプルな目標があれば、このように取り組んだのか、踏み込んだのかと、このような気持ちになるのではないか。

もう一点は、やはり改革工程表の44項目です。これについては、優先順位といいますか、本当に効果の大きいものをどういうように見ていくかということで、一つ一つ全部検証していく。今回は1つだけ言いますが、高額医療について、52ページや54ページを見るとこんなに増えてしまっているのかと。これは想定内なのかもしれませんが、高額療養費は、何と2015年度で2.5兆円、つまり2010年度からわずか5年間で5,000億円も増えている。このようにどんどん延びていて、今後、どうするかということなので、早速、手をつけるのは外来特例の廃止です。前から言っていますけれども、第1段階は月の上限額を2,000円、第2段階は4,000円引き上げるようなことをやっていますが、これはやはり廃止という第3段階目をきっちりやっていくということが、高額医療についての具体的な取組の一番だと思います。

ほかには、高齢者の窓口負担の引き上げとか、ワンコイン負担の問題とか、色々ありますが、やはりこのようなことについても本当に地道に取り組んでいっていただきたいと思います。

以上です。

〔 田近分科会長代理 〕 ありがとうございます。

大槻委員。

〔 大槻委員 〕 1つ目は、74ページ目の調剤薬局と薬剤師の数の話です。民間から見て、やはりこれは非常に違和感がありまして、抜本的にもう少し見直しはできないのかというイメージを持っております。やはりこれだけ競争が激化しているのであれば、それなりにコストというか、1人当たりの技術料が維持されるというのは非常に違和感があり、素人ながら、この業務についてはひょっとしたらテクノロジーがききやすく、調剤については昔に比べたら技術的なものは相当簡便に済むのかなということも考え、これはもう少し何らかの方策で、もしかしたら先程宮島委員がおっしゃったような教育の問題も含めて、数の調整、制度の見直しを考えてもいいのかなというのが1点です。

もう一つは、先程、様々な方から御意見がありましたが、私も個人投資家、それからファイナンシャルプランナーの方を通じて、特に個人の若い世代が一生懸命iDeCoをやります、預金をやりますという理由が、年金と高額医療の2つのためにやっていますという意見が圧倒的多数なのです。そこで、先程来の年金の話、これだけ詳しい皆さんがやっていても意見が分かれるぐらい非常に難しいものをこれからやっていく、制度を変えていくのであれば、メッセージを極めてクリアに、これは皆さんのためなのだということを、わかりやすい形で伝えていくことが重要なのではないかと改めて思った次第です。

以上です。

〔 田近分科会長代理 〕 伊藤委員、お願いします。

〔 伊藤委員 〕 ありがとうございます。

今回の社会保障の取り上げ方といいますか、医療・介護、年金とも突っ込んでおられて、この方向でいいと思うのですけれども、先程来、意見が出ているように、いずれにしても社会保障というのは給付と負担の公平性を一方で担保しないといけないのですけれども、国の財政を考えると、やはりもっと、本日、出てきたような提案を本当にきっちりやっていかないともたない。皆さんからも出ていますけれども、高福祉高負担を本当に求めるのなら、現状はこのような状態であって、このような負担をやっていこうとすると、福祉をやっていこうとすると、これだけ負担が増えるのですというモデルみたいなものをつくって見せてあげないと、皆さんよくわからないのではないかと思うのです。不信感を持ったり、心配ばかりしているだけになってしまう。そういうことをぜひ考えてやっていく必要があるのではないかという気がします。

公平性という観点から言いますと、医療・介護については、総報酬割制の導入などで、高齢者の保険料負担の伸びに比べて現役世代の伸び率のほうが大きくなっています。さらに、今後、現役世代の伸び率が大きくなるのは明らかですので、現役世代に過度に依存した財政負担構造というのは改めないといけない。富裕層というか、高齢者の自己負担を引き上げることについて、更に検討する必要があるのではないかということです。

特に、急激な給付増が見込まれる医療費については、医療費の適正化や医療供給体制の効率化を急ぐことはもちろん、平成31年度から新たに75歳以上の後期高齢者となる方の自己負担割合を前期高齢者と同じ2割にすることは必須だと。それに加えて、制度の持続可能性を考えれば、既に後期高齢者、あるいは介護保険制度の対象となっている方についても、現在の1割負担を多少なりとも引き上げることはやむを得ないのではないかという感じがしております。その際、前期高齢者医療のように、いきなり2割に引き上げるというのは当然、抵抗があるでしょうから、最初は1.2割とか、1.5割とか、順次上げていくということも含めて考える必要があるのではないかと思います。

最後に1つだけ、すみません。商工会議所という立場から少し申し上げますと、軽減税率についてですけれども、今度、10%に上げる段階までは、社会保障費への充当を毀損するようなことになるので、軽減税率制度を導入しなくてもいいのではないかという気がしています。これは私だけではなくて、商工会議所としてはそういう考え方なので、一応、お伝えおきたいと思います。

以上です。

〔 田近分科会長代理 〕 時間を超過してしまいまして、どうもすみません。

私のほうから2点。1つは、本日いただいた御意見、御質問はしっかりこちらで理解して、報告書に生かしていきたいと思います。第2点は、それに関連して、前回辺りからお話ししていますけれども、委員の皆様においても御意見、御要望は御遠慮なく事務方のほうにお寄せください。本日は、どうもありがとうございました。

次回は、4月17日、15時から開催することとなっています。よろしくお願いします。

本日はどうもありがとうございました。

午後3時10分閉会