財政制度等審議会 財政制度分科会
議事録
財政制度等審議会 財政制度分科会 議事次第
平成30年4月6日(水)14:00~16:00
第3特別会議室(本庁舎4階 中-412)
1.開会
2.議題
- 委員からのヒアリング
「「経済・財政再生計画」の下での財政健全化の取組
~新しい財政健全化計画に向けて~」
-冨田俊基委員 - 委員からのヒアリング
「我が国の財政に関する長期推計」
-土居丈朗委員 - 防衛
3.閉会
分科会長代理 |
田近栄治 |
うえの副大臣 木原副大臣 岡本主計局長 茶谷次長 大鹿次長 神田次長 青木総務課長 中野司計課長 奥法規課長 若原給与共済課長 関口調査課長 江島主計官 安出主計官 湯下主計官 小宮主計官 高橋主計官 中島主計官 阿久澤主計官 岩佐主計官 竹田参事官 前田主計官 中山主計官 内野主計官 北尾主計企画官 藤﨑主計企画官 |
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委員 |
遠藤典子 黒川行治 佐藤主光 角 和夫 竹中ナミ 土居丈朗 中空麻奈 永易克典 宮島香澄 |
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臨時委員 |
雨宮正佳 伊藤一郎 宇南山 卓 老川祥一 大槻奈那 葛西敬之 小 林 慶一郎 末澤豪謙 十 河 ひろ美 田中弥生 冨田俊基 増田寛也 神子田 章 博 宮 武 剛 |
午後2時00分開会
〔 田近分科会長代理 〕
本日は、冒頭、カメラが入りますので、このままお待ちください。
(報道カメラ 入室)
〔 田近分科会長代理 〕 ただいまから、財政制度等審議会財政制度分科会を開催いたします。皆様には、御多用中のところ御出席いただきまして、ありがとうございます。
議論に先立ちまして、今回、新しく臨時委員として御就任いただいた、日本銀行副総裁、雨宮正佳委員を御紹介申し上げます。
雨宮委員から、一言御挨拶をお願いします。よろしくお願いします。
〔 雨宮委員 〕 日本銀行の雨宮でございます。お世話になります。どうぞよろしくお願い申し上げます。
〔 田近分科会長代理 〕 本日は、お手元の議事次第にあると思いますけれども、「委員からのヒアリング」と「防衛」を議題としております。まず、冨田委員、土居委員からお話を伺った上で、その後、事務局から防衛について御説明いただきます。
それでは、報道関係の方はご退室ください。
(報道カメラ 退室)
〔 田近分科会長代理 〕 それでは、始めさせていただきます。先ほど申し上げたように、本日は委員からのヒアリングとして、最初に冨田委員から御意見をいただきます。冨田委員からは「『経済・財政再生計画』の下での財政健全化の取組 ~新しい財政健全化計画に向けて~」ということでお話をいただきます。土居委員からは「我が国の財政に関する長期推計」ということで説明いただいて、質疑に移りたいと思います。
それでは、冨田委員、よろしくお願いします。
〔 冨田委員 〕 資料1を御覧ください。
この夏までに決定される新しい財政健全化計画が備えるべき要件は何か、この検討のために、「経済・財政再生計画」の集中改革期間であります2016年度から2018年度における財政健全化の進捗状況を振り返りました。3年前の本日でありますが、当審議会で、1997年、財政構造改革法以降を振り返りまして、財政健全化計画が備えるべき要件を検討いたしました。当時は、それに先立って、2020年度のプライマリーバランスの黒字化、その後、政府債務残高の対GDP比の安定的な引下げを目指すという目標が決定されておりましたので、当時の検討はこの目標の実現に向けて提言を行ったということでございます。
3ページを御覧ください。その提言は、現実的な経済見通しを前提とし、徹底した歳出改革を行うべきで、そのために、歳出の上限を示すだけではなく、その達成手段として具体的な構造改革の方策を盛り込むことが必要。そして、一番下でありますが、5か年を一括管理するのではなく、向こう3か年について現実的な改革工程を策定してはどうか。その上で、プライマリーバランス黒字化に向けた進捗状況を毎年度レビューし、追加的な歳出改革と、その後の対応を検討しなければならないと述べております。
4ページには、御案内の骨太2015の「経済・財政再生計画」のポイントが示されております。ここは、下にございますように、歳出改革の目安として四つが設定されております。
5ページは、先ほど申し上げました提言と閣議決定された「経済・財政再生計画」との比較でございます。下から2段目、地方財政の一般財源総額の見直し、地方歳出にも規律を設けるというところは外されました。最下段ですが、進捗状況を毎年度レビューするという提言に代えて、計画の中間地点である2018年度において、目安に照らし、歳出改革、歳入改革の状況等を評価し、必要な場合は追加措置を検討と閣議決定されました。
そこで、中間地点までの財政健全化の具体的な進捗はどうであったかということで、まず経済状況について、7ページを御覧ください。1990年度から、名目GDPの推移を示しております。この間に、GDPの基準改定が3度行われました。太い黒の実線は2016年12月に発表されました2011年基準によるGDPで、例えば2015年度について見ますと、水色のドットの2005年基準で500兆円でありましたが、新基準では532兆円と6%強、上方修正されております。財政構造改革法、骨太2006、民主党政権時の中期財政フレームも、名目GDP成長率について高目と低目の二通りの前提を置いておりました。しかし、実績はいずれも低目の前提にも達しませんでした。
それでは、「経済・財政再生計画」はどうであったか、その部分を拡大したのが次の8ページであります。2016年度から2018年度の名目成長率は、表にありますように、年平均で見て、20152015年の計画策定時の経済再生ケースで3.2%、ベースラインケースで2.1%、それを下回った実績の見込みは、赤字で書いてありますけれども、1.9%であります。今年1月に経済シナリオが変更され、高目のケースは太い赤の成長実現ケースとして下方修正され、水色のほうの低目の成長率は上方修正されております。なお、以下のグラフでも御覧いただきやすいように、黒は実績、水色は2015年計画策定時の見通し、赤は直近の試算など統一した色使いにしております。
9ページを御覧ください。実質経済成長率は、2016年度から2018年度までの年平均で見て1.6%と見込まれ、水色の計画策定時の高目の見通しにほぼ沿って推移しております。これは、過去の計画期間中に発生した国内金融危機、アジア通貨危機、リーマンショック等のグローバル金融危機、大震災という大きなショックには遭遇しなかったことが幸いしております。
10ページは長期金利です。1990年以降、10年物国債金利は低下を続けてきました。その要因として、冷戦終焉による新興国の工業化による物価の鎮静化、グローバル金融危機に際しての大規模な各国中央銀行による流動性供給、自己資本比率規制による銀行の国債保有の増加、世界経済の長期停滞仮説と中央銀行による大規模な資産買い入れ政策、そして企業部門の貯蓄超過などが指摘できます。他の先進国にもこうした傾向が見られますが、特に我が国で物価の鎮静と金利低下が堅調です。この間、上の囲みにございますように、国債残高は90年度から5倍強にも増えましたが、利払い費は減少しております。
11ページ、集中改革期間の金利の前提でございます。水色の計画策定時の想定では、経済再生ケースは平均2.0%、ベースラインケースでも1.6%でした。物価安定目標は、後ろ倒しとなったので赤の線は、今年1月の見通しを示しておりますけれども、期間中、10年物国債は金利0%近傍とされ、2020年度以降に上昇に向かうだろうと想定されております。
こうした経済・金利動向のもとで財政健全化はどうだったのかということで、13ページにお移りください。プライマリーバランス赤字の対GDP比がリーマンショック前後で大きく変動していること、そして、これまでの財政健全化計画が目標を達成できなかったことが一目瞭然であります。「経済・財政再生計画」も、水色の策定時の見通しよりも実績は悪化しており、それを踏まえた直近の見通し、赤色でありますけれども、高目の成長を前提といたしましても、自然体でのPB黒字化は目標の2020年度ではなく2027年度となっております。
14ページ、「経済・財政再生計画」の部分を拡大して見ております。実額で見ますと、2015年度の実績よりも、集中改革期間中のPB赤字は拡大しているということでございます。
15ページ、国・地方のPBについて、これは経済財政諮問会議の資料をもとにいたしまして、計画策定時の見通し、2018年度の見通しを2015年度にどう作ったかが左から2番目にございます。それと、直近の見通し、右端にございます。
2018年度のプライマリーバランスプライマリーバランス赤字は、直近の見通しでは、右下にありますように16.4兆円です。2015年7月の経済再生ケースでは、左から2番目の9.5兆円の赤字の見通しでした。
この見通しは、PB歳出について、社会保障関係費は高齢化要因や賃金、物価を反映して増加し、それ以外の一般歳出は物価上昇率並みに増加するという、改革が実践されない自然体の歳出増加を前提とした内閣府の見通しです。目安を遵守して歳出改革をしてきたわけだから、2018年度のPB赤字はその分減ってしかるべきだと見ていたわけですが、目安とされた2018年度のPB赤字の対GDP比1%程度の5.5兆円、これらを大きく上回ることになったのはなぜかということは問題でございます。この資料は、国・地方のPB歳出という公表されていないデータを用いて、補正予算の影響でマイナス2.5兆円、消費税率の引上げの延期でマイナス5.6兆円、税収の下振れでマイナス4.3兆円、そこから歳出効率化分のプラス3.9兆円を引きまして、自然体の見通しからPB悪化分が6.7兆円と、この図のような要因分解をしております
次の16ページでございます。これは、2015年5月、麻生大臣から経済財政諮問会議に提出された資料であります。内閣府試算の歳出・歳入の見通しと、財政健全化目標との関係をうまく示しております。右端の2020年度ベースラインケースのPB赤字16.4兆円を、緑の経済再生ケースによる税収増で9.4兆円に縮小し、青のPB歳出のライン、これが自然体の内閣府の見通しでありますけれども、それを赤い線の水準に引き下げることによってPB黒字化をほぼ達成するという計画のイメージを示す重要な図です。歳出改革は、一般歳出の実質的な増加を3年間1.6兆円のテンポで2020年度まで5年間続けると、9.4兆円と見込まれたPB赤字はほぼ解消できることを示しております。先ほど申し上げました2018年度の経済財政諮問会議の資料の中間評価も、この図を用いて確認することができます。
次に、PBを国・地方に分けてみます。17ページのように、国・地方とも計画策定時の見通しに比べて直近の見通しでは悪化しておりますが、地方の黒字は今後とも続く見通しです。
国については、18ページのように、当初予算は歳出改革の目安がきちんと遵守されてきましたが、2016年度、2017年度は補正予算の編成に伴い、歳出は上振れております。計画に沿った健全化を実現するには、計画策定時の自然体の見通しから大きく歳出を抑制する必要があるのですが、黒の実線の一般歳出の実績は自然体の見通しをも上回っております。
次の19ページ、国の歳出改革につきましては、過去6年間の社会保障関係費は年0.5兆円程度の実質増加に抑制されてきました。それを支えたのは、20ページに要約されております、皆さん御案内の改革工程表と、その実行であります。
そして、21ページ、一般歳出の政策効果を高めるために、技術の活用、インセンティブ付与など、予算の質の向上への取組が重視されてきたように思います。
22ページ、地方について、公債費を除いた歳出は、歳出特別枠の廃止にもかかわらず、計画前の水準よりも増加しております。同時に、23ページのように基金残高は過去最高となっております。これらの背景にあると考えられるのは、地方歳出の目安とされてきた一般財源総額実質同水準ルールと、24ページ、当審議会が繰り返し指摘してきました地方財政計画と決算との乖離という問題が指摘できます。
25ページは、国・地方を統合した利払い費を含む財政収支のGDP比です。10年国債の金利は低下したにもかかわらず、PB赤字幅拡大によりまして、黒い実線で示された実績は2015年計画策定時の水色の見通しからも悪化しております。赤いドットで示された直近の見通しでは、財政収支対GDP比の改善テンポは、ゼロ近傍の低金利による利払い費軽減効果は2020年代に入りますと次第に減衰してきまして、高目の経済前提でも改善の頭打ちが見込まれております。
26ページでありますが、国・地方の債務残高対GDP比です。水色の計画策定時の経済再生ケースでは、集中改革期間中の比率の低下が見込まれておりました。名目成長率が国債金利を上回り、想定よりも国債金利が低下したにもかかわらず、債務残高対GDP比は2017年度も上昇を続けた模様です。2018年度以降についても成長率の前提変更の影響を受け、2015年度の見通しに比べ、高目の成長実現ケースでは悪化、ベースラインケースでは改善する姿が示されております。
これまで述べてまいりました「経済・財政再生計画」の進捗状況の評価を27ページにまとめております。繰り返しになりますが、当初予算では3年間、歳出改革の目安を達成してきました。しかし、消費税率の引上げ延期、名目成長率下振れによる税収の下振れ、補正予算の編成で、2018年度の国・地方のPB赤字は、対GDP比マイナス1%という目安を達成できなかったばかりか、自然体の見通しマイナス1.7%のPB赤字対GDP比を上回り、マイナス2.9%にも達する見込みです。これらの要因等は下にまとめてございます。
この中間評価を踏まえまして、新しい財政健全化計画が備えるべき要件を検討するに際して念頭に置かねばならないことがあります。29ページであります。国債金利がゼロ近傍で、ほとんど変動しない状況が長期化する中で、財政規律が知らず知らずに緩んでしまうことです。金利という市場の声が聞こえなくなった戦前、二・二六事件以降は、戦争で所得が増加するので、国債増発による元利支払いなど問題ではないという評論家の声、そして一番下にございますけれども、国債を発行するほど戦争に勝つ可能性が高いので、公債は大なるほど償還が確実であるという議会答弁がありました。
10年物国債の金利はゼロ近傍ですが、耳を澄ませば市場の警告は聞こえます。ドル建ての10年物政府保証債の金利は、左側にグラフがございますが、ドイツに比べまして50ベーシスポイントも高い水準で推移しております。政府保証債は、国債に比べ流動性は劣りますが、信用力は全く同じです。そして、本邦企業の外貨調達コストは欧米主要国の同業他社よりも高くなっております。財政持続可能性への懸念が、本邦企業、銀行事業の国際展開に影響を与えているのです。
30ページを御覧ください。新しい財政健全化計画の目標設定についてです。我が国経済・財政をめぐる状況がこれから大きく変化する可能性を、目標時期を設定するに当たっては考えねばなりません。
第1に、当審議会で審議を重ねております社会保障関係費の急増問題、2025年問題です。それは、2025年から起きるのではなく、団塊の世代は2022年から後期高齢者になり始めます。
第2は、金利上昇の可能性です。金融政策がいわゆる出口を迎えるまでに、財政の持続可能性確保のめどをつけておかないと、A格付の日本国債の金利が急上昇する可能性を排除できないのではないかと思われます。
第3は景気循環の観点です。現在は、2012年12月に始まった戦後2番目に長い景気拡大局面で、需給ギャップは既に解消し、内閣府の推計でも2017年第1四半期からプラスに転じております。これらより、できるだけ早期にPB黒字化を達成すべく、目標年限を明確に設定することは必要です。予定どおりの消費税率の引上げが不可欠なことは言うまでもありません。PB黒字化の後は、利払い費を含む財政収支の改善、黒字化をさせ、債務残高を引き下げていく必要があります。
なお、債務残高対GDP比は、PBとは異なりまして、成長率、金利といった政府にとって操作可能ではない、市場が決めるものを変数としてたくさん用いております。そのような変数の影響が大きいので、債務残高対GDP比は単独では財政健全化目標には足り得ません。
新しい財政健全化目標を達成するための手段につきまして、31ページを御覧ください。バブル崩壊以降、何度も計画が策定され、健全化への取組が行われてきました。その中で、「経済・財政再生計画」は、計画に沿った歳出改革が着実に行われた初めての例であります。良好な経済環境に支えられたとはいいましても、主要な歳出ごとの目安の設定と、それを裏打ちする改革工程表の策定が大きく寄与いたしました。したがって、新しい計画も同様の考え方、枠組みを維持し、歳出改革の取組をさらに充実させることが必要です。
その一方、目標である国・地方PB赤字の対GDP比は、2018年度において、そこに示されております三つの要因によって、目安だけではなく、計画策定時の歳出改革前の自然体の見通しすらも実現できず、大幅赤字です。こうした事態は、今、中間時点の評価でようやく検討されているのです。今後も、中間地点での進捗評価だけでは健全化の時期を逸することになりかねません。
このため、下の囲みにありますように、計画策定時に内閣府中長期試算、つまり自然体の見通しを踏まえて、目標達成のために必要な歳出・歳入による対応額、つまり、要対応額、要調整額を示しまして、その上で余裕を持って目標が達成できるよう歳出改革を徹底することが必要です。また、内閣府から年2回、中長期試算が発表されておりますが、それを踏まえて、当審議会で少し時間をとって財政健全化の進捗状況をモニタリングするということも考えられます。そして、仮に補正予算の編成が必要となった場合は、目標への影響をしっかりと考慮することが必要です。
私からは以上です。
〔 田近分科会長代理 〕 冨田委員、どうもありがとうございました。
続いて、土居委員から御説明いただいて、冨田委員、土居委員の報告についてまとめて御意見、御質問を受けたいと思います。
では、土居委員、「我が国の財政に関する長期推計」ということで、よろしくお願いします。
〔 土居委員 〕 土居でございます。起草検討委員を代表しまして「我が国の財政に関する長期推計」について御説明をさせていただきたいと思います。当審議会において2015年10月に今回と同じような推計をしております。
今回は、御承知のように、ないしは先ほど冨田委員からもございましたように、この夏に基礎的財政収支の黒字化の達成時期と、その裏づけとなる具体的、かつ実効性の高い財政健全化計画を示すこととされておりますので、それに資する資料ということで長期推計を改訂したところであります。
御承知のように、当審議会では、1月26日にも説明がございましたけれども、内閣府の中長期の経済財政に関する試算、いわゆる中長期試算の結果として、公債等残高対GDP比、いわゆる債務残高対GDP比が、成長実現ケースでは2027年度にかけてずっと低下していくというような試算がなされておりました。その試算は、果たして2028年度以降も、基礎的財政収支を大きく改善しなくても下がり続けるのだろうかというような問題意識もございます。
そういったところで、この長期試算について、簡単に結論から先に申し上げますと、債務残高対GDP比を安定させるためには、つまり低下していながらも反転上昇するようなことにならないようにするためには、引き続き相当大きな基礎的財政収支の黒字を出し続けることが必要であるということです。
もう一つは、先ほど冨田委員からも御説明がありましたように、2027年度には確かに成長実現ケースではプライマリーバランスが黒字化するとされてはいますけれども、このプライマリーバランスの黒字化を1年遅らせる、もともと2020年度に目標がありましたけれども、2020年度から2021年度、ないしは2022年度と1年ずつ遅らせていくにつれて、1兆円程度の追加的な収支改善努力を求められるという試算結果が、この長期推計から導かれた。こういうところが極めて核となる要約でございます。この試算結果がどのような形で出たのかということについて、これから順次、御説明をさせていただきたいと思います。
まず、1ページ目を御覧いただきたいと思います。まさにこの長期推計は、前回の2015年10月でも同様ですけれども、EUの行政執行機関であります欧州委員会が同様の分析をしておりまして、今回も欧州委員会の分析方法に倣って試算しております。特に、高齢化による社会保障給付の増加が将来の財政に与える影響を分析するために、2060年度までの長期の財政について推計しております。2060年度というのはEUの試算の年次とは違いますが、前回、2015年12月にこの審議会で試算したときの年次と同じものということで、前回試算と比較可能にするということを一つの目的として、2060年度という年次に設定しております。
特に、分析は何をしているのかといいますと、1枚目の下の二つのグラフを御覧いただければと思います。つまり中長期試算では2027年度までしか分析をしておりませんので、2028年度以降に我々が分析したような形で歳出と歳入がそれぞれ推移した場合の基礎的財政収支を左下のグラフの点線部分に示しております。これはあくまでのイメージなので、後で正確な数字は御覧いただくということでありますけれども、黒い点線のようになります。特段、追加の改革も行わないことを前提に、現行制度のまま歳入が入ってきたり、歳出が出ていったりした場合、プライマリーバランスの対対GDP比が左下の黒い点線のようになります。これは収支でありますから、ストックベースで見たときの債務残高対GDP比がどのように推移するかを表しているのが、右下のグラフの黒い点線であります。
そういたしますと、基礎的財政収支が赤字である状態をずっと続けてしまいますと、当然のことながら債務はどんどん累増していってしまいます。ですので、債務の累増を2060年度以降には安定させる、2060年度以降は上がりもしないし、下がりもしないという形に安定させるためには、2020年度に1度だけ大きく収支改善をして、2060年度以降も含めてずっと改善幅をキープする。自然体の黒い点線から赤い折れ線になる部分というのは同じ改善幅なわけですけれども、その改善幅をずっと将来にわたって維持することにしたならば、右下の赤い折れ線グラフのように、2060年度まで徐々に下がっていき、2060年度以降は将来にわたって一定になるというような姿です。
もちろん、債務を完済しなければいけないということはありませんので、財政を持続可能にするためには、この債務残高対GDP比が歯止めなく上昇してしまうことだけは避けなければいけない。この上昇するという状況に歯止めをかけるためには、最低でも、ある年次以降の債務残高対GDP比を一定にする必要がある。このような頭の整理になるわけでありまして、そのために必要な追加的な収支改善努力はどの程度のものなのかを試算することがここでの主目的であります。
想定しているケースは二つありまして、ケースAはまさに左下のイメージになるわけですけれども、2020年度に一度きり、恒久的な措置によって収支改善を行い、その収支改善幅を将来にわたりキープするためには、一体いくらの収支改善幅が2020年度時点で必要なのかということを国・地方ベースで試算したのが一つ目であります。
二つ目はケースBであります。ケースBは、後ほど詳細を申し上げますとおり、先ほど簡潔に申し上げた結論の二つ目、つまり2020年度以降、プライマリーバランスの黒字化を1年遅らせるごとに、いくら追加的な収支改善を必要とするのかという形で、プライマリーバランスの黒字化の時期が遅れることによるコストを分析しているというのが、ケースBであります。
続きまして、2ページ、試算の前提であります。2027年度までは、先ほど来申し上げている中長期試算の成長実現ケース、そして2028年度以降は成長実現ケースと整合性を持っている、2014年6月に出されている厚生労働省の年金財政検証の数字を成長率、名目金利について用いることにしております。財政検証についてお詳しい方に少し補足させていただくと、この財政検証における高成長ケースと言われていた5ケースがこれに該当するということであります。財政検証でケースAからケースEと言っていたものであります。
そして、財政に関する前提というのは、支出を年齢関係支出と非年齢関係支出と二つに分けます。これは欧州委員会の方法に倣っております。年齢関係支出は、主に社会保障給付(年金、医療、介護)と教育等というものであります。そして、非年齢関係支出はそれ以外ということであります。
特に、年齢関係支出においては、まさにこれから高齢化によって医療費や介護費を中心に増えると言われている支出でありますから、年齢構造の変化、それから今までに取り組まれた制度変更や施策を反映させるということで、年齢階層別一人当たり給付の水準を踏まえながら推計するということにしております。
非年齢関係支出は、それ以外ということですけれども、いわゆる新しい経済政策パッケージで1.7兆円、消費税の増収分の使途を変更し、支出を追加することにいたしました。それはおそらく社会保障関係なのかもしれませんが、詳細が今の段階では分かりませんので、ここでは非年齢関係支出のほうに加えております。そして、非年齢関係支出は名目成長率と同じ率で増加する、別の言い方をすると対GDP比は変わらないという仮定を置いております。
歳入のほうは、既に決められている制度変更は織り込むわけですが、それ以外は名目成長率と同率で増加すると仮定しております。
人口構造については、最新の社会保障・人口問題研究所の2017年4月の将来推計人口を用いております。
3ページでありますけれども、その試算をした結果であります。2020年度以降に追加的に必要とされる収支改善幅は、今回の試算では6.26%から7.19%となりました。前回試算は6.74%から8.44%という数字でありますから、その率に比べますと少し下がっているということではありますが、6.26%から7.19%というのはかなり大きな収支改善を求められております。金額に直しますと、3ページの参考というところに少し触れておりますが、2020年度の名目GDPは598兆円でありますので、それに先ほどの率を掛け算いたしますと、概ね40兆円前後になります。
ですから、2020年代に40兆円前後の追加の収支改善を行わないと、2060年度以降の債務残高対GDP比は安定させられないということであります。もし、この収支改善幅よりも少ない改善しかできなかった場合には、いずれかの年に、低下していた債務残高対GDP比が反転上昇するようなことが起こってしまうということであります。確かに前回試算よりも率は若干下がっているものの、40兆円前後という金額になる程度に収支改善の努力が追加で求められるという意味では、相当な努力が必要だということがここで明らかにされたということであります。
この6.26%は、どのような要因かということを分解したのが4ページであります。4ページを御覧いただきますと、三つの要因に分解できるということであります。
まず(1)は、そもそもスタートラインである2020年度に一体いくらのプライマリーバランスの赤字があるかということであります。これは、内閣府から既に数字が示されておりまして、今回試算を前提とすると1.95%の対GDP比での赤字がある。前回試算では1.68%でした。なぜ、この両者に差があるかというと、先ほど申し上げた、消費税の増収分を1.7兆円、「新しい経済政策パッケージ」を実施することにより支出を増やすという形にしたので、その分、収支が悪化するということです。それから、前回試算で想定していたよりも消費税の増税が延期された分の収支の悪化。それから、経済成長の前提が、先ほど冨田委員の御説明にもありましたように、経済再生ケースという高い成長率のケースより、もう少し低い成長率にした成長実現ケースを用いているということで、成長率が低い分、税収が少なくなるという効果がこの辺りに含まれております。
(2)は、後ほど御紹介いたしますけれども、将来、少子高齢化に伴って歳出構造が変化することによる収支改善幅、もし支出が増えれば、その分、収支を大きく改善しなければならない部分はどの程度なのかというものであります。
(3)は、成長率と金利の格差ということであります。これは、経済成長率が高くて名目金利が低いということになりますと、基礎的財政収支が赤字でも債務残高対GDP比が引き下がっていく。これが内閣府の中長期試算の2027年度までの姿です。その部分について、実は先ほど申し上げた前回試算より少し収支改善幅が減っていると言っているものの大半は、(3)の要因によってその数字が小さくなっているということが、この4ページからもお分かりいただけるかと思います。先ほど冨田委員からの御説明にもありましたように、名目金利は2015年に想定していたよりかなり低い状態が続きました。その影響がここに出ているということであります。
しかし、この低金利という状況は一時的で、特殊な状況でありますから、2030年、2040年代まで引き続きそのような状況が続くことは考えにくいわけでありまして、金利情勢に依存した財政再建は持続可能性ではないということも、ここから言えると思います。
そういたしますと、(1)と(2)の二つの要因を前回試算と比較してみますと若干増加しているということになりまして、低金利に依存しない部分で収支改善幅をきちんと確保しなければいけないといえる度合いは、前回よりわずかに増えています。
もう一つの試算結果は、2020年度よりもプライマリーバランスの黒字化を遅らせたことによる追加的なコストということであります。ここでのコストというのは、収支改善幅を1年遅らせるごとに、必要な収支改善幅がどの程度、追加的に増えるのかということを意味しております。結論から申しますと、年平均にいたしますと、対GDP比で0.16%、金額にいたしますと1兆円から1.2兆円、1年遅らせるごとに収支改善幅を増やさなければならないということになります。
イメージといたしましては6ページにございます。もし2020年度から2021年度にプライマリーバランス黒字化を遅らせた場合には、年平均に直しますと0.16%分、収支改善を追加すれば、先ほど申し上げた2060年度以降、債務残高対GDP比を維持できるということになります。ところが、2022年度になりますと、1年遅らせたものが2年分遅らせたことになりますので、黄色い部分と緑の部分ということで2倍のコストを払わなければならない。3年遅らせると3倍になるというところでありまして、1年遅らせるごとに1兆円から1.2兆円の追加的な収支改善の努力を必要とするという意味で、負担が発生します。
より細かくは7ページに載っておりますけれども、先ほど申し上げた遅延コストの要因としては、やはり少子高齢化に伴う歳出に対応するための収支改善が大きいものとなっているということであります。
少子高齢化に対応して、この試算ではどのような想定をしているかというのが8ページでございます。試算の前提は先ほど申し上げたとおりですが、年齢関係支出は基本的には8ページに示されたような形で増えていくということであります。ただし、細かく見てみますと、実は公的年金は2030年代にかけては一旦、対GDP比で下がりますが、御承知のように団塊ジュニア世代が年金受給者となる頃にはまた増えるということ。医療費や介護費は、ずっと高齢化率が上がってまいりますので、それに連動して増加するということ。教育費は、少子化がありますから、ほぼ横ばいになっています。
この社会保障支出をOECD諸国と比較してみますと、我が国を2015年で見ますと、OECD諸国の中で顕著に社会保障支出が大きい国の仲間であると言えるほどは多くはない、いわゆる高福祉の国の仲間に必ずしもどっぷり入っているというわけではない。しかし、縦軸が低いほうに属しているわけでもないということで、いわば中福祉というような位置にあるということは言えると思います。その代わり、横軸を見ますと、実は国民負担率はむしろ低いほうに属しておりまして、やはり給付は多いけれども、負担が少ないというような状況であります。
もし改革を行わないと社会保障支出は2060年にどの程度まで増えるのか、今回の試算の数字を示しますと、2015年から2060年まで、ほぼ真上に移行するような状況が考えられるわけであります。そういたしますと、かなり北欧諸国に近いような社会保障支出の対GDP比になるという意味ですので、やはり社会保障を中心とした歳出改革は非常に重要なことであるということは示されると思います。
欧州委員会の試算結果に倣っているので、欧州諸国と比較することも可能であります。先ほどお示しした数字は、国と地方を合わせた部分でありましたので、一般政府という国と地方に加えて社会保障基金も加えた試算結果も併せて10ページにお示ししております。当然のことながら、社会保障基金を加えますと、社会保障給付の社会保険料で賄われている部分が加わることがございますので、最終的に収支改善幅は先ほど御紹介した国・地方ベースよりは多くなります。10ページにあるように対GDP比8.0%から9.1%という数字になります。この数字は、明らかに主要なEU諸国に比べると大きい。日本並みに多い国は、EUの中ではスロベニアでありますが、対GDP比6%ですので、それよりも日本は多い。EUの中ではスロベニアが多いということで、欧州委員会はレッドカードを出して収支改善せよと言っております。もし、日本が欧州委員会から何か言われるとすると、レッドカードを突きつけられることになるだろうということでございます。
11ページ目に主要な論点として、今、申し上げたことをまとめております。できるだけ早いプライマリーバランスの黒字化を達成するということ、それから歳出分野については聖域なく改革を進めるとともに、歳入分野での取組も継続することが重要だということを申し上げたいと思います。
以上です。
〔 田近分科会長代理 〕 土居委員、ありがとうございました。
ここで議論に移りたいのですけれども、その前に、先週3月29日の経済財政諮問会議に提出されました「経済・財政一体改革の中間評価」について、一部の委員から言及がありましたので、関口調査課長より手短に紹介いただきたいと思います。
〔 関口調査課長 〕 調査課長の関口でございます。
ただいま田近分科会長代理のほうから御紹介いただきましたとおり、私のほうから、3月29日の経済財政諮問会議に提出されました中間評価について、参考資料2「経済・財政一体改革の中間評価のポイント」と書かれている資料に沿って、ごく簡潔に御説明させていただきたいと思います。
それでは、1ページをお開きください。こちらは総括的評価ということでございまして、アベノミクスの成果ですとか、これまでの財政健全化の取組がまとめられてございます。こちらにつきましては、既に第1回の財審などでも御説明させていただいている内容でございますので、説明は割愛させていただきたいと思います。
2ページのほうでは、これまでの成果ということで、経済再生と財政健全化の両面にわたって、表形式にポイントがまとめられているところでございます。
3ページ、こちらはプライマリーバランスの改善の進捗の遅れ遅れの要因を分析しているところでございます。先ほどの冨田委員の御説明と重複いたしますけれども、歳出改革が努力される一方で、補正予算の影響でございますとか、税収の伸びが緩やかだったことの影響、あるいは消費税率引上げ延期の影響、そういったものを含めてプライマリーバランスの改善の進捗に遅れ遅れが見られているという要因が分析されております。
4ページでございます。これまでの評価から得られる課題と、今後、求められる課題について、歳出・歳入両面にわたって整理されているところでございます。
5ページを御覧ください。こちらは、2020年代にかけての変化と、2020年代を見据えた今後の対応ということで、主に社会保障関係費の増加、あるいはインフラの維持補修・更新費といったところに焦点を充てて整理されているところでございます。
6ページを御覧ください。こちらは、新たな計画に向けて、まず基本的な考え方ということで、経済再生なくして財政健全化なしとの基本方針を堅持する。それから、財政健全化は着実、かつ景気を腰折れさせることのないようなペースと機動性を持って行うとされているところでございます。
財政健全化目標につきましては、プライマリーバランス黒字化目標の実現を確実にする仕組みを構築すべきである。具体的には、財政健全化と毎年度の予算編成を結びつける枠組みが必要である。そして、プライマリーバランス黒字化と財政健全化に向けて、何らかの中間的な取組の進捗を管理する仕組みを構築する必要がある、とされているところでございます。
歳出改革に向けた取組の加速・拡大というところでは、公的サービス産業化、インセンティブ改革、こういったことの重要性、取組を加速・拡大していくということ。それから、歳出全般にわたって聖域なき徹底した見直しを行って、改革工程表に沿って着実に改革を実行することで、これまでの取組を加速していくことが重要だということが指摘されているところでございます。
審議に当たっては、こうした中間評価の分析も踏まえて御審議いただければ幸いでございます。
私からの説明は以上でございます。
〔 田近分科会長代理 〕 どうもありがとうございました。
少しお待たせしましたけれども、これから冨田委員、土居委員の説明につきまして、御意見、御質問ありましたら、お願いしたいと思います。もちろん、これまでここでいただいた御報告、あるいは議論を踏まえての御意見、御質問でも結構です。特に、冨田委員の報告の最後にありましたように、我々は新しい財政健全化計画に向けてどう議論をシェアしていったらいいのかというところを議論しているわけで、そのような面でもぜひ各委員の御意見を伺わせてください。
ここからは、いつものとおり、御意見のある方は名札を立てていただいて、適宜、発言いただきたいと思います。では佐藤委員、伊藤委員、手短にお願いします。
〔 佐藤委員 〕 ありがとうございます。
私、経済・財政一体改革推進委員会の委員をやっているので、そことの関係もあるのですが財政再建については、まさにマクロとミクロと二つからのアプローチがあります。本日、冨田委員や土居委員からの御紹介は、多分、マクロからのアプローチでありまして、これからマクロサイドでどうやって財政を健全化させていくかというときに、今回、PB改善の進捗の遅れ遅れの要因分析という形で報告書にありましたとおり、大きな要因は補正予算であります。やはり補正予算を組むことを前提に予算を作ってはいけないわけでありまして、先ほど言ったとおり、これがかなりPB改善の進捗にとってマイナス要因になっていますので、この辺りをどうするかということを財審においても議論しないといけないと思います。
もう一つ、ミクロ要因といたしまして、今、頭が痛いのは三つあります。一つ、社会保障については、入院患者数についてはベッド数をコントロールすることによって対処するという議論がありますが、外来をどうするか。地域差半減と口では言うけれども、どうやってという議論があります。具体的には受診率をどう抑えるかという点なのですけれども、この辺をどうするかということ。自治体に関しては、どうやって業務委託を進めていくか。ここではトップランナー方式という言葉で紹介されますけれども、要するに業務委託をどうやって進めていくかということです。あとは、多分、インフラの議論で出てくるとう思うのですけれども、上下水道においてはとにかく広域化して受け皿を大きくしないとコンセッションの対象にならないので、どうやって広域化を進めていくか。この3点は、ミクロサイドにおいてはこれから重要なアジェンダになるかなということです。
最後は感想ですけれども、経済・財政一体改革で常に問題になるのは、「笛吹けど踊らず」ということであります。これは基本的にはボトムアップの改革なので、自治体や医療関係の現場が動いて課題に気づいてくれなければ如何ともしがたい。したがって、現場にどうやってこの改革マインドを浸透させていくかが大きな課題で、今のところツールとしてあるのは、見える化とEBPMということになるのですが、もう少してこ入れが必要といった議論があるということだけ御紹介です。
〔 田近分科会長代理 〕 伊藤委員、お願いします。
〔 伊藤委員 〕 ありがとうございます。
冨田委員と土居委員の御意見はごもっともで、大和総研の熊谷さんが、財政健全化は成長と増税と歳出削減の三位一体で、同時並行的にやっていかなければいけないということを言われました。そのことは、やはり本日のお二方の話からも明らかだということが1点であります。
もう一つは、その前提になっている内閣府の中長期試算の成長実現ケースですけれども、数字が少し下方修正はされていますけれども、しかし中身を見たら、実際、成長率は、実質で2%台、名目で3%台を継続しないとここに到達しないわけです。だから、その辺が本当のところどうなるのだろうかというのが、少し気になるということでございます。
以上です。
〔 田近分科会長代理 〕 ありがとうございます。
冨田委員、土居委員からはまとめて対応していただくとして、御意見を伺いたいと思います。神子田委員、永易委員、お願いします。
〔 神子田委員 〕 冨田委員、土居委員、どうもありがとうございました。
まず、冨田委員のお話に関して、資料1の31ページ、「新しい財政健全化計画に向けて」の中のお話で、取組の進捗状況に応じて歳出・歳入両面から必要な措置を検討するといったところで、経済情勢によっても数字が変わってくるので、その都度、モニタリングをすべきというお話がありました。私、この間、海外調査、イギリスとイタリアに行ったときにも、政府から中立の立場で進捗をモニタリングする機関があるということを勉強してきたのですけれども、このモニタリングをする主体についてどのようにお考えであるか。また、必要な措置というのは、例えばここまで歳出削減をするという目標を設けたけれども、これでは目標が達成できなさそうなので追加の削減措置をとるとか、何か具体的なイメージがあったら教えていただきたいと思いました。
もう一つは、土居委員の見通しの中で、PBの達成が2020年度から1年遅れるごとに、後の負担が、毎年0.16%、1兆円から1.2兆円増えていくというお話がありました。これは国と地方を合わせてというお話だったのですけれども、もし国だけの数字でイメージがありましたら教えていただければと思います。よろしくお願いいたします。
〔 田近分科会長代理 〕 では、永易委員。
〔 永易委員 〕 ありがとうございます。
両委員のお話とも非常に腑に落ちる、腹に落ちる御説明だったと思いますが、冨田委員の、先ほど言われた31ページの今後に向けてどうするのかという総括についてです。非常によくできているとは思うのですが、よく考えてみると、結果としてはるかに悪かったという要因が、、とあります。の消費税の部分は、今度は絶対上げてもらわないととんでもないことになりますと、財審としても今から縷々言っていかないといけないだろうということです。
の楽観的な経済見通しというのは、前からこの会でも何回も言われているところです。実は、ベースラインケースよりは多少良かった、ただ経済再生ケースからははるかに下だったというのが実績でした。ということは、今回、6月辺りに計画ができるとすれば、これはもうずっと議論があったとおり、ベースラインケースを前提に計画を作らないと、必ずこの現象が起こるのではないかということです。財政再建計画を作るということは、歳出をより抑制しないとバランスしないという図式になります。やはりそのような形にしておかないと、前回の計画もよくできているとは思うのですけれども、あの計画は全部2018年度に見直して追加でやるという大前提の下にできていました。今度、2018年度になってみると、2020年度はとてもではないものの達成できないので、少なくとも財審の議論としては、成長実現ケースではだめであるというトーンを強く出すべきではないかということです。
それと、の補正予算、これも議論としては毎回出ていることで、私は一応、経済界の代表となっているから、この点についてあまり強いことを言うと、経済が悪化したとき、どうするのだろうというのはあるのですが、補正予算というのは基本的には本当の緊急時、想定しているのは災害等、そのようなことでしょう。にもかかわらず、毎年、野方図に出ているということですから、これに何とかたがをはめる。とりあえず法制化等様々なやり方はあるでしょうけれども、目安というのは意外とこの3年間効いたのではないかというのは実感としてあります。やはり補正予算についても、そのような目安的なものを入れるべきではないかというような感じがいたします。
それと、土居委員の話を聞いていると、私も団塊の世代でございまして、2022年には75歳になりますので、いよいよ私なども迷惑をかける状態になるのかとひしひしと感じながらたいたのですけれども、それはそれとして、極力早く到達時限を、2020年代の半ばとかいうぼやっとした表現が時々聞こえてきますけれども、本当であれば、1月の中長期試算を見てみますと、2年程度遅れるということででした。だから、今度は目標を2022年度にする。そのぐらいの覚悟でやらないといけないというのは、トーンとして出すべきではないかと思います。
以上です。
〔 田近分科会長代理 〕 ありがとうございました。
色々御意見、あるいは御質問を承りましたけれども、ここで冨田委員、土居委員、まだ御質問もあるので、答えられる範囲で手短にお願いします。
〔 冨田委員 〕 御指摘ありがとうございました。
伊藤委員から経済見通しの前提は楽観的ではないかという御指摘、この点は永易委員からもございました。この問題、これまでもずっと議論してきたのですけれども、私は政治家ではないのでわからないのですけれども、やはり国民、企業を鼓舞するためには、そんな暗いことばかりも言っていられないというのが、多分、これまでのお考えだったと思います。だから、先ほどGDPのグラフで御覧いただきましたけれども、推計よりもはるかに低い成長にとどまっているということなのです。そうであるがゆえに、我々としては、永易委員からも御指摘あったのですけれども、ベースラインケースというものをもっと注視していただきたい。それを繰り返し言うことだと思うのです。
神子田委員より中立機関を作るというお話がありましたが、やはりこの問題が一番大きな違いになってくると思います。あらまほしい姿と現実の姿、どちらが中立かと言われてもなかなか難しいのですけれども、そのような問題は絶えず存在すると思うのです。だから、今も内閣府の見通しは二通り出ていて、なぜだかいつも経済再生ケースと、今回ですと成長実現ケースにウエートが置かれているわけです。それは、やはりこれまでの経緯を踏まえても、よりベースラインケースを基に議論するほうが現実に近いのではないか。このことを我々として繰り返し発信し、それを基にした議論をしていくことが大事ではないか。だから、中立機関を作らなければできないということでは決してないと思うのです。二つ出ているケースについて、どちらにウエートを置いて議論するかということが大事だと。組織を作れば何でもうまくいくとか、そのようなことでは決してないと思うのです。
それから、佐藤委員、永易委員より補正予算の議論をいただきました。御指摘のとおりです。これまで、同様の議論をしてきたわけですけれども、31ページに記載してあることは、仮に補正予算を編成する場合、やはりこれから設定される財政健全化計画への影響を明確に認識して、議論していただきたいということです。
これまでですと、ある意味、財政規律を守ろうという面もあったと思います。国債発行額をできるだけ抑制しようという面がありました。だから、金利低下による利払い費の減少部分を歳出に充てれば、その分、国債をあまり増発しなくても補正予算を組めてしまうという議論がなされておりました。しかし、のところで書いてありますけれども、利払い費を他の歳出に充てるということは、その分、プライマリーバランスが悪化するわけです。そのようなことも十分考慮して、やはり健全化目標への影響を明確に認識しておく必要があるだろうと思うのです。
必要のあるものは、やはり補正として組まねばならないものもあると思います。それを完全にゼロにすると、かつての総合予算原則のように補正予算なしで当初予算を組むということをやっても、なかなか守られなかったわけです。そのようなことも踏まえて、ここで申し上げたい点は、仮に補正予算の編成が必要となった場合には、健全化目標への影響を十分踏まえて議論しなければだめだということです。そのようなことをここで申し上げております。
私からは以上です。
〔 田近分科会長代理 〕 土居委員、お願いします。
〔 土居委員 〕 手短にお答えさせていただきます。
まず、神子田委員のおっしゃったところですけれども、計算方法としては、国と地方は一体として計算しているので区別はありませんので、1兆円のうちいくらが国で、いくらが地方というのは、計算上はありませんが、イメージとして捉えていただく分はあるのかなと思います。つまり、例えば、国と地方を合わせて1兆円の収支改善をするということに仮に取り組んだとして、かつ、今、実際に国と地方を合わせたところで、地方が6割、国が4割という支出のウエートになっていますから、単純なイメージで言えば、そのうちの0.6兆円ぐらいは地方で歳出抑制してもらって、0.4兆円は国で抑制してもらうとか、そのようなイメージです。あくまでも仮定がかなりたくさん入っていますので、必ずその数字だということを申し上げているわけではありませんが、そのような頭の体操はできるかと思います。
それから、永易委員おっしゃったところは、まさに私も悩ましいところだと思っております。結局、医療や介護は、確かに団塊の世代の方々が75歳以上になるところで増えるということもありますけれども、2040年代、2050年代においてもまだ引き続き増え続けているということですので、団塊世代の方々の次に、さらにまた団塊ジュニア世代も控えていて、団塊世代の方々と団塊ジュニア世代の方々の間の時期は、医療費の伸びが少し少なくて済むなどというようなことには決してなっていない。継続的に増え続けると見込まれる医療や介護の費用が根本的なところでうまく抑制できるような仕組みを、どうやって早い時期に作っていくかということが求められているのだろうと思います。
〔 田近分科会長代理 〕 小林委員、お願いします。
〔 小林(慶)委員 〕 どうもありがとうございました。二つほど短いコメントです。
まず、土居委員が書かれたような長期推計というのは、やはり議論の前提として、なるべく広く公表するというのは意味があると思います。内閣府の資料を見ると2027年度までしかないのに対して、2060年度等、それ以上の将来についてある程度こうやって試算を示すということは重要だと思うので、それはぜひやっていただければと思います。特に、3ページ目のGDP比率などは、今、見ると縦軸に数字も入っていないようですけれども、もっと強調して示されてもいいのではないか。これは感想でございます。
二つ目は、これもコメントですけれども、本日の二つの資料の御議論のように、財政健全化するために当然、消費税も上げなければいけないとか、あるいは歳出の削減についてもこのぐらいやらなければいけないと示すときに、どうしても普通の国民の立場から考えうる反論として、それをやると経済成長が落ちる効果が大変大きいのではないかという懸念があると思います。例えば、消費税を増税したとき、GDPの低下効果があったとか、なかったとか、様々な説があると思うのですが、それについての論点、見解をまとめるとか、あるいは、日銀が2、3年前に出されたワーキングペーパーでも、消費税を増税したときの消費の低下はさほど大きくなかったというような研究もありますので、そのようないくつかの研究を並べるだけでもいいかもしれないのですけれども、歳出削減とか、消費税の増税をやったときの経済に与える負の効果はどのぐらいあると思われるのかについて、少し議論の材料などをまとめて出されるといいのではないかと思っております。
もう一つは、財政を健全化することによって長期的な不安を取り除いて、それが経済成長によい影響があるということは、この審議会でも議論されたと思いますし、私も自分の研究などでそのようなことを理論モデルで書いたりしていますけれども、財政再建が長期的に経済成長にもプラスの効果があるかもしれないという研究成果もいくつか並べて、議論の材料として提供するようなことがあっていいのではないかと思いました。
以上でございます。
〔 田近分科会長代理 〕 では、中空委員、お願いします。
〔 中空委員 〕 ありがとうございます。感想だけ申し上げます。
冨田委員と土居委員の御説明は至極ごもっともで、財政再建をきちんとやらないとだめだと思いましたし、PB黒字化が1年遅れるごとに1.2兆円増えていくというお話も、かなり鮮明な数字として受けとめられるのではないかと思いました。
ところが、何度も何度も私が財審に参加させていただいてからも毎年、財政再建しなければならない、不退転だとずっと言いながら、まだやっているということを考えると、日本そのものに抑止力が無いのではないかと思っています。土居委員の話の中に欧州委員会の分析手法というものがありましたが、欧州は欧州で互いに抑止力が効いていて、財政再建ができなければ、しかるべきときまでに新しい目標を設定させられるわけです。アメリカはアメリカで、それが効いているかどうかは別として、債務上限という話話も出てきます。日本だけが財政健全化に向けて頑張ったが、達成できなかったということで、また次に新たな気持ちでやり直す、ということを繰り返している気がしてならなくて、我々としても抑止力になるようなことをそろそろ考え出さないといけないのではないかと感じました。
〔 田近分科会長代理 〕 では、佐藤委員。
〔 佐藤委員 〕 先ほど、長期推計の箇所で申し上げ損ねたので、2点ほど補足させていただきます。
対外的に発表するときに、たしか現行制度を前提にしたときに、必要な収支の改善幅というのは三つの要因に分かれていたと思います。よくある金利と成長率の差については様々な御意見があるので、それを除いたとしてもやはり4%近い収支の改善が必要だということになります。これは要するに強調すべきポイントだと思うのです。
もう一つ、これは私、先回の岩本先生にも御質問申し上げたのですけれども、伸び率についてです。例えば、社会保障の伸び率はGDPに合わせています。他のものもそうなのですけれども、GDPの成長率に合わせるというのは、多分、現実的だからでもなく、それが望ましいからでもなく、おそらく試算の関係だとう思うのです。つまり、分母がGDPなので、それに合わせて伸びてくれないと収束しない。ただ、実際問題としては、多分、社会保障の伸びはGDPに必ずしも合わないし、逆に合わせないように、マクロスライドではありませんけれども、GDP以下に抑えていく、例えば物価水準だけに連動させるようにすれば実質的には価値が下がっていくわけなので、伸び率をどう抑えていくか。本日の議論は発射台の話でしたけれども、伸び率をどう抑えるかというのももう一つの財政再建を語る上での側面かなという気がしました。
〔 田近分科会長代理 〕 他に、御意見、御質問等ございませんか。
そうしたら、土居委員、冨田委員、さらに確認も込めて回答することがあれば。
〔 土居委員 〕 御質問、コメント、ありがとうございました。
まず、小林委員からあった件です。3ページですけれども、このグラフに目盛りがないのは、前回試算と今回試算でGDPの基準改定があったせいで分母が違うというところで、数字を比較することはなかなか難しいという経緯があったものですから、あえて目盛りを打っていないということです。
別に隠す必要はないので、今回試算の数字を申し上げますと、幅があるので、債務残高対GDP比で改善を行った場合、改善を行わなかった場合で、時間がないので年金の財政検証でいうところのシナリオEという高い方の数字だけ申し上げると、2060年度までずっと上がりっ放しで、歯止めがかからない状態になっている点線部分では、498.3%というところまで、つまりGDPの5倍近くの債務残高になってしまうということです。収支改善を行ってオレンジ色のほうになると、88.6%で2060年度以降一定になると、このような計算結果が出ております。別にその数字を隠す意図ではなかったのですが、右と左で対GDP比の分母が違うということで、あえてここで目盛りを打たなかったところであります。
それから、佐藤委員がおっしゃったところですが、年齢関係支出は名目GDPで伸ばしているわけではなくて、むしろ年齢階級別の一人当たりの給付額を基にして、人口変動を社会保障・人口問題研究所の推計に基づいて動かしていって、どうなるかを示しているということで、8ページのような結果になったというところであります。ですから、確かに改革の方向性ということで言うと、これは基本的には一人当たりの給付額を変えずに、2060年度まで給付し続けたらということですから、佐藤委員がおっしゃっているように、一人当たり給付額にどう歯止めをかけるのかというような議論も非常に重要なポイントだと思います。
以上です。
〔 田近分科会長代理 〕 ありがとうございます。
〔 冨田委員 〕 中空委員から抑止力という話をいただきました。これはやはり非常に大事だと思うのですが、なかなか市場金利が動かない中において、それをどのように考えたらいいのだろうかということです。私なりに考えたのは、戦前、国内が非常に低金利の中で、国債は出せば出すほど効果が出るのだという話があり、そのようなことをいつも思い起こすぐらいしかない。もっと具体的に言えば、この前、御出張のときのスウェーデンのお話とか、ドイツのお話で、やはりそのような国民の経験が国民を突き動かす原動力になっているわけです。我々、そのようなアンカーと言うべきもの、経済活動におけるアンカーみたいなものを失ってしまっているような感じがするのです。だからこそ、大きな問題に突き当たっている。
本日もグラフでお示ししておりますけれども、日本のクレジットが海外でどのような状況になっているか。同じ政府保証債をドイツと日本で比べると、日本の金利のほうが高いということなのです。戦前の日本、これはナチスドイツも同じですけれども、国内では敗戦まで非常に低い金利で国債は発行できたわけです。日本だと3.75%でした。だけど、ロンドンでポンド建の日本国債は、イギリスの国債の金利は4、5%なのに、真珠湾攻撃の日まで20%、30%で取引されていたのです。それが当時の国民には見えなかった。だけど、我々は今、このようなものが見えるわけだし、資本移動も自由なわけです。だから、見えないのではなしに、見ようとすれば、やはりこのようなことが問題をクリアにしてくれているし、具体的な問題として、やはり銀行や事業会社などの事業の国際展開を引っ張るような、悪影響を及ぼす背景になっていると見るべきだと思うのです。
ここら辺は、現実の政治決定で考慮されることとは大分距離があるのですけれども、そのような問題意識はやはりいつもぶつけていく必要があるのではないかと思います。そのようなことを抑止力まで高めていくということが重要かと存じます。
〔 田近分科会長代理 〕 これで、このセッションを終わらせていただきますけれども、司会をしていて、一言しゃべらせていただきたいと思います。
関口課長が使われた資料「経済・財政一体改革の中間評価のポイント」の3ページです。内閣府の取りまとめ資料ですけれども、「経済・財政再生計画」の2016・2017・2018年度の3年間の計画の評価で分かってきたことは、やはり非常にクリアで、冨田委員の説明もそうだったように、それを通じて財政健全化のこれからの方針をどう練るかという示唆もあったのではないか。
3ページ、PB赤字1.7%、9.5兆円から出発して、上に行くと健全化の方で、歳出効率化で健全化された。しかし、何度も議論があったように、補正予算で財政赤字が増えた、税収が伸びなかった、そして消費税の引上げを遅らせた。その一方で、当たり前かもしれませんけれども、海外の調査も通じて、歳出の目安を作るということがこの3年間でも効いたのかなと。補正予算のことは言わずもがなで、できるだけ行わず、やはりきちんとした歳出計画に基づいて実現していく。税収の伸びが緩やかだったというのは、永易委員御指摘のとおり、要するに経済成長の読みが甘かった。この間、景気が悪くなったとか、そのようなわけではないですから。最後は、政府が政策にどれだけコミットメントするかということで、やはりこの3年間を通じて得るべき教訓はあったと私は思います。
それで、お願いですけれども、このようなことを踏まえて、この審議会でも財政健全化に向かってどのような提案をしていくかということで、御意見、お考えをぜひ事務局のほうにも寄せていただきたいと思います。よろしくお願いします。
次に、第2の議題の防衛予算について、内野主計官から御説明いただきたいと思います。
内野主計官、よろしくお願いします。
〔 内野主計官 〕 資料3をお開きください。防衛予算についてでございます。
目次を御覧ください。平成30年度防衛予算、どのような努力をしたかを概観しまして、そこから引き出される平成31年度予算に向けた課題、実は平成31年度予算は今年の年末策定ですが、併せて今後5年間の防衛力の計画を立てるということで非常に重要な節目の年でございます。そこをお示ししました上で、具体的に何をすべきかということで、調達改革についてお話いたします。防衛予算というのはやはり装備品の買い物の予算が大きいため、何を買うかという選ぶ前のコンセプト、そして選ぶ手続、選んだ後のコスト管理という三つのフェーズで御説明し、ここで出てきた課題からして、最後に防衛産業をどうしていくかという話にも波及すると思いますので、そのような御説明でまいります。
3ページ、4ページ、5ページは飛ばしていただきまして、6ページをお開きください。調達改革ということで、表にございます平成26年度から平成30年度までの5年間で、上の四角の左上にございます中期防衛力整備計画というものを立ててございました。この中では、買い物の中から7,000億円程度節約して、安く買うなりして、合理化して財源を作りなさいということになっておりました。この表の右下を御覧いただくと、7,710億円と超過達成ができたということで、特に原価の精査というものに取り組んできております。この平成30年度の黄色の701億円という内訳を次の7ページでお示ししております。
まず、上の四角の二つ目の丸を御覧ください。次期中期防、今、申し上げました平成31年度以降の5年間の計画におきましては、価格低減、7,000億円と言っているものをさらにやっていただかなければいけない。これをやることで国内の防衛産業が何か傷むかというと、そうではなくて、むしろ価格競争力をつけることで国内防衛産業を強靱化していこうではないかと。経済成長と財政再建の両立ではございませんが、そのような議論ができないかという観点でございます。
下を御覧いただきますと、国内調達は700億円のうち400億円程度やっております。これは、材料費や加工費を1,000円単位できりきりと見ていきまして、かんなをかけた結果でございます。昨年秋の財政審で、C-2輸送機についてマージンがダブルで計上されていた部分は、その相当額は削除しておりますが、予定価格の組み方においては、まだ契約方法は変わっておりませんので、引き続き防衛省に検討してもらっております。
2番目のアメリカからの調達でございますが、これはよく言い値で買わされているという話がございましたが、平成30年度、大きくフェーズが変わりました。グローバルホークという無人機を買うに当たりまして、1式いくらという話で内訳がなかったもので、しかも値段が上がるという話が入りましたので、大臣からマティス長官に対して透明性と価格低減を要請いただきました。これを受けまして、会計検査院の指摘もありましたし、あるいは木原財務副大臣からも防衛省に対して厳しい御指摘をいただきました。アメリカは政治の国ですし、GAOというアメリカの会計検査院は非常に強い機関でございますから、そのようなものを背景にしまして防衛省は折衝しまして、結果として300億円の節約と、1式いくらというものは全部なくなりまして、技術支援費がいくら、機体単価がいくらという形で全て内訳が出るようになったということです。これは、十数年前に私も防衛予算をやっておりましたが、非常にエポックメーキングなことであったと思っております。
8ページ、9ページは、その具体例、どのようなものがあったかでございますが、省略させていただきます。
11ページ、平成31年度予算に向けた課題でございます。左下、黄色の四角がいくつか並んでおりますところを御覧いただきますと、防衛予算というのは一番下でございまして、大きな国の戦略の中で、どのような防衛水準が必要かという大綱が示されまして、それに基づいて5年間の整備計画が立てられ、そして単年度予算ということでございます。この骨太の議論は別途やっていただいておるわけでございますが、年度予算を組んでいくに当たって、また、中期防衛力整備計画を立てていくに当たって、春の財審として前哨戦でいくつかの議論をする必要があるということでございます。
12ページでございます。では、具体的に中期防衛力整備計画にどのようなものが載っているかと申しますと、真ん中に別表というものがございます。ここにありますとおり、5年間でどのような装備品をいくつ買いましょうというリストが出てくるわけでございます。そして、右側のグリーンの所要経費というところで、それに人件費とか、訓練費とか、様々なものが積み重なりまして、総額をいくら程度ということでございまして、ここに合理化、効率化の7,000億円というものも出てきております。ここを上積みしていきたいというのが私どもの目論見でございます。
では、具体的にどのような調達改革が必要かという中身に入ってまいります。14ページをお開きください。まず、装備品選定前のコンセプトの部分でございますが、上の四角にございますとおり、部隊での運用や必要性を考慮して要求性能を決めているわけでございます。例えば、C-1輸送機の後継となったC-2輸送機ですが、括弧の中のチェックの三つ目を御覧いただきますと、カンボジア、モザンビークと、つまり海外展開が出てくるようになりましたと。このニーズを受けまして、一番下の表になってございますが、貨物搭載量を大きくするとか、航続距離を大きく延ばすとか、巡航速度を速くしたいと。このような要求性能を満たすものが当時の軍事マーケットにございませんでしたので、国内開発をしましょうということになったわけでございます。
15ページでございます。国際平和協力活動に使います、だから、これだけの機体が要りますと国産にしました、海外にも売っていきますと当時から言っておりました。しかし、不整地離着陸能力と申しまして、でこぼこであったり、小石が落ちているような場所には着陸できない機体でございます。アルミのままでございますので、機体の下部に石がはねると穴があく、あるいはターボファンエンジンを採用していますので、ファンに小石が入ればファンが傷んで飛べなくなるということでございます。
左下の「メイド・イン・ジャパンのC2を世界に売り込め!」とドバイのエアショーに持っていきましたが、一番聞かれたのは不整地離着陸能力で、残念ながらそれはありませんと。また、右側を御覧いただきますと、米国のランド研究所で、中国のミサイルの精度が向上している、飛距離も延びているということで、現代戦においては制空権が相変わらず重要でございますので、相手の滑走路を叩くことが常道と言われております。このようなことが起こりますと、おそらく国内の防衛上も施設停滞が出てきて、滑走路を埋め戻して応急処置をした上で着陸するということになりますと、応急処置をしたでこぼこの滑走路に着陸できるのかという点が、C-2輸送機の一つの弱点になっているのではないかということでございます。
16ページでございます。非常にいい機体を頑張って製作したのだろうとは思いますけれども、価格も非常に上昇しているのは後でご説明いたしますが、このような中で本当に次期中期防でC-2をたくさん買い続けるのでしょうか。不整地離着陸ができるということで申しますと、ベストセラー機であるC-130シリーズはカーゴを非常に大きくしたものがございまして、表にございますとおり貨物床面積は遜色ございません。唯一、航続距離で大きく劣ってございます。価格を御覧いただきますと、208億円に対して93億円、不整地離着陸能力はあるということで、左下、参考を御覧いただきますと、C-130シリーズは2,500機以上売れている機体でございまして、海外に出ていっても中継点で米国、その他の国々が整備拠点を持ってございますので、インターオペラビリティもあるということでございます。7,600キロメートルと3,150キロメートル、これがどのような意味を持つのかというのは17ページでございます。
今、マクロで財政が厳しい中でも歯を食いしばって防衛費を増やしていく、それはなぜかといったら北朝鮮と中国の脅威が迫っているからである。このようなときに、国際平和協力活動に大きなお金をかけて輸送機を買っていくのか、それとも国内の防衛所要のために集中的に買っていくのか。ここは、やはり優先順位が図られるべきであって、3,000キロメートルという航続距離は十二分ではないかと考える次第でございます。
18ページを御覧ください。ファミリー化というコンセプトが各国には導入されてございます。これは装甲車の類いでございますが、様々な機能を持たせた装甲車があるわけでございますが、基本的な構成部品を共通化させます。ボクサー系列の標準というところを御覧いただきますと、もう標準の型を作ってしまいます。この車体は全部共通でございまして、ここに様々なものを載せる。パーツはモジュール化してあって、取りかえられる。そうすると、撃破されたり、故障したときでも積み替えができるということで、このような形で量産効果と抗堪性を両立するのが各国の軍の最近の動きでございます。
19ページを御覧いただきますと、ドイツ、イタリア、米国ともに丸がついているものは、車種が異なっても全部ファミリー化をしているわけでございます。日本の場合、これが進んでおりません。
それから、このようにコンセプトをしっかり決めていただいた上で、選定時にどうするかということが21ページ、おそらくこれが本日、一番重要なページになります。文字が多くて恐縮ですが、上の四角の中の丸を御覧ください。実は、航空機の機種選定の通達を除いて、装備品の選定手続の明文規定が見当たりません。巨大な組織ですので、幕の中に何か内規があるのかもしれませんが、今、予算執行調査で洗っております。つまり、航空機以外の装備品について、大臣なり、幕長なりが、これに決めましたということで突然出てくる、このようなことでよろしいのでしょうか。ルールやプロセスを明確化して出すべきではないか。
例えば、この間、フランスの陸軍が制式小銃を更新いたしました。このときには、3種類の小銃から調達しますということで、その3種類が明示されまして、それぞれ買ってきて試射を何万発もやって、ジャミングがどのぐらいしたとかいうことをきちんと数値化した上で、これになりましたということをやっておるわけです。そのようなオープンで、分かりやすい、そして世界中からきちんと、内外無差別で、競争的な環境でコンペをするということを本当にやらなくていいのだろうかというのが1点目です。
2点目でございます。航空機機種選定手続はございますが、それはきちんとしているのか。実は、選定の時点で、ライフサイクルコスト、調達してから運用して廃棄に至るまでのトータルコストを明示しないまま選定している場合がある。これは、その後の予算を圧迫する要因になるので、しっかり算定してから選ぶべきではないでしょうかというのが2点目でございます。
3点目でございます。装備品の選定において、実は調達価格を含めて企業から様々な提案が持ち込まれるわけでございますが、選定後に提案書に書いた話と段々と違ってくることが往々にしてございます。下の航空機の機種選定手続、1、2、3、4、5とフローチャートがございますが、3番目のところで企業が提案書の提出依頼を受けるわけです。この提出要求書の中に、あなた方が提案したら、その内容に拘束されますということが書いていない。なのに、機種を決定してしまったら、もうこれで決めました、これに基づいて全部の運用をやっていきますとなって、値段が上がっていっても、それに固執せざるを得ない。C-2輸送機は、まさにそのような状況になっています。もしそのように拘束力がないのであれば、ここは機種決定ではなくて、ただの優先交渉権の付与でしょうし、本当に決定するのであれば、やはり提案書にしっかりと拘束力をかけないと、何のためにコンペをやっているのだか分からないということで、この辺の手続をしっかりやるべきではないかという指摘をしたいと思っております。
22ページは省略しまして、23ページを御覧ください。オープンに、内外無差別でコンペをしなかった象徴的な事例がこれだと思っております。軽機関銃MINIMIというもので、ベルギーのFNという会社が開発したものでございまして、各国が導入しております。米国の単価1に対して、日本は7.2倍の値段で買っております。国産であることが重要であると言います。有事のときには、その国産の製造ラインさえ維持していれば、それで増産できるというわけでございますが、有事のときに鉄は入るのか、油は入るのかという観点。そして、同盟国アメリカでもMINIMIを製造しているということからしますと、この値段の差があるのであれば、半分の予算で3倍の数量を買って、そのストックを使うとか、もっと工夫の余地があるのではないか。実は、これは平成30年度予算には載っておりません。平成29年度で調達打ち切りになっております。
24ページ、国内企業においても競争が働いていない例がシステムでございます。ずらっと一者入札が並んでございます。そして、受注企業も、その1社しかできないような特殊な、サイバーセキュリティー上の厳しいものがあるかというと、様々な会社がそれぞれに1社でやっておられる。ここに本当に競争環境があるのでしょうかという疑問でございます。
そのようなことで、選定時に競争をもっと入れましょうという話の後、選定後のコスト管理について、26ページを御覧ください。特注品の製造請負契約でございますので、政府サイド、防衛省としても予定価格訓令というものを決めまして、企業にもある程度の儲けが出るように価格を設定いたします。その訓令に基づいたものが左側の四角でございまして、材料費、加工費、経費を乗せて、GCIPというゼネラルコスト(本社経費)、インタレスト、プロフィットを乗せて、マージンを掛けるという構造になっています。
直接材料費、そもそもマーケット価格で、例えばハイテンと呼ばれる高張力鋼板、これは今、1トン当たり20万円程度で、価格変動が大きいですが、それが装備品の単価には全然反映されてこない、コストデータベースも作っていない。これでは査定のしようがありませんし、価格管理もできません。
加工費、調達数量の計画はあるのですが、5年間でいくらとなっておりまして、後の計画は、盛りつけは結構自由になっているものですから、緻密な計画になっていないので、調達数量はアドホックで動きます。そうすると、作り始めてから段々と工員が習熟していって工数が減っていくというラーニングカーブというものがあるのですが、この効果が出てこない。それから、加工費レートというものが民需と一緒になって出てくるものですから、このレートが本当に正しいかどうか。有価証券報告書に、最後、出口に行くまでの紐づけの部分を私ども確認させていただけないものですから、ある種、情報の非対称性があって、これが適正かどうか分からない、言い値になってしまっているところがございます。
GCIPのGC率も同様で、本社経費について、販管促進費などは防衛経費に要らないでしょうけれども、全部乗ってきている。よろしいのでしょうか。
そして、最終的にこれは東電の総括原価方式と同じでございますけれども、結果的に直接材料費や加工費が伸びれば、P率は一定でございますので、プロフィットも大きくなってしまうということで、全くコストダウンのインセンティブが働かない。この予定価格訓令自体を抜本的に変えなければ、調達改革はできないであろうということを指摘しております。
27ページは、その詳細ですので省略いたします。
28ページを御覧ください。F-35Aという最新鋭のステルス戦闘機と国産のC-2輸送機、ちょうど調達時期が近いものですから比較してみました。
F-35、順調に単価が下がっております。ブルーのラインは国の予算単価で、破線の部分は概算要求で、そこから少し予算単価を落としております。オレンジ色のラインはアメリカの調達価格でございます。点線になっている部分は、左側の一番下、※印を御覧いただきますと、平成27年度以降はBlueprint For Affordabilityということで、実はロッキード・マーチン社が米軍に対して、我々は今後これだけ価格を下げていきますというコスト管理の計画をちゃんと出しているのです。そのようなものに基づいてちゃんと落としていくということを、米国はやっているわけでございます。
C-2はどうかというと、買い始めは166億円だったものが、今、244億円で要求が来る。確かに、これは億円単位になっておりまして、エンジンは輸入でございますので、その為替の部分はございますけれども、加工費レートは右肩上がりで上がっておりまして、いおかしいのです。作り始めたときは、最初ですから工員の習熟度はないわけでございますから、途中で機体を買う間が多少空いてしまったとしても、せいぜい最初に戻るぐらいのはずなのですが、どんどんレートが上がっていく。習熟度で下がるどころではいないのです。これはどのような理由なのでしょうか、どうも理解できない。先ほどの不整地離着陸能力の話から考えても、このようなコスト管理ができない機体はもう止めてはどうかと思っております。
29ページを御覧ください。軽装甲機動車という車がございます。これは平成13年度から調達を開始しまして、小松製作所にやっていただいております。左側のグレーの棒グラフを御覧いただくと、調達数量で、右側に両数両数が書いてございますが、平成22年度にちょうど量産効果が出て、真ん中の円グラフでございますが、単価が3,000万円程度になったわけでございます。ところが、他の装備品も買わなければいけませんし、やはり予算制約がありますから、私どもが悪いかどうかは分かりませんけれども、数量がどんどん減っていった結果、平成30年度はほんの10両とか、そのようなレベルで買ったものですから、工程費の割りかけ等々が大きくかかって、何と4,800万円を超える値段になってしまった。これは重量4.5トンでございます。普通乗用車というのは大体1トンでございますので、4,800万円を4.5で割りますと、普通乗用車でいうと1,000万円超え、つまりレクサス並みの単価でこのトラックを買っておるということでございまして、これもなかなか看過し得ないところでございます。中期防衛力整備計画というのであれば、もう少し計画的に買ってくれということでございます。
30ページ、31ページは省略いたしまして、このようなことをやって競争環境を作ってまいりますと、防衛産業をどうしていくかという話にどうしても逢着いたします。確かに国内防衛産業、苦しい中でやってくださっているところはございますが、それは生産ラインを維持することに着目し過ぎたからではないかというのが33ページでございます。
陸上自衛隊の弾薬予算には、平成30年度は616億円をかけましたけれども、主立ったものに、14種類の弾薬がございます。信管、りゅう弾砲などの発射弾薬も入っていますが、これを10社のメーカーに分散発注しております。これが本当に効率的な製造体制と言えるのでしょうか、国際的にこのような買い方が通用するものなのでしょうか、単価はどうなのでしょうか。弾薬の単価というのは防衛秘防衛秘になっておりますので、数量がわかってはいけませんから表に出せませんけれども、大変に高額で買っていることは事実でございまして、まず国内でこのようなものを競争環境に置いた上で、最終的には国外と競争しなければ戦える体制になっていかないのではないか。弾薬費が足りないと言われますが、まず買い方を変えてから予算要求してほしいというところが本音でございます。
34ページを御覧ください。このような話を私がしてまいりますと、アメリカから輸入ばかりになってけしからんではないか、どうするのだ、日本の防衛産業は立ち枯れてしまうではないかと怒られるのですけれども、違うと思っております。言い値で買っているから、日本の防衛産業はむしろ競争力が落ちていると思っております。
アメリカからの輸入、Foreign Military Salesと申しまして、その主立ったものを分析してみましたのがこの棒グラフでございます。一番下のブルーの部分を御覧いただきたいと思うのですが、これはそれ程増えていないのです。一番右側の括弧の中に目を移すと、このブルーはその他の装備品等となっていまして、増えているのは赤から上でございます。
では、何が増えているか。右側のリストを御覧ください。イージス、SM-3、これは弾道ミサイル防衛です。これは向こうで巨額の開発経費を出していますから、買うしかないでしょう。
後は何か。無人機、輸送機、警戒機、オスプレイ、戦闘機、つまり全て航空機です。アメリカと日本の航空機産業の競争力の差がどんどん開いている結果として、輸入を増やさざるを得なくなったのではないでしょうか。この点で、防衛需要で航空機産業を買い支えてきて何十年となりますが、日本の航空機産業はテイクオフしたでしょうか。むしろ、防衛省と一切つき合いのないホンダジェットが絶好調である。あるいは、ボンバルディアやエンブライルというのは、別にカナダやブラジル空軍の戦闘機を受注していないわけです。でも、民需であれだけの成長をしている。日本の航空機産業を支えるために防衛需要で買えというのは、話が違うのでないかというのが次のページでございます。
35ページ、主要国防衛生産企業の統合状況を経済産業研究所の資料を基に作ってみました。米国は今、4大防衛産業と言われる会社がございます。これはもとをただせば、80年代後半には51社ございました。それが冷戦構造の終結とともに合従連衡して、今、欧州勢とがっぷり組んだメガコンペティションになっておるというわけでございます。
欧州についても、御覧ください。エアバス社、もとの会社はフランス、ドイツ、スペインと国境をまたいだコングロマリットになってございます。このエアバスとボーイングが一騎打ちをしておるというのが民間航空機のマーケットでございます。
では、日本はどうかというと、航空機メーカーは三菱重工業、川崎重工業、スバル、これに新明和工業という4社ございます。欧州は国境をまたぐけれども、日本は企業の壁はまたげない、このような状態で分割発注をし続ける。私どもP-1、C-2は川崎重工に発注いたしましたけれども、次、戦闘機は三菱にやらせるしかないと言われて、その分散投資の責任は誰がとってくれるのでしょうか。これは、いささか投資効率が悪過ぎると言わざるを得ないと思います。
そして、これは単に私が吠えているわけではございませんで、最後の36ページを御覧ください。実は、このような話を防衛省自身、「防衛生産・技術基盤戦略」というものを平成26年6月に策定しておりまして、下の段の下線部を御覧ください。企業にとっては国際競争力の強化、防衛省にとっては調達の効率化という観点から、産業組織再編・連携は有効であり、今後、検討していくと。よくお分かりで、ぜひこれをやっていただいた上で次期中期防を策定していただきたいと切に願って、私のプレゼンテーションを終わります。ありがとうございました。
〔 田近分科会長代理 〕 ありがとうございました。内野主計官の今の防衛予算について、御意見、御質問を承りたいと思います。いつものとおり、発言の方はプレートを立ててください。
早速、末澤委員、宮島委員、お願いします。
〔 末澤委員 〕 どうもありがとうございました。
実は、今年1月に、ダボス会議を主催しておりますWEF(世界経済フォーラム)がグローバルリスクレポートというものを出しました。これは毎年出しているのですけれども、去年、今年と2年連続で、世界経済の向こう10年間にわたって一番影響のあるリスク、これが大量破壊兵器、地政学的リスクになっています。つまり、世界の経営者、エコノミストは、この2年間は地政学的リスク、あとは環境リスクが一番大きいと、それだけ世界全体で安全保障の問題が重要になっている。私も、そのような意味では防衛力の着実な整備は必要だと思うのですが、一方で、内野主計官からもありましたが、世界的に見ると兵器の値段が相当高くなっているのです。その中で、日本の今の調達はうまくいっているのか。
先ほど、23ページでしたか、MINIMI、軽機関銃の話もございましたが、これは見てお分かりかと思うのですけれども、実はオーストラリアと日本はいずれもライセンス生産です。オーストラリアは4,200丁買っています。日本は1,654丁なのですが、実は下の注を見ると、現段階では5,000丁調達しています。だから、日本は24年かけて5,000丁調達です。オーストラリアの陸軍は2万9,000人、日本の陸上自衛隊は15万人ですから大体5分の1、多分、これは一括で買っている。つまり、一括で買ったら7分に1になった。日本は、24年かけて少しずつ買っているので大きくなる。
もう一つ、先ほどのC-2の問題もそうですけれども、普通なら値段が下がるのが、段々と上がっている。これはなぜかというと、まず実用化が4、5年遅れているのと、やはり全体的に調達率が極めて低い。
要は、最終的になぜこのような問題が起きているかというと、35ページ、先ほど主計官からも御説明ありましたが、かつて、アメリカには航空機メーカーが50社近くあった。30年前の段階では、戦闘機メーカーだけで6社ありました。第2次大戦直後は10社あった。今、戦闘機メーカーは何社あるかというと、ロッキード・マーチン1社です。実は、ボーイングの試作機X-32のJSF(統合攻撃戦闘機)の採用がアウトになって、ロッキード・マーチンのX-35がJSFのF-35になってしまった関係で、ボーイングは今、P-8という対潜哨戒機しか造っていません。最近の米国防総省向けの受注残を調べると、ボーイング全体の受注残の5%以下です。アメリカの国防予算は、2019会計年度、全体で約7,000億ドルです。日本の大体14倍です。つまり、アメリカは14倍の予算をかけているけれども、戦闘機メーカーはロッキード・マーチン1社です。ノースロップ・グラマンは何をやっているかというと、ほとんど空母、戦艦、潜水艦、あとB-21という新型の戦略爆撃機を製作していますが、ほとんど艦船メーカーです。レイセオンは、今、ほとんどミサイルしか造っていません。
つまり、今、アメリカは3社で、航空機を造っているのはほとんどロッキード・マーチン、艦船は主にノースロップ・グラマン、ミサイルが主にレイセオンなのです。その状況で日本が対抗できるか。つまり、地政学リスクは相当高まっているのだけれども、防衛力整備には膨大なコストがかかる。開発費も開発期間もかかる。これが世界の現状であり、ヨーロッパがエアバスに集合したというところにあるわけでございます。やはりこのような客観的な情勢を見きわめた上で、日本の産業政策をもう一回見直す必要がある。これは主計官のおっしゃるとおりではないかと思います。
以上でございます。
〔 宮島委員 〕 ありがとうございます。
とても素人な私にもよくわかるお話で、結論として、普通の企業が普通に調達するときにやっている内訳を透明化し、見積もりをし、連携したり、総合化したりすることを通じて、価格を安くするというようなことがあまりなされていないのかなと理解いたしました。
そうはいっても、防衛は特殊部分があると思うのと、やはり難しいと思うのは、例えば予算編成の時期に記事を書くときに、財研の記者が知識が足りずになかなか防衛省クラブの記者を言い負かすことができなかったりとか、そのようなところもあるかと思ったりするのですけれども、質問で、あえて申し上げるとすると、こうした調達のまま、ずっと来てしまったのはなぜなのか。あるいは、私たちが報道も含めて敵としてたたくべきなのはどういった構造、相手なのかというところを教えていただければと思います。
〔 田近分科会長代理 〕 では、内野主計官、発言できる範囲で。
〔 内野主計官 〕 恐れ入ります。経緯として、こうした調達構造が続いてきた理由としては、マクロ的な要因とミクロ的な要因があると思います。マクロ的には、昭和41年に防衛省が次官通達を出していまして、国産化方針ということで、アメリカからの供用品に頼らずに、高度成長でもあるし、どんどん国内で造っていこうと。これは製造業が非常に頑張っていた全盛の時代は良かったのですが、それがそのまま来てしまったということで、空洞化とか言われて久しいにもかかわらず、国産化に固執したという部分がございました。末尾に出しました戦略において、国産化指針に代わってこの戦略を立てたということでございますので、防衛省自身も変わらなければならないということをやっております。
他方で、ミクロ的な要因と申しますのは、実は現場に行けば行くほど、補給本部とか、各基地の整備部隊などを視察しますと、ここは本当に企業と一体になっておりまして、企業の方々も汗水垂らして夜中でもやってくれるわけです。長期的な契約関係と信頼関係があって、しっかりと発注してくれているからこそ、いざというときに無理をしてくれるというところがあったわけでございます。ただ、防衛省自身が、例えば維持整備についても、都度そのような発注をすることではなくなりまして、パフォーマンス・ベースド・ロジスティクスと申しまして、何年間、稼働率の何%にしてくれという目標数値だけ出して、あと全部お願いしますという契約を導入したわけでございます。そのようなことであれば、前近代的な信頼関係に基づく契約関係が、ちゃんとした契約でお金も払っていることになるのだから、そろそろコンペを厳しくしてもいいのではないかという指摘につながっておると、そのような事情でございます。
それから、敵として戦うかどうかということで申しますと、敵は我が国に脅威を与える外国でございまして、国内産業においても一生懸命、製造してくれていることは事実でございます。ただ、そこを言い値ではなくて、買い物なのですから、当たり前にしっかりと折衝していくことに尽きるのだろうと思っております。
〔 田近分科会長代理 〕 ありがとうございました。
ほかに御意見。よろしいですか。葛西委員。
〔 葛西委員 〕 調達改革というのは大事だと思うのですが、軍事技術というか、兵器の技術というのはある種、最先端の技術ですよね。ですから、あらゆるものを自分で調達するとか、作る必要はないのですけれども、極めて戦略的に判断して、これは技術として持っておいた方がいいと判断すれば、日本の場合、マーケットが小さいですから単価は高くなりますけれども、技術として持った方がいいというケースがあるとう思うのです。そこをよく見分けてほしいと思うのです。
例えば、日米同盟で日本は絶対アメリカにとって必要だということは、アメリカが日本を守るか、守らないかのときに大変決定的な分岐点になるだろうと思うのですが、一例で言うと、日本は空母のメンテナンスに関して高い技術水準を有しています。そのような高い水準をどうやって維持するかということは、単に装備の値段だけではなくて、日本の安全保障上の存在価値をどうするかという問題と絡んできますので、単なる調達問題として捉えるよりは、それと併せてアメリカとの同盟関係において日本の存在価値をどれだけ高いものにするか。そのためには、日本の防衛の技術水準をいかに維持するかということをやはり頭に置いた上で、防衛省はじめ、色々なところとやっていただくのがいいのではないかという気はします。
〔 田近分科会長代理 〕 では佐藤委員から御意見をいただいて、必要なら内野主計官にお答えいただいて、これで終わりにしたいと思います。
〔 佐藤委員 〕 感想めいたことになるのですけれども、本日のお話を伺っていて、これは昔の公共事業と同じだなと思いました。まず、一社応札で、ゼネコンは案分よく場所を分け合っている、企業の数が多過ぎて集約化していない、それぞれが自前でやってしまっている、原価計算もよくわからない。防衛産業は、昔の公共事業というか、今もそうかもしれないですけれども、昔のゼネコンチックな議論だと思います。
だとすると、やらなければいけないことは意外とクリアで、まさに内野主計官がおっしゃっていたとおり、やはりプロセスの透明化だと思います。これが大きな牽制効果にもなりますので、もちろん技術的に秘密事項はあるかもしれませんけれども、大部分は普通の公共事業だと考えれば、やはりこちらの改革として求めていくのは情報開示、プロセスの透明化ということだと思います。
〔 田近分科会長代理 〕 内野主計官、最後に御回答ください。
〔 内野主計官 〕 佐藤委員の御指摘、本当にそのとおりだと思っておりまして、しっかりとしていきたいと思いますが、やはり防衛費は非常に難しい部分もございますので、そこは慎重に、かつ大胆にやっていきたいと思っています。
それから、葛西委員の御指摘についても本当におっしゃるとおりでございまして、技術の見極めというのが大変重要なステージに入ってきていると思います。それから、何でも輸入にすればいいというものではない中の象徴として、やはり造船業というのは、かつてほどではないとはいえ、日本はまだまだ民需で競争力がございます。そのような中で、地政学的に太平洋という大きな隔離されたところがある中で、アメリカから船を回してくるのは非常に時間がかかるわけでございます。第7艦隊の所要等を考えましても、日本の造船技術とドックの維持というのは実は非常に重要だろうとか、ミサイルの一部の技術につきましてはきちんと持ち続けなければいけないだろうとか、そのようなものは思っております。
ただ、問題なのは、その技術が企業に所属したままでよいのか、技術管理がどうなっているかという部分は、これまた非常に難しいところでございます。中国企業があれほど大きくなってまいりましたときに、日本の最先端の防衛技術を持っている企業が買収されてしまった瞬間に大変なことになりますので、その辺も含めた議論を今後はしっかりとやっていきたいと思っております。
〔 田近分科会長代理 〕 ありがとうございました。
それでは、時間がまいりましたので、本日の議題は終了させていただきます。
次回については、4月11日、13時から開催することとしています。議題等はお知らせします。本日、防衛の予算に入りましたけれども、先ほどの佐藤委員の話で言えば、マクロに対してミクロの個別分野になりますけれどもマクロの財政健全化との関連を常に念頭に置いて議論を進めていきたいと思います。それから、私のほうから先ほど申し上げたように、新しい財政健全化計画に向けて、御意見、あるいは御質問を含めて、事務局のほうにどんどん寄せていただきたいと思います。
本日は、これで閉会いたします。御多用中のところ、ありがとうございました。
午後4時00分閉会